説明

温度補償型水晶発振器

【課題】 電圧制御水晶発振器の制御感度を上げることなく、高温まで温度補償の精度を向上させることができる温度補償型水晶発振器を提供する。
【解決手段】 発振部12が水晶振動子2を発振させ、通常温度範囲では、温度センサ部14で水晶振動子2の周辺温度が測定され、その温度に基づいて温度補償部15が温度補償の第1の電圧(V1)を発振部12に出力し、通常温度範囲を超える高温領域では、加えて高温用温度センサ部18で測定された温度に基づいて高温用負荷容量調整部19が高温用の温度補償の第2の電圧(V2)を発振部12に出力し、通常温度範囲では、第1の電圧で温度補償され、高温領域では第1と第2の電圧によって温度補償される温度補償型水晶発振器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度補償型水晶発振器に係り、特に、電圧制御発振器の感度を向上させることなく、高温までの温度補償精度を向上させた温度補償型水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の温度補償型水晶発振器:図4]
従来の温度補償型水晶発振器(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)について、図4を参照しながら説明する。図4は、従来の温度補償型水晶発振器の回路ブロック図である。
従来のTCXOは、図4に示すように、発振回路1と、水晶振動子2とを備えている。
【0003】
発振回路1は、外部基準信号が入力される入力端子(AFC端子)と、自動周波数制御部(AFC:Auto Frequency Control)11と、発振部(OSC)12と、出力バッファ部(OUT BUFFER)13と、温度センサ部(TEMP SENSOR)14と、温度補償部(FUNC)15と、不揮発性メモリ(NVM)16と、定電圧電源(REG)17とから構成されている。
【0004】
自動周波数制御部11は、AFC端子から入力された外部基準信号に対する感度(電圧ゲイン)を調整し、発振部12に出力する。
発振部12は、その感度調整された電圧と水晶振動子2を用い発振させた信号を出力バッファ部13に出力する。
出力バッファ部13は、発振部12からの発振信号をバッファリング(増幅)して出力端子(OUT端子)に出力する。
ここで、出力バッファ部13と、更に水晶振動子2と発振部12で、電圧制御水晶発振器(VCXO:Voltage Controlled Crystal Oscillator)を構成している。
【0005】
温度センサ部14は、水晶振動子2の周辺の温度を測定し、温度補償部15に出力する。
温度補償部15は、関数を発生させる回路であり、不揮発性メモリ16に記憶された温度補償に関するパラメータを読み取り、温度センサ部14から入力された測定温度の値とパラメータを基に演算処理を行い、温度補償の電圧を発振部12に出力する。
発振部12は、温度補償部15から出力された補償電圧及びAFC11からの信号と共に、水晶振動子2を用い発振させた信号を供給する。
【0006】
[従来の温度補償型水晶発振器の回路:図5]
次に、図4に示した従来の温度補償型水晶発振器の回路について図5を参照しながら説明する。図5は、従来の温度補償型水晶発振器の回路図である。
従来の温度補償型水晶発振器は、図4と図5の対比で説明すると、水晶振動子2が水晶振動子Xに相当し、出力バッファ部13がバッファ32,33、抵抗R3、コンデンサC3に相当し、発振部12がインバータIC31、抵抗Rf,R1,R2、コンデンサC1,C2、可変容量ダイオードVD1,VD2に相当している。
【0007】
尚、図5では、図4の自動周波数制御部11と定電圧電源17を省略している。但し、自動周波数制御部11からの出力は、図5のV1の端子部分に入力されることになる。
【0008】
そして、上記従来の温度補償型水晶発振器は、通常、−40〜+85℃の範囲で温度補償されていた。
近年、ヨーロッパでは、e-call等の緊急時通報が法制化され、装置の導入が進められている。その自動車用として、広温度範囲、例えば、−40〜+105℃のTCXOが要求されている。
【0009】
通常の温度補償の範囲(−40〜+85℃)であれば問題はないが、広温度範囲(−40〜+105℃)、特に、+86〜+105℃の温度範囲において、以下に説明する問題点がある。
【0010】
[従来の温度補償例:図6]
従来の温度補償例について図6を参照しながら説明する。図6は、従来の温度補償例を示す説明図である。図6では、横軸が温度(Temp)で、縦軸が(a),(d)では周波数特性を、(b),(c)では電圧特性を示している。
図6(a)に「温度補償なしの時の発振周波数Fout」の特性を示す。この特性は、水晶振動子と発振回路の温度特性に応じた周波数特性となるものである。
【0011】
図6(b)が理想的な温度補償電圧V1時の電圧特性を示し、図6(c)が現実の温度補償電圧V1の電圧特性を示している。
図6(a)の温度補償なしの時の電圧制御型水晶発振器の発振周波数に対して図6(b)の理想的な温度補償電圧時の電圧特性V1を印加すると、理想的な温度補償後の発振周波数は、フラットになる。
【0012】
しかしながら、理想的な温度補償電圧時の周波数特性に対して現実の温度補償電圧時の周波数特性が高温領域においてズレが発生しており、そのズレのために、図6(a)の温度補償なしの時の電圧制御型水晶発振器の発振周波数に図6(c)の現実の温度補償電圧時の電圧特性V1を印加すると、図6(d)の現実の温度補償後の発振周波数は、基本的にはフラットになるが、高温領域で急峻に上昇している。
つまり、高温領域で温度補償が正常に為されていないものである。
【0013】
更に、従来のTCXOは、使用されるIC(Integrated Circuit)の高集積化と共に、プロセスの微細化が進み、TCXOの電源電圧の低電圧化が行われてきた。低電圧化は、例えば、5Vから3.3Vに、3.3Vから1.8Vになってきている。
【0014】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2004−104609号公報「温度補償型圧電発振器」(東洋通信株式会社)[特許文献1]、特開2005−033329号公報「温度補償型圧電発振器」(シチズン時計株式会社)[特許文献2]がある。
【0015】
特許文献1には、温度補償型圧電発振器において、可変容量ダイオードを周波数温度補償回路に組み込むことにより、温度変化を電圧変化として可変容量ダイオードに印加して、その電圧により容量を変化させ、周波数を上げる時は容量を減らし、周波数を下げる時は容量を増やすことが示されている。
【0016】
特許文献2には、温度補償型圧電発振器において、水晶発振回路に低温度用MOS容量素子と高温用MOS容量素子が並列に接続され、低温用バイアス信号生成回路と高温用バイアス信号生成回路を備え、低温度領域の温度補償と高温度領域の温度補償とを独立して行うことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004−104609号公報
【特許文献2】特開2005−033329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、従来のTCXOでは、電源電圧の低電圧化に伴い、内部電圧が下がり、回路電圧のダイナミックレンジが狭くなり、電圧制御型水晶発振器(VCXO)に印加される電圧の温度補償電圧範囲が狭くなって、温度補償できる温度範囲が狭くなってしまうという問題点があった。
【0019】
そこで、対策として、VCXOの周波数対電圧感度を高くすることが考えられる。
しかしながら、その対策では、ノイズに対する感度も上がるため、TCXOに要求される重要な特性である位相ノイズが悪化するという弊害が発生する問題点があった。
【0020】
尚、特許文献1,2は、共に高温は高温用の温度補償回路で、低温は低温用の温度補償回路で温度補償を行うよう設計されているが、2つの回路が一体で動作するものではなく、構成を簡易にするものではない。
【0021】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、電圧制御水晶発振器の感度を上げることなく、高温まで温度補償の精度を向上させることができる温度補償型水晶発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、水晶振動子と、温度補償を行う発振回路とを備える温度補償型水晶発振器であって、発振回路は、水晶振動子の周辺温度を測定する温度センサ部と、測定された温度に基づいて温度補償の第1の電圧を出力する温度補償部と、特定の温度範囲を超える高温領域で測定された温度に基づいて温度補償の第2の電圧を出力する高温用負荷容量調整部と、特定の温度範囲内で温度補償に用いる第1の可変容量素子及び第2の可変容量素子と、高温領域で温度補償に用いる第3の可変容量素子及び第4の可変容量素子と、水晶発振器に接続して発振動作を行う発振用のICとを備え、第1の電圧を用いて温度補償を行うと共に、高温領域では第2の電圧も用いて温度補償を行う発振部と、発振部からの出力を増幅するバッファとを有することを特徴とする。
【0023】
本発明は、上記温度補償型水晶発振器において、特定の温度範囲を超える高温領域で温度を測定し、測定した温度を高温用負荷容量調整部に出力する高温用温度センサ部を設けたことを特徴とする。
【0024】
本発明は、上記温度補償型水晶発振器において、特定の温度範囲を超える高温領域では、高温用負荷容量調整部が、温度補償の第2の電圧を徐々に下降させ、発振部の第3の可変容量素子及び第4の可変容量素子の容量を徐々に増加させるよう動作することを特徴とする。
【0025】
本発明は、上記温度補償型水晶発振器において、第1の可変容量素子の一端が、発振用のICの入力側に設けられた第1のコンデンサの一端に接続され、第1の可変容量素子の他端が接地され、第2の可変容量素子の一端が、発振用のICの出力側に設けられた第2のコンデンサの一端に接続され、第2の可変容量素子の他端が接地され、第1の可変容量素子の一端と第1のコンデンサの一端との間に第1の抵抗の一端が接続され、第2の可変容量素子の一端と第2のコンデンサの一端との間に第2の抵抗の一端が接続され、第1の抵抗の他端と第2の抵抗の他端が接続点で接続し、接続点に温度補償部からの第1の電圧が入力されることを特徴とする。
【0026】
本発明は、上記温度補償型水晶発振器において、第3の可変容量素子の一端が、発振用のICの入力側に設けられた第3のコンデンサの一端に接続され、第3の可変容量素子の他端が接地され、第4の可変容量素子の一端が、発振用のICの出力側に設けられた第4のコンデンサの一端に接続され、第4の可変容量素子の他端が接地され、第3の可変容量素子の一端と第3のコンデンサの一端との間に第3の抵抗の一端が接続され、第4の可変容量素子の一端と第4のコンデンサの一端との間に第4の抵抗の一端が接続され、第3の抵抗の他端と第4の抵抗の他端が接続点で接続し、接続点に高温用負荷容量調整部からの第2の電圧が入力されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、水晶振動子の周辺温度を測定する温度センサ部と、測定された温度に基づいて温度補償の第1の電圧を出力する温度補償部と、特定の温度範囲を超える高温領域で測定された温度に基づいて温度補償の第2の電圧を出力する高温用負荷容量調整部と、特定の温度範囲内で温度補償に用いる第1の可変容量素子及び第2の可変容量素子と、高温領域で温度補償に用いる第3の可変容量素子及び第4の可変容量素子と、水晶発振器に接続して発振動作を行う発振用のICとを備え、第1の電圧を用いて温度補償を行うと共に、高温領域では第2の電圧も用いて温度補償を行う発振部と、発振部からの出力を増幅するバッファとを有する発振回路を備える温度補償型水晶発振器としているので、電圧制御型水晶発振器の電圧制御感度を上げることなく、高温まで温度補償の精度を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る温度補償型水晶発振器の回路ブロック図である。
【図2】本発振器の回路図である。
【図3】本発振回路の温度補償例を示す説明図である。
【図4】従来の温度補償型水晶発振器の回路ブロック図である。
【図5】従来の温度補償型水晶発振器の回路図である。
【図6】従来の温度補償例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る温度補償型水晶発振器は、外部基準信号を自動周波数制御部で適正電圧にし、発振部が自動周波数制御部からの信号を用いて水晶振動子を発振させ、通常温度範囲では、温度センサ部で水晶振動子の周辺温度が測定され、その温度に基づいて温度補償部が温度補償の第1の電圧を発振部に出力し、通常温度範囲を超える高温領域では、加えて高温用温度センサ部で測定された温度に基づいて高温用負荷容量調整部が高温用の温度補償の第2の電圧を発振部に出力し、通常温度範囲では、第1の電圧で温度補償され、高温領域では第1と第2の電圧によって温度補償されるものであり、電圧制御水晶発振器の電圧制御感度を向上させることなく、広範囲に対応する温度補償型水晶発振器を安価に実現できるものである。
【0030】
[本発振器:図1]
本発明の実施の形態に係る温度補償型水晶発振器について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る温度補償型水晶発振器の回路ブロック図である。
本発明の実施の形態に係る温度補償型水晶発振器(本発振器)は、図1に示すように、発振回路1と、水晶振動子2とを備えており、発振回路1は、外部基準信号が入力される入力端子(AFC端子)と、自動周波数制御部(AFC)11と、発振部(OSC)12と、出力バッファ部(OUT BUFFER)13と、温度センサ部(TEMP SENSOR)14と、温度補償部(FUNC)15と、不揮発性メモリ(NVM)16と、定電圧電源(REG)17と、高温用温度センサ部(TEMP SENSOR for High Temp.)18と、高温用負荷容量調整部(Load Capacitance ADJ for High Temp.)19とを基本的に有している。
【0031】
[本発振器の各部:図2]
本発振器の各部について具体的に説明する。
自動周波数制御部11は、AFC端子から入力された外部基準信号の電圧を目的の感度となるよう調整し、発振部12に出力する。
【0032】
発振部12は、水晶振動子2と接続して、AFC11からの信号で目的の周波数になるように制御すると共に、周波数温度補償部15から出力された温度補償電圧(V1)値で温度補償する。更に、高温用負荷容量調整部19からの高温用の負荷容量を調整するための温度補償電圧(V2)値で温度補償する。
従って、発振部12は、後述するように、従来の発振部とは異なり、高温用の負荷容量を調整できる構成を備えており、温度補償電圧(V2)値の入力に応じて負荷容量を変更する。
【0033】
つまり、通常温度範囲(例えば、−40〜+85℃)では、温度補償部15からの温度補償電圧(V1)値による電圧で温度補償を行うが、高温領域(例えば、+86〜+105℃)になると、温度補償電圧(V1)値に加えて、高温用負荷容量調整部19からの温度補償電圧(V2)値による電圧で温度補償を行うものである。
【0034】
出力バッファ部13は、発振部12からの発振信号を増幅(バッファリング)して出力端子(OUT端子)に出力する。
ここで、出力バッファ部13と、更に水晶振動子2と発振部12で、電圧制御水晶発振器(VCXO)を構成している。
【0035】
温度センサ部14は、水晶振動子2の周辺の温度を測定し、温度補償部15に温度の測定値を出力する。
温度補償部15は、関数を発生させる回路であり、不揮発性メモリ16に記憶された温度補償に関するパラメータを読み取り、温度センサ部14から入力された測定温度の値とパラメータを基に演算処理を行い、温度補償の電圧(V1)を発振部12に出力する。
【0036】
不揮発性メモリ16は、温度補償に関するパラメータを記憶しており、温度補償部15での演算処理に利用される。尚、パラメータは、本発振器の特性に応じて任意に書き換え変更可能である。
定電圧電源17は、外部電圧の電圧変動に対して一定の電圧を発生させ、本発振器を安定に動作させるものである。
【0037】
高温用温度センサ部18は、高温(例えば、85℃以上)で動作する温度センサ回路であり、水晶振動子の周辺温度を測定し、測定した温度の値を高温用負荷容量調整部19に出力する。
高温用温度センサ部18を、温度センサ部14で代用してもよいが、同じ電源電圧で温度範囲を広くとるようにすると、通常温度範囲での測定精度が低下することになるし、高温領域の測定精度を向上させるために高温専用の温度センサ回路を用いる方がよい。
【0038】
高温用負荷容量調整部19は、高温用の負荷容量を調整するために、高温用温度センサ部18で測定された温度の値に対応した温度補償の電圧(V2)を発振部12に出力する。
高温用負荷容量調整部19は、高温用温度センサ部18から入力される測定温度の値から温度補償の電圧(V2)値を演算するものであるが、温度補償部15と同様に不揮発性メモリ16から高温用の温度補償に関するパラメータを読み込んで演算処理を行うようにしてもよい。
不揮発性メモリ16に記憶されるパラメータは、発振器の特性に応じて書き換え可能であるため、高温用負荷容量調整部19も不揮発性メモリ16から温度補償に関するパラメータを読み込んで演算に使用する方が、汎用性がある。
【0039】
[本発振器の回路:図2]
次に、図1に示した本発振器の回路について図2を参照しながら説明する。図2は、本発振器の回路図である。
本発振器は、図1と図2の対比で説明すると、水晶振動子2が水晶振動子Xに相当し、出力バッファ部13がバッファ32,33、抵抗R3、コンデンサC3に相当している。
【0040】
そして、発振部12がインバータIC31、抵抗Rf,R1,R2、コンデンサC1,C2、第1,2の可変容量ダイオードVD1,VD2に相当し、高温用の負荷容量を調整するための構成がコンデンサC4,C5、抵抗R4,R5、第3,4の可変容量ダイオードVD3,VD4に相当している。
インバータIC31は、入力信号を反転出力するもので、発振用ICである。
【0041】
尚、図2では、図1の自動周波数制御部11と定電圧電源17を省略している。但し、自動周波数制御部11からの出力は、図2のV1の端子部分に入力されることになる。
【0042】
[本発振器の回路の接続関係]
次に、本発振器の回路の接続関係について説明する。
まず、発振部12は、水晶振動子Xの両端にインバータIC31の入力側と出力側が接続し、水晶振動子Xに抵抗Rfが並列接続されている。
インバータIC31の入力側には、コンデンサC1の一端が接続され、その他端は第1の可変容量ダイオードVD1の一端に接続され、第1の可変容量ダイオードVD1の他端は接地されている。更に、インバータIC31の入力側には、コンデンサC4の一端が接続され、その他端は第3の可変容量ダイオードVD3の一端に接続され、第3の可変容量ダイオードVD3の他端は接地されている。
【0043】
また、インバータIC31の出力側には、コンデンサC2の一端が接続され、その他端は第2の可変容量ダイオードVD2の一端に接続され、第2の可変容量ダイオードVD2の他端は接地されている。更に、インバータIC31の出力側には、コンデンサC5の一端が接続され、その他端は第4の可変容量ダイオードVD4の一端に接続され、第4の可変容量ダイオードVD4の他端は接地されている。
そして、インバータIC31の出力側に、コンデンサC3が直列接続され、そのコンデンサC3を介してバッファ32,33が直列に接続され、そして出力端子(Fout)に接続している。尚、バッファ32の出力が抵抗R3を介して入力に帰還している。
【0044】
また、コンデンサC1の他端が抵抗R1を介して端子V1に接続し、コンデンサC2の他端も抵抗R2を介して端子V1に接続している。
端子V1には、温度補償部15の出力端子が接続され、温度補償部15は、不揮発性メモリ16にアクセス可能に接続され、温度センサ部14からの測定温度を入力可能に接続している。
【0045】
また、コンデンサC4の他端が抵抗R4を介して端子V2に接続し、コンデンサC5の他端も抵抗R5を介して端子V2に接続している。
端子V2には、高温用負荷容量調整部19の出力端子が接続され、高温用負荷容量調整部19は、高温用温度センサ部18からの高温用の測定温度を入力可能に接続している。
【0046】
[本発振回路の動作]
[通常温度範囲]
本発振回路における動作は、通常温度範囲(例えば、−40〜+85℃)では、温度センサ部14で測定された温度の値が温度補償部15に入力され、温度補償の電圧値が演算されて温度補償電圧(V1)が端子V1に出力される。
【0047】
端子V1には、AFC11からの信号が入力されており、温度補償電圧(V1)も加算される。
AFC11からの信号と温度補償電圧(V1)によって、抵抗R1,R2を介して第1,2の可変容量ダイオードVD1,VD2が変化し、インバータIC31が発振動作を行う。
【0048】
[高温領域]
高温領域(例えば、+86〜+105℃)になると、温度センサ部14、温度補償部15は継続して動作するものの、加えて、高温用温度センサ部18と高温用負荷容量調整部19が動作を開始し、高温領域における温度補償電圧(V2)を端子V2に出力する。
【0049】
すると、抵抗R4,R5を介して第3,4の可変容量ダイオードVD3,VD4の容量が変化し、負荷容量が変化する。尚、負荷容量は、高温用負荷容量調整部19から出力される温度補償電圧(V2)の値に応じて変化するものであり、高温用負荷容量調整部19によって調整される。
具体的には、高温領域において温度補償電圧(V2)を徐々に下降させ、高温用負荷を徐々に増加させて温度補償を行うものである。
【0050】
この高温用負荷容量が発振部12内に形成されることで、高温領域における温度補償を行うことが可能となり、電圧制御水晶発振器の感度を向上させることなく、広温度範囲に対応する低雑音温度補償型水晶発振器を安価に実現できる効果がある。
【0051】
[本発振回路の温度補償例:図3]
本発振回路の温度補償例について図3を参照しながら説明する。図3は、本発振回路の温度補償例を示す説明図である。図3では、横軸が温度(Temp)で、縦軸が(a),(e)では周波数特性を、(b),(c),(d)では電圧特性を示している。
図3(a)に「温度補償なしの時の発振周波数Fout」の特性を示す。この特性は、水晶振動子と発振回路の温度特性に応じた周波数特性となるものである。
【0052】
図3(b)が理想的な温度補償電圧V1の電圧特性を示し、図3(c)が現実の温度補償電圧V1の電圧特性を示している。
更に、図3(d)に負荷容量補正電圧V2の電圧特性を示し、図3(e)に本発振回路における温度補償後の発振周波数Foutの特性を示す。
【0053】
図3(b)の理想的な温度補償電圧時の電圧特性に対して図3(c)の現実の温度補償電圧時の電圧特性が高温領域においてズレが発生しているが、図3(d)の負荷容量補正電圧V2の電圧特性によって、そのズレを打ち消すことができるため、図3(a)の温度補償なしの時の電圧制御型水晶発振器の発振周波数に対して図3(c)の現実の温度補償電圧時の電圧特性と図3(d)の負荷容量補正電圧V2の電圧特性を印加すると、図3(e)に示すように、本発振回路の温度補償後の発振周波数は、ほぼフラットになる。
つまり、高温領域でも温度補償が正常に為されたものである。
【0054】
本発振器では、外部基準信号を入力する構成となっているが、外部区順信号を入力せず、内部電圧で動作する発振器にも適用可能である。この場合、発振回路1内にAFC11を持たない構成となる。
また、本発振器では、可変容量素子を可変容量ダイオードで説明したが、MOS(Metal Oxide Semiconductor)を使った可変容量素子で構成してもよい。
【0055】
[実施の形態の効果]
本発振器によれば、通常温度範囲では、温度センサ部14と温度補償部15が動作して発振部12における温度補償を行うが、通常温度範囲を超える高温領域では、それらに加えて高温用温度センサ部18と高温用負荷容量調整部19が動作して発振部12における高温用の温度補償を行うようにしているので、電圧制御水晶発振器の制御感度を向上させることなく、広範囲に対応する低雑音温度補償型水晶発振器を安価に提供できる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、電圧制御水晶発振器の制御感度を上げることなく、高温まで温度補償の精度を向上させることができる低雑音温度補償型水晶発振器に好適である。
【符号の説明】
【0057】
1...発振回路、 2...水晶振動子、 11...自動周波数制御部(AFC)、 12...発振部(OSC)、 13...出力バッファ部(OUT BUFFER)、 14...温度センサ部(TEMP SENSOR)、 15...温度補償部(FUNC)、 16...不揮発性メモリ(NVM)、 17...定電圧電源(REG)、 18...高温用温度センサ部(TEMP SENSOR for High Temp.)、 19...高温用負荷容量調整部(Load Capacitance ADJ for High Temp.)、 31...インバータIC、 32...バッファ、 33...バッファ、 VD1...第1の可変容量ダイオード、 VD2...第2の可変容量ダイオード、 VD3...第3の可変容量ダイオード、 VD4...第4の可変容量ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子と、温度補償を行う発振回路とを備える温度補償型水晶発振器であって、
前記発振回路は、
前記水晶振動子の周辺温度を測定する温度センサ部と、
前記測定された温度に基づいて温度補償の第1の電圧を出力する温度補償部と、
特定の温度範囲を超える高温領域で測定された温度に基づいて温度補償の第2の電圧を出力する高温用負荷容量調整部と、
前記特定の温度範囲内で温度補償に用いる第1の可変容量素子及び第2の可変容量素子と、前記高温領域で温度補償に用いる第3の可変容量素子及び第4の可変容量素子と、前記水晶発振器に接続して発振動作を行う発振用のICとを備え、前記第1の電圧を用いて温度補償を行うと共に、前記高温領域では前記第2の電圧も用いて温度補償を行う発振部と、
前記発振部からの出力を増幅するバッファとを有することを特徴とする温度補償型水晶発振器。
【請求項2】
特定の温度範囲を超える高温領域で温度を測定し、測定した温度を高温用負荷容量調整部に出力する高温用温度センサ部を設けたことを特徴とする請求項1記載の温度補償型水晶発振器。
【請求項3】
特定の温度範囲を超える高温領域では、高温用負荷容量調整部は、温度補償の第2の電圧を徐々に下降させ、前記発振部の第3の可変容量素子及び第4の可変容量素子の容量を徐々に増加させるよう動作することを特徴とする請求項1又は2記載の温度補償型水晶発振器。
【請求項4】
第1の可変容量素子の一端は、発振用のICの入力側に設けられた第1のコンデンサの一端に接続され、前記第1の可変容量素子の他端が接地され、第2の可変容量素子の一端は、前記発振用のICの出力側に設けられた第2のコンデンサの一端に接続され、前記第2の可変容量素子の他端が接地され、前記第1の可変容量素子の一端と前記第1のコンデンサの一端との間に第1の抵抗の一端が接続され、前記第2の可変容量素子の一端と前記第2のコンデンサの一端との間に第2の抵抗の一端が接続され、前記第1の抵抗の他端と前記第2の抵抗の他端が接続点で接続し、前記接続点に温度補償部からの第1の電圧が入力されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の温度補償型水晶発振器。
【請求項5】
第3の可変容量素子の一端は、発振用のICの入力側に設けられた第3のコンデンサの一端に接続され、前記第3の可変容量素子の他端が接地され、第4の可変容量素子の一端は、前記発振用のICの出力側に設けられた第4のコンデンサの一端に接続され、前記第4の可変容量素子の他端が接地され、前記第3の可変容量素子の一端と前記第3のコンデンサの一端との間に第3の抵抗の一端が接続され、前記第4の可変容量素子の一端と前記第4のコンデンサの一端との間に第4の抵抗の一端が接続され、前記第3の抵抗の他端と前記第4の抵抗の他端が接続点で接続し、前記接続点に高温用負荷容量調整部からの第2の電圧が入力されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の温度補償型水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−38737(P2013−38737A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175634(P2011−175634)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】