説明

温度調節機能付き鏡、露点計、及び湿度センサ

【課題】温度調節機能付き鏡の更なる小型化を可能とする技術を提供
【解決手段】温度調節機能付き鏡2は、測温素子21と、熱電素子22と、熱電素子22に通電するための温調電極23,非温調電極24と、基板20を備える。基板20は、その裏面に凹部20aが形成されたダイヤフラム構造を有している。また測温素子21は、温度によってその抵抗値が変化する白金抵抗体である。そして測温素子21は、基板20の主面上において、凹部20aが形成されて基板の厚みが薄くなっているダイヤフラム領域に薄膜形成される。また熱電素子22は、ペルチェ効果を利用した熱移動により加熱または冷却を行う素子であり、基板20の主面上において測温素子21の周囲を取り囲むように薄膜形成される。また温調電極23は、測温素子21の周囲を取り囲むように形成された熱電素子22の内周部に形成されるとともに、非温調電極24は熱電素子22の外周部に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調節機能付き鏡と、これを用いた露点計及び湿度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度調節機能付き鏡が露点計や湿度センサに用いられている。この温度調節機能付き鏡は、ペルチェ素子などの熱電素子と、白金抵抗体などの測温素子とを備えることにより、温度調節が可能に構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−337092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載の温度調節機能付き鏡は、鏡と熱電素子と測温素子とを別々に製造した後に、これらを接合することにより製造されている。このため、この接合に際し機械的な制約が大きく、温度調節機能付き鏡を更に小型化することが困難であるという問題があった。
【0004】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、温度調節機能付き鏡の更なる小型化を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、鏡面の温度を調節する機能を有する温度調節機能付き鏡であって、基板の面上に薄膜形成された熱電素子と、基板の面上または熱電素子上に薄膜形成された測温素子とを備え、熱電素子は、測温素子を加熱または冷却し、測温素子の表面が鏡面として利用されることを特徴とする温度調節機能付き鏡である。
【0006】
尚、「基板の面上に薄膜形成する」とは、直接または他部材を介して基板の面上に形成することである。同様に、「熱電素子上に薄膜形成する」とは、直接または他部材を介して熱電素子の面上に形成することである。
【0007】
このように構成された温度調節機能付き鏡では、測温素子と熱電素子が基板上に一体となって形成されている。このため、熱電素子と測温素子とを別々に製造してこれらを接合することが不要となり、温度調節機能付き鏡を更に小型化することが可能となる。また、測温素子は、薄膜形成によって表面の光反射率を高くすることで、その表面を鏡として用いることができる。
【0008】
また、請求項1に記載の温度調節機能付き鏡においては、請求項2に記載のように、複数の熱電素子を有し、複数の熱電素子の少なくとも一部は、直列に連なるように配置されるとともに、測温素子と隣接するようにしてもよい。
【0009】
このように構成された温度調節機能付き鏡では、或る熱電素子が移動させた熱を、その後、熱拡散による移動よりも速く、この熱電素子に隣接された別の熱電素子により更に移動させる。このため、1つの熱電素子を用いて、測温素子を加熱または冷却する場合よりも、測温素子から熱を移動させる速度を向上させることができる。
【0010】
また、請求項1または請求項2に記載の温度調節機能付き鏡においては、請求項3に記載のように、複数の熱電素子を有し、複数の熱電素子の少なくとも一部は、測温素子に対してそれぞれ隣接して配置されるようにしてもよい。
【0011】
このように構成された温度調節機能付き鏡では、複数の熱電素子が1つの測温素子から同時に熱を移動させる。このため、1つの熱電素子を用いて、測温素子を加熱または冷却する場合よりも、単位時間当たりに測温素子から熱を移動させる量を多くすることができる。
【0012】
また、請求項1〜請求項3の何れかに記載の温度調節機能付き鏡は、請求項4に記載のように、測温素子は、基板の面上に薄膜形成されるようにすることが可能である。
そして、請求項1〜請求項4の何れかに記載の温度調節機能付き鏡においては、請求項5に記載のように、基板は、測温素子及び熱電素子が形成されている面とは反対側の面において凹部が形成されたダイヤフラム領域と、このダイヤフラム領域以外の領域である周縁領域とを有し、測温素子は、ダイヤフラム領域内に配置され、熱電素子は、ダイヤフラム領域と周縁領域に跨って配置されるようにしてもよい。
【0013】
このように構成された温度調節機能付き鏡では、ダイヤフラム領域の基板の厚みは、周縁領域の基板の厚みより薄くなるため、ダイヤフラム領域は周縁領域よりも熱容量が小さくなる。そして、鏡面となる測温素子がダイヤフラム領域に配置されている。このため、ダイヤフラム領域に測温素子を配置しない場合と比較して、鏡面の温度調節を高速かつ高精度に行うことが可能となる。また、ダイヤフラム領域と周縁領域に跨るように熱電素子が配置されているので、熱電素子を介してダイヤフラム領域から移動した熱が周縁領域に伝達されても、これにより、周縁領域の温度が急激に上昇することを防止することができる。
【0014】
また、請求項1〜請求項5の何れかに記載の温度調節機能付き鏡においては、請求項6に記載のように、基板は、不透明材料により構成されているようにしてもよいし、請求項9に記載のように、基板は、透明材料により構成されているようにしてもよい。
【0015】
そして請求項7に記載のように、発光素子と、受光素子と、請求項6に記載の温度調節機能付き鏡とを備え、発光素子及び受光素子は、発光素子が発する光を、請求項6に記載の温度調節機能付き鏡に反射させて、この反射光を受光素子が受光するように配置され、 発光素子から発光させた状態で、熱電素子により測温素子を冷却して、受光素子により受光された光の強度が低下した時に、測温素子により測定された温度を露点として演算する露点演算手段を備えることによって、露点計を構成するようにしてもよい。
【0016】
また請求項8に記載のように、発光素子と、受光素子と、請求項6に記載の温度調節機能付き鏡とを備え、発光素子及び受光素子は、発光素子が発する光を、請求項6に記載の温度調節機能付き鏡に反射させて、この反射光を受光素子が受光するように配置され、発光素子から発光させた状態で、熱電素子により測温素子を冷却して、受光素子により受光された光の強度が低下した時に、測温素子により測定された温度を露点として演算する露点演算手段と、この露点における飽和水蒸気量と、被測定気体の温度における飽和水蒸気量とに基づいて、被測定気体の湿度を演算する湿度演算手段とを備えることによって、湿度センサを構成するようにしてもよい。
【0017】
また請求項10に記載のように、発光素子と、受光素子と、請求項9に記載の温度調節機能付き鏡とを備え、発光素子及び受光素子は、発光素子が発する光を、請求項9に記載の温度調節機能付き鏡に透過させて、この透過光を受光素子が受光するように配置され、発光素子から発光させた状態で、熱電素子により測温素子を冷却して、受光素子により受光された光の強度が低下した時に、測温素子により測定された温度を露点として演算する露点演算手段を備えることによって、露点計を構成するようにしてもよい。
【0018】
また請求項11に記載のように、発光素子と、受光素子と、請求項9に記載の温度調節機能付き鏡とを備え、発光素子及び受光素子は、発光素子が発する光を、請求項9に記載の温度調節機能付き鏡に透過させて、この透過光を受光素子が受光するように配置され、発光素子から発光させた状態で、熱電素子により測温素子を冷却して、受光素子により受光された光の強度が低下した時に、測温素子により測定された温度を露点として演算する露点演算手段と、この露点における飽和水蒸気量と、被測定気体の温度における飽和水蒸気量とに基づいて、被測定気体の湿度を演算する湿度演算手段とを備えることによって、湿度センサを構成するようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態について図面とともに説明する。
図1は、本発明が適用された温度調節機能付き鏡2を備える露点計1の概略構成を示す側面図である。以下の説明では、図1に示す露点計1のうち左側を先端側として、右側を後端側として説明する。
【0020】
露点計1は、図1に示すように、温度調節機能付き鏡2と、温度調節機能付き鏡2に通電するためのケーブル群3(図1ではケーブル32のみを示す。図2を参照)と、温度調節機能付き鏡2に光L1を照射する発光素子11及び温度調節機能付き鏡2で反射した光L2を受光する受光素子12を備えた発光・受光部4と、温度調節機能付き鏡2とケーブル群3と発光・受光部4を収納する筺体5とから構成される。
【0021】
これらのうち発光・受光部4は、上述の発光素子11及び受光素子12と、発光素子11により照射された光が温度調節機能付き鏡2で反射されることなく直接受光素子12に到達するのを防ぐために発光素子11と受光素子12との間に設けられた遮光壁13と、露点計1の外部からの光が受光素子12に到達するのを防ぐために設けられた遮光壁14,15と、発光素子11と受光素子12と遮光壁13,14,15を温度調節機能付き鏡2の上方に配置されるように支持する支持部16とから構成されている。なお、遮光壁14は発光素子11を挟んで遮光壁13と反対側に配置され、遮光壁15は受光素子12を挟んで遮光壁14と反対側に設けられている。
【0022】
また筺体5の先端側は、被測定気体を筺体5の内部に導入するための開口部41が設けられている。そして、開口部41と温度調節機能付き鏡2との間に通気フィルタ43が設置されている。更に筺体5の後端側には、ケーブル群3を露点計1の内部に導入するための開口部42が設けられている。そして、ケーブル群3の一部が筺体5の内部に導入された状態でケーブル群3を固定するために、開口部42は樹脂44によりモールドされている。
【0023】
図2は、本発明が適用された温度調節機能付き鏡2の概略構成を示す平面図である。
温度調節機能付き鏡2は、図2に示すように、測温素子21と、熱電素子22と、熱電素子22に通電するための電極23,24と、測温素子21と熱電素子22と電極23,24を支持する基板20とを備える。なお以下、電極23を温調電極23、電極24を非温調電極24とも称す。
【0024】
これらのうち基板20は、シリコンを材料として構成されたシリコン基板である。そして基板20は、その裏面に凹部20aが形成されたダイヤフラム構造を有している(図1を参照)。
【0025】
また測温素子21は、温度によってその抵抗値が変化する白金抵抗体である。そして測温素子21は、基板20の主面上において、凹部20aが形成されて基板の厚みが薄くなっているダイヤフラム領域20bに薄膜形成される。
【0026】
また熱電素子22は、ペルチェ効果を利用した熱移動により加熱または冷却を行う素子であり、基板20の主面上において測温素子21の周囲を取り囲むように薄膜形成される。これにより、熱電素子22のうち内周部分は、ダイヤフラム領域20b(図1を参照)上に配置され、内周部分以外の部分は、ダイヤフラム領域20bより基板の厚みが厚くなっている周縁領域20c(図1を参照)上に配置される。
【0027】
また温調電極23は、測温素子21の周囲を取り囲むように形成された熱電素子22の内周部に形成されるとともに、非温調電極24は熱電素子22の外周部に形成される。
またケーブル群3のうち、熱電素子用ケーブル31は、配線25を介して温調電極23と電気的に接続される。また熱電素子用ケーブル32は、配線を介することなく直接、非温調電極24と電気的に接続される。更に測温素子用ケーブル33,34は、それぞれ配線26,27を介して測温素子21と電気的に接続される。
【0028】
そして、例えばP型の熱電素子を用いた場合、熱電素子用ケーブル31側を正極とするとともに熱電素子用ケーブル32を負極として熱電素子22に通電すると、温調電極23から非温調電極24へ向かう方向に熱が移動し(図2の矢印HAを参照)、測温素子21を冷却することができる。更に、熱電素子22を介して非温調電極24に到達した熱は、熱電素子用ケーブル32を介して外部に放出される(図2の矢印HBを参照)。
【0029】
なおケーブル群3のうち、非温調電極24と接続される熱電素子用ケーブル32は、ヒートシンクとして機能させるために、その他のケーブル31,33,34よりも径が大きい。また、配線25による温調電極23の熱引きを抑制するために、配線25の幅をできるだけ狭くすることが望ましい。同様に、配線26,27による測温素子21の熱引きを抑制するために、配線26,27の幅をできるだけ狭くすることが望ましい。
【0030】
次に、露点計1の電気的構成について説明する。図3は、露点計1の電気的構成を示すブロック図である。
露点計1は、図3に示すように、発光素子11と受光素子12と測温素子21と熱電素子22を制御する制御回路50を備える。
【0031】
制御回路50は、制御回路50全体を制御するCPU51と、発光素子11を発光させるための電流を出力する電流出力回路52と、受光素子12が受光した光の強度が電流値により特定される電気信号を受光素子12から入力する電流入力回路53と、測温素子21の抵抗値を検出する抵抗入力回路54と、測温素子21を加熱または冷却するための電流を熱電素子22に出力する電流出力回路55と、電流入力回路53に入力した電流の電流値および抵抗入力回路54が検出した抵抗値をアナログ値からデジタル値に変換してCPU51へ出力するA/Dコンバータ56と、CPU51が指示した電流値を示すデジタル値をアナログ値に変換して電流出力回路52,55へ出力するD/Aコンバータ57とから構成される。
【0032】
次に、露点計1の動作について説明する。図4は、露点計1の測定タイミングを示すチャートである。
図4に示すように、露点計1は、測定周期SSを1サイクルとして露点の測定を繰り返し行う。具体的には、図4(a)に示すように、制御回路50が、電流値I1を初期値として測定周期SS経過後に電流値I2となるように徐々に電流値を増加させて、熱電素子22に対して電流を出力する。なお、図4(a)では電流値が徐々に大きくなっており、1サイクル中において測定開始時刻t0から時間が経過するほど測温素子21から熱電素子22への単位時間当たり熱移動量(即ち、測温素子21の冷却速度)が大きくなることを示している。
【0033】
また制御回路50は、受光素子12から電流を入力し、その電流値を検出する。そして図4(b)に示すように、測温素子21が熱電素子22により冷却されると、測温素子21の表面に結露が生じ(点P1を参照)、反射光L2の強度を示す電流値が電流値I4から電流値I3に低下する。このため、反射光L2の強度が低下し始めた時(図4では時刻t1)に、結露が生じたと判断することができる。
【0034】
更に制御回路50は、抵抗入力回路54を介して測温素子21の抵抗値を検出する。そして、図4(c)に示すように、熱電素子22により測温素子21が冷却されることによって測温素子21の抵抗値が徐々に低下する。このため、結露発生時(即ち、時刻t1)における測温素子21の抵抗値(点P2を参照)を検出し、この抵抗値を温度に変換することにより露点を測定することができる。このようにして露点を測定する制御回路50は、本発明の露点演算手段に相当する。
【0035】
このように構成された温度調節機能付き鏡2では、測温素子21と熱電素子22が基板20の主面上に一体となって形成されている。このため、熱電素子22と測温素子21とを別々に製造してこれらを接合することが不要となり、温度調節機能付き鏡2を更に小型化することが可能となる。また、測温素子21は、薄膜形成によって表面の光反射率を高くすることで、その表面を鏡として用いることができる。
【0036】
また、ダイヤフラム領域20bの基板の厚みは、周縁領域20cの基板の厚みより薄くなるため、ダイヤフラム領域20bは周縁領域20cよりも熱容量が小さくなる。そして、鏡面となる測温素子21がダイヤフラム領域20bに配置されている。このため、ダイヤフラム領域20bに測温素子21を配置しない場合と比較して、鏡面の温度調節を高速かつ高精度に行うことが可能となる。更に、熱電素子22はダイヤフラム領域20bと周縁領域20cに跨って配置されており、周縁領域20cはダイヤフラム領域20bより熱容量が大きいので、熱電素子22を介してダイヤフラム領域20bから移動した熱が周縁領域20cに伝達されても、これにより、周縁領域20cの温度が急激に上昇することを防止することができる。
【0037】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採ることができる。
例えば上記実施形態では、1つの熱電素子22を用いて測温素子21の温度を調節するものを示したが、複数の熱電素子を用いるようにしてもよい。
【0038】
例えば図5(a)に示すように、温度調節機能付き鏡100は、1つの測温素子101と、4つの熱電素子111,112,113,114と、測温素子101と熱電素子111〜114を支持する基板121とを備える。なお、熱電素子111は第1電極131と第2電極141を備え、同様に、熱電素子112,113,114はそれぞれ第1電極132,133,134と第2電極142,143,144を備える。
【0039】
そして、第1電極131と第2電極141との間で熱電素子111を介して電流が流れるように第1電極131と第2電極141を電流源151に配線する。同様に、第1電極132,133,134と第2電極142,143,144との間で熱電素子112,113,114を介して電流が流れるように第1電極132,133,134と第2電極142,143,144を電流源151に配線する。
【0040】
更に、測温素子101と第1電極131とが隣り合うように熱電素子111を配置し、第2電極141と第1電極132が隣り合うように熱電素子112を配置し、第2電極142と第1電極133が隣り合うように熱電素子113を配置し、第2電極143と第1電極134が隣り合うように熱電素子114を配置される。
【0041】
これにより、測温素子101を基準とした熱電素子111,112,113,114を介する熱移動方向(図5(a)の矢印H1〜H5を参照)が同じになるように(矢印H1〜H5は、測温素子101から熱が出て行く方向を示している)、熱電素子111,112,113,114が直列に連なるように配置されるとともに、熱電素子111が測温素子101と隣接して配置される。
【0042】
このように熱電素子を配置することにより、或る熱電素子(例えば熱電素子111)が移動させた熱を、その後、熱拡散による移動よりも速く、この熱電素子に隣接された別の熱電素子(例えば熱電素子112)により更に移動させる。このため、1つの熱電素子を用いて、測温素子21を加熱または冷却する場合よりも、測温素子21から熱を移動させる速度を向上させることができる。
【0043】
或いは、図5(b)に示すように、温度調節機能付き鏡200は、1つの測温素子101と、4つの熱電素子111,112,113,114と、測温素子101と熱電素子111〜114を支持する基板122とを備える。そして、熱電素子111,112,113,114は、それぞれ異なる位置で、測温素子101と第1電極131,132,133,134が隣り合うように配置される。
【0044】
これにより、測温素子101に対してそれぞれ異なる位置で、測温素子101を基準とした熱電素子を介する熱移動方向(図5(b)の矢印H11〜H18を参照)が同じになるように(矢印H11〜H18は、測温素子101から熱が出て行く方向を示している)、測温素子101に対してそれぞれ隣接して配置される。
【0045】
このように熱電素子を配置することにより、複数の熱電素子が1つの測温素子101から同時に熱を移動させる。このため、1つの熱電素子を用いて、測温素子101を加熱または冷却する場合よりも、単位時間当たりに測温素子101から熱を移動させる量を多くすることができる。
【0046】
また上記実施形態では、不透明材料であるシリコンで構成された基板20を用いた温度調節機能付き鏡2に光を照射し、温度調節機能付き鏡2で反射した光を受光することにより露点を測定する露点計1を示したが、図6(a)に示すように、透明材料を用いた基板301上に測温素子21及び熱電素子22を形成した温度調節機能付き鏡300を備え、温度調節機能付き鏡300の裏面側から測温素子21に向けて光L31を照射し、測温素子21を透過した光L32を受光することにより露点を測定するようにしてもよい。
【0047】
また上記実施形態では、測温素子21及び熱電素子22が同一平面上に配置される温度調節機能付き鏡2を備える露点計1を示したが、図6(b)に示すように、基板401上に熱電素子422を配置し、更に熱電素子422の上に測温素子421を配置することにより、基板401の厚さ方向に熱を移動させる(図6(b)の矢印H41を参照)ようにした温度調節機能付き鏡400を備え、温度調節機能付き鏡400の表面側から測温素子421に向けて光L41を照射し、測温素子421で反射した光L42を受光することにより露点を測定するようにしてもよい。
【0048】
また上記実施形態では、温度調節機能付き鏡2の上方に発光素子11と受光素子12が配置される露点計1を示したが、図7(a)に示すように、基板501上に発光素子511と受光素子512と測温素子521と熱電素子522を一体形成し、発光素子511から測温素子521に向けて光L51を照射し、測温素子521で反射した光L52を受光素子512で受光することにより露点を測定するようにしてもよい。
【0049】
また上記実施形態では、制御回路50から電流を出力することにより発光素子11を発光させるとともに、受光素子12からの電気信号を制御回路50に入力することにより反射光の強度を検出して露点を測定する露点計1を示したが、図7(b)に示すように、光ファイバー613により外部から導かれた光L61を発光部611から温度調節機能付き鏡2に向けて照射するとともに、温度調節機能付き鏡2で反射した光L62を受光部612で受光し、更に、受光部612で受光した光L62を光ファイバー614により外部へ導くことによって、露点を測定するようにしてもよい。
【0050】
また上記実施形態では、温度調節機能付き鏡2を用いて露点を測定する露点計1を示した。しかし、露点計1で測定された露点における飽和水蒸気量と、被測定気体の温度における飽和水蒸気量とに基づいて、被測定気体の湿度を演算する処理を制御回路50のCPU51が行うことによって、湿度センサとして用いるようにしてもよい。この場合に、CPU51は、本発明の湿度演算手段に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】露点計1の概略構成を示す側面図である。
【図2】温度調節機能付き鏡2の概略構成を示す平面図である。
【図3】露点計1の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】露点計1の測定タイミングを示すチャートである。
【図5】温度調節機能付き鏡100,200の概略構成を示す平面図である。
【図6】温度調節機能付き鏡300,400の概略構成を示す平面図である。
【図7】別の実施形態の露点計の概略構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0052】
1…露点計、2,100,200,300,400…温度調節機能付き鏡、3…ケーブル群、4…発光・受光部、5…筺体、11,511…発光素子、12,512…受光素子、13〜15…遮光壁、16…支持部、20,121,122,301,401,501…基板、20a…凹部、20b…ダイヤフラム領域、20c…周縁領域、21,101,421,521…測温素子、22,111〜114,422,522…熱電素子、23…温調電極、24…非温調電極、25〜27…配線、31,32…熱電素子用ケーブル、33,34…測温素子用ケーブル、41,42…開口部、43…通気フィルタ、44…樹脂、50…制御回路、51…CPU、52,55…電流出力回路、53…電流入力回路、54…抵抗入力回路、56…A/Dコンバータ、57…D/Aコンバータ、611…発光部、612…受光部、613,614…光ファイバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡面の温度を調節する機能を有する温度調節機能付き鏡であって、
基板の面上に薄膜形成された熱電素子と、
前記基板の面上または前記熱電素子上に薄膜形成された測温素子とを備え、
前記熱電素子は、前記測温素子を加熱または冷却し、
前記測温素子の表面が前記鏡面として利用される
ことを特徴とする温度調節機能付き鏡。
【請求項2】
複数の前記熱電素子を有し、
複数の前記熱電素子の少なくとも一部は、
直列に連なるように配置されるとともに、前記測温素子と隣接する
ことを特徴とする請求項1に記載の温度調節機能付き鏡。
【請求項3】
複数の前記熱電素子を有し、
複数の前記熱電素子の少なくとも一部は、
前記測温素子に対してそれぞれ隣接して配置される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の温度調節機能付き鏡。
【請求項4】
前記測温素子は、前記基板の面上に薄膜形成される
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の温度調節機能付き鏡。
【請求項5】
前記基板は、前記測温素子及び前記熱電素子が形成されている前記面とは反対側の面において凹部が形成されたダイヤフラム領域と、このダイヤフラム領域以外の領域である周縁領域とを有し、
前記測温素子は、前記ダイヤフラム領域内に配置され、
前記熱電素子は、前記ダイヤフラム領域と前記周縁領域に跨って配置される
ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の温度調節機能付き鏡。
【請求項6】
前記基板は、不透明材料により構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の温度調節機能付き鏡。
【請求項7】
発光素子と、受光素子と、請求項6に記載の温度調節機能付き鏡とを備え、
前記発光素子及び前記受光素子は、前記発光素子が発する光を、請求項6に記載の温度調節機能付き鏡に反射させて、この反射光を前記受光素子が受光するように配置され、
前記発光素子から発光させた状態で、前記熱電素子により前記測温素子を冷却して、前記受光素子により受光された光の強度が低下した時に、前記測温素子により測定された温度を露点として演算する露点演算手段を備える
ことを特徴とする露点計。
【請求項8】
発光素子と、受光素子と、請求項6に記載の温度調節機能付き鏡とを備え、
前記発光素子及び前記受光素子は、前記発光素子が発する光を、請求項6に記載の温度調節機能付き鏡に反射させて、この反射光を前記受光素子が受光するように配置され、
前記発光素子から発光させた状態で、前記熱電素子により前記測温素子を冷却して、前記受光素子により受光された光の強度が低下した時に、前記測温素子により測定された温度を露点として演算する露点演算手段と、
この露点における飽和水蒸気量と、被測定気体の温度における飽和水蒸気量とに基づいて、被測定気体の湿度を演算する湿度演算手段とを備える
ことを特徴とする湿度センサ。
【請求項9】
前記基板は、透明材料により構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の温度調節機能付き鏡。
【請求項10】
発光素子と、受光素子と、請求項9に記載の温度調節機能付き鏡とを備え、
前記発光素子及び前記受光素子は、
前記発光素子が発する光を、請求項9に記載の温度調節機能付き鏡に透過させて、この透過光を前記受光素子が受光するように配置され、
前記発光素子から発光させた状態で、前記熱電素子により前記測温素子を冷却して、前記受光素子により受光された光の強度が低下した時に、前記測温素子により測定された温度を露点として演算する露点演算手段を備える
ことを特徴とする露点計。
【請求項11】
発光素子と、受光素子と、請求項9に記載の温度調節機能付き鏡とを備え、
前記発光素子及び前記受光素子は、
前記発光素子が発する光を、請求項9に記載の温度調節機能付き鏡に透過させて、この透過光を前記受光素子が受光するように配置され、
前記発光素子から発光させた状態で、前記熱電素子により前記測温素子を冷却して、前記受光素子により受光された光の強度が低下した時に、前記測温素子により測定された温度を露点として演算する露点演算手段と、
この露点における飽和水蒸気量と、被測定気体の温度における飽和水蒸気量とに基づいて、被測定気体の湿度を演算する湿度演算手段とを備える
ことを特徴とする湿度センサ。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−50376(P2009−50376A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218526(P2007−218526)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】