説明

測位システム、中継装置および測位装置

【課題】伝送効率を向上できる測位システムを得ること。
【解決手段】複数の探知情報に基づいて目標の測位を行う測位装置に対して探知情報を中継する中継装置を備えた測位システムにおいて、中継装置が、複数の探知情報を受信した場合に、2つの探知情報を単位とする全組合せについて、2つの探知情報を相対的にずらしながら比較し、情報パターンを抽出して保持する情報パターン比較部24と、2つの探知情報の情報パターンが保持されている場合に当該情報パターンを含ませた探知情報を生成し、一方、情報パターンが保持されていない場合は、2つの探知情報を用いて所定の符号化処理を行い、当該符号化結果を含ませた探知情報を生成する符号化部26と、2つの探知情報を単位とする全組合せについて、符号化部26にて生成された探知情報を送信する探知情報送信部27と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の中継装置を用いて目標位置の推定を行う測位システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、電波の放射を利用して目標位置の測位を行う方法については、従来から多くのものが知られている。その一例として、目標が放射する微弱な電波を複数の探知装置で受信し、これら複数の探知信号を参照して目標位置を推定する方法が知られている。しかしながら、こうした方法を採用する場合は、通信資源の制限があるにも関わらず探知信号の情報量が多いため、送付可能な探知信号が制限される。これに対し、下記特許文献1〜4では、探知信号情報から冗長な部分を削除する等して情報量を削減し、限られた帯域で伝送する方法が提案されている。
【0003】
具体的にいうと、下記特許文献1〜3では、単一センサのデータで目標位置の測位を行っている。この場合、センサデータにおいて削除可能な部分の推測が付きやすいため、特徴的な部分の抽出が容易である。また、下記特許文献4では、あるセンサが、探知信号とは別に送信情報を他のセンサに送付し、それを利用して複数センサのそれぞれが測位を行う。この場合、送信情報を複数装置間で共有することで、帯域の削減を実現している。
【0004】
また、伝送効率を向上させる他の手段として、ネットワークコーディング技術がある。従来のパケット通信では、各ノードは、入力情報を所望の宛先に向けて振り分ける交換処理を行うが、パケット内のユーザ情報には処理を施すことはなかった。これに対し、ネットワークコーディング技術では、各ノードが、交換に加えてコーディング(符号化)を行うことで、ネットワーク全体として効率的な伝送を可能とする(下記、非特許文献1〜3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−240845号公報
【特許文献2】特開2005−121426号公報
【特許文献3】特開平3−295485号公報
【特許文献4】特開平5−297125号公報
【非特許文献1】R.Ahlswede et. al., “Network information flow” IEEE trans. on Information Theory, vol.46, no.4, July, 2000,pp.1204-1216
【非特許文献2】山本幹著 “ネットワークコーディング” 電子情報通信学会誌 Vol.90,No.2,2007年2月,pp.111−116
【非特許文献3】S-Y. R. Li et. al., “Linear network coding,” IEEE trans. on Information Theory, vol.49, no. 2,Feb.2003, pp. 371-381
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数センサを用いる場合は、上記特許文献1〜3の場合と異なり、センサデータ個別の判断では特徴的な部分の推測が困難である。したがって、複数センサの場合は、単一センサの場合と異なる特徴データ抽出方法が必要となるが、これについては述べられていない。
【0007】
また、上記特許文献4では、複数のセンサが探知した情報を効率よく中継する処理については、特に述べられていない。
【0008】
また、上記非特許文献1〜3では、各ノードでデータに線形演算を行うことにより伝送を効率化することについて概念的に記載されているが、通信ネットワークにおける実際のオリジナルデータを想定した具体的な処理については述べられていない。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数ノードがネットワークを介して探知データを伝送する場合において、伝送効率を向上させることができる測位システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、測位対象である目標から放射される信号を探知情報として中継する複数の中継装置と、前記複数の中継装置により構成される中継ネットワークから得られる複数の探知情報を収集して前記目標の測位を行う測位装置と、を備える測位システムであって、前記中継装置は、複数の探知情報を受信した場合に、2つの探知情報を単位とするすべての組合せについて、2つの探知情報を相対的にずらしながら比較し、特徴的な一致または不一致を示す情報パターンが抽出された場合に当該情報パターンを保持する情報パターン比較手段と、前記情報パターンが保持されている場合に、当該情報パターンを第1の符号化結果として含ませた新たな探知情報を生成し、一方、前記情報パターンが保持されていない場合は、情報パターンを抽出できなかった前記2つの探知情報を用いて所定の符号化処理を行い、当該符号化結果を第2の符号化結果として含ませた新たな探知情報を生成する符号化手段と、前記2つの探知情報を単位とするすべての組合せについて、前記符号化手段にて生成されたいずれか一方の探知情報を送信する探知情報送信手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、複数の中継装置により複数の探知情報を受信した場合に、ネットワークコーディングによる符号化を行うこととしたので、可能な限り情報量を削減でき、効率的なデータ伝送を実現することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる測位システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態.
図1は、本実施の形態の測位システムの構成例を示す図である。図1の測位システムは、目標1を測位対象とし、探知中継装置2−m(m=1,2,…)と、測位装置3とを備え、各探知中継装置と測位装置3が通信ネットワーク4を介して接続されている。また、各探知中継装置および測位装置3は、空中線5を備える。
【0014】
図1の測位システムでは、目標1が放射する放射波を、複数の探知中継装置が受信する。複数の探知中継装置が受信した探知信号の情報(以下、探知情報)は、探知中継装置で中継され、通信ネットワーク4を介して測位装置3によって収集される。測位装置3は、収集した探知信号に基づいて、目標1の位置を推定する。通信ネットワーク4内では、探知情報はネットワークの状況に応じて適当な経路で伝送される。空中線5は、目標1からの反射波を受信する。また、探知中継装置間または各探知中継装置と測位装置3との間で、探知情報を交換する。
【0015】
また、上記各探知中継装置および測位装置3は、航空機や船舶などに搭載されて移動することを想定している。なお、これらは地上に固定されていてもよい。また、本実施の形態では、探知装置および中継装置の機能を有する探知中継装置と、測位装置とを設置する例を示すが、探知装置,中継装置,測位装置は、それぞれ一つの装置として設置されてもよい。また、探知装置,中継装置,測位装置の機能を兼ね備える装置を設置してもよい。
【0016】
図2および図3は、本実施の形態の測位システムの使用形態を模式的に示す図である。図2および図3では、探知中継装置として探知中継装置2−1および2−2のみを表示している。図2は、目標1が自己の目的のために放射する放射波を利用して測位を行う場合であり、図3は、たとえば、放送波などの一般の電波に対する目標1からの反射波を利用する場合である。
【0017】
図4は、探知中継装置2−mの構成例を示すブロック図である。探知中継装置は、探知信号受信部21と、情報記憶部22と、遅延付加部23と、情報パターン比較部24と、情報パターン記憶部25と、符号化部26と、探知情報送信部27と、を備える。探知信号受信部21は、空中線5から探知信号を受信すると、その探知信号を情報記憶部22に保存する。遅延付加部23は、情報記憶部22から探知信号を読み出し、シフトレジスタとカウンタの組合せにより決まる数種類の値を付加して遅延させる。情報パターン比較部24は、遅延が付加された後の探知信号同士を比較し、信号のパターンの特徴を検出した場合、これを情報パターン記憶部25に保存する。符号化部26は、探知信号を線形演算により符号化し、また、探知情報を作成して探知情報送信部27に出力する。探知情報送信部27は、探知情報を送信する。
【0018】
図5は、測位装置3の構成例を示すブロック図である。測位装置は、探知情報受信部31と、情報記憶部32と、復号部33と、測位部34とを備える。また、空中線5を備える。探知情報受信部31は、空中線5経由で複数の探知情報(たとえば、探知情報#1〜#n)を受信すると、それらの探知情報を情報記憶部32に保存する。復号部33は、探知情報受信部31からの指令により、情報記憶部32から探知情報を取得して復号し、元の探知信号、すなわち、目標1からの放射波が最初に探知中継装置において受信されたときの信号を取得する。測位部34は、復号された探知信号を用いて、目標1の位置を推定し、測位結果を出力する。
【0019】
図6は、本実施の形態の測位システムが想定するネットワーク構成の一例を示す概念図である。ここでは、探知中継装置は多段構成となっており、複数の探知中継装置によって中継された探知情報は、測位装置により収集される。
【0020】
図6において、探知中継装置には、#1から#11の番号を付す。また、測位装置として、測位装置3Aおよび3Bを備えることとする。目標1から放射される放射波s1,s2,s3は、それぞれ一段目の探知中継装置#1,#2,#3に向けて送信される。放射波s1,s2,s3は、一段目の探知中継装置により、探知信号X1,X2,X3として中継され、二段目の探知中継装置#4,#5,#6,#7に向けて送信される。探知信号X1,X2,X3は、二段目の探知中継装置で情報処理されて探知情報として中継され、三段目の探知中継装置#8,#9,#10,#11に向けて送信される。さらに、これら探知情報は三段目の探知中継装置により中継され、測位装置3Aまたは3Bに向けて送信される。
【0021】
ここで、以上のように構成された測位システムの動作について、探知信号の流れを中心に説明する。図7は、測位システムにおける信号の伝送処理を示すフローチャートである。図6において目標1から放射された放射波は、一段目の探知中継装置,二段目の探知中継装置,三段目の探知中継装置によって中継され、測位装置に達する。図7では、ステップS2〜S4が一段目の探知中継装置による処理,ステップS5が二段目以降の探知中継装置による処理,ステップS6〜S9が測位装置による処理である。なお、本実施の形態では、探知中継装置が三段である例を示すが、さらに多段であっても同様である。
【0022】
図7において、目標1が放射波を放射すると(ステップS1)、一段目の探知中継装置の探知信号受信部21がこれを探知信号として受信する(ステップS2)。そして、受信した探知信号を探知情報としてそれぞれの情報記憶部22に記憶する(ステップS3)。なお、図6の例では、一段目の探知中継装置は探知信号を1つしか受信しないので、探知信号受信部21が、遅延付加部23,情報パターン比較部24,符号化部26にその旨を通知する。この通知を受けた遅延付加部23,情報パターン比較部24は、処理を停止させる。また、この通知を受けた符号化部26は、符号化を行わず、情報記憶部22から探知情報を読み出し、探知情報送信部27に出力する。探知情報送信部27は、通信ネットワーク4を介して、探知情報を次の段(二段目)の探知中継装置に送信する(ステップS4)。つぎに、二段目以降の探知中継装置による処理が行われる(ステップS5)。
【0023】
図8は、二段目以降(ここでは、二段目および三段目)の探知中継装置における処理の詳細を説明するためのフローチャートである。ここでは、図6の探知中継装置#5を例にとり説明する。探知中継装置#5は、目標1から放射された放射波を、探知中継装置#1および#2を介して探知情報X1およびX2として受信する。
【0024】
図8において、探知中継装置#5の探知信号受信部21は、前段の探知中継装置からの探知情報X1およびX2を受信すると、各探知情報を情報記憶部22に保存する(ステップS11)。つぎに、遅延付加部23は、情報記憶部22から探知情報X1およびX2を読み出し、これらの探知情報X1およびX2に対して遅延を付加する(ステップS12)。なお、この遅延は、探知情報X1およびX2を相対的にずらすために付加するので、探知情報X1およびX2の両方に付加する必要はなく、たとえば、いずれか一方に対してのみ付加することとしてもよい。本実施の形態では、片方のデータ、たとえば、探知信号X1のタイミングを、カウンタを用いて順次ずらすこととし、遅延を付加した後の探知情報X1と遅延を付加していない探知情報X2を情報パターン比較部24へ出力する。そして、情報パターン比較部24は、受け取った探知情報同士を順次比較し(ステップS12)、探知情報パターンの特徴(後述する特徴的な一致または不一致に相当)を抽出できた場合に(ステップS13:Yes)、これを情報パターンとして情報パターン記憶部25に保存し(ステップS14)、その旨を符号化部26に通知する。なお、上記ステップS12,S13による情報パターンを生成する処理は、ネットワークコーディングによる符号化に相当する。一方、探知情報パターンの特徴を抽出できなかった場合(ステップS13:No)、情報パターン比較部24は、その旨を符号化部26に通知する。
【0025】
ここで、情報パターン比較部24によって実行される探知情報の比較処理の詳細について説明する。図9−1は、探知情報X1の波形例を示す図であり、図9−2は、探知情報X2の波形例を示す図である。これらの図において、横軸は時間、縦軸は探知情報の振幅である。また、時刻“T0”を基準時刻とする。探知情報X1および探知情報X2は、同一の目標1から放射された放射波を、探知中継装置で受信して間隔dtでサンプリングしたものであり、多くの部分の振幅が等しくなっている。また、図9−3および図9−4は、探知情報X1および探知情報X2のパターンを比較するための図である。図9−3は、図9−1の探知情報X1と図9−2の探知情報X2を重ねた状態を示す図である。図9−3に示すように、探知情報X1と探知情報X2は、時刻T1から時刻(T1+T2)の期間にわたって異なる値を示す。また、図9−4は、図9−1の探知情報X1を1サンプリング時間単位(dt)だけ遅延させた信号と、図9−2の探知情報X2とを重ねた状態を示す図である。図9−4では、探知情報X1(dt遅れ)と探知情報X2とは、時刻(T1+dt)から時刻(T1+dt+T2)の期間にわたってほぼ一致した値を示す。探知情報X1とX2との間の特徴的な一致または不一致は、たとえば、遅延を付加した探知情報同士の排他的論理和をとり、その結果を検証することで抽出できる。
【0026】
得られた比較結果は、探知中継装置の情報パターン比較部24が情報パターン記憶部25内の情報パターンテーブルに記録する。図10は、情報パターンテーブルのデータ例を示す図である。情報パターンテーブルは、たとえば、探知情報その1(X1)の識別子,探知情報その2(X2)の識別子,各探知情報に対して付加した遅延,特徴的なパターンがみられた開始時刻,特徴的なパターンが継続してみられた時間,パターンの種別、などのデータを保存する。パターンの種別は、たとえば「不一致/一致」を登録する。図9−3の例では、探知情報X1(遅延ゼロ)と探知情報X2(遅延ゼロ)が、時刻T1から時刻(T1+T2)の期間にわたって所定の範囲を超える不一致(特徴的な不一致)を示しているので(図9−3参照)、図10の1件目のエントリのように情報パターンを登録する。また、図9−4の例では、探知情報X1(遅延1)と探知情報X2(遅延ゼロ)が、時刻T1+1から時刻(T1+1+T2)の期間にわたって所定の範囲に収まる一致(特徴的な一致)を示しているので、図10の2件目のエントリのように情報パターンを登録する。
【0027】
以上のようにステップS13およびS14の処理終了後、情報パターン比較部24より通知を受けた符号化部26は、中継する探知情報について、情報パターン記憶部25の情報パターンテーブルに登録があるか否かを判定する(ステップS15)。そして、情報パターンが存在する場合は(ステップS15:Yes)、その情報パターン(たとえば、図10の登録データ)をネットワークコーディングによる符号化結果として、自装置が転送する探知情報にセットする(ステップS16)。一方、情報パターンがない場合は(ステップS15:No)、情報記憶部22から、ステップS11にて保存した元の探知情報(探知情報X1およびX2)を読み出し、これらを用いて、ネットワークコーディングによる符号化を行い、その符号化結果を自装置が転送する探知情報にセットする(ステップS17)。上記符号化は、上述の非特許文献1ないし3に示される一般的な手法に基づく。つぎに、符号化部26は、得られた探知情報を探知情報送信部27へ出力し、探知情報送信部27は、受け取った探知情報を、通信ネットワーク4を介して次段の探知中継装置に送信する(ステップS18)。なお、探知情報として情報パターンを伝送する場合は、小さいリソースによる情報伝送が可能となる。また、上記ステップS16で情報パターンがセットされた探知情報および上記ステップS17で符号化結果がセットされた探知情報には、それぞれそれらを識別するためのフラグを含ませる。また、上記探知情報には、さらに、どの探知中継装置において得られたかを示す情報も含ませる。
【0028】
また、三段目以降の探知中継装置について、たとえば、図6の#9の探知中継装置を例にとり説明する(図7のフローチャート:ステップS5)。ここでは、上記探知中継装置#5と異なる処理について説明する。また、探知中継装置#9が、探知中継装置#4,#5,#6から、3つの探知情報を受信した場合を想定する。たとえば、探知中継装置#9は、3つ以上の上記ステップS17による符号化結果がセットされた探知情報が得られた場合、2つずつの組合せ全てについて図8の処理を行う。また、探知中継装置#9は、探知中継装置#4,#5,#6から得られる探知情報のうち2つが、上記ステップS17による符号化結果がセットされた探知情報であった場合、この組み合わせについて図8の処理を行う。一方、探知中継装置#4,#5,#6から得られる探知情報のうち1つが、上記ステップS17による符号化結果がセットされた探知情報であった場合、探知中継装置#9は、情報パターン抽出,符号化などの処理は行わず、その探知情報については一段目の探知中継装置と同様の処理を行う。また、探知情報から情報パターンを得た場合、情報パターンは十分に情報量が削減されているので、それ以上処理は行わず、その探知情報については一段目の探知中継装置と同様の処理を行う。
【0029】
なお、図6の例では、一段目の探知中継装置のみが放射波を探知信号として受信するが、実際には二段目以降の探知中継装置が直接探知信号を受信する場合もある。この場合、直接受信した探知信号と前段の探知中継装置から得られる探知情報(上記ステップS17による符号化結果がセットされた探知情報)を同列に扱う(図8のステップS11)。そして、これらを複数受信した場合は、上記同様、図8の処理を行う。
【0030】
上記のように、二段目以降の探知中継装置の処理が終了後(図7のフローチャート:ステップS5)、測位装置(ここでは、測位装置3A)の探知情報受信部31は、前段の探知情報装置から探知情報(探知情報#1〜#n)を受信すると(ステップS6)、その情報を情報記憶部32に保存する。そして、復号部33は、収集した探知情報に基づいて、元の探知信号を復号する(ステップS7)。ここでの復号は、たとえば、上述の非特許文献1ないし3に示される一般的な手法に基づく。最後に、測位部34は、復号された探知情報X1およびX2に基づいて目標位置の推定を行い(ステップS8)、得られた測位結果を出力する(ステップS9)。
【0031】
なお、探知中継装置において、ネットワークコーディングによる符号化を行うと、タイミングによっては探知情報1,X2の情報が高い精度(所定の確率以上)で一致する場合がある。この場合、2つの情報の排他的論理和によって得られるビットのほとんどがゼロになる。そこで、本実施の形態では、上記ほとんどがゼロになるビット列のデータを送る代わりに、1のビット位置を指定することにより圧縮したデータを伝送する。これにより、データの伝送量を大幅に削減することができる。なお、このように削減したデータを伝送しても、測位装置におけるデータの復号は、通常のネットワークコーディングと同様に実現できる。
【0032】
このように、本実施の形態の測位システムでは、目標の放射波を複数の探知中継装置で探知信号として受信し、ネットワークコーディングによる符号化を行う(上記ステップS12およびS13による探知情報を時系列的にずらしながら線形演算を行うことにより情報パターンを抽出する符号化と、上記ステップS17による情報パターンが得られなかった場合の符号化、に相当)。そして、得られた符号化信号を探知情報として伝送する。また、測位装置では、収集した探知情報を復号し、復号結果に基づいて測位結果を得る。これにより、情報パターンが抽出できた場合は、その情報パターンを伝送することになるので、情報量の多い探知信号自体の伝送を回避することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態では、複数の探知中継装置により複数の探知情報を受信した場合、ネットワークコーディングによる符号化を行うことによって可能な限り情報量を削減し、効率的なデータ伝送を行うこととした。これにより、伝送効率を向上させることができるので、通信ネットワークの使用帯域の制限により多量のデータ送受が困難な場合であっても、複数の探知中継装置から得られる情報を用いた測位が可能となる。さらに、目標が自ら放射する放射波を利用する場合等、探知信号が微弱な場合であっても、複数の探知信号を収集することにより、目標の高精度な測位が実行可能である。また、その場合は、反射波を得るために目標に向かって基準電波を発射する必要がないため、目標側から探知装置の存在を知られてしまう危険性を低下させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明にかかる測位システムは、通信ネットワークの帯域が制限される場合に有用であり、特に、多量のデータを収集して高精度の測位を行う場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】測位システムの構成例を示す図である。
【図2】測位システムの使用形態を模式的に示す図である。
【図3】測位システムの使用形態を模式的に示す図である。
【図4】探知中継装置の構成例を示すブロック図である。
【図5】測位装置の構成例を示すブロック図である。
【図6】測位システムが想定するネットワーク構成の一例を示す概念図である。
【図7】測位システムにおける信号の伝送処理を示すフローチャートである。
【図8】二段目以降の探知中継装置における処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図9−1】探知情報その1の波形例を示す図である。
【図9−2】探知情報その2の波形例を示す図である。
【図9−3】探知情報その1および探知情報その2のパターンを比較するための図である。
【図9−4】探知情報その1および探知情報その2のパターンを比較するための図である。
【図10】情報パターンテーブルのデータ例を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 目標
2−m 探知中継装置
3,3A,3B 測位装置
4 通信ネットワーク
5 空中線
21 探知信号受信部
22 情報記憶部
23 遅延付加部
24 情報パターン比較部
25 情報パターン記憶部
26 符号化部
27 探知情報送信部
31 探知情報受信部
32 情報記憶部
33 復号部
34 測位部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位対象である目標から放射される信号を探知情報として中継する複数の中継装置と、前記複数の中継装置により構成される中継ネットワークから得られる複数の探知情報を収集して前記目標の測位を行う測位装置と、を備える測位システムであって、
前記中継装置は、
複数の探知情報を受信した場合に、2つの探知情報を単位とするすべての組合せについて、2つの探知情報を相対的にずらしながら比較し、特徴的な一致または不一致を示す情報パターンが抽出された場合に当該情報パターンを保持する情報パターン比較手段と、
前記情報パターンが保持されている場合に、当該情報パターンを第1の符号化結果として含ませた新たな探知情報を生成し、一方、前記情報パターンが保持されていない場合は、情報パターンを抽出できなかった前記2つの探知情報を用いて所定の符号化処理を行い、当該符号化結果を第2の符号化結果として含ませた新たな探知情報を生成する符号化手段と、
前記2つの探知情報を単位とするすべての組合せについて、前記符号化手段にて生成されたいずれか一方の探知情報を送信する探知情報送信手段と、
を備えることを特徴とする測位システム。
【請求項2】
前記符号化手段は、前記所定の符号化処理としてネットワークコーディングの処理を行い、当該処理において、処理対象の2つの探知情報が所定の比率以上の割合で一致する場合、当該処理結果として得られるデータを圧縮し、圧縮後のデータを前記第2の符号化結果とすることを特徴とする請求項1に記載の測位システム。
【請求項3】
前記測位装置は、
前記収集した複数の探知情報に基づいて元の信号を復号する復号手段と、
前記復号後の信号に基づいて前記目標の測位を行う測位手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の測位システム。
【請求項4】
前記第1の符号化結果を含む探知情報を受信した中継装置は、当該受信した探知情報を中継し、当該探知情報を比較対象の探知情報として扱わないことを特徴とする請求項1、2または3に記載の測位システム。
【請求項5】
前記目標から放射される信号を受信した中継装置は、前記第2の符号化結果を含む探知情報を受信していない場合、当該受信した信号を新たな探知情報として転送し、一方、前記第2の符号化結果を含む探知情報を受信している場合、当該受信した信号を前記比較対象の探知情報として扱うことを特徴とする請求項4に記載の測位システム。
【請求項6】
前記中継装置は、目標自身が放射した信号を受信可能とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の測位システム。
【請求項7】
前記中継装置は、所定の基準信号に対する反射波を、前記目標から放射される信号として受信可能とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の測位システム。
【請求項8】
複数の中継装置により構成される中継ネットワークから得られる複数の探知情報に基づいて測位対象である目標の測位を行う測位装置、とともに測位システムを構成する、前記中継ネットワーク内の中継装置であって、
複数の探知情報を受信した場合に、2つの探知情報を単位とするすべての組合せについて、2つの探知情報を相対的にずらしながら比較し、特徴的な一致または不一致を示す情報パターンが抽出された場合に当該情報パターンを保持する情報パターン比較手段と、
前記情報パターンが保持されている場合に、当該情報パターンを第1の符号化結果として含ませた新たな探知情報を生成し、一方、前記情報パターンが保持されていない場合は、情報パターンを抽出できなかった前記2つの探知情報を用いて所定の符号化処理を行い、当該符号化結果を第2の符号化結果として含ませた新たな探知情報を生成する符号化手段と、
前記2つの探知情報を単位とするすべての組合せについて、前記符号化手段にて生成されたいずれか一方の探知情報を送信する探知情報送信手段と、
を備えることを特徴とする中継装置。
【請求項9】
前記符号化手段は、前記所定の符号化処理としてネットワークコーディングの処理を行い、当該処理において、処理対象の2つの探知情報が所定の比率以上の割合で一致する場合、当該処理結果として得られるデータを圧縮し、圧縮後のデータを前記第2の符号化結果とすることを特徴とする請求項8に記載の中継装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の複数の中継装置により構成される中継ネットワークから得られる複数の探知情報を収集する機能を有する測位装置であって、
前記収集した複数の探知情報に基づいて、測位対象である目標が放射した信号を復号する復号手段と、
前記復号後の信号に基づいて前記目標の測位を行う測位手段と、
を備えることを特徴とする測位装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−8377(P2010−8377A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171321(P2008−171321)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】