説明

測定セル及びその測定セルを用いたガス分析計

【課題】他の部材、機器への影響を及ぼすことなく、透過窓31全体を均一且つ高温に熱することができるガス分析計を提供する。
【解決手段】試料ガスが供給される測定セル3に設けられた透過窓31から光を検出して、前記試料ガスを分析するガス分析計1であって、前記透過窓31に蒸着して形成された膜状発熱体61と、前記膜状発熱体61に接触し、対向して設けられた一対の電極と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測定セルの透過窓の汚れを低減、またはその汚れを防止する機能を有するガス分析計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のガス分析計は、試料ガスが供給される測定セルと、この測定セルの一方側に設けられ、当該セルに測定光を照射する光源と、前記測定セルの他方側に設けられ、測定セルを透過した透過光を検出する光検出器と、この光検出器からの検出信号を取得して、前記試料ガス中の測定成分の濃度等を算出する演算部とを備えている。そして、測定セルには、光源側と検出器側にそれぞれ透過窓とを備えている。
【0003】
このようなガス分析計においては、試料ガスが測定セルの透過窓に吸着して、光量が低下してしまい、測定精度の低下が生じるという問題がある。
【0004】
従来、この問題を解決するために、特許文献1に示すように、透過窓に不活性ガス又はエアーを吹き付けて、エアーカーテンを形成し、試料ガスが透過窓に到達することを遮蔽する方法が考えられている。
【0005】
しかしながら、それを実現するための構造が複雑になってしまうという問題がある。また、オペレーションガスが必要であるという問題もある。
【0006】
また、セルや分析計全体を加熱し透過窓を間接的に加熱して、透過窓に試料ガスが吸着しないようにする方法が考えられている。
【0007】
しかしながら、それ相当のエネルギや装備を必要とし、透過窓を所定温度まで加熱する為には、透過窓の近傍をそれ以上に加熱する必要があり、他の機器へ悪影響を及ぼすという問題がある。
【0008】
さらに、透過窓にヒータを貼り付けることにより透過窓を加熱して、透過窓に試料ガスが吸着しないようにする方法が考えられている。
【0009】
しかしながら、局所的にヒータを貼り付けているので、透過窓の温度分布が不均一となり、透過窓を高温にする必要がある場合には、局所的に過熱になってしまい、絶縁体や透過窓が破損してしまうという問題がある。
【特許文献1】特開平10−104154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、低電力かつ簡単な装備で、透過窓全体を均一かつ適温に加熱することにより窓の汚れや曇りを防止して、光量低下を防ぎ、高精度の分析を可能とすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明に係る測定セルは、試料ガスが供給される測定セルであって、透過窓と、前記透過窓に蒸着して形成された膜状発熱体と、前記膜状発熱体に接触し、対向して設けられた電極と、を備えていることを特徴とする。ここで「蒸着」とは、物理蒸着(例えば、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティング等)や化学蒸着が含まれる。
【0012】
このようなものであれば、透過窓自体に膜状発熱体を蒸着しているので、低電力かつ簡単な装備でありながら、透過窓全体を均一且つ適温に加熱することができる。これにより、透過窓に水(HO)、炭化水素(HC)等の各種ガスが吸着しないようにすることができ、透過窓の汚れや曇りを防止することができる。したがって、光量低下を防ぎ、高精度の分析を可能とすることができる。
【0013】
セル内部に膜状発熱体を設けると試料ガスによって腐食されてしまう。これを好適に防止するためには、前記膜状発熱体が、前記透過窓の外面に形成されていることが望ましい。
【0014】
排ガス測定において、特に高沸点HCの透過窓への吸着を好適に防止するためには、前記膜状発熱体が、前記透過窓を100℃〜200℃に熱するものであることが望ましい。
【0015】
前記発熱体を全面均一に発熱させるためには、前記電極が、略1/4円弧状をなすものであることが好適である。
【0016】
また、本発明の測定セルを用いてガス分析を行うガス分析計であれば、高精度かつ高S/Nの分析を行うことができる。
【0017】
発熱体の温度を調節可能とするためには、前記電極に印加する電圧を調節する調節部を備えていることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
このように構成した本発明によれば、低電力かつ簡単な装備で、透過窓全体を均一かつ適温に加熱することにより窓の汚れや曇りを防止して、光量低下を防ぎ、高精度の分析を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明のガス分析計の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図1は、本実施形態に係るガス分析計1の模式的構成図であり、図2は、透過窓31及び膜状発熱体61を示す側面図である。
【0020】
<装置構成>
本実施形態に係るガス分析計1は、紫外線吸収法を用いて排ガス(試料ガス)中に含まれるNO(測定成分)の濃度を測定するものであり、図1に示すように、NOの吸光波長帯域の紫外光を照射する紫外光源2と、試料ガスが供給される測定セル3と、その測定セル3を透過した光を検出する光検出部4と、その光検出部4から検出信号を受信して所定の演算を行う演算部5と、を備えている。
【0021】
以下、各部2〜5について説明する。
【0022】
紫外光源2は、350nm〜450nmの波長帯域を有する紫外光を照射するものである。
【0023】
測定セル3は、中空柱状のものであり、その両端部は、可視光透過性及び紫外光透過性を良好な材料(例えば石英等)から形成された透過窓31により封止されている。また、その側周面には、試料ガスを供給するための試料導入口、及び試料ガスを排出するための試料排出口が設けられている。
【0024】
光検出部4は、測定セル3の他端側に設けられており、例えば光電子増倍管などから構成することができる。そして、光検出部4は、検出信号を演算部5に出力する。
【0025】
演算部5は、光検出部4から検出信号を取得して所定の演算を行い、NOの吸光度及びその濃度を算出するものであり、その機器構成は、コンピュータ及びアナログ又はデジタル回路等の電気回路から構成されている。
【0026】
しかして、本実施形態に係るガス分析計1は、図1及び図2に示すように、透過窓31に透過窓加熱手段6を備えている。
【0027】
その透過窓加熱手段6は、透過窓31に蒸着して形成された膜状発熱体61と、前記膜状発熱体61に接触し、対向して設けられた一対の電極62と、その電極62に電圧を印加する電源(図示しない)とを備えている。電源及び電極62とは、導線63により電気的に接続されている。
【0028】
膜状発熱体61は、前記透過窓31の外面に形成されている。具体的には、紫外光源2からの紫外光の光路上に設けられている。つまり、透過窓31と同心円状に、紫外光の通過領域Aを覆うように形成されている(図2参照)。
【0029】
この発熱体61は、透過窓31の外面に物理蒸着法又は化学蒸着法を用いて均一に成膜された光透過性を有する薄膜である。具体的には、酸化亜鉛系等の透明導電膜である。
【0030】
そして、電極62に電流が流れることにより、透過窓31全体、特に発熱体が蒸着されている領域を、試料ガス中のHCの吸着を防ぐ温度、つまり100℃〜200℃に加熱するものである。
【0031】
一対の電極62は、図2に示すように、膜状発熱体61の側周端に接触して設けられている。それらの電極62は、電流を流したときに、発熱体61が均一な温度分布となるように構成されており、具体的には、各電極62が、連続した略1/4円弧状をなし、透過窓31の中心軸に対して軸対称となるように配置されている。
【0032】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係るガス分析計1によれば、透過窓31自体に膜状発熱体61を蒸着しているので、簡単な装備でありながら、透過窓31全体を均一且つ高温に加熱することができる。これにより、透過窓31に水(HO)、炭化水素(HC)等の各種ガスが吸着しないようにすることができ、透過窓31の汚れを防止することができる。また、透過窓31自体を発熱させているので、所望の面積を高温加熱するのに、数Wの電力で済み、透過窓31の汚れ防止を効率よく実現することができる。さらに、透過窓31の近傍に設けられている光源2、光検出部4などへの温度影響を少なくすることができる。
【0033】
また、膜状発熱体61を透過窓31の外面に形成しているので、試料ガスによる腐食を防止することができる。
【0034】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。以下の説明において前記実施形態に対応する部材には同一の符号を付すこととする。
【0035】
例えば、前記実施形態では、紫外線吸収法を用いたガス分析計1であったが、これに限られることはなく、赤外線吸収法又は可視光吸収法等のその他の吸光光度法又は化学発光測定方式を用いたものであって良い。
【0036】
また、前記実施形態では、膜状発熱体61を透過窓31の外面に形成しているが、その他、内面に設けるものであっても良いし、あるいは、透過窓31を2層構造にしたりガラスコーティングして、その内部に膜状発熱体61を挟み込むように構成するようにしても良い。
【0037】
さらに、前記実施形態のガス分析計1は、電極62に印加する電圧を調節する調節部をさらに備えたものであって良い。これならば、電極62に印加する電圧を調節することにより、透過窓31の温度を調節することができ、付着しやすい物質などを選択的に付着しないようにすることができる。
【0038】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係るガス分析計の模式構成図。
【図2】同実施形態における透過窓及び膜状発熱体を示す側面図。
【符号の説明】
【0040】
1 ・・・ガス分析計
2 ・・・紫外光源
3 ・・・測定セル
31・・・透過窓
4 ・・・光検出部
5 ・・・演算部
61・・・膜状発熱体
62・・・電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスが供給される測定セルであって、
透過窓と、
前記透過窓に蒸着して形成された膜状発熱体と、
前記膜状発熱体に接触し、対向して設けられた電極と、を備えている測定セル。
【請求項2】
前記膜状発熱体が、前記透過窓の外面に形成されている請求項1記載の測定セル。
【請求項3】
前記電極が、略1/4円弧状をなすものである請求項1又は2記載の測定セル。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の測定セルを用いたガス分析計。
【請求項5】
前記電極に印加する電圧を調節する調節部を備えている請求項4記載のガス分析計。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−164304(P2008−164304A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350659(P2006−350659)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】