説明

測定プログラム起動方法

【課題】 試験装置において動作する測定プログラムを不正に利用されるのを適正に防止できる測定プログラム起動方法を提供する。
【解決手段】 試験装置に接続される保護デバイス10の書き換え不可領域には、試験装置における測定を行う測定プログラム20の起動制御を行う起動制御プログラムと固定情報が記憶され、書き換え可能領域には以前の測定に関する情報が記憶され、通信処理手段案12が保護デバイス10から固定情報及び以前の測定に関する情報を取得し、保護デバイス一致判定手段13が保護デバイス10を適正と判定すると、起動判定手段14及び起動許可手段15が、測定プログラム20の起動を許可する測定プログラム起動方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機の性能を測定する試験装置に係り、特に、試験装置で用いられる測定プログラムの不正使用を防止できる測定プログラム起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
無線機の性能を測定する試験システムについて、開発対象であるシステム試験装置は、汎用測定器、専用測定器などの各種測定器を制御して、試験対象器材の試験とそれに伴う準備、結果等を含めた一連の動作、操作を実施する装置である。
【0003】
試験装置であるため、実質的には試験対象器材や汎用測定器等がないと動作しないが、開発段階(特にPC(コンピュータ)側アプリ(アプリケーション))において、上記器材がないと動作しないということでは、開発が進まない。
【0004】
そこで、代替として動作することができる測定器代替ソフト(ソフトウェア)を作成して開発しているのが実状である。
代替ソフトは、PC上で動作し、測定器の代わりをソフトウェアで実現するものであり、設定した各種情報を本体ソフト(測定プログラム)に必要なときに必要な情報を送信して動作させるものである。
【0005】
開発段階において、専用試験装置を外部製作会社に作成してもらうことがあるが、開発の効率を向上させる目的で、本体ソフト等を外部製作会社に貸し出すことになる。
ここで、貸し出した本体ソフト等が数量と技術の面から複製され、不正に使用されないように対応する必要がある。
【0006】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2008−5457号公報「無線システム」(出願人:株式会社日立国際電気)がある(特許文献1)。
特許文献1には、通信方式を変更可能な無線システムにおいて、外部記憶装置には複数の通信方式に対応した複数のソフトウェアが記憶され、無線通信装置は外部記憶装置を装着した状態で、ユーザが選択した通信方式に対応するソフトウェアを起動させることが示されている。
【0007】
更に、セキュリティ向上のために、ユーザが入力したユーザ情報と無線通信装置内のセキュリティ情報記憶部に予め記憶されたユーザ情報とを照合してユーザ認証を行い、ユーザが認証された場合に、ソフトウェアを起動させることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−5457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の技術で説明したように、専用試験装置を作成する外部製作会社に本体ソフト等を貸し出した場合に、それらソフトウェアが不正に複製されて不正に使用されないように使用制限を掛ける必要があり、その適正な対応が求められていた。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、試験装置において動作する測定プログラムを不正に利用されるのを適正に防止できる測定プログラム起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、無線機の性能を測定する試験装置における測定プログラムの起動方法であって、試験装置に接続される保護デバイスには書き換え可能領域と書き換え不可領域とが設けられ、当該試験装置における測定プログラムの起動制御を行う起動制御プログラムが書き換え不可領域に記憶され、書き換え不可領域には起動判定に用いられる情報が記憶され、書き換え可能領域には以前の測定に関する情報が記憶され、起動制御プログラムの実行により実現される起動判定手段が、書き換え不可領域に記憶された情報及び書き換え可能領域に記憶された情報に基づいて測定プログラムの起動を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、試験装置に接続される保護デバイスには書き換え可能領域と書き換え不可領域とが設けられ、当該試験装置における測定プログラムの起動制御を行う起動制御プログラムが書き換え不可領域に記憶され、書き換え不可領域には起動判定に用いられる情報が記憶され、書き換え可能領域には以前の測定に関する情報が記憶され、起動制御プログラムの実行により実現される起動判定手段が、書き換え不可領域に記憶された情報及び書き換え可能領域に記憶された情報に基づいて測定プログラムの起動を制御する測定プログラムの起動方法としているので、試験装置において動作する測定プログラムを不正に利用されるのを適正に防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る試験装置における処理手段を示す概略図である。
【図2】測定プログラム起動処理の前半のフローチャートである。
【図3】測定プログラム起動処理の後半のフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る測定プログラム起動方法は、試験装置に接続される保護デバイスには書き換え可能領域と書き換え不可領域とが設けられ、書き換え不可領域には、当該試験装置における測定プログラムの起動制御を行う起動制御プログラムと起動判定に用いられる情報が記憶され、書き換え可能領域には以前の測定に関する情報が記憶され、起動制御プログラムの実行により実現される起動判定手段が、書き換え不可領域に記憶された情報及び書き換え可能領域に記憶された情報が適正であれば、測定プログラムの起動を許可するようにしているので、試験装置において動作する測定プログラムを不正に利用されるのを適正に防止できるものである。
【0015】
[試験装置]
本発明の実施の形態に係る測定プログラムが起動される試験装置について説明する。
本発明の実施の形態に係る試験装置(本装置)は、基本的にはコンピュータによって構成されるものであり、内部構成としては、CPU(Central Processing Unit)等の制御部、ワークメモリとしての主メモリ、必要な情報を記憶する記憶部、更に作成されたハードウェア(保護デバイス)にアクセス可能な入出力部を備えている。
【0016】
[保護デバイス]
保護デバイスは、CPUとメモリを搭載し、メモリは、書き換え可能領域と書き換え不可領域を備える。
書き換え不可領域には、測定プログラムの起動を制御するプログラムと起動を許可するためのキーコードとなる固定情報を記憶する。
また、書き換え可能領域には、最新の測定結果の情報を基に作成されたデータ(通信データ)を記憶する。
【0017】
[試験装置の処理手段:図1]
次に、本装置の処理手段について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る試験装置における処理手段を示す概略図である。
本装置は、図1に示すように、メイン処理を行う測定プログラム20が装置(PC)にインストールされ、保護デバイス10と測定プログラム20との間で、起動制御を行うプログラムが動作するようになっている。
【0018】
本装置で起動制御を行うプログラムによって実現される手段には、通信データ生成手段11と、通信処理手段12と、保護デバイス一致判定手段13と、起動判定手段14と、起動許可手段15等がある。
【0019】
当該起動制御を行うプログラムは、通常、保護デバイス10の書き換え不可領域に記憶され、測定プログラムを起動する時に、保護デバイス10の書き換え不可領域から本装置に読み込まれ、動作可能となる。
【0020】
[各処理手段]
[通信データ生成手段11]
通信データ生成手段11は、測定プログラム20から最新の測定結果を入力し、その測定結果に基づいて通信データを生成し、通信処理手段12に出力すると共に、保護デバイス一致判定手段13にも出力する。
【0021】
[通信処理手段12]
通信処理手段12は、起動制御プログラムの処理が開始されると、保護デバイス10と通信を行い、通信確認できたか否かを保護デバイス一致判定手段13に出力し、通信確認ができると、保護デバイスに書き換え不可領域からの固定情報、書き換え可能領域からの通信データを要求し、固定情報及び通信データを受信する。
【0022】
また、通信処理手段12は、通信データ生成手段11から入力された通信データを保護デバイス10に送信する。
上記の保護デバイス10との通信確認処理は、セキュリティを向上させるために、起動時だけでなく、定期的に又はイベントが発生する毎に行うようにする。
【0023】
[保護デバイス一致判定手段13]
保護デバイス一致判定手段13は、保護デバイス10の書き換え不可領域に記憶された固定情報と同じ固定情報を記憶し、更に、通信データ生成手段11で生成された通信データを記憶している。
【0024】
そして、保護デバイス一致判定手段13は、通信処理手段12から入力される固定情報及び通信データについて、記憶する固定情報及び通信データと照合し、一致するか否かを判定し、判定結果を起動判定手段14に出力する。
【0025】
保護デバイス一致判定手段13での一致判定処理は、起動時だけでなく、定期的に又はイベント発生毎に為される。
また、保護デバイス一致判定手段13は、通信処理手段12から入力された保護デバイス10との通信確認の結果も起動判定手段14に出力する。
【0026】
[起動判定手段14]
起動判定手段14は、保護デバイス一致判定手段13から入力された判定結果、保護デバイス10との通信確認の結果を入力し、起動について判定する処理を行い、判定結果を起動許可手段15に出力する。
【0027】
具体的には、保護デバイス10との通信確認の結果がNGの場合(保護デバイス10からの応答がなかった場合)は、起動NGと判定する。
また、保護デバイス一致判定手段13から入力された判定結果がNGの場合(固定情報が不一致、又は通信データが不一致の場合)は、起動NGと判定する。
【0028】
そして、起動判定手段14は、保護デバイス10との通信確認の結果がOKの場合(保護デバイス10からの応答があった場合)で、保護デバイス一致判定手段13から入力された判定結果がOKの場合(固定情報が一致、かつ通信データが一致の場合)は、起動OKと判定する。
【0029】
[起動許可手段15]
起動許可手段15は、起動判定手段14からの判定結果を入力し、判定結果が起動OKであれば、測定プログラムに対して起動許可を出力する。
測定プログラムは、起動許可手段15からの起動許可によって起動を開始する。
【0030】
[測定プログラム20]
測定プログラム20は、PCにインストールされ、EXEとdllを初めとする各種プログラムで構成されている。dllは、機能毎に別々のプログラムに分けられており、必要なファイルが全て存在しなくては動作しないようになっている。
【0031】
[本装置の動作]
次に、本装置の動作の概略について説明する。
測定プログラムをインストールしたPCに、作成したハードウェア(保護デバイス10)を接続する。PCと保護デバイス10とは通信処理手段12により通信できるようになっており、プログラムの正当性を確認するために、PC内のEXEやdllのプログラムから保護デバイス10に向けて存在確認の通信を行う。
【0032】
通信が成功しなかった場合、プログラムが正当でないと判断し、起動判定手段14及び起動許可手段15によって測定プログラムを起動させないようにする。従って、単にプログラムを複製しただけでは、使用できないようになっている。
【0033】
また、起動制御プログラムは、起動時に保護デバイス10に対して書き換え不可領域に記憶する固定情報を要求し、保護デバイス10からその固定情報が得られた場合に、正しい応答があったとして、測定プログラムを起動させる。
保護デバイス10からの応答が正しくなく、また、無応答の場合は、測定プログラム20を起動させない。
【0034】
また、通信処理手段12は、起動時だけでなく、プログラム動作中は、定期的に、又はイベント発生毎に保護デバイス10と存在確認の通信を行うようにしてもよい。
これにより、測定プログラム20を不正に複製しても使用できないものである。
【0035】
また、存在確認は、通信で実施するため、固定情報(固定データ)のみを用いていると、簡単に読み取られてしまう可能性がある。そのため、測定プログラム20を動作させた時に、作成される試験結果情報、ユーザ情報等の情報を存在確認の通信データに使用する。
【0036】
PC側は、測定プログラム20の終了時に、最新の測定結果の情報を基に通信データを作成する。通信データの作成は、圧縮、間引き、暗号化用の符号変換等を用いて、作成したデータを保護デバイス10に送信し、保護デバイス10は書き換え可能な領域に当該データを記憶する。
次回の起動時に、固定データ以外に上記の記憶したデータ(通信データ)についても照合を行い、合致しなければ測定プログラム20を起動しないようにする。
【0037】
このように、保護デバイス10というハードウェアを作成する必要があるので、量産には不向きであるが、一台しか出荷しないとか、特注品で顧客を管理するような場合には、有効な手段である。
【0038】
[測定プログラム起動処理(1):図2]
測定プログラムの起動処理(前半)について図2を参照しながら説明する。図2は、測定プログラム起動処理の前半のフローチャートである。
PC内の起動制御プログラムが起動される(S1)と、通信処理手段12は保護デバイス10との通信を行い、起動判定手段14は、保護デバイス10からの応答があったか否かを判定する(S2)。
【0039】
保護デバイス10からの応答がなければ(Noの場合)、起動許可手段15はソフトウェア(測定プログラム)の起動を拒否する(S8)。
保護デバイス10からの応答があれば(Yesの場合)、通信処理手段12は、ユーザ情報などの各種情報を要求する処理を行う(S3)。
【0040】
次に、保護デバイス一致判定手段13は、各種情報を正常に受信したか否かを判定し(S4)、正常に受信していなければ(Noの場合)、起動許可手段15は、ソフトウェアの起動を拒否する(S8)。
各種情報を正常に受信していれば(Yesの場合)、起動許可手段15は、ソフトウェアの起動を許可する(S5)。
【0041】
次に、通信処理手段12は、再度、保護デバイス10との通信を行い、保護デバイス10からの応答があったか否かを判定する(S6)。
保護デバイス10からの応答がなければ(Noの場合)、起動許可手段15は、ソフトウェアの起動を拒否する(S8)。
また、保護デバイス10からの応答があれば(Yesの場合)、次に、通信データ生成手段11は、終了するか否かの判定を行う(S7)。
【0042】
判定処理S7で、終了しない場合(Noの場合)、処理S6に戻り、終了する場合は、次の処理(S9)に移行する。
ここで、処理S9は、図2と図3を接続するためのものであり、処理S9自体は特別な処理を行うものではない。
【0043】
[測定プログラム起動処理(2):図3]
測定プログラムの起動処理(後半)について図3を参照しながら説明する。図3は、測定プログラム起動処理の後半のフローチャートである。
図2に引き続いて、ソフトウェアを終了する場合は、通信データ生成手段11は、最新の試験結果よりデータ作成を行う(S10)。
このデータ作成は、正常に終了した場合にのみ為されるもので、処理S8でソフトウェアの起動を拒否された場合には、データの作成は為されない。
【0044】
そして、通信処理手段12は、処理S10で作成したデータを保護デバイス10に送信する(S11)。
更に、通信処理手段12は、処理S11でのデータ送信に対して保護デバイス10から正常応答があったか否かを判定する(S12)。
正常応答がなければ(Noの場合)、処理S10に戻り、正常応答があれば(Yesの場合)、処理を終了する(S13)。
【0045】
[実施の形態の効果]
本装置によれば、試験装置において、測定プログラムの起動に際して、保護デバイス10の書き換え不可領域に記憶された起動制御プログラムが動作し、保護デバイス10に記憶されている固定データ、及び試験結果の情報又はユーザ情報を基に、起動判定を行い、判定結果がOKであれば測定プログラムの起動を許可するようにしているので、測定プログラムを不正に利用されるのを適正に防止できる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、試験装置において動作する測定プログラムを不正に利用されるのを適正に防止できる測定プログラム起動方法に好適である。
【符号の説明】
【0047】
10…保護デバイス、 11…通信データ生成手段、 12…通信処理手段、 13…保護デバイス一致判定手段、 14…起動判定手段、 15…起動許可手段、 20…測定プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線機の性能を測定する試験装置における測定プログラムの起動方法であって、
前記試験装置に接続される保護デバイスには書き換え可能領域と書き換え不可領域とが設けられ、
当該試験装置における測定プログラムの起動制御を行う起動制御プログラムが前記書き換え不可領域に記憶され、
前記書き換え不可領域には起動判定に用いられる情報が記憶され、
前記書き換え可能領域には以前の測定に関する情報が記憶され、
前記起動制御プログラムの実行により実現される起動判定手段が、前記書き換え不可領域に記憶された情報及び前記書き換え可能領域に記憶された情報に基づいて前記測定プログラムの起動を制御することを特徴とする測定プログラム起動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−211704(P2010−211704A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59513(P2009−59513)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】