説明

測定装置および測定方法

【課題】測定の信頼性を確保しつつ、測定対象体の物理量の波形をスムーズな波形として測定する。
【解決手段】フィードバック制御の利得についての評価のために利得をGとα×Gとに交互に切り替えつつ、利得がGの期間では参照電圧V4aに1次加算電圧V13を加算し、利得がα×Gの期間では参照電圧V4bをそのまま、1次補正参照電圧V11として出力する1次補正処理と、1次加算電圧V13を1/(α−1)倍して2次加算電圧V16を生成して1次補正参照電圧V11に加算して交流電圧V1と等価の等価交流電圧V17を生成する物理量生成処理と、1次補正参照電圧V11を同期検波して得られる検波電圧V14がゼロボルトに近づくように、参照電圧V4を減衰させて1次加算電圧V13を生成する1次加算物理量生成処理とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象体の物理量に対応する参照物理量を物理量との差が減少するようにフィードバック制御によって生成すると共に、参照物理量またはこの参照物理量を変換して得られる変換物理量に基づいて測定対象体の物理量を測定する測定装置および測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の測定装置として、本願出願人は、下記の特許文献1において開示された測定装置を既に提案している。
【0003】
この測定装置は、測定対象体の物理量(電圧)に対応する参照物理量(参照電位)を物理量との差が減少するようにフィードバック制御によって生成すると共に、参照物理量に基づいて測定対象体の物理量を算出する測定装置であって、フィードバック制御の増幅率(利得)を変更し、変更の前後における参照物理量を測定し、測定した2つの参照物理量の差分を2つの参照物理量のうちのいずれか一方で除算した算出値が予め決められた基準値以上のときにフィードバック制御が不良であると判別する判別処理、およびこの算出値が基準値未満のときにフィードバック制御が良であると判別する判別処理の少なくとも一方を実行する。
【0004】
この測定装置では、上記の判別処理を実行することにより、この判別処理での判別結果に基づいて、フィードバック制御が良好であるか否かを確実に認識することができ、これによって、例えば測定された測定対象体の物理量が信頼性のあるものか否かを認識することができるため、測定装置による測定対象体の物理量測定についての信頼性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−162608号公報(第6,9頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の測定装置には、以下の改善すべき課題が存在している。すなわち、この測定装置では、フィードバックループの増幅率を変更することによってフィードバック制御の良否を判別する構成のため、判別処理を連続して行う構成としたときには、参照物理量が、増幅率を変更する都度、フィードバック制御の偏差内において変動する。したがって、この測定装置には、この参照物理量の変動に起因して、参照物理量の波形を測定対象体の物理量の波形として例えばモニタ装置に表示させたときに、スムーズな波形(増幅率の変更に伴う変動が生じていない波形)として測定(観測)することができないという改善すべき課題が存在している。
【0007】
本発明は、上記の課題を改善すべくなされたものであり、測定の信頼性を確保しつつ、測定対象体の物理量の波形をスムーズな波形として測定し得る測定装置、および測定方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく請求項1記載の測定装置は、測定対象体の物理量に対応する参照物理量を前記物理量との差が減少するようにフィードバック制御して生成すると共に、前記参照物理量に基づいて前記測定対象体の前記物理量を測定する測定装置であって、
前記フィードバック制御の利得についての評価のために当該利得をGとα×G(αは1を超える正数)とに交互に切り替えつつ、前記利得がGの期間では前記参照物理量に対して1次加算物理量を加算して1次補正参照物理量として出力し、かつ当該利得がα×Gの期間では前記参照物理量をそのまま前記1次補正参照物理量として出力する1次補正処理と、前記1次加算物理量を1/(α−1)倍して2次加算物理量を生成すると共に、当該2次加算物理量を前記1次補正参照物理量に加算して前記物理量と等価の等価物理量を生成する物理量生成処理と、前記利得がGのときの前記1次補正参照物理量と当該利得がα×Gのときの前記1次補正参照物理量との差分を検出すると共に当該検出した差分がゼロに近づくように、前記参照物理量、前記1次補正参照物理量および前記等価物理量のうちのいずれかを減衰させて前記1次加算物理量を生成する1次加算物理量生成処理とを実行する。
【0009】
また、請求項2記載の測定装置は、測定対象体の物理量に対応する参照物理量を前記物理量との差が減少するようにフィードバック制御して生成すると共に、前記参照物理量を変換して得られる変換物理量に基づいて前記測定対象体の前記物理量を測定する測定装置であって、前記フィードバック制御の利得についての評価のために当該利得をGとα×G(αは1を超える正数)とに交互に切り替えつつ、前記利得がGの期間では前記変換物理量に対して1次加算物理量を加算して1次補正変換物理量として出力し、かつ当該利得がα×Gの期間では前記変換物理量をそのまま前記1次補正変換物理量として出力する1次補正処理と、前記1次加算物理量を1/(α−1)倍して2次加算物理量を生成すると共に、当該2次加算物理量を前記1次補正変換物理量に加算して前記変換物理量と等価の等価変換物理量を生成する変換物理量生成処理と、前記利得がGのときの前記1次補正変換物理量と当該利得がα×Gのときの前記1次補正変換物理量との差分を検出すると共に当該検出した差分がゼロに近づくように、前記変換物理量、前記1次補正変換物理量および前記等価変換物理量のうちのいずれかを減衰させて前記1次加算物理量を生成する1次加算物理量生成処理と、前記参照物理量から前記変換物理量への変換と逆の変換を前記等価変換物理量に対して実行することにより、前記物理量と等価の等価物理量を生成する物理量生成処理とを実行する。
【0010】
また、請求項3記載の測定装置は、請求項1または2記載の測定装置において、前記測定対象体の前記物理量が交流信号のときには、当該物理量のゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出処理を実行し、前記検出したゼロクロス点に同期すると共に前記物理量の周期の整数倍の周期で前記利得の切り替えを実行する。
【0011】
また、請求項4記載の測定方法は、測定対象体の物理量に対応する参照物理量を前記物理量との差が減少するようにフィードバック制御して生成すると共に、前記参照物理量に基づいて前記測定対象体の前記物理量を測定する測定方法であって、前記フィードバック制御の利得についての評価のために当該利得をGとα×G(αは1を超える正数)とに交互に切り替えつつ、前記利得がGの期間では前記参照物理量に対して1次加算物理量を加算して1次補正参照物理量として出力し、かつ当該利得がα×Gの期間では前記参照物理量をそのまま前記1次補正参照物理量として出力する1次補正処理と、前記1次加算物理量を1/(α−1)倍して2次加算物理量を生成すると共に、当該2次加算物理量を前記1次補正参照物理量に加算して前記物理量と等価の等価物理量を生成する物理量生成処理と、前記利得がGのときの前記1次補正参照物理量と当該利得がα×Gのときの前記1次補正参照物理量との差分を検出すると共に当該検出した差分がゼロに近づくように、前記参照物理量、前記1次補正参照物理量および前記等価物理量のうちのいずれかを減衰させて前記1次加算物理量を生成する1次加算物理量生成処理とを実行する。
【0012】
また、請求項5記載の測定方法は、測定対象体の物理量に対応する参照物理量を前記物理量との差が減少するようにフィードバック制御して生成すると共に、前記参照物理量を変換して得られる変換物理量に基づいて前記測定対象体の前記物理量を測定する測定方法であって、前記フィードバック制御の利得についての評価のために当該利得をGとα×G(αは1を超える正数)とに交互に切り替えつつ、前記利得がGの期間では前記変換物理量に対して1次加算物理量を加算して1次補正変換物理量として出力し、かつ当該利得がα×Gの期間では前記変換物理量をそのまま前記1次補正変換物理量として出力する1次補正処理と、前記1次加算物理量を1/(α−1)倍して2次加算物理量を生成すると共に、当該2次加算物理量を前記1次補正変換物理量に加算して前記変換物理量と等価の等価変換物理量を生成する変換物理量生成処理と、前記利得がGのときの前記1次補正変換物理量と当該利得がα×Gのときの前記1次補正変換物理量との差分を検出すると共に当該検出した差分がゼロに近づくように、前記変換物理量、前記1次補正変換物理量および前記等価変換物理量のうちのいずれかを減衰させて前記1次加算物理量を生成する1次加算物理量生成処理と、前記参照物理量から前記変換物理量への変換と逆の変換を前記等価変換物理量に対して実行することにより、前記物理量と等価の等価物理量を生成する物理量生成処理とを実行する。
【0013】
また、請求項6記載の測定方法は、請求項4または5記載の測定方法において、前記測定対象体の前記物理量が交流信号のときには、当該物理量のゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出処理を実行し、前記検出したゼロクロス点に同期すると共に前記物理量の周期の整数倍の周期で前記利得の切り替えを実行する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の測定装置および請求項4記載の測定方法によれば、測定対象体の物理量に対応する参照物理量を物理量との差が減少するようにフィードバック制御して生成すると共に、参照物理量に基づいて測定対象体の物理量を測定する際に、フィードバック制御の利得についての評価のためにこの利得をGとα×Gとに交互に切り替える場合であっても、利得がGの期間では参照物理量に対して1次加算物理量を加算して1次補正参照物理量として出力し、かつ利得がα×Gの期間では参照物理量をそのまま1次補正参照物理量として出力する1次補正処理と、1次加算物理量を1/(α−1)倍して2次加算物理量を生成すると共に、2次加算物理量を1次補正参照物理量に加算して物理量と等価の等価物理量を生成する物理量生成処理と、利得がGのときの1次補正参照物理量と利得がα×Gのときの1次補正参照物理量との差分を検出すると共にこの検出した差分がゼロに近づくように、参照物理量、1次補正参照物理量および等価物理量のうちのいずれかを減衰させて1次加算物理量を生成する1次加算物理量生成処理とを実行することにより、フィードバック制御の利得についての利得評価処理を実行して測定対象体の物理量の測定の信頼性を確保しつつ、この物理量の波形をスムーズな波形(フィードバック制御の利得の切り替えに起因した電圧変動の生じていない波形)として、測定することができる。
【0015】
また、請求項2記載の測定装置および請求項5記載の測定方法によれば、測定対象体の物理量に対応する参照物理量を物理量との差が減少するようにフィードバック制御して生成すると共に、参照物理量を変換して得られる変換物理量に基づいて測定対象体の物理量を測定する際に、フィードバック制御の利得についての評価のためにこの利得をGとα×Gとに交互に切り替える場合であっても、利得がGの期間では変換物理量に対して1次加算物理量を加算して1次補正変換物理量として出力し、かつ利得がα×Gの期間では変換物理量をそのまま1次補正変換物理量として出力する1次補正処理と、1次加算物理量を1/(α−1)倍して2次加算物理量を生成すると共に、2次加算物理量を1次補正変換物理量に加算して、変換物理量と等価の等価変換物理量を生成する変換物理量生成処理と、利得がGのときの1次補正変換物理量と利得がα×Gのときの1次補正変換物理量との差分を検出すると共に検出した差分がゼロに近づくように、変換物理量、1次補正変換物理量および等価変換物理量のうちのいずれかを減衰させて1次加算物理量を生成する1次加算物理量生成処理と、参照物理量から変換物理量への変換と逆の変換を等価変換物理量に対して実行して、参照物理量を物理量と等価の等価物理量を生成する物理量生成処理とを実行することにより、フィードバック制御の利得についての利得評価処理を実行して測定の信頼性を確保しつつ、測定対象体に流れている物理量の波形をスムーズな波形として、測定することができる。
【0016】
また、請求項3記載の測定装置および請求項6記載の測定方法によれば、フィードバックループの利得G,α×Gの切替タイミングが等価物理量や等価変換物理量の周期に同期する状態となるため、フィードバックループの利得G,α×Gの切り替えに起因したスイッチングノイズの等価物理量や等価変換物理量への重畳を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電圧測定装置1,1Aの構成図である。
【図2】図1の電流電圧変換部CVの回路図である。
【図3】電圧生成部34の構成図である。
【図4】電圧測定装置1の動作を説明するための波形図である。
【図5】電圧測定装置1の動作を説明するための他の波形図(切替信号S1が非同期の状態の波形図)である。
【図6】電流測定装置51の構成図である。
【図7】図6の電流測定部52のモデル図である。
【図8】電圧測定装置1の動作を説明するための他の波形図である。
【図9】電圧測定装置1における一点鎖線で囲まれた各構成要素をソフトウェアで処理する構成を説明するための要部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、測定装置および測定方法の実施の形態について説明する。
【0019】
最初に、電圧測定装置を例に挙げて説明する。
【0020】
電圧測定装置1は、図1に示すように、電圧測定部2および偏差補正部3を備え、測定対象体4の交流電圧V1(物理量の一例)を非接触で測定可能に構成されている。
【0021】
電圧測定部2は、図1に示すように、フローティング回路部11および第1本体回路部12を備え、測定対象体4に生じている交流電圧V1(検出対象交流電圧)を非接触で検出(測定)可能な非接触型の電圧測定部として構成されている。
【0022】
フローティング回路部11は、図1に示すように、ガード電極21、検出電極22、電流電圧変換部CV、駆動回路25および絶縁回路26を備え、一例としてプローブユニットPUを構成する。電流電圧変換部CVは、本例では、一例として、図2に示すように、電流電圧変換回路23および積分回路24を備えている。絶縁回路26は、本例では、一例として、フォトカプラ(以下、「フォトカプラ26」ともいう)で構成されている。
【0023】
ガード電極21は、導電性材料(例えば金属材料)を用いて箱状に形成されて、フローティング回路部11における内部グランドとして構成されている。また、ガード電極21は、一例として、その内部に、検出電極22、電流電圧変換回路23、積分回路24、駆動回路25およびフォトカプラ26が収容されている。これにより、電流電圧変換回路23からフォトカプラ26までがガード電極21に覆われた構成となっている。
【0024】
また、ガード電極21には開口部(孔)21aが形成されると共に、本例では、さらに、開口部21aを含むガード電極21全体が、合成樹脂材料で形成された絶縁層(不図示)で覆われている。検出電極22は、例えば、平板状に形成されて、ガード電極21内における開口部21aを臨む位置に配設されている。
【0025】
電流電圧変換回路23は、一例として、図2に示すように、非反転入力端子が抵抗23aを介してガード電極21に接続されると共に、反転入力端子が検出電極22に接続され、かつ抵抗23bが帰還回路として反転入力端子と出力端子との間に接続された第1演算増幅器23cを備えて構成されている。この電流電圧変換回路23は、第1演算増幅器23cが後述する正電圧Vf+および負電圧Vf−の供給を受けて作動して、測定対象体4の交流電圧V1とガード電極21の電圧(後述の参照電圧V4)との電位差Vdiに起因して、この電位差Vdiに応じた電流値で測定対象体4と検出電極22との間(具体的には、検出電極22と抵抗23bとを含む経路)に流れる検出電流(以下、電流信号ともいう)Iを検出電圧V2に変換して出力する。この場合、検出電圧V2は、その振幅が電流信号Iの振幅に比例して変化する。
【0026】
積分回路24は、一例として、図2に示すように、非反転入力端子が抵抗24aを介してガード電極21に接続されると共に、反転入力端子が入力抵抗24bを介して第1演算増幅器23cの出力端子に接続され、かつコンデンサ24cが帰還回路として反転入力端子と出力端子との間に接続された第2演算増幅器24dを備えて構成されている。この積分回路24は、第2演算増幅器24dが正電圧Vf+および負電圧Vf−の供給を受けて作動して、検出電圧V2を積分することにより、測定対象体4の交流電圧V1とガード電極21の電圧との電位差Vdiに比例して電圧値が変化する積分電圧V3を生成して出力する。
【0027】
駆動回路25は、図1に示すように、フォトカプラ26と共に積分回路24の後段、つまり電流電圧変換部CVの積分回路24と、電圧生成部34との間に配置されている。また、駆動回路25は、一例としてベース端子が入力抵抗25aを介して第2演算増幅器24dの出力端子に接続され、コレクタ端子がフォトカプラ26に接続され、かつエミッタ端子が負電圧Vf−に接続されたトランジスタ(本例では、一例として、NPN型のバイポーラトランジスタ)25bで構成されている。また、フォトカプラ26の一次側回路としての発光ダイオードは、カソード端子がトランジスタ25bのコレクタ端子に接続され、アノード端子が正電圧Vf+に接続されている。また、フォトカプラ26の二次側回路としてのフォトトランジスタは、配線W1を介して第1本体回路部12と接続されている。
【0028】
この構成により、フォトカプラ26が駆動回路25で駆動されてリニア領域で作動することにより、積分電圧V3の電圧値に応じて(ほぼ比例して)フォトカプラ26におけるフォトトランジスタの抵抗値が変化する。したがって、このフォトカプラ26が、第1本体回路部12の後述する抵抗33と相俟って、積分回路24から入力したアナログ信号である積分電圧V3を、この積分電圧V3と電気的に絶縁された新たなアナログ信号である積分電圧V3aに変換する。
【0029】
第1本体回路部12は、図1に示すように、一例として、主電源部31、DC/DCコンバータ(以下、単に「コンバータ」ともいう)32、電流電圧変換用の抵抗33、電圧生成部34、利得切替信号生成部35、処理部36および表示部17を備えている。この第1本体回路部12は、第2本体回路部としての偏差補正部3と共に本体回路部(メインユニット)MUを構成し、上記したように、配線W1を介してプローブユニットPUと接続される。
【0030】
主電源部31は、例えば、バッテリーを備えて構成されて、第1本体回路部12の各構成要素32,34,35,36,37、および偏差補正部3の後述する各構成要素を作動させるための正電圧Vddおよび負電圧Vss(グランドG1の電位を基準として生成される絶対値が同じで、互いの極性の異なる直流電圧)をそのバッテリーの直流電圧から生成して出力する。
【0031】
コンバータ32は、一例として、互いに電気的に絶縁された一次巻線および二次巻線を有する絶縁型のトランスと、このトランスの一次巻線を駆動する駆動回路と、トランスの二次巻線に誘起される交流電圧を整流平滑する直流変換部(いずれも図示せず)とを備えて、一次側に対して二次側が電気的に絶縁された絶縁型電源として構成されている。このコンバータ32では、入力した正電圧Vddおよび負電圧Vssに基づいて駆動回路が作動して、正電圧Vddが印加された状態にあるトランスの一次巻線を駆動して二次巻線に交流電圧を誘起させる。また、直流変換部が、この交流電圧を整流して平滑する。これにより、ガード電極21の電圧(内部グランドの電圧)を基準として、上記電圧(正電圧Vf+および負電圧Vf−)がフローティング状態(グランドG1、正電圧Vddおよび負電圧Vssと電気的に分離された状態)で生成される。このようにして生成された正電圧Vf+および負電圧Vf−は、上記の内部グランドがガード電極21に電気的に接続された状態で、フローティング回路部11に供給される。なお、正電圧Vf+および負電圧Vf−は、絶対値がほぼ同一で、極性が互いに異なる直流電圧として生成される。
【0032】
抵抗33は、一端が正電圧Vddに接続されると共に、他端がフォトカプラ26におけるフォトトランジスタのコレクタ端子に接続されている。これにより、抵抗33とフォトトランジスタとが正電圧Vddと負電圧Vssとの間に直列に接続された状態となる。このため、フォトトランジスタの抵抗値が積分電圧V3の電圧値に応じて変化したときには、正電圧Vddおよび負電圧Vssの電位差(Vdd−Vss)が抵抗33の抵抗値とフォトトランジスタの抵抗値とで分圧されることにより、上記した積分電圧V3aがフォトトランジスタのコレクタ端子に発生する。
【0033】
電圧生成部34は、図1に示すように、積分電圧V3aを入力して増幅することにより、参照電圧V4(参照物理量の一例)を生成して、ガード電極21に印加する。この場合、電圧生成部34は、フローティング回路部11のガード電極21、検出電極22、電流電圧変換部CV(電流電圧変換回路23および積分回路24)、駆動回路25およびフォトカプラ26と共にフィードバックループを形成して、電位差Vdiを減少させるように積分電圧V3aを増幅する増幅動作を行うことにより、参照電圧V4を生成する。
【0034】
本例では、一例として、電圧生成部34は、図3に示すように、交流増幅回路34a、位相補償回路34bおよび昇圧回路34cを備えて構成されている。ここで、交流増幅回路34aは、積分電圧V3aを入力して増幅することにより、第1電圧Vaを生成する。この場合、交流増幅回路34aは、積分電圧V3aの電圧値についての絶対値の増加・減少に対応して、電圧値の絶対値が変化する第1電圧Vaを増幅動作によって生成する。位相補償回路34bは、フィードバック制御動作の安定化(発振防止)を図るため、第1電圧Vaを入力してその位相を調整して、第2電圧Vbとして出力する。昇圧回路34cは、一例として、昇圧トランスを用いて構成されて、第2電圧Vbを所定の倍率で昇圧することにより(極性は変えずに絶対値を増加させることにより)、フィードバックループの出力としての参照電圧V4を生成してガード電極21に印加する。
【0035】
また、交流増幅回路34aは、動作開始直後においては予め設定された初期利得G0で積分電圧V3aを増幅し、利得切替信号生成部35から後述する切替信号S1を入力しているとき(切替信号S1が高レベルのとき)には、利得をα(1を超える正数)倍して利得(α×G0)に変更して、この変更後の利得(α×G0)で積分電圧V3aを増幅する。また、交流増幅回路34aは、利得切替信号生成部35からの切替信号S1の入力が停止したとき(切替信号S1が低レベルのとき)には、利得(α×G0)を利得G0に変更して(戻して)、この利得G0で積分電圧V3aを増幅する。これにより、電圧測定装置1の上記したフィードバックループの利得も、利得切替信号生成部35から切替信号S1が出力されていないときの利得をGとしたときに、利得切替信号生成部35から出力される切替信号S1のレベルが高レベル、低レベル、高レベル、低レベル・・・、というように切り替えられるタイミングに同期して(つまり、切替信号S1の半周期に同期して)、α×G,G,α×G,G,・・・というように切り替えられる。
【0036】
利得切替信号生成部35は、予め規定された一定の周期で切替信号S1を生成して、電圧生成部34、処理部36および補正偏差部3に出力する。本例では、一例として、利得切替信号生成部35は、デューティ比が0.5のパルス信号(矩形波信号)を切替信号S1として出力する。また、本例では、切替信号S1が高レベルのときには、切替信号S1の出力状態を示し、切替信号S1が低レベルのときには、切替信号S1の停止状態を示すものとする。
【0037】
処理部36は、一例として、2つのA/D変換器、CPUおよびメモリ(いずれも図示せず)を備えている。また、処理部36は、CPUがメモリに記憶されているプログラムに従って作動することにより、電圧生成部34から出力される参照電圧V4と利得切替信号生成部35から出力される切替信号S1とに基づいて、電圧測定部2のフィードバックループについての利得を評価する利得評価処理と、偏差補正部3から出力される後述の等価交流電圧V17に基づいて測定対象体4の交流電圧V1(物理量)を測定する電圧測定処理と、測定した交流電圧V1の波形を表示部37に表示させる波形表示処理とを実行する。なお、メモリには、倍率αと、良否判別処理で使用される基準値Drとが予め記憶されている。
【0038】
表示部37は、一例として、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置で構成されている。また、表示部37は、処理部36による表示処理の実行の際に、良否判定処理の結果などの上記した内容を処理部36から入力して、画面に表示する。
【0039】
偏差補正部3は、図1に示すように、一例として、第1加算部41、第2加算部42、第1減衰部(アッテネータ)43、第2減衰部(アッテネータ)44、VCA(電圧制御型増幅器)45、切替部46、検波部47および増幅部48を備え、第2本体回路部を構成する。この偏差補正部3は、上記した電圧測定部2におけるフィードバックループの利得が切替信号S1に同期して切り替えられることによって参照物理量としての参照電圧V4の波形に生じる振幅の変動(切替信号S1の半周期毎の電圧変動)と、このフィードバックループに存在する制御偏差(交流電圧V1と参照電圧V4との差)とを補正して、物理量としての交流電圧V1と同じ波形の等価物理量としての等価交流電圧V17を生成する。
【0040】
具体的には、第1加算部41は、電圧生成部34から出力される参照電圧V4と切替部46から出力される後述の1次加算電圧(1次加算物理量)V13とを加算して、1次補正参照物理量としての1次補正参照電圧V11を出力する。第2加算部42は、1次補正変換電圧V11と第2減衰部44から出力される後述の2次加算電圧(2次加算物理量)V16とを加算して、等価交流電圧V17として出力する。
【0041】
第1減衰部43は、参照電圧V4を入力すると共に、その振幅を予め規定された減衰率で減衰させて、減衰電圧V12として出力する。VCA45は、減衰電圧V12を入力すると共に、増幅部48から出力される後述の制御電圧V15の電圧値に応じた増幅率で減衰電圧V12を増幅して1次加算物理量としての1次加算電圧V13を出力する。
【0042】
切替部46は、1次加算電圧V13と利得切替信号生成部35から出力される切替信号S1とを入力する。また、切替部46は、切替信号S1に同期して、切替信号S1の半周期毎に、第1加算部41へ1次加算電圧V13を出力する動作と、1次加算電圧V13の出力を停止する動作(ゼロボルトを出力する動作)とを切り替えて実行する。本例では、切替部46は、切替信号S1が高レベルのとき(上記のフィードバックループの利得がα×Gのとき(期間))に1次加算電圧V13の出力を停止し、切替信号S1が低レベルのとき(上記のフィードバックループの利得がGのとき(期間))に、1次加算電圧V13を出力する。
【0043】
検波部47は、一例として、乗算器とローパスフィルタ(いずれも図示せず)を備えて構成されている。この検波部47では、乗算器が1次補正参照電圧V11を切替信号S1に同期して検波(同期検波)して検波電圧(直流電圧)を出力し、ローパスフィルタが、この検波電圧を平均化(積分)して、最終的な検波電圧V14として出力する。なお、この検波部47については、上記の同期検波によって検波電圧を出力する構成に代えて、1次補正参照電圧V11を包絡線検波して上記の検波電圧を出力し、ローパスフィルタが、この検波電圧を平均化(積分)して、最終的な検波電圧V14として出力する構成を採用することもできる。増幅部48は、この検波電圧V14を予め規定された増幅率で増幅して、制御電圧V15として出力する。第2減衰部44は、1次加算電圧V13を1/(α−1)倍して2次加算物理量としての2次加算電圧V16を生成して、第2加算部42に出力する。
【0044】
次いで、電圧測定装置1による測定対象体4の交流電圧V1についての測定動作について説明する。
【0045】
まず、検出電極22が非接触の状態で測定対象体4に対向するように、フローティング回路部11(または電圧測定装置1全体)を測定対象体4の近傍に位置させる。これにより、図1に示すように、検出電極22と測定対象体4との間に静電容量C0が形成された状態となる。この場合、静電容量C0の容量値は、検出電極22と測定対象体4の距離に反比例して変化するが、フローティング回路部11を一旦配設した後は、温度などの環境が一定の条件下においては一定の値となる。一般的に、この静電容量C0の容量値は、極めて小さい値(例えば数pF〜数十pF程度)となる。
【0046】
次いで、電圧測定装置1の起動状態において、利得切替信号生成部35が、電圧生成部34、処理部36および偏差補正部3に切替信号S1を出力する。
【0047】
電圧測定部2では、フィードバックループを構成する各構成要素が、上記したようにフィードバックループ全体の利得をG、α×G、G、α×G、・・・というように切替信号S1に同期して切り替えつつ、検出電極22と測定対象体4との間に流れる電流信号Iが減少するように参照電圧V4を上昇または低下させることにより、参照電圧V4を交流電圧V1に追従させるフィードバック制御動作を実行する。
【0048】
具体的には、測定対象体4の交流電圧V1と、ガード電極21の電圧(基準電圧。参照電圧V4の電圧)との電位差Vdiが増加しているとき(例えば、交流電圧V1の上昇に起因して電位差Vdiが増加しているとき)には、測定対象体4から検出電極22を介して電流電圧変換部CVの電流電圧変換回路23に流れ込む(流入する)電流信号Iの電流量が増加する。この場合、電流電圧変換回路23は、出力している検出電圧V2の電圧値を低下させる。積分回路24では、この検出電圧V2の低下に起因して、第2演算増幅器24dの出力端子からコンデンサ24cを介して反転入力端子に向けて流れる電流が増加する。このため、積分回路24は、積分電圧V3の電圧を上昇させる。
【0049】
また、この積分電圧V3の電圧上昇に伴い、駆動回路25のトランジスタ25bが深いオン状態に移行する。これにより、フォトカプラ26では、その発光ダイオードに流れる電流が増加し、フォトトランジスタの抵抗が減少する。したがって、抵抗33の抵抗値とフォトトランジスタの抵抗値とで電位差(Vdd−Vss)が分圧されて生成される積分電圧V3aは、その電圧値が低下する。電圧生成部34は、この積分電圧V3aに基づいて、生成している参照電圧V4の電圧値を上昇させる。この電圧測定装置1では、このようにしてフィードバックループを構成する電流電圧変換回路23、積分回路24、駆動回路25、フォトカプラ26、および第1本体回路部12の電圧生成部34が、測定対象体4の交流電圧V1の上昇を検出して、参照電圧V4の電圧値を上昇させるフィードバック制御動作を実行することにより、ガード電極21の電圧(参照電圧V4の電圧)を交流電圧V1に追従させる。
【0050】
一方、交流電圧V1の低下に起因して電位差Vdiが増加したときには、検出電極22を介して電流電圧変換回路23から測定対象体4に流れ出る(流出する)電流信号Iの電流量が増加する。この際には、フィードバックループを構成する電流電圧変換部CVの電流電圧変換回路23等が上記のフィードバック制御動作とは逆の動作を実行して、参照電圧V4の電圧を低下させることにより、ガード電極21の電圧(参照電圧V4の電圧)を交流電圧V1に追従させる。
【0051】
このようにして、電圧測定装置1では、ガード電極21の電圧(参照電圧V4の電圧)を交流電圧V1に追従させるフィードバック制御動作が短時間に実行されて、ガード電極21の電圧(第1演算増幅器23cのバーチャルショートにより、検出電極22の電圧でもある)がフィードバックループの各利得G,α×Gに対応する制御偏差内に収束する。具体的には、参照電圧V4は、フィードバックループの利得がGのときには、この利得に対応する制御偏差だけ交流電圧V1から偏差する参照電圧V4aに収束し、フィードバックループの利得がα×Gのときには、この利得に対応する制御偏差だけ交流電圧V1から偏差する参照電圧V4bに収束する。この場合、参照電圧V4bは、そのフィードバックループの利得が参照電圧V4aの利得よりも高い分だけ、交流電圧V1により近い値に収束する(つまり、制御偏差がより小さくなる)。
【0052】
この状態において、処理部36は、電圧測定部2におけるフィードバックループの利得を評価する利得評価処理を実行する。この利得評価処理では、処理部36は、まず、1つのA/D変換器で参照電圧V4をサンプリングしつつ、切替信号S1に同期して、フィードバックループの利得がGのときの参照電圧V4a、および利得がα×Gのときの参照電圧V4bのそれぞれの電圧波形データを取得して、メモリに記憶する(電圧取得処理)。次いで、処理部36は、この取得した2つの参照電圧V4a,V4bの差分ΔV4(=V4b−V4a)を算出すると共に、算出した差分ΔV4を2つの参照電圧V4a,V4bのうちのいずれか一方の参照電圧V4で除算して参照電圧V4の変化率H(=ΔV4/V4)を算出する(変化率算出処理)。
【0053】
続いて、処理部36は、算出した変化率Hとメモリに記憶されている基準値Drとを比較して、変化率Hが基準値Dr以上の(または超える)ときには、利得α×Gが良好でない(利得α×Gが十分に大きな値でない)と判別し、一方、変化率Hが基準値Dr未満の(または以下の)ときには、利得α×Gが良好である(利得α×Gが十分な値である)と判別する(良否判別処理)。また、処理部36は、この判別結果を内部メモリに記憶すると共に、表示部37に表示させる。これにより、利得評価処理が完了する。
【0054】
一方、処理部36による上記の利得評価処理の実行と並行して、偏差補正部3では、第1減衰部43が、電圧生成部34から出力される参照電圧V4を入力(参照電圧V4a,V4bを交互に入力)すると共に、予め規定された減衰率で減衰させて、減衰電圧V12としてVCA45に出力する。VCA45は、この減衰電圧V12を増幅部48から出力される制御電圧V15に応じて増幅して、1次加算電圧V13として切替部46および第2減衰部44に出力する。
【0055】
切替部46は、切替信号S1に同期して、切替信号S1が低レベルのとき(フィードバックループの利得がGのとき)には、1次加算電圧V13を第1加算部41に出力し、切替信号S1が高レベルのとき(フィードバックループの利得がα×Gのとき)には、1次加算電圧V13の第1加算部41への出力を停止する(ゼロボルトを加算部31に出力する)動作を実行する。第2減衰部44は、1次加算電圧V13を1/(α−1)倍して2次加算電圧V16として第2加算部42に出力する動作を常時実行する。
【0056】
この状態において、第1加算部41は、参照電圧V4を入力(参照電圧V4a,V4bを交互に入力)すると共に、切替部46から切替信号S1に同期して出力される各電圧(1次加算電圧V13またはゼロボルト)を参照電圧V4に交互に加算して、1次補正参照電圧V11として出力する(1次補正処理)。具体的には、第1加算部41は、切替信号S1が高レベルのときには、電圧生成部34から出力される参照電圧V4bに、切替部46から出力されているゼロボルトを加算することにより(すなわち、参照電圧V4bをそのまま)、1次補正参照電圧V11として出力する。また、第1加算部41は、切替信号S1が低レベルのときには、電圧生成部34から出力される参照電圧V4aに、切替部46から出力されている1次加算電圧V13を加算して、1次補正参照電圧V11として出力する。
【0057】
検波部47は、このようにして第1加算部41から出力される1次補正参照電圧V11を切替信号S1に同期して検波して、検波電圧V14を出力する。また、増幅部48は、この検波電圧V14を増幅して、制御電圧V15としてVCA45に出力する。この場合、検波部47での同期検波のタイミングと、電圧生成部34から出力される参照電圧V4a,V4bの切り替えタイミングとは、切替信号S1に共に同期している。このため、検波部47から出力される検波電圧V14は、低利得G時の1次補正参照電圧V11と高利得(α×G)時の1次補正参照電圧V11との差分、つまり、参照電圧V4a(低利得G時の参照電圧V4)に1次加算電圧V13を加算して得られる電圧と、参照電圧V4b(高利得(α×G)時の参照電圧V4)との差分Vdif(=V4b−(V4a+V13))に応じた電圧値(例えば比例した電圧値)となる。また、この検波電圧V14が増幅されることで生成される制御電圧V15も同様にして、この差分Vdifに応じた電圧値(例えば比例した電圧値)となる。
【0058】
これにより、上記の差分Vdifが大きいときには、検波電圧V14、ひいては制御電圧V15も大きくなり、VCA45から出力される1次加算電圧V13も大きくなる。一方、上記の差分Vdifが小さいときには、検波電圧V14、ひいては制御電圧V15も小さくなり、VCA45から出力される1次加算電圧V13も小さくなる。
【0059】
このようにして、検波部47、増幅部48、VCA45および切替部46が、第1加算部41に対するフィードバック回路(負帰還路)を構成して、切替信号S1の低レベル時に第1加算部41が参照電圧V4aに加算する1次加算電圧V13(VCA45から出力される1次加算電圧V13)の値をフィードバック制御する(1次加算物理量生成処理を実行する)ことにより、切替信号S1の低レベル時に第1加算部41から出力される1次補正参照電圧V11の値(V4a+V13)と、切替信号S1の高レベル時に第1加算部41から出力される1次補正参照電圧V11の値(V4b)との差分をゼロに近づける。言い換えれば、このフィードバック制御により、切替信号S1の低レベル時に第1加算部41から出力される1次補正参照電圧V11の値(V4a+V13)は、切替信号S1の高レベル時に第1加算部41から出力される1次補正参照電圧V11の値(V4b)に収束させられる(ほぼ一致させられる)。つまり、VCA45から出力される1次加算電圧V13が、差分ΔV4(=V4b−V4a)とほぼ一致する状態に制御される。
【0060】
この状態において、第2減衰部44は、この1次加算電圧V13(差分ΔV4とほぼ等しい電圧)を1/(α−1)倍して2次加算電圧V16として、第2加算部42に出力する。第2加算部42は、第1加算部41から出力されている1次補正参照電圧V11(=参照電圧V4b)に、第2減衰部44から出力されている2次加算電圧V16(1次加算電圧V13(=ΔV4)を1/(α−1)倍した電圧)を加算して、等価交流電圧V17として処理部36に出力する(物理量生成処理)。
【0061】
一方、この電圧測定装置1の電圧測定部2のように、フィードバックループの利得をG,α×Gとの間で周期的に切り替える構成の測定装置では、以下のような関係が成り立っている。
【0062】
上記したように、電圧測定部2は、交流電圧V1を入力とし、かつ参照電圧V4を出力とするフィードバック制御方式の測定装置として構成されている。この構成の電圧測定部2は、交流電圧V1を入力(目標値)として、出力(制御量)である参照電圧V4を双方の差分U(入力に対する出力の誤差(制御偏差)でもあるため、以下では「誤差U」ともいう)がゼロ(ゼロボルト)に近づくようにフィードバック制御するモデルとみなすことができる。このため、電圧測定部2のフィードバックループの増幅率をGとしたときには、下記の式(1),(2)が成り立つ。
U=V1−V4a ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1)
V4a=G×U ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (2)
【0063】
また、入力であるV1に対する誤差Uの割合を誤差率e1として考えたときに、この誤差率e1は、下記の式(3)で表される。
誤差率e1=U/V1=1/(1+G) ・・・・・・・・・・・ (3)
【0064】
一方、フィードバックループ全体の増幅率がα×Gに変更されたときには、下記の式(4),(5)が成り立つ。
U=V1−V4b ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (4)
V4b=α×G×U ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (5)
【0065】
また、入力であるV1に対する誤差Uの割合を誤差率e2として考えたときに、この誤差率e2は、下記の式(6)で表される。
誤差率e2=U/V1=1/(1+α×G) ・・・・・・・・・・(6)
【0066】
次に、両誤差率e1,e2の差をεとすると、εは下記式(7)で表される。
ε=e1−e2
=1/(1+G)−1/(1+α×G)
=(α−1)×G/(1+(α+1)×G+α×G) ・・・・ (7)
【0067】
なお、εは下記式(8)とも表される。
ε=e1−e2
=(V1−V4a)/V1−(V1−V4b)/V1
=(−V4a+V4b)/V1
=ΔV4/V1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (8)
【0068】
また、利得Gは、通常、百数十〜数百程度の値に設定されて数値1よりも十分に大きい(G≫1)。また、倍率αも2〜3程度で良いため、Gはこの倍率αとの関係においても十分に大きな値となっている。したがって、上記式(7)は下記式(9)のように近似することができる。
ε≒(α−1)×(1/(1+α×G)) ・・・・・・・・・・ (9)
【0069】
また、この式(9)の右式の(1/(1+α×G))は、式(6)より誤差率e2であることから、εは、さらに下記式(10)のように表される。
ε≒(α−1)×e2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (10)
【0070】
また、εは、式(8)とも表されるため、上記式(6)を考慮して整理すると、
U=V1×e2=ΔV4/(α−1) ・・・・・・・・・・・・ (11)
【0071】
また、上記式(4),(10)より、交流電圧V1は、下記式(12)のように表される。
V1=V4b+U=V4b+ΔV4/(α−1) ・・・・・・・ (12)
【0072】
この場合、式(12)の右辺におけるV4bは、目標値としてのV1により近い制御量である高利得(利得(α×G))時の制御量であることから、目標値と制御量との差分である右辺のΔV4/(α−1)は、フィードバックループの制御偏差を示している。
【0073】
偏差補正部3では、上記したように、第1加算部41が、電圧生成部34から参照電圧V4a(=V4b−ΔV4)が出力されている期間(切替信号S1の低レベルのとき)には、この参照電圧V4aに1次加算電圧V13(=ΔV4)を加算し、電圧生成部34から参照電圧V4bが出力されている期間(切替信号S1の高レベルのとき)には、この参照電圧V4bにゼロボルトを加算(参照電圧V4bをそのまま出力)して、それぞれ1次補正参照電圧V11として出力する。つまり、第1加算部41は、入力する参照電圧V4を高利得時の参照電圧V4bに揃えて1次補正参照電圧V11として出力する。
【0074】
また、第2加算部42が、この1次補正参照電圧V11(=参照電圧V4b)に対して、第2減衰部44において1/(α−1)倍された1次加算電圧V13(=ΔV4)である2次加算電圧V16を加算して等価交流電圧V17を出力する。このため、この等価交流電圧V17は、V4b+ΔV4/(α−1)で表される。これは、上記式(12)の右辺の式と同一となる。
【0075】
したがって、電圧生成部34から交互に出力される参照電圧V4a,V4bを入力しつつ、これらの参照電圧V4a,V4bに基づいて、交流電圧V1と等価(波形が同等)の等価交流電圧V17、つまり、切替信号S1に同期した電圧変動(切替信号S1の半周期毎の電圧変動)と制御偏差とが解消された等価交流電圧V17を生成して出力する。
【0076】
また、本例では、切替信号S1は、測定対象体4の交流電圧V1とは非同期な信号であるため、その周期が図4に示すように交流電圧V1の周期以下となる場合や、図5に示すように交流電圧V1の周期を超える場合もある。しかしながら、いずれの場合であっても、偏差補正部3が上記したように動作することにより、図4,5に示すように、切替信号S1に同期した電圧変動(切替信号S1の半周期毎の電圧変動)と制御偏差とが解消されたスムーズな波形の等価交流電圧V17(細実線で示される波形)が生成される。なお、各図4,5中の利得G,α×G(図中では「αG」と表記している)などの各パラメータについては、既に説明しているため、個別的な説明を省略する。
【0077】
処理部36は、偏差補正部3の第2加算部42から出力される等価交流電圧V17を入力すると共に、この等価交流電圧V17をもう一つのA/D変換器でA/D変換して、その電圧波形データを取得して、メモリに記憶する。また、処理部36は、メモリに記憶されている電圧波形データに基づいて、電圧測定処理および波形表示処理を実行する。
【0078】
まず、電圧測定処理では、処理部36は、等価交流電圧V17の電圧波形データに基づいて、等価交流電圧V17の実効電圧値、振幅および周期(または周波数)などの電気的特性値を算出(測定)して、メモリに記憶すると共に表示部37に表示させる。次に、波形表示処理では、処理部36は、上記の電圧波形データに基づいて、等価交流電圧V17の波形(電圧波形)を表示部37に表示させる。この場合、処理部36によって測定された等価交流電圧V17は、上記したように交流電圧V1と等価な電圧として偏差補正部3から出力される電圧である。このため、上記した等価交流電圧V17に対する電圧測定処理および波形表示処理の完了により、交流電圧V1に対する電圧測定処理および波形表示処理が完了する。
【0079】
このように、この電圧測定装置1、およびこの電圧測定装置1が実行する測定方法によれば、電圧測定部2におけるフィードバック制御の利得(フィードバックループの利得)についての評価のためにこの利得をGとα×Gとに交互に切り替える場合であっても、利得がGの期間では参照電圧V4aに対して1次加算電圧V13(=ΔV4)を加算して1次補正参照電圧V11(=参照電圧V4b)として出力し、かつ利得がα×Gの期間では参照電圧V4bをそのまま1次補正参照電圧V11として出力する1次補正処理と、1次加算電圧V13を1/(α−1)倍して2次加算電圧V16を生成すると共に、2次加算電圧V16を1次補正参照電圧V11に加算して交流電圧V1と等価の等価交流電圧V17を生成する物理量生成処理と、利得G,α×Gの切替タイミング(切替周期。切替信号S1の半周期)に同期して1次補正参照電圧V11を同期検波して得られる検波電圧V14がゼロボルトに近づくように(言い換えれば、利得がGのときの1次補正参照電圧V11と利得がα×Gのときの1次補正参照電圧V11との差分に応じた電圧を検出すると共に検出した電圧がゼロボルトに近づくように)、参照電圧V4を減衰させて1次加算電圧V13を生成する1次加算物理量生成処理とを実行することにより、フィードバック制御の利得についての利得評価処理を実行して交流電圧V1の測定の信頼性を確保しつつ、交流電圧V1の波形をスムーズな波形(フィードバック制御の利得の切り替えに起因した電圧変動の生じていない波形)として、表示部37に表示させて測定することができる。
【0080】
次に、電流測定装置を例に挙げて説明する。
【0081】
電流測定装置51は、図6に示すように、電流測定部52および偏差補正部3を備え、測定対象体としての電線54に流れる物理量としての電流I1を測定可能に構成されている。なお、上述した電圧測定装置1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0082】
電流測定部52は、磁気コア61、磁電変換素子62、電流生成部63、負帰還コイル64、電流電圧変換部65、利得切替信号生成部35、処理部66および表示部37を有し、ゼロフラックス法によって電流I1を測定し得るように構成されている。磁気コア61は、一例として、開閉可能な分割型コアを用いて、内部に電線54を活線状態で挿入可能に構成されている。
【0083】
磁電変換素子62(図6中において斜線を付した要素)は、ホール素子またはフラックスゲートで構成されている。本例では、一例として、磁電変換素子62は、ホール素子を用いて構成されて、合成磁束φ0(電線54に流れる電流I1に起因して磁気コア61内に発生する磁束φ1と、負帰還コイル64に流れる後述の参照電流I2に起因して磁気コア61内に発生する磁束φ2の合成磁束)を検出すると共に、この合成磁束φ0に比例した検出電圧V51を生成して、電流生成部63に出力する。
【0084】
電流生成部63は、一例として、出力電流を制御可能な電流源で構成されて、磁電変換素子62から出力される検出電圧V51の電圧値に比例した電流値の参照電流I2を参照物理量(電流I1に対応する物理量)として生成すると共に、生成した参照電流I2を負帰還コイル64にその一端部64aから供給する。また、電流生成部63は、利得切替信号生成部35から出力される切替信号S1のタイミングに同期して、検出電圧V51から参照電流I2を生成する際の利得を切替信号S1の半周期毎に切り替えることで、磁電変換素子62、電流生成部63および負帰還コイル64で構成されるフィードバックループの利得を利得Gと利得(α×G)に交互に切り替える。
【0085】
具体的には、電流生成部63は、一例として、切替信号S1が低レベルのときには、フィードバックループの利得を利得Gに切り替えて参照電流I2aを出力し、切替信号S1が高レベルのときには、フィードバックループの利得を利得(α×G)に切り替えて参照電流I2bを出力する。なお、特に区別しないときには、参照電流I2a,I2bをまとめて参照電流I2ともいう。
【0086】
負帰還コイル64は、磁気コア61に巻回されると共に、その巻回数(ターン数)はn回(nは1以上の数)に規定されている。また、負帰還コイル64は、参照電流I2が流れたときに磁気コア61内に磁束φ2を発生させることにより、電流I1に起因して磁気コア61内に発生する磁束φ1を打ち消す機能を有している。
【0087】
電流電圧変換部65は、本例では、一例として、抵抗65aおよびアンプ65bを備えて構成されている。抵抗65aは、負帰還コイル64の他端部64bと基準電位(グランド電位)との間に接続されて、負帰還コイル64に供給されている参照電流I2を電圧V52に変換する。アンプ65bは、電圧V52を一定の利得で増幅して、変換電圧(変換物理量の一例)Viとして出力する。本例では、一例として、電流電圧変換部65が、参照電流I2を変換電圧Viに変換する際の利得はβ(=Vi/I2)に規定されている。
【0088】
この構成により、電流電圧変換部65は、参照物理量としての参照電流I2a,I2bに利得βを乗算することによって変換物理量としての変換電圧Via,Vibに変換して、処理部66および偏差補正部3に出力する。つまり、変換電圧Viaは、I2a×βとして出力され、変換電圧Vibは、I2b×βとして出力される。なお、この電流電圧変換部65では、抵抗65aを用いて参照電流I2を電圧に変換しているが、図示はしないが、演算増幅器(オペアンプ)を用いた公知の電流電圧変換器を採用して、変換電圧Viに変換することもできる。
【0089】
処理部66は、一例として、2つのA/D変換器、CPUおよびメモリ(いずれも図示せず)を備えている。また、処理部66は、CPUがメモリに記憶されているプログラムに従って作動することにより、電流電圧変換部65から出力される変換電圧Viと利得切替信号生成部35から出力される切替信号S1とに基づいて、電流測定部52のフィードバックループについての利得を評価する利得評価処理と、偏差補正部3から出力される後述の等価変換電圧V27(等価変換物理量)に基づいて電線54に流れる電流I1(物理量)を測定する電流測定処理と、測定した電流I1の波形を表示部37に表示させる波形表示処理とを実行する。なお、メモリには、倍率αと、良否判別処理で使用される基準値Drとが予め記憶されている。
【0090】
偏差補正部3は、上記した電圧測定装置1における偏差補正部3と同じ構成、すなわち、図6に示すように、第1加算部41、第2加算部42、第1減衰部43、第2減衰部44、VCA45、切替部46、検波部47および増幅部48を備えた構成であり、参照電圧V4a,V4bに代えて変換電圧Via,Vibが入力され、等価交流電圧V17に代えて等価変換電圧V27を生成して出力する点において相違している。
【0091】
したがって、本例での偏差補正部3の構成要素毎の詳細な動作については省略し、概要動作について説明する。この偏差補正部3は、各構成要素が変換電圧Via,Vibに基づいて電圧測定装置1の偏差補正部3と同様に動作することにより、上記した電流測定部52におけるフィードバックループの利得が切替信号S1に同期して切り替えられることによって変換電圧Viの波形に生じる振幅の変動(切替信号S1の半周期毎の電圧変動。つまり、変換電圧Via,Vibの差分)と、このフィードバックループに存在する制御偏差(電流I1と参照電流I2との差)に対応して変換電圧Viに生じる偏差(電流I1に利得βを乗算して得られる物理量(電圧)と変換電圧Viとの差)とを補正して、電流I1に利得βを乗算して得られる変換電圧Vi(変換物理量)と同じ波形の等価変換物理量としての等価変換電圧V27を生成する。
【0092】
次いで、電流検出装置1による電線54に流れる電流I1についての測定動作について説明する。なお、発明の理解を容易にするため、負帰還コイル64の巻回数は1回(n=1)であり、電線54に流れる電流I1と負帰還コイル64に流れる参照電流I2とが等しいときに、各磁束φ1,φ2の強さが等しくなって、合成磁束φ0がゼロになるものとする。
【0093】
この電流測定部52では、活電状態の電線54が磁気コア61の内部に挿入された状態において、磁気コア61内には、電線54に流れている電流I1に起因して、磁束φ1が発生している。また、磁気コア61内には、電流生成部63から出力されている参照電流I2が負帰還コイル64に流れることに起因して、磁束φ2が磁束φ1と逆向きに発生している。磁電変換素子62は、各磁束φ1,φ2の合成磁束φ0を検出して、この合成磁束φ0に比例した検出電圧V51を電流生成部63に出力し、電流生成部63が、この検出電圧V51がゼロボルトに近づくように(つまり、合成磁束φ0がゼロに近づくように)、参照電流I2の電流値を制御する。
【0094】
すなわち、電流測定部52は、図7に示すように、磁束φ1を入力(目標値)とし、かつ参照電流I2を出力(制御量)とするフィードバック制御方式の測定装置を構成するため、短時間のうちに、合成磁束φ0をフィードバックループの制御偏差内に収束させる。これにより、電流I1と参照電流I2との差分も電流についての制御偏差内に収束させられる。
【0095】
なお、上記したように、電流測定部52では、フィードバックループ全体の利得が切替信号S1に同期して、G、α×G、G、α×G、・・・というように切替信号S1の半周期毎に切り替えられているが、利得G,α×Gのいずれも参照電流I2をある程度の範囲(制御偏差)内に収束させ得る値に予め規定されているため、利得がGのときの参照電流I2a、および利得がα×Gのときの参照電流I2bは、それぞれ値は相違するものの、電流I1に近い値に収束させられる。
【0096】
この状態において、処理部66は、電流測定部52におけるフィードバックループの利得を評価する利得評価処理を実行する。この利得評価処理では、処理部66は、まず、1つのA/D変換器で変換電圧Viをサンプリングしつつ、切替信号S1に同期して、フィードバックループの利得がGのときの変換電圧Via、および利得がα×Gのときの変換電圧Vibのそれぞれの電圧波形データを取得して、メモリに記憶する。次いで、処理部66は、この取得した2つの電圧波形データを電流電圧変換部65の利得βでそれぞれ除算することにより、フィードバックループの利得がGのときの参照電流I2a、および利得がα×Gのときの参照電流I2bを取得(算出)して、メモリに記憶する(電流取得処理)。
【0097】
次いで、処理部66は、この取得した2つの参照電流I2a,I2bの差分ΔI2(=I2b−I2a)を算出すると共に、算出した差分ΔI2を2つの参照電流I2a,I2bのうちのいずれか一方の参照電流I2で除算して参照電流I2の変化率H(=ΔI2/I2)を算出する(変化率算出処理)。
【0098】
続いて、処理部66は、算出した変化率Hとメモリに記憶されている基準値Drとを比較して、変化率Hが基準値Dr以上の(または超える)ときには、利得α×Gが良好でない(利得α×Gが十分に大きな値でない)と判別し、一方、変化率Hが基準値Dr未満の(または以下の)ときには、利得α×Gが良好である(利得α×Gが十分な値である)と判別する(良否判別処理)。また、処理部66は、この判別結果を内部メモリに記憶すると共に、表示部37に表示させる。これにより、利得評価処理が完了する。
【0099】
なお、この利得評価処理については、参照電流I2に代えて、変換電圧Viを用いることもできる。この場合、上記した電流取得処理では、処理部66は、フィードバックループ全体の利得がGのときの変換電圧Via、および利得がα×Gのときの変換電圧Vibを各利得のときの参照電流I2を示すデータとして取得して、メモリに記憶する。また、上記した変化率算出処理では、処理部66は、各変換電圧Via,Vibの差分ΔVi(=Vib−Via)を算出すると共に、算出した差分ΔViを2つの変換電圧Via,Vibのうちのいずれか一方の変換電圧Viで除算して変換電圧Viの変化率H(=ΔVi/Vi)を算出する。この場合、上記したように、Via=β×I2aであり、Vib=β×I2bであるため、変換電圧Viの変化率Hは、参照電流I2の変化率Hと同一となる。このため、上記した良否判別処理では、処理部66は、参照電流I2の変化率Hのときと同様にして、変換電圧Viの変化率Hを用いて、利得α×Gの良否を判別する。
【0100】
一方、処理部66による上記の利得評価処理の実行と並行して、偏差補正部3は、2つの変換電圧Via,Vibに基づいて第1加算部41等の各構成要素が前述した電圧測定装置1における偏差補正部3の各構成要素と同じ動作を実行することにより、電流I1に利得βを乗算して得られる変換電圧Vi(変換物理量)と同じ波形の等価変換物理量としての等価変換電圧V27を生成する。
【0101】
具体的には、第1減衰部43が、電流測定部52から出力される変換電圧Viを入力(変換電圧Via,Vibを交互に入力)すると共に、予め規定された減衰率で減衰させて、減衰電圧V12としてVCA45に出力する。また、第1加算部41は、変換電圧Viを入力(変換電圧Via,Vibを交互に入力)すると共に、切替部46から切替信号S1に同期して出力される各電圧(1次加算電圧V13またはゼロボルト)を変換電圧Viに交互に加算して、1次補正変換電圧V11Aとして出力する。
【0102】
この状態において、偏差補正部3の他の構成要素としてのVCA45、切替部46、検波部47および増幅部48が、電圧測定装置1における偏差補正部3の各構成要素と同じ動作を実行して、VCA45から出力される1次加算電圧V13を差分ΔVi(=Vib−Via)とほぼ一致する状態に収束させる(1次加算物理量生成処理を実行する)。
【0103】
これにより、第1加算部41は、切替信号S1が低レベルのとき(フィードバックループの利得がGのとき)には、変換電圧Vib(変換物理量)に1次加算電圧V13(=ΔVi)を加算して、一方、切替信号S1が高レベルのとき(フィードバックループの利得がα×Gのとき)には、変換電圧Vib(変換物理量)にゼロボルトを加算して(つまり、変換電圧Vibをそのまま)、それぞれ1次補正変換電圧V11Aとして出力する(1次補正処理)。また、第2減衰部44は、この1次加算電圧V13(=ΔVi)を1/(α−1)倍して、2次加算電圧V16として出力する。また、第2加算部42は、第1加算部41から出力されている1次補正変換電圧V11A(=変換電圧Vib)に、第2減衰部44から出力されている2次加算電圧V16(=ΔVi/(α−1))を加算して、等価変換電圧V27(=Vib+ΔVi/(α−1))を生成して、処理部66に出力する(変換物理量生成処理)。
【0104】
処理部66は、偏差補正部3の第2加算部42から出力される等価変換電圧V27を入力すると共に、この等価変換電圧V27をもう一つのA/D変換器でA/D変換して、その電圧波形データを取得し、かつ取得した電圧波形データに対して、参照電流I2から変換電圧Viへの変換と逆の変換、つまり電流電圧変換部65での利得βで除算する変換を実行することにより、この電流測定装置51での物理量である電流I1と等価の等価電流I3の電流波形データに変換する(物理量生成処理)。また、処理部66は、この電流波形データをメモリに記憶する。この場合、等価電流I3は、V27/β=[Vib+ΔVi/(α−1)]/β)として表される。
【0105】
この電流測定装置51の電流測定部52のように、フィードバックループの利得をG,α×Gとの間で周期的に切り替える構成の測定装置では、以下のような関係が成り立っている。
【0106】
上記したように、電圧測定部2は、磁束φ1を入力(目標値)とし、かつ参照電流I2を出力(制御量)とするフィードバック制御方式の測定装置として構成され、かつこの参照電流I2を電流電圧変換部65において利得βで変換電圧Viに変換して出力する。この場合、磁束φ1は電線54を流れる電流I1に比例する。また、磁束φ2は負帰還コイル64を流れる参照電流I2に負帰還コイル64の巻回数nを乗算した電流に比例する。本例では、一例としてnは1であるため(つまり、負帰還コイル64での利得が1であるため)、磁束φ2は参照電流I2そのものに比例する。
【0107】
これにより、電流測定部52における電流電圧変換部65の前段までのフィードバックループを構成する各構成要素は、電流I1を入力とし、かつ参照電流I2を出力として、双方の差分(制御偏差)としての誤差U(=I1−I2)がゼロ(ゼロアンペア)に近づくようにフィードバック制御するモデルとみなすことができる。このため、電流測定部52のフィードバックループの増幅率をGとしたときには、下記の式(51),(52)が成り立つ。
U=I1−I2a ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (51)
I2a=G×U ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (52)
【0108】
また、このとき、入力であるI1に対する誤差Uの割合を誤差率e1として考えたときに、この誤差率e1は、下記の式(53)で表される。
誤差率e1=U/I1=1/(1+G) ・・・・・・・・・・・ (53)
【0109】
一方、フィードバックループ全体の増幅率がα×Gに変更されたときには、下記の式(54),(55)が成り立つ。
U=I1−I2b ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (54)
I2b=α×G×U ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (55)
【0110】
また、このとき、入力であるV1に対する誤差Uの割合を誤差率e2として考えたときに、この誤差率e2は、下記の式(56)で表される。
誤差率e2=U/I1=1/(1+α×G) ・・・・・・・・・・(56)
【0111】
次に、両誤差率e1,e2の差をεとすると、εは下記式(57)で表される。
ε=e1−e2
=1/(1+G)−1/(1+α×G)
=(α−1)×G/(1+(α+1)×G+α×G) ・・・・ (57)
【0112】
なお、εは下記式(58)とも表される。
ε=e1−e2
=(I1−I2a)/I1−(I1−I2b)/I1
=(−I2a+I2b)/I1
=ΔI2/I1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (58)
【0113】
また、利得Gは数値1よりも十分に大きく(G≫1)、倍率αも2〜3程度で良いため、Gはこの倍率αとの関係においても十分に大きな値となっている。したがって、上記式(57)は下記式(59)のように近似することができる。
ε≒(α−1)×(1/(1+α×G)) ・・・・・・・・・・ (59)
【0114】
また、この式(59)の右式の(1/(1+α×G))は、式(56)より誤差率e2であることから、さらに下記式(60)のように表される。
ε≒(α−1)×e2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (60)
【0115】
εは、式(58)と表されるため、上記式(56)を考慮して整理すると、
U=I1×e2=ΔI2/(α−1) ・・・・・・・・・・・・ (61)
【0116】
上記式(54),(60)より、電流I1は、下記式(62)のように表される。
I1=I2b+U=I2b+ΔI2/(α−1) ・・・・・・・ (62)
【0117】
この場合、式(62)の右辺におけるI2bは、目標値としてのI1により近い制御量である高利得(利得(α×G))時の制御量であることから、目標値と制御量との差分である右辺のΔI2/(α−1)は、フィードバックループの制御偏差を示している。
【0118】
一方、電流測定部52から出力される変換電圧Via,Vibは、電流電圧変換部65が参照電流I2a,I2bをそれぞれβ倍したものである。このため、この関係を上記式(62)に適用することにより、電流I1は、変換電圧Via,Vibを用いて、下記式(63)のように表される。
I1=Vib/β+(Vib/β−Via/β)/(α−1)
=[Vib+ΔVi/(α−1)]/β ・・・・・・・(63)
ここで、ΔVi=Vib−Viaである。
【0119】
したがって、処理部66が偏差補正部3からの等価変換電圧V27に対して上記したようにβで除算する変換を行って等価電流I3(=V27/β=[Vib+ΔVi/(α−1)]/β)を算出することにより、処理部66は、電流I1と等価な物理量を測定(算出)することが可能となっている。
【0120】
なお、本例では、切替信号S1は電流I1とは非同期な信号である。このため、電流I1が交流電流の場合には、切替信号S1の周期は、電流I1の周期以下となる場合や、電流I1の周期を超える場合もある。しかしながら、いずれの場合であっても、偏差補正部3が上記したように動作することにより、上記した電圧測定装置1のときと同様にして、切替信号S1に同期した電圧変動(切替信号S1の半周期毎の電圧変動)と制御偏差とが解消された等価変換電圧V27が偏差補正部3から出力され、切替信号S1に同期した電圧変動(切替信号S1の半周期毎の電圧変動)と制御偏差とが解消された等価電流I3が処理部66によって算出される。
【0121】
次いで、処理部66は、メモリに記憶されているこの等価電流I3の電流波形データに基づいて、電流測定処理および波形表示処理を実行する。
【0122】
まず、電流測定処理では、処理部66は、等価電流I3の電流波形データに基づいて、等価電流I3の実効電圧値、振幅および周期(または周波数)などの電気的特性値を算出(測定)して、メモリに記憶すると共に表示部37に表示させる。次に、波形表示処理では、処理部66は、等価電流I3の電流波形データに基づいて、等価電流I3の波形(電流波形)を表示部37に表示させる。この場合、処理部66によって測定された等価電流I3は、上記したように電流I1と等価な電流であるため、上記した等価電流I3に対する電圧測定処理および波形表示処理の完了により、電流I1に対する電圧測定処理および波形表示処理が完了する。
【0123】
このように、この電流測定装置51、およびこの電流測定装置51が実行する測定方法によれば、電流測定部52におけるフィードバック制御の利得(フィードバックループの利得)についての評価のためにこの利得をGとα×Gとに交互に切り替える場合であっても、利得がGの期間では変換電圧Viaに対して1次加算電圧V13(=ΔVi)を加算して1次補正変換電圧V11A(=変換電圧Vib)として出力し、かつ利得がα×Gの期間では変換電圧Vibをそのまま1次補正変換電圧V11Aとして出力する1次補正処理と、1次加算電圧V13を1/(α−1)倍して2次加算電圧V16を生成すると共に、2次加算電圧V16を1次補正変換電圧V11Aに加算して、変換電圧Viと等価の等価変換電圧V27を生成する変換物理量生成処理と、利得G,α×Gの切替タイミング(切替信号S1の半周期)に同期して1次補正変換電圧V11Aを同期検波して得られる検波電圧V14がゼロボルトに近づくように(言い換えれば、利得がGのときの1次補正変換電圧V11Aと利得がα×Gのときの1次補正変換電圧V11Aとの差分に応じた電圧を検出すると共に検出した電圧がゼロボルトに近づくように)、変換電圧Viを減衰させて1次加算電圧V13を生成する1次加算物理量生成処理と、参照電流I2から変換電圧Viへの変換と逆の変換(βで除算する変換)を等価変換電圧V27に対して実行して、電流I1と等価の等価電流I3を生成する物理量生成処理とを実行することにより、フィードバック制御の利得についての利得評価処理を実行して測定の信頼性を確保しつつ、電線54に流れている電流I1の波形をスムーズな波形(フィードバック制御の利得の切り替えに起因した電圧変動の生じていない波形)として、表示部37に表示させて測定することができる。
【0124】
なお、上記の電圧測定装置1および電流測定装置51では、利得切替信号生成部35は、交流電圧V1や電流I1(交流電流の場合)とは非同期で切替信号S1を生成する構成を採用しているが、交流電圧V1や電流I1が交流電流である場合(測定対象体の物理量が交流信号の場合)であって、電圧測定部2や電流測定部52におけるフィードバックループの利得G,α×Gの切替タイミング(切替周期。切替信号S1の半周期)が、交流電圧V1や交流電流である電流I1の周期よりも長い場合には、図8に示すように、フィードバックループの利得G,α×Gの切替タイミングを交流電圧V1や電流I1のゼロクロス点に同期させる構成を採用することもできる。
【0125】
以下、この構成を採用した電圧測定装置1Aについて、図1を参照して説明する。なお、電圧測定装置1と基本構成は同一であるため、同一の構成については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0126】
この電圧測定装置1Aは、利得切替信号生成部35に代えて、利得切替信号生成部35Aを有する点と、処理部36が、上記した各処理に加えて、等価交流電圧V17のゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出処理と、利得切替信号生成部35Aに対する制御処理とを実行する点においてのみ相違する。この構成する構成についてのみ説明する。
【0127】
利得切替信号生成部35Aは、一例として、PLL(Phase Locked Loop)回路を用いて構成されて、デューティ比が0.5の切替信号S1の周波数および位相を制御可能に構成されている。処理部36は、ゼロクロス点検出処理では、等価交流電圧V17のゼロクロス点(一例として立ち上がり時のゼロクロス点)を検出する。また、処理部36は、利得切替信号生成部35Aに対する制御処理では、検出した等価交流電圧V17のゼロクロス点と、切替信号S1の立ち上がりまたは立ち下がりのタイミング(本例では、等価交流電圧V17のゼロクロス点が立ち上がり時のゼロクロス点であるため、立ち上がりのタイミング)との位相差を検出し、利得切替信号生成部35Aに対して制御信号S2を出力することにより、この位相差が減少するように切替信号S1の位相差および周波数を制御する。
【0128】
この電流測定装置1Aでは、上記したように利得切替信号生成部35Aが構成され、かつ処理部36が上記したようにゼロクロス点検出処理および利得切替信号生成部35Aに対する制御処理を実行することにより、切替信号S1の立ち上がりが、等価交流電圧V17のゼロクロス点に同期し、かつ切替信号S1の周期が等価交流電圧V17の周期の整数倍の周期に規定される。また、上記したように切替信号S1のデューティ比が0.5であるため、切替信号S1の立ち下がりも、等価交流電圧V17のゼロクロス点に同期する。したがって、この電流測定装置1Aによれば、フィードバックループの利得G,α×Gの切替タイミングが等価交流電圧V17の周期に同期する状態となるため、フィードバックループの利得G,α×Gの切り替えに起因したスイッチングノイズの等価交流電圧V17への重畳を大幅に軽減することができる。
【0129】
また、上記の偏差補正部3は、第1加算部41、第2加算部42、第1減衰部43、第2減衰部44、VCA45、切替部46、検波部47および増幅部48の複数の要素で構成されているが、これらのうちの複数の要素を1つのDSP(Digital Signal Processor)で構成することもできる。また、偏差補正部3への入力信号および出力信号をA/D変換することにより、偏差補正部3を構成する上記各要素のうちの複数個の機能を処理部36(電流測定装置51では処理部66)に持たせる構成を採用することもできる。
【0130】
上記した電圧測定装置1,1Aおよび電流測定装置51のうちの電圧測定装置1を例に挙げて説明する。この場合、図9に示すように、電圧測定部2と偏差補正部3の各構成要素のうちの一点鎖線で囲まれた構成要素の各機能をコンピュータ(CPU)で実行する構成とする。具体的には、電圧測定部2では、電圧生成部34を構成する交流増幅回路34aおよび位相補償回路34b、利得切替信号生成部35、並びに処理部36の各機能をソフトウェアで実行する構成とする。また、偏差補正部3では、2つの加算部41,42を除くすべての構成要素の機能をソフトウェアで実行する構成とする。
【0131】
このため、切替信号S1については、例えば、利得切替信号生成部35の機能を実行するカウントプログラムが、切替信号S1の半周期の時間をカウントして、この半周期毎に切替信号S1を示す切替信号データDS1の値を「0」,「1」,「0」,「1」,・・・というように変更することで生成される。
【0132】
また、積分電圧V3aについては、A/D変換器71で積分電圧データDV3aに変換されて、交流増幅回路34aおよび位相補償回路34bの各機能を実行する第1処理プログラムで処理される。この第1処理プログラムは、入力した積分電圧データDV3aを切替信号S1の半周期毎に、G倍,α×G倍,G倍,α×G倍,・・・というように交互に増幅し、さらに増幅したデータDVaに対して、フィードバック制御動作の安定化(発振防止)を図るため、位相を調整して、第2電圧データDVbとして出力する。この第2電圧データDVbについては、D/A変換器76で第2電圧Vbに変換して昇圧回路34cに出力する。
【0133】
また、参照電圧V4については、A/D変換器72で参照電圧データDV4に変換されて、処理部36、第1減衰部43およびVCA45の各機能を実行する第2処理プログラムで処理される。この第2処理プログラムのうちの処理部36の機能を実行するプログラムでは、処理部36が実行する上記した処理と同じ処理を実行し、第1減衰部43およびVCA45の機能を実行するプログラムでは、入力した参照電圧データDV4を予め規定された減衰率で一旦減衰させ、この減衰後のデータDV12を、検波部47および増幅部48の各機能を実行する後述の第3プログラムで算出される制御電圧データDV15で示される増幅率で増幅して、1次加算電圧データDV13を算出する。
【0134】
また、1次補正参照電圧V11については、A/D変換器74で1次補正参照電圧データDV11に変換されて、検波部47および増幅部48の各機能を実行する第3処理プログラムで処理される。この第3理プログラムは、1次補正参照電圧データDV11を切替信号S1に同期して検波して検波電圧データDV14として出力する。増幅部48は、この検波電圧データDV14を予め規定された増幅率で増幅して、制御電圧データDV15として出力する。
【0135】
上記のようにして算出された1次加算電圧データDV13は、切替部46の機能を実行する第4プログラムで処理されて、切替信号S1が高レベル(切替信号データDS1が「1」)のときにD/A変換器73によって1次加算電圧V13に変換されて第1加算部41に出力される。なお、切替信号S1が低レベル(切替信号データDS1が「0」)のときには、ゼロボルトが1次加算電圧V13として出力される。
【0136】
また、この1次加算電圧データDV13は、第2減衰部44の機能を実行する第5プログラムで処理されて、1/(α−1)倍されて、2次加算電圧データDV16に変換され、さらにD/A変換器75によって2次加算電圧V16に変換されて第2加算部42に出力される。また、第2加算部42から出力される等価交流電圧V17は、A/D変換器76によって等価交流電圧データDV17に変換されて、第2処理プログラムのうちの処理部36の機能を実行するプログラムによって処理される。
【0137】
このように、電圧測定部2と偏差補正部3の各構成要素のうちの一点鎖線で囲まれた上記の各構成要素の各機能をコンピュータ(CPU)によってソフトウェアで実行する構成とすることにより、フィードバックループの利得を決定するαを自由に設定することができる。
【0138】
また、上記した測定装置の各例では、第1減衰部43およびVCA45が、電圧測定部2から出力される参照電圧V4や、電流測定部52から出力される変換電圧Viに基づいて、1次加算電圧V13を出力する構成を採用しているが、フィードバックループの利得を切り替えたときに電圧測定部2から出力される参照電圧V4に生じる差分ΔV4、電流測定部52から出力される変換電圧Viに生じる差分ΔVi、およびフィードバックループの制御偏差を補正するために偏差補正部3で用いられている1次加算電圧(1次加算物理量)V13は、参照電圧V4や変換電圧Viと比較すると小さな値である。このため、1次補正参照電圧V11および等価交流電圧V17は、参照電圧V4にほぼ等しい値となり、1次補正参照電圧V11および等価変換電圧V27は、変換電圧Viにほぼ等しい値となることから、電圧測定部2では、第1減衰部43およびVCA45が、参照電圧V4に代えて、1次補正参照電圧V11または等価交流電圧V17を入力する構成を採用することもできるし、また電流測定部52では、第1減衰部43およびVCA45が、変換電圧Viに代えて、1次補正参照電圧V11または等価変換電圧V27を入力する構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0139】
1 電圧測定装置
2 電圧測定部
3 偏差補正部
4 測定対象体
51 電流測定装置
52 電流測定部
V1 交流電圧
V4 参照電圧
V11 1次補正参照電圧
V13 1次加算電圧
V14 検波電圧
V16 2次加算電圧
V17 等価交流電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象体の物理量に対応する参照物理量を前記物理量との差が減少するようにフィードバック制御して生成すると共に、前記参照物理量に基づいて前記測定対象体の前記物理量を測定する測定装置であって、
前記フィードバック制御の利得についての評価のために当該利得をGとα×G(αは1を超える正数)とに交互に切り替えつつ、
前記利得がGの期間では前記参照物理量に対して1次加算物理量を加算して1次補正参照物理量として出力し、かつ当該利得がα×Gの期間では前記参照物理量をそのまま前記1次補正参照物理量として出力する1次補正処理と、
前記1次加算物理量を1/(α−1)倍して2次加算物理量を生成すると共に、当該2次加算物理量を前記1次補正参照物理量に加算して前記物理量と等価の等価物理量を生成する物理量生成処理と、
前記利得がGのときの前記1次補正参照物理量と当該利得がα×Gのときの前記1次補正参照物理量との差分を検出すると共に当該検出した差分がゼロに近づくように、前記参照物理量、前記1次補正参照物理量および前記等価物理量のうちのいずれかを減衰させて前記1次加算物理量を生成する1次加算物理量生成処理とを実行する測定装置。
【請求項2】
測定対象体の物理量に対応する参照物理量を前記物理量との差が減少するようにフィードバック制御して生成すると共に、前記参照物理量を変換して得られる変換物理量に基づいて前記測定対象体の前記物理量を測定する測定装置であって、
前記フィードバック制御の利得についての評価のために当該利得をGとα×G(αは1を超える正数)とに交互に切り替えつつ、
前記利得がGの期間では前記変換物理量に対して1次加算物理量を加算して1次補正変換物理量として出力し、かつ当該利得がα×Gの期間では前記変換物理量をそのまま前記1次補正変換物理量として出力する1次補正処理と、
前記1次加算物理量を1/(α−1)倍して2次加算物理量を生成すると共に、当該2次加算物理量を前記1次補正変換物理量に加算して前記変換物理量と等価の等価変換物理量を生成する変換物理量生成処理と、
前記利得がGのときの前記1次補正変換物理量と当該利得がα×Gのときの前記1次補正変換物理量との差分を検出すると共に当該検出した差分がゼロに近づくように、前記変換物理量、前記1次補正変換物理量および前記等価変換物理量のうちのいずれかを減衰させて前記1次加算物理量を生成する1次加算物理量生成処理と、
前記参照物理量から前記変換物理量への変換と逆の変換を前記等価変換物理量に対して実行することにより、前記物理量と等価の等価物理量を生成する物理量生成処理とを実行する測定装置。
【請求項3】
前記測定対象体の前記物理量が交流信号のときには、当該物理量のゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出処理を実行し、
前記検出したゼロクロス点に同期すると共に前記物理量の周期の整数倍の周期で前記利得の切り替えを実行する請求項1または2記載の測定装置。
【請求項4】
測定対象体の物理量に対応する参照物理量を前記物理量との差が減少するようにフィードバック制御して生成すると共に、前記参照物理量に基づいて前記測定対象体の前記物理量を測定する測定方法であって、
前記フィードバック制御の利得についての評価のために当該利得をGとα×G(αは1を超える正数)とに交互に切り替えつつ、
前記利得がGの期間では前記参照物理量に対して1次加算物理量を加算して1次補正参照物理量として出力し、かつ当該利得がα×Gの期間では前記参照物理量をそのまま前記1次補正参照物理量として出力する1次補正処理と、
前記1次加算物理量を1/(α−1)倍して2次加算物理量を生成すると共に、当該2次加算物理量を前記1次補正参照物理量に加算して前記物理量と等価の等価物理量を生成する物理量生成処理と、
前記利得がGのときの前記1次補正参照物理量と当該利得がα×Gのときの前記1次補正参照物理量との差分を検出すると共に当該検出した差分がゼロに近づくように、前記参照物理量、前記1次補正参照物理量および前記等価物理量のうちのいずれかを減衰させて前記1次加算物理量を生成する1次加算物理量生成処理とを実行する測定方法。
【請求項5】
測定対象体の物理量に対応する参照物理量を前記物理量との差が減少するようにフィードバック制御して生成すると共に、前記参照物理量を変換して得られる変換物理量に基づいて前記測定対象体の前記物理量を測定する測定方法であって、
前記フィードバック制御の利得についての評価のために当該利得をGとα×G(αは1を超える正数)とに交互に切り替えつつ、
前記利得がGの期間では前記変換物理量に対して1次加算物理量を加算して1次補正変換物理量として出力し、かつ当該利得がα×Gの期間では前記変換物理量をそのまま前記1次補正変換物理量として出力する1次補正処理と、
前記1次加算物理量を1/(α−1)倍して2次加算物理量を生成すると共に、当該2次加算物理量を前記1次補正変換物理量に加算して前記変換物理量と等価の等価変換物理量を生成する変換物理量生成処理と、
前記利得がGのときの前記1次補正変換物理量と当該利得がα×Gのときの前記1次補正変換物理量との差分を検出すると共に当該検出した差分がゼロに近づくように、前記変換物理量、前記1次補正変換物理量および前記等価変換物理量のうちのいずれかを減衰させて前記1次加算物理量を生成する1次加算物理量生成処理と、
前記参照物理量から前記変換物理量への変換と逆の変換を前記等価変換物理量に対して実行することにより、前記物理量と等価の等価物理量を生成する物理量生成処理とを実行する測定方法。
【請求項6】
前記測定対象体の前記物理量が交流信号のときには、当該物理量のゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出処理を実行し、
前記検出したゼロクロス点に同期すると共に前記物理量の周期の整数倍の周期で前記利得の切り替えを実行する請求項4または5記載の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−19853(P2013−19853A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155302(P2011−155302)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】