測定装置および測定方法
【課題】試料における蛍光成分を含む分光放射輝度率を効率的に測定する。
【解決手段】複数の紫外光源と白色光源を有する測定部704で、まず白色光源を点灯させて、試料の可視光成分の分光放射輝度率を得る。次に測定判定部702が、測定条件データ格納部701から、試料に応じて予め定められた、複数の紫外光源のそれぞれについて点灯するか否かを示す測定条件を取得し、点灯が示された紫外光源を判定する。そして制御部703が測定部704に対し、該点灯すると判定された紫外光源を点灯させるように制御して、試料の蛍光成分の分光放射輝度率を得る。これにより、紫外光源を無駄に点灯することなく、該試料の全分光放射輝度率を効率良く得ることができる。
【解決手段】複数の紫外光源と白色光源を有する測定部704で、まず白色光源を点灯させて、試料の可視光成分の分光放射輝度率を得る。次に測定判定部702が、測定条件データ格納部701から、試料に応じて予め定められた、複数の紫外光源のそれぞれについて点灯するか否かを示す測定条件を取得し、点灯が示された紫外光源を判定する。そして制御部703が測定部704に対し、該点灯すると判定された紫外光源を点灯させるように制御して、試料の蛍光成分の分光放射輝度率を得る。これにより、紫外光源を無駄に点灯することなく、該試料の全分光放射輝度率を効率良く得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料における蛍光成分を含む分光放射輝度率を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体や色材に蛍光剤を付与することで、媒体の白色度や色材の彩度を上げ、出力画像の発色性を向上させることができる。蛍光剤は、紫外光に代表される可視光波長域外の光を受けて、可視光波長域内の光を発する特性があり、出力画像を観察する照明光の違いによって、その色再現に違いが生じる。従って、蛍光剤を含む媒体や色材を用いる画像処理装置において、任意の観察環境下での出力画像の再現色を忠実に推定するためには、媒体や色材に含まれる蛍光剤による発光の分光放射輝度率を獲得する必要がある。
【0003】
任意の観察光源下での試料の色を示す全分光放射輝度率は、試料が発する蛍光成分を含まない反射成分である反射分光放射輝度率と、蛍光成分である蛍光分光放射輝度率を合成したものである。よって、試料の全分光放射輝度率を獲得するためには、試料の蛍光成分を含まない反射分光放射輝度率と、蛍光成分である蛍光分光放射輝度率を各々記述した、二分光放射輝度率を獲得する必要がある。
【0004】
一般に、試料の二分光放射輝度率を獲得するには、可視光域の波長を持つ白色光源と、紫外域の波長を持つ光源の2種類以上の光源で試料を照射し、各光源における試料の反射光を分光放射輝度計を用いて検出する。そこで、蛍光成分を含む試料の全分光放射輝度率を獲得するために、以下のような技術が従来より知られている。
【0005】
まず、紫外光を含む光源と含まない光源の2種類の光源下で試料の分光反射強度を測定し、測定した各分光波長に対して加重係数をかけて合成することで、試料の全分光放射輝度率を求める方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、まず試料を分光波長の異なる複数の測定光源で測定し、該複数の測定光源について試料の観察光源と同等な分光波長を合成するための加重係数を求める。そして、予め用意した試料の媒体と同等の二分光放射輝度率と、複数の測定光源による測定値と、上記加重係数を用いて、試料を観察光源で測定した場合と同等の、全分光放射輝度率を推定する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08-313349号公報
【特許文献2】特開2006-292510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に媒体の白色度を上げるために付与される蛍光増白剤は、媒体上に形成される色材の色やその色材量によっては、照明光における励起光波長が色材に吸収されて媒体まで届かず、蛍光を発光しない場合がある。もしくは、媒体に届いた照明光により発光した蛍光の波長が色材に吸収されることによって、結果的に蛍光が減衰するといった現象が発生する場合がある。したがって、試料を構成する媒体と色材の種類や量に応じて決定される試料の色によっては、該試料に蛍光増白剤が含まれているにも関わらず、測定された全分光放射輝度率に蛍光成分が含まれないことがある。
【0009】
上記特許文献1および2に記載された全分光放射輝度率の測定方法においては、試料が発する蛍光成分の量については考慮されていない。したがって試料を測定する際に、該試料が蛍光を発するか否かに関わらず、常に複数光源による測定を必要とし、相応の測定時間を要していた。
【0010】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、試料における蛍光成分を含む分光放射輝度率を効率的に測定する測定装置および測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための一手段として、本発明の測定装置は以下の構成を備える。
【0012】
すなわち、紫外光源と白色光源とを用いて試料の分光特性を測定する測定装置であって、前記白色光源の分光放射輝度率と任意の観察光源の分光放射輝度率とを予め保持する保持手段と、前記白色光源を点灯させて前記試料の反射光を測定することで、該試料の分光放射輝度率を得る第1の測定手段と、前記保持手段に保持された前記白色光源の分光放射輝度率と前記観察光源の分光放射輝度率を用いて、前記第1の測定手段で得られた分光放射輝度率から、前記観察光源の下の前記試料の分光放射輝度率を算出する算出手段と、前記試料に対して予め定められた、前記紫外光源を点灯するか否かを示す測定条件を取得する測定条件取得手段と、前記測定条件により点灯する旨が示された前記紫外光源を点灯させて前記試料の反射光を測定することで、前記試料が発する蛍光の分光放射輝度率を得る第2の測定手段と、前記算出手段で得られた分光放射輝度率と前記第2の測定手段で得られた分光放射輝度率から、前記観察光源の下の前記試料の全分光放射輝度率を算出する演算手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、試料における蛍光成分を含む分光放射輝度率を効率的に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態における色処理システムの概略構成を示すブロック図、
【図2】測定装置の外観および測定例を示す図、
【図3】各測定光源の分光放射輝度率を示す図、
【図4】測定装置の機能構成を示すブロック図、
【図5】蛍光演算部のブロック図、
【図6】紫外光源測定データ格納部のメモリ構成を示す図、
【図7】演算処理部における、プリンタプロファイルを作成するため機能構成を示すブロック図、
【図8】パッチチャートの構成例を示す図、
【図9】測定条件データ例を示す図、
【図10】色変換部の詳細構成を示すブロック図、
【図11】第1実施形態におけるプロファイル作成処理を示すフローチャート、
【図12】パッチチャートの測定処理を示すフローチャート、
【図13】全分光放射輝度率の算出処理を示すフローチャート、
【図14】第2実施形態における測定装置の機能構成を示すブロック図、
【図15】第2実施形態における測定条件データ例を示す図、
【図16】第2実施形態における試料の測定処理を示すフローチャート、
【図17】第3実施形態における測定条件データ例を示す図、
【図18】第3実施形態における試料の測定処理を示すフローチャート、である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態は特許請求の範囲に関る本発明を限定するものではなく、また、本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0016】
<第1実施形態>
●処理概要
本実施形態では、試料における蛍光成分を含む分光放射輝度率を以下のように測定する測定装置について説明する。すなわち、紫外光源と白色光源を用いて試料の分光特性を測定する測定装置において、まず白色光源を点灯させて、試料の分光放射輝度率を得る(第1の測定処理)。そして、予め保持された白色光源の分光放射輝度率と観察光源の分光放射輝度率を用いて、可視光成分測定処理により得られた分光放射輝度率から、該観察光源の下の試料の分光放射輝度率を算出する(算出処理)。そして、試料に対して予め定められた、紫外光源を点灯するか否かを示す測定条件を取得し(測定条件取得処理)、点灯する旨が示された紫外光源を点灯させて、該試料が発する蛍光の分光放射輝度率を得る(第2の測定処理)。そして、可視光成分算出処理で得られた分光放射輝度率と蛍光成分測定処理で得られた分光放射輝度率から、観察光源の下の該試料の全分光放射輝度率を効率良く算出する(演算処理)ことができる。
【0017】
●システム構成
図1に、本実施形態における色処理システムの構成を示す。同図において、CPU101は、ROM102が記憶している制御プログラム、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラム、デバイスドライバ等に従って、同図に示す各構成の制御を行う。RAM103は各種制御プログラムや操作部104から入力されるデータの作業領域及び一時待避領域として使用される。104は操作部であり、例えばキーボードやマウスを介してユーザからの指示入力を受ける。107は測定装置であり、本実施形態におけるプリンタプロファイル作成の際に記録媒体上に印刷された試料の測定を行う。108はプリンタであり、不図示の入力デバイスから入力され、演算処理部105において処理された画像データを、操作部104からの指示入力に応じて記録媒体に印刷出力する。105は演算処理部であり、本実施形態における分光放射輝度率を獲得するための演算処理や、試料の観察環境光に応じた全分光放射輝度率を獲得する演算処理等を行う。演算処理部105はまた、本実施形態におけるプリンタプロファイルの作成処理を行う。具体的には、プリンタ108が出力した色票を測定装置107を用いて測定し、その測定値に基づいてプリンタプロファイルを作成する。106はモニタであり、演算処理部105における処理結果や操作部104より入力されたデータ等を表示する。
【0018】
ここで、本実施形態における試料の全分光放射輝度率を獲得する方法について、簡単に説明する。一般に試料は、記録媒体上での色材の色によって蛍光を発する色としない色に分類される。そこで本実施形態では試料ごとに、蛍光成分の測定を実施するか否かを規定した判定条件を予め設定しておく。そして、測定装置に設置された試料についてそれぞれの判定条件を参照し、蛍光成分を測定すると判定された場合のみ、紫外光源を用いて蛍光成分の分光放射輝度の測定を行うことを特徴とする。
【0019】
●測定装置
図2(a)に、本実施形態において試料の分光特性を測定する測定装置107の外観を示す。同図に示すように測定装置107は、まず、紫外域を含まない可視域の波長を持つ白色光源201と、互いに異なる紫外域波長を持つ紫外光源202,203を測定光源として有する。測定装置107はさらに、これら各測定光源によって照射された試料からの分光反射強度を取得するセンサ204を有する。
【0020】
ここで図3(a)に、白色光源201の分光放射輝度率の一例を示す。同図に示すように白色光源201の分光放射輝度率301は、紫外域の波長については放射輝度を持たず、可視域の波長のみについて放射輝度を持っている。したがって、白色光源201の点灯下では蛍光は発生しない。なお白色光源201は詳細には、一般的な白色光源からの照射光を紫外域の波長をカットするフィルタを通すことで、上記図3(a)に示す分光特性を実現する。一方、紫外光源202,203は、任意の数(この場合2つ)の、互いに異なる紫外域波長を持つ光源によって構成されている。図3(b),(c)に、紫外光源202、203の分光放射輝度率の一例をそれぞれ示す。
【0021】
ここで図2(b)を用いて、測定装置107における試料の測定方法を説明する。図2(b)は、測定装置107により試料601を測定する際の側断面を示す図である。まず、可視光を発する白色光源201、もしくは複数の紫外光源202,203のいずれか一つが点灯して試料601を照射する。そして、試料601からの反射光を測定装置107の中央にあるセンサ204で受光することで、該試料による光源毎の分光放射輝度率が獲得される。以下、測定装置107において白色光源201の点灯下で測定された試料の分光放射輝度率を、該反射光の全てが可視光の反射であることから可視光成分と称する。また、紫外光源202,203のいずれかの点灯下で測定された試料の分光放射輝度率は、すなわち発生した蛍光によるものであることから蛍光成分と称する。
【0022】
図4は、上記図2に示した測定装置107の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように測定装置107はまず、上記測定光源201〜203とセンサ204によって試料を測定する測定部704と、測定光源201〜203それぞれの点灯を制御する制御部703、を有する。そして、試料に対する紫外光源による測定条件を格納する測定条件データ格納部701、該測定条件を参照して紫外光源202,203の点灯下での測定を行うか否かを判定する測定判定部702、を有する。測定部704で光源毎に測定された試料の分光放射輝度率は、測定データ格納部705に格納される。そして蛍光演算部706において、紫外光源202,203を用いて測定された試料の分光放射輝度率から、該試料における蛍光成分の分光放射輝度率を獲得する。獲得された蛍光成分の分光放射輝度率は、分光放射輝度率格納部707に格納される。なお、測定部704において白色光源201を用いて測定された試料の可視光成分の分光放射輝度率は、そのまま分光放射輝度率格納部707に格納される。
【0023】
図5に、蛍光演算部706の詳細なブロック構成を示す。同図に示す紫外光源測定データ格納部801は、測定部704で測定され、測定データ格納部705に格納された分光放射輝度率のうち、紫外光源202,203の点灯下で得られた分光放射輝度率を格納する。
【0024】
ここで図6に、紫外光源測定データ格納部801におけるメモリ構成例を示す。同図に示すように紫外光源測定データ格納部801は、試料を測定した測定光源の種類を格納する光源情報格納部902と、離散的な入力波長毎に反射率を格納する分光放射輝度率格納部903、によって構成されている。なお、分光放射輝度率格納部707には、白色光源201を用いて測定された可視光成分の分光放射輝度率が、上記図6とほぼ同様のメモリ構成で格納されている。すなわち、図6において光源の種類を格納する光源情報格納部902に、白色光源201を示す情報(例えば「可視光白色」)が格納される。また、分光放射輝度率格納部903には紫外光源の場合と同様に、例えば300〜780nmの入力波長域における10nm間隔で、測定された反射率が格納される。
【0025】
図5に戻り、演算部803は、複数の紫外光源202,203によって測定された試料の分光放射輝度率について、加重係数格納部802に保持された加重係数を用いた重み付け合成を行う。これにより、試料の蛍光成分による分光放射輝度率が算出される。加重係数格納部802は、紫外光源202,203のそれぞれに対して予め設定された加重係数を格納している。演算部803で重み付け合成された蛍光成分の分光放射輝度率は、図6に示すメモリ形式で、分光放射輝度率格納部707に格納される。
【0026】
以下、演算部803における、蛍光成分の分光放射輝度率の算出方法について説明する。本実施形態では、紫外光の測定光源として2種類の紫外光源202,203を用いる。この2種類の紫外光源S1(λ),S2(λ)によって試料を測定して得られる分光放射輝度率、すなわち蛍光成分の分光放射輝度率を、それぞれI1(λ),I2(λ)とする。すると、試料の蛍光成分の分光放射輝度率F(λ)は、紫外光源S1(λ),S2(λ)に対する加重係数W1,W2を用いて、以下の式(1)に示す重み付け加算により算出される。なお、加重係数W1,W2は、試料の観察光源によらない値として、予め定義されている。
【0027】
F(λ)=I1(λ)・W1+I2(λ)・W2 …(1)
本実施形態の測定装置107においては以上説明したように、試料の可視光成分の分光放射輝度率と、蛍光成分の分光放射輝度率がそれぞれ獲得され、分光放射輝度率格納部707に保持される。
【0028】
なお、測定装置107では、プリンタプロファイル作成時にパッチチャートの測定を行うが、その際に、上記制御部703による測定光源201〜203の点灯制御が行われる。パッチチャートの測定は、同一試料に対し、まず白色光源201点灯下での測定を行い、次に必要であれば紫外光源202,203のいずれかまたはそれぞれの点灯下での測定を行う。この点灯制御の詳細については後述する。
【0029】
●プロファイル作成処理(構成)
本実施形態では上述したように、演算処理部105においてプリンタプロファイルを作成する。図7に、演算処理部105における、プリンタプロファイルを作成するためのブロック構成を示す。同図には、演算処理部105のほかに、プロファイルの作成対象となる、出力デバイス108としてのプリンタ(以下、プリンタ108)を示す。
【0030】
図7において、パッチチャートデータ格納部1102には、プリンタ特性を取得するためのパッチチャートの画像データと、該パッチチャートにおける色票の測定順に対応した測定条件データが予め格納されている。
【0031】
ここでパッチチャートは図8に示すように、プリンタ108に対する入力信号(RGB信号やCMYK信号)の離散的な値を組み合わせた色票が並置された画像であり、これら色票が所定順に連続測定される。また測定条件データは、パッチチャートの色票ごとに、紫外光源202,203それぞれの点灯の有無を示すデータ、すなわち紫外光源点灯条件を示すデータである。詳細には図9に示すように、パッチチャート上の測定対象となるN個の色票の並び、すなわち測定順番に対応したインデックスに対して、2種類の紫外光源A,Bについて、測定時に点灯すべき光源を規定したものである。図9に示す紫外光源A,Bのそれぞれが、紫外光源202,203に対応する。同図に示すように、光源A,BともにOFF設定であれば、すなわち紫外光源を用いた蛍光成分の測定が不要である旨を示す。一方、光源A,Bの少なくともいずれかがON設定であれば、該ON設定された紫外光源の点灯下での測定を行う旨を示す。特に両方がON設定であれば、各紫外光源の点灯を切り替えて、両光源のそれぞれによる測定を行う旨を示す。
【0032】
プリンタ108において、パッチチャートデータ格納部1102から入力されたパッチチャートの画像が出力されると、該出力されたパッチチャートは、測定装置107による測定が行われる。この測定時に、測定装置107がパッチチャート測定制御部1103によって制御される。すなわち、パッチチャート測定制御部1103ではまず、パッチチャートデータ格納部1102から、プリンタ108に出力されたパッチチャートに対応した測定条件データを獲得し、測定装置107に転送する。すると測定装置107では、該測定条件データが測定条件データ格納部701に格納され、上述したように、色票の測定毎に測定条件データを参照しながら、蛍光測定用の紫外光源202,203の点灯を制御する。
【0033】
ここで、パッチチャート測定制御部1103による、色票測定時の紫外光源の点灯制御について、詳細に説明する。パッチチャート測定制御部1103は、パッチチャートデータ格納部1102から獲得した、パッチチャートの色票の測定順に対応した測定条件データを、測定装置107の測定条件データ格納部701に格納する。これにより測定装置107において、蛍光測定時の紫外光源202,203の点灯が制御される。すなわち、測定装置107の制御部703では、測定部704がパッチチャートの色票を順次測定するタイミングに合わせて、現在の測定に対応するインデックスの値を測定判定部702に渡す。測定判定部702では、獲得したインデックスに対応する測定条件を測定条件データ格納部701から読み出し、点灯する紫外光源の種類を決定する。すると制御部703は測定部704に対し、測定判定部702で決定された紫外光源を点灯させると同時に、色票の測定を行うように制御する。なお測定部704では、同一の色票に対し、紫外光源202,203を点灯させた測定を行うに先立って、白色光源201を点灯させた測定を行う。
【0034】
すると測定装置107内の蛍光演算部706では、複数の紫外光源202,203の点灯下で測定された分光放射輝度率について、予め設定された紫外光源毎の加重係数を用いて合成することで、試料における蛍光成分の分光放射輝度率を得る。この合成処理は上記式(1)に従う。この合成により生成された蛍光成分の分光放射輝度率、および測定部704で白色光源201点灯下で測定された可視光成分の分光放射輝度率が、分光放射輝度率格納部707に格納される。
【0035】
測定装置107では以上のように、蛍光成分の分光放射輝度率、および可視光成分の分光放射輝度率が、分光放射輝度率格納部707に格納される。この測定装置107内の分光放射輝度率格納部707に格納された各データが、図7に示すパッチチャート測定データ格納部1104にそのまま格納される。
【0036】
図7に戻り、観察光源データ格納部1105には、プリンタプロファイルに反映すべき観察光源の分光放射輝度率と、測定装置107内の白色光源201の分光放射輝度率が予め格納されている。これは、プリンタプロファイルを作成するにあたり、色変換部1106において、測定された試料の分光放射輝度率をCIELabに代表される色度値に変換する必要があるためである。
【0037】
色変換部1106においてはまず、測定によって獲得された試料の可視光成分の分光放射輝度率と蛍光成分の分光放射輝度率から、観察環境下における試料の全分光放射輝度率を算出する。ここで、獲得された試料の可視光成分の分光放射輝度率と蛍光成分の分光放射輝度率を用いて、任意の観察光源下における試料の全分光放射輝度率T(λ)を求める方法について説明する。まず、白色光源201の分光放射輝度率をS0(λ)、白色光源201の点灯下で試料を測定して得られた分光放射輝度率をI0(λ)とする。すると、任意の観察光源下で得られる試料の可視光成分による分光放射輝度率R(λ)は、観察光源の分光放射輝度率S(λ)から、以下の式(2)により算出される。
【0038】
R(λ)=S(λ)・I0(λ)/S0(λ) …(2)
従って、任意の観察光源下における試料の全分光放射輝度率T(λ)は、可視光成分と蛍光成分の和となるため、上記式(1),(2)式に基づき、以下の式(3)のように算出される。
【0039】
T(λ)=R(λ)+F(λ)
=S(λ)・I0(λ)/S0(λ)+I1(λ)・W1+I2(λ)・W2 …(3)
ここで図10に、色変換部1106の詳細構成を示す。同図において、可視光源測定データ格納部1401は、パッチチャート測定データ格納部1104から獲得した、白色光源201の点灯下で測定された可視光成分の分光放射輝度率I0(λ)を格納している。蛍光成分分光放射輝度率格納部1404は、パッチチャート測定データ格納部1104から獲得した、蛍光演算部706で算出された蛍光成分の分光放射輝度率F(λ)を格納している。演算部1402では、観察光源データ格納部1105内の観察光源および白色光源201の分光放射輝度率S(λ),S0(λ)と、可視光源測定データ格納部1401内の分光放反射率I0(λ)とを、上記式(2)に従って積算する。該積算結果は、観察環境光下での試料の可視光成分の分光放射輝度率R(λ)として、可視光成分分光放射輝度率格納部1403に格納される。
【0040】
演算部1402ではさらに、蛍光成分分光放射輝度率格納部1404に格納されている蛍光成分の分光放射輝度率F(λ)と、可視光成分分光放射輝度率格納部1403に格納されている試料の可視光成分の分光放射輝度率R(λ)を合成する。この合成は上記式(3)に従う。これにより、観察環境光下における試料の全分光放射輝度率T(λ)が算出され、全分光放射輝度率格納部1405に格納される。そして色度値変換部1406において、全分光放射輝度率格納部1405に格納されている、観察環境光下における試料の全分光放射輝度率T(λ)が、CIELabに代表される色度値に変換され、色度値格納部1407に格納される。
【0041】
図7に戻り、プロファイル作成部1107では、上記処理によって獲得されたパッチチャートの各色票の色度値に基づき、プリンタ108のプリンタプロファイルを周知の方法により作成する。作成されたプリンタプロファイルはプロファイル格納部1108に格納され、プリンタ108に提供される。
【0042】
●プロファイル作成処理(概要)
以下、本実施形態におけるプリンタプロファイルの作成処理について、フローチャートを用いて説明する。
【0043】
図11は、演算処理部105におけるプロファイル作成処理の概要を示すフローチャートである。まずS1701で、パッチチャートデータ格納部1102に格納されたパッチチャート画像データがプリンタ108に入力されることで、S1702において、プリンタ108が該パッチチャートを記録媒体上に印刷出力する。そしてS1703でパッチチャート測定制御部1103が、該印刷したパッチチャートに対応する、蛍光成分の測定条件データをパッチチャートデータ格納部1102より獲得する。
【0044】
そしてS1704でパッチチャート測定制御部1103は、図12に後述するフローチャートに従って、測定装置107に対し、パッチチャートにおける全色票を測定するように制御する。そしてS1705で該測定データをパッチチャート測定データ格納部1104に格納する。
【0045】
次にS1706で色変換部1106が、プリンタプロファイルを作成する観察光源の分光放射輝度率を、観察光源データ格納部1105より獲得する。そしてS1707で色変換部1106内の演算部1402において、パッチチャートの全色票の測定データを、観察光源下における全分光放射輝度率に変換する。そしてS1708で色度値変換部1406において、パッチチャートの全色票についての観察光源下における全分光放射輝度率をCIELabに代表される色度値に変換した後、S1709で色度値格納部1407に格納する。
【0046】
そしてS1710において、プロファイル作成部1107がパッチチャートの全色票の色度値に基づいてプリンタプロファイルを作成し、S1711で該作成されたプリンタプロファイルをプロファイル格納部1108に格納する。
【0047】
●パッチチャート測定処理
以下、上記S1704における、測定装置107によるパッチチャートの測定処理について、図12のフローチャートを用いて説明する。測定装置107は、まずS1501で測定部704に、プリンタ108によって印刷されたパッチチャートを設置する。するとS1502で測定判定部702が、該設置されたパッチチャートに対応する測定条件データを、測定条件データ格納部701から獲得する。なお、パッチチャートに対応する測定条件データの識別は例えば、パッチチャートの設置時に、ユーザが不図示のUIを介してパッチチャートを特定するID等を入力することによって行われる。すなわち、該IDに対応して測定条件データ格納部701に保持されている測定条件データを読み出せば良い。また、パッチチャートに色票とは別に該チャートの識別記号を記載しておき、該記号を読み取ることによって、対応する測定条件データを自動識別するようにしても良い。
【0048】
そしてS1503で制御部703が、パッチチャート上の任意の色票を測定対象として設定する。そしてS1504で制御部703は、該測定対象の色票のインデックスを獲得し、S1505で測定部704に対し、該測定対象の色票を白色光源201の点灯下で測定するように制御して、可視光成分の分光放射輝度率を得る。
【0049】
そしてS1506で測定判定部702において、制御部703がS1504で獲得した色票のインデックスと、S1502で獲得した測定条件データを参照して、色票の蛍光成分を測定するか否かを判定する。蛍光成分を測定すると判定された場合はS1507に進み、測定判定部702は参照した測定条件データに従って、紫外光源202,203のうち点灯すべき光源を設定する。このとき、測定条件データにより紫外光源が複数指定されていれば、以降のS1507〜S1511による測定処理を、紫外光源を切り替えて行う。
【0050】
S1507で点灯すべき紫外光源が設定されると、次にS1508で制御部703は測定部704に対し、該設定した紫外光源を点灯させて色票を測定するように制御する。ここで測定された蛍光成分の分光放射輝度が、測定データ格納部705に格納される。
【0051】
そしてS1509で蛍光演算部706において、演算部803が、試料の蛍光成分を合成するための加重係数を加重係数格納部802より獲得する。そしてS1510で演算部803が、S1508で紫外光源毎に測定した分光放射輝度率と、S1509で獲得した加重係数に基づいて、試料の蛍光成分の分光放射輝度率を式(1)に従って合成する。そしてS1511において、S1510で合成した蛍光成分の分光放射輝度率F(λ)と、S1505で測定した可視光成分の分光放射輝度率I0(λ)を、分光放射輝度率格納部707に格納する。
【0052】
一方、S1506で測定判定部702において、色票の蛍光成分を測定しないと判定された場合はS1511に進み、S1505で測定された可視光成分の分光放射輝度率I0(λ)のみを分光放射輝度率格納部707に格納する。
【0053】
次にS1512で制御部703において、測定部704が設置されたパッチチャートにおける全ての色票を測定したか否かを判定し、全ての色票の測定が終了していれば処理を終了する。一方、測定していない色票が残っていれば、S1513で次の測定対象となる色票を設定するために色票インデックスをインクリメントした後、S1503以降の処理を繰り返す。
【0054】
なお、図12に示す例では白色光源201による測定の後で、紫外光源202,203による測定を行う例を示したが、この測定順が逆となっても良い。
【0055】
●全分光放射輝度率の算出処理
以下、上記S1707における、パッチチャートの全色票の測定データから、任意の観察光源下における試料の全分光放射輝度率を算出する処理について、図13のフローチャートを用いて説明する。該処理は、色変換部1106内の演算部1402において行われる。
【0056】
まずS1601において、可視光源測定データ格納部1401および蛍光成分分光放射輝度率格納部1404から、試料の可視光成分の分光放射輝度率I0(λ)および蛍光成分の分光放射輝度率F(λ)を獲得する。そしてS1602で、観察光源データ格納部1105に予め保持されている白色光源201の分光放射輝度率S0(λ)を獲得し、さらにS1603で同様に観察環境光の分光放射輝度率S(λ)を獲得する。そしてS1604で、観察環境光の点灯下における試料の可視光成分の分光放射輝度率R(λ)を算出する。この算出は、白色光源201の分光放射輝度率S0(λ)と、白色光源201の点灯下で測定した試料の分光放射輝度率I0(λ)、および観察環境光の分光放射輝度率S(λ)を用いて、上記式(2)に基づいて行われる。
【0057】
そしてS1605において、S1601で獲得した試料の測定結果として、蛍光成分の分光放射輝度率F(λ)が含まれているか否かを判定する。すなわち、蛍光成分分光放射輝度率格納部1404から分光放射輝度率F(λ)が獲得できれば、含まれていると判定されS1606に進む。S1606では、該蛍光成分の分光放射輝度率F(λ)と、S1604で算出した可視光成分の分光放射輝度率R(λ)を上記式(3)に従って合成することで、試料の全分光放射輝度率T(λ)を算出する。そしてS1607で、該算出した観察光源下における試料の全分光放射輝度率T(λ)を、全分光放射輝度率格納部1405に格納する。
【0058】
一方、S1605において試料の測定結果に蛍光成分の分光放射輝度率F(λ)が含まれないと判定された場合には、そのままS1607に進む。そして上記式(3)に示すように、S1604で獲得した可視光成分の分光放射輝度率R(λ)が、該試料の全分光放射輝度率T(λ)として全分光放射輝度率格納部1405に格納される。
【0059】
なお、本実施形態では2種類の紫外光源のそれぞれに対する点灯制御を行って蛍光成分の測定を行う例を示したが、例えば紫外光源が1つであっても、その点灯の可否を制御することで本実施形態は同様に有効である。
【0060】
以上説明したように本実施形態によれば、プリンタ108のプリンタプロファイルを作成する際に、該プリンタより出力されたパッチチャートの色票ごとに、紫外光源下での分光特性の測定を制御する。これにより、紫外光源を無駄に点灯することなく、色票ごとの蛍光成分の分光放射輝度率を効率的に獲得し、観察光源の下での試料の全分光放射輝度率を効率的に得ることができる。したがって、プリンタプロファイルの作成を効率良く行うことが可能となる。
【0061】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、試料の全分光放射輝度率の測定時に蛍光成分の測定を行うか否かを判定する判定条件を、試料ごと、すなわちパッチデータの色票ごとに予め規定しておく例を示した。第2実施形態では該判定条件を、試料の色ごとに規定しておくことを特徴とする。すなわち、試料を可視光域の白色光源下で測定して得られた色度値に基づいて判定条件を参照し、蛍光成分の測定を行うべき色であると判定された試料に対してのみ、紫外光源を用いた測定を行う。
【0062】
●測定装置
第2実施形態において、試料の全分光放射輝度率を測定してプリンタプロファイルを作成するシステムの構成は、上述した第1実施形態で図1に示した構成と同様である。
【0063】
図14は、第2実施形態における測定装置107の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように第2実施形態の測定装置107は、第1実施形態で図4に示した構成に対し、色変換部1908をさらに備えることを特徴とする。また測定条件データ格納部1901が、白色光源下での色度値に対する判定条件を格納しており、測定判定部1902は測定された色度値に応じて該判定条件を参照することによって、紫外光源202,203の点灯を判定する。なお、図14における他の構成については第1実施形態の図4と同様であるため、同一番号を付し、説明を省略する。
【0064】
ここで図15に、第2実施形態の測定条件データ格納部1901に格納される測定条件データの構成を示す。上述したように第2実施形態における測定条件データは、2種類の紫外光源A,Bについて、測定時に点灯する条件として、試料の白色光源における色度値(明度L,彩度C,色相h)の範囲を記述したものある。なお、紫外光源A,Bのそれぞれが、紫外光源202,203に対応する。図15において各条件データ2002〜2005に示されるように、設定された点灯条件を適用する色度範囲として、試料を白色光源下で測定した際に得られる明度L,彩度C,色相hの上限値および下限値の組合せが格納されている。なお、各条件データ2002〜2005において設定される色度範囲は互いに重ならない、すなわち同じ色に対して複数の点灯条件が設定されないようになっている。
【0065】
すなわち、光源A,BともにON設定である条件データ2002には、各紫外光源の点灯を切り替えて両光源のそれぞれによる測定を行う条件としての、LCh値の上限値および下限値の組み合わせが規定されている。また、光源A.Bの一方がON設定である条件データ2003,2004には、各紫外光源のうちON設定である一方のみを点灯させて測定を行う条件としての、LCh値の上限値および下限値の組み合わせが規定されている。また、光源A,BともにOFF設定である条件データ2005には、紫外光源を点灯させた測定を行わない条件としての、LCh値の上限値および下限値の組み合わせが規定されている。
【0066】
なお、図15の例では、各光源A,Bの点灯条件について、1つの色度範囲が格納される例を示しているが、1つの点灯条件に対して複数の色度範囲を格納しても良い。また、上記図15に示すような測定条件データは、試料を印刷したインク種別等、試料の種類ごとに予め用意され、該試料の種類と対応づけられて測定条件データ格納部1901に保持されている。
【0067】
第2実施形態における測定装置107の測定判定部1902においては、白色光源201の点灯下で得られた試料の色度値について、図15に示す判定条件データを順次参照することで、蛍光成分を獲得するために点灯する紫外光源の種類を設定する。
【0068】
●試料測定処理
以下、第2実施形態における測定装置107による試料の分光特性の測定処理について、図16のフローチャートを用いて説明する。
【0069】
測定装置107は、まずS2101で測定部704に、プリンタ108によって印刷されたパッチチャート等の試料を設置する。するとS2102で測定判定部1902が、測定条件データ格納部1901から該試料に対応する測定条件データを獲得する。なお、試料に対応する測定条件データの識別は上述した第1実施形態と同様に、UIからのID入力や、試料に併記された識別記号を自動認識する、等の方法が考えられる。
【0070】
次にS2103で色変換部1903が、第1実施形態と同様に演算処理部105内の観察光源データ格納部1105に予め保持されている、プロファイル作成対象となる観察光源の分光放射輝度率S(λ)を獲得する。そしてS2104で同様に、白色光源201の分光放射輝度率S0(λ)を獲得する。次にS2105で、測定部704が白色光源201を点灯させて試料を測定し、可視光成分の分光放射輝度率I0(λ)を獲得する。そしてS2106において色変換部1903が、該測定された分光放射輝度率I0(λ)を色度値に変換する。詳細には、まず、白色光源201と観察環境光の分光放射輝度率S0(λ),S(λ)と、白色光源201の点灯下で測定した試料の分光放射輝度率I0(λ)から、観察環境光点灯下で得られる試料の分光放射輝度率R(λ)を算出する。この算出は、第1実施形態で示した式(2)に基づく。そして、該算出された分光放射輝度率R(λ)を、CIELabに代表される色度値に変換する。第2実施形態では、更に、Lab値からLCh値への変換を行う。
【0071】
そしてS2107で測定判定部1902において、S2106で算出した試料のLCh値と、S2102で獲得した測定条件データを参照して、試料の蛍光成分を測定するか否かを判定する。該判定以降は、上述した第1実施形態における図12のS1507〜S1511と同様に、紫外光源202,203を用いて試料を測定する。
【0072】
なお、第2実施形態における測定条件データとしては色度範囲に限らず、印刷対象となる記録媒体やインクの種類に関わらない、全体的な色再現傾向に基づいて決められた条件であれば良い。また、試料を出力したプリンタや記録媒体、色材の種類等のデバイス情報を入力することによって、デバイスドライバ等から提供される条件を適用することも可能である。
【0073】
以上説明したように第2実施形態によれば、試料の色度値に応じて、紫外光源点灯下での測定を制御することで、試料における蛍光成分の分光放射輝度率を効率的に獲得することが可能となる。
【0074】
<第3実施形態>
以下、本発明に係る第3実施形態について説明する。プリンタ108における色材として、蛍光剤を含む蛍光インクが用いられる場合がある。蛍光インクを用いて試料を印刷出力した場合、例えば上述した第2実施形態において試料の色度値に基づいて蛍光を発しないと判定されても、実際には蛍光を発光する場合がある。このような場合、試料を構成するCMYKインク量や、該インク量に対応する試料のRGB入力信号値といったインク量情報を参照することによって、試料が蛍光を発光するか否かを判定することができる。そこで第3実施形態では、蛍光成分の測定を行うか否かを判定する判定条件を、試料に対応付けられたインク量情報に応じて、予め規定しておくことを特徴とする。すなわち、試料のインク量情報に基づいて判定条件を参照し、蛍光成分の測定を行うべきと判定された試料に対してのみ、紫外光源を用いた測定を行う。
【0075】
なお、第3実施形態において試料の分光放射輝度率を測定してプリンタプロファイルを作成するシステムの構成、および測定装置107の構成は、上述した第1実施形態と同様である。したがって、各構成については第1実施形態と同一番号を参照するとして説明を省略する。
【0076】
●測定条件データ
図17に、第3実施形態における測定条件データ格納部701に格納される測定条件データの構成を示す。上述したように第3実施形態における測定条件データは、2種類の紫外光源A,Bについて、測定時に点灯する条件として、試料のCMYKインク量(CMYK値)の範囲を記述したものである。図17において各条件データ1802〜1805に示されるように、設定された点灯条件を適用するインク量範囲として、試料におけるCMYKの各インク量の上限値および下限値の組合せが格納されている。なお、各条件データ1802〜1805において設定されるインク量範囲は互いに重ならない、すなわち同じ出力色に対して複数の点灯条件が設定されないようになっている。
【0077】
すなわち、光源A,BともにON設定である条件データ1802には、各紫外光源の点灯を切り替えて両光源のそれぞれによる測定を行う条件としての、CMYK値の上限値および下限値の組み合わせが規定されている。また、光源A.Bの一方がON設定である条件データ1803,1804には、各紫外光源のうちON設定である一方のみを点灯させて測定を行う条件としての、CMYK値の上限値および下限値の組み合わせが規定されている。また、光源A,BともにOFF設定である条件データ1805には、紫外光源を点灯させた測定を行わない条件としての、CMYK値の上限値および下限値の組み合わせが規定されている。
【0078】
なお、図17の例では、各光源A,Bの点灯条件について、1つのインク量範囲が格納される例を示しているが、1つの点灯条件に対して複数のインク量範囲を格納しても良い。また、上記図17に示すような測定条件データは、試料を印刷したインク種別等、試料の種類ごとに予め用意され、該試料の種類と対応づけられて測定条件データ格納部1901に保持されている。
【0079】
第3実施形態における測定装置107の測定判定部702においては、試料を構成するCMYKインク量について、図17に示す判定条件データを順次参照することで、蛍光成分を獲得するために点灯する紫外光源の種類を設定する。
【0080】
●試料測定処理
以下、第3実施形態における測定装置107による試料の測定処理について、図18のフローチャートを用いて説明する。
【0081】
測定装置107は、まずS2301で測定部704に、プリンタ108によって印刷されたパッチチャート等の試料を設置する。するとS2302で測定判定部702が、測定条件データ格納部701から該試料に対応する測定条件データを獲得する。なお、試料に対応する測定条件データの識別は上述した第1実施形態と同様に、UIからのID入力や、試料に併記された識別記号を自動認識する、等の方法が考えられる。
【0082】
次にS2303で、測定部704が白色光源201を点灯させて試料の分光放射輝度率I0(λ)を測定する。そしてS2304で測定部704が、試料のインク量情報として、CMYKインク量を獲得する。なお、CMYKインク量の獲得方法としては例えば、S2303で獲得した分光放射輝度I0(λ)に基づき、予め設定されたインク量テーブルを参照して対応するCMYKインク量を取得する方法が考えられる。
【0083】
そしてS2305で測定判定部702において、S2304で獲得した試料のCMYKインク量と、S2302で獲得した測定条件データを参照して、試料の蛍光成分を測定するか否かを判定する。該判定以降は、上述した第1実施形態における図12のS1507〜S1511と同様に、紫外光源202,203を用いて試料を測定する。
【0084】
以上説明したように第3実施形態によれば、試料のインク量に応じて、紫外光源下での測定を制御することで、試料における蛍光成分の分光放射輝度率を効率的に獲得することが可能となる。
【0085】
<その他の実施形態>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料における蛍光成分を含む分光放射輝度率を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体や色材に蛍光剤を付与することで、媒体の白色度や色材の彩度を上げ、出力画像の発色性を向上させることができる。蛍光剤は、紫外光に代表される可視光波長域外の光を受けて、可視光波長域内の光を発する特性があり、出力画像を観察する照明光の違いによって、その色再現に違いが生じる。従って、蛍光剤を含む媒体や色材を用いる画像処理装置において、任意の観察環境下での出力画像の再現色を忠実に推定するためには、媒体や色材に含まれる蛍光剤による発光の分光放射輝度率を獲得する必要がある。
【0003】
任意の観察光源下での試料の色を示す全分光放射輝度率は、試料が発する蛍光成分を含まない反射成分である反射分光放射輝度率と、蛍光成分である蛍光分光放射輝度率を合成したものである。よって、試料の全分光放射輝度率を獲得するためには、試料の蛍光成分を含まない反射分光放射輝度率と、蛍光成分である蛍光分光放射輝度率を各々記述した、二分光放射輝度率を獲得する必要がある。
【0004】
一般に、試料の二分光放射輝度率を獲得するには、可視光域の波長を持つ白色光源と、紫外域の波長を持つ光源の2種類以上の光源で試料を照射し、各光源における試料の反射光を分光放射輝度計を用いて検出する。そこで、蛍光成分を含む試料の全分光放射輝度率を獲得するために、以下のような技術が従来より知られている。
【0005】
まず、紫外光を含む光源と含まない光源の2種類の光源下で試料の分光反射強度を測定し、測定した各分光波長に対して加重係数をかけて合成することで、試料の全分光放射輝度率を求める方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、まず試料を分光波長の異なる複数の測定光源で測定し、該複数の測定光源について試料の観察光源と同等な分光波長を合成するための加重係数を求める。そして、予め用意した試料の媒体と同等の二分光放射輝度率と、複数の測定光源による測定値と、上記加重係数を用いて、試料を観察光源で測定した場合と同等の、全分光放射輝度率を推定する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08-313349号公報
【特許文献2】特開2006-292510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に媒体の白色度を上げるために付与される蛍光増白剤は、媒体上に形成される色材の色やその色材量によっては、照明光における励起光波長が色材に吸収されて媒体まで届かず、蛍光を発光しない場合がある。もしくは、媒体に届いた照明光により発光した蛍光の波長が色材に吸収されることによって、結果的に蛍光が減衰するといった現象が発生する場合がある。したがって、試料を構成する媒体と色材の種類や量に応じて決定される試料の色によっては、該試料に蛍光増白剤が含まれているにも関わらず、測定された全分光放射輝度率に蛍光成分が含まれないことがある。
【0009】
上記特許文献1および2に記載された全分光放射輝度率の測定方法においては、試料が発する蛍光成分の量については考慮されていない。したがって試料を測定する際に、該試料が蛍光を発するか否かに関わらず、常に複数光源による測定を必要とし、相応の測定時間を要していた。
【0010】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、試料における蛍光成分を含む分光放射輝度率を効率的に測定する測定装置および測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための一手段として、本発明の測定装置は以下の構成を備える。
【0012】
すなわち、紫外光源と白色光源とを用いて試料の分光特性を測定する測定装置であって、前記白色光源の分光放射輝度率と任意の観察光源の分光放射輝度率とを予め保持する保持手段と、前記白色光源を点灯させて前記試料の反射光を測定することで、該試料の分光放射輝度率を得る第1の測定手段と、前記保持手段に保持された前記白色光源の分光放射輝度率と前記観察光源の分光放射輝度率を用いて、前記第1の測定手段で得られた分光放射輝度率から、前記観察光源の下の前記試料の分光放射輝度率を算出する算出手段と、前記試料に対して予め定められた、前記紫外光源を点灯するか否かを示す測定条件を取得する測定条件取得手段と、前記測定条件により点灯する旨が示された前記紫外光源を点灯させて前記試料の反射光を測定することで、前記試料が発する蛍光の分光放射輝度率を得る第2の測定手段と、前記算出手段で得られた分光放射輝度率と前記第2の測定手段で得られた分光放射輝度率から、前記観察光源の下の前記試料の全分光放射輝度率を算出する演算手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、試料における蛍光成分を含む分光放射輝度率を効率的に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態における色処理システムの概略構成を示すブロック図、
【図2】測定装置の外観および測定例を示す図、
【図3】各測定光源の分光放射輝度率を示す図、
【図4】測定装置の機能構成を示すブロック図、
【図5】蛍光演算部のブロック図、
【図6】紫外光源測定データ格納部のメモリ構成を示す図、
【図7】演算処理部における、プリンタプロファイルを作成するため機能構成を示すブロック図、
【図8】パッチチャートの構成例を示す図、
【図9】測定条件データ例を示す図、
【図10】色変換部の詳細構成を示すブロック図、
【図11】第1実施形態におけるプロファイル作成処理を示すフローチャート、
【図12】パッチチャートの測定処理を示すフローチャート、
【図13】全分光放射輝度率の算出処理を示すフローチャート、
【図14】第2実施形態における測定装置の機能構成を示すブロック図、
【図15】第2実施形態における測定条件データ例を示す図、
【図16】第2実施形態における試料の測定処理を示すフローチャート、
【図17】第3実施形態における測定条件データ例を示す図、
【図18】第3実施形態における試料の測定処理を示すフローチャート、である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態は特許請求の範囲に関る本発明を限定するものではなく、また、本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0016】
<第1実施形態>
●処理概要
本実施形態では、試料における蛍光成分を含む分光放射輝度率を以下のように測定する測定装置について説明する。すなわち、紫外光源と白色光源を用いて試料の分光特性を測定する測定装置において、まず白色光源を点灯させて、試料の分光放射輝度率を得る(第1の測定処理)。そして、予め保持された白色光源の分光放射輝度率と観察光源の分光放射輝度率を用いて、可視光成分測定処理により得られた分光放射輝度率から、該観察光源の下の試料の分光放射輝度率を算出する(算出処理)。そして、試料に対して予め定められた、紫外光源を点灯するか否かを示す測定条件を取得し(測定条件取得処理)、点灯する旨が示された紫外光源を点灯させて、該試料が発する蛍光の分光放射輝度率を得る(第2の測定処理)。そして、可視光成分算出処理で得られた分光放射輝度率と蛍光成分測定処理で得られた分光放射輝度率から、観察光源の下の該試料の全分光放射輝度率を効率良く算出する(演算処理)ことができる。
【0017】
●システム構成
図1に、本実施形態における色処理システムの構成を示す。同図において、CPU101は、ROM102が記憶している制御プログラム、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラム、デバイスドライバ等に従って、同図に示す各構成の制御を行う。RAM103は各種制御プログラムや操作部104から入力されるデータの作業領域及び一時待避領域として使用される。104は操作部であり、例えばキーボードやマウスを介してユーザからの指示入力を受ける。107は測定装置であり、本実施形態におけるプリンタプロファイル作成の際に記録媒体上に印刷された試料の測定を行う。108はプリンタであり、不図示の入力デバイスから入力され、演算処理部105において処理された画像データを、操作部104からの指示入力に応じて記録媒体に印刷出力する。105は演算処理部であり、本実施形態における分光放射輝度率を獲得するための演算処理や、試料の観察環境光に応じた全分光放射輝度率を獲得する演算処理等を行う。演算処理部105はまた、本実施形態におけるプリンタプロファイルの作成処理を行う。具体的には、プリンタ108が出力した色票を測定装置107を用いて測定し、その測定値に基づいてプリンタプロファイルを作成する。106はモニタであり、演算処理部105における処理結果や操作部104より入力されたデータ等を表示する。
【0018】
ここで、本実施形態における試料の全分光放射輝度率を獲得する方法について、簡単に説明する。一般に試料は、記録媒体上での色材の色によって蛍光を発する色としない色に分類される。そこで本実施形態では試料ごとに、蛍光成分の測定を実施するか否かを規定した判定条件を予め設定しておく。そして、測定装置に設置された試料についてそれぞれの判定条件を参照し、蛍光成分を測定すると判定された場合のみ、紫外光源を用いて蛍光成分の分光放射輝度の測定を行うことを特徴とする。
【0019】
●測定装置
図2(a)に、本実施形態において試料の分光特性を測定する測定装置107の外観を示す。同図に示すように測定装置107は、まず、紫外域を含まない可視域の波長を持つ白色光源201と、互いに異なる紫外域波長を持つ紫外光源202,203を測定光源として有する。測定装置107はさらに、これら各測定光源によって照射された試料からの分光反射強度を取得するセンサ204を有する。
【0020】
ここで図3(a)に、白色光源201の分光放射輝度率の一例を示す。同図に示すように白色光源201の分光放射輝度率301は、紫外域の波長については放射輝度を持たず、可視域の波長のみについて放射輝度を持っている。したがって、白色光源201の点灯下では蛍光は発生しない。なお白色光源201は詳細には、一般的な白色光源からの照射光を紫外域の波長をカットするフィルタを通すことで、上記図3(a)に示す分光特性を実現する。一方、紫外光源202,203は、任意の数(この場合2つ)の、互いに異なる紫外域波長を持つ光源によって構成されている。図3(b),(c)に、紫外光源202、203の分光放射輝度率の一例をそれぞれ示す。
【0021】
ここで図2(b)を用いて、測定装置107における試料の測定方法を説明する。図2(b)は、測定装置107により試料601を測定する際の側断面を示す図である。まず、可視光を発する白色光源201、もしくは複数の紫外光源202,203のいずれか一つが点灯して試料601を照射する。そして、試料601からの反射光を測定装置107の中央にあるセンサ204で受光することで、該試料による光源毎の分光放射輝度率が獲得される。以下、測定装置107において白色光源201の点灯下で測定された試料の分光放射輝度率を、該反射光の全てが可視光の反射であることから可視光成分と称する。また、紫外光源202,203のいずれかの点灯下で測定された試料の分光放射輝度率は、すなわち発生した蛍光によるものであることから蛍光成分と称する。
【0022】
図4は、上記図2に示した測定装置107の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように測定装置107はまず、上記測定光源201〜203とセンサ204によって試料を測定する測定部704と、測定光源201〜203それぞれの点灯を制御する制御部703、を有する。そして、試料に対する紫外光源による測定条件を格納する測定条件データ格納部701、該測定条件を参照して紫外光源202,203の点灯下での測定を行うか否かを判定する測定判定部702、を有する。測定部704で光源毎に測定された試料の分光放射輝度率は、測定データ格納部705に格納される。そして蛍光演算部706において、紫外光源202,203を用いて測定された試料の分光放射輝度率から、該試料における蛍光成分の分光放射輝度率を獲得する。獲得された蛍光成分の分光放射輝度率は、分光放射輝度率格納部707に格納される。なお、測定部704において白色光源201を用いて測定された試料の可視光成分の分光放射輝度率は、そのまま分光放射輝度率格納部707に格納される。
【0023】
図5に、蛍光演算部706の詳細なブロック構成を示す。同図に示す紫外光源測定データ格納部801は、測定部704で測定され、測定データ格納部705に格納された分光放射輝度率のうち、紫外光源202,203の点灯下で得られた分光放射輝度率を格納する。
【0024】
ここで図6に、紫外光源測定データ格納部801におけるメモリ構成例を示す。同図に示すように紫外光源測定データ格納部801は、試料を測定した測定光源の種類を格納する光源情報格納部902と、離散的な入力波長毎に反射率を格納する分光放射輝度率格納部903、によって構成されている。なお、分光放射輝度率格納部707には、白色光源201を用いて測定された可視光成分の分光放射輝度率が、上記図6とほぼ同様のメモリ構成で格納されている。すなわち、図6において光源の種類を格納する光源情報格納部902に、白色光源201を示す情報(例えば「可視光白色」)が格納される。また、分光放射輝度率格納部903には紫外光源の場合と同様に、例えば300〜780nmの入力波長域における10nm間隔で、測定された反射率が格納される。
【0025】
図5に戻り、演算部803は、複数の紫外光源202,203によって測定された試料の分光放射輝度率について、加重係数格納部802に保持された加重係数を用いた重み付け合成を行う。これにより、試料の蛍光成分による分光放射輝度率が算出される。加重係数格納部802は、紫外光源202,203のそれぞれに対して予め設定された加重係数を格納している。演算部803で重み付け合成された蛍光成分の分光放射輝度率は、図6に示すメモリ形式で、分光放射輝度率格納部707に格納される。
【0026】
以下、演算部803における、蛍光成分の分光放射輝度率の算出方法について説明する。本実施形態では、紫外光の測定光源として2種類の紫外光源202,203を用いる。この2種類の紫外光源S1(λ),S2(λ)によって試料を測定して得られる分光放射輝度率、すなわち蛍光成分の分光放射輝度率を、それぞれI1(λ),I2(λ)とする。すると、試料の蛍光成分の分光放射輝度率F(λ)は、紫外光源S1(λ),S2(λ)に対する加重係数W1,W2を用いて、以下の式(1)に示す重み付け加算により算出される。なお、加重係数W1,W2は、試料の観察光源によらない値として、予め定義されている。
【0027】
F(λ)=I1(λ)・W1+I2(λ)・W2 …(1)
本実施形態の測定装置107においては以上説明したように、試料の可視光成分の分光放射輝度率と、蛍光成分の分光放射輝度率がそれぞれ獲得され、分光放射輝度率格納部707に保持される。
【0028】
なお、測定装置107では、プリンタプロファイル作成時にパッチチャートの測定を行うが、その際に、上記制御部703による測定光源201〜203の点灯制御が行われる。パッチチャートの測定は、同一試料に対し、まず白色光源201点灯下での測定を行い、次に必要であれば紫外光源202,203のいずれかまたはそれぞれの点灯下での測定を行う。この点灯制御の詳細については後述する。
【0029】
●プロファイル作成処理(構成)
本実施形態では上述したように、演算処理部105においてプリンタプロファイルを作成する。図7に、演算処理部105における、プリンタプロファイルを作成するためのブロック構成を示す。同図には、演算処理部105のほかに、プロファイルの作成対象となる、出力デバイス108としてのプリンタ(以下、プリンタ108)を示す。
【0030】
図7において、パッチチャートデータ格納部1102には、プリンタ特性を取得するためのパッチチャートの画像データと、該パッチチャートにおける色票の測定順に対応した測定条件データが予め格納されている。
【0031】
ここでパッチチャートは図8に示すように、プリンタ108に対する入力信号(RGB信号やCMYK信号)の離散的な値を組み合わせた色票が並置された画像であり、これら色票が所定順に連続測定される。また測定条件データは、パッチチャートの色票ごとに、紫外光源202,203それぞれの点灯の有無を示すデータ、すなわち紫外光源点灯条件を示すデータである。詳細には図9に示すように、パッチチャート上の測定対象となるN個の色票の並び、すなわち測定順番に対応したインデックスに対して、2種類の紫外光源A,Bについて、測定時に点灯すべき光源を規定したものである。図9に示す紫外光源A,Bのそれぞれが、紫外光源202,203に対応する。同図に示すように、光源A,BともにOFF設定であれば、すなわち紫外光源を用いた蛍光成分の測定が不要である旨を示す。一方、光源A,Bの少なくともいずれかがON設定であれば、該ON設定された紫外光源の点灯下での測定を行う旨を示す。特に両方がON設定であれば、各紫外光源の点灯を切り替えて、両光源のそれぞれによる測定を行う旨を示す。
【0032】
プリンタ108において、パッチチャートデータ格納部1102から入力されたパッチチャートの画像が出力されると、該出力されたパッチチャートは、測定装置107による測定が行われる。この測定時に、測定装置107がパッチチャート測定制御部1103によって制御される。すなわち、パッチチャート測定制御部1103ではまず、パッチチャートデータ格納部1102から、プリンタ108に出力されたパッチチャートに対応した測定条件データを獲得し、測定装置107に転送する。すると測定装置107では、該測定条件データが測定条件データ格納部701に格納され、上述したように、色票の測定毎に測定条件データを参照しながら、蛍光測定用の紫外光源202,203の点灯を制御する。
【0033】
ここで、パッチチャート測定制御部1103による、色票測定時の紫外光源の点灯制御について、詳細に説明する。パッチチャート測定制御部1103は、パッチチャートデータ格納部1102から獲得した、パッチチャートの色票の測定順に対応した測定条件データを、測定装置107の測定条件データ格納部701に格納する。これにより測定装置107において、蛍光測定時の紫外光源202,203の点灯が制御される。すなわち、測定装置107の制御部703では、測定部704がパッチチャートの色票を順次測定するタイミングに合わせて、現在の測定に対応するインデックスの値を測定判定部702に渡す。測定判定部702では、獲得したインデックスに対応する測定条件を測定条件データ格納部701から読み出し、点灯する紫外光源の種類を決定する。すると制御部703は測定部704に対し、測定判定部702で決定された紫外光源を点灯させると同時に、色票の測定を行うように制御する。なお測定部704では、同一の色票に対し、紫外光源202,203を点灯させた測定を行うに先立って、白色光源201を点灯させた測定を行う。
【0034】
すると測定装置107内の蛍光演算部706では、複数の紫外光源202,203の点灯下で測定された分光放射輝度率について、予め設定された紫外光源毎の加重係数を用いて合成することで、試料における蛍光成分の分光放射輝度率を得る。この合成処理は上記式(1)に従う。この合成により生成された蛍光成分の分光放射輝度率、および測定部704で白色光源201点灯下で測定された可視光成分の分光放射輝度率が、分光放射輝度率格納部707に格納される。
【0035】
測定装置107では以上のように、蛍光成分の分光放射輝度率、および可視光成分の分光放射輝度率が、分光放射輝度率格納部707に格納される。この測定装置107内の分光放射輝度率格納部707に格納された各データが、図7に示すパッチチャート測定データ格納部1104にそのまま格納される。
【0036】
図7に戻り、観察光源データ格納部1105には、プリンタプロファイルに反映すべき観察光源の分光放射輝度率と、測定装置107内の白色光源201の分光放射輝度率が予め格納されている。これは、プリンタプロファイルを作成するにあたり、色変換部1106において、測定された試料の分光放射輝度率をCIELabに代表される色度値に変換する必要があるためである。
【0037】
色変換部1106においてはまず、測定によって獲得された試料の可視光成分の分光放射輝度率と蛍光成分の分光放射輝度率から、観察環境下における試料の全分光放射輝度率を算出する。ここで、獲得された試料の可視光成分の分光放射輝度率と蛍光成分の分光放射輝度率を用いて、任意の観察光源下における試料の全分光放射輝度率T(λ)を求める方法について説明する。まず、白色光源201の分光放射輝度率をS0(λ)、白色光源201の点灯下で試料を測定して得られた分光放射輝度率をI0(λ)とする。すると、任意の観察光源下で得られる試料の可視光成分による分光放射輝度率R(λ)は、観察光源の分光放射輝度率S(λ)から、以下の式(2)により算出される。
【0038】
R(λ)=S(λ)・I0(λ)/S0(λ) …(2)
従って、任意の観察光源下における試料の全分光放射輝度率T(λ)は、可視光成分と蛍光成分の和となるため、上記式(1),(2)式に基づき、以下の式(3)のように算出される。
【0039】
T(λ)=R(λ)+F(λ)
=S(λ)・I0(λ)/S0(λ)+I1(λ)・W1+I2(λ)・W2 …(3)
ここで図10に、色変換部1106の詳細構成を示す。同図において、可視光源測定データ格納部1401は、パッチチャート測定データ格納部1104から獲得した、白色光源201の点灯下で測定された可視光成分の分光放射輝度率I0(λ)を格納している。蛍光成分分光放射輝度率格納部1404は、パッチチャート測定データ格納部1104から獲得した、蛍光演算部706で算出された蛍光成分の分光放射輝度率F(λ)を格納している。演算部1402では、観察光源データ格納部1105内の観察光源および白色光源201の分光放射輝度率S(λ),S0(λ)と、可視光源測定データ格納部1401内の分光放反射率I0(λ)とを、上記式(2)に従って積算する。該積算結果は、観察環境光下での試料の可視光成分の分光放射輝度率R(λ)として、可視光成分分光放射輝度率格納部1403に格納される。
【0040】
演算部1402ではさらに、蛍光成分分光放射輝度率格納部1404に格納されている蛍光成分の分光放射輝度率F(λ)と、可視光成分分光放射輝度率格納部1403に格納されている試料の可視光成分の分光放射輝度率R(λ)を合成する。この合成は上記式(3)に従う。これにより、観察環境光下における試料の全分光放射輝度率T(λ)が算出され、全分光放射輝度率格納部1405に格納される。そして色度値変換部1406において、全分光放射輝度率格納部1405に格納されている、観察環境光下における試料の全分光放射輝度率T(λ)が、CIELabに代表される色度値に変換され、色度値格納部1407に格納される。
【0041】
図7に戻り、プロファイル作成部1107では、上記処理によって獲得されたパッチチャートの各色票の色度値に基づき、プリンタ108のプリンタプロファイルを周知の方法により作成する。作成されたプリンタプロファイルはプロファイル格納部1108に格納され、プリンタ108に提供される。
【0042】
●プロファイル作成処理(概要)
以下、本実施形態におけるプリンタプロファイルの作成処理について、フローチャートを用いて説明する。
【0043】
図11は、演算処理部105におけるプロファイル作成処理の概要を示すフローチャートである。まずS1701で、パッチチャートデータ格納部1102に格納されたパッチチャート画像データがプリンタ108に入力されることで、S1702において、プリンタ108が該パッチチャートを記録媒体上に印刷出力する。そしてS1703でパッチチャート測定制御部1103が、該印刷したパッチチャートに対応する、蛍光成分の測定条件データをパッチチャートデータ格納部1102より獲得する。
【0044】
そしてS1704でパッチチャート測定制御部1103は、図12に後述するフローチャートに従って、測定装置107に対し、パッチチャートにおける全色票を測定するように制御する。そしてS1705で該測定データをパッチチャート測定データ格納部1104に格納する。
【0045】
次にS1706で色変換部1106が、プリンタプロファイルを作成する観察光源の分光放射輝度率を、観察光源データ格納部1105より獲得する。そしてS1707で色変換部1106内の演算部1402において、パッチチャートの全色票の測定データを、観察光源下における全分光放射輝度率に変換する。そしてS1708で色度値変換部1406において、パッチチャートの全色票についての観察光源下における全分光放射輝度率をCIELabに代表される色度値に変換した後、S1709で色度値格納部1407に格納する。
【0046】
そしてS1710において、プロファイル作成部1107がパッチチャートの全色票の色度値に基づいてプリンタプロファイルを作成し、S1711で該作成されたプリンタプロファイルをプロファイル格納部1108に格納する。
【0047】
●パッチチャート測定処理
以下、上記S1704における、測定装置107によるパッチチャートの測定処理について、図12のフローチャートを用いて説明する。測定装置107は、まずS1501で測定部704に、プリンタ108によって印刷されたパッチチャートを設置する。するとS1502で測定判定部702が、該設置されたパッチチャートに対応する測定条件データを、測定条件データ格納部701から獲得する。なお、パッチチャートに対応する測定条件データの識別は例えば、パッチチャートの設置時に、ユーザが不図示のUIを介してパッチチャートを特定するID等を入力することによって行われる。すなわち、該IDに対応して測定条件データ格納部701に保持されている測定条件データを読み出せば良い。また、パッチチャートに色票とは別に該チャートの識別記号を記載しておき、該記号を読み取ることによって、対応する測定条件データを自動識別するようにしても良い。
【0048】
そしてS1503で制御部703が、パッチチャート上の任意の色票を測定対象として設定する。そしてS1504で制御部703は、該測定対象の色票のインデックスを獲得し、S1505で測定部704に対し、該測定対象の色票を白色光源201の点灯下で測定するように制御して、可視光成分の分光放射輝度率を得る。
【0049】
そしてS1506で測定判定部702において、制御部703がS1504で獲得した色票のインデックスと、S1502で獲得した測定条件データを参照して、色票の蛍光成分を測定するか否かを判定する。蛍光成分を測定すると判定された場合はS1507に進み、測定判定部702は参照した測定条件データに従って、紫外光源202,203のうち点灯すべき光源を設定する。このとき、測定条件データにより紫外光源が複数指定されていれば、以降のS1507〜S1511による測定処理を、紫外光源を切り替えて行う。
【0050】
S1507で点灯すべき紫外光源が設定されると、次にS1508で制御部703は測定部704に対し、該設定した紫外光源を点灯させて色票を測定するように制御する。ここで測定された蛍光成分の分光放射輝度が、測定データ格納部705に格納される。
【0051】
そしてS1509で蛍光演算部706において、演算部803が、試料の蛍光成分を合成するための加重係数を加重係数格納部802より獲得する。そしてS1510で演算部803が、S1508で紫外光源毎に測定した分光放射輝度率と、S1509で獲得した加重係数に基づいて、試料の蛍光成分の分光放射輝度率を式(1)に従って合成する。そしてS1511において、S1510で合成した蛍光成分の分光放射輝度率F(λ)と、S1505で測定した可視光成分の分光放射輝度率I0(λ)を、分光放射輝度率格納部707に格納する。
【0052】
一方、S1506で測定判定部702において、色票の蛍光成分を測定しないと判定された場合はS1511に進み、S1505で測定された可視光成分の分光放射輝度率I0(λ)のみを分光放射輝度率格納部707に格納する。
【0053】
次にS1512で制御部703において、測定部704が設置されたパッチチャートにおける全ての色票を測定したか否かを判定し、全ての色票の測定が終了していれば処理を終了する。一方、測定していない色票が残っていれば、S1513で次の測定対象となる色票を設定するために色票インデックスをインクリメントした後、S1503以降の処理を繰り返す。
【0054】
なお、図12に示す例では白色光源201による測定の後で、紫外光源202,203による測定を行う例を示したが、この測定順が逆となっても良い。
【0055】
●全分光放射輝度率の算出処理
以下、上記S1707における、パッチチャートの全色票の測定データから、任意の観察光源下における試料の全分光放射輝度率を算出する処理について、図13のフローチャートを用いて説明する。該処理は、色変換部1106内の演算部1402において行われる。
【0056】
まずS1601において、可視光源測定データ格納部1401および蛍光成分分光放射輝度率格納部1404から、試料の可視光成分の分光放射輝度率I0(λ)および蛍光成分の分光放射輝度率F(λ)を獲得する。そしてS1602で、観察光源データ格納部1105に予め保持されている白色光源201の分光放射輝度率S0(λ)を獲得し、さらにS1603で同様に観察環境光の分光放射輝度率S(λ)を獲得する。そしてS1604で、観察環境光の点灯下における試料の可視光成分の分光放射輝度率R(λ)を算出する。この算出は、白色光源201の分光放射輝度率S0(λ)と、白色光源201の点灯下で測定した試料の分光放射輝度率I0(λ)、および観察環境光の分光放射輝度率S(λ)を用いて、上記式(2)に基づいて行われる。
【0057】
そしてS1605において、S1601で獲得した試料の測定結果として、蛍光成分の分光放射輝度率F(λ)が含まれているか否かを判定する。すなわち、蛍光成分分光放射輝度率格納部1404から分光放射輝度率F(λ)が獲得できれば、含まれていると判定されS1606に進む。S1606では、該蛍光成分の分光放射輝度率F(λ)と、S1604で算出した可視光成分の分光放射輝度率R(λ)を上記式(3)に従って合成することで、試料の全分光放射輝度率T(λ)を算出する。そしてS1607で、該算出した観察光源下における試料の全分光放射輝度率T(λ)を、全分光放射輝度率格納部1405に格納する。
【0058】
一方、S1605において試料の測定結果に蛍光成分の分光放射輝度率F(λ)が含まれないと判定された場合には、そのままS1607に進む。そして上記式(3)に示すように、S1604で獲得した可視光成分の分光放射輝度率R(λ)が、該試料の全分光放射輝度率T(λ)として全分光放射輝度率格納部1405に格納される。
【0059】
なお、本実施形態では2種類の紫外光源のそれぞれに対する点灯制御を行って蛍光成分の測定を行う例を示したが、例えば紫外光源が1つであっても、その点灯の可否を制御することで本実施形態は同様に有効である。
【0060】
以上説明したように本実施形態によれば、プリンタ108のプリンタプロファイルを作成する際に、該プリンタより出力されたパッチチャートの色票ごとに、紫外光源下での分光特性の測定を制御する。これにより、紫外光源を無駄に点灯することなく、色票ごとの蛍光成分の分光放射輝度率を効率的に獲得し、観察光源の下での試料の全分光放射輝度率を効率的に得ることができる。したがって、プリンタプロファイルの作成を効率良く行うことが可能となる。
【0061】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、試料の全分光放射輝度率の測定時に蛍光成分の測定を行うか否かを判定する判定条件を、試料ごと、すなわちパッチデータの色票ごとに予め規定しておく例を示した。第2実施形態では該判定条件を、試料の色ごとに規定しておくことを特徴とする。すなわち、試料を可視光域の白色光源下で測定して得られた色度値に基づいて判定条件を参照し、蛍光成分の測定を行うべき色であると判定された試料に対してのみ、紫外光源を用いた測定を行う。
【0062】
●測定装置
第2実施形態において、試料の全分光放射輝度率を測定してプリンタプロファイルを作成するシステムの構成は、上述した第1実施形態で図1に示した構成と同様である。
【0063】
図14は、第2実施形態における測定装置107の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように第2実施形態の測定装置107は、第1実施形態で図4に示した構成に対し、色変換部1908をさらに備えることを特徴とする。また測定条件データ格納部1901が、白色光源下での色度値に対する判定条件を格納しており、測定判定部1902は測定された色度値に応じて該判定条件を参照することによって、紫外光源202,203の点灯を判定する。なお、図14における他の構成については第1実施形態の図4と同様であるため、同一番号を付し、説明を省略する。
【0064】
ここで図15に、第2実施形態の測定条件データ格納部1901に格納される測定条件データの構成を示す。上述したように第2実施形態における測定条件データは、2種類の紫外光源A,Bについて、測定時に点灯する条件として、試料の白色光源における色度値(明度L,彩度C,色相h)の範囲を記述したものある。なお、紫外光源A,Bのそれぞれが、紫外光源202,203に対応する。図15において各条件データ2002〜2005に示されるように、設定された点灯条件を適用する色度範囲として、試料を白色光源下で測定した際に得られる明度L,彩度C,色相hの上限値および下限値の組合せが格納されている。なお、各条件データ2002〜2005において設定される色度範囲は互いに重ならない、すなわち同じ色に対して複数の点灯条件が設定されないようになっている。
【0065】
すなわち、光源A,BともにON設定である条件データ2002には、各紫外光源の点灯を切り替えて両光源のそれぞれによる測定を行う条件としての、LCh値の上限値および下限値の組み合わせが規定されている。また、光源A.Bの一方がON設定である条件データ2003,2004には、各紫外光源のうちON設定である一方のみを点灯させて測定を行う条件としての、LCh値の上限値および下限値の組み合わせが規定されている。また、光源A,BともにOFF設定である条件データ2005には、紫外光源を点灯させた測定を行わない条件としての、LCh値の上限値および下限値の組み合わせが規定されている。
【0066】
なお、図15の例では、各光源A,Bの点灯条件について、1つの色度範囲が格納される例を示しているが、1つの点灯条件に対して複数の色度範囲を格納しても良い。また、上記図15に示すような測定条件データは、試料を印刷したインク種別等、試料の種類ごとに予め用意され、該試料の種類と対応づけられて測定条件データ格納部1901に保持されている。
【0067】
第2実施形態における測定装置107の測定判定部1902においては、白色光源201の点灯下で得られた試料の色度値について、図15に示す判定条件データを順次参照することで、蛍光成分を獲得するために点灯する紫外光源の種類を設定する。
【0068】
●試料測定処理
以下、第2実施形態における測定装置107による試料の分光特性の測定処理について、図16のフローチャートを用いて説明する。
【0069】
測定装置107は、まずS2101で測定部704に、プリンタ108によって印刷されたパッチチャート等の試料を設置する。するとS2102で測定判定部1902が、測定条件データ格納部1901から該試料に対応する測定条件データを獲得する。なお、試料に対応する測定条件データの識別は上述した第1実施形態と同様に、UIからのID入力や、試料に併記された識別記号を自動認識する、等の方法が考えられる。
【0070】
次にS2103で色変換部1903が、第1実施形態と同様に演算処理部105内の観察光源データ格納部1105に予め保持されている、プロファイル作成対象となる観察光源の分光放射輝度率S(λ)を獲得する。そしてS2104で同様に、白色光源201の分光放射輝度率S0(λ)を獲得する。次にS2105で、測定部704が白色光源201を点灯させて試料を測定し、可視光成分の分光放射輝度率I0(λ)を獲得する。そしてS2106において色変換部1903が、該測定された分光放射輝度率I0(λ)を色度値に変換する。詳細には、まず、白色光源201と観察環境光の分光放射輝度率S0(λ),S(λ)と、白色光源201の点灯下で測定した試料の分光放射輝度率I0(λ)から、観察環境光点灯下で得られる試料の分光放射輝度率R(λ)を算出する。この算出は、第1実施形態で示した式(2)に基づく。そして、該算出された分光放射輝度率R(λ)を、CIELabに代表される色度値に変換する。第2実施形態では、更に、Lab値からLCh値への変換を行う。
【0071】
そしてS2107で測定判定部1902において、S2106で算出した試料のLCh値と、S2102で獲得した測定条件データを参照して、試料の蛍光成分を測定するか否かを判定する。該判定以降は、上述した第1実施形態における図12のS1507〜S1511と同様に、紫外光源202,203を用いて試料を測定する。
【0072】
なお、第2実施形態における測定条件データとしては色度範囲に限らず、印刷対象となる記録媒体やインクの種類に関わらない、全体的な色再現傾向に基づいて決められた条件であれば良い。また、試料を出力したプリンタや記録媒体、色材の種類等のデバイス情報を入力することによって、デバイスドライバ等から提供される条件を適用することも可能である。
【0073】
以上説明したように第2実施形態によれば、試料の色度値に応じて、紫外光源点灯下での測定を制御することで、試料における蛍光成分の分光放射輝度率を効率的に獲得することが可能となる。
【0074】
<第3実施形態>
以下、本発明に係る第3実施形態について説明する。プリンタ108における色材として、蛍光剤を含む蛍光インクが用いられる場合がある。蛍光インクを用いて試料を印刷出力した場合、例えば上述した第2実施形態において試料の色度値に基づいて蛍光を発しないと判定されても、実際には蛍光を発光する場合がある。このような場合、試料を構成するCMYKインク量や、該インク量に対応する試料のRGB入力信号値といったインク量情報を参照することによって、試料が蛍光を発光するか否かを判定することができる。そこで第3実施形態では、蛍光成分の測定を行うか否かを判定する判定条件を、試料に対応付けられたインク量情報に応じて、予め規定しておくことを特徴とする。すなわち、試料のインク量情報に基づいて判定条件を参照し、蛍光成分の測定を行うべきと判定された試料に対してのみ、紫外光源を用いた測定を行う。
【0075】
なお、第3実施形態において試料の分光放射輝度率を測定してプリンタプロファイルを作成するシステムの構成、および測定装置107の構成は、上述した第1実施形態と同様である。したがって、各構成については第1実施形態と同一番号を参照するとして説明を省略する。
【0076】
●測定条件データ
図17に、第3実施形態における測定条件データ格納部701に格納される測定条件データの構成を示す。上述したように第3実施形態における測定条件データは、2種類の紫外光源A,Bについて、測定時に点灯する条件として、試料のCMYKインク量(CMYK値)の範囲を記述したものである。図17において各条件データ1802〜1805に示されるように、設定された点灯条件を適用するインク量範囲として、試料におけるCMYKの各インク量の上限値および下限値の組合せが格納されている。なお、各条件データ1802〜1805において設定されるインク量範囲は互いに重ならない、すなわち同じ出力色に対して複数の点灯条件が設定されないようになっている。
【0077】
すなわち、光源A,BともにON設定である条件データ1802には、各紫外光源の点灯を切り替えて両光源のそれぞれによる測定を行う条件としての、CMYK値の上限値および下限値の組み合わせが規定されている。また、光源A.Bの一方がON設定である条件データ1803,1804には、各紫外光源のうちON設定である一方のみを点灯させて測定を行う条件としての、CMYK値の上限値および下限値の組み合わせが規定されている。また、光源A,BともにOFF設定である条件データ1805には、紫外光源を点灯させた測定を行わない条件としての、CMYK値の上限値および下限値の組み合わせが規定されている。
【0078】
なお、図17の例では、各光源A,Bの点灯条件について、1つのインク量範囲が格納される例を示しているが、1つの点灯条件に対して複数のインク量範囲を格納しても良い。また、上記図17に示すような測定条件データは、試料を印刷したインク種別等、試料の種類ごとに予め用意され、該試料の種類と対応づけられて測定条件データ格納部1901に保持されている。
【0079】
第3実施形態における測定装置107の測定判定部702においては、試料を構成するCMYKインク量について、図17に示す判定条件データを順次参照することで、蛍光成分を獲得するために点灯する紫外光源の種類を設定する。
【0080】
●試料測定処理
以下、第3実施形態における測定装置107による試料の測定処理について、図18のフローチャートを用いて説明する。
【0081】
測定装置107は、まずS2301で測定部704に、プリンタ108によって印刷されたパッチチャート等の試料を設置する。するとS2302で測定判定部702が、測定条件データ格納部701から該試料に対応する測定条件データを獲得する。なお、試料に対応する測定条件データの識別は上述した第1実施形態と同様に、UIからのID入力や、試料に併記された識別記号を自動認識する、等の方法が考えられる。
【0082】
次にS2303で、測定部704が白色光源201を点灯させて試料の分光放射輝度率I0(λ)を測定する。そしてS2304で測定部704が、試料のインク量情報として、CMYKインク量を獲得する。なお、CMYKインク量の獲得方法としては例えば、S2303で獲得した分光放射輝度I0(λ)に基づき、予め設定されたインク量テーブルを参照して対応するCMYKインク量を取得する方法が考えられる。
【0083】
そしてS2305で測定判定部702において、S2304で獲得した試料のCMYKインク量と、S2302で獲得した測定条件データを参照して、試料の蛍光成分を測定するか否かを判定する。該判定以降は、上述した第1実施形態における図12のS1507〜S1511と同様に、紫外光源202,203を用いて試料を測定する。
【0084】
以上説明したように第3実施形態によれば、試料のインク量に応じて、紫外光源下での測定を制御することで、試料における蛍光成分の分光放射輝度率を効率的に獲得することが可能となる。
【0085】
<その他の実施形態>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光源と白色光源とを用いて試料の分光特性を測定する測定装置であって、
前記白色光源の分光放射輝度率と任意の観察光源の分光放射輝度率とを予め保持する保持手段と、
前記白色光源を点灯させて前記試料の反射光を測定することで、該試料の分光放射輝度率を得る第1の測定手段と、
前記保持手段に保持された前記白色光源の分光放射輝度率と前記観察光源の分光放射輝度率を用いて、前記第1の測定手段で得られた分光放射輝度率から、前記観察光源の下の前記試料の分光放射輝度率を算出する算出手段と、
前記試料に対して予め定められた、前記紫外光源を点灯するか否かを示す測定条件を取得する測定条件取得手段と、
前記測定条件により点灯する旨が示された前記紫外光源を点灯させて前記試料の反射光を測定することで、前記試料が発する蛍光の分光放射輝度率を得る第2の測定手段と、
前記算出手段で得られた分光放射輝度率と前記第2の測定手段で得られた分光放射輝度率から、前記観察光源の下の前記試料の全分光放射輝度率を算出する演算手段と、
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記紫外光源は、互いに異なる紫外域波長の光を発する複数の光源であり、
前記測定条件は、前記複数の紫外光源のそれぞれについて点灯するか否かを示すことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記第2の測定手段は、
前記紫外光源ごとに予め定められた加重係数を格納する係数格納手段と、
前記紫外光源ごとに前記試料を測定して得られた分光放射輝度率を、それぞれに対応する前記加重係数を用いて重み付け加算することで、前記分光放射輝度率を算出する蛍光演算手段と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記試料は互いに異なる複数の色票から構成され、
前記測定条件は、前記色票の測定順番に対して前記紫外光源を点灯するか否かを示すことを特徴とする請求項2または3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記測定条件は、前記第1の測定手段で得られた分光放射輝度率から算出される色度値に対して前記紫外光源を点灯するか否かを示すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記測定条件は、前記試料を構成するインク量もしくは該試料の入力信号値に対して前記紫外光源を点灯するか否かを示すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記白色光源は、紫外域波長の光を発しないことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項8】
互いに異なる紫外域波長の光を発する複数の紫外光源を用いて、複数の試料のそれぞれの分光特性を連続して測定する測定装置であって、
前記複数の試料のそれぞれに対して予め定められた、前記複数の紫外光源のそれぞれについて点灯するか否かを示す測定条件を取得する測定条件取得手段と、
前記測定条件により点灯する旨が示された前記紫外光源を点灯させて前記試料の反射光を測定することで、該試料が発する蛍光の分光放射輝度率を得る測定手段と、
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項9】
紫外光源と白色光源、および保持手段、第1の測定手段、算出手段、測定条件取得手段、第2の測定手段、演算手段、を有し、試料の分光特性を測定する測定装置における測定方法であって、
前記保持手段が、前記白色光源の分光放射輝度率と、任意の観察光源の分光放射輝度率を予め保持し、
前記第1の測定手段が、前記白色光源を点灯させて前記試料の反射光を測定することで該試料の分光放射輝度率を得、
前記算出手段が、前記保持手段に保持された前記白色光源の分光放射輝度率と前記観察光源の分光放射輝度率を用いて、前記第1の測定手段で得られた分光放射輝度率から、該観察光源の下の前記試料の分光放射輝度率を算出し、
前記測定条件取得手段が、前記試料に対して予め定められた、前記紫外光源を点灯するか否かを示す測定条件を取得し、
前記第2の測定手段が、前記測定条件により点灯する旨が示された前記紫外光源を点灯させて前記試料の反射光を測定することで該試料が発する蛍光の分光放射輝度率を得、
前記演算手段が、前記算出手段で得られた分光放射輝度率と前記第2の測定手段で得られた分光放射輝度率から、前記観察光源の下の該試料の全分光放射輝度率を算出することを特徴とする測定方法。
【請求項10】
測定装置が備えるコンピュータに、請求項9に記載の測定方法における各ステップを実行させるためのプログラム。
【請求項1】
紫外光源と白色光源とを用いて試料の分光特性を測定する測定装置であって、
前記白色光源の分光放射輝度率と任意の観察光源の分光放射輝度率とを予め保持する保持手段と、
前記白色光源を点灯させて前記試料の反射光を測定することで、該試料の分光放射輝度率を得る第1の測定手段と、
前記保持手段に保持された前記白色光源の分光放射輝度率と前記観察光源の分光放射輝度率を用いて、前記第1の測定手段で得られた分光放射輝度率から、前記観察光源の下の前記試料の分光放射輝度率を算出する算出手段と、
前記試料に対して予め定められた、前記紫外光源を点灯するか否かを示す測定条件を取得する測定条件取得手段と、
前記測定条件により点灯する旨が示された前記紫外光源を点灯させて前記試料の反射光を測定することで、前記試料が発する蛍光の分光放射輝度率を得る第2の測定手段と、
前記算出手段で得られた分光放射輝度率と前記第2の測定手段で得られた分光放射輝度率から、前記観察光源の下の前記試料の全分光放射輝度率を算出する演算手段と、
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記紫外光源は、互いに異なる紫外域波長の光を発する複数の光源であり、
前記測定条件は、前記複数の紫外光源のそれぞれについて点灯するか否かを示すことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記第2の測定手段は、
前記紫外光源ごとに予め定められた加重係数を格納する係数格納手段と、
前記紫外光源ごとに前記試料を測定して得られた分光放射輝度率を、それぞれに対応する前記加重係数を用いて重み付け加算することで、前記分光放射輝度率を算出する蛍光演算手段と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記試料は互いに異なる複数の色票から構成され、
前記測定条件は、前記色票の測定順番に対して前記紫外光源を点灯するか否かを示すことを特徴とする請求項2または3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記測定条件は、前記第1の測定手段で得られた分光放射輝度率から算出される色度値に対して前記紫外光源を点灯するか否かを示すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記測定条件は、前記試料を構成するインク量もしくは該試料の入力信号値に対して前記紫外光源を点灯するか否かを示すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記白色光源は、紫外域波長の光を発しないことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項8】
互いに異なる紫外域波長の光を発する複数の紫外光源を用いて、複数の試料のそれぞれの分光特性を連続して測定する測定装置であって、
前記複数の試料のそれぞれに対して予め定められた、前記複数の紫外光源のそれぞれについて点灯するか否かを示す測定条件を取得する測定条件取得手段と、
前記測定条件により点灯する旨が示された前記紫外光源を点灯させて前記試料の反射光を測定することで、該試料が発する蛍光の分光放射輝度率を得る測定手段と、
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項9】
紫外光源と白色光源、および保持手段、第1の測定手段、算出手段、測定条件取得手段、第2の測定手段、演算手段、を有し、試料の分光特性を測定する測定装置における測定方法であって、
前記保持手段が、前記白色光源の分光放射輝度率と、任意の観察光源の分光放射輝度率を予め保持し、
前記第1の測定手段が、前記白色光源を点灯させて前記試料の反射光を測定することで該試料の分光放射輝度率を得、
前記算出手段が、前記保持手段に保持された前記白色光源の分光放射輝度率と前記観察光源の分光放射輝度率を用いて、前記第1の測定手段で得られた分光放射輝度率から、該観察光源の下の前記試料の分光放射輝度率を算出し、
前記測定条件取得手段が、前記試料に対して予め定められた、前記紫外光源を点灯するか否かを示す測定条件を取得し、
前記第2の測定手段が、前記測定条件により点灯する旨が示された前記紫外光源を点灯させて前記試料の反射光を測定することで該試料が発する蛍光の分光放射輝度率を得、
前記演算手段が、前記算出手段で得られた分光放射輝度率と前記第2の測定手段で得られた分光放射輝度率から、前記観察光源の下の該試料の全分光放射輝度率を算出することを特徴とする測定方法。
【請求項10】
測定装置が備えるコンピュータに、請求項9に記載の測定方法における各ステップを実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−88292(P2013−88292A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229174(P2011−229174)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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