説明

測定装置

【課題】生理活性物質と検体物質との間の相互作用測定における測定精度の低下を抑制可能な測定装置及び測定方法を提供する。
【解決手段】光源35から出射された光ビームLが光検出部36に到る光路中に異物が存在することを検出した場合には、平行平面レンズ82の入射される光軸に対する角度を変更することができる。従って、光源35から出射された光ビームが光検出部36に到る光路中に存在する異物を避けるように、光ビームの光路を変更することができるので、光ビームL1及び光ビームL2の各々光路中に異物が存在することによる測定精度の低下を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の検体物質と生理活性物質の間の相互作用を測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生理活性物質の有する反応性基に結合する官能基を備えた検体物質を、その多種の候補の中から選択することは従来から行われている。生理活性物質としては特定のタンパク質等が挙げられ、このような特定の生理活性物質に結合する核酸やその誘導体等の検体物質は、主に医療分野などへの利用が期待されている。
【0003】
生理活性物質に結合する検体物質を選択するための方法としては、生理活性物質と検体物質との相互作用を評価する様々な方法が用いられている。この評価方法としては、標識が不要であることと感度の高さとから近接場光を利用する方法が知られており、近接場光を利用した上記相互作用測定の一例には、表面プラズモン共鳴を利用した方法がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
一般的に、表面プラズモン共鳴を利用した生理活性物質と検体物質との相互作用測定においては、プリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されて試料に接触させられる金属膜と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射条件となり、且つ、表面プラズモン現象を含む種々の入射角が得られるように入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して表面プラズモン共鳴の状態を検出する光検出手段と、を備えてなるものが知られている。
【0005】
このような生理活性物質と検体物質との相互作用を測定する装置において、光ビームを金属膜に対して全反射角以上の特定入射角で入射させると、該金属膜に接している試料中にエバネッセント波によって金属膜と試料との界面に表面プラズモンが励起される。エバネッセント光の波数ベクトルが表面プラズモンの波数と等しくて波数整合が成立しているときに、両者は共鳴状態となり、光のエネルギーが表面プラズモンに移行するので、誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射した光の強度が鋭く低下する(全反射減衰)。この光強度の低下は、一般に、上記光検出手段によって暗線として検出される。
【0006】
この全反射減衰が生じる入射角より表面プラズモンの波数が分かると、試料の誘電率が求められ、所定の較正曲線等に基づいて試料中の特定物質の濃度が分かる。すなわち、上記反射光強度が低下する入射角を得ることにより、試料中の特定物質を定量分析することができる。
【0007】
上記のような測定装置において、誘電体ブロック内部におけるゴミや泡等の異物の存在や、光源から出射された光ビームが誘電体ブロックと金属膜との界面で反射して光検出装置に到る光路上にゴミや泡等の異物が存在すると、光検出装置に入射される信号の精度が低下し、生理活性物質と検体物質との相互作用における測定精度が低下する場合があった。
【特許文献1】特許第2758904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、生理活性物質と検体物質との間の相互作用測定における測定精度の低下を抑制可能な測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の測定装置は、測定対象となる検体物質の供給される生理活性物質が予め固定された固定層と、前記固定層に対して照射する光ビームまたは該固定層で全反射した光ビームが透過する透光部材と、を少なくとも有する測定容器と、前記固定層の予め定められた照射領域へ前記透光部材を介して前記光ビームを照射する照射手段と、前記光ビームの前記固定層に対する照射領域を変更する変更手段と、前記透光部材と前記固定層との界面で全反射した前記光ビームの強度分布を示す強度分布情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された強度分布情報に基づいて、異物を検出する検出手段と、前記検出手段によって前記異物が検出されたときに、前記光ビームの前記照射領域を変更するように、前記変更手段を制御する制御手段と、を備えている。
【0010】
照射手段は、測定容器の透光部材を介して固定層の予め定められた照射領域へ光ビームを照射する。照射領域に照射された光ビームは、透光部材と固定層との界面で全反射して取得手段に到り、取得手段によって全反射した光ビームの強度分布を示す強度分布情報として取得される。検出手段は、取得手段によって取得された強度分布情報に基づいて、異物を検出する。異物の一例には、透光部材中のゴミや泡等や、透光部材外面に付着した塵やゴミ等の光ビームの光路に存在する異物が挙げられる。取得手段によって取得された強度分布情報に基づいて、検出手段が異物を検出したときに、制御手段は、光ビームの照射領域を変更するように変更手段を制御する。
【0011】
このように、取得手段によって異物が検出されたときに、固定層に対する光ビームの照射領域を変更することができるので、照射手段から照射された光ビームの光路が照射領域を介して取得手段によって取得されるまでの光路中に存在する異物を回避した光路となるように、光ビームの透光部材に対する相対位置を変更することができる。
【0012】
従って、異物による測定精度の低下を抑制することができ、生理活性物質と検体物質との間における測定精度の低下を抑制可能な測定装置を提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の測定装置は、請求項1に記載の測定装置において、前記制御手段は、前記検出手段によって前記異物が検出されなかったときに、前記取得手段によって取得された強度分布情報に基づいて、前記検体物質と生理活性物質との相互作用を測定することができる。
【0014】
このため、生理活性物質と検体物質との間における測定精度の低下を抑制可能な測定装置を提供することができる。
【0015】
請求項3に記載の測定装置は、請求項1または請求項2に記載の測定装置において、前記照射手段は、前記光ビームを出射する光源と、該光ビームが前記光源から前記界面へ至る光路上に配置され前記光源から出射された前記光ビームの入射角度に応じた出射角度で該光ビームを出射する光学部材と、を含んで構成され、前記変更手段は、前記光ビームの出射角度を変更するように前記光学部材を回転することができる。
【0016】
光源から出射された光ビームの光路を、光学部材の回転によって変更することができるので、簡易な構成で容易に生理活性物質と検体物質との間における測定精度の低下を抑制可能な測定装置を提供することができる。
【0017】
請求項4に記載の変更手段は、請求項1または請求項2に記載の測定装置において、前記透光部材を移動することができる。透光部材を移動させることによって、界面における光ビームの照射領域を変更することができるので、簡易な構成で容易に生理活性物質と検体物質との間における測定精度の低下を抑制することができる。
【0018】
請求項5に記載の測定装置は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の測定装置において、前記検出手段は、前記取得手段によって取得された前記強度分布情報により示される強度分布に対して空間周波数分解を行って光ビームの周波数毎の強度分布を導出する導出手段と、前記導出手段によって導出された光ビームの周波数毎の強度分布を周波数毎に予め定められた閾値と比較した比較結果に基づいて前記異物を検出する比較手段と、を含んで構成することができる。
【0019】
請求項6に記載の測定装置は、請求項5に記載の測定装置において、前記導出手段は、前記強度分布情報により示される反射角度毎の強度分布に対してフーリエ変換を行うことにより周波数毎の強度分布を導出することができる。
【0020】
請求項7に記載の測定装置は、請求項5に記載の測定装置において、前記導出手段は、前記強度分布情報により示される強度分布から所定幅毎の移動平均による強度分布を求め、該移動平均による強度分布と前記強度分布情報により示される強度分布との差分を算出すると共に、算出した差分の最大値と最小値との差を求めることを、前記所定幅を変えながら複数回行うことにより各周波数に応じた強度分布を導出することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の測定装置によれば、生理活性物質と検体物質との間における測定精度の低下を抑制可能な測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の測定装置及び測定方法の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0023】
[第1の実施の形態]
図1〜図4に示すように、本実施の形態のバイオセンサー10は、下部筐体11及び上部筐体12を備えている。上部筐体12は、断熱部材で構成されており、バイオセンサー10の上半分全体を覆っている。上部筐体12内と、外部及び下部筐体11内との間は、断熱されている。上部筐体12の手前側は、上方へ開放可能とされており、把手13が取り付けられている。上部筐体12の外側には、表示部14及び入力部16が設置されている。
【0024】
表示部14の一例には、CRTやLCD等の表示デバイスが挙げられる。入力部16の一例には、タッチパネルやキーボード等がある。
【0025】
また、上部筐体12の内側には、表示部14及び入力部16に信号授受可能に接続され、バイオセンサー10に設けられている装置各部を制御するための主制御部71が設けられている。
【0026】
図2は、上部筐体12を取り去って、図1の奥側からみたバイオセンサー10の内部を示す図であり、図3は筐体の内部を上面からみた図、図4は図2の手前側からみた内部の側面図である。
【0027】
上部筐体12の内部には、分注ヘッド20、測定部30、検体溶液ストック部40、ピペットチップストック部42、緩衝液ストック部44、保冷部46、測定チップストック部48、ラジエータ60、ラジエータ送風ファン62、水平方向送風ファン64が備えられている。
【0028】
ラジエータ60は、金属製の薄板が積層されて内部に流路が構成されており、流路に温調水を流して、温調水と上部筐体12内の空気との熱交換を行っている。ラジエータ60の上部筐体12と逆側には、ラジエータ送風ファン62が設けられている。ラジエータ送風ファン62により、ラジエータ60で熱交換された空気が、上部筐体12のY方向内側へ送り込まれる。ラジエータ60には、循環ホース66が連結されている。
【0029】
ラジエータ60の設置された位置に隣接するY方向に沿った上部筐体12の内側には、水平方向送風ファン64が設けられている。水平方向送風ファン64により、ラジエータ60側からの空気が、上部筐体12のX方向内側へ送り込まれる。これにより、上部筐体12内部の温度調整可能に構成されている。
【0030】
検体溶液ストック部40は、検体溶液積層部40A及び検体溶液セット部40Bで構成されている。検体溶液積層部40Aには、検体溶液プレート40Pが、Z方向に積層されて収容されている。
【0031】
検体溶液プレート40Pは、検体物質を含む検体溶液を貯留するための複数のセル(図示省略)を含んで構成され、各々のセルには、1種または2種以上の異なる検体物質を有機溶媒に溶解した検体溶液が予め貯留されている。
【0032】
検体溶液セット部40Bには、検体溶液積層部40Aに積層された複数の検体溶液プレート40Pの内の一枚が、図示しない搬送機構により検体溶液積層部40Aから搬送されてセットされる。
【0033】
上記検体物質とは、バイオセンサー10において測定する測定対象となる物質であり、例えば、核酸分子が上げられる。核酸分子としては、核酸または誘導体を挙げることができ、DNA、RNAのほかに、これらの誘導体、すなわち、天然に存在するDNA、RNAの一部を改変したものを含む。核酸誘導体としては、例えば、DNAと類似した構造を有し、ペプチド結合により骨格を形成する化合物であるPNA(ペプチド核酸)を挙げることができる。
【0034】
検体溶液プレート40Pの各セルには、この検体物質を溶媒に溶解させた検体溶液が予め貯留されている。
【0035】
検体物質を溶解する溶媒としては、有機溶媒が用いられている。この有機溶媒としては、検体物質自体の変性などの影響を及ぼさないものが好ましく、具体的には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチルラクトンよりなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。これらの有機溶媒の中でも、DMSOを用いることが好ましい。
【0036】
検体溶液は、上記検体物質と、上記有機溶媒と、を少なくとも含んで構成されており、検体溶液中の検体物質の濃度、及び有機溶媒の濃度は、測定前に予め調整されている。
【0037】
ピペットチップストック部42は、ピペットチップ積層部42A及びピペットチップセット部42Bで構成されている。ピペットチップ積層部42Aには、複数のピペットチップを保持するピペットチップストッカー42Pが、Z方向(鉛直方向)に積層されて収容されている。ピペットチップセット部42Bには、1枚のピペットチップストッカー42Pが、図示しない搬送機構によりピペットチップ積層部42Aから搬送されてセットされる。
【0038】
緩衝液ストック部44は、ボトル収容部44A及び緩衝液供給部44Bで構成されている。ボトル収容部44Aには、緩衝液が貯留された複数本のボトル44Cが収容されている。
【0039】
緩衝液としては、例えば公知の緩衝溶液(化学便覧応用編改訂2版、1312頁〜1320頁)を基本に、食塩、界面活性剤(Tween20など)、金属イオン(マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなど)、安定化剤(DTTなど)などを添加したものを用いることができる。特に、PBS緩衝液(リン酸緩衝液生理食塩水)、Tris緩衝液、HEPES緩衝液などが好ましく用いられる。
【0040】
緩衝液供給部44Bには、緩衝液プレート44Pがセットされている。緩衝液プレート44Pは、複数筋に区画されており、各々の区画には濃度の異なる緩衝液が貯留されている。また、緩衝液プレート44Pの上部には、分注ヘッド20のアクセス時にピペットチップCPが挿入される孔Hが構成されている。緩衝液プレート44Pへは、ホース44Hによりボトル44Cから緩衝液が供給される。
【0041】
緩衝液供給部44Bの隣には、補正用プレート45が配置され、その隣に保冷部46が配置されている。補正用プレート45は、緩衝液中の濃度調整を行うためのプレートであり、マトリクス状に複数セルが構成されている。保冷部46には、冷蔵の必要な検体溶液が配置される。保冷部46は低温とされており、この上で検体溶液は低温状態に保たれる。
【0042】
測定チップストック部48には、測定チップ収容プレート48Pがセットされている。測定チップ収容プレート48Pには、測定チップとしての測定スティック50が複数本収納されている。
【0043】
図3及び図5に示すように、測定チップストック部48と測定部30との間には、測定チップ搬送機構49が備えられている。測定チップ搬送機構49は、測定スティック50を両側から挟み込んで保持する保持アーム49A、保持アーム49Aを指示する支持部材49E、支持部材49Eを支持する支持部材49F、駆動部49D、ボールねじ49H、ガイドレール49Gを含んで構成されている。駆動部49Dは、ボールねじ49Hを回転駆動し、主制御部71に信号授受可能に接続されている。
【0044】
ボールねじ49H及びガイドレール49Gは、X方向に平行配置されている。支持部材49Fは、ボールねじ49Hとガイドレール49GとにX方向に架け渡されている。支持部材49Eが、駆動部49Dの駆動によるボールねじ49Hの回転によってガイドレール49Gに沿ってY方向に移動されることで、保持アーム49Aがガイドレール49Gに沿ってY方向に移動される。
【0045】
測定の際には、1本の測定スティック50が測定チップ搬送機構49により測定チップ収容プレート48Pから搬送レール49C上に載せられ、保持アーム49Aにより挟持されつつ測定部30へ移動してセットされる。
【0046】
測定スティック50は、図6及び図7に示すように、誘電体ブロック52、流路部材54、及び保持部材56で構成されている。
【0047】
誘電体ブロック52は、光ビームに対して透明な透明樹脂等で構成されており、断面が台形の棒状とされたプリズム部52A、及び、プリズム部52Aの両端部にプリズム部52Aと一体的に形成された被保持部52Bを備えている。プリズム部52Aの互いに平行な2面の内の広い側の上面には、金属膜57が形成されている。誘電体ブロック52は、いわゆるプリズムとして機能し、透光性を有している。
バイオセンサー10での測定の際には、プリズム部52Aの対向する互いに平行でない2つの側面の内の一方から光ビームが入射され、他方から金属膜57と誘電体ブロック52との界面で全反射された光ビームが出射される。
【0048】
プリズム部52Aの両側面には、上側の端辺に沿って保持部材56と係合される係合凸部52Cが形成されている。また、プリズム部52Aの下側には、側端辺に沿って搬送レール49Cと係合されるフランジ部52Dが形成されている。
【0049】
図7に示すように、流路部材54は、6個のベース部54Aを備え、ベース部54Aの各々に4本の円筒部材54Bが立設されている。ベース部54Aは、3個のベース部54A毎に、立設された円筒部材54Bのうちの1本の上部が連結部材54Dによって連結されている。流路部材54は、軟質で弾性変形可能な材料、例えば非晶質ポリオフィレンエラストマーで構成することができる。このように、流路部材54を、弾性変形可能な材料で構成することにより、誘電体ブロック52との密着性を高め、誘電体ブロック52との間に構成される液体流路55の密閉性を確保することができる。
【0050】
ベース部54Aには、図8及び図9に示すように、底面側に略S字状の2本の流路溝54Cが形成されている。流路溝54Cは、端部の各々が1の円筒部材54Bの中空部と連通されている。
【0051】
ベース部54Aは、底面が誘電体ブロック52の測定面(上面)と密着されることにより、流路溝54Cと誘電体ブロック52の上面との間に構成される空間と前記中空部とで、液体流路55が構成される。1個のベース部54Aには、2本の液体流路55が構成される。各々の液体流路55において、円筒部材54Bの上端面に液体流路55の出入口53が構成される。
【0052】
ここで、2本の液体流路55のうち、1本は測定流路55Aとして用いられ、他の1本は参照流路55Rとして用いられる。測定流路55Aとは、図10(B)に示すように、生理活性物質の固定された測定領域E1を有する流路であり、参照流路55Rとは、図10(A)に示すように、生理活性物質の固定されていない参照領域E2からなる流路である。
【0053】
詳細には、測定流路55Aに位置する金属膜57の表面には、図10(B)に示すように、予め表面に生理活性物質の固定されたリンカー層57Aが形成されている。リンカー層57Aは、生理活性物質を金属膜57上に固定化するための層であって、リンカー層57Aの官能基を介して生理活性物質を共有結合させることによって、金属膜57上に生理活性物質を固定化している。
【0054】
生理活性物質は、測定対象である検体物質と相互作用する物質である。生理活性物質としては、測定対象である検体物質と相互作用するものであれば特に限定されず、例えば免疫蛋白質、酵素、微生物、核酸、低分子有機化合物、非免疫蛋白質、免疫グロブリン結合性蛋白質、糖結合性蛋白質、糖を認識する糖鎖、脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、あるいはリガンド結合能を有するポリペプチドもしくはオリゴペプチドなどが挙げられる。
【0055】
この生理活性物質上に上記検体物質が供給されると、供給された検体物質が生理活性物質の反応性基と反応する官能基を有する場合には、生理活性物質と検体物質との間で相互作用(すなわち、結合)が生じる。このため、この生理活性物質に検体溶液を供給して検体物質を接触させることにより、生理活性物質と相互作用する検体物質を検出または相互作用を測定することができ、測定領域E1は、検体物質と、生理活性物質Dとの相互作用を測定するための領域として機能する。
【0056】
また、図10(A)に示すように、参照流路55Rに位置する金属膜57の表面には、図10(A)に示すように、生理活性物質が表面に固定化されていないリンカー層57Rが形成されている。リンカー層57Rは、上記測定流路55Aに形成されているリンカー層57Aとは異なり、生理活性物質が表面に固定化されておらず、検体物質との相互作用が生じ得ない層であり、参照領域E2は、上記測定領域E1における測定結果を補正するために設けられた領域である。
【0057】
測定流路55A及び参照流路55Rには、図8に示すように、各々後述する光ビームL1、L2が入射される。光ビームL1、光ビームL2は、図9に示すように、ベース部54Aの中心線M上に配置されるS字の屈曲部分に照射される。すなわち、測定流路55Aにおける光ビームL1の照射領域が測定領域E1となり、参照流路55Rにおける光ビームL2の照射領域が参照領域E2となる。
【0058】
なお、以下では、光ビームL1及び光ビームL2を総称する場合には、光ビームLと称して説明する。
【0059】
測定スティック50の保持部材56は、長尺とされ、上面部材56A及び2枚の側面板56Bが蓋状に構成された形状とされている。側面板56Bには、誘電体ブロック52の係合凸部52Cと係合される係合孔56C、及び、光ビームL1、L2の光路に対応する部分に窓56Dが形成されている。保持部材56は、係合孔56Cと係合凸部52Cとが係合されて、誘電体ブロック52に取り付けられる。なお、流路部材54は、保持部材56と一体成形されており、保持部材56と誘電体ブロック52の間に配置される。
【0060】
上面部材56Aには、流路部材54の円筒部材54Bに対応する位置に、受部59が形成されている。受部59は略円筒状とされている。なお、受部59は、図10に示すように、流路部材54に向けて狭くなるテーパー状であることが好ましい。
【0061】
分注ヘッド20は、図2に示すように、上部筐体12内の上部に設けられ、水平駆動機構22により矢印X方向に移動可能とされている。水平駆動機構22は、ボールねじ22A、モータ22B、ガイドレール22Cにより構成されている。ボールねじ22A及びガイドレール22Cは、X方向に配置されている。ガイドレール22Cは平行に2本配置され、そのうちの1本はボールねじ22Aの下側に所定間隔離れて配置されている。分注ヘッド20は、モータ22Bによるボールねじ22Aの回転により、ガイドレール22Cに沿ってX方向に移動される。
【0062】
分注ヘッド20には、分注ヘッド20を矢印Z方向に移動させる鉛直駆動機構24が設けられている。鉛直駆動機構24は、図11に示すように、モータ24A及びZ方向に配置された駆動軸24Bを含んで構成され、分注ヘッド20をZ方向に移動させる。
【0063】
分注ヘッド20によりアクセスされる、保冷部46、補正用プレート45、緩衝液供給部44B(緩衝液プレート44P)、測定部30(測定スティック50)、検体溶液セット部40B(検体溶液プレート40P)、及びピペットチップセット部42B(ピペットチップストッカー42P)は、この順にX方向(分注ヘッド20の移動方向)に配置されている。
【0064】
図11に示すように、分注ヘッド20は、12本の分注管20Aを備えている。分注管20Aは、X方向と直交するY方向に沿って1列に配列されている。分注管20Aの先端部には、ピペットチップCPが取付けられている。ピペットチップCPは、ピペットチップストッカー42Pに収容されており、必要に応じて交換可能とされている。
【0065】
バイオセンサー10における測定時には、分注管20Aにより、測定スティック50へ検体溶液や緩衝液が供給される。この分注管20Aは、隣り合う2本で一対とされ、1の液体流路55の出入り口に1本ずつ対応させて使用される。検体溶液、及び緩衝液などの液体の供給は、分注ヘッド20を、保冷部46、及び検体溶液セット部40B上各々へ移動させ、隣り合う一対の分注管20Aの一方(計6本)に取り付けられたピペットチップCPで各液体を吸引する。
【0066】
なお、吸引した上記各種液体を測定スティック50の複数の液体流路55各々に供給する場合には、この液体流路55に供給するための液体の吸引量は、2本分の液体流路55、すなわち1本の測定流路55Aと1本の参照流路55Rとの双方に液体を供給可能な程度の量である。そして、液体を吸引した6本の分注管20A側のピペットチップCPを、測定スティック50の測定流路55A側の片方の出入口53(以下「供給口53A」という)へ挿入すると共に、他方の列の6本の分注管20Aに取り付けられたピペットチップCPを他方の出入口53(以下「排出口53B」という)へ挿入する。そして、供給口53A側の分注管20Aから半量の液体を吐出すると共に、排出口53B側の分注管20Aで液体を吸入することにより行われる。続いて、参照流路55R側へも、同様にしてピペットチップCPの残り半量の液体が供給される。
【0067】
図12に示すように、測定部30は、光学定盤32、光出射部34、CCD36Bを含んで構成されている。図12では、測定スティック50の誘電体ブロック52と流路部材54以外の部材は省略されている。光学定盤32には、側方向から見て、上部中央の水平平面で構成される定盤レール部32A、定盤レール部32Aから離れる方向に向かって低くなる出射傾斜部32B、定盤レール部32Aを挟んで出射傾斜部32Bと逆側に配置される受光傾斜部32Cが形成されている。定盤レール部32Aには、Y方向沿って測定スティック50がセットされる。光学定盤32の出射傾斜部32Bには、測定スティック50へ向かって光ビームLを出射する光出射部34が設置されている。また、受光傾斜部32Cには、CCD36Bが設置されている。
【0068】
光出射部34は、図13に示すように、一本の測定流路55Aと1本の参照流路55Rとからなる領域毎に対応して設けられており、誘電体ブロック52を介して測定流路55Aの測定領域E1へ向かって光ビームL1を照射する光出射部34Aと、誘電体ブロック52を介して参照流路55Rの参照領域E2へ向かって光ビームL2を照射する光出射部34Rと、を含んで構成されている。
【0069】
光出射部34A及び光出射部34Rは、各々光源35と、レンズユニット37を含んで構成されている。レンズユニット37は、光源35側から誘電体ブロック52配置側に向かって順に、コリメータレンズ80、平行平面レンズ82、ロッドレンズ84、及びシリンドリカルレンズ86が順に配列されて構成されている。
【0070】
光源35としては、レーザ光を出射するレーザ光源を用いることができる。
【0071】
光源35から発散光状態で出射した光ビームは、コリメータレンズ80によって平行光化された後、平行平面レンズ82を透過して、ロッドレンズ84に入射する。ロッドレンズ84に入射した光は、ロッドレンズ84によって所定方向に集光された後に、シリンドリカルレンズ86によって金属膜57と誘電体ブロック52との界面に集光される。
【0072】
平行平面レンズ82は、入射された光ビームの入射角度に応じた出射角度で光ビームを出射する。
図15に示すように、平行平面レンズ82は、回転円盤74上に設けられている。回転円盤74は、回転円盤74を支持すると共に回転円盤74の回転軸として機能する支持部材76を介してモータ72に接続されている。モータ72は、上記制御部70に信号授受可能に接続されており、制御部70によるモータ72の駆動による回転円盤74の回転に伴って、光源35から平行平面レンズ82に入射される光ビームLの入射角度を変更することにより、平行平面レンズ82を透過することによって出射される光ビームの平行平面レンズ82の板面に対する出射角度を変更可能に設けられている。
【0073】
このため、図13に示すように、光源35から出射された光ビームLが、平行平面レンズ82の板面に対して直交する方向に入射された場合と、平行平面レンズ82の板面に対して直交する方向から所定角度傾いた状態で光ビームLが入射された場合と、における、誘電体ブロック52と金属膜57との界面におおける光ビームLの照射領域を、平行平面レンズ82の回転前とは異ならせることが可能に構成されている。
【0074】
なお、平行平面レンズ82の位置、大きさ及び、回転可能な回転角度は、各平行平面レンズ82を介して照射される対象となる参照領域E2または測定領域E1の領域内から外れない程度に、予め調整されているものとする。
【0075】
誘電体ブロック52に入射された光ビームLは、上述のように、誘電体ブロック52と金属膜57との界面に集光されるので、この界面に対して種々の入射角θで入射する成分を含むこととなる。なお、この入射角θは、全反射角以上の角度とされる。そこで、光ビームLが、誘電体ブロック52と金属膜57との界面で全反射し、この反射した光ビームLには、種々の反射角で反射する成分が含まれることになる。
【0076】
なお、光ビームLは、この界面に対してp偏光で入射される。そのようにするためには、予め光源35各々を、その偏光方向が所定方向となるように配設すればよい。
【0077】
CCD36Bは、レンズユニット36A、CCD(Charge−Coupled Device)36Bを含んで構成されている。レンズユニット36Aは、図示を省略するコリメータレンズを含んで構成されている。CCD36Bに入射され光ビームは、このコリメータレンズによって平行光化された後に、CCD36Bによって検出される。
【0078】
CCD36は、複数のフォトダイオードが配設されてなるフォトダイオードアレイであり、光ビームLの進行方向に対してフォトダイオード配設方向がほぼ直角となる向きに配設されている。したがって、上記界面において種々の反射角で全反射した光ビームLの各成分を、それぞれ異なるフォトダイオードが受光することになる。
【0079】
CCD36で検出された検出信号は、主制御部71に出力される。
主制御部71は、信号処理部38、メモリ17、制御部70を含んで構成されている。制御部70は、信号処理部38、メモリ17に信号授受可能に接続されるとともに、上記表示部14、入力部16、駆動部49D、モータ22B、光源35、及びモータ72に信号授受可能に接続されている。CCD36Bは、信号処理部38に信号授受可能に接続されている。
【0080】
信号処理部38は、入力された強度分布情報に基づいて所定の処理が行なわれ、測定領域E1及び参照領域E2での屈折率変化データが求められ、制御部70へ出力される。
【0081】
この屈折率変化データは、全反射された光ビームL1、L2の暗線位置に基づいて求められるものである。金属膜57の界面に、特定の入射角で入射した光ビームL1及び光ビームL2は、金属膜57と生理活性物質との界面に表面プラズモンを励起させ、これにより、この入射角で入射した光ビームL1、光ビームL2の反射光の強度が鋭く低下して暗線として観察される。この暗線となる光ビームL1、光ビームL2の入射角が全反射減衰角θSPであり、生理活性物質と検体物質との反応に応じた全反射減衰角θSPの変化が、屈折率変化データとなる。
【0082】
制御部70は、屈折率変化データに基づいて、生理活性物質と検体物質との反応(すなわち、相互作用)を測定し、測定結果を表示部14に表示する。
【0083】
図16には、本実施の形態に係る信号処理部38の構成を示す機能ブロック図が示されている。
信号処理部38は、CCD36Bから入力された二次元の強度分布情報(二次元の画像)に対して畳み込み演算を行なって1次元の強度分布を示す強度分布情報を導出する畳み込み演算部89と、導出された強度分布情報を記憶する強度分布情報記憶部81と、強度分布情報に基づいて暗線位置の検出を行なう暗線位置検出部85と、強度分布情報に基づいて異物の有無を検出する検出部87と、暗線位置検出部85により検出された暗線位置に基づいて屈折率変化データを導出する変化データ導出部88と、を備えている。
【0084】
なお、強度分布情報により示される2次元の画像には、界面において全反射された2本の光ビームL1、及び光ビームL2の像が含まれている。このため、本実施の形態に係る畳み込み演算部89は、強度分布情報により示される2次元の画像の光ビームL1、光ビームL2の像の領域毎に畳み込み演算を行なって、光ビームL1、及び光ビームL2の1次元の強度分布を示す強度分布情報をそれぞれ導出するものとされている。
【0085】
本実施形態のバイオセンサー10においては、検体物質と生理活性物質との相互作用の測定時には、制御部70では、図17に示す処理ルーチンが実行される。
【0086】
なお、上述のように、光出射部34から1本の誘電体ブロック52の複数の測定領域E1と参照領域E2各々に光ビームL1及び光ビームL2各々が照射されることにより、信号処理部38には、複数の測定領域E1と複数の参照領域E2各々から強度分布情報が入力される。以下では、説明を簡略化するために、1本の誘電体ブロック52の複数の測定領域E1と複数の参照領域E2の内の、1対の測定領域E1と参照領域E2のみから強度分布情報が入力されるものとして説明する。
【0087】
ユーザが入力部16を操作することによって、入力部16からバイオセンサー10における測定開始を指示する指示信号が入力された後に、1本の測定スティック50が測定部30へセットされる度に、制御部70では、図17に示す処理ルーチンが実行される。なお、図17に示す処理ルーチンは、メモリ17に予め記憶されているものとする。
【0088】
この測定スティック50の測定部30へのセットとは、制御部70が、1本の測定スティック50を測定チップ搬送機構49により測定チップ収容プレート48Pから測定部30へ移動してセットするように駆動部49Dを制御することによって行われる。このように測定部30にセットされることにより、測定スティック50は、測定チップ搬送機構49により定盤レール部32Aに搬送されて、測定対象とする測定流路55Aの測定領域E1及び参照流路55Rの参照領域E2各々に、光ビームL1、光ビームL2が入射される位置に配置される。
【0089】
ステップ100では、測定指示信号を光源35に出力する。光源35は、測定指示信号が入力されると、参照領域E2及び測定領域E1各々に、光ビームL1及び光ビームL2各々を出射する。
【0090】
参照領域E2及び測定領域E1各々に入射された光ビームL1及び光ビームL2各々は、測定領域E1及び参照領域E2各々で全反射され、発散しながら誘電体ブロック52のプリズム面を通って外部に射出される。外部に射出された光ビームL1、L2は、レンズユニット36Aを経てCCD36Bの受光面に結像され、受光面に結像した像を示す二次元の強度分布情報が生成されて信号処理部38へ出力される。
【0091】
信号処理部38では、入力された二次元の強度分布情報に基づいて、屈折率変化データを導出すると共に、光ビームL1及び光ビームL2の光路中における異物の有無を検出する(詳細後述)。信号処理部38において導出された屈折率変化データと、異物の有無を示す情報と、は制御部70に出力される。
【0092】
次のステップ102では、信号処理部38から光強度分布を示す強度分布情報及び異物の有無を示す情報が入力されるまで否定判断を繰り返し、肯定されると、ステップ104へ進み、入力された強度分布情報及び異物の有無を示す情報をメモリ17に記憶する。
【0093】
次のステップ106では、光ビームL1及び光ビームL2の光路上に異物が有るか否かを判断する。
ステップ106の処理は、上記ステップ104でメモリ17に記憶した異物の有無を示す情報が、異物有を示す異物有情報であるか、または異物無を示す異物無情報であるかを判別することによって判断可能である。
【0094】
ステップ106で肯定されて、光ビームL1及び光ビームL2の光路中に異物が存在すると判別されると、ステップ108ヘ進み、上記ステップ104でメモリ17に記憶した強度分布情報と異物の有無を示す情報とを消去した後に、ステップ110へ進む。ステップ110では、平行平面レンズ82を予め定めた所定角度(例えば、5°)支持部材76を回転軸として回転駆動することを示す駆動指示信号をモータ72に出力した後に、上記ステップ100へ戻る。
【0095】
モータ72に駆動指示信号が入力されると、モータ72が駆動して、この駆動による回転円盤74の回転に伴って、光源35から出射された光ビームLの平行平面レンズ82の板面に対する入射角が変化する。このため、光源35から出射された光ビームLの平行平面レンズ82を介して出射される光ビームの出射角度が回転円盤74の回転前とは異なる角度となる。このため、光源35から出射された光ビームLの光路は、平行平面レンズ82を透過することによって変化して、誘電体ブロック52と金属膜57との界面の、平行平面レンズ82の回転前とは異なる領域に、光ビームが照射される。
【0096】
このように、上記ステップ106の判断で肯定されるまで、上記ステップ100からステップ110の処理が繰り返されることによって、例えば、図13及び図14に示すように、平行平面レンズ82の回転駆動前には、光源35から射出される光ビームL1の光路中に存在する異物として、誘電体ブロック52内に泡Bが存在した場合であっても、平行平面レンズ82の回転駆動によって、図25(A)及び図25(B)に示すように、誘電体ブロック52に入射される光ビームL1の位置が変更されて、誘電体ブロック52と金属膜57との界面における光ビームL1の入射領域が泡Bを避けて入射された領域となるように変更される。
【0097】
上記ステップ106で肯定されて、光路中に異物が存在しないことを判別すると、ステップ112へ進み、上記ステップ104でメモリ17に記憶した参照領域E2による強度分布情報に基づく屈折率データにより示される暗線位置と、測定領域E1による強度分布情報に基づく屈折率データにより示される暗線位置との差分に基づいて、生理活性物質と検体物質との相互作用を示す情報を算出する。次のステップ114において、ステップ112で算出した測定結果を表示部14に表示した後に、本ルーチンを終了する。
【0098】

次に、上記ステップ100の処理によって測定指示信号が光源35に出力されることによって、CCD36Bから入力された強度分布情報に基づいて、信号処理部38で実行される屈折率データの導出処理及び異物の有無を検出する検出処理について説明する。
【0099】
図18(A)には、強度分布情報により示される画像の一例が示されている。
同図に示されるように、強度分布情報により示される画像には、測定領域E1、参照領域E2で全反射された2本の光ビームL1、L2の像が含まれている。
【0100】
信号処理部38では、強度分布情報が入力されると、図19に示す屈折率変化データ導出処理を行う。
信号処理部38では、図19に示すように、ステップ200において、CCD36Bから入力された強度分布情報により示される画像の光ビームL1の像が含まれる領域及び光ビームL2の像が含まれる領域の画像に対して畳み込み演算部89において各々畳み込み演算を行なって光ビームL1、光ビームL2の1次元の強度分布を示す強度分布情報をそれぞれ導出する。図18(B)には、光ビームL2の像が含まれる領域の画像に対して畳み込み演算を行なって導出された強度分布情報により示される光ビームL2の1次元の強度分布の一例が示されている。
【0101】
次のステップ201において、ステップ200で導出した光ビームL1及び光ビームL2の強度分布情報は、強度分布情報記憶部81に記憶される。
【0102】
次のステップ202では、強度分布情報記憶部81から光ビームL1及び光ビームL2の強度分布情報を順次読み出して、各強度分布情報により示される強度分布から暗線位置の検出を行なう。なお、本実施の形態に係る暗線位置検出部85では、図20(A)〜図20(E)に示される処理を行なうことにより暗線位置の検出を行なう。
【0103】
すなわち、暗線位置検出部85は、強度分布情報により示される強度分布(図20(A))に対して平滑化処理を行なって平滑化した強度分布を求める(図20(B))。そして、暗線位置検出部85は、強度分布情報により示される強度分布から平滑化した強度分布を除算して差分強度分布を導出する(図20(C))。そして、暗線位置検出部85は、導出した差分強度分布により示される各強度に所定閾値を加算する(図20(D))。そして、暗線位置検出部85では、この所定閾値が加算された差分強度分布において強度がゼロ以下となる部分を特定し(図20(F))、強度がゼロ以下となる部分の面積の重心位置を求めることにより暗線位置を検出する。検出した暗線位置を示す情報は、変化データ導出部88に出力される。
【0104】
次のステップ204では、検出部87によって、強度分布情報記憶部81から光ビームL1及び光ビームL2の強度分布情報を順次読み出し、各強度分布情報により示される強度分布に対して空間周波数分解を行なって光ビームの周波数毎の強度分布を導出し、光ビームの周波数毎の強度分布を、周波数毎に予め定められた閾値と比較することにより、光出射部34から出射された光ビームL1及び光ビームL2各々が、誘電体ブロック52と金属膜57との界面で全反射された後に、CCD36Bに到るまでの光路上に異物が存在するか否かを評価する。
【0105】
なお、この異物とは、この光路上に存在する埃や泡等を示している。とくに、誘電体ブロック52上には塵や埃等の異物が付着しやすく、また、誘電体ブロック52のプリズム部52A内には、プリズム部52Aの製造時等に内部に混入した泡等の異物が存在する場合がある。このような異物が光路上に存在すると、信号処理部38に入力され強度分布情報の精度の低下が発生し、バイオセンサー10における生理活性物質と検体物質との相互作用の測定精度の低下をひきおこす場合がある。そこで、本実施の形態のバイオセンサー10では、検出部87によって、上記光路上における異物の有無を検出する。
【0106】
本実施の形態に係る検出部87は、強度分布情報により示される強度分布から所定幅毎の移動平均による強度分布を求め、この移動平均による強度分布と前記分布情報により示される強度分布との差分を行って当該差分の最大値と最小値の差を求めることを、所定幅を変えながら複数回行なうことにより周波数毎の強度分布を導出する。
【0107】
すなわち、例えば、強度分布情報により示される強度分布が図21(A)に示されるような場合、例えば、各強度値の前後86pixelずつ(173pixelの幅ずつ)各強度値を平均化し、平均化した強度値をその幅の中心値の値としてプロットすることにより、図21(B)に示されるように、移動平均による強度分布を求める。そして、この移動平均による強度分布と強度分布情報により示される強度分布との差分を行って、図に示されるような差分の強度分布を求める。これにより、強度分布情報により示される強度分布に含まれるノイズによる高周波成分が抽出される。
【0108】
さらに、検出部87は、図22に示されるような差分の強度分布の最大値MAXから最小値MINを減算して最大ノイズ量を求める。この最大ノイズ量は、誘電体ブロック52にゴミ等の異物が付着したり、レンズユニット34Bに傷等の異物が発生したことなどにより光ビームL1及び光ビームL2に多くのノイズが含まれる場合に大きな値になる。そこで、検出部87は、異物を識別するための閾値として、最大ノイズ量に基づいて異物を識別するための閾値を、上記強度値の幅毎に予め定めておく。
【0109】
本実施の形態に係る検出部87では、このような処理を、強度分布を求めるときの強度値の前後の幅としての所定幅を変えながら複数回行って、段階毎に強度分布情報により示される強度分布に含まれる所定周波数以上の高周波成分のノイズ量を求める。そして、検出部87では、上記所定幅毎の最大ノイズ量を、この幅毎に予め定められた閾値と比較することにより、光路中への異物の有無を検出する。
【0110】
図23(A)及び図24(A)には、強度分布情報により示される強度分布の一例が実線で示されており、当該強度分布の各強度値の前後をそれぞれ3pixel、21pixel、173pixelずつ各強度値を平均化し、平均化した強度値をその幅の中心値の値としてプロットした移動平均による強度分布が一点鎖線、2点鎖線、破線でそれぞれ示されている。
【0111】
また、図23(B)には、図23(A)に示される各移動平均による強度分布と強度分布情報により示される強度分布の差分を行って差分の強度分布を求め、当該差分の強度分布の最大値MAXから最小値MINより求められる最大ノイズ量を、移動平均を求める際に平均化したピクセル数毎にプロットしたグラフが実線で示されており、図24(B)には、図24(A)に示される各移動平均による強度分布と強度分布情報により示される強度分布の差分を行って差分の強度分布を求め、当該差分の強度分布の最大値MAXから最小値MINより求められる最大ノイズ量を、移動平均を求める際に平均化したピクセル数毎にプロットしたグラフが実線で示されている。また、図23(B)及び図24(B)には、閾値が破線で示されている。
【0112】
この最大ノイズ量は、誘電体ブロック52にゴミが付着したり、レンズユニット34Bに傷が発生したことなどにより光ビームL1及び光ビームL2の光路中に異物が存在することで光ビームL1及び光ビームL2にノイズが多く含まれる場合、大きな値になる。
【0113】
そこで、検出部87は、最大ノイズ量が全て閾値よりも以下である場合、光路中に異物が無いことを示す異物無情報を変化データ導出部88へ出力する。一方、最大ノイズ量が閾値よりも大きい部分がある場合には、光路中に異物が有ることを示す異物有情報を変化データ導出部88へ出力する。
【0114】
次のステップ206では、暗線位置検出部85により検出された光ビームL1及び光ビームL2の暗線位置の差分を求め、屈折率変化データとして制御部70に出力するとともに、検出部87から入力された異物の有無を示す情報として異物有情報または異物無情報を制御部70へ出力した後に、本屈折率変化データ導出処理を終了する。
【0115】
以上説明したように本実施の形態におけるバイオセンサー10によれば、光源35から出射された光ビームLが光検出部36に到る光路中に異物が存在することを検出した場合には、平行平面レンズ82の入射される光軸に対する角度を変更することができる。
従って、光源35から出射された光ビームが光検出部36に到る光路中に存在する異物を避けるように、光ビームの光路を変更することができるので、光ビームL1及び光ビームL2の各々光路中に異物が存在することによる測定精度の低下を抑制することができる。
【0116】
また、上記ステップ100からステップ114の処理を、同一の測定スティック50内の複数の各参照領域E2及び測定領域E1毎に行えば、同一の測定スティック50に照射される光ビームL1及び光ビームL2の各々について、個々に、異物を避けて光ビームが界面に照射されるように光ビームの光路を変更することができる。このため、精度良く異物を避けることができ、詳細な制御を行うことができる。
【0117】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、信号処理部38における屈折率データの導出処理及び異物の有無の検出時において、CCD36Bから入力された強度分布情報により示される強度分布から移動平均による移動平均による強度分布を求めることによって、屈折率データの導出処理及び異物の有無を検出する検出処理を行う場合を説明したが、本実施の形態では、強度分布情報により示される強度分布に対してフーリエ変換を行うことにより空間周波数分解を行なって光ビームの周波数毎の強度分布を導出する場合の形態例について説明する。
【0118】
第2の実施の形態に係るバイオセンサー10の構成及び信号処理部38の構成は、上記第1の実施の形態と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0119】
なお、第2の実施形態に係る信号処理部38の検出部87(図16参照。)では、強度分布情報により示される強度分布に対してフーリエ変換として高速フーリエ変換を行うことにより周波数毎の強度分布を求め、周波数毎に予め定められた閾値と比較することにより異物の有無を検出するものとする。
【0120】
図26には、第2の実施の形態に係る信号処理部38により実行される屈折率変化データ導出処理の流れを示した。なお、同図における図19と同一の処理には図19と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0121】
ステップ300では、強度分布情報により示される強度分布に対して高速フーリエ変換を行うことにより周波数毎の強度分布を求める。
これにより、例えば、強度分布情報により示される強度分布が図27(A)に示されるような場合、図27(B)に示されるように周波数毎の強度分布に変換され、また、強度分布情報により示される強度分布が図28(A)に示されるような場合、図28(B)に示されるように周波数毎の強度分布に変換される。
【0122】
そして、変換された周波数毎の強度分布を周波数毎に予め定められた閾値と比較する。なお、この閾値は、予め周波数毎に、異物が存在することを判別するための閾値を測定前に実験等により求めて予め設定しておけばよい。図29(A)には、図27(B)に示されるように周波数毎の強度分布を周波数毎に予め定められた閾値と比較した結果が示されており、また、図29(B)には、図26(B)に示されるように周波数毎の強度分布を周波数毎に予め定められた閾値と比較した結果の一例を示した。
【0123】
上記のように、変換された周波数毎の強度分布を周波数毎に予め定められた閾値と比較し、周波数毎の強度分布が全て閾値よりも以下である場合、光ビームLの光路中に異物が存在しないことを示す異物無し情報を変化データ導出部88へ出力し、周波数毎の強度分布において閾値より大きい部分がある場合、異物有りを示す情報を変化データ導出部88へ出力する。
【0124】
以上説明したように本実施の形態におけるバイオセンサー10によれば、光源35から出射された光ビームLが光検出部36に到る光路中に異物が存在することを検出した場合には、平行平面レンズ82の入射される光軸に対する角度を変更することができる。
従って、光源35から出射された光ビームが光検出部36に到る光路中に存在する異物を避けるように、光ビームの光路を変更することができるので、光ビームL1及び光ビームL2の各々光路中に異物が存在することによる測定精度の低下を抑制することができる。
【0125】
[第3の実施の形態]
上記実施の形態では、光ビームLの光路上に異物の存在が検出されたときに、平行平面レンズ82を所定角度回転させることで、この異物を避けて誘電体ブロック52と金属膜57との界面に光ビームが照射されるとともに、さらに異物を避けてCCD36Bに到るように光ビームLの光路を変更する場合を説明したが、本実施の形態では、光源35から出射された光ビームが異物をさけた領域を通ってCCD36Bに到るように、誘電体ブロック52を移動させる場合について説明する。
【0126】
第3の実施の形態に係るバイオセンサー10の構成及び信号処理部38の構成は、上記第1の実施の形態と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0127】
本実施形態のバイオセンサー10においては、検体物質と生理活性物質との相互作用の測定時には、制御部70において、図17に示す処理ルーチンのステップ110に示す処理以外は、同一の処理が実行される。
【0128】
図17を用いて説明するが、第3の実施の形態において、ステップ100では、測定指示信号を光源35に出力し、次のステップ102では、信号処理部38から光強度分布を示す強度分布情報及び異物の有無を示す情報が入力されるまで否定判断を繰り返し、肯定されると、ステップ104へ進み、入力された強度分布情報及び異物の有無を示す情報をメモリ17に記憶する。
【0129】
次のステップ106では、光ビームL1及び光ビームL2の光路上に異物が有るか否かを判断する。ステップ106で肯定されて、光ビームL1及び光ビームL2の光路中に異物が存在すると判別されると、ステップ108ヘ進み、上記ステップ104でメモリ17に記憶した強度分布情報と異物の有無を示す情報とを消去する。
【0130】
次に、ステップ110の処理に換えて、本実施の形態では、測定スティック50の位置を所定距離移動するように、駆動部49Dへ微移動指示信号を出力した後に、ステップ100へ戻る。この処理距離とは、各光源35各々から出射された光ビームLの対応する参照領域E2または測定領域E1内において光ビームの照射領域が移動するような距離であり、Y方向への最大移動量は、各光源35から出射された光が照射する対象となる測定領域E1または参照領域E2の範囲を超えない程度に設定し、一回の移動量は、この全く移動しない状態から最大移動量との間の距離を複数に分割した移動量とすればよい。
なお、これらの移動量は、予め測定スティック50の構成及び参照領域E2及び測定領域E1の面積、及び各参照領域E2及び測定領域E1各々に照射される光ビームLのスポット領域面積等に応じて定められているものとする。
【0131】
駆動部49Dへ微移動指示信号が入力されると、駆動部49Dが駆動して、この駆動によりボールねじ49Hが回転駆動されることにより、保持アーム49Aがガイドレール49Gに沿ってY方向に移動されることで、測定スティック50がY方向に上記微移動指示信号に応じた距離移動し、この測定スティック50の測定部30における位置がY方向に移動する。
【0132】
このため、光源35から出射された光ビームLの測定スティック50の誘電体ブロック52と金属膜57との界面における照射位置が、誘電体ブロック52の該界面において、Y方向(ガイドレール49Gの長尺方向)に変更される。
【0133】
このように、上記ステップ106の判断により、光ビームの光路中に異物が存在することが判別されたときに、測定時における誘電体ブロック52の位置を変更することができるので、例えば、誘電体ブロック52中に泡や塵などの異物が存在した場合であっても、誘電体ブロック52の位置を移動させることによって誘電体ブロック52に入射される光ビームLの位置が変更される。このため、誘電体ブロック52と金属膜57との界面における光ビームLの入射領域が異物を避けて入射された領域となるように、すなわち、光源35から出射された光ビームが異物を避けた光路を通ってCCD36Bに到るように変更される。
【0134】
上記ステップ106で肯定されて、光路中に異物が存在しないことを判別すると、ステップ112へ進み、上記ステップ104でメモリ17に記憶した参照領域E2による強度分布情報に基づく屈折率データにより示される暗線位置と、測定領域E1による強度分布情報に基づく屈折率データにより示される暗線位置との差分に基づいて、生理活性物質と検体物質との相互作用を示す情報を算出する。次のステップ114において、ステップ112で算出した測定結果を表示部14に表示した後に、本ルーチンを終了する。
【0135】
以上説明したように本実施の形態におけるバイオセンサー10によれば、光源35から出射された光ビームLが光検出部36に到る光路中に異物が存在することを検出した場合には、平行平面レンズ82の入射される光軸に対する角度を変更することができる。
従って、光源35から出射された光ビームが光検出部36に到る光路中に存在する異物を避けるように、光ビームの光路を変更することができるので、光ビームL1及び光ビームL2の各々光路中に異物が存在することによる測定精度の低下を抑制することができる。
【0136】
また、このようにすれば、光源35から出射された光ビームLの光路を調整するための特定な機構を新たに設ける必要なく、簡易な構成で、異物による測定精度低下を抑制することができる。
【0137】
なお、上記実施の形態では、測定装置として、表面プラズモンセンサーを一例として説明したが、測定装置としては、表面プラズモンセンサーに限定されるものではない。その他の例えば、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した光学的測定技術など、あらゆるバイオセンサーに本発明は適用することができる。
【0138】
また、全反射減衰を利用する他のバイオセンサーとしては、漏洩モード検出器をあげることができる。漏洩モードセンサは、誘電体と、この上に順に層設されたクラッド層と光導波層とによって構成された薄膜とからなり、この薄膜の一方の面がセンサ面となり、他方の面が光入射面となる。光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させると、その一部が前記クラッド層を透過して前記光導波層に取り込まれる。そして、この光導波層において、導波モードが励起されると、前記光入射面における反射光が大きく減衰する。導波モードが励起される入射角は、表面プラズモン共鳴角と同様に、センサ面上の媒質の屈折率に応じて変化する。この反射光の減衰を検出することにより、前記センサ面上の反応を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明に係る実施形態のバイオセンサー全体の斜視図である。
【図2】本発明に係る実施形態のバイオセンサーの内部の斜視図である。
【図3】本発明に係る実施形態のバイオセンサーの内部の上面図である。
【図4】本発明に係る実施形態のバイオセンサーの内部の側面図である。
【図5】本発明に係る実施形態のバイオセンサーの測定部近辺を示す模式上面図である。
【図6】本発明に係る実施形態の測定スティックの斜視図である。
【図7】本発明に係る実施形態の測定スティックの分解斜視図である。
【図8】本発明に係る実施形態の測定スティックの測定領域及び参照領域へ光ビームが入射している状態を示す模式図である。
【図9】本発明に係る実施形態の測定スティックの1の流路部材を下側からみた図である。
【図10】(A)は、本発明に係る実施形態の測定スティックの参照流路部分の断面図であり、(B)は、本発明に係る実施形態の測定スティックの測定流路部分の断面図である。
【図11】本発明に係る実施形態のバイオセンサーの分注ヘッドの鉛直駆動機構を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る実施の形態のバイオセンサーの光学測定部付近の構成とバイオセンサーの電気的構成を示す概略図である。
【図13】光出射部から泡の混入した誘電体ブロックへ光ビームが照射された状態を示す模式図である。
【図14】光出射部から泡の混入した誘電体ブロックへ光ビームが照射された状態を示す模式図である。
【図15】平行平面ガラスの回転機構を示す模式図である。
【図16】信号処理部の機能ブロック図である。
【図17】制御部で実行される処理を示すフローチャートである。
【図18】(A)は、強度分布情報によって示される画像の一例である。(B)は、光ビームの像が含まれる領域の画像に対して畳み込み演算を行なって導出された強度分布情報により示される光ビームの1次元の強度分布の一例である。
【図19】信号処理部で実行される屈折率変化データ算出処理を示すフローチャートである。
【図20】(A)から(E)は、暗線位置の検出処理を示す処理フロー図である。
【図21】(A)は強度分布情報により示される強度分布の一例を示し、(B)は、図21(A)の移動平均による強度分布の一例を示している。
【図22】差分の強度分布の最大値MAXから最小値MINを減算して最大ノイズ量を求めることを示す模式図である。
【図23】(A)は、強度分布情報により示される強度分布の一例(実線)と、強度分布の各強度値の前後をそれぞれ3pixel、21pixel、173pixelずつ各強度値を平均化し、平均化した強度値をその幅の中心値の値としてプロットした移動平均による強度分布を一点鎖線、2点鎖線、破線でそれぞれ示した線図である。(B)は、図23(A)に示される各移動平均による強度分布と強度分布情報により示される強度分布の差分を行って差分の強度分布を求め、当該差分の強度分布の最大値MAXから最小値MINより求められる最大ノイズ量を、移動平均を求める際に平均化したピクセル数毎にプロットしたグラフ(実線)と、閾値(破線)とを示す線図である。
【図24】(A)は、強度分布情報により示される強度分布の一例(実線)と、強度分布の各強度値の前後をそれぞれ3pixel、21pixel、173pixelずつ各強度値を平均化し、平均化した強度値をその幅の中心値の値としてプロットした移動平均による強度分布を一点鎖線、2点鎖線、破線でそれぞれ示した線図である。(B)は、図23(A)に示される各移動平均による強度分布と強度分布情報により示される強度分布の差分を行って差分の強度分布を求め、当該差分の強度分布の最大値MAXから最小値MINより求められる最大ノイズ量を、移動平均を求める際に平均化したピクセル数毎にプロットしたグラフ(実線)と、閾値(破線)とを示す線図である。
【図25】(A)は、光出射部から泡の混入した誘電体ブロックへ泡を避けて光ビームが照射された状態を示す模式図である。(B)は、光出射部から泡の混入した誘電体ブロックへ光ビームが泡をさけるように照射された状態を示す模式図である。
【図26】第2の実施の形態において信号処理部で実行される屈折率変化データ算出処理を示すフローチャートである。
【図27】(A)は、第2の実施の形態における、強度分布情報により示される強度分布の一例を示す模式図であり、(B)は、図27(A)に示される強度分布情報を周波数毎の強度分布に変換した線図の一例を示す模式図である。
【図28】(A)は、第2の実施の形態における、強度分布情報により示される強度分布の一例を示す模式図であり、(B)は、図28(A)に示される強度分布情報を周波数毎の強度分布に変換した線図の一例を示す模式図である。
【図29】(A)は、図27(B)に示されるように周波数毎の強度分布を周波数毎に予め定められた閾値と比較した結果を示す線図であり、(B)は、図26(B)に示されるように周波数毎の強度分布を周波数毎に予め定められた閾値と比較した結果の一例を示した線図である。
【符号の説明】
【0140】
10 バイオセンサー
34 光出射部
34A 光出射部
34R 光出射部
35 光源
36 光検出部
36B 受光部
37 レンズユニット
38 信号処理部
49D 駆動部
49 測定チップ搬送機構
50 測定スティック
52 誘電体ブロック
57 金属膜
70 制御部
72 モータ
89 畳み込み演算部
82 平行平面レンズ
87 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象となる検体物質の供給される生理活性物質が予め固定された固定層と、前記固定層に対して照射する光ビームまたは該固定層で全反射した光ビームが透過する透光部材と、を少なくとも有する測定容器と、
前記固定層の予め定められた照射領域へ前記透光部材を介して前記光ビームを照射する照射手段と、
前記光ビームの前記固定層に対する照射領域を変更する変更手段と、
前記透光部材と前記固定層との界面で全反射した前記光ビームの強度分布を示す強度分布情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された強度分布情報に基づいて、異物を検出する検出手段と、
前記検出手段によって前記異物が検出されたときに、前記光ビームの前記照射領域を変更するように、前記変更手段を制御する制御手段と、
を備えた測定装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検出手段によって前記異物が検出されなかったときに、前記取得手段によって取得された強度分布情報に基づいて、前記検体物質と生理活性物質との相互作用を測定する請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記照射手段は、前記光ビームを出射する光源と、該光ビームが前記光源から前記界面へ至る光路上に配置され前記光源から出射された前記光ビームの入射角度に応じた出射角度で該光ビームを出射する光学部材と、を含んで構成され、
前記変更手段は、前記光ビームの出射角度を変更するように前記光学部材を回転することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記変更手段は、前記透光部材を移動する請求項1または請求項2に記載の測定装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記取得手段によって取得された前記強度分布情報により示される強度分布に対して空間周波数分解を行って光ビームの周波数毎の強度分布を導出する導出手段と、前記導出手段によって導出された光ビームの周波数毎の強度分布を周波数毎に予め定められた閾値と比較した比較結果に基づいて前記異物を検出する比較手段と、を含んで構成される請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記導出手段は、前記強度分布情報により示される反射角度毎の強度分布に対してフーリエ変換を行うことにより周波数毎の強度分布を導出することを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記導出手段は、前記強度分布情報により示される強度分布から所定幅毎の移動平均による強度分布を求め、該移動平均による強度分布と前記強度分布情報により示される強度分布との差分を算出すると共に、算出した差分の最大値と最小値との差を求めることを、前記所定幅を変えながら複数回行うことにより各周波数に応じた強度分布を導出することを特徴とする請求項5に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−89368(P2008−89368A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269110(P2006−269110)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】