説明

測定装置

【課題】より確実に塩化膜を除去または低減し、内部回路の動作および初期起動を正常に行う、または内部回路の暴走を防止する測定装置を提供すること。
【解決手段】塩化チオニール系一次電池1と、塩化チオニール系一次電池1の電圧を測定する電池電圧測定部8と、塩化チオニール系一次電池1から放電電流の供給を受けるとともに放電電流の大きさが異なる複数の状態を有する内部回路150とを備える測定装置160において、内部回路150の現在の状態の放電電流より大きい他の状態へ遷移する場合、電池電圧測定部8によって測定された電圧と内部回路150の遷移前後の状態の放電電流に基づく閾値とを比較した結果に応じて遷移させる状態遷移制御部110を備えたことを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関し、特に、内部回路の状態遷移を制御することによって、塩化チオニール系一次電池の放電電流を制御して陽極表面に生成される塩化膜を除去または低減する測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学プラントなどで行われるプロセス制御において、例えば、被測定流体のプロセス量(圧力、温度、流量など)を測定するために、内蔵された塩化チオニール系一次電池で駆動される測定装置が用いられる。このような測定装置について、図6の構成図を用いて説明する。
【0003】
図6において、測定装置10は、塩化チオニール系一次電池1および内部回路9を備える。内部回路9は、定電圧回路部2、接続制御部3、制御演算部4、無線または有線通信を行う通信部5、第1接続部6a、第2接続部6b、第1回路ブロック7a、第2回路ブロック7bおよび電池電圧測定部8を備える。
【0004】
塩化チオニール系一次電池1の陽極部(出力)は、定電圧回路部2および電池電圧測定部8の入力に接続され、陰極部は、回路の共通電圧GDに接続される。
【0005】
定電圧回路部2は、塩化チオニール系一次電池1の出力電圧を所定電圧(例えば3.3V)に変換して出力する。定電圧回路部2の出力は、接続制御部3、制御演算部4、通信部5、第1接続部6aおよび第2接続部6bの電源として接続されるとともに、第1接続部6aを介して第1回路ブロック7aの電源、および第2接続部6bを介して第2回路ブロック7bの電源として接続される。
【0006】
第1回路ブロック7aは、測定値を表示する液晶などの表示部を備え、第2回路ブロック7bは、被測定流体のプロセス量などを検出するセンサを備えている。
【0007】
電池電圧測定部8は、塩化チオニール系一次電池1の出力電圧を測定し、その出力は、接続制御部3に接続される。通信部5は外部から通信信号EXTを受け、その出力は接続制御部3に接続される。
【0008】
制御演算部4は、第1回路ブロック7a、第2回路ブロック7bおよび接続制御部3に接続され、測定値などのデータ、制御信号を送受する。制御演算部4は、第2回路ブロック7bのセンサによって検出されたプロセス信号を受け取り、プロセス信号に基づいて測定値(プロセス値)を演算し、測定値を第1回路ブロック7aに出力して表示させる。
【0009】
このような塩化チオニール系一次電池1および内部回路9の構成によって、内部回路9は、電源電流として、塩化チオニール系一次電池1から放電電流の供給を受けて駆動される。
【0010】
ここで、通信部5がアンテナATを介して無線通信を行う場合、無線通信機能を備えた測定装置10の電力源として、電力容量が大きく、自己放電の小さい塩化チオニール系一次電池1が用いられる。なお、塩化チオニール系一次電池1は、溶剤に塩化チオニールを使用したものであり、例えば、塩化チオニールリチウム一次電池が用いられる。
【0011】
塩化チオニール系一次電池1は、その特性上および保存状態などにより、陽極部表面に塩化膜が生成され、自己放電を防ぐといった利点がある。一方、生成された塩化膜によって内部抵抗が大きくなる。この場合、放電電流が大きくなると、内部抵抗での電圧降下が大きくなって出力電圧が低下する。
【0012】
塩化チオニール系一次電池1を電力源とした無線通信機能を備えた測定装置10は、電池の電力容量の低下を抑えるため、測定または無線通信を行わない場合には消費電流(電源電流)の小さい待機状態になり、測定または無線通信を行う場合には消費電流(電源電流)の大きい通常の動作状態になる。
【0013】
ここで、待機状態での消費電流は非常に小さいため、待機状態が長期間続いた場合、塩化膜が生成され成長していく。塩化膜が成長して内部抵抗が大きくなった場合、通常の動作状態に移行して消費電流が増加した場合、塩化チオニール系一次電池1の出力電圧が低下して内部回路9が動作しなくなる、または暴走することがある。
【0014】
また、未使用で長期間保存されることによって、塩化膜が成長して内部抵抗が大きくなった塩化チオニール系一次電池1を用いた場合、初期起動時に、塩化チオニール系一次電池1の出力電圧が低下して内部回路9の初期起動を行えないことがある。
【0015】
このため、内部回路9の動作および初期起動を正常に行う、または内部回路9の暴走を防止するために、以下のような放電電流の制御が行われる。
【0016】
第1の放電電流制御として、放電電流を段階的に増加させるものがある。以下に、その動作について説明する。
【0017】
図6において、まず、通信部5が、通信信号EXTをアンテナATを介して受ける前は、プロセッサなどの制御演算部4は待機状態になっている。待機状態では、制御演算部4の消費電流は小さいため、塩化チオニール系一次電池1の放電電流も小さい(ステップA)。
【0018】
つぎに、通信部5が通信信号EXTを受けて、割り込み信号を接続制御部3へ出力する。接続制御部3は制御演算部4へ状態制御信号を出力し、制御演算部4は、状態制御信号を受けて待機状態から動作状態へ移行する。
【0019】
動作状態では、制御演算部4の消費電流は増加するので、放電電流も増加する。この放電電流の増加によって、内部抵抗での電圧降下が大きくなり、塩化チオニール系一次電池1の出力電圧が急激に低下する(ステップB)。
【0020】
塩化チオニール系一次電池1の出力電圧が急激に低下する一方で、放電電流の増加によって塩化膜が除去または低減されて内部抵抗が小さくなり、出力電圧が徐々に回復していく。このため、接続制御部3は、電池電圧測定部8で測定された塩化チオニール系一次電池1の出力電圧を監視し、この出力電圧が、内部回路9を駆動させることができる電圧に回復するまで待つ。
【0021】
電圧回復後、接続制御部3は第1接続部6aへ接続制御信号を出力し、第1接続部6aは、接続制御信号を受けて第1接続部6aの入出力を接続する。
【0022】
これによって、第1回路ブロック7aは、第1接続部6aを介して、定電圧回路部2から電源電流の供給を受けるので、放電電流が増加する。この放電電流の増加によって、塩化チオニール系一次電池1の出力電圧が急激に低下する(ステップC)。
【0023】
そして、接続制御部3は、塩化チオニール系一次電池1の出力電圧が回復するまで待つ。電圧回復後、接続制御部3は第2接続部6bへ接続制御信号を出力し、第2接続部6bは、接続制御信号を受けて第2接続部6bの入出力を接続する。
【0024】
これによって、第2回路ブロック7bは、第2接続部6bを介して、定電圧回路部2から電源電流の供給を受けるので、放電電流が増加する。この放電電流の増加によって、塩化チオニール系一次電池1の出力電圧が急激に低下し、その後、出力電圧は回復する(ステップD)。
【0025】
このように、内部回路9は、各ステップにおいて放電電流の大きさが異なる複数の状態を有する。そして、内部回路9の各部(各ブロックを含む(以下同様))に、段階的に電流を供給して放電電流を増加させることによって、内部回路9の動作および初期起動を正常に行う、または内部回路9の暴走を防止する。なお、同様の放電電流制御が、特許文献1に記載されている。
【0026】
第2の放電電流制御として、内部回路9の平均消費電流に基づいて放電電流を流す時間を算出し、放電電流をこの時間流すことによって塩化膜を活性化して、内部回路9の動作および初期起動を正常に行う、または内部回路9の暴走を防止する。なお、同様の放電電流制御が、特許文献2に記載されている(特許文献2では、放電電流を流す時間をリフレッシュ時間と規定)。
【0027】
また、特許文献3には、塩化チオニール系一次電池1の電圧低下検出信号が、塩化膜の除去が不十分であることに起因するものか、電池電圧の低下に起因するものかを確認できるので、電池電圧低下についての正確な情報を送出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】実開平5−176091号公報
【特許文献2】特開平5−63837号公報
【特許文献3】特開平5−323000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
しかしながら、成長した塩化膜は、放電電流が小さければ除去または低減することができない。このため、前述した第1の放電電流制御では、放電電流を増加しても放電電流量自体が小さければ、塩化膜を除去または低減することができないので、塩化チオニール系一次電池1の出力電圧は急激に低下した後、回復しない。
【0030】
出力電圧は回復しないため、接続制御部3は待ち状態のままになり、つぎのステップへ移行できず、内部回路9の動作および初期起動を正常に行うことができない。また、出力電圧は低下したままで、内部回路9を駆動させることができる電圧に達していないため、内部回路9が暴走することがある。
【0031】
また、生成される塩化膜の厚さは、周囲温度、塩化チオニール系一次電池1の使用時間および未使用時の保存時間などによっても影響を受ける。このため、前述した第2の放電電流制御では、内部回路9の平均消費電流に基づいて算出された時間(リフレッシュ時間)放電電流を流しても、塩化膜を除去または低減できないことがある。
【0032】
この場合、塩化チオニール系一次電池1の出力電圧は低下して、内部回路9を駆動させることができる電圧に達していないため、内部回路9の動作および初期起動を正常に行うことができない、また内部回路9が暴走することがある。
【0033】
本発明の目的は、より確実に塩化膜を除去または低減し、内部回路の電源電圧を内部回路駆動可能電圧より大きくして、内部回路の動作および初期起動を正常に行う、または内部回路の暴走を防止する測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
このような目的を達成するために、請求項1の発明は、
塩化チオニール系一次電池と、この塩化チオニール系一次電池の電圧を測定する電池電圧測定部と、前記塩化チオニール系一次電池から放電電流の供給を受けるとともに前記放電電流の大きさが異なる複数の状態を有する内部回路とを備える測定装置において、
前記内部回路の現在の状態の放電電流より大きい他の状態へ遷移する場合、前記電池電圧測定部によって測定された電圧と前記内部回路の遷移前後の状態の放電電流に基づく閾値とを比較した結果に応じて遷移させる状態遷移制御部
を備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記内部回路は、所定放電電流を流す所定電流放電部を有することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記状態遷移制御部は、前記所定電流放電部の所定放電電流の値を変更することができることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項2または3に記載の発明において、
前記状態遷移制御部は、前記所定電流放電部により所定放電電流を流す状態が複数回繰り返された場合、前記内部回路の現在の状態の放電電流より大きい他の状態へ遷移させないことを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、
前記状態遷移制御部は、前記電池電圧測定部によって測定された電圧が前記閾値のうち最小値より小さい場合、前記内部回路の現在の状態の放電電流より大きい他の状態へ遷移させないことを特徴とする。
請求項6の発明は、1から5のいずれか一項に記載の発明において、
前記閾値は、前記内部回路の遷移前後の状態の放電電流の比率および予め定められた前記塩化チオニール系一次電池の無負荷時の電圧に基づく値であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、状態遷移制御部が、内部回路の現在の状態の放電電流より大きい他の状態へ遷移する場合、電池電圧測定部によって測定された電圧と内部回路の遷移前後の状態の放電電流に基づく閾値とを比較した結果に応じて遷移させることによって、より確実に塩化膜を除去または低減し、内部回路の電源電圧を内部回路駆動可能電圧より大きくして、内部回路の動作および初期起動を正常に行う、または内部回路の暴走を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を適用した測定装置の構成図の例である。
【図2】内部回路の各部、各部の動作モード、各動作モードにおける消費電流の記号および消費電流値の例を示した表である。
【図3】内部回路が有する複数の状態、各状態における各部の動作モードおよび各状態における放電電流を示した表である。
【図4】状態遷移制御部が内部回路の状態を遷移させる状態遷移図の例である。
【図5】本発明を適用した測定装置の構成図の他の例である。
【図6】背景技術で示した測定装置の構成図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[第1の実施例]
第1の実施例について図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る測定装置160の構成図である。
【0038】
図1において、測定装置160は、図6の測定装置10の接続制御部3を無くし、この構成に加えて内部回路150内に、状態遷移制御部110、閾値Vthを記憶した記憶部120、第1所定電流放電部140および第2所定電流放電部141を備える。
【0039】
本発明に係る測定装置160の特徴の一つは、電池電圧測定部8によって測定された塩化チオニール系一次電池1の出力電圧と閾値Vthとの比較結果に応じて内部回路150の状態を遷移させる状態遷移制御部110であり、この状態遷移によって放電電流を制御する。また、閾値Vthの値も特徴の一つであり、以下に、この特徴を中心に説明する。なお、図6の測定装置10と同一の構成要素は同一符号を付し、この説明は省略する。
【0040】
状態遷移制御部110は、AD変換部111、比較部112および計数部113を備える。
【0041】
AD変換部111は、測定された塩化チオニール系一次電池1の出力電圧(以下、「測定電池電圧」という)を電池電圧測定部8から受け取る。比較部112は、デジタル変換された測定電池電圧をAD変換部111から、閾値Vthを記憶部120から受け取る。
【0042】
状態遷移制御部110は、比較部112の比較結果に応じて内部回路150の状態を遷移させる。この遷移動作の詳細は後述する。
【0043】
また、計数部113は、タイマーまたはカウンタを備え、内部回路150の所定の状態における経過時間を測定する。
【0044】
第1所定電流放電部140は、抵抗R1およびトランジスタ(電界効果トランジスタ)Q1を備える。
【0045】
抵抗R1の一端は、塩化チオニール系一次電池1の陽極部(出力)に接続され、他端は、トランジスタQ1のドレインに接続される。トランジスタQ1のゲートは状態遷移制御部110に接続され、ソースは回路の共通電圧GDに接続される。
【0046】
第2所定電流放電部141は、抵抗R2およびトランジスタ(電界効果トランジスタ)Q2を備える。
【0047】
抵抗R2の一端は、塩化チオニール系一次電池1の陽極部(出力)に接続され、他端は、トランジスタQ2のドレインに接続される。トランジスタQ2のゲートは状態遷移制御部110に接続され、ソースは回路の共通電圧GDに接続される。
【0048】
つぎに、測定装置160の動作について説明する。まず、内部回路150の各部の動作モードについて図2を用いて説明する。図2は、内部回路150の各部、各部の動作モード、各動作モードにおける消費電流の記号および消費電流値の例を示した表である。ここで、各消費電流は、各部を駆動させるための電源電流であり、塩化チオニール系一次電池1からの放電電流によって供給される。
【0049】
図2において、制御演算部4は、制御演算が低速で実行される低速モードおよび低速モードより高速で実行される高速モードの2つのモードを有する。
【0050】
低速モードの消費電流の記号はIml、消費電流値の例は1.2mAである。高速モードの消費電流の記号はImh、消費電流値の例は2.2mAである。
【0051】
次行の通信部5は、内蔵する通信モジュールの起動処理を実行するブートモード、通信モジュールをリセットするリセットモード、通信を待つ待機モードおよび通信を行う通信モードの4つのモードを有する。
【0052】
ブートモードの消費電流の記号はIrb、消費電流値の例は30mAである。リセットモードの消費電流の記号はIrr、消費電流値の例は1mAである。待機モードの消費電流の記号はIri、消費電流値の例は0.005mAである。通信モードの消費電流の記号はIrc、消費電流値の例は18mAである。
【0053】
次行の第1回路ブロック7aは、第1接続部6aオフモード(図示しない)およびオンモードを有する。
【0054】
オフモードでは、第1接続部6aの入出力は接続されないので、第1回路ブロック7aは、定電圧回路部2から電源電流の供給を受けない。
【0055】
一方、オンモードでは、第1接続部6aの入出力は接続されるので、第1回路ブロック7aは、第1接続部6aを介して定電圧回路部2から電源電流の供給を受ける。
【0056】
オフモードの消費電流値は、第1回路ブロック7aに電流は流れないので0mAである。一方、オンモードの消費電流の記号はIlcd、消費電流値の例は0.1mAである。
【0057】
同様に、次行の第2回路ブロック7bは、第2接続部6bオフモード(図示しない)およびオンモードを有する。
【0058】
オフモードでは、第2接続部6bの入出力は接続されないので、第2回路ブロック7bは、定電圧回路部2から電源電流の供給を受けない。
【0059】
一方、オンモードでは、第2接続部6bの入出力は接続されるので、第2回路ブロック7bは、第2接続部6bを介して定電圧回路部2から電源電流の供給を受ける。
【0060】
オフモードの消費電流値は、第2回路ブロック7bに電流は流れないので0mAである。一方、オンモードの消費電流の記号はIsns、消費電流値の例は1.6mAである。
【0061】
次行の第1所定電流放電部140は、非放電モード(図示しない)および放電モードを有する。
【0062】
非放電モードでは、状態遷移制御部110からのゲート制御信号によって、トランジスタQ1のドレイン−ソース間は導通しないので、抵抗R1およびトランジスタQ1には、塩化チオニール系一次電池1から放電電流は流れない。
【0063】
一方、放電モードでは、状態遷移制御部110からのゲート制御信号によって、トランジスタQ1のドレイン−ソース間は導通するので、抵抗R1およびトランジスタQ1に、塩化チオニール系一次電池1から所定の放電電流が流れる。
【0064】
非放電の消費電流値は、電流は流れないので0mAである。一方、放電モードの消費電流の記号はIl1、消費電流値の例は1mAである。
【0065】
同様に、次行の第2所定電流放電部141は、非放電モード(図示しない)および放電モードを有する。
【0066】
非放電モードでは、状態遷移制御部110からのゲート制御信号によって、トランジスタQ2のドレイン−ソース間は導通しないので、抵抗R2およびトランジスタQ2には、塩化チオニール系一次電池1から放電電流は流れない。
【0067】
一方、放電モードでは、状態遷移制御部110からのゲート制御信号によって、トランジスタQ2のドレイン−ソース間は導通するので、抵抗R2およびトランジスタQ2に、塩化チオニール系一次電池1から所定の放電電流が流れる。
【0068】
非放電の消費電流値は、電流は流れないので0mAである。一方、放電モードの消費電流の記号はIl2、消費電流値の例は10mAである。
【0069】
なお、第1および第2所定電流放電部140、141の放電モードは、測定装置160の測定処理には関係せず、塩化膜を除去するために行われるモードである。
【0070】
このため、放電モードにおける所定の放電電流値は、塩化膜を除去するために必要な電流に設定すればよい。
【0071】
図2に示すように、各部は各動作モードを有する。そして、測定装置160が初期起動した場合、内部回路150は、各部の各動作モードが組み合わされた複数の状態を遷移しながら動作する。この遷移動作を説明する前に、内部回路150が有する複数の状態について説明する。
【0072】
内部回路150が有する複数の状態、各状態における各部の動作モードおよび各状態における放電電流を、図3の表を用いて説明する。なお、この放電電流は、各部の各動作モードの消費電流の和になるので、それぞれ大きさが異なる。
【0073】
図3において、内部回路150が有する複数の状態には、状態1、1a、2、2a、2b、3、4、4a、4bおよび5の10個の状態がある。各状態における各部の動作モードおよび各状態における放電電流は、つぎのようになる。
【0074】
一例として、状態1について説明する。状態1では、制御演算部4は低速モード(消費電流Iml)、通信部5はリセットモード(消費電流Irr)、第1回路ブロック7aは第1接続部6aオフモード、第2回路ブロック7bは第2接続部6bオフモード、第1所定電流放電部140は非放電モードおよび第2所定電流放電部141は非放電モードの組み合せの状態であり、放電電流Id1は、Iml+Irr(=2.2mA(例))である。
【0075】
同様に、図3には、各部の各動作モードの組み合せの状態と各状態での放電電流とが、状態1a〜状態5ごとに記載されている。
【0076】
つぎに、測定装置160の初期起動後、状態遷移制御部110が、内部回路150の状態を遷移させる動作を図4を用いて説明する。図4は、状態遷移制御部110が内部回路150の状態を遷移させる状態遷移図である。
【0077】
状態遷移制御部110は、測定電池電圧と内部回路150の遷移前後の状態の放電電流に基づく閾値Vthとを比較した結果に応じて、内部回路150の現在の状態の放電電流より大きい放電電流を有する状態へ遷移させる。
【0078】
図4において、まず、測定装置160が初期起動して、内部回路150が状態1になった後の遷移動作(状態1から状態3に遷移する場合、状態1から状態2に遷移する場合、状態2から状態3に遷移する場合、状態4から状態5に遷移する場合)について説明する。
【0079】
<状態1から状態3に遷移する場合>
状態1において、AD変換部111は、電池電圧測定部8から受け取った測定電池電圧をデジタル信号に変換する。比較部112は、デジタル信号に変換された測定電池電圧をAD変換部111から、閾値Vthを記憶部120から受け取る。
【0080】
このときの閾値Vthは、状態1から状態3に遷移する場合の閾値であり、記号をVth3とする。
【0081】
閾値Vth3は、遷移前の状態(現在の状態)である状態1の放電電流Id1(=2.2mA(例))と遷移後の状態である状態3の放電電流Id3(=32.3mA(例))との比率から得られる。
【0082】
詳しくは、塩化チオニール系一次電池1が無負荷時の出力電圧をVe(例えば7.2V)、内部回路150を駆動させることができる最低の電圧をVd(例えば3V、以下「駆動最低電圧」という)とすると、閾値Vth3は下記式(1)によって得られる。
【0083】
【数1】

【0084】
比較部112は、測定電池電圧と閾値Vth3とを比較し、測定電池電圧が閾値Vth3より大きいまたは以上であれば通信部5はブート可能なので、状態遷移制御部110は内部回路150を状態3に遷移させる。
【0085】
なお、閾値Vthを得る一般式は、遷移前の状態の放電電流をInow、遷移後の状態の放電電流をInxtとすると、下記式(2)のようになる。
【0086】
【数2】

【0087】
式(2)の閾値Vthは、遷移前の状態の放電電流Inowと、放電電流Inowより大きい遷移後の状態の放電電流Inxtとの比率を用いて得られる。このため、内部回路150が、測定電池電圧と式(2)の閾値Vthとの比較結果に応じて遷移した場合、遷移後の内部回路150の各部の電源電圧は駆動最低電圧Vdより大きくなり、内部回路150は正常に初期起動および動作し、暴走しない。
【0088】
なお、閾値Vth3および後述する閾値Vth1、2、4〜9の大小関係は、図2の消費電流値の例を用いて放電電流値を求めた場合、下記式(3)〜(5)のようになる。
Vth1<Vth2<Vth3 (3)
Vth4<Vth5<Vth6 (4)
Vth7<Vth8<Vth9 (5)
【0089】
<状態1から状態2に遷移する場合>
このときの閾値Vthは、状態1から状態2に遷移する場合の閾値であり、記号をVth2とする。閾値Vth2は、遷移前の状態である状態1の放電電流Id1(=2.2mA(例))と遷移後の状態である状態2の放電電流Id2(=3.3mA(例))とを用いて、式(2)から得られる。
【0090】
比較部112は、測定電池電圧と閾値Vth2とを比較し、測定電池電圧が閾値Vth2より大きいまたは以上であり、かつ、閾値Vth3より小さいまたは以下であれば、通信部5はブート可能ではないが、制御演算部4は高速モードにすることができ、第1回路ブロック7aは動作可能で第1接続部6aオンモードにすることができる。このため、状態遷移制御部110は、内部回路150を状態2に遷移させる。
【0091】
<状態2から状態3に遷移する場合>
このときの閾値Vthは、状態2から状態3に遷移する場合の閾値であり、記号をVth6とする。閾値Vth6は、遷移前の状態である状態2の放電電流Id2(=3.3mA(例))と遷移後の状態である状態3の放電電流Id3(=32.3mA(例))とを用いて、式(2)から得られる。
【0092】
比較部112は、測定電池電圧と閾値Vth6とを比較し、測定電池電圧が閾値Vth6より大きいまたは以上であれば通信部5はブート可能なので、状態遷移制御部110は内部回路150を状態3に遷移させる。
【0093】
そして、状態3に遷移後、通信部5は、内蔵の通信モジュールの起動処理を実行(ブートモード)した後、状態4に遷移する。
【0094】
<状態4から状態5に遷移する場合>
通信部5は、状態4において、通信信号を受信し通信割り込みを受け取るまで待機する(待機モード)。無線通信の周期が数時間以上と長い場合、内部回路150が状態4に留まっている間に塩化膜が成長する可能性がある。通信割り込みを受けた後に状態5へ遷移するが、成長した塩化膜によって内部回路150が異常動作しないように、以下に説明する遷移動作を行う。
【0095】
このときの閾値Vthは、状態4から状態5に遷移する場合の閾値であり、記号をVth9とする。閾値Vth9は、遷移前の状態である状態4の放電電流Id4(=3.905mA(例))と遷移後の状態である状態5の放電電流Id5(=21.9mA(例))とを用いて、式(2)から得られる。
【0096】
比較部112は、測定電池電圧と閾値Vth9とを比較し、測定電池電圧が閾値Vth9より大きいまたは以上であれば通信部5は通信可能なので、状態遷移制御部110は内部回路150を状態5に遷移させる。そして、通信が終了したら状態4に遷移して待機する。
【0097】
このように、状態遷移制御部110が、測定電池電圧と、式(2)で表した閾値Vthとの比較結果に応じて状態を遷移させることによって、より確実に塩化膜を除去または低減し、遷移後の内部回路150の各部の電源電圧は駆動最低電圧Vdより大きくなり、内部回路150の動作および初期起動を正常に行う、または内部回路150の暴走を防止することができる。
【0098】
また、状態遷移制御部110は、第1所定電流放電部140または第2所定電流放電部141を放電モードにしないで(つまり、状態1a、2a、2b、4a、4bにしないで)、内部回路150の動作および初期起動を正常に行うことができる。このため、状態遷移制御部110は、余分な放電電流Il1、Il2を流さないで、内部回路150の動作および初期起動を正常に行うことができ、低消費電力を実現できる。
【0099】
つぎに、第1所定電流放電部140または第2所定電流放電部141が放電モードになる状態1a、2a、2b、4a、4bに遷移する動作(状態1から状態1aに遷移する場合、状態2から状態2bに遷移する場合、状態2から状態2aに遷移する場合、状態4から状態4bに遷移する場合、状態4から状態4aに遷移する場合)について、図4を用いて説明する。
【0100】
<状態1から状態1aに遷移する場合>
このときの閾値Vthは、状態1から状態1aに遷移する場合の閾値であり、記号をVth1とする。閾値Vth1は、遷移前の状態である状態1の放電電流Id1(=2.2mA(例))と遷移後の状態である状態1aの放電電流Id1a(=3.2mA(例))とを用いて、式(2)から得られる。
【0101】
比較部112は、測定電池電圧と閾値Vth1とを比較し、測定電池電圧が閾値Vth1より大きいまたは以上であり、かつ、閾値Vth2より小さいまたは以下であれば、状態2、3へ遷移できない。このため、第1所定電流放電部140の放電モードで強制的に放電させて塩化膜を除去するために、状態遷移制御部110は内部回路150を状態1aに遷移させる。
【0102】
<状態2から状態2bに遷移する場合>
このときの閾値Vthは、状態2から状態2bに遷移する場合の閾値であり、記号をVth5とする。閾値Vth5は、遷移前の状態である状態2の放電電流Id2(=3.3mA(例))と遷移後の状態である状態2bの放電電流Id2b(=13.3mA(例))とを用いて、式(2)から得られる。
【0103】
比較部112は、測定電池電圧と閾値Vth5とを比較し、測定電池電圧が閾値Vth5より大きいまたは以上であり、かつ、閾値Vth6より小さいまたは以下であれば、通信部5のブート処理はできないので状態3へ遷移できない。このため、第2所定電流放電部141の放電モードで強制的に放電させて塩化膜を除去するために、状態遷移制御部110は内部回路150を状態2bに遷移させる。
【0104】
<状態2から状態2aに遷移する場合>
このときの閾値Vthは、状態2から状態2aに遷移する場合の閾値であり、記号をVth4とする。閾値Vth4は、遷移前の状態である状態2の放電電流Id2(=3.3mA(例))と遷移後の状態である状態2aの放電電流Id2a(=4.3mA(例))とを用いて、式(2)から得られる。
【0105】
比較部112は、測定電池電圧と閾値Vth4とを比較し、測定電池電圧が閾値Vth4より大きいまたは以上であり、かつ、閾値Vth5より小さいまたは以下であれば、通信部5のブート処理はできないので状態3へ遷移できない。このため、第1所定電流放電部140の放電モードで強制的に放電させて塩化膜を除去するために、状態遷移制御部110は内部回路150を状態2aに遷移させる。
【0106】
<状態4から状態4bに遷移する場合>
このときの閾値Vthは、状態4から状態4bに遷移する場合の閾値であり、記号をVth8とする。閾値Vth8は、遷移前の状態である状態4の放電電流Id4(=3.905mA(例))と遷移後の状態である状態4bの放電電流Id4b(=13.905mA(例))とを用いて、式(2)から得られる。
【0107】
比較部112は、測定電池電圧と閾値Vth8とを比較し、測定電池電圧が閾値Vth8より大きいまたは以上であり、かつ、閾値Vth9より小さいまたは以下であれば、通信できないので状態5へ遷移できない。このため、第2所定電流放電部141の放電モードで強制的に放電させて塩化膜を除去するために、状態遷移制御部110は内部回路150を状態4bに遷移させる。
【0108】
<状態4から状態4aに遷移する場合>
このときの閾値Vthは、状態4から状態4aに遷移する場合の閾値であり、記号をVth7とする。閾値Vth7は、遷移前の状態である状態4の放電電流Id4(=3.905mA(例))と遷移後の状態である状態4aの放電電流Id4a(=4.905mA(例))とを用いて、式(2)から得られる。
【0109】
比較部112は、測定電池電圧と閾値Vth7とを比較し、測定電池電圧が閾値Vth7より大きいまたは以上であり、かつ、閾値Vth8より小さいまたは以下であれば、通信できないので状態5へ遷移できない。このため、第1所定電流放電部140の放電モードで強制的に放電させて塩化膜を除去するために、状態遷移制御部110は内部回路150を状態4aに遷移させる。
【0110】
このように、状態遷移制御部110が、第1所定電流放電部140または第2所定電流放電部141を放電モードにして強制的に放電させることによって、さらに確実に塩化膜を除去または低減し、遷移後の内部回路150の各部の電源電圧は駆動最低電圧Vdより大きくなり、内部回路150の動作および初期起動を正常に行う、または内部回路150の暴走を防止することができる。
【0111】
なお、第1所定電流放電部140および第2所定電流放電部141は、一つの所定電流放電部としてもよく、これによって、回路スペースおよびコストが低減できる。また、所定電流放電部の数を増やしてもよく、これによって、よりきめ細かい放電電流制御を行い塩化膜を除去または低減できる。
【0112】
また、式(2)の塩化チオニール系一次電池1が無負荷時の出力電圧Veに、メーカーの規格値などの予め定めた値を用いれば、閾値Vthは、実際に使用される電池の無負荷時出力電圧Veの個体によるばらつきの影響を受けない。
【0113】
詳しくは、実際に使用される電池の無負荷時出力電圧Veが予め定めた値より小さい場合、測定電池電圧の低下を早めに検出でき、また、無負荷時出力電圧Veが予め定めた値より大きい場合、余裕を持って測定電池電圧の低下を検出できる。これによって、実際に使用される電池の無負荷時の出力電圧Veが個体によりばらついたとしても、内部回路150の動作および初期起動を正常に行う、または内部回路150の暴走を防止することができる。
【0114】
つぎに、塩化チオニール系一次電池1の電力容量不足などを検出する動作について、図4を用いて説明する。
【0115】
図4において、内部回路150が状態1aに遷移した後、計数部113による測定で所定時間(例えば10秒)経過後、状態遷移制御部110は状態1に遷移させる。電池電圧測定部8が再度測定し、測定電池電圧が閾値Vth1より大きいまたは以上であり、かつ、閾値Vth2より小さいまたは以下であれば、状態遷移制御部110は内部回路150を状態1aに遷移させる。
【0116】
この状態1aと状態1との間の遷移が、複数回(例えば3回)繰り返された場合、つまり、第1所定電流放電部140の放電モードで放電電流を流す状態1aが複数回繰り返された場合、塩化チオニール系一次電池1は電力容量不足、または塩化膜が十分に除去または低減できていないため、このまま放置すると内部回路150の各部の電源電圧は駆動最低電圧Vdより小さくなって、内部回路150の動作が正常に行えない、または内部回路150が暴走する可能性がある。
【0117】
このような場合、状態遷移制御部110は、状態1aから他の状態には遷移させないで、ブザー(音声)やランプ(光)などの警報部(図示しない)、通信部5または第1回路ブロック7aの表示部を介して、警報を出力する(図4の状態1aからの矢印*2参照)。
【0118】
同様に、状態2aと状態2との間の遷移または状態2bと状態2との間の遷移が、複数回(例えば3回)繰り返された場合、つまり、第1または第2所定電流放電部140、141の放電モードで放電電流を流す状態2a、2bが複数回繰り返された場合、他の状態には遷移させないで警報を出力する(図4の状態2a、2bからの矢印*2参照)。
【0119】
同様に、状態4aと状態4との間の遷移または状態4bと状態4との間の遷移が、複数回(例えば3回)繰り返された場合、つまり、第1または第2所定電流放電部140、141の放電モードで放電電流を流す状態4a、4bが複数回繰り返された場合、他の状態には遷移させないで警報を出力する(図4の状態4a、4bからの矢印*2参照)。
【0120】
また、以下の動作によっても、同様に、電力容量不足などを検出して警報を出力することができる。
【0121】
式(3)の閾値のうち、最小の閾値はVth1である。状態1において、測定電池電圧が最小の閾値Vth1より小さいまたは以下であって、計数部113による測定で所定時間(例えば30秒)経過しても最小の閾値Vth1より小さいまたは以下の場合、塩化チオニール系一次電池1は電力容量不足、または塩化膜が十分に除去または低減できていないため、このまま放置すると内部回路150の各部の電源電圧は駆動最低電圧Vdより小さくなって、内部回路150の動作が正常に行えない、または内部回路150が暴走する可能性がある。
【0122】
このような場合、状態遷移制御部110は、状態1から他の状態には遷移させないで、警報部(図示しない)、通信部5または第1回路ブロック7aの表示部を介して、警報を出力する(図4の状態1からの矢印*1参照)。
【0123】
同様に、式(4)の閾値のうち、最小の閾値はVth4である。状態2において、測定電池電圧が最小の閾値Vth4より小さいまたは以下であって、計数部113による測定で所定時間(例えば30秒)経過しても最小の閾値Vth4より小さいまたは以下の場合、他の状態には遷移させないで警報を出力する(図4の状態2からの矢印*1参照)。
【0124】
同様に、式(5)の閾値のうち、最小の閾値はVth7である。状態4において、測定電池電圧が最小の閾値Vth7より小さいまたは以下であって、計数部113による測定で所定時間(例えば30秒)経過しても最小の閾値Vth7より小さいまたは以下の場合、他の状態には遷移させないで警報を出力する(図4の状態4からの矢印*1参照)。
【0125】
このように、状態遷移制御部110は、第1または第2所定電流放電部140、141の放電モードで放電電流を流す状態が複数回繰り返された場合、他の状態には遷移させないで警報を出力することによって、電力容量不足または内部回路150の各部の電源電圧が低下して、内部回路150の動作が正常に行えない、または内部回路150が暴走する可能性があることを事前に検出、外部に報知するとともに、故障発生前に修理交換などの対応をとることができる。
【0126】
[第2の実施例]
第2の実施例について図5を用いて説明する。図5は、本発明に係る測定装置200の構成図である。
【0127】
図5において、測定装置200は、内部回路180において、図1の第1および第2所定電流放電部140、141に代えて第3所定電流放電部142を備え、状態遷移制御部170にはさらにDA変換部114を備える。
【0128】
本発明に係る測定装置200の特徴の一つは、第3所定電流放電部142とDA変換部114とによって、第3所定電流放電部142での放電電流を変更することができることであり、以下に、この特徴を中心に説明する。なお、図1の測定装置160と同一の構成要素は同一符号を付し、この説明は省略する。
【0129】
第3所定電流放電部142は、抵抗R3、トランジスタ(電界効果トランジスタ)Q3および演算増幅器A3を備える。
【0130】
トランジスタQ3のドレインは、塩化チオニール系一次電池1の陽極部(出力)に接続され、ソースは抵抗R3の一端に接続され、ゲートは演算増幅器A3の出力に接続される。抵抗R3の他端は回路の共通電圧GDに接続される。
【0131】
演算増幅器A3の反転入力は、トランジスタQ3のソースと抵抗R3との接続点に接続され、非反転入力はDA変換部114の出力に接続される。
【0132】
つぎに、第3所定電流放電部142およびDA変換部114の動作について説明する。第3所定電流放電部142は、所定放電電流として、DA変換部114から出力されるアナログ電圧を抵抗R3で除算した値の電流を流す。
【0133】
DA変換部114から出力されるアナログ電圧を変更すれば、第3所定電流放電部142に流す所定放電電流の値を変更することができる。
【0134】
このように、所定放電電流の値を変更することによって、塩化膜を除去または低減できる最適な値の放電電流を流すことができ、内部回路180の動作および初期起動を正常に行う、または内部回路180の暴走を防止することができる。
【0135】
なお、状態遷移制御部110、170は、所定のプログラムを実行するプロセッサなどで実現されてもよく、制御演算部4で用いられるプロセッサで実現されてもよい。AD変換部111、比較部112、計数部113およびDA変換部114は、状態遷移制御部110、170とは別に設けられてもよい。
【0136】
また、測定装置160、200は、プロセス量の他、電気(電圧、電流、電力など)、磁気、音、光信号などの種々の被測定量を測定するものであってもよい。
【0137】
なお、本発明は、前述の実施例に限定されることなく、その本質を逸脱しない範囲で、さらに多くの変更および変形を含む。また、前述した各部の組み合わせ以外の組み合わせを含むことができる。
【符号の説明】
【0138】
1 塩化チオニール系一次電池
8 電池電圧測定部
110、170 状態遷移制御部
120 記憶部
140 第1所定電流放電部
141 第2所定電流放電部
142 第3所定電流放電部
150、180 内部回路
160、200 測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化チオニール系一次電池と、この塩化チオニール系一次電池の電圧を測定する電池電圧測定部と、前記塩化チオニール系一次電池から放電電流の供給を受けるとともに前記放電電流の大きさが異なる複数の状態を有する内部回路とを備える測定装置において、
前記内部回路の現在の状態の放電電流より大きい他の状態へ遷移する場合、前記電池電圧測定部によって測定された電圧と前記内部回路の遷移前後の状態の放電電流に基づく閾値とを比較した結果に応じて遷移させる状態遷移制御部
を備えたことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記内部回路は、所定放電電流を流す所定電流放電部を有することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記状態遷移制御部は、前記所定電流放電部の所定放電電流の値を変更することができることを特徴とする請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記状態遷移制御部は、前記所定電流放電部により所定放電電流を流す状態が複数回繰り返された場合、前記内部回路の現在の状態の放電電流より大きい他の状態へ遷移させないことを特徴とする請求項2または3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記状態遷移制御部は、前記電池電圧測定部によって測定された電圧が前記閾値のうち最小値より小さい場合、前記内部回路の現在の状態の放電電流より大きい他の状態へ遷移させないことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記閾値は、前記内部回路の遷移前後の状態の放電電流の比率および予め定められた前記塩化チオニール系一次電池の無負荷時の電圧に基づく値であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−177091(P2010−177091A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19574(P2009−19574)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】