説明

測色装置および該方法ならびに液晶表示システム

【課題】本発明は、暗い階調であってもより精度よく測定し得る測色装置および測色方法を提供する。また、本発明は、この測色装置の測定結果に基づいて液晶カラーディスプレイの表示面における色を校正し得る液晶表示システムを提供する。
【解決手段】本発明にかかる測色装置は、液晶カラーディスプレイの輝度または色を測定する測色装置であって、所定の第1視野角で、液晶カラーディスプレイの放射光を受光し、少なくとも3つの互いに異なる分光応答度に応じた強度信号を出力する受光部と、受光部から出力された各強度信号を液晶カラーディスプレイの複数の原色強度に関する情報に変換する変換部と、原色強度に関する情報と予め記憶されている液晶カラーディスプレイに固有の原色ごとの変換係数とに基づいて、第1視野角による強度信号を所定の第2視野角による信号強度に補正する補正部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶表示装置の表示面における色を好適に測定することができる測色装置および測色方法に関する。そして、本発明は、この測色装置によって測定された色に基づいて液晶表示装置の表示面における色を校正することができる液晶表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、従来、CRTディスプレイが主流であったが、近年、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)および有機ELディスプレイ等の様々な方式の装置が開発され、これら各方式の表示装置が普及しつつある。このような表示装置において、例えば、印刷用途や医療用途等の用途では、その使用目的から比較的高品位な表示装置が要求され、この要求を満たすために、輝度や色度のずれを校正する校正処理が行われる。
【0003】
この校正に当たって、輝度や色度を測定する必要があり、輝度の測定には、輝度計が用いられる。この輝度計には、例えば、望遠輝度計と接触型輝度計とが知られている。望遠輝度計は、表示装置から所定の一定距離だけ離れた位置から表示装置の輝度を測定する装置であり、装置内に光学系を有し、この光学系によって限られた範囲の光を集光するので、測定視野が比較的狭い。一方、接触型輝度計は、表示装置の表示面に接触して測定を行う装置であり、吸盤等によって表示装置の表示面に装着されて使用される構造となっており、表示装置の表示面から受光センサまでの距離が短く、またコスト削減のために受光角を絞るような光学系も設けられていないケースも多く、測定視野が比較的広い。
【0004】
この接触型輝度計として、例えば、コニカミノルタ社製のCRTキャリブレータと呼ばれるカラーセンサがある。このCRTキャリブレータでは、大略、入射光がいわゆるCIE表色系におけるX、Y、Zの各色フィルタを介して色フィルタごとに設けられた各シリコンフォトダイオードで受光され、各シリコンフォトダイオードの各受光出力が電流−電圧変換回路およびアナログ−ディジタル変換回路によってそれぞれ変換され、各シリコンフォトダイオードにそれぞれ対応する各ディジタル値が内蔵のマイクロコンピュータに取り込まれ、このマイクロコンピュータによって校正が行われつつ、それら各ディジタル値に基づいて、最終的な出力値である測色値が演算され、測色値が出力される。
【0005】
このような輝度計によってCRTディスプレイの表示面における輝度を測定する場合、CRTディスプレイでは、視角(見る角度)に応じた輝度変化が比較的小さく、輝度の視角依存性が小さいため、望遠型輝度計によって測定しても接触型輝度計によって測定しても略同じ値が得られ、正確な測定が可能である。しかしながら、液晶ディスプレイの暗い部分の階調では、視角に応じた輝度変化が大きく、輝度の視角依存性が大きいため、接触型輝度計では正確な測定を行うことができない。
【0006】
この接触型輝度計を用いて液晶ディスプレイの表示面における輝度を正確に測定するために、例えば、特許文献1に開示の液晶ディスプレイの輝度測定装置がある。この特許文献1に開示の液晶ディスプレイの輝度測定装置は、接触型輝度計、前記接触型輝度計の受光部周辺を囲む遮光性のクッション部材、および、前記遮光性のクッション部材をディスプレイの表示面に緩く押圧すると共に、前記接触型輝度計の受光部とディスプレイの向きとの関係が一定となるように、前記接触型輝度計を液晶ディスプレイに固定する固定手段を有する測光手段と、前記接触型輝度計による輝度測定結果、および、望遠輝度計による輝度測定結果から、前記接触型輝度計による輝度測定結果を前記望遠輝度計に対応する輝度測定結果に変換する変換手段と、前記測光手段による液晶ディスプレイの輝度測定結果を前記変換手段で変換する処理手段とを有している。そして、特許文献1には、このような構成によって、接触型輝度計で液晶ディスプレイの表示輝度を、望遠輝度計で測定した如く、正確に測定することができると、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−294528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、液晶ディスプレイを測定する場合に、前記装置は、明るい階調の測定では、比較的よい精度で測定することができるが、液晶ディスプレイの視角依存性が大きいため、暗い階調の測定では、適切に補正することができず、よい精度で測定することが難しい。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、暗い階調であってもより精度よく測定することができる測色装置および測色方法を提供することである。また、本発明は、この測色装置によって測定された色に基づいて液晶カラーディスプレイの表示面における色を校正することができる液晶表示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる測色装置は、液晶カラーディスプレイの輝度または色を測定する測色装置であって、所定の第1視野角で、前記液晶カラーディスプレイの放射光を受光し、少なくとも3つの互いに異なる分光応答度に応じた強度信号を出力する受光部と、前記受光部から出力された各強度信号を前記液晶カラーディスプレイの複数の原色強度に関する情報に変換する変換部と、前記原色強度に関する情報と予め記憶されている前記液晶カラーディスプレイに固有の原色ごとの変換係数とに基づいて、前記第1視野角による強度信号を所定の第2視野角による信号強度に補正する補正部とを備えることを特徴とする。
【0011】
このような構成の測色装置では、受光部から出力される、少なくとも3つの互いに異なる分光応答度に応じた各強度信号が、変換部によって、前記液晶カラーディスプレイの複数の原色強度に関する情報に変換され、補正部によって、前記第1視野角による強度信号が、前記第2視野角による信号強度に補正される。本発明にかかる測色装置は、このように前記第1視野角による強度信号を前記第2視野角による信号強度に補正するので、暗い階調であってもより精度よく測定することができる。
【0012】
また、上述の測色装置において、前記液晶カラーディスプレイに固有の原色ごとの前記変換係数を予め記憶する補正係数記憶部をさらに備え、前記補正部は、前記補正係数記憶部の前記変換係数を用いることによって、前記第1視野角による強度信号を前記第2視野角による信号強度に補正することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、変換係数が予め補正係数記憶部に記憶されているので、測定対象の液晶カラーディスプレイの実際の測定開始前に変換係数を求める必要がなく、実際の測定を迅速に開始することができる。またメーカ側で変換係数を求めて予め補正係数記憶部に格納しておくことも可能となり、ユーザは、煩雑な変換係数の測定を行う必要がなくなる。
【0014】
また、これら上述の測色装置において、前記受光部は、前記放射光が入射され、前記少なくとも3つの互いに異なる前記分光応答度に応じた各光を射出する光学フィルタと、前記光学フィルタから射出された各光を受光して、前記少なくとも3つの互いに異なる前記分光応答度に応じた前記強度信号を出力する受光回路とを備えることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、光学フィルタと受光回路とを備えた受光部を持つ測色装置が提供される。
【0016】
また、これら上述の測色装置において、前記受光部は、入射光におけるCIE表色系の三刺激値を出力する測色計であり、前記補正部で補正された前記第2視野角による信号強度をCIE表色系の三刺激値に変換する三刺激値変換部をさらに備えることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、暗い階調であってもより精度よく三刺激値を測定することができる。
【0018】
また、これら上述の測色装置において、前記受光部は、入射光におけるRGB値を出力する測色計であることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、暗い階調であってもより精度よくRGB値を測定することができる。
【0020】
また、これら上述の測色装置において、前記受光部は、互いに異なる第1ないし第3分光分布に応じた入射光における第1ないし第3分光放射輝度を出力する分光放射輝度計であること特徴とする。
【0021】
この構成によれば、暗い階調であってもより精度よく分光放射輝度を測定することができる。
【0022】
また、本発明の他の一態様にかかる測色方法は、液晶カラーディスプレイの輝度または色を測定する測色方法であって、所定の第1視野角で、前記液晶カラーディスプレイの放射光を受光し、少なくとも3つの互いに異なる分光応答度に応じた強度信号を出力する受光工程と、前記受光工程の前記各強度信号を前記液晶カラーディスプレイの複数の原色強度に関する情報に変換する変換工程と、前記原色強度に関する情報と予め記憶されている前記液晶カラーディスプレイに固有の原色ごとの変換係数とに基づいて、前記第1視野角による強度信号を所定の第2視野角による信号強度に補正する補正工程とを備えることを特徴とする。
【0023】
このような構成の測色方法では、前記液晶カラーディスプレイの放射光を受光することによって得られた、少なくとも3つの互いに異なる分光応答度に応じた各強度信号が、前記液晶カラーディスプレイの複数の原色強度に関する情報に変換され、前記原色強度に関する情報と予め記憶されている前記液晶カラーディスプレイに固有の原色ごとの変換係数とに基づいて、前記第1視野角による強度信号が、前記第2視野角による信号強度に補正される。本発明にかかる測色方法は、このように前記第1視野角による強度信号を前記第2視野角による信号強度に補正するので、暗い階調であってもより精度よく測定することができる。
【0024】
また、本発明にかかる他の一態様では、液晶表示装置の表示面における色を測定する測色装置と、前記測色装置の測定結果に基づいて前記液晶表示装置の表示面おける色を校正する表示制御装置とを備える液晶表示システムにおいて、前記測色装置は、これら上述の測色装置のうちのいずれかであることを特徴とする。
【0025】
このような構成の液晶表示システムは、暗い階調であってもより精度よく液晶表示装置の表示面における校正を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる測色装置および測色方法は、暗い階調であってもより精度よく測定することができる。そして、本発明にかかる液晶表示システムは、暗い階調であってもより精度よく液晶表示装置の表示面における校正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態における液晶表示システムの外観構成を示す図である。
【図2】実施形態における液晶表示システムの構成を示すブロック図である。
【図3】補正係数を求める処理を示すフローチャートである。
【図4】基準器での三刺激値X、Y、ZをRGB相対値R、G、Bに変換する変換行列Aを求める処理を示すフローチャートである。
【図5】センサユニットでの三刺激値X、Y、ZをRGB相対値R、G、Bに変換する変換行列Bを求める処理を示すフローチャートである。
【図6】実施形態のセンサユニットにおける補正係数テーブルを示す図である。
【図7】補正係数関数を示す図である。
【図8】実施形態におけるセンサユニットの動作を示すフローチャートである。
【図9】分光放射輝度計を用いる場合における補正係数を求める別の処理を示すフローチャートである。
【図10】分光放射輝度計を用いる場合におけるセンサユニットの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。
【0029】
図1は、実施形態における液晶表示システムの外観構成を示す図である。図2は、実施形態における液晶表示システムの構成を示すブロック図である。
【0030】
図1において、実施形態における液晶表示システムSは、液晶表示装置3の色(例えば輝度および色度)を調整するものであり、液晶表示装置3の表示面3aにおける色を測定する測色装置と、前記測色装置の測定結果に基づいて液晶表示装置3の表示面3aおける色を校正する表示制御装置4とを備えて構成される。
【0031】
液晶表示装置(液晶カラーディスプレイ、カラーLCD)3は、輝度および色度の校正を必要とする高品位な、液晶方式によるカラー表示装置である。
【0032】
前記測色装置は、液晶表示装置3の輝度または色を測定する測色装置であって所定の第1視野角で液晶表示装置3の放射光を受光し、少なくとも3つの互いに異なる分光応答度に応じた強度信号を出力する受光部と、この受光部から出力された各強度信号を液晶表示装置3の複数の原色強度に関する情報に変換する変換部と、原色強度に関する情報と予め記憶されている液晶表示装置3に固有の原色ごとの変換係数とに基づいて、第1視野角による強度信号を所定の第2視野角による信号強度に補正する補正部とを備えて構成される。そして、本実施形態では、液晶表示装置3に固有の原色ごとの前記変換係数を予め記憶する補正係数記憶部をさらに備え、前記補正部は、この補正係数記憶部の変換係数を用いることによって、前記第1視野角による強度信号を前記第2視野角による信号強度に補正するものである。さらに、本実施形態では、例えば、前記受光部は、液晶表示装置3の放射光が入射され、少なくとも3つの互いに異なる分光応答度に応じた各光を射出する光学フィルタと、この光学フィルタから射出された各光を受光して、少なくとも3つの互いに異なる分光応答度に応じた強度信号を出力する受光回路とを備えて構成されている。
【0033】
より具体的には、前記測色装置は、互いに異なる第1ないし第3分光分布に応じた入射光における第1ないし第3分光の第1ないし第3光強度に関する第1ないし第3分光強度信号を出力する受光部と、前記受光部から出力された第1ないし第3分光強度信号を液晶表示装置3のRGB値に関する第1ないし第3信号値に変換するRGB変換部と、液晶表示装置3の視野角特性に起因して生じる誤差を補正するように、前記第1ないし第3信号値を補正する補正部とを備えて構成される。そして、前記受光部は、入射光におけるCIE表色系の三刺激値を出力する測色計であり、前記補正部で補正された第1ないし第3信号値をCIE表色系の三刺激値に変換する三刺激値変換部をさらに備えている。より具体的には、前記受光部は、互いに異なる第1ないし第3分光分布に応じた入射光における第1ないし第3分光を射出する光学フィルタと、前記光学フィルタから射出された第1ないし第3分光を受光して、前記第1ないし第3分光の第1ないし第3光強度に関する第1ないし第3分光強度信号を出力する受光回路とを備えている。また、前記測色装置は、液晶表示装置3の視野角特性に起因して生じる誤差を補正するための補正係数を予め記憶する補正係数記憶部をさらに備え、前記補正部は、前記補正係数記憶部の補正係数を用いることによって前記第1ないし第3信号値を補正するものである。このような前記測色装置は、例えば、図1および図2に示す例では、センサユニット1とセンサ本体2とを備えて構成される。
【0034】
センサユニット1は、センサ本体2に接続され、液晶表示装置3の表示面3aから放射される光を受光し、液晶表示装置3の表示面3aにおける輝度Lvおよび色度x、yを測定するセンサである。センサユニット1は、校正の際に、液晶表示装置3の表示面3aに例えば吸着等によって貼り付けられ、装着される。
【0035】
センサ本体2は、表示制御装置4に接続され、センサユニット1から入力された測定結果に基づいて液晶表示装置3の表示面3aが予め設定された輝度Lv0および色度x0、y0となる校正量(調整量)を求める装置である。例えば、センサ本体2は、センサユニット1から入力された測定結果Lv、x、yと予め設定された輝度Lv0および色度x0、y0とを比較することによって、両者の差分を前記校正量として求める。センサ本体2は、例えばパーソナルコンピュータやマイクロコンピュータ等のコンピュータによって構成される。
【0036】
表示制御装置4は、図1および図2に示す例では、液晶表示装置3に接続され、センサ本体2から入力された校正量(調整量)に基づいて液晶表示装置3の表示面3aにおける輝度Lvおよび色度x、yを校正(調整)する装置である。
【0037】
これらセンサユニット1とセンサ本体2との間、センサ本体2と表示制御装置4との間および表示制御装置4と液晶表示装置3との間は、それぞれ例えばUSB等によって接続される。なお、表示制御装置4は、センサ本体2と一体に構成されてもよく、また、液晶表示装置3と一体に構成されてもよい。また、センサ本体2および表示制御装置4は、液晶表示装置3に組み込まれて一体に構成されてもよい。
【0038】
前記センサユニット1をさらに説明すると、センサユニット1は、例えば、図2に示すように、赤外線吸収フィルタ11と、フィルタ12と、シリコンフォトダイオード(SPD)13と、電流−電圧変換回路(I/V変換回路)14と、ゲイン切替回路15と、アナログ−ディジタル変換回路(A/D変換回路)16と、演算制御部17と、外部インタフェース回路18と、記憶部19とを備えて構成される。
【0039】
赤外線吸収フィルタ11は、少なくとも可視光を透過すると共に、赤外線を吸収するための光学フィルタである。一般に、シリコンフォトダイオードは、赤外線に対し感度を持つことから、赤外線吸収フィルタ11は、シリコンフォトダイオード13に入射される赤外線を除去するために設けられている。このため、赤外線吸収フィルタ11は、シリコンフォトダイオード13が感度を持つ赤外線を吸収するような遮断波長帯域を少なくとも有している。
【0040】
フィルタ12は、いわゆるCIE表色系における三刺激値X、Y、Zにそれぞれ対応したXフィルタ12X、Yフィルタ12YおよびZフィルタ12Zの各色フィルタを備えて構成される。より具体的には、Xフィルタ12X、Yフィルタ12YおよびZフィルタ12Zは、例えば、CIE1931等色関数によって規定された分光分布(分光特性)に略一致するようにそれぞれ設計される。あるいは、Xフィルタ12X、Yフィルタ12YおよびZフィルタ12Zは、シリコンフォトダイオード13X、シリコンフォトダイオード13Yおよびシリコンフォトダイオード13Zの各受光特性を併せて、前記分光分布(分光特性)に略一致するようにそれぞれ設計される。なお、CIEは、国際照明委員会のことである。
【0041】
例えば、刺激値Xに対応する分光分布を持つXフィルタを入射光が通過することによって、刺激値Xに対応する分光分布に応じた入射光における刺激値Xに対応する分光が得られる。すなわち、Xフィルタを入射光が通過することによって、刺激値Xに対応する分光分布で入射光が切り出され、刺激値Xに対応する分光が得られる。
【0042】
なお、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0043】
シリコンフォトダイオード13は、受光した光強度に応じた電流を生成する光電変換素子であり、Xフィルタ12X、Yフィルタ12YおよびZフィルタ12Zにそれぞれ対応してシリコンフォトダイオード13X、シリコンフォトダイオード13Yおよびシリコンフォトダイオード13Zが設けられている。
【0044】
これら赤外線吸収フィルタ11、フィルタ12およびシリコンフォトダイオード13は、XYZ受光センサ部10aを構成し、このXZY受光センサ部10aは、小型化および低コスト化の観点から、例えば集光レンズ等の光学系を備えていない広受光角の広角型センサである。
【0045】
I/V変換回路14は、シリコンフォトダイオード13に接続され、シリコンフォトダイオード13から入力された入力電流をその電流値に応じた電圧値の電圧に変換し、電圧信号として出力する回路である。I/V変換回路14は、シリコンフォトダイオード13X、シリコンフォトダイオード13Yおよびシリコンフォトダイオード13Zにそれぞれ対応してI/V変換回路14X、I/V変換回路14YおよびI/V変換回路14Zが設けられる。
【0046】
ゲイン切替回路15は、I/V変換回路14および演算制御部17に接続され、演算制御部17の制御に従ってA/D変換回路16のダイナミックレンジに適応するようにそのゲイン(増幅率)を切り替えて、I/V変換回路14から入力された電圧信号を増幅する増幅回路である。ゲイン切替回路15は、I/V変換回路14X、I/V変換回路14YおよびI/V変換回路14Zにそれぞれ対応してゲイン切替回路15X、ゲイン切替回路15Yおよびゲイン切替回路15Zが設けられる。
【0047】
A/D変換回路16は、ゲイン切替回路15および演算制御部17に接続され、演算制御部17の制御に従ってゲイン切替回路15から入力されたアナログ信号の電圧信号をその値に応じたディジタル値のディジタル信号に変換して出力する回路である。
【0048】
これらI/V変換回路14、ゲイン切替回路15およびA/D変換回路16は、信号変換部10bを構成し、この信号変換部10bは、XYZ受光センサ部10aから出力されるアナログ信号を、演算制御部17で処理するためのディジタル信号へ変換する。
【0049】
記憶部19は、機能的に、校正係数を予め記憶する校正係数記憶部19aおよび補正係数を記憶する補正係数記憶部19bを備え、センサユニット1の動作を制御する制御プログラム等の各種プログラム、及び、各種プログラムの実行に必要なデータやその実行中に生じるデータ等の各種データを記憶する回路である。校正係数は、XYZ受光センサ部10aによって測定された測定値が、予め規定された基準となる光源および測定器で値付けされた基準値に合わせ込むための係数である。例えば、所定条件の白色(例えば、6500K、40cd/m等)で調整された前記基準光源の白、赤R、緑Gおよび青Bの各単色が測定され、公知の常套手段によって校正係数が求められる。補正係数は、液晶表示装置の視野角特性に起因して生じる誤差を補正するための係数である。記憶部19は、例えば、演算制御部17の所謂ワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等の揮発性の記憶素子、ROM(Read Only Memory)や書換え可能なEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性の記憶素子を備えて構成される。
【0050】
演算制御部17は、例えば、CPU(Central Processing Unit、中央処理回路)およびその周辺回路を備えて構成され、センサユニット1の各部をその機能に従って制御し、センサユニット1全体の動作を制御する回路である。演算制御部17は、機能的に、ゲイン制御部17a、A/D変換制御部17b、A/Dカウント入力部17c、演算補正部17dおよびデータ入出力部17eを備えて構成される。
【0051】
A/Dカウント入力部17cは、A/D変換回路16から出力される三刺激値X、Y、Zの各ディジタル信号(カウント値)を受け付けるものである。ゲイン制御部17aは、A/D変換回路16から出力される三刺激値X、Y、Zの各ディジタル信号(カウント値)に基づいて各ゲイン切替回路15X、15Y、15Zの各ゲインX、Y、Zをそれぞれ設定し、各ゲイン切替回路15X、15Y、15Zの各ゲインX、Y、Zを制御するものである。A/D変換制御部17bは、A/D変換回路16のサンプリング(A/D変換のサンプルタイミング)を制御するものである。演算補正部17dは、後述の処理手順に従って、記憶部19に記憶されている校正係数および補正係数に基づいて三刺激値X、Y、Zの各ディジタル信号(カウント値)を校正および補正し、三刺激値X、Y、Zの各ディジタル信号(カウント値)に基づいて輝度値Lvおよび色度値x、yを演算するものである。データ入出力部17eは、外部インタフェース回路18を介してセンサ本体2と通信を行うものである。
【0052】
外部インタフェース回路18は、演算処理部17およびセンサ本体2に接続され、センサ本体2との間で通信信号を送受信するためのインタフェース回路であり、演算制御部17の出力をセンサ本体2が受信可能な形式の通信信号に変換すると共にセンサ本体2から受信した通信信号を演算制御部18が処理可能な形式のデータに変換する。
【0053】
次に、このような構成の液晶表示システムSにおける動作を説明する。まず、XYZ受光センサ部10aでは、校正時に液晶表示装置3の表示面3aに装着されると、液晶表示装置3の表示面3aから放射された光が入射光として入射され、赤外線吸収フィルタ11によって入射光から赤外線が除去される。この赤外線が除去された入射光は、Xフィルタ12X、Yフィルタ12YおよびZフィルタ12Zにそれぞれ入射され、これらXフィルタ12X、Yフィルタ12YおよびZフィルタ12Zを通過することによって分光される。この各分光光は、シリコンフォトダイオード13X、シリコンフォトダイオード13Yおよびシリコンフォトダイオード13Zにそれぞれ入射され、これらシリコンフォトダイオード13X、シリコンフォトダイオード13Yおよびシリコンフォトダイオード13Zによって受光され、光電変換される。本実施形態では、Xフィルタ12X、Yフィルタ12YおよびZフィルタ12Zが、あるいはシリコンフォトダイオード13X、シリコンフォトダイオード13Yおよびシリコンフォトダイオード13Zと併せて、上述したように、CIE1931等色関数によって規定された分光特性を略持つようにそれぞれ設計されていることから、シリコンフォトダイオード13は、三刺激値X、Y、Zに対応した各値X、Y、Zを出力することができ、ZYX受光センサ部10aは、三刺激値X、Y、Zを直接読み取ることができる色刺激値直読方式の受光センサを構成している。
【0054】
前記各分光光を前記シリコンフォトダイオード13X、シリコンフォトダイオード13Yおよびシリコンフォトダイオード13Zによってそれぞれ光電変換することによって得られた前記各分光光に対応する各電流は、各入力電流としてI/V変換回路14X、I/V変換回路14YおよびI/V変換回路14Zへそれぞれ入力され、各電圧信号に変換され、ゲイン切替回路15X、ゲイン切替回路15Yおよびゲイン切替回路15Zをそれぞれ介して単体のA/D変換回路16へ入力される。ゲイン切替回路15X、ゲイン切替回路15Yおよびゲイン切替回路15Zでは、それぞれ、演算制御部17のゲイン制御部17aから入力されるゲイン制御信号に応じてそのゲインがA/D変換回路16のダイナミックレンジに適応するように調整される。ゲイン制御部17aは、A/D変換回路16の出力に基づいてゲイン切替回路15のゲインを設定し、ゲイン切替回路15のゲインを制御する。すなわち、ゲイン制御部17aは、ゲイン切替回路15Xから入力されたアナログの電圧信号をA/D変換回路16によって変換したディジタル値に基づいてゲイン切替回路15XのゲインXを設定し、ゲイン切替回路15XのゲインXを制御する。ゲイン制御部17aは、ゲイン切替回路15YのゲインYおよびゲイン切替回路15ZのゲインZも、同様に、それぞれ制御する。単体のA/D変換回路16は、A/D変換制御部17bによってサンプリングが制御され、ゲイン切替回路15X、ゲイン切替回路15Yおよびゲイン切替回路15Zのそれぞれから入力された各電圧信号を、マルチプレックス動作によって順次に、予め設定された所定のサンプリング周期で、ディジタル信号へ変換する。この変換された各ディジタル信号は、三刺激値X、Y、Zの各ディジタル信号(カウント値)としてA/D変換回路16から演算制御部17へ出力される。
【0055】
演算制御部17では、A/D変換回路16から出力された三刺激値X、Y、Zの各ディジタル信号(カウント値)は、A/Dカウント入力部17cによって受け付けられ、演算補正部17dによって、後述の処理手順に従って、記憶部19に記憶されている校正係数および補正係数に基づいて校正および補正され、三刺激値X、Y、Zの各ディジタル信号(カウント値)に基づいて輝度値Lvおよび色度値x、yが演算される。そして、この輝度値Lvおよび色度値x、yがデータ入出力部17eによって外部インタフェース回路18を介してセンサ本体2へ送信される。
【0056】
センサ本体2では、センサユニット1から輝度値Lvおよび色度値x、yが入力されると、液晶表示装置3の表示面3aが予め設定された輝度および色度となるように、これら測定結果に基づいて校正量(調整量)が求められ、この求められた校正量がセンサ本体2から表示制御装置4へ出力される。表示制御装置4では、センサ本体2から校正量が入力されると、この校正量に基づいて液晶表示装置3の表示面3aにおける輝度および色度を校正する制御信号が生成され、この制御信号が表示制御装置4から液晶表示装置3へ出力される。液晶表示装置3では、この制御信号が入力されると、この制御信号に従って輝度および色度が校正される。
【0057】
次に、補正処理について説明する。補正処理では、まず、補正係数が求められ、この補正係数が記憶部19の補正係数記憶部19bに格納される。そして、測定対象の液晶表示装置3の表示面3aの測定が実際に行われ、前記補正係数によって補正されつつ、液晶表示装置3の表示面3aの輝度値Lvおよび色度値x、yが求められる。
【0058】
図3は、補正係数を求める処理を示すフローチャートである。図4は、基準器での三刺激値X、Y、ZをRGB相対値R、G、Bに変換する変換行列Aを求める処理を示すフローチャートである。図5は、センサユニットでの三刺激値X、Y、ZをRGB相対値R、G、Bに変換する変換行列Bを求める処理を示すフローチャートである。図6は、第1実施形態のセンサユニットにおける補正係数テーブルを示す図である。図7は、補正係数関数を示す図である。図7(A)は、赤Rの補正係数関数Krを示し、図7(B)は、緑Gの補正係数関数Kgを示し、そして、図7(C)は、青Bの補正係数関数Kbを示す。なお、各補正係数関数Kr、Kg、Kbは、規格化され、相対値で示されている。図8は、第1実施形態におけるセンサユニットの動作を示すフローチャートである。
【0059】
補正係数は、次の処理手順によって求められる。図3において、まず、ステップS11で初期設定が行われる。この初期設定では、ループ変数iの初期化が行われ、ループ変数iに階調数nが設定される(i=n)。階調数nは、補正係数を求めるために用いられる液晶表示装置3の階調数であり、例えば、256である。続いて、ステップS12では、液晶表示装置3がループ変数iの値に応じた階調の白色に設定され、表示面3aに前記階調の白色が表示される。続いて、ステップS13では、前記階調の白色を表示している液晶表示装置3の表示面3aが基準器によって測定され、ループ変数iにおける三刺激値Xi、Yi、Ziが測定される。この基準器は、人間の眼でものを見る場合と同様に、測定対象から比較的離れた位置から比較的狭い視野角で測定する望遠型の測定装置であって、センサユニット1を校正するために、基準(原器)として使用される三刺激値X、Y、Zを出力可能な測定装置である。なお、添え字iは、ループ変数iにおける値であることを示しており、以下も同様である。続いて、ステップS14では、この基準器で測定することによって得られたループ変数iにおける三刺激値Xi、Yi、Ziが、変換行列Aによって赤R、緑G、青Bの各相対値に変換され、ループ変数iにおけるRGB相対値Ri、Gi、Biが求められる。
【0060】
ここで、変換行列Aを求める処理手順について説明する。図4において、ステップS21では、前記液晶表示装置3が最大階調255である場合に、前記液晶表示装置3が階調R=255、G=0、B=0に設定され、前記階調の色を表示している晶表示装置3の表示面3aが前記基準器によって測定され、階調R=255、G=0、B=0における三刺激値Xr、Yr、Zrが測定される。続いて、ステップS22では、前記液晶表示装置3が階調R=0、G=255、B=0に設定され、前記階調の色を表示している晶表示装置3の表示面3aが前記基準器によって測定され、階調R=0、G=255、B=0における三刺激値Xg、Yg、Zgが測定される。続いて、ステップS23では、前記液晶表示装置3が階調R=0、G=0、B=255に設定され、前記階調の色を表示している晶表示装置3の表示面3aが前記基準器によって測定され、階調R=0、G=0、B=255における三刺激値Xb、Yb、Zbが測定される。そして、ステップS24では、これら各階調における三刺激値Xr、Yr、Zr;Xg、Yg、Zg;Xb、Yb、Zbから式1によって表される行列が求められ、変換行列Aとされる。このようなステップS21ないしステップS24の各処理によって、基準器での三刺激値X、Y、ZをRGB相対値R、G、Bに変換する変換行列Aが求められる。
【0061】
【数1】

図3に戻って、ステップS15では、ステップS12の処理によって前記階調の白色を表示している液晶表示装置3の表示面3aが、センサユニット1によって測定され、ループ変数iにおける三刺激値Xsi、Ysi、Zsiが測定される。このセンサユニット1は、本処理手順によって求められた補正係数を格納すべきセンサユニット1である。続いて、ステップS16では、このセンサユニット1で測定することによって得られたループ変数iにおける三刺激値Xsi、Ysi、Zsiが、変換行列Bによって赤R、緑G、青Bの各相対値に変換され、ループ変数iにおけるRGB相対値Rsi、Gsi、Bsiが求められる。
【0062】
ここで、変換行列Bを求める処理手順について説明する。図5において、ステップS31では、前記液晶表示装置3が最大階調255である場合に、前記液晶表示装置3が階調R=255、G=0、B=0に設定され、前記階調の色を表示している晶表示装置3の表示面3aが前記センサユニット1によって測定され、階調R=255、G=0、B=0における三刺激値Xsr、Ysr、Zsrが測定される。続いて、ステップS32では、前記液晶表示装置3が階調R=0、G=255、B=0に設定され、前記階調の色を表示している晶表示装置3の表示面3aが前記センサユニット1によって測定され、階調R=0、G=255、B=0における三刺激値Xsg、Ysg、Zsgが測定される。続いて、ステップS33では、前記液晶表示装置3が階調R=0、G=0、B=255に設定され、前記階調の色を表示している晶表示装置3の表示面3aが前記センサユニット1によって測定され、階調R=0、G=0、B=255における三刺激値Xsb、Ysb、Zsbが測定される。そして、ステップS34では、これら各階調における三刺激値Xsr、Ysr、Zsr;Xsg、Ysg、Zsg;Xsb、Ysb、Zsbから式2によって表される行列が求められ、変換行列Bとされる。このようなステップS31ないしステップS34の各処理によって、センサユニット1での三刺激値Xs、Ys、ZsをRGB相対値Rs、Gs、Bsに変換する変換行列Bが求められる。
【0063】
【数2】

図3に戻って、ステップS17では、次の階調における各値を求めるべく、ループ変数iを1つだけデクリメントする(i←i−1)。そして、すべての階調に対する各値が求められたか否かを判定するべく、このデクリメントしたループ変数iが0であるか否かが判断される。この判断の結果、ループ変数iが0である場合(YES)には、すべての階調に対する各値が求められたと判断され、ステップS18の処理が実行される一方、ループ変数iが0ではない場合(NO)には、次の階調iにおける各値を求めるべく、処理がステップS12へ戻される。
【0064】
ステップS18では、各階調iのそれぞれについて、センサユニット1でのRGB相対値Rsi、Gsi、Bsiに対する基準器でのRGB相対値Ri、Gi、Biの比Kri、Kgi、Kbiが求められ、この比が補正係数Kri、Kgi、Kbiとされる。すなわち、階調iにおける赤Rの補正係数Kriは、式3−1によって求められ、階調iにおける緑Gの補正係数Kgiは、式3−2によって求められ、そして、階調iにおける青Bの補正係数Kbiは、式3−3によって求められる。
Kri=Ri/Rsi ・・・(3−1)
Kgi=Gi/Gsi ・・・(3−2)
Kbi=Bi/Bsi ・・・(3−3)
【0065】
このような処理手順によって、高輝度(例えば256)から低輝度(例えば0)まで各階調i(i=0、1、2、・・・、n)における補正係数Kri、Kgi、Kbiが求められる。
【0066】
例えば、赤Rの補正係数Krは、参照値(階調i)の関数であり、図7(A)に示すように、参照値が0から約0.326までの範囲では0から約0.843まで比較的急激に増加し、そして、参照値が約0.326から約0.898までの範囲では約0.843から約0.997まで比較的緩やかに増加している。緑Gの補正係数Kgは、参照値(階調i)の関数であり、図7(B)に示すように、参照値が0から約0.340までの範囲では0から約0.833まで比較的急激に増加し、そして、参照値が約0.340から約0.929までの範囲では約0.833から約0.999まで比較的緩やかに増加している。青Bの補正係数Kbは、参照値(階調i)の関数であり、図7(C)に示すように、参照値が0から約0.359までの範囲では0から約0.850まで比較的急激に増加し、そして、参照値が約0.359から約0.978までの範囲では約0.850から約1.006まで比較的緩やかに増加している。
【0067】
このような処理手順によって求められた階調ごとの各補正係数Kr、Kg、Kbが記憶部19の補正係数記憶部19bに格納され、記憶される。補正係数記憶部19bには、図7に示すプロファイルを表した、あるいは近似した関数を求めることによって、補正係数Kr、Kg、Kbは、関数形式で記憶されてもよいが、本実施形態では、図6に示すように、参照値R、G、Bと補正係数Kr、Kg、Kbとの対応関係を示す補正係数テーブル(ルックアップテーブル形式)で記憶される。この図6に示す補正係数テーブルでは、例えば、赤Rの参照値R=0.0245の場合に、赤Rの補正係数Kr=0.281であり、緑Gの参照値G=0.0252の場合に、緑Gの補正係数Kg=0.291であり、そして、青Bの参照値B=0.0341の場合に、青Bの補正係数Kb=0.261である。
【0068】
なお、このようなルックアップテーブル形式で各補正係数Kr、Kg、Kbが補正係数記憶部19bに格納されている場合において、補正係数テーブルに無い参照値に対する補正係数Kが必要となった場合には、例えば、直線近似や多項式近似等の所定の近似方法を用いた補間処理によって、補正係数テーブルに無い参照値に対する補正係数Kが算出される。
【0069】
このように本実施形態では、補正係数Kr、Kg、Kbが予め補正係数記憶部19bに記憶されているので、測定対象の液晶表示装置3の実際の測定開始前に改めて補正係数Kr、Kg、Kbを求める必要がなく、実際の測定を迅速に開始することができる。またこのようにメーカ側で補正係数Kr、Kg、Kbを求めて予め補正係数記憶部19bに格納しておくことも可能であり、ユーザは、煩雑な補正係数Kr、Kg、Kbの測定を行う必要がなくなる。
【0070】
なお、このような補正係数Kr、Kg、Kbの測定および記憶部への保存は、本実施形態では、例えば製造段階や出荷段階でメーカ側で行われるが、測定対象の液晶表示装置3に対する実際の測定に先だって、ユーザ側で行われてもよい。ユーザ側で行うことによって、液晶表示装置3の特性が例えば経年変化等によって変化した場合でも適切に対処することができ、より適切に補正を行うことが可能となる。
【0071】
また、このような補正係数Kr、Kg、Kbは、一般に、液晶表示装置3の機種ごとに異なることが多いため、液晶表示装置3の機種ごとの補正係数Kr、Kg、Kbが複数記憶部19の補正係数記憶部19bに記憶され、測定対象の液晶表示装置3に対する実際の測定の際に、前記測定対象の液晶表示装置3の機種に応じて選択されるように液晶表示システムSが構成されてもよい。例えば、センサ本体2における図略の入力装置からユーザの選択指示を受け付けるように液晶表示システムSが構成される。
【0072】
次に、液晶表示装置3の表示面3aにおける輝度Lvおよび色度x、yの測定処理について説明する。図8において、まず、ステップS41では、測定対象である液晶表示装置3の表示面3aが測定され、補正前の三刺激値X’、Y’、Z’が求められる。より具体的には、測定対象の液晶表示装置3の表示面3aにおける輝度Lvおよび色度x、yの測定が開始されると、液晶表示装置3の表示面3aから放射された光が入射光としてセンサユニット1へ入射され、上述した各処理によってA/D変換回路16から三刺激値X、Y、Zの各ディジタル信号(カウント値)が出力される。これら三刺激値X、Y、Zの各ディジタル信号(カウント値)は、演算制御部17のA/Dカウント入力部17cによって受け付けられ、記憶部19の校正係数記憶部19aに記憶されている校正係数を用いて演算補正部17dによって校正され、補正前の三刺激値X’、Y’、Z’が求められる。
【0073】
続いて、ステップS42では、補正前の三刺激値X’、Y’、Z’は、演算補正部17dによって、変換行列Bを用いてRGB相対値R’、G’、B’に変換され、RGB相対値R’、G’、B’が求められる。これら各RGB相対値R’、G’、B’が図6や図7に示す各R、G、Bの各参照値である。
【0074】
続いて、ステップS43では、この変換されたRGB相対値R’、G’、B’は、演算補正部17dによって、記憶部19の補正係数記憶部19bに記憶されている補正係数Kr、Kg、Kbを用いて補正される。より具体的には、RGB相対値R’を赤Rの参照値として、記憶部19の補正係数記憶部19bに記憶されている補正係数テーブルが検索され、RGB相対値R’に対応する補正係数Krが取得され、この補正係数KrとRGB相対値R’とを乗算することによって補正後の赤RのRGB値Rが求められる(R=Kr×R’)。同様に、RGB相対値G’を緑Gの参照値として、記憶部19の補正係数記憶部19bに記憶されている補正係数テーブルが検索され、RGB相対値G’に対応する補正係数Kgが取得され、この補正係数KgとRGB相対値G’とを乗算することによって補正後の緑GのRGB値Gが求められる(G=Kg×G’)。そして、同様に、RGB相対値B’を青Bの参照値として、記憶部19の補正係数記憶部19bに記憶されている補正係数テーブルが検索され、RGB相対値B’に対応する補正係数Kbが取得され、この補正係数KbとRGB相対値B’とを乗算することによって補正後の青BのRGB値Bが求められる(B=Kb×B’)。
【0075】
続いて、ステップS44では、この補正されたRGB値R、G、Bは、演算補正部17dによって、変換行列Bの逆行列B−1を用いて補正後の三刺激値X、Y、Zに変換され、補正後の三刺激値X、Y、Zが求められる。
【0076】
続いて、ステップS45では、補正後の三刺激値X、Y、Zが測定値として演算補正部17から出力される。
【0077】
なお、輝度値Lvおよび色度値x、yは、三刺激値X、Y、Zを用いて次の式(4−1)〜式(4−3)によってそれぞれ算出される。
x=X/(X+Y+Z) ・・・(4−1)
y=Y/(X+Y+Z) ・・・(4−2)
Lv=Y ・・・(4−3)
【0078】
以上のように、本実施形態におけるセンサユニット1では、XYZ受光センサ部10aから信号変換部10bを介して出力される三刺激値X、Y、Zが、演算補正部17dによって、液晶表示装置3のRGB値に変換され、この変換後の、液晶表示装置のRGB値が、演算補正部17dによって、液晶表示装置3の視野角特性に起因して生じる誤差を補正するように補正される。このように液晶表示装置3のRGB値を補正するので、本実施形態におけるセンサユニット1は、暗い階調であってもより精度よく測定することができる。このため、本実施形態における液晶表示システムSは、暗い階調であってもより精度よく液晶表示装置3の表示面3aにおける校正を行うことができる。
【0079】
そして、本実施形態では、前記補正後における液晶表示装置のRGB値が、再び、三刺激値X、Y、Zに変換される。このため、本実施形態におけるセンサユニット1は、暗い階調であってもより精度よく三刺激値X、Y、Zを測定することができる。
【0080】
なお、上述の実施形態において、センサユニット1は、受光部として、入射光におけるCIE表色系の三刺激値X、Y、Zを出力するXYZ受光センサ部10aを備えて構成されたが、センサユニット1は、受光部として、入射光におけるRGB値R、G、Bを出力する測色計を備えて構成されてもよい。このように構成することによって、センサユニット1は、暗い階調であってもより精度よくRGB値を測定することが可能となる。
【0081】
また、上述の実施形態において、センサユニット1は、受光部として、互いに異なる第1ないし第3分光分布に応じた入射光における第1ないし第3分光放射輝度を出力する分光放射輝度計を備えて構成されてもよい。このように構成することによって、センサユニット1は、受光角を規制する光学系を備えていなくても、暗い部分の階調で、より精度よく分光放射輝度を測定することが可能となる。
【0082】
この受光部として分光放射輝度計を用いる場合におけるセンサユニット1の補正処理についてさらに説明する。
【0083】
図9は、分光放射輝度計を用いる場合における補正係数を求める別の処理を示すフローチャートである。図10は、分光放射輝度計を用いる場合におけるセンサユニットの動作を示すフローチャートである。
【0084】
まず、補正係数Cr(λ、p)、Cg(λ、p)、Cb(λ、p)を求める処理手順について説明する。図9において、ステップS51では、液晶表示装置3を赤R、緑Gおよび青Bそれぞれの最大の階調で発光させ、基準器となる分光放射器時計によってそのそれぞれの分光放射輝度Lvr(λ)、Lvg(λ)およびLvb(λ)が測定される。より具体的には、この処理は、図4に示すフォローチャートに類似し、まず、前記液晶表示装置3が最大階調255である場合に、前記液晶表示装置3が階調R=255、G=0、B=0に設定され、前記階調の色を表示している晶表示装置3の表示面3aが前記基準器によって測定され、階調R=255、G=0、B=0における分光放射輝度Lvr(λ)が測定される。続いて、前記液晶表示装置3が階調R=0、G=255、B=0に設定され、前記階調の色を表示している晶表示装置3の表示面3aが前記基準器によって測定され、階調R=0、G=255、B=0における分光放射輝度Lvg(λ)が測定される。続いて、前記液晶表示装置3が階調R=0、G=0、B=255に設定され、前記階調の色を表示している晶表示装置3の表示面3aが前記基準器によって測定され、階調R=0、G=0、B=255における分光放射輝度Lvb(λ)が測定される。
【0085】
そして、ステップS52では、赤R、緑Gおよび青Bにおいてiに応じた階調を順次に変化させて、センサユニット1としての対象の分光放射輝度計による測定値Lvr(λ、i)、Lvg(λ、i)、Lvb(λ、i)と、前記基準器の分光放射輝度計による測定値Lv0r(λ、i)、Lv0g(λ、i)、Lv0b(λ、i)とが測定され、これら前記対象の分光放射輝度計による測定値と前記基準器の分光放射輝度計による測定値との比Cr(λ、i)、Cg(λ、i)、Cb(λ、i)が補正係数として求められる。より具体的には、この処理は、図3に示すフォローチャートに類似し、まず、初期設定が行われ、ループ変数iの初期化が行われ、ループ変数iに階調数nが設定される(i=n)。続いて、液晶表示装置3がループ変数iの値に応じた階調のR、G、Bの単色に設定され、表示面3aに前記階調のR、G、Bの単色が表示される。続いて、前記階調の単色を表示している液晶表示装置3の表示面3aが前記基準器の分光放射輝度計によって測定され、ループ変数iにおける分光放射輝度Lv0ri(λ、i)、Lv0gi(λ、i)、Lv0bi(λ、i)が測定される。続いて、前記階調の白色を表示している液晶表示装置3の表示面3aが前記対象の分光放射輝度計によって測定され、ループ変数iにおける分光放射輝度Lvri(λ、i)、Lvgi(λ、i)、Lvbi(λ、i)が測定される。続いて、次の階調に対する各値を求めるべく、ループ変数iを1つだけデクリメントする(i←i−1)。そして、すべての階調に対する各値が求められたか否かを判定するべく、このデクリメントしたループ変数iが0であるか否かが判断される。この判断の結果、ループ変数iが0ではない場合(NO)には、次の階調iに対する各値を求めるべく、処理が初期設定の次の処理へ戻され、一方、ループ変数iが0である場合(YES)には、すべての階調に対する各値が求められたと判断され、補正係数Cri(λ、i)、Cgi(λ、i)、Cbi(λ、i)が求められる。すなわち、各階調iのそれぞれについて、センサユニット1での分光放射輝度Lvri(λ、i)、Lvgi(λ、i)、Lvbi(λ、i)に対する前記基準器での分光放射輝度Lv0ri(λ、i)、Lv0gi(λ、i)、Lv0bi(λ、i)の比が求められ、この比が補正係数Cri(λ、i)、Cgi(λ、i)、Cbi(λ、i)とされる。つまり、階調iにおける赤Rの補正係数Cri(λ、i)は、式5−1によって求められ、階調iにおける緑Gの補正係数Cgi(λ、i)は、式5−2によって求められ、そして、階調iにおける青Bの補正係数Cbi(λ、i)は、式5−3によって求められる。
Cri(λ、i)=Lvri(λ、i)/Lv0ri(λ、i) ・・・(5−1)
Cgi(λ、i)=Lvgi(λ、i)/Lv0gi(λ、i) ・・・(5−2)
Cbi(λ、i)=Lvbi(λ、i)/Lv0bi(λ、i) ・・・(5−1)
【0086】
このような処理手順によって、高輝度(例えば256)から低輝度(例えば0)まで各階調i(i=0、1、2、・・・、n)における補正係数Cri(λ、i)、Cgi(λ、i)、Cbi(λ、i)が求められる。
【0087】
そして、このような処理手順によって求められた階調ごとの各補正係数Cri(λ、i)、Cgi(λ、i)、Cbi(λ、i)が記憶部19の補正係数記憶部19bに例えばテーブル形式で格納され、記憶される。
【0088】
次に、液晶表示装置3の表示面3aにおける輝度Lvおよび色度x、yの測定処理について説明する。図10において、まず、ステップS61では、測定対象である液晶表示装置3の表示面3aが測定され、補正前の分光放射輝度Lv(λ)’が求められる。続いて、ステップS62では、演算補正部17dによって、Wr’・Lvr(λ)+Wg’・Lvg(λ)+Wb’・Lvb(λ)が、この補正前の分光放射輝度Lv(λ)’と略一致するような(この補正前の分光放射輝度Lv(λ)’に最も近い)係数Wr’、Wg’、Wb’が求められる。このWr’、Wg’、Wb’は、R、G、Bそれぞれの階調に相当する。続いて、ステップS63では、演算補正部17dによって、各波長λでWr’・Lvr(λ)、Wg’・Lvg(λ)およびWb’・Lvb(λ)と略一致するような(各波長λでWr’・Lvr(λ)、Wg’・Lvg(λ)およびWb’・Lvb(λ)に最も近い)Lvr(λ,ir)、Lvg(λ,ig)およびLvb(λ,ib)が求められる。そして、ステップS64では、演算補正部17dによって、補正後の分光放射輝度Lv(λ)として、Cr(λ、ir)・Wr’・Lvr(λ)+Cg(λ、ig)・Wg’・Lvg(λ)+Cb(λ、ib)・Wb’・Lvb(λ)(=Lv(λ))が求められる。
【0089】
このような動作によって、センサユニット1は、受光角を規制する規制光学系無しでも暗い階調の領域で、より精度よく分光放射輝度Lv(λ)を測定することが可能となる。
【0090】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0091】
S 液晶表示システム
1 センサユニット
2 センサ本体
3 液晶表示装置
4 表示制御装置
10a XYZ受光センサ部
10b 信号変換部
11 赤外線吸収フィルタ
12 フィルタ
13 シリコンフォトダイオード
14 電流電圧変換回路
15 ゲイン切替回路
16 アナログ−ディジタル変換回路
17 演算制御部
17a ゲイン制御部
17b A/D変換制御部
17c A/Dカウント入力部
17d 演算補正部
17e データ入出力部
18 外部インタフェース回路
19 記憶部
19a 校正係数記憶部
19b 補正係数記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶カラーディスプレイの輝度または色を測定する測色装置であって、
所定の第1視野角で、前記液晶カラーディスプレイの放射光を受光し、少なくとも3つの互いに異なる分光応答度に応じた強度信号を出力する受光部と、
前記受光部から出力された各強度信号を前記液晶カラーディスプレイの複数の原色強度に関する情報に変換する変換部と、
前記原色強度に関する情報と予め記憶されている前記液晶カラーディスプレイに固有の原色ごとの変換係数とに基づいて、前記第1視野角による強度信号を所定の第2視野角による信号強度に補正する補正部とを備えること
を特徴とする測色装置。
【請求項2】
前記液晶カラーディスプレイに固有の原色ごとの前記変換係数を予め記憶する補正係数記憶部をさらに備え、
前記補正部は、前記補正係数記憶部の前記変換係数を用いることによって、前記第1視野角による強度信号を前記第2視野角による信号強度に補正すること
を特徴とする請求項1に記載の測色装置。
【請求項3】
前記受光部は、
前記放射光が入射され、前記少なくとも3つの互いに異なる前記分光応答度に応じた各光を射出する光学フィルタと、
前記光学フィルタから射出された各光を受光して、前記少なくとも3つの互いに異なる前記分光応答度に応じた前記強度信号を出力する受光回路とを備えること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の測色装置。
【請求項4】
前記受光部は、入射光におけるCIE表色系の三刺激値を出力する測色計であり、
前記補正部で補正された前記第2視野角による信号強度をCIE表色系の三刺激値に変換する三刺激値変換部をさらに備えること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の測色装置。
【請求項5】
前記受光部は、入射光におけるRGB値を出力する測色計であること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の測色装置。
【請求項6】
前記受光部は、互いに異なる第1ないし第3分光分布に応じた入射光における第1ないし第3分光放射輝度を出力する分光放射輝度計であること
特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の測色装置。
【請求項7】
液晶カラーディスプレイの輝度または色を測定する測色方法であって、
所定の第1視野角で、前記液晶カラーディスプレイの放射光を受光し、少なくとも3つの互いに異なる分光応答度に応じた強度信号を出力する受光工程と、
前記受光工程の前記各強度信号を前記液晶カラーディスプレイの複数の原色強度に関する情報に変換する変換工程と、
前記原色強度に関する情報と予め記憶されている前記液晶カラーディスプレイに固有の原色ごとの変換係数とに基づいて、前記第1視野角による強度信号を所定の第2視野角による信号強度に補正する補正工程とを備えること
を特徴とする測色方法。
【請求項8】
液晶カラーディスプレイの表示面における色を測定する測色装置と、
前記測色装置の測定結果に基づいて前記液晶カラーディスプレイの表示面おける色を校正する表示制御装置とを備える液晶表示システムにおいて、
前記測色装置は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の測色装置であること
を特徴とする液晶表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−249548(P2010−249548A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96487(P2009−96487)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】