説明

測色装置及びインクジェット記録装置

【課題】測色の際に適した押圧力によって記録媒体を支持面に押圧することができるインクジェット記録装置及び測色装置を提供する。
【解決手段】測色装置200は、記録媒体を支持する測色基準面24と、測色基準面24に支持された記録媒体を押圧し測色基準面24に押さえつける押圧部材20とを有している。また、記録媒体に記録された記録画像を読み取り色校正のためのデータを取得する測色センサを有している。そして、測色装置200は、押圧部材20を測色基準面24に向かう方向に付勢する押圧バネ38を有している。また、押圧バネ38による押圧部材20の付勢を調節するバネ加圧軸61を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に記録された記録画像を読み取り、読み取った記録画像を基に色校正を行う測色装置及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置によって記録が行われる場合には、記録された画像における色の安定性と整合性をとることが求められている。特に、同一の記録画像を複数のインクジェット記録装置によって記録される場合には、それぞれのインクジェット記録装置の間で記録画像における色の安定性と整合性をとることが求められている。そのため、測色装置によって、記録媒体に記録された記録画像の色校正が行われるインクジェット記録装置が採用される場合がある。測色装置は、測色用テストパターンを測色して得られる測色データを取得する。この測色データを用いることによって、色校正が行われる。
【0003】
このとき、測色装置によってテストパターンの読み取りの行われる測色センサと記録媒体上におけるテストパターンとの間の距離にばらつきがあると、測色による結果が変動し、測色の結果の信頼性が低下してしまう可能性がある。そのため、測色が行われる際に記録媒体におけるテストパターンの読み取りの行われる部分が押さえ部材により押圧され、記録媒体の浮きが抑制される測色装置が特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されている測色装置は、押さえ部材が記録媒体に当接した押圧姿勢と、押さえ部材が記録媒体から離間した退避姿勢との間で姿勢を切り替えることができる。特許文献1の測色装置では、記録媒体の搬送や記録ヘッドによる記録が行われる際には押圧部材が退避姿勢をとり、測色の行われる際には押圧部材が押圧姿勢をとっている。これにより、測色の行われる際には、記録媒体が押さえ部材により記録媒体が一定の押圧力によって押圧され、測色センサと記録媒体との間の距離が一定に保たれる。また、記録媒体の搬送や記録が行われる際には、測色装置が記録媒体の搬送や記録を阻害せずに、記録媒体の搬送や記録がスムーズに行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−281549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、記録媒体には、様々な特性を有するものがある。一般的に、厚手の記録媒体は剛度が高く、薄手の記録媒体は剛度が低い。剛度の高い記録媒体においてカール癖が残っている場合には、記録媒体が支持面から離間する浮きが発生し易い。記録媒体に支持面から離間する浮きが生じた状態で記録媒体を押圧し、測色のためにテストパターン等の記録画像の読み取りが行われた場合、測色の際に測色センサと記録媒体とが接触して記録媒体を傷つけてしまう可能性がある。また、測色の際に測色センサと記録媒体とが接触して測色のためのテストパターンを傷つけてしまった場合、測色の精度が低下してしまう可能性がある。また、剛度の低い記録媒体の測色を行う際に、比較的弱い押圧力によって押圧される場合には、押圧が不足して測色を安定して行えない可能性がある。また、周囲の環境等によっても適した押圧力の強さが変化することがある。このように、一定の押圧によって記録媒体を押圧する場合には、押圧についてケースごとに対応することができず、そのときに適した押圧手段による押圧力を得ることができない可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、測色の際に適した押圧力によって記録媒体を支持面に押圧することができるインクジェット記録装置及び測色装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、記録媒体を支持する支持面と、支持面に支持された記録媒体を押圧し前記支持面に押さえつける押圧部材と、記録媒体に記録された記録画像を読み取り色校正のためのデータを取得する測色センサとを有し、前記押圧部材によって前記支持面に押さえつけられた記録媒体に記録されている記録画像を前記測色センサによって読み取って色校正のためのデータを取得する測色装置であって、前記押圧部材を前記支持面に向かう方向に付勢する付勢手段と、前記付勢手段による前記押圧部材の付勢を調節する付勢調節手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測色の際に適した押圧力によって記録媒体が支持面に押圧されるので、記録媒体が傷つくことが抑えられながら、押圧によって記録媒体が支持面に押さえつけられて、安定した測色を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置を側面から見た模式的な断面図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置の有する測色装置において、退避姿勢にある昇降ユニットの部分を取り出して示した斜視図である。
【図3】図1のインクジェット記録装置の有する測色装置において、押圧姿勢にある昇降ユニットの部分を取り出して示した斜視図である。
【図4】図2、3の昇降ユニットの内部の構成について示した断面図である。
【図5】図4の昇降ユニットの内部に配置された測色キャリッジについて、記録媒体の側から見た平面図である。
【図6】図1のインクジェット記録装置の有する測色装置が退避姿勢にあるときの昇降ユニットについて示した断面図である。
【図7】図1のインクジェット記録装置の有する測色装置が押圧姿勢にあるときの昇降ユニットについて示した断面図である。
【図8】図1のインクジェット記録装置において、測色装置によって測色が行われる際に、測色の行われる領域で中央部の押圧力を弱く設定したときの測色領域における押圧力の分布について示したグラフである。
【図9】本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置において、測色が行われる際の押圧力を調節する際の機構を説明するための説明図であり、押圧力が強く設定されているときのバネ加圧軸及び偏芯カムについて示した測色キャリッジの側面図である。
【図10】図9のインクジェット記録装置において、測色が行われる際の押圧力を調節する際の機構を説明するための説明図であり、押圧力が弱く設定されているときのバネ加圧軸及び偏芯カムについて示した測色キャリッジの側面図である。
【図11】図9、10に示される測色装置によって測色が行われる際に、記録画像の種類ごとに押圧力を変更する際の、位置ごとの押圧力の分布を示したグラフである。
【図12】図9、10のインクジェット記録装置において、測色の行われる際に用いられる記録画像について示した平面図である。
【図13】図9、10のインクジェット記録装置において、測色の行われる際の制御フローについて示したフローチャートである。
【図14】本発明の第3実施形態に係るインクジェット記録装置において、測色が行われる際の押圧力を、記録媒体の種類ごとに変更する際の、記録媒体の押圧力の分布を示したグラフである。
【図15】図14のインクジェット記録装置において、測色の行われる際に用いられる記録画像について示した平面図である。
【図16】図14のインクジェット記録装置において、測色の行われる際の制御フローについて示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置100について説明する。図1は、本発明に係る測色装置を備えるインクジェット記録装置100の構成を示す断面図である。本実施形態のインクジェット記録装置100は、記録ヘッド3からインク滴を記録媒体に吐出して記録画像を記録する。本実施形態のインクジェット記録装置100は、ロール状に巻きつけられた記録媒体1に記録を行う。インクジェット記録装置100は、ロール紙を搬送経路に沿って搬送可能な搬送ローラ2を有している。
【0012】
本実施形態の記録ヘッド3内部のインク流路には、発熱素子(電気熱変換体)が備えられている。発熱素子に通電させ、その発熱素子から熱エネルギーを発生させることにより、インク流路内のインクが加熱されて膜沸騰により発泡し、そのときの発泡エネルギーによって吐出口からインク滴が吐出される。記録ヘッド3には、記録媒体に対向する面に、記録媒体の搬送される方向である副走査方向に沿って不図示の複数の吐出口列が形成され、記録ヘッド3は吐出口列ごとに異なる色のインクを吐出可能である。
【0013】
本実施形態のインクジェット記録装置100はシリアルスキャン方式の記録装置であり、キャリッジ4が不図示のガイドレールに沿って摺動可能に支持され、主走査方向に往復動される。そして、搬送されてきた記録媒体1に向け、キャリッジ4を往復動させながら記録ヘッド3よりインクを吐出することにより、記録媒体1上に記録画像や測色用テストパターンが記録される。キャリッジ4の往動または復動によるスキャンにより1ライン分の画像を記録媒体1に記録すると、記録媒体1を搬送ローラ対2により搬送方向に所定ピッチだけ送り、キャリッジ4を再び移動させながら次のラインの画像の記録を行う。これを繰り返すことで、記録媒体の全体に画像が記録される。記録の行われた記録媒体は、排紙ガイド6上に搬送される。
【0014】
インクジェット記録装置100における記録ヘッド3に対向する位置には、プラテン5が配置されている。また、キャリッジ4には、各色のインクを吐出可能なように、各色に対応したインクタンクが配置されている。記録ヘッド3には各色の吐出口列に対して各々の供給チューブが接続されており、供給チューブを介してインクタンクより各色のインクがそれぞれの記録ヘッド3に供給されるようになっている。
【0015】
なお、本実施形態の記録ヘッドは発熱素子により膜沸騰を発生させて発泡させインク滴を吐出する方式としたが、本発明はこれに限定されない。圧電素子を変形させ、これによって記録ヘッド内部の液体を吐出する形式の記録ヘッドが記録装置に適用されても良く、また、他の形式の記録ヘッドが本発明の記録装置に適用されても良い。また、記録装置はインクジェット記録装置でなくとも良く、記録媒体を搬送しつつ記録媒体に記録が行われる記録装置であれば熱転写方式等、他の形式の記録装置であっても良い。
【0016】
また、本実施形態のインクジェット記録装置は、記録ヘッドの主走査方向の移動と、記録媒体の副走査方向の搬送と、を伴って画像を記録するいわゆるシリアルスキャンタイプの記録装置である。しかしながら、本発明は記録媒体の幅方向の全域に亘って延在する記録ヘッドを用いるフルラインタイプの記録装置にも適用されても良い。
【0017】
本実施形態のインクジェット記録装置100は、測色を行う測色装置200を備えており、記録ヘッド3から吐出されるインクによって記録される記録画像を読み取って、画像を記録する際の色校正を行うことが可能である。測色装置200による測色が行われる際には、予め測色の行われる前に記録ヘッド3によって記録媒体に測色用のテストパターンの記録が行われる。そして、測色装置200は、記録されたテストパターンを読み取り、それによって取得される測色データ用いて色校正を行うことで測色が行われる。
【0018】
測色装置200は、記録媒体が測色装置200における測色の行われる位置に搬送されたときに記録媒体を支持する測色基準面24(支持面)を有している。また、測色装置200は、支持面に支持された記録媒体を押圧し、測色基準面24に押さえつける押圧部材20を有している。また、測色装置200は、記録媒体に記録された記録画像を読み取り、色校正のためのデータを取得する測色センサ36を有している。測色装置200は、押圧部材20によって測色基準面24に押さえつけられた記録媒体に記録されているテストパターン等の記録画像を測色センサ36によって読み取って、色校正のためのデータを取得することが可能である。
【0019】
以下、インクジェットプリンタ記録装置本体100に備えられた測色装置200の構成について図1〜5を用いて説明する。
【0020】
図2は、測色装置200における測色キャリッジ34及び押圧部材20が記録媒体から退避した位置に移動した退避姿勢を示す斜視図である。図3は、測色装置200における測色キャリッジ34及び押圧部材20が記録媒体に近接した位置にある押圧姿勢の状態を示す斜視図である。図4は、測色装置200の内部構成を示すために一部を破断して示した斜視図である。図5は、測色キャリッジ34を記録媒体側から見た平面図である。
【0021】
図4に示されるように、測色装置200は、排紙ガイド6に対応する位置に配置されており、テストパターンあるいは記録画像の記録の行われた記録媒体が排紙ガイド6に搬送されたところで測色を行うことが可能なように測色装置200が構成されている。測色装置200は、測色キャリッジ34と、押圧部材20とを有するように構成されている。本実施形態では、測色キャリッジ34と押圧部材20とが昇降ユニット50として構成されている。昇降ユニット50は回転軸51を中心にして、不図示の昇降駆動機構により駆動されることで、記録媒体1に対して近接・離間する方向へ移動することが可能である。これにより、測色キャリッジ34及び押圧部材20が、押圧姿勢と退避姿勢とを切り替えることができる。
【0022】
図2に示されるように、昇降ユニット50が退避姿勢に移動すると、押圧部材20は記録媒体1から離間して記録媒体1の上方へ退避するため、昇降ユニット50が搬送の邪魔にならずに記録媒体1を搬送することができる。また、図3に示されるように、昇降ユニット50が押圧姿勢に移動すると、押圧部材20は記録媒体1を上方から押さえて記録媒体1の測色基準面24からの浮きを抑制することができる。昇降ユニット50には、記録媒体1の搬送経路よりも外側の両端部に突き当て部52が形成されており、排紙ガイド6には押圧姿勢時に突き当て部52と対向する位置に支持部53が形成されている。昇降ユニット50が押圧姿勢の位置に移動すると、突き当て部52が支持部53に接触支持されることで、昇降ユニット50と排紙ガイド6との間の位置関係が決まる。
【0023】
図4に示されるように、測色キャリッジ34は、測色センサ36を搭載する測色センサホルダ32とホルダガイド(キャリッジ)33とを有するように構成されている。測色センサ36は、測色センサホルダ32に取り付けられて保持されている。測色センサ36は、記録媒体上に記録されているテストパターン等の記録画像を読み取る。そして、読み取ったテストパターン等の記録画像から、測色のために使用される測色データが取得される。
【0024】
測色センサホルダ32にはキャリッジベルト31が取り付けられている。不図示のキャリッジ駆動機構によりキャリッジベルト31が駆動されて移動することにより、測色センサホルダ32がキャリッジベルト31によって引っ張られ、測色センサホルダ32が移動することができる。また、ホルダガイド33がキャリッジガイドレール30によって案内・支持されており、測色キャリッジ34は、ガイドレール30の延びる主走査方向に走査することができる。測色キャリッジ34と記録媒体1の間の位置には、押圧部材20が記録媒体1の幅方向に延在するように配置されている。
【0025】
押圧部材20は、記録媒体を押圧した際に、記録媒体1の表面に当接する押圧板21と、押圧板21を支持する押圧支持部材22とを有するように構成されている。押圧部材20は、押圧ガイド25により、昇降ユニット50に対し、記録媒体に近接・離間する方向へ、相対的に移動可能に保持されている。また、押圧板21が薄い板状のシート材によって形成されているので、押圧部材20によって記録媒体を押圧する際には、押圧板21が撓むことで押圧部材20が測色基準面24に追従して記録媒体を均一に押圧することができる。
【0026】
押圧支持部材22は、上位置揺動規制の機能を兼ね備えており、押圧ガイド25に接触することで押圧部材20における記録媒体から離間する方向への移動を規制する。押圧支持部材22は複数の下位置揺動規制部23を備えており、押圧ガイド25に接触することで押圧部材20の記録媒体へ近接する方向への移動を規制する。また、下位置揺動規制部23は、薄い板状の押圧板21が記録媒体へ近接する方向へ撓みすぎるのを抑制している。また、押圧板21には、測色時に測色センサ読み取り部37のほぼ真下となる位置に、スリット26が形成されている。
【0027】
図5に示されるように、測色センサホルダ32における記録媒体に対向する位置には、押圧部材20に当接可能な車輪35が回転可能に軸支されて測色センサホルダ32に設けられている。測色キャリッジ34が押圧姿勢の状態になったときには、押圧部材20が記録媒体を押圧するように測色キャリッジ34が構成されている。また、押圧部材20が記録媒体に当接する位置に配置されたときには、車輪35が押圧板21上に置かれた状態になる。その状態で測色キャリッジ34が不図示のキャリッジ駆動機構により動作されると、車輪35が押圧板21の表面上に乗った状態で転がり、測色キャリッジ34が走査を行う。すなわち、測色センサホルダ32は、移動可能なホルダガイド33に搭載され、車輪35が押圧部材20に当接した状態でホルダガイド33が移動する際には、車輪35が押圧部材20に当接しながら回転して移動する。測色センサホルダ32は、車輪35を介して押圧部材20を押圧することが可能なように構成されている。
【0028】
また、測色センサホルダ32は、ホルダガイド33に対して、測色基準面24に支持された記録媒体に近接・離間する方向に相対的に移動可能である。測色センサホルダ32とホルダガイド33との間には、押圧バネ(付勢手段)38が配置されている。測色センサホルダ32は、押圧バネ38によって、ホルダガイド33に対し測色基準面24に向かう方向に付勢されている。そして、測色センサホルダ32の車輪35が押圧部材20に当接した状態で測色センサホルダ32が測色基準面24に向かう方向に付勢されることで、押圧部材20が、測色基準面24に向かう方向に付勢されている。
【0029】
図4に示されるように、本実施形態では、測色センサホルダ32には、外側に突出するように、バネ支持部63が形成されている。また、ホルダガイド33には、バネ支持部63と同様に外側に突出するようにバネ掛け部62が形成されている。また、バネ支持部63を挟み、バネ掛け部62とは反対側には、図5に示されるように、測色センサホルダ32及びホルダガイド33を含む測色キャリッジ34を貫通するようにバネ加圧軸(付勢調節手段)61が配置されている。バネ加圧軸61は、昇降ユニット50の両測板の間に、それぞれの両側板に接続されるように、測色キャリッジ34の走査する範囲に亘って延びて取り付けられている。バネ加圧軸61には、バネ掛け部62に掛けられた押圧バネ38の一端とは反対側の、押圧バネ38における他端が掛けられている。また、測色センサホルダ32及びホルダガイド33にはスリット66が形成されており、バネ加圧軸61は、記録媒体に近接・離間する方向にスリット66に沿って移動可能である。スリット66が形成されているので、測色センサホルダ32によるホルダガイド33に対する往復動作において、バネ加圧軸61と測色キャリッジ34との間で、それぞれの移動が妨げられることが抑えられる。また、ホルダガイド33には、スリット65が形成されている。測色センサホルダ32に形成されたバネ支持部63は、測色センサホルダ32がホルダガイド33に搭載されたときに、ホルダガイド33のスリット65内に位置するように構成されている。バネ支持部63は、スリット65の延びる方向に沿って移動可能である。従って、バネ支持部63の形成された測色センサホルダ32は、ホルダガイド33に対して、スリット65の延びる方向に沿って移動可能である。
【0030】
本実施形態では、押圧バネ38は、バネ支持部63に巻かれている。そして、バネ加圧軸61及びバネ掛け部62のそれぞれは、バネ支持部63に巻かれた押圧バネ38の両端部で、それぞれ押圧バネ38の端部付近の領域を、記録媒体よりも遠い側の位置から記録媒体へ近付く方向に押さえつけている。これにより、押圧バネ38の両端部で、押圧バネ38における端部付近の領域が記録媒体の方へ押さえつけられる。また、押圧バネ38における端部付近の領域が記録媒体の方へ押さえつけられると、押圧バネ38におけるバネ支持部63に巻かれている部分で、バネ支持部63が、記録媒体から遠い側の部分から記録媒体の方へ押さえられる。このときの押圧バネ38による付勢力によってバネ支持部63が記録媒体の方へ押されて付勢され、結果的に測色センサホルダ32が、ホルダガイド33に対して記録媒体の方へ付勢されることになる。
【0031】
このとき、記録媒体が押圧部材20によって測色基準面24に向けて押圧されると共に、測色センサホルダ32が、押圧バネ38によって記録媒体の方へ付勢された状態で、押圧部材20を測色基準面24に向けて押圧する。記録媒体は、押圧部材20を介して付勢された測色センサホルダ32によって押圧されることで記録媒体1が測色基準面24に押さえつけられる。結果的に、押圧バネ38が測色センサホルダ32を介して押圧部材20を付勢している。このように、測色装置200は、押圧部材20を測色基準面24に向かう方向に付勢する付勢手段としての押圧バネ38を有している。
【0032】
本実施形態では、押圧バネ38は、ねじりコイルバネが採用されている。上述のように、押圧バネ38における中央のコイル部が、測色センサホルダ32の側面に設けられたバネ支持部63で支持されている。また、押圧バネ38における両端部付近で、押圧バネ38がホルダガイド33側面に設けられたバネ掛け部62と、バネ加圧軸61に掛けられている。すなわち、ねじりコイルバネとしての押圧バネ38が、測色センサホルダ32から外側に突出するように形成されたバネ支持部63に巻かれて配置され、押圧バネ38の一端がホルダガイド33から外側に突出するように形成されたバネ掛け部62に掛けられている。そして、押圧バネ38の他端の位置を移動させて位置を調節することで、ねじりコイルバネとしての捻じられる角度が調節される。これによって、押圧バネ38による押圧部材への付勢を調節している。
【0033】
本実施形態では、測色キャリッジ34において、部品同士が摺動する部分については滑り易い材料が用いられている。測色キャリッジ34の往復動作に伴い、押圧バネ38とバネ加圧軸61との間で部品同士が摺動することになるが、それぞれ滑り易い材料によって形成されているので、摺動時の異音、振動、摩耗が防がれる。本実施形態では、バネ加圧軸61は、比較的剛性の高い材料によって形成されている。従って、バネ加圧軸61が押圧バネ38から力を受けたとしても、バネ加圧軸61が撓んでバネ加圧軸61が変形することが抑えられ、押圧バネ38によって測色センサホルダ32が付勢される力の低下が抑えられる。また、バネ加圧軸61が押圧バネ38により上側の方へ反力を受けたとしても、バネ加圧軸61が上側に浮かないように、押圧バネ38の最大バネ力よりも大きなバネ力(不図示)によってバネ加圧軸61が下方向に押さえ込まれている。
【0034】
本実施形態の測色キャリッジ34は、バネ加圧軸61の位置を変えることで、記録媒体1への押圧力を変更することができる。上述したように、バネ加圧軸61は、スリット66に沿って記録媒体に対して近接・離間する方向に移動可能である。
【0035】
例えば、バネ加圧軸61をスリット66に沿って記録媒体に近接させる下方に移動させる場合について説明する。バネ加圧軸61を記録媒体の方へ移動させた場合、バネ加圧軸61の移動に伴い押圧バネ38における加圧軸61と当接した部分も同様に記録媒体側へ移動させられる。加圧軸61が記録媒体側へ移動すると、押圧バネ38の一端がバネ掛け部62に固定された状態で押圧バネ38の他端が記録媒体側へ移動させられるので、押圧バネ38がさらに捻じられる。本実施形態では、押圧バネ38における加圧軸61に当接した側の端部が、図4のA方向(バネ支持部63を中心とした時計回り)に移動する。押圧バネ38が捻じられた結果、押圧バネ38によって付勢される力がさらに大きくなり、より強い力によってバネ支持部63が記録媒体側へ押され、より強い力によって測色センサホルダ32が記録媒体の方へ付勢される。その結果、測色キャリッジ34が押圧姿勢の状態となったときに、押圧部材20による押圧力と共に、測色センサホルダ32の車輪35が押圧板21を介して押圧する領域において、押圧バネ38による比較的強い付勢力によって記録媒体が押圧される。すなわち、記録媒体における車輪35と当接する領域において、測色キャリッジ34による比較的強い押圧力によって記録媒体が押圧される。
【0036】
その一方、押圧バネ38が図4のB方向(バネ支持部63を中心とした反時計回り)に移動したときには、押圧バネ38による捻じりが戻されて、測色センサホルダ32及び車輪35を記録媒体側へ付勢する力は弱まる。すなわち、加圧軸61が記録媒体とは逆側へ移動すると、押圧バネ38の一端がバネ掛け部62に固定された状態で押圧バネ38の他端が記録媒体とは逆側へ移動させられるので、押圧バネ38の捻じりが戻される。押圧バネ38への捻じりが戻された結果、押圧バネ38によって付勢される力が小さくなり、バネ支持部63が記録媒体側へ押される力も小さくなる。その結果、測色キャリッジ34が押圧姿勢の状態となったときに、測色センサホルダ32の車輪35が押圧板21を介して押圧する領域において、押圧バネ38による付勢力による記録媒体を押圧する力が弱くなる。すなわち、記録媒体における車輪35と当接する領域において、測色キャリッジ34による記録媒体への押圧力が弱くなる。加圧軸61が記録媒体とは逆側へ移動した結果、記録媒体における車輪35と当接する領域において、測色キャリッジ34による記録媒体への押圧力を弱く設定したときの記録媒体の位置ごとの押圧力の分布について図8に示す。図8に示されるように、バネ加圧軸61を移動させることで、記録媒体における車輪35と当接する領域における記録媒体への押圧力を変えることができる。
【0037】
このように、測色装置200は、押圧バネ38による押圧部材20の付勢を調節するために、バネ加圧軸61を有している。そして、バネ加圧軸61が移動することで、押圧部材20が記録媒体を押圧するときに、バネ加圧軸61が押圧部材20による測色基準面24に向かう方向への付勢を調節している。これにより、押圧部材20によって記録媒体を測色基準面24に押さえつける押圧力を調節可能にしている。
【0038】
一般的な記録媒体においては、大きなカールや反りは生じ難く、比較的小さな押圧力によって記録媒体に浮きが生じないように記録媒体を押さえつけることができる。しかしながら、記録媒体の特性によっては、比較的大きな反りの生じ易い記録媒体も存在する。そのような大きな反りの生じ易い記録媒体に対して測色を行う場合に、バネ加圧軸61を記録媒体側へ移動させることで比較的強い押圧力によって記録媒体を押圧してしまうと、測色の際に測色センサ36と記録媒体とが接触してしまう可能性がある。その場合には、測色センサ36と記録媒体との間の接触によって、記録媒体に傷をつけてしまう可能性がある。特に、測色センサ36によって読み取られるテストパターン等の記録画像に傷がついてしまった場合には、測色の精度が低下してしまう可能性がある。従って、大きな反りが生じ易く、強い押圧力によって押圧した場合に記録媒体に傷がついてしまうような場合には、図8に示されるように記録媒体の両端で押圧が大、中央付近で押圧が小となるように押圧を調節することができる。このように中央部付近での押圧力を比較的小さくすることで、測色の際に記録媒体における測色キャリッジ34の中央部に対応した位置で傷がついてしまうことを抑えることができる。特に、テストパターン等の記録画像に傷を付けてしまうことで、測色の際の画像の読み取りの精度が低下してしまうことを抑えることができる。
【0039】
ここで、測色キャリッジ34における中央部付近に対応した位置について押圧力を比較的弱くしたとしても、測色キャリッジ34の両端付近での押圧では、押圧力が比較的高いままである。そのため、従来同様に記録領域があれば、測色キャリッジ34の両端部付近に対応した位置に測色を行った場合に、そこで傷が付く可能性がある。ところが、一般的に測色の行われる領域の外側では、測色を行うためのテストパターン等の画像は記録されてなく、測色キャリッジの両端部が通過する領域は余白で占められている。従って、測色を行う上では、そのことによる影響は小さい。
【0040】
次に、測色装置200の動作について図6、7を用いて説明する。図6は退避姿勢時の測色装置200の内部構成を示すために一部を破断した断面図であり、図7は押圧姿勢時の測色装置200の内部構成を示す断面図である。
【0041】
まず、記録ヘッド3により測色用テストパターンが記録されると、不図示の昇降駆動モータを動作させて、昇降ユニット50を図6に示す退避姿勢に移動させ、突き当て部52と支持部53とが離間した状態にする。このとき、押圧部材20は、移動可能な範囲のうちの最下位置(最も記録媒体に近接した位置)にあり、下位置揺動規制部23が押圧ガイド25に接触して押圧部材20の位置が保持されている。また、測色キャリッジ34は押圧バネ38によって付勢されて移動可能な範囲のうちの最下位置にある。押圧部材20の移動可能な範囲は、測色キャリッジ34の移動可能な範囲よりも大きく構成されているため、このときには押圧板21と車輪35とが離間した状態となる。このように、測色装置200による退避姿勢時には、押圧板21は測色キャリッジ34からの押圧力を受けることがないため、押圧板21は変形していない。測色装置200による退避姿勢では、押圧部材20は記録媒体1の上方に退避しているため、記録媒体1を搬送することができる。このとき、記録媒体は、記録された測色用テストパターンが押圧板21のスリット26に対応した位置に到達するまで、所定量だけ搬送される。記録媒体1には押圧力が働いていないため、記録媒体1に反りが生じたときなどは、そこで記録媒体1に浮きが発生した状態となる。
【0042】
次に、記録された測色用テストパターンが測色装置200における押圧板21のスリット26に対応した位置に到達するまで記録媒体1が搬送されると、不図示の昇降駆動モータを動作させて、昇降ユニット50を押圧姿勢となるように移動させる。昇降ユニット50が図7に示されるように押圧姿勢に移動すると、突き当て部52と支持部53とが当接した状態となる。これにより、昇降ユニット50と排紙ガイド6の位置関係が決まる。このとき、測色装置200に搬送された記録媒体が強い逆反りのない記録媒体である場合には、押圧部材20によって記録媒体1の浮きを押さえることができる。このとき、押圧部材20の上位置を規制する押圧支持部材22と下位置を規制する下位置揺動規制部23は、押圧ガイド25から離間している。そのため、押圧部材20の揺動により、測色基準面24に追従して記録媒体1の浮きを押さえることができる。ここで、測色キャリッジ34は不図示のキャリッジ駆動機構により、キャリッジガイドレール30に沿って記録媒体1の幅方向へ走査して測色を行う。測色キャリッジ34は、押圧バネ38による付勢によって押圧板21を付勢させ、記録媒体1を測色基準面24に密着させることができる。また、測色キャリッジ34は、車輪35が押圧板21の表面上に接触し、スリット26の近傍を走査する。これにより、測色センサ読み取り部37の近傍の記録媒体1を押さえることができる。
【0043】
また、比較的強い反りのある記録媒体1では、押圧部材20だけでは浮きを押さえることができない可能性がある。このとき、押圧板21における測色キャリッジ34が乗っていない部分と乗っている部分との間で記録媒体1から受ける反力に差が生じ、これによって押圧板21の変位が、場所ごとに異なり、押圧板21に撓みが発生する。押圧板21における測色キャリッジ34の乗っていない部分では、押圧支持部材22は、押圧ガイド25に当接する移動可能な範囲の最上位置(記録媒体から最も離間した位置)まで持ち上げられる。つまり、その部分では、記録媒体1が測色基準面24から浮いている状態となる。また、押圧板21における測色キャリッジ34の乗っている部分では、押圧バネ38によって押圧板21が記録媒体に向けて付勢された状態で、押圧支持部材22と下位置揺動規制部23とが押圧ガイド25から離間している。このとき、押圧支持部材22と下位置揺動規制部23とは、移動可能な範囲のうちの最上位置に位置しているわけではない。つまり、その部分では、記録媒体1は、測色基準面24から浮いていない状態である。このような場合には、押圧板21に測色キャリッジ34が乗っている部分において、車輪35を介しての測色センサホルダ32による押圧力を弱めるように、バネ加圧軸61と押圧バネ38で押圧力を調節する。このように車輪35を介した測色センサホルダ32による押圧力が調節されるので、車輪35と当接する測色キャリッジが通過する範囲における中央付近では押圧が低めに設定され、記録媒体1の表面に傷が付くことが抑制される。一方、測色の行われる領域の両端部付近では押圧が高いままの状態なので、記録媒体1による測色基準面24からの全体的な浮きが押さえられる。測色キャリッジ34の車輪35が押圧板21の表面上を転がることで、記録媒体1に浮きが発生している部分においても、測色センサ36の測色センサ読み取り部37が記録媒体の表面に沿って測色を行うことができる。
【0044】
測色用テストパターンの一列分の測色動作が終了すると、不図示の昇降駆動モータを動作させて、昇降ユニット50を、再び図6に示す退避姿勢に移動させる。次に、測色する測色用テストパターンがまだある場合には、以上の動作を再び繰り返し行い、全てのテストパターンについての測色動作を行うと測色動作が完了する。
【0045】
上記説明したように、記録媒体に比較的強い反りが生じ易い場合には、測色の行われる領域の両端で押圧力が高く、中央付近で押圧力が低めに設定されて押圧が行われる。記録媒体に反りが生じ難い場合には、十分な押圧力によって記録媒体の押圧が行われる。このように押圧を調節することにより、記録媒体に応じて適した押圧力によって押圧を行うことができるので、十分な押圧力によって押圧を行うことができると共に、記録媒体における記録面に傷が発生することを抑えることができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明を実施するための第2実施形態について説明する。上記の第1実施形態と同様の構成の部分については説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。第2実施形態では、画像情報に応じて、押圧力を変える構成及び動作について説明する。基本的な機器構成、及び動作は、上記第1実施形態と同様である。
【0047】
測色装置200は、記録媒体1に対し、バネ加圧軸61を上下に移動させることによって記録媒体への押圧力を変更させる構成である。本実施形態では、主走査方向における昇降ユニット20の両端部に設けられた偏芯カム64を、バネ加圧軸61に当接させた状態で回転させることで、バネ加圧軸61を上下に移動させる。このときのバネ加圧軸61の上下の移動に伴い、押圧バネ38の捻じり量が変更されて押圧バネ38における付勢の程度を変更する。これにより、車輪35を介して測色センサホルダ32から記録媒体を押圧する押圧量を変更させる。
【0048】
本実施形態では、押圧量の変更は、バネ加圧軸61に当接した偏芯カムの角度を変更することで行われる。本実施形態では、測色装置200は、バネ加圧軸61に当接する偏芯カム64を有している。図9、図10には、バネ加圧軸61の主走査方向における両端部付近に設けられた偏芯カム64によってバネ加圧軸61の位置を変更させている際の、偏芯カム64及びバネ加圧軸61の動作について示した断面図が示されている。図9は、偏芯カム64が回転し、バネ加圧軸61を記録媒体に近接した位置に移動させることで、押圧バネ38にさらに捻じりを加え押圧バネ38による付勢の程度を大きくした状態を示している。このように、偏芯カム64がバネ加圧軸61に当接した状態で回転することでバネ加圧軸61が移動して、押圧バネ38掛けられた端部の位置を移動させて付勢の程度を調節している。また、図10は、偏芯カム64が回転し、バネ加圧軸61を記録媒体から離間した位置に移動させることで、押圧バネ38の捻じりを部分的に戻して緩ませ、押圧バネ38による付勢の程度を小さくした状態を示している。偏芯カム64は、測色キャリッジ34が走査する移動範囲の外部に配置されている。このように偏芯カム64は測色キャリッジ34の移動範囲外の昇降ユニット50の測板付近に設けられているので、測色キャリッジ34及び押圧バネ38に接触することはない。従って、偏芯カム64がどんな姿勢をとったとしても測色キャリッジ34による走査には影響は及ばない。
【0049】
図11は、測色キャリッジ34の移動に伴い、変化する押圧部材20による押圧力の関係図であり、図12に示されるように記録媒体1の中央部に実画像がある場合の関係図を示している。図12は、測色用テストパターンを含んだ測色パターンの記録例を示す記録媒体の平面図である。図13は、図12の測色用テストパターンを含んだ測色パターンを測色する際のフローチャートである。
【0050】
次に、測色に用いられる記録画像の一例として、中央部に実画像41が記録され、その周辺にキャリブレーションパターン(テストパターン)42が配置された記録画像40に対し、測色を行う動作について、図12、13を用いて説明する。
【0051】
図12に示す測色用の記録画像40には、テストパターン42と、色校正前後の実画像41とが記録されている。記録画像40においては、ユーザーが任意にテストパターン42と実画像41とのレイアウトを決定できる。また、昇降ユニット50は、測色のために行われている1ラインに対する走査の途中であっても、測色キャリッジ34が押圧姿勢と退避姿勢とを切り替えることができる。また、測色キャリッジ34は、テストパターン42における列方向のどの位置にあっても押圧姿勢と退避姿勢を切り替えることができる。そのため、測色を行う際には測色キャリッジをテストパターン42上のみに走査させることで測色にかかる時間を短縮化することができる。このように、測色を行うに際して、テストパターン42のレイアウトに応じてスループットを考慮した適切なシーケンスを実施することができる。
【0052】
テストパターン42は、記録媒体1の搬送方向Dにおいて記録媒体1の先端側1、2列目で、記録媒体の幅方向の略全域に亘って記録されている。また、搬送方向の先端から3〜6列目では、幅方向のB側とC側の端部に近い領域にテストパターン42が記録され、中央部に実画像41が記録されている。
【0053】
このようなレイアウトの記録画像40を記録媒体の先端のB側から測色し始める場合の具体的なシーケンスは以下のようになる。
【0054】
まず、記録媒体の搬送方向の先端から1列目のテストパターンについて図12に示されるB側からC側の方向へ、測色キャリッジを走査させながら、測色を行う。具体的には、測色ユニット50を押圧姿勢に移動(S011)させて、測色キャリッジ34の走査を開始させる(S021)。そのときの走査領域が、実画像41の領域でなく、テストパターン42の領域(S031)である場合には、偏芯カム64を回転させ、バネ加圧軸61を図9に示される位置に配置させて、押圧板21による押圧力を『大』(S041)に設定する。この状態では、押圧力が『大』に設定されているため、多少、記録媒体1に反りが生じていても、強い押圧力によって反りを押さえ込んで、用紙浮きがない状態で測色を開始できる(S051)。
【0055】
次に、BからCの領域内の測色が完了したか(S061)を判断する。未完了であれば、S021に戻り、1列目の残りのテストパターン42について順次測色を行う(S021、S031、S041、S051、S061)。S061にて、1列目の測色が完了したと判断されれば、測色ユニット50を退避姿勢に移動(S071)した後、2列目のテストパターン42が測色装置200の測色領域に到達するまで記録媒体1を搬送(S081)させる。ここで、記録媒体1内における2列目の全テストパターン42が測色完了したか、判断(S091)される。測色が未完了であれば、S011に戻り、1列目と同様に、測色を進める事になる。
【0056】
搬送方向の先端から3列目以降のテストパターン42については、中央に実画像41が記録され、実画像41を両側から挟むように実画像41の外側にテストパターン42が記録されている。3列目以降のテストパターン42についての測色は、B側のテストパターン42の領域では、1列目、2列目と同様の手順で行われる。B側の測色が行われ、測色キャリッジ34が実画像41に到達すると、S031にて、測色キャリッジ34が、テストパターン領域でなく、実画像領域にあると判断される。測色キャリッジ34が実画像領域にあると判断されれば、偏芯カム64を回転させてバネ加圧軸61を図10に示される位置に配置させ、押圧板21の押圧を『小』(S042)に設定する。
【0057】
この後は、記録面と接触する押圧板による押圧が『小』に設定されていることで接触によって発生する傷を抑えながら、測色キャリッジ34が実画像領域の上を通過する。実画像領域を走査する間は、フローはS061、S021、S031、S042を繰り返すことになる。測色キャリッジ34が実画像領域を抜けて通過し、C側のテストパターン領域に入る(S031)と、S041にて押圧が『大』に設定される。そして、B側でのテストパターンの測色と同様に、『大』に設定された押圧によってテストパターン42が測色される。その後の動作は、S061、S021、S031、S041、S051を繰り返すことで行われる。残りのテストパターン42の測色を終えると、3列目の測色が完了する。4列目以降については、3列目と同様に動作させることで、画像全域についての測色を行うことができる。
【0058】
以上説明したように、実画像とテストパターンとが混在する記録画像を測色する場合には、実画領域は押圧を『小』、テストパターン領域は押圧を『大』に設定して画像領域の種類に応じて測色が行われる。すなわち、記録媒体に記録され測色センサ36によって読み取られた記録画像が、測色のために記録されたテストパターンであるかどうかを判断する記録画像判断手段が配置される。そして、測色センサ36によって読み取られた記録画像がテストパターンである場合には、テストパターン以外である場合よりも、押圧力を強く設定する。このときの記録画像判断手段は、インクジェット記録装置100側に取り付けられている形式としても良いし、ユーザーが記録画像の形式を判断して入力することとしても良い。このように測色を行うことにより、実画像領域上を測色キャリッジ34が通過する際には画像面の傷を軽減できる。また、測色キャリッジ34がテストパターン領域を通過する際には、測色領域で記録媒体に浮きが生じることを抑えることができるので、正確な測色を行うことが可能となる。
【0059】
(第3実施形態)
次に、本発明を実施するための第3実施形態について説明する。上記の第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成の部分については説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。
【0060】
第3実施形態では、記録媒体情報及び環境情報に応じて、押圧力を変える点で上記第1実施形態及び第2実施形態とは異なる。基本的な機器構成、及び動作は、上記第1実施形態及び第2実施形態と同様である。以下、第3実施形態における測色動作について、説明する。
【0061】
図14には、記録媒体におけるB側からC側へ測色キャリッジ34が走査する際の押圧を示す図が示されており、剛度の高い記録媒体と剛度の低い記録媒体に対する押圧力が示されている。図15には、本実施形態に用いられる測色用テストパターンの例について示す平面図である。図16は、図15における測色用テストパターンを測色する際のフローチャートである。
【0062】
次に一例として、キャリブレーションパターン(テストパターン)が図15に示されるように配置された記録画像について測色する動作について、図15、16を用いて説明する。
【0063】
図15に示される記録画像40では、テストパターン42が、記録媒体1の搬送方向における先端付近の、B側の一部分のみに記録されている。このようなテストパターン42を記録媒体の先端のB側から測色し始める場合の具体的なシーケンスについて以下に示す。第三実施形態の測色装置200では、第2実施形態と同様に、偏芯カム64を回転駆動させ、バネ加圧軸61を移動させることで押圧力の変更を行うことができる。
【0064】
まず、これから測色を行う記録媒体1の紙種を判断(S211)する。記録媒体1がアート紙などの紙厚が厚く、剛度の高い用紙が設定されている場合には、偏芯カム64を回転させて、バネ加圧軸61を図9に示されるように記録媒体側の位置に移動させ、押圧板21の押圧を『大』(S221)に設定する。この状態で測色が行われると、押圧が十分に強いので、多少記録媒体が反っていたとしても、記録媒体に浮きが生じないように確実に押さえ込むことができる。
【0065】
一方、記録媒体1が薄紙の光沢紙などの剛度の小さな用紙の場合には、偏芯カム64を記録媒体から離間する方向に回転させることで、バネ加圧軸61を図10に示されるように記録媒体から遠い側の位置に移動させる。これにより、押圧板21による押圧が、『小』(S222)に設定される。この状態で、測色が行われると押圧が弱く設定されるので、傷つきやすい光沢紙に測色を行う際にキャリッジが記録媒体に接触したとしても、記録媒体に傷がつくことを抑えることができる。
【0066】
その後、測色ユニット50を押圧姿勢に移動(S231)させて、測色キャリッジ34の走査を開始(S241)させ、テストパターンについての測色(S251)を行う。S261にて、1列目のテストパターン全てに対しての測色が完了していなければ、S241に戻り、1列目のテストパターンについての測色が完了するまで、S241、S251、S261が繰り返し続く。S251にて、1列目のテストパターン全ての測色が完了していれば、フローはS271に進む。これ以降の動作については、第2実施形態と同様である。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、記録媒体の種類に応じて押圧を変更することができ、記録媒体の種類に応じて適した押圧力によって記録媒体を押圧することができる。すなわち、記録媒体の剛度を判断する剛度判断手段が配置され、押圧力が、記録媒体の剛度に応じて調節されることとしても良い。このとき、記録媒体の剛度は、インクジェット記録装置100側の装置によって検出されることとしても良いし、ユーザーが記録媒体の種類を入力する形式としても良い。例えば、記録媒体が厚手であって剛度が高い場合には押圧を『大』に設定し、記録媒体が薄手で剛度が低い場合には押圧を『小』に設定して測色を行う。これにより、厚手の剛度の高い記録媒体に対して測色が行われる際に、記録媒体に浮きが生じることを抑えることができ、測色の精度を向上させることができる。
【0068】
なお、上記実施形態では、記録媒体情報の中の1つとして記録媒体の種類が用いられ、記録媒体の種類に応じて記録媒体に対して押さえ込む押圧を変更させるものについて説明した。記録媒体情報としては、記録媒体の種類以外に、巻き径、用紙サイズ、紙厚等があり、これらの他の記録媒体情報に基づき、押圧条件を変えることで、押圧制御が行われてもよい。特に、巻き径は有用な情報で、巻き径が小さいほど、カール癖がひどく、用紙の曲率が小さくなり、記録媒体に浮きが発生しやすくなる。従って、巻き径の検出手段を測色装置あるいはインクジェット記録装置に設け、巻き径が『小』と判断されたら、押圧を大きくすることとしてもよい。これにより、記録媒体に浮きの生じ易い巻き径『小』のときに、記録媒体の浮きが生じることを抑えることができる。このように、ロール紙の巻かれた部分の巻き径を判断する巻き径判断手段が配置され、押圧力は、ロール紙の巻かれた部分の巻き径に応じて調節されることとしても良い。
【0069】
具体的には、巻き径が『小』である場合には、図9に示されるように偏芯カム64を回転駆動させることによって押圧を強くするように押圧を設定すれば良い。その一方、巻き径の検出手段で巻き径が『大』と判断された場合には、押圧を小さく設定することで、記録媒体に傷がつくことが抑えられる。
【0070】
また、剛度の高い記録媒体が用いられる場合には、偏芯カム64の駆動によって押圧を強くするように押圧を設定すれば良い。これに対し、剛度の小さな用紙の場合で説明すると、図10において、偏芯カム64を反時計方向に回すことによって、押圧の強さを若干下げることができ、記録媒体に傷がつくことが抑えられる。
【0071】
また、記録媒体の剛度は、まわりの湿度や温度の影響を大きく受ける。例えば、低湿度環境下では、記録媒体の水分が低下して、記録媒体自体が固くなる。高湿度環境下では、記録媒体が周囲の水分を吸収して、記録媒体が軟化する傾向にある。すなわち、インクジェット記録装置100が周囲の湿度を検出する湿度検出手段を有し、その湿度検出手段によって検出された湿度が低いほど、押圧力を強くすることとしても良い。また、記録媒体の剛度は、温度によっても変化する。従って、インクジェット記録装置100が周囲の温度を検出する温度検出手段を有し、温度検出手段によって検出された温度が低いほど、押圧力を強くすることとしても良い。このように、温度や湿度などの環境情報に応じて記録媒体の変化を見積もり、このときの記録媒体の剛度の変化に応じて、押圧を変化させることで、記録媒体の浮きや記録媒体に傷がつくことを抑えることができる。
【符号の説明】
【0072】
20 押圧部材
24 測色基準面
36 測色センサ
38 押圧バネ
61 バネ加圧軸
100 インクジェット記録装置
200 測色装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を支持する支持面と、支持面に支持された記録媒体を押圧し前記支持面に押さえつける押圧部材と、記録媒体に記録された記録画像を読み取り色校正のためのデータを取得する測色センサとを有し、前記押圧部材によって前記支持面に押さえつけられた記録媒体に記録されている記録画像を前記測色センサによって読み取って色校正のためのデータを取得する測色装置であって、
前記押圧部材を前記支持面に向かう方向に付勢する付勢手段と、
前記付勢手段による前記押圧部材の付勢を調節する付勢調節手段とを有することを特徴とする測色装置。
【請求項2】
前記押圧部材が記録媒体を押圧するときに、前記付勢調節手段が前記押圧部材による前記支持面に向かう方向への付勢を調節し、前記押圧部材によって記録媒体を前記支持面に押さえつける押圧力を調節可能であることを特徴とする請求項1に記載の測色装置。
【請求項3】
前記測色センサは、前記押圧部材に当接可能な車輪が回転可能に軸支されて前記車輪を介して前記押圧部材を押圧することが可能な測色センサホルダに取り付けられ、
前記測色センサホルダは、移動可能なキャリッジに搭載され、
前記車輪が前記押圧部材に当接した状態で前記キャリッジが移動する際には、前記車輪が前記押圧部材に当接しながら回転して移動することを特徴とする請求項1または2に記載の測色装置。
【請求項4】
前記測色センサホルダは、前記キャリッジに対して前記支持面に近接・離間する方向に相対的に移動可能であり、前記付勢手段によって、前記キャリッジに対し前記支持面に向かう方向に付勢され、
前記測色センサホルダが前記押圧部材に当接した状態で前記測色センサホルダが前記支持面に向かう方向に付勢されることで、前記押圧部材が、前記支持面に向かう方向に付勢されることを特徴とする請求項3に記載の測色装置。
【請求項5】
前記付勢手段は、ねじりコイルバネを有し、
前記ねじりコイルバネが前記測色センサホルダから外側に突出するように形成されたバネ支持部に巻かれて配置され、前記ねじりコイルバネの一端が前記キャリッジから外側に突出するように形成されたバネ掛け部に掛けられ、
前記付勢調節手段は、前記ねじりコイルバネの他端の位置を移動させて調節することで、前記ねじりコイルバネの捻じられる角度を調節し、前記ねじりコイルバネによる付勢を調節することを特徴とする請求項4に記載の測色装置。
【請求項6】
前記付勢調節手段は、前記ねじりコイルバネの前記他端が掛けられたバネ加圧軸及び前記バネ加圧軸に当接する偏芯カムを有しており、
前記偏芯カムが前記バネ加圧軸に当接した状態で回転することで前記バネ加圧軸が移動して、前記ねじりコイルバネの他端の位置を移動させて調節することを特徴とする請求項5に記載の測色装置。
【請求項7】
記録媒体の剛度を判断する剛度判断手段を有し、
前記押圧力は、記録媒体の剛度に応じて調節されることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の測色装置。
【請求項8】
記録媒体は、ロール状に巻かれたロール紙の一端が搬送されたものであり、
ロール紙の巻かれた部分の巻き径を判断する巻き径判断手段を有し、
前記押圧力は、ロール紙の巻かれた部分の巻き径に応じて調節されることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の測色装置。
【請求項9】
記録媒体に記録され前記測色センサによって読み取られた記録画像が、測色のために記録されたテストパターンであるかどうかを判断する記録画像判断手段を有し、
前記測色センサによって読み取られた記録画像がテストパターンである場合には、テストパターン以外である場合よりも、前記押圧力を強くすることを特徴とする請求項2から8のいずれか1項に記載の測色装置。
【請求項10】
周囲の湿度を検出する湿度検出手段を有し、
前記湿度検出手段によって検出された湿度が低いほど、前記押圧力を強くすることを特徴とする請求項2から9のいずれか1項に記載の測色装置。
【請求項11】
周囲の温度を検出する温度検出手段を有し、
前記温度検出手段によって検出された温度が低いほど、前記押圧力を強くすることを特徴とする請求項2から10のいずれか1項に記載の測色装置。
【請求項12】
記録媒体情報、画像情報、環境情報のいずれかの情報に応じて、あるいはこれらの情報の組み合わせに応じて、前記押圧力を調節することを特徴とする請求項2から11のいずれか1項に記載の測色装置。
【請求項13】
インクを吐出して記録媒体に記録画像を記録する記録ヘッドと、
記録媒体を支持する支持面と、支持面に支持された記録媒体を押圧し前記支持面に押さえつける押圧部材と、記録媒体に記録された記録画像を読み取り色校正のためのデータを取得する測色センサを有する測色装置とを有し、
前記記録ヘッドから吐出されるインクによって記録の行われた記録媒体を前記押圧部材によって前記支持面に押さえつけ、記録媒体に記録された記録画像を前記測色センサによって読み取って、色校正のためのデータを取得することが可能なインクジェット記録装置であって、
前記押圧部材を前記支持面に向かう方向に付勢する付勢手段と、
前記付勢手段による前記押圧部材の付勢を調節する付勢調節手段とを有することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−111785(P2013−111785A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257593(P2011−257593)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】