説明

湾曲ロック部材を備えた電気差込コネクタ

電気差込コネクタであって、第1のハウジング半部と第2のハウジング半部とから成り、第1のハウジング半部(2)は、それぞれ反対側に位置する2つのU字形の湾曲ロック部材(8)を備え、湾曲ロック部材(8)は、それぞれ両側で支承ピン(12)に旋回可能に保持され、湾曲ロック部材(8)は、それぞれ両側で係止突部(9)を備え、係止突部(9)は、凹部(11)を備え、凹部(11)は、湾曲ロック部材(8)を閉鎖する際に、それぞれ第2のハウジング半部(3)のロックピン(13)に作用し、その際、両方のハウジング半部(2,3)が相互に押し合わされるようになっているものにおいて、第1のハウジング半部(2)は、少なくとも1つのブリッジ(4)を備え、ブリッジ(4)は、両方のハウジング半部(2,3)を組み合わせる際に、第2のハウジング半部(3)の、ブリッジ(4)のために設けられた凹部(6)に進入し、その際、ハウジング半部は、正確に嵌り合うように上下に位置し、湾曲ロック部材(8)は、側方のシールド(7)を備え、シールド(7)は、システム差込コネクタがロックされた状態で、第1のハウジング半部(2)の支承ピン(12)および第2のハウジング半部(3)のロックピン(13)をカバーし、各シールド(7)は、支承ピン収容部(22)とロックピン(13)との間に真っ直ぐな側面(17)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気差込コネクタであって、第1のハウジング半部と第2のハウジング半部とから成り、第1のハウジング半部は、それぞれ反対側に位置する2つのU字形の湾曲ロック部材を備え、湾曲ロック部材は、それぞれ両側で支承ピンに旋回可能に保持され、湾曲ロック部材は、それぞれ両側で係止突部を備え、係止突部は、凹部を備え、凹部は、湾曲ロック部材を閉鎖する際に、それぞれ第2のハウジング半部のロックピンに作用し、その際、両方のハウジング半部が相互に押し合わされるものに関する。
【0002】
湾曲ロック部材を備えた差込コネクタは、確実な電気コンタクトを保証するため、また差込コネクタハウジング半部の不意の抜け落ちを防止するために必要である。
【0003】
背景技術
電気差込コネクタでは、両方のハウジング半部の電気コンタクト要素の確実なコンタクトを保証するために、多くの場合、ハウジング半部は、いわゆる湾曲ロック部材を介して相互に押し合わされる。差込コネクタハウジングへの媒体たとえば塵埃または水分の侵入を防止するために、多くの場合、ハウジング半部の間にシールリングが設けられており、シールリングのシール作用は、湾曲ロック部材が支承ピンとロックピンとの間ひいてはハウジング半部の間に形成する力により保証される。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許19508605号明細書には、ハウジング半部を確実にロックするために湾曲ロック部材を備えた電気差込コネクタが例示されており、湾曲ロック部材には、ばね要素が組み込まれている。ばね要素は、力を各ロックピンに及ぼす。
【0005】
電気差込コネクタのハウジング半部がロック動作前に相互に正確に嵌り合うように上下に位置しない場合、各ハウジング半部の電気コンタクト要素は、垂直に上下に重なり合わない。これにより一方では差込コネクタのロック動作が困難になり、他方では生じる横方向力により電気コンタクト要素の摩耗が高まる。
【0006】
上述の差込コネクタにおいて、ハウジング半部が傾斜姿勢を占め、湾曲ロック部材がロックピンを介してガイドされる場合、湾曲ロック部材に組み込まれたばねは、片側で伸張し、瞬時にばね力を失うので、差込コネクタハウジング半部の確実なロックはもはや保証されない。
【0007】
発明の課題
本発明の課題は、電気コンタクト要素の摩耗の少ない差込と差込コネクタハウジング半部の確実なロックとを同時に保証する、湾曲ロック部材を備えた電気差込コネクタを提供することにある。
【0008】
この課題を解決するために、第1のハウジング半部は、少なくとも1つのブリッジを備え、ブリッジは、両方のハウジング半部が組み合わされた状態で、第2のハウジング半部の、ブリッジのために設けられた凹部に進入し、その際、ハウジング半部は、ロック前に正確に嵌り合うように上下に位置し、湾曲ロック部材は、側方のシールドを備え、シールドは、システム差込コネクタがロックされた状態で、第1のハウジング半部の支承ピンおよび第2のハウジング半部のロックピンをカバーし、各シールドは、支承ピン収容部とロックピンとの間に真っ直ぐな側面を備える。
【0009】
本発明の好適な態様は、従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明による電気差込コネクタは、2つのハウジング半部から成っており、ハウジング半部は、それぞれ反対側に位置するU字形の2つの湾曲ロック部材により相互にロック可能である。湾曲ロック部材の特徴は、湾曲ロック部材が、ロックに関与する構成要素たとえば支承ピン、係止突部および係止フックをロックされた状態でカバーする側方のシールドを備えることにある。これによりこれらの構成要素は、特に周辺環境の影響から保護される。
【0011】
さらにロックピンは、シールドの後方で、ロックピン用の凹部にガイドされ、これにより確実で均等なロック動作が実現される。
【0012】
ロック動作中に生じる横方向力による差込モジュールの負荷を回避するために、第1のハウジング半部は、差込方向に隆起する少なくとも1つのブリッジを備えており、ブリッジは、両方のハウジング半部を組み合わせる際に、第2のハウジング半部の、ブリッジのために設けられた凹部に進入するので、ハウジング半部は、正確に嵌り合うように上下に位置する。
【0013】
ブリッジは、第1のハウジング半部の差込方向に隆起して形成されていて、その際、第2のハウジング半部の凹部に導入する際に、安定性が保証される。このような安定性は、他の構成では、たとえば追加的なガイドピンの使用によってしか保証されない。
【0014】
これにより、差込コネクタハウジング半部がロック動作に際して常に相互に正確に方向付けされるように保証されている。
【0015】
電気差込コネクタを媒体たとえば塵埃および/または水分から保護するために、第1のハウジング半部は、環状に延びる(循環して延びる)カラーを備えており、カラーは、シールリングを収容するのに適切である。
【0016】
係止突部から支承ピン収容部まで、湾曲ロック部材のシールドは、真っ直ぐな側面を形成している。本発明の好適な態様では、それぞれ反対側に位置する湾曲ロック部材の側面は、ロックされた状態で、相互に平行に向けられる。
【0017】
好適には、第1のハウジング半部は、個々の差込モジュール用の収容領域を備えている。差込モジュールは、電気コンタクト要素を備えている。各収容領域には、種々の電気コンタクト要素を備えた様々な差込モジュールが挿入可能である。
【0018】
同一出願人のドイツ連邦共和国実用新案登録第202005020026号明細書は、差込モジュールに対する電気差込コンタクト用の保持フレームの装着に関するものである。差込モジュールに関する前掲文献の開示内容は、本願の開示内容に援用されるものとする。
【0019】
第1のハウジング半部の収容領域に差込モジュールを固定するために、係止突部が設けられており、係止突部は、これに適合する差込モジュールの凹部に係止可能である。
【0020】
第2のハウジング半部に差込モジュールを収容するために、保持枠が設けられており、保持枠は、同様に個別の差込モジュールとして構成された電気コンタクト要素を収容するのに適切である。
【0021】
第2のハウジング半部に保持枠を固定するために、係止突部が設けられており、係止突部は、第2のハウジング半部の、係止突部に適合する凹部に係止する。
【0022】
両方のハウジング半部を組み合わせる際に、差込モジュールの、それぞれ反対側に位置する電気コンタクト要素が相互に電気コンタクトされる。
【0023】
種々の差込モジュールを電気差込コネクタに装着できることにより、電気差込コネクタは、技術的に多様に使用可能である。
【0024】
本発明による差込コネクタの全ての構成要素は、プラスチックから製作可能である。特に好適な態様によれば、湾曲ロック部材は、差込コネクタハウジング半部とは別の材料たとえば金属から製作可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】電気差込コネクタの第1のハウジング半部を示す斜視図である。
【図2】電気差込コネクタの第2のハウジング半部を示す平面図である。
【図3】電気差込コネクタの湾曲ロック部材を示す斜視図である。
【図4】第2のハウジング半部の差込モジュール用の保持枠を示す斜視図である。
【図5】差し込まれた状態の電気差込コネクタを示す斜視図である。
【0026】
発明を実施するための形態
本発明の実施の形態を、図示の態様を用いて詳説する。
【0027】
図1には、本発明による電気差込コネクタ1の第1のハウジング半部2を斜視図で示している。第1のハウジング半部2は、略矩形のベース面を有しており、ベース面は、収容領域16を備えており、収容領域16に、図示していない差込モジュールが挿入可能であり、差込モジュールは、電気コンタクト要素を備えている。差込モジュールは、第1のハウジング半部2の差込領域を形成する。
【0028】
ハウジング半部2のベース面に孔28が形成されている。孔28は、特定の構成要素、たとえば機械ハウジングにハウジング半部2を固定(たとえばねじ止め)するのに適切である。
【0029】
図示の態様では、差込モジュールは、対向するレール23に沿って、ハウジング半部2の、差込モジュールのために設けられた収容領域16に挿入される。差込モジュール用の収容領域16は、たとえば図1および図2において破線で示している。差込モジュールは、収容領域16の係止フック19に係止可能である。
【0030】
図2には、電気差込コネクタ1の第2のハウジング半部3を示している。第2のハウジング半部3に差込モジュールを装着するために、個別の保持枠20が設けられており、保持枠20は、係止手段21により第2のハウジング半部に係止可能である。図4には、そのような保持枠20を示している。保持枠20は、第1のハウジング半部3と同様に差込モジュールを装着することができる。
【0031】
第1のハウジング半部2は、カラー18を備えており、カラー18にシールリング10が被せ嵌め可能であり、シールリング10は、組み付けられた完成した差込コネクタハウジング1を、周囲環境たとえば塵埃および湿気からシールする。
【0032】
第1のハウジング半部2は、2つの支承ピン12を備えており、支承ピン12は、湾曲ロック部材8の支承ピン収容部22(図3)に係合するので、湾曲ロック部材8は、回動可能に保持されている。
【0033】
図3には、そのような湾曲ロック部材8を示している。係止突部9および支承ピン収容部22は、側方のシールド7により覆われている。シールド7は、湾曲ロック部材8の側方部分に設けられた真っ直ぐな結合ラインもしくは真っ直ぐな側面17まで延在している。支承ピン収容部22は、湾曲ロック部材8の側方部分の壁厚さBよりも深く形成されているので、湾曲ロック部材8は、第1のハウジング半部2の支承ピン12から滑落することはない。第1のハウジング半部2は、両側で、湾曲ロック部材8の側方部分に対する凹部5を備えているので、湾曲ロック部材8は、矢印27の方向に旋回可能である。
【0034】
第1のハウジング半部2の側方の長手方向枠にブリッジ(突部)4が設けられており、ブリッジ4は、ハウジング半部2,3が組み合わされた状態で、第2のハウジング半部3の、ブリッジ4のために設けられた凹部としての収容部6に正確に嵌り合う(つまりぴったりと位置する)ように導入される。これにより、ハウジング半部がロック動作前に直接に上下に位置するように保証される。ハウジング半部2,3のブリッジ4および収容部6は、差込モジュールを差込ガイドする機能を有している。個々のハウジング半部の差込モジュールの電気コンタクト要素が相互に差し込まれる際に、ブリッジ4は、収容部6に係入する。これにより、対向する電気コンタクト要素が横方向力を吸収する必要がないように保証される。このような構成手段により、電気差込コネクタの摩耗が低減される。
【0035】
それぞれ反対側に位置する湾曲ロック部材8の相互に接近する方向(上向き)の旋回により、係止突部9は、第2のハウジング半部3のロックピン13を越えて、ロックピンが係止突部9の凹部11に至るまでガイドされる。凹部11は、側方の湾曲ロック部材部分の長手方向に延在している。
【0036】
図5において、ロックされた状態の電気差込コネクタ1が看取される。それぞれ反対側に位置する湾曲ロック部材の側面17は、ロックされた状態では平行に向き合う。湾曲ロック部材8の相互に離間する方向(下向き)の旋回により、湾曲ロック部材が開かれ、ハウジング半部2,3は、再び分離可能であり、差込モジュールは再び取り外し可能である。
【0037】
第2のハウジング半部3は、連結ハウジング24を備えており、連結ハウジング24は、ケーブル出口26を備えている。
【符号の説明】
【0038】
1 差込コネクタ、 2 第1のハウジング半部、 3 第2のハウジング半部、 4 ブリッジ、 5 凹部、 6 収容部、 7 シールド、 8 湾曲ロック部材、 9 係止突部、 10 シールリング、 11 凹部、 12 支承ピン、 13 ロックピン、 14 側壁、 16 差込モジュール用の収容部、 17 側面(シールド7)、 18 カラー、 19 係止フック、 20 保持枠、 21 係止手段、 22 支承ピン収容部、 23 レール、 24 連結ハウジング、 26 ケーブル出口、 27 旋回運動/矢印、 28 孔、 B 湾曲ロック部材8の壁厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気差込コネクタであって、第1のハウジング半部と第2のハウジング半部とから成り、該第1のハウジング半部(2)は、それぞれ反対側に位置する2つのU字形の湾曲ロック部材(8)を備え、該湾曲ロック部材(8)は、それぞれ両側で支承ピン(12)に旋回可能に保持され、該湾曲ロック部材(8)は、それぞれ両側で係止突部(9)を備え、該係止突部(9)は、凹部(11)を備え、該凹部(11)は、湾曲ロック部材(8)を閉鎖する際に、それぞれ第2のハウジング半部(3)のロックピン(13)に作用し、その際、両方のハウジング半部(2,3)が相互に押し合わされるようになっており、湾曲ロック部材(8)は、側方のシールド(7)を備え、該シールド(7)は、システム差込コネクタがロックされた状態で、第1のハウジング半部(2)の支承ピン(12)および第2のハウジング半部(3)のロックピン(13)をカバーし、各シールド(7)は、支承ピン収容部(22)とロックピン(13)との間に真っ直ぐな側面(17)を備えるものにおいて、
第1のハウジング半部(2)は、少なくとも1つのブリッジ(4)を備え、該ブリッジ(4)は、第1のハウジング半部の差込方向に隆起して形成されており、該ブリッジ(4)は、両方のハウジング半部(2,3)が組み合わされた状態で、第2のハウジング半部(3)の、ブリッジ(4)のために設けられた凹部(6)に進入し、その際、ハウジング半部は、正確に嵌り合うように上下に位置し、第1のハウジング半部(2)は、個別の差込モジュールとして構成された電気コンタクト要素のための収容領域(16)を備えることを特徴とする、電気差込コネクタ。
【請求項2】
それぞれ反対側に位置する湾曲ロック部材(8)のシールド(7)の側面(17)は、ロックされた状態で、相互に平行に向けられる、請求項1記載の電気差込コネクタ。
【請求項3】
電気差込モジュール用の収容領域(16)は、係止フック(19)を備え、該係止フック(19)は、差込モジュールに設けられた、該係止フック(19)に対応する凹部に係止可能である、請求項1記載の電気差込コネクタ。
【請求項4】
第1のハウジング半部(2)は、シールリング(10)を取り付けるのに適切な環状に延びるカラー(18)を備える、請求項1から3までのいずれか1項記載の電気差込コネクタ。
【請求項5】
第2のハウジング半部(3)に保持枠(20)が挿入可能であり、該保持枠(20)は、個別の差込モジュールとして構成された電気コンタクト要素を収容するのに適切な収容領域(16)を備える、請求項1から4までのいずれか1項記載の電気差込コネクタ。
【請求項6】
保持枠(20)は、第2のハウジング半部(3)の凹部に係止可能な係止手段(21)を備える、請求項5項記載の電気差込コネクタ。
【請求項7】
湾曲ロック部材(8)は、ハウジング半部(2,3)とは別の材料から製作される、請求項1から6までのいずれか1項記載の電気差込コネクタ。
【請求項8】
湾曲ロック部材は、金属から成る、請求項7記載の電気差込コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−519982(P2013−519982A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553174(P2012−553174)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/DE2010/075150
【国際公開番号】WO2011/100942
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(502435786)ハルティング エレクトリック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (24)
【氏名又は名称原語表記】HARTING Electric GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Wilhelm−Harting−Str. 1, D−32339 Espelkamp, Germany
【Fターム(参考)】