説明

湿式現像可能なベンゾシクロブテン系ポリマー組成物及びその組成物の使用方法

本発明は、硬化性のアリールシクロブテン系オリゴマー又はポリマーと、少なくとも2つのジアゾナフトキノン(DNQ)部分(各部分は、異なるフェニル基からのペンダントである)を含む化合物を含む溶解抑制剤とを含む組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶液中の現像に好適なアリールシクロブテン系ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゾシクロブテン系ポリマーは、種々のエレクトロニクス及びマイクロエレクトロニクス用途において絶縁体として有用であることが知られている。米国特許第6,361,926号明細書には、湿式現像可能なベンゾシクロブテン系ポリマーが教示されている。この特許は、さらに種々の溶解抑制剤が、ポジ型製品(positive tone articles)向けに用いられることを示している。トリヒドロキシベンゾフェノンのスルホニルエステル、例えば、ジアゾナフトールスルホネートエステルは、溶解抑制剤になりうるとして言及されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本件出願人は、改良されたポジ型アリールシクロブテン系ポリマー組成物を見出した。特に、本件出願人は、ジアゾナフトキノン(DNQ)部分を特徴とする溶解抑制剤を含むアリールシクロブテン系ポリマー組成物を見出した。そこには、少なくとも二つのDNQ基があり、そしてそれぞれは、異なるフェニル基からのペンダントであり、パターニング(塩基水溶液の暴露及び次の現像)の後、より良好なフィルム保持力を与える。しかし、特性の最も良好なバランスは、上記溶解抑制剤が、未置換のフェニル基を含む溶解抑制剤との混合物中で用いられる場合に得られる。
【0004】
実施形態の一つに従って、本発明は、硬化性のアリールシクロブテン系オリゴマー又はポリマーを含む組成物、及びそれぞれが異なるフェニル基からのするペンダントであるジアゾナフトキノン(DNQ)部分を少なくとも二つ含む化合物を含む溶解抑制剤である。上記溶解抑制剤はまた、好ましくは、フェニル基からのDNQ部分のペンダントを少なくとも一つと、未置換のフェニル基を少なくとも一つとを含有する化合物を含む。薄膜形成を促進するために、溶媒又は溶媒混合物を用いることができる。また、適切な添加剤、例えば、酸化防止剤及びコーティング助剤を、配合物中に導入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
アリールシクロブテン材料
上記アリールシクロブテン材料は、下記式のモノマー、又はより好ましくは、下記式のモノマーを含む一若しくは複数のモノマー前駆体が部分的に重合した生成物(例えば、オリゴマー、又は硬化性ポリマー)を含むことができる:
【化1】

(式中、
1は、好ましくは、エチレン不飽和物を含む、n価の有機結合基であるか、あるいはB1は存在しなくてもよい。)。
好適な一価のB1基は、式−CR8=CR9Z(式中、R8及びR9は、独立して、水素、1〜6個、最も好ましくは、1〜3個の炭素原子のアルキル基、及びアリール基から選択され、そしてZは、水素、1〜6個の炭素原子のアルキル基、アリール基、−CO27(式中、R7は、水素、好ましくは、最大6個の炭素原子のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルカリル基である。)から選択される。)を有することが好ましい。最も好ましくは、Zは、−CO27(式中、R7は、好ましくは、最大6個の炭素原子のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルカリル基である。)である。好適な二価のB1基は、−(CR8=CR9O−(Z’)O-1(式中、R8及びR9は、先に定義した通りであり、oは、1又は2であり、そしてZ’は、1〜6個の炭素原子のアルキル基、芳香族基、又はシロキサン基である。)を含む。最も好ましくは、oは2であり、そしてZ’はシロキサン基である。
Ar1は、多価の芳香族又はヘテロ芳香族基であり、そしてシクロブテン環の炭素原子は、Ar1の同一の芳香環上の近接する炭素原子と結合している。
好ましくは、
Ar1は、単一の芳香環であり;
mは、1又は2以上の整数であり、好ましくは1であり;
nは、1又は2以上の整数であり、好ましくは2〜4であり、そしてさらに好ましくは2であり;
1は、一価の基であり、好ましくは、水素、最大6個の炭素原子のアルキル基である。
【0006】
これらのアリールシクロブテンの合成及び特性、並びにそれらを記載するために用いられる用語は、例えば、米国特許第4,540,763号明細書;同4,724,260号明細書;同4,783,514号明細書;同4,812,588号明細書;同4,826,997号明細書;同4,999,499号明細書;同5,136,069号明細書;同5,185,391号明細書、及び同5,243,068号明細書に見出される(参照することにより、本明細書に組み入れる。)。
【0007】
好ましい実施形態の一つに従って、上記モノマーは、下記式:
【化2】

(式中、
各R3は、独立して、1〜6個の炭素原子のアルキル基、トリメチルシリル、メトキシ、又はクロロであり;
各R4は、独立して、二価のエチレン性の不飽和の有機基、好ましくは、1〜6個の炭素原子のアルケニル、最も好ましくは、−CH2=CH2−であり;
各R5は、独立して、水素、1〜6個の炭素原子のアルキル基、シクロアルキル、アラルキル、又はフェニルであり;好ましくは、R5はメチルであり;
各R6は、独立して、水素、1〜6個の炭素原子のアルキル基、クロロ、又はシアノ、好ましくは、水素であり;
nは、1又は2以上の整数であり;
そして、各qは0〜3の整数であり、好ましくは、qは0である(この場合、ベンゼン環は、3つの水素原子と結合する。)。)、
を有する。
【0008】
最も好ましいモノマーは、1,3-ビス(2−ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−3−イルエテニル)−1,1,3,3テトラメチルジシロキサンである(DVS−ビスBCBとして本明細書で言及する。)。
好ましい、オルガノシロキサンが架橋したビスベンゾシクロブテンモノマーは、例えば、米国特許第4,812,588号明細書;同5,136,069号明細書;同5,138,081号明細書、及び国際公開第94/25903号パンフレットに開示される方法により調製することができる。
【0009】
上記アリールシクロブテン系オリゴマー又はポリマーには、水溶液中で現像されるべき材料であることができる酸性官能基が含まれる。上記酸性官能基は、最大約600グラム/モル当量の酸性官能価、より好ましくは、最大約500グラム/モル当量の酸性官能価で存在することが好ましい。上記当量は、少なくとも100グラム/モルの酸性官能価、より好ましくは、少なくとも200グラム/モルの酸性官能価であることが好ましい。
【0010】
上記酸性官能価を与える方法の一つは、好ましくは、オリゴマーを生成させるための材料の部分重合の前に、好ましいモノマーと共に酸性官能性モノマーを含ませることである。このアプローチは、概して、米国特許第6,361,926号明細書に教示されている。
好適な酸性モノマーは、下記式:
【化3】

(式中、
2は、酸性官能性基を有する一価の有機基であり、好ましくは、エチレン性の不飽和の有機基をも含み;
Ar2は、多価の芳香族又はヘテロ芳香族基であり、そしてシクロブテン環の炭素原子は、Ar2の同一芳香環上の近接する炭素原子に結合し、好ましくは、Ar2は、単一の芳香環であり;
pは、1又は2以上の整数であり、好ましくは1であり:
2は一価基であり、好ましくは、水素、最大6個の炭素原子のアルキルである。)
を含む。
【0011】
好ましくは、上記さらなるモノマーは、次の二つの下記式:
【化4】

(式中、
R’及びR’’は、独立して、水素、1〜6個の炭素原子のアルキル基、アリール基から選択されるか、又はR’及びR’’は、4〜8個の炭素原子の環状基として考えられ;各R’’’は、独立して、1〜6個の炭素原子のアルキル基、トリメチルシリル、メトキシ、又はクロロであり;
Zは、炭素−炭素結合、又はアリール基であり;
xは、0〜3、好ましくは、1の整数であり:そして、
qは、0〜3、好ましくは、0の整数である。)、又は
【化5】

(式中、
R’、R’’及びR’’’、並びにqは、先に定義される通りであり;
xは1であり、yは0又は1であり:そして
2は、アリール基である。)
から選択される。
【0012】
あるいは、モノマーは、モノマーの重合の際、又はペンダント酸基を生成させるための次の処理中に、少なくとも部分的に反応するペンダント官能基と、シクロブタレン基との存在により特徴付けられる。
好ましくは、この別のモノマーは、下記式:
【化6】

(式中、
R’、R’’及びR’’’、並びにqは、先に定義される通りであり、そしてR’及びR’’は、好ましくは、水素である。)を有する。ブロモベンゾシクロブテン及びt−ブチルアクリレートのパラジウム触媒化反応により調製されうる上記モノマーを重合する場合、得られるポリマーは、アクリレートエステル及びアクリル酸官能基の両方を有する。
【0013】
例えば、国際公開第04/038505号パンフレットに教示される、酸性官能基を含ませるための別のアプローチをまた、用いることができる。
【0014】
上記アリールシクロブテン材料は、好ましくは、B段階(すなわち、部分的に重合された)である。他の成分を、B段階の前又はその後に添加することができる。B段階は、好ましくは、溶媒中で生ずるが、純粋(溶媒なし)で生じさせることもできる。B段階を、好ましくは、約125〜250℃、より好ましくは、約130〜200℃の範囲の温度において生じさせる。上記重合を、次の処理に関して所望の特性を与える部分的に重合した樹脂を与えるために決定された時間の間生じさせる。好ましくは、硬化性の生成物は、少なくとも約1000、より好ましくは、少なくとも約1500、さらに好ましくは、少なくとも約2000、そして最も好ましくは、少なくとも約5000g/モルの範囲における、ゲル透過性クロマトグラフィー(GPC)により決定される明白な重量平均分子量(Mw)を有する。アリールシクロブテンオリゴマーのMwは、好ましくは、約50,000未満であり、より好ましくは、約35,000未満であり、さらに好ましくは、約20,000未満であり、そして最も好ましくは、約10,000g/モル未満である。
【0015】
溶解抑制剤
上記溶解抑制剤は、下記式:
【化7】

(式中、Lは、n+1価の連結基である。)を含むことが好ましい。
好ましくは、Lは、共有結合、S、O、C(=O)、又は1〜12個、好ましくは、1〜10個、より好ましくは1〜6個の炭素原子のヒドロカルビル基である。
最も好ましくは、Lは、2〜4個の炭素原子のアルキル基である。
Rは、Rの少なくとも一部、より好ましくは、Rの少なくとも約40%、さらに好ましくは、Rの少なくとも約50%、そして最も好ましくは、Rの少なくとも約60%がOY(ここで、OYは、ペンダントDNQ基、好ましくは、DNQのスルホネートエステルを示す。)であるという条件の下、独立して、各存在において、それぞれOH又はOYであり、
mは、独立して、各存在において、1〜3、好ましくは、2又は3の整数であり、そして
nは、1又は2である。
【0016】
この化合物の好ましい非限定的な例は、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)のジアゾナフトキノンスルホネートエステルである。
上記式は、下記:
【化8】

式中、
【化9】

の様に表すことができる。
【0017】
好ましくは、上記溶解抑制剤は、下記式:
【化10】

(式中、L,R、m及びnは、先に定義する通りである。)の第二の化合物をさらに含む。
この化合物の好ましい非限定的な例は、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン(THBP)のジアゾナフトキノンスルホネートエステルである。
これは、下記式:
【化11】

(式中、Dは、先に定義される通りである。)で表すことができる。
この成分により、好ましい溶媒中における所望の溶解性、及びアリールシクロブテンポリマーとの良好な相溶性が与えられる。
【0018】
第二の化合物が用いられる場合、上記溶解抑制剤組成物中の、上述の第一の化合物:上述の第二の化合物のモル比は、好ましくは、約99:1以下、より好ましくは、約90:1以下、さらに好ましくは、約70:1以下、さらに好ましくは、約10:1以下、さらに好ましくは、約5:1である。上述の第一の化合物:上述の第二の化合物のモル比は、好ましくは、少なくとも約1:5、より好ましくは、少なくとも約1:2である。
【0019】
説明(本発明の範囲を制限するとみなされるべきではない)のため、上記溶解抑制剤組成物を、下記:
【化12】

のように製造することができる。
【0020】
ジアゾナフトキノン(DNQ)スルホネートエステルは、フェノールを、DNQスルホニルクロリドと反応させて製造する。我々が現在用いているDNQにおいて、フェノール官能基:スルホニルクロリドのモル比は、1:0.7である。化学量論性の結果として、THBP中の可能性のある異性体を考慮すると、反応から多くの化合物が得られる。
【0021】
上記組成物に加えられる溶解抑制剤の量は、ベンゾシクロブテン系成分の重量に基づいて、好ましくは、少なくとも5重量%、より好ましくは、少なくとも10重量%、そして最も好ましくは、少なくとも15重量%である。上記量は、ベンゾシクロブテン系成分の重量に基づいて、好ましくは、30重量%以下、さらに好ましくは、25重量%以下、そして最も好ましくは、20重量%以下である。
【0022】
他の成分
上記アリールシクロブテン及び溶解抑制剤配合物はまた、好ましくは、種々の他の成分を含むことができる。
【0023】
溶媒は、基材に配合物を適用することを促進し、薄膜を形成するための手段として有用である。好適な溶媒には、芳香族炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、及びメシチレン;C3〜C6アルコール;メチルシクロヘキサノン;N−メチルピロリジノン;ジメチルアセトアミド、エトキシエチルプロピオネート、エチルラクテート、ブチロラクトン;及びグリコール系溶媒、例えば(それらに限定されるものではない)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル異性体(Proglyde(商標)DMMとしてDow Chemical Companyから市販される)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、並びにDowanol(商標)DPMA(Dow Chemical Companyから市販されるジ(プロピレングリコール)メチルエーテルアセテート異性体)が含まれるが、これに限定されるものではない。Proglyde(商標)DMM及びPGMEAの混合物が、好ましい。
【0024】
B段階(すなわち、部分重合)の前に、モノマー及び溶解抑制剤を溶解させることができる溶媒であって、コーティング用途向けの部分重合した生成物配合向けの好適な溶媒キャリアとしてはたらくことができる溶媒を選択することが好都合である。
用いることができる他の成分には、酸化防止剤、コーティング助剤、付着促進剤、充填剤等が含まれる。
【0025】
ベンゾシクロブテン樹脂に有用な任意の酸化防止剤を用いることができる。ヒンダードフェノール官能基を有する酸化防止剤は、好ましい材料である。4−[[4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]アミノ]−2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−フェノール、及び2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−,ホスファイト(3:1)フェノールが特に好ましい。
好適なコーティング助剤には、Modaflow等の市販の材料が含まれる。2−プロペン酸のエチルエステルの、2−エチルヘキシル−2−プロペノエートとのコポリマーが特に好ましい。
【0026】
好適な付着促進剤を用いることができる。特に好ましい付着促進剤は、マレアミド酸又はシトラコン酸のシリルである。
上記マレアミド酸のシリルは、下記式:
(R’’O)3Si−R’−NH−(C=O)−CR=CR−COOH
(式中、
Rは、独立して、それぞれ、H又は一価の低級アルキル(1〜4個の炭素原子が好ましい)であり、そしてR’は、独立して、それぞれ、二価の低級アルキル(1〜6個の炭素原子が好ましい)であり、そしてR’’は、一価の低級アルキル(1〜4個の炭素原子が好ましい)である。)を有する。
N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]マレアミド酸、及びN−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]シトラコン酸が、好ましい付着促進剤の例である。
【0027】
処理
上記組成物を、上述の溶媒の一つから基材上にコーティングするのが好ましい。任意の溶媒コーティング方法を用いることができるが、スピン−コーティングが好ましい。溶媒を除去するためのおだやかな焼付け(soft−bake)を、最大100℃の温度で、約10分以下で実施するのが好ましい。より短時間を用いる場合、上記温度をより高くすることができ、そして相対的により低い温度を用いる場合、上記時間をより長くすることができる。
【0028】
次いで、上記コーティング組成物を、溶解抑制剤を不活性化するような放射線の活性化波長に像様に暴露する。次いで、コーティングされたフィルムの暴露部分を、塩基性水溶液等の適切な現像剤溶液を用いて取り除くことができる。pHは、12〜14の範囲が好ましい。好適な現像剤の例には、NaOH、LiOH、KOH、RbOH、CsOH、テトラメチル水酸化アンモニウム(Me4NOH)、Et4NOHが含まれる。
【0029】
現像の後、残りの組成物を、好ましくは最大約300℃、好ましくは約200℃を超える温度による焼付けにより、固く硬化させる。
【実施例】
【0030】
例1
0.748gの45%DNQスルホネートエステル(BCB系成分の重量に基づいて16wt%)を有するTHBPを、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテルアセテート(Dowanol DPMA)中で、13.52gの29%BCB−アクリル酸とDVS−ビスBCBとのコポリマー(67.5:32.5のモル比)に加えた。45%のTHBPのDNQスルホネートエステルは、TBHPのヒドロキシル基の約45%が、DNQスルホニルクロリドと反応して、スルホネートエステルを形成したことを意味する。上記溶液を、1μmのシリンジフィルターを用いてろ過した。AP3000を、4インチシリコンウェハーに適用し、次に150℃において、90秒間ホットプレート上で焼付けた。上記BCB溶液を、上記ウェハーに適用し、次に500rpmにおいて、10秒間広げ、そして2100rpmにおいて、30秒間スピン−コーティングした。上記ウェハーを、95℃で5分間焼き付けた。焼付け後のフィルム厚は、4.550μmであった。上記ウェハーを、300mJ/cm2の量を用いて、Karl Suss曝露具を用いて暴露した。上記暴露したウェハーを、2.38%テトラメチル水酸化アンモニウム浴中で現像した。現像時間は、45秒であった。
【0031】
現像後のフィルム厚は、3.22μmであり、フィルム保持率は、70.8%であった。硬化後のフィルム厚は、2.72μmで、最初のフィルム厚の59.8%であった。45%DNQスルホネートエステルを有するTHBPの代わりに、40%DNQスルホネートエステルを有するTHPEを用いた以外は、実質的に同じ手順を続けた。現像後及び硬化後のフィルム保持率は、それぞれ、78.4%及び72.4%であった。60%DNQスルホネートエステルを有するTHPEを用いて、同じ実験を実施した。現像後及び硬化後のフィルム保持率は、それぞれ、85.6%及び72.3%であった。これにより、THBP系DNQスルホネートエステルと比較して、THPE系DNQスルホネートエステルのフィルム厚の保持率に関して有効性が高いことが実証された。
【0032】
溶解性試験
1gの60%DNQスルホネートエステルを有するTHPEを、10gのPGMEAと混合した。均一溶液を製造するため、当該混合物を60℃まで温めた。1gの60%DNQスルホネートエステルを有するTHPEを、5gのPGMEAと混合した。60℃超まで温めても、当該混合物は、均一の溶液に至らなかった。70%スルホネートエステルを有するTHPEの、PGMEA中での溶解性は、60%スルホネートエステルを有するTHPEよりも悪かった。60%又は70%DNQスルホネートエステルを有するTHBP:THPEの1:1混合物1gは、5gのPGMEA中に完全に溶解した。これにより、THPEスルホネートエステルが、THPE及びTHBPの混合物に由来するDNQスルホネートエステルよりも溶解性が悪いことが実証された。
【0033】
例2
アリールシクロブテン系オリゴマーを、1320gのProglyde DMM中で、398.6gのBCB−アクリル酸と481.4gのDVS−ビスBCBとをMwが5702g/モルに到達するまで加熱して調製した。初期BCB−アクリル酸:DVS−ビスBCBのモル比は、65:35であった。BCB含有率は40%であった。プレポリマー(8.485g)を、琥珀色のバイアル内に置いた。70%当量のスルホニルクロリドを有するTHPE:THBPの1:1モル混合物から調製されたDNQ(0.602g、BCBプレポリマーに基づいて15wt%)を、6.25gのPGMEAに加えた。上記DNQは、PGMEA中に容易に溶解して、均一の溶液を生成した。当該溶液を、上記プレポリマーを含む琥珀色のバイアルに加えた。上記溶液を、1μmのシリンジフィルターでろ過した。AP3000を、4インチシリコンウェハーに適用し、次いで150℃において、90秒間、ホットプレート上で焼付けた。
【0034】
上記BCB溶液を、上記ウェハーに適用し、次に500rpmにおいて、10秒間広げ、そして1000rpmにおいて、30秒間、スピン−コーティングした。上記ウェハーを、95℃において、2分間焼き付けた。焼付け後のフィルム厚は、3.626μmであった。上記ウェハーを、200mJ/cm2の量を用いて、Karl Suss曝露具で暴露した。上記暴露したウェハーを、2.38%テトラメチル水酸化アンモニウム浴中で現像した。現像時間は、74秒であった。現像後のフィルム厚は3.139μmであり、フィルム保持率は86.6%であった。
【0035】
例3
試料1:6123g/モルのMwを有するアリールシクロブテン系オリゴマーを、例2に記載されるのと同様の様式で調製した。初期のBCB−アクリル酸:DVS−ビスBCBのモル比は、65:35であった。Proglyde DMM中のBCB含有率は、40wt%であった。プレポリマー(4.10g)を、琥珀色のバイアル内に置いた。Progylde DMM(0.50g)とPGMEA(3.61g)とを、BCB含有率を20wt%まで減らすように加えた。溶液中のProglyde DMM:PGMEAの重量比は、45:55になった。60%当量のDNQスルホニルクロリド(M−60)を有するTHBP:THPEの1:1モル混合物から調製されたDNQスルホネートエステル(すなわち、THBP及びTHPEの混合物において、1当量のヒドロキシル基ごとに0.6当量のDNQスルホニルクロリドを用いた。)を0.36g加えた。M−60の重量%は、18であった。上記ウェハーを、例2に記載されるのと同様の様式で処理した。TMAHを用いた現像後のフィルム保持率は、91.9%であった。フィルム品質は、優れていた。
【0036】
この実験を、下記表に示すような種々の光活性薬剤を用いて繰り返した。試料1、3、5、7、及び9を、同日に試験した。試料2、4、6、8、及び10を、同日だが、第一の試料群と異なる日に試験した。試料11、12、及び13を、別々の日に試験した。
【0037】
【表1】

【0038】
例4
アリールシクロブテン系オリゴマーを、1320gのProglyde(商標)DMM中で、398.6gのBCB−アクリル酸と481.4gのDVS−ビスBCBとをMwが5216g/モルに到達するまで加熱して調製した。初期BCB−アクリル酸:DVS−ビスBCBのモル比は、65:35であった。BCB含有率は、40%であった。この溶液579.9gを、琥珀色のガラスジャーに入れて計量した。フェノール、4−[[4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]アミノ]−2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−(4.88g、Ciba Specialty ChemicalsからIrganox 565として市販される)、フェノール,2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−,ホスファイト(3:1)(Ciba Specialty ChemicalsからIrgafos 168として市販される)、及びさらにProglyde(商標)DMM(22.8g)を加え、そして当該内容物を、混合した。70%当量のDNQスルホニルクロリド(M−70)を有するTHBP:THPEの1:1モル混合物から調製されたDNQスルホネートエステル(すなわち、THBP及びTHPEの混合物において、1当量のヒドロキシル基ごとに、0.7当量のDNQスルホニルクロリドを用いた。)(52.5g)を、PGMEA(466.5g)中に溶解させ、そして当該溶液を、前の溶液と併せ、そして混合した。
【0039】
2−プロペン酸のエチルエステルの、2−エチルヘキシル2−プロペノエートとのコポリマーの15%溶液(1.55g、Surface Specialties UCB,Smyrna,Georgia 30080からModaflowとして市販される)を、配合物に混合した。当該配合物を、冷蔵庫に保存し、0.45μmのろ過膜により3回ろ過し、そしてビンに詰めた。AP3000を、4インチシリコンウェハーに適用し、次に150℃において、90秒間、ホットプレート上で焼付けた。上記BCB溶液を、ウェハーに適用し、次に500rpmにおいて、10秒間広げ、そして1000rpmにおいて、30秒間スピン−コーティングした。上記ウェハーを、85℃において、2分間焼き付けた。焼付け後のフィルム厚は、3.05μmであった。上記ウェハーを、250mJ/cm2の量を用いて、Karl Suss曝露具で暴露した。上記暴露したウェハーを、2.38%テトラメチル水酸化アンモニウム浴中で現像した。現像時間は63秒であった。現像後のフィルム厚は2.77μmであり、フィルム保持率は90.7%であった。硬化(210℃/90分)後のフィルム厚は、2.31μmであり、初期フィルム厚の75.5%であった。上記試料は、縦じわを有していなかった。
【0040】
例5
39.22wt%のBCB−アクリル酸及びDVS−ビスBCB(65:35のモル比)のコポリマー、59.14wt%のジ(プロピレングリコール)ジメチルエチル(Proglyde DMM)を、0.82wt%のIrganox565、及び0.82wt%のIrgafos168から成るベンゾシクロブテン(BCB)系プレポリマー(150g)を、500mLの琥珀色のジャー内に置いた。α−α−α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼンのジアゾナフトキノン(DNQ)スルホニルエステル(12.93g、α−α−α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン上のほぼ3分の2のヒドロキシル基が、DNQスルホニルクロリドと反応して、スルホニルエステルを形成した。)、プロピレングリコールモノエーテルアセテート(PGMEA)(81.09g)、Proglyde(商標)DMM(18.68g)、N−[3−(トリエトキシシル)プロピル]マレアミド酸溶液(2.94g、PGMEA中の50wt%のN−[3−(トリエトキシシル)プロピル]マレアミド酸溶液)、及びModaflow(0.26g、PGMEA中の20wt%のModaflow)を、ジャーに加えた。
【0041】
PGMEA中に溶解している無水マレイン酸を、3−アミノプロピルトリエトキシシランのフラスコに、攪拌しながら液滴として添加して、トリエトキシシリルプロピルマレアミド酸を生成させた。発熱を、氷−水浴により取り除き、そして無水マレイン酸の添加の速度を制限して40℃未満の反応温度を保持した。上記ジャーを振とうして、均一の溶液を生成させた。当該溶液を、0.45μmのフィルターを用いてろ過した。
【化13】

【0042】
上記溶液を、4インチシリコンウェハーに適用し、次に500rpmにおいて、10秒間広げて、そして1250rpmにおいて、30秒間、スピン−コーティングした。上記ウェハーを、85℃において、2分間焼き付けし、そして次いで、空気循環オーブンの中で、210℃において、90分間硬化させた。同様の実験を、窒化ケイ素ウェハー上で繰り返した。
【0043】
上記ウェハーに、改良された端部−剥離試験(m−ELT)を実施した(ASME,122,28−33,2000の処理)。両基材上で、剥離損傷は観察されなかった。K1c値は、ケイ素基材上で0.51MPa√mであり、そして窒化ケイ素基材上で0.55MPa√mであった。121℃、1気圧超の大気圧及び100%の相対湿度(JEDEC22、Method A 102B)における蒸気圧釜の中での48時間後と、その前とに実施したCross−hatched tape feel試験により、ケイ素及び窒化ケイ素上の薄膜に5Bの評価が与えられた。
【0044】
上記溶液を、4インチシリコンウェハーに適用し、次に500rpmにおいて、10秒間広げ、そして1250rpmにおいて、30秒間スピン−コーティングした。上記ウェハーを、85℃で2分間焼き付けた。焼付け後のフィルム厚は、3.162μmであった。上記ウェハーを、200mJ/cm2の量を用いて、Karl Suss曝露具を用いて暴露した。上記暴露した領域を、2.38%テトラメチル水酸化アンモニウム(TMAH)浴中で現像した。現像時間は70秒であった。現像後のフィルム厚は2.803μmであり、フィルム保持率は88.6%であった。上記ウェハーを、空気循環オーブンの中で、210℃で90分間硬化させた。硬化後のフィルム厚は2.60μmであった(82%のフィルム保持率)。
【0045】
例6
39.22wt%のBCB−アクリル酸及びDVS−ビスBCB(65:35のモル比)のコポリマー、59.14wt%のジ(プロピレングリコール)ジメチルエチル(Proglyde(商標)DMM)、0.82wt%のIrganox565、及び0.82wt%のIrgafos168から成るベンゾシクロブテン(BCB)系プレポリマー(78.2g)を、500mLの琥珀色のジャー内に置いた。α−α−α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼンのジアゾナフトキノン(DNQ)スルホニルエステル(6.67g、α−α−α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン上の約3分の2のヒドロキシル基が、DNQスルホニルクロリドと反応して、スルホニルエステルを形成した。)、プロピレングリコールモノエーテルアセテート(PGMEA)(18.69g)、及びModaflow(0.11g、PGMEA中の20%のModaflow)を、上記ジャーに加えた。上記ジャーを、均一の溶液が形成するように振とうした。上記溶液を、1μmのフィルターでろ過した。
【0046】
上記溶液を、4インチシリコンウェハーに適用し、次に500rpmにおいて、10秒間広げ、そして1750rpmで30秒間スピン−コーティングした。上記ウェハーを、95℃において、3分間焼き付けた。焼付け後フィルム厚は、6.467μmであった。上記ウェハーを、300mJ/cm2の量を用いて、Karl Suss曝露具で暴露した。上記暴露したウェハーを、2.38%テトラメチル水酸化アンモニウム(TMAH)浴中で現像した。現像時間は155秒であった。現像後のフィルム厚は5.793μmであり、フィルム保持率は89.6%であった。上記ウェハーを、空気循環オーブンの中で、210℃において90分間硬化させた。硬化後のフィルム厚は、5.032μmであった(77.8%のフィルム保持率)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)酸性官能性基を付与した、硬化性のアリールシクロブテン系ポリマー又はオリゴマー;
b)次の式:
【化1】

(式中、
Lはn+1価の連結基であり、
Rは、Rの少なくとも一部がOY(ここで、OYは、ペンダントDNQ基を示す。)であるという条件で、独立して、各存在において、OH又はOYであり、
mは、独立して、各存在において、1〜3の整数であり、そして
nは、1又は2である。)
の化合物を含有する溶解抑制剤:
を含む組成物。
【請求項2】
前記溶解抑制剤が、次の式:
【化2】

(式中、
Lは、n+1価の連結基であり、
Rは、Rの少なくとも一部がOY(ここで、OYは、ペンダントDNQ基を示す。)であるという条件で、独立して、各存在において、OH又はOYであり、
mは、独立して、各存在において、1〜3の整数であり、そして
nは、1又は2である。)
の化合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Lが、独立して、各存在において、共有結合、S、O、C(=O)、又は1〜12個の炭素原子のヒドロカルビル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
Lが2〜4個の炭素原子のアルキル基である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
Rの少なくとも約40%がOYである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
Rの少なくとも約50%がOYである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
有機溶媒をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記溶媒が、ジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテルと、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートとの混合物である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも一つの酸化防止剤をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも一つのコーティング助剤をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも一つの付着促進剤をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記酸化防止剤が、4−[[4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]アミノ]−2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−フェノール、及び2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−フェノールホスファイト(3:1)から選択される、請求項9〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記コーティング助剤が、2−プロペン酸のエチルエステルの、2−エチルヘキシル−2−プロペノエートとのコポリマーである、請求項10〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記付着促進剤が、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]マレアミド酸、及びN−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]シトラコン酸から選択される、請求項11〜13のいずれか一項に記載の組成物。

【公表番号】特表2008−516295(P2008−516295A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536786(P2007−536786)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/036453
【国際公開番号】WO2006/044338
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】