説明

溶剤型耐候性塗料組成物

【課題】他の配合剤との相溶性が良好でかつ耐摩耗性、耐候性、硬度、耐汚染性に優れた塗膜を与える塗料組成物を提供する。
【解決手段】(a)フルオロオレフィン、(b)水酸基とカルボキシル基とを含まないビニルモノマー、(c)水酸基を含みカルボキシル基を含まないビニルモノマー、(d)カルボキシル基含有ビニルモノマー、および(e)少なくとも2つの重合性官能基を有する化合物を含み、該単位(c)の含有量が8〜30モル%であり、該単位(e)の含有量が0.01〜1モル%であり、かつMnが10000〜50000、Mwが50000〜500000であってMw/Mnが5以上であり、酢酸ブチルに溶解して得られた溶液の溶液粘度が600〜1200であるときの含フッ素共重合体濃度が40〜55質量%である含フッ素共重合体と、有機溶剤を含む溶剤型耐候性塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性が向上した塗膜を与える溶剤型耐候性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、含フッ素共重合体は分子内のC−F結合の高い結合エネルギーおよび低い分極率が故に耐候性、耐薬品性、撥水撥油性、耐汚染性などに優れており、種々の用途に用いられている。近年、通常の有機溶剤に可溶で室温で架橋しうる含フッ素樹脂塗料が開発された。たとえば、特許文献1にはフルオロオレフィン、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテルの共重合体が耐候性のある塗料用樹脂として開示されている。また、特許文献2〜6にはフルオロオレフィン、ビニルエステル、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテルなどの共重合体が開示されている。さらに、特許文献4には、フルオロオレフィンと架橋部位を有する単量体と他の単量体を重合して得られたフッ素系共重合体は、塗膜の耐衝撃性、耐汚染性、曲げ加工性、耐候性等を高めることができると記載されている。
【0003】
また、特許文献7に記載の含フッ素共重合体は、塗料用組成物の他の配合剤との相溶性が良好でかつ耐候性、硬度、光沢、耐薬品性に優れた塗膜を与えることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−34107号公報
【特許文献2】特開昭61−275311号公報
【特許文献3】特開昭62−7767号公報
【特許文献4】特開2000−44634号公報
【特許文献5】特開平3−121107号公報
【特許文献6】特開平6−184243号公報
【特許文献7】特開2009−144173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1〜5記載の共重合体はフルオロオレフィンとビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテルなどの非フッ素系単量体からなり溶剤溶解性が良好であるが、溶液重合を採用していることで重量平均分子量が60,000程度以下となり、耐溶剤磨耗性が不充分であった。また、特許文献2、3、6に記載の共重合体のなかでもテトラフルオロエチレンやヘキサフルオロプロピレン共重合体はフッ素元素含有量が多いため、共重合体はアクリル樹脂、硬化剤、分散剤との相溶性が悪いという欠点があった。
【0006】
また、特許文献7は特許文献2、3、6の問題点は解消しているが、分子量が比較的小さく、塗膜化した場合、耐摩耗性の点で改善の余地があることが本発明者らによって見出された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題について鋭意検討した結果、少なくとも2つの重合性官能基を有する化合物を共重合することにより得られた含フッ素共重合体が、耐摩耗性が向上した塗膜を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
(A)(1−1)(a)フルオロオレフィン構造単位、(b)水酸基とカルボキシル基とを含まないビニルモノマー構造単位、(c)水酸基を含みカルボキシル基を含まないビニルモノマー構造単位、(d)カルボキシル基含有ビニルモノマー構造単位、および(e)少なくとも2つの重合性官能基を有する化合物単位を含み、
(1−2)該水酸基を含みカルボキシル基を含まないビニルモノマー構造単位(c)の含有量が8モル%以上で30モル%以下であり、
(1−3)該少なくとも2つの重合性官能基を有する化合物単位(e)の含有量が0.01モル%以上で1モル%以下であり、かつ
(1−4)数平均分子量Mnが10000〜50000、重量平均分子量Mwが50000〜500000であって分子量分布Mw/Mnが5以上であり、
(1−5)酢酸ブチルに溶解して得られた溶液の溶液粘度(25℃)が600〜1200であるときの含フッ素共重合体濃度が40〜55質量%である含フッ素共重合体と、
(B)有機溶剤
を含む溶剤型耐候性塗料組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗料組成物は、他の配合剤との相溶性が良好でかつ耐摩耗性、耐候性、硬度、耐汚染性に優れた塗膜を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の塗料組成物に用いる含フッ素共重合体(A)は、構造単位として、(a)フルオロオレフィン構造単位、(b)水酸基とカルボキシル基とを含まないビニルモノマー(以下、単に「ビニルモノマー」という)構造単位、(c)水酸基を含みカルボキシル基を含まないビニルモノマー(以下、単に「水酸基含有ビニルモノマー」という)構造単位、(d)カルボキシル基含有ビニルモノマー構造単位、および(e)少なくとも2つの重合性官能基を有する化合物単位(以下、単に「多官能性化合物」という)構造単位、を含む。
【0011】
フルオロオレフィン(a)としてはクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンがあげられ、これらはフッ素樹脂としての種々の特性、たとえば耐候性、耐溶剤性、耐熱性、耐汚染性などを含フッ素共重合体に付与する作用を有している。その含有量は20モル%以上で50モル%以下が好ましい。下限はより好ましくは30モル%、さらに好ましくは40モル%、特に好ましくは42モル%であり、上限はより好ましくは49モル%、さらに好ましくは47モル%である。20モル%より少なくなると耐候性などのフッ素樹脂の特性が得にくくなる傾向にあり、50モル%を超えると、溶剤溶解性、分散剤・硬化剤などの塗料用添加剤との相溶性、アクリル樹脂との相溶性が低下する傾向にある。
【0012】
ビニルモノマー構造単位(b)を与えるビニルモノマーは水酸基とカルボキシル基とを含まないビニルモノマーであって、たとえばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、2−ブテン、シクロブテン、3−メチル−1−ブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シスーシクロオクテンなどのオレフィン類;酢酸ビニル、ギ酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、Veova9(シェル化学社製の炭素数9のカルボン酸からなるバーサチック酸ビニルエステル)、Veova10(シェル化学社製の炭素数10のカルボン酸からなるバーサチック酸ビニルエステル)、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−tert−ブチル安息香酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニルなどのビニルエステル類などがあげられる。なかでもn−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、カプリル酸ビニル、Veova9、Veova10、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−tert−ブチル安息香酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニルなどの側鎖の炭素数が6以上、好ましくは7以上のビニルモノマーが好ましく例示できる。特にカプリル酸ビニル、Veova9、Veova10、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどが好ましく、溶剤溶解性、アクリル樹脂相溶性、耐水性、耐温水性などの改良という効果が奏される。
【0013】
ビニルモノマー構造単位(b)の下限は25モル%、好ましくは30モル%であり、上限は69.9モル%、好ましくは60モル%、より好ましくは43モル%、特に好ましくは40モル%である。25モル%より少なくなると塗料の汎用配合剤であるアクリル樹脂や硬化剤、分散剤との相溶性に劣る傾向にあり、69.9モル%を超えると耐候性、耐薬品性、耐溶剤性が低下する傾向にある。
【0014】
水酸基含有ビニルモノマー構造単位(c)を与える水酸基含有ビニルモノマーはカルボキシル基を含まない非芳香族系のモノマーが好ましく、たとえば式(1):
CH2=CHR1 (1)
(式中、R1は−OR2または−CH2OR2(ただし、R2は水酸基を有するアルキル基である)で表わされるヒドロキシアルキルビニルエーテルやヒドロキシアルキルアリルエーテルがあげられる。R2としては、たとえば炭素数1〜8の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基に1〜3個、好ましくは1個の水酸基が結合したものである。これらの例としては、たとえば2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどの1種または2種以上があげられる。これらのなかでも、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルが好ましい。
【0015】
この水酸基含有ビニルモノマー構造単位(c)は、含フッ素共重合体を用いて形成した塗膜の加工性、耐溶剤性、密着性を改善する作用を有する。
【0016】
水酸基含有ビニルモノマー構造単位(c)の下限は8モル%、好ましくは10モル%であり、さらに好ましくは15モル%、上限は30モル%、好ましくは20モル%である。8モル%より少なくなると、この共重合体を使用して得られる塗膜が硬度および耐溶剤性に劣るものになる。
【0017】
カルボキシル基含有モノマー単位(d)としては、たとえば式(I):
【化1】

(式中、R3、R4およびR5は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、アルキル基、カルボキシル基またはエステル基、nは0〜18の整数)で表わされるカルボキシル基含有ビニルモノマーなどがあげられる。
【0018】
具体例としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3−アリルオキシプロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニルなどの1種または2種以上があげられ、それらのなかでも単独重合性の低いクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、3−アリルオキシプロピオン酸が好ましい。
【0019】
カルボキシル基含有モノマー単位(d)は、塗料組成物に調整する場合、含フッ素共重合体の水への分散性、硬化反応性や顔料の共重合体溶液への分散性を改善し、得られる塗膜の光沢、硬度、基材への密着性などを改善する作用を有する。
【0020】
カルボキシル基含有モノマー単位(d)の割合の下限は、好ましくは0.1モル%、より好ましくは0.4モル%であり、上限は好ましくは3.5モル%、より好ましくは1.5モル%である。3.5モル%を超えると塗膜の硬化速度が速くなり、ポットライフが短くなる傾向にあり、また、0.1モル%よりも少ないと無機顔料や有機顔料の分散性、混色安定性が低下する傾向にある。
【0021】
少なくとも2つの重合性官能基を有する化合物単位(e)を与える多官能化合物は重合性の官能基を1分子中に2個以上、好ましくは2〜3個有する化合物である。重合性官能基としては、ビニル基のほか、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、デセニル基などのアルケニル基などがあげられ、同じでも異なっていてもよいが、フルオロオレフィンとの反応性の観点から同じことが好ましい。特に好ましい重合性官能基は、ビニル基、アルケニル基である。官能基の結合位置は特に限定されないが、いずれも末端に存在することが、他のモノマーとの共重合がしやすいことから好ましい。
【0022】
少なくとも2つの重合性官能基を有する化合物の好ましい例として、たとえばジビニルエーテル類、ジアリルエーテル類、ジビニルベンゼン類、ジビニルエステル類、ジ(メタ)アクリレート類、トリ(メタ)アクリレート類などが例示できる。
【0023】
ジビニルエステル類としては、たとえばマロン酸ジビニル、コハク酸ジビニル、グルタル酸ジビニル、アジピン酸ジビニル、ピメリン酸ジビニル、スベリン酸ジビニル、アゼライン酸ジビニル、セバシン酸ジビニルなど、不飽和炭化水素のマレイン酸ジビニル、フマル酸ジビニルなど、芳香族炭化水素であるフタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、テレフタル酸ジビニルなどの1種または2種以上があげられる。
【0024】
ジビニルエーテル類としては、たとえばブタンジオールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテルなどの1種または2種以上があげられる。
【0025】
ジアリルエーテル類としては、たとえばジアルコールとアリルアルコールから得られるエーテル類または多価アルコールとアリルアルコールから得られるエーテル類があげられる。
【0026】
ジ(メタ)アクリルレート類としては、たとえばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなども例示できる。
【0027】
多官能性化合物(e)は、構造単位(a)〜(d)などから構成されるポリマー鎖同士を部分的に架橋する役割を果たし、分子量を高くしているものと推定される。
【0028】
多官能性化合物単位(e)の下限は0.01モル%、好ましくは0.1モル%であり、さらに好ましくは0.3モル%である。少なくなりすぎると分子量増大効果が不充分となる。単位(e)の上限は1モル%、好ましくは0.7モル%である。1モル%より多くなると、高分子量化が一気に進みゲル化してしまうことがある。
【0029】
含フッ素共重合体(A)は、テトラヒドロフランを溶離液として用いるゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定する数平均分子量Mnが10000〜50000、好ましくは12000〜40000、重量平均分子量Mwが50000〜500000、好ましくは60000〜400000であって、分子量分布Mw/Mnが5以上、好ましくは6以上、さらに好ましくは10以上の含フッ素共重合体である。たとえば、同様の重合条件で重合した場合、多官能性化合物(e)を共重合していない特許文献7記載の共重合体に比べて、重量平均分子量Mwで5倍程度大きくなる(高分子量化される)。分子量が小さすぎると塗料用組成物に調製した場合、得られる塗膜の硬度が不充分となり、大きすぎると組成物の粘度が大きくなり取扱いが困難となる。
【0030】
またこれらの含フッ素共重合体(A)は、酢酸ブチルに溶解し溶液粘度(25℃)を600〜1200に調整したとき、その溶液における含フッ素共重合体(A)の濃度が40〜55質量%、好ましくは45〜52質量%である共重合体である。この要件が意味するところは、塗料組成物として塗工などの作業性の点から、塗料組成物は、通常、粘度(25℃)が500〜1500程度に調整されるが、本発明で用いる含フッ素共重合体は分子量と分子量分布が共に大きいため、低濃度で必要な粘度を与えることができる。この観点から、多官能性化合物(e)を共重合していない特許文献7の含フッ素共重合体に比べて、溶液粘度(25℃)600〜1200における溶液の含フッ素共重合体濃度を10〜15質量%程度低くすることができる。
【0031】
本発明に用いる含フッ素共重合体(A)は、前記の構造単位を与えるモノマーを通常、重合溶剤や重合開始剤を用いて、乳化、懸濁または溶液重合法により重合することにより製造される。重合温度は、いずれの重合方法でも通常0〜150℃、好ましくは5〜95℃である。重合圧は、いずれの重合方法でも通常0.1〜10MPaG(1〜100kgf/cm2G)である。
【0032】
重合溶剤としては、乳化重合法では水、懸濁重合法では、たとえば水、tert−ブタノール、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンまたはこれらの混合物などが用いられる。溶液重合法では、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、tert−ブタノール、iso−プロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;ジメチルスルホキシドなど、またはこれらの混合物などがあげられる。
【0033】
重合開始剤としては、たとえば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩類(さらに必要に応じて亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリンなどの還元剤も併用できる);酸化剤(たとえば過酸化アンモニウム、過酸化カリウムなど)と還元剤(たとえば亜硫酸ナトリウムなど)および遷移金属塩(たとえば硫酸鉄など)からなるレドックス開始剤類;アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;イソプロポキシカルボニルパーオキサイド、tert−ブトキシカルボニルパーオキサイドなどのジアルコキシカルボニルパーオキサイド類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレートなどのアルキルパーオキシエステル類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、4,4’−アゾビス(4−シアノペンテン酸)などのアゾ系化合物などが使用できる。
【0034】
いずれの重合法においても、重合中に単量体または重合体からフッ化水素などの酸性物質が脱離して重合溶液が酸性になり重合体がゲル化することがあるので、系内に炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、金属酸化物、ハイドロタルサイト類などの無機塩類;ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミンなどの有機アミン類;塩基性陰イオン交換樹脂を添加して、脱離したフッ化水素や塩化水素などの酸性物質を中和してもよい。
【0035】
本発明の溶剤型耐候性塗料用組成物は、前記特定の含フッ素共重合体(A)を塗膜形成成分とし、有機溶剤(B)を含む。
【0036】
使用できる有機溶剤(B)としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;プロピレングリコールメチルエーテルなどのアルコール類;ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素類;これらの混合溶剤などがあげられる。
【0037】
また、本発明の塗料組成物において、塗膜形成成分として他の樹脂を併用してもよく、たとえばスチレンを含有していてもよい(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネート系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂(たとえば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体など)、ケトン樹脂、石油樹脂のほか、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン類の塩素化物などの有機系樹脂;シリカゲルやケイ酸などの無機系樹脂;前記含フッ素共重合体以外の各種フッ素樹脂(たとえばテトラフルオロエチレンやクロロトリフルオロエチレンの単独重合体またはこれらと他の単量体との共重合体など)などの1種または2種以上とブレンドできるが、これらのみに限定されるものではない。ブレンドする他の樹脂の割合は、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対し、900質量部以下、好ましくは500質量部以下である。下限は目的とする特性を得るのに必要な量であり、樹脂の種類によって決まる。アクリル系重合体の場合は通常5質量部以上、好ましくは10質量部以上である。
【0038】
これらの樹脂のうち、特に相溶性に優れたアクリル系重合体との混合系が好ましく、得られる塗膜に高光沢、高硬度、仕上り外観のよさを与える。
【0039】
アクリル系重合体としては従来より塗料用に使用されているものがあげられるが、特に(i)(メタ)アクリル酸の炭素数1〜10のアルキルエステルの単独重合体または共重合体、および(ii)側鎖および/または主鎖末端に硬化性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましく採用される。
【0040】
アクリル系重合体(i)の市販アクリル共重合体としては、たとえばヒタロイド1005、ヒタロイド1206、ヒタロイド2330−60、ヒタロイド4001、ヒタロイド1628Aなど(いずれも日立化成工業(株)製。商品名);ダイヤナールLR−1065、ダイヤナールLR−90など(いずれも三菱レイヨン(株)製。商品名);パラロイドB−44、パラロイドA−21、パラロイドB−82など(いずれもローム&ハース社製。商品名);ELVACITE 2000など(デュポン社製。商品名)などがある。
【0041】
アクリル共重合体(ii)の市販品としては、ヒタロイド3004、ヒタロイド3018、ヒタロイド3046C、ヒタロイド6500B、ヒタロイド6500など(いずれも日立化成工業(株)製。商品名);アクリディックA810−45、アクリディックA814、アクリディック47−540など(いずれもDIC(株)製。商品名);ダイヤナールLR−620、ダイヤナールSS−1084、ダイヤナールSS−792など(いずれも三菱レイヨン(株)製。商品名);オレスターQ166、オレスターQ185など(いずれも三井東圧化学(株)製。商品名);ハリアクロン8360G−55、ハリアクロン8360HS−130、ハリアクロン8160(いずれもハリマ化成(株)製。商品名)などがある。
【0042】
アクリル系重合体の数平均分子量はGPCで測定して5000〜200000、好ましくは6000〜100000であり、大きくなると溶剤溶解性が低下する傾向にあり、小さくなると耐候性に問題が生じる傾向にある。
【0043】
本発明の塗料組成物は、硬化剤(C)を配合して硬化型塗料組成物とすることができる。用いる硬化剤(C)としては含フッ素共重合体(A)の硬化反応性基と反応して架橋する化合物であり、たとえばイソシアネート類やアミノ樹脂類、酸無水物類、ポリエポキシ化合物、イソシアネート基含有シラン化合物などが通常用いられる。
【0044】
前記イソシアネート類の具体例としては、たとえば2,4−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート、これらの三量体、これらのアダクト体やビュウレット体、これらの重合体で2個以上のイソシアネート基を有するもの、さらにブロック化されたイソシアネート類などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
前記アミノ樹脂類の具体例としては、たとえば尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリコールウリル樹脂のほか、メラミンをメチロール化したメチロール化メラミン樹脂、メチロール化メラミンをメタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類でエーテル化したアルキルエーテル化メラミン樹脂などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
酸無水物類の具体例としては、たとえば無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水メリット酸などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
ポリエポキシ化合物やイソシアネート基含有シラン化合物としては、たとえば特開平2−232250号公報、特開平2−232251号公報などに記載されているものが使用できる。好適な例としては、たとえば
【化2】

などがあげられる。
【0048】
硬化剤(C)の配合量は、前記含フッ素共重合体(A)中の化学的硬化反応性基1当量に対して0.1〜5当量、好ましくは0.5〜1.5当量である。本発明の組成物は通常0〜200℃で数分間ないし10日間程度で硬化させることができる。
【0049】
硬化型組成物には、さらに硬化促進剤(D)を配合してもよい。
【0050】
硬化促進剤(D)としては、たとえば有機スズ化合物、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルとアミンとの反応物、飽和または不飽和の多価カルボン酸またはその酸無水物、有機チタネート化合物、アミン系化合物、オクチル酸鉛などがあげられる。
【0051】
前記有機スズ化合物の具体例としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズフタレート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ジブチルスズメトキシドなどがあげられる。
【0052】
また前記酸性リン酸エステルとは、
【化3】

部分を含むリン酸エステルのことであり、たとえば
【化4】

(式中、bは1または2、R8は有機残基を示す)で示される有機酸性リン酸エステルなどがあげられる。具体的には
【化5】

などがあげられる。
【0053】
前記有機チタネート化合物としては、たとえばテトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネートなどのチタン酸エステルがあげられる。
【0054】
さらに前記アミン系化合物の具体例としては、たとえばブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7(DBU)などのアミン系化合物、さらにはそれらのカルボン酸などの塩、過剰のポリアミンと多塩基酸よりえられる低分子量ポリアミド樹脂、過剰のポリアミンとエポキシ化合物の反応生成物などがあげられる。
【0055】
硬化促進剤(D)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硬化促進剤(D)の配合割合は共重合体100質量部に対して1.0×10-6〜1.0×10-2質量部程度が好ましく、5.0×10-5〜1.0×10-3質量部程度がさらに好ましい。
【0056】
本発明の溶剤型耐候性塗料組成物には、さらに各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ゲル化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、親水化剤などがあげられる。
【0057】
顔料の具体例としては、たとえば酸化チタン、炭酸カルシウムもしくはカーボンブラックなどの無機顔料;フタロシアニン系、キナクリドン系もしくはアゾ系などの有機顔料などがあげられるが、これらのみに限定されるものではない。顔料の添加量は通常共重合体100質量部に対して約200質量部までである。
【0058】
前記親水化剤としてはメチルシリケート、エチルシリケート、フルオロアルキルシリケート、それらの縮合体が使用できる。市販品としては、たとえばコルコート社製のET40、ET48など、三菱化学(株)製のMS56、MS56S、MS57など、ダイキン工業(株)製のGH700などがあげられる。
【0059】
本発明の溶剤型耐候性塗料組成物は、溶剤溶解性に優れ、形成された塗膜は高度の耐候性を有し、耐汚染性や耐薬品性、光学的性質、機械的性質、基材への密着性、耐熱黄変性、特に耐摩耗性に優れたものであり、通常の硬化型組成物と同じく建材、内装材などの屋内用あるいは建材、自動車、航空機、船舶、電車などの屋外用の塗料として金属、コンクリート、プラスチックなどに直接、あるいはウォッシュプライマー、錆止め塗料、エポキシ塗料、アクリル樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料などの下塗り塗料の上に重ねて塗装することができる。さらにシーリング剤やフィルム形成剤としても使用できる。
【0060】
本発明の溶剤型耐候性塗料組成物によれば、基材上に本発明の塗料組成物の硬化塗膜を最外層として設けた塗膜構造を提供することができる。硬化塗膜は基材に直接、またはプライマー、さらに要すれば下塗り層を介在させた層として存在し得る。最外層の硬化塗膜の膜厚は、通常2〜100μm、好ましくは5〜50μmである。
【0061】
プライマーとしては、フッ素樹脂塗料用の公知のプライマーが使用でき、たとえばエポキシ系プライマー、ジンクリッチプライマーなどが例示できる。
【0062】
下塗り層としてもフッ素樹脂塗料用の公知のプライマーが使用でき、たとえばアクリル系塗料、ウレタン系塗料、ポリエステル系塗料、エポキシ系塗料などが例示できる。
【0063】
基材は塗装する対象によって異なるが、前記のような金属、コンクリート、プラスチック、さらには石材、木材、紙などがあげられる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0065】
実施例で採用した各物性の測定方法は以下のとおりである。
【0066】
(1)共重合組成
(1−1)NMR分析
装置:NMR測定装置:VARIAN社製
1H−NMR測定条件:400MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
測定温度:室温
【0067】
(2)分子量(数平均Mn、重量平均Mw)
測定装置:昭和電工製Shodex GPC−104
測定条件:溶離液としてはテトラヒドロフランを使用し、分子量の標準サンプルとしては分子量既知のポリスチレンを使用する。
【0068】
(3)溶液粘度(25℃)の測定
測定装置:(株)東京計器製のB型回転粘度計
測定条件:60rpm、25℃
【0069】
(4)耐溶剤磨耗性
ASTM D5402に準じて行なう。
【0070】
(5)光沢
JIS K 5400に準じて行なう。
【0071】
(6)鉛筆硬度
JIS K 5400に準じて行なう。
【0072】
(7)耐候性
岩崎電気(株)製アイスーパーUVテスターW−13型(Light/Dew/Rest=11/11/1HRを1サイクルとする)を用い、初期の60度光沢を100として600時間後の光沢保持率で表わす。
【0073】
(8)耐摩耗性(磨耗輪法)
JIS K 5400に準じて行なう。磨耗輪にはCS−17を用い、荷重500g、1000回転にて行なう。
【0074】
実施例1
(1)含フッ素共重合体の製造
3Lステンレス製オートクレーブに酢酸ブチル944.4g、安息香酸ビニル8.8g、バーサチック酸(炭素数9)ビニル(VV9)65.7g、ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)19.2g、クロトン酸0.8g、アジピン酸ジビニル1.2gを加え、窒素置換し、テトラフルオロエチレン140.7gを加え、オートクレーブ内を60℃まで昇温した。これに撹拌下パーブチルPV(日油(株)製の過酸化物系ラジカル重合開始剤)2.4gを加え、反応を開始した。反応中はオートクレーブ内が0.80MPaとなるようにテトラフルオロエチレンを連続供給した。また反応開始20分後に、安息香酸ビニル46.8g、VV9 355.8g、HBVE 102.9g、クロトン酸4.4g、アジピン酸ジビニル6.4gの混合単量体を11時間かけて追加した。反応開始1時間後にパーブチルPVを4.8g、反応開始後4時間後にパーブチルPVを5.4g、反応開始後8時間後にパーブチルPVを5.4g、反応開始後12時間後にパーブチルPVを2.7g追加し、反応を継続した。重合開始12時間後にテトラフルオロエチレンが合計256.7g供給された時点でテトラフルオロエチレンの供給を止め、オートクレーブ内を75℃で3時間加熱した。その後オートクレーブ内を常温常圧に戻して重合を停止し、含フッ素共重合体の酢酸ブチル溶液1940.9g(固形分濃度48質量%)を得た。得られた共重合体は、テトラフルオロエチレン/VV9/安息香酸ビニル/HBVE/クロトン酸/アジピン酸ジビニル(=45.0/33.0/5.4/15.1/1.0/0.50:モル%比)の組成で、GPCで測定した数平均分子量(Mn)は15000、重量平均分子量(Mw)は200000、Mw/Mnは13.3であった(以下、含フッ素共重合体A1という)。この溶液をエバポレーターで濃縮し、固形分濃度51質量%の含フッ素共重合体A1の酢酸ブチル溶液を得た(ゲルは生じていなかった)。
【0075】
この固形分濃度51質量%の含フッ素共重合体A1の酢酸ブチル溶液の25℃における粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
比較例1
表1に記載したモノマーを使用してアジピン酸ジビニル量を用いなかったほかは実施例1と同様にして含フッ素共重合体を製造した。得られた含フッ素共重合体A2の組成、分子量、酢酸ブチル溶液の濃度および粘度(25℃)を調べた。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
実施例2
実施例1で製造したフッ素樹脂共重合体A1の100質量部に、スミジュールN3300(商品名。住化バイエルウレタン(株)製のイソシアネート系硬化剤)を10.9質量部、1%ジブチルスズジラウレートの酢酸ブチル溶液を0.5質量部加えてよく混合してクリア塗料を調製した。
【0079】
このクリア塗料を酢酸ブチルで固形分濃度40質量%に希釈し、バーコーター塗装によりアルミニウム板(JIS H 4000A−1050P AM−713)(0.5mm厚)に塗装し、80℃で4時間硬化し、塗装膜厚約30μmの塗板を作製した。この塗板について耐溶剤摩耗性を調べたところ、400回であった。
【0080】
比較例2
フッ素樹脂共重合体A1に代えて比較例1で製造したフッ素樹脂共重合体A2を用いたほかは実施例2と同様にしてクリア塗料を調製し、アルミニウム板に塗装・硬化して塗装膜厚約30μmの塗板を作製した。この塗板について耐溶剤摩耗性を調べたところ、100回であった。
【0081】
実施例3
実施例1で製造した含フッ素共重合体A1の100質量部、D−918(商品名。堺化学(株)製の酸化チタン)50質量部、酢酸ブチル25質量部を卓上グラインドミル(三枚羽式)に入れ、さらにガラスビーズ175質量部を加えて1500rpmで1時間撹拌分散した。ガラスビーズをろ別により除き、白塗料157.5質量部を得た。
【0082】
この白塗料100質量部に、スミジュールN3300(商品名。住化バイエルウレタン(株)製のイソシアネート系硬化剤)を6.1質量部、1%ジブチルスズジラウレートの酢酸ブチル溶液を0.3質量部加えてよく混合して塗料用組成物を調製した。
【0083】
得られた塗料用組成物を酢酸ブチルで固形分濃度20質量%に希釈し、スプレー塗装によりアルミニウム板(JIS H 4000A−1050P AM−713)(0.5mm厚)に塗装し、80℃度で4時間硬化し、塗装膜厚約40μmの塗板を作製した。この塗板について、光沢、鉛筆硬度、促進耐候性および耐摩耗性(磨耗輪法)を調べた。結果を表2に示す。
【0084】
比較例3
フッ素樹脂共重合体A1に代えて比較例1で製造したフッ素樹脂共重合体A2を用いたほかは実施例3と同様にして塗料組成物を調製し、アルミニウム板に塗装、硬化して塗装膜厚約40μmの塗板を作製した。この塗板について光沢、鉛筆硬度、促進耐候性および耐摩耗性(磨耗輪法)を調べた。結果を表2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
本発明の実施例と比較例の結果から明らかなように、特定の含フッ素共重合体(A)を含む塗料組成物は低い固形分濃度であっても適切な塗工粘度を与え、また耐摩耗性に優れた塗膜を与えることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(1−1)(a)フルオロオレフィン構造単位、(b)水酸基とカルボキシル基とを含まないビニルモノマー構造単位、(c)水酸基を含みカルボキシル基を含まないビニルモノマー構造単位、(d)カルボキシル基含有ビニルモノマー構造単位、および(e)少なくとも2つの重合性官能基を有する化合物単位を含み、
(1−2)該水酸基を含みカルボキシル基を含まないビニルモノマー構造単位(c)の含有量が8モル%以上で30モル%以下であり、
(1−3)該少なくとも2つの重合性官能基を有する化合物単位(e)の含有量が0.01モル%以上で1モル%以下であり、かつ
(1−4)数平均分子量Mnが10000〜50000、重量平均分子量Mwが50000〜500000であって分子量分布Mw/Mnが5以上であり、
(1−5)酢酸ブチルに溶解して得られた溶液の溶液粘度(25℃)が600〜1200であるときの含フッ素共重合体濃度が40〜55質量%である含フッ素共重合体と、
(B)有機溶剤
を含む溶剤型耐候性塗料組成物。
【請求項2】
含フッ素共重合体(A)において、フルオロオレフィン構造単位(a)がクロロトリフルオロエチレン単位またはテトラフルオロエチレン単位である請求項1記載の溶剤型耐候性塗料組成物。
【請求項3】
含フッ素共重合体(A)において、水酸基含有ビニルモノマー構造単位(c)がヒドロキシアルキルビニルエーテル単位である請求項1または2記載の溶剤型耐候性塗料組成物。
【請求項4】
含フッ素共重合体(A)において、カルボキシル基含有モノマー単位(d)が、式(I):
【化1】

(式中、R3、R4およびR5は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、アルキル基、カルボキシル基またはエステル基、nは0〜18の整数)で表わされるカルボキシル基含有ビニルモノマー単位である請求項1〜3のいずれかに記載の溶剤型耐候性塗料組成物。
【請求項5】
含フッ素共重合体(A)において、少なくとも2つの重合性官能基を有する化合物単位(e)が多価カルボン酸のジビニルエステル単位またはジビニルエーテル単位である請求項1〜4のいずれかに記載の溶剤型耐候性塗料組成物。
【請求項6】
硬化剤(C)を含む請求項1〜5のいずれかに記載の溶剤型耐候性塗料組成物。
【請求項7】
硬化促進剤(D)を含む請求項6記載の溶剤型耐候性塗料組成物。

【公開番号】特開2011−208043(P2011−208043A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77848(P2010−77848)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】