説明

溶融物の製造装置及び製造方法

【課題】二酸化炭素の排出抑制及び熱効率の両面において優れた溶融物の製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】
酸水素OHを生成する酸水素製造装置4と、供給された原料Rに、酸水素製造装置4からの酸水素OHを燃焼させて生じた火炎を接触させて溶融させる加熱炉2と、加熱炉2の排ガスを用いて発電し、発電した電力を酸水素製造装置4に供給する発電装置11とを備える溶融物の製造装置1。また、発電装置11が、加熱炉2の溶融物出口側の高温領域2Hから排出される排ガスG1を用いて発電することができ、さらに、加熱炉2が、溶融物出口側の高温領域2Hと原料入口側の低温領域2Lとの間に設けられた隔壁2eを備えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融物の製造装置及び製造方法に関し、特に、セメントクリンカの製造等に好適に用いることのできる溶融物の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントを製造するには、石灰石を主原料とする粉体原料をプレヒータ及び仮焼炉を通過させた後、ロータリキルンで1,450℃以上の高温で焼成して水硬性を有するセメントクリンカを生成し、セメントクリンカに石膏、混合材を添加して微粉砕する。そのため、セメント製造工程では、エネルギーを多量に消費する。
【0003】
近年の地球温暖化等の環境問題に対する関心の高まりから、エネルギー大量消費型のセメント産業には、空間資源の枯渇や、二酸化炭素の排出抑制等にこれまで以上の対応が求められているため、セメント製造にあたり、各種廃棄物を燃料の代替として用い、廃棄物の処理に資するとともに、化石燃料の原単位を低減するなど、資源リサイクル及び省エネルギーの両面に資する技術開発が継続して行われている。
【0004】
その一環として、例えば、特許文献1等には、流動床プロセス固有の燃焼性能、熱伝達性能、粒子拡散及び造粒特性を利用することにより、低品位炭を効率よく燃焼させ、NOxの排出量を顕著に低減し、プロセスから排出される物及びガスからの熱回収効率を向上させることで、地球環境保全及び省エネルギーに対応することのできる流動床セメント焼成キルンシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−81245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の流動床セメント焼成キルンシステムでも、依然として化石燃料を用い、燃焼した化石燃料から二酸化炭素が発生するため、二酸化炭素の排出抑制の面で改善の余地があった。また、流動床プロセスでは、原料を流動化させるために焼成炉に空気を供給する必要があるため、該空気の加熱に伴う熱効率の低下を回避することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、二酸化炭素の排出抑制及び熱効率の両面において優れた溶融物の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、溶融物の製造装置であって、酸素と水素の混合気を生成する混合気生成手段と、供給された原料に、該混合気生成手段からの混合気を燃焼させて生じた火炎を接触させて溶融させる加熱炉と、該加熱炉の排ガスを用いて発電し、発電した電力を前記混合気生成手段に供給する発電手段とを備えることを特徴とする。ここで、酸素と水素の混合気とは、酸素と水素を別々に発生させた後、混合したものでもよく、水を電気分解して得られる、いわゆる酸水素ガスでもよい。尚、酸素と水素を別々に発生させる場合には、その混合比は概ね1:2であることが望ましい。
【0009】
酸素と水素の混合気は、局所的に2000℃の高温を発生させることができるため、この高温火炎を、供給された原料に接触させることで、速やかに該原料を溶融させることができる。ここで、酸素と水素の混合気自体の燃焼によって発生するのは、水蒸気だけであり、二酸化炭素や、NOxによる二次的な弊害が発生することがなく、これらのガスの昇温も不要となる。また、加熱炉においては、火炎を放射するバーナと、溶融物の移動経路とを備えれば足りるため、コンパクトで熱効率のよい装置を構成することができる。加えて、酸素と水素の混合気を発生させるために要する電気エネルギーも僅少であるため、運転コストも低く抑えることができる。
【0010】
また、加熱炉の排ガスを発電手段に導き、熱回収して発電に利用するため、製造装置内で発生した熱エネルギーを有効利用することができる。さらに、発電した電力を混合気生成手段に供給し、混合気の生成に要する電力に利用するため、運転に必要な電力の一部を製造装置の内部で賄うことができる。これにより、外部からの受給電力への依存度を低減することができ、二酸化炭素の排出量の更なる削減を図ることが可能になる。
【0011】
上記溶融物の製造装置において、前記発電手段が、前記加熱炉の溶融物出口側の高温領域から排出される排ガスを用いて発電することができる。高温領域内に存在する高温の排ガスを用いて発電するため、発電効率を向上させることができ、製造装置内で発生した熱エネルギーを効率的に再利用することが可能になる。
【0012】
上記溶融物の製造装置において、前記加熱炉が、溶融物出口側の高温領域と原料入口側の低温領域との間に設けられた隔壁を有し、前記発電手段が、前記高温領域から排出される排ガスを用いて発電することができる。加熱炉に設けた隔壁により、高温領域に存在する高温の排ガスと低温領域に存在する低温の排ガスとの接触を防止し、高温の排ガスの温度が低下するのを抑制することができる。その上で、発電手段において、高温領域から排出された排ガスを用いて発電するため、加熱炉の排ガスを適切に発電に利用することができる。
【0013】
上記溶融物の製造装置において、前記加熱炉に塊状原料を供給し、該加熱炉が、前記火炎を該塊状原料に接触させて溶融させることができる。これによれば、事前の粉砕作業が不要となったり、或いは、粉砕作業を行う場合であっても粉砕の程度を軽度に留めることができるため、設備コストの削減や作業効率の向上を図ることが可能になる。
【0014】
上記溶融物の製造装置において、前記加熱炉からの排ガスに含まれる水分を凝縮させて水を生成し、前記混合気生成手段に供給する復水器を備えることができる。これによれば、加熱炉内で発生した水蒸気を有効に活用することができる。
【0015】
上記溶融物の製造装置において、前記復水器が、前記発電手段を通過した後の排ガスに含まれる水分を凝縮させて水を生成する第1の復水器と、前記加熱炉の原料入口側の低温領域から排出される排ガスに含まれる水分を凝縮させて水を生成する第2の復水器とを備えることができる。
【0016】
上記溶融物の製造装置において、水、含水物及び水蒸気のうち少なくとも一以上を前記加熱炉から排出される溶融物に噴射して冷却する冷却手段を備え、前記加熱炉の排ガスを該冷却手段に導き、該冷却手段内で発生する排ガスとともに前記発電手段に供給することができる。
【0017】
上記溶融物の製造装置において、前記冷却手段が、一端が閉塞し、他端が開放された管路と、該管路の閉塞端部に挿入されたノズルとを備え、前記閉塞端部に前記バーナの火炎を接触させることにより溶融した溶融物を供給するとともに、前記ノズルから水、含水物及び水蒸気のうち少なくとも一以上を該溶融物に噴射し、該溶融物を冷却しながら、前記水の蒸発による爆裂、前記含水物に含まれる水の蒸発による爆裂及び前記水蒸気の膨張のうち少なくとも一以上によって冷却物を破砕することができる。これにより、溶融物の急冷と急冷物の破砕を一つの装置を用いて略々同時に行うことができ、簡単な装置構成で急冷物の破砕物を得ることができ、装置の運転操作も容易である。また、溶融物の冷却過程で溶融物を細かく破砕し得ることから、事後的な粉砕作業が不要となったり、或いは、粉砕の程度を軽度に留めることができ、設備コストの削減や作業効率の向上を図ることが可能になる。
【0018】
上記溶融物の製造装置において、 前記加熱炉が、複数のバーナを備え、該複数のバーナのうち、前記原料の流れの最も下流のバーナのみで前記混合気を燃焼させることができる。最も下流のバーナ以外のバーナでは、廃棄物から得られた燃料、化石燃料等を用いることもでき、この場合、これらの燃料から二酸化炭素が生成されることとなるが、その一方で、酸素と水素の混合気を発生させるための電力量を減少させることができる。
【0019】
上記溶融物の製造装置において、 前記加熱炉を、移動槽式、ロータリキルン式、流動床式又は回転炉床炉式とすることができる。
【0020】
また、本発明は、溶融物の製造方法であって、酸素と水素の混合気を生成し、供給された原料に、前記混合気を燃焼させて生じた火炎を接触させて溶融させ、前記原料を溶融させる際に発生する排ガスを用いて発電し、発電した電力を前記混合気の生成に要する電力に利用することを特徴とする。本発明によれば、上記発明と同様に、溶融物を製造するにあたって、二酸化炭素の排出を抑制し、高熱効率を確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、二酸化炭素の排出抑制及び熱効率の両面において優れた溶融物の製造装置及び製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明にかかる溶融物の製造装置の一実施の形態を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明においては、本発明にかかる溶融物の製造装置を用いてセメント原料(以下「原料」という)を溶融させ、セメントクリンカを製造する場合を例にとって説明する。
【0024】
図1は、本発明にかかる溶融物の製造装置の一実施の形態を示し、この溶融物の製造装置1は、大別して、加熱炉2と、加熱炉2に設けられたバーナ3(3A〜3D)と、バーナ3に酸水素OHを供給する酸水素製造装置4と、加熱炉2に塊状の原料Rを供給する供給装置6と、原料Rの溶融物Mを急冷してセメントクリンカCLを製造する急冷装置9と、急冷装置9からの排ガスを利用して発電する発電装置11と、加熱炉2内で発生する排ガスを誘引するファン15等で構成される。
【0025】
加熱炉2は、原料供給部2aと、溶融物排出部2bとを備える移動槽式の加熱炉であって、加熱炉2の天井面には、バーナ3が貫通し、バーナ3の火炎によって加熱炉2内の原料Rが加熱される。また、加熱炉2には、炉本体の保護のため、必要に応じて耐火物(不図示)が施工されるとともに、傾斜した底面2c及び側面2dを加熱する補助加熱装置(不図示)が設けられる。尚、補助加熱装置には、二酸化炭素の排出抑制の面から、電気エネルギーによる加熱装置を用いることが好ましい。この際、電気エネルギーによる加熱装置としては、電磁誘導加熱、高周波/マイクロ波等の電磁波加熱、電極投入直接通電/発熱体間接加熱等の抵抗加熱、アーク放電によるプラズマ加熱等の加熱方法を用いた装置を使用することができる。
【0026】
また、加熱炉2の内部には、内壁から中心軸に向けて延びる隔壁2eが設けられる。この隔壁2eは、溶融物排出部2b側の領域(高温領域)2Hで発生する高温排ガスG1と、原料供給部2a側の領域(低温領域)2Lで発生する低温排ガスG2との接触を防止するために備えられる。さらに、加熱炉2の出口側には、高温領域2Hの排ガスG1を急冷装置9に導く排気ダクト2fが設けられる。
【0027】
バーナ3は、酸水素製造装置4で製造した酸水素OHをバーナ先端から加熱炉2の下方に向けて噴射し、噴射した酸水素OHを燃焼させて生じた高温の火炎を加熱炉2内の原料Rに接触させ、原料Rを溶融させるために備えられる。本実施の形態では、4本のバーナ3A〜3Dが配置されているが、バーナ3の設置本数は、1本又は2本以上から適宜選択することができる。
【0028】
酸水素製造装置4は、バーナ3に供給する酸水素OHを発生させるために設けられ、発電装置11から供給される電力P1、受電した電力(又は廃棄物を利用したごみ発電設備からの電力等)P2を利用して酸水素OHを製造する。酸水素製造装置4で製造した酸水素OHは、配管5を介してバーナ3に供給される。
【0029】
供給装置6は、加熱炉2の入口側に位置し、原料Rを加熱炉2内に投入するために備えられる。供給装置6には、原料Rを受け入れるホッパ6aと、ホッパ6aに投入された原料Rを加熱炉2の原料供給部2aに搬送するスクリューフィーダ6bと、加熱炉2の低温領域2Lに存在する排ガスG2を抽気する抽気ダクト6cとが設けられる。
【0030】
また、抽気ダクト6cの下流側には、抽気した排ガスG2に含まれる水分を凝縮させて水W2に戻すコンデンサ(復水器)7が付設され、コンデンサ7には、凝縮させた水W2を酸水素製造装置4に搬送する配管8が接続される。
【0031】
急冷装置9は、右端が閉塞し、左端が開放された円筒状に形成された管路9aと、管路9aの右端部に挿入されたノズル9bと、管路9aから排出される急冷物Qを回収するチェンバ9cと、管路9aの左端から離間して設けられた衝突板9dとを備える。この急冷装置9では、ノズル9bから水W1を噴射して溶融物Mを急冷するが、その過程で、水W1の蒸発による爆裂で溶融物Mを吹き飛ばしながら細裂し、細裂した溶融物Mを水蒸気流に乗せて左端側に高速で移動させる。そして、管路9aから排出される急冷物Qを衝撃板9dに衝突させ、その衝撃により、さらに細かく破砕する。尚、急冷装置9は、図示のような1基だけでなく、冷却性能等に応じて複数段にわたって設けることもできる。
【0032】
発電装置11は、急冷装置9のチェンバ9cから排出される排ガスG3で水蒸気Sを発生させる水管ボイラ11aと、水管ボイラ11aで発生した水蒸気Sを利用して発電するための蒸気タービン11b及び発電機11cとから構成される。
【0033】
水管ボイラ11aは、排ガスG3が保有する熱を利用して水蒸気Sを発生させるために備えられ、蒸気タービン11bは、水管ボイラ11aによって発生した水蒸気Sによって回転し、発電機11cで電気を発生させる。発電機11cで発生させた電力は、電力線16、17を介して酸水素製造装置4及び補助加熱装置に各々供給され、酸水素OHの製造及び加熱炉2の加熱に利用することができる。
【0034】
また、水管ボイラ11aの下流には、水管ボイラ11aを通過した排ガスG4に含まれる水分を凝縮させて水W1に戻すコンデンサ12が付設される。コンデンサ12には、凝縮させた水W1を酸水素製造装置4に搬送するための配管13と、水W1を急冷装置9のノズル9bに搬送するための配管14とが接続される。
【0035】
ファン15は、急冷装置9のチェンバ9cから排ガスG3を誘引して水管ボイラ11aやコンデンサ12に導くとともに、加熱炉2の低温領域2Lから低温排ガスG2を誘引してコンデンサ7に導くために備えられる。
【0036】
次に、上記構成を有する溶融物の製造装置1の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0037】
酸水素製造装置4において酸水素OHを発生させるとともに、補助加熱装置を稼働させて加熱炉2を加熱する。ファン15を運転した後、所定の配合に調合した塊状原料Rを供給装置6のホッパ6aに投入し、スクリューフィーダ6bを通じて加熱炉2に供給する。
【0038】
加熱炉2の内部において、原料Rを補助加熱装置によって加熱しながら左下方向に移動させ、高温になった原料Rに、さらに、バーナ3から噴射された酸水素OHが燃焼して生じた高温火炎を接触させ、原料Rを溶融させる。
【0039】
上記の際、酸水素OHの燃焼によって水蒸気が発生するとともに、加熱された原料Rから二酸化炭素が発生するため、加熱炉2内には、それらの混合ガスが滞留する。そして、低温領域2Lの排ガスG2を供給装置6の抽気ダクト6cによって抽気し、供給装置6内の原料Rを予熱しながら、排ガスG2をコンデンサ7に導く。次に、コンデンサ7で排ガスG2に含まれる水分を凝縮させるとともに、生成した水W2を酸水素製造装置4に搬送し、酸水素OHの製造に利用する。
【0040】
一方、加熱炉2の出口側では、溶融した原料(溶融物)Mを急冷装置9に供給し、急冷装置9において、溶融物Mにノズル9bから水W1を噴射する。すると、溶融物Mは、水W1によって急冷され、管路9aに噴射された水W1は、気化して水蒸気S1となり、さらに膨張する。
【0041】
ここで、管路9aの右端部側が閉じているため、水W1が気化して膨張することにより生じた水蒸気S1は、管路9a内で左方向に高速で移動する。そして、管路9a内の溶融物Mは、水W1の蒸発による爆裂で細裂されつつ、水蒸気流によって左方向に高速で移動する。管路9aから排出された急冷物Qは、衝突板9dに衝突し、さらに細かく破砕された後、チェンバ9cの排出部9eからセメントクリンカCLとして排出される。
【0042】
上記の処理と併行し、加熱炉2において、排気ダクト2fを介して高温領域2Hの排ガスG1を急冷装置9のチェンバ9cに導く。そして、ファン15によって、チェンバ9c内の水蒸気S1及び排ガスG1の混合ガスG3を誘引し、発電装置11の水管ボイラ11aに供給する。
【0043】
次いで、水管ボイラ11aで排ガスG3が保有する熱を利用して水蒸気Sを発生させるとともに、発生した水蒸気Sを蒸気タービン11bに供給してこれを回転させ、発電機11cで発電する。これと同時に、水管ボイラ11aを通過した排ガスG4をコンデンサ12に導き、コンデンサ12において、排ガスG4に含まれる水分を凝縮させる。そして、凝縮した水W1を、酸水素製造装置4に搬送して酸水素OHの製造に利用するとともに、急冷装置9に搬送して溶融物Mの冷却水W1として利用する。
【0044】
溶融物の製造装置1が継続して運転されている状態では、受電した電力P2に加え、発電装置11で発電した電力P1を、酸水素製造装置4及び補助加熱装置で利用することができる。
【0045】
以上のように、本実施の形態によれば、原料の溶融に化石燃料を使用することなく、酸水素OHを燃焼させた火炎を用いて原料Rを溶融する。酸水素OHの燃焼によって発生するのは、水蒸気のみであるため、燃料からの二酸化炭素が発生せず、二酸化炭素の排出を抑制することができる。尚、原料Rから発生する二酸化炭素が存在するものの、従来のような燃料からの二酸化炭素、NOxによる二次的な弊害が発生することがなく、これらのガスの昇温による熱損失もない。
【0046】
また、加熱炉2の排ガスG1を発電装置11に導き、熱回収して発電に利用するため、製造装置1内で発生した熱エネルギーを有効利用することができる。さらに、発電した電力を酸水素製造装置4に供給し、酸水素OHの生成に要する電力に利用するため、運転に必要な電力の一部を製造装置1の内部で賄うことができる。これにより、外部からの受給電力P2への依存度を低減することができ、二酸化炭素の排出量の更なる削減を図ることが可能になる。
【0047】
また、加熱炉2で原料Rを溶融させることから、加熱炉2に供給する原料として、塊状の原料を用いることができる。これにより、事前の粉砕作業が不要となったり、或いは、粉砕作業を行う場合であっても粉砕の程度を軽度に留めることができるため、設備コストの削減や作業効率の向上を図ることが可能になる。
【0048】
さらに、急冷装置9を用いることで、溶融物Mの急冷と急冷物Qの破砕を一つの装置を用いて略々同時に行うことができ、簡単な装置構成で急冷物Qの破砕物を得ることができ、装置の運転操作も容易である。また、溶融物Mの冷却過程で溶融物Mを細かく破砕し得ることから、事後的な粉砕作業が不要となったり、或いは、粉砕の程度を軽度に留めることができ、製品粉砕ミルの負担を軽減することが可能になる。
【0049】
さらに、溶融物の製造装置1は、コンパクトに構成することができるため、加熱炉2や急冷装置9等の断熱を効果的に行うことで高温雰囲気を維持することができ、高熱効率の溶融物の製造装置を実現することができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、上記実施の形態においては、加熱炉2にバーナ3と補助加熱装置とを設けたが、補助加熱装置は補助的に設けたものであって、必ずしも補助加熱装置を設ける必要がなく、バーナ3のみで原料Rを溶融させることもできる。
【0052】
また、上記実施の形態においては、加熱炉2の高温領域2Hの排ガスG1を急冷装置9のチェンバ9cに導くが、排ガスG1を、チェンバ9cと水管ボイラ11aを繋ぐガス管路18に導き、急冷装置9を経由することなく水管ボイラ11aに供給するようにしてもよい。
【0053】
さらに、バーナ3A〜3Dのすべてにおいて酸水素OHを燃焼させる必要性は必ずしもなく、原料Rの流れから見て最も下流側のバーナ3Aのみで酸水素OHを燃焼させ、その他のバーナ3B〜3Dでは、廃棄物から得られた燃料、化石燃料等を用いて原料Rを加熱することもできる。これらの燃料を燃焼させると、二酸化炭素等が生成されるが、原料Rの加熱によっても二酸化炭素が発生しているため、前記燃料の燃焼によって、溶融物の製造装置1から排出される二酸化炭素の総量が激増することもなく、バーナ3B〜3Dで酸水素OHを燃焼させないことで、電力量の低減に繋がるため、いずれを選択するかは状況に応じて適宜選択することができる。
【0054】
また、上記実施の形態では、溶融物の製造装置1によってセメント原料Rを溶融させ、セメントクリンカCLを製造する場合を例にとって説明したが、セメントクリンカCL以外にも、各種セメント鉱物、急結材原料及びガラス質組成物等の水硬性物質、溶融スラグ等の水硬性物質以外の物(例えば、骨材として用い得る)を製造する場合に、溶融物の製造装置1を好適に用いることができる。さらに、溶融物の製造装置1に、原料として、アスベスト、アスベスト含有物等の有害物質を用い、それらを溶融することで無害化することができる。
【0055】
さらに、バーナ3において酸水素製造装置4で製造した酸水素OHを用いたが、酸水素製造装置4を用いずに、酸素と水素を別々に発生させた後、混合したものをバーナ3に供給して燃焼させてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態では、移動槽式の加熱炉2を用いた場合を説明したが、従来セメント製造装置に用いられているロータリキルン式、流動床式又は回転炉床炉式の加熱炉を用いることもできる。ここで、回転炉床炉式の加熱炉の一例としては、内部が空洞化された円環状の炉体フレームの内部に原料(被溶融物)を投入するとともに、炉体フレームの側面から内部の原料に向けて火炎を放射し、炉体フレームを一回転させる間に原料を溶融させるものがある。
【0057】
さらに、急冷装置9のノズル9bから水Wを噴射する代わりに、含水物を溶融物Mに噴射し、溶融物Mを冷却しながら、含水物に含まれる水の蒸発による爆裂により急冷物Qを破砕することもできる。また、ノズル9bから水蒸気を溶融物Mに噴射し、水蒸気の膨張により急冷物Qを破砕することもできる。さらに、ノズル9bから水Wと含水物を同時に噴射してもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、急冷装置9のチェンバ9cからの排ガスG3を水管ボイラ11aに導き、水蒸気Sを生成するための熱源として利用するが、排ガスG3中に異物がなければ、或いは、異物を除去することができれば、排ガスG3を蒸気タービン11bに導き、排ガスG3により蒸気タービン11bを回転させてもよい。
【0059】
さらに、上記実施の形態では、加熱炉2の原料入口側からの排ガスG2をコンデンサ7に導いて水W2を生成するが、コンデンサ7を設けずに、排ガスG2を大気放出したり、露点に達しない範囲で原料の予熱や乾燥に利用することもできる。
【符号の説明】
【0060】
1 溶融物の製造装置
2 加熱炉
2a 原料供給部
2b 溶融物排出部
2c 底面
2d 側面
2e 隔壁
2f 排気ダクト
2H 高温領域
2L 低温領域
3 バーナ(3A〜3D)
4 酸水素製造装置
5 配管
6 供給装置
6a ホッパ
6b スクリューフィーダ
6c 抽気ダクト
7 コンデンサ
8 配管
9 急冷装置
9a 管路
9b ノズル
9c チェンバ
9d 衝突板
9e 排出部
9f 供給部
11 発電装置
11a 水管ボイラ
11b 蒸気タービン
11c 発電機
12 コンデンサ
13、14 配管
15 ファン
16、17 電力線
18 ガス管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素と水素の混合気を生成する混合気生成手段と、
供給された原料に、該混合気生成手段からの混合気を燃焼させて生じた火炎を接触させて溶融させる加熱炉と、
該加熱炉の排ガスを用いて発電し、発電した電力を前記混合気生成手段に供給する発電手段とを備えることを特徴とする溶融物の製造装置。
【請求項2】
前記発電手段は、前記加熱炉の溶融物出口側の高温領域から排出される排ガスを用いて発電することを特徴とする請求項1に記載の溶融物の製造装置。
【請求項3】
前記加熱炉は、溶融物出口側の高温領域と原料入口側の低温領域との間に隔壁が設けられ、
前記発電手段は、前記高温領域から排出される排ガスを用いて発電することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶融物の製造装置。
【請求項4】
前記加熱炉に塊状原料を供給し、該加熱炉は、前記火炎を該塊状原料に接触させて溶融させることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の溶融物の製造装置。
【請求項5】
前記加熱炉からの排ガスに含まれる水分を凝縮させて水を生成し、前記混合気生成手段に供給する復水器を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の溶融物の製造装置。
【請求項6】
前記復水器は、前記発電手段を通過した後の排ガスに含まれる水分を凝縮させて水を生成する第1の復水器と、前記加熱炉の原料入口側の低温領域から排出される排ガスに含まれる水分を凝縮させて水を生成する第2の復水器とを備えることを特徴とする請求項5に記載の溶融物の製造装置。
【請求項7】
水、含水物及び水蒸気のうち少なくとも一以上を前記加熱炉から排出される溶融物に噴射して冷却する冷却手段を備え、
前記加熱炉の排ガスを該冷却手段に導き、該冷却手段内で発生する排ガスとともに前記発電手段に供給することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の溶融物の製造装置。
【請求項8】
前記冷却手段は、一端が閉塞し、他端が開放された管路と、該管路の閉塞端部に挿入されたノズルとを備え、前記閉塞端部に前記バーナの火炎を接触させることにより溶融した溶融物を供給するとともに、前記ノズルから水、含水物及び水蒸気のうち少なくとも一以上を該溶融物に噴射し、該溶融物を冷却しながら、前記水の蒸発による爆裂、前記含水物に含まれる水の蒸発による爆裂及び前記水蒸気の膨張のうち少なくとも一以上によって冷却物を破砕することを特徴とする請求項7に記載の溶融物の製造装置。
【請求項9】
前記加熱炉は、複数のバーナを備え、該複数のバーナのうち、前記原料の流れの最も下流のバーナのみで前記混合気を燃焼させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の溶融物の製造装置。
【請求項10】
前記加熱炉は、移動槽式、ロータリキルン式、流動床式又は回転炉床炉式であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の溶融物の製造装置。
【請求項11】
酸素と水素の混合気を生成し、
供給された原料に、前記混合気を燃焼させて生じた火炎を接触させて溶融させ、
前記原料を溶融させる際に発生する排ガスを用いて発電し、発電した電力を前記混合気の生成に要する電力に利用することを特徴とする溶融物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−266081(P2010−266081A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115353(P2009−115353)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】