説明

演奏教習装置、及び演奏教習処理のプログラム

【課題】演奏が全くの初心者に対しても、そのレベル及び上達度合いに合わせて効果的な演奏教習が行なえるようにする。
【解決手段】鍵盤2を生徒用鍵域2Aと先生用鍵域2Bとに分割し、先生用鍵域2Bに含まれる鍵を押鍵するタイミングで生徒用鍵域に含まれる鍵を押鍵すると、その押鍵タイミングで先生側鍵域2Bの押鍵に基づく音高の楽音の発生が指示される。逆に先生用鍵域2Bに含まれる鍵を押鍵したタイミング以外のタイミングで生徒用鍵域2Aに含まれる鍵を押鍵した場合、この押鍵に対応する楽音の発生は指示されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏の教習に用いられる演奏教習装置及び演奏教習処理のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動演奏される曲に合わせて指示される演奏操作子を使って演奏するという演奏教習よりも、演奏に熟練した先生から直接教わるのがよいことは知られている。これは先生から直接教わるほうが、演奏練習を行う者の技量等に応じてその演奏形態を自由に変更できるうえに、適切なアドバイスを与える等、より緻密な教習を行なえるからである。
しかしながらこの方法だと、先生用及び生徒用の演奏装置を夫々用意する必要があり、教室等の専用箇所においてのみ実用可能であって、一般家庭等で用いることは困難であった。
【0003】
そこで、ひとつの演奏装置に設けられた演奏操作子群を2つに分割し、分割された一方の演奏操作子群のいずれかを操作すれば、他方の演奏操作子群のうち、当該操作された演奏操作と所定の音高関係にある操作子を指示できる演奏教習装置が提案された(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3586754号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、いくら先生が傍についているからといって、いきなり演奏の初心者が、先生の演奏に合わせて演奏を行うことは不可能に近いことは明白である。
特に生徒が全くの初心者であれば、最初のころは、先生の演奏操作子を操作するタイミングに合わせることすら難しい場合がある。このような状況において演奏練習を行なえば、先生の演奏とは全く異なった演奏を行うことになってしまう。
従来の装置においては、この生徒自らの演奏によっても楽音は発生するように構成されている。これは自分の演奏を聞くことも演奏教習を受ける場合に重要なことではあるが、あまりに先生による模範の演奏とかけ離れている場合などは、やる気を喪失させる確率の方が高い。
また、なかには先生の傍らで演奏をせずに凍り付いてしまう生徒も出てくる。これは、上手でない自分の演奏を耳にしたくないという心理が働くからであると推察されるが、生徒自ら演奏するように成らなければ全く演奏教習が進まない。
このように先生が傍らについていても、演奏教習がスムーズに行かない場合も多々ある。
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、演奏が全くの初心者に対しても、そのレベル及び上達度合いに合わせて効果的な演奏教習が行なえるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の演奏教習装置は前記従来の課題に鑑み為されたものであり、音高順に配置された複数の演奏操作子からなる演奏操作手段と、この演奏操作手段の少なくとも一方の領域内の演奏操作子夫々に対応して配置され、当該対応する操作子をガイドするガイド手段と、前記演奏操作手段の他方の領域内のいずれかの演奏操作子が操作される度に、当該操作された演奏操作子と所定の関係を有し、かつ前記演奏操作手段の一方の領域内の演奏操作子に対応する前記ガイド手段を動作させることにより、当該対応する演奏操作子を指示する指示制御手段と、前記他方の領域内の演奏操作子が操作される毎に、当該操作された演奏操作子と所定の関係を有してかつ前記一方の領域内の演奏操作子に対応する音高の楽音の発生を指示する第1の発音指示手段と、前記一方の領域内の演奏操作子が操作されたときに、前記他方の領域内の演奏操作子が操作されているか否か判別する判別手段と、この判別手段により操作されていると判別された場合にのみ、前記他方の領域内の操作された演奏操作子と所定の関係を有してかつ前記一方の領域内の演奏操作子に対応する音高の楽音の発生を指示する第2の発音指示手段と、を有している。
【0007】
また本願発明の演奏教習処理のプログラムは、音高順に配置された複数の演奏操作子からなる演奏操作手段と、この演奏操作手段の少なくとも一方の領域内の演奏操作子夫々に対応して配置され、当該対応する操作子をガイドするガイド手段と、を有する演奏教習装置として用いられるコンピュータに、前記演奏操作手段の他方の領域内のいずれかの演奏操作子が操作される度に、当該操作された演奏操作子と所定の関係を有し、かつ前記演奏操作手段の一方の領域内の演奏操作子に対応する前記ガイド手段を動作させることにより、当該対応する演奏操作子を指示する指示制御ステップと、
前記他方の領域内の演奏操作子が操作される毎に、当該操作された演奏操作子と所定の関係を有してかつ前記一方の領域内の演奏操作子に対応する音高の楽音の発生を指示する第1の発音指示ステップと、
前記一方の領域内の演奏操作子が操作されたときに、前記他方の領域内の演奏操作子が操作されているか否か判別する判別ステップと、
操作されていると判別された場合にのみ、前記他方の領域内の操作された演奏操作子と所定の関係を有してかつ前記一方の領域内の演奏操作子に対応する音高の楽音の発生を指示する第2の発音指示ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、生徒がいずれの演奏操作子を操作したかに係らず、先生の演奏操作タイミングに合わせて演奏操作子を操作した場合に限り、楽音の発生が行なわれるように構成されている。従って、生徒が全くの初心者であっても、とにかく先生の演奏操作タイミングに合わせて、いずれかの演奏操作子を操作すれば、先生の演奏と同じ楽音の発生がなされる。これによっての最も基礎となる演奏操作タイミングを取得できる。
このように生徒による演奏は、先生の演奏に一致する部分のみ発音されるため、誤演奏による発音がなされない。このため他人に聞かれて恥ずかしい思いをする必要がなくなり、演奏教習への意欲をそぐことがなくなる。
そして本願発明においては、この演奏操作タイミングがひととおり取得できた場合、これに加えて正しい演奏操作子を操作する演奏教習が行われるようになる。このように、演奏の習熟度に応じた的確な演奏教習が行われる。
さらにこのような習熟度に応じた演奏教習が行なわれたとしても、本願発明においては、先生は教習すべき曲をその演奏形態を変えることなく演奏していればよい。このため、先生は生徒の演奏の状況を見ながら演奏の難易度を変更したりする負担もなく、長時間の教習も行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態を適用した電子鍵盤楽器の外観平面図である。
【図2】同電子楽器のブロック構成図である。
【図3】ゼネラルフローを示すフローチャートである。
【図4】SW処理の内容を示すフローチャートである。
【図5】鍵盤処理の内容を示すフローチャートである。
【図6】図5に続く鍵盤処理の内容を示すフローチャートである。
【図7】ナビゲート処理の内容を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施形態におけるSW処理の内容を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施形態における鍵盤処理の内容を示すフローチャートである。
【図10】図9に続く鍵盤処理の内容を示すフローチャートである。
【図11】図9に続く鍵盤処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
以下、本発明の第1の実施形態を図に従って説明する。
この第1の実施形態は、本発明の演奏教習装置を電子鍵盤楽器に適用したものであり、この電子鍵盤楽器は、図1に示す外観構成からなる楽器本体1を有している。
【0011】
この楽器本体1には、演奏操作子群としての鍵盤2が設けられているとともに、通常モードと教習モードとを選択的に設定するためのモードSW等の各種機能スイッチ(図示せず)が設けられている。鍵盤2には、音高順に配置され“0”から所定値までのキーナンバに各々対応する複数の鍵が設けられており、各鍵は押鍵に伴ってオンとなる鍵スイッチを有している。
【0012】
また、鍵盤2は、前記教習モード時には、キーナンバ“0”から所定のキーナンバ“SP”までの生徒用鍵域2Aと、キーナンバ“SP”よりも高音域側である先生用鍵域2Bとにスプリットされる。生徒用鍵域2Aには、ナビゲータ3が設けられており、このナビゲータ3は、生徒用鍵域2Aの各鍵に対応して配置された複数のLEDで構成されている。なお、キーナンバ“0”からキーナンバ“SP”までの領域は、少なくとも2オクターブの音域を有している。
【0013】
図2は、本実施の形態を適用した電子鍵盤楽器の全体構成を示すブロック図である。このブロック図において、前記機能スイッチ等の操作情報は、パネルスイッチ部4からCPU5に取り込まれる。
【0014】
CPU5は、このパネルスイッチ部4及び前記鍵盤2からの入力情報とROM6に記憶されているプログラム等に基づいて動作し、RAM7をワークエリアとして使用しつつ、この電子鍵盤楽器において必要な全ての処理を実行する。すなわち、CPU5は、後述するフローに従って処理を実行することにより、ドライバ8及び音源9を制御する。
【0015】
ドライバ8は、CPU5からの指示に従って、ナビゲータ3を構成するLEDを点滅駆動し、音源9はCPU5から与えられる音高データに従って楽音信号を生成する。この楽音信号は、図外のサウンドシステムに送出されて放音される。
【0016】
次に、以上の構成にかかる本実施の形態の動作を図3以降に示したフローチャートに従って説明する。CPU5は、電源の投入に伴って図3に示すフローに従って動作を開始し、先ずイニシャライズ処理(SA1)を実行して、各種レジスタをクリアしあるいは所定の初期値をセットする。引き続き、後述するSW処理(SA2)、鍵盤処理(SA3)、ナビゲート処理(SA4)を実行するとともに、これら以外のその他の処理(SA5)を実行し、電源がオンとなっている間、SA2〜SA5のループを繰り返す。
【0017】
前記スイッチ処理(SA2)は、図4に示すフローに従って行われ、前記パネルスイッチ部4からの入力情報に基づき、いずれかの機能スイッチが操作されたか否かを判別する(SB1)。そして、いずれかの機能スイッチが操作されたならば、それが前記モードSWであるか否かを識別し(SB2)、モードSWでない場合には、操作された機能スイッチに対応するその他SW処理(SB3)を実行する。
【0018】
また、モードSWが操作された場合には、この操作により教習モードが設定されたか否かを判別し(SB4)、教習モードが設定された場合にはナビゲートフラグNFをセットする(SB5)。しかし、教習モードが設定されずに通常モードが設定された場合には、ナビゲートフラグNFをリセットする(SB6)。したがって、ナビゲートフラグNFは“1”により教習モードが設定されていることを示し、“0”により通常モードが設定されていることを示す。
【0019】
また、前記鍵盤処理(SA3)は、図5及び図6に示すフローに従って行われ、先ずキーナンバレジスタKNに初期値“0”をセットする(SC1)。次に、鍵盤2からの操作情報に基づき、このKNの値に対応するキーナンバの鍵が、オン(押鍵)、オフ(離鍵)、及び変化なしのいずれの状態にあるかを判別する(SC2)。
そして、このKNの値に対応するキーナンバの鍵がオン状態にあるならば、引き続きナビゲートフラグNFがセットされているか否かを判別する(SC3)。この判別の結果、ナビゲートフラグNF=0であって、通常モードが設定されている場合には、KNに対応する音高データに基づいてノートオンイベントを作成する。そしてこのノートオンイベントは音源9に送出される(SC4)。これにより、音源9はこの音高データに従って楽音信号を生成し、押鍵された鍵のキーナンバに対応する音高の楽音が発生する。
【0020】
続いて、キーナンバレジスタKNの値をインクリメントした後(SC5)、このキーナンバレジスタKNの値が所定の最大数(最高音高の鍵に対応するキーナンバの値)以上となったか否かを判別し(SC6)、KN>最大数となるまで、SC2からの処理を繰り返す。
【0021】
また、このSC2での判別の結果、KNの値に対応するキーナンバの鍵がオフ状態にあるならば、SC2から図6のSC7に進んでナビゲートフラグNFが「0」であるか否かを判別する。この判別の結果、ナビゲートフラグNF=0であって、通常モードが設定されている場合には、KNに対応する音高データに基づいてノートオフイベントを作成する。そしてこのノートオンイベントは音源9に送出される(SC8)。これにより、音源9はKNに対応する音高の楽音信号の生成を停止し、KNに対応する音高の楽音が消音する。したがって、NF=0である通常モードにおいては、鍵盤2の全鍵域が操作された鍵に対応する音高の楽音を発音及び消音させる通常鍵として機能する。
【0022】
しかし、KNの値で指定される鍵が押鍵状態でSC3での判別の結果、NF=1となり、教習モードが設定されている場合には、SC3からSC9に進んで、KNの値がSP(図1参照)よりも大であるか否かを判別する。この判別の結果、KN>SPであり、教習モードの状態で先生用鍵域2Bで押鍵状態が発生している場合には、まずティチャーフラグTFを「1」にセットする(SC10)。続いてTKNに、KNから2オクターブ、つまり鍵24個分を減算した値が、先生用鍵域2Bにおける押鍵のキーナンバとしてストアされる(SC11)。そしてこのTKNにストアされたキーナンバに対応する音高データに基づいたノートオンイベントを作成して音源9に送出する(SC12)。この結果、音源9からは、実際の押鍵と2オクターブずれた音高の楽音が発生されることになる。
この処理の後、SC5の処理に進む。
【0023】
また、SC9において、KNの値がSPと同一もしくは小さいと判別された場合は、SC13に進んで、ティチャーフラグTFが「1」であるか否か判別する。ここでもし「1」であると判別された場合、つまり生徒用鍵域2Aでの押鍵のタイミングとほぼ同一のタイミングで先生用鍵域2Bでも押鍵があった場合は、SC12に進み、TKNにストアされたキーナンバに対応する音高データに基づいた楽音の発生を音源9に対して指示する。
一方「0」と判別された場合、つまり生徒用鍵域2Aで押鍵があったタイミングでは、先生用鍵域2Bでは押鍵がなかった場合は、SC12をパスしてSC5に進む。このため、生徒用鍵域2Bにおける押鍵による発音がなされない。
このように、先生用鍵域2Bでの押鍵のタイミングとほぼ同一のタイミングで生徒用鍵域2Aにおいて押鍵がなされれば、先生用鍵域2Bでの押鍵と同一の音高の楽音が音源9より発生するが、それ以外のタイミングで生徒用鍵域2Aにて押鍵があったとしても、楽音の発生はなされない。
【0024】
一方、KNの値で指定される鍵が離鍵状態でSC7での判別の結果、NF=0でない値となり教習モードが設定されている場合には、SC8からSC14に進んで、KNの値がSPよりも大であるか否かを判別する。この判別の結果、KN>SPと判別された場合、つまり、先生側鍵域2Bにて離鍵があった場合は、このKNの値が、TKNの値に「24」加算した値と同一か否か判別する(SC15)。
これはつまり、現在発音のなされている楽音の音高に対応するキーナンバであるTKNの値は、実際に押鍵されている鍵のキーナンバより2オクターブ低い値となっているので、このTKNに24、つまり2オクターブ分の値を加算することにより、実際に押鍵されている健が離鍵したのか否かを判別しているのである。
【0025】
ここでYESと判断されれば、まずTFを「0」に戻し(SC16)、TKNにストアされたキーナンバに対応する音高データに基づいたノートオフイベントを作成して音源9に送付して(SC17)、図5のSC5に進む。もしNOと判断されたならば、そのまま図5のSC5に進む。
したがって、NF=1である教習モードにおいては、前述の通常モードと同様に、生徒用鍵域2Aは操作された鍵に対応する音高の楽音を発音及び消音させる通常鍵として機能する。
【0026】
また、前記ナビゲート処理(SA4)は、図7に示すフローに従って行われ、ティチャーフラグTFがセットされているか否かを判別する(SD1)。このTFは、前述の図6におけるSC13で、教習モードにおいて先生用鍵域2Bで押鍵が発生している状態でセットされている。そして、TF=1であって、教習モードにおいて先生用鍵域2Bで押鍵が発生している場合には、TKNに対応するLEDを点灯する(SD2)。
【0027】
よって、このSD2の処理により、教習モードにおいて先生用鍵域2Bで押鍵操作が為される度に、この押鍵より2オクターブ低い位置にある生徒用鍵域2Aの鍵を指示するナビゲータ3のLEDが点灯する。したがって、この点灯したLEDにより、生徒用鍵域2Aで練習を行っている生徒には、該生徒用鍵域2Aにおいて押鍵すべき鍵が示される。
【0028】
また、SD1での判別の結果、TF=0であって、教習モードにおいて先生用鍵域2Bで離鍵操作が行なわれ、TFがリセットされている場合には、発光しているLEDを消灯する(SD3)。
【0029】
このように、生徒用鍵域2Aを用いて演奏している生徒は、先生用鍵域2Bを用いて演奏している先と同一のタイミングで押鍵しさえすれば、先生と同一の演奏ができる。これにより生徒はまず、押鍵・離鍵のタイミングを会得することが可能となる。
しかも生徒は先生と異なるタイミングで押鍵しても、それによる楽音の発生はなされないため、生徒自身の誤った演奏音を耳にすることがなくなる。これによって自身の演奏の未熟さが他に露呈することがないので、やる気を喪失することがなくなる。
【0030】
なお、実施の形態においては、ナビゲート3を複数のLEDで構成するようにしたが、これに限ることなく対応する鍵をLCDで表示するようにしてもよい。
【0031】
(実施形態2)
続いて、本願発明の第2の実施形態について説明する。
前述の第1の実施形態においては、生徒用鍵域2Aを用いる生徒は、先生用鍵域2Bを用いて演奏する先生の押鍵タイミングと同一のタイミングで押鍵さえすれば、生徒用鍵域2A内のいずれの鍵を押鍵しても先生と同一の音高の楽音が発生したが、第2の実施形態は、生徒がある程度押鍵タイミングを合わせることについて習熟してきたと判断された後は、先生の押鍵した鍵に対応した鍵、具体的には2オクターブ低い位置にある鍵を押鍵した場合にのみ、楽音が発生するように構成している。
これにより、生徒の習熟レベルに合わせてより高い演奏練習を自動的に行なわせることができるようにしたものである。
【0032】
第2の実施形態は、第1の実施形態と比べてSW処理及び鍵盤処理の内容が一部異なる。以下異なる部分についてのみ説明し、第1の実施形態と同一の処理については同一番号を付して説明を省略する。
【0033】
図8は、第2の実施形態におけるSW処理のフローチャートである。前記パネルスイッチ部4からの入力情報に基づき、いずれかの機能スイッチが操作されたか否かを判別する(SB1)。そして、いずれかの機能スイッチが操作されたならば、それが前記モードSWであるか否かを識別し(SB2)、モードSWでない場合には、操作された機能スイッチに対応するその他SW処理(SB3)を実行する。
モードSWの操作が行われたと判断されると、SB2からSB7に進み、いずれのモードに設定されたかが判別される。ここで教習モードでない、通常の演奏を行うノーマルモードに設定されていると判断された場合は、SB6に進み、NFを「0」とし、第1の実施形態と同様の教習モードである教習1モードに設定されたと判断された場合は、NFを「1」とする(SB5)。
そして、教習2モードに設定されたと判断された場合は、NFを「2」とする(SB4)。
これら一連の処理が終了することにより、SW処理が終了する。
【0034】
図9及び図10は、第2の実施形態に係る鍵盤処理のフローチャートを示す。
まず、図9において、NFが「1」(SC3)、つまり教習1モードにおいて生徒用鍵域2Aにおいて押鍵がなされた場合(SC9)は、SC13に進む。そしてここでTFが「1」か否か、つまりはこのタイミングにおいて先生用鍵域2Bで押鍵がなされているか否かが判断される。
ここで先生用鍵域2Bにおいて押鍵がなされてTFが「1」となっている場合は、SC18に進んでレジスタCの値をインクリメントする。逆に押鍵がなされておらずTFが「1」となっている場合は、SC19に進んでレジスタCの値をデクリメントする。
【0035】
このSC18又は19の処理の後、レジスタCの値が所定値を越えているか否かを判別する(SC20)。もし越えていると判別されたなら、NFを「2」、つまり教習2モードに変更して(SC21)、SC12の処理に進む。反対に越えていないし判別された場合は、SC21に進まず、直接SC12の処理に進む。
【0036】
一方、SC3において、NFが「1」でない、と判断された場合は図10に進み、今度はNFが「2」であるか否か判別する(SC22)。ここでNFが「2」でない、つまり「0」であると判別された場合は、そのまま図9のSC4に進む。
NFが「2」であると判別された場合は、SC23に進み、KN>SPであるか否か判断される。
【0037】
ここでYESと判別された場合は、何もせずに図9のSC12に進む。
一方、NOと判断された場合は、SC24に進んでTFが「1」か否か、つまり先生用鍵域2Bで押鍵がなされているか判別する。ここで押鍵がなされていると判別されると、さらに先生用鍵域2Bでの押鍵により得られるキーナンバがストアされるTKNと、生徒用鍵域2Aでの押鍵により得られるキーナンバがストアされるKNとの値が一致するか否か判別する(SC25)。
ここで、生徒用鍵域2Aで押鍵された鍵の位置がちょうど先生用鍵域2Bで押鍵された鍵より2オクターブ低い位置にある場合は、SC25の判別はYESとなり、SC26に進んで生徒の習熟度を判断するのに用いるレジスタCの値をインクリメントする。
一方、SC24あるいはSC25の判断がNOである場合は、レジスタCの値をデクリメントする(SC27)。
【0038】
このSC26又はSC27の処理の後、レジスタCの値が所定値以内となっているか否か判別する(SC28)。そしてこの判別がYESであればNFを「1」に戻す(SC29)。つまり教習2モードから教習1モードに戻し、その後図9のSC12に移行する。
一方、SC28の判別がNOである場合は、そのまま図9のSC12に移行する。
【0039】
また、図9のSC2での判別の結果、KNの値に対応するキーナンバの鍵がオフ状態にあるならば、SC2から図11のSC7に進んでナビゲートフラグNFが「0」であるか否かを判別する。この判別の結果、ナビゲートフラグNF=0であって、通常モードが設定されている場合には、KNに対応する音高データに基づいてノートオフイベントを作成する。そしてこのノートオンイベントは音源9に送出される(SC8)。これにより、音源9はKNに対応する音高の楽音信号の生成を停止し、KNに対応する音高の楽音が消音する。したがって、NF=0である通常モードにおいては、鍵盤2の全鍵域が操作された鍵に対応する音高の楽音を発音及び消音させる通常鍵として機能する。
【0040】
一方、KNの値で指定される鍵が離鍵状態でSC7での判別の結果、NF=0でない値となり教習モードが設定されている場合には、SC7からSC14に進んで、KNの値がSPよりも大であるか否かを判別する。この判別の結果、KN>SPと判別された場合、つまり、先生側鍵域2Bにて離鍵があった場合は、このKNの値が、TKNの値に「24」加算した値と同一か否か判別する(SC15)。
これはつまり、現在発音のなされている楽音の音高に対応するキーナンバであるTKNの値は、実際に押鍵されている鍵のキーナンバより2オクターブ低い値となっているので、このTKNに24、つまり2オクターブ分の値を加算することにより、実際に押鍵されている健が離鍵したのか否かを判別しているのである。
【0041】
ここでYESと判断されれば、まずTFを「0」に戻し(SC16)、TKNにストアされたキーナンバに対応する音高データに基づいたノートオフイベントを作成して音源9に送付して(SC17)、図9のSC5に進む。もしNOと判断されたならば、そのまま図9のSC5に進む。
したがって、NF=1および2である教習モードにおいては、前述の通常モードと同様に、生徒用鍵域2Aは操作された鍵に対応する音高の楽音を発音及び消音させる通常鍵として機能する。
【0042】
このように、第2の実施形態においては、生徒用鍵域2Aで演奏する生徒の習熟度の低い最初の段階においては、先生と押鍵のタイミングを合わせて演奏させる教習1モードで演奏練習を行なわせる。そして習熟度があがり、押鍵のタイミングが合わせられるようになったら、教習2モードに自動的に移行し、タイミングのみならず押鍵すべき鍵の位置も先生にあわせて押鍵させる演奏練習を行なわせるようにした。このように、生徒の習熟度に合わせた演奏練習形態に自動的に移行させることができるため、より効率的な演奏練習が可能となる。今まではこうした練習形態の変更も先生の判断に依存していたが、生徒の習熟度によって自動的に変更されるため、先生の負担も軽くなる。
【0043】
第2の実施形態においては、LEDの発光色で手の種類を示しているが、他の指示形態、例えば点滅と点灯などで指示するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
2 鍵盤
3 ナビゲータ
4 パネルスイッチ部
5 CPU
6 ROM
8 ドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音高順に配置された複数の演奏操作子からなる演奏操作手段と、
この演奏操作手段の少なくとも一方の領域内の演奏操作子夫々に対応して配置され、当該対応する操作子をガイドするガイド手段と、
前記演奏操作手段の他方の領域内のいずれかの演奏操作子が操作される度に、当該操作された演奏操作子と所定の関係を有し、かつ前記演奏操作手段の一方の領域内の演奏操作子に対応する前記ガイド手段を動作させることにより、当該対応する演奏操作子を指示する指示制御手段と、
前記他方の領域内の演奏操作子が操作される毎に、当該操作された演奏操作子と所定の関係を有してかつ前記一方の領域内の演奏操作子に対応する音高の楽音の発生を指示する第1の発音指示手段と、
前記一方の領域内の演奏操作子が操作されたときに、前記他方の領域内の演奏操作子が操作されているか否か判別する判別手段と、
この判別手段により操作されていると判別された場合にのみ、前記他方の領域内の操作された演奏操作子と所定の関係を有してかつ前記一方の領域内の演奏操作子に対応する音高の楽音の発生を指示する第2の発音指示手段と、
を有する演奏教習装置。
【請求項2】
前記演奏操作手段の一方の領域内の各演奏操作子に対応する音高と、前記他方の領域内の各演奏操作子に対応する音高とは、所定のオクターブ関係にある請求項1記載の演奏教習装置。
【請求項3】
前記判別手段は、さらに操作されていると判別された前記他方の領域内の演奏操作子が、操作された前記一方の領域内の演奏操作子と前記所定の関係を有するか否かを判別する、請求項1記載の演奏教習装置。
【請求項4】
前記判別手段は、前記一方の領域内の演奏操作子が操作される度に、前記他方の領域内の演奏操作子が操作されている回数及び操作されていない回数を夫々カウントし、この操作されている回数が操作されていない回数を所定値以上上回った場合に、前記操作されていると判別された前記他方の領域内の演奏操作子が、操作された前記一方の領域内の演奏操作子と前記所定の関係を有するか否かを判別する、請求項3記載の演奏教習装置。
【請求項5】
前記判別手段は、前記一方の領域内の演奏操作子が操作される度に、前記操作されていると判別された前記他方の領域内の演奏操作子が、操作された前記一方の領域内の演奏操作子と前記所定の関係を有するか否かを判別するとともに、前記関係を有する回数及び関係を有しない回数を夫々カウントし、前記関係を有しない回数が関係を有する回数を所定値以上上回った場合に、前記一方の領域内の演奏操作子が操作されたときに、前記他方の領域内の演奏操作子が操作されているか否かのみを判別する、請求項4記載の演奏教習装置。
【請求項6】
音高順に配置された複数の演奏操作子からなる演奏操作手段と、この演奏操作手段の少なくとも一方の領域内の演奏操作子夫々に対応して配置され、当該対応する操作子をガイドするガイド手段と、を有する演奏教習装置として用いられるコンピュータに、
前記演奏操作手段の他方の領域内のいずれかの演奏操作子が操作される度に、当該操作された演奏操作子と所定の関係を有し、かつ前記演奏操作手段の一方の領域内の演奏操作子に対応する前記ガイド手段を動作させることにより、当該対応する演奏操作子を指示する指示制御ステップと、
前記他方の領域内の演奏操作子が操作される毎に、当該操作された演奏操作子と所定の関係を有してかつ前記一方の領域内の演奏操作子に対応する音高の楽音の発生を指示する第1の発音指示ステップと、
前記一方の領域内の演奏操作子が操作されたときに、前記他方の領域内の演奏操作子が操作されているか否か判別する判別ステップと、
操作されていると判別された場合にのみ、前記他方の領域内の操作された演奏操作子と所定の関係を有してかつ前記一方の領域内の演奏操作子に対応する音高の楽音の発生を指示する第2の発音指示ステップと、
を実行させる演奏教習処理のプログラム

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−75589(P2011−75589A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223638(P2009−223638)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】