説明

潜在的な抗腫瘍治療剤としてシアリルテトラアオシル糖に特異的に結合する、モノクローナル抗体SC104及びその誘導体

【課題】シアリルテトラアオシル糖に結合し、免疫エフェクター細胞が必要とされない細胞死を直接的に誘導する能力を有する、単離された特異的結合メンバーを提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を有し、Colo205に結合し、免疫エフェクター細胞を必要とすることなく細胞死を直接的に誘導する抗体結合ドメイン。CDR1、CDR2及びCDR3がヒト抗体フレームワークによって保有され、あるいは、ヒト定常領域をさらに含んでいる抗体結合ドメイン。前記抗体結合ドメインおよび薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、担体、緩衝剤、または安定化剤を含んでいる、薬学的組成物。並びに、前記組成物を用いて腫瘍を治療するための方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、特異的結合メンバー(特に、抗体及びその断片)に関し、これらは癌および子宮内膜症に関連(relevant)するエピトープに結合する。係るメンバーは、腫瘍の診断および治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【図1a】図1aは、SC104抗体の重鎖可変ドメインおよび定常領域の一部の核酸配列およびアミノ酸配列を示す。
【図1b】図1bは、図1aに記載したものと同一の配列を示すが、カバット ナンバリングシステム(Kabat numbering system)が用いられている。
【図1c】図1cは、SC104抗体の軽鎖可変ドメインおよび定常領域の一部の核酸配列およびアミノ酸配列を示す。
【図1d】図1dは、SC104抗体のキメラ バージョン(トランスフェクトされた細胞株によって産生された)が、標的細胞株に結合することを実証する図である。
【図2a】図2aは、細胞株〔Colo205, C170, MCF-7, MDA-231, MDA-435, T47D, ZR75, MKN45, RID9, T24, A431, PA1およびOAW28(ECACCから取得された)〕の一団(a panel)にSC104が結合することを実証するグラフである。細胞をELISAで染色した。結果は、各細胞株に関して吸光度(405nm)として表す。
【図2b】図2bは、次の細胞株(即ち、C170, HT-29, LoVo, Colo205, MKN45, RID9およびA431)へSC104が結合することを実証しているグラフである。細胞を間接免疫蛍光法で染色し、そしてフローサイトメトリーで分析した。結果を各細胞株に関してX-平均(X-mean)として表わす。SC101/29は、Scancellよりポジティブコントロールとして供給された、これはルイスy/bを認識する。アイソタイプ適合性抗体(An isotyped matched antibody)が、ネガティブコントロールとして使用された。
【図3】図3は、モノクローナル抗体の新たに脱凝集させた結腸直腸腫瘍細胞への結合を実証するグラフである(間接免疫蛍光法によるアッセイおよびフローサイトメトリーによる分析)。各ポイントは、個々の腫瘍に関する平均蛍光(mean fluorescence)を意味する。
【図4】図4は、SC104 mabが精製CEA、C14抗原および腫瘍糖脂質抽出物へ結合することを実証しているグラフである。C14抗原(90KDa糖タンパク質は、アフィニティークロマトグラフィーをC14モノクローナルで行うことによって唾液から精製された)、CEA〔180KDa糖タンパク質は、結腸直腸腫瘍の生きた転移物(live metastases)から、アフィニティークロマトグラフィーを365 mabで行うことによって精製された〕および糖脂質抽出物 (3:1メタノールクロロホルム w/v中で結腸直腸腫瘍から抽出された糖脂質)を、マイクロタイタープレート上で37℃で一晩インキュベーションすることによって乾燥させた。SC104 mabの結合をELISAでアッセイし、結果を吸光405nmとして表した。SC101および抗CEA抗体を、ポジティブコントロールとして含めた。
【図5】図5は、以下に説明されるHPTLCプレートを示す図である。A. 36mlのベットボリューム(bed volume)のカラムから収集されたフラクションのSC104免疫染色。レーンWは、分取前の全C170抽出物(whole C170 extract)である。収集された最初の6x10mlフラクションは、レーン1から6にスポットされている。他方で、最後の14レーンは、収集された次の14x3mlフラクションを表している。SC104抗原は、フラクション6に配置されえる(RF 0.53を有する)。B. 二次抗体のみではバンドを示さず、このことは結合がSC104に特異的であることを指摘している。
【図6】図6は、以下に説明されるHPTLCプレートを示す図である。(A) フラクション6のオルシノール染色によって、RF値がRF 0.50および0.61の間の3つのバンドが明らかである。(B)同じフラクションのSC104免疫染色は、RF 0.36および0.39の間の3つの密接するバンドを示した。
【図7】図7は、全C170抽出物(レーンW)、フラクション6 (レーン6)および脱グリコシル化脂質(レーンL)のSC104免疫染色を示しているHPTLCプレートを示す図である。抗原は全抽出物およびフラクション6において観察された(RF 0.38〜0.46)。しかし、セラミドグリカナーゼ(ceramide glycanase)で脱グリコシル化後の脂質フラクションにおいてはもはや検出されなかった。
【図8】図8は、部分的に精製された抗原のSC104免疫染色を呈するHPTLCプレートを示す図である。鉛筆マークは、ヨウ素蒸気染色(iodine vapour staining)で検出された脂質の位置を示す。レーン1および2は、それぞれ水相および有機相へと分離させた後のセラミドグリカナーゼ処理された抗原を含有する。放出されたオリゴ糖は水相へ、遊離した脂質は有機相へと分配される。任意の未消化の糖脂質は、全体の極性に依存して何れかの相へと分配される。レーン3および4は、セラミドグリカナーゼの非存在下で、同じ水相および有機相へと分配されたフラクションである。抗原は、脱グリコシル化前に検出(RF 0.48および0.40)されたが、オリゴ糖除去の後ではない。
【図9】図9は、C170細胞からの単純(レーンS)、糖脂質(レーンG)およびリン脂質(レーンP)フラクションのSC104免疫染色(A)並びにオルシノール染色(B)を呈しているHPTLCプレートを示す図である。抗原は、単純(simple)およびリン脂質フラクション(RF 0.54, 0.51および0.41)において検出されたが、中性糖脂質部では検出されなかった。オルシノール染色によって、前記抗原と共移動(co-migrate)するリン脂質フラクション(RF 0.54および0.51)において2つの別個のバンドが明らかとなった。
【図10】図10は、C170全脂質抽出物(C170 whole lipid extract)の2次元HPTLCプレートをオルシノール(A)またはSC104免疫染色(B)を行ったものを示す。第1次元を50:40:10クロロホルム:メタノール:CaCl2(0.5 % w/v)中で展開し、そして第2次元を10:4:2:2: 1クロロホルム:アセトン:メタノール:酢酸:水中で展開した。前記抗原は、第1次元ではRF 0.48に移動し、第2次元では移動しない。オルシノール染色されたバンドは、前記抗原と共移動することが再び認められた。
【図11】図11は、ノイラミニダーゼ消化による脱シアリル化(de-sialylation)を伴う(レーン1および2)および伴なわない(レーン3)抗原のSC104免疫染色を呈しているHPTLCプレートを示す図である。脱シアリル化は、比較的極性の低い(RF 0.46)クラスターのより強い染色および比較的極性の高い(RF 0.62)クラスターの染色の減少を生じる。
【図12】図12は、シリカカラムからのC170脂質フラクションのHPTLCプレートを示す図である。プレートは、SC104(A)、二次抗体のみ(B)でプローブされるか又はオルシノール(C)またはニンヒドリン(D)で染色された。抗原は、全抽出物(レーンW)およびシアル化糖脂質フラクション(レーンN1、N2およびN3)において検出された。抗原は、単純(レーンS)またはリン脂質/中性糖脂質フラクション(レーンP)の何れでも観察されなかった。
【図13】図13は、SC104抗原がSC104と交差反応することが認められ、他方でそれは抗-シアリルルイス a (臨床ポテンシャルに関して以前に評価された生体分子)または19/9 抗体には交差反応しなかったことを実証するグラフである。
【図14】図14は、SC104-プロテインA セファロースカラムを用いて、銀染色ゲル上で同定された50-75KDaの間のSC104免疫精製抗原に対するバンドを実証するグラフである。
【図15】図15は、痰からの精製されたSC104フラクションが、C170細胞との結合に関して、SC104ビオチンと競合することを示す。
【図16】図16は、C170腫瘍細胞における、SC104(またはコントロール791T/36抗体)の効果を実証しているヒストグラムである。細胞をFITC標識アネキシンおよびプロピジウムヨウ化物で染色し、そして次に二重色フローサイトメトリーにより分析した。結果は、アネキシン、PI、または両方で染色した細胞の%として表される。SC101/29は、ポジティブコントロールとして含まれる。
【図17】図17は、付着C170細胞に6hr暴露後の汎カスパーゼのFITC-z-FMK-vad活性化を示すグラフである。結果は、X-平均として表される。
【図18】図18は、SC104抗体で処理された付着細胞におけるカスパーゼ6活性化を実証する図である。SC101抗体処理細胞は、ネガティブコントロールとして含まれる。
【図19】図19は、SC104処理細胞が、(A)3uM z-FMK-vadインヒビターにも暴露される場合、(B)細胞死が、アネキシンV FITCおよびプロピジウムヨウ化物を用いてアッセイされる際に有意に減少されえることを実証する図である。
【図20】図20は、腫瘍細胞株(Colo205, C170, HT29およびLoVo)の特定範囲の%生存度(薬物に暴露された細胞数/コントロールに暴露された細胞数)を示すグラフである。生細胞数を、MTSおよび490nmで記録した光学濃度により決定した。
【図21】図21は、腫瘍細胞株(C170, Colo205, HT-29およびLoVo)に関してフィットさせたIC50を示しており、これは典型的な細胞生存度の結果(%生存度=薬物に暴露された細胞数/コントロールに暴露された細胞数)から外挿された(MTSおよび490nmで記録した光学濃度により決定された)。
【図22】図22は、腫瘍細胞の固定〔セルフィックス(Cellfix)又はグルタルアルデヒドによる〕が、前記抗体の腫瘍細胞株C170への結合を、培地単独中で未処理のものと比較して、有意に変化させないことを示すグラフである。細胞を、間接的な免疫蛍光によって染色し、フローサイトメトリーによって分析し、結果を平均リニア蛍光値として表した。
【図23a】図23aは、SC104が同種親和性(homophilic)の特性で抗原の非存在下で結合しないことを示す図である。マイクロタイタープレートを、SC104抗体の濃度を増加させて添加する前に、ヤギ抗マウスIgG Fc特異的抗体でコートした。結合したSC104抗体を、ELISAを使用して、ヤギ抗-マウス ホースラディッシュペルオキシダーゼおよびTMBで検出した。SC104がそれ自身に結合するかどうかを決定するために、SC104ビオチンを添加し、その結合をSA-HRP/TMBで検出した。コントロールが含まれ、SC104はSA-HRP/TMBで検出することができなかったが、SC104およびSC104ビオチンの双方はヤギ抗-マウスHRPで検出することができた。結果は、570nmでの吸光度として表される。
【図23b】図23bは、SC104がC14抗原の存在下で同種親和性の様式で結合することを示す。プレートをC14抗原でコートし、SC104を各ウェルの前記抗原へと添加した。この事項は、ヤギ抗-マウスHRP/TMBで確認された。SC104ビオチンを、次に濃度を増加させて添加し、その結合をSA-HRP/TMBで検出した。結果は、650nmでの吸光度として表される。
【図24】図24は、細胞における5-フルオロウラシルおよびSC104抗体の効果を実証しているグラフ。C170細胞をSC104またはコントロール791T/36抗体(示さず)および5-FUに暴露した。細胞数をMTSおよび490nmで記録した光学濃度により決定した。
【図25】図25は、C170細胞における5-FU、シスプラチン、マイトマイシンC、オキサリプラチン、およびタモキシフェンの効果を、単独で又はSC104抗体との組合せで、或いはSC104抗体単独で実証しているグラフである。
【図26a】図26は、SC104、5-FU/ロイコボリン並びにSC104および5FU/ロイコボリンの組合せの、ヌードマウス中で成長しているC170異種移植片の成長における効果を実証しているグラフである。a)動物がSC104 ip(0.2mg)、コントロール抗体 ip (0.2mg)および5-FU/ロイコボリン(12.5mg/Kgiv)またはSC104 ip (0.2mg)および5-FU/ロイコボリン(12.5mg/Kg iv, )で、1, 3, 5, 7, 21, 22日に処理された際に、C170異種移植片の成長を7, 9, 12, 14および16日に断面積(mm2)の測定によって測定した。
【図26b】図26は、SC104、5-FU/ロイコボリン並びにSC104および5FU/ロイコボリンの組合せの、ヌードマウス中で成長しているC170異種移植片の成長における効果を実証しているグラフである。b)生存度プロットは、SC104、5-FU/ロイコボリン又はSC104および5-FUの組合せの、C170異種移植片を発現しているヌードマウスの生存における効果を実証している。動物を、SC104 ip(0.2mg)、コントロール抗体 ip(0.2mg)および5-FU/ロイコボリン(12.5mg/Kgiv)またはSC104 ip(0.2mg)および5FU/ロイコボリン(12.5mg/Kg iv,)で、1, 3, 5, 7, 21, 22日に処理した。
【図26c】図26は、SC104、5-FU/ロイコボリン並びにSC104および5FU/ロイコボリンの組合せの、ヌードマウス中で成長しているC170異種移植片の成長における効果を実証しているグラフである。c)動物を、SC104 ip(0.2mg)、コントロール抗体 ip(0.2mg)および5-FU/ロイコボリン(12.5mg/Kgiv)またはSC104 ip(0.2mg)および5-FU/ロイコボリン(12.5mg/Kg iv, )で、1, 3, 5, 7, 21, 22日に処理した後に、7, 14, 21, 28および36日に秤量した。
【図27】図27は、ヌードマウスで成長させたC170異種移植片(xenografts)の成長における、SC104 、5FU/ロイコボリン並びにSC104および5FU/ロイコボリンの組合せの効果を実証しているグラフである。マウスを、%FU/ロイコボリン25mg/Kg ivで1, 3, 5, 7, 21, 22日に及びSC104抗体(0.2mg)で5日に開始して週に3回処理した。動物がSC104 ip(0.2mg)、コントロール抗体 ip(0.2mg)および5-FU/ロイコボリンまたはSC104 ip(0.2mg)および5FU/ロイコボリンで処理された際に、C170異種移植片の成長を7, 9, 12, 14および16日に断面積(mm2)の測定によって測定した。グラフは、C170異種移植片を発現しているヌードマウスの生存における、SC101、5FU/ロイコボリン或いはSC101および5FUの組合せの効果を実証している。
【発明の詳細な説明】
【0003】
GM2、GD3およびGM3ガングリオシドに結合する抗体は知られている。しかし、シアリルテトラアオシルセラミド(sialyltetraosylceramide)に結合する抗体〔しかし、GM1、GD1a、GT1bまたはシアリルルイス抗原(sialyl Lewis antigens)には結合しない〕は、これまで記載されていない。本明細書中で「SC104」として知られるマウスモノクローナル抗体(mab)は、4つの結腸直腸癌細胞株で順次に免疫されて産生され、結腸直腸腫瘍の71%に結合する。SC104は、シアリルテトラアオシル糖〔これは脂質(セラミド)またはタンパク質バックボーン(protein backbone)に存在しえるものである〕に対し特異的であり、食道、結腸直腸、胃、乳房(breast)、耳下腺および子宮内膜(endometrial)の腫瘍を認識する。SC104は、IgG1抗体であるので例外的である。糖抗原の免疫学的特徴の1つは、それらが通例T細胞非依存性応答を惹起し、IgM抗体の産生を生じることである。SC104は、結腸直腸株化細胞C170から抽出された脂質抽出物のHPLTCプレートを免疫染色することによって、シアリルテトラアオシルセラミドに結合することが示された。また、SC104は、シアリルテトラアオシル糖を有するタンパク質部分(a protein moiety)に結合することが示された。正常組織の認識は、最小限であり、大腸、唾液腺、小腸、胸腺、扁桃腺(tonsils )および子宮頚部への中等度の染色性に限られたものであった。また、本発明者は、驚くべきことに、前記抗体が細胞死を誘導することをも発見した。
【0004】
本発明の第一側面によると、シアリルテトラアオシル糖に結合し、免疫エフェクター細胞が必要とされない細胞死を直接的に誘導する能力を有する、単離された特異的結合メンバーが提供される。
【0005】
本発明の第二側面は、シアリルテトラアオシル糖に結合する能力を有する単離された特異的結合メンバーを提供し、該シアリルテトラアオシル糖は、図1aのアミノ酸配列の残基44または49〜54、69〜84および117〜127として実質的に記載されたアミノ酸配列を含んでいるドメインから選択される、1以上の結合ドメインを具備しているメンバーによって結合される能力を有する。
【0006】
前記結合ドメインは、図1aの残基117〜127として実質的に表されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0007】
一態様において、本発明の第二側面の単離された特異的結合メンバーは、図1aのアミノ酸配列の残基44または49〜54、69〜84または117〜127として実質的(substantially)に表されるアミノ酸配列を含むドメインから選択される1以上の結合ドメインを具備する。
【0008】
一態様において、前記メンバーは、図1aのアミノ酸配列の残基117〜127として実質的に表されるアミノ酸配列を含む結合ドメインを具備する。本態様において、前記単離された特異的結合メンバーは、図1aに示されるアミノ酸配列の残基44または49〜54および残基69〜84として実質的に表される結合ドメインの1つ又は両方(好ましくは、両方)を付加的に具備してもよい。
【0009】
本発明の第二側面の1つの単離された特異的結合メンバーは、図1aに示されるアミノ酸配列の残基19〜138として実質的に表されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
第三側面において、本発明は、シアリルテトラアオシル糖に結合する能力を有する単離された特異的結合メンバーを提供する。該シアリルテトラアオシル糖は、図1cのアミノ酸配列の残基46〜55、71〜77および110〜118として実質的に記載されたアミノ酸配列を含んでいるドメインから選択される、1以上の結合ドメインを具備しているメンバーによって結合される能力を有する。
【0011】
前記結合ドメインは、図1cのアミノ酸配列の残基110〜118として実質的に表されるアミノ酸配列を具備してもよい。
【0012】
一態様において、本発明の第三側面の単離された特異的結合メンバーは、図1cのアミノ酸配列の残基46〜55、71〜77および110〜118として実質的に表されるアミノ酸配列を含むドメインから選択される1以上の結合ドメインを具備する。
【0013】
一態様において、前記メンバーは、図1cのアミノ酸配列の残基110〜118として実質的に表されるアミノ酸配列を含む結合ドメインを具備する。本態様において、前記単離された特異的結合メンバーは、図1cに示されるアミノ酸配列の残基46〜55および71〜77として実質的に表される結合ドメインの1つ又は両方(好ましくは、両方)を付加的に具備してもよい。
【0014】
同じ又は異なる配列(又はその組合せ)の複数の結合ドメインを具備する特異的結合メンバーは、本発明に含まれる。前記の又は各々の結合ドメイン(The or each binding domain)は、ヒト抗体フレームワークによって保有されてもよい。例えば、1以上の結合領域が、完全なヒト抗体(whole human antibody)の又はその可変領域のCDRsに対して置換されてもよい。
【0015】
本発明の第三側面の1つの単離された特異的結合メンバーは、図1cに示されるアミノ酸配列の残基23〜128として実質的に表される配列を含む。
【0016】
第四側面において、本発明は、前記第二側面の結合メンバーと前記第三側面の結合メンバーとを、組合せて(in combination)又は関連(association)させて具備する特異的結合メンバーを提供する。係る結合メンバーは、Fv、(Fab')2、またはscFV抗体断片の形態であってもよい。
【0017】
本発明の特異的結合メンバーは、検出可能な又は機能的な標識を保有(carry)したものであってもよい。
【0018】
更なる側面において、本発明は、本発明の第一、二、三、または四側面の特異的結合メンバーをコード化している配列を含む単離された核酸を提供する。また、前記核酸を前記結合メンバーの発現を生じせしめる条件下で発現させることと、前記結合メンバーを回収することとを備える本発明の特異的結合メンバーを調製する方法を提供する。
【0019】
本発明による特異的結合メンバーは、患者(好ましくは、ヒト)の腫瘍の治療する方法などのヒトまたは動物の身体を治療または診断する方法に使用しえるものであり、該方法は前記患者に効果的な量の本発明の特異的結合メンバーを投与することを備える。また、本発明は、医療(medicine)に使用するための本発明の特異的結合メンバーを、同様に、腫瘍の診断または治療のための医薬の製造における本発明の特異的結合メンバーの使用を提供する。
【0020】
また、本発明は、本発明の特異的結合メンバーが結合する抗原を提供する。一態様において、本発明の特異的結合メンバーによって結合(好ましくは、特異的に)される能力を有するシアリルテトラアオシル糖が提供される。前記シアリルテトラアオシル糖は、単離型(isolated form)で提供されてもよい、そして、それに対する更なる特異的結合メンバーを開発するための選抜に使用しえる。例えば、化合物のライブラリを、前記シアリルテトラアオシル糖に特異的に結合するライブラリのメンバーに関して選抜してもよい。前記シアリルテトラアオシル糖は、脂質バックボーン(即ち、シアリルテトラアオシルセラミド)またはタンパク質バックボーン上であってもよい。タンパク質バックボーン上にある場合、それは約50〜75kDaの分子量を有しえる(SDS-PAGEによって決定される)。
【0021】
本発明のこれらの及び他の側面は、以下にさらに詳細に記載される。
【0022】
本明細書で使用される、「特異的結合メンバー(specific binding member)」は、互いが結合特異性を有する分子ペア(a pair of molecules)のメンバーである。特異的結合ペアのメンバーは、天然に由来する又は全体的もしくは部分的に合成により産生されるものであってもよい。前記分子ペアの一方のメンバーはその表面に領域(an area)を有しており、その領域は隆起(a protrusion)または腔(a cavity)であってもよく、その領域は前記分子ペアの他方のメンバーの特定の空間及び極性に関する組織体(organisation)と特異的に結合し、それ故その組織体と相補的である。従って、前記ペアの前記メンバーは、互いに特異的な結合特性を有している。特異的結合ペアのタイプの例は、抗原―抗体、ビオチン―アビジン、ホルモン―ホルモンレセプタ、レセプタ―リガンド、酵素―基質である。本発明は通常は抗原―抗体タイプの反応に関するが、本発明は本明細書中で規定される抗原に結合する小分子にも関する。
【0023】
本明細書中に使用される「治療(treatment)」には、ヒトまたは非ヒト動物(好ましくは、哺乳類)に有益な任意の措置(regime)が含まれる。治療は、存在しているコンディション(an existing condition)に関するものであってもよく、または予防的なもの(予防的治療)であってもよい。
【0024】
本明細書中に使用される「腫瘍(tumour)」は、組織の異常な成長である。腫瘍は、局所性(良性)または近位の組織(悪性)もしくは遠位の組織(転移性)に浸潤性(invade)であってもよい。腫瘍には、癌の原因となる新生物性の成長が含まれる。また、腫瘍には、食道、結腸直腸、胃、乳房および子宮内膜の腫瘍、同様に癌性の組織または細胞株(白血病の細胞が含まれるが、限定されない)が含まれる。本明細書中に使用される、「腫瘍」には、その範囲内に子宮内膜症(endometriosis)も含まれる。
【0025】
本明細書中に使用される「抗体」の用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分(即ち、天然のものであろうが又は部分的に若しくは全体的に合成によって産生されたものであろうが、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子)を意味する。また、前記用語は、抗体結合ドメイン(an antibody binding domain)である若しくは該ドメインと相同である結合ドメインを有している任意のポリペプチドまたはタンパク質をもカバーする。これらは天然の供給源に由来するものであってもよい、又はそれらは部分的に若しくは全体的に合成によって産生されたものであってもよい。抗体の例は、免疫グロブリンアイソタイプ(例えば、IgG, IgE, IgM, IgDおよびIgA)及びそれらのアイソタイプサブクラス;Fab、scFv、Fv、dAb、Fdなどの抗原結合ドメインを含む断片;並びにディアボディー(diabodies)である。抗体は、ポリクローン性であっても又はモノクローン性であってもよい。モノクローナル抗体は、本明細書中で「mab」と称されえる。
【0026】
モノクローナルおよび他の抗体並びに組換えDNA技術を使用して、オリジナル抗体の特異性を保持している他の抗体またはキメラ分子を産生することが可能である。係る技術は、抗体の免疫グロブリン可変領域または相補性決定領域(CDRs)をコードしているDNAを、異なる免疫グロブリンの定常領域に又は定常領域+フレームワーク領域に導入することを利用する技術であってもよい。例えば、EP-A-184187、GB2188638AまたはEP-A-239400を参照されたい。ハイブリドーマまたは抗体を産生している他の細胞に遺伝的変異を又は他の変化を生じさせてもよく、それによって産生された抗体の結合特異性が変更されても、されなくてもよい。
【0027】
抗体は幾つかの様式で修飾できるので、「抗体」の用語は、要求される特異性を有する結合ドメインを有している任意の特異的結合メンバーまたは物質(substance)を網羅していると解釈すべきである。従って、この用語は、天然のものであろうと又は全体的に若しくは部分的に合成によるものであろうと、免疫グロブリン結合ドメインを具備している任意のポリペプチドを含む、抗体の断片、誘導体、機能的な均等物および抗体のホモログ、ヒト化抗体を網羅する用語である。従って、別のポリペプチドと融合させた免疫グロブリン結合ドメイン(又は均等物)を含んでいるキメラ分子が含まれる。キメラ抗体のクローニングおよび発現は、EP-A-0120694およびEP-A-0125023に記載されている。ヒト化抗体は、非ヒト(例えば、マウス)抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域とを有している修飾抗体であってもよい。ヒト化抗体を作出するための方法は、例えば、米国特許第5225539号に記載されている。
【0028】
完全な抗体(a whole antibody)の断片が、抗原に結合する機能を果たし得ることが示されている。結合断片の例は、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFv断片;(iv)VHドメインからなるdAb断片(Ward, E.S. et al., Nature 341:544-546 (1989));(v)単離されたCDR領域;(vi)F(ab')2 断片、2つの連結したFab断片を含んでいる二価の断片;(vii)単鎖Fv分子(scFv)〔この分子中でVHドメインおよびVLドメインは2つのドメインが相互作用して抗原結合部位を形成することが可能なペプチドリンカーにより連結される〕〔Bird et al., Science 242:423-426 (1988); Huston et al., PNAS USA 85:5879-5883 (1988)〕;(viii)二重特異性(bispecific)の単鎖Fvダイマー(PCT/US92/09965)並びに(ix)「ディアボディー(diabodies)」、遺伝子融合によって構築される多価(multivalent)又は多重特異性(multispecific)の断片〔W094/13804; P. Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)〕である。
【0029】
ディアボディーはポリペプチドのマルチマー(multimers)であり、各ポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖の結合領域を含んでいる第1ドメインと免疫グロブリン重鎖の結合領域を含んでいる第2ドメインとを含み、前記2つのドメインは連結(例えば、ペプチドリンカーによって)されているが、互いに相互作用して抗原結合部位を形成することができないものであり、即ち:抗原結合部位は、前記マルチマー内の1つのポリペプチドの第1ドメインを前記マルチマー内のもう1つのポリペプチドの第2ドメインと相互作用させることによって形成される(WO94/13804)。
【0030】
二重特異性抗体(bispecific antibodies)が使用される場合、これらは従来の二重特異性抗体であってもよい;該二重特異性抗体は、多様な様式〔Hollinger & Winter, Current Opinion Biotechnol. 4:446-449 (1993)〕、例えば、化学的に、又はハイブリッド ハイブリドーマから製造することが可能である、又は上記の二重特異性抗体断片の何れかであってもよい。完全な抗体よりもscFvダイマーまたはディアボディーを使用することが好ましいであろう。ディアボディーおよびscFvは、可変ドメインのみ(抗イディオタイプ反応の効果を潜在的に減少させる)を用いて、Fc領域なしで構築することができる。他の形態の二重特異性抗体には、文献〔Traunecker et al., EMBO Journal 10:3655-3659 (1991)〕に記載の単鎖の「ヤヌシン(Janusins)」が含まれる。
【0031】
二重特異性ディアボディー(二重特異性の完全な抗体と対比して)も有用であろう。というのも、彼等を容易に構築し、大腸菌で発現させることができるからである。適切な結合特異性のディアボディー(および多くの他のポリペプチド、例えば、抗体フラグメント)は、ライブラリーからファージディスプレイ(WO94/13804)を用いて容易に選択することができる。ディアボディーの1腕が一定に維持されるべき場合(一例を挙げると、抗原Xに対する特異性を有する)に、他腕が変化し、適切な特異性の抗体が選択されるようにライブラリを作出することができる。
【0032】
「抗原結合ドメイン(antigen binding domain)」は、抗原の部分または全てに特異的に結合し且つ相補的(complementary)である領域を具備する抗体の一部である。抗原が大きい場合、抗体は前記抗原の特定部分にのみ結合する;この部分はエピトープと称される。抗原結合ドメインは、1以上の抗体可変ドメインによって提供されてもよい。抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を具備してもよい。
【0033】
「特異的(Specific)」は、通常は次の状況を意味するために使用される;その状況とは、特異的結合ペアの1つのメンバーが、その特異的な結合パートナー(s)以外の分子に何らかの有意な結合を示さないことであり、例えば、何らかの他の分子に対し約30%、好ましくは20%、10%、または1%未満の交差反応性を有することである。また、前記用語は、次の状況に適用可能である;その状況とは、例えば、抗原結合ドメインが幾つかの抗原によって保有される特定のエピトープに対して特異的であることであり、この場合において、前記抗原結合ドメインを保有している特異的結合メンバーは、前記エピトープを保有している多様な抗原に結合することができる。
【0034】
「単離された(Isolated)」は、本発明の特異的結合メンバーが又は係る結合メンバーをコード化している核酸が本発明に好ましくしたがっている状態を意味する。メンバーおよび核酸は、通常は遊離状態であるか、或いは、彼等が彼等の天然の環境で又は調製がインビトロまたはインビボで行われる組換えDNA技術によるものである場合に彼等が調製される環境(例えば、細胞培養)で見いだされる他のポリペプチドまたは核酸などの彼等が天然で相互作用している物質から実質的に遊離(substantially free)している。特異的結合メンバーおよび核酸は希釈剤またはアジュバントで製剤化されてもよく、実際上の目的のために単離されてもよく ― 例えば、前記メンバーは、ゼラチンまたは他の担体と通常混合される(免疫アッセイに使用するためのマイクロタイタープレートをコートするために使用される場合)、又は薬学的に許容される担体または希釈剤と混合される(診断または治療に使用される場合)。特異的結合メンバーは、グリコシル化(天然の又は異種性の真核細胞の系によって)されてもよい;或いは、彼等は、(例えば、原核細胞内での発現によって産生された場合に)グリコシル化されなくてもよい。
【0035】
「実質的に表される(substantially as set out)」によって、本発明のCDR領域が図1aおよび1cの特定の領域と同一(identical)であるか又は高度に相同性であることを意味する。「高度に相同性(highly homologous)」によって、1〜5、1〜4、1〜3、2または1つの置換が前記CDRs中に作出されえることを意図する。
【0036】
また、本発明はその範囲内に、図1aまたは1cに表されるアミノ酸配列を有しているポリペプチド、図1aまたは1cに表される核酸配列を有しているポリヌクレオチド、及びそれに相当程度(substantial)の同一性を有している配列(例えば、それに対して、70%、80%、85%、90%、95%または99%同一性)を含む。2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列のパーセント同一性は、該配列を最適比較の目的(例えば、ギャップを第一配列に第二配列との最適アライメントを達成するために導入できる)で整列させること並びに対応する位置(corresponding positions)でアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較することによって通常は決定される。「最適アライメント(best alignment)」は、2つの配列のアライメントであって、最大のパーセント同一性を生じるアライメントである。パーセント同一性は、配列内の同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドの数を比較することにより決定される(即ち、%同一性 = 同一ポジションの数/ポジションのトータル数 X 100)。
【0037】
2配列間のパーセント同一性の決定は、当業者に既知の数学的アルゴリズムを用いて達成することが可能である。2配列を比較するための数学的アルゴリズムの例は、文献〔Karlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877でのように修正された〕に記載されたアルゴリズムである。Altschul等〔Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410〕のNBLASTおよびXBLASTプログラムは、係るアルゴリズムを導入している。BLASTヌクレオチドサーチを、NBLASTプログラム(スコア=100、ワード長=12)で実施して本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を取得することが可能である。BLASTタンパク質サーチを、XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)で実施して本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を取得することが可能である。比較目的でギャップアライメント(gapped alignments)を取得するために、Gapped BLASTをAltschul等〔Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402〕に記載のとおりに利用できる。或いは、PSI-Blastを使用して分子間の遠縁の類縁関係(distant relationships)を検出する反復サーチ(iterated search)を実施できる(Id.)。BLAST、Gapped BLAST、およびPSI-Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)の初期設定パラメータを使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照されたい。配列比較に利用される数学的アルゴリズムの別の例は、MyersおよびMiller〔Myers and Miller, CABIOS (1989)〕のアルゴリズムである。ALIGNプログラム(バージョン2.0)は、GCG配列アライメントソフトウェアパッケージの一部であり、係るアルゴリズムが導入されている。当該技術分野において既知の、配列分析に関する他のアルゴリズムには、TorellisおよびRobotti〔Torellis and Robotti (1994) Comput. Appl. Biosci., 10 :3-5〕に記載のADVANCEおよびADAM;並びにPearsonおよびLipman〔Pearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85:2444-8〕に記載のFASTAが含まれる。FASTA内のktupは、コントロールオプションであり、サーチの感度と速度とを設定する。
【0038】
単離された本発明の特異的結合メンバーは、シアリルテトラアオシル糖に結合する能力があり、これはシアリルテトラアオシルセラミドであってもよく又はタンパク質部分上にあってもよい。一態様において、CDR3領域(図1aの残基117〜127および図1cの110〜118として実質的に表されるアミノ酸配列を含んでいる)は、これらの領域のシアリルテトラアオシル糖への結合を許容する構造中に保有される。
【0039】
本発明のCDR3sを保有させるための構造は、抗体の重または軽鎖配列又はその実質的な部分であり、ここで、CDR3領域は、再構成された免疫グロブリン遺伝子によってコード化された天然のVHおよびVL抗体可変ドメインのCDR3領域に対応する位置に局在される。免疫グロブリン可変ドメインの構造および位置は、カバットら〔Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 4th Edition, US Department of Health and Human Services, (1987)〕、及びそのアップデート〔インターネット(http://immuno.bme.nwu/edu)において利用可能である〕を参照することによって決定しえる。
【0040】
図1aの残基117〜127として実質的に表されるアミノ酸配列は、ヒト重鎖可変ドメイン又はその実質的な部分においてCDR3として保有されえる。そして、図1cの残基110〜118として実質的に表されるアミノ酸配列は、ヒト軽鎖可変ドメイン又はその実質的な部分においてCDR3として保有されえる。
【0041】
前記可変ドメインは、任意の生殖系列又は再構成されたヒト可変ドメインから由来するものであってもよい、又は既知のヒト可変ドメインのコンセンサス配列に基づいた合成の可変ドメインであってもよい。本発明のCDR3-由来配列を、CDR3領域を欠いている可変ドメインのレパートリーへ組換えDNA技術を用いて導入しえる。
【0042】
例えば、Marks等〔Bio/Technology 10:779-783 (1992)〕は、抗体の可変ドメインのレパートリーを産生する方法を記載しており、この文献において、可変ドメイン域の5'端に向けられた、又は、に隣接するコンセンサスプライマーが、ヒトVH遺伝子の第3のフレームワーク領域に対するコンセンサスプライマーと共同(in conjunction with)して使用されて、CDR3を欠いているVH可変ドメインのレパートリーが提供されている。Marks等は、このレパートリーが特定の抗体のCDR3といかに合併(combined)されるかについてさらに記載している。類似する技術を用いて、本発明のCDR3-由来配列を、CDR3を欠いているVHまたはVLドメインのレパートリーでシャッフルすることが可能である;シャッフルされた完全なVHまたはVLドメインは、同族(cognate)のVLまたはVHドメインと合併されて本発明の特異的結合メンバーを提供する。前記レパートリーは、WO92/01047のファージディスプレイシステムなどの適切な宿主系で呈示されて、適切な特異的結合メンバーが選択される。レパートリーは、104の個々のメンバー以上(例えば、106〜108または1010のメンバー)からのもの(anything)からなっていてもよい。
【0043】
また、類似するシャッフリングまたはコンビナトリアル技術は、Stemmer〔Nature 370: 389-391 (1994)〕に開示されている。Stemmerは、β-ラクタマーゼ遺伝子に関する技術を記載しているが、しかし、前記アプローチが抗体の産生に使用しえることを観察している。
【0044】
更なる代替技術は、本発明のCDR3-由来配列を保有している新規のVHまたはVL領域を、全可変ドメイン内で突然変異を発生させるためのランダム突然変異誘発(例えば、VHまたはVL遺伝子のランダムの突然変異誘発)を用いて産生することである。係る技術は、Gram等〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:3576-3580 (1992)〕に記載されている。Gram等は、エラー易発性PCR(error-prone PCR)を使用した。
【0045】
使用されえる別の方法は、突然変異誘発をVHまたはVL遺伝子のCDR領域に方向付けることである。係る技術は、Barbas等〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3809-3813 (1994)〕およびSchier等〔J. Mol. Biol. 263:551-567 (1996)〕によって開示されている。
【0046】
免疫グロブリン可変ドメインの実質的な部分は、通常は少なくとも3つのCDR領域を、彼等の介在するフレームワーク領域と共に具備している。前記部分には、少なくとも約50%の第1および第4のフレームワーク領域のうちの何れか又は両方もが含まれえる。前記50%は、第1のフレームワーク領域のC端50%および第4のフレームワーク領域のN端50%である。前記可変ドメインの実質的な部分のN末端またはC末端での付加的な残基は、天然の可変ドメイン領域と通常関連するものでなくてもよい。例えば、組換えDNA技術で作出される本発明の特異的結合メンバーの構築によって、クローニングまたは他の操作工程を促進するために導入されるリンカーにコードされるNまたはC端の残基の導入を生じてもよい〔これには、本発明の可変ドメインを、以下に詳細に記載される免疫グロブリン重鎖、他の可変ドメイン(例えば、ディアボディーの産生において)またはタンパク質標識を含む更なるタンパク質配列と連結させるためのリンカーの導入が含まれる〕。
【0047】
本発明の一態様は、図1aまたは1cに実質的に表されるVLおよびVH領域(即ち、図1aのアミノ酸19〜138および図1cのアミノ酸23〜128)に関するアミノ酸配列に基づいた結合ドメインのペアを含んでいる特異的結合メンバーを提供する。これらの配列の何れかに基づく単一の結合ドメインは、本発明の更なる側面を形成する。図1aに実質的に表されるVH領域に関するアミノ酸配列に基づいた結合ドメインの場合において、係る結合ドメインは、標的薬剤(targeting agents)として使用されてもよい(というのも、免疫グロブリンVHドメインが、標的抗原に特定の様式で結合する能力を有することが知られているからである)。
【0048】
単鎖の特異的結合ドメイン(the single chain specific binding domains)の何れかの場合において、これらのドメインを使用して、本明細書中に開示されたSC104抗体と同等(as good as)または匹敵(equal)するインビボ特性を有する、2ドメインの特異的結合メンバー(a two-domain specific binding member)を形成する能力を有する相補ドメインに関して選抜してもよい。
【0049】
これは、WO92/01047中に開示された、いわゆる階層的な二重コンビナトリアル アプローチを用いたファージディスプレイスクリーニング方法によって達成されてもよい;WO92/01047において、HまたはL鎖クローンの何れかを含有している個々のコロニーを使用して、他の鎖(LまたはH)をコードしているクローンの完全なライブラリーを感染させ、これによって2鎖の特異的結合メンバーが、その文献に記載された技術などのファージディスプレイ技術にしたがって選択される。また、この技術は、Marks等(同上)に開示されている。
【0050】
本発明の特異的結合メンバーは、抗体の定常領域又はその部分を更に具備してもよい。例えば、図1cに示されるVL領域に基づく特異的結合メンバーを、彼等のC末端で、抗体軽鎖の定常ドメイン(ヒトCκまたはCλ鎖を含む)に付着させてもよい。同様に、図1aまたは1bに示されたVH領域に基づいた特異的結合メンバーを、彼等のC末端で、任意の抗体アイソタイプ(例えば、IgG、IgA、IgEおよびIgM)および任意のアイソタイプのサブ-クラス(特に、IgG1およびIgG4)から由来する免疫グロブリン重鎖の全て又は部分に付着させてもよい。
【0051】
SC104が、懸濁物中の腫瘍細胞株の死を生じさせること、及び結腸直腸腫瘍および脱凝集させた腫瘍組織に由来する細胞におけるアポトーシスまたはプログラム細胞死の特定の開始を生じさせることが実証された。従って、本発明の特異的結合メンバーを、治療剤として使用して、腫瘍の成長を又はアポトーシスの誘発を阻害することができる。アポトーシスは、細胞が積極的に自殺するプロセスである。アポトーシスが、正常な発生の多くの局面において必須であり、また組織の恒常性を維持するために必要であることは現在よく認識されている。自殺による細胞死は、ときおりプログラム細胞死と称され、生物体の統合性に対し脅威となる細胞を破壊するために必要である。アポトーシスにより細胞が自殺する2つの異なる機構が存在する。1つは細胞内で生じたシグナルにより惹起され、他方は細胞表面でレセプターに結合する外部シグナル(例えば、分子)により惹起される。
【0052】
本発明の特異的結合メンバーは、ヒトまたは動物の被験者における腫瘍を診断および治療する方法に使用することができる。
【0053】
診断に使用される場合、本発明の特異的結合メンバーは、放射線標識(例えば、131Iまたは99Tc)などの検出可能な標識で標識することができ、これは抗体イメージングの技術において既知の通常の化学を用いて、本発明の特異的結合メンバーに付着させることができる。また、標識には、ホースラディッシュペルオキシダーゼなどの酵素標識が含まれる。さらに、標識には、特異的な同族の検出可能な部分(例えば、標識されたアビジン)への結合を介して検出されえるビオチンなどの化学的な部分が含まれる。
【0054】
本発明の特異的結合メンバーはガン細胞を殺傷することにおいて効果的であることが示されているが、彼等は機能的な標識で付加的に標識されえる。機能的な標識には、ガンの破壊を生じるガンの部位を標的とするようにデザインされた物質が含まれる。係る機能的な標識には、毒素(例えば、リシン)および酵素(例えば、細菌のカルボキシペプチダーゼ又はニトロ還元酵素)が含まれ、これらはプロドラックを活性薬へ転換させる能力を有する。加えて、特異的結合メンバーは、カリケアミシン(calicheamicin)または放射線標識(例えば、90Yまたは131I)などの化学療法薬または細胞毒性薬に付着(attached)又はさもなければ関連(associated)してもよい。
【0055】
さらにまた、本発明の特異的結合メンバーは、単独で又は他の治療と組み合わせて、治療すべきコンディションに応じて同時または連続的に投与されてもよい。従って、本発明は、腫瘍の治療において同時(simultaneous)、別々(separate)、または連続(sequential)の使用のための組合せ調製物(combined preparation)として、本発明の特異的結合メンバーおよび活性薬剤を含有している製品(products)をさらに提供する。活性薬剤には、化学療法薬剤または細胞毒性薬〔5-フルオロウラシル、シスプラチン、マイトマイシンC、オキサリプラチン(oxaliplatin)、およびタモキシフェン〕が含まれてもよく、これらは本発明の結合メンバーと相乗的に作動(operate)しえる。他の活性薬剤は、適切な用量の非ステロイド抗炎症薬(例えば、アスピリン、パラセタモール、イブプロフェンまたはケトプロフェン)などの鎮痛薬またはモルヒネなどのオピテート(opitates)、或いは抗催吐薬(anti-emetics)を含んでもよい。
【0056】
理論に縛られることを望まないが、活性薬剤と相乗作用する本発明の結合メンバーの腫瘍殺傷を増強する能力は、免疫エフェクター機構によるものではなく、むしろ細胞表面結合型シアリルテトラアオシル糖に結合する結合メンバーの直接的な結果によるものであろう。
【0057】
本発明の特異的結合メンバーは通常は薬学的組成物の形態で投与され、該組成物は少なくとも1つの成分を該特異的結合メンバーに加えて含んでいてもよい。薬学的組成物は、活性成分に加えて、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、担体、緩衝剤、安定化剤または当業者に周知の他の物質を含んでいてもよい。係る物質は非毒性のものであるべきであり且つ前記活性成分の有効性に干渉しないものであるべきである。前記担体または他の物質の正確な性質は投与経路に依存し、経口または注射によるもの(例えば、静脈内)であってもよい。
【0058】
注射が前記組成物の治療的投与の主要な経路であろうが、カテーテルまたは他の外科的なチュウブを介したデリバリも用いられることが予見(envisaged)される。幾つかの適切な投与経路には、静脈内、皮下、および筋肉内の投与が含まれる。液体製剤は、粉末製剤を再構成(reconstitution)した後に利用されるものであってもよい。
【0059】
静脈内注射または痛みを伴う部位への注射に対して、前記活性成分は、非経口的に投与可能な病原体フリーの水溶液の形態であり、また適切なpH、等張性および安定性を有している。当業者は、適切な溶液を、例えば等張ビヒクル〔例えば、塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、乳酸化リンゲル注射(Lactated Ringer's Injection)〕を用いて容易に調製することができる。保存剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤および/または他の添加物を必要性に応じて含んでいてもよい。
【0060】
経口投与のための薬学的組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末剤または液剤の形態であってもよい。錠剤は、ゼラチンなどの固形担体またはアジュバンドを含んでいてもよい。液体の薬学的組成物は、一般に水、鉱油(petroleum)、動物性もしくは植物性の油、または合成油などの液体担体を含む。生理的塩類溶液、デキストロースまたは他のサッカライド溶液、或いはグリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)が含まれていてもよい。製剤(formulation)が液体である場合、それは、例えば、pH6.8〜7.6の非リン酸緩衝液を含有する生理的塩類溶液、又は凍結乾燥パウダーであってもよい。
【0061】
また、前記組成物は、ミクロスフェア、リポソーム、他の微粒子デリバリシステム、または血液を含む特定の組織に配置された徐放性製剤(sustained release formulations)を介して投与し得る。徐放性担体の適切な例には、例えば坐剤またはマイクロカプセルなどの共有物体(shared articles)の形態の半透性ポリマーマトリックスが含まれる。移植可能な(Implantable)又はマイクロカプセルによる徐放性マトリックスには、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号;EP-A-0058481)L−グルタミン酸およびガンマエチル−L−グルタミン酸のコポリマー(Sidman et al, Biopolymers 22(1): 547-556, 1985)、ポリ (2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはエチレンビニルアセテート(ethylene vinyl acetate)(Langer et al, J. Biomed. Mater. Res. 15: 167-277, 1981, and Langer, Chem. Tech. 12:98-105, 1982)が含まれる。前記ポリペプチドを含有しているリポソームは、周知の方法:DE 3,218, 121A; Epstein et al, PNAS USA, 82: 3688-3692, 1985; Hwang et al, PNAS USA, 77: 4030-4034, 1980; EP-A-0052522; E-A-0036676; EP-A-0088046; EP-A-0143949; EP-A-0142541; JP-A-83-11808; 米国特許第4,485,045および4,544,545号によって調製される。通常は、前記リポソームは小型(約200〜800オングストローム)の単層型のものであり、脂質含有が約30mol. %コレステロールより大きいものであり、選択される比率はポリペプチド漏出の至適な速度に調整されている。
【0062】
前記ポリペプチドは、腫瘍部位に又は他の所望の部位に局所的に投与してもよく又はそれが腫瘍もしくは他の細胞を標的とする様式で配送してもよい。
【0063】
前記組成物は、好ましくは「治療上効果的な量(therapeutically effective amount)」で個体に投与され、これは前記個体に十分有益な量である。投与される実際の量、並びに投与の速度およびタイムコースは、治療されている対象の性質および重症度に依存する。治療の処方(例えば、投薬量などの決定)は、一般的な実施者(practitioners)および他の医者の責任で行われ、そして典型的には治療される障害、患者個体のコンディション、配送部位、投与方法および実施者に既知の他の要素を考慮して行われる。本発明の組成物は、存在している癌の治療に及び初期治療もしくは手術後の係るコンディションの再発の予防に、特に関連性のあるものである。上記で述べた技術およびプロトコールの例は、文献〔Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Oslo, A. (ed), 1980〕中にみいだすことができる。
【0064】
最適な用量(dose)は、例えば、年齢、性別、体重、治療されるコンディションの重症度、投与される活性成分および投与経路を含む幾つかのパラメータに基づいて医者によって決定される。一般的に、レセプターの飽和を許可(permits)するポリペプチドおよび抗体の血清濃度が望ましい。約0.1nMを超える濃度が、通例十分である。例えば、抗体の100mg/m2の用量は、約20nM血清濃度を約8日間提供する。
【0065】
大まかな指針として、抗体の用量は、週に10〜300mg/m2の量が与えられてもよい。抗体断片の同等の用量はより頻繁な間隔で使用されるべきであり、これはシアリルテトラアオシル糖の飽和を許可する濃度を超えた血清レベルを維持するためである。
【0066】
前記組成物の用量は、結合メンバーの特性、例えば、その結合活性およびインビボでの血漿半減期、製剤中のポリペプチド濃度、投与経路、投薬の部位および比(the site and rate of dosage)、治療する患者の臨床的耐性、患者を苦しめている病理学的コンディションなどに依存する(これは医者の能力の範囲内である)。例えば、患者毎、投与毎に300μg抗体の用量が好適であるが、投薬量(dosages)は約10μg〜6mg/用量の範囲にわたっていてもよい。異なる投薬量が、一連の連続的な接種(inoculations)の間に利用される;実施者は、初期接種を投与し、次に比較的少ない用量の抗体でブーストしてもよい。
【0067】
また、本発明は、癌に対抗する防御的な免疫応答を増強するための免疫スケジュールを至適化することに関する。
【0068】
本発明の結合メンバーは、化学合成により全体的に又は部分的に作出し得る。前記結合メンバーは、樹立された標準的な液相又は好ましくは固相のペプチド合成法〔例えば、J. M. Stewart and J.D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd edition, Pierce Chemical Company, Rockford, Illinois (1984), in M. Bodanzsky and A. Bodanzsky, The Practice of Peptide Synthesis, Springer Verlag, New York (1984);およびApplied Biosystems 430A Users Manual, ABI Inc., Foster City, Californiaを参照されたい〕にしたがって容易に調製することが可能である。或いは、彼等を、溶液中に、液相法によって又は固相法、液相法および液体化学の任意の組合せによって調製してもよく、例えば、それぞれのペプチド部分を最初に完成させて、次に、望ましく且つ適切であれば、存在している任意の保護基を除去後に、それぞれ炭酸又はスルホン酸又はその反応誘導体(reactive derivative thereof)の反応による残基Xの導入によって調製しえる。
【0069】
本発明による結合メンバーを産生する別の便利な方法は、それをコードしている核酸を、発現系に核酸を用いることにより発現させることである。
【0070】
本発明は、本発明の特異的結合メンバーをコードしている単離された核酸を更に提供する。核酸には、DNAおよびRNAが含まれる。好適な側面において、本発明は核酸を提供し、該核酸は上記で規定した本発明の特異的結合メンバーをコードする核酸である。係る核酸の例は、図1a、1bおよび1cに示される。当業者は、係る核酸への置換(substitutions)、欠失(deletions)および/または付加(additions)を決定することができ、これによってもなお本発明の結合メンバーが提供される。
【0071】
また、本発明は、少なくとも1つの上記の核酸を含むプラスミッド、ベクター、転写または発現カセットの形態の構築物を提供する。また、本発明は、上記の1以上の構築物を含む組換え型の宿主細胞を提供する。上述のとおり、本発明の特異的結合メンバーをコードしている核酸は、本発明の一側面を特異的結合メンバーを産生する方法として形成し、該方法は対象をコードしている核酸から発現させることを備える方法である。発現は、適切な条件下で前記核酸を含有している組換え型の宿主細胞を培養することによって良好に達成し得る。発現による産生に引き続き、特異的な結合メンバーは任意の適切な技術を用いて単離および/または精製でき、次に必要に応じて使用される。
【0072】
様々な異なる宿主細胞においてポリペプチドをクローニングする及び発現させる系は、周知である。適切な宿主細胞には、細菌、哺乳類細胞、酵母およびバキュロウイルスシステムが含まれる。異種ポリペプチドの発現の目的で当該技術において利用可能な哺乳類細胞株には、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、新生児ハムスター腎臓細胞、NSOマウスメラノーマ細胞および多くの他の細胞が含まれる。一般的に好適な細菌宿主は大腸菌である。大腸菌などの原核細胞における抗体および抗体断片の発現は、当該技術において確立された技術である。総説に関して、例えば、Pluckthun等〔Pluckthun, Bio/Technology 9:545-551 (1991)〕を参照されたい。また、培養した真核細胞における発現も、特異的結合メンバーの産生の選択肢として当業者に利用可能であり、最近の総説に関して、文献〔Reff, Curr. Opinion Biotech. 4: 573-576 (1993); Trill et al., Curr. Opinion Biotech. 6: 553-560 (1995)〕などを参照されたい。
【0073】
適切なベクターが、選択されるか又は構築される。該ベクターは、必要に応じてプロモータ配列、ターミネーター断片(terminator fragments)、ポリアデニレーション配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および他の配列を含む、適切な制御配列を含有している。ベクターは、必要に応じてプラスミド、ウイルス(例えば、ファージ)またはファージミドであってもよい。更なる詳細に関しては、例えば、Sambrook等〔Sambrook et al., Molecular Cloning : A Laboratory Manual : 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕を参照されたい。核酸を操作するための多くの既知の技術およびプロトコール(例えば、核酸構築物の調製、突然変異誘発、シークエンシング、DNAの細胞への導入および遺伝子発現、並びに蛋白質の分析)は、文献〔Ausubel et al. eds., Short Protocols in Molecular Biology, 2nd Edition, John Wiley & Sons (1992)〕に詳細に記載されている。
【0074】
従って、本発明の更なる側面は、本明細書中に開示される核酸を含有している宿主細胞を提供する。なお更なる側面は、係る核酸を宿主細胞に導入することを備える方法を提供する。前記導入には、任意の利用可能な技術を採用し得る。真核細胞に関する適切な技術には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、リポソームが媒介するトランスフェクションおよびレトロウイルス又は他のウイルス(例えば、ワクシニアもしくは、昆虫細胞に関してバキュロウイルス)を用いた形質導入が含まれる。細菌の細胞に関して適切な技術には、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーションおよびバクテリオファージを用いたトランスフェクションが含まれる。導入には、前記核酸からの発現を生じさせること又は許容させること(例えば、宿主細胞を遺伝子を発現させるための条件下で培養することによって)が続いてもよい。
【0075】
一態様において、本発明の核酸は、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)に統合される。統合は、標準技術によるゲノムとの組換えを促進する配列を含ませることにより促進され得る。
【0076】
また、本発明は、上記の特異的結合メンバーまたはポリペプチドを発現させるために、発現系において上記の構築物を用いることを備えた方法を提供する。
【0077】
本発明の各側面の好適な特徴は、他の側面の各々に必要な変更を加えたものである。本明細書中で説明した従来技術の文献は、法により許可される最大範囲が援用される。
【0078】
[例]
本発明は、以下の限定されることのない例において更に説明される。本願に添付される図面の説明は、後述する図面の簡単な説明に記載される。
【0079】
例1 ― SC104モノクローナル抗体の産生
方法
免疫化:単離された腫瘍細胞株の特定範囲(A range)を、表1に概説される様式にしたがってSC104の産生のための免疫プロトコールに使用した。BALB/c 雌性マウス(6-12週齡, Bantin および Kingman, Hull)を、C146、C168、C170およびJW細胞の100μl懸濁液で、それぞれ0、4、13および14月でBALB/cマウスに免疫した。5x106細胞/mlの細胞密度を第一の2回の免疫に使用し、前記密度を第二の2回の免疫に関して5x105細胞/mlに減少させた。前記細胞を第一の例ではフロイント完全アジュバントに懸濁し、第二および引続く免疫化ではフロイント不完全アジュバントを用いた。最終的な免疫の5日後、脾臓細胞を収穫し、PSNS1細胞と融合した。
【表1】

【0080】
ハイブリドーマ産生
前記マウスを頚椎脱離で殺傷し、脾臓を無菌的に除去した。前記脾臓を、無血清のRPMI(20ml, 37゜C)を含有しているペトリ皿に移し、細胞を前記培地へと穏やかに放出した。組織細片(tissue debris)を、細胞懸濁液から引力下で2分間沈ませた。懸濁物中に残存している個々の脾細胞を、遠心分離で回収し、無血清RPMIに再懸濁し、計数した。収穫したP3NS1細胞を、計数し、再懸濁した。2つの細胞タイプを、1:10細胞の比率(P3NS1:脾臓細胞)で混合した。前記細胞混合物を、ペレットとして回収し、穏やかなタッピングでほぐした。温かいポリエチレングリコール1500を、添加(1分間)し、室温で(1min)インキュベーションした(50%溶液がシグマ化学から入手可能である)。温かい無血清培地を、さらに数分間以上で添加し、さらに20mlの無血清培地をゆっくりと添加した。再懸濁された細胞をペレットとして回収し、15%胎児血清およびHAT選択剤を含有している温めたRPMI1640に穏やかに分散させた。前記細胞懸濁液を、ラット腹膜の滲出細胞(PECS)で事前にコートされた96ウェルプレートに分配した。前記プレートを、生存しているハイブリドーマ細胞のコロニーが観察できるまで、37゜C, 5%CO2, 95%空気でインキュベーションした。結腸腫瘍特異的な抗体の産生を、非競合的なサンドイッチELISAにおいて、第一層(primary layer)としてC170細胞を用いて選抜した。幾つかの陽性ウェルからの細胞を、プールし、96ウェルプレートに5、2.5、1および0.5細胞/ウェル(100μl/ウェル)の細胞密度でプレートアウト(plated out)した。前記プレートを、コロニーを有するウェル中の培地がオレンジになるまで、37゜C, 5%CO2, 95%空気でインキュベーションした。
【0081】
スクリーニング処置
ELISA。免疫されたマウスの血清中での抗体応答を、標準の非競争的ELISA処置を用いたタイトレーション(titration)によってアッセイした。96-ウェル組織培養プレートを、C170細胞を10%胎児ウシ血清を含有するRPMI1640中に5x105細胞/ml(100μl/ウェル)の細胞密度で有するもので処理してコートした。前記プレートを、37℃、5%CO2、95%空気で一晩インキュベートした。前記細胞を、次にPBS中に0.5%グルタルアルデヒドを含有する溶液(10min、25℃、100μl/ウェル)で固定する前に、リン酸緩衝塩類溶液(pH7.3、PBS)中で2回洗浄した。残存している非特異的な結合部位を、PBS中に1%ウシ血清アルブミン(フラクションV、Sigma Chemicals Ltd.より)を有するもので1hrインキュベーションすることによってブロックした。前記細胞を、C170細胞に対する結合に関して非競争サンドイッチELISAを用いてブースト後血清をアッセイする前に、リン酸緩衝塩類溶液中に0.05% Tween 20を含む洗浄溶液で3回洗浄した。プレ-免疫化血清を、ネガティブコントロールとして使用した。
【0082】
免疫組織化学。ハイブリドーマ上清の腫瘍組織への結合を、凍結させた結腸直腸腫瘍切片の間接的な免疫ペルオキシダーゼ染色によって決定した。低温保存した腫瘍の組織切片 (5μm)を、0.3%H202(0.1% NaN3中)で15min処理して内在性のペルオキシダーゼを阻害した。次にこれを室温でPBS中に調製した10%ヒト血清および1%BSAとインキュベーション(30min)し、そして次にハイブリドーマ上清を、最低限の非特異的バックグランド染色を呈する飽和レベルで更に30min添加した。結合した抗体をペルオキシダーゼと結合させたウサギ抗-マウスIg(Dako Ltd., Bucks., UK)で検出し、そして頻繁に洗浄を行った後にスライドを0.05%ジアミノベンジジンおよび0.01%H202(0.05M Tris-HCI, pH7.6中)で染色し、ヘマトキシリンで対比染色した。
【0083】
結果
SC104は、4つの結腸直腸癌細胞株でマウスを免疫して得られたモノクローナル抗体(mab)である。これは結腸直腸腫瘍切片に対する免疫組織化学によって及び免疫した細胞株の1つに対するELISAによって選抜された。これは3回クローン化され、マウスのIgG1 mabであることが示された。表2は、前記抗体が、ルイスy/bハプテンを認識するポジティブコントロール抗体よりも高い強度で、C170細胞に結合することを示している。また、前記抗体は、ルイスy/b抗体または抗CEA抗体と比較して、結腸直腸腫瘍の強い染色性を示した。前記抗体は、抗CEA抗体に対し、正常な結腸組織の類似する弱い染色性を示した。
【表2】

【0084】
例2 ― SC104抗体の配列
方法
マウス免疫グロブリンSC104の重および軽カッパ鎖可変領域の増幅およびシークエンシング。トータルRNA(Total RNA)を、ELISAにより抗体産生に関して事前に検査した後に、ハイブリドーマSC104/1E9から単離した。
【0085】
5μgのトータルRNAから合成されたcDNAを、SC104の重および軽鎖可変ドメインの増幅に対する鋳型として使用した。以下のフォワードオリゴヌクレオチド(これは各鎖の定常領域のCH1ドメインに対するリーダー配列およびリバースオリゴヌクレオチドにアニールする)を、それぞれ高忠実度(high fidelity)の酵素pfu turbo(Stratgene)でのPCR反応に利用した。
【0086】
フォワードプライマー
5'- ATG AGA GTG CTG ATT CTT TTG TG-3' 重鎖
5'-ATG GAT TT(A/T) CA(A/G) GTG CAG ATT (A/T)TC AGC TTC-3' カッパ鎖
リバースプライマー
5'-CCC AAG CTT CCA GGG (A/G)CC A(A/G)(G/T) GGA TA(A/G) ACG G(A/G)T GG-3' 重鎖5'-CCC AAG CTT ACT GGA TGG TGG GAA GAT GGA-3' カッパ鎖
増幅された断片を、TAベクターpCR2.1(インビトロゲン)中にクローン化した。インサートを含んでいるクローンを、制限分析によって同定し、プライマーT7およびM13リバース(Lark Technologies)でのDNAシークエンシングによって確認した。配列が分析され、次の相補性決定領域(CDR'S)が抗体SC104の重および軽鎖に関して同定された(図1a、bおよびc)。
【0087】
両鎖に関してシークエンシングおよび翻訳の分析を確認するために、10μgの精製され、濃縮されたSC104抗体を、変性し、0.75mm厚の8%SDS-PAGEゲル上で電気泳動により分離し、そしてセミドライのエレクトロブロッティングでPVDFに転写した。アミドブラックで染色した後にカッパ(25KDa)および重(50KDa)鎖を、分離し、N末端をエドマン分解で配列決定した(Alta Biosciences)。タンパク質シークエンシングによって、両鎖に関して、分析されたDNAおよび翻訳された配列が確認された。
【0088】
重鎖
可変領域(55bp-414bp)
CDR1(130bp-162bp)
G Y S I T S G Y S W H
GGCTACTCCATCACGAGTGGTTATAGTTGGCAC
カバットナンバリングによる(145bp-162bp)
S G Y S W H
AGTGGTTATAGTTGGCAC
CDR2(205bp-252bp)
H I H F S G R P T Y N P S L S S
CACATTCACTTCAGTGGTAGACCTACTTACAATCCATCTCTCAGCAGT
CDR3(349bp-381bp)
K G K G S D D G L N Y
AAGGGAAAAGGTTCCGACGATGGTTTGAACTAC
シグナルリーダー配列(1bp-54bp)
FR1(55bp-129bp)
FR2(163bp-204bp)
FR3(253bp-348bp)
FR4(382bp-414bp)
CH1(415bp onwards)
カッパ軽鎖
可変領域(67bp-384bp)
CDR1(136bp-165bp)
S A S S S L S Y I H
AGTGCCAGCTCAAGTTTAAGTTACATACAC
CDR2(211bp-231bp)
D T S N L A S
GACACATCCAACCTGGCTTCT
CDR3(328bp-354bp)
F Q G S E Y P L T
TTTCAGGGGAGTGAGTATCCACTCACG
シグナルリーダー配列(1bp-66bp)
FR1(67bp-135bp)
FR2(166bp-210bp)
FR3(232bp-327bp)
FR4(355bp-384bp)
CH1(385bp onwards)
例3 ― キメラSC104モノクローナル抗体の発現
DNA配列からの機能的な抗体の発現を検証するために、Afe1およびBsiW1制限部位を、pCR2.1内のフレームワーク4の終りの重および軽鎖可変領域に、設計した相補的なオリゴヌクレオチドを用いて部位特異的突然変異誘発で導入した。
【0089】
重鎖可変 Afe1
フォワードプライマー
5'- C TCA GTC ACC GTC TCT AGC GCT AAA ACG ACA CCC CCA CC-3'
リバースプライマー
5'-GG TGG GGG TGT CGT TTT AGC GCT AGA GAC GGT GAC TGA G-3'
軽鎖可変 BsiW1
フォワードプライマー
5'- CC AAG CTG GAA ATG ACA CGT ACG GAT GCT GCA CCA ACT G-3'
リバースプライマー
5'-C AGT TGG TGC AGC ATC CGT ACG TGT CAT TTC CAG CTT GG-3'
SC104のマウスの重および軽鎖可変領域を、pCR2.1から摘出し、各鎖のヒトFc定常領域のそれぞれにインフレームに融合させた哺乳類発現ベクターpDCORIG IBのHindIII/Afe1およびBamHI/ BsiW1部位にクローン化した。このプラスミドを、制限分析(restriction analysis)により同定し、そしてDNAシークエンシングにより確認した。
【0090】
CHO-Sを、製造者の推奨する方法にしたがって15μgの上記プラスミドおよびジーンジュース(genejuice)(Novagen)で安定的にトランスフェクションした。トランスフェクタントを、Zeocin(300μg/ml)を含有している培地中で14日間選択した。前記トランスフェクタントから分泌された機能的キメラSC104抗体の発現を、細胞株C170の細胞表面への結合およびフローサイトメトリー(図1d)で確認した。
【0091】
手短に言えば、RPMI/10% FCS中で洗浄した後、C170細胞を、30分間、4℃で、キメラ抗体を含有している使用済み培地又は培地単独の何れかと共にインキュベーションした。細胞を、洗浄し、CH2ドメインに特異的なFITC結合型ウサギ抗ヒトIgG抗体(DAKO, F0123)と更に30分間4℃でインキュベーションした。細胞を、再び洗浄し、懸濁し、そしてフローサイトメトリーで分析した。
【0092】
例4 ― SC104モノクローナル抗体を用いた結合試験
実験1
方法
正常な及び腫瘍組織の免疫組織化学染色。ヒト組織を、Inveresk承認の供給者(Inveresk approved supplier)から取得した。使用された各組織を、液体窒素中で急速に凍結させ、約-70゜C(±10゜C)で保存した。クリオスタット切片を、カットし、スーパーフロストプラススライド(super frost plus slides)に配置した。全組織サンプルを、その組織中での抗原の保存を確認するために、各組織に適切な抗原マーカーで処理した。使用されたマーカーは、上皮担持組織(epithelial bearing tissues)に関してケラチン、全てのリンパ組織に関してCD45、および全ての心臓(cardiac)および骨格の筋肉に関してデスミンであった。各組織は、3個体の非関連のドナーからのもので検査された。用いた染色方法は、間接的(2又は3段階の方法)であり、二次および三次の抗体をアビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体と共に用いた。内在性のペルオキシダーゼ活性を、過酸化水素を用いてブロックした。内在性のビオチンを、一連のアビジン-ビオチンで全ての組織切片を処理することによってブロックした。三次抗体が使用された場合、全ての組織切片は通常のブタ血清で処理される(これによって、三次抗体が前記組織に結合することが阻害される)。免疫組織化学的な染色方法の妥当性は、ポジティブコントロール組織における染色、ネガティブコントロールにおける非存在、及びコントロール組織の染色性における固定の効果によって決定された。SC104を、6ドナーの結腸腫瘍および1つの心臓に対し、0または50μg/mlの濃度で試験した。組織を、アセトンまたは中性に緩衝したホルマリンのいずれかで固定した。結腸腫瘍の2つのサンプルは、ポジティブコントロールとして使用するために十分に染色された。そして、心臓において染色は存在しなかった。中性に緩衝されたホルマリンは、最適な固定液であることが見出された。最大染色強度を呈するSC104の最低濃度は1μg/mlであり、この濃度は後の試験で使用された。
【0093】
結果
SC104は、特定範囲の凍結させた腫瘍および正常組織の切片に対し結合することに関して選抜された(表3)。ポジティブ染色の新生物性の上皮が結腸、子宮内膜、食道、耳下唾液腺(parotid salivary gland)および胃に並びに低強度(less intense)染色性の少数の上皮細胞が6つの胸部腫瘍(breast tumours)のうち3つに存在した。ポジティブ染色は、正常な大腸、耳下唾液腺、扁桃腺および子宮頚部の上皮で記録された。低強度の染色は、膀胱中の少数の移行上皮細胞、単一ドナーの散在性の胸腺リンパ球(thymic lymphocytes)、皮膚の腺上皮細胞(glandular epithelial cells)、前立腺の腺上皮細胞、胸部およびファロピオ管(breast and fallopian tube)、濾胞細胞、肺の肺胞管壁細胞(alveolar lining cells)、及び1ドナーの脳からの少数のグリア細胞で記録された。粘液は、胃および小腸においてポジティブに染色された。特異的な染色は、正常なヒトの心臓、腎臓、胎盤または脾臓において記録されなかった。これらの結果は次の事項を示唆している。その事項とは、前記抗原が特定範囲の上皮細胞によって発現されえること、しかし、それは胃腸管内で優先的に局在することである。免疫組織化学は、前記抗原が結腸直腸腫瘍において、近接する正常組織よりも強く発現していることを示唆していた。
【表3−1】

【表3−2】

【0094】
実験2
方法
間接免疫蛍光およびフローサイトメトリー分析による腫瘍細胞株への結合。C170、Colo205、MKN45、R1D9、および791T細胞(105)を、50μlのSC104 mab(0-20μg/ml)に再懸濁し、氷上で20minインキュベートした。サンプルを3回RPMI/10% FCS中で洗浄した後、細胞をFITC標識ウサギ抗-マウス(1/50:Dako Ltd, Bucks, UK)抗体でインキュベートし、FACScan(Becton Dickinson, Sunnyvale, CA)での分析前に30分間氷上でインキュベートした。結果は、平均リニア蛍光(MLF;mean linear fluorescence)として表される。
【0095】
ELISAによる腫瘍細胞への結合。96-ウェル組織培養プレートを、RPMI1640に10%胎児ウシ血清を含有している培地中の5x105細胞/ml(100μl/ウェル)の細胞密度の細胞でコートした。前記プレートを、37℃、5%CO2、95%空気で一晩インキュベートした。前記細胞を、次にPBS中に0.5%グルタルアルデヒドを含有する溶液(10min、25℃、100μl/ウェル)で固定する前に、リン酸緩衝塩類溶液(pH7.3、PBS)中で2回洗浄した。残存している非特異的な結合部位を、PBS中に1%ウシ血清アルブミン(フラクションV、Sigma Chemicals Ltd.より)を有するもので1hrインキュベーションすることによってブロックした。前記細胞を、0.05%Tween20をリン酸緩衝塩類中に含むものからなる洗浄溶液で、3回洗浄した。細胞をSC104(1μg/ml)で1hr室温でインキュベートし、次に結合した抗体をヤギ抗-マウス ホースラディッシュペルオキシダーゼおよびABTSで検出した。結果は、405nmでの吸光度として表される。
【0096】
結果
抗原発現の更なる特性決定を、ELISAで特定範囲の腫瘍細胞株で実施した(図2a)。SC104抗体は、胃腸管起源の細胞株に優先的に結合した。SC104は、C170、Colo205およびR1D9細胞に、1500〜4,000のMLFで結合した。
【0097】
実験3
方法
一次の腫瘍結合。腫瘍標本は、結腸直腸癌切除の時点で取得された。標本を、細かくミンスし、0.05%コラゲナーゼ(タイプIV, Boehringer Mannheim, Lewes, UK)で20min、37℃で脱凝集させた。腫瘍細胞懸濁物を、除去し、Hanks平衡塩類溶液(ギブコ BRL, Paisley, UK)で3回洗浄した。新鮮なコラゲナーゼを、残存している組織に添加し、それをさらに20min再インキュベートした。この手順を2回反復し、全ての解離物からの細胞を混合し、そしてそれらを20%ウシ胎児血清を含有しているダルベッコ培地(ギブコ)に再懸濁した。細胞を、1hr、4℃でSC104 mab(1μg)とインキュベートした。細胞を、2回洗浄し、FITC-結合型ウサギ抗-マウス免疫グロブリン(Dako Ltd., Bucks., UK)と更なるhr(a further hr)インキュベートした。正常なマウス免疫グロブリンをネガティブコントロールとして使用し、この蛍光をSC104で得られた蛍光から差し引いた。前記細胞を、FACScan(Becton Dickinson, Sunnyvale, CA)での分析前に、3回洗浄した。結果は、平均リニア蛍光(MLF)として表される。固形腫瘍の脱凝集(Disaggregation)によって、赤血球、リンパ球、ストローマ細胞、マクロファージおよび内皮細胞を含んでいる細胞の混合集団が生じる。上皮細胞のパーセンテージは、サイトケラチン Cam5.2の染色により測定され、ほんの22±13%(範囲10〜60)であった。しかしながら、悪性細胞サイズの細胞を選択的に分析するための前方光散乱ゲーティングの結果、分析された細胞の範囲79±4%(範囲69〜86)は上皮性のものであった。さらにまた、腫瘍間のバリエーションは、かなり減少していた。総有核集団(total nucleate population)において抗-CD45 mab F-10-89で染色することによって測定された白血球のパーセンテージは、74±16(範囲40〜90)だった。これは、悪性細胞サイズに対するFACS IVゲーティング後に5.5±5%(範囲1〜20)へとかなり減少していた。悪性のサイズ範囲と分析された細胞集団におけるストローマ細胞のパーセンテージは、3.5±3%(範囲1〜13)であった。
【0098】
結果
また、SC104は、新たに脱凝縮させた結腸直腸腫瘍細胞の>80%と、平均抗原密度4 x 105抗原/細胞(範囲1.5〜10x106抗原/細胞;図3)で強く結合することが示された。
【0099】
実験4
方法
腫瘍および正常な膜抽出物結合。結腸直腸および正常な結腸膜の核外抽出物(Extranuclear extractions)が産生された。そして、SC104の結合が、ELISAでアッセイされた。
【0100】
結果
免疫組織化学によって得られる分染(differential staining)をさらに定量するために、原発性の結腸直腸腫瘍および切除部縁(resection margin)からの正常な結腸の核外膜調製物を作出した。これらの膜をSC104でELISA染色することによって、次の事項が明らかとなった。その事項とは、正常な結腸が弱く染色され、他方で腫瘍膜が中等度から強度に染色され、平均T:N比が6:1であることが観察されたことである(表4)。
【表4】

【0101】
実験5
方法
精製抗原調製物への結合。C14抗原(90KDa糖タンパク質は、アフィニティークロマトグラフィーをC14モノクローナルで行うことによって唾液から精製された)、CEA〔180KDa糖タンパク質は、結腸直腸腫瘍の生きた転移物(live metastases)から、アフィニティークロマトグラフィーを365 mabで行うことによって精製された〕および糖脂質抽出物(3:1メタノール クロロホルム w/v中で結腸直腸腫瘍から抽出された糖脂質)を、マイクロタイタープレート上で37℃で一晩インキュベーションすることによって乾燥させた。SC104 mabの結合は、上記の記載のとおりELISAによってアッセイされた。
【0102】
ルイスyハプテンおよびI型およびII型H血液型抗原 (Sigma, Poole, Dorset)を、マイクロタイタープレート上で37℃で一晩インキュベーションすることによって乾燥させた。SC104 mabの結合を、上記の記載のとおりELISAでアッセイした。
【0103】
結果
SC104抗体によって認識される抗原の性質を探索(try)および同定するために、その抗体を使用して3つの異なる抗原調製物を染色した(図4)。第1のものはCEAであった(というのも、本抗原は、周知であり、結腸直腸腫瘍によって発現される免疫原性抗原であるからである)。CEAの有意な染色は観察されなかったが、抗CEA抗体は良好な反応性を示し、これによって機能的な抗原の存在が確認された。第2の調製物は、唾液から抽出された糖タンパク質を発現しているルイスy/bであった。この抗原は、90KDaの糖タンパク質であり、広範囲の糖残基(carbohydrate residues)を保有している。抗-ルイスy/b抗体およびSC104抗体の双方がこの糖タンパク質に結合し、他方で抗CEA抗体は結合に失敗した。メタノール/クロロホルム腫瘍糖脂質抽出物がアッセイされた場合、類似する結果が得られた。これらの結果は、次の事項を示唆した;その事項とは、SC104が双方の糖タンパク質上に発現された糖残基を認識していたこと、及びそれがルイスy/bを認識している可能性があることである。SC104が血液型抗原に結合しない場合を検証するために、それをルイスy、HのI型およびII型の血液型ハプテンへの結合に関してELISAで選抜した(表5)。抗-H抗体は、3つのハプテン全て(ルイスy/b抗体はルイスyハプテンに)に強く結合したが、しかし、SC104はこれらのハプテンのうちの何れとも反応しなかった。
【表5】

【0104】
例5 ― SC104モノクローナル抗体によって認識される腫瘍糖脂質の同定
実験1
脂質抽出および免疫染色プロトコールの至適化
方法
C170腫瘍細胞からの脂質抽出。C170細胞のペレット(1mlのパック細胞容積)が、静的な付着組織培養のトリプシン処理によって得られた。前記ペレットを、PBSで洗浄し、過剰な緩衝液を遠心分離後に吸引で除去し、-80℃で保存した。前記ペレットを、クロロホルム:メタノール(3:1、v/v、19ml)で抽出した。結果として生じるエマルジョンを、50ml溶媒耐性(Tefzel)遠心チュウブ中で、15min、4℃で8,000rpmで遠心分離した。上清を、回転式蒸発装置を用いて30℃で乾燥させて、小容量(〜1ml)のクロロホルム:メタノール:0.5% CaCl2(aq)(50:40:10)に再懸濁させた。
脂質抽出物のHPTLC分析。前記サンプルを、メルク HPTLCプレート上に複数スポットし、クロロホルム:メタノール:0.5% CaCl2(aq)(50:40:10)中で標準として展開した。前記プレートを乾燥させ、ヨウ素蒸気タンク(iodine vapour tank)に配置した。バンドを鉛筆でマークし、ヨウ素を前記プレートから一晩蒸発させた。前記プレートを、次に前記抗原を局在化させるために免疫染色した。
【0105】
展開したHPTLCプレートの免疫染色。SC104免疫染色に関して、前記プレートを、ポリイソブチル メチルメタクリレート(0.1% w/v溶液剤)ヘキサン:クロロホルム(9:1)に15秒間浸漬させて、次に乾燥させた。前記プレートを、次に3%BSAをPBS中に含有する溶液で1hr室温でブロックし、次に試験抗体溶液(10μg/ml)中又はBSA溶液中で1hr室温でインキュベーションした。前記プレートを、次にウサギ抗-マウスHRP抱合体(Dakoより)(PBSにおいて1/250)で1hr室温でインキュベートする前に、PBS/Tween-20(0.1%)中で3回洗浄した。前記プレートを、次にPBS/Tween-20(0.1%)中で3回洗浄し、10 mM Tris, 100 mM NaCl pH 7.0, 0.1 % Tween中で1回洗浄し、Sigma-FAST BCIP/NBT試薬中で発色させた。
【0106】
展開したHPTLCプレートの化学染色。オルシノール染色を実施して、糖成分(carbohydrate moieties)の存在を検出した。展開したHPTLCプレートを、乾燥させて、次に完全にコートされるまで、オルシノール試薬でスプレーした。前記プレートを、熱気の流れで乾燥させ、100℃で15分間インキュベートした。ニンヒドリン染色を使用して、遊離アミノ基を含有している分子を検出した。展開したHPTLCプレートを最初に乾燥させて、次にニンヒドリン溶液(0.25%ニンヒドリンw/vをアセトン中に含有する)中に完全に湿るまで浸漬させた。前記プレートを、次に室温で数時間発色させた。
【0107】
結果
前記抗原は、3:1クロロホルム:メタノール混合物中に良好に抽出されたことが見出され、オリジナルの2:1溶媒抽出と比較して、検出されたバンドの数に変化はなかった。しかしながら、溶媒を4:1クロロホルム:メタノールにまで増加させることは、HPTLCで検出されたバンドの数を減少させるように思われ、結果的に抽出の目的で行うことはできなかった。初期の免疫染色実験は、HPTLCプレートを、0.1%w/vポリイソブチルメタクリレートをヘキサン中に含むもので、60秒間インキュベーションして行った;しかしながら、インキュベーションを前記抗原の再現性のある検出のためには15秒間に減少させることが必要であることが見出された。最終的に、最大の感受性を保証するために、リン酸基質とのインキュベーション前に、HPTLCプレートのリン酸フリー洗浄(a phosphate free wash)を導入することが必要であることが見出された。
【0108】
SDS-PAGEおよびウエスタンブロッティング実験によって、以前に次の結果が示されている;その結果とは、SC104抗原が全細胞抽出物(whole cell extract)、細胞可溶化物、及び細胞膜の調製間に産生される不溶性ペレットにおいて検出できることである。しかしながら、前記抗原は、細胞膜調製物それ自身において検出されなかった。加えて、膜調製物中で産生される不溶性ペレットのHPTLC分離および免疫染色によっても、前記抗原を検出することができた。この事項は、前記抗原が脂質であるか又は非常に疎水性のタンパク質であることを示唆する。
【0109】
実験2
抗原含有フラクションの、シリカカラムクロマトグラフィーによる分析
方法
脂質抽出物のシリカカラム分画。重力カラム(150mm i.d.)を、シリカスラリーをクロロホルム:メタノール:0.5%CaCl2(aq)(50:40:10)中に含むもので充填した。C170抽出物〔〜1mlのクロロホルム:メタノール:0.5% CaCl2(aq)(50:40:10)中に再溶解させた〕を、前記カラムにロードし、同じ溶媒条件を用いて溶出した。フラクションを収集し、HPTLCで分析した。SC104免疫染色を実施して、前記抗原を位置決めした。そして、化学染色法を使用して、前記フラクションの更なる特徴づけを行った。
【0110】
抗原のセラミドグリカナーゼ消化。セラミドグリカナーゼ消化を使用して、オリゴ糖を糖脂質分子から放出させた。50mM酢酸ナトリウム、pH5.0、0.1%w/vコール酸ナトリウム中の抗原溶液を、セラミドグリカナーゼ溶液(1μlを50μl抗原に対して)と混合し、37℃で3hrsインキュベーションした。脱グリコシル化脂質を、放出させたオリゴ糖から、250μlクロロホルム:メタノール(2:1)と混合すること、簡単に遠心分離することによって分離させた。上方の水相を、下方の有機相から分離し、2つを別々に乾燥させた。
【0111】
結果
C170脂質抽出物の小スケールの分画(〜0.5mlのパック細胞体積から得られた)を、〜10mlベットボリュームのシリカカラム上で、50:40:10クロロホルム:メタノール:CaCl2(水溶液中に0.5% w/v)を移動相として用いて行った。しかしながら、抗原の特徴づけを可能とするために、この方法をスケールアップすることが必要であった。この事項は、脂質抽出物を取得するために〜10mlパック細胞容積を用い、カラム容積を〜36mlに増加させることによって可能であることが示された。
【0112】
全脂質抽出物を、スケールアップしたカラムにロードし、フラクションを収集し、抗原含有フラクションを免疫染色で検出した(図5)。0.53のRFを有する抗原を、検出した。HPTLCおよび化学的な染色を次に使用して、このフラクションを更に特徴付けた。HPTLCプレートのオルシノール染色を使用して、糖脂質の糖部分を検出した。これによって0.50および0.61の間のRF値を有する3つのバンドが明らかとされ、これは前記抗原の初期RF値に対応するように思われた。しかしながら、免疫染色がオルシノール染色と同時に反復されたことによって、前記抗原のRF値における異常なシフトと共にRF 0.36および0.39の間で検出された3つのバンドが明らかとなった(図6)。この結果は、オルシノール染色によって検出されたバンドは前記抗原に対応するものではなく、糖脂質夾雑物を表すことを示唆するものであろう。
【0113】
この抗原がタンパク質であることを確認するために、前記フラクションをSDS-PAGEおよびウエスタンブロッティングで分析した。ゲルの銀染色は、非常に低いレベルのタンパク質夾雑物を明らかにした;しかしながら、ウエスタンブロッティングは前記調製において任意の抗原を特異的に検出することに失敗した。この結果は、前記抗原自身がタンパク質ではないことを示唆している。
【0114】
抗原含有フラクションのアリコートを、セラミドグリカナーゼで消化して、糖を除去した。グリカンを、2:1クロロホルム:メタノールを用いて、脂質部分から分離した;遊離グリカンはメタノールで分配されることが予想され、脱グリコシル化脂質はクロロホルムで分配される。免疫染色および化学的な染色技術を、次にHPTLCプレートの無傷(intact)の糖脂質および脱グリコシル化脂質に施した。免疫染色によって、無傷の糖脂質を有する抗原(RF 0.38-0.46)の存在が明らかとなった(脱グリコシル化脂質ではなく)(図7)。しかしながら、後の実験によって次の事項が実証された;その事項とは、未消化抗原の分配が高度に変動すると共に、前記抗原が水相、有機相、又は両方の相で時折検出されることである。従って、セラミドグリカナーゼ処理した有機フラクション中で抗原を検出することに失敗したことは、結論がはっきりしない。前記抗原のセラミドグリカナーゼ除去というよりも、前記抗原の水相への分配に起因するのであろう。
【0115】
上記実験を確認するために、消化に引続いて、その実験を、分析される有機相および水相の双方で反復して行った。サンプルのHPTLCおよびヨウ素染色による分析によって、オリゴ糖の除去後に、双方のフラクション中でSC104結合性が損なわれることが実証された(図8)。これによって、SC104が無傷の糖脂質を認識すること、及びこの認識がオリゴ糖の除去後に損なわれることが指摘される。
【0116】
リン脂質〔例えば、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、及び関連するリゾ基(related lyso groups)〕は、ニンヒドリン染色によって検出することができる遊離アミノ基を有する。無傷の糖脂質およびセラミドグリカナーゼ処理フラクションの双方のHPTLCおよびニンヒドリン染色によって、RF値が0.51および0.54の間のリン脂質の存在が明らかとなった。しかしながら、これは前記抗原と共移動する夾雑物である可能性がある;というのも、特に文献は、リン脂質および糖脂質の共溶出は(co-elution)、単一のシリカカラム精製法を行った場合に共通する問題であることを示唆しているからである。この事項は、係る方法では、前記抗原を全抽出物から、特徴づけを促進するのに十分な純度で分離するために不十分であろうことを指摘している。
【0117】
実験3
全脂質抽出物の脂質サブグループへの分画および抗原の局在
方法
脂質を、〜2mlパック細胞容積のC170細胞から、上記のとおり抽出した。蒸発に続いて、抽出物を〜1mlクロロホルムに再懸濁した。10mlベットボリュームのシリカカラム(150mm i. d.)を、100%クロロホルム中に調製した。前記サンプルを前記カラムに添加し、前記カラムを重力下で次に記す溶媒、即ち:単純脂質を溶出するための10カラム容積のクロロホルム;中性糖脂質を溶出するための40カラム容積のアセトン;ガングリオシドおよびリン脂質を溶出するための10カラム容積のメタノール中で洗浄した。前記フラクションを、収集し、回転蒸発(rotary evaporation)で乾燥させ、分析まで4℃で保存した。
【0118】
抗原のノイラミニダーゼ消化。抗原溶液(5μl)を、5μlの10x緩衝液(ノイラミニダーゼと共に提供される)と、そして10μlのノイラミニダーゼ溶液と混合した。最終的な容量を50μlにし、混合し、そして37℃で1hrインキュベーションした。
【0119】
酸加水分解による化学的な脱シアリル化。0.05M硫酸中の抗原溶液を、80℃で2hrs熱した。前記サンプルを、次に冷却して、分析まで4℃で保存した。
【0120】
結果
糖脂質をリン脂質から除去するために、10mlシリカカラムをクロロホルムで平衡化した。全C170脂質抽出物を、〜2mlのパック細胞容積から取得した。これを前記カラムにかけて、カラムを、単純脂質を溶出するためにクロロホルムで;糖脂質を溶出するためにアセトンで;リン脂質を溶出するために最終的にメタノールで洗浄した。
【0121】
HPTLC分離および免疫染色によって、少なくとも3つの抗原バンドが全抽出物およびリン脂質フラクションで検出され(RF 0.54、0.51および0.41)、1つのバンドが単純脂質フラクションで検出された(RF 0.51;図9)。しかしながら、抗原は糖脂質フラクションにおいて検出されなかった。ニンヒドリン染色によって、全抽出物およびリン脂質フラクションのみにおいてリン脂質の存在が明らかとされた。しかしながら、オルシノール染色によって、糖脂質が糖脂質およびリン脂質フラクションの双方に存在することが実証された。有意に、2つの別個のバンドがリン脂質フラクションに観察され(RF 0.54および0.51)、これは前記抗原と共移動していると思われる。再び、この事項は、前記抗原が糖成分を保有しえることを指摘している。
【0122】
さらなる見解は、次の事項を指摘している;その事項とは、上記方法を使用して中性糖脂質をリン脂質から分離することができるにもかかわらず、シアリル化糖脂質はリン脂質と共溶出(co-elute)されることである。この事項(前記抗原の共移動と共に)およびオルシノール陽性染色バンドによって、前記抗原がシアリル化糖脂質であろうことに関する幾つかの証拠が提供された;他方で抗原が中性糖脂質フラクション中に存在しないことは、前記糖脂質がSC104によって認識されるためにシアリル化されなければならないことを示唆する。
【0123】
更に、前記抗原がシアリル化糖脂質であり、リン脂質ではないとの証拠は、全脂質抽出物を2D HPTLCを用いて分離すること、及び前記プレートを免疫染色および化学染色を介して分析することによって得られた。第1次元においてHPTLCプレートを、標準の50:40:10クロロホルム:メタノール:CaCl2溶媒混合物中で展開させた。前記プレートを次に乾燥させ、90゜回転させ、クロロホルム:アセトン:メタノール:酢酸:水10:4:2:2:1中で展開した。免疫染色によって、前記抗原の非常に低い程度の移動が第2次元において発生したことが明らかとなった(図10)。この事項は、再び次の事項を実証した;その事項とは、前記抗原が中性糖脂質ではないことである(というのも、中性糖脂質はアセトンに移動するからである)。糖のオルシノール染色は、両方の次元において前記抗原と共移動するバンドを再び示した。他方で、遊離アミノ基のニンヒドリン染色は、第1次元において共移動するが、しかし、第2次元において前記抗原と分離される化合物を実証した。
【0124】
ノイラミニダーゼ消化を使用して、抗体認識におけるシアル酸除去の効果を検出した。HPTLC分離されたリン脂質/ガングリオシドサンプルのノイラミニダーゼ処理の前後での免疫染色によって、2つのクラスターのバンドが示された;これらはRF 0.46でのより極性の高いクラスターおよびRF 0.62でのより極性の低いものであった(図11)。同じバンドがノイラミニダーゼ処理の前後で検出されたが、染色プロファイルの強度におけるシフトが存在した。ノイラミニダーゼ処理は、未処理コントロールと比較した場合に、RF 0. 46クラスターでより強い染色性を及びRF 0.62クラスターで強度の減少を発生させた。これによって次の事項が示唆される;その事項とは、シアル酸除去が単に部分的であったにもかかわらず(というのも、前記条件は、至適化されていないので)、シアル酸のより極性の高いRF 0.62クラスターからの除去によって、より低い極性のクラスターの分子の形成へと導かれ、これがなおも前記抗体によって検出されることである。ノイラミニダーゼ部分消化後に検出された最低の極性のバンドは未処理のガングリオシド/リン脂質フラクション中の最低の極性のバンドと共に共移動することから、次の事項が仮定される;その事項とは、このクラスターが、それ自身がシアリル化型(おそらく、モノシアリル化)に対応し、他方でより極性の高いクラスターはジシアリル化型に対応することである。
【0125】
シリカカラムクロマトグラフィーを次に行って、異なってシアリル化された糖脂質を分画した。脂質抽出物のサンプルを、前記カラムにロードし、フラクションを溶出して単純脂質(クロロホルム);アシアリル化糖脂質(asialylated glycolipids)およびリン脂質(クロロホルム:メタノール:アセトン:酢酸:水 52:8:8:18:4に続いてクロロホルム:メタノール:4:1);モノシアリル化糖脂質(クロロホルム:メタノール2:3);ジシアリル化糖脂質(クロロホルム:メタノール:水 65:25:4);および最終的にポリシアリル化糖脂質(クロロホルム:メタノール:水 60:35:8)を得た。前記フラクションを次に乾燥させ、HPTLCで分析し、次に免疫染色および化学染色した(図12)。
【0126】
オルシノールおよびニンヒドリン染色によって、リン脂質および糖脂質がシアリル化糖脂質フラクションに双方とも存在することが示された。しかしながら、前記抗原は再びオルシノール陽性糖脂質のみと共移動し、ニンヒドリン陽性リン脂質とは共移動しないように思われる。
【0127】
これらのサンプルのHPTLCおよび免疫染色によって、全抽出物中に3つのクラスターの抗原(RF 〜0.49、〜0.38および〜0.24)が明らかとなり、これらのうち最も極性の高いものは非常に微弱(faint)な染色性を示していた。抗原は単純脂質フラクションまたはリン脂質/中性糖脂質フラクションにおいて観察されなかったが、しかし、抗原はシアリル化フラクションにおいて検出された。このことから、前記抗原がシアリル化糖脂質であり、リン脂質ではないことが確認される。2つのクラスターのバンドが、モノシアリル化フラクションにおいて検出された(RF〜0.49およびRF〜0.38)。ジシアリル化フラクションにおいて、微弱な染色が最高(RF〜0.24)及び最低(RF〜0.49)の極性のクラスターに関して可視であり、最も強い染色は中間のクラスターで検出された(RF〜0.38)。ポリシアリル化フラクションにおいて、2つのクラスターが可視である(RF〜0.38およびRF〜0.24)。このことから最低の極性のクラスターはモノシアリル化されており、中間のクラスターはジシアリル化構造を示し、最も極性のクラスターは3つの(又はおそらくは4つの)シアル酸を有することが示唆される。
【0128】
酸加水分解を次に使用して、前記抗原を化学的に脱シアリル化した。この方法は、酵素的処置よりも攻撃的であり、完全なシアル酸の除去に至る可能性がより高い。HPTLCおよびSC104免疫染色によって、シアル酸の化学的な除去がSC104結合の完全な欠損を生じることが実証された。このことから前記抗原のシアリル化が抗体結合に必要であることに関する更なる証拠が提供された。
【0129】
従って、SC104は、モノ、ジ、そしてポリシアリル化糖脂質にすら結合するように思われる。しかしながら、アシアロ型(asialo form)には結合しない。このことによって次に事項が指摘される;その事項とは、前記抗原がモノシアリル化されているはずであるが、しかし、更なるシアル酸の存在はSC104の結合に影響しないことである。また、ジシアリル化型に関する染色強度の増加は、次の事項を示唆する;その事項とは、1つのシアル酸の存在のみが必要とされているにもかかわらず、前記抗原は2つのシアル酸を担持していることが最も通常に認められることである。しかしながら、この事項が、収穫する前のC170細胞の齢(age)および培養条件に依存するかどうかについて現在は不明確である。
【0130】
実験4
抗原と商業的に利用可能な脂質標準との比較
方法
SC104抗原を、幾つかの商業的に利用可能な脂質標準と比較した。各標準の例(Examples)を、HPTLCプレートにスポットし、50:40:10クロロホルム:メタノール:CaCl2(0.5%w/v)中で展開した。また、プレートに、部分精製したSC104抗原をスポットした。各標準の移動を、ヨウ素蒸気染色で検出し、各々の位置を前記プレート上にマークした。プレートを、次にSC104でプローブした。何れの標準もSC104で認識されないことが観察され、これによって何れの標準も前記抗原を代表しないことが示唆された。
【0131】
結果
前記標準に関して取得されたRF値は、以下の表6に示される。また、これらの値は、様々にシアリル化されたSC104抗原に対し得られた特定範囲のRF値と比較され、極性およびシアリル化の程度の増加順にリストされた。
【表6】

【0132】
最低の極性のSC104抗原がGM3と共移動し、他方で最高の極性の分子がGD1aおよびGD1bと類似するRF値で移動することを観察することができる。しかしながら、全てのケースにおいて、前記標準はそれ自身は認識されない。
【0133】
多くの標準ガングリオシドに匹敵するRF値を有する抗原の移動によって、次の事項が示唆される;その事項とは、シアリル化に関する要求性と共に、前記抗原が3または4つの単糖からなる短い中性オリゴ糖バックボーンを有することである。この構造は実際にはテトラアオシル構造であることが最も可能性がある(というのも、この構造は複数のシアリル化をより容易に許容するだろうからである)。検出された最低の極性の抗原は、おそらくより短いオリゴ糖バックボーンからなる部分的な抗原構造である。
【0134】
例6 ― SC104 mabによって認識された腫瘍糖タンパク質の同定
実験1
方法
SC104抗原の精製および特徴づけ。SC104特異的抗原を、痰サンプルを0.1M pH7.6 Tris 0.5%NP40で1:1の比率で混合したものから精製した。簡単に説明すると、免疫アフィニティーを、SC104 S136AをプロテインA Cl-6Bセファロースへ共有結合リンカーとしてジメチルピメリミデート・2HCl(Dimethyl pimelimidate・2HCl)を用いてクロスリンキングさせることによって作出した。
【0135】
結果
前記抗原がSC104と交差反応することが認められたが(図13a)、それは抗-シアリルルイスaまたは19/9抗体とは交差反応しなかったことに注目すべきである。
【0136】
実験2
方法
SC104抗原の配列同定。SC104特異的抗原を、痰から上記実験1に概略したとおり精製し、サンプルを10%SDS-PAGEを実施し、製造者の推奨にしたがって銀染色した(Bio-Rad Silver stain kit, catalogue number 1610443)。所望のバンドを、続いてMALDI分析に供試した。
【0137】
結果
SC104抗原に関する50-75kDa間のバンドを、銀染色ゲル上で同定した(図14)。MALDI配列分析によって、幾つかの可能性のあるヒット(hits)が示唆され、このヒットには以下のものが含まれている:
P04839 GP91-PHOX)(GP91-1)(ヘム結合膜糖タンパク質)
Q99741 細胞分裂コントロールタンパク質6ホモログ(CDC6-関連タンパク質)
Q14451 成長因子レセプター結合タンパク質7(GRB7アダプタータンパク質)
P14618 ピルビン酸キナーゼ, アイソザイムM1/M2(EC2.7.1.40)(ピルビン酸キナーゼ筋肉アイソザイム)
O96013 セリン/スレオニンプロテインキナーゼ PAK4(EC2.7.1.37)(p21-活性化キナーゼ4)
P01833 (重合性 Ig受容体)
SC104は糖を認識することから、これらの結果は次の事項を示唆する;その事項とは、シアリルテトラアオシル糖(sialyltetrasoyl sugar)がこれらの糖タンパク質上でも発現できることである。
【0138】
実験3
方法
免疫精製抗原を用い、SC104プロテインAセファロースカラムを用いた競合アッセイ。SC104精製フラクションを、ELISA技術に基づいた実験を用いて、C170細胞へのSC104結合に対するコンペティターとして使用した(図15)。マイクロタイタープレートを5x104/ウェルのC170sでコートし、前記細胞を固定し、ブロックし、抗原の比率を増加させて混合したビオチン化抗体(0.1μg/ウェル)の溶液でインキュベートした。結合SC104ビオチン化抗体を、SA-HRPおよびTMBで検出した。結果を、650nmでの吸光度として表した。
【0139】
結果
プロテインA Cl-6Bセファロース免疫アフィニティーカラムを用いた免疫精製SC104抗原は、前記抗体がその標的へと結合することを特異的に阻害する能力が実証された。
【0140】
例7 ― SC104は腫瘍細胞殺傷を直接的に誘導する
実験1
方法
アネキシン/PI。懸濁液中の腫瘍細胞(1x105アリコート)を、SC104抗体(1μg/ml)又は適切なコントロールで4hr室温でインキュベートし、FITC標識アネキシンおよびプロピジウムイオダイド(propidium iodide)(Sigma, Poole, Dorset)で染色し、2色のフローサイトメトリーで分析した。
【0141】
結果
この試験によって、新たに脱凝集させた結腸直腸腫瘍の強い染色性が示された。しかしながら、これらの試験の間に、SC104抗体が腫瘍細胞の死を促進させることが観察された。類似する現象は、付着性の単層として通常は成長する腫瘍細胞株が懸濁液中に配置され、フローサイトメトリー分析に対しSC104抗体で染色された場合に観察された。前記抗体がアポトーシスまたはネクローシスを誘導するかどうかを決定するために、SC104抗体に暴露した細胞をアネキシンおよびプロピジウムイオダイドで対比染色した(図16)。コントロール抗体で染色された細胞の25%未満は、アネキシンまたはプロピジウムイオダイドの何れかでの染色性を示した。対照的に、10μg/mlを超える濃度のSC104に暴露された細胞は、細胞の30%はアネキシンで、75%はPIで、65%は双方で強い染色性を示した。アネキシン単独で染色された細胞は早期段階のアポトーシスに存在すると記載され、アネキシンおよびPIの双方で染色された細胞は後期段階のアポトーシス/ネグローシスに存在している。
【0142】
実験2
方法
汎カスパーゼ活性化(Pan caspase activation)。2x105 結腸直腸C170細胞を、30μg/mlのSC104に6hrsまで暴露し、汎カスパーゼFITC-FMK-vad(caspACE FITC-vad-FMK, Promega, カタログ番号 G7462)を利用して、カスパーゼ活性化を樹立した。細胞をフローサイトメトリーで分析した。コントロールには、ネガティブコントロールのマウス抗体およびFas抗体(100ng/ml)が含まれる。
【0143】
結果
アッセイの結果によって、SC104が汎カスパーゼを5hrs後に活性化することが実証された(図17)。
【0144】
実験3
方法
SC104 mabによるカスパーゼ6活性化。2x105結腸直腸C170細胞を、1-100μg/mlのSC104に6hrs暴露し、細胞溶解物を産生した。前記溶解物を、12%SDS-PAGEを行い、ウエスタンブロットし、およびカスパーゼ6特異的抗体〔切断カスパーゼ6抗体, Cell Signalling Technology(NEB), カタログ番号 9761〕でプローブした。SC101に暴露させた細胞を、ネガティブコントロールとして含めた。
【0145】
結果
ウエスタンブロットの発色(図18)によって、10(及び、100μg/mlのSC104 mabでより強く)に暴露されたC170細胞中においてカスパーゼ6の活性化が存在することが明瞭に実証された。SC101 mabでの処理に供試された細胞は、カスパーゼ6の係る活性化を示さなかった。
【0146】
実験4
方法
z-FMK-vadカスパーゼインヒビターを用いた細胞死のSC104阻害。2x105のC170細胞を、3μg/mlのSC104に供試し、半分を3μMのz-FMK-vadインヒビター(Promega, カタログ番号 G7232)とインキュベートし、一晩インキュベートした。次の日に細胞生存度を、アネキシンV FITCおよびプロピジウムイオダイドを用いて、アッセイした。
【0147】
結果
前記インヒビターの存在下で生細胞(viable cells)の23%増加が認められた(図19)。このことは、SC104が「古典的な」アポトーシス経路によって結腸直腸細胞を殺傷することを強く示している。
【0148】
実験5
方法
細胞成長の阻害。1x103 結腸直腸C170, C168, C146, CaCO2, Colo205, LoVoおよびHT29細胞を、平底96ウェルプレートの個々のウェルに分配(aliquoted)し、そして一晩37℃で接着させた。次の日に、前記細胞を、10, 3, 1, 0.3および0μg/mlのSC104 mabで処理した。ネガティブコントロールとして、791T/36(濃度100、30、10、3および0μg/ml)を、使用した薬剤の各濃度に対してタイトレーションした。トリプリケートウェル(Triplicate wells)を使用した。細胞を5日間37℃に静置し、次に各ウェルへのMTS試薬の添加および490 nmでの光学濃度の読取(reading)を行った。
【0149】
結果
SC104の、付着細胞の増殖における効果を、MTSアッセイにおいて測定した。10μg/ml SC104(コントロール抗体ではない)の過剰な濃度によって、結腸直腸腫瘍細胞株C170およびColo205の成長が阻害されたが、HT29またはLoVoは阻害されなかった(図20)。図21は、腫瘍細胞株C170, Colo205, HT29およびLoVoに関してフィットさせたIC50を示している。類似する結果は、他の胸部および結腸直腸腫瘍細胞株(表7)で得られた。これらの結果は、SC104が腫瘍細胞増殖をアポトーシスを高用量で誘導することによって阻害していることを示唆するものであった。しかしながら、細胞/細胞接触を失った懸濁物中での細胞は、感作されて、低い抗体濃度で急速な細胞死を生じた。
【表7】

【0150】
実験3 ― 同種親和性の結合
方法
新鮮な及び固定された細胞におけるFACS。新鮮な又は0.5%グルタルアルデヒドで1hr固定されたC170細胞(105)を、100μlのSC104 mab(0〜100μg/ml)中に再懸濁し、氷上で1hrインキュベーションした。前記サンプルをRPMI/10%FCS中で3回洗浄した後に、細胞を、FITC標識ウサギ抗-マウス(1/80:Dako Ltd, Bucks, UK)抗体でインキュベートし、上記に記載のとおりFACSで分析する前に30分間氷上でインキュベートした。
【0151】
同種親和性結合に関するELISA。平底96ウェルELISAプレートを抗マウスIgG Fc特異的抗体でコートし、3μg/ml (100μl/ウェル)のC14抗原(PBS中)でコートし、そして一晩乾燥させた。プレートを、PBSで3回洗浄し、PBS/1%BSAで1hr室温でブロッキングした。SC104抗体(0〜100μg/ml)を、氷上で1hr添加した。前記プレートをPBS/0.05% tween-20中で3回洗浄した後に、ビオチン化SC104を添加し、氷上で30分間インキュベートした。更なる3洗浄をPBS/0.05% tween-20で行ってから、必要に応じて抗-マウスSA-HRP(1/1000:Dako, High Wycombe, UK)またはヤギ抗-マウスFc(1/1000:Dako, High Wycombe, UK)を添加し、氷上で30min静置した。プレートを、PBS/0.05% tween-20で5回洗浄し、100μl/ウェルのTMB基質を添加し、570nmで読取を行った。
【0152】
結果
C170腫瘍細胞の表面でのSC104ハプテンの数は、約4x105部位/細胞である。しかしながら、この数の抗原は、1μg/mlのSC104で容易に飽和されるだろう。従って、10倍過剰の抗体が細胞殺傷に必要であるのかを説明することは困難であった。抗体結合に際し、より多くの部位が現れた可能性がある。このようなことから、抗体飽和曲線を、新鮮な及び固定された細胞で作製した。前記抗原は100μg/mlのSC104濃度であってさえも飽和せず、曲線は新鮮な及び固定された細胞で類似していた。このことから更なる抗原が現れていたことはありそうにない(図22)。これらの結果は、GD3ガングリオシドを認識するマウス mabであるR24において以前に報告されたデータと類似する。この抗体は非飽和の抗体結合を示し、一連のエレガントな実験において、双方の抗原及びそれ自身と結合する能力を有する同種親和性に結合する抗体であることが示された(結果示さず)。従って、SC104を、ELISAプレートを未標識のSC104でコートすること及びSC104ビオチンHRP-アビジンの結合を測定することによって、それ自身に結合する能力に関して選抜した。SC104は、それ自身に結合しなかった(図23)。しかしながら、SC104ハプテンを発現している精製された糖タンパク質が使用されて前記プレートがコートされた場合に、SC104は10μg/mlまで化学量論的に結合し、この濃度を超えて指数関数的に結合した(図23)。これらの結果は、次の事項を示唆している;その事項とは、低い抗体濃度で前記抗体は抗原に結合するが、高い濃度で抗原に結合した抗体は更なる抗体にも結合できることである。これによって抗体の機能的なアビディティーの劇的な増加が可能となり、高密度の抗原を有する細胞上に構築される抗体の格子(lattices of antibodies)が誘導される。この格子形成は複数のシグナリングを生じ、高抗体濃度でアポトーシスを生じるだろう。
【0153】
実験4 ― 細胞毒性薬物と組合せた細胞成長のインビトロ阻害
1x103 結腸直腸C170細胞を、平底96ウェルプレートに分配(aliquoted)し、そして静置して一晩37℃で付着させた。次の日に、前記細胞を、シスプラチン、マイトマイシンC、オキサリプラチンおよびタモキシフェンで最終濃度を10, 3, 1, 0.3, 0.1および0μMで処理した。各濃度の薬物に対して、10, 3, 1, 0.3および0μg/mlの濃度のSC104をタイトレーションした。ネガティブコントロールとして、791T/36(濃度100、30、10、3および0μg/ml)を、使用した薬物の各濃度に対してタイトレーションした。デュープリケートウェル(Duplicate wells)を使用した。細胞を5日間37℃に静置し、各ウェルへのMTS試薬の添加および490nmでの光学密度の読取を行った。
【0154】
結果
相加的な殺傷(additive killing)を化学療法薬剤と共に呈するSC104の能力を、MTSアッセイによってインビトロで選抜した。全ての薬物を、(0.1〜10μg/ml)間で、SC104またはコントロール抗体(0.3〜100μg/ml)の存在下でタイトレーションした。図24は、細胞をSC104および5-FUの組合せで処理した代表的な実験を示す。図25は、SC104がシスプラチン、マイトマイシンC、5-FUおよびタモキシフェンで相加的な殺傷を呈することを示している結果を要約する。相加的な作用は、オキサリプラチンでは認められなかった。
【0155】
実験5 ― 細胞毒性薬物と組合せた腫瘍細胞成長のインビボ阻害
方法
予防モデル。結腸直腸腫瘍細胞株(C170)を、ヌードマウス中での連続的な継代で維持した。治療に関して、前記マウスを、殺傷し、腫瘍を摘出した。前記腫瘍を細かくミンスした。そして、3mm2小片を、4実験群へとランダムに割り当てた30雄性マウスに麻酔下で皮下に移植した。
【0156】
マウスに3mm2小片のC170異種移植片を外植した。マウスの群を、5-FU/ロイコボリン(12.5mg/Kg)で点滴静注によって1, 3, 5, 7および28日目に治療した。同じ日に、マウスは、0.2mgのSC104 mabを皮下的に注射された。コントロールマウスに、SC104単独又はコントロールマウスIgG抗体(5FU/ロイコボリンと共に)の何れかを投与した。腫瘍サイズをキャリパーで測定し、腫瘍の横断面積を7、9、12、14および16日目に計算した。動物を秤量して治療の毒性を評価した。実験の終了時に、腫瘍を秤量して抗腫瘍効果を評価した。
【0157】
治療モデル。結腸直腸腫瘍細胞株(C170)を、ヌードマウス中での連続的な継代で維持した。治療群に関して、前記マウスを、殺傷し、腫瘍を摘出した。前記腫瘍を細かくミンスした。そして、3mm2小片を、4実験群へとランダムに割り当てた30雄性マウスに麻酔下で皮下に移植した。
【0158】
マウスに3mm2小片のC170異種移植片を外植(explanted)した。マウスの群を、5-FU/ロイコボリン(12.5mg/Kg)で点滴静注によって3, 5, 7, 21および22日目に処理した。同じ日に、マウスは、0.2mgのSC104 mabを皮下に注射された。コントロールマウスにSC104単独又はコントロールマウスIgG抗体(5FU/ロイコボリンと共に)の何れかを投与した。腫瘍サイズをキャリパーで測定し、腫瘍の横断面積を12, 16, 19および23日目に計算した。
【0159】
結果
これらの効果をインビボでの腫瘍成長の阻害に解釈することができるかどうかを決定するために、SC104を、C170腫瘍の3mm2抽出物を移植されたか又は前記抗体の投与前5日間で成長させたC170腫瘍を移植させたマウスに(200μg/用量)を3週間(3 weekly)で投与した。動物を、SC104単独、5-FU/ロイコボリンを最大耐量(maximum tolerated dose)又は双方の組合せで3週間治療した。図26aは、SC104または5-FU/ロイコボリン単独の双方が、新たに外植させた腫瘍の腫瘍成長の50%阻害を生じることを示す。対照的に、双方の組合せは、成長の相乗的な阻害を示した。全ての群で腫瘍は、スタガー終了(staggered termination)が開始される16日目まで、腫瘍成長の一次的な増加を示した。9日目から、組合せ治療群は、全ての他の治療群と比較した場合に、成長の有意な阻害を示した。この事項を以下に記す:
SC104および5-FU, 9日目; 37%阻害, p=0.004; 12日目; 59%阻害, p=0.002; 14日目; 74%阻害, p=<0.001; 16日目; 76%阻害, p=<0.001。
5-FU, 9日目; 40%阻害, p=0.004; 12日目; 45%阻害, p=0.004; 14日目; 58%阻害, p=<0.001; 6日目; 62%阻害, p=<0.001。
SC104, 9日目; 32%阻害, p=0.017; 12日目; 44%阻害, p=0.004; 14日目; 54%阻害, p=0.001; 16日目; 62%阻害p=<0.001。全ての統計は、ANOVAで評価した。
【0160】
SC104処置群および細胞毒性薬(5-FU/ロイコボリン)を受けている群の間で、有意な差は存在しなかった。この事項は、SC104、5-FUまたは組合せで治療されたマウスの生存の有意な改善と関連していた(図26b)。SC104および5-FU治療群の組合せは、ビヒクル対照群および5-FU治療群の両方と比較して、生存の増強を示した。この事項を以下に記す:
組合せ:ビヒクル:p=0.0038。
【0161】
組合せ:細胞毒性:薬剤p=0.0111(全ての統計はLog Rankによる)
この用量のSC104によって、全てのマウスは体重を損失することなく又は任意の他の総合的な病状を示すことなく良好に耐えた(図26c)。最終的に、SC104がC170異種移植片腫瘍移植の7日後に治療上投与された場合に、5FUまたはSC104単独の何れも成長を有意に阻害しなかった。しかしながら、5FU/ロイコボリンとの組合せにおいて、それは腫瘍成長を有意に阻害し、生存を増強させた(図27)。SC104 プラス 5-FU/ロイコボリンは、最終的な体重/時間において有意な減少を呈し、C170皮下異種移植片モデルにおいて腫瘍成長を阻害し、生存を増強させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアリルテトラアオシル糖を結合し、細胞死を免疫エフェクター細胞を必要とすることなく直接的に誘導する能力を有する、単離された特異的結合メンバー。
【請求項2】
シアリルテトラアオシル糖に結合する能力を有する単離された特異的結合メンバーであって、該シアリルテトラアオシル糖が、図1aのアミノ酸配列の残基44または49〜54、69〜84および117〜127として実質的に表されるアミノ酸配列を含んでいるドメインから選択される、1以上の結合ドメインを具備しているメンバーによって結合される能力を有する単離された特異的結合メンバー。
【請求項3】
請求項2に記載の結合メンバーであって、前記結合ドメインが、図1aの残基117〜127として実質的に表されるアミノ酸配列を含む結合メンバー。
【請求項4】
図1aのアミノ酸配列の残基44または49〜54、69〜84または117〜127として実質的に表されるアミノ酸配列を含むドメインから選択される1以上の結合ドメインを具備している、請求項2または3に記載の特異的結合メンバー。
【請求項5】
図1aの残基117〜127として実質的に表されるアミノ酸配列を含んでいる、請求項4に記載の結合メンバー。
【請求項6】
図1aに示されるアミノ酸配列の残基44または49〜54および残基69〜84として実質的に表される結合ドメインの1つ又は両方をさらに具備している、請求項5に記載の結合メンバー。
【請求項7】
前記の又は各々の結合ドメインがヒト抗体フレームワークによって保有されている、請求項1〜6の何れか1項に記載の結合メンバー。
【請求項8】
図1aに示されるアミノ酸配列の残基19〜138として実質的に表されるアミノ酸配列を含んでいる、請求項4、5または6に記載の結合メンバー。
【請求項9】
ヒト定常領域をさらに含んでいる、請求項1〜8の何れか1項に記載の結合メンバー。
【請求項10】
シアリルテトラアオシル糖に結合する能力を有する単離された特異的結合メンバーであって、該シアリルテトラアオシル糖が、図1cのアミノ酸配列の残基46〜55、71〜77および110〜118として実質的に表されるアミノ酸配列を含んでいるドメインから選択される、1以上の結合ドメインを具備しているメンバーによって結合される能力を有する単離された特異的結合メンバー。
【請求項11】
前記結合ドメインが図1cの残基110〜118として実質的に表されるアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の結合メンバー。
【請求項12】
図1cのアミノ酸配列の残基46〜55、71〜77および110〜118として実質的に表されるアミノ酸配列を含むドメインから選択される1以上の結合ドメインを具備している、請求項10または11に記載の結合メンバー。
【請求項13】
図1cのアミノ酸配列の残基110〜118として実質的に表されるアミノ酸配列を含む結合メンバーを含んでいる、請求項12に記載の結合メンバー。
【請求項14】
図1cに示されるアミノ酸配列の残基46〜55および残基71〜77として実質的に表される結合ドメインの1つ又は両方をさらに具備している、請求項13に記載の結合メンバー。
【請求項15】
前記の又は各々の結合ドメインがヒト抗体フレームワークによって保有されている、請求項10〜14の何れか1項に記載の結合メンバー。
【請求項16】
図1cに示されるアミノ酸配列の残基23〜128として実質的に表されるアミノ酸配列を含んでいる、請求項12、13または14に記載の結合メンバー。
【請求項17】
ヒト定常領域をさらに含んでいる、請求項10〜16の何れか1項に記載の結合メンバー。
【請求項18】
請求項10〜17の何れか1項に記載の結合メンバーと組合せて又は関連させて、請求項2〜9の何れか1項に記載の結合メンバーを含む、特異的結合メンバー。
【請求項19】
請求項1〜18の何れか1項に記載の結合メンバーの、医療における使用。
【請求項20】
請求項1〜18の何れか1項に記載の結合メンバーおよび薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、担体、緩衝剤、または安定化剤を含んでいる、薬学的組成物。
【請求項21】
患者の腫瘍を治療するための方法であって、該患者に請求項1〜18の何れか1項に記載の結合メンバーの効果的な量を投与することを含む方法。
【請求項22】
請求項1〜18の何れか1項に記載の結合メンバーの、腫瘍の治療のための医薬の製造における使用。
【請求項23】
腫瘍の治療において同時、別々、または連続の使用のための組合せ調製物として、請求項1〜18の何れか1項に記載の特異的結合メンバーおよび活性薬剤を含有している製品。
【請求項24】
請求項23に記載の製品であって、前記活性薬剤がドキソルビシン、タキソール、5-フルオロウラシル、イリノテカンおよび/またはシスプラチンである製品。
【請求項25】
請求項1〜18の何れか1項に記載の結合メンバーをコード化している核酸。
【請求項26】
請求項1〜18の何れか1項に記載の特異的結合メンバーによって結合される能力を有するシアリルテトラアオシル糖。
【請求項27】
脂質またはタンパク質バックボーン上にある、請求項26に記載のシアリルテトラアオシル糖。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図1c】
image rotate

【図1d】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23a】
image rotate

【図23b】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26a】
image rotate

【図26b】
image rotate

【図26c】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2012−105654(P2012−105654A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−288606(P2011−288606)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2007−512338(P2007−512338)の分割
【原出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(501024886)セファロン・オーストラリア・ピーティーワイ・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Cephalon Austraria Pty Ltd
【Fターム(参考)】