説明

潜熱回収ボイラおよびこれを用いたガス化システム

【課題】 水蒸気を含有するガスから潜熱を回収する潜熱回収ボイラにおいて、運転に要する動力を低く維持したまま、チューブの外壁面に均一な水膜を安定して形成して、効率良く定量的に蒸気を発生させる。
【解決手段】 ガスを分散することでそのガスに含有される水蒸気を凝縮して取り込んだ循環水がその中を流れるチューブ24と、チューブの外周を覆うように設けられたシェル20と、シェル内において隔壁22により仕切られたチューブの上部側を覆う第1の部屋27と下部側を覆う第2の部屋28と、第1の部屋の蒸発水がチューブの外壁面を伝って第2の部屋へ流れるように隔壁に設けられた開口25と、第1の部屋と第2の部屋を連通する均圧管37と、チューブの外壁面を伝って第2の部屋に流れてきた蒸発水を第1の部屋に返送する蒸発水返送管31と、蒸発水返送管に設けられた蒸発水を貯留する大気開放槽32とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気を含有するガスから潜熱を回収する潜熱回収ボイラに関するとともに、下水汚泥等の高含水率有機物を加熱してガス化ガスを生成し、生成されたガス化ガスをもとにエネルギーを生成する高含水率有機物のガス化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ、下水汚泥、産業用廃棄物、バイオマス等の有機系廃棄物からエネルギーを回収するために、廃棄物を加熱し熱分解してガス化ガスを生成し、生成されたガス化ガスを元にエネルギーを生成する廃棄物ガス化システムが、環境保全及び省資源の観点から注目されている。
【0003】
このような廃棄物ガス化システムとして、特開2005−139443号公報には、下水汚泥等の高含水率有機物のガス化システムが記載されている。このガス化システムでは、図1に示すように、ガス化炉2で生成したガス化ガスを発電機6に導入する前に、ガス化ガスの水蒸気潜熱を潜熱回収ボイラ5で回収し、回収した水蒸気潜熱を汚泥乾燥機1での乾燥熱源として利用することで、高含水率有機物であっても高い発電効率を達成することができる。
【0004】
この公報には、潜熱回収ボイラ5として、ガス化ガスを水中に分散して気泡化し、ガス化ガスに含まれる水蒸気を凝縮して凝縮水として循環水に取り込み、この循環水をチューブ内に流すとともに、チューブの外壁面に水膜を形成することで、凝縮水を生成することによって獲得した潜熱によって水膜が蒸発し、熱源として利用できる蒸気を得ることができる構造のボイラが記載されている。
【0005】
このような構造の潜熱回収ボイラにおいて、熱源として利用する蒸気を定量的に発生させるためには、チューブの外壁面に均一な水膜を安定して形成する必要がある。しかし、十分な蒸発水を循環し、安定した水膜を形成するために、潜熱回収ボイラの運転に要する動力を増加させては、回収した熱量と運転動力が相殺され、当核ボイラの有効性が発生しないという問題がある。
【特許文献1】特開2005−139443号公報 (図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、運転に要する動力を低く維持したまま、チューブの外壁面に均一な水膜を安定して形成して、効率良く定量的に蒸気を発生させることができる潜熱回収ボイラおよびこれを用いたガス化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、水蒸気を含有するガスから潜熱を回収する潜熱回収ボイラであって、実質的に垂直方向に設置されており、前記ガスを分散して前記ガスに含有する水蒸気を凝縮してその一部分として取り込んだ循環水がその中を流れる少なくとも1本のチューブと、前記チューブの外周を覆うように設けられたシェルであって、このシェル内は隔壁により前記チューブの上部側を覆う第1の部屋と前記チューブの下部側を覆う第2の部屋に仕切られており、この第1の部屋内に一時的に貯留した蒸発水が、前記チューブの外壁面を伝って前記第2の部屋内へと流れるように、前記隔壁に開口が設けられているシェルと、前記第1の部屋と前記第2の部屋とを連通する均圧管と、前記チューブの外壁面を伝って前記第2の部屋内へと流れてきた蒸発水を、前記第1の部屋内へと再び供給する蒸発水返送管と、前記返送管に設けられ、蒸発水を一時的に貯留するための大気開放槽とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
このような構成によれば、ガスに含まれる水蒸気を凝縮して取り込んだ循環水をチューブ内に流すとともに、第2の部屋内のチューブの外壁面に蒸発水の水膜を形成することで、水蒸気の凝縮によって獲得した潜熱により水膜が蒸発し、蒸気の形で潜熱を回収することができる。第2の部屋内では負圧の蒸気が発生することから、返送管に大気開放槽を設けることで、ポンプ等の動力を用いずに大気開放槽内の蒸発水を第1の部屋内に送ることができる。この際、隔壁の開口とは別に、第1の部屋と第2の部屋とを連通する均圧管を設けることで、第1の部屋内の蒸発水が開口を通じて安定して第2の部屋内へ流れ、チューブの外壁面に均一な水膜を安定して形成することができる。よって、潜熱回収ボイラにおいて効率良く定量的に蒸気を発生させることができる。
【0009】
前記第1の部屋内において、前記チューブの外壁面は断熱カバーで覆われていることが好ましい。また、前記蒸発水返送管31は、水平ラインよりも下方斜めに角度をつけて、前記第2の部屋と接続されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る潜熱回収ボイラは、前記大気開放槽と前記第1の部屋との間の前記蒸発水返送管に設けられたバルブと、前記第1の部屋内の蒸発水の水位を検知するセンサと、前記センサで検知した水位に応じて前記バルブの開閉を行い、蒸発水の供給量を調整する第1の制御装置とを更に備えることができる。また、本発明に係る潜熱回収ボイラは、前記大気開放槽と前記第2の部屋との間の前記蒸発水返送管に設けられたバルブと、前記第2の部屋内または前記角度のついた蒸発水返送管内の蒸発水の水位を検知するセンサと、前記センサで検知した水位に応じて前記バルブの開閉を行い、前記第2の部屋内または前記角度のついた蒸発水返送管内の蒸発水の残留量を調整する第2の制御装置とを更に備えることができる。
【0011】
本発明に係る潜熱回収ボイラは、前記シェルの外周に螺旋状に巻きつけられたシースヒータと、このシースヒータの外周をさらに覆う保温材とを更に備えることができる。また、本発明に係る潜熱回収ボイラは、前記シェルの少なくとも上下いずれか一方の面が開口しており、前記シェルと着脱自在に固定されてこの開口を覆う蓋板を更に備えることが好ましい。
【0012】
本発明は、別の態様として、高含水率有機物を乾燥手段で乾燥してからガス化手段で加熱してガス化ガスを生成し、生成されたガス化ガスをもとにエネルギーを生成する高含水率有機物のガス化システムであって、前記ガス化ガスの水蒸気潜熱を回収するために、上記の本発明に係る潜熱回収ボイラを備え、この回収した水蒸気潜熱を上記乾燥手段での乾燥熱源として利用するものである。
【0013】
なお、「高含水率有機物」とは、具体的に以下のものを挙げることができる。
(i)下水、し尿、浄化槽汚泥、家畜糞尿、厨芥残渣等の有機性廃棄物、また、その排水処理に伴い発生する汚泥・残渣。
(ii)畜産加工業、水産加工業、酒精飲料業等に伴い発生する食品加工残渣、またその排水処理に伴い発生する汚泥・残渣。
(iii)製紙業、繊維業等の有機性工業製品の製造に伴い発生する残渣、また、その排水処理に伴い発生する汚泥・残渣。
(iv)動植物等生物系バイオマス資源。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、運転に要する動力を低く維持したまま、チューブの外壁面に均一な水膜を安定して形成して、効率良く定量的に蒸気を発生させることができる潜熱回収ボイラおよびこれを用いたガス化システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る潜熱回収ボイラおよびこれを用いたガス化システムの一実施の形態について説明する。
【0016】
図1に、本発明に係る高含水率有機物のガス化システムの一実施の形態の模式図を示す。本ガス化システムは、処理対象を下水汚泥とし、汚泥乾燥機1、ガス化炉2、改質炉3、顕熱回収ボイラ4、潜熱回収ボイラ5、発電機6を備えている。
【0017】
脱水した下水汚泥を乾燥する汚泥乾燥機1は、間接加熱式の乾燥手段である。ガス化炉2は、下水汚泥を水蒸気と空気もしくは必要に応じて酸素を富化した混合気、もしくは純酸素でガス化するガス化手段である。ガス化は、部分燃焼を起こさせながら行い、下水汚泥をCO、H2、CO2、H2O、メタン、エタン、タール、すす等に変換する。改質炉3は、ガス化ガスをさらに水蒸気、H2、CO、CO2に低分子化する機能を有する。
【0018】
顕熱回収ボイラ4は、いわゆる廃熱ボイラであり、改質炉3からのガス化ガス(約1000℃)の顕熱で高圧蒸気を発生させる顕熱回収手段である。潜熱回収ボイラ5は、顕熱回収ボイラ4を経たガス化ガス中の水蒸気から潜熱を回収するための潜熱回収手段である。なお、顕熱回収ボイラ4と潜熱回収ボイラ5との間には、図示しないフィルタ又はバグフィルタを設け、ガス化ガスを精製することもできる。
【0019】
発電機6は、ガス化ガスをエネルギー源として発電を行う発電手段である。例えばガスエンジンを用いたものを採用することができる。このような発電機では、コンプレッサで精製されたガス化ガスを圧縮し、圧縮されたガス化ガスと空気をガスエンジンに送り、ガスエンジンで燃焼爆発させ、その力で発電機本体を回転させる。このようなガスエンジンの排ガスを汚泥乾燥機1の乾燥熱源として利用することもできる。発電機6は、このようなガスエンジン式の他、ガスタービン式発電装置、燃料電池など気体燃料を電力へ変換する他のタイプのものを採用することもできる。
【0020】
さらに、本ガス化システムは、蒸気タービン7及び蒸気圧縮機8を備えている。顕熱回収ボイラ4の蒸気送出口は、流路を介して蒸気タービン7の蒸気受入口に接続されている。これによって、蒸気タービン7には、顕熱回収ボイラ4からの高圧蒸気が供給される。また、潜熱回収ボイラ5の蒸気送出口は、流路を介して蒸気圧縮機8の蒸気受入口に接続されている。これによって、蒸気圧縮機8には、潜熱回収ボイラ5からの低圧蒸気が供給される。
【0021】
次に、本ガス化システムについて、その作用を説明する。まず、処理対象である下水汚泥は、図示しない脱水手段により脱水され、含水率70〜80重量%の脱水汚泥として汚泥乾燥機1に投入される。汚泥乾燥機1には、後述するところに従って、中圧蒸気及び必要に応じて乾燥機1からの排出蒸気が供給され、下水汚泥を30〜50重量%程度となるように乾燥処理する。中圧蒸気は、1〜10ataの圧力で供給され、典型的には、約7ata、約300℃である。なお、「約」とは、その数値そのもの又は前後の値である。
【0022】
汚泥乾燥機1での下水汚泥の乾燥に伴って、水蒸気が発生する。その排出蒸気の一部は、必要に応じて改質炉3に送られる。これは、後段の顕熱回収ボイラ4及び潜熱回収ボイラ5で、十分な顕熱・潜熱が得られるように蒸気量を調整するためである。汚泥乾燥機1で乾燥処理された下水汚泥は、ガス化炉2に送られる。ガス化炉2には、汚泥乾燥機1への供給源と同様の供給源から中圧蒸気が水蒸気源として供給され、さらに酸素(空気)または酸素富化空気が供給される。これによって下水汚泥を水と空気でガス化する。ガス化は、部分燃焼を起こさせながら行い、下水汚泥をCO、H2、CO2、H2O、メタン、エタン、タール、すす等に変換する。このガス化ガスは、改質炉3に送られる。
【0023】
改質炉3では、ガス化ガスをさらに水蒸気、H2、CO、CO2に低分子化する。前述したように、改質炉3には、汚泥乾燥機1からの排出蒸気が必要に応じて供給される。改質炉3からのガス化ガスは、顕熱回収ボイラ4に送られる。顕熱回収ボイラ4では、改質炉3からのガス化ガス(約1000℃)の顕熱で高圧蒸気を発生させる。高圧蒸気は、10〜100ataの高圧であり、典型的には、約50ata、500℃である。高圧蒸気は、蒸気タービン7に送られる。
【0024】
顕熱を回収されたガス化ガスは、150℃程度となり、触媒フィルタ等(図示省略)によって精製された後、潜熱回収ボイラ5に送られる。潜熱回収ボイラ5は、後述する形態を備え、ガス化ガスの潜熱により、低圧蒸気を発生する。低圧蒸気は、0.1〜1ataであり、典型的には約0.3ata、約69℃である。この低圧蒸気は、蒸気圧縮機8に送られる。潜熱を回収されたガス化ガスは、洗浄され、さらに精製された後、発電機6に送られる。発電機6では、ガス化ガスを用いて発電が行われ、排出ガスは、煙突11から排出される。
【0025】
次に、潜熱回収ボイラ5について、その好適な実施の形態を説明する。図2に、潜熱回収ボイラ5の一実施の形態を示す。本潜熱回収ボイラ5は、ガス化ガス中の水蒸気を凝縮するための凝縮槽10と、凝縮により得た潜熱で蒸気を発生させるためのシェル20とから主に構成される。
【0026】
凝縮槽10は、その底面から延びる隔壁13により、第1の区画11と第2の区画12とに仕切られている。隔壁13の上端と凝縮槽10の天井面との間には、凝縮槽10内の循環水が第1及び第2の区画11、12間を移動できるように空間が設けられている。第1の区画11の底部には、ガス化ガスを循環水中に分散するための気泡形成装置14が設置されている。
【0027】
凝縮槽10の天井面には、循環水中を通過したガス化ガスを排出するガス化ガス排出口15が設けられている。第2の区画12の下部には、循環水をシェル20へ送るための循環水供給管16が設けられている。第1の区画11には、循環水がシェル20から返送される循環水返送管18が設けられている。この循環水返送管18には循環水排出口19が設けられている。
【0028】
シェル20は、いわゆるシェル・アンド・チューブ型の略円筒状の形状を有している。シェル20の内部は、隔壁21、22、23によって隔絶された上下方向の4つの部屋に仕切られている。そして、隔壁21、22、23を貫通して少なくとも1本の伝熱用のチューブ24が設けられている。図2ではチューブ24が3本描かれているが、これはあくまで便宜上のものであって、チューブ24は、少なくとも1本以上であって必要に応じて複数設けることができる。
【0029】
シェル20の最上部の部屋26と最下部の部屋29は、チューブ24の内部を介して連通している。最下部の部屋29には循環水供給管16が設けられており、最上部の部屋26には循環水返送管18が設けられている。そして、循環水供給管16には水ポンプ17が設けられ、これによって、循環水が凝縮槽10とシェル20を循環できるように構成されている。
【0030】
一方、隔壁22とチューブ24との間には環状の間隙25が設けられている。この間隙25により、隔壁22の上部の部屋27と下部の部屋28とが連通し、上部の部屋27の蒸発水がチューブ24の外壁面を伝って流れて水膜を形成する。間隙25には、必要により、図3に示すように、チューブ24を隔壁22に固定するための支持部材38を設けてもよく、これにより間隙25の距離を均一に保つことができる。なお、チューブ24は、隔壁21及び23で支持され、チューブ24と隔壁21又は23の間は密封されている。
【0031】
複数のチューブ24を設ける場合、各チューブ24の配置間隔Sは、チューブの直径Dに対して、0.5D以上が好ましく、1.0D以上がより好ましい。これにより、水膜から発生する蒸気が隣接するチューブ24の水膜に影響されることを防ぎ、フラッティングを防止することができる。チューブ24の直径と水膜形成のための間隙25との関係については、必要蒸発量により定められるものであるが、水膜の安定な形成のためには、間隙25をチューブ24の外径に対して1mm程度以上大きな径とすることが好適である。
【0032】
シェル20には、隔壁22の下部の部屋28から上部の部屋27に蒸発水を返送する蒸発水返送管31が設けられている。この蒸発水返送管31には、蒸発水を一時的に貯留するための大気開放槽32が設けられている。また、大気開放槽32と下部の部屋28との間には水ポンプ33が設けられている。蒸発水返送管31は、下部の部屋28と接続する部分31aにおいて、隔壁23より下方下向きに設置され、31a部に水溜まりが発生する様、水平ラインよりも下方斜めに、好ましくは45〜90°の角度をつけて、下部の部屋28の側面最下部に接続されている。
【0033】
大気開放槽32と上部の部屋27との間、および大気開放槽32と水ポンプ33との間には、それぞれバルブ34、35が設けられている。上部の部屋27、下部の部屋28、および蒸発水返送管31の接続部分31aには、蒸発水の水位を検出するためのセンサ(図示省略)が設けられており、これらセンサとバルブ34、35は、水位に応じて蒸発水の供給量を調節する制御装置(図示省略)を介して接続されている。
【0034】
シェル20の下部の部屋28には、蒸気排出口36が設けられており、この蒸気排出口36は、図1の蒸気圧縮機8に接続している。また、シェル20には、隔壁22の上部の部屋27と下部の部屋28とを連通する均圧管37が設けられている。蒸発水が均圧管37の内部に流入するのを防ぐため、均圧管37の一端は上部の部屋27の側面上方に設けられている。均圧管37の本数や内径等については、特に限定されるものではないが、部屋間の圧力が均一になる様、場合によっては複数設け、設計することが好ましい。
【0035】
チューブ24の外壁面のうち、隔壁22の上部の部屋27を貫通する部分には、図4に示すように、断熱カバー41が全面に覆われている。断熱カバー41は、樹脂製、ゴム製または樹脂とゴムの複合材製が好ましい。なお、断熱カバー41で間隙25の開口を防いで水膜の形成に影響を与えることがないように、断熱カバー41の下端と、上部の部屋27の底面(隔壁22の上面)とに間隔dをあけることが好ましい。例えば、間隔dは5〜100mmが望ましい。
【0036】
シェル20やチューブ24等の流体(循環水)と接触する部材は、SUS304もしくはSUS316L等の耐腐食性に優れたステンレス製とすることが好ましい。ガス化ガスには、HCl、H2Sが含まれることがあるからである。また、チューブ24の外壁面は、耐久性および伝熱性能の維持から、鏡面加工することが好ましい。なお、チューブ24には、フィン構造のようなものは設けない。腐食成分の濃縮を防止するためである。チューブ24の径については、機器に要求されるガス量、許容圧力損失等により、一義的に限定されるものではないが、実用上は、JISに規定される呼び径650A程度までが好適である。
【0037】
次に、上記構成の潜熱回収ボイラ5について、その作用・機能を説明する。先ず、凝縮槽10の気泡生成装置14にガス化ガスが導入される。ガス化ガスは、典型的には、約150℃であり、露点が86℃、水蒸気分圧0.626ataである。ガス化ガスは、気泡生成装置14により微小気泡化され、第1の区画11内の循環水中に拡散する。循環水は約79℃以上に調整する。微小気泡中でガス化ガス中の水蒸気が凝縮し、潜熱を循環水に与える。
【0038】
ガス化ガスは、水蒸気を凝縮水として循環水に提供した後、ガス化ガス排出口15から排出され、図1の発電機6に供給される。排出されるガス化ガスは、循環水温とほぼ等しく、この場合約79℃となっており、水蒸気分圧は約0.465ataとなる。循環水は、隔壁13により第1の区画11内を上昇した後、第2の区画12内を下降するように流れ、ガス化ガスが十分に除かれた後、循環水供給管16を通ってシェル20の最下部の部屋29に供給される。なお、好適には、循環水に中和剤、例えばNaOHを添加してpHを調整し、機器類の腐食を防ぐ。
【0039】
シェル20の最下部の部屋29に供給された循環水は、チューブ24内を上向きに流れ、最上部の部屋26を通り、循環水返送管18を介して凝縮槽10の第1の区画11へと戻る。循環水には凝縮水が加わり、これも含めて循環するので、熱伝達率を高めることができる。循環水には凝縮水が次第に加わることから、余剰となった循環水は、循環水排出口19から排出される。
【0040】
一方、シェル20の上部の部屋27には、蒸発水が導入される。上部の部屋27に入った蒸発水は、間隙25を抜けて、チューブ24の外壁面を伝って下降する。これによってチューブ24の外壁面に水膜が形成される。水膜は、下降するにつれて蒸発する。これによって生成される約69℃、約0.3ataの低圧蒸気は、蒸気排出口36から排出され、蒸気圧縮機8に供給される。すなわち、ガス化ガスの潜熱を、低圧蒸気の形で回収していることになる。
【0041】
このように低圧蒸気の発生によって下部の部屋28の内圧は負圧(例えば、0.2〜0.4ata)になることから、この負圧を利用して、大気開放槽32から蒸発水を上部の部屋27に自給することができる。よって、蒸発水の供給動力を不要にすることができる。この時、下部の部屋28の内圧と上部の部屋27の内圧との間の圧力差が大きいと、間隙25から蒸発水が勢いよく噴出し、チューブ24の外壁面に均一な水膜を安定して形成することができないが、本実施の形態では、均圧管37によって上部の部屋27と下部の部屋28の内圧が等しくなっているので、均一な水膜を安定して形成することができる。
【0042】
また、上部の部屋27内の蒸発水の水位を検知するセンサ(図示省略)により蒸発水の水位を検知して、水位に応じてバルブ34の開閉を行って蒸発水の供給量を増減することで、上部の部屋27内の蒸発水の水位を制御することができる。これにより蒸発水の水位を一定に制御することで、均一な水膜を安定して形成することができる。なお、負圧を利用して蒸発水を自給することから、上部の部屋27内の蒸発水の水位と、大気開放槽32内の蒸発水の水位との高低差は、上部の部屋27内に十分に蒸発水が供給できる範囲で大きいことが望ましい。
【0043】
上部の部屋27内のチューブ24の外壁面は、断熱カバー41で覆われていることから、この上部の部屋27内での蒸発水と循環水との熱交換が抑制され、蒸発水の過昇温を防ぐことができる。なお、上部の部屋27内で蒸発水が過昇温になると、上部の部屋27内で低圧蒸気が発生し、蒸気圧縮機8への低圧蒸気の安定供給が難しくなるとともに、チューブ24外壁面を流れ落ちる蒸発水の流量が不足し、水膜が安定せず、チューブ24表面に乾き面(ドライパッチ)が形成され、チューブ24の腐食要因となる。
【0044】
一方、下部の部屋28で蒸発し切れなかった蒸発水は、水ポンプ33により蒸発水返送管31を通って大気開放槽32へと送られる。この時、蒸発水返送管31の下部の部屋28との接続部31aは、下方に設けられているので、蒸発水が下部の部屋28の底部に溜まるのを防ぐことができる。これにより、下部の部屋28の底部に溜まった蒸発水とチューブ24内部の循環水との間の伝熱を抑制して熱ロスを軽減することができる。
【0045】
また、下部の部屋28の底部や蒸発水返送管31の接続部31aに溜まる蒸発水の水位を検知するセンサ(図示省略)により蒸発水の水位を検知して、水位に応じてバルブ35の開閉を行って蒸発水の返送量を増減することで、下部の部屋28底部の蒸発水の水位を制御することができる。これにより、下部の部屋28の底部に蒸発水の液相ができるのを防ぐことができ、熱ロスを軽減することができる。
【0046】
大気開放槽32内の蒸発水の水位を、シェル20の下部の部屋28内の蒸発水の水位(下部の部屋28底面より低い場合は、蒸発水返送管31の接続部31a内の蒸発水の水位)より低くし、高低差を大きくすることで、水ポンプ33の揚程を低くすることができる。ここで、大気開放槽32内の蒸発水水位の下限は、負圧を利用して、上部の部屋27内に蒸発水が十分供給できる高さとする。これにより、水ポンプの仕様等のイニシャルコストを低減することができるとともに、動力低減によるランニングコストの低減も図ることができる。
【0047】
なお、図2に示すように、本実施の形態では、安定した熱交換性能をより広い流量範囲で得るため、ガス化ガスを除いた単相流の循環水をシェル20内に流しているが、凝縮槽10を設けずに、微小気泡化したガス化ガスを含んだ気液の二相流れの循環水をシェル20内に流すこともできる。また、本実施の形態では、循環水はチューブ24内を上向きに流れる構成となっているが、下向きに流れる構成としても良い。
【0048】
図5に示すように、シェル20の外周にシースヒータ51を螺旋状に巻きつけ、このシースヒータ51の外周をさらに保温材51で覆う構成にしてもよい。このような構成によれば、潜熱回収ボイラ5の起動時において、シースヒータ51により下部の部屋28で蒸気が発生するのに必要な温度までシェル20内部を急速に加熱することで、立ち上げに要する時間を短縮することができる。シェル20内部の温度が安定した後はシースヒータ51を停止する。
【0049】
図6(a)に示すように、シェル20の最下部の部屋29の底面全体を開口し、側面下端をフランジ構造にするとともに、このフランジ構造部とそれを覆う円形の蓋板61とをボルト等の着脱自在の固定部材(図示省略)により固定する構成にしてもよい。このような構成によれば、図6(b)に示すように、潜熱回収ボイラ5を定期点検する際に、容易に蓋板61を取り外すことができ、清掃ブラシ63やジェット洗浄等でチューブ24の内部に付着したスケール等を潜熱回収ボイラ5の外から除去することができる。よって、チューブ24内部の定期的な清掃を容易に行うことができ、伝熱性能を維持することができる。なお、シェル20の最上部の部屋26の上面全体についても、同様に着脱自在な構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係るガス化システムの概要を示すフロー図である。
【図2】本発明に係る潜熱回収ボイラの一実施の形態を模式的に示す断面図である。
【図3】図2の潜熱回収ボイラのIII−III線に沿った平面図である。
【図4】図2の潜熱回収ボイラの上部の部屋内を拡大して示す断面図である。
【図5】本発明に係る潜熱回収ボイラの外周部の一実施の形態を示す断面図である。
【図6】(a)は、本発明に係る潜熱回収ボイラの底面の一実施の形態を示す断面図であり、(b)は、その底面のカバーを外した清掃の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 汚泥乾燥機
2 ガス化炉
3 改質炉
4 顕熱回収ボイラ
5 潜熱回収ボイラ
6 発電機
7 蒸気タービン
8 蒸気圧縮機
9 煙突
10 凝縮槽
11 第1の区画
12 第2の区画
13 隔壁
14 気泡形成装置
15 ガス化ガス排出口
16 循環水供給管
17 水ポンプ
18 循環水返送管
19 循環水排出口
20 シェル
21、22、23 隔壁
24 チューブ
25 間隙
26、27、28、29 部屋
31 蒸発水返送管
32 大気開放槽
33 水ポンプ
34、35 バルブ
36 蒸気排出口
37 均圧管
38 支持部材
41 断熱カバー
51 保温材
53 シースヒータ
61 蓋板
63 清掃ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気を含有するガスから潜熱を回収する潜熱回収ボイラであって、
実質的に垂直方向に設置されており、前記ガスを分散して前記ガスに含有する水蒸気を凝縮してその一部分として取り込んだ循環水がその中を流れる少なくとも1本のチューブと、
前記チューブの外周を覆うように設けられたシェルであって、このシェル内は隔壁により前記チューブの上部側を覆う第1の部屋と前記チューブの下部側を覆う第2の部屋に仕切られており、この第1の部屋内に一時的に貯留した蒸発水が、前記チューブの外壁面を伝って前記第2の部屋内へと流れるように、前記隔壁に開口が設けられているシェルと、
前記第1の部屋と前記第2の部屋とを連通する均圧管と、
前記チューブの外壁面を伝って前記第2の部屋内へと流れてきた蒸発水を、前記第1の部屋内へと再び供給する蒸発水返送管と、
前記返送管に設けられ、蒸発水を一時的に貯留するための大気開放槽と
を備えた潜熱回収ボイラ。
【請求項2】
前記第1の部屋内において、前記チューブの外壁面が断熱カバーで覆われている請求項1に記載の潜熱回収ボイラ。
【請求項3】
前記大気開放槽と前記第1の部屋との間の前記蒸発水返送管に設けられたバルブと、前記第1の部屋内の蒸発水の水位を検知するセンサと、前記センサで検知した水位に応じて前記バルブの開閉を行い、蒸発水の供給量を調整する第1の制御装置とを更に備えた請求項1又は2に記載の潜熱回収ボイラ。
【請求項4】
前記蒸発水返送管31が、水平ラインよりも下方斜めに角度をつけて、前記第2の部屋と接続されている請求項1〜3のいずれかに記載の潜熱回収ボイラ。
【請求項5】
前記大気開放槽と前記第2の部屋との間の前記蒸発水返送管に設けられたバルブと、前記第2の部屋内または前記角度のついた蒸発水返送管内の蒸発水の水位を検知するセンサと、前記センサで検知した水位に応じて前記バルブの開閉を行い、前記第2の部屋内または前記角度のついた蒸発水返送管内の蒸発水の残留量を調整する第2の制御装置とを更に備えた請求項4に記載の潜熱回収ボイラ。
【請求項6】
前記シェルの外周に螺旋状に巻きつけられたシースヒータと、このシースヒータの外周をさらに覆う保温材とを更に備えた請求項1〜5のいずれかに記載の潜熱回収ボイラ。
【請求項7】
前記シェルの少なくとも上下いずれか一方の面が開口しており、前記シェルと着脱自在に固定されてこの開口を覆う蓋板を更に備えた請求項1〜6のいずれかに記載の潜熱回収ボイラ。
【請求項8】
高含水率有機物を乾燥手段で乾燥してからガス化手段で加熱してガス化ガスを生成し、生成されたガス化ガスをもとにエネルギーを生成する高含水率有機物のガス化システムであって、前記ガス化ガスの水蒸気潜熱を回収するために、請求項1〜7のいずれかに記載の潜熱回収ボイラを備え、この回収した水蒸気潜熱を上記乾燥手段での乾燥熱源として利用するガス化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−232272(P2007−232272A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54493(P2006−54493)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15年度〜平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「バイオマスエネルギー高効率転換技術開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】