説明

潤滑剤組成物、減速機および電動パワーステアリング装置

【課題】転がり接触する歯車間の噛み合い部分の潤滑に用いられたときに、長期にわたって騒音低減効果を維持する。
【解決手段】減速機19の駆動歯車21と従動歯車22の噛み合い部分を含む領域に、潤滑剤組成物を充填する。潤滑剤組成物は、潤滑剤としての潤滑油と、平均粒径が300〜500μmの範囲にある緩衝材粒子とを含む。緩衝材粒子の平均粒径を300μm以上とすることにより、摺動音の低減に格段の効果がある。一方、緩衝材粒子の平均粒径が大きくなるにしたがって、歯打ち音が大きくなる。そこで、緩衝材粒子の平均粒径を上記の範囲に設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤組成物、並びにそれを用いた減速機および電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用の電動パワーステアリング装置には減速機が用いられる。例えばコラム型電動パワーステアリング装置では、電動モータの回転を、減速機において、ウォーム等の小歯車からウォームホイール等の大歯車に伝えることで減速するとともに出力を増幅したのち、ステアリングシャフトの出力軸に付与することで、ステアリング操作をトルクアシストしている。減速機構としての小歯車および大歯車の噛み合いには、適度なバックラッシが必要である。
【0003】
しかし、例えば歯車の正逆回転時や、石畳み等の悪路を走行してタイヤからの反力が入力された際などに、バックラッシに起因して歯打ち音が発生する場合があり、それが車室内に騒音として伝わると運転者に不快感を与えることになる。
このため従来は、適正なバックラッシとなるように小歯車と大歯車との組み合わせを選別して減速機を組み立てる、いわゆる層別組み立てをしているが、かかる方法では生産性が著しく低いという問題がある。また層別組み立てをしたとしても、ウォームホイールの軸の偏芯による操舵トルクのむらが発生するという別の問題がある。
【0004】
そこで、ウォームとウォームホイールの噛み合い部分の潤滑に用いられる潤滑剤組成物中に、緩衝材粒子を添加することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−162018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1では、ウォームとウォームホイールの噛み合い部分の歯が互いに滑り接触を起こすときに、上記噛み合い部分に緩衝材粒子が入り込み、その結果、ウォームおよびウォームホイール間のバックラッシが抑制され、騒音が低減される。
ところで、ステアリングシャフトと電動モータの回転軸が平行に配置され、電動モータの出力を、平行軸歯車機構を介してステアリングシャフトの出力軸に伝達する場合を想定する。その平行軸歯車機構の歯車の噛み合い部分では、転がり接触が生じているため、特許文献1の緩衝材粒子では、転がり接触部の接触荷重に耐えられずに、破壊してしまうおそれがある。その結果、緩衝材粒子が早期に劣化し、バックラッシに起因する騒音を早期に発生する。一方で、転がり接触部において、緩衝材粒子が破壊されるときに発生する異音による騒音も問題である。
【0006】
また同様の問題は、電動パワーステアリング装置の減速機に限らず、転がり接触する小歯車と大歯車とを有する一般の減速機においても存在する。
本発明の目的は、転がり接触する歯車間の噛み合い部分の潤滑に用いられたときに、長期にわたって騒音低減効果を維持することができる潤滑剤組成物、減速機および電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
互いに転がり接触する歯車の噛み合い部分では、打音発生の防止に寄与した緩衝材粒子が転がり接触部で押し潰されて破壊されてしまう可能性が高いという知見を得た。
本発明は、かかる知見に基づいたものであり、互いに転がり接触する歯車の噛み合い部分を含む領域を潤滑するための潤滑剤組成物において、潤滑剤として用いられる潤滑油と、緩衝材粒子とを含み、上記緩衝材粒子の平均粒径が、300〜500μmの範囲に設定されていることを特徴とする潤滑剤組成物を提供する。
【0008】
上記緩衝材粒子の平均粒径が、300〜500μmの範囲に設定されていれば、摺動音および歯打ち音(ラトル音)をともに小さくできる点で好ましい。すなわち、緩衝材粒子の平均粒径を300μm以上とすることにより、摺動音の低減に格段の効果があるという知見を得た。一方、緩衝材粒子の平均粒径が大きくなるにしたがって、歯打ち音が大きくなる傾向にある。そこで、緩衝材粒子の平均粒径を上記の範囲に設定した。
【0009】
また、上記潤滑剤として用いられる潤滑油の動粘度を高くして潤滑油の流動性を低くした場合、緩衝材粒子が転がり接触部に入り込み難くなる。その結果、転がり接触部での緩衝材粒子の破壊を抑制することができる。これにより、長期にわたって、緩衝材粒子による騒音防止効果を維持することができる。一方で、緩衝材粒子の粒径が300μm以上のときに、潤滑油の動粘度を高くすると、歯打ち音低減の効果は得られるものの、摺動音の低減に関しては、その効果が飽和する。また、潤滑油の動粘度が高くなり過ぎると、操舵トルク上昇という不具合がある。そこで、歯打ち音および摺動音の他、操舵トルク上昇の点を考慮し、潤滑油の動粘度は、300mm2 /s以上であって、あまり高くなり過ぎないことが好ましい。
【0010】
緩衝材粒子の形状は球状、粒状、薄片状、棒状等の種々の形状が選択できるが、潤滑剤組成物の流動性などを考慮すると球状または粒状が好ましく、とくに球状が好ましい。
緩衝材粒子としては、ゴム弾性を有する種々の、ゴムまたは軟質樹脂からなるものがいずれも使用可能である。このうち軟質樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性または硬化性(架橋性)のウレタン樹脂等を挙げることができる。また、例えばオレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系などの耐油性の熱可塑性エラストマーを用いることもできる。
【0011】
一方、ゴムとしては、例えばエチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、シリコーンゴム、ウレタンゴム(U)等をあげることができる。
ただし耐熱性、耐久性などを考慮すると、硬化性のウレタン樹脂の硬化物にて形成した球状の緩衝材粒子を使用するのが好ましい。またかかる緩衝材粒子は、硬化性のウレタン樹脂の硬化度(架橋度)を調整することによってヤング率、引張り強さ、および硬さを任意に設定できるという利点もある。
【0012】
また、上記緩衝材粒子の添加量は潤滑剤の5〜50重量%とすることが好ましい。5重量%未満では、騒音低減効果が十分に得られず、また、50重量%を超えると、回転トルク上昇という不具合が生ずるので、上記の範囲に設定することが好ましい。
また、本発明の減速機は、小歯車と大歯車とを備え、両歯車の噛み合い部分を含む領域に上記の潤滑剤組成物を充填したことを特徴とするものである(請求項3)。この場合、歯打ち音などの騒音を安価に低減でき、また、その騒音低減効果を長期に維持することができる点で好ましい。
【0013】
また、本発明の電動パワーステアリング装置は、電動モータの動力を上記の減速機を介して操舵機構に付与することを特徴とするものである(請求項4)。この場合、車室内での騒音をコスト安価に低減できる点で好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。
<潤滑剤組成物>
本発明の潤滑剤組成物は、前述したように、潤滑剤としての潤滑油と、緩衝剤粒子とを含むものである。上記緩衝材粒子の平均粒径としては、300〜500μmの範囲に設定されていることが好ましい。
【0015】
上記緩衝材粒子の平均粒径が、300〜500μmの範囲に設定されていれば、摺動音および歯打ち音をともに小さくできる。すなわち、緩衝材粒子の平均粒径を300μmとすることにより、摺動音の低減に格段の効果がある。一方、緩衝材粒子の平均粒径が大きくなるにしたがって、ラトル音が大きくなる傾向にある。そこで、緩衝材粒子の平均粒径を上記の範囲に設定した。
【0016】
また、上記潤滑剤として用いられる潤滑油の動粘度を高くして潤滑油の流動性を低くした場合、緩衝材粒子が転がり接触部に入り込み難くなる。その結果、転がり接触部での緩衝材粒子の破壊を抑制することができる。これにより、長期にわたって、緩衝材粒子による騒音防止効果を維持することができる。一方で、緩衝材粒子の粒径が300μm以上のときに、潤滑油の動粘度を高くすると、歯打ち音低減の効果は得られるものの、潤滑油の動粘度を例えば1000mm2 /s以上と高くしても、摺動音の低減に関しては、その効果が飽和する。また、潤滑油の動粘度が高くなり過ぎると、操舵トルク上昇という不具合がある。そこで、歯打ち音および摺動音の他、操舵トルク上昇の点を考慮し、潤滑油の動粘度は、300mm2 /s以上であって、あまり高くなり過ぎないことが好ましい。
【0017】
潤滑油としては合成炭化水素油(例えばポリαオレフィン油)が好ましいが、シリコーン油、フッ素油、エステル油、エーテル油等の合成油や鉱油などを用いることもできる。潤滑油はそれぞれ単独で使用できる他、2種以上を併用しても良い。
また潤滑油には、必要に応じて固体潤滑剤(二硫化モリブデン、グラファイト、PTFE等)、リン系や硫黄系の極圧添加剤、トリブチルフェノール、メチルフェノール等の酸化防止剤、防錆剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤、油性剤などを添加してもよい。
【0018】
緩衝材粒子の形状は球状、粒状、薄片状、棒状等の種々の形状が選択できるが、潤滑剤組成物の流動性などを考慮すると球状または粒状が好ましく、とくに球状が好ましい。緩衝材粒子を形成する緩衝材としては、ヤング率が0.1〜104 MPaの範囲内にあるものを用いるのが好ましい。
ヤング率が0.1MPa未満のものは軟らかすぎるため、小歯車と大歯車との噛み合い部分に介在して衝撃を吸収し、それによって歯打ち音を減少させることで減速機の騒音を低減する効果が十分に得られないおそれがある。またヤング率が104 MPaを超える場合には電動パワーステアリング装置の操舵トルクが上昇したり、摺動音を発生して却って減速機の騒音が大きくなったりするおそれがある。
【0019】
なお緩衝材粒子を形成する緩衝材のヤング率は、歯打ち音を低減する効果をさらに向上することを考慮すると、上記の範囲内でもとくに0.5MPa以上であるのが好ましい。また操舵トルクの上昇や摺動音の発生をより確実に防止すること考慮すると、上記の範囲内でもとくに102 MPa以下であるのが好ましい。
緩衝材粒子のその他の特性についてはとくに限定されないが、当該緩衝材粒子を形成する緩衝材の引張り強さは1〜50MPaであるのが好ましい。
【0020】
また緩衝材粒子を形成する緩衝材の硬さは、ショアーD硬さで表して10以上で、かつロックウェル硬さ(Rスケール)で表して110以下であるのが好ましい。
かかる緩衝材粒子としては、ゴム弾性を有する種々の、ゴムまたは軟質樹脂からなるものがいずれも使用可能である。
緩衝材粒子としては、ゴム弾性を有する種々の、ゴムまたは軟質樹脂からなるものがいずれも使用可能である。このうち軟質樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性または硬化性(架橋性)のウレタン樹脂等を挙げることができる。また、例えばオレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系などの耐油性の熱可塑性エラストマーを用いることもできる。
【0021】
一方、ゴムとしては、例えばエチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、シリコーンゴム、ウレタンゴム(U)等をあげることができる。
ただし耐熱性、耐久性などを考慮すると、硬化性のウレタン樹脂の硬化物にて形成した球状の緩衝材粒子を使用するのが好ましい。またかかる緩衝材粒子は、硬化性のウレタン樹脂の硬化度(架橋度)を調整することによってヤング率、引張り強さ、および硬さを任意に設定できるという利点もある。
【0022】
また、上記緩衝材粒子の添加量は潤滑剤の5〜50重量%とすることが好ましい。5重量%未満では、噛み合い部の衝撃を緩和できないので騒音低減効果が十分に得られず、また、50重量%を超えると、粒子の流動抵抗が大きくなり操舵トルク上昇という不具合が生ずるので、上記の範囲に設定することが好ましい。
<減速機および電動パワーステアリング装置>
図1は、本発明の一実施形態にかかる電動パワーステアリング装置の模式的断面図である。図1を参照して、電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering System) 1は、ステアリングホイール等の操舵部材2と一体回転可能に連結されたステアリングシャフト3と、そのステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結された中間シャフト5と、その中間シャフト5に自在継手6を介して連結されたピニオンシャフト7と、ピニオンシャフト7に設けられたピニオン歯7aに噛み合うラック歯8aを有して自動車の左右方向に延びる転舵軸としてのラックバー8とを有している。
【0023】
ピニオンシャフト7およびラックバー8によりラックアンドピニオン機構からなる操舵機構9が構成されている。ラックバー8は、車体に固定されるラックハウジング10内に図示しない複数の軸受を介して直線往復動自在に支持されている。ラックバー8の両端部は、ラックハウジング10の両側へ突出し、各端部には、それぞれタイロッド11が結合されている。各タイロッド11は図示しないナックルアームを介して対応する操向輪12に連結されている。
【0024】
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオン歯7aおよびラック歯8aによって、自動車の左右方向に沿ってのラックバー8の直線運動に変換される。これにより、操向輪12の転舵が達成される。
ステアリングシャフト3は、一端に操舵部材2が取り付けられた取付軸13と連結された入力軸3aと、ピニオンシャフト7に連なる出力軸3bとに分割されている。これら入力軸3aおよび出力軸3bは、トーションバー14を介して同一の軸線上で相対回転可能に互いに連結されている。入力軸3aの下端は、例えばメタルブッシュ等のすべり軸受15を介して出力軸3bによって回転可能に支持されている。
【0025】
トーションバー14の上端部、入力軸3aの上端部および取付軸13の下端部が、例えば連結ピンからなる連結部材16によって一体回転可能に連結されている。また、トーションバー14の下端部は、例えば連結ピンからなる連結部材17によって、出力軸3bと一体回転可能に連結されている。
電動モータ18の出力回転が減速機19を介してピニオンシャフト7に伝達され、さらに、ラックバー8の直線運動に変換されて、操舵が補助されるようになっている。電動モータ18の回転軸20は、ステアリングシャフト3と平行に配置されている。
【0026】
減速機19は、電動モータ18の回転軸20と同軸上に設けられ電動モータ18により回転駆動される小歯車としての駆動歯車21と、この駆動歯車21に噛み合うと共にピニオンシャフト7に一体回転可能に連結される大歯車としての従動歯車22とを備える。すなわち、減速機19は、平行軸歯車機構により構成されており、駆動歯車21と従動場車22とは、互いの歯の噛み合い部において、互いの歯を転がり接触させる。
【0027】
駆動歯車21は、電動モータ18の回転軸20と継手23を介して同軸的に一体回転可能に連結された軸部材24の外周に一体に形成されている。
減速機19を収容するギヤハウジング25内において、少なくとも両歯車21,22の噛み合い部分には、比較的動粘度の高い潤滑油からなる潤滑剤が充填されている。上記のギヤハウジング25は、筒状の第1のハウジング25aと筒状の第2のハウジング25bとを組み合わせて形成されている。第1のハウジング25aには、ステアリングコラムの一部を構成する第3のハウジング26が組み合わされているとともに、モータハウジング27が組み合わされている。
【0028】
駆動歯車21が一体に形成された軸部材24は、駆動歯車21を軸方向に挟んだ両側に配置された一対の転がり軸受28,29を介して回転可能に支持されている。上記一対の転がり軸受28,29のうち、一方の転がり軸受28の外輪はモータハウジング27により保持され、他方の転がり軸受28の外輪は第2のハウジング25bによって保持されている。
【0029】
従動歯車22が一体回転可能に取り付けられた出力軸3bは、従動歯車22を挟んだ両側に配置された一対の転がり軸受30,31によって回転可能に支持されている。上記一対の転がり軸受30,31のうち、一方の転がり軸受30の外輪は第1のハウジング25aによって保持され、他方の転がり軸受31の外輪は第2のハウジング25bによって保持されている。上記の転がり軸受28〜31には、それぞれ公知のシール軸受が用いられている。
【0030】
トーションバー14を介する入、出力軸3a,3b間の相対回転変位量により操舵トルクを検出するトルクセンサ32が設けられている。このトルクセンサ32により検出された操舵トルクおよび図示しない車速センサにより検出された車速に基づいて、電動モータ18の出力トルクが調整され、これにより、アシストトルクが調整されるようになっている。
【0031】
ギヤハウジング25内には、少なくとも両歯車21,22の噛み合い部分に、先に述べた緩衝材粒子を分散した潤滑剤としての潤滑油が充填されている。潤滑油は噛み合い部分のみに充填してもよいし、噛み合い部分と少なくとも一方の歯車の周縁全体に充填してもよいし、ギヤハウジング25内全体に充填してもよい。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本発明の減速機の構成を、電動パワーステアリング装置1以外の装置のための減速機に適用することができる等、本発明の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で、種々の変更を施すことができる。
【実施例】
【0032】
緩衝材粒子の粒径検討
緩衝材粒子としては、硬化性のウレタン樹脂の硬化物(ヤング率:10MPa)からなる球状のものを用いた。その平均粒径は100〜600μmの範囲で変化させた。
次に上記緩衝材粒子を、動粘度50〜5000mm2 /sの範囲で変化させたポリαオレフィン油からなる潤滑油に、20重量%の配合割合で配合し、潤滑剤組成物を得た。
【0033】
そして、この潤滑剤組成物を、図1に示す電動パワーステアリング装置の実機の減速機に充填して、摺動音(dB)と歯打ち音(dB)とを測定した。駆動歯車21および従動歯車22はともに金属製とした。
(摺動音)
摺動音の測定において、バックラッシは8’とした。その結果を図2に示す。
【0034】
図2より、緩衝材粒子の平均粒径が300μm以上であるときに、摺動音の低減に格段の効果のあることが判明した(基準値参照)。このことから、緩衝材粒子の平均粒径が300μm以上であることが必要であることが確認された。
(歯打ち音)
歯打ち音(ラトル音)の測定において、バックラッシは8’とした。その結果を図3に示す。
【0035】
図2の摺動音の低減に格段の効果が得られた、平均粒径が300μm以上で且つ動粘度が1000mm2 /s以上である各例において、図3に示すように、粒径の増大に伴って、ラトル音が増大している。したがって、ラトル音を抑制するという観点から、平均粒径としては、500μm以下であることが必要であることが判明した(基準値参照)。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電動パワーステアリング装置の模式的断面図である。
【図2】本発明の実施例において、潤滑油の動粘度と電動パワーステアリング装置の減速機の摺動音との関係を測定した結果を示すグラフ図である。
【図3】本発明の実施例において、緩衝材粒子の平均粒径と電動パワーステアリング装置の減速機の歯打ち音との関係を測定した結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0037】
1…電動パワーステアリング装置、9…操舵機構、18…電動モータ、19…減速機、20…回転軸、21…駆動歯車(小歯車)、22…従動歯車(大歯車)、25…ギヤハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに転がり接触する歯車の噛み合い部分を含む領域を潤滑するための潤滑剤組成物において、潤滑剤として用いられる潤滑油と、緩衝材粒子とを含み、上記緩衝材粒子の平均粒径が、300〜500μmの範囲に設定されていることを特徴とする潤滑剤組成物。
【請求項2】
小歯車と大歯車とを備え、両歯車の噛み合い部分を含む領域に請求項1または2に記載の潤滑剤組成物を充填したことを特徴とする減速機。
【請求項3】
操舵補助用の電動モータの出力を請求項1から3の何れか1項に記載の減速機を介して操舵機構に伝達することを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−115297(P2008−115297A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300547(P2006−300547)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】