説明

潤滑油組成物および無段変速機

【課題】高い金属間摩擦係数と優れた耐摩耗性を両立し、無段変速機において好ましく用いられる潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】鉱油および/または合成油からなる基油に、(A)炭素数1〜8の炭化水素基を有する、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルおよび亜リン酸モノエステルから選ばれる少なくとも一種のリン含有化合物、および(B)置換基が炭素数6〜10の炭化水素基である3級アミン化合物を配合してなる潤滑油組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑油組成物に関し、さらに詳しくは、高い金属間摩擦係数と優れた耐摩耗性を有し、無段変速機用潤滑油組成物として好適な潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用等の変速機として、金属ベルト式(プッシュベルト式、チェーン式)やトロイダル式の無段変速機が開発・実用化されている。当初、これらの無段変速機においては、潤滑油として自動変速機用潤滑油が用いられていたが、無段変速機の性能が向上するにつれて潤滑油の高性能化が求められるようになってきた。特に、自動変速機用潤滑油においては、湿式クラッチの摩擦特性の最適化が主に求められるため、当該潤滑油を無段変速機に用いた場合は金属間摩擦係数が不足しやすく、大容量のトルク伝達が困難であるという問題があった。
【0003】
上記問題を解決するために、高い金属間摩擦係数を有する無段変速機用潤滑油組成物が開発されている。例えば、特許文献1は硫黄系極圧剤、リン系極圧剤およびアルカリ土類金属系清浄剤を配合した潤滑油組成物を開示し、特許文献2は特定範囲の摩擦係数を有し、金属塩系清浄剤やジアルキルジチオリン酸亜鉛を配合した潤滑油組成物を開示し、特許文献3は、ポリメタクリレート、アルカリ土類金属のフェネート及びアルカリ土類金属のスルホネートから選ばれる1種以上、イミド化合物、及びアルキルジチオリン酸亜鉛を配合した潤滑油組成物を開示する。これらの潤滑油組成物は、高い金属間摩擦係数を有するが、腐食により耐摩耗性が低下するなどの問題があった。
【0004】
一方、特許文献4は、リン酸エステルまたは亜リン酸エステル類の少なくとも1種、チオリン酸エステルまたはチオ亜リン酸エステルの少なくとも1種、ポリアミン化合物を配合した潤滑油組成物を開示する。当該潤滑油組成物は、良好な耐摩耗性を有すると考えられるが、金属間摩擦係数に関してさらなる向上が望まれる。
【0005】
上記のように、従来の潤滑油組成物は高い金属間摩擦係数と優れた耐摩耗性の両立という点で必ずしも満足いくものではなく、さらなる性能向上が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開平9−100487号公報
【特許文献2】特開平11−80772号公報
【特許文献3】特開平11−181464号公報
【特許文献4】特開2002−155292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況でなされたものであり、高い金属間摩擦係数と優れた耐摩耗性を両立し、無段変速機において好ましく用いられる潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定のリン含有化合物および特定の3級アミン化合物を配合してなる潤滑油組成物により上記目的が達成されることを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。すなわち、本発明は
(1) 鉱油および/または合成油からなる基油に、(A)炭素数1〜8の炭化水素基を有する、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルおよび亜リン酸モノエステルから選ばれる少なくとも一種のリン含有化合物、および(B)置換基が炭素数6〜10の炭化水素基である3級アミン化合物を配合してなる潤滑油組成物、
(2) (A)成分であるリン含有化合物のリン量が、潤滑油組成物全量基準で0.02質量%以上である上記(1)に記載の潤滑油組成物、
(3) (B)成分である3級アミン化合物の窒素量が、潤滑油組成物全量基準で0.005質量%以上である上記(1)に記載の潤滑油組成物、
(4) (A)成分であるリン含有化合物のリン量と(B)成分である3級アミン化合物の窒素量の質量比(リン量:窒素量)が2:1から5:1の範囲内にある上記(1)に記載の潤滑油組成物、
(5) さらに、(C)アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネートおよびアルカリ土類金属サリシレートから選ばれる一種以上のアルカリ土類金属化合物を配合してなる上記(1)〜(4)のいずれかに記載の潤滑油組成物、
(6) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載の潤滑油組成物からなる無段変速機用潤滑油組成物、
(7) 上記(6)に記載の無段変速機用潤滑油組成物が充填したことを特徴とするプッシュベルト式またはチェーン式無段変速機、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い金属間摩擦係数と優れた耐摩耗性を両立する潤滑油組成物が得られる。上記性質を有することから、当該潤滑油組成物は無段変速機において特に好ましく用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の潤滑油組成物は、鉱油および/または合成油からなる基油に、特定のリン含有化合物および特定の3級アミン化合物を配合してなる潤滑油組成物である。
〔基油〕
本発明の潤滑油組成物における基油としては、鉱油および/または合成油からなる基油が用いられる。
当該基油の鉱油としては、例えば、溶剤精製、水添精製などの通常の精製法により得られたパラフィン基系鉱油、中間基系鉱油又はナフテン基系鉱油などが挙げられる。
また、合成油としては、炭化水素系合成油やエーテル系合成油が好ましく、上記炭化水素系合成油としては、例えばポリブテン、ポリイソブチレン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレン共重合体などのα−オレフィンオリゴマー又はその水素化物、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンなどを挙げることができる。エーテル系合成油としては、例えばポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテルなどを挙げることができる。
上記の基油の中で、本発明の基油としては鉱油または炭化水素系合成油が好適である。
本発明の基油としては、上記鉱油を一種用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよく、また、上記合成油を一種用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。さらには、鉱油一種以上と合成油一種以上とを組み合わせて用いてもよい。
基油の粘度は、100℃の動粘度が1.5〜35mm2/sの範囲が好ましく、2.5〜8mm2/sがより好ましい。
基油の粘度指数は80〜140の範囲が好ましく、100〜135がより好ましい。
【0011】
〔リン含有化合物〕
本発明の潤滑油組成物においては、(A)成分として、炭素数1〜8の炭化水素基を有する、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルおよび亜リン酸モノエステルから選ばれる少なくとも一種のリン含有化合物が使用される。炭素数が8を超えると高い金属間摩擦係数が得られず、さらに耐摩耗性が低下する場合もある。
炭素数1〜8の炭化水素基としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜8のアリ−ル基、炭素数7〜8のアラルキル基などを挙げることができる。前記アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基,sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アリル基、プロペニル基、各種ブテニル基、各種ヘキセニル基、各種オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。
炭素数6〜8のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基などが挙げられ、炭素数7〜8のアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基などが挙げられる。
上記炭化水素基の中で、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、より好ましくは、炭素数2〜8のアルキル基、さらに好ましくは炭素数4〜8のアルキル基である。
【0012】
本発明のリン酸モノエステルは、次の一般式(I)で表される酸性リン酸モノエステルである。
【0013】
【化1】

【0014】
上記(I)式中、R1は炭素数1〜8の炭化水素基である。酸性リン酸モノエステルの具体例としては、例えばモノエチルアシッドホスフェート、モノn−プロピルアシッドホスフェート、モノn−ブチルアシッドホスフェート、モノ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
【0015】
本発明のリン酸ジエステルは、次の一般式(II)で表される酸性リン酸ジエステルである。
【0016】
【化2】

【0017】
上記(II)式中、R2およびR3はそれぞれ独立に炭素数1〜8の炭化水素基である。酸性リン酸ジエステルの具体例としては、例えばジエチルアシッドホスフェート、ジn−プロピルアシッドホスフェート、ジn−ブチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
【0018】
本発明の亜リン酸モノエステルは、次の一般式(III)で表される酸性亜リン酸モノエステルである。また、その異性体である一般式(IV)で表される構造のリン含有化合物であってもよい。
【0019】
【化3】

【0020】
【化4】

【0021】
上記(III)式および(IV)式中、R4、R5は炭素数1〜8の炭化水素基である。亜リン酸モノエステルの具体例としては、例えば、エチルアシッドホスファイト、n−プロピルアシッドホスファイト、n−ブチルアシッドホスファイト、2−エチルヘキシルアシッドホスファイトなどが挙げられる。
【0022】
本発明の(A)成分であるリン含有化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。当該リン含有化合物のリン量は、潤滑油組成物全量基準で0.02質量%以上であることが好ましく、0.03〜0.09質量%がより好ましい。0.02質量%以上であることで、金属間摩擦係数を高めることができる。
【0023】
〔3級アミン化合物〕
本発明の潤滑油組成物においては、(B)成分として、置換基が炭素数6〜10の炭化水素基である3級アミン化合物が使用される。炭素数が6を下回ると高い金属間摩擦係数も優れた耐摩耗性も得られない。また、炭素数が10を超えた場合においても、高い金属間摩擦係数も優れた耐摩耗性も得られない。
炭素数6〜10の炭化水素基としては、炭素数6〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアルケニル基、炭素数6〜10のアリ−ル基、炭素数7〜10のアラルキル基などを挙げることができる。前記アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、シクロヘキシル基、各種ヘキセニル基、各種オクテニル基、各種デセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。
炭素数6〜10のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられ、炭素数7〜10のアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、メチルフェネチル基などが挙げられる。
上記炭化水素基の中で、炭素数6〜10のアルキル基が好ましく、より好ましくは、炭素数8のアルキル基である。
本発明の3級アミン化合物は、次の一般式(V)で表される。
【0024】
【化5】

【0025】
上記(V)式中、R6、R7およびR8は、それぞれ独立に炭素数6〜10の炭化水素基である。3級アミン化合物の具体例としては、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミンなどが挙げられる。
【0026】
本発明の(B)成分である3級アミン化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。当該3級アミン化合物の窒素量は、潤滑油組成物全量基準で0.005質量%以上であることが好ましく、0.02〜0.04質量%がより好ましい。0.005質量%以上であることで耐摩耗性が向上する。
【0027】
本発明において、(A)成分であるリン含有化合物のリン量と(B)成分である3級アミン化合物の窒素量の質量比(リン量:窒素量)は2:1から5:1の範囲内にあることが好ましく、3:1から4:1の範囲内がより好ましい。
【0028】
〔アルカリ土類金属化合物〕
本発明の潤滑油組成物においては、上記(A)成分および(B)成分に加えて、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネートおよびアルカリ土類金属サリシレートから選ばれる一種以上のアルカリ土類金属化合物を配合することが好ましい。アルカリ土類金属化合物を配合することで、金属間摩擦係数が向上する。
【0029】
アルカリ土類金属スルホネートとしては、分子量300〜1,500、好ましくは400〜700のアルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が挙げられ、中でもカルシウム塩が好ましく用いられる。
【0030】
アルカリ土類金属フェネートとしては、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応物のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が挙げられ、中でもカルシウム塩が特に好ましく用いられる。
【0031】
アルカリ土類金属サリシレートとしては、アルキルサリチル酸のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が挙げられ、中でもカルシウム塩が好ましく用いられる。
【0032】
上記アルカリ土類金属化合物は、直鎖状または分枝状のアルキル基を有するものが好ましく、アルキル基の炭素数は4〜30、より好ましくは6〜18である。また、アルカリ土類金属化合物は中性塩、塩基性塩、過塩基性塩のいずれも使用することができる。アルカリ土類金属化合物の全塩基価は、通常、10〜500mgKOH/g、好ましくは15〜450mgKOH/gである。
【0033】
上記アルカリ土類金属化合物の配合量は、潤滑油組成物全量基準で、0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%である。配合量が0.01質量%未満であると、その効果が発揮されにくく、また20質量%を超えてもその添加に見合った効果は得られない。また、アルカリ土類金属化合物は、上記の規定量を含有する限り、単独又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
〔その他添加剤〕
本発明の無段変速機用潤滑油組成物においては、本発明の目的が損なわれない範囲においてさらに添加成分を配合することができる。当該添加剤成分としては、酸化防止剤、無灰清浄分散剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、錆止め剤、金属不活性化剤、消泡剤、および摩擦調整剤等が挙げられる。
【0035】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系やアミン系のもの、あるいはアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)などが好ましく用いられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール);4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール);4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール);2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール);2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール;2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール;2,6−ジ−t−アミル−p−クレゾール;2,6−ジ−t−ブチル−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール);4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール);4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール);ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド;n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート;2,2’−チオ〔ジエチル−ビス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。これらの中で、特にビスフェノール系及びエステル基含有フェノール系のものが好適である。
【0036】
アミン系酸化防止剤としては、例えばモノオクチルジフェニルアミン;モノノニルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン系、4,4’−ジブチルジフェニルアミン;4,4’−ジペンチルジフェニルアミン;4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン;4,4’−ジヘプチルジフェニルアミン;4,4’−ジオクチルジフェニルアミン;4,4’−ジノニルジフェニルアミンなどのジアルキルジフェニルアミン系、テトラブチルジフェニルアミン;テトラヘキシルジフェニルアミン;テトラオクチルジフェニルアミン;テトラノニルジフェニルアミンなどのポリアルキルジフェニルアミン系、及びナフチルアミン系のもの、具体的にはα−ナフチルアミン;フェニル−α−ナフチルアミン;さらにはブチルフェニル−α−ナフチルアミン;ペンチルフェニル−α−ナフチルアミン;ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン;ヘプチルフェニル−α−ナフチルアミン;オクチルフェニル−α−ナフチルアミン;ノニルフェニル−α−ナフチルアミンなどのアルキル置換フェニル−α−ナフチルアミンなどが挙げられる。これらの中でジアルキルジフェニルアミン系及びナフチルアミン系のものが好適である。
【0037】
無灰清浄分散剤としては、例えばコハク酸イミド類,ホウ素含有コハク酸イミド類,ベンジルアミン類,ホウ素含有ベンジルアミン類,コハク酸エステル類,脂肪酸あるいはコハク酸で代表される一価又は二価のカルボン酸のアミド類などが挙げられる。
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート,オレフィン系共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体など),分散型オレフィン系共重合体,スチレン系共重合体(例えば、スチレン−ジエン水素化共重合体など)などが挙げられる。
【0038】
流動点降下剤としては、例えば、重量平均分子量が1万〜15万程度のポリメタクリレートなどが挙げられる。
錆止め剤としては、例えば、金属系スルホネート、コハク酸エステルなどが挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系,ベンズイミダゾール系,ベンゾチアゾール系,チアジアゾール系などが挙げられる。
消泡剤としては、例えば、ポリシロキサン、ポリアクリレートなどが挙げられる。
摩擦調整剤としては、ネオペンチルグリコールモノラウレート、トリメチロールプロパンモノラウレート、グリセリンモノオレエートなどの多価アルコール部分エステルなどが挙げられる。
【0039】
本発明の潤滑油組成物においては、特定のリン含有化合物と特定のアミン化合物を併用することにより、高い金属間摩擦係数と優れた耐摩耗性が得られる。当該特性により本発明の潤滑油組成物は無段変速機用潤滑油組成物として好適に用いられ、特にプッシュベルト式やチェーン式等の金属ベルト式無段変速機やトロイダル式無段変速機において好ましく用いられる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
なお、摩擦係数の測定および耐摩耗性の評価は、以下に示す方法により実施した。
〔摩擦係数の測定〕
試験機:Ball on plate往復動摩擦試験機(Cameron Plint TE77)
(Ball:SUJ2 6mm径、Plate:SCr420 Ra0.6μm)
試験条件
[ならし条件]7N、13分
[本試験]
荷重:7N〜34N(3分毎に1Nずつ上昇)
振幅:5mm
周波数:22Hz
平均すべり速度:0.22m/s
油温:100℃
〔耐摩耗性の評価〕
摩擦係数測定試験後に、摩耗痕径を光学顕微鏡によって測定した。
【0041】
実施例1〜7及び比較例1〜9
第1表に示す各成分を含有する潤滑油組成物を調製し、摩擦係数の測定、耐摩耗性の評価を行った。なお、第1表中の数値の単位は、組成物全量基準としたときの質量%である。また、潤滑油基油には水素化改質した鉱油(100℃動粘度4.4mm2/s、粘度指数127)を使用した。
第2表には、潤滑油組成物のリン、窒素、カルシウムの濃度、7N、21Nおよび34Nにおける摩擦係数および摩耗痕径を示す。本測定においては3点全てにおいて0.104以上で十分な金属間摩擦係数を有すると判断した。また摩耗痕径は0.27mm以下を目標値とした。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
第2表に示すように、本発明の潤滑油組成物は、高い金属間摩擦係数と優れた耐摩耗性を両立する。一方、本発明の3級アミン化合物を使用しない比較例1〜6、9においては、摩擦係数や耐摩耗性に関して目標の性能が得られない。一方、本発明のリン含有化合物を使用しない比較例7および8においても、摩擦係数や耐摩耗性が劣っている。
このように、3級アミン化合物とリン含有化合物をそれぞれ特定化し、これらを併用することで高い金属間摩擦係数と優れた耐摩耗性を両立することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、高い金属間摩擦係数と優れた耐摩耗性を両立する潤滑油組成物が得られる。上記性質を有することから、当該潤滑油組成物は無段変速機において特に好ましく用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油および/または合成油からなる基油に、(A)炭素数1〜8の炭化水素基を有する、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルおよび亜リン酸モノエステルから選ばれる少なくとも一種のリン含有化合物、および(B)置換基が炭素数6〜10の炭化水素基である3級アミン化合物を配合してなる潤滑油組成物。
【請求項2】
(A)成分であるリン含有化合物のリン量が、潤滑油組成物全量基準で0.02質量%以上である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
(B)成分である3級アミン化合物の窒素量が、潤滑油組成物全量基準で0.005質量%以上である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
(A)成分であるリン含有化合物のリン量と(B)成分である3級アミン化合物の窒素量の質量比(リン量:窒素量)が2:1から5:1の範囲内にある請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
さらに、(C)アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネートおよびアルカリ土類金属サリシレートから選ばれる一種以上のアルカリ土類金属化合物を配合してなる請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の潤滑油組成物からなる無段変速機用潤滑油組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の無段変速機用潤滑油組成物が充填したことを特徴とするプッシュベルト式またはチェーン式無段変速機。

【公開番号】特開2009−167337(P2009−167337A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9095(P2008−9095)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】