澱粉サブタイプおよび脂質代謝
【課題】耐性澱粉および不飽和脂肪含量が高い組成物および食物による脂肪または脂質代謝の調節の改善方法の提供。
【解決手段】個体の炭水化物および脂肪の代謝を調節する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。これにより、肥満症に罹っている個体の治療、個体におけるインスリン非依存性真性糖尿病の発症率を低下させる等の効果を表す。
【解決手段】個体の炭水化物および脂肪の代謝を調節する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。これにより、肥満症に罹っている個体の治療、個体におけるインスリン非依存性真性糖尿病の発症率を低下させる等の効果を表す。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、耐性澱粉および不飽和脂肪含量が高い組成物および食物による脂肪または脂質代謝の調節に関する。
【0002】
背景技術
一般に肥満および太りすぎ、並びにインスリン非依存性真性糖尿病のような一連の代謝性疾患、異常高脂肪血症、高血圧、および冠心疾患のような一連の代謝性疾患は、世界のかなりの地域に広がっている問題である。多くの場合に、これらの疾患の下に横たわっている原因は、インスリン耐性の進展である。インスリン耐性の開始および進展に寄与する要因は完全には解明されていないが、食事における脂肪および/または炭水化物の種類が決定的な要因として公表されてきた(Storlien et al., 1993, Diabetes, 42: 457-462)。
【0003】
ヒトの炭水化物摂取の重要な成分である食餌澱粉は、2種類のグルコースポリマー、すなわちアミロースおよびアミロペクチンからなっている。アミロースはグルコース残基がα(1−4)結合によって連結した線状ポリマーであり、アミロペクチンはグルコース残基がα(1−4)とα(1−6)結合によって連結した分岐状ポリマーである。
【0004】
アミロペクチン澱粉の摂取により、血漿インスリンおよびグルコース濃度が速やかに且つ長時間にわたり上昇することが知られており、このことは長期的に見て全身のインスリン感受性にとって有害であるとされてきた。ヒトでは、食後の血漿グルコース濃度を大幅に上昇させる食物の消費は、血漿中の遊離脂肪酸濃度の増加とも関連している。この血漿中の遊離脂肪酸濃度が増加すると、おそらくはグルコース−脂肪酸サイクルによりグルコース酸化が減少し、これによりインスリン感受性が損なわれることがある。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、今般、耐性澱粉および不飽和脂肪または脂質濃度の高い食物を消費すると、炭水化物および脂肪代謝に望ましい効果を生じることを示した。具体的には、耐性澱粉および不飽和脂肪または脂質濃度の高い食物を消費すると、食事摂取後の食後の血漿グルコース濃度が減少し、血漿インスリン濃度が低下し、血漿レプチン濃度が減少し、満腹感が増加し、白色脂肪組織、褐色脂肪組織および筋組織における脂質沈着のレベルが減少し、肝臓におけるグリコーゲン合成が増加することを示した。
【0006】
従って、本発明は、第一の側面では、個体の炭水化物および脂肪代謝を調節する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法を提供する。
【0007】
具体的態様としては、次のものが挙げられる:
【0008】
(1) 個体の脂肪代謝を促進する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。好ましくは、脂肪代謝の促進は、脂肪蓄積の減少および/または脂肪酸化の増加を包含する。
【0009】
(2) 個体の血漿レプチン濃度を減少させ且つ満腹感を増加させる方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【0010】
(3) 肥満症に罹っている個体の治療方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【0011】
(4) 個体における肥満症の発生率を低下させる方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【0012】
(5) 個体におけるインスリン非依存性真性糖尿病の発症率を低下させる方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【0013】
(6) 個体による食物消費後の個体の食後の血漿グルコースおよび/またはインスリン濃度を減少させる方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【0014】
(7) 個体の体脂肪組成を制御する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【0015】
第二の側面では、本発明は、第一の側面による方法で使用する食材の調製方法であって、低耐性澱粉含量を有する成分を高耐性澱粉含量を有する成分に代え、飽和脂肪の幾つかまたは総てを不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法を提供する。
【0016】
第三の側面では、本発明は、耐性澱粉を少なくとも2gと不飽和脂肪を少なくとも2g含んでなり、耐性澱粉が総澱粉含量の少なくとも5重量%の比率で含まれている、組成物を提供する。
【0017】
好ましくは、不飽和脂肪は、総脂肪含量の少なくとも25重量%の比率で含まれている。
【0018】
好ましくは、不飽和脂肪は、主としてω−3とω−6との間で良好なバランスを有するポリ不飽和脂肪、およびモノ不飽和脂肪から選択される。
【0019】
組成物は、例えば錠剤、食材、予めパッケージされた食物、またはカロリーを制御した食物の形態をとることができる。
【0020】
第四の側面では、本発明は、個体の炭水化物および脂肪代謝を調節する方法であって、個体に本発明の組成物を投与することを含んでなる、方法を提供する。
【0021】
具体的態様としては、下記のものが挙げられる:
(1) 個体の血漿レプチン濃度を減少させ且つ満腹感を増加させる方法であって、本発明の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【0022】
(2) 肥満症に罹っている個体の治療方法であって、本発明の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【0023】
(3) 個体における肥満症の危険性を低下させる方法であって、本発明の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【0024】
(4) 個体におけるインスリン非依存性真性糖尿病の危険性を低下させる方法であって、本発明の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【0025】
(5) 個体による食物消費後の個体の食後の血漿グルコースおよび/またはインスリン濃度を減少させる方法であって、本発明の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【0026】
(6) 個体の体脂肪組成を制御する方法であって、本発明の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【0027】
本発明は、本発明の第四の側面による方法で使用する本発明の組成物も提供する。本発明は、本発明の第四の側面による方法で使用する医薬品の製造における本発明の組成物の使用も提供する。
【0028】
本発明は、個体の食事における脂肪の利用を促進する方法であって、所定の食事において利用しようとする脂肪と共に耐性澱粉を少なくとも2g消費することを含んでなる、方法も提供する。
【0029】
本発明は、脂肪酸化のレベルを刺激することによって個体における肥満症の発生率を低下させる方法であって、個体に耐性澱粉に富む高炭水化物食事を与え、個体の脂肪酸化のレベル増加を刺激することを含んでなる、方法も提供する。
【0030】
個体におけるインスリン非依存性真性糖尿病の発症率を低下させる方法であって、個体に耐性澱粉に富む高炭水化物食事を与え、個体の脂肪酸化のレベル増加を刺激することを含んでなる、方法も提供する。
【発明の具体的説明】
【0031】
組成物および食材
本発明は、高濃度の耐性澱粉および不飽和脂肪を含んでなる組成物を提供する。
【0032】
本明細書で用いられる「耐性澱粉」という用語は、Brown, McNaughtおよびMoloney (1995) Food Australia 47: 272-275に定義されている通りにRS1、RS2、RS3、およびRS4として定義された形態のものを包含する。修飾または未修飾の耐性澱粉またはそれらの混合物を、本発明で用いることもできる。特定の耐性澱粉は、多重修飾の生成物であることができる。修飾した耐性澱粉としては、耐性マルトデキストリンのような分解生成物が挙げられる。
【0033】
本発明に特に好適な耐性澱粉の一形態は、耐性澱粉を含む澱粉である。好ましくは、澱粉のアミロース含量は少なくとも40%(w/w)であるが、澱粉のアミロース含量は澱粉を得た植物の種によって変化することがある。好ましい形態では、澱粉はアミロース含量が少なくとも70%(w/w)、少なくとも80%(w/w)または少なくとも90%(w/w)のトウモロコシに由来する。澱粉は、化学的、物理的、または酵素的に処理または修飾することもできる。化学修飾は、酸化、架橋結合、エーテル化、エステル化、酸性化、デキストリン化、またはそれらの混合物によって行うことができる。物理修飾としては、高温水分による処理が挙げられる。
【0034】
好ましくは、耐性澱粉はトウモロコシ(コーン)から誘導されまたは得られる。しかしながら、他の耐性澱粉の供給源を本発明で用いることができることが理解されるであろう。例としては、モロコシ、小麦、大麦、カラスムギ、ライコムギ、トウモロコシおよび米のような穀物、ジャガイモおよびタピオカのような塊茎植物、エンドウのようなマメ科植物、通常の同系交配品種改良法または遺伝子修飾植物種から誘導した澱粉を含む他のものなどが挙げられる。
【0035】
澱粉を処理して、多数の物理的または化学的手段によって耐性澱粉含量を増加させることもできる。澱粉を非遺伝学的に修飾した植物種から得た場合には、生成する処理した澱粉は非GMO耐性澱粉と呼ぶこともできる。GMO食品の規制および消費者の好みに関する多数の理由のため、本発明の組成物には処理または未処理のいずれであろうと非GMO澱粉のみを用いるのが望ましい。
【0036】
一つの好ましい処理手段は、水分の存在下で澱粉を熱処理することであって(高温水分処理)、これは陰、大気または陽圧下、高温水分下での加熱、または様々な温度および圧力での循環法など多数の方法によって行うことができる。加熱は100〜180℃程度、好ましくは約120〜150℃とすることができ、水分レベルは10〜80%、好ましくは20〜60%とすることができる。反復オートクレーブ処理および急速冷却を用いて、澱粉の耐性澱粉含量を増加させることもできる。これらの方法および条件を変えて、処理を行う澱粉の耐性澱粉のレベルを望ましく増加させることができることを理解されるであろう。
【0037】
処理を溶媒抽出によって行い、澱粉から脂肪および/またはミネラルを除去することもできる。
【0038】
WO94/03049号明細書およびWO94/14342号明細書には、耐性澱粉であり且つアミロース含量が50%(w/w)以上、特に80%(w/w)以上のトウモロコシ澱粉、アミロース含量が27%(w/w)以上の米澱粉、または35%(w/w)以上の小麦澱粉が挙げられる高アミロース澱粉が開示されている。更に、アミロース含量が50%以上であり且つ耐性澱粉含量が増加した澱粉の特定の粒度範囲である。これらの澱粉としてはトウモロコシ、大麦およびマメ科植物が挙げられる。しかしながら、本発明はこれらの形態の耐性澱粉に限定されない。例えば、他の形態の耐性澱粉をバナナ、およびジャガイモのような塊茎植物、およびそれらの修飾形態から誘導することができる。
【0039】
酸化、架橋結合、エーテル化、エステル化、酸性化、デキストリン化などの化学修飾も、当該技術分野において適当な化学処理として周知である。同様に、他の修飾を、物理的、酵素的、または当業者に周知の他の手段によって誘導することもできる。
【0040】
澱粉の配座または構造を変更することによって耐性澱粉の酵素感受性の程度を修正することが有用であることもある。例としては、酸または酵素希釈(thinning)、および二官能価試薬、熱/水分処理および熱アニーリングを用いる架橋結合が挙げられる。澱粉の修飾は、澱粉の結晶性の操作によって行うこともできる。このような修飾法は当該技術分野で知られており、これらの方法によって製造した澱粉は本発明に好適である。
【0041】
好ましくは、耐性澱粉は、トウモロコシ、モロコシ、米、大麦、カラスムギ、ライコムギ、小麦、マメ科植物、ジャガイモ、またはバナナ澱粉から誘導される。幾つかの澱粉のアミロース含量は耐性澱粉含量に関係していると思われるので、一つの好ましい態様は、アミロース含量が少なくとも40%(w/w)の澱粉の使用である。トウモロコシ澱粉から得られるまたは誘導される耐性澱粉が、本発明に特に好適であることが分かった。多くの澱粉含有植物において、それらの植物が耐性澱粉の特性を示すには、アミロース含量をトウモロコシに見られる高レベルにまで増加する必要はない。これらの特性は、小麦[+35%アミロース]、バナナおよび大麦[+30%アミロース];ジャガイモ、マメ科植物および米[+27%アミロース]に見出されると思われる。耐性澱粉の量は、そのアミロース含量には関係なく、アミラーゼによる攻撃に対する澱粉顆粒または澱粉から誘導された材料の耐性によって示すことができる。しかしながら、アミロース含量は、澱粉顆粒がこの澱粉加水分解に対する耐性という特性を示すかどうかの指示薬として作用することができる。
【0042】
アミロース含量が少なくとも70%(w/w)、少なくとも80%(w/w)または少なくとも90%(w/w)であるトウモロコシ澱粉は、これらの澱粉が耐性澱粉を形成する澱粉顆粒を高濃度で含んでいるので、好ましい。
【0043】
「不飽和脂肪」という用語は、固形および液体状の不飽和脂肪酸エステルを包含する。脂肪、油状物、脂肪酸および脂質という用語は、本明細書では互換的に用いられる。
【0044】
好ましくは、脂肪は、モノ不飽和脂肪、ポリ不飽和脂肪、ω−3脂肪、またはω−6脂肪である。本発明に関する他の植物トリグリセリドとしては、種子、果実、ナッツおよび他の植物材料から得られるものであって、機械的放出および/または溶媒抽出によって得られることが多いものが挙げられる。本発明での使用に特に好適な例は、高および中オレイン品種を包含するヒマワリ油、大豆油、綿実油、低リノレンおよび他の改良品種を包含するキャノーラまたは菜種油、高リノレン品種(Linola)を包含するアマまたは亜麻仁油、トウモロコシまたはコーン油、オリーブ油、ピーナッツ油、米糠油、ヤシ油および精留ヤシ油、パーム核油、ココヤシ油などである。
【0045】
動物起源のトリグリセリドを本発明で用いることができ、乳、およびウシ、ヒツジおよび魚の加工によって得られるものが挙げられる。好ましい例としては、n−3ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)およびn−6PUFA、例えば魚油が挙げられる。
【0046】
本発明による組成物は、典型的な食材および栄養補助食品と比較して炭水化物/脂肪含量の比率として高濃度の耐性澱粉および高濃度の不飽和脂肪を含んでなる。具体的には、本発明の組成物は、耐性澱粉を少なくとも2gおよび不飽和脂肪を少なくとも2g含んでなる。
【0047】
従って、組成物は、耐性澱粉を少なくとも5、10、15または20g含んでなることができる。本発明の目的の一つは、アミロペクチン澱粉のような非耐性型の食用澱粉を耐性澱粉に代えることであるので、耐性澱粉は組成物の総澱粉含量のかなりの比率として含まれる。例えば、耐性澱粉は総澱粉含量の少なくとも10重量%、好ましくは総澱粉含量の少なくとも15、20、25、30、35、40、50、60、70または80重量%の比率で含まれることがある。同様に、耐性澱粉は、組成物の総炭水化物含量のかなりの比率で含まれているのが好ましい。例えば、耐性澱粉は、総炭水化物含量の少なくとも5重量%、好ましくは総炭水化物含量の10、15、20、25、30、35、40、50、60または75重量%の比率で含まれることがある。組成物に含まれる耐性澱粉の種類は、上記されている。
【0048】
脂肪/脂質含量に関して、組成物は典型的には不飽和脂肪または組成物の同等物を少なくとも2g含んでなる。例えば、組成物は、不飽和脂肪を少なくとも3、4、5、6または8g(マーガリンのような食用スプレッドには更に多量)含んでなることがある。耐性澱粉対不飽和脂肪の比が約1:1〜1:2となるように不飽和脂肪を含むのが好ましいが、この比は、個体の食物に関連して用いられる個々の食品について著しく異なる可能性がある。
【0049】
本発明の目的の一つは、飽和脂肪を不飽和脂肪に代えて、耐性澱粉および不飽和脂肪が個々の食事の重要な要素を形成するときに所望な代謝効果を達成することであるので、不飽和脂肪は組成物の総脂肪含量のかなりの比率として含まれるのが好ましい。例えば、不飽和脂肪は、総脂肪含量の少なくとも25重量%、好ましくは総澱粉含量の少なくとも35、50、75または80重量%の比率で含まれることがある。一態様では、飽和脂肪は、組成物に実質的に含まれていない。組成物に包含することができる不飽和脂肪の種類は、上記している。
【0050】
組成物は、耐性澱粉以外の炭水化物、飽和脂肪、香味料、ビタミン、ミネラル、電解質、微量元素および他の通常の添加剤を含んでなることもできる。タンパク質、特に消化に耐性であり、「バイパスタンパク質または耐性タンパク質」と呼ばれるタンパク質を包含し、生理学的性能または利用を最適にすることもできる。これらの任意成分のいずれかが本発明の組成物に含まれていないときには、それらは通常は食物の他の要素において本発明の組成物の栄養補助食品として供給され、総ての必須栄養成分が十分に供給されるようにすべきである。本発明の組成物が患者の食物摂取の実質的部分を供給しようとするときには、任意成分が含まれるのが好ましく、それらを別個に摂取することを回避できるようにするのが好ましい。これは、体重減少治療時の太りすぎまたは肥満患者にとって特に重要であり、これにより総ての必須栄養成分が推奨された量で供給されることが重要である。
【0051】
ビタミンおよびミネラルは、保険当局によって設定された限界に準じて組成物に加えることができる。本発明の組成物は、総ての推奨されたビタミンおよびおよびミネラルを含んでなることができる。ビタミンとしては、典型的にはA、B1、B2、B12、葉酸、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、C、D、EおよびKが挙げられる。ミネラルとしては、典型的には鉄、亜鉛、ヨウ素、銅、マンガン、クロム、およびセレニウムが挙げられる。ナトリウム、カリウム、および塩化物のような電解質、および他の通常の添加剤も、推奨された量で加えられる。
【0052】
本発明の組成物は、食材または飲料のようなヒトまたは動物の消費に適する任意の形態を採ることができる。一態様では、組成物は、水、コーヒー、茶、またはフルーツジュースのような水を含む液体で可溶性、懸濁性、分散性または乳化性の粉末混合物である。このような目的に対して、組成物は3日または1週間のような所定期間全栄養要件をカバーすることを目的とするパッケージに包装することによって、組成物を適当なサブユニットの一日用量、好ましくは女性には一日用量当たり4または5個のサブユニットおよび男性には4〜6個のサブユニットであって個別に包装した後にパッケージに包装するもの分割し、またはパッケージをこのようなサブユニットの分割のための手段を備えることができる。
【0053】
もう一つの好ましい態様では、本発明の組成物は、水を含む液体の液状栄養製剤であって、これに固形成分が10〜40重量%の量で溶解、懸濁、分散または乳化される。液状栄養製剤が引用を目的とするときには、通常は上記のような香味料を含んでなる。
【0054】
もう一つの態様では、本発明の組成物は栄養バー、フルーツバー、クッキィー、またはケーキ、パンまたはマフィンのようなベーカリー製品、または低脂肪スプレッドまたはマーガリンのような酪農製品のような固形組成物の形態であることができる。
【0055】
組成物は、冷蔵および冷凍の既製食品などの予めパッケージされたものの一部または全部を形成することができる。
【0056】
組成物は、錠剤として処方することもできる。耐性澱粉および不飽和脂肪、並びに結合剤および香味料のような他成分の量によって少なくとも7〜8gの組成物を生じるので、錠剤は比較的大きくなることがある。従って、錠剤は、典型的には噛んだ後に燕下することができるように処方される。あるいは、組成物を多数の錠剤に再分割することもできる。
【0057】
従って、本発明の組成物は、食事、飲料、粉末、錠剤、健康食品、栄養補助食品、および動物用食餌の形態などで供給することができる。
【0058】
組成物は、カロリー制御食物の全部または一部、例えば、エネルギー含量が800〜1200kcal/日、または1200kcal/日を上回る、例えば、2000kcal/日のカロリー制御食物を形成することができる。
【0059】
耐性澱粉および不飽和脂肪含量の高い食物の製造
本発明の組成物、および耐性澱粉および不飽和脂肪含量の高い食物は、個体の通常の食事における炭水化物および脂肪摂取量の一部または全代替物として野茂のを意図する。必要な代替を行う一つの方法は、個体の現在の食事における食物または特定の食物項目の量を減少させながら、栄養補助食品を提供することである。もう一つの方法は、通常の食物項目であって、炭水化物および脂肪含量および組成が、耐性澱粉および不飽和脂肪濃度を増加させ(且つ非耐性澱粉、炭水化物および飽和脂肪の濃度を減少させた)食材を提供するように改良されたものを提供することである。
【0060】
従って、本発明は、本発明の組成物を製造する方法であって、(i) 食材または飲料の炭水化物含量の幾らかまたは総てを耐性澱粉に代え、(ii) 食材または飲料の飽和脂肪含量幾らかまたは総てを不飽和脂肪に代えることを含んでなる方法を提供する。
【0061】
本発明は、食材の製造方法であって、1種類以上の食物成分を耐性澱粉含量の高い1種類以上の食物成分に代え、飽和脂肪の幾らかまたは全部を不飽和脂肪に代え、耐性澱粉の比率を増加させ、不飽和脂肪の比率を増加させ、飽和脂肪の比率を低下させることを含んでなる、方法も提供する。
【0062】
これは、成分、中間体生成物または最終生成物の製造および/または加工中に成分を単に置換して、耐性澱粉および/または不飽和脂肪含量を増加させることによって行うことができる。高耐性澱粉含量成分および不飽和脂肪の適当な供給源、並びに澱粉の耐性澱粉含量を増加させる方法の記載は上記に提供されている。好ましくは、耐性澱粉含量は、食材または組成物の総炭水化物含量の少なくとも5重量%まで、更に好ましくは、少なくとも10、20、30、40、50または70重量%まで増加する。好ましくは、不飽和脂肪含量は、食材または組成物の総脂肪含量の少なくとも20重量%まで、更に好ましくは少なくとも30、40、50、60、70、80、90、95または100重量%まで増加する。
【0063】
上記食材または組成物は、任意の特定の食材または組成物に関する技術において知られている通常の食物製造手法を用いて調製することができる。
【0064】
耐性澱粉および不飽和脂肪含量を増加させることができる範囲は、様々な食物の種類について変化する。例えば、現在用いられている白パンにおける耐性澱粉量は約1重量%であり、脂肪(主として、ポリ不飽和脂肪酸として)の量は約2.5重量%である。パンの耐性澱粉含量は、6〜12重量%まで増加することができる。脂肪の量は、通常の白パンでは少なくとも6%まで(および特別の食物では少なくとも30%まで)増加することができる。
【0065】
炭水化物/脂肪代謝の調節方法
本発明の目的は、耐性澱粉摂取を増加させ、飽和脂肪を不飽和脂肪に代えて所望な代謝効果を得ることによって個体の食事を改良することである。例えば、耐性澱粉およびポリ不飽和脂肪酸のような不飽和脂肪の濃度は、個体の現在の食事摂取と比較して増加させることができる。特に、食事の炭水化物総摂取量に対する耐性澱粉の比率および食事の脂肪総摂取量に対するポリ不飽和脂肪酸のような不飽和脂肪の比率を増加することができる。
【0066】
個体の食事のこの操作は、総食事法によって、または単回食事法であって耐性澱粉および不飽和脂肪に富む本発明の組成物を投与する方法によって行うこともできる。
【0067】
総食事法を用いるときには、耐性澱粉の増加濃度は一種類の食物または食物群によって提供することができ、ポリ不飽和脂肪酸のような不飽和脂肪の増加濃度は別の食物または食物群によって提供することができる。例えば、耐性澱粉含量が高くなるように特別に処方したパンのようなベーカリー製品を、ポリ不飽和脂肪酸含量が高くなるように処方した酪農スプレッドと共に提供することができる。
【0068】
所望な代謝効果としては、食事摂取後の食後の血漿グルコース濃度の減少、並びに血漿インスリン濃度の低下、血漿レプチン濃度の減少および満腹感の増加、および白色脂肪組織、褐色脂肪組織および筋組織における脂質沈着のレベルの減少および肝臓におけるグリコーゲン合成の増加が挙げられる。
【0069】
更に、本発明者らは、c−fosの転写が視床下部外側部(LH)、腹内側核(PVH)、視床下部弓状核(Arc)、および背内側核(DMH)で有意に調節されることを見出した(図6参照)。c−fos転写は、ニューロン活性化の指標である(Xin et al., 2000, Brain Research Bulletin, 52: 235-242)。これらの脳の領域はエネルギーバランスおよび満腹感を調節する役割を果たしていることが知られているので、これらの領域における転写活性/ニューロン活性は食事の変化によって影響を受けるという観察が重要である。更に、これらの結果は、食事の耐性澱粉および脂肪含量を変化させるときに見られる満腹感および血漿レプチン濃度の変化と一致している。
【0070】
従って、本発明の目的は、炭水化物および脂肪代謝の調節方法、並びに満腹感を調節する機構を調節する方法を提供する。
【0071】
これは、典型的には個体に本発明の組成物を投与し、および/または食事の耐性澱粉の量がそれらの通常の食事と比較して増加するような食事をさせることによって行われる。
【0072】
例えば、組合せ食事において、組合せ食事が耐性澱粉を少なくとも10g含むかまたは消化の容易な澱粉を多量に含む類似の食事より少なくとも5g多く含むようにした食事をさせることができる。食事で一日当たり少なくとも15g、好ましくは少なくとも20g、更に好ましくは約30gの耐性澱粉の消費により、個体における脂肪の脂肪代謝、すなわち食事脂肪の酸化および/または貯蔵脂肪の流動化および利用が改良されることを見出した。
【0073】
好ましくは、耐性澱粉に富む高炭水化物食事は、炭水化物から一日当たり少なくとも5g、好ましくは10g、更に好ましくは少なくとも20g、更に一層好ましくは少なくとも25g、最も好ましくは少なくとも30gの耐性澱粉と共に利用可能なカロリーの約50%(それより多いこともまたは少ないこともある)を提供する。一回の食事で耐性澱粉を少なくとも5g、好ましくは少なくとも10g消費すると、脂肪酸化の増加による有益な効果も得られる。
【0074】
更に、この食事は、不飽和脂肪の比率を増加して含んでなることもある。好ましくは、食事における不飽和脂肪の量は、脂肪から利用可能なカロリーの少なくとも50%、更に好ましくは少なくとも70%が不飽和脂肪によって供給される。
【0075】
呼吸商(RQ)は消費した酸素(O2)に対する生成した二酸化炭素(CO2)のモル比であり、この比は身体によって利用されるエネルギー源によって変化する。RQは、炭水化物を唯一のエネルギー源として酸化するときには、理論的には1.00であり、唯一のエネルギー源として脂質を酸化するときのRQは理論的には0.71である。混合食事は、これら2つの理論値の間で変化するRQを生じる。
【0076】
本明細書に示される結果は、RQは耐性澱粉含量が高い食事を消費する固体では低下することを示している(図13参照)。このことは、耐性澱粉が炭水化物酸化より脂肪酸化の方が好ましい燃料流動化におけるシフトを引き起こすことを示唆している。
【0077】
従って、本発明は、個体の炭水化物および脂肪代謝を調節する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも20%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法を提供する。
【0078】
好ましくは、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも7、10、20、30、40、50または60%が耐性澱粉に置換される。
【0079】
好ましくは、個体の飽和脂肪一日摂取量の少なくとも5、7、10、20、30、40、50、60または70%が不飽和脂肪に置換される。
【0080】
本発明は、個体の炭水化物および脂肪代謝を調節する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉として供給し、且つ個体の脂肪摂取量の少なくとも60%を不飽和脂肪として供給することを含んでなる、方法も提供する。
【0081】
典型的には、炭水化物一日摂取量の比率として供給される耐性澱粉の量は、5〜90%、好ましくは10〜60%の範囲である。食事全体の百分率として表す場合には、耐性澱粉の量はカロリー含量に基づいた食事全体の少なくとも5%、典型的には5〜45%、好ましくは5〜30%であるのが好ましい。
【0082】
典型的には、脂肪一日摂取量の比率として提供される不飽和脂肪の量は60〜95%、好ましくは少なくとも60、70、80または90%の範囲である。食事全体の百分率として表すと、不飽和脂肪の量はカロリー含量に基づいた食事全体の少なくとも15%、典型的には15〜30%、例えば、少なくとも20または30%であるのが好ましい。
【0083】
本発明の組成物および方法を用いて、下記の1以上を行うことができる:
個体における脂肪利用の促進、例えば、(白色脂肪組織,褐色脂肪組織および/または筋組織における)脂肪蓄積の減少、および/または脂肪酸化の増加(RQの減少によって明らかにすることができる)。
血漿レプチン濃度の減少、
所定のカロリー摂取に対する個体の満腹感の増加、
肥満の治療、
個体における肥満の発生率または危険性の低下、
個体におけるインスリン非依存性真性糖尿病の発生率または危険性の減少、
個体による食物消費の後の個体における食後の血漿グルコースおよび/またはインスリン濃度の減少、
個体のボディーマスの調節(例えば、個体のボディーマス指数を増加または減少させること、または所望のボディーマス指数を保持すること)、
身体形状、および
例えば、スポーツ性能を改良するためにスポーツ活動のような運動中のエネルギー利用の改良。
【0084】
肥満やインスリン非依存性真性糖尿病に罹りやすい個体に、疾病状態の開始を防止しまたは遅延させる手段としての食事をさせることができる。また、これらの疾患に既に罹っている個体に、治療法の一部として食事に対するこれらの変化を行わせることもできる。
【0085】
本発明は、食餌、食物、栄養補助食品および医薬品により食事を操作することによって、動物およびヒトに応用することができる。ヒトの場合には、典型的には思春期前の若年成人(18〜24歳)、中年成人(約35〜50歳)、および老年成人(50歳を上回る)のような総ての年齢範囲に応用することができる。食事の正確な性質は、症状、危険因子、治療対象、および関連個体の年齢によって変化し、栄養士、医師または他の適当な資格のある人によって容易に決定することができる。
【0086】
本明細書において、特に断らない限り、「含んでなる(comprise)」または「含んでなる(comprises)」または「含んでなる(comprising)」は記載した要素、整数または工程、または要素、整数または工程の群を包含するが、任意の他の要素、整数または工程、または要素、整数または工程の群を除外しないことを意味すると理解される。
【0087】
本発明を一層明らかに理解することができるようにするため、好ましい形態を下記の例および図面に関して記載するが、これらは単に例示のためのものであり、制限のためのものではない。
【実施例】
【0088】
例1:急性試験
ラットに標準的ラット食を一週間投与した後、カニューレを外科的に移植した。次にカニュレーションを、急性食事試験を行う一週間前に行った。カニュレーションの一週間後、ラットを一晩絶食させた。翌朝、ラットに1g炭水化物/kg体重を与え、食後の血液試料を2時間にわたって採取した。食事の2時間後に、ラットを屠殺して、組織を後で分析するため回収した。
【0089】
【表1】
【0090】
結果を、図1〜3に示す。
【0091】
例2:慢性試験
実験室で飼育したラットの子孫に、2日齢に非インスリン性糖尿病症状を誘発させる目的でストレプトゾトシン、または標準的緩衝液を投与した。8週齢時に、ラットを一晩絶食させ、グルコース耐性試験を行って糖尿病状態を決定した。ラットを糖尿病または非糖尿病群に分けて、試験食事を8週間与えた。給餌期間の7週時にそれぞれのラットについて、代謝速度を得た。給餌を完了した後、グルコース耐性試験を繰り返し、血液試料を得た。
次に、ラットを屠殺して、脳および筋組織を後で分析するために回収した。
【0092】
結果を、図4〜6および表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
例3:吸収試験
ラットに標準的ラット食を一週間投与した後、カニューレを外科的に移植した。次にカニュレーションを、急性食事試験を行う一週間前に行った。カニュレーションの一週間後、ラットを一晩絶食させた。翌朝、ラットに1g炭水化物/kg体重を与えた。食後に、ラットに放射性マーカーを投与し、食後の血液試料を2時間にわたって採取した。
【0095】
ラットを給餌の1時間または2時間後に屠殺して、組織を後で分析するため回収した。
【0096】
【表3】
【0097】
結果を、図7〜12に示す。
【0098】
例1〜3で得た結果の検討
c−fos活性
ニューロン(c−fos)活性に対する食事の効果は、総エネルギーバランスに対する組成物の衝撃を見るときには、極めて興味深い。視床下部外側部(LHA)は副交感神経系内の摂食中心であると考えられており、これは正のエネルギーバランスと関連している。しかしながら、視床下部腹内側(VMH)は交感神経系の満腹感の中心であると考えられ、負のエネルギーバランスを表す。図6は、不飽和脂肪および耐性澱粉含量の高い食事は空腹感中心(LHA)の活性化を減少させ、満腹感中心の活性化レベルを増加させ、一方飽和脂肪含量が高く且つ耐性澱粉含量が低い食事は反対の効果を有することを示している。一緒に考えると(LHA/VMH)、これらの値は総エネルギーバランスを決定する。
【0099】
吸収
RQデーターからの予備的結果は、耐性澱粉の比または百分率を増加すると、グリコーゲンから脂肪酸化への基剤利用のシフトを示唆している。しかしながら、これらの変化が実際に起きたかどうか、何時およびどこで起きたかは明らかでない。図7〜12は、様々な濃度の澱粉を摂取した後の様々な組織のグリコーゲン合成/利用および脂質合成/酸化に対する耐性澱粉の効果を示している。図7および9は、褐色脂肪および白色脂肪組織内の脂質生成の速度の有意な差、および肝臓組織内の糖生成の増加傾向を示している。これにより、耐性澱粉の特に長期にわたる消費により、実際にグリコーゲンから脂肪酸化へ基剤利用を移動させることがあることが確かめられる。
【0100】
レプチンレベル
レプチンは脂肪組織で合成されたタンパク質であり、食物摂取を阻害し且つ満腹感を増加すると考えられる。レプチン受容体は脳の視床下部に見出されており、ニューロン(c−fos)とホルモン系、およびそれらのカロリー恒常性に対するそれらの効果との重要な連結であることがある。他の研究では、飽和脂肪および不飽和脂肪を与えた群の間のレプチン濃度の差が示されているが、不飽和脂肪群ではレプチン濃度が一層高くなる傾向はあるが、図5は異なる澱粉濃度を有する群の間でのみ有意さを示している。澱粉群間の差は、慢性的な耐性澱粉消費により実質的重量損失があるので、動物の体重と脂肪重量とに大きな差があることによって説明することができる。この重量損失は、部分的には、吸収の検討で本発明者らが注目した基剤利用の変化によるものとすることができる。また、脂肪の損失があると、レプチン生産が減少する。
【0101】
例4:ヒトにおけるRQ値に対する耐性澱粉食事の効果
方法
24名の健常男性(19〜34歳)がこの検討に参加した。この研究はUniversity of Wollongong Human Ethics Committeeによって承認され、試験を開始する前に、正式の書面による同意書を総ての被験者から得た。
【0102】
被験者を、無作為に2群に分けた。第一群には、耐性澱粉含量の低い在来の澱粉(TS)食を与え、第二群には耐性澱粉含量の高いHi-maize(商標)(HM)食を与えた。TS食は標準的な商業的に利用可能な製品からなり、HM食はHi-maize(商標)を含む商業的に利用可能な製品からなった(表1)。TS群について、年齢、身長および体重についての平均値およびSEM値は、それぞれ22.3±0.6歳、180±3.1cm、および73.5±3.7kgであった。HM群について、年齢、身長および体重についての平均値およびSEM値は、それぞれ23.5±0.6歳、185±1.8cm、および74.1±2.4kgであった。
【0103】
総ての被験者は、一日当たり少なくとも60gの朝食シリアル、4切れの白パン、2個のマフィンの他に一週当たり3回の麺類料理(一杯125g)を14日間食することを要求された。総ての参加者は規則的に運動していたので(週当たり4〜8回)、必要ならば被験者が摂取ガイドラインを超過することができるように、これらの食物の過剰量を提供した。総ての被験者は、耐性澱粉(すなわち、研究の一部として提供されたもの以外の供給源からの耐性澱粉)の「バックグラウンド」摂取を制御しようとする研究中に有意な量の耐性澱粉を含む食物(例えば、マメ科植物、緑色バナナおよびビスマチライス(bismati rice))を食べないように忠告された。被験者に供給された総ての食物は、Buttercup Bakeries、Uncle Toby's Company Ltd、およびStarch Australasia Ltdの代理のNew Zealand Starch Productsによって寄贈された。
【0104】
割り当てた食事療法を開始する前に(0日)、絶食静脈血試料(肘前)をそれぞれの被験者から採取した後、食事履歴の聞き取りおよびこの研究のための食事のガイドラインの詳細な説明を行った。食事療法の開始から2週間後(14日)、被験者は追跡の絶食血液試料および3時間食事試験に戻った。試験食事は、2週間の研究期間にわたる被験者の食事に基づいてTSまたはHMであり、60gの朝食シリアル、250mlのLite Whiteミルク、1切れのパン(トースト)、1個のマフィン(トースト)、10gのキャノーラマーガリン、および20gのジャムからなっていた。
【0105】
試験食事をとってから30、60、120および180分後に、静脈血試料(肘前)を採取した。呼吸商(RQ)は、試験食事の0、60、120および180分後にDatex Deltatrac II (ヘルシンキ,フィンランド)を用いて測定した。更に、総ての血液試料を、血清グルコース、血清インスリン、血漿コレステロール、血漿総脂質、および血漿遊離脂肪酸濃度について分析した。
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】
【0108】
結果
採用した24名の被験者の中,HM群からの1名の被験者が世界保険機構(WHO)基準によりインスリン耐性であることが見出され、検討から除外した。食事の総エネルギー摂取および多量養素組成は、TSおよびHM群の間で有意差はなかった(表5)。
【0109】
TSおよびHM群の間の絶食RQ値には差はなかった(データーは示さず)。RS値は0.83〜0.91の範囲であり、それぞれの時点におけるRQと0分のRQとの差を表すΔRQとしてプロットした(図13)。食事摂取から60および120分後のΔRQは、TSおよびHM群の間で差は示さなかった。しかしながら、180分後には、HM群についてのΔRQは、TS群についての値の約50%であった。
【0110】
検討
2群の健常男性(18〜34歳)は、耐性澱粉含量の低い在来の澱粉(TS)製品を含む高炭水化物食事、または耐性澱粉含量の高いHi-maize(商標)(HM)製品を2週間消費した。グルコース、インスリン、遊離脂肪酸(FFA)、コレステロールおよび総脂質濃度について、食事摂取後にRS測定および血液試料を分析した。3時間目に、HM群についてのΔRQ(0.04±0.01)は、TS群についての値(0.09±0.02;p<0.01)の約50%であった。このデーターは、耐性澱粉含量の高い食事が燃料利用の急激な変化を引き起こし、炭水化物酸化より脂肪酸化を起こしやすく、高濃度の食事用耐性澱粉が消費されることの証拠を提供する。
【0111】
絶対的期間では、RQ値が0.90〜0.92の範囲であったので、炭水化物が食事摂取後の1、2および3時間目のエネルギーの主要な供給源であった。食事の3時間後のTS群に対するHM群で見られたRQの減少は、脂肪酸化の増加を表す。このRQの減少の大きさは小さいと思われるが、これが脂肪酸化における大きな差を説明している。例えば、TS群の被験者が50%脂肪および50%炭水化物を酸化している場合には、RQの観察された減少は、HM群の被験者が67%脂肪および33%炭水化物を酸化していることを意味する。燃料利用におけるこの実質的差は、特にHMおよびTS食事の間の総耐性澱粉含量の差が比較的低いので、特に興味深いものである。急性評価に用いられる食事は、TS食事の約4倍の耐性澱粉を含んだ(それぞれ、28.2%対7.2%(w/w))。耐性澱粉の量の大幅に増加することにより、燃料利用についても大きな効果を生じることがある。
【0112】
耐性澱粉の消費により、脂肪酸化が急激に増加した。更に、高炭水化物食事を消費すると、耐性含量とは関係なく、絶食血漿FFA濃度が低下した。一緒に合わせると、これらの結果は、耐性澱粉に富む高炭水化物食事は血漿FFAの供給過剰が兆候となる代謝性疾患、例えば、肥満およびインスリン非依存性真性糖尿病に罹っているヒトにとって有益となることがあることを示している。
【0113】
大まかに記載した本発明の精神または範囲から離反することなく具体的態様に示される本発明に対して多数の変更および/または修飾を行うことができることは当業者によって理解されるであろう。従って、本発明の態様は、総てに関して例示的なものであり、制限的なものではないと考えるべきである。
【0114】
上記明細書に記載した総ての公表文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている。本明細書に包含されてきた文書、法律、材料、装置、物品などのあらゆる説明は、本発明に対する関連性を提供するためだけのものである。これらのもののいずれかまたは総てが、従来技術の基礎の一部を形成し、または本願明細書のそれぞれの請求項の優先日前のオーストラリアまたはいずれかの他の国または領土に存在するので、本発明に関連した分野において通常の一般的知識であることの容認と採るべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】様々なアミロース濃度のa) 加熱またはb) 未加熱澱粉に対する食後の血漿グルコース濃度。それぞれの食事群(n=7)の値は、平均値±s.e.として表す。
【図2】様々なアミロース濃度のa) 加熱またはb) 未加熱澱粉に対する食後の血漿インスリン濃度。それぞれの食事群(n=7)の値は、平均値±s.e.として表す。
【図3】様々なアミロース濃度に対するa)グルコースおよびb)インスリンについての曲線下の増加面積(AUC)。(*)は、同一範疇(すなわち、加熱または未加熱)での0%アミロース群からの有意差(p=0.05)を表す。(#)は、同一アミロース濃度の未加熱澱粉からの有意差(p=0.05)を表す。それぞれ食事群(n=7)についての値は、平均値±s.e.として表す。
【図4】a) 2時間の静脈内グルコース投与(10%)に対する4種類の食事群の血漿グルコース濃度(mmol/L)。それぞれの食事群(n=12)についての値は、平均値±s.e.として表す。飽和脂肪/アミロペクチン食事は、n−3/アミロース食事(p=0.05)と有意差があるが、n−3/アミロース食事は、n−3/アミロペクチン食事(p=0.001)と有意差がある。b)2時間の静脈内グルコース投与(10%)に対する4種類の食事群の 血漿インスリン濃度(ng/ml)。それぞれの食事群(n=12)についての値は、平均値±s.e.として表す。飽和脂肪/アミロース食事はn−3/アミロース食事と有意差があり(p=0.001)、n−3/アミロペクチン食事はn−3/アミロース食事と有意差がある(p=0.05)。
【図5】16週の食事試験の後の4食事群における絶食血漿レプチン濃度(ng/ml)。それぞれの食事群(n=12)についての値は、平均値±s.e.として表す。澱粉群(p=0.05)には有意差があったが、脂肪群にはなかった。
【図6】16週の食事試験の後の4食事群における脳の異なる視床下部領域の絶食C−fos活性化。血漿レプチン濃度(ng/ml)。それぞれの食事群(n=5,飽和脂肪/アミロース群についてはn=1)についての値は、平均値±s.e.として表す。脳の様々な領域のc−fos値は、DMHについては(p=0.001)で、LHAについて(p=0.005)で、PVNについて(p=0.001)で、およびVMHについて(p=0.05)で統計的に有意であった。[重要単語:視床下部外側部(LH)、視床下部腹内側核(VMH)、室傍核(PVH)、視床下部弓状核(Arc)、および背内側核(DMH)]。
【図7】様々なアミロース濃度の澱粉に対する褐色脂肪組織(BAT)での1時間および2時間後の脂質生成速度(μg原子H/分/g)。それぞれの食事群(n=8)についての値は、平均値±s.e.として表す。アミロースおよびアミロペクチンを与えたラットは、2時間の時点で有意差があった(p=0.01)。
【図8】様々なアミロース濃度の澱粉に対する腓腹筋組織での1時間および2時間後の脂質生成速度(μg原子H/分/g)。それぞれの食事群(n=8)についての値は、平均値±s.e.として表す。
【図9】様々なアミロース濃度の澱粉に対する白色脂肪組織 (WAT)での1時間および2時間後の脂質生成速度(μg原子H/分/g)。それぞれの食事群(n=8)についての値は、平均値±s.e.として表す。アミロースおよびアミロペクチンを与えたラットは、1時間の時点で有意差があった(p=0.01)。
【図10】様々なアミロース濃度の澱粉に対する肝臓組織での1時間および2時間後の脂質生成速度(μg原子H/分/g)。それぞれの食事群(n=8)についての値は、平均値±s.e.として表す。
【図11】様々なアミロース濃度の澱粉に対する肝臓組織での1時間および2時間後の脂質生成速度(μg原子H/分/g)。それぞれの食事群(n=8)についての値は、平均値±s.e.として表す。
【図12】様々なアミロース濃度の澱粉に対する腓腹筋組織での1時間および2時間後の糖生成速度(μg原子H/分/g)。それぞれの食事群(n=8)についての値は、平均値±s.e.として表す。
【図13】食事における耐性澱粉に対するRQの変化。DSまたはRS食事を開始から2週間後(14日目)、被験者は追跡の絶食血液試料および3時間食事試験に戻った。試験食事は、60gの朝食シリアル、250mlのLite Whiteミルク、1切れのパン(トースト)、1個のマフィン(トースト)、10gのキャノーラマーガリン、および20gのジャムからなっていた。結果は、平均値±s.e.として表す(DS黒丸についてはn=12、RSの白抜き丸についてはn=11)。*同一時点でのRS群からの差についてp<0.03。
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、耐性澱粉および不飽和脂肪含量が高い組成物および食物による脂肪または脂質代謝の調節に関する。
【0002】
背景技術
一般に肥満および太りすぎ、並びにインスリン非依存性真性糖尿病のような一連の代謝性疾患、異常高脂肪血症、高血圧、および冠心疾患のような一連の代謝性疾患は、世界のかなりの地域に広がっている問題である。多くの場合に、これらの疾患の下に横たわっている原因は、インスリン耐性の進展である。インスリン耐性の開始および進展に寄与する要因は完全には解明されていないが、食事における脂肪および/または炭水化物の種類が決定的な要因として公表されてきた(Storlien et al., 1993, Diabetes, 42: 457-462)。
【0003】
ヒトの炭水化物摂取の重要な成分である食餌澱粉は、2種類のグルコースポリマー、すなわちアミロースおよびアミロペクチンからなっている。アミロースはグルコース残基がα(1−4)結合によって連結した線状ポリマーであり、アミロペクチンはグルコース残基がα(1−4)とα(1−6)結合によって連結した分岐状ポリマーである。
【0004】
アミロペクチン澱粉の摂取により、血漿インスリンおよびグルコース濃度が速やかに且つ長時間にわたり上昇することが知られており、このことは長期的に見て全身のインスリン感受性にとって有害であるとされてきた。ヒトでは、食後の血漿グルコース濃度を大幅に上昇させる食物の消費は、血漿中の遊離脂肪酸濃度の増加とも関連している。この血漿中の遊離脂肪酸濃度が増加すると、おそらくはグルコース−脂肪酸サイクルによりグルコース酸化が減少し、これによりインスリン感受性が損なわれることがある。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、今般、耐性澱粉および不飽和脂肪または脂質濃度の高い食物を消費すると、炭水化物および脂肪代謝に望ましい効果を生じることを示した。具体的には、耐性澱粉および不飽和脂肪または脂質濃度の高い食物を消費すると、食事摂取後の食後の血漿グルコース濃度が減少し、血漿インスリン濃度が低下し、血漿レプチン濃度が減少し、満腹感が増加し、白色脂肪組織、褐色脂肪組織および筋組織における脂質沈着のレベルが減少し、肝臓におけるグリコーゲン合成が増加することを示した。
【0006】
従って、本発明は、第一の側面では、個体の炭水化物および脂肪代謝を調節する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法を提供する。
【0007】
具体的態様としては、次のものが挙げられる:
【0008】
(1) 個体の脂肪代謝を促進する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。好ましくは、脂肪代謝の促進は、脂肪蓄積の減少および/または脂肪酸化の増加を包含する。
【0009】
(2) 個体の血漿レプチン濃度を減少させ且つ満腹感を増加させる方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【0010】
(3) 肥満症に罹っている個体の治療方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【0011】
(4) 個体における肥満症の発生率を低下させる方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【0012】
(5) 個体におけるインスリン非依存性真性糖尿病の発症率を低下させる方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【0013】
(6) 個体による食物消費後の個体の食後の血漿グルコースおよび/またはインスリン濃度を減少させる方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【0014】
(7) 個体の体脂肪組成を制御する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【0015】
第二の側面では、本発明は、第一の側面による方法で使用する食材の調製方法であって、低耐性澱粉含量を有する成分を高耐性澱粉含量を有する成分に代え、飽和脂肪の幾つかまたは総てを不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法を提供する。
【0016】
第三の側面では、本発明は、耐性澱粉を少なくとも2gと不飽和脂肪を少なくとも2g含んでなり、耐性澱粉が総澱粉含量の少なくとも5重量%の比率で含まれている、組成物を提供する。
【0017】
好ましくは、不飽和脂肪は、総脂肪含量の少なくとも25重量%の比率で含まれている。
【0018】
好ましくは、不飽和脂肪は、主としてω−3とω−6との間で良好なバランスを有するポリ不飽和脂肪、およびモノ不飽和脂肪から選択される。
【0019】
組成物は、例えば錠剤、食材、予めパッケージされた食物、またはカロリーを制御した食物の形態をとることができる。
【0020】
第四の側面では、本発明は、個体の炭水化物および脂肪代謝を調節する方法であって、個体に本発明の組成物を投与することを含んでなる、方法を提供する。
【0021】
具体的態様としては、下記のものが挙げられる:
(1) 個体の血漿レプチン濃度を減少させ且つ満腹感を増加させる方法であって、本発明の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【0022】
(2) 肥満症に罹っている個体の治療方法であって、本発明の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【0023】
(3) 個体における肥満症の危険性を低下させる方法であって、本発明の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【0024】
(4) 個体におけるインスリン非依存性真性糖尿病の危険性を低下させる方法であって、本発明の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【0025】
(5) 個体による食物消費後の個体の食後の血漿グルコースおよび/またはインスリン濃度を減少させる方法であって、本発明の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【0026】
(6) 個体の体脂肪組成を制御する方法であって、本発明の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【0027】
本発明は、本発明の第四の側面による方法で使用する本発明の組成物も提供する。本発明は、本発明の第四の側面による方法で使用する医薬品の製造における本発明の組成物の使用も提供する。
【0028】
本発明は、個体の食事における脂肪の利用を促進する方法であって、所定の食事において利用しようとする脂肪と共に耐性澱粉を少なくとも2g消費することを含んでなる、方法も提供する。
【0029】
本発明は、脂肪酸化のレベルを刺激することによって個体における肥満症の発生率を低下させる方法であって、個体に耐性澱粉に富む高炭水化物食事を与え、個体の脂肪酸化のレベル増加を刺激することを含んでなる、方法も提供する。
【0030】
個体におけるインスリン非依存性真性糖尿病の発症率を低下させる方法であって、個体に耐性澱粉に富む高炭水化物食事を与え、個体の脂肪酸化のレベル増加を刺激することを含んでなる、方法も提供する。
【発明の具体的説明】
【0031】
組成物および食材
本発明は、高濃度の耐性澱粉および不飽和脂肪を含んでなる組成物を提供する。
【0032】
本明細書で用いられる「耐性澱粉」という用語は、Brown, McNaughtおよびMoloney (1995) Food Australia 47: 272-275に定義されている通りにRS1、RS2、RS3、およびRS4として定義された形態のものを包含する。修飾または未修飾の耐性澱粉またはそれらの混合物を、本発明で用いることもできる。特定の耐性澱粉は、多重修飾の生成物であることができる。修飾した耐性澱粉としては、耐性マルトデキストリンのような分解生成物が挙げられる。
【0033】
本発明に特に好適な耐性澱粉の一形態は、耐性澱粉を含む澱粉である。好ましくは、澱粉のアミロース含量は少なくとも40%(w/w)であるが、澱粉のアミロース含量は澱粉を得た植物の種によって変化することがある。好ましい形態では、澱粉はアミロース含量が少なくとも70%(w/w)、少なくとも80%(w/w)または少なくとも90%(w/w)のトウモロコシに由来する。澱粉は、化学的、物理的、または酵素的に処理または修飾することもできる。化学修飾は、酸化、架橋結合、エーテル化、エステル化、酸性化、デキストリン化、またはそれらの混合物によって行うことができる。物理修飾としては、高温水分による処理が挙げられる。
【0034】
好ましくは、耐性澱粉はトウモロコシ(コーン)から誘導されまたは得られる。しかしながら、他の耐性澱粉の供給源を本発明で用いることができることが理解されるであろう。例としては、モロコシ、小麦、大麦、カラスムギ、ライコムギ、トウモロコシおよび米のような穀物、ジャガイモおよびタピオカのような塊茎植物、エンドウのようなマメ科植物、通常の同系交配品種改良法または遺伝子修飾植物種から誘導した澱粉を含む他のものなどが挙げられる。
【0035】
澱粉を処理して、多数の物理的または化学的手段によって耐性澱粉含量を増加させることもできる。澱粉を非遺伝学的に修飾した植物種から得た場合には、生成する処理した澱粉は非GMO耐性澱粉と呼ぶこともできる。GMO食品の規制および消費者の好みに関する多数の理由のため、本発明の組成物には処理または未処理のいずれであろうと非GMO澱粉のみを用いるのが望ましい。
【0036】
一つの好ましい処理手段は、水分の存在下で澱粉を熱処理することであって(高温水分処理)、これは陰、大気または陽圧下、高温水分下での加熱、または様々な温度および圧力での循環法など多数の方法によって行うことができる。加熱は100〜180℃程度、好ましくは約120〜150℃とすることができ、水分レベルは10〜80%、好ましくは20〜60%とすることができる。反復オートクレーブ処理および急速冷却を用いて、澱粉の耐性澱粉含量を増加させることもできる。これらの方法および条件を変えて、処理を行う澱粉の耐性澱粉のレベルを望ましく増加させることができることを理解されるであろう。
【0037】
処理を溶媒抽出によって行い、澱粉から脂肪および/またはミネラルを除去することもできる。
【0038】
WO94/03049号明細書およびWO94/14342号明細書には、耐性澱粉であり且つアミロース含量が50%(w/w)以上、特に80%(w/w)以上のトウモロコシ澱粉、アミロース含量が27%(w/w)以上の米澱粉、または35%(w/w)以上の小麦澱粉が挙げられる高アミロース澱粉が開示されている。更に、アミロース含量が50%以上であり且つ耐性澱粉含量が増加した澱粉の特定の粒度範囲である。これらの澱粉としてはトウモロコシ、大麦およびマメ科植物が挙げられる。しかしながら、本発明はこれらの形態の耐性澱粉に限定されない。例えば、他の形態の耐性澱粉をバナナ、およびジャガイモのような塊茎植物、およびそれらの修飾形態から誘導することができる。
【0039】
酸化、架橋結合、エーテル化、エステル化、酸性化、デキストリン化などの化学修飾も、当該技術分野において適当な化学処理として周知である。同様に、他の修飾を、物理的、酵素的、または当業者に周知の他の手段によって誘導することもできる。
【0040】
澱粉の配座または構造を変更することによって耐性澱粉の酵素感受性の程度を修正することが有用であることもある。例としては、酸または酵素希釈(thinning)、および二官能価試薬、熱/水分処理および熱アニーリングを用いる架橋結合が挙げられる。澱粉の修飾は、澱粉の結晶性の操作によって行うこともできる。このような修飾法は当該技術分野で知られており、これらの方法によって製造した澱粉は本発明に好適である。
【0041】
好ましくは、耐性澱粉は、トウモロコシ、モロコシ、米、大麦、カラスムギ、ライコムギ、小麦、マメ科植物、ジャガイモ、またはバナナ澱粉から誘導される。幾つかの澱粉のアミロース含量は耐性澱粉含量に関係していると思われるので、一つの好ましい態様は、アミロース含量が少なくとも40%(w/w)の澱粉の使用である。トウモロコシ澱粉から得られるまたは誘導される耐性澱粉が、本発明に特に好適であることが分かった。多くの澱粉含有植物において、それらの植物が耐性澱粉の特性を示すには、アミロース含量をトウモロコシに見られる高レベルにまで増加する必要はない。これらの特性は、小麦[+35%アミロース]、バナナおよび大麦[+30%アミロース];ジャガイモ、マメ科植物および米[+27%アミロース]に見出されると思われる。耐性澱粉の量は、そのアミロース含量には関係なく、アミラーゼによる攻撃に対する澱粉顆粒または澱粉から誘導された材料の耐性によって示すことができる。しかしながら、アミロース含量は、澱粉顆粒がこの澱粉加水分解に対する耐性という特性を示すかどうかの指示薬として作用することができる。
【0042】
アミロース含量が少なくとも70%(w/w)、少なくとも80%(w/w)または少なくとも90%(w/w)であるトウモロコシ澱粉は、これらの澱粉が耐性澱粉を形成する澱粉顆粒を高濃度で含んでいるので、好ましい。
【0043】
「不飽和脂肪」という用語は、固形および液体状の不飽和脂肪酸エステルを包含する。脂肪、油状物、脂肪酸および脂質という用語は、本明細書では互換的に用いられる。
【0044】
好ましくは、脂肪は、モノ不飽和脂肪、ポリ不飽和脂肪、ω−3脂肪、またはω−6脂肪である。本発明に関する他の植物トリグリセリドとしては、種子、果実、ナッツおよび他の植物材料から得られるものであって、機械的放出および/または溶媒抽出によって得られることが多いものが挙げられる。本発明での使用に特に好適な例は、高および中オレイン品種を包含するヒマワリ油、大豆油、綿実油、低リノレンおよび他の改良品種を包含するキャノーラまたは菜種油、高リノレン品種(Linola)を包含するアマまたは亜麻仁油、トウモロコシまたはコーン油、オリーブ油、ピーナッツ油、米糠油、ヤシ油および精留ヤシ油、パーム核油、ココヤシ油などである。
【0045】
動物起源のトリグリセリドを本発明で用いることができ、乳、およびウシ、ヒツジおよび魚の加工によって得られるものが挙げられる。好ましい例としては、n−3ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)およびn−6PUFA、例えば魚油が挙げられる。
【0046】
本発明による組成物は、典型的な食材および栄養補助食品と比較して炭水化物/脂肪含量の比率として高濃度の耐性澱粉および高濃度の不飽和脂肪を含んでなる。具体的には、本発明の組成物は、耐性澱粉を少なくとも2gおよび不飽和脂肪を少なくとも2g含んでなる。
【0047】
従って、組成物は、耐性澱粉を少なくとも5、10、15または20g含んでなることができる。本発明の目的の一つは、アミロペクチン澱粉のような非耐性型の食用澱粉を耐性澱粉に代えることであるので、耐性澱粉は組成物の総澱粉含量のかなりの比率として含まれる。例えば、耐性澱粉は総澱粉含量の少なくとも10重量%、好ましくは総澱粉含量の少なくとも15、20、25、30、35、40、50、60、70または80重量%の比率で含まれることがある。同様に、耐性澱粉は、組成物の総炭水化物含量のかなりの比率で含まれているのが好ましい。例えば、耐性澱粉は、総炭水化物含量の少なくとも5重量%、好ましくは総炭水化物含量の10、15、20、25、30、35、40、50、60または75重量%の比率で含まれることがある。組成物に含まれる耐性澱粉の種類は、上記されている。
【0048】
脂肪/脂質含量に関して、組成物は典型的には不飽和脂肪または組成物の同等物を少なくとも2g含んでなる。例えば、組成物は、不飽和脂肪を少なくとも3、4、5、6または8g(マーガリンのような食用スプレッドには更に多量)含んでなることがある。耐性澱粉対不飽和脂肪の比が約1:1〜1:2となるように不飽和脂肪を含むのが好ましいが、この比は、個体の食物に関連して用いられる個々の食品について著しく異なる可能性がある。
【0049】
本発明の目的の一つは、飽和脂肪を不飽和脂肪に代えて、耐性澱粉および不飽和脂肪が個々の食事の重要な要素を形成するときに所望な代謝効果を達成することであるので、不飽和脂肪は組成物の総脂肪含量のかなりの比率として含まれるのが好ましい。例えば、不飽和脂肪は、総脂肪含量の少なくとも25重量%、好ましくは総澱粉含量の少なくとも35、50、75または80重量%の比率で含まれることがある。一態様では、飽和脂肪は、組成物に実質的に含まれていない。組成物に包含することができる不飽和脂肪の種類は、上記している。
【0050】
組成物は、耐性澱粉以外の炭水化物、飽和脂肪、香味料、ビタミン、ミネラル、電解質、微量元素および他の通常の添加剤を含んでなることもできる。タンパク質、特に消化に耐性であり、「バイパスタンパク質または耐性タンパク質」と呼ばれるタンパク質を包含し、生理学的性能または利用を最適にすることもできる。これらの任意成分のいずれかが本発明の組成物に含まれていないときには、それらは通常は食物の他の要素において本発明の組成物の栄養補助食品として供給され、総ての必須栄養成分が十分に供給されるようにすべきである。本発明の組成物が患者の食物摂取の実質的部分を供給しようとするときには、任意成分が含まれるのが好ましく、それらを別個に摂取することを回避できるようにするのが好ましい。これは、体重減少治療時の太りすぎまたは肥満患者にとって特に重要であり、これにより総ての必須栄養成分が推奨された量で供給されることが重要である。
【0051】
ビタミンおよびミネラルは、保険当局によって設定された限界に準じて組成物に加えることができる。本発明の組成物は、総ての推奨されたビタミンおよびおよびミネラルを含んでなることができる。ビタミンとしては、典型的にはA、B1、B2、B12、葉酸、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、C、D、EおよびKが挙げられる。ミネラルとしては、典型的には鉄、亜鉛、ヨウ素、銅、マンガン、クロム、およびセレニウムが挙げられる。ナトリウム、カリウム、および塩化物のような電解質、および他の通常の添加剤も、推奨された量で加えられる。
【0052】
本発明の組成物は、食材または飲料のようなヒトまたは動物の消費に適する任意の形態を採ることができる。一態様では、組成物は、水、コーヒー、茶、またはフルーツジュースのような水を含む液体で可溶性、懸濁性、分散性または乳化性の粉末混合物である。このような目的に対して、組成物は3日または1週間のような所定期間全栄養要件をカバーすることを目的とするパッケージに包装することによって、組成物を適当なサブユニットの一日用量、好ましくは女性には一日用量当たり4または5個のサブユニットおよび男性には4〜6個のサブユニットであって個別に包装した後にパッケージに包装するもの分割し、またはパッケージをこのようなサブユニットの分割のための手段を備えることができる。
【0053】
もう一つの好ましい態様では、本発明の組成物は、水を含む液体の液状栄養製剤であって、これに固形成分が10〜40重量%の量で溶解、懸濁、分散または乳化される。液状栄養製剤が引用を目的とするときには、通常は上記のような香味料を含んでなる。
【0054】
もう一つの態様では、本発明の組成物は栄養バー、フルーツバー、クッキィー、またはケーキ、パンまたはマフィンのようなベーカリー製品、または低脂肪スプレッドまたはマーガリンのような酪農製品のような固形組成物の形態であることができる。
【0055】
組成物は、冷蔵および冷凍の既製食品などの予めパッケージされたものの一部または全部を形成することができる。
【0056】
組成物は、錠剤として処方することもできる。耐性澱粉および不飽和脂肪、並びに結合剤および香味料のような他成分の量によって少なくとも7〜8gの組成物を生じるので、錠剤は比較的大きくなることがある。従って、錠剤は、典型的には噛んだ後に燕下することができるように処方される。あるいは、組成物を多数の錠剤に再分割することもできる。
【0057】
従って、本発明の組成物は、食事、飲料、粉末、錠剤、健康食品、栄養補助食品、および動物用食餌の形態などで供給することができる。
【0058】
組成物は、カロリー制御食物の全部または一部、例えば、エネルギー含量が800〜1200kcal/日、または1200kcal/日を上回る、例えば、2000kcal/日のカロリー制御食物を形成することができる。
【0059】
耐性澱粉および不飽和脂肪含量の高い食物の製造
本発明の組成物、および耐性澱粉および不飽和脂肪含量の高い食物は、個体の通常の食事における炭水化物および脂肪摂取量の一部または全代替物として野茂のを意図する。必要な代替を行う一つの方法は、個体の現在の食事における食物または特定の食物項目の量を減少させながら、栄養補助食品を提供することである。もう一つの方法は、通常の食物項目であって、炭水化物および脂肪含量および組成が、耐性澱粉および不飽和脂肪濃度を増加させ(且つ非耐性澱粉、炭水化物および飽和脂肪の濃度を減少させた)食材を提供するように改良されたものを提供することである。
【0060】
従って、本発明は、本発明の組成物を製造する方法であって、(i) 食材または飲料の炭水化物含量の幾らかまたは総てを耐性澱粉に代え、(ii) 食材または飲料の飽和脂肪含量幾らかまたは総てを不飽和脂肪に代えることを含んでなる方法を提供する。
【0061】
本発明は、食材の製造方法であって、1種類以上の食物成分を耐性澱粉含量の高い1種類以上の食物成分に代え、飽和脂肪の幾らかまたは全部を不飽和脂肪に代え、耐性澱粉の比率を増加させ、不飽和脂肪の比率を増加させ、飽和脂肪の比率を低下させることを含んでなる、方法も提供する。
【0062】
これは、成分、中間体生成物または最終生成物の製造および/または加工中に成分を単に置換して、耐性澱粉および/または不飽和脂肪含量を増加させることによって行うことができる。高耐性澱粉含量成分および不飽和脂肪の適当な供給源、並びに澱粉の耐性澱粉含量を増加させる方法の記載は上記に提供されている。好ましくは、耐性澱粉含量は、食材または組成物の総炭水化物含量の少なくとも5重量%まで、更に好ましくは、少なくとも10、20、30、40、50または70重量%まで増加する。好ましくは、不飽和脂肪含量は、食材または組成物の総脂肪含量の少なくとも20重量%まで、更に好ましくは少なくとも30、40、50、60、70、80、90、95または100重量%まで増加する。
【0063】
上記食材または組成物は、任意の特定の食材または組成物に関する技術において知られている通常の食物製造手法を用いて調製することができる。
【0064】
耐性澱粉および不飽和脂肪含量を増加させることができる範囲は、様々な食物の種類について変化する。例えば、現在用いられている白パンにおける耐性澱粉量は約1重量%であり、脂肪(主として、ポリ不飽和脂肪酸として)の量は約2.5重量%である。パンの耐性澱粉含量は、6〜12重量%まで増加することができる。脂肪の量は、通常の白パンでは少なくとも6%まで(および特別の食物では少なくとも30%まで)増加することができる。
【0065】
炭水化物/脂肪代謝の調節方法
本発明の目的は、耐性澱粉摂取を増加させ、飽和脂肪を不飽和脂肪に代えて所望な代謝効果を得ることによって個体の食事を改良することである。例えば、耐性澱粉およびポリ不飽和脂肪酸のような不飽和脂肪の濃度は、個体の現在の食事摂取と比較して増加させることができる。特に、食事の炭水化物総摂取量に対する耐性澱粉の比率および食事の脂肪総摂取量に対するポリ不飽和脂肪酸のような不飽和脂肪の比率を増加することができる。
【0066】
個体の食事のこの操作は、総食事法によって、または単回食事法であって耐性澱粉および不飽和脂肪に富む本発明の組成物を投与する方法によって行うこともできる。
【0067】
総食事法を用いるときには、耐性澱粉の増加濃度は一種類の食物または食物群によって提供することができ、ポリ不飽和脂肪酸のような不飽和脂肪の増加濃度は別の食物または食物群によって提供することができる。例えば、耐性澱粉含量が高くなるように特別に処方したパンのようなベーカリー製品を、ポリ不飽和脂肪酸含量が高くなるように処方した酪農スプレッドと共に提供することができる。
【0068】
所望な代謝効果としては、食事摂取後の食後の血漿グルコース濃度の減少、並びに血漿インスリン濃度の低下、血漿レプチン濃度の減少および満腹感の増加、および白色脂肪組織、褐色脂肪組織および筋組織における脂質沈着のレベルの減少および肝臓におけるグリコーゲン合成の増加が挙げられる。
【0069】
更に、本発明者らは、c−fosの転写が視床下部外側部(LH)、腹内側核(PVH)、視床下部弓状核(Arc)、および背内側核(DMH)で有意に調節されることを見出した(図6参照)。c−fos転写は、ニューロン活性化の指標である(Xin et al., 2000, Brain Research Bulletin, 52: 235-242)。これらの脳の領域はエネルギーバランスおよび満腹感を調節する役割を果たしていることが知られているので、これらの領域における転写活性/ニューロン活性は食事の変化によって影響を受けるという観察が重要である。更に、これらの結果は、食事の耐性澱粉および脂肪含量を変化させるときに見られる満腹感および血漿レプチン濃度の変化と一致している。
【0070】
従って、本発明の目的は、炭水化物および脂肪代謝の調節方法、並びに満腹感を調節する機構を調節する方法を提供する。
【0071】
これは、典型的には個体に本発明の組成物を投与し、および/または食事の耐性澱粉の量がそれらの通常の食事と比較して増加するような食事をさせることによって行われる。
【0072】
例えば、組合せ食事において、組合せ食事が耐性澱粉を少なくとも10g含むかまたは消化の容易な澱粉を多量に含む類似の食事より少なくとも5g多く含むようにした食事をさせることができる。食事で一日当たり少なくとも15g、好ましくは少なくとも20g、更に好ましくは約30gの耐性澱粉の消費により、個体における脂肪の脂肪代謝、すなわち食事脂肪の酸化および/または貯蔵脂肪の流動化および利用が改良されることを見出した。
【0073】
好ましくは、耐性澱粉に富む高炭水化物食事は、炭水化物から一日当たり少なくとも5g、好ましくは10g、更に好ましくは少なくとも20g、更に一層好ましくは少なくとも25g、最も好ましくは少なくとも30gの耐性澱粉と共に利用可能なカロリーの約50%(それより多いこともまたは少ないこともある)を提供する。一回の食事で耐性澱粉を少なくとも5g、好ましくは少なくとも10g消費すると、脂肪酸化の増加による有益な効果も得られる。
【0074】
更に、この食事は、不飽和脂肪の比率を増加して含んでなることもある。好ましくは、食事における不飽和脂肪の量は、脂肪から利用可能なカロリーの少なくとも50%、更に好ましくは少なくとも70%が不飽和脂肪によって供給される。
【0075】
呼吸商(RQ)は消費した酸素(O2)に対する生成した二酸化炭素(CO2)のモル比であり、この比は身体によって利用されるエネルギー源によって変化する。RQは、炭水化物を唯一のエネルギー源として酸化するときには、理論的には1.00であり、唯一のエネルギー源として脂質を酸化するときのRQは理論的には0.71である。混合食事は、これら2つの理論値の間で変化するRQを生じる。
【0076】
本明細書に示される結果は、RQは耐性澱粉含量が高い食事を消費する固体では低下することを示している(図13参照)。このことは、耐性澱粉が炭水化物酸化より脂肪酸化の方が好ましい燃料流動化におけるシフトを引き起こすことを示唆している。
【0077】
従って、本発明は、個体の炭水化物および脂肪代謝を調節する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも20%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法を提供する。
【0078】
好ましくは、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも7、10、20、30、40、50または60%が耐性澱粉に置換される。
【0079】
好ましくは、個体の飽和脂肪一日摂取量の少なくとも5、7、10、20、30、40、50、60または70%が不飽和脂肪に置換される。
【0080】
本発明は、個体の炭水化物および脂肪代謝を調節する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉として供給し、且つ個体の脂肪摂取量の少なくとも60%を不飽和脂肪として供給することを含んでなる、方法も提供する。
【0081】
典型的には、炭水化物一日摂取量の比率として供給される耐性澱粉の量は、5〜90%、好ましくは10〜60%の範囲である。食事全体の百分率として表す場合には、耐性澱粉の量はカロリー含量に基づいた食事全体の少なくとも5%、典型的には5〜45%、好ましくは5〜30%であるのが好ましい。
【0082】
典型的には、脂肪一日摂取量の比率として提供される不飽和脂肪の量は60〜95%、好ましくは少なくとも60、70、80または90%の範囲である。食事全体の百分率として表すと、不飽和脂肪の量はカロリー含量に基づいた食事全体の少なくとも15%、典型的には15〜30%、例えば、少なくとも20または30%であるのが好ましい。
【0083】
本発明の組成物および方法を用いて、下記の1以上を行うことができる:
個体における脂肪利用の促進、例えば、(白色脂肪組織,褐色脂肪組織および/または筋組織における)脂肪蓄積の減少、および/または脂肪酸化の増加(RQの減少によって明らかにすることができる)。
血漿レプチン濃度の減少、
所定のカロリー摂取に対する個体の満腹感の増加、
肥満の治療、
個体における肥満の発生率または危険性の低下、
個体におけるインスリン非依存性真性糖尿病の発生率または危険性の減少、
個体による食物消費の後の個体における食後の血漿グルコースおよび/またはインスリン濃度の減少、
個体のボディーマスの調節(例えば、個体のボディーマス指数を増加または減少させること、または所望のボディーマス指数を保持すること)、
身体形状、および
例えば、スポーツ性能を改良するためにスポーツ活動のような運動中のエネルギー利用の改良。
【0084】
肥満やインスリン非依存性真性糖尿病に罹りやすい個体に、疾病状態の開始を防止しまたは遅延させる手段としての食事をさせることができる。また、これらの疾患に既に罹っている個体に、治療法の一部として食事に対するこれらの変化を行わせることもできる。
【0085】
本発明は、食餌、食物、栄養補助食品および医薬品により食事を操作することによって、動物およびヒトに応用することができる。ヒトの場合には、典型的には思春期前の若年成人(18〜24歳)、中年成人(約35〜50歳)、および老年成人(50歳を上回る)のような総ての年齢範囲に応用することができる。食事の正確な性質は、症状、危険因子、治療対象、および関連個体の年齢によって変化し、栄養士、医師または他の適当な資格のある人によって容易に決定することができる。
【0086】
本明細書において、特に断らない限り、「含んでなる(comprise)」または「含んでなる(comprises)」または「含んでなる(comprising)」は記載した要素、整数または工程、または要素、整数または工程の群を包含するが、任意の他の要素、整数または工程、または要素、整数または工程の群を除外しないことを意味すると理解される。
【0087】
本発明を一層明らかに理解することができるようにするため、好ましい形態を下記の例および図面に関して記載するが、これらは単に例示のためのものであり、制限のためのものではない。
【実施例】
【0088】
例1:急性試験
ラットに標準的ラット食を一週間投与した後、カニューレを外科的に移植した。次にカニュレーションを、急性食事試験を行う一週間前に行った。カニュレーションの一週間後、ラットを一晩絶食させた。翌朝、ラットに1g炭水化物/kg体重を与え、食後の血液試料を2時間にわたって採取した。食事の2時間後に、ラットを屠殺して、組織を後で分析するため回収した。
【0089】
【表1】
【0090】
結果を、図1〜3に示す。
【0091】
例2:慢性試験
実験室で飼育したラットの子孫に、2日齢に非インスリン性糖尿病症状を誘発させる目的でストレプトゾトシン、または標準的緩衝液を投与した。8週齢時に、ラットを一晩絶食させ、グルコース耐性試験を行って糖尿病状態を決定した。ラットを糖尿病または非糖尿病群に分けて、試験食事を8週間与えた。給餌期間の7週時にそれぞれのラットについて、代謝速度を得た。給餌を完了した後、グルコース耐性試験を繰り返し、血液試料を得た。
次に、ラットを屠殺して、脳および筋組織を後で分析するために回収した。
【0092】
結果を、図4〜6および表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
例3:吸収試験
ラットに標準的ラット食を一週間投与した後、カニューレを外科的に移植した。次にカニュレーションを、急性食事試験を行う一週間前に行った。カニュレーションの一週間後、ラットを一晩絶食させた。翌朝、ラットに1g炭水化物/kg体重を与えた。食後に、ラットに放射性マーカーを投与し、食後の血液試料を2時間にわたって採取した。
【0095】
ラットを給餌の1時間または2時間後に屠殺して、組織を後で分析するため回収した。
【0096】
【表3】
【0097】
結果を、図7〜12に示す。
【0098】
例1〜3で得た結果の検討
c−fos活性
ニューロン(c−fos)活性に対する食事の効果は、総エネルギーバランスに対する組成物の衝撃を見るときには、極めて興味深い。視床下部外側部(LHA)は副交感神経系内の摂食中心であると考えられており、これは正のエネルギーバランスと関連している。しかしながら、視床下部腹内側(VMH)は交感神経系の満腹感の中心であると考えられ、負のエネルギーバランスを表す。図6は、不飽和脂肪および耐性澱粉含量の高い食事は空腹感中心(LHA)の活性化を減少させ、満腹感中心の活性化レベルを増加させ、一方飽和脂肪含量が高く且つ耐性澱粉含量が低い食事は反対の効果を有することを示している。一緒に考えると(LHA/VMH)、これらの値は総エネルギーバランスを決定する。
【0099】
吸収
RQデーターからの予備的結果は、耐性澱粉の比または百分率を増加すると、グリコーゲンから脂肪酸化への基剤利用のシフトを示唆している。しかしながら、これらの変化が実際に起きたかどうか、何時およびどこで起きたかは明らかでない。図7〜12は、様々な濃度の澱粉を摂取した後の様々な組織のグリコーゲン合成/利用および脂質合成/酸化に対する耐性澱粉の効果を示している。図7および9は、褐色脂肪および白色脂肪組織内の脂質生成の速度の有意な差、および肝臓組織内の糖生成の増加傾向を示している。これにより、耐性澱粉の特に長期にわたる消費により、実際にグリコーゲンから脂肪酸化へ基剤利用を移動させることがあることが確かめられる。
【0100】
レプチンレベル
レプチンは脂肪組織で合成されたタンパク質であり、食物摂取を阻害し且つ満腹感を増加すると考えられる。レプチン受容体は脳の視床下部に見出されており、ニューロン(c−fos)とホルモン系、およびそれらのカロリー恒常性に対するそれらの効果との重要な連結であることがある。他の研究では、飽和脂肪および不飽和脂肪を与えた群の間のレプチン濃度の差が示されているが、不飽和脂肪群ではレプチン濃度が一層高くなる傾向はあるが、図5は異なる澱粉濃度を有する群の間でのみ有意さを示している。澱粉群間の差は、慢性的な耐性澱粉消費により実質的重量損失があるので、動物の体重と脂肪重量とに大きな差があることによって説明することができる。この重量損失は、部分的には、吸収の検討で本発明者らが注目した基剤利用の変化によるものとすることができる。また、脂肪の損失があると、レプチン生産が減少する。
【0101】
例4:ヒトにおけるRQ値に対する耐性澱粉食事の効果
方法
24名の健常男性(19〜34歳)がこの検討に参加した。この研究はUniversity of Wollongong Human Ethics Committeeによって承認され、試験を開始する前に、正式の書面による同意書を総ての被験者から得た。
【0102】
被験者を、無作為に2群に分けた。第一群には、耐性澱粉含量の低い在来の澱粉(TS)食を与え、第二群には耐性澱粉含量の高いHi-maize(商標)(HM)食を与えた。TS食は標準的な商業的に利用可能な製品からなり、HM食はHi-maize(商標)を含む商業的に利用可能な製品からなった(表1)。TS群について、年齢、身長および体重についての平均値およびSEM値は、それぞれ22.3±0.6歳、180±3.1cm、および73.5±3.7kgであった。HM群について、年齢、身長および体重についての平均値およびSEM値は、それぞれ23.5±0.6歳、185±1.8cm、および74.1±2.4kgであった。
【0103】
総ての被験者は、一日当たり少なくとも60gの朝食シリアル、4切れの白パン、2個のマフィンの他に一週当たり3回の麺類料理(一杯125g)を14日間食することを要求された。総ての参加者は規則的に運動していたので(週当たり4〜8回)、必要ならば被験者が摂取ガイドラインを超過することができるように、これらの食物の過剰量を提供した。総ての被験者は、耐性澱粉(すなわち、研究の一部として提供されたもの以外の供給源からの耐性澱粉)の「バックグラウンド」摂取を制御しようとする研究中に有意な量の耐性澱粉を含む食物(例えば、マメ科植物、緑色バナナおよびビスマチライス(bismati rice))を食べないように忠告された。被験者に供給された総ての食物は、Buttercup Bakeries、Uncle Toby's Company Ltd、およびStarch Australasia Ltdの代理のNew Zealand Starch Productsによって寄贈された。
【0104】
割り当てた食事療法を開始する前に(0日)、絶食静脈血試料(肘前)をそれぞれの被験者から採取した後、食事履歴の聞き取りおよびこの研究のための食事のガイドラインの詳細な説明を行った。食事療法の開始から2週間後(14日)、被験者は追跡の絶食血液試料および3時間食事試験に戻った。試験食事は、2週間の研究期間にわたる被験者の食事に基づいてTSまたはHMであり、60gの朝食シリアル、250mlのLite Whiteミルク、1切れのパン(トースト)、1個のマフィン(トースト)、10gのキャノーラマーガリン、および20gのジャムからなっていた。
【0105】
試験食事をとってから30、60、120および180分後に、静脈血試料(肘前)を採取した。呼吸商(RQ)は、試験食事の0、60、120および180分後にDatex Deltatrac II (ヘルシンキ,フィンランド)を用いて測定した。更に、総ての血液試料を、血清グルコース、血清インスリン、血漿コレステロール、血漿総脂質、および血漿遊離脂肪酸濃度について分析した。
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】
【0108】
結果
採用した24名の被験者の中,HM群からの1名の被験者が世界保険機構(WHO)基準によりインスリン耐性であることが見出され、検討から除外した。食事の総エネルギー摂取および多量養素組成は、TSおよびHM群の間で有意差はなかった(表5)。
【0109】
TSおよびHM群の間の絶食RQ値には差はなかった(データーは示さず)。RS値は0.83〜0.91の範囲であり、それぞれの時点におけるRQと0分のRQとの差を表すΔRQとしてプロットした(図13)。食事摂取から60および120分後のΔRQは、TSおよびHM群の間で差は示さなかった。しかしながら、180分後には、HM群についてのΔRQは、TS群についての値の約50%であった。
【0110】
検討
2群の健常男性(18〜34歳)は、耐性澱粉含量の低い在来の澱粉(TS)製品を含む高炭水化物食事、または耐性澱粉含量の高いHi-maize(商標)(HM)製品を2週間消費した。グルコース、インスリン、遊離脂肪酸(FFA)、コレステロールおよび総脂質濃度について、食事摂取後にRS測定および血液試料を分析した。3時間目に、HM群についてのΔRQ(0.04±0.01)は、TS群についての値(0.09±0.02;p<0.01)の約50%であった。このデーターは、耐性澱粉含量の高い食事が燃料利用の急激な変化を引き起こし、炭水化物酸化より脂肪酸化を起こしやすく、高濃度の食事用耐性澱粉が消費されることの証拠を提供する。
【0111】
絶対的期間では、RQ値が0.90〜0.92の範囲であったので、炭水化物が食事摂取後の1、2および3時間目のエネルギーの主要な供給源であった。食事の3時間後のTS群に対するHM群で見られたRQの減少は、脂肪酸化の増加を表す。このRQの減少の大きさは小さいと思われるが、これが脂肪酸化における大きな差を説明している。例えば、TS群の被験者が50%脂肪および50%炭水化物を酸化している場合には、RQの観察された減少は、HM群の被験者が67%脂肪および33%炭水化物を酸化していることを意味する。燃料利用におけるこの実質的差は、特にHMおよびTS食事の間の総耐性澱粉含量の差が比較的低いので、特に興味深いものである。急性評価に用いられる食事は、TS食事の約4倍の耐性澱粉を含んだ(それぞれ、28.2%対7.2%(w/w))。耐性澱粉の量の大幅に増加することにより、燃料利用についても大きな効果を生じることがある。
【0112】
耐性澱粉の消費により、脂肪酸化が急激に増加した。更に、高炭水化物食事を消費すると、耐性含量とは関係なく、絶食血漿FFA濃度が低下した。一緒に合わせると、これらの結果は、耐性澱粉に富む高炭水化物食事は血漿FFAの供給過剰が兆候となる代謝性疾患、例えば、肥満およびインスリン非依存性真性糖尿病に罹っているヒトにとって有益となることがあることを示している。
【0113】
大まかに記載した本発明の精神または範囲から離反することなく具体的態様に示される本発明に対して多数の変更および/または修飾を行うことができることは当業者によって理解されるであろう。従って、本発明の態様は、総てに関して例示的なものであり、制限的なものではないと考えるべきである。
【0114】
上記明細書に記載した総ての公表文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている。本明細書に包含されてきた文書、法律、材料、装置、物品などのあらゆる説明は、本発明に対する関連性を提供するためだけのものである。これらのもののいずれかまたは総てが、従来技術の基礎の一部を形成し、または本願明細書のそれぞれの請求項の優先日前のオーストラリアまたはいずれかの他の国または領土に存在するので、本発明に関連した分野において通常の一般的知識であることの容認と採るべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】様々なアミロース濃度のa) 加熱またはb) 未加熱澱粉に対する食後の血漿グルコース濃度。それぞれの食事群(n=7)の値は、平均値±s.e.として表す。
【図2】様々なアミロース濃度のa) 加熱またはb) 未加熱澱粉に対する食後の血漿インスリン濃度。それぞれの食事群(n=7)の値は、平均値±s.e.として表す。
【図3】様々なアミロース濃度に対するa)グルコースおよびb)インスリンについての曲線下の増加面積(AUC)。(*)は、同一範疇(すなわち、加熱または未加熱)での0%アミロース群からの有意差(p=0.05)を表す。(#)は、同一アミロース濃度の未加熱澱粉からの有意差(p=0.05)を表す。それぞれ食事群(n=7)についての値は、平均値±s.e.として表す。
【図4】a) 2時間の静脈内グルコース投与(10%)に対する4種類の食事群の血漿グルコース濃度(mmol/L)。それぞれの食事群(n=12)についての値は、平均値±s.e.として表す。飽和脂肪/アミロペクチン食事は、n−3/アミロース食事(p=0.05)と有意差があるが、n−3/アミロース食事は、n−3/アミロペクチン食事(p=0.001)と有意差がある。b)2時間の静脈内グルコース投与(10%)に対する4種類の食事群の 血漿インスリン濃度(ng/ml)。それぞれの食事群(n=12)についての値は、平均値±s.e.として表す。飽和脂肪/アミロース食事はn−3/アミロース食事と有意差があり(p=0.001)、n−3/アミロペクチン食事はn−3/アミロース食事と有意差がある(p=0.05)。
【図5】16週の食事試験の後の4食事群における絶食血漿レプチン濃度(ng/ml)。それぞれの食事群(n=12)についての値は、平均値±s.e.として表す。澱粉群(p=0.05)には有意差があったが、脂肪群にはなかった。
【図6】16週の食事試験の後の4食事群における脳の異なる視床下部領域の絶食C−fos活性化。血漿レプチン濃度(ng/ml)。それぞれの食事群(n=5,飽和脂肪/アミロース群についてはn=1)についての値は、平均値±s.e.として表す。脳の様々な領域のc−fos値は、DMHについては(p=0.001)で、LHAについて(p=0.005)で、PVNについて(p=0.001)で、およびVMHについて(p=0.05)で統計的に有意であった。[重要単語:視床下部外側部(LH)、視床下部腹内側核(VMH)、室傍核(PVH)、視床下部弓状核(Arc)、および背内側核(DMH)]。
【図7】様々なアミロース濃度の澱粉に対する褐色脂肪組織(BAT)での1時間および2時間後の脂質生成速度(μg原子H/分/g)。それぞれの食事群(n=8)についての値は、平均値±s.e.として表す。アミロースおよびアミロペクチンを与えたラットは、2時間の時点で有意差があった(p=0.01)。
【図8】様々なアミロース濃度の澱粉に対する腓腹筋組織での1時間および2時間後の脂質生成速度(μg原子H/分/g)。それぞれの食事群(n=8)についての値は、平均値±s.e.として表す。
【図9】様々なアミロース濃度の澱粉に対する白色脂肪組織 (WAT)での1時間および2時間後の脂質生成速度(μg原子H/分/g)。それぞれの食事群(n=8)についての値は、平均値±s.e.として表す。アミロースおよびアミロペクチンを与えたラットは、1時間の時点で有意差があった(p=0.01)。
【図10】様々なアミロース濃度の澱粉に対する肝臓組織での1時間および2時間後の脂質生成速度(μg原子H/分/g)。それぞれの食事群(n=8)についての値は、平均値±s.e.として表す。
【図11】様々なアミロース濃度の澱粉に対する肝臓組織での1時間および2時間後の脂質生成速度(μg原子H/分/g)。それぞれの食事群(n=8)についての値は、平均値±s.e.として表す。
【図12】様々なアミロース濃度の澱粉に対する腓腹筋組織での1時間および2時間後の糖生成速度(μg原子H/分/g)。それぞれの食事群(n=8)についての値は、平均値±s.e.として表す。
【図13】食事における耐性澱粉に対するRQの変化。DSまたはRS食事を開始から2週間後(14日目)、被験者は追跡の絶食血液試料および3時間食事試験に戻った。試験食事は、60gの朝食シリアル、250mlのLite Whiteミルク、1切れのパン(トースト)、1個のマフィン(トースト)、10gのキャノーラマーガリン、および20gのジャムからなっていた。結果は、平均値±s.e.として表す(DS黒丸についてはn=12、RSの白抜き丸についてはn=11)。*同一時点でのRS群からの差についてp<0.03。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の炭水化物および脂肪の代謝を調節する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【請求項2】
個体の脂肪摂取量の少なくとも60%が不飽和脂肪として存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
個体の脂肪代謝を促進する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【請求項4】
脂肪代謝の促進が脂肪蓄積の減少および/または脂肪酸化の増加を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
個体の血漿レプチン濃度を減少させ且つ満腹感を増加させる方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【請求項6】
肥満症に罹っている個体の治療方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【請求項7】
個体における肥満症の発生率を低下させる方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【請求項8】
個体におけるインスリン非依存性真性糖尿病の発症率を低下させる方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【請求項9】
個体による食物消費後の個体の食後の血漿グルコースおよび/またはインスリン濃度を減少させる方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【請求項10】
個体のボディーマスを制御する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【請求項11】
低耐性澱粉含量を有する成分を高耐性澱粉含量を有する成分に代え、飽和脂肪の幾つかまたは総てを不飽和脂肪に代えることを含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法で用いる食材の調製方法。
【請求項12】
炭水化物含量の少なくとも5%を耐性澱粉含量に代え、飽和脂肪含量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
耐性澱粉を少なくとも2gと不飽和脂肪を少なくとも2g含んでなる組成物であって、耐性澱粉が総澱粉含量の少なくとも5重量%の比率で含まれている、組成物。
【請求項14】
耐性澱粉が総炭水化物含量の少なくとも5重量%の比率で含まれている、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
耐性澱粉の幾らかまたは全部が、アミロース含量が50重量%以上の高アミローストウモロコシ澱粉であるかまたはそれから誘導される、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項16】
不飽和脂肪が総脂肪含量の少なくとも25重量%の比率で含まれている、請求項13〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
不飽和脂肪が総脂肪含量の少なくとも50重量%の比率で含まれている、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
飽和脂肪が実質的に含まれていない、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
不飽和脂肪がモノ不飽和脂肪、モノ不飽和脂肪、ポリ不飽和脂肪、ω−3脂肪およびω−6脂肪の一つ以上から選択される、請求項13〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
香味料、ビタミン供給源、ミネラル供給源、電解質、および微量元素からなる群から選択される少なくとも一種類の他成分をさらに含んでなる、請求項13〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
エネルギー含量が800〜1200kcal/日である低カロリー食品の形態である、請求項13〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
エネルギー含量が1200kcal/日を上回る食品の形態である、請求項13〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
エネルギー含量が2000kcal/日を上回る食品の形態である、請求項13〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
粉末混合物の形態であり、該粉末混合物が水を含む液体に可溶性、懸濁性、分散性または乳化性である、請求項13〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
顆粒状の、請求項13〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
個体の炭水化物および脂肪代謝を調節する方法であって、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項27】
個体の脂肪利用を促進する方法であって、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項28】
個体の血漿レプチン濃度を減少させ且つ満腹感を増加させる方法であって、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項29】
肥満症に罹っている個体の治療方法であって、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項30】
個体における肥満症の危険性を低下させる方法であって、請求項13−25のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項31】
個体におけるインスリン非依存性真性糖尿病の危険性を低下させる方法であって、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項32】
個体による食物消費後の個体の食後の血漿グルコースおよび/またはインスリン濃度を減少させる方法であって、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項33】
個体のボディーマスを制御する方法であって、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項34】
請求項26〜33のいずれか一項に記載の方法に使用するための、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
請求項26〜33のいずれか一項に記載の方法に使用する医薬品の製造における、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項36】
請求項13〜22のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる食材。
【請求項37】
請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる、少なくとも一種類の食物成分を含んでなる、予めパッケージされた食物。
【請求項38】
請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物の製造方法であって、(i)組成物の炭水化物含量の幾らかまたは全部を耐性澱粉に代え、(ii)組成物の飽和脂肪含量の幾らかまたは全部を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【請求項1】
個体の炭水化物および脂肪の代謝を調節する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【請求項2】
個体の脂肪摂取量の少なくとも60%が不飽和脂肪として存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
個体の脂肪代謝を促進する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【請求項4】
脂肪代謝の促進が脂肪蓄積の減少および/または脂肪酸化の増加を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
個体の血漿レプチン濃度を減少させ且つ満腹感を増加させる方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【請求項6】
肥満症に罹っている個体の治療方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【請求項7】
個体における肥満症の発生率を低下させる方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【請求項8】
個体におけるインスリン非依存性真性糖尿病の発症率を低下させる方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【請求項9】
個体による食物消費後の個体の食後の血漿グルコースおよび/またはインスリン濃度を減少させる方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【請求項10】
個体のボディーマスを制御する方法であって、個体の炭水化物一日摂取量の少なくとも5%を耐性澱粉に代え、個体の飽和脂肪摂取量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【請求項11】
低耐性澱粉含量を有する成分を高耐性澱粉含量を有する成分に代え、飽和脂肪の幾つかまたは総てを不飽和脂肪に代えることを含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法で用いる食材の調製方法。
【請求項12】
炭水化物含量の少なくとも5%を耐性澱粉含量に代え、飽和脂肪含量の少なくとも10%を不飽和脂肪に代える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
耐性澱粉を少なくとも2gと不飽和脂肪を少なくとも2g含んでなる組成物であって、耐性澱粉が総澱粉含量の少なくとも5重量%の比率で含まれている、組成物。
【請求項14】
耐性澱粉が総炭水化物含量の少なくとも5重量%の比率で含まれている、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
耐性澱粉の幾らかまたは全部が、アミロース含量が50重量%以上の高アミローストウモロコシ澱粉であるかまたはそれから誘導される、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項16】
不飽和脂肪が総脂肪含量の少なくとも25重量%の比率で含まれている、請求項13〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
不飽和脂肪が総脂肪含量の少なくとも50重量%の比率で含まれている、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
飽和脂肪が実質的に含まれていない、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
不飽和脂肪がモノ不飽和脂肪、モノ不飽和脂肪、ポリ不飽和脂肪、ω−3脂肪およびω−6脂肪の一つ以上から選択される、請求項13〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
香味料、ビタミン供給源、ミネラル供給源、電解質、および微量元素からなる群から選択される少なくとも一種類の他成分をさらに含んでなる、請求項13〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
エネルギー含量が800〜1200kcal/日である低カロリー食品の形態である、請求項13〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
エネルギー含量が1200kcal/日を上回る食品の形態である、請求項13〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
エネルギー含量が2000kcal/日を上回る食品の形態である、請求項13〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
粉末混合物の形態であり、該粉末混合物が水を含む液体に可溶性、懸濁性、分散性または乳化性である、請求項13〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
顆粒状の、請求項13〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
個体の炭水化物および脂肪代謝を調節する方法であって、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項27】
個体の脂肪利用を促進する方法であって、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項28】
個体の血漿レプチン濃度を減少させ且つ満腹感を増加させる方法であって、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項29】
肥満症に罹っている個体の治療方法であって、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項30】
個体における肥満症の危険性を低下させる方法であって、請求項13−25のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項31】
個体におけるインスリン非依存性真性糖尿病の危険性を低下させる方法であって、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項32】
個体による食物消費後の個体の食後の血漿グルコースおよび/またはインスリン濃度を減少させる方法であって、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項33】
個体のボディーマスを制御する方法であって、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項34】
請求項26〜33のいずれか一項に記載の方法に使用するための、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
請求項26〜33のいずれか一項に記載の方法に使用する医薬品の製造における、請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項36】
請求項13〜22のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる食材。
【請求項37】
請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる、少なくとも一種類の食物成分を含んでなる、予めパッケージされた食物。
【請求項38】
請求項13〜25のいずれか一項に記載の組成物の製造方法であって、(i)組成物の炭水化物含量の幾らかまたは全部を耐性澱粉に代え、(ii)組成物の飽和脂肪含量の幾らかまたは全部を不飽和脂肪に代えることを含んでなる、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−10762(P2013−10762A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−168848(P2012−168848)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2001−573922(P2001−573922)の分割
【原出願日】平成13年4月6日(2001.4.6)
【出願人】(510264095)ナショナル、スターチ、リミテッド、ライアビリティ、カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL STARCH LLC
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2001−573922(P2001−573922)の分割
【原出願日】平成13年4月6日(2001.4.6)
【出願人】(510264095)ナショナル、スターチ、リミテッド、ライアビリティ、カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL STARCH LLC
【Fターム(参考)】
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