説明

澱粉加工用酵素

本発明は、炭水化物結合性モジュールのアミノ酸配列と真菌α-アミラーゼのアミノ酸配列とを含んでなるハイブリッド酵素、および炭水化物結合性モジュールとα-アミラーゼ触媒モジュールとを含んでなる真菌野生型酵素の変異型に関する。本発明は、また、澱粉の液化におけるハイブリッド酵素または変異型の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、なかでも、炭水化物結合性モジュール (「CBM」) とα-アミラーゼ触媒ドメインとを含んでなる酵素に関する。この酵素は炭水化物結合性モジュール (「CBM」) とα-アミラーゼとの間のハイブリッドであるか、あるいは炭水化物結合性モジュール (「CBM」) とα-アミラーゼ触媒ドメインとを含んでなる親酵素の変異型であることができる。本発明は、また、澱粉をより小さいオリゴ糖および/または多糖のフラグメントに分解する澱粉液化プロセスにおける酵素の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
澱粉を、甘み料としてまたは他の糖類の前駆体、例えば、フルクトースとして使用される澱粉加水分解物、例えば、マルトース、グルコースまたは特にシロップに転化する、多数の方法が記載されてきている。また、グルコースを発酵させてエタノールまたは他の発酵生成物、例えば、クエン酸、グルタミン酸一ナトリウム、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸カリウム、グルコノデルタラクトン、エリトルビン酸ナトリウム、イタコン酸、乳酸、グルコン酸; ケトン; アミノ酸、グルタミン酸 (モノグルタミン酸ナトリウム) 、ペニシリン、テトラサイクリン; 酵素; ビタミン、例えば、リボフラビン、B12、β-カロテンまたはホルモンを生成することができる。
【0003】
澱粉はグルコース単位の鎖から成る高分子量ポリマーである。通常、それは約80%のアミロペクチンおよび20%のアミロースから成る。アミロペクチンは、α-1,4 D-グルコース残基の直鎖がα-1,6 グリコシド結合で結合されている、分枝鎖状多糖である。
アミロースは、α-1,4 グリコシド結合で一緒に結合されたD-グルコピラノース単位から構築された、直鎖状多糖である。澱粉を可溶性澱粉加水分解物に転化する場合において、澱粉は解重合される。慣用の解重合プロセスは、糊化工程および2つの連続的プロセス工程、すなわち、液化プロセスおよびサッカリド化プロセスから成る。
【0004】
粒状澱粉は、室温において水中に不溶性である微視的粒体から成る。水性澱粉スラリーを加熱するとき、粒体は膨潤し、究極的に破裂して、澱粉分子を溶液中に分散させる。この「糊化」プロセス間に、粘度が劇的に増加する。典型的な産業的プロセスにおいて、固形分は30〜40%であるので、澱粉を希釈または 「液化」 して取扱い可能としなくてはならない。この粘度減少は今日主として酵素分解により実施される。液化工程間に、長鎖澱粉はα-アミラーゼにより小さい分枝鎖状単位および直鎖状単位 (マルトデキストリン) に分解される。典型的には、液化プロセスは約105〜110℃において約5〜10分間、次いで約95℃において約1〜2時間実施される。次いで温度を60℃に低下させて、グルコアミラーゼまたはβ-アミラーゼおよび必要に応じて脱分枝酵素、例えば、イソアミラーゼまたはプルラナーゼを添加し、そしてサッカリド化プロセスを約24〜72時間進行させる。
【0005】
前述の説明から明らかなように、慣用の澱粉転化プロセスは、種々の工程間の温度に関する異なる必要条件のために、非常にエネルギーを消費する。こうして、澱粉を糊化しないで全体のプロセスを実施できるように、このプロセスにおいて使用する酵素を選択することが望ましい。このようなプロセスは下記の特許の主題である: US 4591560、US 4727026およびUS 4009074およびEP 0171218およびデンマーク国特許出願PA 2003 00949。 本発明は、新規なハイブリッド酵素、およびこのようなプロセスのために設計され、CBMのアミノ酸配列と真菌澱粉分解酵素のアミノ酸配列とを含んでなる野生型酵素の遺伝的修飾物に関する。ハイブリッド酵素は、WO 9814601、WO 0077165およびデンマーク国特許出願PA 2003 00949の主題である。
【発明の開示】
【0006】
発明の要約
本発明は、第1の面において、α-アミラーゼ活性を有する触媒モジュールのアミノ酸配列と、炭水化物結合性モジュールのアミノ酸配列とを含んでなり、触媒モジュールが真菌由来である、ハイブリッド酵素を提供する。
【0007】
本発明は、第2の面において、配列番号41に対して少なくとも60%の相同性、少なくとも70%の相同性、少なくとも80%の相同性、またはさらに少なくとも90%の相同性を有するα-アミラーゼの変異型を提供し、前記変異型は13、15、18、31、32、33、34、35、36、61、63、64、68、69、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、89、117、118、119、120、121、122、123、124、125、152、153、154、155、156、157、158、161、162、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、204、205、206、207、208、209、210、211、216、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、242、245、250、252、253、255、256、257、259、260、275、292、295、296、297、298、299、304、328、339、344、348、378、383、386、387、405、448および480から成る群から選択される1または2以上の位置に変更を含んでなり、ここで (a) 前記1または2以上の変更は、独立して、i) 前記位置を占有するアミノ酸から下流のアミノ酸の挿入であり、ii) 前記位置を占有するアミノ酸の欠失であり、またはiii) 前記位置を占有するアミノ酸の異なるアミノ酸による置換であり、(b) 前記変異型は親真菌α-アミラーゼに関して増加したα-アミラーゼ活性を有し、および/または改良された酵素安定性を有し、そして (c) 各位置は配列番号43に示すTAKAアミラーゼおよび/または配列番号41に示すアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼのアミノ酸配列の位置に対応する。
【0008】
それ以上の面において、本発明は、第1面のハイブリッド酵素または第2面の変異型をコードする単離されたDNA配列、第1面のハイブリッド酵素または第2面の変異型をコードするDNA配列を含んでなるDNA構築物、第1面のハイブリッド酵素または第2面の変異型をコードするDNA配列を含んでなる発現ベクター、およびあるベクターで形質転換され、第1面のハイブリッド酵素または第2面の変異型をコードするDNA配列を発現することができる宿主細胞を提供する。
【0009】
第8の面において、本発明は、糊化澱粉基質または粒状澱粉基質を水性媒質中において第1面のハイブリッド酵素または第2面の変異型で処理する、澱粉を液化する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明の詳細な説明
用語 「粒状澱粉」 は、原料の生澱粉、すなわち、糊化されていない澱粉として理解される。澱粉は水中に不溶性である小さい粒体として植物中で形成される。これらの粒体は初期糊化温度より低い温度において澱粉中に保存される。冷水中に入れると、粒体は少量の液体を吸収する。50℃〜70℃まで、膨潤は可逆的であり、可逆性の程度は特定の澱粉に依存する。より高い温度において、糊化と呼ばれる不可逆的膨潤が開始する。
【0011】
用語 「初期糊化温度」 は、澱粉の糊化が開始する最低温度として理解される。水中で加熱された澱粉は50℃〜75℃において糊化し始める; 糊化の正確な温度は特定の澱粉に依存し、当業者はそれを容易に測定することができる。こうして、初期糊化温度は植物種、植物種の特定の変種、ならびに成長条件に従い変化することがある。本発明の関係において、所定の澱粉の初期糊化温度は、下記の文献に記載されている方法を使用して澱粉粒体の5%において複屈折が喪失する温度である: Gorinstein S. およびLii C. 、Starch/Starke、Vol. 44 (12) pp. 461-466 (1992) 。
【0012】
用語 「可溶性澱粉加水分解物」 は、本発明の方法の可溶性生成物として理解され、そして単糖、二糖、およびオリゴ糖、例えば、グルコース、マルトース、マルトデキストリン、シクロデキストリンおよびこれらの任意の混合物を含んでなることができる。好ましくは、粒状澱粉の乾燥固形分の少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%は可溶性澱粉加水分解物に転化される。
【0013】
ポリペプチドの 「相同性」 は、第1配列が第2配列から偏っていることを示す、2配列間の同一性の程度として理解される。相同性はこの分野において知られているコンピュータプログラム、例えば、下記により適当に決定することができる: GCGプログラムパッケージで提供されるGAP (Program Manual for the Wisconsin Package、Version 8、1994年8月、Genetics Computer Group、575 Science Drive、米国 53711 ウィスコンシン州マディソン) (Needleman S. B. およびWunsch C. D. (1970) 、Journal of Molecular Biology 48、443-453。アミノ酸配列を比較するために下記の設定を使用する: 3.0のGAP生成ペナルティーおよび0.1のGAPエクステンションペナルティー。相同性を決定するアミノ酸配列の関係する部分は成熟ポリペプチド、すなわち、シグナルペプチドを含まないポリペプチドである。
【0014】
ハイブリッド酵素
特許請求の範囲を含むこの明細書中で言及する酵素分類ナンバリング (ECナンバリング) は下記に従う: Recommendations (1992) of the Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology、Academic Press Inc. 1992。
【0015】
本明細書において言及するハイブリッド酵素または野生型酵素の遺伝的修飾物は、炭水化物結合性モジュール (CBM) を含んでなるアミノ酸配列に結合した (すなわち、共有結合した) α-澱粉加水分解酵素 (EC 3.2.1.1) のアミノ酸配列対応する種を包含する。
【0016】
CBMを含有するハイブリッド酵素、ならびにそれらの製造および精製はこの分野において知られている [例えば、下記の文献を参照のこと: WO 90/00609、WO 94/24158およびWO 95/16782、ならびにGreenwood 他、Biotechnology and Bioengineering 44 (1994) pp. 1295-1305] 。それらは、例えば、次のようにして製造することができる: 問題の酵素をコードするDNA配列に、リンカーを使用するか、あるいは使用しないで、結合した炭水化物結合性モジュールをコードするDNAフラグメントを少なくとも含んでなるDNA構築物を宿主細胞の中に形質転換し、そして形質転換された宿主細胞を増殖させて融合遺伝子を発現させる。生ずる組換え生成物 (ハイブリッド酵素) (しばしばこの分野において「融合タンパク質」と言及される) は、下記の一般式で記載することができる:
A-CBM-MR-X
【0017】
後者の式において、A-CBMは少なくとも炭水化物結合性モジュール (CBM) それ自体を含んでなるアミノ酸配列のN-末端またはC-末端の領域である。MRは中央領域 (「リンカー」) であり、そしてXはCBMを結合すべき酵素 (または他のタンパク質) をコードするDNA配列によりコードされるポリペプチドのアミノ酸残基の配列である。
【0018】
部分Aは非存在である (A-CBMがCBMそれ自体である、すなわち、CBMを構築するもの以外のアミノ酸残基を含まないように) か、あるいは1または2以上のアミノ酸残基の配列 (CBMそれ自体の末端エクステンションとして機能する) であることができる。リンカーは結合であるか、あるいは約2〜約100炭素原子、特に2〜40炭素原子を含んでなる短い結合基であることができる。しかしながら、MRは約2〜約100アミノ酸残基、特に2〜40アミノ酸残基、例えば、2〜15アミノ酸残基の配列であることが好ましい。
部分Xはハイブリッド酵素全体のN-末端またはC-末端の領域を構築することができる。
こうして、前述の説明から明らかなように、問題のタイプのハイブリッド酵素中のCBMはハイブリッド酵素中のN-末端、C-末端または内部に位置することができる。
【0019】
リンカー配列
リンカー配列は任意の適当なリンカー配列であることができる。好ましい態様において、リンカー配列は下記に由来する: アテリア・ロルフシイ (Athelia rolfsii) AMG、アスペルギルス・ニガー (A. niger) AMGまたはアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼ、例えば、下記から成るリストから選択されるリンカー配列: アスペルギルス・ニガー (A. niger) AMGリンカー: T G G T T T T A T P T G S G S V T S T S K T T A T A S K T S T S T S S T S A (配列番号26) 、アスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼリンカー: T T T T T T A A A T S T S K A T T S S S S S S A A A T T S S S (配列番号27) 、アテリア・ロルフシイ (Athelia rolfsii) AMGリンカー: G A T S P G G S S G S (配列番号28) 、およびPEPTリンカー: P E P T P E P T (配列番号29) 。
【0020】
他の好ましい態様において、ハイブリッド酵素は、配列番号26、配列番号27、配列番号28、または配列番号29から成る群から選択されるリンカー配列であるか、あるいは配列番号26、配列番号27、配列番号28、または配列番号29に示すアミノ酸配列と10個以下の位置、9個以下の位置、8個以下の位置、7個以下の位置、6個以下の位置、5個以下の位置、4個以下の位置、3個以下の位置、2個以下の位置、1個以下の位置だけ異なるリンカー配列を有する。
【0021】
炭水化物結合性モジュール
炭水化物結合性モジュール (CBM) 、またはしばしば言及するように、炭水化物結合性ドメイン (CBD) は、多糖またはオリゴ糖 (炭水化物) に優先的に結合し、頻繁に、しかし必ずしも独占的にではなく、それらの水不溶性 (結晶質を包含する) 形態に結合するポリペプチドアミノ酸配列である。
【0022】
澱粉分解酵素に由来するCBMは、澱粉結合性モジュールまたはSBM (ある種の澱粉加水分解酵素、例えば、ある種のグルコアミラーゼ、またはシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼのような酵素、またはα-アミラーゼ中に存在することがあるCBM) をしばしば意味する。同様に、CBMの他のクラスは、例えば、セルロース結合性モジュール (セルロース分解酵素からのCBM) 、キチン結合性モジュール (典型的にはキチナーゼ中に存在するCBM) 、キシラン結合性モジュール (典型的にはキシラナーゼ中に存在するCBM) 、マンナン結合性モジュール (典型的にはマンナナーゼ中に存在するCBM) を包含するであろう。SBMはしばしばSBD (澱粉結合性ドメイン) と呼ばれる。
【0023】
CBMは、特に典型的には基質加水分解のための活性部位を含有する触媒モジュールと、問題の炭水化物基質に結合するための炭水化物結合性モジュール (CBM) とを含んでなる加水分解酵素 (ヒドロラーゼ) において、2またはそれ以上のポリペプチドアミノ酸配列領域から成る大きいポリペプチドまたはタンパク質の一体的部分として見出される。このような酵素は2以上の触媒モジュールと、1、2または3つのCBMとを含んでなることができ、必要に応じて1または2以上のCBMを1または2以上の触媒モジュールに結合させる1または2以上のポリペプチドアミノ酸配列をさらに含んでなり、後者のタイプの領域は通常「リンカー」と呼ばれる。CBMを含んでなる加水分解酵素の例 (それらのあるものは既に前述した) は、セルラーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、アセチルエステラーゼおよびキチナーゼである。CBMは、また、藻類、例えば、赤色藻ポルフィラ・プルプレア (Porphyra purpurea) 中に非加水分解性多糖結合性タンパク質の形態で見出された。
【0024】
CBMが存在するタンパク質/ポリペプチド (例えば、酵素、典型的には加水分解酵素) において、CBMはN末端またはC末端にまたは内部に位置することができる。
【0025】
CBMそれ自体を構成するポリペプチドまたはタンパク質 (例えば、加水分解酵素) の部分は、典型的には約30より多くかつ約250より少ないアミノ酸残基から成る。「ファミリー20の炭水化物結合性モジュール」またはCBM-20モジュールは、本発明の関係において、下記の文献に開示されているポリペプチドの炭水化物結合性モジュール (CBM) に対して少なくとも45%の相同性を有するほぼ100アミノ酸の配列として定義される: 第1図、Joergensen 他 (1997) Biotechnol. Lett. 19: 1027-1031。CBMはポリペプチドの最後の102アミノ酸、すなわち、アミノ酸582〜アミノ酸683のサブ配列を含んでなる。
【0026】
この開示において適用されるグリコシドヒドロラーゼファミリーのナンバリングは下記の概念に従う: Coutinho P. M. およびHenrissat B. (1999) CAZy-Carbohydrate-Active Enzymes server at URL: http://afmb.cnrs-mrs.fr/-cazy/CAZY/index.htmlまたは選択的にCoutinho P. M. およびHenrissat B. 1999; The modular structure of cellulases and other carbohydrate-active enzymes: an integrated database approach、”Genetics, Biochemistry and Ecology of Cellulose Degradation”、 編者: K. Ohmiya、K. Hayashi、K. Sakka、Y. Kobayashi、C. Karitaおよび. Kimura、Uni Publishers Co. 東京、pp. 15-23、およびBourne Y. およびHenrissat B. 2001; Glycoside hydrolase and glycosyltransferases: families and functional modules、Current Opinion in Structural Biology 11: 593-600。
【0027】
本発明の関係において使用するために適当なCBMを含んでなる酵素の例は、α-アミラーゼ、マルトジェニックα-アミラーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、アセチルエステラーゼおよびキチナーゼである。本発明に関して問題のそれ以上のCBMは、グルコアミラーゼ (EC 3.2.1.3) またはCGTアーゼ (EC 2.4.1.19) に由来するCBMを包含する。
【0028】
一般に、真菌、細菌または植物源は本発明の関係において使用するために適当である。真菌由来、より好ましくはアスペルギルス (Aspergillus) 種、バシラス (Bacillus) 種、クレブシエラ (Klebsiella) 種、またはリゾプス (Rhizopus) 種からのCBMは好ましい。この関係において、関係する遺伝子を単離する技術はこの分野においてよく知られている。
【0029】
炭水化物結合性モジュールファミリー20のCBMは本発明のために好ましい。本発明に適当な炭水化物結合性モジュールファミリー20のCBMは下記に由来することができる: アスペルギルス・アワモリ (Aspergillus awamori) (SWISSPROT Q12537) 、アスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) (SWISSPROT P23176) 、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) (SWISSPROT P04064) 、アスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) (SWISSPROT P36914) のグルコアミラーゼ、アスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) (EMBL: #AB008370) 、アスペルギルス・ニヅランス (Aspergillus nidulans) (NCBI AAF17100.1) のα-アミラーゼ、バシラス・セレウス (Bacillus cereus) (SWISSPROT P36924) のβ‐アミラーゼ、またはバシラス・サーキュラン (Bacillus circulans) (SWISSPROT P43379) のCGTアーゼ。
【0030】
アスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) (EMBL: #AB008370) のα-アミラーゼからのCBM、またはアスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) (EMBL: #AB008370) のα-アミラーゼからのCBMに対して少なくとも50%、60%、70%、80%またはさらに少なくとも90%の相同性を有するCBM、すなわち、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%またはさらに少なくとも90%の相同性を有するCBMは好ましい。また、それぞれ、配列番号9、配列番号10、および配列番号11に示すアミノ酸配列およびデンマーク国出願第PA 2003 00949号に配列番号1、配列番号2および配列番号3として開示されている炭水化物結合性モジュールファミリー20のCBMは本発明のために好ましい。
【0031】
それ以上の好ましいCBMは下記に由来するグルコアミラーゼのCBMを包含する: ホルモコニス (Hormoconis) 種、例えば、ホルモコニス・レジネ (Hormoconis resinae) (Syn. Creosote真菌またはアモルホテカ・レジネ (Amorphotheca resinae)) 、例えば、SWISSPROT: Q03045 (配列番号12) のCBM、レンチヌラ (Lentinula) 種、例えば、レンチヌラ・エドデス (Lentinula edodes) (シイタケキノコ) 、例えば、SPTREMBL: Q9P4C5のCBM (配列番号13) 、ニューロスポラ (Neurospora) 種、例えば、ニューロスポラ・クラッサ (Neurospora crassa)、例えば、SWISSPROT: P14804のCBM (配列番号14) 、タラロマイセス (Talaromyces) 種、例えば、タラロマイセス・ビッソクラミジオイデス (Talaromyces byssochlamydioides) 、例えば、NN005220のCBM (配列番号15) 、ゲオスミチア (Geosmithia) 種、例えば、ゲオスミチア・シリンドロスポラ (Geosmithia cylindrospora) 、例えば、NN48286のCBM (配列番号16) 、
【0032】
スコリアス (Scorias) 種、例えば、スコリアス・スポンギオサ (Scorias spongiosa) 、例えば、NN007096のCBM (配列番号17) 、エウペニシリウム (Eupenicillium) 種、例えば、エウペニシリウム・ルドウィギイ (Eupenicillium ludwigii) 、例えば、NN005966のCBM (配列番号18) 、アスペルギルス (Aspergillus) 種、例えば、アスペルギルス・ジャポニカス (Aspergillus japonicus) 、例えば、NN001136 のCBM (配列番号19) 、ペニシリウム (Penicillium) 種、例えば、ペニシリウムcfミクジンスキイ (Penicillium cf miczynskii) 、例えば、NN48691のCBM (配列番号20) 、Mz1 ペニシリウム (Penicillium) 種、例えば、NN48690のCBM (配列番号21) 、チサノホラ (Thysanophora) 、例えば、NN48711のCBM (配列番号22) 、およびフミコラ (Humicola) 種、例えば、フミコラ・グリセア・ヴァル・テルモデア (Humicola grisea var. thermoidea) 、例えば、SPTREMBL: Q12623のCBM (配列番号23) 。
【0033】
最も好ましいCBMは下記に由来するグルコアミラーゼのCBMを包含する: アスペルギルス (Aspergillus) 種、例えば、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 、例えば、配列番号24、および アテリア (Athelia) 種、例えば、アテリア・ロルフシイ (Athelia rolfsii) 、例えば、配列番号25。また、前述のCBMアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも50%、60%、70%、80%またはさらに少なくとも90%の相同性を有するCBMは本発明において好ましい。
【0034】
それ以上の適当な炭水化物結合性モジュールファミリー20は、URL: http://afmb.cnrs-mrs.fr/-cazy/CAZY/index.htmlにおいて見出される。
いったん基質結合性 (炭水化物結合性) 領域をコードするヌクレオチド配列、例えば、cDNAまたは染色体DNAが同定されると、次いで種々の方法で操作して問題の酵素をコードするDNA配列にそれを融合することができる。次いで、リンカーを使用するか、あるいは使用しないで、炭水化物結合性アミノ酸配列をコードするDNAフラグメント、および問題の酵素をコードするDNAを結合する。次いで、生ずる結合したDNAを種々の方法で操作して発現を達成する。
【0035】
α-澱粉加水分解配列
本発明の関係において使用するタイプのCBM/アミラーゼハイブリッドのための基準として適当なα-アミラーゼ (特に酸安定性α−アミラーゼ) は、真菌由来のものを包含する。
好ましいα-アミラーゼは野生型α-アミラーゼである。より好ましくは、α-アミラーゼは、活性の増加、低いpHおよび/または高いpHにおけるタンパク質安定性の増加、カルシウム消耗に対する安定性の増加、および/または高温における安定性の増加に導くアミノ酸修飾を含んでなる変異型α-アミラーゼである。このようなα-アミラーゼの化学的または遺伝的に修飾された突然変異体は、この関係において包含される。
【0036】
関係するα-アミラーゼは、例えば、アスペルギルス (Aspergillus) 種、特にアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) から得られるα-アミラーゼ、例えば、WO 8901969 (実施例3) にいっそう詳細に記載されており、配列番号8に示すアミノ酸配列を有し、および/または配列番号7に示すDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を有する、酸安定性α−アミラーゼ (SWISSPROT P56271) を包含する。また、配列番号8に示すアミノ酸配列に対して50%より高い、例えば、60%、または70%、80%または90%の相同性を有し、および/または配列番号7に示すDNA配列によりコードされるα-アミラーゼ配列は好ましい。
【0037】
他の好ましい態様において、α-澱粉加水分解配列はアスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) 酸性α-アミラーゼ (FungamylTM) に由来する。より好ましくは、α-澱粉加水分解配列は配列番号30に示すアミノ酸配列および/または配列番号30に示すアミノ酸配列のアミノ酸21〜498として示すに対して50%より高い、例えば、60%、または70%、80%または90%の相同性を有する。
【0038】
ハイブリッド酵素がアスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) 酸性α-アミラーゼ (FungamylTM、配列番号30) に由来するα-澱粉加水分解配列、および/またはアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼまたはアテリア・ロルフシイ (A. rolfsii) AMGに由来するリンカー配列、および/またはアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼに由来するCBM (配列番号5) またはアテリア・ロルフシイ (A. rolfsii) AMGに由来するCBM (配列番号25) を含んでなる態様はいっそう好ましい。特定のこのような態様において、ハイブリッド酵素配列番号36または配列番号40に示すアミノ酸配列を有する。
【0039】
また、ハイブリッド酵素が配列番号8に示す配列を有するアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸性α-アミラーゼ触媒モジュールに由来するα-澱粉加水分解配列、および/またはアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼまたはアテリア・ロルフシイ (A. rolfsii) AMGに由来するリンカー配列を含んでなり、および/またはCBMがアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼ、アテリア・ロルフシイ (A. rolfsii) AMGまたはアスペルギルス・ニガー (A. niger) AMGに由来する態様は好ましい。特に好ましい態様において、ハイブリッド酵素は、配列番号8に示す配列を有するアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸性α-アミラーゼ触媒モジュール、およびアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼリンカーおよびCBM (配列番号6) を含んでなる。
【0040】
好ましくは、ハイブリッド酵素は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24または配列番号25に示すアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも50%、60%、70%、80%またはさらに少なくとも90%の相同性を有するCBD配列を含んでなる。より好ましくは、ハイブリッド酵素は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24または配列番号25に示すアミノ酸配列を有するCBD配列を含んでなる。
【0041】
なお他の好ましい態様において、CBM配列は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24または配列番号25に示すアミノ酸配列と、10個以下の位置、9個以下の位置、8個以下の位置、7個以下の位置、6個以下の位置、5個以下の位置、4個以下の位置、3個以下の位置、2個以下の位置、またはさらになお1個以下の位置だけ異なるアミノ酸配列を有する。最も好ましい態様において、ハイブリッド酵素は、アテリア・ロルフシイ (A. rolfsii) からのAMG、例えば、米国特許第4,727,026号に記載されているアテリア・ロルフシイ (A. rolfsii) AHU 9627からのAMGに由来するCBMを含んでなる。
【0042】
特定のこのような態様において、ハイブリッド酵素は配列番号32、配列番号34または配列番号38に示すアミノ酸配列を有するか、あるいはハイブリッド酵素は前記アミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも50%、60%、70%、80%またはさらに少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列を有する。
なお他の好ましい態様において、ハイブリッド酵素は、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38または配列番号40に示すアミノ酸配列と、10個以下の位置、9個以下の位置、8個以下の位置、7個以下の位置、6個以下の位置、5個以下の位置、4個以下の位置、3個以下の位置、2個以下の位置、またはさらになお1個以下の位置だけ異なるアミノ酸配列を有する。
【0043】
他の好ましい態様において、ハイブリッド酵素は、1または2以上の置換、より好ましくは81、158、161、163、164、175、176、177、253、264、266、466、468、470から成る群から選択される1または2以上の位置に置換を有し、最も好ましくはQ81R、K158D、K158V、S161D、S161N、Q163S、Q163A、D164S、Y175W、E176D、D177N、D253N、N264K、N264E、M266L、G466D、D468S、およびN470Dから成るリストから選択される1または2以上の置換を有する、配列番号40のアミノ酸21〜498 (および/または配列番号30のアミノ酸21〜498) として示す触媒ドメインを含んでなる変異型である。
【0044】
なおより好ましい態様において、ハイブリッド酵素は表6に列挙する変異型の1つである。また、Y175W + E176D、276W + P277Q、K380T + L381W、G62N、G62F、Y95D、D106K + S109D、A140P、K158D + D164S、F171L + E182Q、K200E + V202A、K200E + V202A、K200E + V202A、T227S + K233P、L252D + D255N、N264K + M266L、K283E、 N359K + D360V、N390K + Y391L、G466D + N470D、Y484L + S498S、Y484L + S498GおよびY484L + S498Rから成るリストから選択される1または2以上の置換または組み合わせを有する配列番号40のアミノ酸21〜498 (および/または配列番号30のアミノ酸21〜498) としてに示す触媒ドメインを含んでなる変異型は好ましい。
【0045】
好ましい態様において、ハイブリッド酵素は、K158V、S161N、Q163A、D164S、N264K、M266L、G466D、D468SおよびN470Dを含んでなるリストから選択される1または2以上の置換を含んでなる配列番号40のアミノ酸21〜498 (および/または配列番号30のアミノ酸21〜498) としてに示す触媒モジュールを含んでなる。
好ましい態様において、ハイブリッド酵素は、Q81R、K158V、S161N、Q163A、D164S、Y175W、E176D、D177N、N264K、M266L、G466D、D468S、およびN470Dから成るリストから選択される1または2以上の置換を有する配列番号40のアミノ酸21〜498 (および/または配列番号30のアミノ酸21〜498) としてに示す触媒モジュールを含んでなる。
【0046】
発現ベクター
本発明は、また、ハイブリッド酵素または遺伝的に修飾された野生型酵素をコードするDNA配列、シグナルペプチド配列、および転写および翻訳停止シグナルを含んでなることができる組換え発現ベクターに関する。前述の種々のDNA配列および調節配列を一緒に結合して組換え発現ベクターを生成することができ、このような発現ベクターは、ポリペプチドエンコーディングDNA配列の挿入または置換を可能とする、1または2以上の好都合な制限部位を含むことができる。選択的に、本発明のDNA配列は、DNA配列または前記配列を含んでなるDNA構築物を発現に適当なベクター中に挿入することによって発現させることができる。発現ベクターをつくるとき、コーディング配列が発現に、かつ可能ならば分泌に、適当なコントロール配列に作用可能に連鎖されるように、コーディング配列はベクター中に位置する。
【0047】
組換え発現ベクターは、組換えDNA手順に好都合に付すことができ、かつDNA配列の発現を生ずることができる、任意のベクター (例えば、プラスミドまたはウイルス) であることができる。典型的には、ベクターの選択はベクターと導入すべき宿主細胞とのベクターの適合性に依存するであろう。ベクターは線状または閉じた円のプラスミドであることができる。ベクターは自律的に複製するベクター、すなわち、その複製が染色体に対して独立である、染色体外実在物として存在するベクター、例えば、プラスミド、染色体外因子、ミニ染色体、コスミドまたは人工的染色体であることができる。ベクターは自己複製を保証する任意の手段を含有することができる。選択的に、ベクターは、宿主細胞中に挿入したとき、ゲノム中に組込まれ、それが組込まれた1または2以上の染色体と一緒に複製するものであることができる。ベクター系は単一のベクターまたはプラスミドであるか、あるいは宿主細胞のゲノム中に導入すべき全DNAを一緒に含有する2またはそれ以上のベクターまたはプラスミド、またはトランスポゾンであることができる。
【0048】
マーカー
本発明のベクターは、形質転換された細胞の容易な選択を可能とする、1または2以上の選択可能なマーカーを含有することが好ましい。選択可能なマーカーは、その生成物が殺生物剤またはウイルスの耐性、重金属に対する耐性、栄養要求性株に対するプロトトロフィー、およびその他を提供する遺伝子である。
【0049】
フィラメント状真菌の宿主細胞において使用する選択可能なマーカーの例は、下記を包含する群から選択できるが、これらに限定されない: amdS (アセトアミダーゼ) 、argB (オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ) 、bar (ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ) 、hygB (ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ) 、niaD (硝酸レダクターゼ) 、pyrG (オロチジン-5’-ホスフェートデカルボキシラーゼ) 、sC (硫酸アデニルトランスフェラーゼ) 、trpC (アントラニレートシンターゼ) 、およびグルフォシネート耐性マーカー、ならびに他の種からの同等のマーカー。
【0050】
アスペルギルス・ニヅランス (Aspergillus nidulans) またはアスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) のamdSおよびpyrGマーカー、およびストレプトマイセス・ヒグロスコピカス (Streptomyces hygroscopicus) のbarマーカーは、アスペルギルス (Aspergillus) 細胞において使用するために好ましい。さらに、例えば、WO 91/17243に記載されているように、選択は共形質転換により達成することができ、ここで選択可能なマーカーは別のベクター上に存在する。
【0051】
本発明のベクターは、宿主細胞ゲノムの中へのベクターの安定な組込みまたは細胞のゲノムに対して独立に細胞中でベクターの自律的複製を可能とする、1または2以上の因子を含有することが好ましい。
【0052】
本発明のベクターは、宿主細胞の中に導入するとき、宿主細胞ゲノム中に組込むことができる。組込みのために、ベクターは問題のポリペプチドをコードするDNA配列に頼るか、あるいはまたは相同的組換えまたは非相同的組換えによりゲノム中にベクターを安定に組込む、ベクターの他の因子に頼ることができる。選択的に、ベクターは相同的組換えにより組込みを宿主細胞ゲノム中に向ける、追加のDNA配列を含有することができる。追加のDNA配列は、1または2以上の染色体中の1または2以上の精確な位置において宿主細胞ゲノム中にベクターを組込むことができる。
【0053】
精確な位置における組込みの確度を増加させるために、組込み因子は、相同的に組換えの確率を増大するために対応するターゲット配列と高度に相同性である、十分な数のDNA、例えば、100〜1,500塩基対、好ましくは400〜1,500塩基対、最も好ましくは800〜1,500塩基対を含有することが好ましいであろう。組込み因子は、宿主細胞ゲノム中のターゲット配列と相同性である任意の配列であることができる。さらに、組込み因子は非エンコーディングまたはコーディングDNA配列であることができる。他方において、ベクターは非相同的組換えにより宿主細胞ゲノム中に組込まれることができる。これらをDNA配列は、宿主細胞ゲノム中のターゲット配列と相同性である任意の配列であり、さらに、非エンコーディングまたはコーディング配列であることができる。
【0054】
自律的複製のために、ベクターは問題の宿主細胞中でベクターを複製させることができる複製起点をさらに含んでなることができる。
WO 00/24883に開示されているAMA1プラスミドベクターを複製するエピソームを使用することができる。
【0055】
問題のポリペプチドをコードするDNA配列の2以上のコピーを宿主細胞中に挿入して、DNA配列の発現を増強することができる。この分野においてよく知られている方法に従い、配列の少なくとも1つの追加のコピーを宿主細胞ゲノム中に組込み、形質転換体について選択することによって、DNA配列を安定に増幅することができる。
前述の因子を結合して本発明の組換え発現ベクターを構築する手順はこの分野においてよく知られている (例えば、下記の文献を参照のこと: Sambrook 他、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー) 。
【0056】
宿主細胞
DNA構築物を含んでなるか、あるいはハイブリッド酵素または遺伝的に修飾された野生型酵素をコードするDNA配列を含んでなる、本発明の宿主細胞は、ハイブリッド酵素または遺伝的に修飾された野生型酵素の組換え産生において宿主細胞として好都合に使用される。この細胞を発現ベクターで形質転換することができる。選択的に、宿主染色体中にDNA構築物 (1または2以上のコピー) を組込むことによって、ハイブリッド酵素または遺伝的に修飾された野生型酵素をコードする本発明のDNA構築物で細胞を形質転換することができる。宿主染色体中へのDNA構築物の組込みは、慣用法、例えば、相同的または異種的組換えにより実施することができる。
【0057】
宿主細胞は、任意の適当な原核生物または真核生物の細胞、例えば、フィラメント状真菌、植物または哺乳動物の細胞であることができる。
好ましい態様において、宿主細胞は下記のグループにより代表されるフィラメント状真菌の細胞である: 子嚢菌門 (Ascomycota) 、例えば、ナイセリア属 (Neisseria) 、エウペニシリウム (Eupenicillium) (= ペニシリウム (Penicillium)) 、エメリセラ (Emericella) (= アスペルギルス (Aspergillus)) 、コウジカビ (Eurotium) (=アスペルギルス (Aspergillus)) 。
【0058】
より好ましい態様において、フィラメント状真菌は、亜門の真菌門 (Eumycota) および卵菌門 (Oomycota) のフィラメント状形態を包含する (下記により規定された: Hawksworth 他、Ainsworth and Bisby’s Dictionary of The Fungi、第8版、CAB International、University Press、英国ケンブリッジ) 。フィラメント状真菌は、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、および他の複合多糖類から構成された栄養菌糸体により特徴づけられる。栄養成長は菌糸の伸長により、そして炭素異化作用は無条件的に好気的である。
【0059】
さらにより好ましい態様において、フィラメント状真菌の宿主細胞は下記の種に属する株から成る群から選択される細胞であるが、これらに限定されない: アスペルギルス (Aspergillus) 種、好ましくはアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 、アスペルギルス・アワモリ (Aspergillus awamori) 、アスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) 、またはバシラス (Bacillus) 株、またはフザリウム (Fusarium) 株、例えば、フザリウム・オキシスポラム (Fusarium oxysporum) 、フザリウム・グラミネアラム (Fusarium graminearum) (完全な状態における名称Gibberella zeae、以前においてSphaeria zeae、同義Gibberella roseumおよびGibberella roseum f. sp. cerealis) 、またはフザリウム・スルフリウム (Fusarium sulphureum) (完全な状態における名称Gibberella puricaris、同義Fusarium trichothecioides、Fusarium bactridioides、Fusarium sambucium、Fusarium roseum、およびFusarium roseum var. graminearum) 、フザリウム・セレアリス (Fusarium cerealis) (同義Fusarium crookwellense) 、またはフザリウム・ベネナツム (Fusarium venenatum) の株。
【0060】
最も好ましい態様において、フィラメント状真菌宿主細胞はアスペルギルス (Aspergillus) の種、好ましくはアスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) 、またはアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) に属する株の細胞である。
【0061】
宿主細胞は、野生型フィラメント状真菌宿主細胞または変異型、突然変異体または遺伝的に修飾されたフィラメント状真菌宿主細胞であることができる。本発明の他の好ましい態様において、宿主細胞はプロテアーゼ欠乏またはプロテアーゼマイナス株である。また、特別に、グルコアミラーゼ、酸安定性α−アミラーゼ、α-1,6-トランスグルコシダーゼ、およびプロテアーゼ活性の発現を崩壊または減少させるように遺伝的に修飾されたアスペルギルス (Aspergillus) 株、例えば、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 株が考えられる。
【0062】
フィラメント状真菌宿主細胞の形質転換
フィラメント状真菌宿主細胞は、この分野において知られている方法におけるプロトプラストの形成、プロトプラストの形質転換、および細胞壁の再生を包含するプロセスにより形質転換することができる。アスペルギルス (Aspergillus) 宿主細胞に適当な形質転換手順は下記の文献に開示されている: EP 238 023、EP 184 438、およびYelton 他、1984、Proceedings of the National Academy of Sciences USA 81: 1470-1474。フザリウム (Fusarium) 種に適当な形質転換法は下記の文献に開示されている: Malardier 他、1989、Gene 78: 147-156または米国特許第6,060,305号。
【0063】
親α-アミラーゼをコードするDNA配列の単離およびクローニング
問題のポリペプチドをコードするDNA配列を単離またはクローニングするために使用する技術はこの分野において知られており、そしてゲノムDNAからの単離、cDNAからの調製、またはそれらの組合わせを包含する。このようなゲノムDNAからの本発明のDNA配列のクローニングは、例えば、広く知られているポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) または構造的特徴を共有するクローニングされたDNAフラグメントを検出する発現ライブラリーの抗体スクリーニングを使用することによって、実施することができる。例えば、下記の文献を参照のこと:Innis 他、PCR: A Guide to Methods and Application、Academic Press、New York。他のDNA増幅手法、例えば、リガーゼ連鎖反応 (LCR) 、結合活性化転写 (LAT) およびDNA配列配列決定に基づく増幅 (NASBA) を使用することができる。
【0064】
親α-アミラーゼをコードするDNA配列は、この分野においてよく知られている種々の方法を使用して、問題のα-アミラーゼを産生する細胞または微生物から単離することができる。まず、研究すべきα-アミラーゼを産生する生物からの染色体DNAまたはメッセンジャーDNAを使用して、ゲノムDNAおよび/またはcDNAライブラリーを構成すべきである。次いで、α-アミラーゼのアミノ酸配列が既知である場合、標識化オリゴヌクレオチドプローブを合成し、問題の生物から調製したゲノムライブラリーからα-アミラーゼエンコーディングクローンを同定するために使用することができる。選択的に、ハイブリダイゼーションおよび非常に低い〜非常に高いストリンジェンシイの洗浄を使用する、α-アミラーゼエンコーディングクローンの同定に、他の既知のα-アミラーゼ遺伝子に対して相同性である配列を含有する標識化オリゴヌクレオチドプローブをプローブとして使用することができる。
【0065】
α-アミラーゼエンコーディングクローンを同定するなお他の方法は、発現ベクター、例えば、プラスミド中にゲノムDNAフラグメントを挿入し、生ずるゲノムDNAでα-アミラーゼ陰性細菌を形質転換し、次いでα-アミラーゼの基質 (すなわち、マルトース) を含有する寒天上に形質転換された細菌をプレートし、これによりα-アミラーゼを発現するクローンを同定する方法を包含する。
【0066】
選択的に、確立された方法、例えば、下記の文献に記載されているホスホロアミダイト法により、酵素をコードするDNA配列を合成することができる: S. L. BeaucageおよびM. H. Caruthers (1981) 、Tetrahedron Letters 22、p. 1859-1869、またはMatthes 他 (1984) ENBO J. 3、p. 801-805。ホスホロアミダイト法において、オリゴヌクレオチドを、例えば、自動化DNA合成装置により合成し、精製し、アニールし、結合し、適当なベクター中でクローニングする。
【0067】
最後に、DNA配列は、標準的技術に従い合成、ゲノムまたはcDNA由来のフラグメント (適当ならば、全DNA配列の種々の部分に対応するフラグメント) を結合することによって製造された、混合ゲノムおよび合成由来、混合合成およびcDNA由来または混合ゲノムおよびcDNA由来であることができる。また、DNA配列は、例えば、下記の文献に記載されているように、特別のプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)により製造することができる: 米国特許第4,683,202号またはR. K. Saiki 他 (1988) 、Science 239、1988、pp. 487-491。
【0068】
単離されたDNA配列
本発明は、なかでも、α-アミラーゼ活性を有する触媒モジュールのアミノ酸配列と、炭水化物結合性モジュールのアミノ酸配列とを含んでなるハイブリッド酵素または遺伝的に修飾された野生型酵素をコードするDNA配列を含んでなる単離されたDNA配列に関し、ここで触媒モジュールは真菌由来である。
【0069】
用語 「単離されたDNA配列」 は、本明細書において使用するとき、他のDNA配列を本質的に含まない、例えば、アガロース電気泳動により決定して、少なくとも約20%の純度、好ましくは少なくとも約40%の純度、より好ましくは少なくとも約60%の純度、なおより好ましくは少なくとも約80%の純度、最も好ましくは少なくとも約90%の純度のDNA配列を意味する。
【0070】
例えば、単離されたDNA配列は、遺伝子操作において使用される標準的クローニング手法を使用して、DNA配列をその天然の位置からそれが産生される異なる部位に再配置することによって、得ることができる。クリーニング手法は、問題のポリペプチドをコードするDNA配列を含んでなる必要なDNAフラグメントの切除および単離、ベクター分子の中へのフラグメントの挿入、および宿主細胞の中への組換えベクターの組込みを包含し、宿主細胞においてDNA配列の複数のコピーまたはクローンが複製される。単離されたDNA配列を種々の方法で操作して、問題のポリペプチドを発現させることができる。ベクターの中への挿入前のDNA配列の操作は、発現ベクターに依存して望ましいか、あるいは必要であることがある。組換えDNA法を使用してDNA配列を修飾する技術は、この分野においてよく知られている。
【0071】
DNA構築物
本発明は、なかでも、α-アミラーゼ活性を有する触媒モジュールのアミノ酸配列と、炭水化物結合性モジュールのアミノ酸配列とを含んでなるハイブリッド酵素または遺伝的に修飾された野生型酵素をコードするDNA配列を含んでなるDNA構築物に関し、ここで触媒モジュールは真菌由来である。 「DNA構築物」 は、天然に存在する遺伝子から単離されるか、あるいはそうでなければ天然に存在しないような方法で組合わせかつ並置された、DNAのセグメントを含有するように修飾された、一本鎖または二本鎖のDNA分子として定義される。用語 「DNA構築物」 は、DNA構築物が本発明のコーディング配列の発現に要求されるすべてのコントロール配列を含有するとき、用語 「発現カセット」 と同義である。
【0072】
位置指定突然変異誘発
いったん親α-アミラーゼをコードするDNA配列が単離され、かつ必要な突然変異部位が同定されると、合成オリゴヌクレオチドを使用して突然変異を導入することができる。これらのオリゴヌクレオチドは必要な突然変異部位をフランキングするヌクレオチド配列を含有する。特別の方法において、α-アミラーゼ遺伝子を担持するベクター中に、DNAの1本鎖ギャップ、すなわち、α-アミラーゼエンコーディング配列をつくる。次いで、必要な突然変異を支持する合成ヌクレオチドを1本鎖DNAの相同的部分にアニールする。
【0073】
次いで、残りのギャップをDNAポリメラーゼI (クレノウフラグメント) で充填し、T4リガーゼを使用して、この構築物を結合する。この方法の特別の例は下記の文献に記載されている: Morinaga 他 (1984) Biotechnology 2、p. 646-639。米国特許第4,760,025号には、カセットの小さい修飾を実行することによって、複数の突然変異をコードするオリゴヌクレオチドを導入することが開示されている。しかしながら、Morinagaの方法よれば、種々の長さのオリゴヌクレオチドを導入することができるので、より大きい種類の突然変異を1回で導入ことができる。
【0074】
α-アミラーゼエンコーディングDNA配列中に突然変異を導入する他の方法は下記の文献に記載されている: NelsonおよびLong (1989) 、Analytical Biochemistry 180、p. 147-151。この方法は、PCR反応におけるプライマーの1つとして化学的に合成されたDNA鎖を使用することによって、導入された必要な突然変異を含有するPCRフラグメントの3工程の発生を含む。PCR発生したフラグメントから、制限エンドヌクレアーゼを使用する切断により、突然変異を担持するDNAフラグメントを単離し、発現プラスミド中に再挿入することができる。
【0075】
局在化ランダム突然変異誘発
ランダム突然変異誘発は、問題の親α-アミラーゼの部分に好都合に局在化することができる。これは、例えば、酵素のある領域が酵素の所定の性質について特定の重要性を有することが同定されたとき、そして、修飾された酵素が改良された性質を有する変異型を生ずることが期待されるとき、好都合であることがある。このような領域は、親酵素の三次構造が解明されかつ酵素の機能に関係づけられたとき、通常同定することができる。
【0076】
局在化または領域特異的ランダム突然変異誘発は、前述したPCR発生突然変異誘発技術またはこの分野において知られている他の適当な技術を使用することによって、好都合に実施される。選択的に、DNA配列の修飾すべき部分をコードするDNA配列は、例えば、適当にベクター中に挿入することによって、単離し、引き続いて前記部分を前述の突然変異誘発法により突然変異誘発させることができる。
【0077】
ハイブリッドまたは野生型酵素の変異型
炭水化物結合性モジュール (「CBM」) と、α-アミラーゼ触媒モジュールとを含んでなる野生型またはハイブリッド酵素の澱粉分解プロセスにおける性能は、タンパク質操作、例えば、位置指定突然変異誘発、局在化ランダム突然変異誘発、親野生型酵素の新しい変異型の合成、または他の適当にタンパク質操作技術により改良することができる。
【0078】
本発明のために考えられる親α-アミラーゼは、CBMを有する野生型真菌α-アミラーゼ、特にアスペルギルス (Aspergillus) 種、例えば、アスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) 酸性α-アミラーゼおよびそれらの変異型または突然変異体、相同的α-アミラーゼ、および配列番号41に示すアスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) からのα-アミラーゼに構造的および/または機能的に類似するそれ以上の野生型または人工的α-アミラーゼを包含する。
【0079】
アスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) からのα-アミラーゼは炭水化物結合性モジュール (「CBM」) を含んでなる野生型α-アミラーゼの1例であるが、アスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) 酸性α-アミラーゼ触媒モジュールは、例えば、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) からのα-アミラーゼの触媒活性と比較して、制限された比活性を有する。さらに、アスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) α-アミラーゼのCBMは慣用の発酵プロセス間に触媒モジュールから容易に切断され、これにより工業的応用に対する酵素の適当性を減少させる。こうして、アスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) α-アミラーゼは、生澱粉加水分解のための工業的酵素として、いくつかの重大な欠点を有する。タンパク質操作技術を適用して、触媒活性および/または酵素安定性が改良された、親酸性α-アミラーゼのいっそう適当な変異型をつくることができる。
【0080】
好ましい変異型は、配列番号41として示すアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼの変異型または配列番号41に対して少なくとも60%の相同性、少なくとも70%の相同性、少なくとも80%の相同性、またはさらに少なくとも90%の相同性を有するα-アミラーゼの変異型であり、前記変異型は13、15、18、31、32、33、34、35、36、61、63、64、68、69、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、89、117、118、119、120、121、122、123、124、125、152、153、154、155、156、157、158、161、162、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、204、205、206、207、208、209、210、211、216、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、242、245、250、252、253、255、256、257、259、260、275、292、295、296、297、298、299、304、328、339、344、348、378、383、386、387、405、448および480の1または2以上の位置、より好ましくは31、33、36、74、75、77、84、120、153、154、155、156、157、158、162、166、169、170、199、232、233、235、238、239、245、256、257、331、336、339、340、342、348、378、383、386、387、405、448および480の1または2以上の位置に変更を含んでなり、ここで
【0081】
(a) 前記1または2以上の変更は、独立して、(i) 前記位置を占有するアミノ酸から下流のアミノ酸の挿入であり、(ii) 前記位置を占有するアミノ酸の欠失であり、または (iii) 前記位置を占有するアミノ酸の異なるアミノ酸による置換であり、
(b) 前記変異型は親真菌α-アミラーゼに関して増加したα-アミラーゼ活性を有し、および/または改良された酵素安定性を有し、そして
(c) 各位置は配列番号43に示すTAKAアミラーゼおよび/または配列番号41に示すアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼのアミノ酸配列の位置に対応する。
【0082】
より好ましい変異型は、配列番号41として示すアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼの変異型または配列番号41に対して少なくとも60%の相同性、少なくとも70%の相同性、少なくとも80%の相同性、またはさらに少なくとも90%の相同性を有するα-アミラーゼの変異型であり、前記変異型は13、15、18、31、32、33、34、35、36、61、63、64、68、69、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、89、117、118、119、120、121、122、123、124、125、152、153、154、155、156、157、158、161、162、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、204、205、206、207、208、209、210、211、216、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、242、245、250、252、253、255、256、257、259、260、275、292、295、296、297、298、299、304、328、339、344、348、378、383、386、387、405、448および480の1または2以上の位置、より好ましくは31、33、36、74、75、77、84、120、153、154、155、156、157、158、162、166、169、170、199、232、233、235、238、239、245、256、257、331、336、339、340、342、348、378、383、386、387、405、448および480の1または2以上の位置に変更を含んでなり、ここで
【0083】
(a) 前記1または2以上の変更は、独立して、(i) 前記位置を占有するアミノ酸から下流のアミノ酸の挿入であり、(ii) 前記位置を占有するアミノ酸の欠失であり、または (iii) 前記位置を占有するアミノ酸の異なるアミノ酸による置換であり、
(b) 前記変異型は親真菌α-アミラーゼに関して増加したα-アミラーゼ活性を有し、および/または改良された酵素安定性を有し、そして
(c) 各位置は配列番号43に示すTAKAアミラーゼおよび/または配列番号41に示すアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼのアミノ酸配列の位置に対応する。
【0084】
なおいっそう好まくは、変異型は配列番号41として示すアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼの変異型または配列番号41に対して少なくとも60%の相同性、少なくとも70%の相同性、少なくとも80%の相同性、またはさらに少なくとも90%の相同性を有するα-アミラーゼの変異型であり、前記変異型は下記の位置の1または2以上に変更を含んでなる: 31、33、36、74、75、77、84、120、153、154、155、156、157、158、162、166、169、170、199、232、233、235、238、239、245、256、257、331、336、339、340、342、348、378、383、386、387、405、448および480。
【0085】
下記のアミノ酸置換の1または2以上を含んでなる配列番号41として示すアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼの変異型または配列番号41に対して少なくとも60%の相同性、少なくとも70%の相同性、少なくとも80%の相同性、またはさらに少なくとも90%の相同性を有するα-アミラーゼの変異型はなおいっそう好ましい: G33A、I36K、S74A、D75Y、E77D、P120A、I153D、D154N、W155Y、D156E、N157D、L158Q、Q162E、E166L、T169N、I170T、E199K、E199L、D232L、N233D、N235D、L238Y、D239T、W256Y、Q257P、E331Q、S336A、D339K、D339N、V340D、およびY342A。そして、最も好ましい変異型は下記のアミノ酸置換の1または2以上を含んでなる: S74A、E166L、E199L、D339K、およびD156E; 例えば、変異型は多重アミノ酸置換S74A/E166L/E199Lを含んでなり、ここで変異型は配列番号41に示す親α-アミラーゼに関して改良された活性および/または酵素安定性を有する。
【0086】
また、変異型は、31、74、 89 、209、245、348、378、383、386、387、405、448および480から成る群から選択される1または2以上の位置に変更を含んでなる、配列番号41として示すアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼの変異型または配列番号41に対して少なくとも60%の相同性、少なくとも70%の相同性、少なくとも80%の相同性、またはさらに少なくとも90%の相同性を有するα-アミラーゼの変異型であることができ、ここで (a) 前記1または2以上の変更は、独立して、(i) 前記位置を占有するアミノ酸から下流のアミノ酸の挿入であり、(ii) 前記位置を占有するアミノ酸の欠失であり、または (iii) 前記位置を占有するアミノ酸の異なるアミノ酸による置換であり、(b) 前記変異型は親真菌α-アミラーゼに関して増加したα-アミラーゼ活性を有し、および/または改良された酵素安定性を有する。
【0087】
好ましくは、変異型は、下記の置換の1または2以上を含んでなる、配列番号41として示すアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼの変異型または配列番号41に対して少なくとも60%の相同性、少なくとも70%の相同性、少なくとも80%の相同性、またはさらに少なくとも90%の相同性を有するα-アミラーゼの変異型であり、ここで前記変異型は配列番号41として示す親真菌α-アミラーゼに関して増加したα-アミラーゼ活性を有し、および/または改良された酵素安定性を有する: N31D、S74A、Y89D、E209L、Y245V、D348K、D378A、K383A、P386A、I387F、I405V、N448S、およびN480R。
【0088】
配列番号41として示しかつ下記の置換を含んでなるアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼの変異型は最も好ましい: N31D、S74A、Y89D、E209L、Y245V、D348K、D378A、K383A、P386A、I387F、I405V、N448S、およびN480R。
変異型は慣用のタンパク質操作技術を使用して製造することができる。
【0089】
植物における酵素の発現
問題の酵素、例えば、ハイブリッド酵素または野生型酵素の変異型または本発明のハイブリッドをコードするDNA配列は、後述するように形質転換し、トランスジェニック植物において発現させることができる。
【0090】
トランスジェニック植物は双子葉植物または単子葉植物、略して双子葉または単子葉であることができる。単子葉植物の例は、イネ科植物、例えば、ナカハグサ (イチゴツナギ、イネ科イチゴツナギ科) 、飼料の草、例えば、フェスツカ (Festuca) 、ロリウム (Lolium) 、温帯のイネ科植物、例えば、アグロスチス (Agrostis) 、および穀物、例えば、コムギ、カラスムギ、ライムギ、オオムギ、イネ、モロコシおよびトウモロコシ (コーン) である。
【0091】
双子葉植物の例は、タバコ、マメ科植物、例えば、ハウチワマメ、ジャガイモ、テンサイ、エンドウマメ、ソラマメ・インゲン・ササゲの類およびダイズ、およびアブラナ科植物 (アブラナ科 (Brassicaceae)) 、例えば、カリフラワー、セイヨウアブラナおよび密接に関係するモデル生物アラビドプシス・タリアナ (Arabidopsis thaliana) である。
【0092】
植物部分の例は、幹、カルス、葉、根、果実、種子、および塊茎ならびにこれらの部分を含んでなる個々の組織、例えば、表皮、葉肉、柔組織、脈管組織、分裂組織である。本発明の関係において、また、特別の植物細胞内区画、例えば、葉緑体、アポプラスト、ミトコンドリア、液胞、ペルオキシソームおよび細胞質は植物部分であると考えられる。さらに、どの組織から由来しても、植物細胞は植物部分であると考えられる。同様に、本発明の利用を促進するために単離された植物部分、例えば、特定の組織および細胞は、また、植物部分、例えば、胚、内乳、アリューロンおよび種子皮膜であると考えられる。
また、このような植物、植物部分および植物細胞の子孫は本発明の範囲内に入る。
【0093】
この分野において知られている方法に従い、問題の酵素を発現するトランスジェニック植物または植物細胞を構築することができる。簡単に述べると、植物または植物部分は、問題の酵素をコードする1または2以上の発現構築物を植物宿主ゲノム中に組込み、生ずる修飾された植物または植物細胞をトランスジェニック植物または植物細胞に増殖することによって構築される。
【0094】
好都合には、発現構築物は、選択した植物または植物部分中の遺伝子の発現に要求される適当な調節配列と操作的にアソシエートした問題の酵素をコードする遺伝子を含んでなるDNA構築物である。さらに、発現構築物は発現構築物が組込まれている宿主細胞を同定するために有効な選択可能なマーカーと、問題の植物中に構築物を導入するために必要なDNA配列とを含んでなる (後者は使用すべきDNA導入法に依存する) 。
【0095】
調節配列、例えば、プロモーターおよびターミネーター配列および必要に応じてシグナルまたはトランシット配列の選択は、例えば、酵素をいつ、どこでかつどのようにして発現させるかを基準にして決定される。例えば、本発明の酵素をコードする遺伝子の発現は構成的または誘導可能であるか、あるいは発生、段階または組織特異的であることができ、そして遺伝子産物を特定の細胞内区画、組織または植物部分、例えば、種子または葉にターゲッティングすることができる。ターゲット配列は、例えば、下記の文献に記載されている:Tague 他、Plant Phys. 86、506、1988。
【0096】
構成的発現のために、35S-CaMV、トウモロコシユビクイチンおよびイネアクチン1プロモーターを使用することができる (Franck 他、1980、Cell 21: 285-294、Christensen AH、Sharrock RAおよびQall 1992、Maze polyubiquitin genes: thermal perturbation of expression and transcript splicing, and promoter activity following transfer to protoplasts by electroporation. Plant Mol. Biol. 18、675-689; Zhang W、McElroy D. およびWu R 1991、Analysis of rice Act1 5’ region activity in transgenic rice plants. Plant Cell 3、1155-1165) 。
【0097】
器官特異的プロモーターは、例えば、下記のプロモーターであることができる: 貯蔵シンク組織、例えば、種子、ジャガイモ塊茎、および果実からのプロモーター (EdwardsおよびCoruzzi、1990、Annu. Rev. Genet. 24: 275-303) 、または代謝シンク組織、例えば、分裂組織からのプロモーター (Ito 他、1994、Plant Mol. Biol. 24: 863-878) 、種子特異的プロモーター、例えば、イネからのグルテリン、プロラミン、グロブリンまたはアルブミンプロモーター (Wu 他、Plant and Cell Physiology Vol. 39、No. 8 pp. 885-889 (1998)) 、レグミンB4からのソラマメ・ナンテンハギ (Vicia faba) プロモーターおよびソラマメ・ナンテンハギ (Vicia faba) からの未知の種子タンパク質遺伝子 (Conrad U. 他、Journal of Plant Physiology Vol. 152、No. 6 pp. 708-711 (1998)) 、種子油体タンパク質からのプロモーター (Chen 他、Plant and Cell Physiology Vol. 39、No. 9 pp. 935-941 (1998)) 、ブラシカ・ナプス (Brassica napus) からの貯蔵タンパク質napAプロモーター、または分野において知られている、例えば、WO 91/14772に記載されている、他の種子特異的プロモーター。
【0098】
さらに、プロモーターは葉特異的プロモーター、例えば、下記のプロモーターであることができる: イネまたはトマトからのrbcsプロモーター (Kyozuka 他、Plant Physiol. Vol. 102、No. 3 pp. 991-1000 (1993) 、クロレラウイルスのアデニンメチルトランスフェラーゼ遺伝子のプロモーター (Mitra A. およびHiggins DW、Plant Molecular Biology Vol. 26、No. 1 pp. 85-93 (1994)) 、またはイネからのaldP遺伝子のプロモーター (Kagaya 他、Molecular and General Genetics Vol. 240、No. 6 pp. 668-674 (1995) 、または傷害誘導可能なプロモーター、例えば、ジャガイモpin2プロモーター (Xu 他、Plant Molecular Biology Vol. 22、No. 4 pp. 573-588 (1993)) 。プロモーターは、非生命的処理、例えば、温度、乾燥または塩分変更により誘導可能であるか、あるいは外因的に適用された、プロモーター活性化物質、例えば、エタノール、エストロゲン、植物ホルモン、例えば、エチレン、アブシジン酸およびジベレリン酸および重金属により誘導される。
【0099】
プロモーターエンハンサー因子を使用して、植物における酵素の発現をより高くすることができる。例えば、プロモーターエンハンサー因子は、プロモーターと酵素をコードするヌクレオチド配列との間のイントロンであることができる。例えば、Xu 他 (前掲引用書中) は、発現を増強するためにイネアクチン1の第1イントロンを使用することを開示している。
選択可能なマーカー遺伝子および任意の他の発現構築物部分は、この分野において入手可能なものから選択することができる。
【0100】
この分野において知られている慣用技術、例えば、下記の技術に従い、DNA構築物を植物ゲノム中に組込む: アグロバクテリウム (Agrobacterium) 仲介形質転換、ウイルス仲介形質転換、マイクロインジェクション、粒子衝撃、生物分解形質転換、およびエレクトロポレーション (Gasser 他、Science 244、1293; Potrykus、Bio/Tech. 8、535、1990; Shimamoto 他、Nature 338、274、1989) 。
【0101】
現在、アグロバクテリウム・ツメファシエンス (Agrobacterium tumefaciens) 仲介遺伝子トランスファーはトランスジェニック双子葉植物を発生させるために選択される方法であり (概観については、下記の文献を参照のこと: HooykasおよびSchilperoort、1992、Plant Mol. Biol. 19: 15-38) 、また、単子葉植物の形質転換に使用できるが、他の形質転換法がこれらの植物にしばしば使用されている。現在、アグロバクテリウム (Agrobacterium) のアプローチを補充する単子葉植物を発生させるために選択される方法は、胚カルスまたは発育する胚の粒子衝撃法 (形質転換するDNAで被覆した微視的金またはタングステン粒子) である (Christou、1992、Plant J. 2: 275-281; Shimamoto、1994、Cur. Opin. Biotechnol. 5: 158-162; Vasil 他、1992、Bio/Technology 10: 667-674) 。単子葉植物を形質転換する別の方法は、下記の文献に記載されているようなプロトプラストの形質転換にに基づく: Omirulleh S. 他、Plant Molecular Biology Vol. 21、No. 3 pp. 415-428 (1993) 。
【0102】
形質転換後、この分野においてよく知られている方法に従い、発現構築物を組込んで有する形質転換体を選択し、完全植物に再生する。しばしば、再生間または再生後に、例えば、2つの別々のT-DNA構築物を使用する共形質転換により、または特別のリコンビナーゼを使用する選択遺伝子の部位特異的切除により、選択遺伝子を選択的に排除するように、形質転換手順は設計される。
【0103】
澱粉処理
本発明の第1面のハイブリッド酵素または本発明の第2面の変異型は、第8面において、糊化澱粉基質または粒状澱粉基質を水性媒質中においてハイブリッド酵素で処理する、澱粉の液化法において使用できる。好ましくは、この方法は、糊化澱粉基質または粒状澱粉基質のスラリーの加水分解を含み、特に前記粒状澱粉の初期糊化温度以下の温度において粒状澱粉を可溶性澱粉に加水分解することを含む。
【0104】
好ましい態様において、澱粉スラリーを、第1面のハイブリッド酵素または本発明の第2面の変異型と接触させることに加えて、下記のリストから成る群から選択される酵素と接触させる: 真菌α-アミラーゼ (EC 3.2.1.1) 、β-アミラーゼ (EC 3.2.1.2) 、およびグルコアミラーゼ (EC 3.2.1.3) 。ある態様において、ターマミル様α-アミラーゼまたは脱分枝酵素、例えば、イソアミラーゼ (EC 3.2.1.68) またはプルラナーゼ (EC 3.2.1.41) を添加する。本発明の関係において、ターマミル様α-アミラーゼはWO 99/19467、第3ページ第18行〜第6ページ第27行に記載されているα-アミラーゼである。
【0105】
本発明の第7面の方法に付すべき澱粉スラリーは、20〜55%の乾燥固形分の粒状澱粉、好ましくは25〜40%の乾燥固形分の粒状澱粉、より好ましくは30〜35%の乾燥固形分の粒状澱粉を有することができる。
本発明の第7面の方法に付した後、粒状澱粉の乾燥固形分の少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%は可溶性澱粉加水分解物に転化される。
【0106】
本発明によれば、第7面の方法は初期糊化温度以下の温度において実施される。好ましくは、この方法を実施する温度は、少なくとも30℃、少なくとも31℃、少なくとも32℃、少なくとも33℃、少なくとも34℃、少なくとも35℃、少なくとも36℃、少なくとも37℃、少なくとも38℃、少なくとも39℃、少なくとも40℃、少なくとも41℃、少なくとも42℃、少なくとも43℃、少なくとも44℃、少なくとも45℃、少なくとも46℃、少なくとも47℃、少なくとも48℃、少なくとも49℃、少なくとも50℃、少なくとも51℃、少なくとも52℃、少なくとも53℃、少なくとも54℃、少なくとも55℃、少なくとも56℃、少なくとも57℃、少なくとも58℃、少なくとも59℃、少なくとも60℃である。
第7面の方法を実施するpHは3.0〜7.0、好ましくは3.5〜6.0、より好ましくは4.0〜5.0の範囲である。
【0107】
本発明の方法において処理すべき粒状澱粉は、特に塊茎、根、茎、莢、穀物または全穀粒から得ることができる。さらに詳しくは、粒状澱粉はトウモロコシ、穂軸、コムギ、オオムギ、ライムギ、マイロ、サゴ、カッサバ、タピオカ、モロコシ、イネ、エンドウ、ソラマメ・インゲン・ササゲの類、バナナまたはジャガイモから得ることができる。トウモロコシおよびオオムギの蝋質および非蝋質の両方のタイプが特別に考えられる。処理すべき粒状澱粉は、高度に精製された澱粉品質、好ましくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または少なくとも99.5%の純度であることができるか、あるいは非澱粉画分、例えば、胚芽残留物および繊維を含む微粉砕全穀粒を含んでなる材料を含有するいっそう粗製の澱粉であることができる。
【0108】
原料、例えば、全穀粒を微粉砕して構造を開き、それ以上の処理を可能とする。2種類の微粉砕プロセスは本発明において好ましい: 乾式微粉砕および湿式微粉砕。乾式微粉砕において、全仁を微粉砕し、使用する。湿式微粉砕において、胚芽と粉末 (澱粉粒体およびタンパク質) は良好に分離され、澱粉加水分解物をシロップの製造に使用する位置に適用され、ここでわずかの例外が存在する。乾式微粉砕および湿式微粉砕の両方は澱粉加工の分野においてよく知られており、そして本発明の方法のために等しく考えられる。また、トウモロコシ粗粒、好ましくはトウモロコシ粗粒の微粉砕物を適用することができる。
【0109】
本発明の第7面の方法の態様において、処理した澱粉を酵母と接触させることを含んでなる燃料用または飲用エタノールを製造する方法において、ハイブリッド酵素を使用する。好ましくは、この方法は発酵を粒状澱粉スラリーの加水分解と同時にまたは別々に/順次に実施することを含んでなる。発酵を加水分解と同時に実施するとき、温度は好ましくは30℃〜35℃、より好ましくは31℃〜34℃である。
【0110】
他の態様において、粒状澱粉スラリーはCBMを含んでなるが、澱粉加水分解モジュールを含まないポリペプチドと接触させる、すなわち、ルースCBMの適用である。ルースCBMは、澱粉結合性モジュール、セルロース結合性モジュール、キチン結合性モジュール、キシラン結合性モジュール、マンナン結合性モジュール、および他の結合性モジュールであることができる。この関係において好ましいCBMは、微生物CBM、特に細菌CBMまたは真菌CBMである。
【0111】
配列番号1、配列番号2、および配列番号3としてデンマーク国出願第PA 2003 00949号に開示されている澱粉結合性モジュールまたは本発明の開示において配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23として示されている澱粉結合性モジュールは特に好ましい。最も好ましいCBMは、本発明の開示において配列番号24および配列番号25 として開示されているCBMを包含する。また、前述のCBMアミノ酸配列に対する少なくとも50%、60%、70%、80%またはさらに少なくとも90%の相同性を有するCBMの適用は本発明において好ましい。これらのルースCBMは粒状澱粉スラリーに有効量で適用することができる。
【0112】
また、グルコースを発酵させて、他の発酵生成物、例えば、クエン酸、イタコン酸、乳酸、グルコン酸; ケトン; アミノ酸、例えば、グルタミン酸 (モノグルタミン酸ナトリウム) 、また、合成的に製造することが困難である、いっそう複雑な化合物、例えば、抗生物質、例えば、ペニシリン、テトラサイクリン; 酵素; ビタミン、例えば、リボフラビン、B12、β-カロテン; ホルモンを生成することができる。
【0113】
練り粉に基づく生成物
ハイブリッド酵素、特にアスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) に由来する澱粉分解モジュール、例えば、配列番号30に示すアミノ酸配列を含んでなるハイブリッド酵素を練り粉に基づく食用生成物の製造に使用することができる。練り粉に基づく食用生成物の製造に使用されるハイブリッド酵素は、配列番号30として示すおよび/または配列番号30のアミノ酸21〜498として示すハイブリッド酵素またはその変異型、例えば、Q81R、K158D、K158V、S161D、S161N、Q163S、Q163A、D164S、Y175W、E176D、D177N、N264K、N264E、M266L、G466D、D468S、およびN470Dから成るリストから選択される1または2以上の置換を含んでなる変異型である。
【0114】
練り粉に基づく食用生成物の製造に使用されるハイブリッド酵素は、特に本明細書中の配列番号30に記載する配列に対して少なくとも50%の相同性、好ましくは少なくとも60%、70%、80%、85%または少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、97%、98%または少なくとも99%、例えば、100%の相同性を有するアミノ酸配列を含んでなるハイブリッド酵素である。
【0115】
一般に、練り粉は穀粉 (特にコムギの穀粉) および水を含んでなる。練り粉は、例えば、化学的発酵剤または酵母、通常サッカロマイセス・セレビシエ (Saccharomyses cerevisiae) (パン・菓子類製造業者の酵母) を添加することによって、発酵を起こさせる。
練り粉に基づく生成物は、練り粉を発酵させ、加熱することによって、例えば、パン焼きまたは水蒸気処理することによって作られる。例は水蒸気処理されまたはベーキングされたパン (特に白色、全粉末またはライムギパン) であり、典型的にはローフまたはロールの形態である。
【0116】
練り粉は1種または2種以上の追加の酵素、例えば、第2アミラーゼ (例えば、マルトジェニックα-アミラーゼ) 、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、プロテアーゼまたはペプチダーゼ、特にエキソペプチダーゼ、トランスグルタミナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ (例えば、ペントプサナーゼまたはキシラナーゼ) 、グリコシルトランスフェラーゼ、分枝酵素またはオキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼまたはグルコースよりもマルトースに対してより高い活性を有するオキシダーゼを含んでなることができる。
ハイブリッド酵素は、単独で使用するα-アミラーゼ活性をもつ触媒モジュールよりも低い投与量で使用することができる (重量基準で比較して) 。
【0117】
材料および方法
購入材料
DNA操作用酵素 (例えば、制限エンドヌクレアーゼ、リパーゼおよびその他) はニュー・イングランド・バイオラブス・インコーポレーテッド (New England Biolabs, Inc. ) から入手することができ、そして製造業者の使用説明書に従い使用した。増幅したプラスミドはQiagen (商標) プラスミドキット (Qiagen) を使用して回収した。ExpandTM PCRシステム (Roche) を使用して、ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) を実施した。QIAquickTMゲル抽出キット (Qiagen) を使用して、PCRフラグメントおよびアガロースゲルから切除したPCRフラグメントを精製した。
【0118】
菌株およびプラスミド
アスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) IFO4308をCDMのドナーおよびリンカー配列として使用した。アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 株DMS 2761は澱粉分解配列を供与した (WO 89/01969) 。米国仮特許出願No. 60/459902 (10345.000-US) に記載されているアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 株MBin120を宿主株として使用した。特許WO 200295014に記載されているアスペルギルス (Aspergillus) 発現プラスミドpMT2188をベクターとして使用した。pfF欠失大腸菌 (Escherichia coil) 株DB6507 (ATCC 35673) をpHUda381およびpHUda387の製造に使用した。
【0119】
プラスミドpMT2188は、アスペルギルス・ニヅランス (Aspergillus nidulans) トリオースイソメラーゼ非翻訳リーダー配列 (Pna2/tpi) およびアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) アミログリコシダーゼターミネーター (Tamg) に融合した、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 中性アミラーゼIIプロモーターに基づく発現カセットから成る。また、唯一の窒素原としてアセトアミドで生長できるアスペルギルス・ニヅランス (Aspergillus nidulans) からのアスペルギルス (Aspergillus) 選択的マーカーamdSおよびpyrF欠失大腸菌 (Escherichia coil) 株DB6507 (ATCC 35673) (これはpHUda381およびpHUda387を増殖させる) の生長を可能とするサッカロマイセス・セレビシエ (Saccharomyses cerevisiae) からのURA3マーカーは、プラスミド上に存在する。選択的マーカーとしてサッカロマイセス・セレビシエ (S. cerevisiae) URA 3遺伝子を使用する大腸菌 (E. coli) DB6507中への形質転換を、下記の方法で実施した:
【0120】
大腸菌 (E. coli) DB6507を下記の文献に記載されている方法によりコンピテントとした: Mandel M. およびA. Higa (1970) J. Mol. Biol. 45、154。1 g/lのカサアミノ酸、500 μg/mlのチアミンおよび10 mg/lのカナマイシンを補充した固体M9培地 (Sambrook 他(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press) 上で、形質転換体を選択した。
【0121】
培地および基質
342.3 g/Lのスクロース、20 ml/LのCOVE塩溶液、10 mMのアセトアミドおよび30 g/Lのノーブル寒天からCoveを構成した。30 g/Lのスクロース、20 ml/LのCOVE塩溶液、10 mMのアセトアミドおよび30 g/Lのノーブル寒天からCove-2を構成した。26 g/LのKCl、26 g/LのMgSO4・7H2O、76 g/LのKH2PO4および50 mLのCove微量金属からCOVE塩溶液を構成した。0.04 g/LのNa2B4O7・10H2O、0.4 g/LのCuSO4・5H2O、1.2 g/LのFeSO4・7H2O、1.0 g/LのMnSO4・H2O、0.8 g/LのNa2MoO2・2H2Oおよび10 g/LのZnSO4・7H2OからCOVE微量金属を構成した。4 g/Lの酵母エキス、1 g/LのK2HPO4、0.5 g/LのMgSO4・7H2Oおよび15 g/Lのグルコース、pH 6.0からYPGを構成した。
【0122】
0.8 Mのソルビトール、25 mMのTris pH 8.0および25 mMのCaCl2からSTCを構成した。STC緩衝液中の40%のPEG 4000からSTPCを構成した。342.3 g/Lのスクロース、20 ml/LのCOVE塩溶液、10 mMのアセトアミドおよび30 g/Lの低融点アガロースからCove上部アガロースを構成した。40 g/Lのグルコース、50 g/Lの大豆粉末、4 g/Lのクエン酸、pH 5.0からMLCを構成した。50 g/Lのグルコース、2 g/LのKH2PO4、2 g/LのMgSO4・7H2O、3 g/LのK2SO4、3 g/Lのクエン酸、50 g/Lのシュウ酸、0.5 mLのAMG微量金属溶液および3 g/Lの尿素、pH 5.0からGO-50を構成した。6.8 g/LのZnCl2・7H2O、2.5 g/LのCuSO4・5H2O、0.24 g/LのNiCl2・6H2O、13.9 g/LのFeSO4・7H2O、13.5 g/LのMnSO4・H2Oおよび3 g/Lのクエン酸からAMG微量金属溶液を構成した。
【0123】
酸性α-アミラーゼ活性
本発明に従いを使用するとき、酸安定性α−アミラーゼの活性は、酵素標準に関して決定されるAFAU (酸性真菌α-アミラーゼ単位) で測定することができる。1 AFAUは後述する標準条件下に1時間当たり5.26 mgの澱粉乾燥固体を分解する酵素の量として定義される。
【0124】
酸安定性α−アミラーゼ、エンド-α-アミラーゼ (1,4-α-D-グルカン-グルカノ-ヒドロラーゼ、EC 3.2.1.1) は、澱粉分子の内側領域中のα-1,4 グリコシド結合を加水分解して、異なる鎖長をもつデキストリンおよびオリゴ糖が形成する。ヨウ素で生成される色強度は澱粉濃度に対して直接比例する。アミラーゼ活性は、特定の分析条件下における澱粉濃度の減少として、逆比色分析を使用して決定される。
【0125】
【表1】

【0126】
標準条件/反応条件
基質: 澱粉、ほぼ0.17 g/L
緩衝剤: クエン酸塩、ほぼ0.03 M
ヨウ素 (I2): 0.03 g/L
CaCl2: 1.85 mM
PH: 2.50±0.05
インキュベーション温度: 40℃
反応時間: 23秒
波長: 590 nm
酵素濃度: 0.025 AFAU/mL
酵素使用範囲: 0.01〜0.04 AFAU/mL
【0127】
この分析法をいっそう詳しく記載するフォルダーEB-SM-0259.02/01は、ノボザイムA/S (デンマーク国) に対する要求に応じて入手可能であり、引用することによって本明細書の一部とされる。
【0128】
グルコアミラーゼ活性
グルコアミラーゼ活性はアミログリコシダーゼ単位 (AGU) で測定することができる。AGUは標準条件: 37℃、pH 4.3、基質: マルトース 23.2 mM、緩衝液: 酢酸塩 0.1 M、反応時間: 5分において、1分当たり1 μMのマルトースを加水分解する酵素の量として定義される。
【0129】
自動分析装置を使用することができる。存在するα-D-グルコースがβ-D-グルコースに転化されるように、ムタロターゼをグルコースデヒドロゲナーゼ試薬に添加する。グルコースデヒドロゲナーゼは前述の反応においてβ-D-グルコースと特異的に反応してNADHを生成し、これは340 nmにおいて測光計を使用してもとのグルコース濃度の測度として測定される。
【0130】
AMGインキュベーター:
基質: マルトース 23.2 mM
緩衝液: 酢酸塩 0.1 M
pH: 4.30±0.05
インキュベーション温度: 37℃±1
反応時間: 5分
酵素使用範囲: 0.5〜4.0 AUG/mL
【0131】
色反応:
GlucDH: 430 U/L
ムタロターゼ: 9 U/L
NAD: 0.21 mM
緩衝液: リン酸塩 0.12 M;
0.15 M NaCl
pH: 7.60±0.05
インキュベーション温度: 37℃±1
反応時間: 5分
波長: 340 nm
【0132】
この分析法をいっそう詳しく記載するフォルダー(EB-SM-0131.02/01) は、ノボザイムA/S (デンマーク国) に対する要求に応じて入手可能であり、引用することによって本明細書の一部とされる。
【0133】
DNAの操作
特記しない限り、DNAの操作および形質転換は、下記の文献に記載されている分子生物学の標準的方法を使用して実施した: Sambrook 他 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー; Ausubel F. M. 他 (編者) “Current Protocols in Molecular Biology”、John Wiley & Sons、1995; Harwood C. R. およびCutting S. M. (編者) 。
【実施例】
【0134】
実施例1アスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) からの炭水化物結合性モジュール (CBM) のクローニング
アスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) からのリンカーをもつ炭水化物結合性モジュール (CBM) をクローニングするために、EMBLデータベース (EMBL.#AB008370) 中のアスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) 酸安定性α−アミラーゼのヌクレオチド配列に基づいて、プライマーCBM1 (配列番号1) およびプライマーCBM2 (配列番号2) を設計した。CBM1およびCBM2は、それぞれ、BamH1およびSalI部位を含んでなる。
CBN1: 5’-gaagggatccgatttttactagtacatccaaagccaccac-3’
CBN2: 5’-tttgtcgacctacctccacgtatcaaccaccgtctcc-3’
【0135】
テンプレートとしてアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) (IFO4308) からのゲノムDNAを使用し、プライマーCBM1およびCBM2を用いて、PCR反応を実施した。反応成分 (1×緩衝液中の1 ng/μMのゲノムDNA、250 mMの各dNTP、250 nMの各プライマー、0.1 U/μlのTaqポリメラーゼ (Roche Diagonstics、日本国)) を混合し、下記の条件下でPCRに付した。
【0136】
【表2】

【0137】
リンカー領域をもつCBMを含んでなる0.4 kbのフラグメントを増幅した。増幅したDNAをSalIおよびBamH1で切断し、XhoIおよびBamH1で消化したpMT2188中に結合して、アスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) からのリンカー領域をもつCBM、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 中性アミラーゼプロモーター、アスペルギルス・ニヅランス (Aspergillus nidulans) TPIリーダー配列、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) グルコアミラーゼターミネーターおよびマーカーとしてアスペルギルス・ニヅランス (Aspergillus nidulans) amdSを有するpHUda381をつくった。pHUda381を配列決定して、リンカー配列をもつ正しいCBMの存在を確認した。リンカー領域をもつCBMを配列番号5に示す。
【0138】
実施例2アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) におけるハイブリッド酵素の発現
アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸安定性α−アミラーゼ遺伝子のcDNA配列およびアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸安定性α−アミラーゼのcDNAクローンの製造は、WO 8901969 (実施例1および3) に記載されている。それぞれ、BamH1部位およびSpeI部位を導入するプライマー (配列番号3) および (配列番号4) を使用して、テンプレートとしてアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸安定性α−アミラーゼのcDNAクローンを使用するPCR反応を実施した。
(配列番号3): 5’-tttggatccaccatgagattatcgacttcgagtctcttc-3’
(配列番号4): 5’-tttactagtagcagcagcagttgtggtcgtggttgttc-3’
【0139】
反応成分 (1×緩衝液中の1 ng/μMのテンプレートDNA、250 mMの各dNTP、250 nMの各プライマー、0.1 U/μlのTaqポリメラーゼ (Roche Diagonstics、日本国)) を混合し、下記の条件下でPCRに付した。
【0140】
【表3】

【0141】
1.5 kbの増幅したDNAフラグメントをSalIおよびBamH1で切断し、SpeIおよびBamH1で消化したpHUda381中に結合して、アスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) からのCBMと融合したアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸安定性α−アミラーゼcDNAを含んでなる発現プラスミドpHUda387をつくった。pHUda387を配列決定して、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸安定性α−アミラーゼcDNA配列中に変化が起こらなかったことを確認した。アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸安定性α−アミラーゼcDNA配列を配列番号7に示す。
【0142】
pHUda387をアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) MBin120の中に形質転換した。宿主株を100 mlの非選択的YPG培地中で32 ℃において16時間回転式震蘯培養器上で120 rpmで増殖させた。細胞を濾過により集め、0.5 MのKClで洗浄し、商用β-グルカナーゼ (GLUCANEXTM、Novozymes A/S) を600 μl/mlの最終濃度で含有する20 mlの0.6 MのKCl中に再懸濁させた。プロトプラストが形成するまで、この懸濁液を32℃、80 rpmにおいてインキュベートし、次いでSTF緩衝液で2回洗浄した。
【0143】
プロトプラストをヘマトメーターで計測し、再懸濁させ、STC:STPC:DMSOの8:2:0.1溶液中で2.5×107プロトプラスト/mlの最終濃度に調節した。約3 μgのプラスミドDNAを100 μlのプロトプラスト懸濁液に添加し、おだやかに混合し、氷上で20分間インキュベートした。1 mlのSPTCを添加し、プロトプラスト懸濁液を37℃において30分間インキュベートした。10 mlの50℃のCove上部アガロースを添加した後、反応混合物をCove寒天プレート上に注ぎ、プレートを32℃においてインキュベートした。5日後、形質転換体をCove培地から選択した。
【0144】
選択した形質転換体を100 mlのMLC培地に接種し、30℃において2日間培養した。10 mlのMLC培地を100 mlのGO-50培地に接種し、30℃において5日間培養した。上清を遠心により得た。
【0145】
OD590nmにおいて測定した澱粉-ヨウ素複合体の色の減少として、上清中の酸安定性α−アミラーゼ活性を決定した。25 μlの試料緩衝液 (2 mMのクエン酸塩緩衝液中の51.4 mMの塩化カルシウム [pH 2.5]) 中の酵素試料を135 μlの基質溶液 (100 mMのクエン酸塩緩衝液中の0.6 g/Lの澱粉 [Merck 1253] および12 g/Lの酢酸ナトリウム [pH 2.5]) と混合し、37℃において325秒間インキュベートした。325秒後、90 μlのヨウ素溶液 (1.5 g/Lのカリウムヨウ素 [Merck 5043] および0.12 g/Lのヨウ素 [Merck 4761]) を反応混合物に添加し、37℃において25秒間インキュベートした。活性を590 nmにおいて分光計で測定した。ブランク実験において、25 μlの蒸留水を酵素試料の代わりに使用した。
【0146】
実施例3非糊化澱粉のSSFにおけるハイブリッド酵素の性能
アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸安定性α−アミラーゼと、結合した炭水化物結合性モジュールをもつアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸安定性α−アミラーゼとの相対的性能を、最小規模のSSF (同時の糖化および発酵) 発酵を介して評価した。使用した投与量は、0.5 AGU/g DS投与量の精製したアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) グルコアミラーゼを補充した、0.3、0.5および1.0 AFAU/g DSのそれぞれのα-アミラーゼであった。簡単に述べると、ほぼ1.9 gの粉砕トウモロコシ (黄色#2デントコーン、パイロット規模のハンマーミル中で粉砕し、2 mmの篩に通過させた、11.2%の湿分) を16 mlのポリスチレン管 (Falcon 352025) に添加した。乾燥固形分レベル (DS) を34%しかつpHを5.0にするために適当な量で、0.02 N H2SO4溶液を3 mg/mlのペニシリンと一緒に添加した。処理を6回の反復実験で実施した。
【0147】
酵素を投与した後、管に4.74×108酵母細胞/mlを接種した。管にねじ込み式蓋をかぶせた。この蓋は非常に小さい針で穿刺してガスが放出するようにしてあり、短時間渦形成した後、秤量し、32℃においてインキュベートした。経時的に管を秤量して、発酵プロセスを追跡した。CO2減少量とエタノール重量との間で使用した関係は次の通りであった:
CO2減少量 (g) × 1.045 = EtOH (g) 。
結果を表4に示す。
【0148】
【表4】

【0149】
等しい活性基準で、結合した炭水化物結合性モジュールをもつアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸安定性α−アミラーゼ (ハイブリッド) は、検査したすべての投与量において、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸安定性α−アミラーゼ (天然) よりも有意に性能がすぐれていた。ハイブリッド酵素は天然の酵素よりもほぼ3倍高い作用を有した (すなわち、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸安定性α−アミラーゼの性能は、結合した炭水化物結合性モジュールをもつアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸安定性α−アミラーゼよりも約3倍低い性能と合致する) 。
【0150】
実施例4CBM、リンカー配列および触媒モジュールの異なる組合わせを有するハイブリッド酵素の性能
アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸安定性α−アミラーゼ (AA) と、アスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー (A. niger) AMG、T. エメルソニイ (T. emersonii) AMG、アテリア・ロルフシイ (Athelia rolfsii) AMG、またはバシラス (Bacillus) 種マルトジェニックα-アミラーゼ (Novamyl) からのCBMとを含んでなるハイブリッド酵素変異型を構築した。アスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼからのリンカー配列 (配列番号27) をすべて変異型において使用した。
【0151】
基質としてコーンスターチ (SIGMA S-9679) 、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) グルコアミラーゼ G2 0.25 AGU/g DS、変異型 1.0 AGU/g DSおよびGlucose B-testキット (Wako Pure Chemicals 271-3141) による遊離グルコースの定量化を使用して、変異型の性能を評価した。結果を表5に示す。
【0152】
【表5】

【0153】
アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸安定性α−アミラーゼと、アスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー (A. niger) AMG、またはアテリア・ロルフシイ (Athelia rolfsii) AMGからのCBMとを含んでなるハイブリッド酵素変異型を構築した。また、異なるリンカー配列をもつ変異型を構築した。使用した変異型はアスペルギルス・ニガー (A. niger) AMGリンカー (配列番号26) 、アスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼリンカー (配列番号27) 、アテリア・ロルフシイ (Athelia rolfsii) AMGリンカー (配列番号28) 、およびPEPTリンカー (配列番号29) であった。また、2つのCBDを縦列でを有する変異型を構築した (JA012) 。
変異型の性能を前述したように評価し、ただしアスペルギルス・ニガー (A. niger) グルコアミラーゼG1および変異型のみを0.3 AFAU/g DSで投与した。結果を表6に示す。
【0154】
【表6】

【0155】
異なる触媒モジュールを有するアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼからのリンカーおよびCBMを含んでなるハイブリッド酵素を構築した。適用した触媒モジュールは、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸安定性α−アミラーゼ、アスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) α-アミラーゼまたはアスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) α-アミラーゼ (FungamylTM) に由来した。変異型の性能を前述したように評価し、ただしアスペルギルス・ニガー (A. niger) グルコアミラーゼG1および変異型を0.3 AFAU/g DSで投与した。結果を表7に示す。
【0156】
【表7】

【0157】
アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸安定性α−アミラーゼまたはアスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) α-アミラーゼ (FungamylTM) からの異なる触媒モジュールを有するアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) またはアテリア・ロルフシイ (A. rolfsii) AMGからのリンカーおよびCBMを含んでなるハイブリッド酵素を構築した。変異型の性能を前述したように評価し、ただしアスペルギルス・ニガー (A. niger) グルコアミラーゼG1および変異型を0.3 AFAU/g DSで投与した。結果を表8に示す。
【0158】
【表8】

【0159】
実施例5触媒モジュール中に1または2以上の置換を有するJA017の変異型
アテリア・ロルフシイ (A. rolfsii) AMG CBM、アテリア・ロルフシイ (A. rolfsii) リンカー配列および触媒モジュール中に1または2以上の置換を有するアスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) α-アミラーゼ触媒モジュールを含んでなるハイブリッド酵素JA017 (配列番号40に示すアミノ酸配列) を慣用のタンパク質操作技術に従い構築した。変異型中の置換を表9に列挙する。
【0160】
【表9】

【0161】
変異型をアスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) 中で発現させ、pH安定性、熱安定性およびグルコース放出試験による生澱粉に対する性能について特性決定した。
JA085はpH 4.5においてJA017よりも少なくとも5℃だけ高い熱安定性を示し、pH 3.0においてさえ安定であった。
【0162】
新規な変異型JA085およびJA074は、グルコース放出試験において高い比活性を示した。JA085はpH 3.8においてさえグルコースを放出し続け、ここでJA017は急速に不活性化した。JA074はpH 4.0において最高のグルコース収率を有したが、pH 3.8において不活性化した。
pH 4.5で55℃および60℃において30分間インキュベートした後における残留活性としての熱安定性、比活性、pH安定性およびある数の変異型のグルコース放出試験における活性を、表10〜16に列挙する。
【0163】
【表10】

【0164】
【表11】

【0165】
【表12】

【0166】
【表13】

【0167】
【表14】

【0168】
【表15】

【0169】
【表16】

【0170】
実施例6アスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) 酸性α-アミラーゼの変異型
生澱粉の加水分解に適当なアスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) 酸性α-アミラーゼの変異型は、触媒モジュールを含んでなる配列の慣用のタンパク質操作により製造することができる。変更が比活性および/または安定性を改良する特異的位置は、示したアミノ酸配列およびRCSBタンパク質データバンク (www.rcsb.org) 中の示されたアイデンティファイアー下に発見される三次元構造を有する下記の真菌α-アミラーゼの1つに対する類似性に基づいて予測した:
【0171】
アスペルギルス・ニガー (A. niger) 酸性α-アミラーゼ (2aaa、本明細書において配列番号42) およびアスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) (6taaまたは7taa、本明細書において配列番号43) α-アミラーゼ (Takaアミラーゼ) 。各触媒三つ組のアミノ酸配列を整列させることによって、2つの3Dモデルを重ねた。3対のC-アルファ原子の偏差に基づくこの分野において知られている方法により、例えば、3偏差の二乗の合計により、または各偏差を0.8Å以下、例えば、0.6Å以下、0.4Å以下、0.3Å以下または0.2Å以下に保持するように整列することによって、これを実施した。
【0172】
選択的に、重ねは2つのアミノ酸配列を慣用法により整列させ、アミノ酸残基のすべての対応する対における偏差の二乗の合計を最小とすることによって実施することができる。配列のアラインメントは慣用法、例えば、UWGCGバージョン8からのソフトウェアを使用することによって実施することができる。
【0173】
下に示すアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) 、アスペルギルス・ニガー (A. niger) (aaa_new) およびアスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) (7aaa) からの3つのα-アミラーゼのアラインメント上に、7taa.pdb構造中のエイカーボーズ (acarbose) 基質から10Å以内である残基を示す。これらの残基は比活性の改良を確証する変更についてターゲッティングされる。
【0174】
【表17】

【0175】
【表18】

【0176】
比活性を増加させる特異的変更は、 「基質の距離10Å」 以内の下記の位置における1つの置換または置換の組合わせである: 13、15、18、32-36 (すなわち、32、33、34、35、36)、61、63-64、68-69、73-84 (例えば、73、74、75、76、77、78、80、81、82、84)、117-125 (例えば、117、118、119、120、121、122、123、124、125)、152-158 (例えば、152、153、154、155、156、157、158)、161-162、165-175 (例えば、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175)、204-211 (例えば、204、205、206、207、208、209、210、211)、216、229-239 (例えば、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239)、242、250、252-253、255-257 (例えば、255、256、257)、259-260、275、292、295-299 (例えば、295、296、297、298、299)、304、328、339-344、上記アラインメントにおける7taaナンバリングに従い、ここでN-末端は7taa (TAKAα-アミラーゼ) 中のATPADである。最も興味を起こさせる位置は次の通りである: 33、36、74、75、77、120、153、154、155、156、157、158、162、166、169、170、199、232、233、235、238、239、256、257、331、336、339、340、および342。置換は任意のアミノ酸残基に対して実行することができる。
【0177】
下記の置換またはそれらの組合わせの1つを含んでなる変異型を製造することができる: G33A、I36K、S74A、D75Y、E77D、P120A、I153D、D154N、W155Y、D156E、N157D、L158Q、Q162E、E166L、T169N、I170T、E199K、E199L、D232L、N233D、N235D、L238Y、D239T、W256Y、Q257P、E331Q、S336A、D339K、D339N、V340D、およびY342A。最も興味を起こさせる変異型は下記の置換の1または2以上を含んでなる: S74A、E166L、E199L、D339K、およびD156E。なおいっそう興味を起こさせる変異型は、多重置換S74A/E166L/E199Lを有する。
【0178】
アスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) 酸性α-アミラーゼとアスペルギルス・ニガー (A. niger) 酸性α-アミラーゼとの間の類似性に基づいて、下記の置換が比活性を改良することが予測される: N31D、S74A、Y89D、E209L、Y245V、D348K、D378A、K383A、P386A、I387F、I405V、N448S、およびN480R。そして、これらの置換を含んでなる名称WA01の変異型を製造することができる。
【0179】
実施例7アスペルギルス・カワチイ (Aspergillus kawachii) 酸性α-アミラーゼの変異型の性能
実施例4に記載されているハイブリッドJA007およびJA001は、それぞれアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) 酸性α-アミラーゼ (配列番号41) および前の実施例に記載されている変異型WA01の配列と同一である。2つのハイブリッドJA001およびJA007をいくつかの試験において比較することができるので、変異型WA01に対する置換により与えられる比活性の改良を非常に正確に予測することができる。変異型WA01の比活性は、アスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) 野生型アミラーゼの比活性よりも1.7〜1.8倍高いであろう。この予測は表19に示すデータに基づく。
【0180】
【表19】

【0181】
実施例8CBDを含むか、あるいは含まない酸性真菌α-アミラーゼを使用する生澱粉の加水分解
この実施例において、CBM (配列番号8) を含まない酸性真菌アミラーゼまたはCBMを含む対応するハイブリッド (JA001) を使用して、粒状コムギ澱粉またはトウモロコシ粗粒をグルコースに転化することを例示する。247.5 gのコムギ澱粉またはトウモロコシ粗粒を502.5 mlの水に攪拌しながら添加することによって、33%の乾燥固形分 (DS) を有するスラリーを調製した。pHをHClで4.5に調節した。粒状澱粉スラリーを、100 mlの青色キャップのフラスコに、各フラスコに75 gの量で添加した。フラスコを60℃の水浴中で磁気的に攪拌しながらインキュベートした。時間0において、酵素活性をフラスコに投与した; グルコアミラーゼ (200 AGU/kg DS) 、酸性真菌アミラーゼ (50 AGU/kg DS) および野生型アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸性α-アミラーゼ (配列番号8) またはアスペルギルス・カワチイ (A. kawachii) に由来するリンカーおよびCBMに融合したアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) (配列番号6に融合した配列番号8) 。CBMを含むか、あるいは含まないアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 酸性α-アミラーゼを100 KNU/kg DSの量で投与した。24、48、72、および96時間後に、試料を抜出した。
【0182】
下記の方法を使用して、全乾燥固形分澱粉を決定した。過剰量のα-アミラーゼ (300 KNU/kgの乾燥固形分) を添加し、そして試料を95℃油浴中に45分間入れることによって、澱粉を完全に加水分解した。引き続いて試料を60℃に冷却し、過剰量のグルコアミラーゼ (600 AGU/kg DS) を添加し、次いで60℃において2時間インキュベートした。
0.22 μMのフィルターを通して濾過した後、試料の屈折率を測定することによって、澱粉加水分解物中の可溶性乾燥固形分を決定した。糖プロファイルをHPLCにより決定した。グルコースの量をDXとして計算した。
結果を表20〜21 (コムギ澱粉) および表22〜23 (トウモロコシ粗粒) に示す。
【0183】
【表20】

【0184】
【表21】

【0185】
【表22】

【0186】
【表23】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒モジュールのアミノ酸配列と炭水化物結合性モジュールのアミノ酸配列とを含んでなり、
a) 触媒モジュールは配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列または配列番号30のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列であり、そして
b) 炭水化物結合性モジュールは配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24または配列番号25から成る群から選択されるアミノ酸配列である、
ハイブリッド酵素。
【請求項2】
ハイブリッド酵素が触媒モジュールのアミノ酸配列および炭水化物結合性モジュールのアミノ酸配列を接続するリンカーアミノ酸配列をさらに含んでなる、請求項1に記載のハイブリッド酵素。
【請求項3】
リンカー配列が配列番号26、配列番号27、配列番号28、および配列番号29から成る群から選択されるリンカー配列であるか、あるいは配列番号26、配列番号27、配列番号28、または配列番号29に示すアミノ酸配列と10個以下の位置、9個以下の位置、8個以下の位置、7個以下の位置、6個以下の位置、5個以下の位置、4個以下の位置、3個以下の位置、2個以下の位置、または1個以下の位置だけ異なるリンカー配列である、請求項2に記載のハイブリッド酵素。
【請求項4】
触媒モジュールが配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列である、請求項1に記載のハイブリッド酵素。
【請求項5】
触媒モジュールが配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列である、請求項1に記載のハイブリッド酵素。
【請求項6】
触媒モジュールが配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列である、請求項1に記載のハイブリッド酵素。
【請求項7】
触媒モジュールが配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列である、請求項1に記載のハイブリッド酵素。
【請求項8】
触媒モジュールが配列番号30のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列である、請求項1に記載のハイブリッド酵素。
【請求項9】
触媒モジュールが配列番号30のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列である、請求項1に記載のハイブリッド酵素。
【請求項10】
触媒モジュールが配列番号30のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列である、請求項1に記載のハイブリッド酵素。
【請求項11】
触媒モジュールが配列番号30のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列である、請求項1に記載のハイブリッド酵素。
【請求項12】
炭水化物結合性モジュールが配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24または配列番号25に示すアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列である、請求項1に記載のハイブリッド酵素。
【請求項13】
炭水化物結合性モジュールが配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24または配列番号25に示すアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列である、請求項1に記載のハイブリッド酵素。
【請求項14】
炭水化物結合性モジュールが配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24または配列番号25に示すアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列である、請求項1に記載のハイブリッド酵素。
【請求項15】
炭水化物結合性モジュールが配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24または配列番号25に示すアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列である、請求項1に記載のハイブリッド酵素。
【請求項16】
配列番号40の配列のアミノ酸21〜498として示すアスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) α-アミラーゼの触媒モジュールと、配列番号40の配列のアミノ酸21〜498として示すアミノ酸配列に対して70%の相同性を有するアミノ酸配列とを含んでなるハイブリッド酵素。
【請求項17】
配列番号41に対して少なくとも80%の相同性を有する変異型α-アミラーゼ、前記変異型は13、15、18、31、32、33、34、35、36、61、63、64、68、69、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、89、117、118、119、120、121、122、123、124、125、152、153、154、155、156、157、158、161、162、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、204、205、206、207、208、209、210、211、216、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、242、245、250、252、253、255、256、257、259、260、275、292、295、296、297、298、299、304、328、339、344、348、378、383、386、387、405、448および480から成る群から選択される1または2以上の位置に変更を含んでなり、ここで
a) 前記1または2以上の変更は、独立して、
i) 前記位置を占有するアミノ酸から下流のアミノ酸の挿入であり、
ii) 前記位置を占有するアミノ酸の欠失であり、または
iii) 前記位置を占有するアミノ酸の異なるアミノ酸による置換であり、
b) 前記変異型はα-アミラーゼ活性を有する。
【請求項18】
下記の置換の1または2以上を有する請求項17に記載の変異型: G33A、I36K、S74A、D75Y、E77D、P120A、I153D、D154N、W155Y、D156E、N157D、L158Q、Q162E、E166L、T169N、I170T、E199K、E199L、D232L、N233D、N235D、L238Y、D239T、W256Y、Q257P、E331Q、S336A、D339K、D339N、V340D、およびY342A。
【請求項19】
下記の位置の1または2以上に変更を含んでなる、請求項17に記載の変異型: 31、74、 89 、209、245、348、378、383、386、387、405、448および480。
【請求項20】
下記の置換の1または2以上を含んでなる請求項17に記載の変異型: N31D、S74A、Y89D、E209L、Y245V、D348K、D378A、K383A、P386A、I387F、I405V、N448S、N480R。
【請求項21】
下記の置換を含んでなる請求項17に記載の変異型: N31D、S74A、Y89D、E209L、Y245V、D348K、D378A、K383A、P386A、I387F、I405V、N448S、N480R。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載のハイブリッド酵素または変異型をコードする単離されたDNA配列。
【請求項23】
請求項22に記載のDNA配列を含んでなるDNA構築物。
【請求項24】
請求項22に記載のDNA配列を含んでなる発現ベクター。
【請求項25】
請求項18に記載の単離されたDNA配列を発現することができる、請求項24に記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項26】
宿主細胞が真菌、細菌、植物または哺乳動物からの細胞である、請求項25に記載の宿主細胞。
【請求項27】
糊化澱粉基質または粒状澱粉基質を水性媒質中において請求項1〜21のいずれかに記載のハイブリッド酵素または変異型で処理する、澱粉を液化する方法。
【請求項28】
処理した澱粉を酵母と接触させて燃料用または飲用エタノールを製造することを含んでなる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
処理した澱粉を発酵させて発酵生成物、例えば、クエン酸、グルタミン酸一ナトリウム、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸カリウム、グルコノデルタラクトン、エリトルビン酸ナトリウム、イタコン酸、乳酸、グルコン酸; ケトン; アミノ酸、グルタミン酸 (モノグルタミン酸ナトリウム) 、ペニシリン、テトラサイクリン; 酵素; ビタミン、例えば、リボフラビン、B12、β-カロテンまたはホルモンを生成することを含んでなる、請求項27〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
炭水化物結合性モジュールを含んでなるが、触媒モジュールを含まないポリペプチドと澱粉スラリーを接触させる、請求項27〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
請求項1〜21のいずれかに記載のハイブリッド酵素または変異型を練り粉に添加することを含んでなる、練り粉をベースとする生成物を製造する方法。
【請求項32】
配列番号40の配列のアミノ酸21〜498として示すアスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) α-アミラーゼの触媒モジュールまたは配列番号40の配列のアミノ酸21〜498として示すアミノ酸配列に対して50%の相同性を有するアミノ酸配列と、炭水化物結合性ドメインとを含んでなるハイブリッド酵素。
【請求項33】
81、158、161、163、164、175、176、177、264、266、466、468および470から成る群から選択される1または2以上の位置に置換を含んでなる、請求項32に記載のハイブリッド酵素。
【請求項34】
Q81R、K158D、K158V、S161D、S161N、Q163S、Q163A、D164S、Y175W、E176D、D177N、N264K、N264E、M266L、G466D、D468S、およびN470Dを含んでなるリストから選択される1または2以上の置換を含んでなる、請求項32に記載のハイブリッド酵素。
【請求項35】
K158V、S161N、Q163A、D164S、N264K、M266L、G466D、D468S、N470Dを含んでなるリストから選択される1または2以上の置換を含んでなる、請求項32に記載のハイブリッド酵素。
【請求項36】
Q81R、K158V、S161N、Q163A、D164S、Y175W、E176D、D177N、N264K、M266L、G466D、D468S、N470Dを含んでなるリストから選択される1または2以上の置換を含んでなる、請求項32に記載のハイブリッド酵素。

【公表番号】特表2007−526748(P2007−526748A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517686(P2006−517686)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/020499
【国際公開番号】WO2005/003311
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【出願人】(500132074)ノボザイムス ノース アメリカ,インコーポレイティド (16)
【Fターム(参考)】