説明

澱粉質材料のエステルを主成分とする熱可塑性組成物またはエラストマー組成物ならびに、当該組成物を製造するための方法

本発明の主題は、a)生分解度50%未満、好ましくは30%未満を示し、b)澱粉質材料のエステルを、少なくとも0.5%、最大で99.95重量%含有し、エステルの置換度(DS)が1.6〜3であり、かつ澱粉以外のポリマーを少なくとも0.05重量%、最大で99.5重量%含有することを特徴とする、熱可塑性またはエラストマー組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステルの置換度(DS)が高い澱粉質材料のエステルおよび澱粉以外のポリマーを主成分とする、新規な熱可塑性組成物またはエラストマー組成物に関する。
【0002】
「熱可塑性またはエラストマー組成物」という表現は、本発明の範囲では、可逆的に、熱の作用下で軟化し、冷却時に硬化(熱可塑性)および/または応力下で歪みが生じた後に、すみやかにほぼ元の形状と開始時の寸法に戻る(エラストマー系)組成物を意味するものとして理解される。この組成物は少なくとも1つのガラス転移点(T)を有し、それより低い温度では組成物の非晶質画分のすべてまたは一部が脆性のガラス状態になり、それより高い温度では組成物に可逆性の塑性変形が生じ得る。本発明による熱可塑性組成物またはエラストマー組成物の1つのガラス転移点あるいは、複数のガラス転移点のうちの少なくとも1つが、好ましくは−120℃〜+150℃である。
【0003】
この組成物は、特に、熱可塑性であってもよいすなわち、押出、射出成形、成形、ブロー成形、カレンダリングなどのプラスチック技術において従来から用いられているプロセスで成形可能な機能を呈するものであってもよい。その粘度は、100℃〜200℃の温度で測定すると、通常10〜10Pa.sである。この熱可塑性組成物は、特に、澱粉質材料の少なくとも1種のエステルとの組み合わせで、たとえば、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリスチレン、アクリルポリマーおよびメタクリルポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、直鎖状ポリエステル、セルロースポリマー、フルオロポリマー、ポリスルホン、フェノール樹脂、アミノ樹脂、架橋ポリエステル、ポリウレタン、ポリエポキシド、シリコーン、アルキドおよびポリイミドなど、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーからなる群から選択される澱粉以外の少なくとも1種のポリマーを含有するものであってもよい。
【0004】
また、本発明による組成物は、エラストマー系であってもよいすなわち、天然ゴムまたは合成ゴムのような高い伸展力と弾性回復力を呈する。この組成物のエラストマー挙動は、塑性状態での成形後に、程度の差こそあれ架橋または加硫によって得られるまたは調節できるものである。また、「エラストマー組成物」という表現は、本発明の意味の範囲では、「軟質」セグメント(ガラス転移点が周囲温度未満)と「硬質」セグメント(ガラス転移点が周囲温度を超える)からなるブロックポリマータイプの構造がゆえに、エラストマー的な特性と熱可塑的な特性を兼ね備える「熱可塑性エラストマー」タイプのあらゆる組成物を意味するものとしても理解される。
【0005】
このタイプの組成物は、特に、澱粉質材料の少なくとも1種のエステルとの組み合わせで、天然または改質ゴム、ポリスチレン系エラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリプロピレン系エラストマー、シリコーンエラストマーまたはゴムおよびポリウレタンエラストマーからなる群から選択される澱粉以外の少なくとも1種のポリマーを含有するものであってもよい。
【0006】
好ましくは、本発明による熱可塑性またはエラストマー組成物は、「ホットメルト」組成物であるすなわち、高剪断力を印加せずに、つまり溶融材料の単なる流し込みまたは単純なプレスによって成形可能である。その粘度は、100℃〜200℃の温度で測定すると、通常は10〜10Pa.sである。
【0007】
本発明による熱可塑性またはエラストマー組成物は:
a)低生分解度すなわち、分解度が50%未満、好ましくは30%未満である;および
b)
− エステルの置換度(DS)が1.6〜3である、少なくとも0.5%、最大で99.95重量%の澱粉質材料のエステルと、
− 少なくとも0.05重量%、最大で99.5重量%の澱粉以外のポリマーと
を含有するという特徴を有し、これらの比率は、組成物の総重量に対するものである.
【0008】
第1の実施形態によれば、本発明による組成物は、
− 澱粉質材料のエステルが、そのままで、生分解度が50%未満、好ましくは30%未満であるおよび/または
− 澱粉以外のポリマーが、そのままで、生分解度が50%未満、好ましくは30%未満である
ことも特徴とする。
【0009】
特に都合のよい一実施形態によれば、本発明による組成物は、澱粉質材料のエステルおよび澱粉以外のポリマーが各々、生分解度が50%未満、好ましくは30%未満であることを特徴とする。
【0010】
「生分解度」という表現は、本発明の意味の範囲では、ISO 14851:1999国際規格に準ずる閉鎖呼吸計での酸素要求量の測定による好気的生分解度を意味するものとして理解される。
【0011】
この生分解度を求めるための具体的な手順については後述する。
【0012】
ISO 14851による生分解度の測定
これは、表題「Determination of the ultimate aerobic biodegradability of plastic materials in an aqueous medium − Method by measuring the oxygen demand in a closed respirometer(水系培養液中の好気的究極生分解度の求め方−閉鎖呼吸計を用いる酸素要求量の測定による方法)」が付されたISO 14851国際規格(第1版1999年05月15日)に準じて実施され、
− 前記規格の第4項に記載された原理によれば、以下の段取りを経て生物学的酸素要求量(BOD)と理論的酸素要求量(ThOD)とを比較し、これを比率で表すことで、生分解の程度(またはレベル)を判断する。
− 前記規格の附属書Aに従って、ThODを算出し、
− 前記規格の第5項、第6項、第7項、第8項に従って、それぞれ試験環境、試薬、装置、操作を使用し、
− 前記規格の第9項および第10項に従って、算出、表現、評価する。
【0013】
本例では、特に、
− 活性汚泥の形での植種源、
− 標準試験培養液、
− 暗所で25℃、誤差±1℃の試験環境、
− 対照材料としての微結晶セルロース粉体
を使用する。
【0014】
一変形例によれば、本発明による組成物は、上記にて定義したような生分解度が極めて低いすなわち、20%未満、特に15%未満または10%未満または5%ですらある。
【0015】
もうひとつの変形例によれば、本発明による組成物では、生分解度が低くとどまるが、上述した値よりは高めの値の範囲にあるすなわち、生分解度が少なくとも20%に等しく30%未満、特に20〜28%である。
【背景技術】
【0016】
温室効果および地球温暖化によって気候が乱れ、化石原材料、特にプラスチックの原料となる石油にかかるコストの増加傾向、より一層天然に近くきれいで、健康かつエネルギー効率のよい生成物の持続可能な開発を求める世論の状態、さらには法規や税制の変化といった現代の状況下、特にプラスチックおよびエラストマーの分野に適すると同時に、競争力があり、環境に対する負の影響がわずかしかないかまったくないようにするところに端を発して設計され、技術的には化石由来の原材料から作られるポリマーと同じくらい効果的な再生可能な資源から、新規な組成物を得られることが必要である。
【0017】
澱粉は、現在プラスチック用の原材料として用いられている石油やガスと比較して経済的に都合のよい価格で、大量に再生可能かつ利用可能であるという利点を有する原材料となる。
【0018】
澱粉は、特に生分解性の生成物でもあるというその特性がゆえに、すでにプラスチックの製造に利用されている。
【0019】
最初の澱粉系組成物は、およそ30年前に開発された。その後、澱粉は、ポリエチレンなどの合成ポリマーとの機械的混合物の形で、フィラーとして、改質されていない顆粒状の未変性状態すなわち、自然界に存在するままの状態で用いられた。
【0020】
続いて、澱粉は生分解性物品の製造時に用いられたが、基本的には非晶質および熱可塑性にされた状態であった。この結晶化度を低下させるかなくした構造破壊状態は、通常は顆粒状の澱粉に対して15〜25%の量で、好適な可塑剤を機械エネルギーや熱エネルギーを用いて取り込むことで、顆粒状の未変性澱粉の可塑化によって得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第5,462,983号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、熱可塑性澱粉の機械的特性は、澱粉や可塑剤、後者の使用レベルを選ぶことである程度までは調節可能であるが、このようにして得られる材料は常に、高温(120℃〜170℃)下ですら極めて粘度が高く、極めて壊れやすく、脆性すぎ、極めて硬質かつ低温すなわちガラス転移点未満での成膜性がそれほど高くないため、総じてかなりありきたりである。
【0023】
このため、これらの熱可塑性澱粉を、石油を原料とする生分解性ポリマー(ポリカプロラクトンすなわちPCL、芳香族コポリエステルすなわちPBAT、脂肪族ポリエステルすなわちPBS)または水溶性ポリマー(ポリビニルアルコールすなわちPVOH)あるいは、ポリラクテート(PLA)、微生物ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)または他のセルロース誘導体などの再生可能な原料のポリエステルと物理的に混合することで、機械的特性が一層優れた生分解性配合物または水溶性配合物を開発することを目指して、数々の研究調査がなされている。
【0024】
これらの生分解性組成物、さらには水溶性組成物の耐水性は通常、自動車部品などの耐用年数が中程度以上の物品および製品の製造可能性を考慮するには足りず、不十分である。さらに、これらの組成物の物理化学的安定性は、この場合、潜在的な用途を大幅に制限する要因でもある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この問題を詳細に検討した後、本出願人は、驚くべきことに、エステルの置換度(DS)が高い状態から極めて高い状態の澱粉質材料のエステルを使用し、これを生分解性の高さで知られているポリマーと併用した場合ですら、耐用年数の長い物品の製造に役立ち得るか、あるいは水系培養液または生体培養液中で安定する必要がある、生分解性が低いか非常に低いが、水中安定性および経時安定性が高い熱可塑性またはエラストマー組成物を製造できることを観察した。
【0026】
本発明は、澱粉質材料のエステルを主成分とし、さらに従来技術のものに比して特性が改善された新規な組成物を提案することで、上述した課題に対する効果的な解決策を提供するものである。
【0027】
上記にて想定した変形例とは関係なく、本発明による熱可塑性組成物またはエラストマー組成物は、都合のよいことに、DSが高いまたは極めて高い澱粉質材料のエステルを含む。DSは、特に、1.8〜3、好ましくは2.0〜2.9、なお一層好ましくは2.5〜2.9であればよく、DS2.6〜2.8が理想的に用いられる。
【0028】
想定した変形例とは関係なく、本発明による熱可塑性またはエラストマー組成物は、都合のよいことに、
− 5〜99重量%の上述したような澱粉質材料のエステルと、
− 1〜95重量%の澱粉以外のポリマーと、
を含み、これらの比率は、組成物の総重量に対するものである。
【0029】
もうひとつの変形例によれば、本発明による熱可塑性またはエラストマー組成物は、都合のよいことに、
− 10〜70重量%、好ましくは10〜60重量%の澱粉質材料のエステルと、
− 30〜90重量%、好ましくは40〜90重量%の澱粉以外のポリマーと、
を含み、これらの比率は、組成物の総重量に対するものである.
【0030】
その澱粉質材料のエステルの含有量は、特に、10〜55%であればよい。
【0031】
その澱粉以外のポリマーの含有量は、特に、45〜90%、特に45〜85%であればよい。
【0032】
もうひとつの変形例によれば、澱粉質材料のエステルは、本発明による組成物の主成分であるか、大部分を占める成分ですらあり、この組成物は、特に、前記エステルを50〜99%、好ましくは51〜98重量%含むことを特徴とするものであってもよい。
【0033】
同時に、澱粉以外のポリマー(または「非澱粉質ポリマー」)は、本発明による組成物の主成分でもなければ大部分を占める成分でもなく、この組成物は、特に、前記ポリマーを1〜49重量%、好ましくは2〜40重量%、なお一層好ましくは2〜35重量%含むことを特徴とするものであってもよい。
【0034】
もうひとつの変形例によれば、澱粉質材料のエステルは、大部分を占める成分ではなく、通常は本発明による組成物の主成分でもなく、この組成物は、前記エステルを最大で49.5%、特に、5〜49%、好ましくは7〜49重量%、なお一層好ましくは10〜49重量%含むことを特徴とするものであってもよい。
【0035】
同時に、澱粉以外のポリマーは、本発明による組成物の主成分であってもよいし、大部分を占める成分であってもよく、この組成物は、特に、少なくとも40%および最大95重量%の前記ポリマー、特に50〜95%、好ましくは51〜93重量%、なお一層好ましくは51〜90重量%の前記ポリマーを含むことを特徴とするものであってもよい。
【0036】
上記にて想定した変形例とは関係なく、DSが1.6〜3の澱粉質材料のエステルは、本発明による組成物中に、どのような形態で存在してもよく、特に非澱粉質ポリマー中のマイクロサイズまたはナノメートルサイズの繊維または他の粒子の形での分散状態あるいは、非澱粉質ポリマーに対して多かれ少なかれ相溶化された熱可塑性またはエラストマー系、連続、不連続または共連続相の状態で存在してもよい。
【0037】
さらに、非澱粉質ポリマーは、本発明による組成物中に、どのような形態で存在してもよく、特に澱粉質材料のエステル中の繊維の形での分散状態あるいは、澱粉質材料のエステルに対して多かれ少なかれ相溶化された熱可塑性またはエラストマー系、連続、不連続または共連続相の状態で存在してもよい。
【0038】
本出願人が知るかぎり、澱粉質材料のエステル、特にDSが高いまたは極めて高い澱粉質材料のエステルを使用することは、
− たとえば、a)変性セルロース、b)タンパク質、c)特に、米国特許第5,462,983号明細書、国際特許出願公開第95/04108号パンフレット、欧州特許第1 054 599号明細書または同第1 142 911号明細書の特許に記載のヒドロキシカルボキシルタイプあるいは、米国特許第5,936,014号明細書または国際特許出願公開第98/07782号パンフレットの特許に記載されたようなポリアルキレンの生分解性ポリエステル、d)欧州特許第638 609号明細書、米国特許第5,936,014号明細書、米国特許出願公開第2002/0032254号明細書または国際特許出願公開第00/73380号パンフレットの特許に記載されたものなどの水溶性ポリマーなど、それ自体が生分解性または水溶性であることが知られている少なくとも1種の非澱粉質ポリマーをさらに含有するまたは含有しない、生分解性であると言われる熱可塑性組成物の製造;または
− a)たとえば特に米国3,666,492号明細書、同第4,035,572号明細書または同第4,041,179号明細書に記載されているような、熱可塑性またはエラストマー系である任意の非澱粉質ポリマー、b)澱粉質材料のエステルの可塑剤を含有しないチューインガム用のガム基礎剤として使用可能なエラストマー組成物の製造;
に対してのみ推奨されてきた。
【0039】
本発明の文脈では、「澱粉質材料」という表現は、α−1,4結合ならびに、任意選択によりα−1,6、α−1,2、α−1,3または他のタイプの他の結合によって互いに結合されたD−グルコース単位のオリゴマーまたはポリマーを意味するものとして理解される。
【0040】
この澱粉質材料は、どのようなタイプの澱粉に由来するものであってもよく、特に、コムギ、トウモロコシ、オオムギ、ライコムギ、ソルガムまたはコメなどの穀物用植物の澱粉;ジャガイモまたはキャッサバなどの塊茎の澱粉;エンドウ、ダイズまたはマメなどの豆科植物の澱粉、これらの植物から得られるアミラーゼを多く含む澱粉または逆にアミロペクチンを多く含む(「ワックス状」)澱粉あるいは、これらの澱粉の任意の混合物から選択できるものである。
【0041】
本発明によれば、この澱粉質材料は、好ましくは、分子量が10〜10g/molであればよく、一層よいのは5.10〜10g/mol、なお一層よいのは10〜10g/molである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
第1の実施形態によれば、この澱粉質材料は、高度に顆粒状で任意選択により加水分解および/または加工された澱粉へのエステル化によって得られるものであってもよい。
【0043】
「顆粒状澱粉」という表現は、本明細書では、天然澱粉あるいは、物理的、化学的または酵素的に加工された、澱粉顆粒すなわち高等植物、特に穀物用植物または豆科植物の種子、塊茎、根、鱗茎、茎、果実の貯蔵組織および器官で天然に存在する澱粉粒で見られるものに似た半結晶構造内に保持された澱粉を意味するものと理解される。この半結晶状態は、本質的に、2つの主要な構成要素のうちの1つであるアミロペクチンの巨大分子によるものである。天然状態では、澱粉粒は結晶化度が15〜45%で変動し、本質的に澱粉の植物源と、適用される任意の処理とに左右される。
【0044】
顆粒状態の澱粉は、偏光下に配置すると、この状態に典型的なマルテーゼクロスと呼ばれる特徴的な黒い十字を呈する。
【0045】
一変形例によれば、澱粉質材料のエステルは、酸、酸化または酵素的な経路で加水分解された顆粒状澱粉由来である。このような澱粉は一般に、流動化澱粉、酸化澱粉または白色デキストリンと呼ばれる。
【0046】
もうひとつの変形例によれば、当該エステルは、特にアセチル化、ヒドロキシプロピル化、カチオン化、架橋、リン酸化またはスクシニル化によって加工された、特に弱エステル化および/またはエーテル化澱粉あるいは、低温にて水系培養液中で処理(「アニーリング」処理)された澱粉など、天然澱粉の顆粒構造を基本的に保ってはいるが物理化学的に加工された澱粉をエステル化して得られるものであってもよい。
【0047】
澱粉質材料のエステルは、特にトウモロコシ、コムギ、ジャガイモまたはエンドウの特に顆粒状の加水分解澱粉、酸化澱粉または加工澱粉をエステル化して得られるものであってもよい。
【0048】
第2の実施形態によれば、本発明による組成物の製造用に選択される澱粉質材料は、非顆粒状澱粉すなわち、顕微鏡検査および偏光下で、マルテーゼクロスを呈する澱粉粒のない澱粉をさらに高度にエステル化したものに由来する。よって、これは水溶性澱粉または有機加工澱粉となり、アミロースを多く含む澱粉または逆にアミロペクチンを多く含む(ワックス状)澱粉をはじめとする、どのような植物源に由来するものであってもよい。
【0049】
第1の変形例によれば、DSが1.6〜3の澱粉質材料のエステルは、水溶性の非顆粒状澱粉エステルである。本発明の意味の範囲では、「水溶性澱粉」という表現は、20℃および機械的攪拌下で24時間、脱塩水に少なくとも5重量%に等しい量で可溶な画分を有する澱粉質材料を意味するものとして理解される
【0050】
水溶性澱粉は、都合のよいことに、アルファ化澱粉、押出成形澱粉、噴霧乾燥澱粉、デキストリン、マルトデキストリン、官能化澱粉またはこれらの生成物の混合物(任意選択により可塑化されたもの)から選択されるものであってもよい。
【0051】
アルファ化澱粉、押出成形澱粉または噴霧乾燥澱粉は、天然澱粉または加工澱粉を、特にスチームクッキング、ジェットクッカーによるクッキング、ドラムでのクッキング、ニーダー/エクストルーダー系でのクッキングによって熱水糊化処理した後、澱粉質の溶液または懸濁液を、流動床上や回転ドラム上で高温空気を利用したオーブン乾燥、噴霧乾燥、押出、非溶媒による沈殿または凍結乾燥させるなどして得られるものであってもよい。一例として、本出願人から商品名PREGEFLO(登録商標)で製造販売されている製品があげられる。
【0052】
デキストリンは、比較的無水の酸性培養液中でのデキストリン化によって、天然澱粉または加工澱粉から製造されたものであってもよい。これらは、特に、可溶性の白色デキストリンまたは黄色デキストリンであってもよい。一例として、本出願人から製造販売されている製品STABILYS(登録商標) A 053またはTACKIDEX(登録商標) C 072があげられる。
【0053】
マルトデキストリンは、水系培養液中での澱粉を、酸、酸化または酵素によって加水分解して得られるものであってもよい。この澱粉は、特に、デキストロース当量(DE)が0.5〜40であればよく、好ましくは0.5〜20、なお一層よいのは0.5〜12である。このようなマルトデキストリンは、たとえば、商品名GLUCIDEX(登録商標)で本出願人から製造販売されている。
【0054】
官能化澱粉は、特に、無水酢酸や混合無水物の水性相でのアセチル化、ヒドロキシプロピル化、カチオン化、アニオン化、リン酸化またはスクシニル化によって得られるものであってもよい。これらの官能化澱粉は、置換度が0.01〜2.7であればよく、なお一層よいのは0.05〜1である。
水溶性澱粉は、好ましくは、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモまたはエンドウの水溶性澱粉またはその水溶性誘導体である。
【0055】
第2の変形例によれば、DS1.6〜3のエステル化澱粉質材料は、有機加工澱粉、好ましくは有機溶解性澱粉のエステルであり、これもどのような植物源に由来するものであってもよい。本発明の意味の範囲では、「有機加工澱粉」という表現は、上述した定義による顆粒状澱粉または水溶性澱粉以外の澱粉質の成分を意味するものとして理解される。好ましくは、この有機加工澱粉では、実質的に非晶質すなわち、澱粉の結晶化度が5%未満、通常1%未満、特に澱粉の結晶化度がゼロ度である。これは、好ましくは「有機溶解性」すなわち、20℃で、エタノール、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、グルタル酸ジメチル、クエン酸トリエチル、二塩基エステル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルイソソルビド、三酢酸グリセロール、二酢酸イソソルビド、ジオレイン酸イソソルビド、植物油のメチルエステルから選択される溶媒に少なくとも5重量%に等しい量で可溶な画分でもある。もちろん、有機溶解性澱粉は、上記にて示した溶媒のうちの1種以上に対して完全に可溶のものであってもよい。
【0056】
有機加工澱粉は、上記にて提示したものなどの天然澱粉または加工澱粉から、本質的にそれらを非晶質にさせ、かつ水不溶性、好ましくは上記の有機溶媒のうちの1種類に対する溶解性を与えられるだけの十分に高いレベルへのエステル化またはエーテル化によって製造できるものである。
【0057】
有機加工澱粉は、特に、ヒドロキシプロピル化および架橋、カチオン化および架橋、アニオン化、リン酸化またはスクシニル化および架橋、シリル化またはテロメル化によって、ブタジエンとカプロラクトンまたはラクチドのオリゴマーとをグラフト重合して得られるものであってもよい。これらの有機加工澱粉、好ましくは有機溶解性澱粉は、置換度(DS)が0.01〜2.7であればよく、好ましくは0.05〜2.0、特に0.1〜1.5である。
【0058】
有機加工澱粉は、好ましくは、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモまたはエンドウの有機加工澱粉またはその有機加工誘導体である。
【0059】
澱粉質材料のエステルの製造に用いられるエステル化剤は、有機酸無水物、有機酸、混合無水物、有機酸クロリドまたはこれらの生成物の任意の混合物であってもよい。このエステル化剤は、炭素原子数2〜24の飽和または不飽和酸、特に、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ペラルゴン酸、オクタン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、これらの酸の無水物、これらの酸の混合無水物、これらの生成物の任意の混合物から選択されるものであってもよい。
【0060】
置換度(DS)が1.6〜3.0、好ましくは1.8〜3.0、より好ましくは2.0〜2.9、特に2.5〜2.9、理想的には2.6〜2.8の澱粉質材料のエステルは、好ましくは、水溶性澱粉または有機加工澱粉のエステル、好ましくはアルファ化澱粉のエステル、押出成形澱粉のエステル、噴霧乾燥澱粉のエステル、デキストリンのエステル、マルトデキストリンのエステル、官能化澱粉のエステル、有機溶解性澱粉のエステルまたはこれらの生成物の任意の混合物のエステル(任意選択により可塑化されている)である。
【0061】
好ましくは、澱粉質材料の前記エステルは、炭素原子数2〜22の鎖を有し、澱粉、デキストリンまたはマルトデキストリン(純物質または混合物として)の酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、吉草酸エステル、ヘキサン酸エステル、オクタン酸エステル、デカン酸エステル、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、オレイン酸エステルまたはステアリン酸エステルである。好ましくは、これは澱粉質材料の酢酸エステルである。本発明による組成物は、特に、澱粉質材料のエステルとして、DSが上述した範囲のうちのいずれか1つのエステル、好ましくは、酢酸エステルタイプのエステル、水溶性または有機加工澱粉のエステル、特にアルファ化、押出成形または噴霧乾燥澱粉のエステル、デキストリンのエステル、マルトデキストリンのエステル、官能化澱粉のエステルまたは有機溶解性澱粉のエステルを含む。
【0062】
極めて都合のよいことに、澱粉質材料のエステルは、水溶性澱粉または有機加工澱粉の酢酸エステル、デキストリンの酢酸エステルまたはマルトデキストリンの酢酸エステルである。
【0063】
澱粉質材料のエステルを、先に定義したような任意選択により加水分解されたおよび/または加工された顆粒状澱粉、水溶性澱粉または有機加工澱粉と、任意の割合で混合してもよい。
【0064】
エステル化条件に関しては、当業者であれば、使用するエステル化剤に鑑みて、文献、特に米国特許第3 795 670号明細書、欧州特許第603 837、米国特許第5 667 803号明細書、国際特許出願公開第97/03120号パンフレット、同第98/29455号パンフレット、同第98/98/29456号パンフレット、米国特許出願公開第2008/0146792号明細書の特許に記載の技術および条件を容易に参照できよう。
【0065】
エステル化は、特に、溶媒相や有機酸培養液での、無水物またはこの有機酸と酸触媒の混合無水物の存在下におけるアセチル化によって得られるものであってもよい。
【0066】
エステル化澱粉質材料は、カプロラクトンまたはラクチドのオリゴマーのグラフト化によって導入したか、ヒドロキシプロピル化、架橋、カチオン化、アニオン化、スクシニル化、シリル化またはテロメル化によって導入した他の基を含むものであってもよい。
【0067】
本発明による熱可塑性またはエラストマー組成物は、少なくとも1種の澱粉以外のポリマー(「非澱粉質ポリマー」とも呼ばれる)も含む。
【0068】
非澱粉質ポリマーは、どのような化学的性質のものであってもよい。熱可塑性ポリマーであってもよいし、熱硬化性ポリマーであってもよく、あるいは熱可塑性エラストマーであってもよい。これは、都合のよいことに、活性水素を有する官能基および/または特に加水分解によって、当該官能基に活性水素を持たせる官能基を含む。
【0069】
これは、天然起源のポリマーであってもよいし、そうでなければ化石起源のモノマーおよび/または再生可能な天然資源由来のモノマーから得られる合成ポリマーであってもよい。
【0070】
天然起源のポリマーは、特に、植物または動物組織からの抽出によって直接に得られるものであってもよい。これらは、好ましくは加工または官能化され、特に、タンパク質、セルロースまたはリグノセルロース性のポリマーおよびキトサンから選択される。これらは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)など、微生物細胞からの抽出によって得られるポリマーであってもよい。
【0071】
このような天然起源のポリマーは、好ましくは加工された小麦粉またはタンパク質;未加工または特にカルボキシメチル化、エトキシル化、ヒドロキシプロピル化、カチオン化、アセチル化またはアルキル化によって加工されたセルロース;ヘミセルロース;リグニン;加工されたまたは未加工のグアーガム;キチンおよびキトサン;天然ゴム(NR)およびその誘導体、ロジン、セラック、テルペン樹脂およびビチューメンなどの天然ガムおよび樹脂;アルギネートおよびカラゲナンなどの藻類から抽出される多糖;キサンタンまたはジェランなどの細菌起源の多糖;亜麻、麻またはコイア繊維などのリグノセルロース繊維または他の天然起源の繊維から選択可能でもある。
【0072】
非澱粉質ポリマーは、合成であってもよく、特に重合、ポリ縮合または重付加によって得られるものであってもよい。
【0073】
極めて好ましくは、非澱粉質ポリマーは、そのままで、生分解度が50%未満、好ましくは30%未満である。したがって、単独の非澱粉質ポリマーとして用いられる場合、このポリマーは、好ましくは、ポリヒドロキシ酸(たとえばPLA、PGA、PHA、PHB、PHV、PHBVまたはPCL)、ポリエステルアミド(たとえばBAK)などの生分解性ポリエステル以外のポリマーあるいは、芳香族または脂肪族コポリエステル(たとえばPBSおよびPBAT)、ポリアルキレンカーボネート以外(たとえばPECおよびPPC)ならびに、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコール、タンパク質、セルロースおよびその誘導体など、水溶性ポリマー以外から選択される。
【0074】
特に、ポリオレフィンなどの熱可塑性ポリマー、特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレンおよびそのコポリマー、ビニルポリマー、スチレンポリマーまたはスチレンコポリマー(ABS、SAN、MBS)、アクリルポリマーまたはメタクリルポリマー、ポリオキシフェニレン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート(生分解度50%未満、好ましくは30%未満)、ポリエステル(生分解度50%未満、好ましくは30%未満)、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)(非晶質ポリエチレンテレフタレート(PETG)を含む)など、フルオロポリマー、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド(またはポリフェニルスルフィド)、ポリウレタン、ポリエポキシド、シリコーン、アルキドおよびポリイミド、これらの官能化した変形例および上述したポリマーの任意の混合物から選択可能である。
【0075】
本発明によって特に使用可能な熱可塑性非澱粉質ポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)(非晶質ポリエチレンテレフタレート(PETG)を含む)、官能化または非官能化ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド、特にポリアミドPA−6、PA−6,6、PA−6,10およびPA−6,12、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリオキシメチレン(POM)、これらのポリマーの任意の混合物があげられる。
【0076】
澱粉以外のポリマーも、好ましくは、ブチルゴム(特にブロモブチルゴムおよびクロロブチルゴムなどのハロゲン化ブチルゴム)などの合成ゴム(SR)などのエラストマーポリマー;ポリアクリレートゴム(ACM);ニトリルゴム(特にカルボキシル化ニトリルゴム);ポリブタジエン(BR)およびポリイソプレン;ブタジエン、イソプレンおよび/またはスチレンを主成分とし、特にスチレンおよびブタジエン(SBSまたはSBR)、スチレンおよびイソプレン(SIS)、スチレンおよびポリオレフィンを主成分とする混合エラストマー;特にスチレン、ウレタンまたはポリアミドタイプの硬質ブロックと、特にポリエーテル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリイソプレンまたはポリブチレンタイプの軟質ブロックとで構成されるマルチブロックコポリマーの形の熱可塑性エラストマー(TPE)(たとえばTPS、TPUまたはPEBA);エチレン(エチレンアクリレートまたはEAM)またはポリプロピレン(エチレン−プロピレン−ジエンモノマーまたはEPDM)またはエチレンおよびプロピレン(EPM)を主成分とするエラストマー;ポリオレフィンを主成分とする半結晶性エラストマー;メチルシリコーンなどのシリコーンゴム(特にフェニル、ビニルおよびフルオロシリコーン)およびポリシロキサン(ポリジメチルシロキサン);熱可塑性ポリマーと、ポリプロピレン(PP)またはポリ塩化ビニル(PVC)などのエラストマーとの物理的混合物または合金(そこに分散されるのは、ゴム(PP/NR、PP/NBR−VD、PVC/NBRおよびTPO)またはEPDM(PP/EPDM−VD)などの加硫されていない、部分的に加硫された、あるいは完全に加硫されたエラストマーである)から選択されるものであってもよい。
【0077】
特に都合のよいことに、エラストマー系非澱粉質ポリマーは、ガラス転移点(T)が−5〜−120℃、好ましくは−10〜−105℃、一層好ましくは−20〜−80℃である。
【0078】
エラストマー系非澱粉質ポリマーとして、特に天然ゴムおよびその誘導体、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ブタジエン−スチレンコポリマー(SBR)、任意選択により水素化されたブタジエン−アクリロニトリルコポリマー(NBRおよびH−NBR)、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートコポリマー(ASA)、エチレン/メチルアクリレートコポリマー(EAM)、エーテルまたはエステル−エーテルタイプの熱可塑性ポリウレタン(TPU)、シラン、ハロゲン化、アクリルまたは無水マレイン酸単位などで官能化されたポリエチレンまたはポリプロピレン、EDMおよびEPDM、無水マレイン酸単位などで官能化されたポリオレフィン(TPO)、スチレン−ブチレン−スチレンコポリマー(SBS)およびスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンコポリマー(SEBS)由来の熱可塑性エラストマー、これらのポリマーの任意の混合物が、極めて推奨されることがある。
【0079】
好ましくは、熱可塑性またはエラストマー系非澱粉質ポリマーのすべてまたは一部が、植物、微生物またはガス、特に糖類、グリセロール、油またはその誘導体(一官能化、二官能化または多官能化アルコールまたは酸など)などのすみやかに再生可能な天然資源由来のモノマーから合成される。非澱粉質ポリマーのすべてまたは一部は、特に、バイオエタノール、バイオエチレングリコール、バイオプロパンジオールなどのバイオソースのモノマー、バイオソースの1,3−プロパンジオール、ビブタンジオール、乳酸、バイオソースのコハク酸、グリセロール、イソソルビド、ソルビトール、スクロース、植物油または動物油由来のジオール、松から抽出した樹脂酸およびその誘導体から合成されるものであってもよい。
【0080】
非澱粉質ポリマーのすべてまたは一部は、特に、バイオエタノールから得られるポリエチレン、バイオエタノールから得られるPVC、バイオプロパンジオールから得られるポリプロピレン、バイオソース乳酸またはバイオソースコハク酸を主成分とするPLAまたはPBSタイプのポリエステル、バイオソースブタンジオールまたはバイオソースコハク酸を主成分とするPBATタイプのポリエステル、バイオソース1,3−プロパンジオールを主成分とするSORONA(登録商標)タイプのポリエステル、イソソルビドを含むポリカーボネート、バイオエチレングリコールを主成分とするポリエチレングリコール、ひまし油または植物ジオールを主成分とするポリアミド、植物ジオールまたは植物ポリオールなどを主成分とするポリウレタン(短いか長い、グリセロール、イソソルビド、ソルビトールまたはスクロースなど)および/または任意選択によりヒドロキシアルキル化された脂肪酸を主成分とするポリウレタンであってもよい。
【0081】
いずれの場合も、すでに明記したように、極めて好ましくは、非澱粉質ポリマーは、そのままで、生分解度が50%未満、好ましくは30%未満である。
【0082】
もうひとつの都合のよい変形例によれば、非澱粉質ポリマーは、水に対して低溶解性すなわち、溶解性が10%未満(20℃で10%未満の材料が水に溶解する)、特に5%未満である。好ましくは、水に不溶(20℃で0.1%未満の材料が水に溶解する)である。
【0083】
もうひとつの変形例によれば、非澱粉質ポリマーは、重量平均分子量が8500〜1000万ダルトン、特に15000〜100万ダルトンである。
【0084】
さらに、非澱粉質ポリマーは、好ましくは、ASTM D6852規格の意味の範囲内で、再生可能な起源の炭素で構成され、都合のよいことに、EN 13432、ASTM D6400およびASTM 6868規格の意味の範囲内で、非生分解性または非堆肥化可能である。
【0085】
本発明による組成物における澱粉質材料へのエラストマー系非澱粉質ポリマーの取り込みを、好ましくは、温度35〜300℃、特に60〜200℃、なお一層よいのは100〜180℃で、高温混練にて実施できる。この取り込みを、バッチ式で、または連続的に、特にインラインで、熱機械的混合によって実施してもよい。この場合、混合時間は、数秒間から数分間という短い時間であってもよい。
【0086】
好ましい変形例によれば、本発明による熱可塑性またはエラストマー組成物は、可塑化されたものであってもよく、可塑剤を含むものであってもよい。
【0087】
「可塑剤」または「可塑化剤」という表現は、低分子量すなわち、好ましくは分子量が5000未満の分子を意味するものとして理解され、これは特に、通常は少なくとも35℃に等しく、好ましくは35℃〜300℃、特に60℃〜260℃、なお一層よいのは65℃〜200℃の温度での熱機械的処理によって本発明による組成物に取り込まれた場合、本発明による組成物または澱粉質材料のエステルのガラス転移点の低下および/またはその結晶化度の変化を生じる。
【0088】
本発明で「澱粉質材料」に関して「可塑化された」という表現を用いる場合、これは必然的に可塑化剤の存在を意味する。エステル化澱粉質材料は、以下の可塑化剤の一覧に示す1種以上の化合物を含有するものであってもよく、それはとくに水を含んでもよい。
【0089】
可塑化剤は特に、水、ジオール、トリオール、ポリオールのエステルおよびエーテル(グリセロール、ポリグリセロールである)、イソソルビド、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール、水素化グルコースシロップ、有機酸のエステル、尿素、これらの生成物の任意の混合物から選択されるものであってもよい。可塑化剤は、特に、乳酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、グルタル酸またはリン酸などの有機酸または無機酸のメチルエステル、エチルエステルまたは脂肪酸エステルあるいは、エタノール、ジエチレングリコール、グリセロールまたはソルビトールなどのモノアルコール、ジオール、トリオールまたはポリオールの酢酸エステルまたは脂肪酸エステルから選択されるものであってもよい。一例として、二酢酸グリセロール(ジアセチン)、三酢酸グリセロール(トリアセチン)、二酢酸イソソルビド、ジオクタン酸イソソルビド、ジオレイン酸イソソルビド、ジラウリン酸イソソルビド、ジカルボン酸エステルまたは二塩基性エステル(DBE)およびこれらの生成物の任意の混合物が具体的にあげられる。可塑化剤は、エポキシド化植物油、グリコールまたは誘導体(エチレングリコールポリエステルなど)であってもよい。
【0090】
可塑剤は、エピクロロヒドリンまたはイソシアナートなどのカップリング剤によって連結された、上述の生成物から選択されるものであってもよい。
【0091】
もうひとつの変形例によれば、可塑化剤は、実際、本発明による組成物中に存在する前記可塑剤の分子と任意のポリマー(澱粉質または非澱粉質)の分子との間に存在する引力を表す、その溶解パラメータ(HILDEBRAND溶解性と呼ぶ)、特に、可塑剤の凝集エネルギー密度すなわちこれを蒸発させるのに必要なエネルギーのばらつきを特徴とする。よって、溶解パラメータは、25℃で(J.cm−30.5または(MPa)1/2(ここで、1(J.cm−30.5=1(MPa)1/2)単位で表される。
【0092】
任意選択により用いる可塑化剤は、特に、溶解パラメータが15〜28(J.cm−30.5、好ましくは17〜25(J.cm−30.5、より一層好ましくは18〜22(J.cm−30.5であればよい。これはたとえば、HILDEBRANDパラメータ(気化潜熱(85.74kJ/mol)またはその沸点(259℃)から算出)が21(J.cm−30.5の三酢酸グリセロール(トリアセチン)であってもよい。
【0093】
もうひとつの変形例によれば、都合よく任意選択により用いられる可塑剤の分子量が1500未満、特に500未満である。可塑化剤は、好ましくは、分子量が18を超え、言葉をかえると、好ましくは水を含まない。理想的には、可塑化剤は、分子量150〜450である。
【0094】
可塑化剤は、特に、同時に、トリアセチン(分子量218):
− 分子量150〜450;
− HILDEBRANDパラメータ18〜22(J.cm−30.5などを有するものであってもよい。
【0095】
澱粉質の組成物が可塑化剤を含有する場合、前記可塑化剤は、好ましくは澱粉質材料のエステル100乾燥重量部あたり、1〜150乾燥重量部の量、好ましくは10〜120乾燥重量部の量、特に25〜120乾燥重量部の量で存在する。
【0096】
好ましい一実施形態によれば、本発明による組成物が可塑化剤、特に澱粉質材料のエステルの可塑化剤を含有する場合、前記組成物が、前記可塑化剤を2〜40重量%、好ましくは4〜35重量%、特に5〜30重量%を含む。
【0097】
特に都合のよいことに、本発明による熱可塑性組成物またはエラストマー組成物は、
− 10〜60重量%の澱粉質材料のエステルと、
− 40〜85重量%の澱粉以外のポリマーと、
− 5〜30重量%の可塑化剤と、
を含むことを特徴とするものであってもよい。
【0098】
可塑剤の任意ではあるが好ましい取り込みについては、周囲温度で澱粉質材料のエステルと混合するなどの低温状態で実施してもよいし、そうでなければ本発明による熱可塑性組成物またはエラストマー組成物の製造時に直接すなわち、混練/混合などでバッチモードあるいは押し出しなどで連続的に、好ましくは60〜200℃、一層好ましくは100〜180℃という高温状態で実施してもよい。この混合の時間は、使用する混合方法に応じて、数秒から数時間の範囲であればよい。
【0099】
もうひとつの変形例によれば、本発明による組成物は、組成物に含まれるエステルの製造に用いられる澱粉質材料の結晶化度が15%未満、好ましくは5%未満、一層好ましくは1%未満であることを特徴とする。この澱粉質材料の結晶化度は、特に、米国特許第5,362,777号明細書の特許(第9欄、第8〜24行目)に記載されたようなX線回折技術で測定できるものである。
【0100】
本発明による組成物は、カップリング剤を含むものであってもよい。
【0101】
「カップリング剤」という表現は、本発明内では、澱粉質材料のエステルまたは可塑剤のものなど活性水素を有する官能基を持つ分子と反応できる少なくとも2つの遊離官能基またはマスクされた官能基を持つ有機分子を意味するものとして理解される。このカップリング剤は、可塑剤の少なくとも一部を澱粉質材料のエステルおよび/または非澱粉質ポリマーに対して共有結合で結合可能にするために、組成物に添加できるものである。また、任意選択により、架橋剤または加硫剤として添加してもよい。
【0102】
このカップリング剤は、イソシアナート、カルバモイルカプロラクタム、アルデヒド、エポキシド、ハロ、プロトン酸、酸無水物、ハロゲン化アシル、オキシクロリド、トリメタホスフェートまたはアルコキシシラン官能基およびこれらの組み合わせから選択される、少なくとも2つの同一または異なる遊離またはマスクされた官能基を持つ化合物などから選択されるものであってもよい。
【0103】
都合のよいことに、これは、以下の化合物から選択されるものであってもよい。
− ジイソシアナート、好ましくはメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)、トルエンジイソシアナート(TDI)、ナフタレンジイソシアナート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、リシンジイソシアナート(LDI);
− ジカルバモイルカプロラクタム、好ましくは1,1’−カルボニルビスカプロラクタム;
− グリオキサール、ジアルデヒド澱粉およびTEMPO−酸化澱粉;
− ジエポキシド;
− エポキシド官能基およびハロゲン官能基、好ましくはエピクロロヒドリンを含む化合物;
− 有機二塩基酸、好ましくはコハク酸、アジピン酸、グルタル酸、シュウ酸、マロン酸またはマレイン酸ならびに対応する無水物;
− オキシクロリド、好ましくはオキシ塩化リン;
− トリメタホスフェート、好ましくはトリメタリン酸ナトリウム;
− アルコキシシラン、好ましくはテトラエトキシシラン;
− これらの化合物の任意の混合物。
【0104】
本発明の好ましい一実施形態では、カップリング剤が、ジイソシアナート、特にメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)である。
組成物がカップリング剤を含有する場合、前記カップリング剤は、澱粉質材料のエステル100乾燥重量部に対して、好ましくは0.1〜15乾燥重量部の量、好ましくは0.2〜9乾燥重量部の量、特に0.5〜5乾燥重量部の量で存在する。
【0105】
本発明による組成物は、澱粉質材料のエステルと非澱粉質ポリマーとの相溶化のための相溶化剤を含むものであってもよい。これは、たとえば、少なくとも1種の比較的親水性の部分と少なくとも1種の比較的疎水性の部分とを内部に有する、低分子量のポリマーまたは界面活性剤あるいは、ポリマー系界面活性剤であり得る。特に、無水マレイン酸などをグラフトして官能化されたタンパク質、ブロックコポリマーおよび合成ポリマーがあげられる。
【0106】
本発明による組成物は、他の付加的な生成物を含むものであってよい。
【0107】
本発明の熱可塑性またはエラストマー組成物に取り込まれてもよい、特に下記に列挙したフィラー、繊維または添加剤の考えられる添加が特にあげられる。これらは、物理化学特性、特に加工挙動および耐久性あるいは、その機械的特性、熱的特性、伝導性、接着剤または感覚刺激特性をさらに改善することを目的とした、生成物であってもよい。
【0108】
付加的な生成物は、無機物質、塩、有機物質から選択される機械的特性または熱的特性を改善または調節する作用剤であってもよい。付加的な生成物は、タルクなどの成核剤、ケイ酸石灰などの衝撃強さまたは引っ掻き抵抗性を改善する作用剤、ケイ酸マグネシウムなどの収縮制御剤、水、酸、触媒、金属、酸素、赤外線またはUV光線を捕捉または失活させる作用剤、石油および脂肪などの疎水化剤、ハロゲン化誘導体などの耐火剤および難燃剤、防煙剤あるいは、炭酸カルシウム、タルク、植物繊維、特にコイア、サイザル、ワタ、麻および亜麻繊維、ガラス繊維またはケブラー繊維などの無機または有機強化用フィラーであってもよい。
【0109】
また、付加的な生成物は、電気または熱または不浸透性に関して伝導性または絶縁特性を改善または調節する作用剤であってもよい。たとえば、空気水、ガス、溶媒、脂肪酸物質、ガソリン、芳香剤または香料(特に無機物質、塩、有機物質、特に、金属粉末および黒鉛などの熱を伝導または消散する作用剤であってもよい。
【0110】
付加的な生成物は、感覚刺激特性、特に、
− 香りの特性(香料または臭気を消す作用剤);
− 光学特性(漂白剤、ホワイトナー(二酸化チタンなど)、染料、顔料、染料エンハンサー、乳白剤、炭酸カルシウムなどのマット化剤、サーモクロミック剤、リン光剤および蛍光剤、金属化剤または大理石化剤および防曇剤);
− 音響特性(硫酸バリウムおよびバライト);
− 触知特性(脂肪酸物質);
を改善する作用剤であってもよい。
【0111】
また、付加的な生成物は、接着特性、特に、紙または木材などのセルロース材料、アルミニウムおよび鋼などの金属材料、ガラスまたはセラミック材料、テキスタイル材料ならびに、特に、松の樹脂、ロジン、エチレン/ビニルアルコールコポリマーなどの無機物質、脂肪酸アミンに対する接着性、潤滑剤、離型剤、静電防止剤およびブロッキング防止剤を改善または調節する作用剤であってもよい。
【0112】
付加的な生成物は、特に、疎水性またはビーズ化剤(石油および脂肪など)、腐食防止剤、保存剤(特に有機酸、特に酢酸または乳酸など)、Ag、CuおよびZnなどの抗微生物剤、オキソ触媒などの分解触媒、アミラーゼなどの酵素から選択される、材料の耐久性を改善する作用剤またはその(生)分解性を制御するための作用剤であってもよい。
【0113】
付加的な生成物は、澱粉を含む従来技術から得られるものと比較して、得られる最終的な熱可塑性またはエラストマー組成物の水および水蒸気に対する感度の大幅な低減を可能にするナノスケールの生成物であってもよい。ナノスケールの生成物は、本発明による組成物の加工挙動および形成挙動のみならず、その機械的特性、熱的特性、伝導性、接着性または感覚刺激特性を改善するという両方の目的で添加できるものである。都合のよいことに、ナノスケールの生成物は、少なくとも1つの寸法が0.5〜200ナノメートル、好ましくは0.5〜100ナノメートル、なお一層好ましくは1〜50ナノメートルである粒子からなる。この寸法は、特に、5〜50ナノメートルであってもよい。
【0114】
ナノスケールの生成物は、どのような化学的性質のものであってもよく、任意選択により、支持体に堆積または結合されていてもよい。これは、天然または合成層状クレー、有機、無機または混合ナノチューブ、有機、無機または混合ナノ結晶およびナノ晶子、有機、無機または混合ナノビーズおよびナノ球(束または凝集体などの別の形態で)、これらのナノスケールの生成物の任意の混合物から選択されてもよい。ケイ酸/フィロケイ酸カルシウムおよび/またはケイ酸/フィロケイ酸ナトリウムとも呼ばれる層状クレーとしては、特に、モンモリロナイト、ベントナイト、サポナイト、ヒドロタルサイト、ヘクトライト、フルオロヘクトライト、アタパルジャイト、バイデライト、ノントロン石、バーミキュライト、ハロイ石、ステベンス石、マナッセ石、パイロオーロ石、ショグレン石、スティッヒト石、バーバートン石、タコバイト、デゾーテルス石(desaultelsite)、モトコーリアイト、ホネサイト、マウントケイサイト、ウェルムランド石およびグリマーの名称で知られる生成物があげられる。このような層状クレーは、たとえば、Rockwoodの商品名NanosilおよびCloisiteですでに一般に市販されている。また、Sasol製のPural製品などのヒドロタルサイトもあげられる。
【0115】
本発明の文脈内で使用してもよいナノチューブは、直径十分の数ナノメートルから数十ナノメートル台の管状構造を有する。これらの生成物のいくつかは、カーボンナノチューブなど、たとえばArkemaから商品名GraphistrengthおよびNanostrength、Nanocylから商品名Nanocyl、Plasticyl、Epocyl、Aquacyl、Thermocylなど、すでに市販されている。このようなナノチューブは、木材セルロースの天然繊維で構成される、数ミクロンの長さに対して直径約30ナノメートルのセルロースナノフィブリルであってもよく、後者から始まる分離および精製によって得られるものであってもよい。
【0116】
ナノ結晶またはナノ晶子は、特に、極めて薄い溶媒培養液中で材料を熱可塑性またはエラストマー組成物自体またはそれ以外のところで結晶化して得られるものであってもよく、前記溶媒で本発明による組成物を構成することが可能である。還元剤または抗微生物剤として役立つ鉄または銀ナノ粒子などのナノ金属ならびに、引っ掻き抵抗性を改善するための作用剤として知られる酸化物ナノ結晶があげられる。また、たとえば、水溶液からの結晶化によって得られるナノスケールの合成タルクもあげられる。また、それ自体、約10ナノメートルの厚さに対して、幅または長さが1〜10ミクロンのVh(ステアリン酸)、Vブタノール、Vグリセロール、VイソプロパノールまたはVナフトールタイプの構造を有するアミロース/脂質複合体もあげられる。これらは、同様の特徴を有するサイクロデキストリンとの複合体であってもよい。最後に、これらは、ソルビトール誘導体、たとえばジベンジリデンソルビトール(DBS)およびその特定のアルキル化誘導体など、ナノスケールの粒子の形で結晶化可能なポリオレフィン用の成核剤であってもよい。
【0117】
使用可能なナノスケールの生成物は、ナノビーズまたはナノ球タイプの個々の粒子すなわち、半径1〜500ナノメートルの擬球形として、束または凝集体などの別の形態で提供されるものであってもよい。特に、一般にエラストマーおよびゴム用のフィラーとして用いられているカーボンブラックがあげられる。これらのカーボンブラックは、大きさが約8ナノメートル(ファーネスブラック)から約300ナノメートル(サーマルブラック)であればよく、1グラムあたりのSTSA比表面積5〜160mに対して通常は100グラムあたり40〜180ccの標準的な油吸収性を呈する一次粒子を含む。このようなカーボンブラックは、特に、Cabot、Evonik、Sid Richardson、ColumbianおよびContinental Carbonによって販売されている。
【0118】
また、「グリーン」タイヤで粉末またはフィラー用のフロー剤として用いられているものなどの親水性または疎水性および沈殿またはヒュームド(発熱性)シリカもあげられる。このようなシリカは、特に、Grace、Rhodia、Evonik、PPGおよびNanoresins AGによって、粉末あるいは、水、エチレングリコールまたはアクリレートまたはエポキシタイプの樹脂に分散させた分散液の形で販売されている
【0119】
また、Evonikから名称AeroxideまたはAerodispで販売されている製品など、たとえば燃焼によって、あるいはSasol underから名称DisperalまたはDispalで販売されている製品など、酸攻撃によってナノスケールにしたナノ沈降炭酸カルシウムまたは金属酸化物(二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化銀、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなど)もあげられる。
【0120】
最後に、ナノスケールのビーズの形で沈殿または凝集されたタンパク質もあげられる。最後に、名称EcosphereでEcosynthetixから販売されている大きさ50〜150ナノメートルの架橋澱粉ナノ粒子などのナノ球状態にした澱粉あるいは、VTTの酢酸澱粉ナノ粒子Cohpol C6N100、あるいは、Topchimのポリスチレンマレイミドなどのナノスケールの状態に直接合成されたナノビーズなどの多糖もあげられる。
【0121】
付加的な生成物の任意の取り込みは、冷条件または低温で物理的な混合によって実施すればよいものであるが、好ましくは組成物のガラス転移点を超える温度で高温条件下での混練によって実施する。この混練温度は、都合のよいことに、60〜200℃、なお一層よいのは100〜180℃である。この取り込みは、バッチ式または連続的、特にインラインでの熱機械的混合によって実施してもよいものである。この場合、混合時間は、数秒から数分と短くてもよい。
【0122】
本発明による組成物は、好ましくは、温度100〜200℃で、Physica MCR 501または同等のタイプのレオメータで測定した複合体粘度が10〜10Pa.sである。射出成形によるその加工の目的で、たとえば、これらの温度でのその粘度が、好ましくは上記であげた範囲の下側部分にあり、組成物は、好ましくは上記にて特定したホットメルト組成物の意味の範囲内である。
【0123】
本発明による熱可塑性またはエラストマー組成物はさらに、実質的にまたは完全に水不溶性であり、水和が困難で、水、生理食塩水、酸化剤、酸またはアルカリ溶液あるいは、唾液、汗、消化液といった生体培養液などの一層複雑な水系培養液に浸漬した場合に良好な物理的完全性を保持するであるという利点を呈する。従来技術の澱粉含有量の高い熱可塑性組成物とは異なり、本発明による組成物は、都合のよいことに、脆性タイプの材料ではなく延性材料の特徴である応力/歪み曲線を呈する。
【0124】
その引張機械特性は、特に、以下のプロトコールに従って評価できるものである。
【0125】
機械特性の測定:
さまざまな組成物の引張機械的な特徴を、Lloyd Instruments LR5K試験ベンチを用いて、引張速度50mmまたは300mm/分、H2タイプの標準的な試験体で、規格NF T51−034(引張特性の測定)に従って判断する。
【0126】
各合金について、線引速度50または300mm/分で得られる応力/歪み曲線(強度=f(伸び率))から、破断点伸びおよび対応する最大引張強度が示される。
【0127】
線引速度50mm/分で本発明の組成物について測定した破断点伸びは、通常、10%〜1000%である。これは通常20%を上回り、好ましくは40%を上回り、なお一層よいのは60%を上回る。この破断点伸びは、都合のよいことに、少なくとも70%に等しくてもよく、特に少なくとも80%に等しくてもよい。顕著に、100%に達するまたはこれを超えることすらあり、あるいは200%すら、あるいはさらに(300%〜900%または1000%すら)大きくなることもある。都合のよい一変形例によれば、この破断点伸びは、少なくとも70%に等しく、500%未満であり、特に80%〜480%である。
【0128】
同じく線引速度50mm/分で測定した本発明の組成物の最大引張強度は、通常4MPa〜50MPaである。これは通常、4MPaを上回り、好ましくは5MPaを上回り、なお一層よいのは6MPaを上回る。顕著に、7MPaに達するまたはこれを超えることすらあり、あるいは、10MPaすら、あるいはさらに(15MPa〜50MPa)大きくなることもある。都合のよい一変形例によれば、この最大引張強度は、少なくとも7MPaに等しく、50MPa未満、および特に10MPa〜45MPaである。
【0129】
本発明による組成物はさらに、本質的に再生可能な原材料からなり、配合物の調節後、プラスチック業界、または他の分野における複数の用途で役立つ以下の特性を呈し得るという利点を持つことがある。
− 普通の合成、人工または天然ポリマーに従来用いられている既存の工場による加工を可能にする、標準的なポリマーについて知られる値の通常範囲内(−120℃〜+150℃のT)の適当な熱可塑性、適当な溶融粘度および適当なガラス転移点;
− 市販または開発中の化石起源または再生可能な起源の多岐にわたるポリマーの十分な混和性;
− 加工条件に対する満足できる物理化学的安定性;
− 水および水蒸気に対する低感度;
− 従来技術の澱粉熱可塑性組成物に比して極めて顕著に改善された機械的性能(可撓性、破断点伸び、最大引張強度);
− 水、水蒸気、酸素、二酸化炭素、UV光線、脂肪酸物質、芳香物質、ガソリンおよび燃料に対する良好な遮断効果;
− 用途に応じて調節可能な不透明度、半透明度または透明度;
− 良好な印刷性ならびに、特にインクおよび水性相中の塗料でペイントできる機能;
− 制御可能な寸法収縮;
− 極めて満足のいく経時安定性;
− 調節可能な生分解性および堆肥化可能性;
− および/または良好なリサイクル可能性。
【0130】
本発明のもうひとつの主題は、あらゆる変形例で上述したような熱可塑性組成物またはエラストマー組成物を製造するためのプロセスであって、以下のステップすなわち:
(i)DSが1.6〜3、好ましくは1.8〜3、一層好ましくは2.0〜2.9の澱粉質材料の少なくとも1種のエステルの選択;
(ii)少なくとも1種の澱粉以外のポリマーの選択;
(iii)好ましくは高温条件下での熱機械的混合による、熱可塑性またはエラストマー組成物の製造。
【0131】
本発明による熱可塑性またはエラストマー組成物は、そのままあるいは、合成ポリマー、人工ポリマーまたは天然起源のポリマーとの混合物として使用できるものである。また、規格EN 13432、ASTM D4600およびASTM 6868の意味の範囲内で生分解性または堆肥化可能なポリマーあるいは、PLA、PCL、PBS、PBATおよびPHAなど、これらの規格に対応する材料を含むものであってもよい。
【0132】
本発明による組成物は、特に、非生分解性(生分解度5%未満、好ましくは0%に近い)および/または好ましくは上述したENまたはASTM規格の意味の範囲内で非堆肥化可能であってもよい。特に、材料として想定した用途および耐用年数の最後に再利用/リサイクルの方法に適するように、水に対する親和性を調節することで、本発明による組成物の耐用年数および安定性を調節することが可能である。
【0133】
本発明による熱可塑性またはエラストマー組成物は、都合のよいことに、組成物中に存在する全炭素に対して、ASTM D6852規格の意味の範囲内で再生可能な起源の炭素を少なくとも15%、好ましくは少なくとも30%、特に少なくとも50%、なお一層よいのは少なくとも70%またはさらに80%含有する。この再生可能な起源の炭素は、本質的に、本発明による組成物に必然的に存在する澱粉質材料のエステルを構成するものであるが、都合のよいことに、上記にて優先的に定義したものなどの再生可能な天然資源由来の場合は、任意の可塑剤中に存在する組成物の構成要素または組成物中の他の任意の構成要素の賢明な選択によるものであってもよい。
【0134】
特に、特に食品包装分野での同時押出によって得られる単独または多層構造で、酸素、二酸化炭素、芳香物質、燃料および/または脂肪酸物質に対するフィルム、シールまたはバリア製品として、本発明による組成物を用いることが想定できる。
【0135】
また、たとえば、テキスタイル材料、容器またはタンクの印刷可能な電子ラベル、フィルムまたは膜の製造という文脈内での合成ポリマーの、親水性の性質、電気伝導適性、水および/または水蒸気の浸透性または有機溶媒および/または燃料に対する耐性を高める、あるいはそれ以外に、木材、ガラスまたは皮膚などの親水性支持体でのホットメルトまたはヒートシール性フィルムまたはシール性フィルムの接着特性を改善する目的で使用してもよい。
【0136】
本発明による熱可塑性またはエラストマー組成物の比較的親水性の性質は、生命体および結果として食物連鎖での脂肪組織における生物蓄積の危険性をかなり低減する点に注意されたい。
【0137】
前記組成物は、粉体、顆粒状またはビーズ形態であってもよい。これは、そのままで、バイオソースまたは非バイオソースのマトリクスでの希釈を想定したマスターバッチまたはマスターバッチのマトリクスを構成してもよい。
【0138】
また、設備の製造業者またはカスタムモルダーによって、プラスチックまたはエラストマー系物品の製造用に直接に使用可能なプラスチック原材料または化合物を構成してもよい。
【0139】
また、そのままで、接着剤、特にホットメルトタイプの接着剤または接着剤、特にホットメルトタイプの接着剤の配合用のマトリクスを構成してもよい。
【0140】
特にチューインガム用のガム基礎剤またはガム基礎剤マトリクスあるいは、樹脂、co−樹脂またはナノフィラー、業界、特にタイヤ、道路用ビチューメンまたは他のビチューメンをはじめとするゴムおよびエラストマー業界、インク業界、ワニス業界、塗料業界、紙および板紙業界、織製品および不織製品の業界で使用可能な、特にバイオソースのいくつかまたはすべてを構成してもよい。
【0141】
本発明の一主題は、さらに、本発明による組成物、特にエラストマー組成物を、チューインガム用のガム基礎剤の製造に用いることである。
【0142】
本発明のもうひとつの主題は、都合のよいことに、5〜50%、好ましくは10〜45%、特に10〜40%の量で本発明による組成物を含有するチューインガム用ガム基礎剤である。
【0143】
本発明のもうひとつの主題は、運送業、特に自動車、航空、鉄道または船舶建造業界での部品または設備の一部の製造用に、電化製品、電子機器または家電製品業界、またはスポーツおよびレジャー業界用に、本発明による組成物、特にエラストマー組成物を用いることである。
【0144】
これは、たとえば、タイヤのトレッドまたはカセット、ベルト、ケーブル、パイプ、シール、成形部品、哺乳瓶の乳首、手袋、靴のソールまたはコーティング布帛であってもよい。
【0145】
最後に、本発明による組成物は、任意選択により、すべての熱可塑性またはエラストマー性を決定的に失う不可逆性広範囲架橋による熱硬化性樹脂(duroplast)の製造に用いられるものであってもよい。
【0146】
また、本発明は、本発明の組成物を含むプラスチック、エラストマー材料または接着剤材料あるいは、またはそこから得られる完成品または半完成品にも関する。
【実施例】
【0147】
実施例1:本発明による組成物の製造
組成物の製造
この実施例で使用するのは:
− 澱粉質材料のエステルとして、エステルのDS2.7で、以下「ACET 1」と表記するジャガイモ澱粉の酢酸エステル;
− 澱粉質材料のこのエステルの可塑剤として、三酢酸グリセロール(トリアセチン)の液体組成物;
− 澱粉以外のポリマーとして、熱可塑性ポリマー、この場合はPLA(ポリ乳酸);
− 他の澱粉以外のポリマーとして、名称ESTANE(登録商標) 58887でNoveonから販売されているポリエーテルTPUタイプのエラストマーポリマー;
− 他の澱粉以外のポリマーとして、低密度ポリエチレン(LDPE);
− 他の澱粉以外のポリマーとして、名称BONDYRAM(登録商標) 4001でPolyramから販売されている無水マレイン酸グラフトポリエチレン;
− カップリング剤として、名称Suprasec 1400でHuntsmanから販売されているメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)。
【0148】
第1に、複数のステップで生成されるのは、重量で:
− ACET 1澱粉質材料のエステル30%;
− トリアセチン20%;
− PLA50%
を含有する組成物である。
【0149】
第1ステップの間に、Hobartタイプのミキサーで5分間、ACET 1エステル60部とトリアセチン40部とを混合する。得られる混合物を粉砕後、4バレルのそれぞれで以下の温度プロファイルに従って、主原料スロート経由で、直径(D)19mm、長さ25 DのHAAKEタイプの一軸エクストルーダーに導入する:40℃、140℃、130℃、110℃、回転速度80rpm。
【0150】
その後、可塑化ACET 1澱粉質材料のエステルのロッドを顆粒化する。
【0151】
次に、依然としてHobartタイプミキサーの中で5分間、可塑化したACET 1エステルの顆粒(「ACET 1 pl」)を重量比50/50でPLAと混合する。
【0152】
次に、依然として主原料スロート経由で、得られたACET 1 pl/PLA混合物を、4バレルそれぞれで以下の温度プロファイルに従って、上述したHAAKE一軸エクストルーダーに導入する:40℃、140℃、130℃、110℃、回転速度40rpm。
【0153】
この混合物は、エクストルーダーなどの従来の変換設備で導入、アッセイ、変換可能な従来の熱可塑性材料から想定されるものに基づくように見える。
【0154】
得られる押出成形組成物(以下、「COMP 1」)は、クリーム色の、連続したロッドの形で、自らの重量下で引っ張られることができ、可視的には均質のように見える。手で触れると、可撓性は良好であるが、未架橋ゴムタイプのむしろ遅い弾性応答を示す。
【0155】
これは、「機械的特性の測定」の段落で説明したプロトコールに従って線引速度50mm/分で測定した場合に、以下の引張機械的な特徴を有する:
− 破断点伸び:23%;
− 最大引張強度:16MPa。
【0156】
さらに、「ISO 14851による生分解度の測定」の段落で上述したプロトコールに従って測定した生分解度を有し、その平均値は極めて低いすなわち15%未満であるのに対し、同じ条件下で、微結晶セルロースは生分解度が90%に近い。
【0157】
PLA、PHAあるいは、生分解性と表示された他のポリマーは、これらの条件下で処理されると、それ自体、生分解度の値が通常は50%を超える。
【0158】
続いて、本発明による上述した組成物COMP 1を、同様に本発明による押出成形組成物(「COMP 2」「COMP 3」および「COMP 4」)中、使用した。これらの組成物はそれぞれ、重量で:
− COMP 2:100部のCOMP 1+2部のカップリング剤(MDI);
− COMP 3:50部のCOMP 1+50部のポリエーテルTPU ESTANE(登録商標) 58887+2%のMDI;
− COMP 4:50部のCOMP 1+45部の低密度ポリエチレン(LDPE)+BONDYRAM(登録商標) 4001中5%の無水マレイン酸グラフトPE
を含有する。
【0159】
これらは、組成物COMP 1で使用したものと同じ測定条件下で、対照組成物、LDPEだけで構成される組成物またはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(「ABS」)だけで構成される組成物として、以下の表に示す機械的特徴を有する。
【0160】
【表1】

【0161】
これらの結果から、全体として、少量のカップリング剤(「COMP 2」)を加えるおよび/またはポリエーテルTPU(「COMP 3」)またはポリオレフィン(「COMP 4」)タイプのポリマーと混合することで、本発明による組成物COMP 1の引張機械的な特徴を、依然として有意に改善できることがわかる。
【0162】
本出願人は、
− 本発明による組成物COMP 3は極めて高い割合のCOMP 1を含有するが、熱的および機械的特徴はTPUまたはABSタイプなどの市販の「エンジニアリング」熱可塑性エラストマーでの場合に匹敵し、
− しかしながら、極めて高い割合でCOMP 1を含有する本発明による組成物COMP 2およびCOMP 4は、破断点伸びの相対的な欠点にもかかわらず、LDPEタイプの「商品ポリマー」として知られる市販のポリマーに近い挙動を呈する
ことを、顕著に一層広く観察した。
【0163】
実施例2:チューインガム作製製造時における本発明によるエラストマー組成物の使用
この実施例の文脈では、チューインガムの作製製造に用いられる合成ポリマーを主成分とするガム基礎剤を少なくとも部分的に代替する目的で、本発明による組成物を使用できる可能性を評価する。
【0164】
2.1:原材料
この実施例での主原材料として用いるのは:
− − 澱粉質材料のエステルとして、それぞれ:
○ エステルのDSが2.7前後である、ワックス状トウモロコシ澱粉(本出願人が販売しているマルトデキストリンGLUCIDEX(登録商標) 2)由来のマルトデキストリンの酢酸エステル(以下、「ACET 2」と表記);
○ エステルのDSが2.5前後である、流動化トウモロコシ澱粉、この場合は本出願人が販売している澱粉CLEARGUM(登録商標) MB80の酢酸エステル(以下、「ACET 3」と表記);
○ ジャガイモ澱粉の酢酸エステル(DS0.45)、続いてε−カプロラクトンとグラフト化して得られる、エステルの合計DSが2.6前後の澱粉質材料のエステル(以下、「ACET 4」と表記);
○ エステルのDS2.6前後のジャガイモ澱粉の酢酸エステルであって、これをさらにMS(モル置換度)0.4前後でヒドロキシプロピル化したもの(以下、「ACET 5」と表記);
− − 澱粉質材料のこれらのエステルの可塑剤として、トリアセチン(以下、「PLAST 1」と表記);
− − 合成ポリマーとして、エラストマー組成物(ガム基礎剤)は澱粉以外のポリマーの合計で52重量%前後の混合物を含み、この組成物はポリ酢酸ビニル(PVAc)、ロジンエステル、ブタジエン/スチレンコポリマーおよびポリイソブチレンで構成される100%に対する残りが主に炭酸カルシウム、パラフィンワックス、乳化剤で構成される。ポリイソブチレンおよびブタジエン/スチレンエラストマーは、52%のガム基礎剤ポリマーのうちの3分の1すなわち14%を構成する。
【0165】
2.2:澱粉質材料のエステルの可塑化
110℃で加熱したKuestner Zアーム混練装置にて、澱粉質材料のエステルACET 2からACET 5を各々可塑剤PLAST 1と一緒に、以下の重量割合で加熱する:
・ 70%のACET 2+30%のPLAST 1、
・ 60%のACET 3+40%のPLAST 1、
・ 60%のACET 4+40%のPLAST 1、
・ 60%のACET 5+40%のPLAST 1。
【0166】
50分間の混練後、次のものが観察される:
・ エステルACET 2およびACET 5を主成分とする混合物の極めて良好な均一性、
・ エステルACET 3(混練後にわずかな白色点の存在)およびエステルACET 4(混練後にゲル状粒子の存在)を主成分とする混合物の低めの均一性
・ 特にエステルACET 4を主成分とする混合物の良好な弾力。
【0167】
2.3:澱粉質材料の可塑化エステルのガム基礎剤への取り込み
上述したものと同じ混練装置で、上述したようなエラストマー組成物(ガム基礎剤)70重量%を、依然として110℃で30分間、点2.2で得られた澱粉質材料の可塑化エステルそれぞれ30重量%と混合し、以下、それぞれACET 2 pl、ACET 3 pl、ACET 4 plおよびACET 5 plと表記する。
【0168】
澱粉質材料/ガム基礎剤混合物の4種類の可塑化エステルすべてが均質であることが観察され、ガム基礎剤を構成する合成ポリマー材料と澱粉質材料の事前に可塑化した各酢酸エステルACET 2 plからACET 5 plとの間の良好な相溶性を示しあるす、澱粉質材料/ガム基礎剤混合物の4種類の可塑化エステルすべてが均質であることが観察される。
【0169】
2.4:澱粉質材料の可塑化エステルと併用または併用しないベースガムからのチューインガムの作製製造
以下の配合に従ってチューインガム組成物を作製製造する。
2.4.1:配合
【0170】
【表2】

【0171】
2.4.2:手順
・ 澱粉質材料の可塑化エステルと併用するまたは併用しないガム基礎剤を、50℃まで予加熱したIKA(IKA VISC MKD 0.6−MESSKNETER H60)Zアーム混練装置に導入。粉末ソルビトールの半分を添加。2分間混練。
・ マルチトールシロップを添加、2分間混練。
・ マンニトールおよび粉末キシリトールを添加、2分間混練。
・ 粉末ソルビトールの残りの半分とグリセロールを添加、2分間混練。
・ 粉末香味料、メントールおよびアスパルタムアスパルテームを添加、1分間混練。
・ 液体香味料を添加、1分間混練。
・ 混練装置を空にしてから全てを出し、得られた混合物をの圧延して厚さ5mmのストリップにし、長さ30mm、幅18mmの「スティック」に切断する。
【0172】
2.4.3 試験した「ガム基礎剤」成分
それぞれ以下のように構成したさまざまな「ガム基礎剤」成分GUM 1からGUM 5を試験する(チューインガム配合物への導入量:35%−上記参照):
○ GUM 1:ガム基礎剤100重量%=対照
・ GUM 2:70重量%のガム基礎剤+30重量%の澱粉質材料の可塑化酢酸エステルACET 2 pl;
・ GUM 3:70%のガム基礎剤/30%のACET 3 pl;
・ GUM 4:70%のガム基礎剤/30%のACET 4 pl;
・ GUM 5:70%のガム基礎剤/30%のACET 5 pl。
【0173】
2.4.4 スティックの硬度の測定
作製製造したスティックのニュートン単位で表される硬度を、INSTRON 4500装置(測定セル:100ニュートン;直径3.9mmの円筒形パンチ;移動速度:50mm/分)を用いて測定する。このスティックを、作製製造直後(D0)にさまざまな温度(45℃、35℃または20℃)で、または人工気候室(温度:20℃;相対湿度(RH):50%)内に入れたアルミニウム包装にくるん中で保管し、た1日後、8日後、15日後に、それぞれ測定する。
【0174】
ニュートン単位で示す結果を、以下の表にあげておく。
【0175】
【表3】

【0176】
通常、ガム基礎剤の30%が澱粉質材料の可塑化エステルで代替されたチューインガムは:
− − 澱粉質材料の可塑化エステルACET 4 plの粒子が若干散乱して残っているのが観察されるガム基礎剤GUM 4で得られたものとは異なり以外は、完全に均質である;
− − 対照よりさほど硬質硬さが少ではなく、その対照より硬質ではさが少ない状態が維持される。INSTRONテクスチャが対照に最も近いのは、30%の澱粉質材料の可塑化エステルACET 2 pl、すなわち、トリアセチンで可塑化した30%のGLUCIDEX(登録商標) 2の酢酸エステルを含有するガム基礎剤GUM 2を用いて作製製造したものである。
【0177】
感覚刺激試験からは、全体的に、これらのチューインガムのテクスチャおよび味が完全に許容できるものであり、ガム基礎剤GUM 2から作製製造したものもは、このような試験時にも、ガム基礎剤を澱粉質材料のエステルと併用していない対照のチューインガムに最も近いことが示された。
この実施例2の全体的結果は、全体的に、少なくとも部分的であるが合成による従来のガム基礎剤に代わる有意な代替物(数重量%から少なくとも30重量%)として、チューインガムの作製製造時に、可塑化生成物ACET 2、ACET 3、ACET 4、ACET 5などの澱粉質材料のエステルを、合成による従来のガム基礎剤に少なくとも部分的に、しかし有意に代わる代替物(数重量%から少なくとも30重量%)として、完璧にうまく使用できることを示す。
【0178】
実施例3:澱粉質材料の可塑化エステルおよびエステルTPUタイプのポリマーを主成分とする本発明による組成物の調製製造
組成物の調製製造
この例で使用するのは:
− − 澱粉質材料の可塑化エステルとして、実施例2で説明したようなマルトデキストリンの酢酸エステルACET 2;
− − 可塑剤として、前記エステル100重量部あたり15重量部の量のベンジルアルコール;
− − 澱粉以外のポリマーとして、名称ESTANE(登録商標) 58447でNoveonから販売されているエステルTPUタイプのポリマー;
− − カップリング剤として、名称Suprasec 1400でHuntsmanから販売されているメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)
である。
【0179】
実施例1の一般的な条件下で、:
− − 50部のESTANE(登録商標) 58447ポリマー;
− − 50重量部の可塑化ACET 2エステル;
− − 1重量部のMDI
を含有する本発明による組成物(以下、「COMP 5」)を生成する。
【0180】
COMP 5のこの組成物は、「機械的特性の測定」の段落で上述したプロトコールで、線引速度50mm/分にて測定される以下の引張機械的な特徴を有する:
− − 破断点伸び:80%;
− − 最大引張強度:14MPa。
【0181】
COMP 5の組成物は、高い割合で澱粉質材料のエステルを含有するが、「耐衝撃ポリスチレン」タイプまたは「農業フィルム用のEVA」タイプのポリマーの特定の性能の挙動を呈する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ISO 14851規格に準じる生分解度が50%未満、好ましくは30%未満であり、
b)
− エステルの置換度(DS)が1.6〜3の澱粉質材料のエステルを、少なくとも0.5%、最大で99.95重量%、好ましくは1〜99重量と、
− 澱粉以外のポリマーを少なくとも0.05重量%、最大で99.5重量%、好ましくは1〜95重量%と、を含有することを特徴とする、熱可塑性またはエラストマー組成物。
【請求項2】
澱粉質材料の前記エステルが、そのままで、ISO 14851規格に準じる生分解度が50%未満、好ましくは30%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記澱粉以外のポリマーが、そのままで、ISO 14851規格に準じる生分解度が50%未満、好ましくは30%未満であることを特徴とする、請求項1および2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
澱粉質材料の前記エステルの前記DSが1.8〜3、好ましくは2.0〜2.9、なお一層好ましくは2.5〜2.9であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記澱粉質材料の前記エステルの前記DSが2.6〜2.8であることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記澱粉以外のポリマーが、生分解性ポリエステル、ポリアルキレンカーボネートおよび水溶性ポリマー以外のポリマーからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記澱粉以外のポリマーが、ポリオレフィン、ビニルポリマー、スチレンポリマーまたはスチレンコポリマー、アクリルポリマーまたはメタクリルポリマー、ポリオキシフェニレン、ポリアセタール、ポリアミド、生分解度50%未満、好ましくは30%未満のポリカーボネート、生分解度50%未満、好ましくは30%未満のポリエステル、フルオロポリマー、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリエポキシド、シリコーン、アルキドおよびポリイミド、これらを官能化した変形例および上述したポリマーの任意の混合物からなる群から選択される熱可塑性ポリマーであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記澱粉以外のポリマーが、PET、官能化または非官能化ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド、特にポリアミドPA−6、PA−6,6、PA−6,10およびPA−6,12、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリオキシメチレン(POM)、これらのポリマーの任意の混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記澱粉以外のポリマーが、エラストマーポリマー、好ましくは、天然ゴムおよびその誘導体、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ブタジエン−スチレンコポリマー(SBR)、任意選択により水素化されたブタジエン−アクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートコポリマー(ASA)、エチレン/メチルアクリレートコポリマー(EAM)、エーテルまたはエステル−エーテルタイプの熱可塑性ポリウレタン(TPU)、特にシラン、ハロゲン化、アクリルまたは無水マレイン酸単位で官能化されたポリエチレンまたはポリプロピレン、EDMおよびEPDM、特に無水マレイン酸単位で官能化されたポリオレフィン(TPO)、スチレン−ブチレン−スチレンコポリマー(SBS)およびスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンコポリマー(SEBS)由来の熱可塑性エラストマー、これらのポリマーの任意の混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記澱粉以外のポリマーの20℃での水溶性が10%未満であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
− 10〜70重量%、好ましくは10〜60重量%の澱粉質材料の前記エステルと、
− 30〜90重量%、好ましくは40〜90重量%の澱粉以外のポリマーと、を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
− 50〜99重量%、好ましくは51〜98重量%の澱粉質材料の前記エステルと、
− 1〜49重量%、好ましくは2〜40重量%、なお一層好ましくは2〜35重量%の澱粉以外のポリマーと、を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
− 5〜49重量%、好ましくは7〜49重量%、なお一層好ましくは10〜49重量%の澱粉質材料の前記エステルと、
− 50〜95重量%、好ましくは51〜93重量%、なお一層好ましくは51〜90重量%の澱粉以外のポリマーと、を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記澱粉質材料の前記エステルが、顆粒状のエステル、好ましくは加水分解、酸化または加工された澱粉であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記澱粉質材料の前記エステルが、水溶性澱粉のエステルまたは有機加工澱粉のエステル、好ましくはアルファ化澱粉のエステル、押出成形澱粉のエステル、噴霧乾燥澱粉のエステル、デキストリンのエステル、マルトデキストリンのエステル、官能化澱粉のエステル、有機溶解性澱粉のエステルまたはこれらの生成物の任意の混合物(任意選択により可塑化されている)であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記澱粉質材料の前記エステルが、澱粉、デキストリンまたはマルトデキストリンの、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、吉草酸エステル、ヘキサン酸エステル、オクタン酸エステル、デカン酸エステル、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、オレイン酸エステルまたはステアリン酸エステルであることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記澱粉質材料の前記エステルが、水溶性または有機加工澱粉の酢酸エステル、デキストリンの酢酸エステルまたはマルトデキストリンの酢酸エステルであることを特徴とする、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
可塑化剤を含有し、前記可塑化剤が、好ましくは、前記澱粉質材料のエステル100乾燥重量部あたり、1〜150乾燥重量部の量、好ましくは10〜120乾燥重量部の量、特に25〜120乾燥重量部の量で存在することを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
− 10〜60重量%の澱粉質材料のエステルと、
− 40〜85重量%の澱粉以外のポリマーと、
− 5〜30重量%の可塑化剤と、
を含むことを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
− 破断点伸びが少なくとも70%に等しく、500%未満であり、
− 引張強度が少なくとも7MPaに等しく、50MPa未満である
ことを特徴とする、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物中に存在する炭素全体に対して再生可能な起源の炭素(ASTM D6852)を少なくとも15%、好ましくは少なくとも30%含むことを特徴とする、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物を含有する、チューインガム用ガム基礎剤。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物を5〜50%、好ましくは10〜45%,特に10〜40%含有するという事実を特徴とする、請求項22に記載のガム基礎剤。
【請求項24】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物を、マスターバッチ、マスターバッチマトリクス、プラスチック原材料、プラスチックまたはエラストマー系物品用の化合物、特にホットメルトタイプの接着剤、特にホットメルトタイプの接着剤を配合するためのマトリクス、ガム基礎剤の構成要素、ガム基礎剤マトリクスの構成要素、特にチューインガムの構成要素、樹脂の構成要素、co−樹脂の構成要素あるいは、ゴム用ナノフィラー、エラストマー、ビチューメン、インク、ワニス、紙、厚紙、織製品および不織製品として、あるいは熱硬化性樹脂の製造用として使用する使用法。
【請求項25】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物を、前記チューインガム用のガム基礎剤の製造用に使用する使用法。
【請求項26】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物を、運送業、特に自動車、航空、鉄道または船舶建造業界での部品または設備の一部の製造用に、電化製品、電子機器または家電製品業界、スポーツおよびレジャー業界に使用する使用法。

【公表番号】特表2012−505280(P2012−505280A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530538(P2011−530538)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051951
【国際公開番号】WO2010/043813
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(592097428)ロケット・フルーレ (58)
【Fターム(参考)】