説明

濃縮装置及びその除菌洗浄方法

【課題】洗浄性に優れた濃縮装置と、その除菌洗浄方法を提供する。
【解決手段】濃縮装置1aは、流状物の液体分を蒸発させて該流状物の濃縮液又は乾燥物を生成する装置である。かかる濃縮装置1aは、濃縮又は乾燥すべき流状物が投入される内側空間を有するシリンダ3と、該流状物から生じた蒸気を排出するための排気口22と、該排気口に接続された湾曲管路72と、シリンダ3の内側空間にて軸方向に延出する回転シャフト8と、該シャフトの周面に設けられたブレード11とを有している。排気口22に接続された湾曲管路72は、シリンダ上部を閉塞する天板51を超える位置に延出している。洗浄時には、シリンダ3内を洗浄液で満たした状態でシャフト8を回転させることにより、洗浄液4に渦巻状の乱流を生じさせることができる。その結果、洗浄液自体の洗浄作用と、乱流による剥離除去作用との相乗効果で、シリンダ3内に固着した異物を確実に除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄性が改善された濃縮装置とその除菌洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液状の薬品や食材等の流体物を濃縮又は乾燥化するための装置として、様々な濃縮装置が提案されている。中でも、真空低温濃縮装置の一種である薄膜式蒸発濃縮装置(特許文献1)は、その熱交換効率の高さが大いに注目され、様々な分野で広く利用されている。
例えば、近年では大豆煮汁中に移行する有用成分が注目され、廃棄されていた大豆煮汁を食品原料等として有効活用する研究が進められている。そして、その一つの手法として、特許文献1に見られるような薄膜式蒸発濃縮装置を利用し、大豆煮汁からその濃厚液又は煮汁粉末を生成し、これを再利用する方法が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平4−4001号公報
【特許文献2】特開2005−65633号公報
【0003】
以下、濃縮・乾燥すべき流体の具体例として大豆煮汁を挙げて、図4〜図7に基づいて従来の濃縮システムについて具体的に説明する。
図4は、従来の濃縮乾燥システムの概略構成を示す図である。
図5は、図4のシステムが有する濃縮装置1b(薄膜式蒸発濃縮装置)の内部構造を具体的に示す図である。
図6は、図5の濃縮装置1bのV−V線に沿った断面図である。
図7は、図5の濃縮装置1bの一部を拡大して示す側面図である。
【0004】
図4に示す従来の濃縮乾燥システムは、主として、熱交換作用によって大豆煮汁を濃縮又は乾燥させるための濃縮装置1b(薄膜式蒸発濃縮装置)と、当該濃縮装置で生成された濃厚液又は乾燥物を収容するための容器91と、濃縮装置1bからの排気に含まれる蒸気と固形分とを分離するためのサイクロン93と、当該サイクロンからの蒸気を凝縮するためのコンデンサ95と、当該コンデンサからの凝縮水を貯留するためのタンク97とを有している。
【0005】
当該システムの要部を成す濃縮装置1bは、図5に示すような内部構造を有しており、当該濃縮装置1bとサイクロン93との間は、水平に延びる管路71によって接続されている。
【0006】
図5において、円筒状のシリンダ3は、その周囲外側を囲繞するジャケット2を有している。当該シリンダ3の上端側は、シリンダ上部密閉用の蓋体を成す天板51によって閉塞されており、また、当該シリンダの下端側は濃厚液や乾燥物が通過できるように開口している。
【0007】
シリンダ3の上方の側壁には材料投入口12が設けられており、該材料投入口を介して、被濃縮物または被乾燥物として大豆煮汁13が供給される。さらに、シリンダ3の側壁であって、材料投入口12よりも高い位置には、後述する熱交換作用を受けて生じた蒸気を排出するための排気口22が設けられている。排気口22には、水平方向に延出しサイクロン93へと通ずる水平管路71が接続されている。
【0008】
シリンダ3内に投入された流体(大豆煮汁等)は、後述する熱交換作用を受けて濃縮又は乾燥化し、シリンダ下端側の開口部を介して落下する。一方、熱交換作用を受けて生じた蒸気は、排気口22及び水平管路71を介してサイクロン93へと送られる。
【0009】
円筒状のシリンダ3内の軸方向には、回転自在に軸支された回転シャフト8が同軸的に設けられている。回転シャフト8の上部側は、シリンダ3上部を密閉する天板51を水密状態で貫通している。天板51を貫通して上方へ延びる回転シャフト8の上端側に対しては、図示しないモータからの回転駆動力がベルトプーリ機構を介して与えられる。濃縮乾燥運転時には、当該モータを駆動させて回転シャフト8を回転させる。
【0010】
回転シャフト8の材料投入口12に対向する部分には、ディスク状の分散板20が一体的に設けられている。
さらに、回転シャフト8には、長手方向所定ピッチで、図7に示すようなブラケット10,10…が複数固設されており、該ブラケット10,10…は、周方向90゜おきに配置されている(図6参照)。ブラケット10,10のそれぞれには、ピン31により周方向にスイング自在に軸支されたベース32が取り付けられており、該ベース32によってブレード11が把持されている(図6,7参照)。
【0011】
図5において、シリンダ3を囲う上下のジャケット2,2のそれぞれの上部には、供給口14が設けられており、該供給口14を介して所定温度のスチーム(蒸気)15が供給される。
また、ジャケット2,2のそれぞれの下部には、排出口16が設けられており、該排出口16を介してスチーム15が排出される。
さらに、シリンダ3の下部には排出口17が設けられており、該排出口17から大豆煮汁の濃厚液18が排出される。
【0012】
上述した構成を有する薄膜式蒸発濃縮装置1bにおいて、モータを回転させると、ベルトプーリ機構を介して伝達されたモータからの駆動力によって、回転シャフト8が軸受5,メカニカルシール6に支持された状態で、高速回転し始める。この時、回転シャフト8にスイング自在に設けられた各ブレード11は、当該シャフトの回転に伴って生じる遠心力によって、ブラケット10のピン31に軸支された状態でシリンダ3の内面に対し所定クリアランス19を介して旋回する(図6参照)。
【0013】
そして、材料投入口12により大豆煮汁13を連続供給すると、該煮汁13はリング状の分散板20により遠心作用を受け、シリンダ3の内壁面に薄膜状に添設されるとともに、重力によってシリンダ3の内壁面を伝わって流過していく。さらに、該煮汁13は、複数のブレード11が高速旋回する状況下で、シリンダ3の内面に対し薄膜状に展延され、さらに、ジャケット2内を流過する所定温度のスチーム15によって熱交換されて加熱される。
【0014】
この薄膜状の液体に対する加熱作用により、大豆煮汁のうちの揮発性成分(水分)の一部又は全部は蒸発して上昇し、排出口22から排出され、又は、真空装置で吸出される。その結果、シリンダ3の内壁面を流過する大豆煮汁は蒸発作用を受けてその濃度が高まって濃縮され、排出口17から濃厚液18が排出される。或いは、高速旋回するブレード11の先端部分によって擦り落とされて、粉末状の乾燥物として落下排出される。そして、排出された濃厚液または乾燥物は、自重により落下して、容器91内に収容される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述した濃縮装置1bを大豆煮汁等の食材乾燥又は濃縮で使用した後には、大豆煮汁由来の固形分や粘着物が、主にブレード11の周囲に多量に付着している。また濃縮装置1bの運転中には、前述した固形分等の一部が蒸気に乗って上昇するため、天板51の真下周囲の隅(環状のコーナー部C)や排気口22の周辺にも、当該固形分等が付着する傾向にあることが分かっている。
【0016】
このように、濃縮装置1bの連続運転を終えた後では、ブレード11の周囲のみならず、排気口22の周辺や、天板51の真下周囲の隅にも固形分が付着している。そのため、衛生状態を良好に保つためにも、運転終了後にはシリンダ3の内部を隅々まで洗浄して付着物を除去して除菌する必要がある。
【0017】
従来の洗浄方法では、シリンダ3の下端側を密閉した状態で図8に示すようにシリンダ内に洗浄液4を充填して、シリンダ内の固着物を溶解,除去することが行われている。
【0018】
しかしながら、従来の濃縮装置1bの場合、排気口22に接続された水平管路71が文字通り水平方向に延出しているため、シリンダ3内を洗浄液で十分に満たすことができない。すなわち、図8に示すように、シリンダ内に充填された洗浄液4の水位は排気口22の真下位置までは達するものの、水位が該排気口に達すると、洗浄液がオーバーフローし始めて水平管路71を介してサイクロン側に流出してしまう。
【0019】
そのため、従来の濃縮装置の場合、上端側の一定領域(図8における区間D)については、上述した洗浄液による洗浄が行えなかった。特に、天板51真下のコーナー部Cの周辺に付着した固着物については、洗浄液がまったく届かないため、図示する従来方法ではシリンダ3の上端側の固着物を除去できないといった問題があった。
【0020】
そこで、洗浄液が届かないシリンダ上端側の一定領域については、作業終了後に機材を分解して手作業で洗浄することも検討されたが、洗浄作業以外に煩雑な分解・組立て作業を要するため、作業効率が極めて悪かった。
【0021】
また、上述した濃縮装置を食材の加工に利用するのであれば、運転開始直前に、シリンダ内を除菌液に浸して十分な除菌作業を行う必要があるが、このような作用を行うにしても、洗浄作業と同様の問題があった。
【0022】
そこで、上述した洗浄性の問題点に鑑み、本発明の目的は、洗浄性に優れた濃縮装置と、その除菌洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的は、
濃縮または乾燥すべき流体が投入される内側空間を有するシリンダと、
前記流体から生じた蒸気を排出するための排気口と、
前記排気口に接続され、当該排気口よりも高い位置に延出している部分を含む管路と、を有する濃縮装置によって達成される。
【0024】
上記濃縮装置は、さらに、
前記シリンダの内側空間において軸方向に延出する回転シャフトと、
前記回転シャフトの周面に設けられ、前記シリンダの内壁面に対し一定の間隙を空けて周方向に旋回するブレードと、を有することが好ましい。
【0025】
また、前記排気口に接続された管路が、前記シリンダの内側空間の上端を超える高さ位置に延出している部分を含むことが好ましい。
【0026】
また、上記目的は、
濃縮または乾燥すべき流体が投入される内側空間を有するシリンダと、前記流体から生じた蒸気を排出するための排気口と、を具備する濃縮装置と、
前記濃縮装置の排気口に接続されたサイクロンと、
前記濃縮装置の排気口と前記サイクロンとの間を接続し、当該排気口よりも高い位置に延出している部分を含む管路と、
を有する濃縮システムによって達成される。
【0027】
さらに、上記目的は、
洗浄用及び/又は除菌用の液体をシリンダ内に充填し、当該液体の水位がシリンダの排気口を超えた状態でシャフトを回転させることによって達成される。
【0028】
さらに、上記目的は、
シリンダ内を洗浄用及び/又は除菌用の液体でほぼ満たした状態でシャフトを回転させることによって達成される。
【発明の効果】
【0029】
請求項1記載の発明によれば、
管路が排気口よりも高い位置に延出しているので、シリンダ内部の洗浄時に洗浄液(除菌時には除菌液)を排気口を超える高さにまで満たすことができる。その結果、従来では洗浄液が届かなかった排気口周辺についても、洗浄液による洗浄が行えるようになる。
【0030】
請求項2記載の発明によれば、
シリンダの内部には、ブレードを具備する回転シャフトが設けられている。これにより、濃縮装置の稼動時には、大豆煮汁等の流体を薄膜状に展延させて、効率的に濃縮,乾燥化できる。加えて、後の洗浄時において、シリンダ内を洗浄液でほぼ満たした状態でシャフトを回転させることにより、洗浄液に渦巻状の乱流を生じさせることができる。その結果、洗浄液自体の溶解洗浄作用と、水流による剥離除去作用との相乗効果が生まれ、シリンダ内に固着した異物(例えば大豆煮汁由来の固着物や粘着物等)を効果的に除去することができる。
【0031】
請求項3記載の発明によれば、
排気口に接続された管路は、シリンダの内側空間の上端を超える高さ位置に延出しているので、シリンダ内を洗浄液でほぼ満たすことが可能になる。その結果、排気口周辺に限らず、従来洗浄効果が全く期待できなかった上端領域(具体的には、シリンダの天板真下周囲のコーナー部)についても、洗浄液による洗浄が行えるようになる。
【0032】
請求項4記載の発明によれば、
管路が排気口よりも高い位置に延出しているので、シリンダ内部の洗浄時に洗浄液を排気口を超える高さにまで満たすことができる。その結果、従来では洗浄液が届かなかった排気口周辺についても、洗浄液による洗浄が行えるようになる。
【0033】
請求項5記載の発明によれば、
シリンダ内に充填された洗浄液に渦巻状の乱流を生じさせることができる。その結果、洗浄液自体の溶解洗浄作用と、水流による剥離除去作用との相乗効果が生まれ、シリンダ内に固着した異物(例えば大豆煮汁由来の固着物や粘着物等)を効果的に除去することができる。
【0034】
請求項6記載の発明によれば、
従来洗浄液・除菌液が全く届かなかった上端領域(具体的には、シリンダの天板真下周囲のコーナー部)についても、洗浄液及び除菌液による洗浄・除菌が行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
[システム及び装置の概略構成]
図1に基づいて、濃縮システム及びそれに含まれる濃縮装置について説明する。
図1は、本発明に係る濃縮システムの概略構成を示す図である。
【0036】
図示する濃縮システムは、流体(流状物)の液体分の全部または一部を蒸発させて当該流体の濃縮液または乾燥物を生成するためのシステムである。
流体の種類は特に限定されず、薬品、化粧品、食材等、流動可能なものであれば、様々な種類のものが適用可能である。
以下、当該流体の具体例として大豆煮汁を挙げて説明する。
【0037】
当該濃縮システムは、主として、熱交換作用によって大豆煮汁を濃縮又は乾燥させるための濃縮装置1aと、当該濃縮装置で生成された濃厚液又は乾燥物を収容するための容器91と、当該濃縮装置からの排気に含まれる蒸気と固形分とを分離するためのサイクロン93と、当該サイクロンからの蒸気を凝縮するためのコンデンサ95と、当該コンデンサからの凝縮水を貯留するためのタンク97とを有している。
【0038】
上記システムの要部を成す濃縮装置1aは、真空低温濃縮装置の一種である薄膜式蒸発濃縮装置から構成されている。
かかる濃縮装置1aは、濃縮乾燥作用の点においては、図5に示す従来のものと同様である。すなわち、本発明に係る濃縮装置1aと従来の濃縮装置1bの主な相違点は、濃縮装置の洗浄性を改良する目的で設けられた管路にある。
以下、かかる相違点についてのみ説明し、従来技術と同様の点についてはその具体的説明を省略し、その代わりに図面において同一符号を用いる。
【0039】
濃縮装置1aの排気口22とサイクロン93との間は、湾曲した管路72によって接続されている。当該湾曲管路72は、排気口22よりも高い位置へ延出している部分を含んでおり、最大水位レベルMで、シリンダ3の内側空間の上端(すなわち天板51の底面)を超える高さ位置に達している。
【0040】
なお、濃縮装置1aとサイクロン93との間を接続すべき管路は、必ずしも、図1に示すように湾曲して構成する必要はなく、様々な形態を採用することが可能である。すなわち、シリンダ3の天板底面の高さ位置を超えて上昇延出する管路であればよく、例えば図2に示すような斜め上方に延出する管路73を採用することも可能である。
【0041】
また、この実施形態では、管路はシステムの一構成要素として説明しているが、当該管路が濃縮装置の一部として構成してもよいことは勿論である。
【0042】
[濃縮装置の洗浄]
従来技術との関係で述べたように、濃縮装置の運転終了後には、シリンダ3の内部には多量の固着物等が付着している。例えば、濃縮乾燥化すべき流体として大豆煮汁を投入すれば、それに由来する固形分や粘着物等がシリンダ内に多量に固着する。
以下、かかる固着物を除去し除菌するための方法について、図1及び図3を参照しながら説明する。図3は、図1の濃縮装置1aのシリンダ3内に洗浄液4を最大水位まで充填した状態を示す図である。
【0043】
はじめに図1に基づいて説明する。
洗浄作業を行うにあたっては、はじめに、濃縮装置1aのシリンダ下端の先に設けられたバルブ81を閉じる。次いで、バルブ81を閉じた状態で、充填口53(材料投入口12からでも可)から洗浄液を充填する。この場合、充填される洗浄液は、加熱(例えば50℃〜60℃程度に)されていることが好ましい。
【0044】
次に図3に基づいて説明する。
上述したようにバルブ81を閉じた状態で洗浄液を充填することにより、シリンダ3内で洗浄液の水位は上昇し続け、やがて、該洗浄液は排気口22を介して湾曲管路に流れ込む。そして、湾曲管路72内の水位が最大水位Mに達すると、洗浄液4がオーバーフローしてサイクロン側に流れ出すので、その時点で洗浄液の充填を止める。ただし、洗浄液の充填を止めても、バルブ81が閉弁されているので洗浄液4の水位が下がることはない。
なお、湾曲管路72を介してオーバーフローした分の洗浄液は、サイクロン93の側で問題なく排出可能である。
【0045】
ここで、湾曲管路72は、天板51の底面よりも高い位置にまで延出しているので、図示する最大水位Mまで洗浄液4を充填すれば、シリンダ3内の水位は排気口22を完全に超えて天板51に極近い位置にまで達する。この状態では、シリンダ3の内壁面、回転シャフト8、ブレード11等が洗浄液4に浸るようになる。
【0046】
ただし、図示する実施形態では、シリンダ3の上端や天板51にエア抜き孔を形成していない。したがって、湾曲管路72内で洗浄液4が最大水位Mにまで達しても、シリンダ3内の上端側には若干の空気溜りAが残ってしまう。
そこで、シリンダ3の上端又は天板51にエア抜き孔を形成して、図示する空気溜りAの発生を抑制するようにしてもよい。勿論、天板51の底面と排気口22との間の距離Lを可能な限り短くして、空気溜りAの発生を抑制することも可能である。
これにより、シリンダ3内を完全に洗浄液で満たすことが可能になる。
【0047】
次に、洗浄液4が図示する最大水位Mに達したら、所定時間シャフト8を高速回転させ続けて、渦巻状の乱流を生じさせる。この間、湾曲管路72内の水位は、図3に示す如く天板底面を超える高さMに達しているので、常にシリンダ3側には湾曲管路72側から水圧が作用する。そのため、シリンダ3側の洗浄液4の水位はほとんど低下することはない。
【0048】
ブレード11を具備するシャフト8を回転させている間は、洗浄液が激しく飛散するだけでなく、シリンダ3側の水面にせり上がり現象が生じる。飛散した洗浄液とせり上がった洗浄液の水面は、天板51の底面と、天板真下の環状コーナー部C(図8参照)にも達する。そしてシャフト8の高速回転に伴って、やがては空気溜りAは微細気泡となって洗浄液中に分散し、その結果、シリンダ3内が完全に洗浄液4で満たされることとなる。
したがって、洗浄開始前に空気溜りAの領域で付着していた固着物に対しても、飛散した洗浄液による洗浄作用と、洗浄液の乱流による剥離除去作用するので、当該領域の固着物についても確実に溶解,除去することができる。
【0049】
そして、所定時間のシリンダ8の高速回転を終えたら、図示しない排液口を介して、溶解除去した固着物とともに洗浄液を排出する。続いて洗浄液を水または温水に代えて上述と同様の操作を行い、シリンダ3内を水洗浄する。これにより、シリンダ3内がすすぎ洗いされ、排出されずに残留していた固着物や洗浄液が確実に排出される。
【0050】
以上の作業により、シリンダ3内の固着物が除去され、洗浄作業が完了する。
そして、次回の運転の直前には、洗浄液を除菌液に代えて、上述の操作と同様の操作を行うとともに、水または温水による濯ぎ操作を行う。これにより、シリンダ3内が確実に除菌されるので、衛生的な環境のもと次回の濃縮・乾燥処理を行うことができる。
【0051】
なお、上述した実施形態では、一定量の洗浄液をシリンダ内に貯めたらその供給を止めているが、洗浄液を循環させながら上記操作を行うようにしてもよい。
また、洗浄時における回転シャフト8の回転方向は、必ずしも一方向に限定されるものではなく、所定時間間隔で正転と逆転を繰り返すように設定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る濃縮システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明に係る濃縮システムの他の例を示す図である。
【図3】濃縮装置のシリンダ内に洗浄液を最大水位まで充填した状態を示す図である。
【図4】従来の濃縮乾燥システムの概略構成を示す図である。
【図5】図4のシステムが有する濃縮装置の内部構造を具体的に示す図である。
【図6】図5の濃縮装置のV−V線に沿った断面図である。
【図7】図5の濃縮装置の一部を拡大して示す側面図である。
【図8】図5の濃縮装置のシリンダ内に洗浄液を最大水位まで充填した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1a 薄膜式蒸発濃縮装置(本願発明)
1b 薄膜式蒸発濃縮装置(従来装置)
2 ジャケット
3 シリンダ(加熱管)
4 洗浄液(又は除菌液)
5 軸受
6 メカニカルシール
7 モータ
8 回転シャフト
10 ブラケット
11 ブレード
12 材料投入口
13 大豆煮汁
14 供給口
15 スチーム
16 排出口
17 排出口
20 分散板
22 排気口
31 ピン
32 ベース
51 天板
53 充填口
71 水平管路
72 湾曲管路
73 斜め上方に延出する管路
81 バルブ
91 容器
93 サイクロン
95 コンデンサ
97 タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の液体分の全部または一部を蒸発させて当該流体の濃縮液または乾燥物を生成するための装置であって、
濃縮または乾燥すべき流体が投入される内側空間を有するシリンダと、
前記流体から生じた蒸気を排出するための排気口と、
前記排気口に接続され、当該排気口よりも高い位置に延出している部分を含む管路と、を有することを特徴とする濃縮装置。
【請求項2】
さらに、
前記シリンダの内側空間において軸方向に延出する回転シャフトと、
前記回転シャフトの周面に設けられ、前記シリンダの内壁面に対し間隙を空けて周方向に旋回するブレードと、を有することを特徴とする請求項1記載の濃縮装置。
【請求項3】
前記排気口に接続された管路が、前記シリンダの内側空間の上端を超える高さ位置に延出している部分を含むことを特徴とする請求項1記載の濃縮装置。
【請求項4】
流体の液体分の全部または一部を蒸発させて当該流体の濃縮液または乾燥物を生成するためのシステムであって、
濃縮または乾燥すべき流体が投入される内側空間を有するシリンダと、前記流体から生じた蒸気を排出するための排気口と、を具備する濃縮装置と、
前記濃縮装置の排気口に接続されたサイクロンと、
前記濃縮装置の排気口と前記サイクロンとの間を接続し、当該排気口よりも高い位置に延出している部分を含む管路と、
を有することを特徴とする濃縮システム。
【請求項5】
請求項2記載の濃縮装置の除菌洗浄方法であって、
洗浄用及び/又は除菌用の液体をシリンダ内に充填し、当該液体の水位がシリンダの排気口を超えた状態でシャフトを回転させることを特徴とする濃縮装置の除菌洗浄方法。
【請求項6】
請求項2記載の濃縮装置の除菌洗浄方法であって、
シリンダ内を洗浄用及び/又は除菌用の液体でほぼ満たした状態でシャフトを回転させることを特徴とする濃縮装置の除菌洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−279373(P2008−279373A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126268(P2007−126268)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(506009693)株式会社イヅツみそ (5)
【出願人】(000156178)株式会社櫻製作所 (5)
【Fターム(参考)】