説明

炊飯器

【課題】保温による米飯の乾燥とベタつきを防止することができる炊飯器を提供することを目的とする。
【解決手段】鍋14と、鍋加熱手段15と、鍋の蓋体17と、鍋内を上方から加熱する蓋加熱板20と、蓋加熱板20を加熱する蓋加熱手段23と、蓋加熱板20に供給する水を貯める水容器19と、水容器から蓋加熱板へ水を給水する給水手段25とを備え、前記蓋加熱板20は、水容器19から供給された水を貯えこの水を蒸気に生成する蒸気発生部20aと、蒸気発生部と鍋内とを連通し生成した蒸気を鍋内に投入する蒸気投入口20bとを設けたものである。これにより、必要なだけの適量の蒸気量に相当する水量のみを水容器19から蓋加熱板20の蒸気発生部20aに給水することができ、保温の加熱に伴うご飯の乾燥やベタつきを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米飯の保温を蒸気で行う炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の炊飯器は、保温中の米飯の乾燥を防ぐために、水タンク内の水を加熱して発生する蒸気を鍋内に放出している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−57545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、鍋内に蒸気を放出させるために、水タンクを加熱して水タンク内の水を加熱するので、例えば、一定の時間間隔の間欠的な加熱をする際に、その都度、水タンク内の水すべてを加熱することになり、鍋内への蒸気放出量の細かい制御をすることが難しいものである。したがって、放出蒸気量が少ないと乾燥気味に、また逆に多いとベタつくという課題を有していた。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、適量の蒸気を鍋内に放出して保温のご飯の乾燥やベタつきを防止することができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、鍋と、この鍋を加熱する鍋加熱手段と、鍋の開口部を覆う蓋体と、鍋内を上方から加熱する蓋加熱板と、蓋加熱板を加熱する蓋加熱手段と、蓋加熱板に供給する水を貯める水容器と、水容器から蓋加熱板へ水を給水する給水手段とを備え、前記蓋加熱板は、水容器から供給された水を貯えこの水を蒸気に生成する蒸気発生部と、蒸気発生部と鍋内とを連通し生成した蒸気を鍋内に投入する蒸気投入口とを設けたものである。
【0006】
これによって、保温中に乾燥を防止するのに必要なだけの適量の蒸気量に相当する水量のみを水容器から蓋加熱板の蒸気発生部に給水することができる。したがって、保温の加熱に伴うご飯の乾燥を適量の蒸気によって防止するとともに、過多の蒸気によって保温のご飯がベタつくことを防止することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の炊飯器は、蒸気保温時の加熱に伴うご飯の乾燥や、ベタつきを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、鍋と、この鍋を加熱する鍋加熱手段と、鍋の開口部を覆う蓋体と、鍋内を上方から加熱する蓋加熱板と、蓋加熱板を加熱する蓋加熱手段と、蓋加熱板に供給する水を貯める水容器と、水容器から蓋加熱板へ水を給水する給水手段とを備え、前記蓋加熱板は、水容器から供給された水を貯えこの水を蒸気に生成する蒸気発生部と、蒸気発生部と鍋内とを連通し生成した蒸気を鍋内に投入する蒸気投入口とを設けた炊飯器とすることにより、保温中に乾燥を防止するのに必要なだけの適量の蒸気量に相当する水量のみを水容器から蓋加熱板の蒸気発生部に給水することができる。したがって、保温の加熱に伴うご飯の乾燥を適量の蒸気によって防止するとともに、過多の蒸気によって保温のご飯がベタつくことを防止することができる。
【0009】
第2の発明は、特に、第1の発明において、蓋加熱板の蒸気発生部にて生成した蒸気の温度を上げる蒸気加熱部を備えたことにより、蒸気発生部で生成された蒸気を100℃以上に加熱し、この加熱蒸気を鍋内に供給してご飯の乾燥を防止しながら鍋内に残る保温臭を鍋外に除去することができる。
【0010】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、蒸気発生部は、蓋体を回動自在に軸支したヒンジ軸の位置と蒸気投入口と間に位置して設けたことにより、蒸気発生部に水が貯水されているときに、使用者が蓋体を開けても、貯水されている水は蒸気投入口から鍋内にこぼれることなく、再び蓋体を閉めることにより水は蒸気発生部に戻るので、使用者の蓋開閉のタイミングにかかわらずご飯の乾燥やベタつきを防止し、また鍋内に残る保温臭を鍋外に除去することができる。
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0012】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における炊飯器を示すものである。
【0013】
図に示すように、上面が開口する略円筒形のボディ11の開口部には、上枠12が嵌着されている。ボディ11内部には、上枠12とコイルベース13とで鍋14の収納部を形成している。コイルベース13は有底円筒状に形成され、コイルベース13の上端部は上枠12に固定されている。コイルベース13には、鍋14を誘導加熱するための底誘導コイルである鍋加熱手段15が設置されており、鍋14を誘導加熱している。
【0014】
鍋14底面には鍋14温度を検知する底センサー16が付勢されて装着されており、炊飯および保温時の鍋温度を検知し、鍋14内の調理物が最適な温度状態になるようにしている。
【0015】
蓋体17は上枠12の後部に設けたヒンジ軸18にて回動自在に軸支され、鍋14の開口部を覆っている。蓋体17の上面は合成樹脂製の外蓋17aで形成され、下面は外蓋カバー22で構成されている。蓋体17には蓋加熱板20に供給する水を貯める水容器19が着脱自在に取付けられている。
【0016】
蓋加熱板20は蓋体17の外蓋カバー22に着脱自在に取付けられている。蓋加熱板20の外周には、鍋14とのシールのための鍋パッキン21が備えられている。
【0017】
外蓋カバー22の上面には、蓋加熱板20を加熱する蓋加熱手段23を設けている。蓋加熱手段23は蓋加熱板20を誘導加熱する蓋誘導コイルで形成されており、蓋加熱手段23は蓋加熱制御手段(図示せず)で制御されている。
【0018】
液体ローリングポンプで構成された給水手段25は、水容器19の水を蓋加熱板20に供給するものであり、給水制御手段(図示せず)で制御されている。
【0019】
蓋加熱板20は、磁性体ステンレスのプレス成型で形成されており、蓋加熱手段23に相対した位置に水容器19より給水手段25によって供給された水を貯溜して蒸気を生成する凹部形成の蒸気発生部20aと、生成した蒸気を鍋14内に投入するための蒸気投入口20bが設けられている。
【0020】
そして、蓋加熱板20の蒸気発生部20a、蒸気投入口20bと外蓋カバー22との間の外周に介在し発生した蒸気をシールする外パッキン27と、同様に、蓋加熱板20の蒸気発生部20a、蒸気投入口20bと外蓋カバー22との間の内周に介在し発生した蒸気をシールする内パッキン28とを蓋加熱板20と外蓋カバー22間に備えている。
【0021】
また、蓋加熱板20の略中央部には、鍋14と蓋体17の外気と連通して鍋14内の蒸気を外部に放出ための蒸気口29が設けられている。
【0022】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0023】
使用者は米と水を鍋14内に、所定量の水を水容器19に準備し、炊飯器にセットした後、炊飯器の電源を入れ、炊飯開始ボタン(図示せず)を押すと、炊飯工程が開始され、所定のプログラムにしたがって鍋加熱手段15による加熱を行う。炊飯を終了すると、炊飯の終了を使用者に報知し米飯の保温工程に移行する。保温工程においては、保温に適した約60℃〜75℃の温度範囲で米飯温度を保持するために、鍋14を鍋加熱手段15によって加熱する。
【0024】
給水手段25は、給水制御手段によって、例えば、一定の時間間隔の間欠的な鍋加熱手段15による加熱に連動して水容器19の水を蓋加熱板20の蒸気発生部20aに供給する。給水手段25である液体ローリングポンプは単位時間あたりの給水量がほぼ一定であるので、給水手段25の動作時間を給水制御手段によって制御し、蒸気発生部20aにご飯の乾燥を防止するに必要な適量の水を供給することができる。蒸気発生部20aに貯水された水は蓋加熱手段23によって加熱され蒸気になって、蒸気投入口20bから鍋14内に投入される。
【0025】
なお、給水手段25に流量センサーを備えることによって、蓋加熱板20に給水する水量と鍋14内に投入する蒸気量をさらに高精度で制御することができる。
【0026】
以上のように、本実施の形態においては、保温中に乾燥を防止するのに必要なだけの適量の蒸気量に相当する水量のみを水容器19から蓋加熱板20の蒸気発生部20aに給水することができるので、保温の加熱に伴うご飯の乾燥を適量の蒸気によって防止するとともに、過多の蒸気によって保温のご飯がベタつくことを防止することができる。
【0027】
水容器19から蒸気発生部20aへの供給を、保温工程中の一定時間間隔で行う蒸気の投入のタイミングに合わせて行うことによって、ご飯の乾燥やベタつきを効果的に防ぐことができる。
【0028】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における炊飯器を示すものである。実施の形態1と同一要素については同一符号を付してその説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0029】
図に示すように、本実施の形態の炊飯器では、蒸気加熱部20cは、蓋加熱板20に蒸気発生部20aにて生成した蒸気の温度を上げるものであり、これに相対した位置には第2の蓋加熱手段30が設けられている。第2の蓋加熱手段30は第2の蓋加熱制御手段(図示せず)で制御される。
【0030】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0031】
使用者が米と水を鍋14内に、所定量の水を水容器に準備し、炊飯器にセットした後、炊飯器の電源を入れ、炊飯開始ボタンを押すことにより、炊飯工程、保温工程に移行し、保温工程において蓋加熱手段23によって加熱され蒸気が生成される。これらは実施の形態1と同じである。
【0032】
ここで、生成された蒸気は蒸気投入口20bに至るまでに、第2の蓋加熱手段30によって加熱された蒸気加熱部20cによって100℃以上に加熱されて蒸気投入口20bから鍋14内に供給される。
【0033】
以上のように、本実施の形態においては、生成された蒸気は蒸気投入口20bに至るまでに、第2の蓋加熱手段30によって加熱された蒸気加熱部20cによって100℃以上に加熱された加熱蒸気になって、蒸気投入口20bから鍋14内に供給されご飯の乾燥を防止しながら鍋14内に残る保温臭を鍋外に除去することができる。
【0034】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について図1、図2に基づき説明する。
【0035】
本実施の形態の炊飯器は、水容器19から供給された水を貯えこの水を蒸気に生成する蒸気発生部20aを、蓋体17を軸支するヒンジ軸18の位置と、蒸気発生部20aと鍋14内とを連通する蒸気投入口20bとの間に位置して設けている。
【0036】
使用者が米と水を鍋14内に、所定量の水を水容器19に準備し、炊飯器にセットした後、炊飯器の電源を入れ、炊飯開始ボタンを押すことにより、炊飯工程、保温工程に移行する。そして、水容器19の水が給水手段25によって蒸気発生部20aに供給され、蒸気発生部20aに貯水された水は蓋加熱手段23によって加熱され蒸気が生成される。これらは実施の形態1と同じである。
【0037】
ここで、蒸気発生部20aに水が貯水されているときに、例えば、使用者が保温のご飯を食べるために蓋体17を開けると、蒸気発生部20aは蒸気投入口20bよりヒンジ軸18側に位置しているので、貯水されている水は蒸気投入口20bから鍋14内にこぼれることなく、再び蓋体14を閉めることにより水は蒸気発生部20aに戻る。したがって、使用者の蓋開閉のタイミングにかかわらず、ご飯の乾燥やベタつきを防止し、また鍋14内に残る保温臭を鍋外に除去することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、保温の加熱に伴うご飯の乾燥やベタつきを防止することができるので、米飯以外の食品の熱による保存の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態2における炊飯器を示す断面図
【符号の説明】
【0040】
14 鍋
15 鍋加熱手段
17 蓋体
18 ヒンジ軸
19 水容器
20 蓋加熱板
20a 蒸気発生部
20b 蒸気投入口
20c 蒸気加熱部
23、30 蓋加熱手段
25 給水手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋と、この鍋を加熱する鍋加熱手段と、鍋の開口部を覆う蓋体と、鍋内を上方から加熱する蓋加熱板と、蓋加熱板を加熱する蓋加熱手段と、蓋加熱板に供給する水を貯める水容器と、水容器から蓋加熱板へ水を給水する給水手段とを備え、前記蓋加熱板は、水容器から供給された水を貯えこの水を蒸気に生成する蒸気発生部と、蒸気発生部と鍋内とを連通し生成した蒸気を鍋内に投入する蒸気投入口とを設けた炊飯器。
【請求項2】
蓋加熱板の蒸気発生部にて生成した蒸気の温度を上げる蒸気加熱部を備えた請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
蒸気発生部は、蓋体を回動自在に軸支したヒンジ軸の位置と蒸気投入口と間に位置して設けた請求項1または2に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−236518(P2007−236518A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60848(P2006−60848)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】