説明

炊飯器

【課題】保温および再加熱において、使用状況に応じて適切に加熱と保湿できておいしいご飯に保温、再加熱できるようにした炊飯器を提供することを目的とする。
【解決手段】被調理物を所定温度で保持する保温工程または被調理物を再加熱する再加熱工程において、蒸気投入手段16と圧力調整手段9により鍋1内の圧力の増大と減少の圧力処理を実行するようにしたものである。これによって、適度な加熱と加湿と低酸素化雰囲気によってご飯の劣化を抑制し、保温性能と再加熱性能を向上した炊飯器を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋内の圧力を制御する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器は、米に水を吸収させる浸水工程、吸水した米に熱を加え米内のデンプンを糊化させる炊き上げ工程、鍋内に残った余分な水分を除去するとともにさらに糊化を促進させる蒸らし工程を実行し炊飯を行っている。その後、続いてご飯を適温に、食べ頃の所定温度に保持する保温を行っている。
【0003】
そして、炊飯器は、鍋内の圧力がほぼ大気圧と同じで炊飯を実行する「通常炊飯」と、炊飯の炊き上げ工程で生成される蒸気を鍋内に閉じ込め、圧力を1気圧以上(大気圧以上)にし、100℃〜110℃で炊飯を実行する「圧力炊飯」とがよく知られている。
【0004】
これらの炊飯器では、炊飯の後に使用者によりご飯をほぐし余分な水分を除去する作業が行われ、ご飯を食べ頃の所定温度に保持する保温が、通常自動的に実施される。しかしながら、ご飯をほぐした後に蓋を閉じ所定温度に保持することが、ご飯の乾燥や黄変などの劣化を進行させるという問題がある。
【0005】
このような保温におけるご飯の劣化を抑えるための技術として、減圧保温、密閉保温、脱酸素保温など、空気中の酸素の影響を低減するような保温技術が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特許第2761314号公報
【特許文献2】特許第3670973号公報
【特許文献3】特許第3358125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、いずれの保温技術を採用しても、使用者が鍋からご飯を取り出すために、蓋を開放することで、鍋内の高温の空気と蒸気が排出され、新たに室内の常温の空気が流入する。その結果としてご飯の乾燥が進行し、ご飯の温度が低下する。また、室内の空気が流入するので、鍋内の脱酸素雰囲気の連続的な維持は困難である。すなわち、保温ご飯のおいしさを持続することが困難であるという課題を有していた。
【0007】
また、保温中のご飯をさらに高温の第2の所定温度に加熱したり、保温しないで冷めたご飯を食べ頃温度に加熱したりする再加熱機能(以下、再加熱)を有する炊飯器もあるが、一般的なものでは保温と同様にご飯の乾燥がさらに進行し、ご飯のおいしさが低下するという課題を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、保温および再加熱において、手間と運転時間は増やさずに、使用状況に応じて適切に加熱と保湿できておいしいご飯に保温、再加熱できるように保温性能、再加熱性能を向上した炊飯器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、被調理物を所定温度で保持する保温工程または被調理物を再加熱する再加熱工程において、蒸気投入手段と圧力調整手段により鍋内の圧力の増大と減少の圧力処理を実行するようにしたものである。
【0010】
これによって、保温工程または再加熱工程において、蒸気投入手段が鍋に被調理物より高温の蒸気を投入するので、鍋内の比較的低温の空気や蒸気を排出しながら、被調理物への加熱と加湿が同時に行える。その後、圧力調整手段の蒸気孔を密封することで、鍋内に充満した蒸気が被調理物および鍋内面で凝縮するので、鍋内部の圧力が減少し、鍋および被調理物の温度に応じた真空圧となり、被調理物からの放熱を抑え保温時の電力を節約できる。また、被調理物からの水分蒸発は保温温度に応じた飽和蒸気圧により制約されるので、被調理物の乾燥を抑制し保湿状態に維持できる。また、鍋内の空気を蒸気と置き換えるので脱酸素状態で保温でき、被調理物の酸化を抑制しおいしさが劣化しない。
【0011】
すなわち、鍋加熱手段による加熱と蒸気による鍋の開口部からの加熱とにより、米や食材を均一に適度な温度に加熱しつつ、大きな真空減圧装置や湿度制御装置なしで、ご飯や被調理物を所定温度および保湿状態に維持するができ、おいしさが保持される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の炊飯器は、適度な加熱と加湿と低酸素化雰囲気によってご飯の劣化を抑制し、保温性能と再加熱性能を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明は、被調理物を収納する鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記鍋の開口部を覆う内蓋と、前記鍋の蒸気を排出する蒸気孔を開閉する圧力調整手段と、前記鍋に蒸気を投入する蒸気投入手段と、前記鍋加熱手段と前記蒸気投入手段を制御する制御手段とを備え、被調理物を所定温度で保持する保温工程または被調理物を再加熱する再加熱工程において、前記蒸気投入手段と圧力調整手段により鍋内の圧力の増大と減少の圧力処理を実行するようにした炊飯器とするものである。これによって、保温工程または再加熱工程において、蒸気投入手段が鍋に被調理物より高温の蒸気を投入するので、鍋内の比較的低温の空気や蒸気を排出しながら、被調理物への加熱と加湿が同時に行える。その後、圧力調整手段の蒸気孔を密封することで、鍋内に充満した蒸気が被調理物および鍋内面で凝縮するので、鍋内部の圧力が減少し、鍋および被調理物の温度に応じた真空圧となり、被調理物からの放熱を抑え保温時の電力を節約できる。また、被調理物からの水分蒸発は保温温度に応じた飽和蒸気圧により制約されるので、被調理物の乾燥を抑制し保湿状態に維持できる。また、鍋内の空気を蒸気と置き換えるので脱酸素状態で保温でき、被調理物の酸化を抑制しおいしさが劣化しない。
【0014】
すなわち、鍋加熱手段による加熱と蒸気による鍋の開口部からの加熱とにより、米や食材を均一に適度な温度に加熱しつつ、大きな真空減圧装置や湿度制御装置なしで、ご飯や被調理物を所定温度および保湿状態に維持するができ、おいしさが保持される。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明において、鍋内の圧力の減圧処理に引き続き、蒸気投入手段により蒸気を投入する蒸気加圧処理をするようにしたことにより、蒸気孔を密封した減圧状態で蒸気投入による被調理物への加圧加熱であるから、鍋内の空気や蒸気の排出、すなわち放熱を抑えて省エネを図った保温であり再加熱ができる。
【0016】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、蒸気投入手段は、蒸気を生成する水容器と水容器を加熱する水容器加熱手段とを有することにより、水容器と鍋は連通しているので、鍋の圧力と水容器の圧力は同じであり、余分な開閉弁を用いないで外気の流入がなく、蒸気を鍋に投入できて、蒸気孔を密封すれば蒸気減圧ができる。さらに、この減圧状態において水容器加熱手段で水容器を加熱することにより低温度の蒸気を生成し、鍋に投入することで、被調理物を加熱するとともに加圧する蒸気加圧ができる。
【0017】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明において、内蓋の開閉を検知する蓋開閉検知手段を有し、保温工程において内蓋の開閉検知に基づいて減圧処理を実行するようにしたことにより、保温工程において、蓋開閉検知手段の検知信号に基づき、制御手段は内蓋の開閉時間を算出し、内蓋が一定時間以上開放されたことを検出すると、被調理物の温度変化は僅かな場合も、直ちに減圧処理を実行し、被調理物の加熱と加湿を適正に行うことができ、鍋内を適正な温度と湿度に維持できるものであり、より長時間おいしさを維持できる。
【0018】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、鍋と内蓋の隙間を封止するパッキンを有し、前記パッキンは鍋内の圧力が大気圧以上のときに鍋と内蓋を密封する第1シール部と、大気圧より低いときに密封する第2シール部とを有することにより、炊飯工程において鍋内で蒸気が生成されたり、保温工程や再加熱工程で蒸気投入手段により鍋内に蒸気が投入されたり、鍋内の圧力が上昇した時に前記パッキンの第1シール部が鍋と密着し、鍋内を密封し蒸気が漏れない。また、蒸気の投入を停止し鍋内の圧力が減少した時に前記パッキンの第2シール部が鍋と密着し、鍋内を密封し空気の進入を防止する。鍋内の加圧と減圧に対応したパッキンであるので、蒸気減圧処理を実行でき、おいしさの低下を抑制できる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1〜図5は、本発明の実施の形態1における炊飯器を示している。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態における炊飯器本体14は、米や水などの被調理物を収納する鍋1を着脱自在に内部に有し、炊飯器本体14の上面を覆う蓋4を開閉自在に上部に有している。蓋4は蓋ヒンジ5を中心に回転する。鍋1は、鍋1の底面に対応して設けられた加熱コイルなどの鍋加熱手段2、側面に対応して設けられた加熱コイルなどの鍋側面加熱手段3により加熱される。鍋温度検知手段11は、鍋1の底部に接触して設けられ鍋1の温度を検知する。蓋4は、蓋4の下部を構成する蓋カバーに着脱自在に設けられ蓋4が閉じられた状態のとき鍋1の開口部を覆う内蓋6と、この内蓋6を誘導加熱する加熱コイルなどの内蓋加熱手段8と、内蓋6の温度を検知する内蓋温度検知手段12を有している。
【0022】
蓋4が閉じられた状態のとき、鍋1と内蓋6の間には隙間ができるが、その隙間は内蓋6に取り付けられたループ状のパッキン7で封止され、鍋1内は密閉される。
【0023】
圧力調整手段9は、内蓋6に設けられた鍋1内の蒸気や空気を放出する蒸気孔6aと、球状の弁体9aを移動させて蒸気孔6aを開閉する蒸気孔開閉手段9bと、鍋1内の圧力を検知する圧力検知手段9cとにより構成される。この構成で蒸気孔6aを閉じて鍋1内に蒸気を充満させることより鍋1内の圧力を大気圧以上に加圧したり、蒸気孔6aを開放して蒸気孔6aと蓋4に設けられた蒸気通路を通じて、鍋1内の蒸気を機外へ放出することにより鍋1内の圧力を大気圧と同等にまで減圧したりする(S1〜S2)。すなわち、この圧力調整手段9は鍋1内の圧力を調整する機能を発揮するものであり、加圧手段でも減圧手段でもあると言える。
【0024】
また、鍋1の内部に蒸気を投入する蒸気投入手段16を有し、水容器16aおよびこの水容器16a内の水を加熱して蒸気を生成する水容器加熱手段16bを有している。蒸気投入手段16は鍋1内に蒸気を投入し、一般には正の圧力を発生するものであり、また圧力調整手段9と協同して負の圧力を発生させるものでもあり、圧力加減手段を構成している。
【0025】
制御手段13は、加熱手段制御部13aと温度計測部(計測手段)13bを有し、炊飯器本体14の前面に設けられた入力操作部15により入力された信号、および記憶手段(図示せず)に記憶された、浸水工程における温度、温度上昇速度、時間や、炊き上げ工程における圧力値、温度、温度上昇速度などの値に基づいて、炊飯工程を実行する。炊飯工程において、加熱手段制御部13aは鍋温度検知手段11および内蓋温度検知手段12の検知信号に基づいて鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3および内蓋加熱手段8を制御する。
【0026】
また、図2に示すように、蓋4には空気を加圧する空気ポンプ20が別に配置されており、鍋1内の空気や蒸気を機外に排出する(B1〜B2)ことで、鍋1内を減圧する。負の圧力を発生するものではあるが、これも圧力加減手段である。
【0027】
次に、上記炊飯器における炊飯工程について説明する。
【0028】
本実施の形態における炊飯器の炊飯工程は、図3に示すように、浸水工程A1、炊き上げ工程A2および蒸らし工程A3の順で構成され、その後に保温工程H1が行われる。なお、炊き上げ工程A2には鍋1内を高温に維持する工程が行われ、これを沸騰維持工程とも呼ぶ。
【0029】
浸水工程A1は、糊化温度よりも低温の水に米を浸し、予め米に吸水させておくおことで、以降の工程において、米の中心部まで十分に糊化させるための工程である。従来から吸水を短時間で行うには水温を上げることが有効であることは知られており、そのため、米の糊化が開始しない温度まで米と水の温度が上昇するように鍋加熱手段2および鍋側面加熱手段3に通電し、鍋1の底面および側面を発熱させる。また、糊化が起こると、その部位からの吸水ができなくなる。すなわち、鍋1の米全体を目的の温度で均一に維持し、鍋1の米の吸水条件を均一に保つことが行われる。本実施の形態においては、米の糊化が起こらない40℃から60℃以下に保持される。
【0030】
浸水工程A1を所定時間行うと、次に炊き上げ工程A2を実行する。炊き上げ工程A2では、主として鍋加熱手段2で鍋1の底面を発熱させ、炊飯中の米および水の温度を水の沸点まで上昇する。もちろん、鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3および内蓋加熱手段8で加熱してもよい。また、水の沸騰により蒸気が生成する段階では、圧力調整手段9である蒸気孔開閉手段9bにより蒸気孔6aを閉じて鍋1内を密閉しており、蒸気の充満により鍋1内の圧力を大気圧より高圧に保持することで、水の沸点を100℃より高め、加圧した状態で炊飯する。鍋1全体のご飯をすばやく加熱し、米澱粉の糊化を行う。
【0031】
炊き上げ工程A2の加熱途中で、鍋1内の米および水の温度が60℃前後になるとデンプンの糊化が始まる。この炊き上げ工程A2において、炊飯時間を短縮するために急激に沸騰させると、米表面が先に糊化してしまい米内部への水や熱の伝達が十分に行えず、特に米中心部の糊化が完了しない状態で炊飯工程が終了するため、粘りのないパサパサしたご飯になってしまう。しかしながら適度な浸水工程A1を経た米は、鍋1内の圧力が大気圧よりも高いため、100℃以上の水で炊き上げることができ、温度上昇速度を高めて急速に沸騰させ、100℃の水で炊く場合に比べて単位時間の加熱量が増え、糊化を促進させることができる。鍋1内の水が沸騰したことを内蓋温度検知手段12が検知すると、炊き上げ工程A2の沸騰維持工程に移る。
【0032】
沸騰維持工程では、圧力調整手段9により蒸気孔6aを開放して鍋1内の圧力を大気圧と同等にしながら、沸騰を維持する。底部からの沸騰により水が対流するため、水が米同士の間を激しく流れることにより、鍋1内の米全体に水と熱がまんべんなく供給され糊化が促進される。また、鍋1内の水が蒸発すると、蒸気孔6aが開放されたことにより蒸気の流れができ、蒸気は米の間を通過して上昇して蒸気孔6aから炊飯器外へ放出され、蒸気が米の間を通過することによりさらに糊化が促進される。
【0033】
鍋1内の炊飯水が蒸発してほぼ無くなると鍋1の温度が急激に上昇する。この急激な上昇により所定温度を鍋温度検知手段11が検知したとき、沸騰維持工程を終了し、次の蒸らし工程A3に移る。すなわち沸騰維持工程の時間は、浸水工程A1において鍋1内に供給する水量に依存する。炊き上げ工程A2で最高温度および最高圧力による圧力処理を経た米の含水率は高くなっているため、米の吸水に要する時間を短縮することができる。これにより、炊き上げ工程A2、沸騰維持工程において水を加熱する加熱エネルギーの消費電力量を抑えることができる。
【0034】
蒸らし工程A3では、鍋加熱手段2が鍋1の底面のご飯が乾燥したり焦げたりしない程度に鍋1の底面を発熱させ、ご飯の糊化を持続させる。なお、蒸気孔6aを閉じ、蒸気の充満により鍋1内の圧力を大気圧より高圧に保持することで、加圧した状態で蒸らすこともできる。100℃以上の高温蒸気は細かい粒子となって、鍋1内の米の隙間を通り鍋1内の底部にも行き渡り、米の一粒一粒を包み込む。高温蒸気が鍋1内のご飯にくまなく供給されて、糊化が均一に持続される。
【0035】
このように蒸らし工程A3においては、ご飯が芯まで糊化するように、ご飯が乾燥したりこげたりしない温度で、且つ鍋1全体すなわちご飯を高温の状態に保つことが重要である。
【0036】
最後に所定時間の蒸らし工程A3を行った後、鍋1内の温度を食べ頃の所定温度(例えば、70℃前後)に維持する保温工程H1を行う。保温工程H1では、蒸らし工程A3および炊飯工程では炊き上がったご飯から蒸気が発生し、ご飯の乾燥が進行する。保温工程H1に先立って、蒸らし工程A3で発生した余分な蒸気やご飯の付着水などは、使用者のほぐす操作で除去することが必要であるが、一方、保温工程H1では蒸気の流出はご飯の乾燥を進行しておいしさを低下させるので、このような蒸気の流出は抑制する必要がある。
【0037】
そこで、保温工程H1において図4に示すような蒸気減圧処理を行うものである。この蒸気減圧処理において、蒸気孔開閉手段9bにより蒸気孔6aを開放した状態で、水容器加熱手段16bにて水容器16aを加熱し、蒸気を生成する。蒸気投入手段16により生成された蒸気は約100℃であり、鍋1に被調理物より高温の蒸気として投入されるので、鍋1内の比較的低温の空気や蒸気、さらにはご飯の保温臭を追い出しながら、蒸気が凝縮することによる被調理物への加熱と加湿が同時に行える。
【0038】
その後、蒸気孔開閉手段9bにより蒸気孔6aを密封することで、鍋1内に充満した蒸気が被調理物および鍋内面で凝縮することで、鍋1内部の圧力が急激に減少する(この手順を蒸気減圧処理と呼ぶ)。被調理物の温度に応じた真空圧、あるいは飽和水蒸気分圧と残存空気分圧の合計の圧力で、被調理物からの放熱を抑え、脱酸素状態あるいは低酸素状態で保温できる。すなわち、鍋加熱手段2および鍋側面加熱手段3により鍋1の底面や側面から、蒸気により鍋1の開口部からそれぞれ加熱し、米や食材を上下から均一に適度な温度に加熱しつつ、大きな真空減圧装置や湿度制御装置なしで、ご飯や被調理物の所定の温度で保持したり、保湿状態を維持したりすることができる。
【0039】
このような運転は、制御手段13が炊飯工程および保温工程H1の進行、また蓋4の開閉、入力操作部15からの入力などに応じて、圧力調整手段9、蒸気投入手段16、鍋加熱手段2などを動作させることで実現される。
【0040】
なお、圧力調整手段9を、鍋1内の蒸気を放出する蒸気孔6aと、蒸気孔6aを開閉する蒸気孔開閉手段9bと、圧力検知手段9cとで構成することにより、炊飯量や水加減など、鍋1内で生成される蒸気量の多少による、鍋1内の圧力変化を検出して、蒸気を放出することで、炊飯および保温の各工程で所定の圧力および温度に制御するものであり、圧力の低下を確認し、所定の高温高圧に保持することで炊飯性能や保温性能が安定するものである。
【0041】
なお、鍋1内の圧力を検知するために、圧力検知手段9cに代えて、鍋1内の温度を計測できる温度検知手段であってもよい。
【0042】
なお、食品や米種に応じて、炊飯および保温の各工程で蒸気孔6aを閉じて、必要な高温高圧の状態に保持することもできるので、炊飯性能や保温性能がより安定する。
【0043】
なお、保温工程H1において、所定時間の間隔で、圧力調整手段9の球状の弁体9aで蒸気孔6aを閉じ、鍋1内を密閉するとともに、蒸気投入手段16を作動させ、鍋1内の圧力を減圧することで、鍋1内の空気や保温臭を追い出し、保温したご飯のおいしさを維持するものである。蒸気減圧処理と併用することで、それぞれはコンパクトで比較的小さい減圧能力のもので、大幅な減圧処理を実現できる。
【0044】
なお、鍋1の内部に蒸気を投入する蒸気投入手段16として、水容器16aおよびこの水容器16a内の水を加熱して蒸気を生成する水容器加熱手段16bを有しているので、蒸らし工程A3や保温工程H1で鍋1に蒸気を投入し、炊飯、保温、再加熱において、さらなる加熱や保湿効果を得られるものである。
【0045】
次に、図5により、減圧した浸水工程A1や保温工程H1、加圧した炊き上げ工程A2における「減圧」「加圧」の両状態におけるパッキン7の作用を説明する。
【0046】
パッキン7は図に示すような形状で、蓋4が開状態から閉状態に至る過程で、鍋1内に滑らかに収納されるとともに、第1シール部7aおよび第2シール部7bは第1接触部7cと第2接触部7dにより鍋1に僅かに接触する。
【0047】
鍋1内を加圧した場合、例えば、炊飯中に鍋1内の蒸気を密封し鍋1内の圧力を大気圧以上に加圧すると、鍋1内の蒸気や空気は蒸気孔6aおよび第1シール部7aから流出しようとするが、それぞれ球状の弁体9aの加圧力および第1シール部7aへの加圧力P1にて密封されて、高圧を保持できる。
【0048】
逆に、鍋1内を減圧した場合、例えば内蓋6の蒸気孔6aを球状の弁体9aで閉じ、さらに蒸気投入手段16を作動させ鍋1内の圧力を大気圧以下に減圧すると、機外から第2シール部7bを通過して鍋1内へと、空気が流入しようとするが、第2シール部7bへの加圧力P2にて密封されて、鍋1内の低圧状態を保持できる。
【0049】
このパッキン7の基本的な形状は、蓋4が閉状態において、鍋1内の圧力が大気圧の時に、すでに第1シール部7a、第2シール部7bそれぞれに、鍋1の内面および鍋1の上端において水平であるフランジ部に接触している第1接触部7c、第2接触部7dを有している。もちろん、第1接触部7c、第2接触部7dとして必ずしも明確な凸部を形成する必要はないが、それぞれ第1シール部7a、第2シール部7bの先端部で接触することで、鍋1内を加圧あるいは減圧したときのシール面積を確保し、密封性能を得るものである。図5における矢印P2は大気圧による加圧力であり、鍋1の内部が大気圧より低圧の減圧状態において、第2シール部7aの周縁で第2接触部7dを基点に弾性変形により密着することを示している。炊飯器におけるパッキン7などシール部材は一般に耐熱性のシリコンで形成されるが、所定の弾性変形ができ、耐熱性、耐蒸気などを有すれば、これに限定するものでもない。
【0050】
特に、加圧では鍋1内の圧力により内蓋6が上方向に移動するような方向に作用し、第1シール部7aは鍋1の内面に相対しているので、内蓋6およびパッキン7が鍋1の内の圧力変動により上下に移動するような場合も、矢印P1ような鍋1内の加圧力により密着しており、密封性能が安定する。また、減圧では、大気圧により内蓋6が下方向に移動するような方向に作用し、第2シール部7bは鍋1の水平のフランジ部に相対しているので、パッキン7と鍋1のフランジ部が常に密着しており、密封性能が安定する。
【0051】
また、パッキン7は第1シール部7aの外側に第2シール部7bを配置したもので、加圧では鍋1内の気体が流出することを内側の第1シール部7aで制止し、その影響は第2シール部7bに至らない。また、減圧では外側の第2シール部7bで機外から空気が鍋1内に流入することを抑制し、その影響は第1シール部7aに至らない。すなわち、それぞれのシール部には一定方向にのみ加圧されるので、そのシール面の状態を適正に確保することで、密封性能がさらに向上する。
【0052】
また、パッキン7は、蓋4の閉状態において第1シール部7aが鍋1に接触することにより、炊飯開始時から鍋1と内蓋6の隙間において鍋1内の気体の流出を抑制することで、必要な鍋1内の圧力に制御することができて、炊飯性能が向上する。
【0053】
さらに、パッキン7は、蓋4の閉状態において第2シール部7bが鍋1に接触することにより、炊飯開始時から鍋1と内蓋6の隙間において鍋1内へ気体の流入を抑制することで、必要な鍋1内の圧力に制御することができて、炊飯性能が向上する。
【0054】
また、第1接触部7c、第2接触部7dが平面状であるものであっても、シール性能を発揮するとともに、汚れの付着が少なく、お手入れが簡単なものである。また、パッキンの一部に空洞を設けた形状など、種々の形状が可能であるが、これらは一般的なことであり、詳述しない。
【0055】
なお、入力操作部15に炊飯する米種を選択する米種入力部(図示せず)を設け、各米種に適切な圧力値を記憶手段にそれぞれ記憶しておき、選択された米種に応じた圧力値になるよう圧力調整手段9により調節することにより、各米種に適切な温度、圧力で炊飯することができる。例えば、玄米の場合は、白米が選択された場合よりも圧力値を高くすることにより、かたさやぱさつきがなく炊き上げることができる。また、軟質米と硬質米、新米と古米、白米と玄米などより細かく米種を選択できるようにすることにより、より各米種に対して適切な炊飯を行うことができる。
【0056】
なお、鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3および内蓋加熱手段8は、誘導加熱によるものを用いているが、それぞれ電気ヒーターやガス燃焼など熱源は何でもよく、鍋加熱手段2以外は設けなくてもよい。また、それぞれが単一のリング形状であってもよく、複数個に分割されてあってもよい。もちろん、複数個のコイルで構成されてもよい。
【0057】
なお、鍋温度検知手段11および内蓋温度検知手段12は、通常運転での温度から異常時の高温度までの範囲を検知できるものであれば、どのような検知原理でもよい。
【0058】
なお、圧力制御手段9は内蓋6の蒸気孔6aを開閉することにより鍋1内の圧力を調節したが、鍋1内の圧力を制御できるものであればどのようなものでもよい。
【0059】
なお、炊飯工程または保温工程で、鍋1内の圧力を大気圧より高圧にした「圧力加熱」と鍋1内に蒸気を投入する「蒸気加熱」を交互に繰り返し行うことにより、上下の加熱ムラを無くすとともに、投入した蒸気を加熱して高圧にすることで、炊飯工程ではより柔らかく炊き上げることもできる。また、炊飯工程や保温工程では投入した蒸気をさらに鍋1の底部へと浸透させるものであり、鍋1内の上下のムラなく、乾燥させずに加熱と加水ができるので、糊化を促進しておいしいご飯に炊き上げる炊飯性能と、適切な温度でしっとりとした保温ご飯に維持する保温性能とを得るものである。
【0060】
なお、保温ご飯または冷めたご飯を加熱する再加熱工程(入力操作部15の詳細は省略)において、上記の保温工程と同様に、圧力処理の実行、すなわち蒸気減圧処理を行うものである。この蒸気減圧処理において、蒸気孔開閉手段9bにより蒸気孔6aを開放した状態で、水容器加熱手段16bにて水容器16aを加熱し、蒸気を生成する。蒸気投入手段16により生成された蒸気は、鍋1に被調理物より高温の蒸気として投入されるので、鍋1内の比較的低温の空気や蒸気や、さらにはご飯の保温臭を追い出しながら、被調理物への加熱と、蒸気が凝縮することによる加湿が同時に行える。その後、蒸気孔開閉手段9bにより蒸気孔6aを密封することで、鍋1内に充満した蒸気が被調理物および鍋1内面で凝縮することで、鍋1内部の圧力が急激に減少するので、被調理物の温度に応じた真空圧、あるいは飽和水蒸気分圧と残存空気分圧の合計の圧力で、被調理物からの放熱を抑え、脱酸素状態あるいは低酸素状態で再加熱できる。すなわち、鍋加熱手段2および鍋側面加熱手段3により鍋1の底面や側面から、蒸気により鍋1の開口部からそれぞれ加熱し、米や食材を均一に適度な温度に加熱しつつ、大きな真空減圧装置や湿度制御装置なしで、ご飯や被調理物の所定の温度に加熱したり、保湿状態を維持したりすることができる。
【0061】
なお、少なくとも鍋1内の圧力を大気圧より高圧にする「圧力加熱」を実施することにより、蒸気投入手段16から投入した蒸気を加熱して高圧にすることで、蒸気をさらに鍋1の底部へと浸透させるものである。短時間でムラなく加熱と加水を実行できるので、ご飯を乾燥させずにおいしいご飯に再加熱できるものである。
【0062】
なお、水容器16a、水容器加熱手段16bなどから形成される蒸気投入手段16から鍋1内に供給する蒸気を、さらに加熱する蒸気加熱手段(内蓋6、内蓋加熱手段8)などで加熱することにより、蒸気の温度を水の沸点を超える温度の高温蒸気にして、鍋1内に投入することができる。鍋1内の温度が従来の圧力炊飯の炊き上げ工程では100℃以上であるのに対し、それと同程度以上の高温度の蒸気を投入するものであり、蒸らし工程A3でもご飯の温度を下げずに高温を維持できるものである。
【0063】
なお、白米と玄米、新米と古米など、米の種類、状態に応じて内蓋加熱手段8の動作を制御することで、必要な温度の高温蒸気を投入することができて、十分な糊化による甘み、粘りがある良好な食味のご飯に炊き上げ、炊飯性能が向上するものである。すなわち、炊飯工程後の保温工程や、冷めたご飯に対し、使用者が必要に応じてご飯を温めるための再加熱工程などにおいても、蒸気加熱を導入することで、同様の効果を奏することができる。
【0064】
なお、圧力調整手段9の球状の弁体9aを移動させる蒸気孔開閉手段9bは、電動機、ソレノイド、温度に応じて伸縮する形状記憶合金などにより形成することができるものであるが、一般的なよく知られた技術でもあり、図示を省略する。
【0065】
なお、蒸気投入手段16の代わりに空気ポンプを用い、その運転状態を制御することで、外気を鍋1に供給し、鍋1内を加圧することもできるものである。また、空気ポンプのポンプの形式は限定されるものでもない。
【0066】
なお、内蓋6は金属材料で形成されているが、多層金属板であっても、また部分的に厚肉であってもよく、特に蒸気の通過部分の熱容量を大きくした構成であれば、蒸気の加熱効果が向上するが、これに限定するものでもない。
【0067】
次に、以上のように構成された炊飯器について、機器の使用法や鍋1内の圧力の制御と蒸気の発生という点から補足説明する。
【0068】
炊飯を行う米とその米量に対応する水を鍋1に入れ、炊飯器1に収納する。また、水容器16aに所定量の水を準備する。さらに、入力操作部15の炊飯スイッチを使用者が操作すると、制御手段13が炊飯スイッチからよりの入力を受け、炊飯工程を実行する。
【0069】
炊飯工程において、鍋温度検知手段11は鍋1の底面の温度を検知し、制御手段13へと信号を送る。鍋温度検知手段11よりの信号に基づき、制御手段13は浸水、炊き上げ、蒸らしの各工程に大分された炊飯工程のそれぞれにおいて、鍋1の内部の水と米の状態が適正値として設定された温度や所定時間に維持されるよう、鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3、内蓋加熱手段8のそれぞれへの通電量を制御する。
【0070】
すなわち、鍋加熱手段2と鍋側面加熱手段3は制御手段13より供給される電流で誘導加熱により鍋1の底と側面を発熱させる。同様に、内蓋加熱手段8も制御手段13より供給される電流で誘導加熱により内蓋6を発熱させる。また、浸水、炊き上げ、蒸らしの各工程において、球状の弁体9aの開閉状態を切り替えることなどにより、図3に示すような炊飯中の米の温度制御を行う。
【0071】
また、炊き上げ工程A2で、球状の弁体9aは閉状態である時は、鍋1内の圧力が大気圧より高圧であり、鍋1内の米と水はもとより、水容器16aの内部の水も、高温高圧に保持される。鍋1内の圧力が所定圧力以上に上昇し、所定時間を経ると、球状の弁体9aが開状態に切り替わり、鍋1内の圧力が大気圧まで低下し、水の沸点が下がることで、鍋1内の水はもとより、水容器16aの内部の水も少し沸騰し、蒸気が生成される。発生した蒸気は内蓋6の表面を移動しながら、内蓋加熱手段8にて徐々に加熱されて、蒸気投入孔より高温蒸気として鍋1に投入される。したがって、制御手段13にて球状の弁体9aの動作、開閉時間および開閉回数を制御することにより、炊き上げ工程A2および蒸らし工程A3で、高温蒸気を鍋1に投入することもできる。
【0072】
なお、内蓋6は単層あるいは多層の金属材料で形成されているが、蒸気生成部や蒸気が加熱される部位を含めて内蓋加熱手段8の一部または全部に蓄熱部を設けたものであってもよい。このことで、蓄熱部に高温エネルギーを保有させた状態で水を滴下すれば、短時間で蒸気を生成することができて、炊飯工程あるいは保温工程で、必要なタイミングで蒸気を鍋1に投入することができる。
【0073】
なお、鍋側面加熱手段3は上下方向に多段であることで、炊飯量に応じて、鍋1の上部空間を側面から加熱することができる。もちろん、単一の加熱コイルであってもよいものである。
【0074】
なお、圧力調整手段9により、炊飯の炊き上げ工程A2に限らず、蒸らし工程A3で、鍋1で生成された蒸気による鍋1内の蒸気圧力および蒸気温度を制御して、いろいろな食感のご飯に炊き上げることができる。すなわち、球状の弁体9aが動作する時間と回数を制御すれば、蒸気投入手段16で生成した蒸気の加熱条件や、鍋1への蒸気の投入量および排出量を制御でき、ご飯への加熱条件を制御することで様々な食味を実現し、炊飯性能が向上する。
【0075】
なお、本実施の形態では、炊き上げ工程A2において鍋1の圧力を大気圧より高めた圧力炊飯や圧力調理を前提としているが、これに限定するものではなく、大気圧であってもよいことはいうまでもない。
【0076】
なお、本実施の形態では、圧力検知手段9cを有しているが、鍋1内の温度から鍋1内の圧力を推定するものであってもよい。
【0077】
なお、鍋温度検知手段11は鍋1の底部に接触し、内蓋温度検知手段12は内蓋6の上面に接触しているが、その接触場所を限定するものでも、その検知方式を限定するものでもない。
【0078】
なお、炊き上げ工程A2の後半部および蒸らし工程A3で高温蒸気を投入しているが、鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3、内蓋加熱手段8の運転方法により、米の種類、劣化度合い、炊き上げるご飯の硬さに関する好みなどの違いにより、一部の工程でのみ投入しても、炊飯性能が向上するものである。また、これを前提とすれば、蒸気発生のための使用水量も少なくなり、水容器16aの大きさが小型化でき、鍋1の内容積にも殆ど影響しないで、炊飯器本体14や全体の大きさもコンパクトなものとなる。
【0079】
なお、内蓋加熱手段8および水容器加熱手段16bを炊き上げ工程A2で動作させ、蒸気および水容器16aを高温度にすることができる。
【0080】
なお、従来から行われているように、米の種類に応じ、炊き上げ工程A2の圧力と温度条件を設定し、選択することで、それぞれに適した炊飯を実現し、ご飯の粘り、硬さなどを制御することができるものであり、食味のバラツキを抑制し、食味の向上が図れる。
【0081】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における炊飯器の圧力処理を示している。基本的な構成、炊飯器の方式に関しては実施の形態1と同様であるのでその説明を省略する。
【0082】
本実施の形態における炊飯器は、保温工程H1または再加熱工程において、圧力処理は、第1に蒸気孔6aを開放し、水容器16aで生成した蒸気を鍋1に投入する。次に蒸気孔6aを密封し、鍋1の圧力を減少させる蒸気減圧を行う。さらに、蒸気孔6aを開放し、大気圧の空気を投入する空気加圧を行う。さらに、蒸気孔6aを密封し、空気ポンプ20により鍋1内の空気と蒸気を排出し(図1のB1〜B2)、鍋1の圧力を減少させる蒸気減圧を行う。
【0083】
この圧力処理において、鍋加熱手段2により鍋1の底面から加熱し、鍋1の内部に投入された蒸気が米、水および鍋1の内面に付着して凝縮し加熱することで、鍋1の上部から加熱する。また、鍋1内に蒸気を充満させ、蒸気孔6aを閉じた状態で、蒸気の投入を停止すると、鍋1の内部の蒸気は凝縮し、鍋1や被調理物の温度に応じた蒸気圧と鍋1の内部に残存する空気とによる圧力まで減圧され(これを蒸気減圧と呼ぶ)、その後に蒸気孔6aを開放することで空気が鍋1に投入されて、大気圧まで加圧される。なお、蒸気減圧処理に引き続き、蒸気投入手段16により蒸気を投入する蒸気加圧処理を実行してもよいものである。この構成によれば、蒸気孔6aを密封した減圧状態で蒸気投入による被調理物への加圧加熱であるから、鍋1内の空気や蒸気の機外への排出、すなわち放熱を抑えて省エネを図った保温であり、短時間で再加熱できる。
【0084】
なお、蒸気投入手段16が、蒸気を生成する水容器16aと水容器16aを加熱する水容器加熱手段16bで構成されているので、水容器16aと鍋1は連通しているので、鍋1の圧力と水容器16aの圧力は同じであり、余分な開閉弁を用いないで、また低温度の外気の流入もなく、蒸気のみを鍋1に投入できて、その後に蒸気孔6aを密封すれば蒸気減圧ができる。
【0085】
また、このような蒸気減圧状態で、水容器加熱手段16bが水容器16aを加熱することにより、100℃より低い温度で蒸気を生成する。この低温度の蒸気を鍋1に投入することで、被調理物を保温あるいは再加熱に適切な温度に加熱するとともに、加圧する蒸気加圧ができる。すなわち、蒸気の温度を約100℃以上に高めないことで、被調理物の温度が過昇せず、保温および再加熱として食べ頃の適切な温度で、同時にしっとりと加湿して仕上げることができる。
【0086】
なお、空気ポンプ20で大気圧より減圧し、蒸気投入手段16で大気圧以上に加圧する、あるいは蒸気投入手段16で大気圧より減圧し、空気ポンプ20で大気圧以上に加圧するものでもよい。空気ポンプ20は、1個のポンプで空気の流れを反転させたり、経路を切り替えたりしてもよいものである。
【0087】
なお、かたさ、甘みなどの設定スイッチに対応して、圧力処理の温度、時間を変えてもよい。米の種類に対応して、圧力処理の温度、時間を変えてもよい。
【0088】
なお、浸水工程A1は、米の炊飯における慣例に基づくものであり、被調理物によっては食品にだしをしみこませることから、味付け工程とも言えるものである。
【0089】
なお、本実施の形態において、空気ポンプ20と蒸気投入手段16とを備えることで、種々の圧力処理が行えることを示したが、適宜、いずれかひとつで構成できるものであることは言うまでもない。
【0090】
なお、保温工程または再加熱工程における圧力変動は大気圧より高圧の圧力保温から大気圧より低圧の真空保温に変動するものであってもよく、ご飯の保温や再加熱温度を高めたり、早めたりできて、しかも被調理物の劣化を抑えて保温や再加熱できるものである。また、この場合、蒸気投入手段16に加えて、空気ポンプを併用することで、より高圧としたり、より低圧としたりできるものである。
【0091】
なお、内蓋6の開閉を検知する蓋開閉検知手段4aを有することで、保温工程において、蓋開閉検知手段4aの検知信号に基づき、制御手段13は内蓋6の開閉時間を算出し、内蓋6が一定時間以上開放されたことを検出すると、被調理物の温度変化は僅かな場合も、直ちに蒸気減圧処理を実行することができる。このように保温を制御すれば、被調理物の加熱と加湿を適正に行うことができ、鍋1内を適正な温度と湿度に維持できるものであり、より長時間おいしさを維持できる。
【0092】
なお、圧力処理において、蒸気減圧と空気減圧とを組み合わせた減圧処理や、蒸気加圧と空気加圧を組み合わせた加圧処理のいずれかを採用してもよいものである。それぞれに小型の蒸気投入手段や空気ポンプで高度な減圧処理や加圧処理を行えるものである。
【0093】
なお、圧力加減手段として、蒸気投入手段や空気ポンプを選択するメリットはそれぞれにあるが、吸水効果の向上とすれば、これらに限定するものでもない。
【0094】
なお、再加熱工程の第2の所定温度は保温工程の所定温度より高温であることが通常であるが、これに限定するものではない。
【0095】
なお、被調理物を加熱するにあたり、鍋1内が減圧状態であり、被調理物の上部空間での熱対流が少ないことから、鍋1の上方からマイクロ波や遠赤外線による加熱を行うことで、加熱能力を高めてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、適度な加熱と加湿と低酸素化雰囲気によってご飯の劣化を抑制し、保温性能と再加熱性能を向上することができるので、一般家庭用はもちろんのこと業務用の炊飯器や調理器などの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図
【図2】同炊飯器の他の断面図
【図3】同炊飯器の炊飯工程を示す温度チャート
【図4】同炊飯器の保温工程における蒸気減圧を示すタイムチャート
【図5】同炊飯器のパッキンの減圧における密封性を示す断面図
【図6】本発明の実施の形態2における炊飯器の蒸気減圧を示すタイムチャート
【符号の説明】
【0098】
1 鍋
2 鍋加熱手段
3 鍋側面加熱手段
6 内蓋
6a 蒸気孔
7 パッキン
7a 第1シール部
7b 第2シール部
8 内蓋加熱手段
9 圧力調整手段
9a 球状の弁体
9b 蒸気孔開閉手段
11 鍋温度検知手段
12 内蓋温度検知手段
13 制御手段
14 炊飯器本体
15 入力操作部
16 蒸気投入手段
16a 水容器
16b 水容器加熱手段
20 空気ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を収納する鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記鍋の開口部を覆う内蓋と、前記鍋の蒸気を排出する蒸気孔を開閉する圧力調整手段と、前記鍋に蒸気を投入する蒸気投入手段と、前記鍋加熱手段と前記蒸気投入手段を制御する制御手段とを備え、被調理物を所定温度で保持する保温工程または被調理物を再加熱する再加熱工程において、前記蒸気投入手段と圧力調整手段により鍋内の圧力の増大と減少の圧力処理を実行するようにした炊飯器。
【請求項2】
鍋内の圧力の減圧処理に引き続き、蒸気投入手段により蒸気を投入する蒸気加圧処理をするようにした請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
蒸気投入手段は、蒸気を生成する水容器と水容器を加熱する水容器加熱手段とを有する請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
内蓋の開閉を検知する蓋開閉検知手段を有し、保温工程において内蓋の開閉検知に基づいて減圧処理を実行するようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項5】
鍋と内蓋の隙間を封止するパッキンを有し、前記パッキンは鍋内の圧力が大気圧以上のときに鍋と内蓋を密封する第1シール部と、大気圧より低いときに密封する第2シール部とを有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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