説明

炊飯器

【課題】
少量炊飯時に内釜内の圧力が勢いよく大気に開放されないようにしてふきこぼれを防止するとともに、米粒の形を崩さずにご飯を炊き上げる。
【解決手段】
外蓋3に設けられ内釜2と外気とを連通する蒸気通路8と、蒸気通路8に設けられ内釜2内の調圧を行う調圧手段11と、調圧手段11の調圧動作を無効化する開放手段10と、内釜2内部の沸騰を検出する沸騰検出手段9と、炊飯工程に応じて加熱手段4および開放手段10を制御する制御部12を有する炊飯器において、炊飯中の加熱工程において、沸騰検出手段9が短時間のうちに内釜2内の沸騰を検出したときは少量炊飯と判断して調圧手段11により内釜2内の圧力を加圧し、一定時間加圧後加熱手段4を休止し、該加熱手段4の休止後、開放手段10により調圧手段11の調圧動作を無効化して蒸気通路8を大気に開放し、内釜2内の圧力を外気に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯工程の中で内釜内に圧力を加えて炊飯する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から炊飯工程の中で内釜内に圧力を加え、米粒への水の浸透を良くして美味しいご飯を炊き上げる炊飯器が提案されている。
【0003】
該炊飯器は、例えば、特許文献1,2に示すように、本体内に着脱自在に収納される内釜と、該内釜を加熱する加熱手段と、前記内釜の上面開口部を覆う開閉可能な外蓋と、該外蓋に設けられ前記内釜と外気とを連通する蒸気通路と、該蒸気通路に設けられ前記内釜内の調圧を行う調圧手段と、該調圧手段の調圧動作を無効化する開放手段と、前記内釜内部の沸騰を検出する沸騰検出手段と、炊飯工程に応じて前記加熱手段および開放手段を制御する制御部を備えたものであり、沸騰維持工程の中で沸騰検知手段により沸騰を検知してから数分(約3分)以内に調圧手段により内釜内部に大気圧以上(1.3気圧程度)の圧力を加え、その後、圧力が高い状態で開放手段により調圧手段の動作を無効化して蒸気通路を開放し、内釜内部の圧力を一気に外蓋の上面から外気に開放するものであった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−81824号公報
【特許文献2】特開2007−475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の炊飯器においては、炊飯の加熱工程から沸騰維持工程に移り、沸騰検知手段により沸騰を検知してから数分以内に調圧手段により内釜内に大気圧以上の高い圧力を加え、その後、圧力が高い状態で開放手段により蒸気通路を開放して内釜内部の圧力を一気に外蓋の上面から外気に開放するため、ご飯の量が少ない少量炊飯時、例えば5.5合炊きで1〜2合程度、一升炊きで1〜3合程度の炊飯を行った場合には、内釜内部のお湯が蒸気通路から外部に勢いよく吹き出てしまい、ふきこぼれが生じるとともに、使用者に対する安全性に問題があった。
【0006】
また、沸騰維持工程において、数分間という長い時間内釜内に高い圧力を加え続けるので、上記した少量炊飯時には米粒の形が崩れてしまうという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる従来の課題を解決するためになされたものであり、具体的には、本体内に着脱自在に収納される内釜と、該内釜を加熱する加熱手段と、前記内釜の上面開口部を覆う開閉可能な外蓋と、該外蓋に設けられ前記内釜と外気とを連通する蒸気通路と、該蒸気通路に設けられ前記内釜内の調圧を行う調圧手段と、該調圧手段の調圧動作を無効化する開放手段と、前記内釜内部の沸騰を検出する沸騰検出手段と、炊飯工程に応じて前記加熱手段および開放手段を制御する制御部を有する炊飯器において、炊飯中の加熱工程において、前記沸騰検出手段が短時間のうちに内釜内の沸騰を検出したときは少量炊飯と判断して前記調圧手段により前記内釜内の圧力を加圧し、一定時間加圧後前記加熱手段を休止し、該加熱手段休止後前記開放手段により調圧手段の調圧動作を無効化して前記蒸気通路を開放し、前記内釜内の圧力を外気に排出するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、炊飯工程の中で沸騰検出手段により短時間のうちに内釜内の沸騰を検出したときは、少量炊飯と判断して調圧手段により内釜内の圧力を加圧し、一定時間加圧後加熱手段を休止してから開放手段により蒸気通路を開放するので、内釜内の圧力が外部に勢いよく開放されることがなくなり、これによって内釜内部のお湯等が勢いよく外部に飛び出すこともなくなり、ふきこぼれを防止するとともに、安全性を高めることができる。
【0009】
また、圧力炊飯で少量の炊飯を行っても米粒の形が崩れてしまうという問題も解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の誘導加熱式炊飯器の縦断面図、図2は同誘導加熱式炊飯器の制御回路構成図、図3は同炊飯の際の通電状態を示す炊飯工程図である。
【0011】
図中1は本体、2は内釜、3は外蓋、4は加熱手段、5は温度センサー、6はソレノイド、7は移動棒、8は蒸気通路、9は沸騰検出手段、10は開放手段、11は調圧手段、12は制御部である。
【0012】
次にその具体的構成について説明する。
【0013】
本体1内には内釜2が着脱自在に挿入され、その上部開口部は開閉自在な外蓋3によって覆われている。
【0014】
内釜2の外側底面部には1400W程度の誘導加熱コイルからなる加熱手段4が設けられ、本体1内の空間部に配置された制御部12と接続されている。
【0015】
外蓋3内には内釜2内の密閉空間から外気への唯一の蒸気の出口となる蒸気通路8が設けられ、該蒸気通路8内には調圧手段11が設けられている。
【0016】
調圧手段11は、蒸気通路8の入口側の一部に設けられた狭い通路11bと該通路11bを閉じたり開放して内釜2内の圧力を調整する圧力ボール11aとで構成されている。
【0017】
調圧手段11の近傍には、圧力ボール11aを押すための移動棒7と、この移動棒7を動作させるソレノイド6とで構成される開放手段10が設けられており、移動棒7は圧力ボール11aを押している状態では蒸気通路8を大気に開放して調圧手段11を無効化し、ソレノイド6の動作により移動棒7をソレノイド6側に引き込むことで圧力ボール11aにより蒸気通路8の出口を塞ぎ、調圧手段11を有効に働かせて内釜2内で発生する蒸気により圧力を上げる。
【0018】
沸騰検出手段9は、外蓋3の内部の下面で、蒸気通路8の近傍に設けられており、内釜2内部で水が沸騰したときにこの沸騰を検出する。
【0019】
内釜2の外側底部には温度センサー5が当設し、内釜2底部の温度情報を制御部12に入力して加熱手段4により内釜2の加熱を行うようにする。
【0020】
以上の構成において、その作用を説明する。
【0021】
炊飯を行う際には、使用者は内釜2内に米と適量の水を入れ、本体1内に収納して操作部(図示せず)の炊飯スイッチを操作し、炊飯を開始する。
【0022】
制御部12は、前記した炊飯スイッチの操作を検出すると、加熱手段4に通電して内釜2が加熱され、図3に示すように内釜2内部の水温が上昇する。
【0023】
米は、その特性から水温60℃以下では水に浸すことによって米重量中の30%程度まで吸水するが、これ以上は長時間放置しても飽和して水を吸うことはない。
【0024】
一般に米を研いでから水に浸しておくのは、炊飯前に米に十分に30%まで水を吸わせるためである。この過程においては、水温が高いほうが早く水を吸う性質があり、図3では米を研いですぐに炊飯スイッチを操作しても炊飯できるように予熱を行い、60℃以下で水を30%まで短時間に効率良く吸わせる予熱工程を設けている。
【0025】
図3の予熱工程では、加熱手段4により内釜2を加熱し、水温60℃以下に保つように温度センサー5で温度を見張りながら制御部12により加熱手段4の制御を行う。加熱手段4には間欠的に通電する。この時、調圧手段11の圧力ボール11aは、開放手段10の移動棒7によって蒸気通路8を開放する方向に押され、調圧手段11の調圧動作は無効化されて蒸気通路8は開放している(イ)。
【0026】
予熱工程が終了して加熱工程に移行すると、加熱手段4で内釜2内の水が一気に沸騰するまで加熱を行う。そして、内釜2内の水が沸騰すると、それを沸騰検出手段9が検出して開放手段10の移動棒7を移動させ、これにより調圧手段11の圧力ボール11aが蒸気通路8を塞ぎ、同時に加熱手段4で内釜2を加熱して内釜2内の蒸気が増加し、圧力が上昇する(ロ)。
【0027】
この時、ご飯の量が少ない少量炊飯時の場合、例えば5.5合炊きで1〜2合程度、一升炊きで1〜3合程度の炊飯の場合には、内釜2内の水が沸騰するまでの時間が短いため、それを沸騰検出手段9が検出すると一定の時間加熱手段4を動作させた後、途中で加熱手段4を休止する。
【0028】
そして、加熱手段4の休止中は調圧手段11は動作した状態にしておき、内釜2内の圧力が下がってきたところで制御部12から蒸気通路8を塞いでいる調圧手段11の圧力ボール11aを開放手段10の移動棒7で押し、調圧手段11を無効化して蒸気通路8を大気に開放し、圧力を下げる(ハ)。
【0029】
なお、加熱工程が終了した後は、通常の蒸らし工程に移行し、ご飯を炊き上げる。
【0030】
以上のように、本実施例によれば、ご飯の量が少ない少量炊飯時の場合には、内釜2内の圧力が下がった時点で開放手段10を動作させて調圧手段11を無効化するため、内釜2内のお湯等が勢いよく蒸気通路8の出口から外気に噴出する心配がなくなり、ふきこぼれを防止することができるとともに、使用者の安全性を確保することができる。
【0031】
また、長い時間内釜2内の米粒に高い圧力をかけないですむので、米粒の形を崩すことなくご飯を炊き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の誘導加熱式炊飯器の縦断面図である。
【図2】同誘導加熱式炊飯器の制御回路構成図である。
【図3】同炊飯の際の通電状態を示す炊飯工程図である。
【符号の説明】
【0033】
1 本体
2 内釜
3 外蓋
6 ソレノイド
7 移動棒
8 蒸気通路
9 沸騰検出手段
10 開放手段
11 調圧手段
12 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内に着脱自在に収納される内釜と、該内釜を加熱する加熱手段と、前記内釜の上面開口部を覆う開閉可能な外蓋と、該外蓋に設けられ前記内釜と外気とを連通する蒸気通路と、該蒸気通路に設けられ前記内釜内の調圧を行う調圧手段と、該調圧手段の調圧動作を無効化する開放手段と、前記内釜内部の沸騰を検出する沸騰検出手段と、炊飯工程に応じて前記加熱手段および開放手段を制御する制御部を有する炊飯器において、
炊飯中の加熱工程において、前記沸騰検出手段が短時間のうちに内釜内の沸騰を検出したときは少量炊飯と判断して前記調圧手段により前記内釜内の圧力を加圧し、一定時間加圧後前記加熱手段を休止し、該加熱手段休止後前記開放手段により調圧手段の調圧動作を無効化して前記蒸気通路を開放し、前記内釜内の圧力を外気に排出することを特徴とする炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−75583(P2010−75583A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249464(P2008−249464)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】