説明

炊飯器

【課題】簡単な操作でお好みの雑炊調理ができる炊飯器を提供すること。
【解決手段】被炊飯物が収容される鍋と、前記鍋が収容されて該鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、前記加熱手段を制御して各種の炊飯工程を実行する制御手段と、前記制御手段へ雑炊メニューを含む各種の炊飯メニューを設定して前記炊飯工程を実行させるメニュー設定手段とを備えた炊飯器において、前記雑炊メニューは、水分量、粘り気、具材の加熱状態などを調節してお好み雑炊を作る雑炊メニューであって、前記炊飯工程は、雑炊工程を含み、前記雑炊工程は、最速雑炊工程Iと、お好み雑炊工程IIとを有し、前記制御手段は、前記雑炊メニューが選択されたときに、一定の時間内に最速雑炊工程を実行し、あるいは、前記最速雑炊工程を実行した後に前記お好み雑炊工程を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般家庭などで使用される炊飯器に関し、詳しくは、通常の白米炊飯機能の他に、残りご飯或いは冷凍ご飯などから雑炊を簡単に作ることができる雑炊調理機能を付加した炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電気炊飯器は、マイクロコンピュータが搭載されて、このマイクロコンピュータによって、白米・玄米などの米種に応じた炊飯ができる米種炊飯メニュー、硬め・柔らかめなどを調節してユーザーのお好みの炊飯ができるお好み炊飯メニュー、おかゆを炊くことのできるおかゆメニュー及び炊き上げたご飯に焦げ目をつけるおこげ炊飯メニューなどが選択できるようになっている。また、このような通常の炊飯メニューの他、既に炊き上がったご飯から雑炊を調理するという雑炊調理機能を設けたものが知られている(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【0003】
例えば、下記特許文献1には雑炊加熱機能を備えた炊飯器が開示されている。この炊飯器は、本体に着脱自在に収納される内釜と、内釜に入れた米や水を加熱する加熱部と、加熱部を制御する制御部と、制御部へ入力操作するための操作部とを備え、操作部には既に炊いたご飯に水分を足して加熱する雑炊加熱を選択する選択手段を設け、選択手段で雑炊加熱を選択した場合は、沸騰検知手段で沸騰を検知するまで強火で加熱し、沸騰後は加熱を停止させるか、又は加熱を一定時間低下させてから終了させるものである。
【0004】
具体的には、図7に示すように、下記特許文献1の炊飯器では、既に炊飯したご飯、すなわち、生米(β澱粉)に水を加え加熱して沸騰させ、98℃以上の高温に20分以上保持したご飯(α澱粉)、いわゆるα化したご飯を使用することにより、開始と同時に高い加熱量で加熱し、10分程度沸騰させて煮立たせたら加熱低下もしくは加熱を停止するとしている。そして、下記特許文献1の炊飯器には沸騰検知手段が備えられていることにより、ご飯の量、水の量、具の量及び温度に変動があっても正確に沸騰判定ができるため、これらを見越して確実に沸騰している時間を長めに定めておく方法に比べ、多くの使用条件の場合短時間で終了することができるとしている。
【0005】
また、下記特許文献2に開示された雑炊調理機能を有する炊飯器は、予約タイマ機能を有する炊飯器であって、雑炊メニューが選択されたときに、所定時刻に炊飯を完了する予約タイマ機能を無効するとするものとしている。このようにすることにより、雑炊の調理時に予約タイマを使ってしまうという誤使用を未然に防止することができる。そのため、ご飯が長時間水に浸されて腐敗が生じたり、ご飯が水を吸ってふやけ、食味が低下したりするような問題を回避できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−292896号公報(段落〔0022〕、図3)
【特許文献2】特開2001−299580号公報(段落〔0005〕、図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、2の炊飯器は、いずれも通常炊飯機能の他に雑炊調理機能が付加されて、所望の雑炊調理ができるものとなっている。
【0008】
上記特許文献1に開示された炊飯器は、図7に示すように、雑炊の加熱時間において、10分以内で沸騰させ、全体の加熱時間は略10分で出来上がるようになっている。しかし、上記特許文献1の炊飯器では、保温しているご飯を使用していることで、このような短時間で雑炊が出来上がるように設定されているが、保温されていない冷たいご飯では沸騰時間は長くなってしまう。
【0009】
さらに、近年は炊き上がったご飯を冷凍保存することが多く、冷凍されたご飯を雑炊炊飯に使用する場合、水で加熱すると外側が早く解凍するが、中心部が解凍し難いという問題がある。そのため単に水の沸騰を検出して加熱を停止するのでは、ご飯が未だ冷凍のまま或いは温度が低いままの部分が存在し食味が低下してしまう。一方、ご飯の塊の中心部が略沸騰するまで長時間加熱してしまうと、ご飯の外側が煮崩れて食味が悪くなると共に、澱粉の溶出が多くなり、出来上がった雑炊がどろどろになり食味が悪くなってしまうこともある。
【0010】
上記特許文献2に開示された炊飯器では、通常の雑炊コースに加えて冷凍雑炊コースを設け、この冷凍雑炊コースにおいては、食感が温かく感じる60℃以上にご飯が加熱され、水がほぼ沸騰または所定時間沸騰したら炊飯加熱を停止して雑炊に仕上げることにより、ご飯の外側の煮崩れおよび澱粉の溶出を抑制できるとともに、食感が冷たく感じることがなく、冷凍されたご飯を適切に雑炊として解凍できるとしている。
【0011】
しかし、雑炊の好みはユーザーの個々人によって異なり、その好ましい雑炊の状態は水分の量、用いる具材(野菜、肉、魚介類などの種類、あるいは調理済、未調理といった状態)などによって様々であるが、上記の方法では、好みの状態あるいは具の状態に応じた細かい調整は難しく、ユーザーの個々人の要望に応えることが難しかった。
【0012】
また、出願人は、炊飯工程の沸騰維持工程において、鍋内の圧力を高圧(1.2気圧)から大気圧近傍まで低下させて、鍋内に激しい沸騰現象、いわゆる突沸現象を起こさせて、鍋内の被炊飯物を攪拌して炊飯する圧力式炊飯器を開発し多くの特許を取得している。この圧力式炊飯器は、沸騰維持工程中に開放される圧力弁と、この圧力弁を強制的に開放させる圧力弁開放機構とを備えているが、この圧力式炊飯器で雑炊の調理をしようとすると、雑炊に使用される具などが圧力弁の弁口に詰まり、この弁口が塞がれることで、鍋内の圧力を異常上昇させてしまう恐れがある。そのため、この圧力式炊飯器に雑炊機能を付加しようとすると何らかの対策が必要になる。
【0013】
本発明は上記の従来技術の課題を踏まえてなされたもので、本発明の目的は、簡単な操作でお好みの雑炊調理ができる炊飯器を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、圧力式炊飯器において雑炊炊飯を行う場合に、鍋内の圧力の異常上昇を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、被炊飯物が収容される鍋と、前記鍋が収容されて該鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、前記加熱手段を制御して各種の炊飯工程を実行する制御手段と、前記制御手段へ雑炊メニューを含む各種の炊飯メニューを設定して前記炊飯工程を実行させるメニュー設定手段とを備えた炊飯器において、前記雑炊メニューは、水分量、粘り気、具材の加熱状態などを調節してお好み雑炊を作る雑炊メニューであって、前記炊飯工程は、雑炊工程を含み、前記雑炊工程は、最速雑炊工程と、お好み雑炊工程とを有し、前記制御手段は、前記雑炊メニューが選択されたときに、一定の時間内に最速雑炊工程を実行し、あるいは、前記最速雑炊工程を実行した後に前記お好み雑炊工程を実行することを特徴とする。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の炊飯器において、前記最速雑炊工程は、前記鍋内の水分を沸騰させる沸騰工程と、前記水分沸騰後に一定温度K1で雑炊具を加熱するともに蒸らす具調理・蒸らし工程とを有し、これらの沸騰工程及び具調理・蒸らし工程を一定の設定時間T1内で行う工程であって、前記お好み雑炊工程は、所定温度K2及び時間T2で雑炊具の加熱を行う工程からなる工程であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の炊飯器において、前記温度K1及びK2は100℃、前記最速雑炊工程の時間T1は15分、及び前記お好み雑炊工程の時間T2は0分から最長時間が45分の範囲で任意に選択されることを特徴とする。
【0018】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の炊飯器において、前記制御手段は、前記雑炊工程の終了後、所定の温度で保温する保温工程へ移行、又は前記加熱手段への給電を停止させることを特徴とする。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の炊飯器において、前記蓋体には、前記鍋内からの吹き零れ汁を一時貯留し、再び戻す貯留タンクが付設されていることを特徴とする。
【0020】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の炊飯器において、前記蓋体には、前記鍋内の圧力を大気圧以上に上昇させる圧力弁と、前記圧力弁を炊飯工程中に少なくとも1回以上強制的に開放させる圧力弁開放機構とが設けられ、通常炊飯時に前記鍋内の被炊飯物を強制的に攪拌させる強制攪拌機能が付設されて、前記制御手段は、前記メニュー設定手段で雑炊メニューが選定されたときに、前記攪拌機能を無効にして、前記圧力弁の開放状態を保持し閉塞させないように制御することを特徴とする。
【0021】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の炊飯器において、予約タイマー機能を備え、前記制御手段は前記メニュー設定手段で雑炊メニューが選定されたときに、前記予約タイマー機能が無効になるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記のような構成を備えることにより、以下に述べるような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1及び請求項2に記載の炊飯器によれば、残りご飯或いは冷凍ご飯の塊と各種の雑炊具とを用いて、ユーザーの好みに応じた雑炊炊飯ができる。すなわち、雑炊メニューにおいて最速雑炊工程のみが実行されたときは、最も短い時間で雑炊ができ、また、お好み雑炊工程が実行されたときは、水分量、粘り気、具材の加熱状態などが調節されたお好みの雑炊ができる。
【0023】
また、請求項3に記載の発明によれば、時間T1の15分及び時間T2の最長時間45分は、実験に基づいて設定した時間であるが、時間T1の15分であれば、冷凍ご飯の塊に生の肉及び魚介類などの雑炊具を用いても、冷凍ご飯の解凍がスムーズに行えて、また雑炊具が生煮えになることなく雑炊を最短時間で簡単に作ることができる。また、お好み雑炊時間が長時間になると鍋内の水分が少なくなり、雑炊が焦げることがあるが、T2の最長時間を45分にすることで焦げを抑制することができる。
【0024】
また、請求項4に記載の発明によれば、雑炊工程の終了後、保温工程に移行することで、雑炊を温かいまま保存することができる。また、保温が不要な場合には、加熱を停止することで雑炊が糊状になることを防止することができる。
【0025】
また、請求項5に記載の発明によれば、雑炊調理時に被調理物が沸騰して生じる吹き零れ汁に含まれる旨み成分を外部へ漏出させることなく、有効に利用できるので雑炊が美味しくなる。
【0026】
また、請求項6に記載の発明によれば、雑炊メニューが選定されたときに、雑炊工程中において強制攪拌機能が無効にされるので、圧力弁に雑炊具などが付着して圧力弁を塞ぐことがなく、安全性を確保できる。
【0027】
また、請求項7に記載の発明によれば、雑炊メニューが選定されたときに予約タイマー機能が無効になるので、誤って予約タイマー機能が設定され、鍋内の被調理物が長時間水に浸ることで発生する腐敗などを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図である。
【図2】図1の炊飯器の部分断面図である。
【図3】図3は図2の圧力弁開放機構を拡大した拡大断面図である。
【図4】図4は雑炊調理方法を示す特性図である。
【図5】図5は雑炊調理フローチャート図である。
【図6】図6は図5に続く雑炊調理フローチャート図である。
【図7】従来技術の炊飯器の雑炊調理方法を示す特性図である
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための炊飯器を例示するものであって、本発明をこの炊飯器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【0030】
本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器の構造について、図1〜図3を用いて説明する。なお、図1は本発明の一実施形態に係る炊飯器の正面図である。図2は図1の炊飯器の部分断面図である。また、図3は図2の圧力弁開放機構を拡大した拡大断面図である。
【0031】
炊飯器1は、炊飯器本体(以下「本体」という)2と本体2を覆う開閉自在の蓋体3とで構成される。本体2には、被調理物であるご飯、雑炊具及び水またはだし汁が投入される深底の容器からなる鍋4と、上方にこの鍋4が収容される開口部及び内部にこの鍋4を加熱して被炊飯物を加熱する加熱手段5を有しており、さらに各種炊飯工程などを制御する制御手段(図2参照)と、炊飯メニューを操作する操作部6と、操作された炊飯メニューを表示する表示部7とが、正面側に設けられている。
【0032】
操作部6は、炊飯メニュー選択ボタン8、炊飯スタート/保温ボタン9、予約ボタン10、取り消しボタン11、十字キー12よりなり、これらの操作ボタンを適宜操作して、予約炊飯や使用者の好みのメニューで炊飯を行うように設定することができるようになっている。
【0033】
本体2は、有底箱状の外部ケース13と、この外部ケース13に収容される収納ケース14(図2参照)とからなり、外部ケース13と収納ケース14との間に隙間が形成され、この隙間に制御手段27を構成する制御装置(図示省略)が配設されている。収納ケース14には鍋4が収容される。この鍋4は、例えばアルミニウムとステンレスとのクラッド材で形成されている。
【0034】
蓋体3は、一端をヒンジ15により本体2に枢着した着脱自在の内蓋16と、外方を覆う外蓋17とで構成されており、内蓋16には、圧力弁18及び圧力弁開放機構23が形成されている。また、内蓋16には鍋4内が異常に加圧された時、例えば炊飯中に圧力弁18が故障して開かないときなどに開放して鍋内の圧力を逃がす安全弁24を備えている。圧力弁18は、図3に示すように、圧力孔19を有する弁座20と、この弁座20の上に自重により圧力孔19を塞ぐ金属性のボール21と、このボール21を覆うカバー22とからなる。
【0035】
また、圧力弁開放機構23は、電磁コイルが巻回されたシリンダー23aと、このシリンダー内を電磁コイルの励磁により入出し、ボール21を移動させるプランジャー23bと、プランジャー23bの先端に装着された作動棹25と、シリンダーの一端部と作動棹25との間に設けられたバネ26とで構成されている。
【0036】
圧力弁開放機構23は、制御手段27(図2参照)により制御される。すなわち、圧力弁開放機構23は、制御手段27からの出力を受けていないときは、プランジャー23bがシリンダー23aから突出して圧力孔19上のボール21を圧力孔19の上から横方向へ押し出し、圧力孔19を強制的に開放される。また、制御手段27の出力を受けた時には、プランジャー23bがシリンダー23a内に引き込まれる。このときボール21は、自重により圧力孔19上に戻り、圧力孔19を閉塞する。このように圧力弁開放機構23が動作すると、このプランジャー23bによる圧力弁18の開放動作により、炊飯工程中に加圧された鍋4内の圧力を強制的に低下させることができる。
【0037】
外蓋17には、図2に示すように、吹き零れ汁を一時貯留する貯留タンク28が着脱自在に装着されている。貯留タンク28の内部は蒸気と吹き零れ汁とを分離させるために上下から分離構造を設けた多室構造となっており、蒸気穴28aを蒸気のみが通過できるようになっている。吹き零れ汁は、後述する沸騰工程IA、具調理・蒸らし工程IB(図4参照)で貯留タンク28に溜まり、鍋4内に還元されるようになっている。この貯留タンク28は、通常の炊飯時には、おねばと呼ばれる炊飯時の吹き零れ汁を貯留することになる。
【0038】
本体2は、図1に示すように、炊飯メニュー選択ボタン8により各種の炊飯コースを選択するための選択手段29を備えている。制御手段27は、周知のようにCPU、ROM、RAMなどで構成されたハードウェアと、後述するフローチャートの内容を実行するためのソフトウェアとにより構成される。
【0039】
鍋4の底部には、図2に示すように、炊飯量検出手段としても機能する鍋底温度を検出するための鍋底温度センサー30bが取り付けられており、また、蓋体3には適切な位置に蒸気温度を検出するための沸騰検出手段となる蒸気温度センサー30aが取付けられており、各センサー30a、30bの出力は制御手段27に送られるようになっている。なお、鍋底温度センサー30bの出力により鍋内の炊飯量を検出することは、既に公知であるので詳細な説明を省略する。
【0040】
前記圧力弁18の下部には、図2、図3に示すように、弁座20に着脱自在に装着され複数個の小孔を穿設したフィルター31が装着されている。このフィルター31を装着することにより、米粒や具材がこのフィルター31によって阻止されて外気中に放出されるのを防止できる。
【0041】
次に、図4〜図6を参照して雑炊工程を説明する。なお、図4は雑炊工程における鍋内の温度及び圧力の変化を示した特性図、図5、図6は炊飯フローチャート図である。
【0042】
雑炊工程は、急速に雑炊を調理する最速雑炊工程Iと、最速雑炊工程Iの終了後、ユーザーの好みに合わせて加熱時間を任意に変更できるお好み雑炊工程IIを有している。最速雑炊工程Iは、さらに鍋4内の水分を沸騰するまで昇温加熱する沸騰工程IAと、水分沸騰後に雑炊具を一定温度K1で加熱するとともに蒸らしを行う、具調理・蒸らし工程IBを有している。なお、最速雑炊工程Iの加熱時間T1は15分である。
【0043】
雑炊調理には、保温された温かいご飯、冷やご飯、冷凍ご飯などを使用することができるが、これらはいずれもすでに炊飯され、米が十分にα化されているため、通常の炊飯時における、いわゆる吸水工程は不要であり、すぐに鍋4を昇温加熱することができる。
【0044】
最速雑炊工程Iにおいては加熱時間がT1に固定されており、お好み雑炊工程IIでは追加加熱時間T2が0分〜45分の間で設定される。
【0045】
すなわち、雑炊調理における総雑炊加熱時間TはT1+T2であり、15分から60分の間で任意に選択されることとなる。
【0046】
図4において、Aは鍋底温度、Bは蒸気温度、Cは冷凍ご飯の塊の中心部の温度を表す。最速雑炊工程Iにおいては、鍋底温度AがK1に達した後しばらくして蒸気温度BがK1に達する。その後さらに遅れて約15分経過後に冷凍ご飯の塊の中心部の温度CがK1に達し、この時点で最速雑炊工程Iを終了する。最速雑炊工程Iの終了時点で、雑炊は十分に加熱されているが、さらにお好み雑炊工程IIを設けることで、ユーザーの任意の加熱時間を設定し、粘り気や具材の加熱状態を好みに応じて調整することができる。
【0047】
時間T1の15分及び時間T2の最長時間45分は、実験に基づいて設定した時間であるが、時間T1の15分であれば、冷凍ご飯の塊に生の肉及び魚介類などの雑炊具を用いても、冷凍ご飯の解凍がスムーズに行えて、また雑炊具が生煮えになることなく雑炊を最短時間で簡単に作ることができる。また、お好み雑炊時間が長時間になると鍋内の水分が少なくなり、雑炊が焦げることがあるが、T2の最長時間を45分にすることで焦げを抑制することができる。
【0048】
以下、図5、図6を参照して雑炊工程の流れを説明する。本実施形態の炊飯器1において雑炊を調理する場合は、まず、炊飯メニューの雑炊炊飯を選択し(S301)、その後総雑炊加熱時間Tを15分から60分の間でユーザーの任意の雑炊時間を選択すると(S302)、制御手段27において予約タイマー機能が無効になると共に(S303)、圧力弁18が開成され(S304)、最速雑炊工程Iが開始される(S305)。
【0049】
このとき、予約タイマー機能が無効になることにより、鍋4内のご飯や未調理の雑炊具、特に未加熱の肉、魚介類などが鍋4内に長時間放置され、腐敗することが抑制される。また、圧力弁18が開成した状態で固定されることにより、雑炊調理時に鍋4内の強制攪拌機能が無効にされるので、圧力弁18に雑炊具などが付着して圧力弁18が塞がれることを抑制し、異常な圧力の上昇を抑制して安全性を確保することができる。
【0050】
なお、本実施形態の炊飯器1においては、雑炊調理選択後、総雑炊加熱時間Tを15分から60分で設定するようにしたが、最速雑炊工程Iの加熱時間T1(15分)に追加する追加加熱時間T2を0分から45分の間で設定するようにしてもよい。
【0051】
最速雑炊工程Iでは、加熱時間T1のタイマーカウントが開始され(S306)、沸騰工程IAに移行する(S307)。沸騰工程IAでは、鍋4内が加熱手段5によってフルパワーで加熱され(S308)、鍋4内の温度が急上昇する。その後、鍋底温度センサー30bによって鍋底温度を検出し、鍋底温度が所定温度K1(100℃)に達したかどうかを判定(S309、S310)し、鍋底温度が所定温度K1に達していない場合(「N」の場合)は、加熱手段5への通電を継続する。一方、鍋底温度が所定温度K1に達したと判定されると(「Y」の場合)、沸騰工程IAが終了し、具調理・蒸らし工程IB(S311)に移行する。
【0052】
具調理・蒸らし工程IBでは、T1が経過するまでの間、所定温度K1を維持するため加熱手段5への通電が所定時間の間所定の間隔で行われる(S312)。そして、加熱時間T1が経過したか否かが判定され(S313)、加熱時間T1が経過していない場合(「N」の場合)は、加熱手段5への所定時間間隔の通電が継続される。一方、加熱時間T1が経過した場合は、続けて雑炊調理開始時に設定した総雑炊加熱時間Tを読み出し(S314)、TがT1と等しいか否かを判定する(S315)。TがT1と等しければ(「Y」の場合)、保温工程に移行、もしくは加熱手段への通電がオフされる。保温工程に移行することで、雑炊を温かいまま保存することができる。また、保温が不要な場合には、加熱を停止して雑炊が糊状になることを抑制する。
【0053】
一方、S315において、TがT1より長い場合(「N」の場合)には、お好み雑炊工程II(S316)へと移行する。お好み雑炊工程では、総雑炊加熱時間Tから最速雑炊工程の加熱時間T1を引いた時間T2のタイマーカウントが開始され(S317)、加熱手段5への通電が所定時間間隔で行われる(S318)。続いて追加加熱時間T2が経過したか否かが判定され(S319)、追加加熱時間T2が経過していない場合(「N」の場合)は、加熱手段5への所定時間間隔の通電が継続される。一方、追加加熱時間T2が経過した場合(「Y」の場合)では、保温工程に移行されるかもしくは加熱手段への通電がオフされる。
【0054】
上記のような構成を備えることにより、本実施形態の炊飯器によれば、残りご飯或いは冷凍ご飯の塊と各種の雑炊具とを用いて、ユーザーの好みに応じた雑炊炊飯ができる。すなわち、雑炊メニューにおいて最速雑炊工程のみが実行されたときは、最も短い時間で雑炊ができ、また、お好み雑炊工程が実行されたときは、水分量、粘り気、具材の加熱状態などが細かく調節されたお好み雑炊ができる。
【符号の説明】
【0055】
1…炊飯器
2…炊飯器本体
3…蓋体
4…鍋
5…加熱手段
6…操作部
7…表示部
8…炊飯メニュー選択ボタン
9…炊飯スタート/保温ボタン
10…予約ボタン
11…取り消しボタン
12…十字キー
13…外部ケース
14…収納ケース
15…ヒンジ
16…内蓋
17…外蓋
18…圧力弁
19…圧力孔
20…弁座
21…ボール
22…カバー
23…圧力弁開閉機構
23a…シリンダー
23b…プランジャー
24…安全弁
25…作動棹
26…バネ
27…制御手段
28…貯留タンク
28a…蒸気穴
29…選択手段
30a…蒸気温度センサー
30b…鍋底温度センサー
31…フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被炊飯物が収容される鍋と、前記鍋が収容されて該鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、前記加熱手段を制御して各種の炊飯工程を実行する制御手段と、前記制御手段へ雑炊メニューを含む各種の炊飯メニューを設定して前記炊飯工程を実行させるメニュー設定手段とを備えた炊飯器において、
前記雑炊メニューは、水分量、粘り気、具材の加熱状態などを調節してお好み雑炊を作る雑炊メニューであって、
前記炊飯工程は、雑炊工程を含み、前記雑炊工程は、最速雑炊工程と、お好み雑炊工程とを有し、
前記制御手段は、前記雑炊メニューが選択されたときに、一定の時間内に最速雑炊工程を実行し、あるいは、前記最速雑炊工程を実行した後に前記お好み雑炊工程を実行することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記最速雑炊工程は、前記鍋内の水分を沸騰させる沸騰工程と、前記水分沸騰後に一定温度K1で雑炊具を加熱するともに蒸らす具調理・蒸らし工程とを有し、これらの沸騰工程及び具調理・蒸らし工程を一定の設定時間T1内で行う工程であって、前記お好み雑炊工程は、所定温度K2及び時間T2で雑炊具の加熱を行う工程からなる工程であることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記温度K1及びK2は100℃、前記最速雑炊工程の時間T1は15分、及び前記お好み雑炊工程の時間T2は0分から最長時間が45分の範囲で任意に選択されることを特徴とする請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記制御手段は、前記雑炊工程の終了後、所定の温度で保温する保温工程へ移行、又は前記加熱手段への給電を停止させることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記蓋体には、前記鍋内からの吹き零れ汁を一時貯留し、再び戻す貯留タンクが付設されていることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記蓋体には、前記鍋内の圧力を大気圧以上に上昇させる圧力弁と、前記圧力弁を炊飯工程中に少なくとも1回以上強制的に開放させる圧力弁開放機構とが設けられ、通常炊飯時に前記鍋内の被炊飯物を強制的に攪拌させる強制攪拌機能が付設されて、前記制御手段は、前記メニュー設定手段で雑炊メニューが選定されたときに、前記攪拌機能を無効にして、前記圧力弁の開放状態を保持し閉塞させないように制御することを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項7】
予約タイマー機能を備え、前記制御手段は前記メニュー設定手段で雑炊メニューが選定されたときに、前記予約タイマー機能が無効になるように制御することを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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