説明

炊飯器

【課題】大型化することなく、適切に調湿することができるようにした炊飯器を提供する。
【解決手段】内釜14と、内蓋15と、上部が開口し、内釜14を着脱自在に収納する炊飯器本体10と、炊飯器本体10の上部開口を開閉自在に閉塞する外蓋11と、加熱コイル13を制御する制御部24とを備える。内釜14及び内蓋15は、多孔質炭材から構成される。内蓋15に超音波発生器22が取り付けられる。制御部24は、超音波発生器22の駆動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器に関し、特にその保温機能に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保温機能を備えた炊飯器として、例えば「炊飯器本体1内の水蒸気12は抜き孔17、導入口18を経て保水性材料層14に導かれ、更に同層14の物質間空隙を通過する間に凝縮、捕集されると共に、水蒸気中から奪われた熱の一部が畜熱される。この捕集、蓄熱された水分および熱は保温時において、適度に炊飯器内部の温度と湿度を調整して、ご飯のぱさつきを少なくする。保水性材料層14に脱臭機能を付加することにより、保温時に発生するご飯の嫌な臭いを抑制する。」というものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−62948号公報(要約、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1において提案されている炊飯器においては、保水性材料層により水分が保持され、保温時にその水分を放出するようにしているが、保水性材料層から積極的に水分を放出する機能を持っていないため、適切に調湿することができないという課題があった。また、保水性材料層を別途設けなければならないことから、炊飯器が大型化するという課題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、大型化することなく、適切に調湿することができるようにした炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る炊飯器は、調理物を収納する内釜と、前記内釜を覆う内蓋と、加熱手段を備え、上部が開口し、前記内釜を着脱自在に収納する炊飯器本体と、前記炊飯器本体の前記上部開口を開閉自在に閉塞する外蓋と、前記加熱手段を制御する制御手段とを備え、前記内釜及び前記内蓋の少なくとも一方は、多孔質炭材から構成されており、前記多孔質炭材からなる前記内釜又は前記内蓋に超音波発生器が取り付けられ、前記制御手段は、前記超音波発生器の駆動を制御するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、内釜及び内蓋の少なくとも一方が多孔質炭材から構成されており、それにより水分が保持される。そして、超音波振動子が多孔質炭材から構成された内釜又は内蓋を振動させることにより、それらに保有されている水分が放出されることで、内釜内の調理物を適切に調湿することが可能になっている。また、内釜及び内蓋の何れかが水分を保持する機能を持っており、従来のように保水性材料層を別途設けなければならないような事態は起こらず、大型化が避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の側面図である。
【図2】図1の炊飯器の制御系を示したブロック図である。
【図3】図1の炊飯器の内蓋の断面図である。
【図4】図1の炊飯器の保温モードの処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2に係る炊飯器における洗浄モードの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の側面図であり、図2は、図1の炊飯器の制御系を示したブロック図である。
本実施の形態に係る炊飯器1は、図1に示されるように、炊飯器本体10、外蓋11及びハンドル12を備えている。炊飯器本体10は、上部が開口しており、その底部には図2の加熱コイル13が設けられており、また、図2の内釜14を着脱自在に収納する。外蓋11は、炊飯器本体10の上部開口を開閉自在に覆っている。ハンドル12は、炊飯器1を持つときに、図2の実線の状態から破線の状態に回動して使用される。
【0010】
内釜14は、図2に示されるように、多孔質炭材14aから構成されており、その外表面が外面コーティング14bにより覆われている。内釜14は、内蓋15により開閉自在に覆われている。内蓋15は、多孔質炭材から構成され、温度センサ21及び超音波発生器(例えば圧電素子)22が取り付けられている。超音波発生器22は、例えば内蓋15の周方向に沿って分布して配置され、超音波発振回路23により駆動される。温度センサ21及び超音波発振回路23は、制御部24に接続されている。制御部24は、例えばマイクロコンピュータから構成されており、通常の炊飯の他に、調理物を保温する保温モード、内釜14及び内蓋15を洗浄する洗浄モード(このモードについては後述の実施の形態2参照)を有する。制御部24は、操作・表示部25からの操作信号に基づいて加熱回路(インバータ)26を駆動し、加熱コイル13に駆動電流を供給する。また、制御部24は、温度センサ21からの検出信号を取り込んで、加熱回路(インバータ)26を制御し内釜14を加熱し、或いは、超音波発振回路23を制御して超音波発生器22を駆動して内蓋15に振動を与える。内蓋15の振動は内釜14にも伝搬して同様に振動する。
【0011】
図3は、内蓋15の断面図である。
内蓋15は、図3に示されるように、多孔質炭材から構成されており、その底面の微細気孔15aから吸収した蒸気を、内蓋15内部に水分を保持するための連続気孔15bを備えている。また、内蓋15は、連続気孔15bを持つ層と、気密層15c(または半気密層)とを備えているため、蒸気が内蓋15表面から放出されない構造となっている。また、内蓋15は、底面側ほど微細な気孔となっており、おねば等の腐食の原因となる物質が気孔に浸入することがない構造となっている。
【0012】
内蓋15の気孔は、底面の微細気孔15aを通過すると、水滴を保持できる大きな気孔となる。気孔同士は連通しており、長時間の保温にも十分な水分を保持できる容積をもつ。なお、底面の微細気孔15aの直径は特に限定されないが、水蒸気<微細気孔15a<水滴(直径)となるような1〜100μm程度が望ましい。
【0013】
なお、上記の説明は、内蓋15の構成についての説明であるが、内釜14についても同様に構成されており、図3の(底面)を内壁側と読み替えればよい。
【0014】
次に、本実施の形態の炊飯器の動作を説明する。
図4は、本実施の形態における動作を示したフローチャートである。
炊飯器1の制御部24は、加熱回路26を制御し、加熱コイル13に駆動電流を供給して炊飯処理を行い、その炊飯が完了すると自動的に保温モードに移行し、保温を開始する(S11)。このとき、内釜14及び内蓋15は炊飯の過程において、水蒸気(水分)を保有した状態になっている。炊飯直後は、内釜14内は十分な蒸気で満たされているが、所定の加熱(例えば炊飯量に応じて適宜変更する)経過後(S12)、超音波発振回路23を制御して超音波発生器22を駆動して超音波を発生させる(S13)。超音波発生器22から超音波が発生すると内蓋15が振動する。内蓋15が振動すると、それは伝搬して内釜14も振動する。内蓋15及び内釜14は炊飯の過程において水分を保有しており、振動が付加されるとその水分がミスト化されて放出され、内釜14内が加湿される。この加湿処理が開始されるとその時間が計測され、加湿処理を所定時間行うと(S14)、超音波発振回路23による超音波発生器22の駆動を停止させ(S15)、保温を停止する(S16)。
【0015】
以上のように、本実施の形態においては、内釜14及び内蓋15が多孔質炭材から構成されており、炊飯の過程においてそれに水分が保有され、そして、その水分が保有された内蓋15に超音波振動を付加すると、内蓋15及び内釜14に保有されている水分がミスト化されて放出されることで、内釜14内を適切に調湿することが可能になっている。また、内釜14及び内蓋15が水分を保有する機能を持っているので、従来のように保水性材料層を別途設けなければならないような事態は起こらず、炊飯器1の大型化が避けられる。
【0016】
なお、本実施の形態においては、超音波発生器22が内蓋15に取り付けられた例について説明したが、超音波発生器22を内釜14に取り付けるようにしてもよい。
また、炊飯が完了すると自動的に保温モードに移行する例について説明したが、操作・表示部25からの操作信号に基づいて保温モードを開始するようにしてもよい。
また、保温モードにおける加湿処理は、所定の時間間隔で間欠的に行うようにしてもよい。
また、内釜14及び内蓋15は、上記のような材料(多孔質炭材)から構成されているので、給水して予め吸湿状態にすることも可能であり、その状態で炊飯、その他の加熱調理に使用する際に、水蒸気を放出して加湿し、過飽和の状態を作り出すことができる。米の種類によっては、過飽和の状態で食味を向上させることができる。また、米以外の調理、例えば蒸し野菜の調理では、過飽和の効果で食味を向上させることができる。
【0017】
また、内蓋15を洗浄する際には、内蓋15を水に漬けた状態で超音波を発生して加振するようにすれば、例えば付着したおねば等の汚れを簡単に除去することができ、効率的に洗浄することができる。
また、内釜14及び内蓋15の気孔に入り込んだ汚れも同様にして洗浄できるが、その詳細を実施の形態2として説明する。
【0018】
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2に係る炊飯器の動作を示すフローチャートである。
図5の処理は操作・表示部25が洗浄モードを選択したときに、制御部24がその処理を行う。この洗浄モードを開始する前には、内釜14には水が収納されているものとする。
制御部24は、まず、操作・表示部25から洗浄モードに相当する操作信号を入力すると、加熱回路26を制御し加熱コイル13に駆動電流を供給し、内釜14内の水を沸騰させる(S21)。その沸騰状態であるか否かの判断は、例えば温度センサ21の出力に基づいてなされる。
制御部24は、超音波発振回路23を制御して超音波発生器22を駆動して超音波を発生させる(S22)。超音波発生器22から超音波が発生すると内蓋15が振動し、それに伴って内釜14も振動する。内蓋15及び内釜14が振動すると、それらが元々保有していた水分が放出され、新たな水分を保有することになる。このような動作が繰り返されて、内蓋15及び内釜14の水分が入れ替わることにより、内蓋15及び内釜14が洗浄される。
制御部24は、超音波発振回路23の制御を所定時間継続すると(S23)、超音波発振回路23及び加熱回路26の制御を終了して(S24)浄モードを終了する。なお、この洗浄モードにおいては焦げ付きを防止するために、例えば温度センサ21の出力が100℃を超えた場合には、洗浄モードを終了する(或いは加熱処理を中止する)。
【0019】
以上のように、本実施の形態2においては、内蓋15及び内釜14に超音波振動を加えながら洗浄するようにしたので、内蓋15及び内釜14の気孔に入り込んだ汚れも効率良く除去することができる。
【0020】
実施の形態3.
なお、上記の実施の形態1及び2においては、内釜14及び内蓋15の両方が多孔質炭材から構成されている例について説明したが、本発明は、その何れか一方が多孔質炭材から構成されればよい。その場合には、超音波発生器22は、多孔質炭材から構成された内釜14又は内蓋15に取り付けられることになる。
【符号の説明】
【0021】
1 炊飯器、 10 炊飯器本体、11 外蓋、12 ハンドル、13 加熱コイル、14 内釜、14a 多孔質炭材、14b 外面コーティング、15 内蓋、21 温度センサ、 22 超音波発生器、23 超音波発振回路、24 制御部、25 操作・表示部、26 加熱回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理物を収納する内釜と、
前記内釜を覆う内蓋と、
加熱手段を備え、上部が開口し、前記内釜を着脱自在に収納する炊飯器本体と、
前記本体の前記上部開口を開閉自在に閉塞する外蓋と、
前記加熱手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記内釜及び前記内蓋の少なくとも一方は、多孔質炭材から構成されており、
前記多孔質炭材からなる前記内釜又は前記内蓋に超音波発生器が取り付けられ、
前記制御手段は、前記超音波発生器の駆動を制御する
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記制御手段は、調理物を保温する保温モードを備え、
前記保温モードの実行時には、前記超音波発生器を駆動することを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記制御手段は、炊飯が完了した後に前記保温モードに移行し、
前記保温モードの実行時には、炊飯量に応じた加熱処理をした後に、前記超音波発生器を駆動して加湿することを特徴とする請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記制御手段は、前記多孔質炭材からなる前記内釜又は前記内蓋を洗浄する洗浄モードを備え、
前記洗浄モードの実行時には、前記超音波発生器を駆動することを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記制御手段は、前記洗浄モードの実行時には前記内釜を加熱し、前記内釜に収納された水を沸騰させながら前記超音波発生器を駆動することを特徴とする請求項4に記載の炊飯器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−229705(P2011−229705A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103045(P2010−103045)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】