説明

炎症傷害の処置および評価

【課題】TWEAKおよびTNF−αによって調節される分子のシグナル伝達経路に関与する被験体の炎症性疾患を処置すること。
【解決手段】TWEAKおよびTNF−αによって調節される分子のシグナル伝達経路を両方のブロックすることを使用して、様々な炎症性疾患を処置することができる。関節リウマチを有するヒト被験体に対して、TNF−α遮断薬と組み合わせたTWEAK遮断薬を、治療効果を提供する量で、治療効果を提供する時間にわたって投与する工程を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願では、2005年5月10日に提出された米国特許出願番号60/679518に対する優先権を主張する。その内容は引用により本明細書中に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
(背景)
腫瘍壊死因子(TNF)に関連するサイトカインは、数多くの機能(免疫調節およびアポトーシスの調節に関係している機能が含まれる)を有しているタンパク質のスーパーファミリーである。TNFスーパーファミリーのメンバーの例としては、TNF−αおよびTWEAK(アポトーシスについてのTNF様の弱いインデューサー)が挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(要旨)
以下にさらに記載されるように、TWEAKおよびTNF−α経路は、炎症の状況を媒介するように別々に作用する。TWEAKおよびTNF−αによって調節される分子のシグナル伝達経路を両方のブロックすることを使用して、様々な炎症性疾患を処置することができる。このような処置の例は以下に記載される。
【0004】
1つの態様においては、本開示は、被験体を炎症性疾患について処置する方法を特徴とする。好ましい実施形態においては、炎症性疾患は、関節炎疾患(例えば、関節リウマチ、乾癬性関節炎、またはシェーグレン症候群)である。この方法には:疾患(例えば、関節リウマチ)を有しているかまたはそのリスクがある被験体(例えば、ヒト被験体)に、TNF−α遮断薬と組み合わせてTWEAK遮断薬を投与する工程が含まれる。TWEAK遮断薬およびTNF−α遮断薬は、治療効果(例えば、全体的な治療効果)を提供するための量で、そしてそのような時間の間、投与することができる。効果は付加的であり得、また、場合によっては、相乗的であり得る。例えば、両方の遮断薬の効果が、(例えば、特定の被験体の中での)個々の効果の合計よりも大きな全体的な効果である場合がある。
【0005】
様々なTWEAK遮断薬はTWEAKまたはTWEAK−Rの相互作用または活性をブロックするために、被験体に投与することができる。「TWEAK遮断薬」は、TWEAKまたはTWEAK−Rの相互作用または活性を少なくとも一部阻害する薬剤(例えば、任意の化合物、例えば、抗体、またはTWEAK受容体の可溶性形態)を意味する。例えば、この薬剤は、活性(例えば、TWEAKのTWEAK−Rに対する結合)を少なくとも一部阻害する薬剤、または、TWEAKまたはTWEAK−Rをコードする核酸を少なくとも一部阻害する(例えば、TWEAKまたはTWEAK−Rタンパク質の発現を減少させるために)薬剤である。
【0006】
1つの実施形態においては、この薬剤により、TWEAKのTWEAK受容体(例えば、Fn14)に結合する能力が低下させられる。この薬剤は、TWEAKに、またはFn14に結合する遮断抗体であり得る。抗体は、全長のIgGであり得る。1つの実施形態においては、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、または、有効なヒト抗体である。1つの実施形態においては、TWEAK遮断抗体は、TWEAKとの結合についてAB.D3(ATCC登録番号HB−12622を有している抗体)と競合し、これはヒト化抗体AB.D3であり、AB.D3の少なくとも2個、3個、4個、5個、または6個のCDR(ま
たは、そのようなCDRに対して少なくとも全体で85%、90%、92%、95%、97%同一であるCDR)が含まれており、そして/あるいは、抗体AB.D3の可変ドメイン(または、そのような可変ドメインに対して少なくとも全体で85%、90%、92%、95%、97%同一である1つ以上の可変ドメイン)が含まれている。
【0007】
1つの実施形態においては、この薬剤は、TWEAK受容体の可溶性形態であり、例えば、ヒトTWEAK受容体(例えば、Fn14)である。TWEAK受容体の可溶性形態は、抗体のFc領域(例えば、ヒトのFc領域)に融合させることができる。例えば、TWEAK受容体の可溶性形態には、配列番号2のアミノ酸28〜Xに対して少なくとも95%同一である配列が含まれ、この場合、アミノ酸Xは、配列番号2の残基68から80のグループから選択される。
【0008】
様々なTNF−α遮断薬を、TNF−αまたはTNF−α受容体(例えば、TNFR−IまたはTNFR−II)の相互作用あるいは活性をブロックするために、被験体に投与することができる。「TNF−α遮断薬」は、TNF−αまたはTNF−α受容体の相互作用あるいは活性を少なくとも一部阻害する薬剤(例えば、任意の化合物、例えば、抗体またはTNF−α受容体の可溶性形態)を意味する。例えば、この薬剤は、活性(例えば、TNF−αのTNF−α受容体への結合)を少なくとも一部阻害するか、この薬剤は、例えば、TNF−αまたはTNF−α受容体タンパク質の発現を減少させるためにTNF−αまたはTNF−α受容体をコードする核酸を少なくとも一部阻害する。
【0009】
1つの実施形態においては、TNF−α遮断薬によって、TNF−α受容体に結合するTNF−αの能力が低下させられる。例えば、TNF−α遮断薬としては、TNF−α、TNFR−I、またはTNFR−IIに結合する抗体が挙げられる。例示的な抗体としては、インフリキシマブまたはアダリムマブが含まれる。TNF−α遮断薬には、TNF−α受容体の可溶性形態、そして状況によっては、Fcドメインが含まれ得る。例えば、TNF−α遮断薬はエタネルセプト(etanercept)である。
【0010】
本明細書中で使用される場合は、「組み合わせて投与される」は、2つ以上の薬剤(例えば、TWEAK遮断薬とTNF−α遮断薬)が、同時に、または患者に対する個々の薬剤の作用が重複する間隔で被験体に投与されることを意味する。好ましくは、第1の薬剤と第2の薬剤の投与は、併用による効果が得られるように互いに十分に近い間隔をあけて行われる。この間隔は、数時間、数日、または数週間の間隔であり得る。一般的には、これらの薬剤は、被験体の中で同時に生体利用可能であり、例えば、検出可能である。好ましい実施形態においては、これらの薬剤の一方(例えば、第1の薬剤(例えば、TNF−α遮断薬))の少なくとも1回の投与は、他方の薬剤(例えば、TWEAK遮断薬)が被験体の中でなおも治療レベルで存在している間に行われる。
【0011】
1つの実施形態においては、TWEAK遮断薬は、TNF−α遮断薬の先の投与と後の投与の間に投与される。他の実施形態においては、TNF−α遮断薬は、TWEAK遮断薬の先の投与と後の投与の間に投与される。好ましい実施形態においては、これらの薬剤の一方(例えば、TNF−α遮断薬)の少なくとも1回の投与は、他方の薬剤(例えば、TWEAK遮断薬)の1日、7日、14日、30日、または60日以内に行われる。
【0012】
1つの実施形態においては、TWEAK遮断薬およびTNF−α遮断薬を投与する前に、被験体には、TWEAK遮断薬またはTNF−α遮断薬のいずれかが投与されているが、他方は投与されていない。被験体は、予め決定された閾値(例えば、Sharpスコアの合計またはSharp浸食スコアの安定化または低下)を満たさない反応を有している場合がある。別の実施形態においては、被験体は、TNF−α遮断薬も、TWEAK遮断薬も、第1の薬剤と第2の薬剤が組み合わせて投与される前の少なくとも3ヶ月間(例え
ば、その前の少なくとも6ヶ月間、9ヶ月間、または1年間)は投与されていない被験体であり得る。
【0013】
1つの実施態様においては、TWEAK遮断薬とTNF−α遮断薬は、共製剤(co−formulation)として提供され、そして共製剤が被験体に投与される。例えば、共製剤の投与の少なくとも24時間前または投与の少なくとも24時間後に、これらの薬剤の一方を他方とは別に投与することがさらに可能である。別の実施態様においては、これらの薬剤は別々の製剤として提供され、そして投与の工程には、これらの薬剤の連続する投与が含まれる。連続投与は、同じ日に(例えば、互いに1時間以内、または少なくとも3時間、6時間、もしくは12時間の間隔をあけて)、あるいは、別の日に提供され得る。
【0014】
一般的には、TWEAK遮断薬とTNF−α遮断薬は、例えば、レジュメにしたがって時間の間隔を空けられた複数回の用量としてそれぞれ投与される。一方または両方についての投与レジュメは、一定の周期性を有している場合がある。TNF−α遮断薬についてのレジュメは、TWEAK遮断薬についてのレジュメとは異なる周期性を有することができ、例えば、一方を、他方よりも多い頻度で投与することができる。これらの薬剤は、任意の適切な方法によって、例えば、皮下注射で、筋肉内注射で、または静脈内注射で投与することができる。被験体には、14週間より長い間、6ヶ月間もしくは9ヶ月間より長い間、1年、1.5年、もしくは2年より長い間、TNF−α遮断薬の複数の用量と、TWEAK遮断薬の複数の用量を投与することができる。
【0015】
いくつかの実施態様においては、これらの薬剤のそれぞれは、単剤療法に使用される用量とほぼ同じ用量で投与される。他の実施態様においては、TNF−α遮断薬は、単独で投与された場合の効力に必要な量と同等もしくはそれよりも少ない(例えば、少なくとも10%、20%、30%、もしくは40%少ない)投与量で投与される。同様に、TWEAK遮断薬は、単独で投与された場合の効力に必要な量と同等もしくはそれよりも少ない(例えば、少なくとも10%、20%、30%、もしくは40%少ない)投与量で投与することができる。例えば、被験体にこれまでにTNF−α遮断薬が投与されているいくつかの実施形態においては、被験体には、TWEAK遮断薬の投与後に、最初のTWEAK遮断薬の投与の前に投与されたTNF−α遮断薬の用量と比較して少ない用量のTNF−α遮断薬が投与される。以前に行われた単剤療法において使用されたものと同じTNF−α遮断薬を併用療法において使用することができ、また、異なるTNF−α遮断薬も使用することができる。
【0016】
被験体を、第1の薬剤および第2の薬剤を投与した後に、例えば、反応性の指標について評価することができる。当業者は、処置の有効性についての様々な臨床的指標または他の指標を使用することができる。被験体を、レジュメの間の様々な時点でモニターすることができる。
【0017】
1つの実施形態においては、TWEAK遮断薬およびTNF−α遮断薬が、炎症シグナルを生じる細胞(例えば、滑膜細胞、軟骨細胞、破骨細胞、骨芽細胞、皮膚線維芽細胞、単球、マクロファージ、または内皮細胞)の中でTWEAK経路およびTNF−α経路の集合効果を阻害するために有効な量で投与される。これらの薬剤は、そのような細胞の中でのTWEAKおよびTNF−αによって誘導される遺伝子のセットの転写を減少させるために(例えば、TWEAKおよびTNF−αによって相乗的に活性化される遺伝子(例えば、滑膜細胞、軟骨細胞、破骨細胞、または骨芽細胞の中での表1の遺伝子リストの1つ以上)の転写を減少させるために)有効な量で投与することができる。
【0018】
いくつかの実施形態においては、TWEAK遮断薬は、成人である被験体を関節リウマ
チについて処置するためには、TWEAK遮断薬での単剤療法(または、TNF−α遮断薬の非存在下でのTWEAK遮断薬での治療)についての標準的な投与量よりも少なくとも20%、30%、50%、60%、または70%少ない量で投与される。例えば、TWEAK遮断薬は、単剤療法として有効であるために必要とされる量よりも少ない量で投与される。
【0019】
いくつかの実施形態においては、TNF−α遮断薬は、成人である被験体を関節リウマチについて処置するためには、TNF−α遮断薬での単剤療法(または、TWEAK遮断薬の非存在下でのTNF−α遮断薬での治療)についての標準的な投与量よりも少なくとも20%、30%、50%、60%、または70%少ない量で投与される。例えば、TNF−α遮断薬は、単剤療法として有効であるために必要とされる量よりも少ない量で投与される。他の実施形態においては、TNF−α遮断薬およびTWEAK遮断薬は、単剤療法で使用される用量と同じ用量で投与される。
【0020】
例えば、被験体は、メトトレキセートを投与されていない。1つの実施形態においては、被験体は、任意の他の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)(すなわち、TWEAK遮断薬およびTNF−α遮断薬以外のもの)を投与されていない。
【0021】
量は、Sharp浸食スコアによって測定された場合に、関節の損傷において統計学的に有意な軽減を生じるために十分な量であり得る。例えば、被験体は疾患の指標であるパラメーターについて1つ以上の場合にモニターすることができる。
【0022】
この方法には、例えば、疾患の重篤度をランク付けする疾患の症状または指標について、被験体を評価する工程(例えば、定期的に1回以上モニターする工程)が含まれ得る。例えば、関節リウマチの症例においては、Sharpスコアの合計(TSS)、Sharp浸食スコア、HAQ障害指数、または放射線法を使用することが可能である。
【0023】
別の態様においては、本開示は、以下を含む方法を特徴とする:関節リウマチを有しているかまたはそのリスクがある被験体(例えば、ヒト被験体)に、別のDMARD(例えば、生物学的なDMARD)と組み合わせてTWEAK遮断薬を、全体的な治療効果を提供するための量で、およびそのための時間の間、投与する工程。関節リウマチを処置するためのDMARDのいくつかの例が本明細書中に記載される。
【0024】
別の態様においては、本発明は、その必要がある被験体において関節の炎症を軽減させる方法を特徴とする。この方法には、関節の炎症を有する被験体に、(例えば、本明細書中に記載されるような)TWEAK遮断薬と組み合わせてTNF−α遮断薬を投与する工程が含まれる。いくつかの症例においては、被験体は関節炎疾患(例えば、関節リウマチ)を有している。
【0025】
以下を含む薬学的組成物もまた特徴である:TWEAK遮断薬;およびDMARD(例えば、TNF−α遮断薬または他のDMARD)。
【0026】
TWEAK遮断薬とDMARD(例えば、TNF−α遮断薬または他のDMARD)が含まれているキットもまた提供され得る。これらの薬剤は、別の薬学的組成物として提供することができ、また、1つの薬学的組成物として提供することもできる。キットにはさらに、関節リウマチを処置するための投与のための指示書、薬剤の投与のためのデバイス、および/またはパラメーター(例えば、疾患に関係している臨床的パラメーター)を評価するための試薬が含まれ得る。
【0027】
別の態様においては、本開示は、以下を含む方法を特徴とする:TWEAKおよびTN
F−α、および/または高いTWEAKの発現および活性、および/またはTWEAKによってその発現が調節される(例えば、増大させられる)生体マーカーの高い発現もしくは活性(例えば、表2を参照のこと)によって媒介される炎症を有している被験体を同定する工程;ならびに、被験体に治療薬を投与する工程。例えば、治療には:(i)TWEAK遮断薬;(ii)TNF−α遮断薬;または(iii)(i)と(ii)の組み合わせを投与することが含まれる。「TWEAK/TNF−αによって相乗的に活性化させられた細胞性プログラム」は、TWEAKとTNF−αの両方の特定の用量による刺激によって生じる特性を特徴とする細胞の状態であるが、これは、その用量のTNF−αが存在しない状況でのその用量のTWEAKでの刺激によっても、また、その用量のTWEAKが存在しない状況でのその用量のTNF−αでの刺激によっても、同等の程度に達することはできない。被験体は、被験体から得られた炎症シグナルを生じる細胞(例えば、滑膜細胞、軟骨細胞、破骨細胞、骨芽細胞、もしくは皮膚線維芽細胞)または関連する組織の中での1つ以上の遺伝子の発現を評価することによって同定することができる。表1の1つ以上の遺伝子を評価することができる。被験体はまた、関節リウマチの1つ以上の症状について評価することもできる。
【0028】
別の態様においては、本開示は、以下を含む方法を特徴とする:関節リウマチを有しているかまたはそのリスクがあるヒト被験体、およびDMARD(TWEAK遮断薬以外)の使用が中止されている(withdrawn)かまたはその使用が中止されたヒト被験体に対して、TWEAK遮断薬を、例えば、全体的な治療効果を提供するために十分な量で、そしてそのために効果的な時間の間、投与する工程。この方法を使用して、TWEAK遮断薬をこれまでには投与されていない被験体、またはTWEAK遮断薬を最近は投与されていない(例えば、最近の1ヶ月の間、6ヶ月の間、または1年間)被験体を処置することができる。
【0029】
1つの実施形態においては、使用が中止されているかまたは使用が中止されるDMARDはTNF−α遮断薬である。被験体は、TNF−α遮断薬に対して不適切な反応を有している場合がある。本明細書中で使用される場合は、「不適切な反応」は、患者または熟練した医師によって評価された場合に、不十分な効力、または受容できないかもしくは許容できない毒性を示す反応を意味する。不十分な効力は、処置に対する予め決定された反応レベルを満たすことができないことによって定義することができる。例えば、TNF−α遮断薬は、毒性を引き起こすか、免疫無防備状態を誘導するか、または効力が不足する場合があり、それによって、その使用の中止が促される場合がある。例えば、被験体は、TNF−α遮断薬での治療に対して難治性である。被験体は、例えば、結核症、日和見感染、糸球体腎炎、脱髄性症候群(demyelinating syndrome)、狼瘡様の反応、または病原性細菌による感染を有する場合がある。いくつかの場合には、不適切な反応は、TNF−α遮断薬での処置の間に検出される有害な事象によって示される。
【0030】
TNF−α遮断薬は、前年、3ヶ月間、1ヶ月間、2週間、または1週間以内に投与される場合がある。いくつかの場合には、被験体には、TNF−α遮断薬をなおも投与される場合があるが、その投与量は減少させることができ、また、最後の投与量(例えば、完了前に提供される投与量)とすることもできる。他の例においては、TNF−α遮断薬の投与は、TWEAK遮断薬の1回以上の用量を投与しても、被験体がもはやTNF遮断薬を受け付けなくなると停止される。
【0031】
他の実施形態においては、使用が中止されているか、または使用が中止されるDMARDは、メトトレキセート、非経口の金(parenteral gold)、スルファサラジン、またはヒドロキシクロロキノン(hydroxychloroquinone)である。例えば、DMARDは、TNF−α遮断薬以外のものである。DMARDは毒性
、免疫抑制、または効力が十分ではないことが原因で使用が中止される可能性がある。例えば、有害な事象は、DMARDでの処置の間に検出することができる。
【0032】
別の態様においては、本開示は、以下を含む方法を特徴とする:関節リウマチを有しており、そしてTWEAK遮断薬以外のDMARDで処置されたヒト被験体において有害な事象を検出する工程;および、被験体に、TWEAK遮断薬を、全体的な治療効果を提供するために効果的な量、およびそのために効果的な時間の間、投与する工程。
【0033】
1つの実施形態においては、被験体は、TNF−α遮断薬で処置されている。この方法にはさらに、TNF−α遮断薬の使用を中止する工程が含まれ得る。有害な事象には、狼瘡様の反応、細菌感染もしくは日和見感染、または結核症が含まれ得る。
【0034】
1つの態様においては、本開示は、被験体を炎症性疾患、具体的には、TNF−α遮断薬によって悪化しないものについて処置する方法を特徴とする。炎症性疾患は関節リウマチである場合も、また、関節リウマチ以外の疾患である場合もある。例えば、疾患は、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む)、乾癬、または炎症性筋炎であり得る。炎症性疾患のなお他の例としては、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、成人呼吸窮迫症候群/閉塞性細気管支炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、脈管炎、悪液質、口内炎、特発性肺線維症、皮膚筋炎または多発性筋炎、非感染性強膜炎、肺の関与を伴う慢性サルコイドーシス症候群、骨髄異形成症候群/過度の芽細胞を伴う難治性貧血、潰瘍性大腸炎、中度から重症の慢性閉塞性肺疾患、および巨細胞性大動脈炎であり得る。この方法には炎症性疾患を有しているか、またはそのリスクがあるヒト被験体に、TWEAK遮断薬を、全体的な治療効果を提供するための量で、そしてそのための時間の間投与する工程が含まれる。この方法には、TNF−α遮断薬と組み合わせたTWEKA遮断薬を、全体的な治療効果を提供するための量で、そしてそのための時間の間、投与する工程、または、TNF−α遮断薬を提供せずに(例えば、その使用を保留して)TWEAK遮断薬を投与する工程が含まれ得る。1つの実施形態においては、被験体は、17歳未満であり、疾患は若年性関節リウマチまたは小児乾癬である。この方法には、本明細書中に記載される他の特徴も含まれ得る。
【0035】
別の態様においては、本開示は、例えば、インビトロまたはインビボでTWEAK反応および/またはTNF−α反応を調節する能力について、試験化合物を評価する方法を特徴とする。TWEAK反応には、TWEAK自体の調節、またはTWEAK受容体の調節が含まれる。この方法には、試験化合物を細胞、組織、または生物体に対して、TWEAKおよび/またはTNF−α(例えば、外因性のTWEAKおよび/またはTNF−α)の存在下で接触させる工程が含まれる。この方法にはさらに、試験化合物がTWEAKおよび/またはTNF−αに反応する(例えば、TWEAK/TNF−αによって媒介される細胞性プログラムを低下させる)細胞、組織、または生物体の能力を調節するかどうかを評価する工程が含まれる。この方法には、表1または表2の1つ以上の遺伝子の発現または活性を評価する工程が含まれ得る。この方法にはさらに、例えば、本明細書中に記載されるヒトの疾患の動物モデルを使用して、疾患を調節する試験化合物の能力を評価する工程が含まれ得る。
【0036】
別の態様においては、本開示は、被験体(例えば、ヒト被験体)を評価する方法を特徴とする。被験体は、本明細書中に記載される1つ以上の薬剤を提供するより前に、1つ以上のそのような薬剤を投与しながら、または1つ以上のそのような薬剤を投与した後に評価することができる。この方法には、表2の1つ以上の遺伝子の発現(タンパク質およびmRNAの発現が含まれる)が参照値と比較して変化したかどうかを決定するために、被験体に由来する細胞(被験体から得られた試料中の細胞)、組織、または他の材料を評価する工程が含まれる。参照値は、正常な被験体、対照被験体についての参照値、または(
例えば、被験体のコホートについて)決定された値に関係している値であり得る。参照値は、被験体自身についての(例えば、別の時点(例えば、1つ以上の薬剤の投与前)での)参照値などであり得る。評価による情報は、コンピューターで読み取ることができる媒体または別の媒体に保存することができ、そして/また、例えば、コンピューターネットワークを使用して通信することもできる。この方法は、患者がTWEAK反応性であるかどうか、またはTWEAK反応性であると予想されるかどうかを決定するために使用することができる。例えば、表2の1つ以上の遺伝子について高い発現レベルを有している患者は、TWEAK反応性であると示すことができる。この方法には、被験体がTWEAK反応性であることの指標、および必要に応じては、TWEAK遮断薬を投与するための指示書を提供する工程が含まれ得る。この方法にはさらに、TWEAK遮断薬を投与する工程が含まれ得る。
【0037】
別の態様においては、本開示は、(例えば、治療に使用される)TWEAK遮断薬およびTNF−α遮断薬が含まれている医薬品を特徴とする。
【0038】
別の態様においては、本開示は、医薬品(例えば、本明細書中に記載される炎症性疾患(例えば、関節の炎症または関節炎疾患(例えば、関節リウマチ))の処置のための医薬品)の調製のための、TWEAK遮断薬およびTNF−α遮断薬の使用を特徴とする。
【0039】
別の態様においては、本開示は、例えば、別のDMARDでの治療には反応しない被験体の、本明細書中に記載される炎症性疾患(例えば、関節の炎症または関節疾患(例えば、関節リウマチ))の処置のための医薬品の調製のためのTWEAK遮断薬の使用を特徴とする。
【0040】
本明細書中で引用される全ての特許、特許出願、および参考文献はそれらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。矛盾する場合には、本出願が支配する。
【0041】
用語「相乗作用」は、個々の事象のそれぞれの結果の合計よりも大きい、少なくとも2つの事象による結果を意味する。ANOVAを使用して、以下の方程式において相乗作用係数(synergy factor)を決定することができる:
R=A+B+ε(A×B)
相乗作用係数εの例示的な値は、0より大きくなり得、または、予め決定された値(例えば、1、2、またはそれ以上)であり得る。
【0042】
用語「処置する」は、統計学的に有意な程度、または当業者が検出できる程度のいずれかで、疾患に関係している状態、症状、もしくはパラメーターを改善するかまたは予防するために、あるいは、疾患の発症、進行、もしくは再燃を防ぐために有効な量、様式、ならびに/あるいは形式で治療薬を投与することを意味する。したがって、処置によって治療的および/または予防的利点を得ることができる。有効な量、様式、または形式は、被験体に応じて様々であり得、そして被験体に合わせることができる。
【0043】
阻害することとの言及には、少なくとも一部の阻害、さらには他の程度の阻害(例えば、実質的または完全)が含まれる。
【0044】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の添付の図面および記載に示される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、記載および図面から、そして特許請求の範囲から明らかであろう。
【0045】
本発明により、例えば以下が提供される:
(項目1)
関節リウマチを有するヒト被験体に対して、TNF−α遮断薬と組み合わせたTWEAK遮断薬を、治療効果を提供する量で、治療効果を提供する時間にわたって投与する工程を包含する、方法。
(項目2)
前記TWEAK遮断薬および前記TNF−α遮断薬が、滑膜細胞、軟骨細胞、破骨細胞、または骨芽細胞中のTWEAKおよびTNF−αを阻害するために有効な量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記TWEAK遮断薬および前記TNF−α遮断薬が、滑膜細胞、軟骨細胞、破骨細胞、または骨芽細胞中での、TWEAKおよびTNF−αの細胞性プログラムによって誘導される遺伝子セットの転写を減少させるために有効な量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記TWEAK遮断薬および前記TNF−α遮断薬が、滑膜細胞、軟骨細胞、破骨細胞、または骨芽細胞中での表1に列挙される1つ以上の遺伝子の転写を減少させるために有効な量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記TWEAK遮断薬が、関節リウマチについて成人である被験体を処置するためのTWEAK遮断薬の単剤療法についての標準的な投与量よりも少なくとも20%少ない量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記TNF−α遮断薬が、関節リウマチについて成人である被験体を処置するためのTNF−α遮断薬の単剤療法についての標準的な投与量よりも少なくとも20%少ない量で投与される、項目1または5に記載の方法。
(項目7)
前記被験体にはメトトレキセートが投与されていない、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記被験体には、他のいずれの疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)も投与されていない、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記量によって、Sharp浸食スコアによって測定された場合に、関節の損傷において統計学的に有意な軽減が生じる、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記TWEAK遮断薬によって、TWEAKのTWEAK受容体結合能力が低下させられる、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記TWEAK遮断薬がTWEAKに結合する抗体である、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記TWEAK遮断薬にTWEAK受容体に結合する抗体が含まれる、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記TWEAK遮断薬にTWEAK受容体の可溶性形態が含まれる、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記TWEAK受容体の可溶性形態のTWEAK遮断薬が抗体Fc領域と融合している、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記TNF−α遮断薬によって、TNF−αのTNF−α受容体結合能力が低下させられる、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記TNF−α遮断薬に、TNF−α、TNFR−I、またはTNFR−IIに結合する抗体が含まれる、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記TNF−α遮断薬がインフリキシマブまたはアダリムマブである、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記TNF−α遮断薬にTNF−α受容体の可溶性形態が含まれる、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記TNF−α遮断薬がエタネルセプトである、項目1に記載の方法。
(項目20)
Sharpスコアの合計(TSS)、Sharp浸食スコア、HAQ障害指数、または放射線法を使用して前記被験体を評価する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。(項目21)
関節リウマチを有するヒト被験体に対して、別の生物学的DMARDと組み合わせたTWEAK遮断薬を、治療効果を提供する量で、治療効果を提供する時間にわたって投与する工程を包含する、方法。
(項目22)
TWEAK遮断薬およびTNF−α遮断薬を備えるキットであって、該薬剤は、別々の薬学的組成物として、または1つの薬学的組成物として提供される、キット。
(項目23)
関節リウマチを処置するための投与のための指示書がさらに含まれている、項目22に記載のキット。
(項目24)
TWEAK遮断薬;および
TNF−α遮断薬
を含む、薬学的組成物。
(項目25)
TWEAKおよびTNF−αによって媒介される炎症を有する被験体を同定する工程;ならびに
該被験体に対して:(i)TWEAK遮断薬;(ii)TNF−α遮断薬;または(iii)(i)と(ii)との組み合わせを投与する工程
を包含する、方法。
(項目26)
前記被験体が、該被験体に由来する滑膜細胞中での1つ以上の遺伝子の発現を評価することによって同定される、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記評価される1つ以上の遺伝子に、表1から選択される1つ以上の遺伝子が含まれる、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記評価する工程が、前記被験体から細胞または組織の試料を得ることを含む、項目26に記載の方法。
(項目29)
前記同定する工程が、前記被験体における関節リウマチの症状を検出することをさらに含む、項目25に記載の方法。
(項目30)
関節リウマチを有し、かつTNF−α遮断薬の使用が中止されているかまたはTNF−α遮断薬の使用が中止されたヒト被験体に対して、TWEAK遮断薬を、治療効果を提供するために有効な量で、有効な時間にわたって投与する工程を包含する、方法。
(項目31)
前記TNF−α遮断薬が、毒性を引き起こすか、免疫無防備状態を誘導するか、または効力を欠く、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記被験体が、TNF−α遮断薬での治療に対して難治性である、項目30に記載の方法。
(項目33)
前記被験体は、結核症、日和見感染、または病原性細菌による感染を有する、項目30に記載の方法。
(項目34)
前記被験体が糸球体腎炎を有する、項目30に記載の方法。
(項目35)
前記被験体が脱髄性症候群を有する、項目30に記載の方法。
(項目36)
前記被験体が狼瘡様の反応を有する、項目30に記載の方法。
(項目37)
関節リウマチを有するヒト被験体において有害な事象を検出する工程であって、ここでは、該被験体はTNF−α遮断薬で処置されているが、TWEAK遮断薬では処置されていない、工程;および
該被験体に対して、TWEAK遮断薬を、全体的な治療効果を提供するために有効な量で、有効な時間にわたって投与する工程
を包含する、方法。
(項目38)
TNF−α遮断薬の使用を中止する工程をさらに包含する、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記有害な事象に狼瘡様の反応が含まれる、項目37に記載の方法。
(項目40)
前記有害な事象に細菌感染または日和見感染が含まれる、項目37に記載の方法。
(項目41)
前記有害な事象に結核症が含まれる、項目37に記載の方法。
(項目42)
関節リウマチを有し、かつTWEAK遮断薬以外のDMARDの使用が中止されているかまたはその使用が中止されたヒト被験体に対して、TWEAK遮断薬を、治療効果を提供する量で、治療効果を提供する時間にわたって投与する工程を包含する、方法。
(項目43)
前記DMARDが、メトトレキセート、非経口金、スルファサラジン、またはヒドロキシクロロキノンである、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記DMARDがTNF−α遮断薬以外のものである、項目42に記載の方法。
(項目45)
前記DMARDが、毒性または効力の欠如が原因で使用が中止される、項目42に記載の方法。
(項目46)
炎症性疾患を有するヒト被験体に対して、TNF−α遮断薬と組み合わせたTWEAK遮断薬を、治療効果を提供する量で、治療効果を提供する時間にわたって投与する工程であって、ここで、該炎症性疾患は、TNF−α遮断薬によって悪化することのない疾患である、工程を包含する、方法。
(項目47)
前記炎症性疾患が、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患、乾癬、または炎症性筋炎である、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記被験体が17歳未満であり、そして前記疾患が若年性関節リウマチまたは小児乾癬である、項目46に記載の方法。
(項目49)
関節の炎症を軽減する方法であって、関節の炎症を有する被験体を同定する工程、および該被験体に対して、TNF−α遮断薬と組み合わせてTWEAK遮断薬を投与する工程を包含する、方法。
(項目50)
前記被験体が関節リウマチを有する、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記TWEAK遮断薬がTWEAKに結合する抗体である、項目49に記載の方法。
(項目52)
前記TWEAK遮断薬にTWEAK受容体に結合する抗体が含まれる、項目49に記載の方法。
(項目53)
前記TWEAK遮断薬にTWEAK受容体の可溶性形態が含まれる、項目49に記載の方法。
(項目54)
前記TWEAK受容体の可溶性形態が抗体Fc領域と融合している、項目53に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、TWEAK遮断薬とTNF−α遮断薬の組み合わせ、TWEAK遮断薬のみ、TNF−α遮断薬のみ、PBS対照、またはアイソタイプが適合している対照を用いて処置したマウスの関節炎のmCIAモデルにおける、平均の関節炎指数スコアを示している線グラフである。
【図2】図2は、TWEAK遮断薬とTNF−α遮断薬の組み合わせ、TWEAK遮断薬のみ、TNF−α遮断薬のみ、PBS対照、またはアイソタイプが適合している対照を用いて処置したマウスの関節炎のmCIAモデルにおける、平均の中足骨の高さの値を示しているプロットである。
【図3】図3は、TWEAK遮断薬とTNF−α遮断薬の組み合わせ、TWEAK遮断薬のみ、TNF−α遮断薬のみ、PBS対照、またはアイソタイプが適合している対照を用いて処置したマウスの関節炎のmCIAモデルにおける、体重変化の割合を示している線グラフである。
【図4】図4は、抗TWEAK遮断抗体(抗TWEAK mAb)または対照で処置した動物の関節炎のCIAモデルにおける、平均の関節炎指数の値を示している2つの線プロットを示す。左側のパネルは、マウスCIAモデルを使用して得られた結果を示しており;右側のパネルは、ラットCIAモデルを使用して得られた結果を示している。
【図5】図5は、抗TWEAK遮断抗体(抗TWEAK mAb)または対照で処置した動物の関節炎のCIAモデルにおける、平均の関節炎指数の値を示している2つの線プロットを示す。これらの図は、2種類の投与レジュメの結果を示している:第1のレジュメでは、抗体は関節炎の誘導の時点で投与され、第2のレジュメにおいては、抗体は関節炎の誘導後に投与された。左側のパネルは、マウスCIAモデルを使用して得られた結果を示しており;右側のパネルは、ラットCIAモデルを使用して得られた結果を示している。
【図6】図6には、抗TWEAK遮断抗体(抗ABG.11)または対照で処置したラットの関節炎のラットCIAモデルにおける、炎症、および軟骨と骨の消失のレベルを示している5つの棒グラフが含まれる。同様な所見がマウスのモデルにおいて認められる。
【図7】図7は、mCIAモデルと対照のマウス(DBA/1)における関節炎の誘導後の様々な時点での血清TWEAKレベルを示しているプロットである。
【図8】図8には、抗TWEAK遮断抗体(P5G9およびP5G9(完全))または対照で処置したマウスのmCIAモデルにおける、関節炎の誘導後の様々な時点での、MMP9、リンホタクチン、IP−10、およびIL−6のレベルを示している4つの棒グラフが含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(詳細な説明)
本発明者らは、TWEAK経路とTNF−α経路が別々に炎症反応(例えば、関節の中に存在している滑膜細胞の中での炎症反応)に関係していること、およびTWEAKとTNF−αの両方が、類似する遺伝子のセットを別々に活性化させることができることを発見した。これらのことは、2つの経路の間での冗長性を示している。したがって、両方の経路の活性を低下させることにより、炎症(例えば、(例えば、関節炎の状態にある)関節の炎症)を緩和させるための有効な治療経路が提供される。TWEAK経路とTNF−α経路の両方を同時に遮断することは、関節リウマチのマウスモデル(mCIA)において有効であることが明らかになっており、これによって、これらの経路の1つを遮断するよりも大きな結果が得られる。
【0048】
関節リウマチに加えて、両方の経路の活性を低下させることによって、他の疾患(例えば、他の炎症性疾患(例えば、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患、乾癬、炎症性筋炎)および本明細書中で開示される他の疾患)を処置するために使用することができる。様々な方法を使用して、TWEAK経路およびTNF−α経路の活性を低下させることができる。例えば、TNF−α遮断薬と組み合わせてTWEAK遮断薬を投与することが可能である。これらおよび他の薬剤の例は、以下にさらに記載される。
【0049】
いくつかの実施態様においては、治療上の利点は、2つの経路の一方を低下させることによって得ることができる。例えば、TWEAK遮断薬を、経路の一方だけを調節する治療薬に対して不適切な反応(例えば、TNF−α遮断薬に対する不適切な反応、またはTWEAK遮断薬に対する不適切な反応)を有している被験体に投与することができる。TWEAK遮断薬はまた、別の薬剤(例えば、TNF−α遮断薬以外の薬剤)を伴うDMARDでの処置が中止されているか、またはDMARDでの処置を中止することが計画されている被験体に投与することができる。
【0050】
(TWEAK遮断薬)
様々な薬剤をTWEAK遮断薬として使用することができる。薬剤は、被験体に投与することができる任意のタイプの化合物(例えば、小さい有機分子または無機分子、核酸、タンパク質、あるいはペプチド模倣物)であり得る。1つの実施態様においては、遮断薬は生物学的なものであり、例えば、5〜300kDaの分子量を有しているタンパク質である。例えば、TWEAK遮断薬は、TWEAK受容体に対するTWEAKの結合を阻害することができるか、または、TWEAKによって媒介されるNF−κBの活性化を妨げることができる。典型的なTWEAK遮断薬は、TWEAKに、またはTWEAK受容体(例えば、Fn14)に結合することができる。TWEAKに、またはTWEAK受容体に結合するTWEAK遮断薬は、TWEAKまたはTWEAK受容体の立体構造を変化させる場合があり、TWEAKまたはTWEAK受容体上の結合部位をブロックする場合があり、あるいは、別の方法で、TWEAK受容体に対するTWEAKの親和性を低下させる場合、また、TWEAKとTWEAK受容体の間での相互作用を妨げる場合もある。
【0051】
TWEAK遮断薬(例えば、抗体)は、TWEAKに対して、またはTWEAK受容体に対して、10−6、10−7、10−8、10−9、または10−10M未満のKで結合することができる。1つの実施態様においては、遮断薬は、TWEAKに対して、TNF−αまたは別のTNFスーパーファミリーのメンバー(TWEAK以外)に対するそ
の親和性よりも、少なくとも5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、または1000倍高い親和性で結合する。1つの実施態様においては、遮断薬は、TWEAK受容体に対して、TNF受容体または別のTNFスーパーファミリーのメンバーの受容体に対するその親和性よりも、少なくとも5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、または1000倍高い親和性で結合する。好ましいTWEAK遮断薬は、TWEAKまたはTWEAK−Rに特異的に結合する。
【0052】
例示的なTWEAKタンパク質分子としては、ヒトTWEAK(例えば、AAC51923、配列番号1として示される)、マウスTWEAK(例えば、NP_035744.1)、ラットTWEAK(例えば、XP_340827.1)、およびチンパンジー(Pan troglodytes)TWEAK(例えば、XP_511964.1)が挙げられる。上記のTWEAKタンパク質の成熟したプロセシングされた領域に対して、少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%同一であるか、またはそれと完全に同じであるアミノ酸配列(例えば、配列番号1のアミノ酸X〜249に対して、少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%同一であるか、またはそれと完全に同じであるアミノ酸配列であって、式中、アミノ酸Xは、配列番号1の残基75〜115のグループから選択され、例えば、Xは、配列番号1の残基Arg93である)を含むタンパク質、ならびに、自然界に存在しているTWEAKタンパク質をコードするヒト、マウス、ラット、またはチンパンジー(Pan troglodytes)の遺伝子に対して高いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする核酸によってコードされるタンパク質も含まれる。好ましくは、そのプロセシングされた成熟形態のTWEAKタンパク質は、少なくとも1つのTWEAK活性(例えば、Fn14を活性化させる能力)を提供することができる。
【0053】
例示的なFn14タンパク質分子としては、ヒトFn14(例えば、NP_057723.1、配列番号2として示される)、マウスFn14(例えば、NP_038777.1)、およびラットFn14(例えば、NP_851600.1)、さらには、Fn14の細胞外ドメイン(およびそのTWEAK−結合断片)に対して、少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%同一であるか、または完全に同じであるアミノ酸配列を含む可溶性タンパク質、ならびに、自然界に存在しているFn14タンパク質をコードするヒト、マウス、ラット、またはチンパンジー(Pan troglodytes)の遺伝子に対して高いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする核酸によってコードされるタンパク質が挙げられる。好ましくは、本明細書中に記載される方法に有用なFn14タンパク質は可溶性のFn14(膜貫通ドメインが欠失している)であり、これにはTWEAKタンパク質に結合する領域(例えば、配列番号2のアミノ酸28〜Xに対して、少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるか、またはそれと完全に同じであるアミノ酸配列であって、式中、アミノ酸Xは、配列番号2の残基68〜80のグループから選択される)が含まれる。
【0054】
2つの配列間での「相同性」または「配列同一性」(これらの用語は本明細書中では同義的に使用される)の計算は以下のように行われる。配列は、最適な比較の目的のためにアラインメントされる(例えば、ギャップを、最適なアラインメントのために、第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列の一方または両方に導入することができ、そして非相同配列は、比較の目的のために無視することができる)。最適なアラインメントは、12のギャップペナルティー、4のギャップ伸張ペナルティー、および5のフレームシフトギャップペナルティーを含むBlossum 62スコアリングマトリックスで、GCGソフトウェアパッケージにおいてGAPプログラムを使用して最良なスコアとして決定される。その後、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第1の配列の中の1つの位置が第2の配列の中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有されている場合には、これらの分子は
その位置で同一である(本明細書中で使用される場合は、アミノ酸または核酸の「同一性」は、アミノ酸または核酸の「相同性」と同等である)。2つの配列の間での同一性の割合は、配列によって共有される同じ位置の数の関数である。本明細書中に記載される関連するタンパク質のアラインメントは、修飾(例えば、挿入、欠失、および置換(例えば、保存的置換または非保存的置換))を寛容するアミノ酸位置を同定するための教示である。
【0055】
本明細書中で使用される場合は、用語「高いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする」は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄についての条件を記載する。ハイブリダイゼーション反応を行うための指針は、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6(引用により本明細書中に組み入れられる)において見ることができる。水性方法と非水性方法がその参考文献に記載されており、いずれを使用することもできる。高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件としては、約45℃での6×SSC中でのハイブリダイゼーション、その後の、0.2×SSC、0.1×SDS中で65℃での1回以上の洗浄、あるいは実質的に同様の条件が挙げられる。
【0056】
例示的なTWEAK遮断薬としては、TWEAKまたはTWEAK−Rに結合する抗体、およびTWEAKへの結合について細胞表面TWEAK−Rと競合するTWEAK−Rの可溶性形態が挙げられる。TWEAK−Rの可溶性形態の一例は、TWEAK−Rの細胞外ドメインの少なくとも一部(例えば、TWEAK−Rの可溶性のTWEAK結合断片)が含まれているFc融合タンパク質であり、これはTWEAK−R−Fcと呼ばれる。TWEAK−Rの他の可溶性形態(例えば、Fcドメインが含まれていない形態)もまた使用することができる。抗体遮断薬は以下でさらに議論される。
【0057】
他のタイプの遮断薬(例えば、低分子、核酸、または核酸をベースとするアプタマー、およびペプチド)を、例えば、Jhaveri et al.,Nat.Biotechnol.18:1293およびU.S.5,223,409に記載されているように、スクリーニングによって単離することができる。薬剤がTWEAKまたはTWEAK−Rに結合するかどうかを決定するため、および薬剤がTWEAK/TWEAK−Rの相互作用を調節するかどうかを決定するための例示的なアッセイは、例えば、U.S.2004−0033225に記載されている。
【0058】
例示的なTWEAK−Rタンパク質の可溶性形態としては、TWEAKに結合するTWEAK−Rタンパク質の領域(例えば、配列番号2のおよそ32〜75、31〜75、31〜78、または28〜79のアミノ酸)が挙げられる。この領域は、別のアミノ酸(例えば、Fcドメイン)に対して、そのN末端またはC末端で物理的に会合させる(例えば、融合させる)ことができる。TWEAK−Rに由来する領域は、異種アミノ酸配列に由来するリンカーによって間隔をあけることができる。U.S.6,824,773には、例示的なTWEAK−R融合タンパク質が記載されている。
【0059】
(TNF−α遮断薬)
様々な薬剤をTNF−α遮断薬として使用することができる。薬剤は、被験体に投与することができる任意のタイプの化合物(例えば、小さい有機分子または無機分子、核酸、タンパク質、あるいはペプチド模倣物)であり得る。1つの実施態様においては、遮断薬は生物学的なものであり、例えば、5〜300kDaの分子量を有しているタンパク質である。例えば、TNF−α遮断薬は、TNF−α受容体に対するTNF−αの結合を阻害することができるか、または、別の方法で、TNF−α受容体の下流のシグナル伝達を妨げることができる。典型的なTNF−α遮断薬は、TNF−αに、またはTNF−α受容
体(例えば、TNFR−IまたはTNFR−II)に結合することができる。TNF−αに、またはTNF−α受容体に結合するTNF−α遮断薬は、TNF−αまたはTNF−α受容体の立体構造を変化させる場合があり、TNF−αまたはTNF−α受容体上の結合部位をブロックする場合があり、あるいは、別の方法で、TNF−α受容体に対するTNF−αの親和性を低下させる場合、また、TNF−αとTNF−α受容体の間での相互作用を妨げる場合もある。
【0060】
TNF−α遮断薬(例えば、抗体)は、TNF−αに対して、またはTNF−α受容体に対して、10−6、10−7、10−8、10−9、または10−10M未満のKで結合することができる。1つの実施態様においては、遮断薬は、TNF−αに対して、TWEAKまたは別のTNFスーパーファミリーのメンバー(TNF−α以外)に対するその親和性よりも、少なくとも5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、または1000倍高い親和性で結合する。好ましいTNF−α遮断薬は、TNF−αまたはTNF−α−Rに特異的に結合し、例えば、TNF−αまたはTNF−α−R特異的抗体である。
【0061】
例示的なTNF−α遮断薬としては、TNF−αまたはTNF−α−Rに結合する抗体、およびTMF−αへの結合について細胞表面TNF−α−Rと競合するTNF−α−Rの可溶性形態が挙げられる。TNF−α−Rの可溶性形態の一例は、TNF−α−Rの細胞外ドメインの少なくとも一部(例えば、TNF−α−Rの可溶性のTNF−α−結合断片)が含まれているFc融合タンパク質であり、これはTNF−α−R−Fcと呼ばれる。TNF−α−Rの他の可溶性形態(例えば、Fcドメインが含まれていない形態)もまた使用することができる。抗体遮断薬は以下でさらに議論される。
【0062】
例示的なTNF−α受容体タンパク質の可溶性形態は、ENBREL(登録商標)である。例えば、Arthritis & Rheumatism(1994)Val.37,S295;J.Invest.Med.(1996)Vol.44,235Aを参照のこと。U.S.6,572,852にはさらに別の例が記載されている。関節リウマチ、乾癬性関節炎、または強直性脊椎炎を有している成人である患者について推奨されるENBREL(登録商標)の用量は1週間に50mgであり、50mg/mLの使い捨ての薬剤充填済み注射器(prefilled syringe)を使用して1回の皮下(SC)注射として投与される。ENBREL(登録商標)に加えて、TNF−α受容体の他の同様の領域および/または対応する領域を、別のアミノ酸配列(例えば、Fcドメイン)に対して、そのN末端またはC末端で物理的に会合させる(例えば、融合させる)ことができる。
【0063】
TNF−α遮断薬の他の十分に特性決定されている例としては以下が挙げられる:インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、腫瘍壊死因子α(TNF−α)に結合するキメラ抗体およびアダリムマブ(HUMIRA(登録商標))(TNF−αに結合するヒト抗体)。例えば、REMICADE(登録商標)についての推奨される用量は静脈内注射として投与される3mg/kg、その後の、最初の注射後2週間および6週間で、その後は8週間おきに投与されるさらなる同様の用量である。
【0064】
TNF−α遮断薬のさらに別の例としては、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、またはインビトロで作成されたTNF(例えば、ヒトTNF−α)に対する抗体(またはその抗原結合断片)が挙げられ、例えば、D2E7(ヒトTNF−α抗体、米国特許第6,258,562号;BASF)、CDP−571/CDP−870/BAY−10−3356(ヒト化抗TNF−α抗体;Celltech/Pharmacia)、cA2(キメラ抗TNFα抗体;REMICADE(商標)、Centocor,上記にも記載されている);抗TNF抗体断片(例えば、CPD870);TNF受容体の可溶性断片(例え
ば、p55またはp75ヒトTNF受容体あるいはそれらの誘導体、例えば、75kdのTNFR−IgG(75kDのTNF受容体−IgG融合タンパク質、ENBREL(商標))、p55kdのTNFR−IgG(55kDのTNF受容体−IgG融合タンパク質(LENERCEPT(商標));酵素アンタゴニスト(例えば、TNFα変換酵素(TACE)阻害剤、例えば、α−スルホニルヒドロキサム酸誘導体、PCT出願番号WO01/55112、およびN−ヒドロキシホルムアミドTACE阻害剤GW3333、−005、または−022);ならびに、TNF−bp/s−TNFR(可溶性のTNF結合タンパク質;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遣),S284;Amer.J.Physiol.−Heart and Circulatory Physiology(1995)Vol.268,pp.37−42を参照のこと)が挙げられる。
【0065】
(抗体)
例示的なTWEAK遮断薬としては、TWEAKおよび/またはTWEAK−Rに結合する抗体が挙げられる。1つの実施形態においては、抗体は、TWEAKとTWEAK受容体の間での相互作用を、例えば、相互作用を物理的にブロックすることによって、TWEAKおよび/またはTWEAK−Rのその対応物に対する親和性を低下させることによって、TWEAK複合体を破壊させるまたは脱安定化させることによって、TWEAKまたはTWEAK−Rを封鎖することによって、あるいは、TWEAKまたはTWEAK−Rを分解するように標的化させることによって、阻害する。1つの実施形態においては、抗体は、TWEAKとその受容体との間での結合界面に関係している1つ以上のアミノ酸で、TWEAKまたはTWEAK−Rに結合することができる。このようなアミノ酸残基は、例えば、アラニンスキャンによって同定することができる。別の実施形態においては、抗体は、結合界面には関係していない残基に結合することができる。例えば、抗体は、TWEAKまたはTWEAK−Rの立体構造を変化させることができ、そしてそれによって、結合親和性を低下させることができるか、または、抗体は、立体障害となるように結合する場合もある。1つの実施形態においては、抗体は、TWEAK−Rによって媒介される事象または活性の活性化(例えば、NF−κBの活性化)を妨げることができる。
【0066】
同様に、例示的なTNF−α遮断薬としては、TNF−αおよび/またはTNF−α受容体(例えば、TNFR−IまたはTNFR−II)に結合する抗体が挙げられる。1つの実施形態においては、抗体は、TNF−αとTNF−α受容体との間での相互作用を、例えば、相互作用を物理的にブロックすることによって、TNF−αおよび/またはTNF−α−Rのその対応物に対する親和性を低下させることによって、TNF−α複合体を破壊させるまたは脱安定化させることによって、TNF−αまたはTNF−α−Rを封鎖することによって、あるいは、TNF−αまたはTNF−α受容体を分解するように標的化させることによって、阻害する。1つの実施形態においては、抗体は、TNF−α/TNF−α受容体の結合界面に関係している1つ以上のアミノ酸で、TNF−αまたはTNF−α受容体に結合することができる。このようなアミノ酸残基は、例えば、アラニンスキャンによって同定することができる。別の実施形態においては、抗体は、TNF−α/TNF−α受容体の結合には関係していない残基に結合することができる。例えば、抗体は、TNF−αまたはTNF−α受容体の立体構造を変化させることができ、そしてそれによって、結合親和性を低下させることができるか、または、抗体は、立体障害となるようにTNF−α/TNF−α受容体に結合する場合もある。
【0067】
本明細書中で使用される場合は、用語「抗体」は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域(例えば、免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリン可変ドメイン配列を提供するアミノ酸配列)が含まれているタンパク質を意味する。例えば、抗体には重(H)鎖可変領域(本明細書中では、VHと省略される)、および軽(L)鎖可変領域(本明細書中では、VLと省略される)が含まれ得る。別の例においては、抗体には、2つの重
(H)鎖可変領域と、2つの軽(L)鎖可変領域が含まれ得る。用語「抗体」には、抗体の抗原結合断片(例えば、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、およびdAb断片)、ならびに、完全な抗体(例えば、IgA、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgE、IgD、IgM(ならびにそれらのサブタイプ))型免疫グロブリンの完全な、および/または全長の免疫グロブリン)が含まれる。免疫グロブリンの軽鎖は、κ型またはλ型である場合がある。1つの実施形態においては、抗体はグリコシル化される。抗体は、抗体依存性細胞傷害性および/または補体媒介性細胞傷害性について機能的であり得、また、これらの活性の一方または両方について、非機能性である場合もある。
【0068】
VHおよびVL領域はさらに、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより保存されている領域が点在する「相補性決定領域」(「CDR」)と呼ばれる超可変性の領域に細分され得る。FRおよびCDRの範囲は、正確に定義されている(Kabat,E.A.,et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,U.S.Department of Health and Human Service,NIH Publication No.91−3242;およびChothia,C.et al.,(1987)J.Mol.Biol.196:901−917を参照のこと)。Kabatの定義が本明細書中で使用される。VHとVLはそれぞれ、通常は、アミノ末端からカルボキシル末端に向かって以下の順序で並べられた3個のCDRと4個のFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0069】
「免疫グロブリンドメイン」は、免疫グロブリン分子の可変ドメインまたは定常ドメインに由来するドメインを意味する。免疫グロブリンドメインには、通常、およそ7個のβ−鎖から形成される2つのβ−シートと、保存されているジスルフィド結合が含まれる(例えば、A.F.Williams and A.N.Barclay(1988)Ann.Rev Immunol.6:381−405を参照のこと)。「免疫グロブリン可変ドメイン配列」は、抗原の結合に適している立体配置の中にCDR配列を配置するために十分な構造を形成することができるアミノ酸配列を意味する。例えば、配列には、自然界に存在している可変ドメインのアミノ酸配列全体またはその一部が含まれ得る。例えば、配列には、1つ、2つ、もしくはそれ以上のN末端またはC末端アミノ酸、内部アミノ酸が省略されている場合があり、1つ以上の挿入またはさらなる末端アミノ酸が含まれている場合があり、また、他の変更が含まれている場合もある。1つの実施形態においては、免疫グロブリン可変ドメイン配列が含まれているポリペプチドは、標的結合構造(または「抗原結合部位」)(例えば、標的タンパク質(例えば、TWEAK、TWEAK受容体、TNF−α、TNFR−I、またはTNFR−II)と相互作用する構造)を形成するように、別の免疫グロブリン可変ドメイン配列と会合することができる。
【0070】
抗体のVHまたはVL鎖には、さらに、重鎖もしくは軽鎖定常領域全体またはその一部が含まれ得、それによって、それぞれ、免疫グロブリン重鎖または免疫グロブリン軽鎖が形成される。1つの実施形態においては、抗体は、2つの免疫グロブリン重鎖と2つの免疫グロブリン軽鎖の四量体である。免疫グロブリン重鎖と免疫グロブリン軽鎖は、ジスルフィド結合によって結合させることができる。重鎖定常領域には、通常、3つの定常ドメインCH1、CH2、およびCH3が含まれている。軽鎖定常領域には、通常、CLドメインが含まれている。重鎖および軽鎖の可変領域には、抗原と相互作用する結合ドメインが含まれている。抗体の定常領域によって、通常は、宿主組織または因子(免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)、および古典的補体活性化経路(classical complement system)の第1の成分(Clq)が含まれる)に対する抗体の結合を媒介する。
【0071】
抗体の1つ以上の領域はヒトのものであり得るか、有効にヒトのものであり得るか、またはヒト化されたものであり得る。例えば、1つ以上の可変領域が、ヒトの領域であり得るか、または有効にヒトのものであり得る。例えば、CDRの1つ以上(例えば、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3)がヒトのものであり得る。軽鎖CDRのそれぞれはヒトのものであり得る。HC CDR3はヒトのものであり得る。フレームワーク領域の1つ以上は、ヒトのものであり得、例えば、HCまたはLCのFR1、FR2、FR3、およびFR4であり得る。1つの実施形態においては、フレームワーク領域の全てが、ヒトのものであり、例えば、ヒトの体細胞(例えば、免疫グロブリンを生じる造血細胞、または非造血細胞)に由来するものである。1つの実施形態においては、ヒト配列は、生殖系列の細胞の配列(例えば、生殖系列の細胞の核酸によってコードされる配列)である。定常領域の1つ以上は、ヒトのものであり得るか、有効にヒトのものであり得るか、またはヒト化されたものであり得る。別の実施形態においては、フレームワーク領域(例えば、FR1、FR2と、FR3(合計で)、もしくはFR1、FR2、FR3と、FR4(合計で))あるいは抗体全体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、または98%がヒトのものであり得るか、有効にヒトのものであり得るか、またはヒト化されたものであり得る。例えば、FR1、FR2、およびFR3は、合計で、ヒトの生殖系列の細胞のセグメントによってコードされるヒト配列に対して、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、98%、あるいは99%同一である場合も、またそれと完全に同一である場合もある。
【0072】
「有効にヒトの」免疫グロブリン可変領域は、免疫グロブリン可変領域が正常なヒトにおいて免疫反応を誘発することがないように、十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置が含まれている免疫グロブリン可変領域である。「有効にヒトの」抗体は、抗体が正常なヒトにおいては免疫反応を誘発することがないように、十分な数のヒトのアミノ酸位置が含まれている抗体である。
【0073】
「ヒト化」免疫グロブリン可変領域可変領域は、修飾された形態が修飾されていない形態よりも少ない免疫反応をヒトにおいて誘発するように修飾された(例えば、免疫グロブリン可変領域が正常なヒトにおいては免疫反応を誘発しないように、十分な数のヒトのフレームワークアミノ酸位置を含むように修飾されている)免疫グロブリン可変領域である。「ヒト化」免疫グロブリンの記載としては、例えば、米国特許第6,407,213号、および同第5,693,762号が挙げられる。いくつかの場合には、ヒト化免疫グロブリンには、1つ以上のフレームワークアミノ酸位置にヒト以外のアミノ酸が含まれ得る。
【0074】
(抗体の作製)
標的タンパク質(例えば、TWEAK、TWEAK−R、TNF−α、TNFR−I、またはTNFR−II)に結合する抗体は、様々な手段(例えば、動物を使用するか、またはファージディスプレイのようなインビトロでの方法における免疫化が含まれる)によって作成することができる。標的タンパク質全体またはその一部を、免疫原として、または選択のための標的として使用することができる。1つの実施形態においては、免疫化された動物には、自然界に存在している、ヒト免疫グロブリン遺伝子座、またはヒト免疫グロブリン遺伝子座の一部を有している免疫グロブリンを生産する細胞が含まれる。1つの実施形態においては、ヒト以外の動物に、ヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部が含まれる。例えば、ヒトIg遺伝子座の大きな断片を用いて、マウスの抗体生産が欠損しているマウス株を操作することができる。ハイブリドーマ技術を使用して、所望される特異性を有している遺伝子に由来する抗原特異的モノクローナル抗体を生産させ、そして選択することができる。例えば、XENOMOUSE(商標),Green et al.,(1994)Nat.Gen.7:13−21;U.S.2003−0070185;
米国特許第5,789,650号;およびPCT出願番号WO96/34096を参照のこと。
【0075】
標的タンパク質に対するヒト以外の抗体はまた、(例えば、齧歯類の中で)生産させることもできる。ヒト以外の抗体は、(例えば、EP 239 440;米国特許第6,602,503号;同第5,693,761号;および同第6,407,213号に記載されているように)ヒト化させることができるか、脱免疫化させることができるか、または、別の方法で、それをヒトに有効であるようにするために修飾することができる。
【0076】
EP 239 400(Winter et al.)には、1つの種のそれらの相補性決定領域(CDR)の別の種に由来する相補性決定領域での置換(所定の可変領域の中での置換)によって、抗体を変化させることが記載されている。典型的には、ヒト以外(例えば、マウス)の抗体のCDRは、組み換え核酸技術によってヒト抗体の中の対応する領域の中で置換して、所望される置換抗体をコードする配列を得ることができる。所望されるアイソタイプ(通常は、CHについてはγI、そしてCLについてはκ)のヒトの定常領域遺伝子セグメントを付加することができ、ヒト化重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子を哺乳動物細胞の中で同時に発現させて、可溶性のヒト化抗体を生産させることができる。
【0077】
抗体をヒト化するための他の方法もまた使用することができる。例えば、他の方法で、抗体の三次元構造、結合決定基に近い、三次元構造の中に存在しているフレームワーク位置、および免疫原性ペプチドの配列を説明することができる。例えば、PCT出願番号WO90/07861;米国特許第5,693,762号;同第5,693,761号;同第5,585,089号;および同第5,530,101号;Tempest et al.,(1991)Biotechnology 9:266−271および米国特許第6,407,213号を参照のこと。なお別の方法は、ヒューマニアリング(humaneering)と呼ばれ、例えば、U.S.2005−008625に記載されている。
【0078】
標的タンパク質に結合する完全にヒトのモノクローナル抗体は、Boerner et
al.,(1991)J.Immunol.147:86−95に記載されているように、例えば、インビトロで感作させられたヒト脾臓細胞を使用して、生産させることができる。これらは、Persson et al.,(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:2432−2436に、またはHuang and Stollar(1991)J.Immunol.Methods 141:227−236;また、米国特許第5,798,230に記載されているように、レパートリークローニングによって調製することもできる。大きな免疫化されていないヒトファージディスプレイライブラリーもまた、標準的なファージ技術を使用して、ヒトの治療薬として開発することができる高親和性抗体を単離するために使用することができる(例えば、Hoogenboom et al.,(1998)Immunotechnology 4:1−20;Hoogenboom et al.,(2000)Immunol Today 2:371−378;およびU.S.2003−0232333を参照のこと)。
【0079】
(抗体およびタンパク質の生産)
本明細書中に記載される抗体および他のタンパク質は、原核生物細胞の中で生産させることができ、また、真核生物細胞の中で生産させることもできる。1つの実施形態においては、抗体(例えば、scFv)は、ピキア(Pichia)(例えば、Powers et al.,(2001)J.Immunol.Methods 251:123−35)、ハンゼヌラ(Hanseula)、またはサッカロマイセス(Saccharomyces)のような酵母細胞の中で発現させられる。
【0080】
抗体(特に、全長の抗体(例えば、IgG))は、哺乳動物細胞の中で生産させること
ができる。組み換え発現のための例示的な哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(DHFR選択マーカー(例えば、Kaufman and Sharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載されているもの)とともに使用される、Urlaub and Chasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216−4220に記載されているdhfr−CHO細胞が含まれる)、リンパ球細胞株(例えば、NS0骨髄腫細胞およびSP2細胞)、COS細胞、K562、ならびにトランスジェニック動物(例えば、トランスジェニック哺乳動物)に由来する細胞が挙げられる。例えば、細胞は、哺乳動物の上皮細胞である。
【0081】
免疫グロブリンドメインをコードする核酸配列に加えて、組み換え発現ベクターは、さらなる核酸配列(例えば、宿主細胞の中でのベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択マーカー遺伝子)を有している場合がある。選択マーカー遺伝子は、その中にベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号;同第4,634,665号;および同5,179,017号を参照のこと)。例示的な選択マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅と共にdhfr宿主細胞において使用される)、およびneo遺伝子(G418の選択のため)が挙げられる。
【0082】
抗体(例えば、全長の抗体またはその抗原結合部分)の組み換え発現のための例示的なシステムにおいては、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコードする組み換え発現ベクターが、リン酸カルシウム媒介性トランスフェクションによって、dhfr−CHO細胞に導入される。組み換え発現ベクターの中では、抗体重鎖および抗体軽鎖遺伝子は、遺伝子の高レベルの転写を駆動するために、それぞれ、エンハンサー/プロモーター調節エレメント(例えば、SV40、CMV、アデノウイルスなどに由来するもの)(例えば、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメント、またはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメント)に対して、動作可能であるように連結される。組み換え発現ベクターはまた、DHFR遺伝子をも有しており、これによって、メトトレキセート選択/増幅を使用して、ベクターでトランスフェクトされているCHO細胞を選択することが可能となる。選択された形質転換体宿主細胞は培養されて、抗体重鎖と軽鎖が発現させられ、そして完全な抗体が培養培地から回収される。標準的な分子生物学的技術が、組み換え発現ベクターを調製するため、宿主細胞をトランスフェクトするため、形質転換体を選択するため、宿主細胞を培養するため、そして培養培地から抗体を回収するために使用される。例えば、いくつかの抗体は、プロテインAまたはプロテインGを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって単離することができる。
【0083】
抗体(およびFc融合体)には、修飾(例えば、Fc機能を変化させる(例えば、Fc受容体と、もしくはClqと、もしくはそれらの両方との相互作用を低下させるかまたは排除するための)修飾)も含まれ得る。例えば、ヒトIgG定常領域は、1つ以上の残基(例えば、米国特許第5,648,260の番号付けにしたがう残基234から237の1つ以上)で変異させることができる。他の例示的な修飾としては、米国特許第5,648,260に記載されている修飾が挙げられる。
【0084】
Fcドメインが含まれているいくつかのタンパク質については、抗体/タンパク質の生産システムは、その中のFc領域がグリコシル化されている抗体または他のタンパク質を合成するように設計される場合がある。例えば、IgG分子のFcドメインは、CH2ドメインのアスパラギン297でグリコシル化される。Fcドメインにはまた、他の真核生物の翻訳後修飾も含まれ得る。他の場合には、タンパク質は、グリコシル化されていない形態で生産される。
【0085】
抗体および他のタンパク質はまた、トランスジェニック動物によって生産させることもできる。例えば、米国特許第5,849,992号には、トランスジェニック哺乳動物の乳腺の中での抗体の発現のための方法が記載されている。乳汁特異的プロモーター、および目的の抗体(例えば、本明細書中に記載されている抗体)と分泌のためのシグナル配列をコードする核酸配列が含まれているトランスジーンが構築される。このようなトランスジェニック哺乳動物の雌によって生産される乳汁には、その中に分泌された目的のタンパク質(例えば、抗体またはFc融合タンパク質)が含まれる。タンパク質は、乳汁から精製することができ、また、いくつかの用途については直接使用することもできる。
【0086】
抗体の状況において記載される方法は、他のタンパク質(例えば、Fc融合体および可溶性受容体断片)に適応させることができる。
【0087】
(核酸である遮断薬)
特定の実施態様においては、核酸である遮断薬は、標的タンパク質(例えば、TWEAK、TWEAK−R(例えば、Fn14)、TNF−α、TNFR−I、またはTNFR−II)の発現を低下させるために使用される。これらの薬剤は、タンパク質様のTWEAK遮断薬およびTNF−α遮断薬の代わりに、またはそれらに加えて使用することができる。1つの実施形態においては、核酸アンタゴニストは、標的タンパク質をコードする内因性遺伝子から生産されるmRNAに対して指向させられたsiRNAである。例えば、siRNAには、mRNAに相補的な領域が含まれる。他のタイプのアンタゴニスト核酸(例えば、dsRNA、リボザイム、トリプルヘリックスホーマー(triple−helix former))、またはアンチセンス核酸)もまた使用することができる。
【0088】
siRNAは、必要に応じて突出が含まれている、小さい二本鎖のRNA(dsRNA)である。例えば、siRNAの二本鎖の領域は、約18から25ヌクレオチドの長さ(例えば、約19、20、21、22、23、または24ヌクレオチドの長さ)である。通常、siRNA配列は、標的mRNAに対して正確に相補的である。dsRNAおよびsiRNAは、具体的には、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)の中で遺伝子発現をサイレンスにするために使用することができる。例えば、Clemens et al.,(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),97:6499−6503;Billy et al.,(2001)Proc.Natl.Sci.USA,98:14428−14433;Elbashir et al.,(2001)Nature.411:494−8;Yang et al.,(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:9942−9947、米国特許公報2003−0166282;2003−0143204;2004−0038278;および2003−0224432を参照のこと。
【0089】
アンチセンスである薬剤には、例えば、約8から約80核酸塩基(すなわち、約8から約80ヌクレオチド)、例えば、約8から約50核酸塩基、または約12から約30核酸塩基が含まれ得る。アンチセンス化合物としては、リボザイム、外部ガイド配列(EGS)オリゴヌクレオチド(オリゴザイム)、および標的核酸にハイブリダイズしてその発現を調節する他の短い触媒性RNAまたは触媒性オリゴヌクレオチドが挙げられる。アンチセンス化合物としては、標的遺伝子中の配列に相補的である少なくとも8個の連続している核酸塩基のストレッチを挙げることができる。オリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズすることができるその標的核酸に対して必ずしも100%相補的でなくてもよい。オリゴヌクレオチドは、標的に対するそのオリゴヌクレオチドの結合によって標的分子の正常な機能を妨害して、有用性の低下を引き起こし、そして、特異的な結合が所望される条件下での(すなわち、インビボでのアッセイまたは治療的処置の場合には生理学的条件下での、また、インビトロでのアッセイの場合には、アッセイが行われる条件下での)標的以外の配列に対するオリゴヌクレオチドの非特異的結合を回避するために十分な程度
の相補性が存在する場合には、特異的にハイブリダイズすることができる。
【0090】
mRNA(例えば、標的タンパク質をコードするmRNA)とのアンチセンスオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによってmRNAの通常の機能の1つ以上を妨害することができる。妨害されるmRNAの機能としては、全ての重要な機能(例えば、タンパク質の翻訳部位へのRNAのトランスロケーション、RNAからのタンパク質の翻訳、1つ以上のmRNA種を得るためのRNAのスプライシング、およびRNAが関与している可能性がある触媒活性)が挙げられる。RNAに対する特異的なタンパク質(単数または複数)の結合が、RNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって妨害される場合もある。
【0091】
例示的なアンチセンス化合物としては、標的核酸(例えば、標的タンパク質をコードするmRNA)に特異的にハイブリダイズするDNAまたはRNA配列が挙げられる。相補性領域は、約8核酸塩基から約80核酸塩基の間にまでまたがり得る。これらの化合物には、1つ以上の修飾された核酸塩基が含まれ得る。修飾された核酸塩基としては、例えば、5−置換ピリミジン(例えば、少し記述するだけでも、5−ヨードウラシル、5−ヨードシトシン、およびC5−プロピニルピリミジン(例えば、C5−プロピニルシトシンおよびC5−プロピニルウラシル)を挙げることができる。様々な核酸薬剤についての記載を利用することができる。例えば、米国特許第4,987,071号;同第5,116,742号;および同第5,093,246号;Woolf et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,;Antisense RNA and DNA,D.A.Melton、編.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1988);89:7305−9;Haselhoff and Gerlach(1988)Nature 334:585−59;Helene,C.(1991)Anticancer
Drug Des.6:569−84;Helene(1992)Ann.N.Y.Acad.Sci.660:27−36;およびMaher(1992)Bioassays 14:807−15を参照のこと。
【0092】
本明細書中に記載される核酸(例えば、本明細書中に記載されるアンチセンス核酸)は、薬剤を発現させ、そして生産させるために使用することができる核酸(例えば、アンチセンス核酸)を細胞内に送達するための遺伝子治療プロトコールの一部として使用される遺伝子構築物の中に取り込ませることができる。このような成分の発現構築物は、任意の生物学的に有効な担体の中で、例えば、インビボで細胞にこの成分遺伝子を効率よく送達することができる任意の処方物または組成物の中で、投与することができる。アプローチには、ウイルスベクター(組み換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、および単純ヘルペスウイルス−1、あるいは、組み換え体の細菌または真核生物プラスミドが含まれる)の中への目的の遺伝子の挿入が含まれる。ウイルスベクターは細胞に直接トランスフェクトする;プラスミドDNAは、例えば、陽イオン性リポソーム(リポフェクチン)または誘導体化された(例えば、抗体が結合させられた)、ポリリジン結合体、グラマシジンS、人工のウイルスエンベロープ、または他のそのような細胞内担体の助けを借りて送達することができ、さらに、遺伝子構築物の直接の注入またはCaPO沈殿がインビボで行われる。
【0093】
細胞内への核酸のインビボでの導入のための好ましいアプローチは、核酸(例えば、cDNA)を含むウイルスベクターの使用による。ウイルスベクターでの細胞の感染には、標的化された細胞の大部分が核酸を受け取ることができるという利点がある。加えて、ウイルスベクターの中に(例えば、ウイルスベクターの中に含まれるcDNAによって)コードされる分子は、ウイルスベクターの核酸を取り込んだ細胞の中で効率よく発現される。
【0094】
レトロウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスベクターは、(特に、ヒトへの)インビボでの外因性遺伝子の導入のための組み換え遺伝子送達システムとして使用することができる。これらのベクターにより、細胞への遺伝子の効率的な送達が提供され、そして形質導入された核酸は、宿主の染色体DNAに安定に組み込まれる。組み換え体レトロウイルスを生産するため、およびインビトロもしくはインビボで細胞をそのようなウイルスに感染させるためのプロトコールは、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel,F.M.et al.,(編)Greene Publishing Associates,(1989),Sections 9.10−9.14および他の標準的な実験室マニュアルにおいて見ることができる。適切なレトロウイルスの例としては、pLJ、pZIP、pWE、およびpEMが挙げられる。これらは当業者に公知である。エコトロピックなおよび両栄養性レトロウイルスシステムの両方を調製するための適切なパッケージングウイルス株の例としては、Crip、Cre、2、およびAmが挙げられる。レトロウイルスは、インビトロおよび/またはインビボで、上皮細胞を含む多くの様々な細胞のタイプの中に様々な遺伝子を導入するために使用されている(例えば、Eglitis,et al.(1985)Science 230:1395−1398;Danos and Mulligan(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:6460−6464;Wilson et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:3014−3018;Armentano et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:6141−6145;Huber et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8039−8043;Ferry et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8377−8381;Chowdhury et al.(1991)Science 254:1802−1805;van Beusechem et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7640−7644;Kay et al.(1992)Human Gene Therapy 3:641−647;Dai et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10892−10895;Hwu et al.(1993)J.Immunol.150:4104−4115;米国特許第4,868,116、および4,980,286;PCT出願番号WO89/07136;同WO89/02468;同WO89/05345;および同WO92/07573を参照のこと)。
【0095】
別のウイルス遺伝子送達システムでは、アデノウイルスに由来するウイルスが利用される。例えば、Berkner et al.(1988)BioTechniques 6:616;Rosenfeld et al.(1991)Science 252:431−434、およびRosenfeld et al.(1992)Cell 68:143−155を参照のこと。アデノウイルス株Adタイプ5 dl324またはアデノウイルスの他の株(例えば、Ad2、Ad3、Ad7など)に由来する適切なアデノウイルスベクターが当業者に公知である。
【0096】
本発明の遺伝子の送達に有用であるなお別のウイルスベクターシステムは、アデノ随伴ウイルス(AAV)である。例えば、Flotte et al.(1992)Am.J.Respir.Cell.Mol.Biol.7:349−356;Samulski
et al.(1989)J.Virol.63:3822−3828;およびMcLaughlin et al.(1989)J.Virol.62:1963−1973)を参照のこと。
【0097】
(人工的な転写因子)
人工的な転写因子もまた、標的タンパク質(例えば、TWEAK、TWEAK−R(例えば、Fn14)、TNF−α、TNFR−I、またはTNFR−II)の発現を調節するために使用することができる。人工的な転写因子は、例えば、標的タンパク質をコードする内因性の遺伝子の中の(例えば、調節領域の中の)配列(例えば、プロモーター)に結合する能力について、ライブラリーから設計し、そして選択することができる。例えば、人工的な転写因子は、インビトロでの選択(例えば、ファージディスプレイ(米国特許第6,534,216号)を使用して)またはインビボでの選択によって、あるいは、認識コードに基づく設計によって(例えば、PCT出願番号WO00/42219、および米国特許第6,511,808号を参照のこと)調製することができる。例えば、特に、多様な亜鉛フィンガードメインのライブラリーを作成するための方法については、Rebar et al.(1996)Methods Enzymol 267:129;Greisman and Pabo(1997)Science 275:657;Isalan et al.(2001)Nat.Biotechnol 19:656;およびWu et al.(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:344を参照のこと。
【0098】
必要に応じて、人工的な転写因子を、転写調節ドメイン(例えば、転写を活性化させるためには活性化ドメイン、または転写を抑制するためには抑制ドメイン)に融合させることができる。具体的には、抑制ドメインは、TWEAK、またはTWEAK−Rをコードする内因性遺伝子の発現を低下させるために使用することができる。人工的な転写因子は、それ自体が、異種核酸によってコードされるものであり得、これは細胞に送達されるか、またはタンパク質自体が細胞に送達され得る(例えば、米国特許第6,534,261号を参照のこと)。人工的な転写因子をコードする配列が含まれている異種核酸は、(例えば、細胞の中での人工的な転写因子のレベルを微調整することを可能にするための)誘導性プロモーターに動作可能であるように連結させることができる。
【0099】
(関節リウマチ(RA))
関節リウマチ(RA)は、主に関節において痛み、腫れ、凝り、および機能障害を引き起こす慢性的な炎症性疾患である。RAは、多くの場合は、滑膜において始まり、これは、関節の周囲を取り囲み、防御性の嚢を作成する膜である。RAに罹患している多くの個体においては、白血球は循環から滑膜へと浸潤して、持続的な異常な炎症(例えば、滑膜炎)を引き起こす。結果として、滑膜は炎症を起こし、熱くなり、赤くなり、腫れ、および痛みを引き起こす。軟骨の中のコラーゲンは段階的に分解されて、関節空間は狭くなり、最終的には骨を損傷する。炎症によって、罹患した領域において侵食性の骨の損傷が生じる。このプロセスの間に、滑膜の細胞は増殖し、そして異常に分裂し、これによって、正常な薄い滑膜の厚みが生じ、腫れた、そして触ってみると浮腫んでいる関節が生じる。
【0100】
RAが進行するに伴い、異常な滑膜細胞は、関節の中の軟骨および骨に浸潤し、これらを破壊することができる。関節を支えそして安定化させる周辺の筋肉、靭帯、および腱は弱くなり、そして正常に機能できなくなる場合がある。RAはまた、骨粗鬆症に至る可能性があるより全身にわたる骨量減少も引き起こす場合があり、骨を脆くし、骨折しやすくなる。これらの作用の全てによって、RAに伴う痛み、機能障害、および変形が生じる。罹患する可能性がある領域としては、手首、指関節、膝、および母指球が挙げられる。多くの場合には、複数の関節が関係し得、そしてさらには脊椎も罹患する可能性がある。RAに罹患しているヒトのおよそ25%においては、小さい血管の炎症によって、皮膚下でリウマチ結節またはしこりが引き起こされる可能性がある。皮膚の下には瘤が存在し、これらは多くの場合は、関節の近くに形成される。疾患が進行するに伴い、特に、足関節においては、流体も蓄積する場合がある。RAに罹患している多くの患者は、貧血もまた発症するか、または、赤血球数が正常値よりも低下する。
【0101】
RAには、多数の疾患のサブタイプ(例えば、フェルティー症候群、血清反応陰性RA、「古典的」RA、進行性および/または再発型RA、ならびに、脈管炎を伴うRA)が含まれる。一部の専門家らは、疾患を、1型または2型に分類している。1型は、あまり一般的ではない形態であり、ほとんどの場合には数ヶ月間持続し、そして永久的な機能障害は残さない。2型は慢性的であり、数年間持続し、ときには、一生持続する。RAは、皮下のリウマチ結節、内臓の小結節(visceral nodules)、下腿潰瘍もしくは多発単神経炎を引き起こす脈管炎、胸膜および心嚢の滲出、リンパ節腫脹症、フェルティー症候群、シェーグレン症候群、および上強膜炎として発症する場合がある。これらの疾患のサブタイプおよび上記の症状の1つ以上を示す被験体も、本明細書中に記載されている方法を使用して処置することができる。
【0102】
RAは、全ての人種および民族にわたって起こる。少なくとも1つの遺伝的素因が同定されており、これは、白色人種において、クラスII組織適合性遺伝子のHLA−DR 1遺伝子座の中のペンタペプチドに位置が特定されている。
【0103】
RAは、様々な臨床的な測定によって評価することができる。いくつかの例示的な基準としては、Sharpスコアの合計(TSS)、Sharp浸食スコア、およびHAQ障害指数が挙げられる。本明細書中に記載される方法は、これらの基準の少なくとも1つの改善を行うために使用することができる。
【0104】
(TNF−α遮断薬に対して反応しない患者)
1つの態様においては、関節リウマチを有する被験体、またはRAのリスクがある被験体、または本明細書中に記載される別の疾患を有しているかもしくはそのリスクがある被験体を、特定の薬剤(例えば、生物学的DMARD)に反応するそれらの能力(例えば、TNF−α遮断薬(例えば、エタネルセプト、インフリキシマブ、またはアダリムマブ)に反応するそれらの能力)の指標となるパラメーターについて評価することができる。例えば、パラメーターは、TNF−αをコードする遺伝子の中に1つのヌクレオチドが存在するか、または存在しないかであり得る。特定の薬剤に対してあまり反応しないかまたは反応しないことが示された被験体には、別の薬剤を投与することができる。例えば、エタネルセプトに反応しないことが示された被験体には、TWEAK遮断薬を投与することができる。
【0105】
TNFA−857C/T SNPのT対立遺伝子を有している関節リウマチの患者は、C対立遺伝子についてホモ接合型よりも、エタネルセプト治療に対して良好に反応する可能性がある。Kang et al.,Rheumatology 2005年4月;44(4)547−52。したがって、C対立遺伝子についてホモ接合型であるRA患者は、TWEAK遮断薬で処置することができ、そして、エタネルセプトまたは他のTNF−α遮断薬を控えることができ、また、投与量を(例えば、標準的な用量と比較して)減少させることができる。
【0106】
(RA治療に対して反応しない患者)
RAについての様々な処置を、TNF−α遮断薬に加えて、利用することができる。これらの多くは、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)として分類される治療薬である。伝統的なDMARDSとしては、PLAQUENIL(登録商標)(ヒドロキシクロロキン(hydroxychloroquine))、AZULFIDINE(登録商標)(スルファサラジン)、またはRHEUMATREX(登録商標)(メトトレキセート)が挙げられる。関節リウマチについては、関節リウマチにおけるDMARD治療からの撤退率が、患者に薬物が投与されている時間の長さに伴って増大すること、およびこれらの撤退のうちの多数が効能の低下に関係していることが観察されている(例えば、Annals of the Rheumatic Diseases(2003)62:95−9
6を参照のこと)。したがって、TWEAK遮断薬もまた、DMARDでの処置に対して不適切な反応(例えば、以下の薬剤の1つでの処置に対する不適切な反応)を有している被験体に投与することができる:
a.サリチル酸塩(例えば、アスピリン)を含む、非ステロイド系抗炎症薬。
【0107】
b.金化合物。一部の患者においては、金によって、臨床的寛解が生じる場合があり、そして新しい骨の浸食の形成が減少する場合がある。非経口用の調製物には、金チオリンゴ酸ナトリウムまたは金チオグルコースが含まれる。金は、毒性の兆候が現れると中止されるべきである。小さい毒性の兆候(例えば、軽い掻痒感、軽い発疹)は、金療法を一時中止することによって解消することができる場合があり、その後、症状が穏やかになったおよそ2週間後に、注意深く再開される。しかし、毒性の症状が進行する場合には、金療法は中止されるべきである。TWEAK遮断薬は、金の使用が中止される場合、または、金キレート化剤(例えば、ジメルカプロール)が金毒性を中和するために投与される場合に、投与することができる。
【0108】
c.ヒドロキシクロロキン(hydroxychloroquine)もまた、軽いまたは中程度の活動性RA(active RA)の症状を制御することができる。毒性の作用は、通常は軽度であり、これには、皮膚炎、筋障害、および一般的に可逆性の角膜混濁が含まれる。しかし、不可逆性の網膜変性が報告されている。ヒドロキシクロロキン(hydroxychloroquine)の使用は中止することができ、そして、例えば、TWEAK遮断薬で、例えば、これらの副作用の1つ以上が検出された時点で、置き換えることができる。
【0109】
d.経口ペニシラミンには、金と類似する利点がある場合がある。使用の中止が必要となるような副作用は、金よりも多く見られ、そしてこれには、骨髄抑制、タンパク尿、ネフローゼ、他の深刻な毒性作用(例えば、重症筋無力症、天疱瘡、グッドパスチャー症候群、多発性筋炎、狼瘡様症候群)、発疹、および不快な味覚が含まれる。経口ペニシラミンは、使用を中止することができ、そして、例えば、TWEAK遮断薬で、例えば、これらの副作用の1つ以上が検出された時点で、置き換えることができる。
【0110】
e.ステロイドは、非常に有効な短期間の抗炎症薬である。しかし、RAについてのそれらの臨床的な利点は、多くの場合は時間と共に低下する。ステロイドは、関節破壊の進行を妨げることはないと予想される。さらに、深刻なリバウンドが、多くの場合には、活動性疾患におけるコルチコステロイドの使用の中止後に起こる。したがって、TWEAK遮断薬を、使用の中止の前に、中止の間に、または完全な中止後に投与することができる。TWEAK遮断薬の使用の中止またはその使用のきっかけとなり得る他の副作用としては、消化性潰瘍、高血圧、処置されていない感染、真性糖尿病、および緑内障が挙げられる。
【0111】
f.免疫抑制剤は、重症の活動性RAの管理において使用することができる。しかし、重篤な副作用が起こる可能性があり、これには、肝疾患、肺炎、骨髄抑制、およびアザチオプリンの長期にわたる使用後の悪性腫瘍が含まれる。免疫抑制剤の使用の中止には、TWEAK遮断薬を、例えば、副作用が検出された時点で、投与することが含まれ得る。
【0112】
あるいは、TWEAK遮断薬は、RAについての別の処置(例えば、上記の処置の1つ)が投与されている被験体に投与することができる。処置とTWEAK遮断薬の組み合わせを使用して、さらなる治療上の利点を得ることができ、そして、状況によっては、他の処置の投与量を減少させることができる。結果として、副作用および他の問題が軽減させることができる。
【0113】
本明細書中に記載される方法(例えば、TWEAK遮断薬での単剤療法または併用療法(例えば、TWEAK遮断薬とTNF−α遮断薬を用いる併用療法))を、RAの1つ以上の重篤な合併症を有している被験体を処置するために使用することができる。このような合併症としては、関節崩壊、消化管出血、心不全、心膜炎、胸膜炎、肺疾患、貧血、血小板数の減少または増加、眼疾患、頚(首)椎の不安定、神経症、および脈管炎が挙げられる。
【0114】
(他の疾患)
本明細書中に記載される方法はまた、患者の他の炎症性疾患、免疫疾患、または自己免疫疾患(例えば、TNF−α遮断薬の投与によって悪化することのない疾患)を処置するために使用することもできる。処置することができる疾患の例としては、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクロ−ン病を含む)、乾癬、または炎症性筋炎が挙げられる。炎症性疾患のなお他の例としては、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、成人呼吸窮迫症候群/閉塞性細気管支炎、ヴェ−ゲナ−肉芽腫症、脈管炎、悪液質、口内炎、特発性肺線維症、皮膚筋炎または多発性筋炎、非感染性強膜炎、肺の関与を伴う慢性サルコイド−シス症候群、骨髄異形成症候群/過度の芽細胞を伴う難治性貧血、潰瘍性大腸炎、中度から重症の慢性閉塞性肺疾患、および巨細胞性大動脈炎が挙げられる。
【0115】
これらの疾患の1つのリスクがある、これらの疾患の1つと診断された、またはこれらの疾患の1つに罹患している被験体には、全体的な治療的効果を提供するための量で、そしてそのような時間の間、TWEAK遮断薬を投与することができる。TWEAK遮断薬は、TNF−α遮断薬と組み合わせて、またはTNF−α遮断薬を提供することなく(例えば、その使用を中止して)投与することができる。併用療法の場合には、投与される量および時間は、例えば、高い治療効果、または相乗的な治療効果をもたらす量および時間であり得る。さらに、TWEAK遮断薬(TNF−α遮断薬と一緒に、またはTNF−α遮断薬を伴わない)の投与は、一次(例えば、一次治療)として、または二次治療として(例えば、先におこなわれた治療(すなわち、TWEAK遮断薬との併用療法以外の治療法)に対して不適切な反応を有している被験体について)使用することができる。
【0116】
(薬学的組成物)
TWEAK遮断薬(例えば、抗体、または可溶性TWEAK−Rタンパク質(例えば、TWEAK−R−Fc))は、例えば、本明細書中に記載される疾患(例えば、関節リウマチまたは本明細書中に記載される他の疾患のような、炎症性疾患)を処置するために被験体に投与される、薬学的組成物として処方することができる。TNF−α遮断薬は、同じ組成物中に、または別の組成物としてのいずれかで、同様に処方することができる。
【0117】
代表的に、薬学的組成物には、薬学的に許容される担体が含まれる。本明細書中で使用される場合は、「薬学的に許容される担体」には、任意の、およびあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などが含まれ、これらは生理学的に適合性である。組成物には、薬学的に許容される塩(例えば、酸付加塩または塩基付加塩(例えば、Berge,S.M.,et al.,(1977)J.Pharm.Sci.66:1−19を参照のこと))が含まれ得る。
【0118】
薬学的処方物は、十分に確立されている分野であり、例えば、Gennaro(編),Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第20版,Lippincott,Williams & Wilkins(2000)(ISBN:0683306472);Ansel et al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,第7版,Lippincott Williams & Wilkins Publishers(1999)(ISBN:0683305727);
およびKibbe(編),Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association,第3版(2000)(ISBN:091733096X)にさらに詳細に記載されている。
【0119】
1つの実施形態においては、TWEAK遮断薬(例えば、抗体またはTWEAK−R−Fc)および/またはTNF−α遮断薬は賦形剤(例えば、塩化ナトリウム、第二リン酸ナトリウム7水和物、リン酸二水素ナトリウム)、および安定剤と共に処方される。これは、例えば、適切な濃度で緩衝化溶液の中に提供され得、そして2〜8℃で保存することができる。
【0120】
薬学的組成物は様々な形態であり得る。これらには、例えば、液体、半固体、および固体の投与量形態(例えば、液体溶液(例えば、注射することができる溶液および注入することができる溶液)、分散液または懸濁液、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム、および坐剤)が含まれる。好ましい形態は、意図される投与の態様および治療用途に応じて様々であり得る。本明細書中に記載される薬剤についての典型的な組成物は、注射することができる溶液または注入することができる溶液の形態である。
【0121】
このような組成物は、非経口の形式(例えば、静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射、または筋肉内注射)によって投与することができる。表現「非経口投与」および「非経口的に投与される」は、本明細書中で使用される場合は、腸内投与および局所投与以外の投与の形式を意味し、通常は注射による投与の形式を意味し、これには静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、髄腔内、硬膜外、ならびに、胸骨内への注射および注入が含まれるが、これらに限定はされない。
【0122】
組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または、高濃度での安定な保存に適している他の秩序立てられた構造として処方することができる。滅菌の注射することができる溶液を、上記の成分の1つまたは組み合わせとともに適切な溶媒の中に本明細書中に記載される薬剤を必要な量配合すること、その後、必要に応じて、濾過滅菌することによって、調製することができる。一般的には、分散液は、基礎となる分散媒体および上記の成分のうち必要な他の成分を含む、滅菌の担体の中に本明細書中に記載される薬剤を配合することによって、調製される。滅菌の注射することができる溶液の調製用の滅菌の粉末の場合に、好ましい調製方法は、減圧乾燥および凍結乾燥であり、これによって、本明細書中に記載される薬剤と任意のさらなる所望される成分の粉末が、それらの予め滅菌濾過された溶液から得られる。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用によって、分散液の場合には必要な粒子の大きさの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。注射することができる組成物の持続的な吸収は、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチン)を組成物中に含めることによって得ることができる。
【0123】
特定の実施形態においては、TWEAK遮断薬および/またはTNF−α遮断薬は、化合物を迅速な放出から保護するであろう担体とともに、例えば、徐放処方物(インプラント、およびマイクロカプセル化された送達システムが含まれる)として調製される場合がある。生体分解性の生体適合性ポリマー(例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸)を使用することができる。このような処方物の調製のための多くの方法は特許が取られているか、または一般的に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson編,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照のこ
と。
【0124】
TWEAK遮断薬(例えば、抗体または可溶性TWEAK−Rタンパク質)は、例えば、循環の中での(例えば、血液、血清、または他の組織中での)その安定性および/または保持を(例えば、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、5倍、10倍、または50倍)改善する部分を用いて、修飾することができる。修飾された遮断薬は、それが炎症の部位(例えば、関節)に到達することができるかどうかを評価するために評価することができる。
【0125】
例えば、TWEAK遮断薬(例えば、抗体または可溶性TWEAK−Rタンパク質)は、ポリマー(例えば、実質的に非抗原性であるポリマー(例えば、ポリアルキレンオキサイドまたはポリエチレンオキサイド))と会合させることができる(例えば、それらに結合させることができる)。適切なポリマーは、重量が大幅に異なるであろう。約200ダルトンから35,000ダルトン(または、約1,000から約15,000、および2,000から約12,500)の範囲の分子数量平均重量を有しているポリマーを使用することができる。
【0126】
例えば、TWEAK遮断薬またはTNF−α遮断薬は、水溶性ポリマー(例えば、親水性ポリビニルポリマー(例えば、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドン))に結合させることができる。このようなポリマーの限定的ではないリストには、ポリアルキレンオキサイドホモポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらのコポリマー、およびそれらのブロックコポリマー(ブロックコポリマーの水溶性が維持される限り)が含まれる。さらなる有用なポリマーとしては、ポリオキシアルキレン、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、およびポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックコポリマー;ポリメタクリレート;カルボマー;および分岐したまたは未分岐の多糖類が挙げられる。
【0127】
TWEAK遮断薬(例えば、抗体または可溶性TWEAK−Rタンパク質)が、第2の薬剤(例えば、TNF−α遮断薬または本明細書中に記載される他の薬剤)と組み合わせて使用される場合は、2つの薬剤は別々に、または一緒に処方することができる。例えば、それぞれの薬学的組成物を、例えば、投与の直前に混合することができ、そして一緒に投与することができるか、または、別々に、例えば、同時に、または異なるタイミングで投与することもできる。
【0128】
本明細書中に記載される他の治療薬もまた、薬学的組成物として、例えば、標準的な方法または本明細書中に記載される方法によって、提供することができる。
【0129】
(投与)
TWEAK遮断薬(例えば、抗体または可溶性TWEAK−Rタンパク質)およびTNF−α遮断薬は、被験体(例えば、ヒト被験体)に対して、様々な方法によって投与することができる。多くの用途については、投与経路は以下の1つである:静脈内注射または注入(IV)、皮下注射(SC)、腹腔内注射(IP)、または筋肉内注射。関節内への送達を使用することもまた可能である。いくつかの場合には、投与は、炎症部位(例えば、関節または他の炎症を起こしている部位)に対して直接行うことができる。遮断薬は、固定用量として、またはmg/kgの用量で投与することができる。
【0130】
用量はまた、TWEAK遮断薬に対する抗体の生産を減少させるため、または回避するように選択することができる。
【0131】
遮断薬の投与経路および/または態様はまた、(例えば、トモグラフィー画像解析法、神経学的試験、および特定の疾患に関係する標準的なパラメーター(例えば、関節リウマチを評価するための基準)を使用して、例えば、被験体をモニターすることによって)個々の症例に合わせることもできる。
【0132】
投与レジュメは、所望される反応(例えば、治療反応または組み合わせによる治療効果)を提供するように調節される。一般的には、TWEAK遮断薬(例えば、抗体)(および必要に応じて、第2の薬剤、例えば、TNF−α遮断薬)の用量の任意の組み合わせ(別々に処方されたもの、または一緒に処方されたもののいずれか)を、生体利用される量の薬剤を被験体に提供するために、使用することができる。例えば、0.1〜100mg/kg、0.5〜100mg/kg、1mg/kg〜100mg/kg、0.5〜20mg/kg、または1〜10mg/kgの範囲の用量を投与することができる。他の用量もまた使用することができる。
【0133】
投与量単位形態、または「固定用量」は、本明細書中で記載される場合は、処置される被験体についての単位投与量として適している物理的に分離した単位を意味する。個々の単位には、必要とされる薬学的担体と一緒に、および必要に応じて他の薬剤と一緒に、所望される治療効果を生じるように計算された、予め決定された量の活性のある化合物が含まれる。1回の投与量が投与される場合も、また、複数回の投与量が投与される場合もある。あるいは、または加えて、遮断薬は、持続注入によって投与される場合もある。
【0134】
TWEAK遮断薬は、例えば、1日に1回または2回、または1週間に1回から4回、または好ましくは、1週間に1回、2週間に1回(biweekly)、または1ヶ月に1回で、例えば、1週間から10週間にわたって、好ましくは、2週間から8週間にわたって、より好ましくは、3週間から7週間にわたって、そしてなおより好ましくは、約4週間、5週間、もしくは6週間にわたって投与することができる。当業者には、特定の要因が、被験体を効果的に処置するために必要な投与量およびタイミングに影響を与える場合があり、これには、疾患または障害の重篤度、処方物、送達経路、これまでに行われた処置、全体的な健康状態、および/または被験体の年齢、ならびに存在している他の疾患が含まれるが、これらに限定されないことは明らかであろう。さらに、治療有効量の化合物での被験体の処置には1回の処置が含まれ得るか、または好ましくは、これには、一連の処置が含まれ得る。動物モデルもまた、有用な用量(例えば、初回量またはレジュメ)を決定するために使用することができる。
【0135】
被験体に炎症性疾患または本明細書中に記載される他の疾患を発症するリスクがある場合には、遮断薬を、疾患の完全な発症の前に(例えば、予防措置として)投与することができる。このような予防的処置の期間は、遮断薬の1回の投与である場合も、また、処置が継続的に行われる(例えば、複数回の投与)である場合もある。例えば、疾患のリスクがある被験体、または疾患の素因を有している被験体は、疾患が発症することまたは劇症化することを防ぐために、遮断薬で数日間、数週間、数ヶ月間、またはさらには数年間処置される場合もある。
【0136】
薬学的組成物には、「治療有効量」の本明細書中に記載される薬剤が含まれ得る。このような有効量は、投与される薬剤の効果、または1つ以上の薬剤が使用される場合には、薬剤の組み合わせによる効果に基づいて決定することができる。薬剤の治療有効量はまた、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、および個体において所望される反応を誘発する(例えば、少なくとも1つの疾患のパラメーターを緩和する、または疾患の少なくとも1つの症状を緩和する)化合物の能力のような要因によっても様々であり得る。治療有効量は、治療的に有効な効果が組成物の任意の毒性効果または有害な影響を上回る量でもある。
【0137】
(治療用のデバイスおよびキット)
TWEAK遮断薬(例えば、抗体または可溶性TEAK−R)が含まれている薬学的組成物は、医学用デバイスを用いて投与することができる。デバイスは、携帯性、室温での保存、および緊急の状況で(例えば、訓練を受けていない被験体が、またはその場で救急隊員が)それを使用することができる、医療設備および他の医学的装置に移すような使用の容易さのような特徴を有するように設計することができる。デバイスとしては、例えば、TWEAK遮断薬を含む薬学的調製物を保存するための1つ以上のハウジングが含まれ得、そして、遮断薬の1つ以上の単位用量を送達するように設定することができる。デバイスは、第2の薬剤(例えば、TNF−α遮断薬)を、TWEAK遮断薬をも含む1つの薬学的組成物として、または2つの別の薬学的組成物としてのいずれかで投与するように、さらに設定することができる。
【0138】
例えば、薬学的組成物は、米国特許第5,399,163号;同第5,383,851号;同第5,312,335号;同第5,064,413号;同第4,941,880号;同第4,790,824号;または同第4,596,556号に開示されているデバイスのような、針のない皮下注射器具を用いて投与することができる。周知のインプラントおよびモジュールの例としては以下が挙げられる:米国特許第4,487,603号、ここでは、制御された速度で薬剤を分散させるための、埋め込み型のマイクロ注入ポンプが開示されている;米国特許第4,486,194号、ここでは、皮膚を介して薬剤を投与するための治療用デバイスが開示されている;米国特許第4,447,223号、ここでは、正確な注入速度で医薬品を送達するための医学用注入ポンプが開示されている;米国特許第4,447,224号、ここでは、持続的な薬物の送達のための流速を変化させることができる埋め込み型の注入装置が開示されている;米国特許第4,439,196号、ここでは、複数のチャンバー区画を有している浸透圧による薬物送達システムが開示されている;および米国特許第4,475,196号、ここでは、浸透圧による薬物送達システムが開示されている。多くの他のデバイス、インプラント、送達システム、およびモジュールもまた公知である。
【0139】
TWEAK遮断薬(例えば、抗体または可溶性TWEAK−Rタンパク質)は、キットの中で提供され得る。1つの実施形態においては、キットには、(a)TWEAK遮断薬が含まれている組成物を含む容器と、必要に応じて(b)情報が記載されている物質が含まれる。情報が記載されている物質は、記述、教本、製造、あるいは本明細書中に記載される方法および/または治療的利点のための薬剤の使用に関する他の物質であり得る。
【0140】
1つの実施形態においては、キットにはまた、炎症性疾患を処置するための第2の薬剤(例えば、TNF−α遮断薬)も含まれる。例えば、キットには、TWEAK遮断薬が含まれている組成物を含む第1の容器と、第2の薬剤が含まれている第2の容器が含まれる。
【0141】
キットの情報が記載されている物質は、その形態に限定はされない。1つの実施形態においては、情報が記載されている物質には、化合物の生産、化合物の分子量、濃度、期限日、バッチまたは製造場所についての情報などが含まれ得る。1つの実施形態においては、情報が記載されている物質は、炎症性疾患を有している被験体もしくは炎症性疾患のリスクがある被験体、または本明細書中に記載される他の疾患を有している被験体もしくは他の疾患のリスクがある被験体を処置するために、例えば、適切な用量、投与形態、または投与態様(例えば、本明細書中に記載される投与の用量、投与形態、または態様)で、TWEAK遮断薬(例えば、抗体または可溶性TWEAK−Rタンパク質)および/またはTNF−α遮断薬を投与する方法に関する。情報は、様々な形式で提供することができ、これには、印刷されたテキスト、コンピューターで読み取ることができる物質、ビデオ
による記録、または音声記録、または実質的な物質に対する結びつきもしくはそれへの連絡を提供する情報を提供する情報が含まれる。
【0142】
遮断薬に加えて、キットの中の組成物には、他の成分(例えば、溶媒または緩衝液、安定剤、あるいは保存剤)が含まれ得る。遮断薬は、任意の形態(例えば、液体、乾燥させられた形体または凍結乾燥させられた形態、好ましくは、実質的に純粋および/または滅菌)で提供され得る。薬剤が液体の溶液中に提供される場合は、液体溶液は好ましくは水溶液である。薬剤が乾燥させられた形態として提供される場合には、通常は、適切な溶媒の添加によって再構成が行われる。溶媒(例えば、滅菌水または緩衝液)が、必要に応じてキットの中に提供され得る。
【0143】
キットには、薬剤が含まれている組成物(単数または複数)用の1つ以上の容器が含まれ得る。いくつかの実施形態においては、キットには、組成物と情報が記載されている物質用の別々の容器、仕切り、または区画が含まれる。例えば、組成物は、ボトル、バイアル、または注射器の中に含まれ得、そして情報が記載されている物質は、プラスチック製のスリーブまたはパケットの中に含まれ得る。他の実施形態においては、キットの別のエレメントが、1つの分けられていない容器の中に含まれる。例えば、組成物がボトル、バイアル、または注射器の中に含まれ、それには、ラベルの形態で情報が記載されている物質が貼り付けられている。いくつかの実施形態においては、キットには、複数の個別の容器(例えば、パック)が含まれ、それぞれに薬剤の1つ以上の投与形態(例えば、本明細書中に記載される投与形態)が含まれている。容器には、単位投与量の組み合わせ(例えば、TWEAK遮断薬と第2の遮断薬の両方が(例えば、所望される比で)含まれている単位)が含まれ得る。例えば、キットには複数の注射器、アンプル、ホイルパケット、ブリスターパック、または医学的デバイスが含まれ、例えば、それぞれに1つの組み合わせられた単位用量が含まれている。キットの容器は、気密性であり、防水性であり得(例えば、水分または水蒸気中で変化しにくい)、そして/または遮光性であり得る。
【0144】
キットには、必要に応じて、組成物の投与に適しているデバイス(例えば、注射器、または他の適切な送達デバイス)が含まれる。デバイスには、1つまたは両方の薬剤を予め充填して提供することができ、また、空で、しかし充填に適した状態で提供することもできる。
【0145】
(核酸およびタンパク質の分析)
TWEAKまたはTWEAK−Rタンパク質および核酸、ならびに本明細書中に記載される他の生体マーカーについてのタンパク質および核酸(表1に列挙されたものが含まれる)を検出するための多数の方法が当業者に利用可能であり、これには、タンパク質の検出のための抗体をベースとする方法(例えば、ウェスタンブロットまたはELISA)、および核酸の検出のためのハイブリダイゼーションをベースとする方法(例えば、PCR、またはノーザンブロット)が含まれる。
【0146】
アレイは、試料(例えば、被験体に由来する試料)を特性決定するための特に有用な分子ツールである。例えば、複数の遺伝子についての捕捉プローブ(TWEAKおよび/または他の生体マーカーについてのプローブ、あるいは、複数のタンパク質についてのプローブが含まれる)を有しているアレイが、本明細書中に記載されている方法において使用され得る。TWEAK(または本明細書中に提供される他の生体マーカー)核酸および/またはタンパク質の発現の変化を使用して、試料(例えば、被験体に由来する試料)を評価する(例えば、本明細書中に記載される疾患を評価する)ことができる。
【0147】
アレイは、基体上に多くのアドレス(場所を確認できる部位)を有し得る。特性決定されたアレイを、様々な形式で配置することができ、その限定ではない例が以下に記載され
る。基体は、不透明であるか、半透明であるか、または透明であり得る。アドレスは、一次元で(例えば、直線的なアレイ);二次元で(例えば、平面アレイ);または三次元で(例えば、三次元アレイ)で、基体上に分布させられ得る。固体基体は、任意の便利な形状または形態であり得、例えば、四角、三角、卵型、または円形であり得る。
【0148】
アレイは、様々な方法(例えば、フォトリソグラフィー法(例えば、米国特許第5,143,854号;同第5,510,270号;および同第5,527,681号を参照のこと)、メカニカル方式(例えば、米国特許第5,384,261号に記載されている流れで方向付けられた方法(directed−flow method)、ピンをベースとする方法(例えば、米国特許第5,288,514に記載されているもの)、およびビーズをベースとする技術(例えば、PCT US/93/04145に記載されているもの))によって組み立てることができる。
【0149】
捕捉プローブは、一本鎖の核酸、二本鎖の核酸(例えば、これは、ハイブリダイゼーションの前またはハイブリダイゼーションの間に変性させられる)、または一本鎖の領域と二本鎖の領域を有している核酸であり得る。好ましくは、捕捉プローブは一本鎖である。捕捉プローブは、様々な基準によって選択することができ、好ましくは、最適なパラメーターを用いてコンピュータープログラムによって設計される。捕捉プローブは、遺伝子の配列リッチ(例えば、非ホモポリマー)の領域にハイブリダイズするように選択され得る。捕捉プローブのTは、相補性領域および長さの良識的な選択によって最適化され得る。理想的には、アレイ上の全ての捕捉プローブのTは類似しており、例えば、互いに、20℃、10℃、5℃、3℃、または2℃の範囲内である。
【0150】
単離された核酸は、好ましくは、mRNAであり、これは、日常的に行われている方法(例えば、ゲノムDNAを除去するためのDNaseでの処理、およびオリゴdTが結合させられている固体基体へのハイブリダイゼーションが含まれる)によって単離することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.に記載されている方法を参照のこと)。基体は洗浄され、そしてmRNAが溶出させられる。
【0151】
単離されたmRNAは逆転写させることができ、必要に応じて、例えば、rtPCRによって(例えば、米国特許第4,683,202号に記載されているように)増幅させることができる。核酸は、例えば、PCRによる増幅産物(米国特許第4,683,196号および同第4,683,202号);ローリングサークル型増幅(Rolling Circle Amplification;「RCA」)による増幅産物(米国特許第5,714,320号)、等温RNA増幅による増幅産物(isothermal RNA
amplification)またはNASBAによる増幅産物(米国特許第5,130,238号;同第5,409,818号;および同第5,554,517号)、ならびに、鎖置換増幅による増幅産物(米国特許第5,455,166号)であり得る。核酸は、例えば、標識されたヌクレオチドの取り込みによって、増幅の間に標識することができる。好ましい標識の例としては、蛍光標識(例えば、赤色蛍光色素Cy5(Amersham)または緑色蛍光色素Cy3(Amersham))および化学発光標識(例えば、米国特許第4,277,437号に記載されている標識)が挙げられる。あるいは、核酸は、ビオチンで標識することができ、そして、標識されたストレプトアビジン(例えば、ストレプトアビジン−フィコエリスリン(Molecular Probes))とのハイブリダイゼーションの後で検出することができる。
【0152】
標識された核酸は、アレイに接触させることができる。加えて、対照核酸または参照核酸を同じアレイに接触させることができる。対照核酸または参照核酸は、試料核酸とは異なる標識(例えば、異なる最大発光を有している標識)で標識することができる。標識さ
れた核酸は、ハイブリダイゼーション条件下でアレイに接触させることができる。アレイは洗浄することができ、その後、アレイの個々のアドレスでの蛍光を検出するために画像化することができる。
【0153】
TWEAKまたは他の生体マーカーの発現レベルは、そのポリペプチドに特異的な抗体を使用して決定することができる(例えば、ウェスタンブロットまたはELISAアッセイを使用して)。さらに、複数のタンパク質(TWEAKおよび本明細書中に提供される例示的な生体マーカーが含まれる)の発現レベルは、ポリペプチドのそれぞれについての抗体捕捉プローブを有しているポリペプチドアレイを使用して同時に、迅速に決定することができる。ポリペプチドに特異的な抗体は、本明細書中に記載される方法によって作成することができる(「抗体の作成」を参照のこと)。TWEAKおよび本明細書中に提供される例示的な生体マーカーの発現レベルは、被験体の中で(例えば、インビボでの画像化)測定することができ、また、被験体に由来する生物学的試料(例えば、血液、血清、血漿、または滑液)の中で測定することもできる。
【0154】
低密度(96ウェル形式)タンパク質アレイが開発されており、ここでは、タンパク質がニトロセルロース膜の上にスポットされる(Ge(2000)Nucleic Acids Res.28,e3,I−VII)。抗体のスクローニングのために使用される高密度タンパク質アレイ(222×222mmの中に100,000試料)は、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)上にタンパク質をスポットすることによって形成された(Lueking et al.(1999)Anal.Biochem.270:103−111)。例えば、Mendoza et al.(1999).Biotechniques 27:778−788;MacBeath and Schreiber(2000)Science 289:1760−1763、およびDe Wildt et al.(2000)Nature Biotech.18:989−994もまた参照のこと。これらの当該分野で公知の方法および他の方法を、試料中のポリペプチドの量を検出するための抗体のアレイを作成するために使用することができる。試料は、蛍光標識に結合させられたストレプトアビジンでのその後の検出のために標識すること(例えば、ビオチニル化すること)ができる。その後、アレイを、個々のアドレスでの結合を測定するためにスキャンすることができる。
【0155】
本発明の核酸およびポリペプチドのアレイは多種多様な用途に使用することができる。例えば、アレイは、患者の試料を分析するために使用することができる。試料は、以前に得られたデータ(例えば、既知の臨床標本または他の患者の試料)と比較される。さらに、アレイは、細胞培養物試料を特性決定するために、例えば、パラメーターを変化させた後(例えば、細胞培養物を抗原、トランスジーン、または試験化合物に暴露した後)の細胞の状態を決定するために、使用することができる。
【0156】
発現データは、データベース(例えば、SQLデータベース(例えば、OracleまたはSybaseデータベース環境)のような関連するデータベース)に保存することができる。データベースには複数の表が含まれ得る。例えば、原発現データが1つの表に保存され得る。ここでは、それぞれの列がアッセイされた遺伝子(例えば、アドレスまたはアレイ)に対応し、それぞれの行が試料に対応する。別の表には、識別名と試料の情報(例えば、使用したアレイのバッチ数、日付、および他の品質管理情報)が保存され得る。
【0157】
アレイ上での遺伝子発現の分析によって得られた発現プロフィールは、Golub et al.,((1999)Science 286:531)に記載されている様々な状態の試料および/または細胞を比較するために使用することができる。1つの実施形態においては、TWEAKをコードする遺伝子および/または本明細書中に提供される例示的な生体マーカーをコードする遺伝子の発現(例えば、mRNAの発現またはタンパク質
の発現)情報が、例えば、参照値(例えば、参照値)の比較によって評価される。参照値は、対照(例えば、参照被験体)から得ることができる。参照値はまた、例えば被験体のコホート(例えば、年齢と性別が適合している被験体、例えば、正常な被験体または関節リウマチもしくは本明細書中に記載される他の疾患を有する被験体)についての参照値を提供するための、統計学的分析によって得ることもできる。特定の参照に対する(例えば、リスクがある(risk−associated)コホートについての参照に対する)、または正常なコホートに対する統計学的類似性は、被験体(例えば、本明細書中に記載される疾患であると診断されていない被験体)の評価(例えば、炎症性疾患のリスクの指標)を提供するために使用することができる。
【0158】
処置に適している被験体は、例えば、TWEAKおよび/または他の生体マーカーの発現ならびに/あるいは活性について評価することもできる。被験体は、TWEAKおよび/または他の生体マーカーの発現ならびに/あるいは活性が参照(例えば、参照値(例えば、正常に関係している参照値))と比較して評価される場合には、処置(例えば、TWEAK遮断薬での処置)に適していると特定することができる。
【0159】
本明細書中に記載される薬剤が投与されるか、または他の処置がおこなわれている被験体は、TWEAKおよび/または本明細書中に記載される他の生体マーカーの発現ならびに/あるいは活性について、記載されるように評価することができる。被験体は、複数回(例えば、治療の経過の間の複数の時点で、例えば、治療レジュメの間に)評価することができる。被験体の処置は、被験体が治療に対してどのように反応するかに応じて修正することができる。例えば、TWEAKの発現または活性の低下、あるいはTWEAKによって刺激される遺伝子の発現または活性の低下が、反応性の指標であり得る。
【0160】
薬剤によって媒介される特定の効果は、統計学的に有意である(例えば、P値<0.05または0.02)の差を示し得る(例えば、未処置の被験体、対照被験体、または他の参照と比較して)。統計学的有意性は、任意の当該分野で公知の方法によって決定することができる。例示的な統計学的試験としては、Student T検定、Mann Whitney Uノンパラメトリック試験、およびWilcoxonノンパラメトリック統計学的試験が挙げられる。いくつかの統計学的に有意な関係は、0.05未満または0.02未満のP値を有している。
【0161】
(遺伝的材料を評価する方法)
遺伝的情報を提供するために遺伝的材料を評価する方法は多数存在している。これらの方法は、TWEAKをコードする遺伝子、または本明細書中に記載される生体マーカーをコードする遺伝子が含まれている遺伝子座を評価するために使用することができる。これらの方法は、1つ以上のヌクレオチド(例えば、遺伝子のコード領域または非コード領域(例えば、調節領域の中)(例えば、プロモーター、非翻訳領域またはイントロンをコードする領域など))を評価するために使用することができる。
【0162】
核酸試料は、生物物理学的技術(例えば、ハイブリダイゼーション、電気泳動など)、配列決定、酵素をベースとする技術、およびそれらの組み合わせを使用して分析することができる。例えば、試料核酸の核酸マイクロアレイへのハイブリダイゼーションを使用して、mRNA集団の中の複数の配列を評価すること、そして遺伝子の多形性を評価することができる。他のハイブリダイゼーションをベースとする技術としては、配列特異的プライマーの結合(例えば、PCRまたはLCR);DNA(例えば、ゲノムDNA)のサザン分析;RNA(例えば、mRNA)のノーザン分析;蛍光プローブをベースとする技術(例えば、Beaudet et al.,(2001)Genome Res.11(4)600−8を参照のこと);および対立遺伝子特異的増幅が挙げられる。酵素による技術としては、制限酵素消化;配列決定、および一塩基伸張(SBE)が挙げられる。こ
れらおよび他の技術は、当業者に周知である。
【0163】
電気泳動技術としては、キャピラリー電気泳動、および一本鎖立体構造多形(SSCP)検出が挙げられる(例えば、Myers et al.,(1985)Nature 313:495−8およびGanguly(2002)Hum Mutat.19(4)334−42を参照のこと)。他の生物物理学的方法としては、変性高圧液体クロマトグラフィー(DHPLC)が挙げられる。
【0164】
1つの実施形態においては、選択的なPCR増幅に依存する対立遺伝子特異的増幅技術が、遺伝的情報を得るために使用される場合がある。特異的な増幅のためのプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドは、分子の中心に目的の変異を有している場合があり(その結果、増幅はディファレンシャルなハイブリダイゼーションに依存する)(Gibbs et al.,(1989)Nucl.Acids Res.17:2437−2448)、また、一方のプライマーの3’末端に目的の変異を有している場合もある(この場合は、適切な条件下では、ミスマッチは、ポリメラーゼによる伸張を防止または減少させることができる)(Prossner(1993)Tibtech 11:238)。加えて、切断をベースとする検出を行うために、変異の領域の中に制限部位を導入することができる(Gasparini et al.,(1992)Mol.Cell Probes 6:1)。別の実施形態においては、増幅は、増幅用のTaqリガーゼを使用して行うことができる(Barany(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:189)。このような場合には、連結は、5’配列の3’末端が完全に適合している場合にのみ起こり、これによって、増幅が存在しているか存在していないかを調べることによって、特異的部位での既知の変異の存在を検出することが可能となるであろう。
【0165】
配列を検出するための酵素による方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応のような増幅をベースとする方法(PCR;Saiki,et al.,(1985)Science 231:1350−1354)およびリガーゼ連鎖反応(LCR;Wu.et al.,(1989)Genomics 4:560−569;Barringer et al.,(1990),Gene 1989:117−122;F.Barany(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1988:189−193);核酸を増幅するためにRNAポリメラーゼによるRNA合成を利用する転写をベースとする方法(米国特許第6,066,457号;同第6,132,997号;および同第5,716,785号;Sarkar et al.,(1989)Science 244:331−34;Stofler et al.,(1988)Science 239:491);NASBA(米国特許第5,130,238号;同第5,409,818号;および同第5,554,517号);ローリングサークル型増幅(RCA;米国特許第5,854,033号および同第6,143,495号)、ならびに鎖置換増幅(SDA;米国特許第5,455,166号および同第5,624,825号)が挙げられ得る。増幅方法は、他の技術と組み合わせて使用することができる。
【0166】
他の酵素による技術としては、ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼおよびそのバリエーション)を使用する配列決定(例えば、一塩基伸張技術)が挙げられる。例えば、米国特許第6,294,336号;同第6,013,431号;および同第5,952,174号を参照のこと。
【0167】
蛍光をベースとする検出もまた、核酸の多形性を検出するために使用することができる。例えば、様々なターミネーターddNTPを、様々な蛍光色素で標識することができる。プライマーを、多形の近くまたはすぐ近くに隣接してアニーリングさせることができ、多形部位のヌクレオチドを、取り込まれている蛍光色素のタイプ(例えば、「色」)によ
って検出することができる。
【0168】
マイクロアレイに対するハイブリダイゼーションもまた、多形(SNPが含まれる)を検出するために使用することができる。例えば、様々なオリゴヌクレオチドのセット(オリゴヌクレオチドの様々な位置に多形性ヌクレオチドを有している)を核酸のアレイ上に配置することができる。位置と他の対立遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションの関数としてのハイブリダイゼーションの程度を使用して、特定の多形が存在しているかどうかを決定することができる。例えば、米国特許第6,066,454号を参照のこと。
【0169】
1つの態様においては、ハイブリダイゼーションプローブには、二本鎖の形成を脱安定化させ、そしてアッセイに敏感にさせる1つ以上のさらなるミスマッチが含まれ得る。ミスマッチは、問題の位置にすぐ隣接している場合も、また問題の位置から10、7、5、4、3、または2ヌクレオチド以内に存在している場合もある。ハイブリダイゼーションプローブは、特定のT(例えば、45〜60℃、55〜65℃、または60〜75℃)を有するように選択することができる。複数のアッセイにおいては、Tは、互いに、5℃、3℃、または2℃以内となるように選択することができる。
【0170】
例えば、増幅と配列決定、または増幅、クローニングと配列決定による、特定の遺伝子座についての核酸の直接の配列決定もまた可能である。高スループットの自動(例えば、キャピラリーベースまたはマイクロチップベースの)配列決定装置を使用することができる。なお他の実施形態においては、目的のタンパク質の配列はその遺伝子配列を推察するために分析される。タンパク質配列を分析する方法としては、タンパク質配列決定、質量スペクトル分析、配列/エピトープ特異的免疫グロブリン、およびプロテアーゼによる消化が挙げられる。
【0171】
上記の方法の任意の組み合わせもまた使用することができる。上記の方法は、任意の遺伝子座を評価するために、例えば、個体の特定のグループによる遺伝的情報を分析するための方法において、または本明細書中に記載されている疾患(例えば、関節リウマチ)に関係している多形(例えば、TWEAKまたは本明細書中に記載される別の生体マーカーをコードする遺伝子の中のもの)を分析するための方法において、使用することができる。
【実施例】
【0172】
(実施例1:例示的な配列:)
ヒトTWEAKタンパク質の例示的な配列は以下である:
【0173】
【化1】

ヒトFn14タンパク質の例示的な配列は以下である:
【0174】
【化2】

(実施例2:TWEAKおよびTNF−αによって相乗的に活性化される遺伝子)
マイクロアレイを、ヒトの滑膜細胞の中でのその発現がTWEAKおよびTNF−αによって誘導される遺伝子を同定するために分析した。以下は、TWEAKおよびTNF−αによって相乗的に活性化される遺伝子の例である。
【0175】
【表1−1】

【0176】
【表1−2】

【0177】
【表1−3】

なお他の遺伝子が、(i)TNF−αが存在しない条件下でのTWEAK、および(ii)TWEAKが存在しない条件下でのTNF−αのいずれによっても、活性化される。
【0178】
(実施例3:平均の関節炎指数によって測定したmCIA中のTWEAKおよびTNFの遮断の組み合わせの効果)
マウスのコラーゲンによって誘導される関節炎(mCIA)モデルは、関節リウマチについての一般的に使用されているモデルである(例えば、Stuart et al.,J.Clin.Invest.69:673−683(1982)を参照のこと)。mCIAモデルを、関節炎の発症に対する抗TWEAK処置および抗TNF−α処置の併用の効果を研究するために使用した。関節炎はコラーゲン免疫化(CII/CFA:コラーゲンIIと完全なフロイトのアジュバント)によってマウスにおいて誘導した。抗TWEAKモノクローナル抗体(mu抗TWEAK mAb+hu IgG1);可溶性TNF−α受容体(TNFr−hu Fc+mu IgG2a);抗TWEAKモノクローナル抗体と可溶性TNF−α受容体の組み合わせ(mu抗TWEAK mAb+TNFr−hu
Fc);またはPBSもしくはアイソタイプが適合しているネガティブ対照を、コラーゲン免疫化の20日後、23日後、27日後、30日後、および34日後に投与した。それぞれの処置グループには10匹のマウスを含めた。それぞれの抗体は、10mg/kgの用量で投与した。関節炎を、平均の関節炎指数を使用して評価した(例えば、Li et al.,Arthritis Res.Ther.6:R273−R281(2004)を参照のこと)。4本の肢を、スコアリングシステムを使用してそれぞれのマウスについて測定した:0=正常な肢;1=個々の指の腫れ;2=足首または手首の関節の中度の腫れおよび赤み;3=少なくとも2つの関節の腫れおよび赤み;ならびに、4=肢全体の腫れ。4つの肢のスコアの合計(y軸)を、コラーゲン免疫化後の日数(x軸)に対してプロットした。
【0179】
図1は、この実験の結果を示している。抗TWEAK薬と抗TNF−α薬の組み合わせで処置したマウスは、いずれかの単独の遮断薬、または対照で処置したマウスよりも低い平均の関節炎指数スコアを有していた。また、「罹患率%」としてグラフの右側に示したように、組み合わせで処置したマウスは、いずれかの薬剤のみ(抗TNF−αでの処置については67%;抗TWEAK mAbでの処置については80%)、または対照(PBSでの処置については80%;アイソタイプが適合している抗体での処置については90%)で処置したマウスよりも、全体的に低い関節炎の罹患率(60%)を有していた。
【0180】
(実施例4:平均の中足骨の高さによって測定したmCIAにおけるTWEAKとTNFの遮断の組み合わせの効果)
mCIAモデルを、平均の中足骨の高さ/肢の厚みによって測定した関節炎の進行に対する抗TWEAK治療と抗TNF−α治療の組み合わせの効果を研究するために使用した(例えば、Campo et al.,Arthritis Res.Ther.5:R
122−R131(2003)を参照のこと)。マウスを、抗TWEAKモノクローナル抗体(mu抗TWEAK mAb+hu IgG1);可溶性TNF−α受容体(TNFRp55:hu Fu+mu IgG2a);抗TWEAKモノクローナル抗体と可溶性TNF−α受容体の組み合わせ(mu抗TWEAK mAb+TNFRp55:hu Fc);またはPBSもしくはアイソタイプが適合しているネガティブ対照で、コラーゲン免疫化の20日後、23日後、27日後、30日後、および34日後に処置した。それぞれの処置グループには10匹のマウスを含めた。それぞれの抗体は10mg/kgの用量で投与した。中足骨の高さを、コラーゲン免疫化の38日後に、キャリパーを使用して測定した。処置(x軸)あたりのそれぞれのマウスについての平均の中足骨の高さ(y軸)をプロットした。
【0181】
図2は、この実験の結果を示している。抗TWEAK薬と抗TNF−α薬の組み合わせで処置したマウスは、いずれかの単独の遮断薬、または対照で処置したマウスよりも統計学的に有意に低い平均の中足骨の高さの値を有していた(対照と比較した場合の処置あたりの平均値についてp<0.05)。
【0182】
(実施例5:体重の変化によって測定したmCIAにおけるTWEAKおよびTNFの遮断の組み合わせの効果)
mCIAモデルを、体重の変化の割合(%)によって測定した関節炎の進行に対する抗TWEAK治療と抗TNF−α治療の組み合わせの効果を研究するために使用した(例えば、Campo et al.,Arthritis Res.Ther.5:R122−R131(2003))。マウスを、抗TWEAKモノクローナル抗体(mu抗TWEAK mAb+hu IgG1(TNFRp55:hu Fcについてのアイソタイプが適合している対照));可溶性TNF−α受容体(TNFRp55:hu Fu+mu IgG2a);抗TWEAKモノクローナル抗体と可溶性TNF−α受容体の組み合わせ(mu抗TWEAK mAb+TNFRp55:hu Fc);またはPBSもしくはアイソタイプが適合しているネガティブ対照で、コラーゲン免疫化の20日後、23日後、27日後、30日後、および34日後に処置した。それぞれの処置グループには10匹のマウスを含めた。それぞれの抗体は10mg/kgの用量で投与した。マウスを、コラーゲン免疫化後に様々な時点で体重を測定し、そして体重の変化の割合(%)を、処置あたりとして計算した。それぞれの処置についての体重の変化の割合(%)(y軸)を、コラーゲン免疫化による関節炎の誘導後の日数(x軸)に対してプロットした。
【0183】
図3は、この実験の結果を示している。抗TWEAK薬と抗TNF−α薬の組み合わせで処置したマウスは、いずれかの単独の遮断薬、または対照で処置したマウスよりも統計学的に有意に小さい体重の変化の割合(%)を有していた(対照に対して、または、TNFRp55:hu Fc+mu IgG2aで処置したマウスに対して比較した場合の処置あたりの値についてp<0.01)。
【0184】
(実施例6:TWEAKによって誘導される遺伝子)
本発明者らは、6時間および24時間の両方の時点で、細胞に対してTWEAKの用量(5ng/mlおよび50ng/ml)を加え、そして、いくつかの遺伝子がTWEAKだけによって調節されることを観察した。これらの遺伝子は、5ng/mlの濃度では、TNF−αの添加による影響は受けなかった。このような遺伝子の例は以下である:
表2
1.NIK/分裂促進因子によって活性化されるプロテインキナーゼキナーゼキナーゼ14(MAP3K14)
2.ヒト(Homo sapiens)cDNA FLJ11796 fis,clone HEMBA1006158,ヒト(Homo sapiens)の転写因子フォークヘッド様7(forkhead−like 7)(FKHL7)遺伝子に高度に類似して
いる
3.グルコサミン−6−スルファターゼに類似している、ヒト(Homo sapiens)血清グルココルチコイドによって調節されるキナーゼ(SGK),mRNA
4.ヒト(Homo sapiens)REV3(酵母ホモログ)様,DNAポリメラーゼゼータ(REV3L)の触媒サブユニット,mRNA。
5.ADAM 10/a ディスインテグリン(disintegrin)およびメタロプロテイナーゼドメイン10(metalloproteinase domain 10)
6.核因子(赤血球由来2)様1
7.ヒト(Homo sapiens)SerArg関連核マトリックスタンパク質(多くのプロリン101様)(SRM160)、mRNA。
8.ヒト(Homo sapiens)ダブルコルチンおよびCaMキナーゼ様1(DCAMKL1)、mRNA。
9.ヒト(Homo sapiens)Cdc42エフェクタータンパク質4;Rho GTPases 4(CEP4)の結合因子、mRNA。
10.ヒト(Homo sapiens)mRNA;cDNA DKFZp762L106(クローン DKFZp762L106由来);部分的なcds。
【0185】
加えて、正常なヒトの滑膜細胞においては、CBR3およびIL8は、TWEAKでの処置(5ng/ml)のみによって誘導される。
【0186】
(実施例7:TWEAKを用いた実験)
図4は、TWEAK遮断モノクローナルでの処置によって、関節炎のマウスCIAモデルとラットCIAモデルの両方において関節炎の進行を弱めることができることを示している。左側のパネルは、抗TWEAK抗体(マウス抗TWEAK mAb)での処置によって、CII/CFAで関節炎を誘導したマウスCIAモデルにおいて、対照抗体(mIgG2a)での処置と比較すると、平均の関節炎指数において低い値が生じたことを示している。右側のパネルは、抗TWEAK抗体(抗TWEAK mAb)での処置が、コラーゲンIIとフロイトの不完全なアジュバント(CII/IFA)で関節炎を誘導したラットCIAモデルにおいて、対照抗体(Ha 4/8)またはPBSでの処置と比較すると、平均の関節炎指数において低い値を生じたことを示している。
【0187】
図5は、TWEAK遮断モノクローナル抗体を、コラーゲン免疫化による関節炎の誘導と同時(投与スキーム1)または誘導後(投与スキーム2)に投与することができ、そして、なおも関節炎のマウスCIAモデルとラットCIAモデルの両方において関節炎の進行を弱める効果があることを示している。左側のパネルは、マウスCIAモデルにおいて、対照抗体(mIgG2a)の投与と比較して平均の関節炎指数において低い値を得るために、抗TWEAK抗体を関節炎の誘導前または誘導後に投与できることを示している。右側のパネルは、抗TWEAK抗体を、ラットのCIAモデルにおいて、対照抗体(Ha
4/8)またはPBSの投与と比較して、平均の関節炎指数において低い値を得るために、関節炎の誘導前または誘導後に投与できることを示している。
【0188】
図6は、抗TWEAKモノクローナル抗体(ABG.11)での処置によって、臨床的な肢スコアおよび全体的な炎症スコアによって測定した場合に、ラットCIAモデルにおいて炎症が軽減されることを示している;また、処置によって、骨吸収のパラメーターによって測定した場合に軟骨および骨量の減少が少なくなり、トルイジンブルーの取り込み量が少なくなり、そして、関節軟骨の減少も少なくなる。同様の結果がマウスCIAモデルにおいても見られた。
【0189】
図7は、関節炎の誘導後の様々な時点(23日目(D)、28日目、30日目、および
38日目)での、マウスCIAモデルにおける血清TWEAKのレベルを示している。TWEAKレベルは、対照マウス(DBA/1)におけるレベルと比較すると高かった。
【0190】
図8は、マウスCIAモデルにおける関節炎の誘導後の様々な時点(23日目、30日目、および40日目)での、MMP9、リンホタクチン、IP−10、およびIL−6のレベルを示している。抗TWEAKモノクローナル抗体(P5G9およびP5G9(完全、投与スキーム1とも呼ばれる)での処置によって、対照(mIgG2a)で処置したマウスにおけるレベル、または関節炎を発症するように免疫化しなかったマウス(正常なDBA)におけるレベルと比較して、これらのタンパク質のレベルの増大を同程度に妨げた。同様の結果が、ラットCIAモデルにおいても見られた。
【0191】
抗TWEAK抗体でのTWEAKの阻害が適応的免疫反応には影響を与えないことを明らかにするための実験を行った。コラーゲン免疫化後、抗TWEAKモノクローナル抗体で処置したマウスは、対照のアイソタイプが適合している抗体(mIgG2a;データは示さない)で処置したマウスと同程度にまで、コラーゲン特異的B細胞およびT細胞応答を上昇させることができた。
【0192】
関節において見られる初代ヒト細胞型:線維芽細胞様滑膜細胞、関節軟骨細胞、および骨芽細胞に対するFn14(TWEAK受容体)のレベルを測定するための実験を行った。抗Fn14抗体(ITEM−4)または対照抗体(抗mFc)を使用した蛍光活性化細胞選別実験は、Fn14レベルが、3種類の細胞型の全てにおいてバックグラウンドを上回るほどに上昇し、軟骨細胞よりも、滑膜細胞および骨芽細胞の中でレベルがより高かったことを明らかにした。
【0193】
TWEAKおよびTNF−αが、それぞれ、軟骨細胞によるマトリックスメタロプロテアーゼの生産を刺激することを明らかにするための実験を行った。MMP−1、MMP−2、MMP−3、およびMMP−9レベルは全て、TWEAK(100ng/ml)またはTNF−α(50ng/ml)での処置後に上昇した。
【0194】
TWEAKおよびTNF−αのアゴニスト性の相乗効果を明らかにするための実験を行った。ヒト線維芽細胞様滑膜細胞を、様々な濃度の、TWEAKのみ、TNF−αのみ、またはTWEAKとTNF−αの組み合わせで処理し、それぞれの処置を行ったRANTESの生産のレベルをELISAによって測定した。TWEAKとTNF−αはいずれもRANTESの生産を誘導した。しかし、TWEAKおよびTNF−αを一緒に投与した場合には、RANTESの生産について相乗的なレベルが得られた。したがって、TWEAKおよびTNF−αは、特定の炎症遺伝子の発現を誘導するように相乗的に作用することができる。
【0195】
(実施例8:正常な滑膜細胞中でTWEAKおよびTNF−αの併用療法によって誘導される遺伝子)
健常なドナーに由来する滑膜細胞をインビトロで培養し、5ng/mlのTWEAKと0.5ng/mlのTNF−αで処理した。表3には、その発現がTWEAKおよびTNF−αでの処理によって統計学的に有意な程度に影響を受ける遺伝子を列挙する。遺伝子を、それらの遺伝子のオントロジーカテゴリーによって分類した。
【0196】
【表3】

変化を、超幾何学的平均に基づいて統計学的に有意なGoカテゴリーとして同定した。
【0197】
(実施例9:RA滑膜細胞中でTWEAKとTNF−αの併用療法によって誘導される遺伝子)
関節リウマチの患者ドナーに由来する滑膜細胞をインビトロで培養し、5ng/mlのTWEAKと0.5ng/mlのTNF−αで処置した。表4には、その発現がTWEAKおよびTNF−αでの処理によって統計学的に有意な程度に影響を受ける遺伝子を列挙する。遺伝子を、それらの遺伝子のオントロジーカテゴリーによって分類した。
【0198】
【表4】

変化を、超幾何学的平均に基づいて統計学的に有意なGoカテゴリーとして同定した。
【0199】
(実施例10)
P2D10は例示的なマウスの抗TWEAK抗体である。マウスP2D10重鎖可変ドメインの配列(配列番号3)(CDRには下線を付けた)は以下である:
【0200】
【化3】

これはマウスのサブグループ3D重鎖可変ドメインである。
【0201】
マウスのP2D10軽鎖可変ドメインの配列(配列番号4)(CDRには下線を付けた)は以下である:
【0202】
【化4】

これはマウスのサブグループ2κ軽鎖である。
【0203】
これは成熟huP2D10 H1 IgG1重鎖の例示的なアミノ酸配列(配列番号5)である:
【0204】
【化5】

これは成熟huP2D10 L1軽鎖の例示的なアミノ酸配列(配列番号6)である:
【0205】
【化6】

これは成熟huP2D10 L2軽鎖の例示的なアミノ酸配列(配列番号7)である:
【0206】
【化7】

本発明の多数の実施形態が記載されている。それにもかかわらず、様々な改変を本発明の精神および範囲から逸脱することなく行うことができることが理解されるであろう。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲の中にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−18790(P2013−18790A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−231580(P2012−231580)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【分割の表示】特願2009−114031(P2009−114031)の分割
【原出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】