説明

炎症関連疾患治療剤用2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体、その製造方法及びそれを有効成分として含有するSPC受容体活性により誘発される炎症関連疾患の治療剤、外傷後傷跡形成抑制及び傷治癒促進用皮膚外用剤、腫瘍内部の血管新生阻害剤

【課題】SPC受容体活性により誘発される炎症関連疾患治療剤の提供。
【解決手段】下記一般式1で示される、2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体または薬剤学的に許容可能なその塩。該誘導体または薬剤学的に許容可能なその塩はアトピー性皮膚炎、その他の疾患において現れる炎症、掻癢症または皮膚感染症に有効な炎症関連疾患治療剤として有用である。


(式中、R1、R2、R3及びR4は、C1〜C10の直鎖または側鎖アルキル基あるいは環状アルキル基等を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炎症関連疾患治療剤用2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体、その製造方法及びそれを有効成分として含有するSPC受容体活性により誘発される炎症関連疾患に有用なその用途に係り、さらに詳しくは、SPC受容体抑制活性を示す新規化合物として、2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体、及びその製造方法を提供し、それを有効成分として含有するSPC受容体活性により誘発される炎症関連疾患に有用なその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴシルホスホコリン(sphingosylphosphorylcholine、以下、「SPC」)は、構造的に類似するスフィンゴシン−1−フォスフェイト(sphingosine-1-phosphate、S1P)、リゾホスファチジン酸(lysophosphatidic acid、LPA)などと共にリゾリン脂質(lysophospholipid)系の物質として類分され、これらの物質は細胞の増殖、移動、炎症反応などの免疫機能に重要な信号伝達中間体として作用する。
【0003】
SPCは、細胞膜の構成成分であるスフィンゴミエリン(sphingomyelin)からスフィンゴミエリン脱アシル化酵素(sphingomyelin deacylase)の作用により生成される(例えば、下記の非特許文献1参照)。また、SPCは、様々な細胞の成長及び増殖(例えば、下記の非特許文献2参照)、血管新生(例えば、下記の非特許文献3参照)、及び細胞死滅(例えば、下記の非特許文献4参照)などに深く関与することが知られている。
【0004】
SPC関連疾患の代表例はアトピー性皮膚炎である。アトピー性皮膚炎は、角質層の脂質含量の減少により抗菌力が減少され、障壁機能が弱化して外部刺激物質に対する防御力が低下するため、炎症反応が起こり、これによる痒み症が現れることになる。また、痒み症は2次感染を誘発するため、過免疫反応に悪循環することになる。
【0005】
特に、SPCは、正常人の場合にはほとんど存在しないか、あるいは、極めて低濃度にて感知されるが、アトピー性皮膚炎患者の表皮においては数千倍以上増加することが知られている(例えば、下記の非特許文献1及び5参照)。これは、アトピー性皮膚炎患者の角質層における細胞間脂質欠乏減少が重要な原因となる(例えば、下記の非特許文献6参照)。また、SPCは、アトピー疾患において特徴的に発生する非正常的角質化現象にも重要な役割を果たす(例えば、下記の非特許文献7参照)。これらの研究結果は、SPCがアトピー性皮膚炎の代表的な症状の一つである皮膚障壁機能障害の直接的な原因であるだけではなく、2次的に現れる炎症反応の原因になりうることを示唆する。これを基にSPCの生成を調節する限り、皮膚炎症疾患の新たな治療剤として使用可能である。
【0006】
一方、アトピー性皮膚炎の症状のうち、患者に苦痛とライフ質の低下を来たす痒み症については、SPCと構造的に類似するリゾホスファチジン酸(LPA)が痒み症を誘発するという研究結果が発表されている(例えば、下記の非特許文献8参照)。このため、SPCもまた体内において痒み症を誘発する可能性があるということを推察することができ、また、最近、SPCを皮内注射すれば、痒み症を直接的に誘発する可能性があるということが立証されている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0007】
本発明者らによるSPC受容体活性により誘発される炎症関連疾患の治療剤として、新規なチアゾール系誘導体が開示されている(例えば、下記の特許文献2参照)。
【0008】
そこで、本発明者らは、前記チアゾール系誘導体の中で、SPC受容体抑制活性に優れたN−{5−ベンゾイル−2−[4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]チアゾール−4−イル}ピバラミド化合物に基づいて、効率が改善された炎症疾患治療剤として適用可能な新規な化合物を探索した結果、2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体化合物を設計して個体相合成により合成段階を改善し、本発明の2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体化合物をヒト由来真皮細胞及びマウスを用いた動物実験を通じて抗炎症効果を検索した結果、さらに優れた炎症抑制効果を確認することにより、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2006/049451号公報
【特許文献2】大韓民国特許公開第2009−0032372号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Higuchi K,Biochem J.,2000,350,747-756
【非特許文献2】Desai,Biochem.Biophys.Res.Commun.,1991,181,361-366
【非特許文献3】Boguslawski,Biochem.Biophys.Res.Commun.,2000,272,603-609
【非特許文献4】Jeon ES,Biochim Biophys Acta.,2005,1734(1);25-33
【非特許文献5】Reiko Okamoto,Journal of Lipid Research,2003,44,93-102
【非特許文献6】Junko Hara,J.invest.Dermatol.,2000,115,406-413
【非特許文献7】Higuchi,J.Lipid Res.,2001,42,1562-1570
【非特許文献8】Hashimoto,Pharmacology,2004,72,51-56
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、組合せ化学合成技術を用いて製造された、2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体を提供するところにある。
【0012】
本発明の他の目的は、2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体を有効成分として含有するSPC受容体活性により誘発される炎症関連疾患に有用なその用途を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、下記の一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体を提供する。
【化1】

(式中、R1及びR2はそれぞれまたは同一に置換されたC1〜C10の直鎖、側鎖または環状アルキル基、またはヘテロ原子(−NH−、−S−、−O−)またはヘテロアルキル基を含む環状C1〜C10のアルキル基であり、R3はC1〜C10の直鎖または側鎖または環状アルキル基、C1〜C10のアルコキシ基、C2〜C10のアルケニル基、C2〜C10のアルキニル基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、C5〜C10のヘテロアリールアルキル基、フェニル基または置換されたフェニル基を有するカルボニル基であり、R4は1または2以上のC1〜C10の直鎖、側鎖または環状アルキル基、C1〜C10のアリール基、C1〜C10のヘテロアリール基、C1〜C10のアリールアルキル基またはC1〜C10のヘテロアリールアルキル基に置換されたアミノ基、またはC1〜C10の 直鎖、側鎖または環状アルキル基、またはフェニル、ヘテロアリールアミド基に置換されたピペラジンを有するアミンを示し、このとき、前記R3及びR4において、置換されたフェニル基は、ハロゲン原子、ニトロ基、C1〜C10のアルキル基、C1〜C10のアルコキシ基及びC1〜C10のハロアルキル基よりなる群から選択されたいずれか一種の置換体が1〜4個置換されたフェニル基を示す。)
【0014】
より好ましくは、前記2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体の中で、R1及びR2は、それぞれまたは同一に置換されたC1〜C5の直鎖または側鎖アルキル基またはC5〜C7の環状アルキル基、またはヘテロ原子(−NH−、−S−、−O−)またはヘテロアルキル基を含むC5〜C7の環状アルキル基よりなる群から選択されるいずれか一種であり、R3はC1〜C5の直鎖または側鎖、または環状アルキル基、C2〜C5のアルケニル基、C2〜C5のアルキニル基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、C5〜C10のヘテロアリールアルキル基、フェニル基または置換されたフェニル基を有するカルボニル基であり、R4は1または2以上のC2〜C7の直鎖または側鎖 、または環状アルキル基、C1〜C5のアリール基、C1〜C5のヘテロアリール基、C1〜C5のアリールアルキル基またはC1〜C5のヘテロアリールアルキル基に置換されたアミノ基、またはC1〜C7の直鎖、側鎖または環状アルキル基、またはフェニルまたは置換されたフェニル基、ヘテロアリールアミド基に置換されたピペラジンを有するアミンよりなる群から選択されるいずれか一種であり、このとき、前記R3及びR4において、置換されたフェニル基が、ハロゲン原子、ニトロ基、C1〜C5のアルキル基、C1〜C5のアルコキシ基及びC1〜C5のハロアルキル基よりなる群から選択されたいずれか一種の置換体が1〜4個置換されたフェニル基である。
【0015】
本発明は、組合せ化学合成技術を用いて一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体の製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体または薬剤学的に許容可能なその塩を有効成分として含有してSPC受容体活性により誘発される炎症関連疾患に有用なその用途を提供する。すなわち、一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体または薬剤学的に許容可能なその塩は、SPC受容体活性により誘発される炎症疾患治療剤として有用である。
【0017】
さらに、本発明の一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1、3−チアゾール誘導体または薬剤学的に許容可能なその塩は、外傷後傷跡形成抑制及び傷治癒促進用皮膚外用剤として有用である。
【0018】
また、本発明は、一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体または薬剤学的に許容可能なその塩を有効成分として含有して、SPCによる細胞の走化性移動抑制により実現される腫瘍内部の血管新生阻害剤を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、組合せ化学合成技術を用いて2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体または薬剤学的に許容可能なその塩を提供し、前記誘導体に対してヒト由来の真皮細胞及びマウスを用いた動物実験を通じて抗炎症効果を検索してSPC受容体に対する優れた抑制活性を究明することにより、SPC受容体活性により誘発される炎症関連疾患に有用なその用途を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳述する。
【0021】
本発明は、下記の一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体を提供する。
【化2】

(式中、R1及びR2はそれぞれまたは同一に置換されたC1〜C10の直鎖、側鎖または環状アルキル基、またはヘテロ原子(−NH−、−S−、−O−)またはヘテロアルキル基を含む環状C1〜C10のアルキル基であり、R3はC1〜C10の直鎖または側鎖または環状アルキル基、C1〜C10のアルコキシ基、C2〜C10のアルケニル基、C2〜C10のアルキニル基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、C5〜C10のヘテロアリールアルキル基、フェニル基または置換されたフェニル基を有するカルボニル基であり、R4は1または2以上のC1〜C10の直鎖、側鎖または環状アルキル基、C1〜C10のアリール基、C1〜C10のヘテロアリール基、C1〜C10のアリールアルキル基またはC1〜C10のヘテロアリールアルキル基に置換されたアミノ基、またはC1〜C10の直鎖、側鎖または環状アルキル基、またはフェニル、ヘテロアリールアミド基に置換されたピペラジンを有するアミンを示し、このとき、前記R3及びR4において、置換されたフェニル基はハロゲン原子、ニトロ基、C1〜C10のアルキル基、C1〜C10のアルコキシ基及びC1〜C10のハロアルキル基よりなる群から選択されたいずれか一種の置換体が1〜4個置換されたフェニル基を示す。)
【0022】
より好ましくは、前記2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体の中で、R1及びR2は、それぞれまたは同一に置換されたC1〜C5の直鎖または 側鎖アルキル基またはC5〜C7の環状アルキル基、またはヘテロ原子(−NH−、−S−、−O−)またはヘテロアルキル基を含むC5〜C7の環状アルキル基よりなる群から選択されるいずれか一種であり、R3はC1〜C5の直鎖または側鎖、または環状アルキル基、C2〜C5のアルケニル基、C2〜C5のアルキニル基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、C5〜C10のヘテロアリールアルキル基、フェニル基または置換されたフェニル基を有するカルボニル基であり、R4は1または2以上のC2〜C7の直鎖または側鎖、または環状アルキル基、C1〜C5のアリール基、C1〜C5のヘテロアリール基、C1〜C5のアリールアルキル基またはC1〜C5のヘテロアリールアルキル基に置換されたアミノ基、またはC1〜C7の直鎖、側鎖または環状アルキル基、またはフェニルまたは置換されたフェニル基、ヘテロアリールアミド基に置換されたピペラジンを有するアミンよりなる群から選択されるいずれか一種であり、このとき、前記R3及びR4において、置換されたフェニル基がハロゲン原子、ニトロ基、C1〜C5のアルキル基、C1〜C5のアルコキシ基及びC1〜C5のハロアルキル基よりなる群から選択されたいずれか一種の置換体が1〜4個置換されたフェニル基である。
【0023】
さらに、本発明は、一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体の薬剤学的に許容可能なその塩を提供することができる。本発明における薬剤学的に許容可能な塩は、当該技術分野において通常の方法により製造可能なものであり、例えば、塩酸、臭化水素、硫酸、硫酸水素ナトリウム、リン酸、炭酸などの無機酸との塩またはギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、ゲンチジン酸、フマル酸、ラクトビオン酸、サリチル酸、またはアセチルサリチル酸(アスピリン)などの有機酸と一緒に薬剤学的に許容可能なこれらの酸の塩を形成するか、または、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属イオンと反応してこれらの金属塩を形成するか、または、アンモニウムイオンと反応して他の形態の薬剤学的に許容可能な塩を形成する。
【0024】
本発明の一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体は、下記反応式1によるものであり、個体相平衡合成法を用いた組合せ化学合成技術法により製造される。
【0025】
【化3】

(式中、R1、R2、R3及びR4は明細書における定義の通りであり、▲P▼はポリスチレン−ジビニルベンゼン、メタアクリル酸−ジメチルアクリルアミド及びヒドロキシルメタアクリル酸よりなる群から選択される高分子重合体形態の個体支持体を示す。)
【0026】
さらに詳しくは、本発明の製造方法は、一般式2で表わされるスルファニルリンカーにより連結されたチオイミノカーボネートと2−クロロアセトアミド誘導体を反応させてR1及びR2が導入された、一般式3で表わされる4−アミノ−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾールスルファニルレジンを合成する第1段階と、一般式3で表わされる化合物の4−アミノ基に塩化カルボン酸と重合反応して、R3が導入された一般式4で表わされる4−N−アシル−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾールスルファニルレジンを合成する第2段階と、一般式4で表わされる化合物のスルファニルリンカーレジン部分を酸化反応してスルホニルリンカーレジンにより連結される、一般式5で表わされる4−N−アシル−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾールスルホニルレジンを合成する第3段階と、一般式5で表わされる化合物を1次または2次アミンとの反応により脱離及び添加反応して、一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体を合成する第4段階と、を含む。
【0027】
本発明による反応段階、溶媒系の組成及び反応条件の選択範囲を具体的に説明すれば、下記の通りである。
【0028】
本発明において、溶媒としては、ワングレジン(Wang resin)やメリフィールドレジン(Merrifield resin)の膨潤効果に優れた有機溶媒を使用する。
【0029】
前記第1段階の反応においては、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、メタノールまたはエタノールを溶媒として使用し、好ましくは、エタノールを使用する。この反応において使用されるR1及びR2が導入されたアセトアミド置換体と塩基はそれぞれ3当量程度使用することがよく、好ましくは、2当量内外の範囲で使用することが経済性に富む。このとき、塩基としては、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン(Et3N)、メトキシナトリウム(NaOMe)、エトキシナトリウム(NaOEt)などが代表的に使用可能であり、好ましくは、エトキシナトリウムを使用する。また、このときに使用されるR1及びR2置換体は、上記における定義を含むアルキルハライド類を使用することができる。
【0030】
第2段階の反応においては、アセトナイトライル(MeCN)またはジクロロメタン(CH2Cl2)を溶媒として使用する。前記反応においては、塩基とR3置換体をそれぞれ3当量程度使用することがよく、好ましくは、2当量内外の範囲で使用することが経済性に富む。このとき、塩基としては、ピリジン、トリエチルアミンなどが代表的に使用可能である。このときに使用されるR3置換体は、上記における定義を含む塩化カルボン酸類を使用することができる。
【0031】
第3段階の反応においては、ジクロロメタンを溶媒として使用する。この反応においては、メタクロロ過安息香酸または過酸化水素は4当量程度使用することがよく、好ましくは、2.5当量内外の範囲で使用することが経済性に富む。
【0032】
第4段階の反応においては、ダイオキサンまたはジクロロメタン溶液、R4置換体及び塩基を用いて脱離反応と添加反応を行うことにより、本発明が目的とする前記一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体を得る。この反応においては、塩基とR4置換体をそれぞれ2.5当量程度使用することがよく、好ましくは、1.5当量内外の範囲で使用することが経済性に富む。このとき、塩基としては、ピリジン、トリエチルアミンなどが代表的に使用可能である。このときに使用されるR4置換体は、前記における定義を含む1次または2次アミンを使用することができる。
【0033】
また、本発明による前記一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体の生成有無を確認するために、反応後の最終段階において前記一般式5で表わされる化合物から脱離された目的化合物をカラムクロマトグラフィで分離精製した後、NMR及びマススペクトルにより構造を分析及び確認した。反応中間体である一般式3、4、及び5で表わされるレジンはATR−FTIRを測定することにより、反応の進行度合いを確認した。
【0034】
本発明は、前記一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体または薬剤学的に許容可能なその塩を有効成分として含有するSPC受容体活性により誘発される炎症疾患治療剤を提供する。
【0035】
本発明の2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体に対する細胞分裂増殖反応を観察した結果、SPCにより誘導される選択的な細胞増殖反応に拮抗的(antagonistic)作用を確認することにより[表2]、SPCにより過度な細胞分裂増殖反応により誘導されるアトピー性皮膚炎などの皮膚病に有効である。
【0036】
また、過度な細胞分裂増殖は外傷を負ったときに傷が治癒される過程において起こる炎症反応により傷跡が形成されるが、本発明の2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体が細胞分裂増殖を抑制するため、不要な傷跡の形成を予防するための皮膚外用剤の用途として使用可能である。同時に、外傷後傷治癒を促進するために使用可能である。
【0037】
本発明の2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体化合物は、TPAにより誘発された炎症反応実験の結果、耳浮腫及びMPO活性が両方とも抑制され、通常抗炎症薬物として汎用されるヒドロコルチゾンに対等な効果を示す[表4]。
【0038】
このため、本発明の2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体または薬剤学的に許容可能なその塩は、アトピー性皮膚炎、その他の疾患において現れる炎症、掻癢症、皮膚感染症などに有効であり、外傷後傷跡形成抑制及び傷治癒促進用皮膚外用剤として有効に使用可能である。
【0039】
そこで、さらに好ましくは、本発明の一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体の中で、N−{5−(モルフォリン−4−カルボニル)−2−[2−(ピペリジン−1−イル)エチルアミノ]チアゾール−4−イル}ピバラミド(実施例1−12)、N−[2−(ベンジルアミノ)−5−(ピペリジン−1−カルボニル)チアゾール−4−イル]ピバラミド(実施例1−29)またはN−{2−[4−(2−メトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−5−(ピペリジン−1−カルボニル)チアゾール−4−イル}ピバラミド(実施例1−31)から選択されるいずれか一種を有効成分として含有する場合、SPC受容体活性により誘発される炎症疾患治療剤として有用である。
【0040】
さらに、本発明は、一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体または薬剤学的に許容可能なその塩を有効成分として含有する細胞の走化性移動媒介症状調節剤としての用途を提供する。
【0041】
前記細胞の走化性移動は、生体内において特定のサイトカインやケモカインなどの物質に引かれて内皮細胞または免疫細胞が移動する現象であり、免疫細胞が炎症部位に移動したり、内皮細胞移動による血管新生が起こる。
【0042】
そこで、本発明の一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体は、SPCにより誘発される細胞の走化性移動反応に対して測定した結果、生体内において内皮細胞または免疫細胞の移動反応を強力に抑制した結果が得られる[表3]。
【0043】
このため、本発明の一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体を有効成分として含有する細胞の走化性移動媒介症状調節剤は、内皮細胞移動による血管新生が抑制され、外部から侵入する抗原に対する免疫反応増幅過程を調節することができる。
【0044】
上述した本発明の細胞の走化性移動媒介症状調節剤において、細胞の走化性移動媒介症状の具体例としては、アトピー性皮膚炎、その他の疾患において現れる炎症、掻癢症及び皮膚感染症が挙げられる。
【0045】
そこで、本発明は、一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体または薬剤学的に許容可能なその塩を有効成分として含有して、SPCによる細胞の走化性移動抑制による腫瘍内部の血管新生阻害剤を提供する。
【0046】
特に、本発明のSPCによる細胞の走化性移動抑制による腫瘍内部の血管新生阻害剤は、前記一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体の中で、N−{2−[4−(2−メトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−5−(ピペリジン−1−カルボニル)チアゾール−4−イル}ピバラミド(実施例1−31)を有効成分として含有するものである。
【0047】
本発明の薬剤組成物は、2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体またはその薬剤学的に許容可能なこれらの塩に、通常の無毒性薬剤学的に許容可能な担体、補強剤及び賦形剤などを添加して薬剤学的分野における通常の製剤、例えば、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、液剤、懸濁剤などの経口投与用製剤または非経口投与用製剤に製剤化することができる。
【0048】
また、本発明による化合物の人体への投与容量は、患者の年齢、体重、性別、投与形態、健康状態及び疾患の度合いによって異なり、体重が70kgの成人患者を基準としたとき、一般的に0.01〜1,000mg/日であり、医者または薬師の判断に基づいて所定の時間間隔にて1日1回〜数回にて分割投与することもできる。
【0049】
(実施例)
以下、本発明を実施例により詳述する。
【0050】
下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるものではない。
【0051】
<実施例1>2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体(一般式1−1)の合成
段階1:カリウムシアノカルボイミドジチアネートレジン(2)の4−アミノ−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール化反応

一般式2で表わされるシアノカルボイミドジチアネート形態のレジン(2.00g、1.82mmol)をエタノール(20ml)に入れ、常温下において10分間攪拌した後、2−クロロ−1−モルフォリノエタノン(589mg、3.60mmol)とエトキシナトリウム(NaOEt;277mg、4.06mmol)を加えた後、80℃において12時間振とうして反応した。反応終了後、反応混合物をろ過し、H2O、DMF、MeOH、DCMにより繰り返し洗浄して一般式3−1で表わされる黄色個体である4−アミノ−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾールレジンを得た。
【0052】
段階2:4−アミノ−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾールレジン(3−1)のN−ピバロイル化反応

一般式3−1で表わされる4−アミノ−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾールレジン(1.00g、0.90mmol)をアセトニトリル(MeCN;10ml)に入れて10分間攪拌した後、ピバロイルクロリド((CH33CCOCl;0.94ml、7.59mmol)とピリジン(0.62ml、7.50mmol)を加えた後、常温下において6時間振とうして反応した。反応終了後、反応混合物をろ過し、H2O、DMF、MeOH、DCMにより繰り返し洗浄して一般式4−1で表わされる褐色個体である4−N−ピバロイル−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾールレジンを得た。
【0053】
段階3:4−N−ピバロイル−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾールレジン(4−1)の酸化反応

一般式4−1で表わされるスルファニルリンカーにより連結された4−N−ピバロイル−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾールレジン(1.00g、0.89mmol)をジクロロメタン(10ml)溶液に入れ、常温下において10分間攪拌し、次いで、メタ−クロロ安息香酸(m−CPBA;500mg、2.23mmol)を常温下において加えた後、常温下において12時間振とうして反応した。反応終了後、反応混合物をろ過し、DMF、MeOH、DCMにより繰り返し洗浄して一般式5−1で表わされる黄色個体である4−N−ピバロイル−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾールスルホニルレジンを得た。
【0054】
段階4:4−N−ピバロイル−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾールスルホニルレジン(5−1)のアミン添加反応及び脱離反応

一般式5−1で表わされる4−N−ピバロイル−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾールスルホニルレジン(200mg、0.17mmol)をジオキサン(5ml)溶液に入れ、常温下において10分間攪拌し、次いで、ピペリジン(64mg、0.31mmol)とトリエチルアミン(0.056ml、0.40mmol)を加えた後、常温下において12時間振とうして反応した。反応終了後、反応混合物をろ過し、ろ過物をジクロロメタンとメチルアルコールにより繰り返し洗浄した後、ろ過液をまとめて減圧濃縮した。濃縮された混合物をヘキサン/エチルアセテート(5/1、v/v)の混合溶媒下においてシリカゲル状のカラムクロマトグラフィにより分離精製して一般式1−1で表わされるオイル(27mg、収率39%;レジン2−1から4段階までの総収率;レジン2−1のローディング容量=0.90mmol/g)を得た。
化合物1−1:1HNMR(500MHz、CDCl3)δ1.31(s、9H)、1.66(s、6H)、3.55(s、4H)、3.68(m、4H)、3.71(m、4H)、11.13(s、1H);m/z([M+1]+)381.
【0055】
<実施例2〜60>2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体の合成
下記の一般式1で表わされる化合物において、R1、R2、R3及びR4を下記表1に従い行った以外は、前記実施例1の方法と同様にして2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体を合成した。また、合成された2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体の分析結果を表1に示す。
【0056】
【化4】

【0057】
【表1】






【0058】
<実験例1>細胞株分裂増殖反応調節
スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)を細胞に処理すると、過度な細胞分裂増殖反応を誘導して、アトピー性皮膚炎などの皮膚病の病理学症状を誘発する恐れがある(非特許文献2)。そこで、前記実施例において製造された化合物に対して、SPCにより誘発される細胞の分裂増殖反応に対する効果を試験した。
【0059】
一次的に、NIH3T3細胞(American Type Culture Collection,Manassas,VA,USA)1×105個(普通、1×104〜106個)を培養プレートに分注して培養した後、24時間かけて牛血清が含まれていない RPMI培地において培養して血清を枯渇(serum starvation)させた。ここに、前記実施例において製造された化合物及び対照化合物として、スフィンゴシン−1−フォスフェイト(S1P)の作用剤であるFTY720を0.001μM、0.01μM、0.1μM及び1μMにて処理して30分間培養した後、SPC(Biomol,Plymouth Meeting,PA,USA)を7μMの濃度にて添加して24時間37℃において培養した。細胞増殖量を細胞分裂時に複製されるDNA筋に挿入される[3H]−チミジン反応法を用いて測定し[Beales IL,Life Sci.,2004,75,83-95]、増殖率(%)を下記の数1により算出して、その結果を表2に示す。
【0060】
【数1】

【0061】
【表2】

【0062】
前記表2から明らかなように、本発明の実施例において製造された化合物は、細胞分裂増殖反応に対してSPCにより誘導される選択的な細胞増殖反応に拮抗的作用を示す。外傷を負ったとき、傷が治癒される過程において起こる炎症反応による過度な細胞分裂増殖が傷跡を形成するため、細胞分裂増殖を抑制する物質は不要な傷跡の形成を予防するための用途に使用可能である。同時に、細胞分裂増殖を増大させる物質は外傷後傷治癒を促進するために使用可能である。
【0063】
特に、実施例1−12、実施例1−29及び実施例1−31は、SPCによる細胞分裂増殖反応を容量依存的に抑制した。特記すべき点は、このような効果がSPCと類似する化学構造を有し、一部の膜受容体を共有するS1P作用剤であるFTY720によってはSPCによる細胞分裂増殖に対する抑制結果が発現されなかったということである。このため、細胞分裂増殖抑制作用は本発明の化合物ならではの構造活性によるものであり、外傷を負ったときに傷が治癒される過程において起こる炎症反応により過度な細胞分熱増殖が起こって傷跡が形成される現象を抑制することができる。
【0064】
<実験例2>SPCにより誘発された走化性細胞移動反応に対する抑制効果
最近、SPCが、血管内皮細胞成長因子(VEGF)と同様に、走化性細胞移動にも重要な役割を果たすという研究結果が報告されている(非特許文献3)。生体内において特定のサイトカインやケモカインなどの物質に引かれて細胞が移動する現象は、免疫細胞の炎症部位への移動や、内皮細胞移動による血管新生などの過程において核心的な段階である。そこで、SPCにより誘発される細胞の走化性移動反応に対して、前記実施例において製造された化合物の効果をボイデンチャンバー(boyden chamber)分析により試験した。
【0065】
先ず、8μm気孔を有する25×80mmポリカーボネート膜(Neuro Probe,Inc.)を0.01%ゼラチン、0.1%酢酸溶液に担持して一晩中コーティングした後、室温において自然乾燥させて準備した。
【0066】
一方、2%牛胎児血清を含む完全EBM−2培地において培養したHUVEC(Human umbilical vein endothelial cell)を4時間かけて牛血清が含まれていないEBM−2培地(Cambrex、カタログナンバーCC−3121)に培養して血清を枯渇させた後、トリプシン/EDTA溶液により収穫した。HUVEC細胞を0.1%牛血清アルブミンが含まれているEBM−2培地に懸濁させた後、シリコンコーティングされたエッペンドルフチューブに分注して、実験薬物としての実施例1−31を0.1、1、10μg/mlの量にて加えて37℃において30分間処理した。ボイデンチャンバーの下側チャンバーの各ウェルに10μMSPCを含むEBM−2培地または未含有EBM−2培地を27μlずつ分注し、ゼラチンコーティングして準備した膜を潤気のある面が下方を向くように載せ、その上にガスケットを載せた後、上側チャンバーを組み付けた。上側チャンバーに薬物処理したHUVEC細胞を5×104(体積56μl)ずつ分注し、37℃のCO2培養器において8時間培養した。膜を分離してディフ・クイック染色薬(Sysmex Corporation)により染色し、脱イオン水で洗浄した後、潤気のある面が下方を向くようにスライドガラスに貼り付けた。膜の上側に付着している細胞をキムワイプ(登録商標)や麺棒により丁寧に拭き取った後、各ウェル当たりに任意に5フィールドずつ写真を撮って(倍率200倍)、細胞数を測定した。反応抑制率は下記の数2により算出し、その結果を表3に示す。
【0067】
【数2】

【0068】
【表3】

【0069】
表3から明らかなように、本発明の実施例1−31の化合物は、SPCによる細胞の走化性移動反応を強力に抑制する。これは、生体内において内皮細胞または免疫細胞の移動を抑制することにより、腫瘍内部の血管新生、外部から侵入した抗原に対する免疫反応増幅などの過程を調節することができるということを示唆する。
【0070】
<実験例3>マウスTPA誘発性耳炎症モデルにおける炎症反応調節
炎症反応の抑制効能を確認するために、テトラデカノイルホルボールアセテート(Tetradecanoyl phorbol acetate、以下、TPA)誘発性炎症モデルを用いて下記の実験を行った。
【0071】
TPA誘発性炎症モデルは、炎症反応の作用機序と抑制物質の効能を試験するために汎用されてきた実験方法である[De Young LMら、Agents and Actions, 1989, 26, 335-341]。TPAは炎症反応を引き起こす物質であり、被実験体の耳に塗布すると、紅斑と浮腫が発生するが、このような炎症反応は白血球の細菌攻撃に必須物質であるMPO(ミエロペルオキシダーゼ)の活性増加により測定可能である。
【0072】
6週齢のICRマウス雄40匹を準備し、アセトンに125μg/ml濃度にて溶かしたTPA溶液(シグマアルドリッチコリア)を左耳に20μlずつ塗布した。TPA塗布1時間後にアセトン、アセトンに溶かした0.3%実施例の化合物、またはアセトンに溶かした0.3%ヒドロコルチゾン(シグマアルドリッチコリア)をTPA塗布部位に20μlずつ塗布し、TPA塗布6時間後に同一部位に20μlずつ再塗布した。TPA塗布後24時間が経過した時点においてマウスを頸椎脱骨法により安楽死させ、左耳を所定の広さで採取して重量及びMPOの活性を測定した。反応抑制率は下記の数3により算出し、その結果を表4に示す。
【0073】
【数3】

【0074】
【表4】

【0075】
表4に示すように、実施例1−12、実施例1−29及び実施例1−31の化合物はTPAにより誘発された炎症反応を耳浮腫及びMPO活性という2種類の尺度の両方において有意に抑制し、その効能強度は抗炎症薬物として汎用されるヒドロコルチゾンに対等であった。前記実験結果は、実施例1−12、実施例1−29及び実施例1−31の化合物の皮膚抗炎症効能が特に炎症を引き起こした耳部位に好中球が侵潤されることを抑制した。
【0076】
<製剤例1>錠剤(加圧方式)の製造
活性成分として、本発明の一般式1で表わされる化合物5.0mgを篩い取った後、ラクトース14.1mg、クロスポビドンUSNF0.8mg及びマグネシウムステアレート0.1mgを混合し、加圧して錠剤を製造した。
【0077】
<製剤例2>錠剤(湿式組立)の製造
活性成分として、本発明の一般式1で表わされる化合物5.0mgを篩い取った後、ラクトース16.0mgと澱粉4.0mgを混ぜた。0.3mgのポリソルベート80を純水に溶かし、この溶液の適量を添加した後、微粒化した。乾燥後に微粒を篩い取った後、コロイダルシリコンジオキシド2.7mg及びマグネシウムステアレート2.0mgと混ぜた。微粒を加圧して錠剤を製造した。
【0078】
<製剤例3>粉末及びカプセル剤の製造
活性成分として、本発明の一般式1で表わされる化合物5.0mgを篩い取った後、ラクトース14.8mg、ポリビニルピロリドン10.0mg、マグネシウムステアレート0.2mgと一緒に混ぜた。混合物を適当な装置を用いて硬いNo.5ゼラチンカプセルに充填した。
【0079】
<製剤例4>注射剤の製造
活性成分として、本発明の一般式1で表わされる化合物100mgを含有させ、その他にも、マンニトール180mg、Na2HPO4・12H2O26mg及び蒸留水2,974mgを含有させて注射剤を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上詳述したように、本発明は、第一に、個体相組合せ化学合成技術を用いて2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体または薬剤学的に許容可能なその塩を提供し、第二に、前記2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体がヒト由来の真皮細胞及びマウスを用いた動物実験を通じて抗炎症効果を検索してSPC受容体に対する優れた抑制活性を究明し、第三に、前記2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体を有効成分として含有するSPC受容体の抑制剤、さらに、前記SPC受容体活性に関連する炎症疾患治療剤としてのその用途を提供することが可能になる。
【0081】
以上、本発明は、記載された具体例について詳細に説明されたが、本発明の技術思想範囲内において種々の変形及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変形及び修正は特許請求の範囲に属することは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式1で表わされることを特徴とする2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1、3−チアゾール誘導体。
【化5】

(式中、R1及びR2はそれぞれまたは同一に置換されたC1〜C10の直鎖または側鎖アルキル基または環状アルキル基、またはヘテロ原子(−NH−、−S−、−O−)またはヘテロアルキル基を含む環状C1〜C10のアルキル基であり、R3はC1〜C10の直鎖または側鎖または環状アルキル基、C1〜C10のアルコキシ基、C2〜C10のアルケニル基、C2〜C10のアルキニル基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、C5〜C10のヘテロアリールアルキル基、フェニル基または置換されたフェニル基を有するカルボニル基であり、R4は1または2以上のC1〜C10の直鎖、側鎖または環状アルキル基、C1〜C10のアリール基、C1〜C10のヘテロアリール基、C1〜C10のアリールアルキル基またはC1〜C10のヘテロアリールアルキル基に置換されたアミノ基、またはC1〜C10の直鎖、側鎖または環状アルキル基、またはフェニル基または置換されたフェニル基またはヘテロアリールアミド基に置換されたピペラジンを有するアミンを示し、このとき、前記R3及びR4において、置換されたフェニル基はハロゲン原子、ニトロ基、C1〜C10のアルキル基、C1〜C10のアルコキシ基及びC1〜C10のハロアルキル基よりなる群から選択されたいずれか一種の置換体が1〜4個置換されたフェニル基を示す。)
【請求項2】
前記一般式1において、R1及びR2はそれぞれまたは同一に置換されたC1〜C5の直鎖または側鎖アルキル基またはC5〜C7の環状アルキル基、またはヘテロ原子(−NH−、−S−、−O−)またはヘテロアルキル基を含むC5〜C7の環状アルキル基よりなる群から選択されるいずれか一種であり、R3はC1〜C5の直鎖または側鎖、または環状アルキル基、C2〜C5のアルケニル基、C2〜C5のアルキニル基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、C5〜C10のヘテロアリールアルキル基、フェニル基または置換されたフェニル基を有するカルボニル基であり、R4は1または2以上のC2〜C7の直鎖または側鎖、または環状アルキル基、C1〜C5のアリール基、C1〜C5のヘテロアリール基、C1〜C5のアリールアルキル基またはC1〜C5のヘテロアリールアルキル基に置換されたアミノ基、またはC1〜C7の直鎖、側鎖または環状アルキル基、またはフェニルまたは置換されたフェニル基、ヘテロアリールアミド基に置換されたピペラジンを有するアミンよりなる群から選択されるいずれか一種であり、このとき、前記R3及びR4において、置換されたフェニル基がハロゲン原子、ニトロ基、C1〜C5のアルキル基、C1〜C5のアルコキシ基及びC1〜C5のハロアルキル基よりなる群から選択されたいずれか一種の置換体が1〜4個置換されたフェニル基であることを特徴とする請求項1に記載の2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体。
【請求項3】
一般式2で表わされるスルファニルリンカーにより連結されたチオイミノカーボネートと2−クロロアセトアミド誘導体を反応させてR1及びR2が導入された、一般式3で表わされる4−アミノ−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾールスルファニルレジンを合成する第1段階と、
一般式3で表わされる化合物の4−アミノ基に塩化カルボン酸と重合反応して、R3が導入された一般式4で表わされる4−N−アシル−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾールスルファニルレジンを合成する第2段階と、
一般式4で表わされる化合物のスルファニルリンカーレジン部分を酸化反応してスルホニルリンカーレジンにより連結される、一般式5で表わされる4−N−アシル−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾールスルホニルレジンを合成する第3段階と、
一般式5で表わされる化合物を1次または2次アミンとの反応により脱離及び添加反応して、一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体を合成する第4段階と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体の製造方法。
【化6】

(式中、R1、R2、R3及びR4は請求項1における定義の通りであり、▲P▼はポリスチレン−ジビニルベンゼン、メタアクリル酸−ジメチルアクリルアミド及びヒドロキシルメタアクリル酸よりなる群から選択される高分子重合体形態の個体支持体を示す。)
【請求項4】
請求項1に記載の一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体または薬剤学的に許容可能なその塩を有効成分として含有することを特徴とするスフィンゴシルホスホコリン(SPC)受容体活性により誘発される炎症関連疾患の治療剤。
【請求項5】
前記有効成分が、一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体の中で、N−{5−(モルフォリン−4−カルボニル)−2−[2−(ピペリジン−1−イル)エチルアミノ]チアゾール−4−イル}ピバラミド、N−[2−(ベンジルアミノ)−5−(ピペリジン−1−カルボニル)チアゾール−4−イル]ピバラミドまたはN−{2−[4−(2−メトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−5−(ピペリジン−1−カルボニル)チアゾール−4−イル}ピバラミドから選択されるいずれか一種であることを特徴とする請求項4に記載の炎症関連疾患の治療剤。
【請求項6】
前記有効成分が、SPC受容体活性により誘発されるアトピー性皮膚炎、掻癢症または皮膚感染症に有用なものであることを特徴とする請求項4に記載の炎症関連疾患の治療剤。
【請求項7】
請求項1に記載の一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体または薬剤学的に許容可能なその塩を有効成分として含有することを特徴とする外傷後傷跡形成抑制及び傷治癒促進用皮膚外用剤。
【請求項8】
請求項1に記載の一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体または薬剤学的に許容可能なその塩を有効成分として含有してSPCによる細胞の走化性移動抑制により実現されることを特徴とする腫瘍内部の血管新生阻害剤。
【請求項9】
前記有効成分が、一般式1で表わされる2,4−二重置換−5−アミノカルボニル−1,3−チアゾール誘導体の中で、N−{2−[4−(2−メトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−5−(ピペリジン−1−カルボニル)チアゾール−4−イル}ピバラミドであることを特徴とする請求項8に記載の腫瘍内部の血管新生阻害剤。

【公開番号】特開2010−132637(P2010−132637A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226702(P2009−226702)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(509271934)コリア リサーチ インスティチュート オブ ケミカル テクノロジー (1)
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】P.O.Box No.9,Daeduk Research Complex,100,Jang−dong,Yusung−gu,Daejun,305−343,The Republic of Korea
【Fターム(参考)】