説明

炭化水素の製造

a)炭化水素供給原料を第1の流れ(12)と第2の流れ(13)に分けること;第1の流れとスチーム(16)とを混合し、第1の流れとスチームとの混合物を、熱交換改質装置の加熱管中に配置されている触媒上に通して一次改質ガス(30)を形成させること;一次改質ガスと第2の炭化水素流れとを含んだ二次改質装置供給流れ(40)を形成させること;二次改質装置供給流れを酸素含有ガス(44)で部分燃焼させ、こうして得られる部分燃焼ガスを二次改質触媒上にて平衡状態にすること;および、こうして得られる二次改質ガス(48)を使用して熱交換改質装置の管を加熱し、これによって部分冷却された改質ガスを得ること;によって炭化水素供給原料(10)をスチーム改質に付す工程;b)部分冷却された改質ガスをスチームの露点未満にさらに冷却して水を凝縮させ、凝縮した水(56)を分離して、脱水された合成ガス(58)を得る工程;c)前記脱水合成ガスからフィッシャー・トロプシュ反応によって炭化水素を合成し、合成された炭化水素の少なくとも一部を分離してテールガス(70)を得る工程;およびd)前記テールガスの少なくとも一部を二次改質装置供給流れ中に混和してから、部分燃焼を行う工程;を含む炭化水素の製造法が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィッシャー・トロプシュ法による炭化水素の製造、およびそのための合成ガスの製造に関する。合成ガスは水素と二酸化炭素を含有し、スチーム改質として知られている方法にて炭化水素供給原料とスチームとの触媒反応によって製造されている。
【背景技術】
【0002】
スチーム改質は広範に行われており、フィッシャー・トロプシュ法のみならず、多くのプロセスのための水素流れと合成ガス(たとえば、アンモニアやメタノール)を製造するのに使用されている。スチーム改質プロセスにおいては、脱硫した炭化水素供給原料(たとえば、メタン、天然ガス、またはナフサ)とスチームとを混合し、適切な担体に担持させた適切な触媒(一般には遷移金属、特にニッケル)上に高温・高圧にて通す。メタンとスチームとが反応して、水素と二酸化炭素が生成する。2つ以上の炭素原子を含有する炭化水素が存在している場合はこれらの炭化水素が全て一酸化炭素と水素に転化され、可逆性のメタン/スチーム改質反応とメタン/スチームシフト反応が起こる。これらの可逆反応が進行する程度は、反応条件(たとえば、温度と圧力)、供給物の組成、および改質触媒の活性に依存する。メタン/スチーム改質反応は高度の吸熱反応であり、したがってメタンから二酸化炭素への転化は高温の場合によく進行する。このため、スチーム改質は通常、供給原料/スチーム混合物を、外部加熱される管中に配置された一次スチーム改質触媒上に、約600℃以上の出口温度にて(一般には650℃〜950℃の範囲の出口温度にて)通すことによって行われる。生成物ガスの組成は、特に、供給原料成分の割合、圧力、および温度に依存する。生成物は通常、メタン、水素、二酸化炭素、スチーム、および供給物中に存在していて、使用条件下において不活性である任意のガス(たとえば窒素)を含有する。フィッシャー・トロプシュ合成等の応用に対しては、水素対一酸化炭素のモル比が約2であって、存在する二酸化炭素の量が少ないことが望ましい。
【0003】
フィッシャー・トロプシュ合成により適した合成ガスを得るために、適切な酸化剤(たとえば、空気または酸素)を使用して一次改質ガスを部分燃焼させることによって、一次改質ガスを二次改質に付すことができる。これにより改質ガスの温度が上昇し、次いでこの改質ガスを二次改質触媒(この場合も、通常は適切な担体に担持させたニッケル)の層に断熱的に通してガス組成物を平衡状態にする。二次改質は3つの目的を果たす。第一に、部分燃焼とその後の断熱改質から生じる温度上昇により大幅な改質がなされ、これにより二次改質ガス中における残留メタンの割合が減少する。第二に、温度の上昇は逆シフト反応に有利となり、したがって一酸化炭素対二酸化炭素の比が増大する。第三に、部分燃焼により、改質ガス中に存在する水素の一部が効果的に消費され、したがって水素対炭素酸化物の比が減少する。これらのファクターが組み合わさって、供給原料としての天然ガスから形成される二次改質ガスは、二次改質工程が省略された場合より、フィッシャー・トロプシュ合成等の応用のための合成ガスとして使用するのにより適したものとなる。さらに、より高いグレードの熱を二次改質ガスから回収することができる。特に、回収した熱を使用して、一次改質装置の触媒含有管を加熱することができる。したがって、改質装置の触媒含有管が二次改質ガスによって加熱される熱交換改質装置において一次改質を行うことができる。このような改質装置の例とこうした改質装置を使用するプロセスが、たとえば、米国特許第4,690,690号および米国特許第4,695,442号に開示されている。
【0004】
WO00/09441は、供給原料/スチーム混合物を、熱交換改質装置の加熱管中に配置された触媒上で一次改質に付し、得られる一次改質ガスを、一次改質ガスを酸素含有ガスで部分燃焼することによって二次改質に付し、次いで得られる部分燃焼ガスを、二次改質触媒上で平衡にし、そして得られる二次改質ガスを使用して熱交換改質装置の管を加熱する、というプロセスを開示している。このプロセスにおいては、炭化水素供給原料が一次改質段階をバイパスしない。二酸化炭素を、炭素含有化合物の合成に使用する前または使用後に二次改質ガスから分離し、一次改質装置供給物に再循環する。WO00/09441に記載の1つの実施態様においては、再循環される二酸化炭素は、フィッシャー・トロプシュ合成プロセスからのテールガスの一部であり、脱硫を行う前に天然ガス供給原料に加えられる。
【0005】
フィッシャー・トロプシュ・テールガスは相当量の一酸化炭素を含有する傾向がある。このテールガスを、熱交換改質装置での一次改質の前に供給原料に加えた場合は、一酸化炭素が発熱性のメタン化反応を受け、その結果、改質を受けるガスの温度が、テールガスが加えられなかった場合より速やかに上昇する。したがって、改質を受けるガスと加熱媒体との間の温度差が減少し、このため所定の改質を果たすには、より大きな熱移動エリア(たとえば、より大きくて及び/又はより長い熱交換管)が必要とされる。
【0006】
我々の同時係属出願であるPCT/GB02/03311において、我々は、フィッシャー・トロプシュ・テールガスを部分燃焼の前に一次改質ガスに加えることによって(すなわち、一次改質の工程と二次改質の工程との間に、テールガスを一次改質ガスに加えることによって)この問題を解消できる、ということを示した。このような付加はさらに、テールガス中に二酸化炭素が存在する場合には、あるいは二酸化炭素が別の供給源から加えられる場合には、一次改質装置においてより低いスチーム比が使用できるようになる、という効果を有する[“スチーム比”とは、スチームのモル数と、供給物中の炭化水素炭素(hydrocarbon carbon)のグラム原子数との比を意味している。したがって、メタン1モル当たり2モルのスチームを含んでいるメタン/スチーム混合物のスチーム比は2である]。このことは、たとえばスチームを発生させる上でより低い運転費をもたらすということで利点を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、低めのスチーム比(たとえば、1.00未満のスチーム比)を使用すると、触媒の露出表面上に炭素が形成されることがある。このような炭素の形成は、触媒を通過した際の圧力降下を大きくするという望ましくない影響を有する。さらに、触媒活性の低下を引き起こすこともある。したがって、炭素の堆積を増大させることなく、従来達成されているより低いスチーム比を使用することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
炭化水素供給原料の経済的な改質を伴って低いオーバーオールスチーム比(overall steam ratio)で運転することは、供給原料を2つの流れに分け、第1の流れとスチームとを混合して混合物を一次改質装置に供給し、そして第2の流れを、二次改質の前に、フィッシャー・トロプシュ・プロセスからのテールガスの少なくとも一部と共に一次改質ガスに供給することによって達成することができる、ということを我々は見出した。したがって、スチーム比は全体的にはより低いけれども、炭素の堆積を避けるには、一次改質工程においてまだ充分に高いと言える。
【0009】
したがって本発明は、
a) i) 炭化水素供給原料を第1と第2の流れに分けること;
ii) 第1の流れとスチームとを混合し、第1の流れとスチームとの混合物を、熱交換改質装置の加熱管中に配置されている触媒上に通して一次改質ガスを形成させること;
iii) 一次改質ガスと第2の炭化水素流れとを含んだ二次改質装置供給流れを形成させること;
iv) 二次改質装置供給流れを酸素含有ガスで部分燃焼させ、こうして得られる部分燃焼ガスを二次改質触媒上にて平衡状態にすること;および
v) こうして得られる二次改質ガスを使用して熱交換改質装置の管を加熱し、これによって部分冷却された改質ガスを得ること;
によって炭化水素供給原料をスチーム改質に付す工程;
b) 部分冷却された改質ガスをスチームの露点未満にさらに冷却して水を凝縮させ、凝縮した水を分離して、脱水された合成ガスを得る工程;
c) 前記脱水合成ガスからフィッシャー・トロプシュ反応によって炭化水素を合成し、合成された炭化水素の少なくとも一部を分離してテールガスを得る工程;および
d) 前記テールガスの少なくとも一部を、二次改質装置供給流れの部分燃焼の前に、二次改質装置供給流れ中に混和する工程;
を含む炭化水素の製造法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明においては、一次改質は熱交換改質装置を使用して行う。熱交換改質装置の1つのタイプにおいては、熱交換ゾーンを通じて一対の管シート間に延びている管中に触媒が配置されている。反応物が上側管シートより上のゾーンに供給され、管を通過して下側管シートより下のゾーンに進む。加熱媒体を2つの管シート間のゾーンに通す。このタイプの熱交換改質装置がGB1578270およびWO97/05947に開示されている。
【0011】
使用することができる他のタイプの熱交換改質装置は、米国特許第4,910,228号に記載の二重管式熱交換改質装置であり、改質装置の管がそれぞれ、閉じた端部を有する外管と該外管内に同心円状に配置された内管とを含み、外管の閉じた端部にて内管と外管との間の環状スペースと連通しており、スチーム改質触媒が前記環状スペースに配置されている。外管の外部表面を二次改質ガスによって加熱する。炭化水素供給原料と二酸化炭素とスチームとの混合物が前記閉じた端部から離れた外管の端部に供給され、したがって混合物が前記環状スペースを通り、スチーム改質を受け、次いで内管を通る。米国特許第4,910,228号に記載の二重管式改質装置の場合と同様に、本発明においても、内管の壁体上に断熱材を設けるのが好ましい。
【0012】
本発明の方法においては、供給原料は、いかなるガス状もしくは低沸点の炭化水素供給原料(たとえば、天然ガスやナフサ)であってもよい。供給原料は、メタン、または実質的な割合(たとえば90容量%を超える)のメタンを含有する天然ガスであるのが好ましい。供給原料がイオウ化合物を含有する場合は、圧縮の前、あるいは好ましくは圧縮の後に(しかしながら供給原料を分割する前に)、供給原料を脱硫(たとえば水素化脱硫)および適切な吸収剤(たとえば酸化亜鉛層)の使用による硫化水素の吸収に付す。供給原料は、一般には10〜100バール絶対圧(特に20〜60バール絶対圧)の範囲の圧力に圧縮する。
【0013】
供給原料を圧縮する前、あるいは好ましくは圧縮した後に、供給原料を2つの流れに分ける。第1の流れとスチームとを混合する(このスチーム導入は、スチームを直接注入することによって、および/または、供給原料と加熱水の流れとを接触させることで供給原料を飽和させることによって果たすことができる)。導入するスチームの量は、0.5〜2(好ましくは1〜2)のオーバーオールスチーム比〔すなわち、供給原料中の炭化水素炭素の1グラム原子当たり0.5〜2(好ましくは1〜2)モルのスチーム〕が得られるような量である。本発明の方法において炭素の堆積を引き起こすことなく使用することができるスチーム比は、一次スチーム改質触媒の選択によって影響を受けることがある。一般には、一次スチーム改質触媒が、ニッケルベース触媒と比較して貴金属ベース触媒であるときは、より低いスチーム比を使用することができる。スチームの量はできるだけ少ないのが好ましい。より低コストでより高効率のプロセスとなるからである。スチーム比は1.5未満であるのが好ましく、1.0未満であるのがさらに好ましい。1.0未満のスチーム比を使用する場合は、一次スチーム改質触媒の少なくとも一部が貴金属触媒であるのが好ましい。
【0014】
次いで、こうして得られる供給原料/スチーム混合物を改質に付す。供給原料/スチーム混合物を熱交換改質装置に供給する前に、供給原料/スチーム混合物を断熱低温改質の工程に付すことができる。このようなプロセスにおいては、炭化水素/スチーム混合物を一般には400〜650℃の範囲の温度に加熱し、次いで適切な触媒(通常は、たとえば40重量%以上の高いニッケル含量を有する触媒)の層に断熱的に通す。このような断熱低温改質工程時において、メタンより高級の炭化水素(存在する場合)がスチームと反応して、メタン、二酸化炭素、および水素の混合物が得られる。熱交換改質装置への供給物がメタンより高級の炭化水素を含有せず、相当量の水素を含有する、ということを確実にするためには、このような断熱改質工程(通常は予備改質と称する)を使用することが望ましい。このことは、熱交換改質装置中の触媒上への炭素形成の可能性をできるだけ少なくするために望ましい。
【0015】
このような予備改質工程の後、必要に応じて、混合物を熱交換改質装置の入口温度(一般には300〜500℃の範囲)にさらに加熱する。改質触媒上を通過している時に吸熱性の改質反応が起こり、このとき反応に必要とされる熱は、外管の外表面を通り過ぎて流れている二次改質ガスから供給される。一次改質触媒は、耐熱性の担体(たとえば、アルミン酸カルシウムセメント、アルミナ、チタニア、およびジルコニア等のリングまたはペレット)に担持されたニッケルであってよい。これとは別に、特に1.0未満のスチーム比が使用される場合は、貴金属触媒を一次改質触媒として使用することができる。適切な貴金属触媒としては、ロジウム、ルテニウム、および白金を適切な耐熱性担体(たとえば、ニッケル触媒に対して使用した担体)に0.01〜2重量%の量にて担持させて得られる触媒がある。これとは別に、ニッケル触媒と貴金属触媒との組み合わせ物も使用することができる。たとえば、ニッケル触媒の一部を貴金属触媒(たとえばルテニウムベース触媒)で置き換えることができる。
【0016】
二次改質ガスの温度は、一次改質を受けるガスが触媒を650〜850℃の範囲の温度のままにしておくほどの充分に高い温度であるのが好ましい。
本発明においては、プロセスに供給される全炭化水素供給原料のうちのある割合(第2の流れ)が一次改質工程をバイパスし、一次改質ガスと合流して二次改質装置供給流れを形成し、次いでこの流れを、二次改質工程において部分燃焼に付す。こうして得られる二次改質ガスを脱水し、炭化水素をフィッシャー・トロプシュ合成するための合成ガスとして使用する。フィッシャー・トロプシュ合成からのテールガスを二次改質装置供給流れに再循環させる。二次改質装置供給流れを形成させる際には、フィッシャー・トロプシュ・テールガスと第2の炭化水素流れを、一次改質ガスに別々に(いかなる順序でもよい)加えることもできるし、あるいは、一次改質ガスに供給する前に必要に応じて予備混合することもできる。テールガスと第2の炭化水素流れを予備混合することは、必要ならば、2つの熱交換器よりむしろ1つの熱交換器にて一緒に加熱することができる、という利点を有する。第2の炭化水素流れとフィッシャー・トロプシュ・テールガスをどのような形で加えようとも、炭化水素の分解を避けるために、一次改質ガスと合流させる前に、第2の炭化水素流れとフィッシャー・トロプシュ・テールガスを420℃を超える温度には加熱しないのが好ましい。
【0017】
次いで、一次改質ガス/炭化水素/テールガス混合物を含んだ二次改質装置供給流れを、遊離酸素を含有するガスを加え、部分燃焼を行い、そして部分燃焼させたガスを二次改質触媒に通すことによって二次改質に付す。酸素含有ガスに幾らかのスチームを加えることもできるが、改質プロセスに対して低いオーバーオールスチーム比が達成されるよう、スチームは加えないのが好ましい。二次改質触媒は通常、耐熱性の担体(たとえば、アルミン酸カルシウムセメント、アルミナ、チタニア、およびジルコニア等のリングまたはペレット)上に担持されたニッケルである。遊離酸素を含有するガスは、実質的に純粋な酸素(たとえば、1%未満の窒素を含有する酸素)であるのが好ましい。しかしながら、実質的な量の不活性物質の存在が許容しうる場合、遊離酸素を含有するガスは空気または酸素富化空気であってよい。遊離酸素を含有するガスが実質的に純粋な酸素である場合は、冶金学的な理由から、約250℃未満の温度にて二次改質装置に供給するのが好ましい。
【0018】
二次改質装置において必要とされる酸素の量は、考慮すべき主要な2つの要素(すなわち、所望する生成物ガスの組成、および熱交換器改質装置の熱収支)によって決まる。一般には、酸素の量を増大させると、これによって二次改質装置を出ていく改質ガス温度が上昇すると、[H2]/[CO]比が減少し、二酸化炭素の割合が減少する。これとは別に、温度が一定に保持されるように条件を調整すれば、供給原料を熱交換改質装置に供給する温度を上昇させることで、(一定の酸素供給温度にて)必要とされる酸素の量が減少する。酸素の必要量が減少することは有利である。なぜなら、より小形の、したがってより安価な空気分離プラントを使用して酸素を生成させることができるからである。供給原料の温度は、適切ないかなる熱源(必要ならば加熱炉であってもよく、この場合は当然ながら、燃焼に対して酸素よりむしろ空気を使用することができる)によっても上昇させることができる。
【0019】
加える酸素含有ガスの量は、一次改質段階と二次改質段階に供給される炭化水素供給原料の100グラム原子当たり40〜60モルの酸素が加えられるような量であるのが好ましい。加える酸素の量は、二次改質ガスが800〜1050℃の範囲の温度で二次改質触媒を去っていくような量であるのが好ましい。任意の供給原料/スチーム混合物、酸素含有ガスの量と組成、および改質圧力に対し、この温度が二次改質ガスの組成をほぼ決定する。
【0020】
次いで、二次改質ガスを、熱交換改質装置の管を流れていく高温ガスとして使用することによって、一次改質工程に必要とされる熱を供給する。この熱交換時に、一次改質を受けるガスに熱を移動させることによって二次改質ガスの温度が下がる。二次改質ガスは数百℃のオーダーで冷却されるのが好ましいが、当然ながら、二次改質ガスは、供給原料/スチーム/二酸化炭素混合物が熱交換改質装置に供給される温度より幾らか高い温度にて熱交換改質装置を去る。二次改質ガスは、500〜650℃の範囲の温度で熱交換改質装置を去る。
【0021】
二次改質ガスは、熱交換改質装置を去った後にさらに冷却される。この冷却時に回収される熱は、反応物を予備加熱するのに、および/または、一次改質工程において使用されるスチームをもたらすのに使用される水を加熱するのに使用することができる。後述するように、回収熱はさらに、あるいはこれとは別に、二酸化炭素の分離工程において使用することができる。
【0022】
二次改質ガスが、二次改質ガス中のスチームの露点未満の温度に冷却され、したがってスチームが凝縮する。次いで、凝縮したスチームを分離する。スチームの凝縮を起こさせるための冷却は、二次改質ガスと冷水の流れとを接触させることによって果たすことができる。この結果、加熱された水の流れが形成され、これを使用して、改質に必要とされるスチームの一部または前部を供給することができる。
【0023】
一般に、二次改質ガスは5〜15容量%の二酸化炭素(乾量基準にて)を含有する。本発明の1つの実施態様においては、凝縮水を分離した後に、フィッシャー・トロプシュ合成段階の前に合成ガスから二酸化炭素を分離し、合成ガスの製造に再使用する。二酸化炭素のこのような再使用は好ましい。なぜなら、[H2]/[CO]比を調節して、FT合成に対して約2という最適値を達成するための手段を提供するからである。再使用される二酸化炭素の量を、この比を達成するのに必要とされる量にまで増大させるのが好ましい。一般には、この量は、脱水された二次改質ガス中の二酸化炭素の少なくとも75%(特に少なくとも90%)であってよい。再使用される二酸化炭素の流れは、前記のWO00/09441に記載のように、供給原料を熱交換改質装置に供給する前に供給原料に加えることもできるし、あるいは好ましくは、二次改質装置供給流れを二次改質工程に供給する前に二次改質装置供給流れに加えることもできる。二酸化炭素は、炭化水素供給原料およびテールガスの前に加えることもできるし、炭化水素供給原料およびテールガスの後に加えることもできるし、あるいは炭化水素供給原料およびテールガスと一緒に加えることもできる。再使用される二酸化炭素は、二次改質装置供給流れに別々に加えるのが好ましい。なぜなら、二酸化炭素は420℃より高い温度に加熱することができるからである。上記したように、再使用される二酸化炭素(合成の前に合成ガスから分離されて再使用される二酸化炭素としての、あるいは再使用されるテールガスとしての)が、一次改質の前に供給原料に加えられるよりむしろ一次改質ガスに加えられる場合は、一次改質プロセスを低めのスチーム比で操作することができる、という点において利点がある。
【0024】
二酸化炭素は、従来の“湿潤”法によって分離することもできるし、あるいはこれとは別に、圧力スイング吸着法を使用することもできる。従来の“湿潤”法においては、二次改質ガスを脱水し、次いで二酸化炭素が吸収されるよう、適切な吸収性液体〔たとえば、アミン溶液、特にメチルジエタノールアミン(MDEA)溶液〕の流れと接触させて、二酸化炭素を吸収した吸収性液体と二酸化炭素の含量が減少したガス流れが得られる。次いで、二酸化炭素を吸収した吸収性液体を、たとえば加熱することによって再生して、吸収性液体から二酸化炭素を取り除き、これにより再生された吸収性液体を得、次いでこれを二酸化炭素吸収段階に再循環させる。取り除かれた二酸化炭素の少なくとも一部を、前述の一次改質工程に再循環させる。二酸化炭素分離工程が単一圧力のプロセスとして操作されるならば、すなわち、実質的に同じ圧力が吸収工程と再生工程において使用されるならば、再循環される二酸化炭素をほんのわずか再圧縮すれば済む。生成物合成ガスが極めて低い二酸化炭素含量を有することが要求されない場合は、一般には、吸収性液体の再生を、極めて低い二酸化炭素含量になるまで行う必要はない。
【0025】
二酸化炭素の分離と再循環の段階とは別に、あるいは二酸化炭素の分離と再循環の段階に加えて、脱水された合成ガスをフィッシャー・トロプシュ炭化水素合成段階に送る前に、脱水された合成ガスをさらに水素分離の工程〔たとえば、他の用途(たとえば、水素化分解や水素化脱硫)向けの純粋な水素を得るために膜を通す〕に付すこともできる。この状況においては、フィッシャー・トロプシュ合成に対する最適値より高い[H2]/[CO]比が得られるように、テールガスの再循環(二酸化炭素の分離と再循環が存在しない場合)または二酸化炭素の再循環流れが調節され、したがって、必要量の水素が分離された後、得られる合成ガスの[H2]/[CO]比は約2となる。
【0026】
フィッシャー・トロプシュ法においては、一酸化炭素と水素を含有する合成ガスを触媒(一般には、コバルト含有組成物および/または鉄含有組成物)の存在下で反応させる。本方法は、1つ以上の固定触媒層、または移動触媒(たとえば、触媒の炭化水素液体中スラリー)を使用する1つ以上の反応器を使用して行うことができる。生成物である炭化水素液体を残留ガスから分離する。反応を単回通過(a single pass)にて行うこともできるし、あるいは残留ガスの一部をフレッシュな合成ガスと合流させて、フィッシャー・トロプシュ反応器に再循環させることもできる。さらなる反応のためにフィッシャー・トロプシュ反応器に再循環されない残留ガスを本明細書ではテールガスと呼ぶ。合成ガスの反応は不十分であるので、テールガスは幾らかの水素と一酸化炭素を含有する。テールガスはさらに、幾らかの軽質炭化水素(たとえば、メタン、エタン、およびブタンを含めたパラフィン、ならびにプロピレン等のオレフィン)、アルコール(たとえばエタノール)、および他の微量成分(たとえば有機酸)を含んでもよい。さらに、テールガスは一般に幾らかの二酸化炭素を含有し、この二酸化炭素は、フィッシャー・トロプシュ反応に供給される合成ガス中に存在することがあり、および/または、副反応によって形成される。ことによると、液体炭化水素生成物の分離が不十分のため、テールガスがさらに、わずかな割合の高級炭化水素(すなわち、5個以上の炭素原子を含有する炭化水素)を含有することがある。テールガスのこれら成分は、炭素と水素の貴重な供給源を表わしている。
【0027】
本発明においては、テールガスの少なくとも一部が再循環され、フィッシャー・トロプシュ合成ガスを製造するのに使用される供給原料の一部として使用される。再循環されるテールガスの量は、フィッシャー・トロプシュ合成段階において生成するテールガスの5〜100容量%であるのが好ましい。
【0028】
本発明においては、炭化水素供給原料を2つの流れに分ける。第2の炭化水素流れが一次改質工程をバイパスし、二次改質装置での燃焼の前に二次改質装置供給流れに加えられる。第2の炭化水素流れは、炭化水素供給原料の5〜50容量%を構成し、好ましくは5〜40容量%を構成し、そして最も好ましくは5〜30容量%を構成する。5容量%未満の量であると、もたらされる利益があまりにも少なく、また30容量%を、特に50容量%を超える量であると、一次改質装置のサイズとコストが必然的に増大すること(二次改質ガスの温度が低下し、これによって一次改質装置との熱交換が減少するので)、あるいは二次改質工程における酸素の要件が高められることから経済的にあまり魅力的ではなくなる。
【0029】
ある割合の炭化水素供給原料とフィッシャー・トロプシュ・テールガスの少なくとも一部を一次改質ガスに供給することによって、炭素の堆積の起こすことなく、低いオーバーオールスチーム比でプロセスを操作することができる。本発明のプロセスを使用することで、一次改質段階においてそれほど炭素の堆積を起こすことなく、0.8〜1.2の範囲のオーバーオールスチーム比を達成することができる。
【0030】
以下に添付図面を参照しつつ本発明を説明する。
図1において、ライン10を介して供給される炭化水素供給原料(たとえば90容量%を超えるメタンを含有する天然ガス)を2つの流れに分ける。第1の流れをライン12を介してサチュレーター14に送り、そこでライン16によって供給される高温水と接触する。不用の高温水はライン18を介して回収し、必要であれば再使用することができる。こうして得られる第1の炭化水素流れとスチームとの混合物を、一般には10〜60バール絶対圧の範囲の圧力で、ライン20を介して熱交換器22に送り、次いでライン24を介して熱交換改質装置28の触媒収容管26に送る。混合物は通常、300〜500℃の範囲の温度に加熱してから管26中に流入させる。簡単化のために、図面には1つの管だけが示されているが、実際には、数十もしくは数百のこのような管が存在してよい。
【0031】
供給原料/スチーム混合物が管26において一次スチーム改質を受け、一次改質ガスが、一般には650〜850℃の範囲の温度にてライン30を介して熱交換改質装置28を去る。
ライン30の一次改質ガスが、ライン32を介して供給されるフィッシャー・トロプシュ・テールガス(これについては後述する)と混合する。こうして得られる一次改質ガス/テールガス混合物がライン34を介して進み、第2の炭化水素流れ(ライン36を介して供給され、熱交換器38において予備加熱されている)と混合する。こうして得られる、一次改質ガス/テールガス/炭化水素混合物を含んだ二次改質装置供給流れを、ライン40を介して二次改質装置42に供給し、この装置にライン44を介して酸素を供給する。
【0032】
二次改質装置供給流れを二次改質装置において部分燃焼させ、二次改質触媒上に通すことによって平衡状態にする。二次改質ガスが、一般には900〜1050℃の範囲の温度で、ライン46を介して二次改質装置を去る。
【0033】
二次改質ガスが熱交換改質装置の加熱媒体を形成するよう、二次改質ガスを、ライン46を介して熱交換改質装置28の外殻側(shell side)に通すことによって、高温の二次改質ガスから熱を回収する。このように、二次改質ガスが、管26において改質を受けているガスとの熱交換によって冷却され、第1の炭化水素流れ/スチーム混合物が管26に供給される温度より一般には50〜200℃高い温度で、ライン48を介して熱交換改質装置を去る。
【0034】
次いで、ある程度冷却された二次改質ガスを、1つ以上の熱交換器50における熱回収と共に、二次改質ガス中の水の露点未満の温度にさらに冷却する。次いで、冷却された二次改質ガスをライン52を介して分離器54に供給し、このとき凝縮水が液状水流れ(liquid water stream)56として分離される。この水は、熱交換器(図示せず)において加熱することによって、そしてサチュレーター14において使用するためにライン16に供給することによって再循環させることができる。
【0035】
こうして得られる脱水された合成ガスを、分離器54からライン58を介して任意の水素分離ユニット60(たとえば、膜ユニットまたは圧力スイング吸着段階)に送って、脱水された合成ガス中の水素の一部を水素流れ62として分離する。次いで、合成ガスを、ライン64を介してフィッシャー・トロプシュ合成段階66に送り、そこで液体炭化水素が合成され、副生物である水と共に生成物流れ68として分離され、テールガス流れ70を残す。テールガスの一部を流れ72としてパージして不活性物質(たとえば、二次改質装置に供給される炭化水素供給原料または酸素含有ガス中に存在することがある窒素)の蓄積を避ける。パージされるテールガスは、たとえば、第1の炭化水素流れと熱交換改質装置に供給されるスチームとの混合物を加熱するのに使用される加熱炉における燃料として使用することができる。テールガスの残部を圧縮器74に送り、次いで熱交換器76に送り、次いでライン32を介して送って一次改質ガス30と合流させる。
【0036】
図2においては、ライン36と熱交換器38を介して一次改質段階をバイパスした第2の炭化水素流れと、ライン32を介して供給されるフィッシャー・トロプシュ・テールガスとを混合し、得られる混合物を、ライン78を介して一次改質ガス30に供給して一次改質ガス混合物80を形成させる。
【0037】
脱水した合成ガスを、ライン58を介して二酸化炭素分離段階82に送り、そこで脱水した合成ガスから二酸化炭素を分離する。こうして得られる、二酸化炭素含量の少ない脱水合成ガスを、ライン84を介して任意の水素分離ユニット60に送り、次いでフィッシャー・トロプシュ合成段階66に送る。分離段階82からの分離された二酸化炭素を、ライン86を介して圧縮器88に送り、次いでライン90を介して熱交換器92に送る。ガス組成の制御をさらに向上させるために、分離された二酸化炭素を、圧縮および加熱する前にライン94を介してプロセスからパージすることができる。加熱・圧縮された二酸化炭素流れを、92を介して一次改質ガス混合物80に供給し、得られる二次改質装置供給流れを、ライン98を介して二次改質装置に送る。
【0038】
図3においては、図2の二酸化炭素の回収と再循環の段階が省略され、熱交換器38と76が省略されている。ライン36を介して一次改質段階をバイパスしている第2の炭化水素流れと、ライン32を介して供給されるフィッシャー・トロプシュ・テールガスとを混合し、得られる混合物を熱交換器100において加熱してから、ライン102を介して一次改質ガス30に供給して二次改質装置供給ガス混合物を形成させ、ライン104を介して二次改質装置に送る。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
表1には、図2に示したフローシートにしたがって操作したフィッシャー・トロプシュ法に関して算出されたデータが記載されている。これらのデータは、本発明の方法が、熱交換反応器管において1.25のスチーム比をもたらすことができること、そしてこれによって、炭素の堆積を避けるためにニッケル/スチーム改質触媒を使用すると、プロセスに供給される全炭化水素を基準としてオーバーオールスチーム比は1.0である、ということを示している。
【0040】
実施例2
表2には、図3に示したフローシートにしたがって操作した80,000バレル/日のフィッシャー・トロプシュ法に関して算出されたデータが記載されている。これらのデータは、本発明の方法が、熱交換反応器管において0.88のスチーム比をもたらすことができること、そしてこれによって、炭素の堆積を避けるために貴金属改質触媒を使用すると、プロセスに供給される全炭化水素を基準としてオーバーオールスチーム比は0.66である、ということを示している。
【0041】
下記の表において、流れの種々の成分に対する圧力(P、バール絶対圧)、温度(T、℃)、および流量(キロモル/時)は、最も近傍の整数に四捨五入して記載してある。1bara=100000Paまたは100kPa。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の1つの実施態様の概略フローシートであり、フィッシャー・トロプシュ・テールガスと炭化水素供給流れを一次改質ガスに別々に加えて、二次改質装置供給流れを形成させている。
【図2】本発明の別の実施態様の概略フローシートであり、フィッシャー・トロプシュ・テールガスと炭化水素のほかに、二次改質ガスから分離される二酸化炭素を一次改質ガスに加えて、二次改質装置供給流れを形成させている。
【図3】本発明のさらに別の実施態様の概略フローシートであり、フィッシャー・トロプシュ・テールガスと炭化水素供給原料を合流させ、加熱し、一次改質ガスに加えて二次改質装置供給流れを形成させている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) i) 炭化水素供給原料を第1と第2の流れに分けること;
ii) 第1の流れとスチームとを混合し、第1の流れとスチームとの混合物を、熱交換改質装置の加熱管中に配置されている触媒上に通して一次改質ガスを形成させること;
iii) 一次改質ガスと第2の炭化水素流れとを含んだ二次改質装置供給流れを形成させること;
iv) 二次改質装置供給流れを酸素含有ガスで部分燃焼させ、こうして得られる部分燃焼ガスを二次改質触媒上にて平衡状態にすること;および
v) こうして得られる二次改質ガスを使用して熱交換改質装置の管を加熱し、これによって部分冷却された改質ガスを得ること;
によって炭化水素供給原料をスチーム改質に付す工程;
b) 部分冷却された改質ガスをスチームの露点未満にさらに冷却して水を凝縮させ、凝縮した水を分離して、脱水された合成ガスを得る工程;
c) 前記脱水合成ガスからフィッシャー・トロプシュ反応によって炭化水素を合成し、合成された炭化水素の少なくとも一部を分離してテールガスを得る工程;および
d) 前記テールガスの少なくとも一部を二次改質装置供給流れ中に混和してから、部分燃焼を行う工程;
を含む炭化水素の製造法。
【請求項2】
第2の炭化水素流れが5〜50容量%の炭化水素供給原料を含む、請求項1記載の製造法。
【請求項3】
炭化水素を合成する前に合成ガスから二酸化炭素を分離し、二次改質装置供給流れの部分燃焼の前に二次改質装置供給流れ中に加える、請求項1または請求項2に記載の製造法。
【請求項4】
テールガスと第2の炭化水素流れを混合し、分離した二酸化炭素とは別に一次改質ガスに加える、請求項3記載の製造法。
【請求項5】
前記脱水合成ガスを、フィッシャー・トロプシュ炭化水素合成段階に移す前に炭化水素分離工程に付す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項6】
熱交換改質装置の加熱管中に配置されている触媒がニッケル触媒および/または貴金属触媒を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−505646(P2006−505646A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549303(P2004−549303)
【出願日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004622
【国際公開番号】WO2004/041716
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】