説明

炭化水素合成用造形触媒粒子

元素の周期表第VIII族元素から選ばれた触媒活性成分又は該成分の前駆体を担体上に支持して含有する長い造形粒子からなる造形触媒又は触媒前駆体であって、該造形粒子は3つの隆起を有し、各隆起は、粒子の縦軸沿いに整列した中心位置から延びて中心位置に結合し、粒子の断面は、中心円の周りの6つの円の外端縁で囲まれた領域から3つの残りの外側円が占める領域を除いた領域を有すると共に、6つの隙間領域を含み、該6つの円は各々、2つの隣接する円に接触し、一方、3つの互い違いの円は、中心円に対し等距離であって中心円に結合可能である、該造形触媒又は触媒前駆体。更に本発明は、造形可能なドウからの触媒又は触媒前駆体の製造方法、押し出し触媒又は触媒前駆体の製造用ダイプレート、該触媒の使用法、及び該触媒を用いて製造した炭化水素に関する。更に本発明は、該炭化水素の水素化、水素化異性化及び/又は水素化分解による燃料及び基油の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、元素の周期表第VIII族元素から選ばれた触媒活性成分又は該成分の前駆体を担体上に支持して含有する長い造形(shaped)粒子で構成されると共に、元素の周期表第IIA、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB又はVIII族から選ばれた元素又は化合物を任意に含有する造形触媒又は触媒前駆体に関する。
【0002】
本発明の触媒又は触媒前駆体は、フィッシャー・トロプシュ炭化水素合成法のような、物質移動又は拡散が限定された反応に極めて有用である。
更に本発明は、造形可能なドウからの触媒又は触媒前駆体の製造方法、押し出し触媒又は触媒前駆体の製造用ダイプレート、該触媒の使用法、及び該触媒を用いて製造した炭化水素に関する。
更に本発明は、前記炭化水素の水素化、水素化異性化及び/又は水素化分解による燃料及び基油の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
造形触媒又は触媒前駆体は、当該技術分野で公知であり、また例えばヨーロッパ特許EP−0,127,220に記載されている。
一酸化炭素及び水素を含むガス状混合物を高温高圧で触媒と接触させることにより該混合物から炭化水素を製造する方法は、フィッシャー・トロプシュ合成として文献に記載されている。
フィッシャー・トロプシュ合成で使用される触媒は、元素の周期表第VIII族の1つ以上の金属、及び任意に促進剤として1つ以上の金属酸化物及び/又は他の金属との組合わせを含むものが多い。
【0004】
高効率の触媒を使用するのが最も望ましい。フィッシャー・トロプシュ法に関しては、高効率触媒は、一酸化炭素及び水素の炭化水素への転化活性水準が高いばかりでなく、高分子炭化水素、特にC以上の炭化水素(以下、“C+炭化水素”と言う)への選択程度が高い触媒である。C+炭化水素では、好ましくは分岐の程度が低くなければならない。従来技術では、一般に触媒効率は、触媒粒子の大きさが低下するのに従って、増大することが教示されている。更に、触媒は、高い安定性を示す、即ち、失活が極めて低くなければならない。
【0005】
フィッシャー・トロプシュ合成は、各種反応体系、例えば流動床体系又はスラリー床体系を用いて行える。触媒粒子の固定床を用いる方法では、該方法の設計で大きく考慮されるのは、触媒床を通る際の圧力降下である。圧力降下ができるだけ少ないことが最も望ましい。しかし、従来技術では、所定形状の触媒粒子については、固定床中で触媒粒子の大きさが低下するのに対応して、触媒床を通る際の圧力降下が増大することがよく報告されている。したがって、触媒床を通る際の圧力降下を最小限に保持しながら、触媒効率の水準を十分に達成しようとすると、触媒床の設計に矛盾が生じる。
【0006】
その他、触媒粒子は、望ましくない磨滅及び/又は破損を避けるため、十分強固でなければならない。特に固定床は、高さ15m以下の商用反応器で使用されるので、塊破砕(bulk crush)強度は、(極めて)高くなければならない。特に触媒床の底部では、触媒粒子の強度は、重要な役割を演ずる。これは、更に優れた触媒粒子を設計する際、一層複雑化させる。
【0007】
更に一層複雑化させる要素は、触媒粒子の製造方法である。触媒粒子の大量生産を可能にするには、迅速、かつ比較的安価で好適な製造方法が要求される。このような商業的に有用な方法は、押出法である。
【0008】
したがって、第VIII族元素、及び任意に元素の周期表第IIA、IIIB、IVB、VB、VIB、又はVIIB族の元素から選ばれた促進剤を含有する触媒又は触媒前駆体であって、フィッシャー・トロプシュ合成法において、固定床で、できるだけ少ない圧力降下を保持すると共に、高粉砕強度を発揮しながら、高活性及び高選択率を示す触媒が必要である。更に、安定性は、非常に高くなければならない。
【0009】
従来、多くの各種方法に使用される粒子、特に触媒活性粒子の発展には、猛烈な作業量が充られてきた。触媒や非触媒用に使用されるペレット、棒、球及び円柱のような従来の形状とは別の形状の効果による利点及び時には欠点を理解しようという努力もかなりあった。
【0010】
周知の形状の更なる例は、リング、クローバーの葉、ダンベル及びC形の粒子である。いわゆる“多葉体(polylobal)”形粒子について、かなりの努力が向けられてきた。多くの市販の触媒は、TL(Trilobe)(三葉体)又はQL(Quadrulobe)(四葉体)形で入手できる。これらは通常の円筒形に対する代替品として役立ち、多くの場合、表面対容量比の増大により、更に多くの接触部位に曝すことができ、こうして一層活性な触媒を提供できるという利点がある。
【0011】
フィッシャー・トロプシュ合成の固定床操作に使用するため、各種形状及び設計の触媒粒子が提案されてきた。こうして、EP−0,428,223には、触媒粒子は、円柱形、中空円柱形、例えば円柱の半径に対し0.1〜0.4の半径を有する、中央部が中空の円柱形、直立の又は施条を付けた(捻った)三葉体形、又はUS−4,028,221に記載されるその他の形の中の1つの形状が可能であることが開示されている。三葉体形押出物が好ましいと言われている。
【0012】
EP−0,218,147は、粒子の長さ沿いに押出軸の周りを螺旋状に巻いた3つ又は4つの撚糸の輪郭形状を有する螺旋状浅裂の(lobed)多葉体押出粒子及びその触媒又は触媒支持体、特に水素化処理操作での触媒又は触媒支持体としての用途を開示している。触媒の螺旋形状は、液体及び/又はガスが通過する触媒床反応器に起こる圧力降下を減少させると言われている。この方法では、圧力降下の要件を満足させるため、所定の反応器設計に一層小さい触媒粒子が採用できる。
【0013】
EP−0,220,933には、四葉体型触媒の形状は、特に圧力降下として知られている現象に重要であると記載されている。提示された実験的証拠から、非対称的四葉体は、密接に関連する対称的四葉体よりも圧力降下が少ないことを明らかにしている。EP−0,220,933には、非対称形の粒子について、隆起対の各々がこれら隆起よりも狭い溝で分離され、隣接粒子の隆起がその溝に入るのを防止していると説明されている。EP−0,220,933は、粒子の形状が触媒床の全体のかさ密度低下の原因となる床内の“詰め込み(packing)”を防止することを教示している。
【0014】
従来技術の知見の多くは矛盾し、特に粒子の大きさ低下により表面対容量比が増大した際、圧力降下の問題が絶えず存在しているので、このような問題を低減したり、或いは更に防止するような代りの粒子形状(任意に触媒活性のある)を探究する余地は、なおかなりある。
【特許文献1】EP−0,127,220
【特許文献2】EP−0,428,223
【特許文献3】EP−0,218,147
【特許文献4】EP−0,220,933
【特許文献5】AU 698392
【特許文献6】WO 99/34917
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
固定床反応器での例えばフィッシャー・トロプシュ法の触媒のような特に物質移動又は拡散に限定された反応に使用した場合、従来の“三葉体”形触媒粒子に比べて、特別に造形した触媒粒子又は触媒前駆体粒子は、予期し得ない大きな利点が得られることが、今回、意外にも見い出された。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明は、元素の周期表第VIII族元素から選ばれた触媒活性成分又は該成分の前駆体を担体上に支持して含有する長い造形粒子からなる造形触媒又は触媒前駆体であって、該造形粒子は3つの隆起を有し、各隆起は、粒子の縦軸沿いに整列した中心位置から延びて中心位置に結合し、粒子の断面は、中心円の周りの6つの円の外端縁で囲まれた領域から3つの残りの外側円が占める領域を除いた領域を有すると共に、6つの隙間領域を含み、該6つの円は各々、2つの隣接する円に接触し、一方、3つの互い違いの円は、中心円に対し等距離であって中心円に結合可能である、該造形触媒又は触媒前駆体に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明の詳細な説明
固体触媒粒子を必要とするタイプの反応は、多くの場合、反応剤の触媒粒子への拡散速度又は触媒粒子の中から展開する生成物の拡散速度により制限されることが知られている。これは液体相反応には特に真実である。したがって、高い表面対容量比を示す触媒粒子は、有利である。
【0018】
本発明の触媒粒子は、対応する従来の同様な大きさの“三葉体”粒子よりも大きな表面対容量比を有し、しかも高い間隙率により、このような対応する従来の“三葉体”粒子よりも圧力降下が実質的に少なくて済むことが見い出された。しかも、良好なC+選択率及び良好な安定性が得られる。他の利点は、線状(分岐していない)生成物に対する選択率が増大することである。更に、これらの粒子は、十分強力で、押し出しにより容易に製造できる。
【0019】
造形粒子は、意図する形状が得られるような方法で加工できるならば、いかなる好適な材料からも成形できる。このような形状を作る方法は、得られる粒子形状を確実に保持する特定条件下で各種形状に加圧するか、押し出すか、或いは押し込む工程を含む。
【0020】
本発明の特にフィッシャー・トロプシュ法に使用される触媒は、触媒活性成分として、元素の周期表第VIII族元素の金属を含有する。特に触媒活性な金属としては、ルテニウム、鉄、コバルト及びニッケル、更に好ましくはコバルトが挙げられる。2つ以上の成分の組合わせも可能である。好ましくは、かなりの(substantial)量のパラフィン、更に好ましくは実質的に分岐のないパラフィンが得られるフィッシャー・トロプシュ触媒を使用する。この目的に最も好適な触媒組成物としては、コバルト含有フィッシャー・トロプシュ触媒が挙げられる。この種の触媒は、文献(例えばAU 698392及びWO 99/34917参照)に記載されている。合成ガスの製造に好ましい炭化水素質原料は、天然ガス又は随伴ガスである。これらの供給原料は、通常、H/CO比が2付近の合成ガスが得られ、また、この種の触媒用のユーザー比も約2なので、コバルトは、非常に良いフィッシャー・トロプシュ触媒である。
【0021】
触媒活性金属は、多孔質担体上に担持することが好ましい。多孔質担体は、当該技術分野で公知の好適な耐火性金属酸化物又はシリケート或いはそれらの組合わせのいずれからも選択できる。特定の好ましい多孔質担体の例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、ガリア及びそれらの混合物、特にシリカ、アルミナ及びチタニア、特にTiOが挙げられる。
担体上の触媒活性金属の量は、最適性能にとって、好ましくは担体材料100重量部当り3〜300重量部、更に好ましくは10〜80重量部、特に20〜60重量部の範囲である。
【0022】
所望ならば、触媒は、促進剤として1つ以上の金属又は金属酸化物も含有してよい。好適な金属酸化物促進剤は、元素の周期表第IIA、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB又はVIII族、或いはアクチニド及びタンタニドから選択できる。特に、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、セリウム、トリウム、ウラン、バナジウム、クロム及びマンガン、の酸化物が、極めて好適な促進剤である。重質パラフィンの製造に使用される触媒用の特に好ましい金属酸化物促進剤は、マンガン、バナジウム及びジルコニウム酸化物である。好適な金属促進剤は、元素の周期表第VIIB又はVIII族から選択してもよい。レニウム、銀及び第VIII族貴金属は、特に好適で、白金及びパラジウムが特に好ましい。触媒に存在する促進剤の量は、好適には、担体100重量部当り0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜40重量部、更に好ましくは1〜20重量部の範囲である。最も好ましい促進剤は、長鎖n−パラフィンの製造能力から、バナジウム、マンガン、レニウム、ジルコニウム及び白金から選択される。
【0023】
触媒活性金属及び存在すれば促進剤は、含浸、混合/混練、及び混合/押出のような、いずれの好適な処理によっても担体材料上に沈着させてよい。金属及び適切ならば促進剤を担体材料上に沈着後、この荷重担体は、通常、仮焼する。この仮焼処理の効果は、結晶水を除去し、有機化合物を分解し、また無機化合物を酸化物に転化することである。仮焼後、得られた触媒は、水素又は水素含有ガスと、通常、約200〜350℃の温度で接触させることにより、活性化してよい。フィッシャー・トロプシュ触媒の他の製造法は、混練/粉砕(mulling)工程、及び引き続き押出、乾燥/仮焼及び活性化工程を含む。
【0024】
造形触媒粒子に好適な材料は、意図する形状が得られるような方法で加工しなければならない。加工法の一例は、押出法で造形可能なドウ、好ましくは1つ以上の触媒活性金属用の1つ以上の供給源、及び任意に1つ以上の促進剤用の1つ以上の供給源及び耐火性酸化物又は耐火性酸化物前駆体の細粉を含むドウを好適な溶剤と一緒に粉砕する。次に、この粉砕混合物は、ダイプレートのオリフィスから押し出す。得られた押出物は乾燥する。必要ならば、押出物には、(追加の)触媒元素供給源及び/又は促進剤を含浸により塗布できる。使用可能な他の方法は、パレタイジング及び加圧成形である。
【0025】
混合物に含有させる溶剤は、当該技術分野で公知の好適な溶剤のいずれでもよい。好適な溶剤としては、水;メタノール、エタノール及びプロパノールのようなアルコール;アセトンのようなケトン;プロパナールのようなアルデヒド;及びトルエンのような芳香族溶剤が挙げられる。最も便利で好ましい溶剤は、任意にメタノールと組合わせた、水である。
特定のダイプレートを使用すると、触媒粒子の意図する形状の成形が可能になる。ダイプレートは、当該技術分野で周知で、金属又は高分子材料、特に熱可塑性材料から製作できる。
【0026】
本発明の好ましい触媒粒子は、3つの互い違いの円(外側円の形成部分)の直径が中心円の直径の0.74〜1.3倍、好ましくは0.87〜1.15倍の範囲にある断面を有する。
【0027】
本発明の更に好ましい触媒粒子は、これら3つの互い違いの円の直径が中心円の直径と同じである断面を有する粒子である。好適には、これら3つの互い違いの円と中心円との間の距離は同じである。この距離は、好ましくは中心円の直径の1/2未満、更に好ましくは中心円の直径の1/4未満である。最も好ましい粒子は、これら3つの互い違いの円が中心円に結合している断面を有する粒子である。これら3つの互い違いの円は、中心円に重なっていないことが好ましい。重なったとしても、各互い違いの円と中心円との重なり部分は、中心円の面積に対し5%未満、好ましくは2%未満、更に好ましくは1%未満である。
【0028】
図1に本発明の最も好ましい粒子の断面図を示す。断面形状の表面(実線で示す)は、特許請求の範囲の主請求項で定義したように、説明できる。この図(好ましい粒子の断面を示す)から、同じ大きさの中心円の周りに整列した均等な大きさの6つの円と言う概念では、各外側円は、2つの隣接する円及び中心円に接し、一方、3つの互い違いの円(点線で示す)を控除すると、残りの断面領域となる。この残りの断面領域は、4つの円(中心円及び3つの残りの互い違いの外側円)が、中心円と2つの隣接する外側円の6倍分とを包含した部分により形成された6つの領域と共同で構成したものである。これらの領域は、“隙間”領域と言う。これら3つの残りの互い違いの外側円は、中心円に対し等距離である。ここで使用した用語“等距離”とは、中心円の中心と、複数の外側円の中の1つの外側円の中心との間の距離が、中心円の中心と他の残りの外側円の中のいずれの1つの外側円の中心との距離に等しい状況を言う。この使用目的で用語“等距離”は、該距離に対し、20%以下、好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下の偏差を含んでよい。最も好ましい実施態様では、偏差はない。本発明の好ましい造形粒子の周囲は、鋭角を含まないような周囲であり、このような周囲は、断面が連続的な派生物としても表現できる。粒子(本発明の最も好ましい粒子)の直径は、2つの隆起が接する接線と、この接線に平行な線との間の距離として定義する。これは、図1でd nomとして示した。3つの互い違いの円が1つ又は2つの異なる直径を有する場合は、d nomは、これら3つの直径の測定値の合計を3で割った値である。
【0029】
3つの隆起及び中心位置は、共同で触媒又は触媒前駆体の断面を形成する。各隆起の主要部は、(残りの)複数の互い違いの円の1つにより形成される。中心隆起の主要部は、中心円により形成される。隙間領域は、中心位置と隆起との間を、中心円の中心点及び互い違いの円の中心部を接続する線に垂直な線により分割される。この垂直線(点線)は、2つの中心点間の正確な中央点で接続線(実線)と交差する(図2参照)。
【0030】
定義した形状から多少偏差しても、本発明の範囲内であるとみなされるのは明らかである。本発明の触媒又は触媒前駆体を押出法により製造する場合は、ダイプレートが使用される。本発明粒子の形状に1つ以上の孔を有するダイプレートを作ること、及びその許容差がこの種のダイプレートを作る際に実際に予測できることは、当業者に知られている。この点、押し出し直後に圧力を解放すると、押出物に変形が生じることが観察される。この多少の偏差は、本発明で定義した理想的な形状についてのd nomに対し10%以内、好ましくは5%以内、更に好ましくは2%以内である。
【0031】
本発明の触媒又は触媒前駆体の通常の製造方法を行った後、得られた粒子の数の10%〜100%は、本発明で定義した形状に対し5%未満の偏差の呼び径を持つことが好ましい。触媒粒子の少なくとも50%は、本発明で定義した形状に対し5%未満の偏差の呼び径を持つことが好ましい。
【0032】
粒子の長さ沿いに1つ以上の孔も有する本発明の触媒粒子を製造することは可能である。例えば粒子は、中心円柱(図1に示す断面図の中心円)により形成された領域に1つ以上の孔、及び/又は複数の互い違いの円柱(図1に示す断面図の複数の互い違いの円)の中の1つ以上の円に1つ以上の孔を持つことができる。1つ又は多数の孔が存在すると、表面対容量比を増大して、原理的には更に多くの接触部位を暴露できる上、いかなる場合も、接触点と言う観点から有利に働く可能性がある入って来る装入物に更に暴露できる。中空粒子の大きさが小さくなるのに従って、中空粒子の製造は、ますます困難になるので、特定の目的に小さい粒子が望ましい場合は、孔のない多孔質粒子を使用することが好ましい。
【0033】
本発明触媒粒子の空隙率は、十分50%を超えている(空隙率は、存在粒子外部の粒子床に存在する開放空間の容積分率として定義する。即ち、粒子内部の細孔の容積は、空隙率に含まれない)。以下の実験で使用した粒子の空隙率は、通常、58%で、これは、比較用“三葉体”形粒子の空隙率(丁度43%を超えた)を実質的に超えている。本発明による触媒粒子床の空隙率は、好適には45〜80%、好ましくは50〜70%、更に好ましくは55〜65%の範囲である。
【0034】
本発明の触媒粒子は、長さ/直径比(L/D)が少なくとも1であると説明できる。本発明触媒粒子のL/Dは、1〜25の範囲にあってよい。本発明触媒粒子のL/Dは、好ましくは1.5〜20の範囲、更に好ましくは2〜10の範囲である。例えば以下の実験で使用した粒子のL/Dは、約2.5である。
本発明触媒粒子の長さは、考慮する利用の種類に従って、好適には1〜25mmの範囲、好ましくは2〜20mmの範囲である。
【0035】
接触転化法は、当該技術分野で公知の従来の合成条件下で行ってよい。接触転化は、通常、150〜300℃、好ましくは180〜260℃の範囲の温度で行ってよい。接触転化法での全圧は、通常、1〜200バール絶対圧、更に好ましくは10〜70バール絶対圧の範囲である。接触転化法では、特にC+炭化水素が75重量%より多く、好ましくは85重量%より多く形成される。本発明の触媒を用いた通常の転化法では、従来の三葉体形触媒を用いた場合と同じ反応条件の従来法に比べて、1つ以上のtert−置換炭素原子を有する生成物(以下、“分岐生成物”と言う)の量は、少なくとも20%少ない。重質ワックス(C20+)の量は、触媒及び転化条件に応じて、60重量%以下、時には70重量%以下、更に時には85重量%以下であってよい。コバルト触媒を使用し、H/CO比が低く(特に1.7又は更にはそれ以下)、かつ、温度が低い(190〜230℃)ことが好ましい。コークスの生成を回避するため、H/CO比は、少なくとも0.3であることが好ましい。炭素原子数が少なくとも20の生成物を得るため、SF−α値が、少なくとも0.925、好ましくは少なくとも0.935、更に好ましくは少なくとも0.945、なお更に好ましくは0.955となるような条件下でフィッシャー・トロプシュ反応を行うのが特に好ましい。フィッシャー・トロプシュ炭化水素流は、C30+を少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、更に好ましくは少なくとも50重量%含むことが好ましい。
【0036】
フィッシャー・トロプシュ法は、スラリーFT法、特に沸騰床法又は固定床FT法、特に多管固定床法であってよい。本発明の粒子含有床は、ランダムに詰め込んだ状態では、周知の“ソック(sock)荷重”技術を用いて詰め込んだ場合の対応する従来の三葉体含有床よりも、極めて空隙率が高いことが見い出された。従来の三葉体形状を用いた場合、得られた空隙率は、約45%以下に達するのに対し、本発明の粒子を使用した場合、空隙率は、少なくとも55%となる。このような粒子は、低圧力降下用、例えばフィッシャー・トロプシュ合成法用に魅力的である。
【0037】
ここで説明した触媒粒子は、螺旋状浅裂粒子としても成形できる。ここで使用した螺旋状浅裂粒子と言う用語は、次のような3つの隆起を有する長い造形粒子を言う。即ち、各隆起は、粒子の縦軸沿いに整列した中心位置から延びて中心位置に結合し、粒子の断面は、中心円の周りの6つの円の外端縁で囲まれた領域から3つの残りの外側円が占める領域を除いた領域を有すると共に、6つの隙間領域を含み、該6つの円は各々、2つの隣接する円に接し、一方、3つの互い違いの円は、中心円に対し等距離であって中心円に結合可能であり、また隆起は、粒子の縦軸沿いに延びて、該縦軸の周りに巻かれている。
【0038】
螺旋状浅裂粒子を採用することにより、直立の浅裂粒子を用いた場合に必要とするよりも大きな直径の螺旋状浅裂触媒粒子を用いて、所定の選択率を達成でき、その結果、触媒床での圧力降下は、従来技術から予測されるよりも、非常に少なくなる。或いは、予定の圧力降下を伴う固定床の所定の設計に関しては、フィッシャー・トロプシュ法に螺旋状浅裂粒子を採用することにより、圧力降下の要件を満足するのに必要な適切な直立浅裂触媒粒子を用いた場合よりも実質的に高い選択率が得られる。
本発明を以下の非限定的実施例により説明する。
【0039】
三葉体形押出物からなる触媒粒子(比較例)及び請求項1で定義した形状の触媒粒子(実施例)を用いてフィッシャー・トロプシュ反応をモニターするため、実験を行った。
【0040】
例I(比較例):三葉体形触媒粒子の製造
三葉体形触媒粒子を次のようにして製造した。市販のチタニア粉末(P25、Degussaから) 143g、市販のCo(OH)粉末 66g、Mn(Ac)・4HO 10.3g及び水 38gを含む混合物を調製した。この混合物を15分間混練した。混合物をBonnot押出機を用いて造形した。得られた押出物を乾燥し、仮焼した。押出物は、Coを20重量%、Mnを1重量%含有していた。得られた触媒粒子(触媒A)は、呼び径1.7mmの三葉体形であった。
【実施例1】
【0041】
例II:本発明触媒粒子の製造
市販のチタニア粉末(P25、Degussaから) 143g、市販のCo(OH)粉末 66g、Mn(Ac)・4HO 10.3g及び水 38gを含む混合物を調製した。この混合物を15分間混練した。混合物を、請求項1に記載した所望の形状を得るのに適切なダイプレートを備えたBonnot押出機を用いて造形した。得られた押出物を乾燥し、仮焼した。押出物は、Coを20重量%、Mnを1重量%含有すると共に、それぞれ呼び径が1.7mm(触媒B)、1.5mm(触媒C)、1.3mm(触媒D)及び1.0mm(触媒E)の、請求項1に定義した形状であった。
【実施例2】
【0042】
例III
触媒A及びBを炭化水素の製造法でテストした。触媒押出物A及びBを、触媒粒子固定床の形態でそれぞれ10ml含有する微小流反応器を260℃の温度に加熱し、窒素ガスの連続流で2バール絶対圧に加圧した。触媒は、その場で窒素と水素との混合ガスにより24時間還元した。還元中、混合ガス中の水素の相対量は、0%から100%に徐々に増加させた。オフガス中の水の濃度は、3000ppmv未満に維持した。
【0043】
還元後、圧力を32バラ(STY 140)又は57バラ(STY 180)に増大させた。反応は、水素と一酸化炭素との混合物で行った。50時間操作後の各実験について、1時間当り触媒粒子1リットル(粒子間の間隙を含む)当り炭化水素生成物gとして表現される空時(space time)収量(STY)、合計炭化水素生成物に対する重量%として表現されるC+選択率、及び2〜4の炭化水素を有する生成物についての不飽和生成物対飽和生成物比を測定した。その結果を第I表に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
第I表では、触媒Bを使用して得られるC+選択率についての結果は、触媒Aを使用して得られる結果と比べて示した。即ち、触媒AのC+選択率は、100%とみなした。
これらの結果から、触媒Bは、フィッシャー・トロプシュ法におけるC+選択率に関し、触媒Aよりも良好な性能を示すことが明らかである。触媒Bでは、反応器1容量当りの活性材料の量が触媒Aよりも少なくても、触媒Bの性能は、空隙率が高いため、触媒Aより良好である。こうして、触媒粒子Bの特定の形状により、高価な触媒材料が一層良好に使用できる。
【実施例3】
【0046】
例IV
触媒A、C、D、Eを炭化水素の製造法でテストした。触媒押出物A、C、D、Eを、触媒粒子固定床の形態でそれぞれ10ml含有する微小流反応器を260℃の温度に加熱し、窒素ガスの連続流で2バール絶対圧に加圧した。触媒は、その場で窒素と水素との混合ガスにより24時間還元した。還元中、混合ガス中の水素の相対量は、0%から100%に徐々に増加させた。オフガス中の水の濃度は、3000ppmv未満に維持した。
【0047】
還元後、圧力を26バラ(STY 140)又は57バラ(STY 180)に増大させた。反応は、水素と一酸化炭素との混合物で行った。反応温度は、加重(weighed)平均床温度(WABT)として表現した。50時間操作後の各実験について、1時間当り触媒粒子1リットル(粒子間の間隙を含む)当り炭化水素生成物gとして表現される空時収量(STY)、合計炭化水素生成物に対する重量%として表現されるC+選択率、及び2〜4の炭化水素を有する生成物についての不飽和生成物対飽和生成物比を測定した。その結果を第II表に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
第II表では、触媒C、D又はEを使用して得られる結果は、触媒Aを使用して得られる結果と比べて示した。
これら第II表の結果から、触媒C、D及びEは、フィッシャー・トロプシュ法において、触媒Aよりも良好な性能を示すことが明らかである。触媒C、D及びEでは、反応器1容量当りの活性材料の量が触媒Aより少なくても、触媒C、D及びEの性能は、空隙率が高いため、触媒Aより良好である。こうして、触媒粒子C、D及びEの特定の形状により、高価な触媒材料が一層良好に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の最も好ましい造形触媒粒子の断面図である。
【図2】図1における中心円と外側円との接触状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
nom 呼び径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
元素の周期表第VIII族元素から選ばれた触媒活性成分又は該成分の前駆体を担体上に支持して含有する長い造形粒子からなる造形触媒又は触媒前駆体であって、該造形粒子は3つの隆起を有し、各隆起は、粒子の縦軸沿いに整列した中心位置から延びて中心位置に結合し、粒子の断面は、中心円の周りの6つの円の外端縁で囲まれた領域から3つの残りの外側円が占める領域を除いた領域を有すると共に、6つの隙間領域を含み、該6つの円は各々、2つの隣接する円に接触し、一方、3つの互い違いの円は、中心円に対し等距離であって中心円に結合可能である、該造形触媒又は触媒前駆体。
【請求項2】
前記隆起が、粒子の縦軸の周りに螺旋状に巻かれる請求項1に記載の造形触媒又は触媒前駆体。
【請求項3】
呼び直径が、0.5〜5mm、好ましくは0.7〜3mm、更に好ましくは1〜2mmの範囲である請求項1又は2に記載の造形触媒又は触媒前駆体。
【請求項4】
前記第VIII族元素が、Fe、Co又はNi、好ましくはCoである請求項1〜3のいずれか1項に記載の造形触媒又は触媒前駆体。
【請求項5】
元素の周期表第IIA、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB又はVIII族から選ばれた元素又は化合物を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の造形触媒又は触媒前駆体。
【請求項6】
前記担体が、耐火性酸化物、好ましくはシリカ、アルミナ、チタニア、更に好ましくはチタニアである請求項1〜5のいずれか1項に記載の造形触媒又は触媒前駆体。
【請求項7】
前記3つの残りの互い違いの円の直径が中心円の直径の0.74〜1.3倍、好ましくは0.87〜1.15倍の範囲にある断面を有し、好ましくは該3つの残りの互い違いの円の直径が中心円の直径と同じである断面を有し、更に好ましくは該3つの互い違いの円が中心円に結合している造形触媒又は触媒前駆体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の造形触媒又は触媒前駆体。
【請求項8】
L/D比(mm/mm)が1〜25であり、長さが好ましくは1〜25mm、更に好ましくは2〜20mmの範囲である請求項1〜7のいずれか1項に記載の造形触媒又は触媒前駆体。
【請求項9】
粒状又は粉末状触媒又は触媒前駆体材料を、粒子が反応中も再生中も好ましくは押し出しにより、得られる粒子形状を確実に保持する特定条件下で各種形状に加圧するか、押し出すか、或いは押し込むことによる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の造形触媒又は触媒前駆体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の担体粒子の断面形状を有する1つ以上のオリフィスを備えたダイプレートであって、押し出しによる造形触媒又は触媒前駆体の製造用に設計された該ダイプレート。
【請求項11】
一酸化炭素と水素との混合物を請求項1〜8のいずれか1項に記載の触媒と接触させることにより炭化水素を製造する方法であって、該触媒は、任意に、触媒前駆体を水素又は水素含有ガスと接触させることにより活性化される該方法。
【請求項12】
請求項11に記載の炭化水素から、水素化、水素化異性化及び/又は水素化分解により燃料及び任意に基油を製造する方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法により得られる燃料及び基油。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−514876(P2006−514876A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−510948(P2004−510948)
【出願日】平成15年6月6日(2003.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2003/006114
【国際公開番号】WO2003/103833
【国際公開日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】