説明

炭化水素異性化プロセス用金属添加済み微孔質材料

本発明は、中間孔径分子篩(好ましくは、MTT型又はTON型のゼオライト)を含有する触媒を製造する方法に向けられている。SSZ−32及びZSM−22は、そのような分子篩の例である。この触媒は、Ca、Cr、Mg、La、Ba、Pr、Sr、K及びNdから成る群から選ばれる1種以上の金属で変性される。その触媒は、さらに水素化目的のVIII族金属(単数又は複数)を添加されている。その触媒は、10個以上の炭素原子を有している直鎖パラフィン及び僅かに枝分かれしたパラフィンを含有する供給原料が異性化されるプロセスで用いるのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、中間孔径ゼオライトを含有する触媒であって10個以上の炭素原子を有する直鎖パラフィン及び僅かに枝分かれしたパラフィンを含有する供給原料を異性化するのに適した該触媒を製造する方法に向けられている。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
水素化処理法(hydroprocessing)を用いたグループII及びグループIIIベース油の製造は、近年、益々普及している。異性化の改善された選択性と転化率とを実証する触媒は、絶えず捜し求められている。米国特許第5,282,958号明細書第1欄〜2欄に開示されているように、異性化及び形状選択性脱ろう(shape-selective dewaxing)を行うのにZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、SSZ−32、SAPO−11、SAPO−31、SM−3、SM−6のような中間細孔分子篩を用いることは周知である。脱ろうに有用な他の典型的なゼオライトには、ZSM−48、ZSM−57、SSZ−20、EU−I、EU−13、フェリエライト(Ferrierite)、SUZ−4、シータ(theta)−1、NU−10、NU−23、Nu−87、ISI−1、ISI−4、KZ−1、及びKZ−2が包含される。
【0003】
米国特許第5,252,527号及び同第5,053,373号明細書は、テンプレート(template)としてN−低級アルキル−N’−イソプロピル−イミダゾリウムカチオンを用いて製造される、SSZ−32のようなゼオライトを開示する。米国特許第5,053,373号明細書は、20より大きく40より小さい[シリカ]対[アルミナ]比と、か焼後の、水素形態の13以上の制約インデックス(constraint index)とを開示する。米国特許第5,252,527号のゼオライトは、13以上の制約インデックスに限定されていない。米国特許第5,252,527号明細書は、水素化−脱水素化機能を与えるために、ゼオライトに金属を配合することを開示する。典型的な置換性カチオンには、金属カチオン(例えば、希土類金属、IIA族金属及びVIII族金属)だけでなくそれらの混合物も包含される。それら置換性金属カチオンのうち、希土類金属、Mn、Ca、Mg、Zn、Cd、Pt、Pd、Ni、Co、Ti、Al、Sn、Fe及びCoのような金属のカチオンは、とりわけ好ましい。少量の中性アミンを用いてSSZ−32又はZSM−23のようなMTT型ゼオライトを製造する方法は、米国特許第5,707,601号明細書に開示されている。
米国特許第5,397,454号明細書は、小さい微結晶粒径と、か焼後の、水素形態の13以上の制約インデックスとを有するゼオライト(例えば、SSZ−32)を用いた水素転化プロセス(hydroconversion processes)を開示する。その触媒は、20:1より大きく40:1より小さい[シリカ]対[アルミナ]比を有している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、炭化水素の供給原料を脱ろうして異性化生成物を生成するための方法を開示し、該供給原料は、10個以上の炭素原子を有している直鎖パラフィン及び僅かに枝分かれしたパラフィンを含有する。該供給原料を、水素の存在下、異性化条件の下で、中間孔径分子篩(molecular sieve;モレキュラーシーブ)を含有する触媒と接触させる。該触媒の1つの態様は、次の諸工程:
(a)約4.2A〜約4.8Aの間の短軸と約5.0A〜約7.0Aの間の長軸とを有する一次元細孔を有する十リング分子篩を合成する工程;
(b)前記分子篩を、耐火性無機酸化物キャリヤの前駆体及び水溶液と混合して、混合物を形成する工程;
(c)工程(b)からの混合物を押し出すか又は成形して、押出し物又は成形粒子を形成する工程;
(d)工程(c)の押出し物又は成形粒子を乾燥させる工程;
(e)工程(d)の乾燥済み押出し物又は成形粒子をか焼する工程;
(f)工程(e)のか焼済み押出し物又は成形粒子に、Ca、Cr、Mg、La、Ba、Na、Pr、Sr、K及びNdから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属を含浸させて、金属が添加された押出し物又は成形粒子を調製する工程;
(g)工程(f)の金属添加済み押出し物又は成形粒子を乾燥させる工程;
(h)工程(g)の金属添加済み押出し物又は成形粒子にVIII族金属を更に含浸させて触媒前駆体を調製する工程;
(i)工程(h)の触媒前駆体を乾燥させる工程;
(j)工程(i)の乾燥済み触媒前駆体をか焼して、完成された結合型脱ろう触媒(bound dewaxing catalyst)を形成する工程;
によって製造される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
触媒の製造
本発明の触媒は、1種以上の分子篩(例えば、本明細書で解説されるようなもの)で構成されている。用いられる触媒は、ゼオライト又は分子篩を5〜60重量%含有することがある。分子篩は、AEL型(例えば、SAPO−11、SAPO−31、SM−3、SM−6)のものだけでなく、MTT又はTON型のゼオライト型材料であってもよい。またそれらは、FER型のものでもよい。本明細書で用いられる「分子篩」は、「ゼオライト」を含むことがある。用語、MTT型ゼオライト、MTT分子篩、又はそれらの変形は、一群の分子篩材料のための骨格構造コード(code)を指す。国際ゼオライト協会構造委員会(the Structure Commission of the International Zeolite Association)(IZA)は、決定された構造を有するゼオライト(分子篩型)に対して、3個のアルファベット文字から成るコードを与えている。同一のトポロジー(topology)を有するゼオライトは包括的に、そのような3個によって称される。コードMTTは、ZSM−23、SSZ−32、EU−13、ISI−4及びKZ−1を包含する分子篩の構造に対して与えられている。従って、ZSM−23及びSSZ−32の骨格構造に類似する骨格構造を持つゼオライトは、MTT型ゼオライトと呼ばれる。コードTONは、Theta−1、ISI−1、KZ−2、NU−10及びZSM−22を包含する分子篩に対して与えられている。MTT/TON型分子篩のパラメータは、1978年、ゼオライトの学名命名法に関するIUPAC委員会(IUPAC Commission on Zeolite Nomenclature)によって提案された規定に従ってIZAにより発行されている「分子篩の図解集(Atlas of Molecular Sieves)」に更に説明されている。MTT及びTONは同類の構造を有し、また、両者は一次元チャネル(unidimensional channels)を有している。FU−9、ZSM−35、ISI−6及びNU−23を包含する、FER型のゼオライト型材料もまた、本発明において有用である。ZSM−23、SSZ−32、ZSM−22及びZSM−35は全て、制約された中間細孔ゼオライトである。用いられるもう1つの材料は、SSZ−54、互生の(intergrowth)MTT及びTONゼオライト構造である。そのことは、同時係属出願シリアル番号10/186905号、「ゼオライトSSZ−54組成物及びそれの合成(Zeolite SSZ-54 Composition of Matter and Synthesis Thereof)」に記述されている。
【0006】
本明細書で用いられる用語「MTT/TON型ゼオライト」は、(MTT/TON)構造を有する結晶性アルミノケイ酸塩、結晶性金属ケイ酸塩、及び結晶性金属アルミノケイ酸塩(crystalline metallo-aluminosilicate)を包含する、ケイ酸塩系列の結晶性微孔質材料を意味する。ここに、金属ケイ酸塩及び金属アルミノケイ酸塩は、アルミノケイ酸塩であって、その中のアルミニウムの一部又は全てがアルミニウム以外の他の金属と置換されているものを意味する。他の金属には、ガリウム、鉄、チタン、ホウ素、コバルト及びクロムが包含される。骨格構造を形成する、ケイ素及び酸素を除く元素(例えば、アルミニウム、ガリウム、鉄、チタン、ホウ素、コバルト、亜鉛、マグネシウム及びクロム)は、本明細書ではヘテロ原子(heteroatoms)と定義する。
【0007】
上述の分子篩は、それの酸形態に転化し、次いで、耐火性無機酸化物キャリヤの前駆体及び水溶液と混合して、混合物を形成する。該水溶液は、酸性であるのが好ましい。その溶液は、しゃく解剤(peptizing agent)として作用する。(マトリックス又は結合剤としても知られている)該キャリヤは、有機物転化プロセス(organic conversion processes)で用いられる温度及び他の諸条件に耐えるように選定することができる。そのようなマトリックス材料には、活性及び不活性材料並びに合成ゼオライト又は天然ゼオライトだけでなく、無機材料(例えば、粘土、シリカ及び金属酸化物)も包含される。後者は、天然に産出する場合があるか、又はゼラチン状沈降物、ゾル若しくはゲルである場合があり、シリカと金属酸化物の混合物を包含する。合成ゼオライトと併せた活性材料、即ち、合成ゼオライトと組み合された活性材料を用いれば、幾つかの有機物転化プロセスにおいて、触媒の転化率及び選択性が改善される結果となる。
【0008】
ゼオライト又は分子篩は一般に、多孔質マトリックス材料及び諸マトリックス材料(例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア(thoria)、シリカ−ベリリア(beryllia)、シリカ−チタニア、チタニア−ジルコニア)の混合物だけでなく、三元組成物(例えば、シリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシア、及びシリカ−マグネシア−ジルコニア)とも一緒に複合化される。該マトリックスは、共ゲル(cogel)の形態である場合がある。本発明において、好ましいマトリックス材料は、アルミナ及びシリカである。ゼオライトを実際に合成する間だけでなく、触媒製造の後工程を行う間、異性化の選択性を高めるために金属を添加することは可能である。製造方法には、熱的手段と、金属塩溶液を用いた噴霧乾燥と、塩溶液中におけるスラリーの調製とによって達成される固相イオン交換(solid state ion exchange)が包含される。該スラリーを濾過してゼオライトを回収し、次いで、金属を添加することができる。
経済的理由により、完成ゼオライト中の分子篩の量を最小限に抑えることは一般的に望ましい。優れた活性及び選択性の結果が達成されるならば、完成ゼオライト中におけるいっそう低い濃度の分子篩が望ましい。本発明において、分子篩の好ましい濃度は、5〜60重量%の間である。分子篩の好ましい濃度は、分子篩型が異なれば変わることがある。
【0009】
不活性材料は、所定のプロセスにおける転化率の量を制御するための希釈剤として適切に使えるので、生成物は、反応速度を制御するための他の手段を用いることなく、経済的に得られる。ゼオライト材料はしばしば、天然に産出する粘土(例えば、ベントナイト及びカオリン)の中に組み入れられてきた。これらの材料、即ち、粘土、酸化物等は、触媒用結合剤として機能する。優れた圧潰強度(crush strength)を有する触媒を提供することが望ましい。なぜなら、石油精製における触媒はしばしば乱暴な取り扱いを受けるからである。このために、触媒は破壊されて、処理中に諸問題を引き起こす粉末になる傾向がある。
本発明に係る合成ゼオライトと一緒に複合化されることのある、天然に産出する粘土には、モンモリロナイト系及びカオリン系が包含される。それらの系には、主要無機成分がハロイサイト(halloysite)、カオリナイト、ディッカイト(dickite)、ナクライト(nacrite)又はアノーキサイト(anauxite)であるディキシー(Dixie)粘土、マクナミー(McNamee)粘土、ジョージア(Georgia)粘土及びフロリダ(Florida)粘土等として通常知られているカオリン及びサブ−ベントナイトが包含される。セピオライト(sepiolite;海泡石)及びアタバルガイト(attapulgite)のような繊維質粘土もまた、担体として用いることができる。そのような粘土は、当初採掘されたままの未加工状態で用いられることもあるし、又は最初、か焼、酸処理若しくは化学的修飾にかけられることもある。
【0010】
分子篩と結合剤の混合物は、様々な物理的形状に形成することができる。一般的に言えば、該混合物は、粉末、顆粒又は成形物[例えば、2.5メッシュ(タイラー)スクリーンを通過するのに十分である粒径を有する押出し物(extrudate)]の形態であることもあり、48メッシュ(タイラー(Tyler))スクリーン上に保持されることもある。例えば、有機結合剤を用いた押し出し(extrusion)によって触媒が成形される場合、該混合物は、乾燥前に押し出すことができるか、又は乾燥し若しくは部分的に乾燥し、次いで、押し出すことができる。ゼオライトはまた、蒸気で処理することができる。蒸気処理は、結晶格子が酸によって攻撃されるのを安定化させるのに役立つ。乾燥された押出し物は次いで、か焼手段を用いて、熱的に処理される。
か焼温度は、390°Fから1100°Fに及ぶことがある。か焼は、0.5時間から5時間以上に及ぶ時間の間行われ、触媒として活性な、炭化水素の転化プロセスにおいてとりわけ有用な生成物が生成される。
【0011】
次いで、か焼された押出し物又は成形粒子には、Ca、Cr、Mg、La、Na、Pr、Sr、K及びNdから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属が添加される。これらの金属は、触媒上の強酸部位の数を減少させ、そうすることにより、異性化に対する分解(cracking)の選択性を低下させることによって、該触媒の性能を変性するそれら金属の能力が知られている。変性には、触媒中の酸又はカチオンの部位がブロックされる(blocked)ような具合に、金属の分散を増大することも包含されることがある。金属の添加は、含浸及びイオン交換を包含する様々な技術によって達成することができる。
典型的なイオン交換には、前記の押出し物又は粒子に、所望の1種以上のカチオンの塩を含有する溶液を接触させることが包含される。様々な塩を用いることができるが、塩化物及び他のハロゲン化物、硝酸塩並びに硫酸塩は、とりわけ好ましい。典型的なイオン交換技術は、米国特許第3,140,249号;同第3,140,251号;及び同第3,140,253号明細書を含む様々な特許明細書に開示されている。イオン交換は、前記の押出し物又は粒子をか焼する前か又はか焼した後に行うことができる。か焼は、400°Fから1100°Fに及ぶ温度で実施する。
【0012】
所望の置換性カチオンの塩溶液の置換を行った後、前記の押出し物又は粒子は、149°F〜約599°Fの範囲の温度で乾燥させる。その押出し物又は粒子には、次いで、含浸のような技術を用いて、VIII族金属を更に添加して、水素化機能を高める。米国特許第4,094,821号明細書に開示されているように、変性用金属とVIII族金属とを同時に共含浸することが、望ましいことがある。VIII族金属は、白金、パラジウム、又はそれら2種の混合物であるのが好ましい。添加を行った後、該材料は、空気中又は不活性ガス中、500°F〜900°Fの温度でか焼することができる。
【0013】
供給原料
本発明は、灯油及びジェット燃料のような比較的軽質の蒸留留分から、全ての原油、常圧蒸留残油、真空塔残油、減圧塔残油(vacuum tower residua)、循環油、合成原油(例えば、シェール油、タール油、等)、軽油、減圧軽油、ろう下油、フィッシャー・トロプシュ誘導ワックス及び他の重油のような高沸点原料油に及ぶ様々な供給原料を脱ろうするのに用いることができる。16個以上の炭素原子を有する直鎖n−パラフィン単独又は僅かに枝分かれした鎖のパラフィンは、本明細書では時々ワックスと称する。該供給原料はしばしば、一般的に約350°F以上で沸騰するC10+供給原料である。なぜなら、より軽質の油は通常、有意な量のろう成分を含有していないからである。しかし、本方法は、含ろう留出原料油(例えば、軽油、灯油及びジェット燃料を包含する中間油留分原料油、潤滑油原料油、暖房用油、並びに、他の蒸留留分であってそれらの流動点及び粘度がある仕様限界内に維持される必要のある該留分)に関してとりわけ有用である。潤滑油原料油は、一般には230℃(450°F)を超えて、更に一般には315℃(600°F)を超えて沸騰する。水素化処理された原料油は、この種の原料油の好都合な源であり、他の蒸留留分の好都合な源でもある。なぜなら、それら原料油は一般に、有意な量のろう質n−パラフィンを含有しているからである。本方法に係る供給原料は一般に、パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族化合物及びへテロ環式化合物を包含するC10+供給原料であって、該供給原料のろう質に寄与する、かなりの割合のより大きい分子量のn−パラフィン及び僅かに枝分かれしているパラフィンを含有するC10+供給原料であろう。n−パラフィン及び僅かに枝分かれしているパラフィンは、処理される間、ある分解又は水素化分解を受けて、低粘度生成物を与える液体範囲の物質を形成する。しかし、引き起こされる分解の程度は制限され、その結果、供給原料の沸点よりも低い沸点を有する生成物の収率は減少し、それによって、該供給原料の経済的価値は維持される。
【0014】
典型的な供給原料には、水素化処理されたか又は水素化分解された軽油、水素化処理された潤滑油ラフィネート、ブライトストック、潤滑油原料油、合成油、ろう下油(foots oils)、フィッシャー・トロプシュ合成油、高流動点ポリオレフィン、直鎖αオレフィンワックス、スラックワックス(slack waxes)、脱油されたワックス及びマイクロクリスタリンワックスが包含される。
【0015】
条件
本発明の異性化/脱ろうプロセスが実施される条件には一般に、約392°F〜約800°Fの範囲内の温度、及び約15〜約3000psigの圧力が含まれる。該圧力は、約100〜約2500psigであるのがより好ましい。接触させることの間の液空間速度は、一般に約0.1〜約20であり、より好ましくは約0.1〜約5である。接触させることは、水素の存在下で実施するのが好ましい。[水素]対[炭化水素]比は、約2000〜約10,000標準立方フィートH/バレル炭化水素、より好ましく約2500〜約5000標準立方フィートH/バレル炭化水素の範囲に入るのが好ましい。
本発明に係る生成物は、例えばハイドロフィニッシング(hydrofinishing)によって、更に処理することができる。ハイドロフィニッシングは一般的に、金属の水素化触媒(例えば、アルミナに担持された白金)の存在下で実施することができる。ハイドロフィニッシングは、約374°F〜約644°Fの温度、及び約400psig〜約3000psigの圧力で実施することができる。このようなハイドロフィニッシングは、例えば、米国特許第3,852,207号明細書に記述されている。この米国特許明細書は、言及することによって本明細書に組み入れる。
【0016】
(実施例1)
n−ヘキサデカンの水素化異性化について、分解される生成物よりも異性化されるnC16への高い選択性を与える触媒を捜すという観点で試験を行う。これらの結果は、C10以上の分子のn−パラフィンの異性化を行うために有用な触媒を選定するのに価値があるものと期待することができる。この種の初期の試験は、米国特許第5,282,958号明細書(第5欄第25行〜55行を参照されたい)に記述されている。
本実施例における諸反応は、等温条件下で行って温度効果を除去した。転化率は、空間速度によって調整することができた。材料は全て、最初、630°Fの水素流の中で2時間の間還元した。一旦実験を開始すれば、該条件は、Pd0.5重量%が添加された触媒であって、20〜40メッシュのチップとして調製され、下向き流れの反応器の中に充填された触媒0.50gを使用することとした。水素圧は1200psigであり、水素は160ml/分で流動させた。
【0017】
Pdの取り込みは、160°Fで最低5時間イオン交換を行うことによって実施し、次いで、濾過し、洗浄し、次いで、900°Fでか焼した。
これらの反応条件の下、異性化されたnC16に対するPd SSZ−32触媒の選択性は、転化率93%で69%であった。
【0018】
(実施例2)
追加的金属で処理して該ゼオライトの酸度を変性することによって、変性SSZ−32触媒を製造した。イオン交換を用いることができる場合、(1)70℃に加熱した水300ccの中にゼオライト10gを導入し、(2)10分間撹拌し、(3)次いで、交換用金属塩を導入する手順を続けた。一例として、Ca(OH) 1.00gを添加し、結果として得られた交換効率は70%であった。
該材料は、実施例1の場合のようなPd処理を行なう前、濾過、洗浄及び乾燥を行った後、900°Fまでか焼した。570°Fで行ったことを除き実施例1で実証されるような触媒を作動させることによって、転化率93%で、異性化されたnC16に対する80%の選択率が得られた。これは、同一の転化率及び実験温度で69%の選択率を生じる実施例1の触媒に匹敵する。該ゼオライトをCa(OH)で処理することによって、nC16供給原料に対する改善された異性化触媒が得られた。
【0019】
(実施例3〜実施例11)
異なる変性用金属を用いたことを除き実施例2の場合のようにして、一連の触媒を製造して、考慮することのできる条件の範囲を実証した。SSZ−32ゼオライトにおける、0.3〜0.4の金属/Al部位の比が得られるような具合に、変性用金属の添加を選定した。用いたゼオライトのSiO/Alは、35であった。
【0020】
【表1】

【0021】
幾種類かの金属処理によって、nC16に対する異性化選択率は、典型的には5%もの大きい量だけ改善され得ることが分かる。観測される効果は一般的に、炭化水素の切断を減らしてライトガス(light gases)を生成し、そうすることによって、異性化を高めるやり方で結合Pd/ゼオライト触媒に影響を与える能力を、金属変性剤が有していることであるように思われる。
【0022】
(実施例12)
ナカガワ(Nakagawa)及びゾーンズ(Zones)(米国特許第5,707,600号明細書第10欄第50行〜61行)に記述されているようにして、TONゼオライトの試料を製造した。該ゼオライトは、次いで、実施例1及び実施例8の場合のように処理した。ヘキサデカンの転化試験において、実施例8の場合のようなゼオライトを用いて、金属を含有するTONゼオライトを変性することによっても、改善された異性化選択率が得られることが分かった。その改善された触媒は、69%の選択率を与え、この特定のTON試料のための基準ケース(金属の添加なし)の64%より優れた。再び約5%の改善が見られた。この実験によって、他の一次元十リング(10-ring)ゼオライトは都合よく変性することができることが実証される。
【0023】
(実施例13〜実施例16)
ゼオライトを追加的金属で変性する場合、変性のための最適濃度を説明することができることが分かった。表2の結果となる本実施例において、Caによる処理、及びその後の、実施例4の場合のような触媒試験に関し、Caの添加を増やせば、結果的に異性化の選択率がある程度増大することが分かる。実施例4〜実施例11における他の金属の多くは、最適値は各々の場合と同一ではないであろうが、類似の挙動を示すであろう。
【0024】
【表2】

【0025】
実施例15は、Pd/Ca/H−SSZ−32上のCa/Alの最適比を表わしている。最適比は、SSZ−32上で用いられる異なる金属によって変わる。例えば、SSZ−32上の0.35のSr/Alでは、最善の転化率及び選択率が得られないかも知れない。最適比は、各々のゼオライトと金属との組み合せによって変わる。
【0026】
(実施例17)
アルミナ、シリカ又は他の耐火物と結合したゼオライトに対する、これら、金属による変性処理は、重要である場合がある。H−SSZ−32ゼオライトは、キャタパル(Catapal)Bと、当業者によって典型的に実施されており、米国特許第5,376,260号明細書(第9欄第65行〜第11欄第19行)に記述されているしゃく解手段(peptizing procedure)(HNO)とを用いることによって、アルミナと結合させた。その押出し物は、解膠した混合物を、ダイ(die)を通して押し込めて、1/16インチの材料を作ることによって製造した。この押出し物は、続いて、乾燥させ、次いで、様々な温度までか焼した。Pdを用いた後続の処理と、続く、ヘキサデカンを異性化するための試験とによって、1100°F(押出し物のかなり典型的なか焼温度)未満でか焼した押出し物で作った触媒は、より良好に作動することが分かった。
【0027】
実施例17の処置の後、押出し物をゼオライト65%で形成し;次いで、Pdを添加する前、700°Fまでか焼し;次いで、該材料を再か焼した。変性用金属を、後続のPd工程の前に添加する場合、この押出し物から、もう1種の触媒を製造した。その変性は、該ゼオライト中のCa/Al原子比が0.45となるようなものであった。金属による変性を行なわなかったPd/ゼオライト/押出し物系の異性化選択率は、転化率92%で67%であったのに対し、変性された触媒は、同一条件下、選択率76%まで改善された。この実施例によると、一次元十リングゼオライトの、金属による変性の利点によって、それらゼオライトの(C10以上に対する)パラフィン異性化能力は、それらゼオライトが耐火性酸化物と結合している場合でも、改善され得ることが実証される。
【0028】
(実施例18)
実施例17の場合のようにして押出し物を製造したが、ゼオライト含有量は、45%に減少させた。この材料は、2つの部分に分割した。一方は、処理して実施例17の場合のような触媒にして、Pdのみを含有する材料を得た。第2の部分は、CaとPdの両方を含有し、実施例17におけるそれの対応物(counterpart)として製造した。ゼオライト含有量45重量%、アルミナ55重量%の、非金属変性の(non-metal modified)触媒は、実施例17のそれ未満で作用し、転化率93%で僅か約50%の異性化選択率を与えた。しかし、カルシウムで変性した、同一のゼオライト45%の材料は、選択率が75%付近まで激増した。これらの結果は、実施例17と比較すると、金属を用いた変性によるアプローチは、ゼオライトの含有量が変化するとしても、結合剤中のゼオライトの異性化選択率を上昇させるのに有効であることを示している。
【0029】
(実施例19〜実施例21)
該押出し物の性能は、注意深く選定された蒸気処理によっても、有利に影響を受けることがある。一連の押出し物を、一連の実験時間の間、900°Fで蒸気処理し、次いで、完成触媒に転化して試験を行い、570°FでのnC16の異性化選択率を求めた。
【0030】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素供給原料を脱ろうして異性化生成物を生成するためのプロセスで用いるのに適した脱ろう触媒を製造する方法において、前記供給原料は、10個以上の炭素原子を有する直鎖パラフィン及び僅かに枝分かれした鎖のパラフィンを含有しており、
(a)約4.2A〜約4.8Aの間の短軸と約5.0A〜約7.0Aの間の長軸とを有する一次元細孔を有する一次元十リング分子篩を合成する工程;
(b)前記分子篩を、耐火性無機酸化物キャリヤの前駆体及び水溶液と混合して、約5〜約60重量%の分子篩含有量を有する混合物を形成する工程;
(c)工程(b)からの混合物を押し出すか又は成形して、押出し物又は成形粒子を形成する工程;
(d)工程(c)の押出し物又は成形粒子を乾燥させる工程;
(e)工程(d)の乾燥済み押出し物又は成形粒子をか焼する工程;
(f)工程(e)のか焼済み押出し物又は成形粒子を、Ca、Cr、Mg、La、Ba、Na、Pr、Sr、K及びNdから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属で変性して、金属変性済み押出し物又は成形粒子を調製する工程;
(g)工程(f)の金属添加済み押出し物又は成形粒子を乾燥させる工程;
(h)工程(g)の金属変性済み押出し物又は成形粒子にVIII族金属を添加して触媒前駆体を調製する工程;
(i)工程(h)の触媒前駆体を乾燥させる工程;
(j)工程(i)の乾燥済み触媒前駆体をか焼して、完成された結合型脱ろう触媒を形成する工程;
を包含する、上記製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法によって製造された触媒。
【請求項3】
前記分子篩は、SAPO−11、SAPO−31、SAPO−41、SM−3及びSM−6から成る群から選定する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Ca、Cr、Mg、La、Ba、Na、Pr、Sr、K及びNdから成る群から選ばれる少なくとも1種の変性用金属は、工程(a)の間、工程(b)の間、又は工程(a)と工程(b)の間のある時点で前記分子篩に添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の工程(f)〜(j)は、排除されて、次の諸工程:
(f)工程(e)の金属変性済み押出し物又は成形粒子にVIII族金属を添加して触媒前駆体を調製する工程;
(g)工程(f)の触媒前駆体を乾燥させる工程;
(h)工程(g)の乾燥済み触媒前駆体をか焼して、完成された結合型脱ろう触媒を形成する工程
と取り換えられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(f)〜(j)は、排除されて、次の諸工程:
(f)工程(e)のか焼済み押出し物又は成形粒子に、Ca、Cr、Mg、La、Ba、Na、Pr、Sr、K及びNdから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属と、VIII族金属から選ばれる少なくとも1種の金属とを添加して触媒前駆体を調製する工程;
(g)工程(f)の触媒前駆体を乾燥させる工程;
(h)工程(i)の乾燥済み触媒前駆体をか焼して、完成された結合型脱ろう触媒を形成する工程
と取り換えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)で合成される分子篩は、MTTゼオライト、TONゼオライト又はFERゼオライトから成る群から選定する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
MTTゼオライトは、SSZ−32、ZSM−23、EU−13、ISI−4及びKZ−1を更に包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
TONゼオライトは、Theta−1、ISI−1、KZ−2、NU−10及びZSM−22を更に包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
FGRゼオライトは、FU−9、ZSM−35、ISI−6及びNU−23を更に包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)の水溶液は酸性である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程(e)のか焼は1100°F以下の温度で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(e)のか焼は700°F以下の温度で行う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記耐火性無機酸化物は、アルミナ及びシリカから成る群から選定する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記押出し物は、金属を添加する前、蒸気で処理する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
VIII族金属は、白金、パラジウム、及び/又はそれらの混合物から成る群から選定する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
炭化水素供給原料を脱ろうして異性化生成物を生成するための方法において、前記供給原料は、10個以上の炭素原子を有する直鎖パラフィン及び僅かに枝分かれしたパラフィンを含有しており、前記供給原料を、水素の存在下、異性化条件の下で次の諸工程:
(a)約4.2A〜約4.8Aの間の短軸と約5.0A〜約7.0Aの間の長軸とを有する一次元細孔を有する十リング分子篩を合成する工程;
(b)前記分子篩を、耐火性無機酸化物キャリヤの前駆体及び水溶液と混合して、約5〜約60重量%の分子篩含有量を有する混合物を形成する工程;
(c)工程(b)からの混合物を押し出すか又は成形して、押出し物又は成形粒子を形成する工程;
(d)工程(c)の押出し物又は成形粒子を乾燥させる工程;
(e)工程(d)の乾燥済み押出し物又は成形粒子をか焼する工程;
(f)工程(e)のか焼済み押出し物又は成形粒子を、Ca、Cr、Mg、La、Ba、Na、Pr、Sr、K及びNdから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属で変性して、金属変性済み押出し物又は成形粒子を調製する工程;
(g)工程(f)の金属変性済み押出し物又は成形粒子を乾燥させる工程;
(h)工程(g)の金属変性済み押出し物又は成形粒子にVIII族金属を添加して触媒前駆体を調製する工程;
(i)工程(h)の触媒前駆体を乾燥させる工程;
(j)工程(i)の乾燥済み触媒前駆体をか焼して、完成された結合型脱ろう触媒を形成する工程
に従って製造される中間孔径分子篩を含有する触媒と接触させることを包含する、上記生成方法。
【請求項18】
前記分子篩は、SAPO−11、SAPO−31、SAPO−41、SM−3及びSM−6から成る群から選定する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
Ca、Cr、Mg、La、Ba、Na、Pr、Sr、K及びNdから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属は、工程(a)の間、工程(b)の間、又は工程(a)と工程(b)の間のある時点で前記分子篩に添加する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
請求項17に記載の工程(f)〜(j)は、排除されて、次の諸工程:
(f)工程(e)の金属変性済み押出し物又は成形粒子にVIII族金属を添加して触媒前駆体を調製する工程;
(g)工程(f)の触媒前駆体を乾燥させる工程;
(h)工程(g)の乾燥済み触媒前駆体をか焼して、完成された結合型脱ろう触媒を形成する工程
と取り換えられる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
工程(f)〜(j)は、排除されて、次の諸工程:
(f)工程(e)のか焼済み押出し物又は成形粒子に、Ca、Cr、Mg、La、Ba、Na、Pr、Sr、K及びNdから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属と、VIII族から選ばれる少なくとも1種の金属とを添加して触媒前駆体を調製する工程;
(g)工程(f)の触媒前駆体を乾燥させる工程;
(h)工程(i)の乾燥済み触媒前駆体をか焼して、完成された結合型脱ろう触媒を形成する工程
と取り換えられる、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
工程(a)で合成される分子篩は、MTTゼオライト、TONゼオライト又はFERゼオライトから成る群から選定する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
MTTゼオライトは、SSZ−32、ZSM−23、EU−13、ISI−4及びKZ−1を更に包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
TONゼオライトは、Theta−1、ISI−1、KZ−2、NU−10及びZSM−22を更に包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
FERゼオライトは、FU−9、ZSM−35、ISI−6及びNU−23を更に包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
工程(b)の水溶液は酸性である、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記供給原料は、水素化処理されたか又は水素化分解された軽油、水素化処理された潤滑油ラフィネート、ブライトストック、潤滑油原料油、合成油、ろう下油、フィッシャー・トロプシュ合成油、高流動点ポリオレフィン、直鎖αオレフィンワックス、スラックワックス、脱油されたワックス及びマイクロクリスタリンワックスから成る群から選定する、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
VIII族金属は、白金、パラジウム、及び/又はそれらの混合物から成る群から選定する、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記の接触させることは、450〜800°Fの温度、及び約15psig〜約3000psigの範囲の圧力で実施する、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
前記圧力は、約100psig〜約2500psigの範囲である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
接触させることの間の液空間速度は、約0.1〜約20である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記液空間速度は、0.5〜約5である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記炭化水素供給原料は、異性化を行なう前、325〜800°Fの範囲の温度で水素化処理する、請求項17に記載の方法。
【請求項34】
異性化の後のハイドロフィニッシング工程を更に包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項35】
ハイドロフィニッシングは、約325〜約590°Fの範囲の温度、及び約400psig〜約3000psigの範囲の圧力で実施する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
異性化された生成物のハイドロフィニッシングを更に包含する、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2006−523136(P2006−523136A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507061(P2006−507061)
【出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/007378
【国際公開番号】WO2004/085445
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】