説明

炭化珪素単結晶の製造装置および製造方法

【課題】SiC単結晶を凸面成長させられるようにする。
【解決手段】SiC単結晶製造装置1のうち加熱容器8における反応容器9側の端部に縮径部8dを設け、この縮径部8dにより原料ガス3の流束がSiC単結晶の成長面上において面内分布を持つようにする。これにより、SiC単結晶を凸面成長させることが可能となる。したがって、外周部から中心部に向かって多系などのマクロ欠陥、基底面転位などのミクロ欠陥が伸展するという問題が発生することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(以下、SiCという)単結晶の製造装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、SiC単結晶製造装置として、例えば特許文献1に示される構造の製造装置が提案されている。このSiC単結晶製造装置では、導入管を通じてSiCの原料ガスを加熱容器内に導入すると共に加熱容器にて原料ガスを分解し、分解した原料ガスを反応容器に備えられた種結晶に導いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−339029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図6は、従来のSiC単結晶製造装置における原料ガス流の様子を示した模式的断面図である。この図に示されるように、従来のSiC単結晶製造装置は、加熱容器J1における原料ガスの流動経路下流側が全面開口させられた状態になっている。このため、図中矢印で示したように、原料ガス流が均一に反応容器J2に備えられた種結晶J3に当たることになる。したがって、種結晶J3上へのSiC単結晶の成長は、SiC単結晶の表面が平坦状に成長するフラット面成長、もしくは中央部が凹状となって成長する凹面成長となる傾向にある。しかしながら、フラット面成長や凹面成長では、外周部から中心部に向かって多系などのマクロ欠陥、基底面転位などのミクロ欠陥が伸展するという問題が発生する。このため、外周部からの結晶欠陥を抑制して成長させられるような成長形態、つまりSiC単結晶の成長表面が凸状となって成長する凸面成長となるようにすることが望まれる。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、SiC単結晶を凸面成長させられるSiC単結晶の製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、中空円筒状部材を有した構造とされ、該中空円筒状部材の一端側から原料ガス(3)を導入すると共に、該中空円筒状部材の他端側から原料ガス(3)を導出することで種結晶(5)に対して供給する加熱容器(8)に対して、中空円筒状部材の開口径を縮小する縮径部(8d)を備え、該縮径部(8d)の開口部が台座(9a)の外縁を加熱容器(8)の中心軸方向に投影した領域内にすべて含まれるように構成されていることを特徴としている。
【0007】
このように、SiC単結晶製造装置のうち加熱容器(8)における台座(9a)側の端部に縮径部(8d)を設け、この縮径部(8d)により原料ガス(3)の流束がSiC単結晶の成長面上において面内分布を持つようにしている。これにより、SiC単結晶を凸面成長させることが可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、縮径部(8d)は、台座(9a)側である他端側の面が台座(9a)側に向けて徐々に開口径が拡大するテーパ面(8e)を備えていることを特徴としている。
【0009】
このように、テーパ面(8e)を設けることにより、原料ガス(3)の流束がSiC単結晶の成長面上において広がるようにできる。これにより、SiC単結晶の成長表面のうち縮径部8dの開口部と対応する場所にのみ集中的にガスが当たることを抑制できる。このため、局所的にSiC単結晶が円錐状に成長することを防止でき、SiC単結晶の表面全体で凸面成長を行うことが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、縮径部(8d)は、加熱容器(8)の中心軸方向に向かうほど厚みが薄くされていることを特徴としている。
【0011】
このようにすれば、縮径部(8d)の開口径が熱エッチング等によって広がっていくため、SiC単結晶の成長に伴って、つまりSiC単結晶が徐々に大径化するのに伴って、縮径部(8d)の開口部の開口径が徐々に広がるようにできる。したがって、大径化したSiC単結晶に対しても広い範囲で原料ガス(3)を当てることが可能となり、SiC単結晶を良好に凸面成長させることが可能となる。好ましくは、請求項4に記載したように、縮径部(8d)の厚みの増加率が加熱容器(8)の中心軸から離れるほど小さくされるようにすれば、SiC単結晶が大径化するほど縮径部(8d)の開口部の開口径の拡大が遅くなるようにでき、よりSiC単結晶の大径化の速度に合せて縮径部(8d)の開口部の大径化も進めることが可能となる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明をSiC単結晶の製造方法として把握したものである。このような製造方法により、請求項1に記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【0013】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるSiC単結晶製造装置の断面図である。
【図2】図1に示すSiC単結晶製造装置を用いたSiC単結晶の製造中の様子を示したイメージ図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかるSiC単結晶製造装置を用いたSiC単結晶の製造中の様子を示したイメージ図である。
【図4】本発明の第3実施形態にかかるSiC単結晶製造装置を用いたSiC単結晶の製造中の様子を示したイメージ図である。
【図5】第3実施形態の他の例にかかるSiC単結晶製造装置を用いたSiC単結晶の製造中の様子を示したイメージ図である。
【図6】従来のSiC単結晶製造装置における原料ガス流の様子を示した模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0016】
(第1実施形態)
図1に、本実施形態にかかるSiC単結晶製造装置1の断面図を示す。以下、この図を参照してSiC単結晶製造装置1の構造について説明する。
【0017】
図1に示すSiC単結晶製造装置1は、底部に備えられた流入口2を通じてキャリアガスと共にSiおよびCを含有するSiCの原料ガス3(例えば、シラン等のシラン系ガスとプロパン等の炭化水素系ガスの混合ガス)を供給し、上部の流出口4を通じて排出することで、SiC単結晶製造装置1内に配置したSiC単結晶基板からなる種結晶5上にSiC単結晶を結晶成長させるものである。
【0018】
SiC単結晶製造装置1には、真空容器6、第1断熱材7、加熱容器8、反応容器9、外周壁10、パイプ材11、第2断熱材12および第1、第2加熱装置13、14が備えられている。
【0019】
真空容器6は、石英などで構成され、中空円筒状を為しており、キャリアガスや原料ガス3の導入導出が行え、かつ、SiC単結晶製造装置1の他の構成要素を収容すると共に、その収容している内部空間の圧力を真空引きすることにより減圧できる構造とされている。この真空容器6の底部に原料ガス3の流入口2が設けられ、上部(具体的には側壁の上方位置)に原料ガス3の流出口4が設けられている。
【0020】
第1断熱材7は、円筒等の筒形状を為しており、真空容器6に対して同軸的に配置され、中空部により原料ガス導入管7aを構成している。第1断熱材7は、例えば黒鉛や表面をTaC(炭化タンタル)にてコーティングした黒鉛などで構成される。
【0021】
加熱容器8は、例えば黒鉛や表面をTaC(炭化タンタル)にてコーティングした黒鉛などで構成され、反応容器9よりも原料ガス3の流動経路上流側に配置されている。この加熱容器8により、流入口2から供給された原料ガス3を種結晶5に導くまでに、原料ガス3に含まれたパーティクルを排除しつつ、原料ガス3を分解している。
【0022】
具体的には、加熱容器8は、中空円筒状部材を有した構造とされ、本実施形態の場合は有底円筒状部材で構成されている。加熱容器8には、底部に第1断熱材7の中空部と連通させられるガス導入口8aが備えられ、第1断熱材7の中空部を通過してきた原料ガス3がガス導入口8aを通じて加熱容器8内に導入される。また、加熱容器8には、邪魔板8bが備えられ、この邪魔板8bに原料ガス3が衝突することで原料ガス3の流動経路が曲げられ、原料ガス3に含まれるパーティクルの排除と原料ガス3のミキシングが行われると共に、未分解の原料ガス3が種結晶5側に供給されることが抑制されている。
【0023】
例えば、邪魔板8bは、有底円筒状で、側壁に複数の連通孔8cが形成された構造とされ、邪魔板8bの開口部側、つまり底部と反対側の端部が加熱容器8の底部のガス導入口8aを向けて配置される。このような構造の場合、ガス導入口8aから導入された原料ガス3が邪魔板8bの底面に衝突するため、邪魔板8bに衝突したパーティクルが加熱容器8の底部に落下して原料ガス3から排除される。そして、流動経路が加熱容器8の軸方向と平行な方向から垂直な方向に変えられた原料ガス3が、連通孔8cを通じて加熱容器8における邪魔板8bよりも流動経路下流側に導かれる。
【0024】
さらに、本実施形態では、加熱容器8のうち底部とは反対側となる反応容器9側の端部、つまり原料ガス3の流動経路下流側の端部において、加熱容器8の内径を縮小させる縮径部8dが備えられている。この縮径部8dは、加熱容器8における原料ガス3の流動経路下流側の端部の開口径を種結晶5の径よりも小さくするものであり、例えば反応容器8における有底円筒状部分における底部と反対側の端部上に置かれている。この縮径部8dによって原料ガス3を絞ることができ、原料ガス3の流束がSiC単結晶の成長面上において面内分布を持つようにできる。このため、例えば原料ガス3が選択的に種結晶5の中央付近に主に当たるようにできる。
【0025】
具体的には、縮径部8dの開口部は、種結晶5が配置される台座9aと対応する場所に設けられ、台座9aの寸法よりも小さくされている。換言すれば、台座9aの外縁を加熱容器8の中心軸方向に投影した領域内に、縮径部8dの開口部がすべて含まれるように縮径部8dが構成されている。このため、台座9aに対して種結晶5が配置されたときに、縮径部8dの開口部が種結晶5と対向する位置に配置され、縮径部8dの開口部から導出された原料ガス3が種結晶5の一部に確実に当たるようになる。
【0026】
反応容器9は、原料ガス3が流れる空間を構成しており、有底筒状で構成されている。反応容器9は、本実施形態では、有底円筒状とされており、加熱容器8の中心軸と同軸的に配置され、例えば黒鉛や表面をTaC(炭化タンタル)にてコーティングした黒鉛などで構成される。反応容器9の底部には、円形状の台座9aが備えられており、この台座9aに対して同等寸法の径を有する種結晶5が貼り付けられる。この反応容器9の開口部内に加熱容器8の一端が挿入され、加熱容器8の一端と反応容器9の底部との間に形成される空間を反応室として、反応容器9の底部に配置された種結晶5の表面にSiC単結晶が成長させられる。
【0027】
外周壁10は、例えば黒鉛や表面をTaC(炭化タンタル)にてコーティングした黒鉛などで構成され、加熱容器8や反応容器9の外周を囲みつつ、反応容器9に導入された原料ガス3を流出口4側に導く。具体的には、外周壁10には周方向において等間隔に配置された複数個の連通孔10aが備えられている。また、外周壁10のうち連通孔10aよりも紙面上方、つまり反応容器9側の部位において、外周壁10の内壁が反応容器9の開口部の外周に接しており、反応容器9と外周壁10との間の隙間が無くされている。このため、反応容器9内において種結晶5に供給された後の原料ガス3の残りが連通孔10aを通じて外周壁10よりも外側に導かれたのち、反応容器9と外周壁10との間ではなく外周壁10と第2断熱材12の間の隙間を通じて流出口4に導かれるようになっている。
【0028】
パイプ材11は、一端が反応容器9の底部のうち加熱容器8と反対側の部位に接続されており、他端が図示しない回転引上機構に接続されている。このような構造により、パイプ材11と共に反応容器9、種結晶5およびSiC単結晶の回転および引き上げが行え、SiC単結晶の成長面が所望の温度分布となるようにしつつ、SiC単結晶の成長に伴って、その成長表面の温度が常に成長に適した温度に調整できる。このようなパイプ材11も、例えば黒鉛や表面をTaC(炭化タンタル)にてコーティングした黒鉛などで構成される。
【0029】
第2断熱材12は、真空容器6の側壁面に沿って配置され、中空円筒状を為している。この第2断熱材12により、ほぼ第1断熱材7や加熱容器8、反応容器9および外周壁10等が囲まれている。この第2断熱材12も、例えば黒鉛や表面をTaC(炭化タンタル)にてコーティングされた黒鉛などで構成される。
【0030】
第1、第2加熱装置13、14は、例えば誘導加熱用コイルやヒータなどで構成され、真空容器6の周囲を囲むように配置されている。これら第1、第2加熱装置13、14は、それぞれ独立して温度制御できるように構成されている。このため、より細やかな温度制御を行うことができる。第1加熱装置13は、加熱容器8と対応した位置に配置されている。第2加熱装置14は、反応容器9により構成される反応室に対応した位置に配置されている。このような配置とされているため、第1、第2加熱装置13、14を制御することにより、反応室の温度分布をSiC単結晶の成長に適した温度に調整できると共に、加熱容器8の温度をパーティクルの除去に適した温度に調整できる。
【0031】
続いて、このように構成されたSiC単結晶製造装置1を用いたSiC単結晶の製造方法について説明する。図2は、図1に示すSiC単結晶製造装置1を用いたSiC単結晶の製造中の様子を示したイメージ図であり、加熱容器8のうち反応容器9側の端部近傍のみを示している。
【0032】
まず、第1、第2加熱装置13、14を制御し、所望の温度分布を付ける。すなわち、種結晶5の表面において原料ガス3が再結晶化されることでSiC単結晶が成長しつつ、加熱容器8内において再結晶化レートよりも昇華レートの方が高くなる温度となるようにする。
【0033】
また、真空容器6を所望圧力にしつつ、必要に応じてArガスなどの不活性ガスによるキャリアガスや水素などのエッチングガスを導入しながら原料ガス導入管7aを通じて原料ガス3を導入する。これにより、図1および図2中の破線矢印で示したように原料ガス3が流動し、種結晶5に供給されてSiC単結晶を成長させることができる。
【0034】
このとき、原料ガス3にパーティクルが含まれていることがある。パーティクルは、例えば原料ガス3中のSi成分もしくはC成分の凝集または黒鉛で構成された部材の通路内面の剥離や通路内面に付着したSiCの剥離などによって形成され、原料ガス3に含まれて流動させられる。しかしながら、パーティクルを含む原料ガス3を邪魔板8bに衝突させて落下させることができるため、種結晶5の表面やSiC単結晶の成長表面に辿り着かないようにできる。したがって、高品質なSiC単結晶を製造することができる。
【0035】
そして、本実施形態では、加熱容器8における反応容器9側の端部に縮径部8dを設け、この縮径部8dによって図2の破線矢印で示したように原料ガス3が例えば種結晶5の中央近くに当たるようにできる。このため、種結晶5に成長するSiC単結晶が1つの結晶核のみから成長するようにでき、SiC単結晶の成長表面が凸状となって成長する凸面成長となるようにすることが可能となる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態では、SiC単結晶製造装置1のうち加熱容器8における反応容器9側の端部に縮径部8dを設け、この縮径部8dにより原料ガス3の流束がSiC単結晶の成長面上において面内分布を持つようにしている。これにより、SiC単結晶を凸面成長させることが可能となる。したがって、複数の成長核から成長したもの同士が接触して多結晶が形成されるなどの問題が発生することを防止できる。
【0037】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して加熱容器8の構成を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0038】
図3は、本実施形態にかかるSiC単結晶製造装置1に備えられる加熱容器8のイメージ図であり、加熱容器8のうち反応容器9側の端部近傍のみを示している。
【0039】
この図に示されるように、加熱容器8に備えた縮径部8dにおける開口部から台座9a側に向けて徐々に開口径が広がるテーパ面8eが形成されている。このテーパ面8eにより、例えば、縮径部8dの開口部を中心としてそこから径方向に広がるに連れて徐々に原料ガス3の流束が減少していくような分布を設けることができる。このため、原料ガス3の流束が分布を持って種結晶5に当たるようにでき、SiC単結晶の成長表面のうち縮径部8dの開口部近辺にのみ集中的にガスが当たることを抑制することが可能となる。
【0040】
例えば、第1実施形態のように、単に縮径部8dを設けた構造の場合には、SiC単結晶の成長表面のうち縮径部8dの開口部と対応する場所にのみ集中的に原料ガス3が当たる可能性がある。このような場合、原料ガス3が集中して当たる部分で局所的にSiC単結晶が円錐状に成長することがある。しかしながら、本実施形態のように、テーパ面8eを設けて原料ガス3の流束にSiC単結晶の成長面上において面内分布を設けることにより、SiC単結晶の成長表面のうち縮径部8dの開口部近辺にのみ集中的にガスが当たることを抑制できる。このため、局所的にSiC単結晶が円錐状に成長することを防止でき、SiC単結晶の表面全体で凸面成長を行うことが可能となる。
【0041】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態も、第1実施形態に対して加熱容器8の構成を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0042】
図4は、本実施形態にかかるSiC単結晶製造装置1に備えられる加熱容器8のイメージ図であり、加熱容器8のうち反応容器9側の端部近傍のみを示している。
【0043】
この図に示されるように、本実施形態では、縮径部8dの厚みを変化させており、加熱容器8の中心軸方向に向かうほど縮径部8dの厚みが薄くなるようにしている。このような縮径部8dを備えた加熱容器8では、SiC単結晶の成長を続けていくと、水素によるエッチングや熱エッチングもしくは縮径部8dの一部が昇華して原料として供給されることにより、縮径部8dの開口部の開口径が徐々に広がっていく。このため、SiC単結晶の成長に伴って、つまりSiC単結晶が徐々に大径化するのに伴って、縮径部8dの開口部の開口径が徐々に広がるようにできる。したがって、大径化したSiC単結晶に対しても広い範囲で原料ガス3を当てることが可能となり、SiC単結晶を良好に凸面成長させることが可能となる。
【0044】
なお、縮径部8dの厚みの変化については、加熱容器8の中心軸方向に向かうほど縮径部8dの厚みが薄くなるようになっていれば良い。しかしながら、より好ましくは、図5に示す加熱容器8のイメージ図に示されるように、縮径部8dの厚みの増加率が加熱容器8の中心軸から離れるほど小さくなるようにすると良い。SiC単結晶の成長レートは、原料ガス3の供給量が一定である場合には成長体積で決まり、SiC単結晶が大径化するほど遅くなる。また、SiC単結晶の大径化は、ある程度の径でほぼ止まり、その後はほぼ一定の径のままSiC単結晶が成長することになる。このため、縮径部8dを上記形状とし、大径化するほど縮径部8dの開口部の開口径の拡大が遅くなっていくようにすれば、よりSiC単結晶の大径化の速度に合せて縮径部8dの開口部の大径化も進めることが可能となる。
【0045】
(他の実施形態)
上記各実施形態に示したSiC単結晶製造装置1の具体的な構造は、単なる一例であり、形状や材質などについて適宜変更することができる。
【0046】
例えば、加熱容器8の縮径部8dの開口部にテーパ面8eを設ける場合について説明したが、縮径部8dの裏面側、つまり反応容器9側の面自体がテーパ面8eとなるようにしても構わない。
【0047】
また、台座9aおよび種結晶5が共に円形状である場合について説明したが、これらは必ずしも円形状である必要はなく、正方形などの他の形状であっても構わない。この場合でも、縮径部8dに形成された開口部が台座9aの寸法(つまり台座9aに備えられる種結晶5の寸法)よりも小さくなるようにすれば良い。
【0048】
また、上記各実施形態では、加熱容器8を有底円筒状部材としたが底部を有しない単なる中空円筒状部材としても良い。さらに、上記実施形態では、反応容器9を備えた構造としたが、台座9aのみが備えられるような構造であっても構わない。
【0049】
また、上記第2実施形態ではテーパ面8eを備え、上記第3実施形態では縮径部8dの厚みを加熱容器8の中心軸からの距離に応じて変更する場合について説明したが、これらを組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0050】
1 SiC単結晶製造装置
3 原料ガス
5 種結晶
6 真空容器
8 加熱容器
8a ガス導入口
8b 邪魔板
8c 連通孔
8d 縮径部
8e テーパ面
9 反応容器
10 外周壁
11 パイプ材
13 第1加熱装置
14 第2加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座(9a)に対して炭化珪素単結晶基板にて構成された種結晶(5)を配置し、該種結晶(5)の下方から炭化珪素の原料ガス(3)を供給することにより、前記種結晶(5)の表面に炭化珪素単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造装置において、
前記台座(9a)よりも前記原料ガス(3)の流動経路上流側に配置され、前記原料ガス(3)の加熱を行う加熱容器(8)を備え、
前記加熱容器(8)は、中空円筒状部材を有した構造とされ、該中空円筒状部材の一端側から前記原料ガス(3)を導入すると共に、該中空円筒状部材の他端側から前記原料ガス(3)を導出することで前記種結晶(5)に対して前記原料ガス(3)を供給しており、前記他端側に前記中空円筒状部材の開口径を縮小する縮径部(8d)を備え、該縮径部(8d)の開口部が前記台座(9a)の外縁を加熱容器(8)の中心軸方向に投影した領域内にすべて含まれるように構成されていることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造装置。
【請求項2】
前記縮径部(8d)は、前記台座(9a)側である前記他端側の面に前記台座(9a)に向けて徐々に開口径が拡大するテーパ面(8e)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素単結晶の製造装置。
【請求項3】
前記縮径部(8d)は、前記加熱容器(8)の中心軸方向に向かうほど厚みが薄くされていることを特徴とする請求項1または2に記載の炭化珪素単結晶の製造装置。
【請求項4】
前記縮径部(8d)は、該縮径部(8d)の厚みの増加率が前記加熱容器(8)の中心軸から離れるほど小さくされていることを特徴とする請求項3に記載の炭化珪素単結晶の製造装置。
【請求項5】
台座(9a)に対して炭化珪素単結晶基板にて構成された種結晶(5)を配置し、炭化珪素の原料ガス(3)を下方から供給することで上方に位置する前記種結晶(5)に供給し、前記種結晶(5)の表面に炭化珪素単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法において、
中空円筒状部材を有した構造とされ、該中空円筒状部材の一端側から前記原料ガス(3)を導入すると共に、該原料ガス(3)を加熱したのち前記中空円筒状部材の他端側から前記原料ガス(3)を導出することで前記種結晶(5)に対して供給する加熱容器(8)を前記台座(9a)よりも前記原料ガス(3)の流動経路上流側に配置し、該加熱容器(8)に対して、前記他端側に前記中空円筒状部材の開口径を縮小する縮径部(8d)を備え、
前記縮径部(8d)の開口部を通じて前記原料ガス(3)を前記種結晶(5)に供給することで、前記原料ガス(3)の流束が炭化珪素単結晶の成長面上において面内分布を持つようにして前記炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−132088(P2011−132088A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294800(P2009−294800)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】