炭化珪素単結晶製造装置、及び炭化珪素単結晶の製造方法
【課題】高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶を製造可能な炭化珪素単結晶製造装置、及び炭化珪素単結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】坩堝31内の台座33に取り付けた炭化珪素種結晶35の成長面35aに、原料ガスを供給して、炭化珪素種結晶35に炭化珪素単結晶71を成長させる炭化珪素単結晶製造装置であって、台座33の厚さを薄くすることが可能な構成とし、炭化珪素単結晶71の成長に応じて、台座33の厚さを薄くする。
【解決手段】坩堝31内の台座33に取り付けた炭化珪素種結晶35の成長面35aに、原料ガスを供給して、炭化珪素種結晶35に炭化珪素単結晶71を成長させる炭化珪素単結晶製造装置であって、台座33の厚さを薄くすることが可能な構成とし、炭化珪素単結晶71の成長に応じて、台座33の厚さを薄くする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素単結晶製造装置、及び炭化珪素単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、半導体材料のうちの1つであり、他の半導体材料である珪素(Si)や砒化ガリウム(GaAs)等と比較して、バンドギャップが大きいことから、 炭化珪素基板を用いて、パワーデバイス、高周波デバイス、及び高温動作デバイス等の炭化珪素デバイスを形成する研究が行なわれている。
【0003】
上記炭化珪素基板は、例えば、昇華再結晶法により形成された炭化珪素単結晶インゴットをスライスし、その後、両面を鏡面加工することで形成される。また、炭化珪素単結晶インゴットは、炭化珪素単結晶製造装置を用いて形成される(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0004】
図25は、従来の炭化珪素単結晶製造装置の主要部を示す断面図である。図25において、X1は、台座205の上面205aから炭化珪素種結晶206の成長面206a(結晶フロント面)までの距離(以下、「距離X1」という)を示している。
【0005】
図25を参照するに、従来の炭化珪素単結晶製造装置200は、炭化珪素原料201を収容する坩堝202と、蓋体204と、蓋体204と一体形成され、蓋体204の下面204aから突出する台座205と、炭化珪素原料201と対向する台座205の下面205bに取り付けられ、炭化珪素単結晶208が形成される炭化珪素種結晶206と、を有する(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
通常、上記炭化珪素単結晶製造装置200を用いて炭化珪素単結晶208を形成する場合、図25に示すように、予め炭化珪素単結晶208の結晶成長面208aが凸面(炭化珪素原料201の上面201a側に凸んだ面)となるような最適な結晶成長条件を求め、該最適な結晶成長条件により炭化珪素単結晶208を成長させる。
【0007】
このように、炭化珪素単結晶208の結晶成長面208aが凸面となるように、炭化珪素単結晶208を成長させることで、結晶欠陥の少ない炭化珪素単結晶208を得ることができる(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−308697号公報
【特許文献2】特許第4499698号公報
【特許文献3】特開2009−23880号公報
【特許文献4】特開平6−227886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図26及び図27は、従来の炭化珪素単結晶製造装置の問題点を説明するための断面図である。図26では、図25に示す炭化珪素単結晶208がさらに成長した状態を模式的に示しており、図27では、図26に示す炭化珪素単結晶208がさらに成長した状態を模式的に示している。
【0010】
また、図26において、X2は、台座205の上面205aから炭化珪素単結晶208の結晶成長面208bまでの距離(以下、「距離X2」という)を示している。さらに、図27において、X3は、台座205の上面205aから炭化珪素単結晶208の結晶成長面208cまでの距離(以下、「距離X3」という)を示している。
なお、図26及び図27において、図25に示す炭化珪素単結晶製造装置200と同一構成部分には同一符号を付す。
【0011】
ところで、炭化珪素単結晶208の成長時において、図26及び図27に示す台座205、炭化珪素種結晶206、及び炭化珪素単結晶208よりなる構造体211の熱は、台座205の上面205aから放熱される。
しかしながら、炭化珪素単結晶208が進むと、台座205の上面205aから炭化珪素単結晶208の結晶成長面208b,208cまでの距離X2,X3が距離X1よりも長くなるので構造体211の熱を放出しにくくなる。
【0012】
すなわち、成長初期には、台座205及び炭化珪素種結晶206よりなる第1の構造体が熱抵抗となるが、炭化珪素単結晶208の成長が進むと、台座205、炭化珪素種結晶206、及び炭化珪素単結晶208よりなる第2の構造体が熱抵抗となるため、炭化珪素単結晶208の成長が進むと成長した炭化珪素単結晶208の分だけ、成長初期よりも熱抵抗が増大することになり、その結果、台座205の上面205aからの放熱能力は低下する。
【0013】
このため、炭化珪素単結晶の成長が進むと、炭化珪素単結晶の結晶成長面の温度分布が、成長初期の炭化珪素単結晶の結晶成長面の温度分布と異なってしまう。
【0014】
また、炭化珪素単結晶208の成長がさらに進むと、結晶成長面が熱源である炭化珪素原料の表面に近づき、これも結晶成長面の温度分布に影響を与える。
【0015】
このように、成長初期の結晶成長面の温度分布は炭化珪素単結晶の成長と共に変化するため、炭化珪素単結晶を最適な結晶成長条件で長尺に成長させることができないという問題があった。
【0016】
また、炭化珪素単結晶を長尺化させると、炭化珪素単結晶を最適な結晶成長条件で成長させることができないことにより、結晶成長面が凹面化して欠陥が入ったり、結晶成長面が凸面化して割れたりするという問題があった。
つまり、従来の炭化珪素単結晶製造装置では、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶(炭化珪素単結晶インゴット)を製造することができなかった。
【0017】
そこで、本発明は、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶を製造可能な炭化珪素単結晶製造装置、及び炭化珪素単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶を製造するためには、台座の厚さを薄くすることが可能な構成とし、かつ炭化珪素単結晶の成長に応じて、台座の厚さを薄くすることが必要であると想到した。
【0019】
具体的には、炭化珪素単結晶を成長させる前の台座(厚さを薄くする前の台座)、及び炭化珪素種結晶よりなる第1の構造体の厚さと、厚さが薄くされた台座、炭化珪素種結晶、及び炭化珪素単結晶よりなる第2の構造体の厚さと、をできるだけ等しくすることで、結晶成長時における第1及び第2の構造体の放熱状態の変化を低減し、炭化珪素単結晶の結晶成長面の温度分布の変化を小さくすることが可能になると想到した。
【0020】
これにより、炭化珪素単結晶の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶成長面が凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、炭化珪素単結晶を成長させることが可能となるという考えに至った。
【0021】
そこで、本発明者は、台座の厚さの違いが炭化珪素単結晶の結晶成長面の温度にどのような影響を及ぼすかについて確認するためのシミュレーションを行なった。この結果を図28に示す。
【0022】
図28は、台座の厚さと炭化珪素単結晶の結晶成長面の温度分布との関係をシミュレーションにより評価した結果を示す図である。
なお、図28では、サンプル1として、図25に示す炭化珪素単結晶製造装置200に成長初期の炭化珪素単結晶208が形成されたときの炭化珪素単結晶208の結晶成長面208aの温度分布を示す。
また、図28では、サンプル2として、図26に示す炭化珪素単結晶製造装置200に厚さ10mmの炭化珪素単結晶208が形成されたときの炭化珪素単結晶208の結晶成長面208bの温度分布を示す。
【0023】
さらに、サンプル3として、図27に示す炭化珪素単結晶製造装置200の台座205にザグリ(図示していない凹部)を形成し、台座205の厚さを薄くし、かつ厚さ10mmの炭化珪素単結晶208が形成されたときの炭化珪素単結晶208の結晶成長面208cの温度分布を示す。
【0024】
また、図28では、炭化珪素単結晶208の結晶成長面208a,208b,208cの中心の温度を基準(0℃)として、結晶成長面208a,208b,208cの径方向の温度を示す。
上記シミュレーションでは、シミュレーション条件として、ザグリが形成される前の台座205の厚さを10mm、ザグリが形成された後の台座205の厚さを1mmとした。
【0025】
図28を参照するに、サンプル1,2の温度分布の結果から、炭化珪素単結晶208の成長が進むと、サンプル1とサンプル2との温度分布に差が生じることが確認できた。
また、サンプル3の結果から、ザグリを形成して台座205の厚さを薄くすることで、炭化珪素単結晶208が10mm形成された結晶成長面208aの径方向における温度分布は、サンプル1に示す結晶成長初期の温度分布に近づくことが確認できた。
【0026】
つまり、上記シミュレーション結果から、炭化珪素単結晶の成長に応じて、台座の厚さを薄くすることで、炭化珪素単結晶の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶性成長面が凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、炭化珪素単結晶の成長の開始から終了までの間、炭化珪素単結晶を成長させることが可能になることが確認できた。
【0027】
さらに、炭化珪素単結晶208の成長が進むことで、結晶成長面が炭化珪素原料201の表面201aに近づくことによる、結晶成長面の温度分布の影響については、特許文献3のように、上下に分離された坩堝を用い、上部坩堝と下部坩堝を相対的に移動させることにより、炭化珪素単結晶208の結晶成長面と炭化珪素原料201の表面201aとの距離を調整できる構成を採用することとした。
本発明者は、この知見についてさらに研究を進めた結果、以下の手段を有する本発明を完成するに至った。
【0028】
すなわち、上記の目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
(1) 坩堝内の台座に取り付けた炭化珪素種結晶の成長面に、原料ガスを供給して、前記炭化珪素種結晶に炭化珪素単結晶を成長させる炭化珪素単結晶製造装置であって、前記台座は、該台座の厚さを薄くすることが可能な構成であることを特徴とする炭化珪素単結晶製造装置。
(2) 前記台座は、前記坩堝の上端に配置され、前記炭化珪素原料を昇華させた原料ガスを、前記炭化珪素種結晶の成長面に供給することで、前記炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする前項(1)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(3) 前記台座は、前記炭化珪素種結晶が取り付けられる台座本体と、該台座本体上に積み重ねられた複数の板材と、を有することを特徴とする前項(1)または(2)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(4) 前記台座本体は、前記坩堝の上端に配置された蓋体に設けられており、前記台座本体は、前記蓋体の下面から前記炭化珪素原料の上面に向かう方向に対して突出し、かつ少なくとも1つ以上の前記板材を収容する収容部を有することを特徴とする前項(3)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(5) 前記収容部は、前記蓋体の上面から突出しないように、複数の前記板材を収容することを特徴とする前項(4)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(6) 前記蓋体の上面から突出するように、前記収容部及び該収容部上に複数の前記板材を積み重ねられていることを特徴とする前項(4)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(7) 前記台座本体は、前記蓋体と一体とされていることを特徴とする前項(3)ないし(6)のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(8) 前記坩堝に、前記炭化珪素種結晶側に前記原料ガスを案内するガイド部材を設けたことを特徴とする前項(1)ないし(7)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(9) 前記ガイド部材は、前記炭化珪素原料の上面に対して略平行な板材とされており、かつ前記炭化珪素種結晶の成長面を露出する開口部を有することを特徴とする前項(8)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(10)前記ガイド部材は、前記炭化珪素種結晶よりも下方の位置に、前記炭化珪素種結晶の成長面を露出する筒状部を有することを特徴とする前項(8)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(11)前記筒状部は、前記炭化珪素種結晶の成長面から前記炭化珪素原料の上面に向かう方向において、同じ幅であることを特徴とする前項(10)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(12)前記筒状部は、前記炭化珪素種結晶の成長面から前記炭化珪素原料の上面に向かうにつれて、幅広な形状であることを特徴とする前項(10)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(13)前記坩堝は、前記蓋体が配置される上部坩堝と、前記炭化珪素原料を収容する下部坩堝と、を有し、前記上部坩堝及び前記下部坩堝は、上下方向に対して相対的に移動可能な構成であることを特徴とする前項(1)ないし(12)のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(14)前記ガイド部材を、前記上部坩堝の内壁に設けたことを特徴とする前項(13)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(15)前記台座の材料が、炭化珪素であることを特徴とする前項(1)ないし(14)のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(16)前記台座の材料が、炭素であることを特徴とする前項(1)ないし(14)のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(17)坩堝内の台座に取り付けた炭化珪素種結晶の成長面に、原料ガスを供給して、前記炭化珪素種結晶に炭化珪素の単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法であって、前記炭化珪素単結晶が成長するに従い、前記台座の厚さを薄くすることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
(18)前記炭化珪素種結晶が坩堝内に収容された前記炭化珪素原料と対向するように、前記坩堝の上端に前記台座を配置し、前記炭化珪素種結晶の成長面に、前記炭化珪素原料を昇華させた原料ガスを供給することで、前記炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする前項(17)記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(19)前記炭化珪素単結晶の成長中に、前記台座の厚さを薄くすることを特徴とする前項(17)または(18)記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(20)前記炭化珪素単結晶の成長を停止させた後に、前記台座の厚さを薄くし、その後、前記炭化珪素単結晶をさらに成長させることを特徴とする前項(17)または(18)記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(21)前記台座は、前記炭化珪素種結晶が取り付けられた台座本体と、該台座本体上に積み重ねられた複数の板材と、を有し、前記板材を取り外すことで、前記台座の厚さを薄くすることを特徴とする前項(18)ないし(20)のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(22)前記台座本体は、前記坩堝の上端に配置された蓋体に設けられ、前記蓋体の下面から前記炭化珪素原料の上面に向かう方向に対して突出し、かつ前記板材を収容する収容部を有し、前記蓋体の上面から突出しないように、前記収容部に複数の前記板材を収容した後、前記炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする前項(21)記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(23)前記台座本体は、前記坩堝の上端に配置された蓋体に設けられ、前記蓋体の下面から前記炭化珪素原料の上面に向かう方向に対して突出し、かつ前記板材を収容する収容部を有し、前記蓋体の上面から突出するように、前記収容部及び該収容部上に複数の前記板材を積み重ねた後、前記炭化珪素種結晶に前記炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする前項(21)記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(24)前記台座は、前記坩堝の上端に配置された蓋体に設けられており、前記台座は、前記蓋体の上面から突出するように配置されており、前記蓋体の上面から突出した前記台座の一部を切断することで、前記台座の厚さを薄くすることを特徴とする前項(18)ないし(20)のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(25)前記炭化珪素種結晶を成長させる際、前記炭化珪素原料の上面と前記炭化珪素単結晶の結晶成長面との距離が略等しくなるように調整することを特徴とする前項(18)ないし(24)のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明の炭化珪素単結晶製造装置によれば、台座の厚さを薄くすることが可能な構成とすることにより、炭化珪素単結晶を成長させる前の台座(厚さを薄くする前の台座)、及び炭化珪素種結晶よりなる第1の構造体の厚さと、厚さが薄くされた台座、炭化珪素種結晶、及び炭化珪素単結晶よりなる第2の構造体の厚さと、をできるだけ等しくすることが可能となる。
【0030】
これにより、厚さを薄くする前の台座の上面から熱を放熱する第1の構造体の放熱特性と、厚さが薄くされた台座の上面から熱を放熱する第2の構造体の放熱特性と、の差が小さくなるので、成長時における炭化珪素単結晶の結晶成長面の温度分布の変化を小さくすることが可能になる。
【0031】
つまり、炭化珪素単結晶の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶性成長面が凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、炭化珪素単結晶を成長させることが可能となる。これにより、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶を製造できる。
【0032】
また、本発明の炭化珪素単結晶の製造方法によれば、炭化珪素単結晶が成長するに従い、台座の厚さを薄くすることにより、炭化珪素単結晶の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶性成長面が凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、炭化珪素単結晶を成長させることが可能となる。これにより、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る炭化珪素単結晶製造装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す炭化珪素単結晶製造装置本体を拡大した断面図である。
【図3】第1の板材及び台座厚さ調整部材の斜視図である。
【図4】フック収容部の天井面と台座厚さ調整部材の第1のフック部とが接触した状態を示す断面図である。
【図5】第2の板材及び台座厚さ調整部材の斜視図である。
【図6】フック収容部の天井面と台座厚さ調整部材の第2のフック部とが接触した状態を示す断面図である。
【図7】第1の板材が台座本体と接触し、かつ第2の板材が第1の板材の上方に引き上げられた状態の炭化珪素単結晶製造装置本体を模式的に示す断面図である。
【図8】第1の板材が台座本体の上方に引き上げられた状態の炭化珪素単結晶製造装置本体を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態の第1変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置の主要部の断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態の第2変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置の主要部の断面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態の第3変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置の主要部の断面図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態の第4変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置の主要部の断面図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る炭化珪素単結晶製造装置の概略構成を示す断面図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶製造装置の概略構成を示す断面図である。
【図15】第1の切断位置で切断された台座を備えた炭化珪素単結晶製造装置を模式的に示す断面図である。
【図16】第2の切断位置で切断された台座を備えた炭化珪素単結晶製造装置を模式的に示す断面図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図(その1)である。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図(その2)である。
【図19】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図(その3)である。
【図20】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図(その4)である。
【図21】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図(その5)である。
【図22】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図(その6)である。
【図23】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図(その7)である。
【図24】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図(その8)である。
【図25】従来の炭化珪素単結晶製造装置の主要部を示す断面図である。
【図26】従来の炭化珪素単結晶製造装置の問題点を説明するための断面図(その1)である。
【図27】従来の炭化珪素単結晶製造装置の問題点を説明するための断面図(その2)である。
【図28】台座の厚さと炭化珪素単結晶の結晶成長面の温度分布との関係をシミュレーションにより評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の炭化珪素単結晶製造装置の寸法関係とは異なる場合がある。
【0035】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る炭化珪素単結晶製造装置の概略構成を示す断面図である。図1では、炭化珪素単結晶製造装置の一例として、炭化珪素原料39を昇華させた原料ガスを、炭化珪素種結晶35の成長面35aに供給することで、炭化珪素種結晶35に炭化珪素単結晶71を成長させる炭化珪素単結晶製造装置10(言い換えれば、昇華再結晶法により、炭化珪素単結晶71を成長させる炭化珪素単結晶製造装置)を例に挙げて説明する。
【0036】
図1を参照するに、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10は、真空容器11と、断熱部材12と、炭化珪素単結晶製造装置本体13と、支持部材15と、加熱手段16と、第1及び第2の放射温度計18,19と、を有する。
【0037】
真空容器11は、断熱部材12、炭化珪素単結晶製造装置本体13、及び支持部材15を収容している。真空容器11は、ガス導入孔22と、ガス排出孔23と、を有する。
ガス導入孔22は、Arガス供給装置(図示せず)と接続されており、真空容器11内にArガスを供給することで、真空容器11内をAr雰囲気(例えば、圧力が5.0×102Pa)にする。
ガス排出孔23は、真空ポンプ(図示せず)と接続されており、上記Arガスを供給する前に真空容器11内を減圧状態にする。減圧状態とされた真空容器11内の圧力は、例えば、4×10−3Pa以下にすることができる。
【0038】
断熱部材12は、真空容器11内に配置されている。断熱部材12は、装置本体収容部25と、貫通部26と、窓孔27と、を有する。装置本体収容部25は、断熱部材12の内部に設けられている。
装置本体収容部25に炭化珪素単結晶製造装置本体13を収容した状態において、断熱部材12の上部は、蓋体32の上方に離間した位置に配置されている。これにより、断熱部材12の上部と蓋体32との間には、後述する第2の板材52(台座33の構成要素の1つ)を引き上げた際、引き上げられた第2の板材52を配置可能な空間が形成されている。
【0039】
貫通部26は、断熱部材12のうち、装置本体収容部25の上方に位置する部分を貫通するように設けられている。貫通部26は、後述する台座厚さ調整部材36の支柱部64を引き上げ可能で、かつ第1の放射温度計18による蓋体32の温度測定が可能な開口径とされている。開口部26の開口径が大きいと坩堝31の上部の温度が下がり過ぎてしまうため、開口部26の開口径は、小さいほうが好ましい。
窓孔27は、断熱部材12のうち、装置本体収容部25の下方に位置する部分を貫通するように設けられている。
【0040】
上記構成とされた断熱部材12は、炭化珪素単結晶製造装置本体13を収容することで、後述する坩堝31内の温度を安定的に高温に保つための部材である。断熱部材12の材料としては、例えば、炭素繊維を用いることができる。
なお、坩堝31内の温度を安定的に高温に保つことが可能な場合、上記断熱部材12は設ける必要がない。
【0041】
図2は、図1に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13を拡大した断面図である。また、図2では、成長初期の炭化珪素単結晶71を模式的に図示する。
図1及び図2を参照するに、炭化珪素単結晶製造装置本体13は、坩堝31と、蓋体32と、台座33と、炭化珪素種結晶35と、板材引き上げ用部材36と、板材引き上げ用部材駆動部(図示せず)と、上部坩堝昇降手段38と、を有する。
【0042】
図2を参照するに、坩堝31は、下部坩堝41と、上部坩堝42と、を有する。下部坩堝41は、炭化珪素原料39を収容している。下部坩堝41は、上端にスライド面43aを備えたスライド部43を有する。スライド面43aは、スライド部43の外周側面に相当する面である。
【0043】
上部坩堝42は、筒状とされており、その下端にスライド面44aを備えたスライド部44を有する。上部坩堝42は、スライド面44aが下部坩堝41のスライド面43aと接触するように、下部坩堝41上に配置されている。
スライド面44aは、スライド面43aに対して上下方向にスライド可能な構成とされている。つまり、上部坩堝42は、下部坩堝41に対して上下方向に移動(スライド)可能な構成とされている。
なお、図2では、坩堝31内に形成される空間46の体積が最小となる場合を例に挙げて図示している。
【0044】
上記構成とされた坩堝31の材料としては、高温において安定で、かつ不純物ガスの発生の少ない材料を用いることが好ましい。具体的には、坩堝31の材料としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、炭化珪素、及び炭化珪素もしくはタンタルカーバイド(TaC)により被覆された黒鉛(グラファイト)等を用いることができる。
【0045】
図2を参照するに、蓋体32は、上部坩堝42の上端に配置されている。蓋体32には、台座33を構成する後述する第1及び第2の板材51,52を取り出し可能な形状とされた貫通部32Aが形成されている。蓋体32は、平坦な面とされた上面32a及び下面32bを有する。
【0046】
図2を参照するに、台座33は、台座本体48と、台座本体48の上面48aに積み重ねられた複数の板材である第1及び第2の板材51,52と、を有する。
台座本体48は、第1及び第2の板材51,52を収容する収容部54を有する。台座本体48は、収容部54が貫通部32Aに露出されるように、蓋体32の下面32bに固定されている。台座本体48は、蓋体32の下面32bから炭化珪素原料39の上面39aに向かう方向に突出している。
【0047】
収容部54は、蓋体32の上面32aから突出しないように、第1及び第2の板材51,52を収容している。なお、図2では、収容部54が第1及び第2の板材51,52を収容する場合を例に挙げて図示したが、収容部54は、少なくとも1つの板材を収容可能な構成であればよい。
【0048】
図3は、第1の板材及び台座厚さ調整部材の斜視図である。図4は、フック収容部の天井面と台座厚さ調整部材の第1のフック部とが接触した状態を示す断面図である。
図2を参照するに、第1の板材51は、略円柱形状とされている。第1の板材51は、台座本体48の上面48aと接触するように、収容部54に配置されている。
【0049】
図3を参照するに、第1の板材51は、フック収容部56と、支柱部通過部57と、フック通過部58と、を有する。フック収容部56は、第1の板材51の内部に形成されている。フック収容部56は、板材引き上げ用部材36に設けられた第1のフック部65の長さJ1よりも幅広の直径とされた円柱状の空間である。
【0050】
図3に示す板材引き上げ用部材36を下方に移動させ、第1のフック部65をフック収容部56に収容し、その後、第1のフック部65を90度回転させ、板材引き上げ用部材36を上方に引き上げることで、図4に示すように、フック収容部56の天井面56aに第1のフック部65が接触し、さらに板材引き上げ用部材36を上方に引き上げることで、図2に示す台座本体48の上方に第1の板材51を持ち上げることが可能となる。言い換えれば、台座本体48から第1の板材51を取り除くことが可能となる。
【0051】
図3を参照するに、支柱部通過部57は、フック収容部56上に位置する第1の板材51を貫通するように形成されている。支柱部通過部57は、板材引き上げ用部材36を構成する支柱部64の直径よりも大きく、かつ第1のフック部65の長さJ1よりも小さい直径を有した円柱状の空間である。支持部通過部57は、支柱部64を通過させるための空間である。
【0052】
図3を参照するに、フック通過部58は、フック収容部56上に位置する第1の板材51を貫通するように形成されている。フック通過部58は、四角柱状の溝であり、フック収容部56及び支柱部通過部57と一体に構成されている。フック通過部58は、第1のフック部65を通過させるための空間である。上記構成とされた第1の板材51の厚さは、例えば、20mmとすることができる。
【0053】
図5は、第2の板材及び台座厚さ調整部材の斜視図である。図6は、フック収容部の天井面と台座厚さ調整部材の第2のフック部とが接触した状態を示す断面図である。
図5を参照するに、第2の板材52は、第1の板材51の構成に、さらに支柱部通過部61及びフック通過部62を設けると共に、第1の板材51に設けられたフック収容部56よりもフック収容部56の高さを低くした以外は、第1の板材51と同様な構成とされている。第2の板材52の厚さは、第1の板材51の厚さと等しく、例えば、20mmとすることができる。
【0054】
図2を参照するに、第2の板材52は、収容部54及び貫通部32A内に収容されている。第2の板材52の上面52aは、蓋体32の上面32aに対して略面一とされている。言い換えれば、収容部54は、蓋体32の上面32aから突出しないように、第1及び第2の板材51,52(複数の板材)を収容している。
【0055】
図5及び図6を参照するに、支柱部通過部61は、フック収容部56の下方に位置する第2の板材52を貫通するように形成されている。支柱部通過部61は、支柱部64を通過させるための空間であり、支柱部通過部57と同様な形状とされている。
図5を参照するに、フック通過部62は、フック収容部56の下方に位置する第2の板材52を貫通するように形成されている。フック通過部62は、第1のフック部65を通過させるための空間であり、フック通過部58と同様な形状とされている。
【0056】
図5に示す板材引き上げ用部材36を下方に移動させ、第2のフック部66を第2の板材52のフック収容部56に収容し、その後、第2のフック部66を90度回転させ、板材引き上げ用部材36を上方に引き上げることで、図6に示すように、フック収容部56の天井面56aに第2のフック部66が接触し、さらに板材引き上げ用部材36を上方に引き上げることで、図2に示す台座本体48の上方に第2の板材52を持ち上げて、第1の板材51から第2の板材52を取り除くことが可能となる。
【0057】
図7は、第1の板材が台座本体と接触し、かつ第2の板材が第1の板材の上方に引き上げられた状態の炭化珪素単結晶製造装置本体を模式的に示す断面図である。図7において、図2に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13と同一構成部分には同一符号を付す。また、図7では、図2に示す上部坩堝昇降手段38の図示を省略する。さらに、図7では、図2に示す炭化珪素単結晶71よりも成長した状態の炭化珪素単結晶71を模式的に示す。
【0058】
ところで、第2の板材52のフック収容部56の高さは、第1の板材51のフック収容部56の高さよりも低くなるように構成されている。このため、板材引き上げ用部材36を引き上げた際、第2のフック部66が第1のフック部65よりも先にフック収容部56の天井面56aと接触する。
【0059】
これにより、図7に示すように、板材引き上げ用部材36を引き上げることで、第1の板材51よりも先に第2の板材52が持ち上げられ、第1の板材51が台座本体48と接触した状態で、第1の板材51と第2の板材52との間に隙間が形成される。言い換えれば、第1の板材51から第2の板材52が取り除かれる。
【0060】
この場合、図7に示す台座33は、台座本体48及び第1の板材51により構成され、図7に示す台座33の厚さは、図2に示す台座33(台座本体48、第1の板材51、及び第2の板材52により構成された台座)の厚さよりも薄くなる。
【0061】
また、図7に示すように、台座本体48、第1の板材51、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる第2の構造体Bの厚さM2が、図2に示す台座33及び炭化珪素種結晶35よりなる第1の構造体Aの厚さM1と略等しくなるときに、第2の板材52を第1の板材51の上方に離間させて、台座33の厚さを薄くするとよい。
【0062】
これにより、図2に示す第1の構造体Aの厚さM1と、図7に示す第2の構造体Bの厚さM2と、をできるだけ等しくすることが可能となるので、図2に示す台座33の上面(この場合、第2の板材52の上面52a)から熱を放熱する第1の構造体Aの放熱特性と、図7に示す台座33の上面(この場合、第1の板材51の上面51a)から熱を放熱する第2の構造体Bの放熱特性と、の差を小さくすることが可能となる。
【0063】
したがって、図2に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、図7に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71bの温度分布と、の差を小さくすることが可能になる。
【0064】
つまり、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶性成長面71aが凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、結晶性成長面71bが凸面とされた炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となる。これにより、結晶欠陥が少なく、高品質とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0065】
図8は、第1の板材が台座本体の上方に引き上げられた状態の炭化珪素単結晶製造装置本体を模式的に示す断面図である。図8において、図7に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13と同一構成部分には同一符号を付す。また、図8では、図7に示す炭化珪素単結晶71よりもさらに炭化珪素単結晶71が成長した状態を模式的に示す。
【0066】
また、図8に示すように、図7に示す炭化珪素単結晶71よりもさらに炭化珪素単結晶71が成長した場合、図7に示す状態から板材引き上げ用部材36を引き上げることで、台座本体48から第1の板材51を除去して、図8に示す台座33(この場合、台座本体48のみで構成された台座)の厚さを薄くするとよい。
【0067】
このとき、図8に示す台座33、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる第2の構造体Cの厚さM3が、図2に示す第1の構造体Aの厚さM1と略等しくなったときに、台座本体48の上方に第1の板材51を離間させて、台座33の厚さを薄くするとよい。
【0068】
これにより、図2に示す第1の構造体Aの厚さM1と、図8に示す第2の構造体Cの厚さM3と、をできるだけ等しくすることが可能となるので、図2に示す台座33の上面(この場合、第2の板材52の上面52a)から熱を放熱する第1の構造体Aの放熱特性と、図8に示す台座33の上面(この場合、台座本体48の上面48a)から熱を放熱する第2の構造体Cの放熱特性と、の差を小さくすることが可能となる。
【0069】
したがって、図2に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、図8に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71cの温度分布と、の差を小さくすることが可能になる。
【0070】
つまり、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、結晶性成長面71cが凸面とされた炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となる。これにより、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0071】
図2に示す台座33の材料としては、例えば、炭化珪素や炭素等を用いるとよい。これにより、炭化珪素種結晶35及び炭化珪素単結晶71との間の熱膨張係数の差が小さくなるので、該熱膨張係数の差に起因して成長中の炭化珪素単結晶71が破損することを抑制できる。
【0072】
なお、図2、図7、及び図8では、台座本体48と蓋体32とが別体とされた場合を例に挙げて図示したが、台座本体48と蓋体32とを一体に構成してもよい。この場合、蓋体32の材料としては、例えば、炭化珪素や炭素等を用いるとよい。
【0073】
図2を参照するに、炭化珪素種結晶35は、台座本体48の下面48bに取り付けられている。炭化珪素種結晶35は、炭化珪素単結晶71が成長する成長面35aを有する。成長面35aは、炭化珪素原料39の上面39aと対向するように配置されている。
【0074】
図2及び図5を参照するに、板材引き上げ用部材36は、支柱部64と、第1のフック部65と、第2のフック部66と、を有する。支柱部64は、棒状とされている。
第1のフック部65は、支柱部64の下端に設けられている。第1のフック部65は、第1の板材51のフック収容部56に収容されており、第1の板材51を引き上げる際には、フック収容部56の上面56aと接触する。
【0075】
第2のフック部66は、第1のフック部65の上方に位置する支柱部64に設けられている。第2のフック部66は、第1のフック部65と対向するように配置されている。第2のフック部66は、第2の板材52のフック収容部56に収容されており、第2の板材52を引き上げる際には、フック収容部56の上面56aと接触する。
【0076】
板材引き上げ用部材駆動部(図示せず)は、支柱部64の上端と接続されている。板材引き上げ用部材駆動部(図示せず)は、板材引き上げ用部材36を上下方向に移動させると共に、板材引き上げ用部材36を回転させる。
板材引き上げ用部材駆動部(図示せず)は、図2に示す状態から、板材引き上げ用部材36を上方向に移動させることで、第2の板材52、または第1及び第2の板材51,52を引き上げて、台座33の厚さを薄くする。
【0077】
また、板材引き上げ用部材36は、図8に示す状態から、板材引き上げ用部材36を下方向に移動させることで、台座本体48の上面48aに第1及び第2の板材51,52を積み重ねる。
なお、板材引き上げ用部材駆動部(図示せず)を設けることなく、手動により、板材引き上げ用部材36を上下方向に移動させたり、板材引き上げ用部材36を回転させたりしてもよい。
【0078】
図2を参照するに、上部坩堝昇降手段38は、シャフト部75と、シャフトガイド部76と、駆動部77と、を有する。
シャフト部75は、下部坩堝41の下方に設けられており、下部坩堝41の底部と接続されている。これにより、シャフト部75は、下部坩堝41を支持している。
【0079】
シャフトガイド部76は、上部坩堝42のスライド部44に固定されている。シャフトガイド部76は、下部坩堝41の外周側面41a及びシャフト部75の外周側面75aと接触可能な形状とされている。シャフトガイド部76は、下部坩堝41の外周側面41a及びシャフト部75の外周側面75aに対して上下方向にスライド可能な構成とされている。シャフトガイド部76は、上下方向に移動することで、上部坩堝42を上下に移動させる。
駆動部77は、シャフトガイド部76と接続されている。駆動部77は、シャフトガイド部76を上下方向に移動させるための駆動部である。
【0080】
このように、下部坩堝41、及び下部坩堝41に対して上下方向に移動可能な構成とされた上部坩堝42により構成された坩堝31と、上部坩堝42を上下方向に移動させる上部坩堝昇降手段38と、を設けることにより、図7及び図8に示す結晶成長面71b,71cと炭化珪素原料39の上面39aとの距離D2,D3が、図2に示す結晶成長面71aと炭化珪素原料39の上面39aとの距離D1と略等しくなるように調整しながら炭化珪素単結晶71を形成することが可能となる。
【0081】
これにより、図7及び図8に示す炭化珪素単結晶71の成長条件を、図2に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の成長条件に、さらに近づけることが可能となるので、厚さ方向において、略均一な特性とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0082】
なお、図2では、下部坩堝41に対して上部坩堝42が上下方向に移動する場合を例に挙げて説明したが、上部坩堝42及び下部坩堝41は、上下方向に対して相対的に移動可能な構成であればよい。
具体的には、例えば、上部坩堝昇降手段38の替わりに、上部坩堝42の位置を固定し、上部坩堝42に対して下部坩堝41を上下方向に移動させる下部坩堝昇降手段(図示せず)を設けてもよい。
【0083】
図1を参照するに、支持部材15は、筒状とされており、貫通孔15Aを有する。支持部材15は、貫通孔15Aが断熱部材12に形成された窓孔27と対向するように、断熱部材12の下面に配置されている。これにより、支持部材15は、断熱部材12を支持している。
【0084】
図1を参照するに、加熱手段16は、真空容器11の外側に配置されている。加熱手段16は、坩堝31内の炭化珪素原料39を加熱することで、原料ガスを昇華させる。
加熱手段16としては、例えば、電流を流すことにより高周波を発生させる高周波加熱コイルを用いることができる。
このように、加熱手段16として高周波加熱コイルを用いることにより、例えば、1900℃以上の温度に炭化珪素原料39を加熱することができる。
【0085】
図1を参照するに、第1の放射温度計18は、真空容器11の上方に、断熱部材12に形成された貫通部26と対向するように配置されている。第1の放射温度計18は、貫通部26を介して、坩堝31の上部表面の温度を測定する。
【0086】
図1を参照するに、第2の放射温度計19は、真空容器11の下方に、支持部材15に形成された貫通孔15Aと対向するように配置されている。第2の放射温度計19は、貫通孔15A及び窓孔27を介して、坩堝31の下部表面の温度を測定する。
【0087】
なお、第1及び第2の放射温度計18,19の替わりに、2つの熱電対を用いて、坩堝31の上部表面及び下部表面の温度を測定してもよい。この場合、一方の熱電対を、貫通部26を介して、蓋体32の上面32aと接触するように配置し、他方の熱電対を、貫通孔15A及び窓孔27を介して、坩堝31の下面と接触するように配置する。
【0088】
第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置によれば、炭化珪素種結晶35が設けられる台座本体48、及び台座本体48上に積み重ねられた第1及び第2の板材51,52よりなる台座33と、第2の板材52、第1の板材51の順に板材を引き上げる板材引き上げ用部材36と、を有することにより、第2の板材52、または第1及び第2の板材51,52を引き上げて台座33の厚さを薄くすることで、台座33(厚さを薄くする前の台座)及び炭化珪素種結晶35よりなる第1の構造体Aの厚さM1と、厚さが薄くされた台座33、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる第2の構造体B,Cの厚さM2,M3と、をできるだけ等しくすることが可能となる。
【0089】
これにより、厚さを薄くする前の台座33の上面から熱を放熱する第1の構造体Aの放熱特性と、厚さが薄くされた台座33の上面から熱を放熱する第2の構造体B,Cの放熱特性と、の差が小さくなるので、成長初期における炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、炭化珪素単結晶71の成長が進んだときの炭化珪素単結晶71の結晶成長面71b,71cの温度分布と、の差を小さくすることが可能となる。
【0090】
よって、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶成長面71aが凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0091】
なお、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10では、下部坩堝41に対して上部坩堝42が移動することで、坩堝31内の空間46の体積を変更可能な場合を例に挙げて説明したが、第1の実施の形態で説明した台座33及び板材引き上げ用部材36は、坩堝内の体積が変更不可能な構成とされた坩堝(後述する図12に示す坩堝102)を備えた炭化珪素単結晶製造装置にも適用可能である。
【0092】
次に、図2、図7、図8を参照して、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法について説明する。
始めに、図2に示すように、下部坩堝41内に炭化珪素原料39を導入する。次いで、台座本体48の下面48bに炭化珪素種結晶35を取り付ける。次いで、炭化珪素種結晶35の成長面35aと坩堝31内の炭化珪素原料39の上面39aとが対向するように、上部坩堝42の上端に蓋体32を配置する。
【0093】
次いで、第1及び第2の板材51,52を支持した板材引き上げ用部材36を下方に移動させることで、台座本体48の上面48aに、第1及び第2の板材51,52を積み重ねる(図2に示す台座33の状態)。
このとき、蓋体32の上面32aから第2の板材52が突出しないように、台座本体48の収容部54に第1及び第2の板材51,52を収容する。この段階では、図2に示すように、坩堝31内の空間46の体積が最も小さくなるようにする。
【0094】
次いで、図1に示す加熱手段16により、坩堝31内の炭化珪素原料39を加熱することで、炭化珪素種結晶35の成長面35aに原料ガスを昇華させて、成長面35aに炭化珪素単結晶71を初期成長させる。このとき、予め取得した最適な結晶成長条件(具体的には、結晶性成長面71aが凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)を用いる。
【0095】
次いで、図7に示すように、第2の板材52の厚さと炭化珪素単結晶71の厚さとが略等しくなった段階で、結晶成長中に板材引き上げ用部材36を上方に移動させて、第1の板材51から第2の板材52を除去することで、図7に示す第2の構造体Bの厚さM2と、図2に示す第1の構造体Aの厚さM1と、をできるだけ等しくすると共に、第2の板材52から第1の板材51の上面51aを露出させる。
【0096】
これにより、図2に示す台座33の上面(この場合、第2の板材52の上面52a)から熱を放熱する第1の構造体Aの放熱特性と、図7に示す台座33の上面(この場合、第1の板材51の上面51a)から熱を放熱する第2の構造体Bの放熱特性と、の差が小さくなるので、成長初期における炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、炭化珪素単結晶71の成長が進んだときの炭化珪素単結晶71の結晶成長面71bの温度分布と、の差を小さくすることが可能となる。
【0097】
これにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、図7に示す炭化珪素単結晶71に、結晶欠陥が少なく、高品質とされた炭化珪素単結晶71を成長させることができる。
【0098】
また、図7に示す炭化珪素単結晶71を形成する場合、炭化珪素単結晶71の結晶成長面71bから炭化珪素原料39の上面39aまでの距離D2が、図2に示す距離D1と略等しくなるように、炭化珪素単結晶71の成長に合わせて上部坩堝42を上方に移動させる。
【0099】
これにより、図7に示す炭化珪素単結晶71の成長条件を、図2に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の成長条件に、さらに近づけることが可能となるので、厚さ方向において、略均一な特性とされた炭化珪素単結晶71を形成できる。
【0100】
次いで、図8に示すように、第1の板材51の厚さと、図8に示す炭化珪素単結晶71の厚さから図7に示す炭化珪素単結晶71の厚さを引いた厚さと、が略等しくなった段階で、結晶成長中に板材引き上げ用部材36をさらに上方に移動させて、台座本体48から第1の板材51を除去することで、第2の構造体Cの厚さM3と図2に示す第1の構造体Aの厚さM1とをできるだけ等しくすると共に、第1の板材51から台座本体48の上面48aを露出させる。
【0101】
これにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を成長させることができる。
【0102】
また、図8に示す炭化珪素単結晶71を形成する場合、炭化珪素単結晶71の結晶成長面71cから炭化珪素原料39の上面39aまでの距離D3が、図2に示す距離D1と略等しくなるように、炭化珪素単結晶71の成長に合わせて上部坩堝42を上方に移動させる。
これにより、図8に示す炭化珪素単結晶71の成長条件を、図2に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の成長条件に、さらに近づけることが可能となるので、厚さ方向において、略均一な特性とされた炭化珪素単結晶71を形成できる。
【0103】
第1の実施の形態の炭化珪素単結晶の製造方法によれば、台座33を構成する台座本体48に取り付けられた炭化珪素種結晶35の成長面35aに、加熱により炭化珪素原料39を昇華させた原料ガスを供給することで、炭化珪素単結晶71を成長させ、炭化珪素単結晶71の成長中に、炭化珪素単結晶71の成長に応じて、第2の板材52及び第1の板材51を順次取り除くことにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0104】
また、第1の実施の形態では、一例として、昇華再結晶法により炭化珪素単結晶71を製造する場合について説明したが、本発明は、例えば、原料ガス(昇華ガス)の替わりにシランやプロパン等を原料とするCVD(Chemical Vapor Deposition)法にも適用可能である。
【0105】
なお、上記第1の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法では、結晶成長中に、台座33の厚さを薄くする場合を例に挙げて説明したが、炭化珪素単結晶71の成長を停止させた後に、台座33の厚さを薄くし、その後、炭化珪素単結晶71をさらに成長させてもよい。
このように、炭化珪素単結晶71の成長を停止させた後に、台座33の厚さを薄くし、その後、炭化珪素単結晶71をさらに成長させた場合、上記第1の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0106】
上記炭化珪素単結晶71の成長を一度停止させた後に、台座33の厚さを薄くし、その後、炭化珪素単結晶71をさらに成長させる方法は、坩堝内の体積を変更不可能な構成とされた坩堝(後述する図12に示す坩堝102)を備えた炭化珪素単結晶製造装置を用いて昇華再結晶法により、炭化珪素単結晶71を形成する場合に有効である。
【0107】
炭化珪素単結晶71の成長を停止させた後、下部坩堝41或いは上部坩堝42の長さ、もしくは炭化珪素原料39の量を調整する事により、図7及び図8に示す距離D2,D3と図2に示す距離D1とを略同じにすることができるからである。
【0108】
なお、図2及び図7において、厚さM1と厚さM2とを同じ厚さとしたが、台座に用いる材料の熱伝導率に応じて、例えば、図2に示す第1の構造体Aの放熱特性と、図7に示す第2の構造体Bの放熱特性と、が同じになるように、厚さM2の値を設定してもよい。
【0109】
図9は、本発明の第1の実施の形態の第1変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置の主要部の断面図である。
図9では、第1の実施の形態の第1変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置80の構成要素である真空容器11、断熱部材12、支持部材15、加熱手段16、第1の放射温度計18、第2の放射温度計19、及び上部坩堝昇降手段38(図1及び図2参照)の図示を省略する。また、図9において、図2に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0110】
図9を参照するに、第1の実施の形態の第1変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置80は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10に設けられた炭化珪素単結晶製造装置本体13の替わりに、炭化珪素単結晶製造装置本体81を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置10と同様に構成される。
炭化珪素単結晶製造装置81は、図2に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13の構成に、さらにガイド部材82を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置本体13と同様に構成される。
【0111】
ガイド部材82は、開口部83を有し、かつ炭化珪素原料39の上面39aに対して略平行な板材である。ガイド部材82は、上部坩堝44の内壁に設けられている。ガイド部材82は、高さ方向において、炭化珪素種結晶35と略等しい位置に配置されている。開口部83は、炭化珪素種結晶35の成長面35aと対向する位置に設けられており、炭化珪素種結晶35の成長面35aを露出している。ガイド部材82は、炭化珪素種結晶35の成長面35aに原料ガスを案内するための部材である。
【0112】
ガイド部材83と炭化珪素種結晶35との間には、ガイド部材83に成長する多結晶の炭化珪素と炭化珪素種結晶35及び炭化珪素単結晶71とが接触することを防止するための隙間84が形成されている。隙間84の幅W1は、例えば、0.5〜5mmとすることができる。
【0113】
このように、上部坩堝44の内壁に、炭化珪素種結晶35の成長面35aを露出する開口部83を有した板状のガイド部材82を設けることにより、蓋体32とガイド部材82との間の空間に原料ガスが到達することを抑制可能となる。
これにより、蓋体32の下面32b及び台座本体48の外周側面に多結晶の炭化珪素が成長しにくくなるので、該多結晶の炭化珪素と炭化珪素種結晶35及び炭化珪素単結晶71との接触を抑制できる。
【0114】
ガイド部材83の材料としては、高温において安定であり、かつ不純物ガスの発生の少ない材料を用いるとよい。具体的には、ガイド部材83の材料としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、タンタルカーバイド(TaC)によって被覆された黒鉛(グラファイト)等を用いることができる。
【0115】
黒鉛(グラファイト)をタンタルカーバイド(TaC)で被覆することで、黒鉛に含まれるカーボンと原料ガスとが反応して、成長中の炭化珪素単結晶71の中にカーボンが取り込まれて、炭化珪素単結晶71の品質が低下することを抑制できる。
【0116】
このような構成とされた第1の実施の形態の第1変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置80は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10と同様な効果を得ることができる。具体的には、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
また、第1の実施の形態の第1変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置80を用いた炭化珪素単結晶71の製造方法は、第1の実施の形態で説明した炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な手法により行なうことができ、また、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0117】
なお、第1の実施の形態の第1変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置80では、下部坩堝41に対して上部坩堝42が移動することで、坩堝31内の空間46の体積を変更可能な坩堝31を用いた場合を例に挙げて説明したが、坩堝31の替わりに、坩堝内の体積が変更不可能な構成とされた坩堝(後述する図12に示す坩堝102)を用いてもよい。
【0118】
図10は、本発明の第1の実施の形態の第2変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置の主要部の断面図である。
図10では、第1の実施の形態の第2変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置85の構成要素である真空容器11、断熱部材12、支持部材15、加熱手段16、第1の放射温度計18、第2の放射温度計19、及び上部坩堝昇降手段38(図1及び図2参照)の図示を省略する。また、図10において、図2に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0119】
図10を参照するに、第1の実施の形態の第2変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置85は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10に設けられた炭化珪素単結晶製造装置本体13の替わりに、炭化珪素単結晶製造装置本体86を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置10と同様に構成される。
炭化珪素単結晶製造装置86は、図2に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13の構成に、さらにガイド部材87を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置本体13と同様に構成される。
【0120】
ガイド部材87は、筒状部88と、板部89と、を有する。筒状部88は、円筒形状とされている。筒状部88は、炭化珪素種結晶35の成長面35aを露出するように、炭化珪素種結晶35の下方に配置されている。筒状部88は、炭化珪素種結晶35の成長面35aに原料ガスを案内するガイドとして機能する。
このように、炭化珪素種結晶35の下方に、炭化珪素種結晶35の成長面35aを露出する筒状部88を設けることにより、原料ガスの濃度分布を筒状部88の内部形状に沿った分布にすることが可能となるので、筒状部88の内部形状に対応した円柱形状に炭化珪素種結晶71を成長させることができる。
【0121】
筒状部88と炭化珪素種結晶35との間には、筒状部88に成長する多結晶の炭化珪素と炭化珪素種結晶35及び炭化珪素単結晶71とが接触することを防止するための隙間91が形成されている。隙間91の幅は、例えば、0.5〜5mmとすることができる。
【0122】
板部89は、一方の端が筒状部88と一体に構成されており、他方の端が上部坩堝42の内壁に固定されている。板部89は、炭化珪素原料39の上面39aに対して略平行な板材である。板部89は、炭化珪素種結晶35の成長面35aに原料ガスを案内するガイド部材として機能すると共に、筒状部88を支持するための支持部材として機能する。
【0123】
このように、筒状部88と上部坩堝44の内壁との間に板部89を設けることにより、蓋体32とガイド部材87との間の空間に原料ガスが到達することを抑制可能となる。
これにより、蓋体32の下面32b及び台座本体48の外周側面に多結晶の炭化珪素が成長しにくくなるので、該多結晶の炭化珪素と炭化珪素種結晶35及び炭化珪素単結晶71との接触を抑制できる。
【0124】
ガイド部材87の材料としては、高温において安定であり、かつ不純物ガスの発生の少ない材料を用いるとよい。具体的には、ガイド部材87の材料としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、タンタルカーバイド(TaC)によって被覆された黒鉛(グラファイト)等を用いることができる。
【0125】
黒鉛(グラファイト)をタンタルカーバイド(TaC)で被覆することで、黒鉛に含まれるカーボンと原料ガスとが反応して、成長中の炭化珪素単結晶71の中にカーボンが取り込まれて、炭化珪素単結晶71の品質が低下することを抑制できる。
また、ガイド部材87の材料として黒鉛を用いた場合、筒状部88の内面のみをタンタルカーバイド(TaC)により被覆してもよい。
【0126】
上記構成とされた第1の実施の形態の第2変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置85は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10と同様な効果を得ることができる。具体的には、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
また、第1の実施の形態の第2変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置85を用いた炭化珪素単結晶71の製造方法は、第1の実施の形態で説明した炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な手法により行なうことができ、また、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0127】
なお、第1の実施の形態の第2変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置85では、下部坩堝41に対して上部坩堝42が移動することで、坩堝31内の空間46の体積を変更可能な坩堝31を用いた場合を例に挙げて説明したが、坩堝31の替わりに、坩堝内の体積が変更不可能な構成とされた坩堝(後述する図12に示す坩堝102)を用いてもよい。
【0128】
図11は、本発明の第1の実施の形態の第3変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置の主要部の断面図である。
図11では、第1の実施の形態の第3変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置90の構成要素である真空容器11、断熱部材12、支持部材15、加熱手段16、第1の放射温度計18、第2の放射温度計19、及び上部坩堝昇降手段38(図1及び図2参照)の図示を省略する。また、図11において、図2に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
【0129】
図11を参照するに、第1の実施の形態の第3変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置90は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10に設けられた炭化珪素単結晶製造装置本体13の替わりに、炭化珪素単結晶製造装置本体91を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置10と同様に構成される。
炭化珪素単結晶製造装置91は、図2に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13の構成に、さらにガイド部材93を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置本体13と同様に構成される。
【0130】
図11を参照するに、ガイド部材93は、上部坩堝42の内壁に設けられている。ガイド部材93は、炭化珪素種結晶35の成長面35aから炭化珪素原料39の上面39aに向かうにつれて、幅広な形状とされた筒状部94を有する。筒状部94は、炭化珪素種結晶35の成長面35aから炭化珪素原料39の上面39aに向かうにつれて、直径が大きくなる円錐台状とされている。
【0131】
このように、炭化珪素種結晶35の成長面35aから炭化珪素原料39の上面39aに向かうにつれて、直径が大きくなる円錐台状とされた筒状部94を設けることにより、炭化珪素原39から昇華した原料ガスを炭化珪素種結晶35の成長面35aに案内して、筒状部94の形状に対応した炭化珪素単結晶71を成長させることができる。
【0132】
ガイド部材93の材料としては、高温において安定であり、かつ不純物ガスの発生の少ない材料を用いるとよい。具体的には、ガイド部材93の材料としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、タンタルカーバイド(TaC)によって被覆された黒鉛(グラファイト)等を用いることができる。
【0133】
黒鉛(グラファイト)をタンタルカーバイド(TaC)で被覆することで、黒鉛に含まれるカーボンと原料ガスとが反応して、成長中の炭化珪素単結晶71の中にカーボンが取り込まれて、炭化珪素単結晶71の品質が低下することを抑制できる。
また、ガイド部材93の材料として黒鉛を用いた場合、筒状部94を構成するガイド部材93の内面のみをタンタルカーバイド(TaC)により被覆してもよい。
【0134】
上記構成とされた第1の実施の形態の第3変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置90は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10と同様な効果を得ることができる。具体的には、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
また、第1の実施の形態の第3変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置90を用いた炭化珪素単結晶71の製造方法は、第1の実施の形態で説明した炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な手法により行なうことができ、また、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0135】
図12は、本発明の第1の実施の形態の第4変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置の主要部の断面図である。
図12では、第1の実施の形態の第4変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置100の構成要素である真空容器11、断熱部材12、支持部材15、加熱手段16、第1の放射温度計18、第2の放射温度計19、及び上部坩堝昇降手段38(図1及び図2参照)の図示を省略する。また、図12において、図11に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0136】
図12を参照するに、第1の実施の形態の第4変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置100は、第1の実施の形態の第3変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置90に設けられた炭化珪素単結晶製造装置本体91の替わりに、炭化珪素単結晶製造装置本体101を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置90と同様に構成される。
【0137】
炭化珪素単結晶製造装置101は、図11に示す炭化珪素単結晶製造装置本体91に設けられた坩堝31の替わりに坩堝102を設けた以外は炭化珪素単結晶製造装置本体91と同様に構成される。坩堝102は、坩堝102内の空間46の体積を変更不可能な構成とされている。
【0138】
上記構成とされた第1の実施の形態の第4変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置100は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10と同様な効果を得ることができる。具体的には、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
また、第1の実施の形態の第4変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置100を用いた炭化珪素単結晶71の製造方法は、炭化珪素単結晶71の成長中に坩堝102内の空間46の体積を変更しないこと以外は第1の実施の形態で説明した炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な手法により行なうことができる。
【0139】
(第2の実施の形態)
図13は、本発明の第2の実施の形態に係る炭化珪素単結晶製造装置の概略構成を示す断面図である。
図13では、第2の実施の形態に係る炭化珪素単結晶製造装置110の構成要素である真空容器11、断熱部材12、支持部材15、加熱手段16、第1の放射温度計18、第2の放射温度計19、及び上部坩堝昇降手段38の図示を省略する(図1及び図2参照)。
また、図13において、図2に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0140】
図13を参照するに、第2の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置110は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10に設けられた炭化珪素単結晶製造装置本体13の替わりに、炭化珪素単結晶製造装置本体111を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置10と同様に構成される。
【0141】
炭化珪素単結晶製造装置本体111は、図2に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13に設けられた台座33及び板材引き上げ用部材36の替わりに、台座113及び板材引き上げ用部材114を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置本体13と同様に構成される。
【0142】
台座113は、台座本体116と、複数の板材である第1〜第4の板材51,52−1,52−2,52−3と、を有する。台座本体116は、筒状とされており、貫通部32Aを露出するように、蓋体32の下面32bに設けられている。台座本体116の下端面116aには、台座本体116の下端側に位置する開放端を塞ぐように、炭化珪素種結晶35が取り付けられている。
台座本体116は、第1及び第2の板材51,52−1を収容する収容部118を有する。収容部118は、台座本体116の下端側に位置する開放端を炭化珪素種結晶35で塞ぐことで、第1及び第2の板材51,52−1を収容可能となる。
【0143】
第1〜第4の板材51,52−1,52−2,52−3は、第1の板材51、第2の板材52−1、第3の板材52−2、第4の板材52−3の順で収容部118及び収容部118上に積み重ねられており、第3及び第4の板材52−2,52−3が蓋体32の上面32aから突出している。この状態において、第1の板材51は、炭化珪素種結晶35(具体的には、成長面35aの反対側に位置する炭化珪素種結晶35の面)と接触している。
【0144】
第2〜第4の板材52−1,52−2,52−3は、先に説明した図5に示す第2の板材52と同様な構成とされている。第2〜第4の板材52−1,52−2,52−3は、第2の板材52−1のフック収容部56の高さが第3及び第4の板材52−2,52−3のフック収容部56の高さよりも高く、かつ第4の板材52−3のフック収容部56の高さが第2及び第3の板材52−1,52−2のフック収容部56の高さよりも低くなるように構成されている。
第1〜第4の板材51,52−1,52−2,52−3の厚さは、例えば、それぞれ10mmとすることができる。また、上記構成とされた台座113の材料としては、炭化珪素や炭素等を用いることができる。
【0145】
図13を参照するに、板材引き上げ用部材114は、支柱部64と、第1のフック部65と、第2のフック部66−1と、第3のフック部66−2と、第4のフック部66−3と、を有する。第2〜第4のフック部66−1,66−2,66−3は、図5及び図6に示す第2のフック部66と同様な構成とされており、支柱部64に設けられている。
【0146】
第2のフック部66−1は、第1のフック部65の上方に配置されており、第2の板材52−1を引き上げるためのフックである。第3のフック部66−2は、第2のフック部66−1の上方に配置されており、第3の板材52−2を引き上げるためのフックである。
第4のフック部66−3は、第3のフック部66−2の上方に配置されており、第4の板材52−3を引き上げるためのフックである。
上記構成とされた板材引き上げ用部材114は、上方に引き上げられることにより、第4の板材52−3、第3の板材52−2、第2の板材52−1、第1の板材51の順で板材を除去する。
【0147】
第2の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置によれば、第1及び第2の板材51,52−1を収容する収容部118を備えた台座本体116、及び収容部118及び収容部118上に積み重ねられた第1〜第4の板材51,52−1,52−2,52−3よりなる台座113と、第4の板材52−3、第3の板材52−2、第2の板材52−1、第1の板材51の順に板材を引き上げる板材引き上げ用部材114と、を有することにより、台座113の厚さを薄くして、厚さを薄くする前の台座113及び炭化珪素種結晶35よりなる第1の構造体Eの厚さと、厚さが薄くされた台座113、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる第2の構造体の厚さと、をできるだけ等しくすることが可能となる。
【0148】
これにより、厚さを薄くする前の台座113の上面から熱を放熱する第1の構造体Eの放熱特性と、厚さが薄くされた台座113の上面から熱を放熱する第2の構造体の放熱特性と、の差が小さくなるので、成長初期における炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、炭化珪素単結晶71の成長が進んだときの炭化珪素単結晶71の結晶成長面の温度分布と、の差を小さくすることが可能となる。
【0149】
よって、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶性成長面71aが凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0150】
また、第2の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置110を用いた炭化珪素単結晶71の製造方法は、第1の実施の形態で説明した炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な手法により行なうことができ、また、第1の実施の形態で説明した炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0151】
なお、第2の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置110に設けられた上部坩堝42の内壁に、図9に示すガイド部材82、図10に示すガイド部材87、図11に示すガイド部材93のうちのいずれか1つのガイド部材を設けてもよい。
また、第2の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置110を構成する坩堝31の替わりに、図12に示す坩堝102を設けてもよい。
さらに、第2の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置110を構成する台座本体116の替わりに、図2に示す台座本体48を設け、台座本体48の下面48bに炭化珪素種結晶35を取り付けてもよい。
【0152】
また、第2の実施の形態では、一例として、昇華再結晶法により炭化珪素単結晶71を製造する場合について説明したが、本発明は、例えば、原料ガス(昇華ガス)の替わりにシランやプロパン等を原料とするCVD(Chemical Vapor Deposition)法にも適用可能である。
【0153】
(第3の実施の形態)
図14は、本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶製造装置の概略構成を示す断面図である。
図14では、第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶製造装置120の構成要素である真空容器11、断熱部材12、支持部材15、加熱手段16、第1の放射温度計18、第2の放射温度計19、及び上部坩堝昇降手段38(図1及び図2参照)の図示を省略する。また、図14において、図2に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0154】
図14を参照するに、第3の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置120は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10に設けられた炭化珪素単結晶製造装置本体13の替わりに、炭化珪素単結晶製造装置本体121を設けた以外は炭化珪素単結晶製造装置10と同様に構成される。
炭化珪素単結晶製造装置本体121は、図2に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13に設けられた台座33及び板材引き上げ用部材36の替わりに、台座123を設けた以外は炭化珪素単結晶製造装置本体13と同様に構成される。
【0155】
台座123は、台座本体48と、切断用台座部材125と、を有する。切断用台座部材125は、円柱形状とされた部材である。切断用台座部材125は、下端が収容部54に収容されており、下面125aが台座本体48の上面48aと接触している。また、収容部54に収容された状態において、切断用台座部材125は、蓋体32の上面32aから突出している。
切断用台座部材125は、炭化珪素単結晶71の成長に応じて切断される部材であり、第1及び第2の切断位置126,127を有する。切断用台座部材125の厚さは、例えば、150mmとすることができる。
【0156】
図15は、第1の切断位置で切断された台座を備えた炭化珪素単結晶製造装置を模式的に示す断面図である。図15において、図14に示す備えた炭化珪素単結晶製造装置120と同一構成部分には、同一符号を付す。図15では、図14に示す炭化珪素単結晶71よりも成長した状態の炭化珪素単結晶71を模式的に示す。
【0157】
図14を参照するに、第1の切断位置126は、最初に切断される位置であり、切断用台座部材125の上面125bから距離D4(例えば、20mm)の位置に設けられている。
図14及び図15を参照するに、成長中の炭化珪素単結晶71の厚さが距離D4の値と略等しくなった際、第1の切断位置126で切断用台座部材125を切断し、切断された切断用台座部材125の上端部分を除去することで、台座123の厚さを薄くする。
【0158】
これにより、図14に示す切断前の台座123及び炭化珪素種結晶35よりなる第1の構造体Fの厚さM5と、図15に示す切断された台座123、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる第2の構造体Gの厚さM6と、をできるだけ等しくすることが可能となるので、図14に示す台座123の上部(この場合、切断用台座部材125の上部)から熱を放熱する第1の構造体Fの放熱特性と、図15に示す台座123の上部(この場合、切断用台座部材125の上部)から熱を放熱する第2の構造体Gの放熱特性と、の差を小さくすることが可能となる。
【0159】
したがって、図14に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、図15に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71bの温度分布と、の差を小さくすることが可能になる。
【0160】
つまり、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶性成長面71aが凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となる。これにより、結晶欠陥が少なく、高品質とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0161】
図16は、第2の切断位置で切断された台座を備えた炭化珪素単結晶製造装置を模式的に示す断面図である。図16において、図14に示す備えた炭化珪素単結晶製造装置120と同一構成部分には、同一符号を付す。図16では、図15に示す炭化珪素単結晶71よりもさらに成長した状態の炭化珪素単結晶71を模式的に示す。
【0162】
図14を参照するに、第2の切断位置126は、第1の切断位置125の次に切断される位置であり、切断用台座部材125の上面125bから距離D5(例えば、40mm)の位置に設けられている。
図14及び図16を参照するに、炭化珪素単結晶71の厚さが距離D5の値と略等しくなった際、第2の切断位置127で切断用台座部材125を切断し、切断された切断用台座部材125の上端部分を除去することで、図15に示す状態からさらに台座123の厚さを薄くする。
【0163】
これにより、図14に示す切断される前の台座123及び炭化珪素種結晶35よりなる第1の構造体Fの厚さM5と、図16に示す切断された台座123、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる第2の構造体Hの厚さM7と、をできるだけ等しくすることが可能となるため、図14に示す台座123の上部から熱を放熱する第1の構造体Fの放熱特性と、図15に示す台座123の上部(この場合、切断用台座部材125の上部)から熱を放熱する第2の構造体Hの放熱特性と、の差を小さくすることが可能となる。
【0164】
したがって、図14に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、図16に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71cの温度分布と、の差を小さくすることが可能になる。
【0165】
つまり、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶成長面71aが凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、結晶成長面71cが凸面とされた炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となる。これにより、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0166】
上記構成とされた台座123の材料としては、炭化珪素や炭素等を用いるとよい。これにより、炭化珪素種結晶35及び炭化珪素単結晶71との間の熱膨張係数の差が小さくなるので、該熱膨張係数の差に起因して成長中の炭化珪素単結晶71が破損することを抑制できる。
【0167】
なお、第3の実施の形態では、切断用台座部材125を一例として、2つの切断位置(第1及び第2の切断位置126,127)を備えた場合を例に挙げて説明したが、3つ以上の切断位置を備えた切断用台座部材125を用いてもよい。
【0168】
また、第3の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置120に設けられた上部坩堝42の内壁に、図9に示すガイド部材82、図10に示すガイド部材87、図11に示すガイド部材93のうちのいずれか1つのガイド部材を設けてもよい。
さらに、第3の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置120に設けられた坩堝31の替わりに、図12に示す坩堝102を設けてもよい。
【0169】
次に、図14〜図16を参照して、第3の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法について説明する。
始めに、図14に示すように、下部坩堝41内に炭化珪素原料39を導入する。次いで、台座本体48の下面48bに炭化珪素種結晶35を取り付ける。次いで、炭化珪素種結晶35の成長面35aと坩堝31内の炭化珪素原料39の上面39aとが対向するように、上部坩堝42の上端に蓋体32を配置する。
【0170】
次いで、台座本体48の収容部54に、切断用台座部材125を配置して、切断用台座部材125の一部(具体的には、第1及び第2の切断位置126,127)を蓋体32の上面32aから突出させる。この段階では、図14に示すように、坩堝31内の空間46の体積が最も小さくなるようにする。
【0171】
次いで、坩堝31内の炭化珪素原料39を加熱することで、炭化珪素種結晶35の成長面35aに原料ガスを昇華させて、成長面35aに炭化珪素単結晶71を初期成長させる。このとき、予め取得した最適な結晶成長条件(具体的には、結晶性成長面71aが凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)を用いる。
【0172】
次いで、図14に示す距離D4と図15に示す炭化珪素単結晶71の厚さとが略等しくなった段階で、図15に示すように、図14に示す切断用台座部材125を第1の切断位置126で切断し、切断された切断用台座部材125の上端を除去することで、台座123の厚さを薄くする。
【0173】
これにより、図14に示す台座123の上部から熱を放出する第1の構造体Fの放熱特性と、図15に示す台座123の上部から熱を放熱する第2の構造体Gの放熱特性と、の差が小さくなるので、成長初期における炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、炭化珪素単結晶71の成長が進んだときの炭化珪素単結晶71の結晶成長面71bの温度分布と、の差を小さくすることが可能となる。
【0174】
これにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を成長させることができる。
【0175】
また、図15に示す炭化珪素単結晶71を形成する場合、図15に示す距離D2が図14に示す距離D1と略等しくなるように、炭化珪素単結晶71の成長に合わせて上部坩堝42を上方に移動させる。
これにより、図15に示す炭化珪素単結晶71の成長条件を、図14に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の成長条件に、さらに近づけることが可能となるので、厚さ方向において、略均一な特性とされた炭化珪素単結晶71を形成できる。
【0176】
次いで、図14に示す距離D5と図16に示す炭化珪素単結晶71の厚さとが略等しくなった段階で、図16に示すように、図14に示す第2の切断位置127で切断用台座部材125を切断し、切断された切断用台座部材125の上端部を除去することで、図15に示す状態よりもさらに台座123の厚さを薄くする。
【0177】
これにより、図14に示す台座123の上部から熱を放出する第1の構造体Fの放熱特性と、図16に示す台座123の上部(この場合、切断用台座部材125の上部)から熱を放熱する第2の構造体Hの放熱特性と、の差が小さくなるので、成長初期における炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、成長がさらに進んだ炭化珪素単結晶71の結晶成長面71cの温度分布と、の差を小さくすることが可能となる。
【0178】
したがって、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を成長させることができる。
【0179】
また、図16に示す炭化珪素単結晶71を形成する場合、図16に示す距離D3が図14に示す距離D1と略等しくなるように、炭化珪素単結晶71の成長に合わせて上部坩堝42を上方に移動させる。
これにより、図16に示す炭化珪素単結晶71の成長条件を、図14に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の成長条件に、さらに近づけることが可能となるので、厚さ方向において、略均一な特性とされた炭化珪素単結晶71を形成できる。
【0180】
第3の実施の形態の炭化珪素単結晶の製造方法によれば、台座本体48に取り付けられた炭化珪素種結晶35の成長面35aに、加熱により炭化珪素原料39を昇華させた原料ガスを供給して炭化珪素単結晶71を成長させ、炭化珪素単結晶71の成長中に、炭化珪素単結晶71の成長に応じて、切断用台座部材125を切断して台座123の厚さを薄くすることにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0181】
なお、上記第3の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法では、結晶成長中に、台座33の厚さを薄くする場合を例に挙げて説明したが、炭化珪素単結晶71の成長を一度停止させた後に、切断用台座部材125を切断して台座123の厚さを薄くし、その後、炭化珪素単結晶71を成長させてもよい。
このような方法により、炭化珪素単結晶71を製造する場合、上記第3の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0182】
また、第3の実施の形態では、一例として、昇華再結晶法により炭化珪素単結晶71を製造する場合について説明したが、本発明は、例えば、原料ガス(昇華ガス)の替わりにシランやプロパン等を原料とするCVD(Chemical Vapor Deposition)法にも適用可能である。
【0183】
(第4の実施の形態)
図17〜図24は、本発明の第4の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図である。図17〜図24において、図13及び図14に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
また、図示していないが、図17〜図24に示す坩堝31−1,31−2,31−3,31−4は、先に説明した図2に示すシャフト部75に支持されている。
【0184】
図17〜図24を参照して、第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶71の製造方法について説明する。
始めに、図17に示す工程では、下部坩堝41−1及び上部坩堝42−1よりなる坩堝31−1の上端に配置された蓋体32a−1の貫通部32A−1に、炭化珪素種結晶35が取り付けられた台座141を取り付ける。
台座141は、収容部118を備えた台座本体116と、切断用台座部材142と、を有する。台座本体116は、蓋体32−1の下面32b−1よりも下方に突出している。切断用台座部材142は、収容部118に収容されており、蓋体32−1の上面32a−1よりも上方に突出している。
【0185】
なお、図17では、炭化珪素種結晶35の成長面35aに、成長初期の炭化珪素単結晶71が成長している様子を模式的に図示している。
また、図17に示す坩堝31−1及び蓋体32−1は、先に説明した図2に示す坩堝31及び蓋体32と同様な構成とされている。
さらに、この段階において、炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aから炭化珪素原料39−1の上面39a−1までの距離は、距離D1となるように構成されている。
【0186】
次いで、図18に示す工程では、炭化珪素単結晶71を図17に示す状態から成長させる。この段階において、例えば、炭化珪素種結晶35の成長面35aに形成された炭化珪素単結晶71の厚さは、例えば、20mmとすることができる。この段階では、炭化珪素単結晶71の成長により、炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aから炭化珪素原料39−1の上面39a−1までの距離は、距離D1よりも小さくなる。
図18に示す第1の切断位置144は、最初に切断される位置であり、例えば、図18に示す切断用台座部材142の上面142aから厚さ20mmの位置に設定することができる。
【0187】
次いで、図19に示す工程では、炭化珪素単結晶71の成長を一度停止させる。その後、図示していないシャフト部75から、図18に示す下部坩堝41−1及び上部坩堝42−1を取り外すと共に、図18に示す蓋体32−1から炭化珪素単結晶71及び炭化珪素種結晶35と一体とされた台座141を取り外し、さらに、図18に示す上部坩堝42−1から蓋体32−1を取り外す。
【0188】
次いで、図示していないシャフト部75に、図19に示す下部坩堝41−2及び上部坩堝42−2により構成された坩堝31−2(図18に示す坩堝31−1とは異なる新しい坩堝)、及び蓋体32−2(図18に示す蓋体32−1とは異なる新しい蓋体)を組み立て、下部坩堝41−2内に新たに炭化珪素原料39−2を収容させる。
【0189】
次いで、図18に示す切断用台座部材142を第1の切断位置144で切断すると共に、図19に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aから炭化珪素原料39−2の上面39a−2までの距離が図17に示す距離D1となり、かつ台座141を蓋体32−2に取り付けたときに台座本体116の上端面が蓋体32−2の上面32a−2と略面一となるように、台座本体116の上端を切断した台座141(図19に示す台座)を蓋体32−2の貫通部32A−2に取り付ける。
【0190】
これにより、図17に示す台座141の上面141aから熱を放出する第1の構造体I(図17に示す台座141及び炭化珪素種結晶35よりなる構造体)の放熱特性と、図19に示す台座141の上面141bから熱を放熱する第2の構造体J(図19に示す台座141、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる構造体)の放熱特性と、の差が小さくなるので、成長初期における炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、成長がさらに進んだ炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、の差を小さくすることが可能となる。
【0191】
これにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を成長させることができる。
【0192】
また、図19に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aから炭化珪素原料39−2の上面39a−2までの距離が図17に示す距離D1となるように設定することで、図19に示す炭化珪素単結晶71の成長条件を、図17に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の成長条件に、さらに近づけることが可能となるので、厚さ方向において、略均一な特性とされた炭化珪素単結晶71を形成できる。
【0193】
次いで、図20に示す工程では、図19に示す状態から、炭化珪素単結晶71の成長を再開する。図20に示す工程では、例えば、さらに、20mmの炭化珪素単結晶71を成長させる。
図20に示す第2の切断位置146は、2番目に切断される位置であり、例えば、図20に示す切断用台座部材142の上面142bから厚さ20mmの位置に設定することができる。
【0194】
次いで、図21に示す工程では、炭化珪素単結晶71の成長を一度停止させる。その後、図示していないシャフト部75から、図20に示す下部坩堝41−2及び上部坩堝42−2を取り外すと共に、図20に示す蓋体32−2から炭化珪素単結晶71及び炭化珪素種結晶35と一体とされた台座141を取り外し、さらに、図20に示す上部坩堝42−2から蓋体32−2を取り外す。
【0195】
次いで、図示していないシャフト部75に、図21に示す下部坩堝41−3及び上部坩堝42−3により構成された坩堝31−3(図20に示す坩堝31−2とは異なる新しい坩堝)、及び蓋体32−3(図20に示す蓋体32−2とは異なる新しい蓋体)を組み立て、下部坩堝41−3内に新たに炭化珪素原料39−3を収容させる。
【0196】
次いで、図18に示す切断用台座部材142を第2の切断位置146で切断すると共に、
図21に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aから炭化珪素原料39−3の上面39a−3までの距離が図18に示す距離D1となり、かつ台座141を蓋体32−3に取り付けたときに台座本体116の上端面が蓋体32−3の上面32a−3と略面一となるように、台座本体116の上端を切断した台座141(図21に示す台座)を蓋体32−3の貫通部32A−3に取り付ける。
【0197】
これにより、図17に示す台座141の上面141aから熱を放出する第1の構造体Iの放熱特性と、図21に示す台座141の上面141cから熱を放熱する第2の構造体K(図21に示す台座141、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる構造体)の放熱特性と、の差が小さくなるので、成長初期における炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、成長がさらに進んだ炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、の差を小さくすることが可能となる。
【0198】
これにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を成長させることができる。
【0199】
また、図21に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aから炭化珪素原料39−2の上面39a−2までの距離が図17に示す距離D1となるように設定することで、図21に示す炭化珪素単結晶71の成長条件を、図17に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の成長条件に、さらに近づけることが可能となるので、厚さ方向において、略均一な特性とされた炭化珪素単結晶71を形成できる。
【0200】
次いで、図22に示す工程では、図21に示す状態から、炭化珪素単結晶71の成長を再開する。図22に示す工程では、例えば、さらに、20mmの炭化珪素単結晶71を成長させる。
図22に示す第3の切断位置147は、3番目に切断される位置であり、例えば、図22に示す切断用台座部材142の上面142cから厚さ20mmの位置に設定することができる。
【0201】
次いで、図23に示す工程では、炭化珪素単結晶71の成長を一度停止させる。その後、図示していないシャフト部75から、図22に示す下部坩堝41−3及び上部坩堝42−3を取り外すと共に、図22に示す蓋体32−3から炭化珪素単結晶71及び炭化珪素種結晶35と一体とされた台座141を取り外し、さらに、図22に示す上部坩堝42−3から蓋体32−3を取り外す。
【0202】
次いで、図示していないシャフト部75に、図23に示す下部坩堝41−4及び上部坩堝42−4により構成された坩堝31−4(図22に示す坩堝31−3とは異なる新しい坩堝)、及び蓋体32−4(図22に示す蓋体32−3とは異なる新しい蓋体)を組み立て、下部坩堝41−4内に新たに炭化珪素原料39−4を収容させる。
【0203】
次いで、図22に示す切断用台座部材142を第3の切断位置147で切断すると共に、図23に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aから炭化珪素原料39−4の上面39a−4までの距離が図17に示す距離D1となるように、台座本体116の外周及び炭化珪素単結晶71の外周に、台座本体116及び炭化珪素単結晶71を支持する支持部材149を設け、支持部材149を介して、蓋体32−4の貫通部32A−4に、第2の構造体L(図23に示す台座141、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる構造体)を取り付ける。
この段階において、炭化珪素単結晶71の上端の一部が、蓋体32−4の上面32a−4から突出する。
【0204】
これにより、図17に示す台座141の上面141aから熱を放出する第1の構造体Iの放熱特性と、図23に示す台座141の上面141dから熱を放熱する第2の構造体Lの放熱特性と、の差が小さくなるので、成長初期における炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、成長がさらに進んだ炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、の差を小さくすることが可能となる。
【0205】
これにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を成長させることができる。
【0206】
また、図23に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aから炭化珪素原料39−4の上面39a−4までの距離が図17に示す距離D1となるように設定することで、図23に示す炭化珪素単結晶71の成長条件を、図17に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の成長条件に、さらに近づけることが可能となるので、厚さ方向において、略均一な特性とされた炭化珪素単結晶71を形成できる。
【0207】
次いで、図24に示す工程では、図23に示す状態から、炭化珪素単結晶71の成長を再開する。図24に示す工程では、例えば、さらに、20mmの炭化珪素単結晶71を成長させる。
なお、図24に示す工程の後に、先に説明した図23に示す工程と同様な処理を行なった後、さらに、炭化珪素単結晶71を成長させてもよい。
【0208】
第4の実施の形態の炭化珪素単結晶の製造方法によれば、炭化珪素単結晶71の成長を一度停止し、炭化珪素単結晶71の成長に応じて、切断用台座部材142を切断して台座141の厚さを薄くすると共に、坩堝、蓋体、及び炭化珪素原料を新しいものに交換して、台座141に取り付けられた炭化珪素種結晶35の成長面35aに、加熱により炭化珪素原料39a−1,39a−2,39a−3,39a−4を昇華させた原料ガスを供給して炭化珪素単結晶71を成長させることにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0209】
なお、第4の実施の形態では、一例として、昇華再結晶法により炭化珪素単結晶71を製造する場合について説明したが、本発明は、例えば、原料ガス(昇華ガス)の替わりにシランやプロパン等を原料とするCVD(Chemical Vapor Deposition)法にも適用可能である。
【0210】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0211】
本発明の炭化珪素単結晶製造装置、及び炭化珪素単結晶の製造方法は、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶を製造可能な炭化珪素単結晶製造装置、及び炭化珪素単結晶の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0212】
10,80,85,90,100,110,120…炭化珪素単結晶製造装置、11…真空容器、12…断熱部材、13,81,86,91,101,111,121…炭化珪素単結晶製造装置本体、15…支持部材、15A…貫通孔、16…加熱手段、18…第1の放射温度計、19…第2の放射温度計、22…ガス導入孔、23…ガス排出孔、25…装置本体収容部、26,32A…貫通部、27…窓孔、31,31−1,31−2,31−3,31−4,102…坩堝、32,32−1,32−2,32−3,32−4…蓋体、32a,32a−2, 32a−2,32a−3, 32a−4,39a,39a−1,39a−2,39a−3,39a−4,48a,51a,52a,125b,125c,125d,141a,141b,141c,141d,142a,142b,142c…上面、32A,32A−1,32A−2,32A−3,32A−4…貫通部、32b,32b−1, 32b−2,32b−3, 32b−4,48b,125a…下面、33,113,123,141…台座、35…炭化珪素種結晶、35a…成長面、36,114…板材引き上げ部材、38…上部坩堝昇降手段、39,39−1,39−2,39−3,39−4…炭化珪素原料、41,41−1,41−2,41−3,41−4…下部坩堝、41a,75a…外周側面、42,42−1,42−2,42−3,42−4…上部坩堝、43,44…スライド部、43a,44a…スライド面、46…空間、48,116…台座本体、51…第1の板材、52,52−1…第2の板材、52−2…第3の板材、52−3…第4の板材、54,118…収容部、56…フック収容部、56a…天井面、57,61…支柱部通過部、58,62…フック通過部、64…支柱部、65…第1のフック部、66…第2のフック部、71…炭化珪素単結晶、71a,71b,71c…結晶成長面、75…シャフト部、76…シャフトガイド部、77…駆動部、82,87,93…ガイド部材、83…開口部、84…隙間、88,94…筒状部、89…板部、116a…下端面、125,142…切断用台座部材、126,144…第1の切断位置、127,146…第2の切断位置、147…第3の切断位置、149…支持部材A,E,F,I…第1の構造体、B,C,G,H,J,K…第2の構造体、D1,D2,D3,D4,D5…距離、J1…長さ、M1,M2,M3,M4,M5,M6,M7…厚さ、W1…幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素単結晶製造装置、及び炭化珪素単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、半導体材料のうちの1つであり、他の半導体材料である珪素(Si)や砒化ガリウム(GaAs)等と比較して、バンドギャップが大きいことから、 炭化珪素基板を用いて、パワーデバイス、高周波デバイス、及び高温動作デバイス等の炭化珪素デバイスを形成する研究が行なわれている。
【0003】
上記炭化珪素基板は、例えば、昇華再結晶法により形成された炭化珪素単結晶インゴットをスライスし、その後、両面を鏡面加工することで形成される。また、炭化珪素単結晶インゴットは、炭化珪素単結晶製造装置を用いて形成される(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0004】
図25は、従来の炭化珪素単結晶製造装置の主要部を示す断面図である。図25において、X1は、台座205の上面205aから炭化珪素種結晶206の成長面206a(結晶フロント面)までの距離(以下、「距離X1」という)を示している。
【0005】
図25を参照するに、従来の炭化珪素単結晶製造装置200は、炭化珪素原料201を収容する坩堝202と、蓋体204と、蓋体204と一体形成され、蓋体204の下面204aから突出する台座205と、炭化珪素原料201と対向する台座205の下面205bに取り付けられ、炭化珪素単結晶208が形成される炭化珪素種結晶206と、を有する(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
通常、上記炭化珪素単結晶製造装置200を用いて炭化珪素単結晶208を形成する場合、図25に示すように、予め炭化珪素単結晶208の結晶成長面208aが凸面(炭化珪素原料201の上面201a側に凸んだ面)となるような最適な結晶成長条件を求め、該最適な結晶成長条件により炭化珪素単結晶208を成長させる。
【0007】
このように、炭化珪素単結晶208の結晶成長面208aが凸面となるように、炭化珪素単結晶208を成長させることで、結晶欠陥の少ない炭化珪素単結晶208を得ることができる(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−308697号公報
【特許文献2】特許第4499698号公報
【特許文献3】特開2009−23880号公報
【特許文献4】特開平6−227886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図26及び図27は、従来の炭化珪素単結晶製造装置の問題点を説明するための断面図である。図26では、図25に示す炭化珪素単結晶208がさらに成長した状態を模式的に示しており、図27では、図26に示す炭化珪素単結晶208がさらに成長した状態を模式的に示している。
【0010】
また、図26において、X2は、台座205の上面205aから炭化珪素単結晶208の結晶成長面208bまでの距離(以下、「距離X2」という)を示している。さらに、図27において、X3は、台座205の上面205aから炭化珪素単結晶208の結晶成長面208cまでの距離(以下、「距離X3」という)を示している。
なお、図26及び図27において、図25に示す炭化珪素単結晶製造装置200と同一構成部分には同一符号を付す。
【0011】
ところで、炭化珪素単結晶208の成長時において、図26及び図27に示す台座205、炭化珪素種結晶206、及び炭化珪素単結晶208よりなる構造体211の熱は、台座205の上面205aから放熱される。
しかしながら、炭化珪素単結晶208が進むと、台座205の上面205aから炭化珪素単結晶208の結晶成長面208b,208cまでの距離X2,X3が距離X1よりも長くなるので構造体211の熱を放出しにくくなる。
【0012】
すなわち、成長初期には、台座205及び炭化珪素種結晶206よりなる第1の構造体が熱抵抗となるが、炭化珪素単結晶208の成長が進むと、台座205、炭化珪素種結晶206、及び炭化珪素単結晶208よりなる第2の構造体が熱抵抗となるため、炭化珪素単結晶208の成長が進むと成長した炭化珪素単結晶208の分だけ、成長初期よりも熱抵抗が増大することになり、その結果、台座205の上面205aからの放熱能力は低下する。
【0013】
このため、炭化珪素単結晶の成長が進むと、炭化珪素単結晶の結晶成長面の温度分布が、成長初期の炭化珪素単結晶の結晶成長面の温度分布と異なってしまう。
【0014】
また、炭化珪素単結晶208の成長がさらに進むと、結晶成長面が熱源である炭化珪素原料の表面に近づき、これも結晶成長面の温度分布に影響を与える。
【0015】
このように、成長初期の結晶成長面の温度分布は炭化珪素単結晶の成長と共に変化するため、炭化珪素単結晶を最適な結晶成長条件で長尺に成長させることができないという問題があった。
【0016】
また、炭化珪素単結晶を長尺化させると、炭化珪素単結晶を最適な結晶成長条件で成長させることができないことにより、結晶成長面が凹面化して欠陥が入ったり、結晶成長面が凸面化して割れたりするという問題があった。
つまり、従来の炭化珪素単結晶製造装置では、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶(炭化珪素単結晶インゴット)を製造することができなかった。
【0017】
そこで、本発明は、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶を製造可能な炭化珪素単結晶製造装置、及び炭化珪素単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶を製造するためには、台座の厚さを薄くすることが可能な構成とし、かつ炭化珪素単結晶の成長に応じて、台座の厚さを薄くすることが必要であると想到した。
【0019】
具体的には、炭化珪素単結晶を成長させる前の台座(厚さを薄くする前の台座)、及び炭化珪素種結晶よりなる第1の構造体の厚さと、厚さが薄くされた台座、炭化珪素種結晶、及び炭化珪素単結晶よりなる第2の構造体の厚さと、をできるだけ等しくすることで、結晶成長時における第1及び第2の構造体の放熱状態の変化を低減し、炭化珪素単結晶の結晶成長面の温度分布の変化を小さくすることが可能になると想到した。
【0020】
これにより、炭化珪素単結晶の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶成長面が凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、炭化珪素単結晶を成長させることが可能となるという考えに至った。
【0021】
そこで、本発明者は、台座の厚さの違いが炭化珪素単結晶の結晶成長面の温度にどのような影響を及ぼすかについて確認するためのシミュレーションを行なった。この結果を図28に示す。
【0022】
図28は、台座の厚さと炭化珪素単結晶の結晶成長面の温度分布との関係をシミュレーションにより評価した結果を示す図である。
なお、図28では、サンプル1として、図25に示す炭化珪素単結晶製造装置200に成長初期の炭化珪素単結晶208が形成されたときの炭化珪素単結晶208の結晶成長面208aの温度分布を示す。
また、図28では、サンプル2として、図26に示す炭化珪素単結晶製造装置200に厚さ10mmの炭化珪素単結晶208が形成されたときの炭化珪素単結晶208の結晶成長面208bの温度分布を示す。
【0023】
さらに、サンプル3として、図27に示す炭化珪素単結晶製造装置200の台座205にザグリ(図示していない凹部)を形成し、台座205の厚さを薄くし、かつ厚さ10mmの炭化珪素単結晶208が形成されたときの炭化珪素単結晶208の結晶成長面208cの温度分布を示す。
【0024】
また、図28では、炭化珪素単結晶208の結晶成長面208a,208b,208cの中心の温度を基準(0℃)として、結晶成長面208a,208b,208cの径方向の温度を示す。
上記シミュレーションでは、シミュレーション条件として、ザグリが形成される前の台座205の厚さを10mm、ザグリが形成された後の台座205の厚さを1mmとした。
【0025】
図28を参照するに、サンプル1,2の温度分布の結果から、炭化珪素単結晶208の成長が進むと、サンプル1とサンプル2との温度分布に差が生じることが確認できた。
また、サンプル3の結果から、ザグリを形成して台座205の厚さを薄くすることで、炭化珪素単結晶208が10mm形成された結晶成長面208aの径方向における温度分布は、サンプル1に示す結晶成長初期の温度分布に近づくことが確認できた。
【0026】
つまり、上記シミュレーション結果から、炭化珪素単結晶の成長に応じて、台座の厚さを薄くすることで、炭化珪素単結晶の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶性成長面が凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、炭化珪素単結晶の成長の開始から終了までの間、炭化珪素単結晶を成長させることが可能になることが確認できた。
【0027】
さらに、炭化珪素単結晶208の成長が進むことで、結晶成長面が炭化珪素原料201の表面201aに近づくことによる、結晶成長面の温度分布の影響については、特許文献3のように、上下に分離された坩堝を用い、上部坩堝と下部坩堝を相対的に移動させることにより、炭化珪素単結晶208の結晶成長面と炭化珪素原料201の表面201aとの距離を調整できる構成を採用することとした。
本発明者は、この知見についてさらに研究を進めた結果、以下の手段を有する本発明を完成するに至った。
【0028】
すなわち、上記の目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
(1) 坩堝内の台座に取り付けた炭化珪素種結晶の成長面に、原料ガスを供給して、前記炭化珪素種結晶に炭化珪素単結晶を成長させる炭化珪素単結晶製造装置であって、前記台座は、該台座の厚さを薄くすることが可能な構成であることを特徴とする炭化珪素単結晶製造装置。
(2) 前記台座は、前記坩堝の上端に配置され、前記炭化珪素原料を昇華させた原料ガスを、前記炭化珪素種結晶の成長面に供給することで、前記炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする前項(1)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(3) 前記台座は、前記炭化珪素種結晶が取り付けられる台座本体と、該台座本体上に積み重ねられた複数の板材と、を有することを特徴とする前項(1)または(2)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(4) 前記台座本体は、前記坩堝の上端に配置された蓋体に設けられており、前記台座本体は、前記蓋体の下面から前記炭化珪素原料の上面に向かう方向に対して突出し、かつ少なくとも1つ以上の前記板材を収容する収容部を有することを特徴とする前項(3)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(5) 前記収容部は、前記蓋体の上面から突出しないように、複数の前記板材を収容することを特徴とする前項(4)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(6) 前記蓋体の上面から突出するように、前記収容部及び該収容部上に複数の前記板材を積み重ねられていることを特徴とする前項(4)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(7) 前記台座本体は、前記蓋体と一体とされていることを特徴とする前項(3)ないし(6)のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(8) 前記坩堝に、前記炭化珪素種結晶側に前記原料ガスを案内するガイド部材を設けたことを特徴とする前項(1)ないし(7)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(9) 前記ガイド部材は、前記炭化珪素原料の上面に対して略平行な板材とされており、かつ前記炭化珪素種結晶の成長面を露出する開口部を有することを特徴とする前項(8)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(10)前記ガイド部材は、前記炭化珪素種結晶よりも下方の位置に、前記炭化珪素種結晶の成長面を露出する筒状部を有することを特徴とする前項(8)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(11)前記筒状部は、前記炭化珪素種結晶の成長面から前記炭化珪素原料の上面に向かう方向において、同じ幅であることを特徴とする前項(10)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(12)前記筒状部は、前記炭化珪素種結晶の成長面から前記炭化珪素原料の上面に向かうにつれて、幅広な形状であることを特徴とする前項(10)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(13)前記坩堝は、前記蓋体が配置される上部坩堝と、前記炭化珪素原料を収容する下部坩堝と、を有し、前記上部坩堝及び前記下部坩堝は、上下方向に対して相対的に移動可能な構成であることを特徴とする前項(1)ないし(12)のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(14)前記ガイド部材を、前記上部坩堝の内壁に設けたことを特徴とする前項(13)記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(15)前記台座の材料が、炭化珪素であることを特徴とする前項(1)ないし(14)のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(16)前記台座の材料が、炭素であることを特徴とする前項(1)ないし(14)のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
(17)坩堝内の台座に取り付けた炭化珪素種結晶の成長面に、原料ガスを供給して、前記炭化珪素種結晶に炭化珪素の単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法であって、前記炭化珪素単結晶が成長するに従い、前記台座の厚さを薄くすることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
(18)前記炭化珪素種結晶が坩堝内に収容された前記炭化珪素原料と対向するように、前記坩堝の上端に前記台座を配置し、前記炭化珪素種結晶の成長面に、前記炭化珪素原料を昇華させた原料ガスを供給することで、前記炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする前項(17)記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(19)前記炭化珪素単結晶の成長中に、前記台座の厚さを薄くすることを特徴とする前項(17)または(18)記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(20)前記炭化珪素単結晶の成長を停止させた後に、前記台座の厚さを薄くし、その後、前記炭化珪素単結晶をさらに成長させることを特徴とする前項(17)または(18)記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(21)前記台座は、前記炭化珪素種結晶が取り付けられた台座本体と、該台座本体上に積み重ねられた複数の板材と、を有し、前記板材を取り外すことで、前記台座の厚さを薄くすることを特徴とする前項(18)ないし(20)のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(22)前記台座本体は、前記坩堝の上端に配置された蓋体に設けられ、前記蓋体の下面から前記炭化珪素原料の上面に向かう方向に対して突出し、かつ前記板材を収容する収容部を有し、前記蓋体の上面から突出しないように、前記収容部に複数の前記板材を収容した後、前記炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする前項(21)記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(23)前記台座本体は、前記坩堝の上端に配置された蓋体に設けられ、前記蓋体の下面から前記炭化珪素原料の上面に向かう方向に対して突出し、かつ前記板材を収容する収容部を有し、前記蓋体の上面から突出するように、前記収容部及び該収容部上に複数の前記板材を積み重ねた後、前記炭化珪素種結晶に前記炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする前項(21)記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(24)前記台座は、前記坩堝の上端に配置された蓋体に設けられており、前記台座は、前記蓋体の上面から突出するように配置されており、前記蓋体の上面から突出した前記台座の一部を切断することで、前記台座の厚さを薄くすることを特徴とする前項(18)ないし(20)のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(25)前記炭化珪素種結晶を成長させる際、前記炭化珪素原料の上面と前記炭化珪素単結晶の結晶成長面との距離が略等しくなるように調整することを特徴とする前項(18)ないし(24)のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明の炭化珪素単結晶製造装置によれば、台座の厚さを薄くすることが可能な構成とすることにより、炭化珪素単結晶を成長させる前の台座(厚さを薄くする前の台座)、及び炭化珪素種結晶よりなる第1の構造体の厚さと、厚さが薄くされた台座、炭化珪素種結晶、及び炭化珪素単結晶よりなる第2の構造体の厚さと、をできるだけ等しくすることが可能となる。
【0030】
これにより、厚さを薄くする前の台座の上面から熱を放熱する第1の構造体の放熱特性と、厚さが薄くされた台座の上面から熱を放熱する第2の構造体の放熱特性と、の差が小さくなるので、成長時における炭化珪素単結晶の結晶成長面の温度分布の変化を小さくすることが可能になる。
【0031】
つまり、炭化珪素単結晶の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶性成長面が凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、炭化珪素単結晶を成長させることが可能となる。これにより、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶を製造できる。
【0032】
また、本発明の炭化珪素単結晶の製造方法によれば、炭化珪素単結晶が成長するに従い、台座の厚さを薄くすることにより、炭化珪素単結晶の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶性成長面が凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、炭化珪素単結晶を成長させることが可能となる。これにより、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る炭化珪素単結晶製造装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す炭化珪素単結晶製造装置本体を拡大した断面図である。
【図3】第1の板材及び台座厚さ調整部材の斜視図である。
【図4】フック収容部の天井面と台座厚さ調整部材の第1のフック部とが接触した状態を示す断面図である。
【図5】第2の板材及び台座厚さ調整部材の斜視図である。
【図6】フック収容部の天井面と台座厚さ調整部材の第2のフック部とが接触した状態を示す断面図である。
【図7】第1の板材が台座本体と接触し、かつ第2の板材が第1の板材の上方に引き上げられた状態の炭化珪素単結晶製造装置本体を模式的に示す断面図である。
【図8】第1の板材が台座本体の上方に引き上げられた状態の炭化珪素単結晶製造装置本体を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態の第1変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置の主要部の断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態の第2変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置の主要部の断面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態の第3変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置の主要部の断面図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態の第4変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置の主要部の断面図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る炭化珪素単結晶製造装置の概略構成を示す断面図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶製造装置の概略構成を示す断面図である。
【図15】第1の切断位置で切断された台座を備えた炭化珪素単結晶製造装置を模式的に示す断面図である。
【図16】第2の切断位置で切断された台座を備えた炭化珪素単結晶製造装置を模式的に示す断面図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図(その1)である。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図(その2)である。
【図19】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図(その3)である。
【図20】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図(その4)である。
【図21】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図(その5)である。
【図22】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図(その6)である。
【図23】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図(その7)である。
【図24】本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図(その8)である。
【図25】従来の炭化珪素単結晶製造装置の主要部を示す断面図である。
【図26】従来の炭化珪素単結晶製造装置の問題点を説明するための断面図(その1)である。
【図27】従来の炭化珪素単結晶製造装置の問題点を説明するための断面図(その2)である。
【図28】台座の厚さと炭化珪素単結晶の結晶成長面の温度分布との関係をシミュレーションにより評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の炭化珪素単結晶製造装置の寸法関係とは異なる場合がある。
【0035】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る炭化珪素単結晶製造装置の概略構成を示す断面図である。図1では、炭化珪素単結晶製造装置の一例として、炭化珪素原料39を昇華させた原料ガスを、炭化珪素種結晶35の成長面35aに供給することで、炭化珪素種結晶35に炭化珪素単結晶71を成長させる炭化珪素単結晶製造装置10(言い換えれば、昇華再結晶法により、炭化珪素単結晶71を成長させる炭化珪素単結晶製造装置)を例に挙げて説明する。
【0036】
図1を参照するに、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10は、真空容器11と、断熱部材12と、炭化珪素単結晶製造装置本体13と、支持部材15と、加熱手段16と、第1及び第2の放射温度計18,19と、を有する。
【0037】
真空容器11は、断熱部材12、炭化珪素単結晶製造装置本体13、及び支持部材15を収容している。真空容器11は、ガス導入孔22と、ガス排出孔23と、を有する。
ガス導入孔22は、Arガス供給装置(図示せず)と接続されており、真空容器11内にArガスを供給することで、真空容器11内をAr雰囲気(例えば、圧力が5.0×102Pa)にする。
ガス排出孔23は、真空ポンプ(図示せず)と接続されており、上記Arガスを供給する前に真空容器11内を減圧状態にする。減圧状態とされた真空容器11内の圧力は、例えば、4×10−3Pa以下にすることができる。
【0038】
断熱部材12は、真空容器11内に配置されている。断熱部材12は、装置本体収容部25と、貫通部26と、窓孔27と、を有する。装置本体収容部25は、断熱部材12の内部に設けられている。
装置本体収容部25に炭化珪素単結晶製造装置本体13を収容した状態において、断熱部材12の上部は、蓋体32の上方に離間した位置に配置されている。これにより、断熱部材12の上部と蓋体32との間には、後述する第2の板材52(台座33の構成要素の1つ)を引き上げた際、引き上げられた第2の板材52を配置可能な空間が形成されている。
【0039】
貫通部26は、断熱部材12のうち、装置本体収容部25の上方に位置する部分を貫通するように設けられている。貫通部26は、後述する台座厚さ調整部材36の支柱部64を引き上げ可能で、かつ第1の放射温度計18による蓋体32の温度測定が可能な開口径とされている。開口部26の開口径が大きいと坩堝31の上部の温度が下がり過ぎてしまうため、開口部26の開口径は、小さいほうが好ましい。
窓孔27は、断熱部材12のうち、装置本体収容部25の下方に位置する部分を貫通するように設けられている。
【0040】
上記構成とされた断熱部材12は、炭化珪素単結晶製造装置本体13を収容することで、後述する坩堝31内の温度を安定的に高温に保つための部材である。断熱部材12の材料としては、例えば、炭素繊維を用いることができる。
なお、坩堝31内の温度を安定的に高温に保つことが可能な場合、上記断熱部材12は設ける必要がない。
【0041】
図2は、図1に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13を拡大した断面図である。また、図2では、成長初期の炭化珪素単結晶71を模式的に図示する。
図1及び図2を参照するに、炭化珪素単結晶製造装置本体13は、坩堝31と、蓋体32と、台座33と、炭化珪素種結晶35と、板材引き上げ用部材36と、板材引き上げ用部材駆動部(図示せず)と、上部坩堝昇降手段38と、を有する。
【0042】
図2を参照するに、坩堝31は、下部坩堝41と、上部坩堝42と、を有する。下部坩堝41は、炭化珪素原料39を収容している。下部坩堝41は、上端にスライド面43aを備えたスライド部43を有する。スライド面43aは、スライド部43の外周側面に相当する面である。
【0043】
上部坩堝42は、筒状とされており、その下端にスライド面44aを備えたスライド部44を有する。上部坩堝42は、スライド面44aが下部坩堝41のスライド面43aと接触するように、下部坩堝41上に配置されている。
スライド面44aは、スライド面43aに対して上下方向にスライド可能な構成とされている。つまり、上部坩堝42は、下部坩堝41に対して上下方向に移動(スライド)可能な構成とされている。
なお、図2では、坩堝31内に形成される空間46の体積が最小となる場合を例に挙げて図示している。
【0044】
上記構成とされた坩堝31の材料としては、高温において安定で、かつ不純物ガスの発生の少ない材料を用いることが好ましい。具体的には、坩堝31の材料としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、炭化珪素、及び炭化珪素もしくはタンタルカーバイド(TaC)により被覆された黒鉛(グラファイト)等を用いることができる。
【0045】
図2を参照するに、蓋体32は、上部坩堝42の上端に配置されている。蓋体32には、台座33を構成する後述する第1及び第2の板材51,52を取り出し可能な形状とされた貫通部32Aが形成されている。蓋体32は、平坦な面とされた上面32a及び下面32bを有する。
【0046】
図2を参照するに、台座33は、台座本体48と、台座本体48の上面48aに積み重ねられた複数の板材である第1及び第2の板材51,52と、を有する。
台座本体48は、第1及び第2の板材51,52を収容する収容部54を有する。台座本体48は、収容部54が貫通部32Aに露出されるように、蓋体32の下面32bに固定されている。台座本体48は、蓋体32の下面32bから炭化珪素原料39の上面39aに向かう方向に突出している。
【0047】
収容部54は、蓋体32の上面32aから突出しないように、第1及び第2の板材51,52を収容している。なお、図2では、収容部54が第1及び第2の板材51,52を収容する場合を例に挙げて図示したが、収容部54は、少なくとも1つの板材を収容可能な構成であればよい。
【0048】
図3は、第1の板材及び台座厚さ調整部材の斜視図である。図4は、フック収容部の天井面と台座厚さ調整部材の第1のフック部とが接触した状態を示す断面図である。
図2を参照するに、第1の板材51は、略円柱形状とされている。第1の板材51は、台座本体48の上面48aと接触するように、収容部54に配置されている。
【0049】
図3を参照するに、第1の板材51は、フック収容部56と、支柱部通過部57と、フック通過部58と、を有する。フック収容部56は、第1の板材51の内部に形成されている。フック収容部56は、板材引き上げ用部材36に設けられた第1のフック部65の長さJ1よりも幅広の直径とされた円柱状の空間である。
【0050】
図3に示す板材引き上げ用部材36を下方に移動させ、第1のフック部65をフック収容部56に収容し、その後、第1のフック部65を90度回転させ、板材引き上げ用部材36を上方に引き上げることで、図4に示すように、フック収容部56の天井面56aに第1のフック部65が接触し、さらに板材引き上げ用部材36を上方に引き上げることで、図2に示す台座本体48の上方に第1の板材51を持ち上げることが可能となる。言い換えれば、台座本体48から第1の板材51を取り除くことが可能となる。
【0051】
図3を参照するに、支柱部通過部57は、フック収容部56上に位置する第1の板材51を貫通するように形成されている。支柱部通過部57は、板材引き上げ用部材36を構成する支柱部64の直径よりも大きく、かつ第1のフック部65の長さJ1よりも小さい直径を有した円柱状の空間である。支持部通過部57は、支柱部64を通過させるための空間である。
【0052】
図3を参照するに、フック通過部58は、フック収容部56上に位置する第1の板材51を貫通するように形成されている。フック通過部58は、四角柱状の溝であり、フック収容部56及び支柱部通過部57と一体に構成されている。フック通過部58は、第1のフック部65を通過させるための空間である。上記構成とされた第1の板材51の厚さは、例えば、20mmとすることができる。
【0053】
図5は、第2の板材及び台座厚さ調整部材の斜視図である。図6は、フック収容部の天井面と台座厚さ調整部材の第2のフック部とが接触した状態を示す断面図である。
図5を参照するに、第2の板材52は、第1の板材51の構成に、さらに支柱部通過部61及びフック通過部62を設けると共に、第1の板材51に設けられたフック収容部56よりもフック収容部56の高さを低くした以外は、第1の板材51と同様な構成とされている。第2の板材52の厚さは、第1の板材51の厚さと等しく、例えば、20mmとすることができる。
【0054】
図2を参照するに、第2の板材52は、収容部54及び貫通部32A内に収容されている。第2の板材52の上面52aは、蓋体32の上面32aに対して略面一とされている。言い換えれば、収容部54は、蓋体32の上面32aから突出しないように、第1及び第2の板材51,52(複数の板材)を収容している。
【0055】
図5及び図6を参照するに、支柱部通過部61は、フック収容部56の下方に位置する第2の板材52を貫通するように形成されている。支柱部通過部61は、支柱部64を通過させるための空間であり、支柱部通過部57と同様な形状とされている。
図5を参照するに、フック通過部62は、フック収容部56の下方に位置する第2の板材52を貫通するように形成されている。フック通過部62は、第1のフック部65を通過させるための空間であり、フック通過部58と同様な形状とされている。
【0056】
図5に示す板材引き上げ用部材36を下方に移動させ、第2のフック部66を第2の板材52のフック収容部56に収容し、その後、第2のフック部66を90度回転させ、板材引き上げ用部材36を上方に引き上げることで、図6に示すように、フック収容部56の天井面56aに第2のフック部66が接触し、さらに板材引き上げ用部材36を上方に引き上げることで、図2に示す台座本体48の上方に第2の板材52を持ち上げて、第1の板材51から第2の板材52を取り除くことが可能となる。
【0057】
図7は、第1の板材が台座本体と接触し、かつ第2の板材が第1の板材の上方に引き上げられた状態の炭化珪素単結晶製造装置本体を模式的に示す断面図である。図7において、図2に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13と同一構成部分には同一符号を付す。また、図7では、図2に示す上部坩堝昇降手段38の図示を省略する。さらに、図7では、図2に示す炭化珪素単結晶71よりも成長した状態の炭化珪素単結晶71を模式的に示す。
【0058】
ところで、第2の板材52のフック収容部56の高さは、第1の板材51のフック収容部56の高さよりも低くなるように構成されている。このため、板材引き上げ用部材36を引き上げた際、第2のフック部66が第1のフック部65よりも先にフック収容部56の天井面56aと接触する。
【0059】
これにより、図7に示すように、板材引き上げ用部材36を引き上げることで、第1の板材51よりも先に第2の板材52が持ち上げられ、第1の板材51が台座本体48と接触した状態で、第1の板材51と第2の板材52との間に隙間が形成される。言い換えれば、第1の板材51から第2の板材52が取り除かれる。
【0060】
この場合、図7に示す台座33は、台座本体48及び第1の板材51により構成され、図7に示す台座33の厚さは、図2に示す台座33(台座本体48、第1の板材51、及び第2の板材52により構成された台座)の厚さよりも薄くなる。
【0061】
また、図7に示すように、台座本体48、第1の板材51、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる第2の構造体Bの厚さM2が、図2に示す台座33及び炭化珪素種結晶35よりなる第1の構造体Aの厚さM1と略等しくなるときに、第2の板材52を第1の板材51の上方に離間させて、台座33の厚さを薄くするとよい。
【0062】
これにより、図2に示す第1の構造体Aの厚さM1と、図7に示す第2の構造体Bの厚さM2と、をできるだけ等しくすることが可能となるので、図2に示す台座33の上面(この場合、第2の板材52の上面52a)から熱を放熱する第1の構造体Aの放熱特性と、図7に示す台座33の上面(この場合、第1の板材51の上面51a)から熱を放熱する第2の構造体Bの放熱特性と、の差を小さくすることが可能となる。
【0063】
したがって、図2に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、図7に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71bの温度分布と、の差を小さくすることが可能になる。
【0064】
つまり、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶性成長面71aが凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、結晶性成長面71bが凸面とされた炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となる。これにより、結晶欠陥が少なく、高品質とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0065】
図8は、第1の板材が台座本体の上方に引き上げられた状態の炭化珪素単結晶製造装置本体を模式的に示す断面図である。図8において、図7に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13と同一構成部分には同一符号を付す。また、図8では、図7に示す炭化珪素単結晶71よりもさらに炭化珪素単結晶71が成長した状態を模式的に示す。
【0066】
また、図8に示すように、図7に示す炭化珪素単結晶71よりもさらに炭化珪素単結晶71が成長した場合、図7に示す状態から板材引き上げ用部材36を引き上げることで、台座本体48から第1の板材51を除去して、図8に示す台座33(この場合、台座本体48のみで構成された台座)の厚さを薄くするとよい。
【0067】
このとき、図8に示す台座33、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる第2の構造体Cの厚さM3が、図2に示す第1の構造体Aの厚さM1と略等しくなったときに、台座本体48の上方に第1の板材51を離間させて、台座33の厚さを薄くするとよい。
【0068】
これにより、図2に示す第1の構造体Aの厚さM1と、図8に示す第2の構造体Cの厚さM3と、をできるだけ等しくすることが可能となるので、図2に示す台座33の上面(この場合、第2の板材52の上面52a)から熱を放熱する第1の構造体Aの放熱特性と、図8に示す台座33の上面(この場合、台座本体48の上面48a)から熱を放熱する第2の構造体Cの放熱特性と、の差を小さくすることが可能となる。
【0069】
したがって、図2に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、図8に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71cの温度分布と、の差を小さくすることが可能になる。
【0070】
つまり、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、結晶性成長面71cが凸面とされた炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となる。これにより、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0071】
図2に示す台座33の材料としては、例えば、炭化珪素や炭素等を用いるとよい。これにより、炭化珪素種結晶35及び炭化珪素単結晶71との間の熱膨張係数の差が小さくなるので、該熱膨張係数の差に起因して成長中の炭化珪素単結晶71が破損することを抑制できる。
【0072】
なお、図2、図7、及び図8では、台座本体48と蓋体32とが別体とされた場合を例に挙げて図示したが、台座本体48と蓋体32とを一体に構成してもよい。この場合、蓋体32の材料としては、例えば、炭化珪素や炭素等を用いるとよい。
【0073】
図2を参照するに、炭化珪素種結晶35は、台座本体48の下面48bに取り付けられている。炭化珪素種結晶35は、炭化珪素単結晶71が成長する成長面35aを有する。成長面35aは、炭化珪素原料39の上面39aと対向するように配置されている。
【0074】
図2及び図5を参照するに、板材引き上げ用部材36は、支柱部64と、第1のフック部65と、第2のフック部66と、を有する。支柱部64は、棒状とされている。
第1のフック部65は、支柱部64の下端に設けられている。第1のフック部65は、第1の板材51のフック収容部56に収容されており、第1の板材51を引き上げる際には、フック収容部56の上面56aと接触する。
【0075】
第2のフック部66は、第1のフック部65の上方に位置する支柱部64に設けられている。第2のフック部66は、第1のフック部65と対向するように配置されている。第2のフック部66は、第2の板材52のフック収容部56に収容されており、第2の板材52を引き上げる際には、フック収容部56の上面56aと接触する。
【0076】
板材引き上げ用部材駆動部(図示せず)は、支柱部64の上端と接続されている。板材引き上げ用部材駆動部(図示せず)は、板材引き上げ用部材36を上下方向に移動させると共に、板材引き上げ用部材36を回転させる。
板材引き上げ用部材駆動部(図示せず)は、図2に示す状態から、板材引き上げ用部材36を上方向に移動させることで、第2の板材52、または第1及び第2の板材51,52を引き上げて、台座33の厚さを薄くする。
【0077】
また、板材引き上げ用部材36は、図8に示す状態から、板材引き上げ用部材36を下方向に移動させることで、台座本体48の上面48aに第1及び第2の板材51,52を積み重ねる。
なお、板材引き上げ用部材駆動部(図示せず)を設けることなく、手動により、板材引き上げ用部材36を上下方向に移動させたり、板材引き上げ用部材36を回転させたりしてもよい。
【0078】
図2を参照するに、上部坩堝昇降手段38は、シャフト部75と、シャフトガイド部76と、駆動部77と、を有する。
シャフト部75は、下部坩堝41の下方に設けられており、下部坩堝41の底部と接続されている。これにより、シャフト部75は、下部坩堝41を支持している。
【0079】
シャフトガイド部76は、上部坩堝42のスライド部44に固定されている。シャフトガイド部76は、下部坩堝41の外周側面41a及びシャフト部75の外周側面75aと接触可能な形状とされている。シャフトガイド部76は、下部坩堝41の外周側面41a及びシャフト部75の外周側面75aに対して上下方向にスライド可能な構成とされている。シャフトガイド部76は、上下方向に移動することで、上部坩堝42を上下に移動させる。
駆動部77は、シャフトガイド部76と接続されている。駆動部77は、シャフトガイド部76を上下方向に移動させるための駆動部である。
【0080】
このように、下部坩堝41、及び下部坩堝41に対して上下方向に移動可能な構成とされた上部坩堝42により構成された坩堝31と、上部坩堝42を上下方向に移動させる上部坩堝昇降手段38と、を設けることにより、図7及び図8に示す結晶成長面71b,71cと炭化珪素原料39の上面39aとの距離D2,D3が、図2に示す結晶成長面71aと炭化珪素原料39の上面39aとの距離D1と略等しくなるように調整しながら炭化珪素単結晶71を形成することが可能となる。
【0081】
これにより、図7及び図8に示す炭化珪素単結晶71の成長条件を、図2に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の成長条件に、さらに近づけることが可能となるので、厚さ方向において、略均一な特性とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0082】
なお、図2では、下部坩堝41に対して上部坩堝42が上下方向に移動する場合を例に挙げて説明したが、上部坩堝42及び下部坩堝41は、上下方向に対して相対的に移動可能な構成であればよい。
具体的には、例えば、上部坩堝昇降手段38の替わりに、上部坩堝42の位置を固定し、上部坩堝42に対して下部坩堝41を上下方向に移動させる下部坩堝昇降手段(図示せず)を設けてもよい。
【0083】
図1を参照するに、支持部材15は、筒状とされており、貫通孔15Aを有する。支持部材15は、貫通孔15Aが断熱部材12に形成された窓孔27と対向するように、断熱部材12の下面に配置されている。これにより、支持部材15は、断熱部材12を支持している。
【0084】
図1を参照するに、加熱手段16は、真空容器11の外側に配置されている。加熱手段16は、坩堝31内の炭化珪素原料39を加熱することで、原料ガスを昇華させる。
加熱手段16としては、例えば、電流を流すことにより高周波を発生させる高周波加熱コイルを用いることができる。
このように、加熱手段16として高周波加熱コイルを用いることにより、例えば、1900℃以上の温度に炭化珪素原料39を加熱することができる。
【0085】
図1を参照するに、第1の放射温度計18は、真空容器11の上方に、断熱部材12に形成された貫通部26と対向するように配置されている。第1の放射温度計18は、貫通部26を介して、坩堝31の上部表面の温度を測定する。
【0086】
図1を参照するに、第2の放射温度計19は、真空容器11の下方に、支持部材15に形成された貫通孔15Aと対向するように配置されている。第2の放射温度計19は、貫通孔15A及び窓孔27を介して、坩堝31の下部表面の温度を測定する。
【0087】
なお、第1及び第2の放射温度計18,19の替わりに、2つの熱電対を用いて、坩堝31の上部表面及び下部表面の温度を測定してもよい。この場合、一方の熱電対を、貫通部26を介して、蓋体32の上面32aと接触するように配置し、他方の熱電対を、貫通孔15A及び窓孔27を介して、坩堝31の下面と接触するように配置する。
【0088】
第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置によれば、炭化珪素種結晶35が設けられる台座本体48、及び台座本体48上に積み重ねられた第1及び第2の板材51,52よりなる台座33と、第2の板材52、第1の板材51の順に板材を引き上げる板材引き上げ用部材36と、を有することにより、第2の板材52、または第1及び第2の板材51,52を引き上げて台座33の厚さを薄くすることで、台座33(厚さを薄くする前の台座)及び炭化珪素種結晶35よりなる第1の構造体Aの厚さM1と、厚さが薄くされた台座33、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる第2の構造体B,Cの厚さM2,M3と、をできるだけ等しくすることが可能となる。
【0089】
これにより、厚さを薄くする前の台座33の上面から熱を放熱する第1の構造体Aの放熱特性と、厚さが薄くされた台座33の上面から熱を放熱する第2の構造体B,Cの放熱特性と、の差が小さくなるので、成長初期における炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、炭化珪素単結晶71の成長が進んだときの炭化珪素単結晶71の結晶成長面71b,71cの温度分布と、の差を小さくすることが可能となる。
【0090】
よって、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶成長面71aが凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0091】
なお、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10では、下部坩堝41に対して上部坩堝42が移動することで、坩堝31内の空間46の体積を変更可能な場合を例に挙げて説明したが、第1の実施の形態で説明した台座33及び板材引き上げ用部材36は、坩堝内の体積が変更不可能な構成とされた坩堝(後述する図12に示す坩堝102)を備えた炭化珪素単結晶製造装置にも適用可能である。
【0092】
次に、図2、図7、図8を参照して、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法について説明する。
始めに、図2に示すように、下部坩堝41内に炭化珪素原料39を導入する。次いで、台座本体48の下面48bに炭化珪素種結晶35を取り付ける。次いで、炭化珪素種結晶35の成長面35aと坩堝31内の炭化珪素原料39の上面39aとが対向するように、上部坩堝42の上端に蓋体32を配置する。
【0093】
次いで、第1及び第2の板材51,52を支持した板材引き上げ用部材36を下方に移動させることで、台座本体48の上面48aに、第1及び第2の板材51,52を積み重ねる(図2に示す台座33の状態)。
このとき、蓋体32の上面32aから第2の板材52が突出しないように、台座本体48の収容部54に第1及び第2の板材51,52を収容する。この段階では、図2に示すように、坩堝31内の空間46の体積が最も小さくなるようにする。
【0094】
次いで、図1に示す加熱手段16により、坩堝31内の炭化珪素原料39を加熱することで、炭化珪素種結晶35の成長面35aに原料ガスを昇華させて、成長面35aに炭化珪素単結晶71を初期成長させる。このとき、予め取得した最適な結晶成長条件(具体的には、結晶性成長面71aが凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)を用いる。
【0095】
次いで、図7に示すように、第2の板材52の厚さと炭化珪素単結晶71の厚さとが略等しくなった段階で、結晶成長中に板材引き上げ用部材36を上方に移動させて、第1の板材51から第2の板材52を除去することで、図7に示す第2の構造体Bの厚さM2と、図2に示す第1の構造体Aの厚さM1と、をできるだけ等しくすると共に、第2の板材52から第1の板材51の上面51aを露出させる。
【0096】
これにより、図2に示す台座33の上面(この場合、第2の板材52の上面52a)から熱を放熱する第1の構造体Aの放熱特性と、図7に示す台座33の上面(この場合、第1の板材51の上面51a)から熱を放熱する第2の構造体Bの放熱特性と、の差が小さくなるので、成長初期における炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、炭化珪素単結晶71の成長が進んだときの炭化珪素単結晶71の結晶成長面71bの温度分布と、の差を小さくすることが可能となる。
【0097】
これにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、図7に示す炭化珪素単結晶71に、結晶欠陥が少なく、高品質とされた炭化珪素単結晶71を成長させることができる。
【0098】
また、図7に示す炭化珪素単結晶71を形成する場合、炭化珪素単結晶71の結晶成長面71bから炭化珪素原料39の上面39aまでの距離D2が、図2に示す距離D1と略等しくなるように、炭化珪素単結晶71の成長に合わせて上部坩堝42を上方に移動させる。
【0099】
これにより、図7に示す炭化珪素単結晶71の成長条件を、図2に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の成長条件に、さらに近づけることが可能となるので、厚さ方向において、略均一な特性とされた炭化珪素単結晶71を形成できる。
【0100】
次いで、図8に示すように、第1の板材51の厚さと、図8に示す炭化珪素単結晶71の厚さから図7に示す炭化珪素単結晶71の厚さを引いた厚さと、が略等しくなった段階で、結晶成長中に板材引き上げ用部材36をさらに上方に移動させて、台座本体48から第1の板材51を除去することで、第2の構造体Cの厚さM3と図2に示す第1の構造体Aの厚さM1とをできるだけ等しくすると共に、第1の板材51から台座本体48の上面48aを露出させる。
【0101】
これにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を成長させることができる。
【0102】
また、図8に示す炭化珪素単結晶71を形成する場合、炭化珪素単結晶71の結晶成長面71cから炭化珪素原料39の上面39aまでの距離D3が、図2に示す距離D1と略等しくなるように、炭化珪素単結晶71の成長に合わせて上部坩堝42を上方に移動させる。
これにより、図8に示す炭化珪素単結晶71の成長条件を、図2に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の成長条件に、さらに近づけることが可能となるので、厚さ方向において、略均一な特性とされた炭化珪素単結晶71を形成できる。
【0103】
第1の実施の形態の炭化珪素単結晶の製造方法によれば、台座33を構成する台座本体48に取り付けられた炭化珪素種結晶35の成長面35aに、加熱により炭化珪素原料39を昇華させた原料ガスを供給することで、炭化珪素単結晶71を成長させ、炭化珪素単結晶71の成長中に、炭化珪素単結晶71の成長に応じて、第2の板材52及び第1の板材51を順次取り除くことにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0104】
また、第1の実施の形態では、一例として、昇華再結晶法により炭化珪素単結晶71を製造する場合について説明したが、本発明は、例えば、原料ガス(昇華ガス)の替わりにシランやプロパン等を原料とするCVD(Chemical Vapor Deposition)法にも適用可能である。
【0105】
なお、上記第1の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法では、結晶成長中に、台座33の厚さを薄くする場合を例に挙げて説明したが、炭化珪素単結晶71の成長を停止させた後に、台座33の厚さを薄くし、その後、炭化珪素単結晶71をさらに成長させてもよい。
このように、炭化珪素単結晶71の成長を停止させた後に、台座33の厚さを薄くし、その後、炭化珪素単結晶71をさらに成長させた場合、上記第1の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0106】
上記炭化珪素単結晶71の成長を一度停止させた後に、台座33の厚さを薄くし、その後、炭化珪素単結晶71をさらに成長させる方法は、坩堝内の体積を変更不可能な構成とされた坩堝(後述する図12に示す坩堝102)を備えた炭化珪素単結晶製造装置を用いて昇華再結晶法により、炭化珪素単結晶71を形成する場合に有効である。
【0107】
炭化珪素単結晶71の成長を停止させた後、下部坩堝41或いは上部坩堝42の長さ、もしくは炭化珪素原料39の量を調整する事により、図7及び図8に示す距離D2,D3と図2に示す距離D1とを略同じにすることができるからである。
【0108】
なお、図2及び図7において、厚さM1と厚さM2とを同じ厚さとしたが、台座に用いる材料の熱伝導率に応じて、例えば、図2に示す第1の構造体Aの放熱特性と、図7に示す第2の構造体Bの放熱特性と、が同じになるように、厚さM2の値を設定してもよい。
【0109】
図9は、本発明の第1の実施の形態の第1変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置の主要部の断面図である。
図9では、第1の実施の形態の第1変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置80の構成要素である真空容器11、断熱部材12、支持部材15、加熱手段16、第1の放射温度計18、第2の放射温度計19、及び上部坩堝昇降手段38(図1及び図2参照)の図示を省略する。また、図9において、図2に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0110】
図9を参照するに、第1の実施の形態の第1変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置80は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10に設けられた炭化珪素単結晶製造装置本体13の替わりに、炭化珪素単結晶製造装置本体81を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置10と同様に構成される。
炭化珪素単結晶製造装置81は、図2に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13の構成に、さらにガイド部材82を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置本体13と同様に構成される。
【0111】
ガイド部材82は、開口部83を有し、かつ炭化珪素原料39の上面39aに対して略平行な板材である。ガイド部材82は、上部坩堝44の内壁に設けられている。ガイド部材82は、高さ方向において、炭化珪素種結晶35と略等しい位置に配置されている。開口部83は、炭化珪素種結晶35の成長面35aと対向する位置に設けられており、炭化珪素種結晶35の成長面35aを露出している。ガイド部材82は、炭化珪素種結晶35の成長面35aに原料ガスを案内するための部材である。
【0112】
ガイド部材83と炭化珪素種結晶35との間には、ガイド部材83に成長する多結晶の炭化珪素と炭化珪素種結晶35及び炭化珪素単結晶71とが接触することを防止するための隙間84が形成されている。隙間84の幅W1は、例えば、0.5〜5mmとすることができる。
【0113】
このように、上部坩堝44の内壁に、炭化珪素種結晶35の成長面35aを露出する開口部83を有した板状のガイド部材82を設けることにより、蓋体32とガイド部材82との間の空間に原料ガスが到達することを抑制可能となる。
これにより、蓋体32の下面32b及び台座本体48の外周側面に多結晶の炭化珪素が成長しにくくなるので、該多結晶の炭化珪素と炭化珪素種結晶35及び炭化珪素単結晶71との接触を抑制できる。
【0114】
ガイド部材83の材料としては、高温において安定であり、かつ不純物ガスの発生の少ない材料を用いるとよい。具体的には、ガイド部材83の材料としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、タンタルカーバイド(TaC)によって被覆された黒鉛(グラファイト)等を用いることができる。
【0115】
黒鉛(グラファイト)をタンタルカーバイド(TaC)で被覆することで、黒鉛に含まれるカーボンと原料ガスとが反応して、成長中の炭化珪素単結晶71の中にカーボンが取り込まれて、炭化珪素単結晶71の品質が低下することを抑制できる。
【0116】
このような構成とされた第1の実施の形態の第1変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置80は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10と同様な効果を得ることができる。具体的には、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
また、第1の実施の形態の第1変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置80を用いた炭化珪素単結晶71の製造方法は、第1の実施の形態で説明した炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な手法により行なうことができ、また、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0117】
なお、第1の実施の形態の第1変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置80では、下部坩堝41に対して上部坩堝42が移動することで、坩堝31内の空間46の体積を変更可能な坩堝31を用いた場合を例に挙げて説明したが、坩堝31の替わりに、坩堝内の体積が変更不可能な構成とされた坩堝(後述する図12に示す坩堝102)を用いてもよい。
【0118】
図10は、本発明の第1の実施の形態の第2変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置の主要部の断面図である。
図10では、第1の実施の形態の第2変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置85の構成要素である真空容器11、断熱部材12、支持部材15、加熱手段16、第1の放射温度計18、第2の放射温度計19、及び上部坩堝昇降手段38(図1及び図2参照)の図示を省略する。また、図10において、図2に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0119】
図10を参照するに、第1の実施の形態の第2変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置85は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10に設けられた炭化珪素単結晶製造装置本体13の替わりに、炭化珪素単結晶製造装置本体86を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置10と同様に構成される。
炭化珪素単結晶製造装置86は、図2に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13の構成に、さらにガイド部材87を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置本体13と同様に構成される。
【0120】
ガイド部材87は、筒状部88と、板部89と、を有する。筒状部88は、円筒形状とされている。筒状部88は、炭化珪素種結晶35の成長面35aを露出するように、炭化珪素種結晶35の下方に配置されている。筒状部88は、炭化珪素種結晶35の成長面35aに原料ガスを案内するガイドとして機能する。
このように、炭化珪素種結晶35の下方に、炭化珪素種結晶35の成長面35aを露出する筒状部88を設けることにより、原料ガスの濃度分布を筒状部88の内部形状に沿った分布にすることが可能となるので、筒状部88の内部形状に対応した円柱形状に炭化珪素種結晶71を成長させることができる。
【0121】
筒状部88と炭化珪素種結晶35との間には、筒状部88に成長する多結晶の炭化珪素と炭化珪素種結晶35及び炭化珪素単結晶71とが接触することを防止するための隙間91が形成されている。隙間91の幅は、例えば、0.5〜5mmとすることができる。
【0122】
板部89は、一方の端が筒状部88と一体に構成されており、他方の端が上部坩堝42の内壁に固定されている。板部89は、炭化珪素原料39の上面39aに対して略平行な板材である。板部89は、炭化珪素種結晶35の成長面35aに原料ガスを案内するガイド部材として機能すると共に、筒状部88を支持するための支持部材として機能する。
【0123】
このように、筒状部88と上部坩堝44の内壁との間に板部89を設けることにより、蓋体32とガイド部材87との間の空間に原料ガスが到達することを抑制可能となる。
これにより、蓋体32の下面32b及び台座本体48の外周側面に多結晶の炭化珪素が成長しにくくなるので、該多結晶の炭化珪素と炭化珪素種結晶35及び炭化珪素単結晶71との接触を抑制できる。
【0124】
ガイド部材87の材料としては、高温において安定であり、かつ不純物ガスの発生の少ない材料を用いるとよい。具体的には、ガイド部材87の材料としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、タンタルカーバイド(TaC)によって被覆された黒鉛(グラファイト)等を用いることができる。
【0125】
黒鉛(グラファイト)をタンタルカーバイド(TaC)で被覆することで、黒鉛に含まれるカーボンと原料ガスとが反応して、成長中の炭化珪素単結晶71の中にカーボンが取り込まれて、炭化珪素単結晶71の品質が低下することを抑制できる。
また、ガイド部材87の材料として黒鉛を用いた場合、筒状部88の内面のみをタンタルカーバイド(TaC)により被覆してもよい。
【0126】
上記構成とされた第1の実施の形態の第2変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置85は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10と同様な効果を得ることができる。具体的には、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
また、第1の実施の形態の第2変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置85を用いた炭化珪素単結晶71の製造方法は、第1の実施の形態で説明した炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な手法により行なうことができ、また、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0127】
なお、第1の実施の形態の第2変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置85では、下部坩堝41に対して上部坩堝42が移動することで、坩堝31内の空間46の体積を変更可能な坩堝31を用いた場合を例に挙げて説明したが、坩堝31の替わりに、坩堝内の体積が変更不可能な構成とされた坩堝(後述する図12に示す坩堝102)を用いてもよい。
【0128】
図11は、本発明の第1の実施の形態の第3変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置の主要部の断面図である。
図11では、第1の実施の形態の第3変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置90の構成要素である真空容器11、断熱部材12、支持部材15、加熱手段16、第1の放射温度計18、第2の放射温度計19、及び上部坩堝昇降手段38(図1及び図2参照)の図示を省略する。また、図11において、図2に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
【0129】
図11を参照するに、第1の実施の形態の第3変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置90は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10に設けられた炭化珪素単結晶製造装置本体13の替わりに、炭化珪素単結晶製造装置本体91を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置10と同様に構成される。
炭化珪素単結晶製造装置91は、図2に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13の構成に、さらにガイド部材93を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置本体13と同様に構成される。
【0130】
図11を参照するに、ガイド部材93は、上部坩堝42の内壁に設けられている。ガイド部材93は、炭化珪素種結晶35の成長面35aから炭化珪素原料39の上面39aに向かうにつれて、幅広な形状とされた筒状部94を有する。筒状部94は、炭化珪素種結晶35の成長面35aから炭化珪素原料39の上面39aに向かうにつれて、直径が大きくなる円錐台状とされている。
【0131】
このように、炭化珪素種結晶35の成長面35aから炭化珪素原料39の上面39aに向かうにつれて、直径が大きくなる円錐台状とされた筒状部94を設けることにより、炭化珪素原39から昇華した原料ガスを炭化珪素種結晶35の成長面35aに案内して、筒状部94の形状に対応した炭化珪素単結晶71を成長させることができる。
【0132】
ガイド部材93の材料としては、高温において安定であり、かつ不純物ガスの発生の少ない材料を用いるとよい。具体的には、ガイド部材93の材料としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、タンタルカーバイド(TaC)によって被覆された黒鉛(グラファイト)等を用いることができる。
【0133】
黒鉛(グラファイト)をタンタルカーバイド(TaC)で被覆することで、黒鉛に含まれるカーボンと原料ガスとが反応して、成長中の炭化珪素単結晶71の中にカーボンが取り込まれて、炭化珪素単結晶71の品質が低下することを抑制できる。
また、ガイド部材93の材料として黒鉛を用いた場合、筒状部94を構成するガイド部材93の内面のみをタンタルカーバイド(TaC)により被覆してもよい。
【0134】
上記構成とされた第1の実施の形態の第3変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置90は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10と同様な効果を得ることができる。具体的には、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
また、第1の実施の形態の第3変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置90を用いた炭化珪素単結晶71の製造方法は、第1の実施の形態で説明した炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な手法により行なうことができ、また、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0135】
図12は、本発明の第1の実施の形態の第4変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置の主要部の断面図である。
図12では、第1の実施の形態の第4変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置100の構成要素である真空容器11、断熱部材12、支持部材15、加熱手段16、第1の放射温度計18、第2の放射温度計19、及び上部坩堝昇降手段38(図1及び図2参照)の図示を省略する。また、図12において、図11に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0136】
図12を参照するに、第1の実施の形態の第4変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置100は、第1の実施の形態の第3変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置90に設けられた炭化珪素単結晶製造装置本体91の替わりに、炭化珪素単結晶製造装置本体101を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置90と同様に構成される。
【0137】
炭化珪素単結晶製造装置101は、図11に示す炭化珪素単結晶製造装置本体91に設けられた坩堝31の替わりに坩堝102を設けた以外は炭化珪素単結晶製造装置本体91と同様に構成される。坩堝102は、坩堝102内の空間46の体積を変更不可能な構成とされている。
【0138】
上記構成とされた第1の実施の形態の第4変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置100は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10と同様な効果を得ることができる。具体的には、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
また、第1の実施の形態の第4変形例に係る炭化珪素単結晶製造装置100を用いた炭化珪素単結晶71の製造方法は、炭化珪素単結晶71の成長中に坩堝102内の空間46の体積を変更しないこと以外は第1の実施の形態で説明した炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な手法により行なうことができる。
【0139】
(第2の実施の形態)
図13は、本発明の第2の実施の形態に係る炭化珪素単結晶製造装置の概略構成を示す断面図である。
図13では、第2の実施の形態に係る炭化珪素単結晶製造装置110の構成要素である真空容器11、断熱部材12、支持部材15、加熱手段16、第1の放射温度計18、第2の放射温度計19、及び上部坩堝昇降手段38の図示を省略する(図1及び図2参照)。
また、図13において、図2に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0140】
図13を参照するに、第2の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置110は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10に設けられた炭化珪素単結晶製造装置本体13の替わりに、炭化珪素単結晶製造装置本体111を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置10と同様に構成される。
【0141】
炭化珪素単結晶製造装置本体111は、図2に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13に設けられた台座33及び板材引き上げ用部材36の替わりに、台座113及び板材引き上げ用部材114を設けた以外は、炭化珪素単結晶製造装置本体13と同様に構成される。
【0142】
台座113は、台座本体116と、複数の板材である第1〜第4の板材51,52−1,52−2,52−3と、を有する。台座本体116は、筒状とされており、貫通部32Aを露出するように、蓋体32の下面32bに設けられている。台座本体116の下端面116aには、台座本体116の下端側に位置する開放端を塞ぐように、炭化珪素種結晶35が取り付けられている。
台座本体116は、第1及び第2の板材51,52−1を収容する収容部118を有する。収容部118は、台座本体116の下端側に位置する開放端を炭化珪素種結晶35で塞ぐことで、第1及び第2の板材51,52−1を収容可能となる。
【0143】
第1〜第4の板材51,52−1,52−2,52−3は、第1の板材51、第2の板材52−1、第3の板材52−2、第4の板材52−3の順で収容部118及び収容部118上に積み重ねられており、第3及び第4の板材52−2,52−3が蓋体32の上面32aから突出している。この状態において、第1の板材51は、炭化珪素種結晶35(具体的には、成長面35aの反対側に位置する炭化珪素種結晶35の面)と接触している。
【0144】
第2〜第4の板材52−1,52−2,52−3は、先に説明した図5に示す第2の板材52と同様な構成とされている。第2〜第4の板材52−1,52−2,52−3は、第2の板材52−1のフック収容部56の高さが第3及び第4の板材52−2,52−3のフック収容部56の高さよりも高く、かつ第4の板材52−3のフック収容部56の高さが第2及び第3の板材52−1,52−2のフック収容部56の高さよりも低くなるように構成されている。
第1〜第4の板材51,52−1,52−2,52−3の厚さは、例えば、それぞれ10mmとすることができる。また、上記構成とされた台座113の材料としては、炭化珪素や炭素等を用いることができる。
【0145】
図13を参照するに、板材引き上げ用部材114は、支柱部64と、第1のフック部65と、第2のフック部66−1と、第3のフック部66−2と、第4のフック部66−3と、を有する。第2〜第4のフック部66−1,66−2,66−3は、図5及び図6に示す第2のフック部66と同様な構成とされており、支柱部64に設けられている。
【0146】
第2のフック部66−1は、第1のフック部65の上方に配置されており、第2の板材52−1を引き上げるためのフックである。第3のフック部66−2は、第2のフック部66−1の上方に配置されており、第3の板材52−2を引き上げるためのフックである。
第4のフック部66−3は、第3のフック部66−2の上方に配置されており、第4の板材52−3を引き上げるためのフックである。
上記構成とされた板材引き上げ用部材114は、上方に引き上げられることにより、第4の板材52−3、第3の板材52−2、第2の板材52−1、第1の板材51の順で板材を除去する。
【0147】
第2の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置によれば、第1及び第2の板材51,52−1を収容する収容部118を備えた台座本体116、及び収容部118及び収容部118上に積み重ねられた第1〜第4の板材51,52−1,52−2,52−3よりなる台座113と、第4の板材52−3、第3の板材52−2、第2の板材52−1、第1の板材51の順に板材を引き上げる板材引き上げ用部材114と、を有することにより、台座113の厚さを薄くして、厚さを薄くする前の台座113及び炭化珪素種結晶35よりなる第1の構造体Eの厚さと、厚さが薄くされた台座113、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる第2の構造体の厚さと、をできるだけ等しくすることが可能となる。
【0148】
これにより、厚さを薄くする前の台座113の上面から熱を放熱する第1の構造体Eの放熱特性と、厚さが薄くされた台座113の上面から熱を放熱する第2の構造体の放熱特性と、の差が小さくなるので、成長初期における炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、炭化珪素単結晶71の成長が進んだときの炭化珪素単結晶71の結晶成長面の温度分布と、の差を小さくすることが可能となる。
【0149】
よって、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶性成長面71aが凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0150】
また、第2の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置110を用いた炭化珪素単結晶71の製造方法は、第1の実施の形態で説明した炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な手法により行なうことができ、また、第1の実施の形態で説明した炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0151】
なお、第2の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置110に設けられた上部坩堝42の内壁に、図9に示すガイド部材82、図10に示すガイド部材87、図11に示すガイド部材93のうちのいずれか1つのガイド部材を設けてもよい。
また、第2の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置110を構成する坩堝31の替わりに、図12に示す坩堝102を設けてもよい。
さらに、第2の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置110を構成する台座本体116の替わりに、図2に示す台座本体48を設け、台座本体48の下面48bに炭化珪素種結晶35を取り付けてもよい。
【0152】
また、第2の実施の形態では、一例として、昇華再結晶法により炭化珪素単結晶71を製造する場合について説明したが、本発明は、例えば、原料ガス(昇華ガス)の替わりにシランやプロパン等を原料とするCVD(Chemical Vapor Deposition)法にも適用可能である。
【0153】
(第3の実施の形態)
図14は、本発明の第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶製造装置の概略構成を示す断面図である。
図14では、第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶製造装置120の構成要素である真空容器11、断熱部材12、支持部材15、加熱手段16、第1の放射温度計18、第2の放射温度計19、及び上部坩堝昇降手段38(図1及び図2参照)の図示を省略する。また、図14において、図2に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0154】
図14を参照するに、第3の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置120は、第1の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置10に設けられた炭化珪素単結晶製造装置本体13の替わりに、炭化珪素単結晶製造装置本体121を設けた以外は炭化珪素単結晶製造装置10と同様に構成される。
炭化珪素単結晶製造装置本体121は、図2に示す炭化珪素単結晶製造装置本体13に設けられた台座33及び板材引き上げ用部材36の替わりに、台座123を設けた以外は炭化珪素単結晶製造装置本体13と同様に構成される。
【0155】
台座123は、台座本体48と、切断用台座部材125と、を有する。切断用台座部材125は、円柱形状とされた部材である。切断用台座部材125は、下端が収容部54に収容されており、下面125aが台座本体48の上面48aと接触している。また、収容部54に収容された状態において、切断用台座部材125は、蓋体32の上面32aから突出している。
切断用台座部材125は、炭化珪素単結晶71の成長に応じて切断される部材であり、第1及び第2の切断位置126,127を有する。切断用台座部材125の厚さは、例えば、150mmとすることができる。
【0156】
図15は、第1の切断位置で切断された台座を備えた炭化珪素単結晶製造装置を模式的に示す断面図である。図15において、図14に示す備えた炭化珪素単結晶製造装置120と同一構成部分には、同一符号を付す。図15では、図14に示す炭化珪素単結晶71よりも成長した状態の炭化珪素単結晶71を模式的に示す。
【0157】
図14を参照するに、第1の切断位置126は、最初に切断される位置であり、切断用台座部材125の上面125bから距離D4(例えば、20mm)の位置に設けられている。
図14及び図15を参照するに、成長中の炭化珪素単結晶71の厚さが距離D4の値と略等しくなった際、第1の切断位置126で切断用台座部材125を切断し、切断された切断用台座部材125の上端部分を除去することで、台座123の厚さを薄くする。
【0158】
これにより、図14に示す切断前の台座123及び炭化珪素種結晶35よりなる第1の構造体Fの厚さM5と、図15に示す切断された台座123、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる第2の構造体Gの厚さM6と、をできるだけ等しくすることが可能となるので、図14に示す台座123の上部(この場合、切断用台座部材125の上部)から熱を放熱する第1の構造体Fの放熱特性と、図15に示す台座123の上部(この場合、切断用台座部材125の上部)から熱を放熱する第2の構造体Gの放熱特性と、の差を小さくすることが可能となる。
【0159】
したがって、図14に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、図15に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71bの温度分布と、の差を小さくすることが可能になる。
【0160】
つまり、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶性成長面71aが凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となる。これにより、結晶欠陥が少なく、高品質とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0161】
図16は、第2の切断位置で切断された台座を備えた炭化珪素単結晶製造装置を模式的に示す断面図である。図16において、図14に示す備えた炭化珪素単結晶製造装置120と同一構成部分には、同一符号を付す。図16では、図15に示す炭化珪素単結晶71よりもさらに成長した状態の炭化珪素単結晶71を模式的に示す。
【0162】
図14を参照するに、第2の切断位置126は、第1の切断位置125の次に切断される位置であり、切断用台座部材125の上面125bから距離D5(例えば、40mm)の位置に設けられている。
図14及び図16を参照するに、炭化珪素単結晶71の厚さが距離D5の値と略等しくなった際、第2の切断位置127で切断用台座部材125を切断し、切断された切断用台座部材125の上端部分を除去することで、図15に示す状態からさらに台座123の厚さを薄くする。
【0163】
これにより、図14に示す切断される前の台座123及び炭化珪素種結晶35よりなる第1の構造体Fの厚さM5と、図16に示す切断された台座123、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる第2の構造体Hの厚さM7と、をできるだけ等しくすることが可能となるため、図14に示す台座123の上部から熱を放熱する第1の構造体Fの放熱特性と、図15に示す台座123の上部(この場合、切断用台座部材125の上部)から熱を放熱する第2の構造体Hの放熱特性と、の差を小さくすることが可能となる。
【0164】
したがって、図14に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、図16に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71cの温度分布と、の差を小さくすることが可能になる。
【0165】
つまり、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件(具体的には、結晶成長面71aが凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)に近い条件で、結晶成長面71cが凸面とされた炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となる。これにより、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0166】
上記構成とされた台座123の材料としては、炭化珪素や炭素等を用いるとよい。これにより、炭化珪素種結晶35及び炭化珪素単結晶71との間の熱膨張係数の差が小さくなるので、該熱膨張係数の差に起因して成長中の炭化珪素単結晶71が破損することを抑制できる。
【0167】
なお、第3の実施の形態では、切断用台座部材125を一例として、2つの切断位置(第1及び第2の切断位置126,127)を備えた場合を例に挙げて説明したが、3つ以上の切断位置を備えた切断用台座部材125を用いてもよい。
【0168】
また、第3の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置120に設けられた上部坩堝42の内壁に、図9に示すガイド部材82、図10に示すガイド部材87、図11に示すガイド部材93のうちのいずれか1つのガイド部材を設けてもよい。
さらに、第3の実施の形態の炭化珪素単結晶製造装置120に設けられた坩堝31の替わりに、図12に示す坩堝102を設けてもよい。
【0169】
次に、図14〜図16を参照して、第3の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法について説明する。
始めに、図14に示すように、下部坩堝41内に炭化珪素原料39を導入する。次いで、台座本体48の下面48bに炭化珪素種結晶35を取り付ける。次いで、炭化珪素種結晶35の成長面35aと坩堝31内の炭化珪素原料39の上面39aとが対向するように、上部坩堝42の上端に蓋体32を配置する。
【0170】
次いで、台座本体48の収容部54に、切断用台座部材125を配置して、切断用台座部材125の一部(具体的には、第1及び第2の切断位置126,127)を蓋体32の上面32aから突出させる。この段階では、図14に示すように、坩堝31内の空間46の体積が最も小さくなるようにする。
【0171】
次いで、坩堝31内の炭化珪素原料39を加熱することで、炭化珪素種結晶35の成長面35aに原料ガスを昇華させて、成長面35aに炭化珪素単結晶71を初期成長させる。このとき、予め取得した最適な結晶成長条件(具体的には、結晶性成長面71aが凸面となり、結晶欠陥が発生しにくい条件)を用いる。
【0172】
次いで、図14に示す距離D4と図15に示す炭化珪素単結晶71の厚さとが略等しくなった段階で、図15に示すように、図14に示す切断用台座部材125を第1の切断位置126で切断し、切断された切断用台座部材125の上端を除去することで、台座123の厚さを薄くする。
【0173】
これにより、図14に示す台座123の上部から熱を放出する第1の構造体Fの放熱特性と、図15に示す台座123の上部から熱を放熱する第2の構造体Gの放熱特性と、の差が小さくなるので、成長初期における炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、炭化珪素単結晶71の成長が進んだときの炭化珪素単結晶71の結晶成長面71bの温度分布と、の差を小さくすることが可能となる。
【0174】
これにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を成長させることができる。
【0175】
また、図15に示す炭化珪素単結晶71を形成する場合、図15に示す距離D2が図14に示す距離D1と略等しくなるように、炭化珪素単結晶71の成長に合わせて上部坩堝42を上方に移動させる。
これにより、図15に示す炭化珪素単結晶71の成長条件を、図14に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の成長条件に、さらに近づけることが可能となるので、厚さ方向において、略均一な特性とされた炭化珪素単結晶71を形成できる。
【0176】
次いで、図14に示す距離D5と図16に示す炭化珪素単結晶71の厚さとが略等しくなった段階で、図16に示すように、図14に示す第2の切断位置127で切断用台座部材125を切断し、切断された切断用台座部材125の上端部を除去することで、図15に示す状態よりもさらに台座123の厚さを薄くする。
【0177】
これにより、図14に示す台座123の上部から熱を放出する第1の構造体Fの放熱特性と、図16に示す台座123の上部(この場合、切断用台座部材125の上部)から熱を放熱する第2の構造体Hの放熱特性と、の差が小さくなるので、成長初期における炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、成長がさらに進んだ炭化珪素単結晶71の結晶成長面71cの温度分布と、の差を小さくすることが可能となる。
【0178】
したがって、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を成長させることができる。
【0179】
また、図16に示す炭化珪素単結晶71を形成する場合、図16に示す距離D3が図14に示す距離D1と略等しくなるように、炭化珪素単結晶71の成長に合わせて上部坩堝42を上方に移動させる。
これにより、図16に示す炭化珪素単結晶71の成長条件を、図14に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の成長条件に、さらに近づけることが可能となるので、厚さ方向において、略均一な特性とされた炭化珪素単結晶71を形成できる。
【0180】
第3の実施の形態の炭化珪素単結晶の製造方法によれば、台座本体48に取り付けられた炭化珪素種結晶35の成長面35aに、加熱により炭化珪素原料39を昇華させた原料ガスを供給して炭化珪素単結晶71を成長させ、炭化珪素単結晶71の成長中に、炭化珪素単結晶71の成長に応じて、切断用台座部材125を切断して台座123の厚さを薄くすることにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0181】
なお、上記第3の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法では、結晶成長中に、台座33の厚さを薄くする場合を例に挙げて説明したが、炭化珪素単結晶71の成長を一度停止させた後に、切断用台座部材125を切断して台座123の厚さを薄くし、その後、炭化珪素単結晶71を成長させてもよい。
このような方法により、炭化珪素単結晶71を製造する場合、上記第3の実施の形態の炭化珪素単結晶71の製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0182】
また、第3の実施の形態では、一例として、昇華再結晶法により炭化珪素単結晶71を製造する場合について説明したが、本発明は、例えば、原料ガス(昇華ガス)の替わりにシランやプロパン等を原料とするCVD(Chemical Vapor Deposition)法にも適用可能である。
【0183】
(第4の実施の形態)
図17〜図24は、本発明の第4の実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造工程を示す断面図である。図17〜図24において、図13及び図14に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
また、図示していないが、図17〜図24に示す坩堝31−1,31−2,31−3,31−4は、先に説明した図2に示すシャフト部75に支持されている。
【0184】
図17〜図24を参照して、第3の実施の形態に係る炭化珪素単結晶71の製造方法について説明する。
始めに、図17に示す工程では、下部坩堝41−1及び上部坩堝42−1よりなる坩堝31−1の上端に配置された蓋体32a−1の貫通部32A−1に、炭化珪素種結晶35が取り付けられた台座141を取り付ける。
台座141は、収容部118を備えた台座本体116と、切断用台座部材142と、を有する。台座本体116は、蓋体32−1の下面32b−1よりも下方に突出している。切断用台座部材142は、収容部118に収容されており、蓋体32−1の上面32a−1よりも上方に突出している。
【0185】
なお、図17では、炭化珪素種結晶35の成長面35aに、成長初期の炭化珪素単結晶71が成長している様子を模式的に図示している。
また、図17に示す坩堝31−1及び蓋体32−1は、先に説明した図2に示す坩堝31及び蓋体32と同様な構成とされている。
さらに、この段階において、炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aから炭化珪素原料39−1の上面39a−1までの距離は、距離D1となるように構成されている。
【0186】
次いで、図18に示す工程では、炭化珪素単結晶71を図17に示す状態から成長させる。この段階において、例えば、炭化珪素種結晶35の成長面35aに形成された炭化珪素単結晶71の厚さは、例えば、20mmとすることができる。この段階では、炭化珪素単結晶71の成長により、炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aから炭化珪素原料39−1の上面39a−1までの距離は、距離D1よりも小さくなる。
図18に示す第1の切断位置144は、最初に切断される位置であり、例えば、図18に示す切断用台座部材142の上面142aから厚さ20mmの位置に設定することができる。
【0187】
次いで、図19に示す工程では、炭化珪素単結晶71の成長を一度停止させる。その後、図示していないシャフト部75から、図18に示す下部坩堝41−1及び上部坩堝42−1を取り外すと共に、図18に示す蓋体32−1から炭化珪素単結晶71及び炭化珪素種結晶35と一体とされた台座141を取り外し、さらに、図18に示す上部坩堝42−1から蓋体32−1を取り外す。
【0188】
次いで、図示していないシャフト部75に、図19に示す下部坩堝41−2及び上部坩堝42−2により構成された坩堝31−2(図18に示す坩堝31−1とは異なる新しい坩堝)、及び蓋体32−2(図18に示す蓋体32−1とは異なる新しい蓋体)を組み立て、下部坩堝41−2内に新たに炭化珪素原料39−2を収容させる。
【0189】
次いで、図18に示す切断用台座部材142を第1の切断位置144で切断すると共に、図19に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aから炭化珪素原料39−2の上面39a−2までの距離が図17に示す距離D1となり、かつ台座141を蓋体32−2に取り付けたときに台座本体116の上端面が蓋体32−2の上面32a−2と略面一となるように、台座本体116の上端を切断した台座141(図19に示す台座)を蓋体32−2の貫通部32A−2に取り付ける。
【0190】
これにより、図17に示す台座141の上面141aから熱を放出する第1の構造体I(図17に示す台座141及び炭化珪素種結晶35よりなる構造体)の放熱特性と、図19に示す台座141の上面141bから熱を放熱する第2の構造体J(図19に示す台座141、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる構造体)の放熱特性と、の差が小さくなるので、成長初期における炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、成長がさらに進んだ炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、の差を小さくすることが可能となる。
【0191】
これにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を成長させることができる。
【0192】
また、図19に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aから炭化珪素原料39−2の上面39a−2までの距離が図17に示す距離D1となるように設定することで、図19に示す炭化珪素単結晶71の成長条件を、図17に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の成長条件に、さらに近づけることが可能となるので、厚さ方向において、略均一な特性とされた炭化珪素単結晶71を形成できる。
【0193】
次いで、図20に示す工程では、図19に示す状態から、炭化珪素単結晶71の成長を再開する。図20に示す工程では、例えば、さらに、20mmの炭化珪素単結晶71を成長させる。
図20に示す第2の切断位置146は、2番目に切断される位置であり、例えば、図20に示す切断用台座部材142の上面142bから厚さ20mmの位置に設定することができる。
【0194】
次いで、図21に示す工程では、炭化珪素単結晶71の成長を一度停止させる。その後、図示していないシャフト部75から、図20に示す下部坩堝41−2及び上部坩堝42−2を取り外すと共に、図20に示す蓋体32−2から炭化珪素単結晶71及び炭化珪素種結晶35と一体とされた台座141を取り外し、さらに、図20に示す上部坩堝42−2から蓋体32−2を取り外す。
【0195】
次いで、図示していないシャフト部75に、図21に示す下部坩堝41−3及び上部坩堝42−3により構成された坩堝31−3(図20に示す坩堝31−2とは異なる新しい坩堝)、及び蓋体32−3(図20に示す蓋体32−2とは異なる新しい蓋体)を組み立て、下部坩堝41−3内に新たに炭化珪素原料39−3を収容させる。
【0196】
次いで、図18に示す切断用台座部材142を第2の切断位置146で切断すると共に、
図21に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aから炭化珪素原料39−3の上面39a−3までの距離が図18に示す距離D1となり、かつ台座141を蓋体32−3に取り付けたときに台座本体116の上端面が蓋体32−3の上面32a−3と略面一となるように、台座本体116の上端を切断した台座141(図21に示す台座)を蓋体32−3の貫通部32A−3に取り付ける。
【0197】
これにより、図17に示す台座141の上面141aから熱を放出する第1の構造体Iの放熱特性と、図21に示す台座141の上面141cから熱を放熱する第2の構造体K(図21に示す台座141、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる構造体)の放熱特性と、の差が小さくなるので、成長初期における炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、成長がさらに進んだ炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、の差を小さくすることが可能となる。
【0198】
これにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を成長させることができる。
【0199】
また、図21に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aから炭化珪素原料39−2の上面39a−2までの距離が図17に示す距離D1となるように設定することで、図21に示す炭化珪素単結晶71の成長条件を、図17に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の成長条件に、さらに近づけることが可能となるので、厚さ方向において、略均一な特性とされた炭化珪素単結晶71を形成できる。
【0200】
次いで、図22に示す工程では、図21に示す状態から、炭化珪素単結晶71の成長を再開する。図22に示す工程では、例えば、さらに、20mmの炭化珪素単結晶71を成長させる。
図22に示す第3の切断位置147は、3番目に切断される位置であり、例えば、図22に示す切断用台座部材142の上面142cから厚さ20mmの位置に設定することができる。
【0201】
次いで、図23に示す工程では、炭化珪素単結晶71の成長を一度停止させる。その後、図示していないシャフト部75から、図22に示す下部坩堝41−3及び上部坩堝42−3を取り外すと共に、図22に示す蓋体32−3から炭化珪素単結晶71及び炭化珪素種結晶35と一体とされた台座141を取り外し、さらに、図22に示す上部坩堝42−3から蓋体32−3を取り外す。
【0202】
次いで、図示していないシャフト部75に、図23に示す下部坩堝41−4及び上部坩堝42−4により構成された坩堝31−4(図22に示す坩堝31−3とは異なる新しい坩堝)、及び蓋体32−4(図22に示す蓋体32−3とは異なる新しい蓋体)を組み立て、下部坩堝41−4内に新たに炭化珪素原料39−4を収容させる。
【0203】
次いで、図22に示す切断用台座部材142を第3の切断位置147で切断すると共に、図23に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aから炭化珪素原料39−4の上面39a−4までの距離が図17に示す距離D1となるように、台座本体116の外周及び炭化珪素単結晶71の外周に、台座本体116及び炭化珪素単結晶71を支持する支持部材149を設け、支持部材149を介して、蓋体32−4の貫通部32A−4に、第2の構造体L(図23に示す台座141、炭化珪素種結晶35、及び炭化珪素単結晶71よりなる構造体)を取り付ける。
この段階において、炭化珪素単結晶71の上端の一部が、蓋体32−4の上面32a−4から突出する。
【0204】
これにより、図17に示す台座141の上面141aから熱を放出する第1の構造体Iの放熱特性と、図23に示す台座141の上面141dから熱を放熱する第2の構造体Lの放熱特性と、の差が小さくなるので、成長初期における炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、成長がさらに進んだ炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aの温度分布と、の差を小さくすることが可能となる。
【0205】
これにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を成長させることができる。
【0206】
また、図23に示す炭化珪素単結晶71の結晶成長面71aから炭化珪素原料39−4の上面39a−4までの距離が図17に示す距離D1となるように設定することで、図23に示す炭化珪素単結晶71の成長条件を、図17に示す成長初期の炭化珪素単結晶71の成長条件に、さらに近づけることが可能となるので、厚さ方向において、略均一な特性とされた炭化珪素単結晶71を形成できる。
【0207】
次いで、図24に示す工程では、図23に示す状態から、炭化珪素単結晶71の成長を再開する。図24に示す工程では、例えば、さらに、20mmの炭化珪素単結晶71を成長させる。
なお、図24に示す工程の後に、先に説明した図23に示す工程と同様な処理を行なった後、さらに、炭化珪素単結晶71を成長させてもよい。
【0208】
第4の実施の形態の炭化珪素単結晶の製造方法によれば、炭化珪素単結晶71の成長を一度停止し、炭化珪素単結晶71の成長に応じて、切断用台座部材142を切断して台座141の厚さを薄くすると共に、坩堝、蓋体、及び炭化珪素原料を新しいものに交換して、台座141に取り付けられた炭化珪素種結晶35の成長面35aに、加熱により炭化珪素原料39a−1,39a−2,39a−3,39a−4を昇華させた原料ガスを供給して炭化珪素単結晶71を成長させることにより、炭化珪素単結晶71の成長初期の最適な結晶成長条件に近い条件で、炭化珪素単結晶71を成長させることが可能となるので、結晶欠陥が少なく、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶71を製造できる。
【0209】
なお、第4の実施の形態では、一例として、昇華再結晶法により炭化珪素単結晶71を製造する場合について説明したが、本発明は、例えば、原料ガス(昇華ガス)の替わりにシランやプロパン等を原料とするCVD(Chemical Vapor Deposition)法にも適用可能である。
【0210】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0211】
本発明の炭化珪素単結晶製造装置、及び炭化珪素単結晶の製造方法は、高品質で、かつ長尺とされた炭化珪素単結晶を製造可能な炭化珪素単結晶製造装置、及び炭化珪素単結晶の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0212】
10,80,85,90,100,110,120…炭化珪素単結晶製造装置、11…真空容器、12…断熱部材、13,81,86,91,101,111,121…炭化珪素単結晶製造装置本体、15…支持部材、15A…貫通孔、16…加熱手段、18…第1の放射温度計、19…第2の放射温度計、22…ガス導入孔、23…ガス排出孔、25…装置本体収容部、26,32A…貫通部、27…窓孔、31,31−1,31−2,31−3,31−4,102…坩堝、32,32−1,32−2,32−3,32−4…蓋体、32a,32a−2, 32a−2,32a−3, 32a−4,39a,39a−1,39a−2,39a−3,39a−4,48a,51a,52a,125b,125c,125d,141a,141b,141c,141d,142a,142b,142c…上面、32A,32A−1,32A−2,32A−3,32A−4…貫通部、32b,32b−1, 32b−2,32b−3, 32b−4,48b,125a…下面、33,113,123,141…台座、35…炭化珪素種結晶、35a…成長面、36,114…板材引き上げ部材、38…上部坩堝昇降手段、39,39−1,39−2,39−3,39−4…炭化珪素原料、41,41−1,41−2,41−3,41−4…下部坩堝、41a,75a…外周側面、42,42−1,42−2,42−3,42−4…上部坩堝、43,44…スライド部、43a,44a…スライド面、46…空間、48,116…台座本体、51…第1の板材、52,52−1…第2の板材、52−2…第3の板材、52−3…第4の板材、54,118…収容部、56…フック収容部、56a…天井面、57,61…支柱部通過部、58,62…フック通過部、64…支柱部、65…第1のフック部、66…第2のフック部、71…炭化珪素単結晶、71a,71b,71c…結晶成長面、75…シャフト部、76…シャフトガイド部、77…駆動部、82,87,93…ガイド部材、83…開口部、84…隙間、88,94…筒状部、89…板部、116a…下端面、125,142…切断用台座部材、126,144…第1の切断位置、127,146…第2の切断位置、147…第3の切断位置、149…支持部材A,E,F,I…第1の構造体、B,C,G,H,J,K…第2の構造体、D1,D2,D3,D4,D5…距離、J1…長さ、M1,M2,M3,M4,M5,M6,M7…厚さ、W1…幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
坩堝内の台座に取り付けた炭化珪素種結晶の成長面に、原料ガスを供給して、前記炭化珪素種結晶に炭化珪素単結晶を成長させる炭化珪素単結晶製造装置であって、
前記台座は、該台座の厚さを薄くすることが可能な構成であることを特徴とする炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項2】
前記台座は、前記坩堝の上端に配置され、
前記炭化珪素原料を昇華させた原料ガスを、前記炭化珪素種結晶の成長面に供給することで、前記炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする請求項1記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項3】
前記台座は、前記炭化珪素種結晶が取り付けられる台座本体と、該台座本体上に積み重ねられた複数の板材と、を有することを特徴とする請求項1または2記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項4】
前記台座本体は、前記坩堝の上端に配置された蓋体に設けられており、前記台座本体は、前記蓋体の下面から前記炭化珪素原料の上面に向かう方向に対して突出し、かつ少なくとも1つ以上の前記板材を収容する収容部を有することを特徴とする請求項3記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項5】
前記収容部は、前記蓋体の上面から突出しないように、複数の前記板材を収容することを特徴とする請求項4記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項6】
前記蓋体の上面から突出するように、前記収容部及び該収容部上に複数の前記板材を積み重ねられていることを特徴とする請求項4記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項7】
前記台座本体は、前記蓋体と一体とされていることを特徴とする請求項3ないし6のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項8】
前記坩堝に、前記炭化珪素種結晶側に前記原料ガスを案内するガイド部材を設けたことを特徴とする請求項1ないし7記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項9】
前記ガイド部材は、前記炭化珪素原料の上面に対して略平行な板材とされており、かつ前記炭化珪素種結晶の成長面を露出する開口部を有することを特徴とする請求項8記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項10】
前記ガイド部材は、前記炭化珪素種結晶よりも下方の位置に、前記炭化珪素種結晶の成長面を露出する筒状部を有することを特徴とする請求項8記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項11】
前記筒状部は、前記炭化珪素種結晶の成長面から前記炭化珪素原料の上面に向かう方向において、同じ幅であることを特徴とする請求項10記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項12】
前記筒状部は、前記炭化珪素種結晶の成長面から前記炭化珪素原料の上面に向かうにつれて、幅広な形状であることを特徴とする請求項10記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項13】
前記坩堝は、前記蓋体が配置される上部坩堝と、前記炭化珪素原料を収容する下部坩堝と、を有し、
前記上部坩堝及び前記下部坩堝は、上下方向に対して相対的に移動可能な構成であることを特徴とする請求項1ないし12のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項14】
前記ガイド部材を、前記上部坩堝の内壁に設けたことを特徴とする請求項13項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項15】
前記台座の材料が、炭化珪素であることを特徴とする請求項1ないし14のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項16】
前記台座の材料が、炭素であることを特徴とする請求項1ないし14のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項17】
坩堝内の台座に取り付けた炭化珪素種結晶の成長面に、原料ガスを供給して、前記炭化珪素種結晶に炭化珪素の単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法であって、前記炭化珪素単結晶が成長するに従い、前記台座の厚さを薄くすることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項18】
前記炭化珪素種結晶が坩堝内に収容された前記炭化珪素原料と対向するように、前記坩堝の上端に前記台座を配置し、前記炭化珪素種結晶の成長面に、前記炭化珪素原料を昇華させた原料ガスを供給することで、前記炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする請求項17記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項19】
前記炭化珪素単結晶の成長中に、前記台座の厚さを薄くすることを特徴とする請求項17または18記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項20】
前記炭化珪素単結晶の成長を停止させた後に、前記台座の厚さを薄くし、その後、前記炭化珪素単結晶をさらに成長させることを特徴とする請求項17または18記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項21】
前記台座は、前記炭化珪素種結晶が取り付けられた台座本体と、該台座本体上に積み重ねられた複数の板材と、を有し、
前記板材を取り外すことで、前記台座の厚さを薄くすることを特徴とする請求項18ないし20のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項22】
前記台座本体は、前記坩堝の上端に配置された蓋体に設けられ、前記蓋体の下面から前記炭化珪素原料の上面に向かう方向に対して突出し、かつ前記板材を収容する収容部を有し、
前記蓋体の上面から突出しないように、前記収容部に複数の前記板材を収容した後、前記炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする請求項21記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項23】
前記台座本体は、前記坩堝の上端に配置された蓋体に設けられ、前記蓋体の下面から前記炭化珪素原料の上面に向かう方向に対して突出し、かつ前記板材を収容する収容部を有し、
前記蓋体の上面から突出するように、前記収容部及び該収容部上に複数の前記板材を積み重ねた後、前記炭化珪素種結晶に前記炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする請求項21記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項24】
前記台座は、前記坩堝の上端に配置された蓋体に設けられており、前記台座は、前記蓋体の上面から突出するように配置されており、前記蓋体の上面から突出した前記台座の一部を切断することで、前記台座の厚さを薄くすることを特徴とする請求項18ないし20のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項25】
前記炭化珪素種結晶を成長させる際、前記炭化珪素原料の上面と前記炭化珪素単結晶の結晶成長面との距離が略等しくなるように調整することを特徴とする請求項18ないし24のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項1】
坩堝内の台座に取り付けた炭化珪素種結晶の成長面に、原料ガスを供給して、前記炭化珪素種結晶に炭化珪素単結晶を成長させる炭化珪素単結晶製造装置であって、
前記台座は、該台座の厚さを薄くすることが可能な構成であることを特徴とする炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項2】
前記台座は、前記坩堝の上端に配置され、
前記炭化珪素原料を昇華させた原料ガスを、前記炭化珪素種結晶の成長面に供給することで、前記炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする請求項1記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項3】
前記台座は、前記炭化珪素種結晶が取り付けられる台座本体と、該台座本体上に積み重ねられた複数の板材と、を有することを特徴とする請求項1または2記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項4】
前記台座本体は、前記坩堝の上端に配置された蓋体に設けられており、前記台座本体は、前記蓋体の下面から前記炭化珪素原料の上面に向かう方向に対して突出し、かつ少なくとも1つ以上の前記板材を収容する収容部を有することを特徴とする請求項3記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項5】
前記収容部は、前記蓋体の上面から突出しないように、複数の前記板材を収容することを特徴とする請求項4記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項6】
前記蓋体の上面から突出するように、前記収容部及び該収容部上に複数の前記板材を積み重ねられていることを特徴とする請求項4記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項7】
前記台座本体は、前記蓋体と一体とされていることを特徴とする請求項3ないし6のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項8】
前記坩堝に、前記炭化珪素種結晶側に前記原料ガスを案内するガイド部材を設けたことを特徴とする請求項1ないし7記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項9】
前記ガイド部材は、前記炭化珪素原料の上面に対して略平行な板材とされており、かつ前記炭化珪素種結晶の成長面を露出する開口部を有することを特徴とする請求項8記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項10】
前記ガイド部材は、前記炭化珪素種結晶よりも下方の位置に、前記炭化珪素種結晶の成長面を露出する筒状部を有することを特徴とする請求項8記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項11】
前記筒状部は、前記炭化珪素種結晶の成長面から前記炭化珪素原料の上面に向かう方向において、同じ幅であることを特徴とする請求項10記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項12】
前記筒状部は、前記炭化珪素種結晶の成長面から前記炭化珪素原料の上面に向かうにつれて、幅広な形状であることを特徴とする請求項10記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項13】
前記坩堝は、前記蓋体が配置される上部坩堝と、前記炭化珪素原料を収容する下部坩堝と、を有し、
前記上部坩堝及び前記下部坩堝は、上下方向に対して相対的に移動可能な構成であることを特徴とする請求項1ないし12のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項14】
前記ガイド部材を、前記上部坩堝の内壁に設けたことを特徴とする請求項13項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項15】
前記台座の材料が、炭化珪素であることを特徴とする請求項1ないし14のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項16】
前記台座の材料が、炭素であることを特徴とする請求項1ないし14のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項17】
坩堝内の台座に取り付けた炭化珪素種結晶の成長面に、原料ガスを供給して、前記炭化珪素種結晶に炭化珪素の単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法であって、前記炭化珪素単結晶が成長するに従い、前記台座の厚さを薄くすることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項18】
前記炭化珪素種結晶が坩堝内に収容された前記炭化珪素原料と対向するように、前記坩堝の上端に前記台座を配置し、前記炭化珪素種結晶の成長面に、前記炭化珪素原料を昇華させた原料ガスを供給することで、前記炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする請求項17記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項19】
前記炭化珪素単結晶の成長中に、前記台座の厚さを薄くすることを特徴とする請求項17または18記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項20】
前記炭化珪素単結晶の成長を停止させた後に、前記台座の厚さを薄くし、その後、前記炭化珪素単結晶をさらに成長させることを特徴とする請求項17または18記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項21】
前記台座は、前記炭化珪素種結晶が取り付けられた台座本体と、該台座本体上に積み重ねられた複数の板材と、を有し、
前記板材を取り外すことで、前記台座の厚さを薄くすることを特徴とする請求項18ないし20のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項22】
前記台座本体は、前記坩堝の上端に配置された蓋体に設けられ、前記蓋体の下面から前記炭化珪素原料の上面に向かう方向に対して突出し、かつ前記板材を収容する収容部を有し、
前記蓋体の上面から突出しないように、前記収容部に複数の前記板材を収容した後、前記炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする請求項21記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項23】
前記台座本体は、前記坩堝の上端に配置された蓋体に設けられ、前記蓋体の下面から前記炭化珪素原料の上面に向かう方向に対して突出し、かつ前記板材を収容する収容部を有し、
前記蓋体の上面から突出するように、前記収容部及び該収容部上に複数の前記板材を積み重ねた後、前記炭化珪素種結晶に前記炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする請求項21記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項24】
前記台座は、前記坩堝の上端に配置された蓋体に設けられており、前記台座は、前記蓋体の上面から突出するように配置されており、前記蓋体の上面から突出した前記台座の一部を切断することで、前記台座の厚さを薄くすることを特徴とする請求項18ないし20のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項25】
前記炭化珪素種結晶を成長させる際、前記炭化珪素原料の上面と前記炭化珪素単結晶の結晶成長面との距離が略等しくなるように調整することを特徴とする請求項18ないし24のうち、いずれか1項記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2012−240906(P2012−240906A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116058(P2011−116058)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度経済産業省「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト」委託研究)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度経済産業省「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト」委託研究)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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