説明

炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料

【課題】優れた耐衝撃性と低温下での力学特性を兼ね備えた炭素繊維強化複合材料用のエポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂総量に対して3〜40重量%の1官能エポキシ樹脂と、同じく40〜80重量%の3官能以上のエポキシ樹脂を含み、かつ、平均粒径が1〜150μmの熱可塑性樹脂粒子を含むことを特徴とする炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、および、それを用いたプリプレグと炭素繊維強化複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維強化複合材料としたときに、耐衝撃性と低温下での強度に優れるプリプレグ、ならびに、このようなプリプレグに用いられる炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化複合材料は、強度および剛性等に優れていることから、航空機構造部材、風車の羽根、自動車外板およびICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピュータ用途等に広く展開され、その需要は年々増加しつつある。近年、使用例が増えるに従い、この炭素繊維強化複合材料に対する要求特性は厳しくなってきている。特に、航空機部材や自動車部材等の構造材に適用されるにつれて、炭素繊維強化複合材料に対して高温高湿下や低温下などのより厳しい使用環境での高強度化が要求されてきている。
【0003】
炭素繊維強化複合材料の高強度化には、強化繊維の高強度化や高繊維体積分率化(高Vf化)が必要である。従来、高強度の強化繊維を得る方法が提案されている(特許文献1参照。)が、この提案では、その強化繊維を繊維強化複合材料としたときに発現する強度についての言及がない。一般に、強化繊維を高強度化するほど、繊維強化複合材料としたときに繊維本来の強度を利用することが難しくなる傾向がある。例えば、強化繊維のストランド強度が向上しても、引張強度を十分に利用することができず、引張強度利用率(繊維強化複合材料の引張強度/(強化繊維のストランド強度×体積繊維含有率)×100)は、低下していく傾向にある。そのため、このような高強度の炭素繊維を得ることができても、繊維強化複合材料としての強度を発現させるためには、さらに技術的な課題を解決する必要がある。
【0004】
また、強化繊維を高Vf化するとやはり、引張強度利用率は低下する傾向が見られる。さらには耐衝撃性が低下する傾向がみられ、引張強度との両立は難しくなる。
【0005】
さらに、同じ強度の強化繊維でも、組み合わせるマトリックス樹脂やその成形条件により、その引張強度利用率が大きく変動していくことが知られている。特に、マトリックス樹脂の硬化温度条件が180℃以上になると、その硬化の際に繊維強化複合材料に残留する熱応力歪から高強度が発現しにくいという問題がある。そのため、これまでにも、180℃の温度の硬化でも十分な引張強度を出すためのマトリックス樹脂の改質の検討が行われてきている。
【0006】
マトリックス樹脂の引張破断伸度を上げると、繊維強化複合材料の引張強度利用率は向上することが知られている。マトリックス樹脂の引張破断伸度の向上には、マトリックス樹脂の架橋密度を下げることが有効であるが、架橋密度の低下により繊維強化複合材料の耐熱性が低下することがあり、有効な配合が限られるという問題がある。それを解決するために、引張破断伸度と破壊靱性KIcが特定の関係を満たすことにより高い引張強度利用率が得られることが示されている(特許文献2参照。)。しかしながら、破壊靱性KIcの向上のために、マトリックス樹脂に熱可塑性樹脂やゴム成分を多量に配合すると、一般的に粘度が上昇し、プリプレグ製造のプロセス性や取扱性を損ねることがある。
【0007】
また、耐衝撃性は、このような構造材料にとって重要な特性であり、さらに具体的には衝撃力を受けた後の圧縮強度は重要である。例えば、工具類の落下や小石などの衝突により繊維強化複合材料が衝撃力を受け、繊維強化複合材料の層間に剥離を生じることにより圧縮強度が低下し、構造材料として使用に耐えなくなることがある。また、繊維強化複合材料は、軽量化に伴い薄肉化すると耐衝撃性が低下することがある。そのため、繊維強化複合材料について、耐衝撃性への要求も強くなってきている。
【0008】
炭素繊維強化複合材料の耐衝撃性を改良するため、マトリックス樹脂にゴム成分を配合する方法(特許文献3参照。)、熱可塑性樹脂を配合する方法(特許文献4参照。)、インターリーフと呼ばれる一種の接着層ないしは衝撃吸収層を層間に挿入する方法(特許文献5参照。)、および粒子により層間を強化(特許文献6参照。)する方法が提案されている。しかしながら、これらの手法は、その効果がなお不十分であるばかりでなく、それぞれに欠点を有している。ゴム成分を用いた場合、ゴム成分の含量が多くなると耐熱性が低下し、エラストマーの含量が少ないと層間強度の改善効果は非常に少ない。また、熱可塑性樹脂を用いた場合、熱可塑性樹脂の含量が多くなると、マトリックス樹脂の靱性が向上し、炭素繊維強化複合材料の耐衝撃性は向上するが、マトリックス樹脂の粘度が上昇してしまい、プリプレグの含浸性を損ねることがある。また、インターリーフでは、耐熱性の良好な熱可塑性樹脂フィルムを用いることにより耐熱性と耐衝撃性の改善効果の両立がなされるが、強化繊維含有率が上げられないこと、およびタック性が失われプリプレグとしての取扱性も悪くなるなどの問題が生じることがある。さらに、粒子による層間強化は、積層板において衝撃下最も応力が集中する層間部を熱可塑性樹脂の添加により選択的に高靭性化する技術にあり、低温下における引張強度向上技術に関しては何ら解決されていない。また、粒子を配合することにより繊維体積分率(Vf)が下がり、繊維方向の強度が低下する傾向がみられ、耐衝撃性と両立させるにはなお技術的な課題がある。
【特許文献1】特開平11−241230号公報
【特許文献2】特開平9−235397号公報
【特許文献3】特開平13−139662号公報
【特許文献4】特開平7−278412号公報
【特許文献5】特開昭60−231738号公報
【特許文献6】特公平6−94515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の目的は、炭素繊維強化複合材料としたときに、耐衝撃性と低温下での強度に優れるプリプレグ、ならびに、このようなプリプレグに用いられる炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために次のいずれかの構成を有するものである。
【0011】
すなわち、本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂総量に対して3〜40重量%の1官能エポキシ樹脂と、同じく40〜80重量%の3官能以上のエポキシ樹脂を含み、かつ、平均粒径が1〜150μmの熱可塑性樹脂粒子を含むことを特徴とする炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物である。
【0012】
本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記の1官能エポキシ樹脂は、環状の化学構造を有しており、より好適には芳香族環を有する1官能エポキシ樹脂である。
【0013】
本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記の熱可塑性樹脂粒子は、エポキシ樹脂に溶解しない樹脂粒子であり、その熱塑性樹脂粒子の配合量は、炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物総量に対して5〜30重量%である。
【0014】
本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記のエポキシ樹脂が溶解可能な熱可塑性樹脂を含むことである。
【0015】
また、本発明のプリプレグは、前記の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物が炭素繊維に含浸されてなるプリプレグである。
【0016】
さらに、本発明の炭素繊維強化複合材料は、前記の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物が含浸されてなるプリプレグを硬化してなる炭素繊維強化複合材料である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐熱性に優れ、かつプリプレグを得る際のプロセス性に優れた炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。この炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物と炭素繊維を組み合わせることにより、プリプレグを得ることができ、これを硬化させることにより耐衝撃性と低温下の強度に優れた炭素繊維強化複合材料を得ることができる。一般に低温下では、室温下に比べて炭素繊維複合材料の引張強度は大きく低下する。従来技術では、低温下での引張強度を室温下と同等レベルで発現させようとすると、耐衝撃性が損なわれ、耐衝撃性と低温下の引張強度を両立させることは非常に困難であった。本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物により、これまでなし得なかったレベルで耐衝撃性と低温下での強度を両立した炭素繊維強化複合材料が得られる。
【0018】
この炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物により得られる炭素繊維強化複合材料は、航空宇宙用途では、主翼、尾翼およびフロアビーム等の航空機一次構造材用途、フラップ、エルロン、カウル、フェアリングおよび内装材等の二次構造材用途、ロケットモーターケースおよび人工衛星構造材用途等に好適に用いられる。このような航空宇宙用途の中でも、耐衝撃性が必要で、かつ、高度飛行中において低温にさらされるため、低温における引張強度が必要な航空機一次構造材用途である胴体スキンや主翼スキンにおいて、特に好適に用いられる。また、スポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニス、バトミントンおよびスカッシュ等のラケット用途、ホッケー等のスティック用途、およびスキーポール用途等に好適に用いられる。さらに一般産業用途では、自動車、船舶および鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラ、屋根材、ケーブル、補強筋、および補修補強材料等の土木・建築材料用途等に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の炭素繊維複合材料用エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料料について詳細に説明する。
【0020】
本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、1官能エポキシ樹脂と、3官能以上のエポキシ樹脂と、熱可塑性樹脂粒子を含むエポキシ樹脂組成物である。
【0021】
まず本発明においては、高い耐衝撃性と引張強度を両立させるため、1官能エポキシ樹脂は必須の成分である。
【0022】
本発明で用いられる1官能エポキシ樹脂とは、1分子中に1個のエポキシ基を有する化合物である。1官能エポキシ樹脂の配合量が少ないと、炭素繊維強化複合材料の強度向上の効果がほとんどなく、配合量が多すぎると、耐熱性を著しく損ねてしまう。1官能エポキシ樹脂の配合量は配合されたエポキシ樹脂総量に対して3〜40重量%が好適であり、より好ましくは5〜30重量%である。
【0023】
本発明で用いられる1官能エポキシ樹脂としては、さまざまなエポキシ樹脂を用いることが可能であるが、耐熱性の観点から、化学構造中にシクロヘキサン等の環構造を有していることが好ましく、好適にはベンゼン環等の芳香族環を有しているエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0024】
1官能エポキシ樹脂の市販品としては、“デナコール”(登録商標)Ex−731(ナガセケムテックス(株)製)、OPP−G(o−フェニルフェニルグリシジルエーテル、三光(株)製)、“デナコール”(登録商標)Ex−141(フェニルグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製)、“デナコール”(登録商標)Ex−146(p−ターシャルブチルフェニルグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製)、および“デナコール”(登録商標)Ex−147(ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
【0025】
また本発明においては、高い耐熱性と耐衝撃性を両立させるため、3官能以上のエポキシ樹脂は必須の成分である。
【0026】
本発明で用いられる3官能以上のエポキシ樹脂とは、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する化合物である。3官能以上のエポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルアミン型エポキシ樹脂やグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0027】
3官能以上のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型およびテトラフェニロールエタン型などのエポキシ樹脂が挙げられる。
【0028】
3官能以上のグリシジルアミノ系エポキシ樹脂としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミノジフェニルスルホン型、アミノフェノール型、メタキシレンジアミン型、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン型、イソシアヌレート型およびヒダントイン型などのエポキシ樹脂が挙げられる。
【0029】
3官能以上のエポキシ樹脂の配合量が少なすぎると耐熱性を損ねてしまい、多すぎると脆い材料となり、炭素繊維強化複合材料の耐衝撃性と強度を損ねてしまう。3官能以上のエポキシ樹脂の配合量は、配合されたエポキシ樹脂総量に対して40〜80重量%であり、より好ましくは50〜70重量%である。
【0030】
本発明で用いられる3官能以上のエポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂単体の他、3官能以上のエポキシ樹脂と1分子中に2個以上のエポキシ基を有する2官能のエポキシ樹脂とをブレンドした化合物、エポキシ樹脂と熱硬化性樹脂の共重合体、それらの変性体および3官能以上のエポキシ樹脂、2官能のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂と熱硬化性樹脂の共重合体およびそれらの変性体を2種類以上ブレンドした化合物なども用いることができる。
【0031】
エポキシ樹脂と共重合させて用いられる上記の熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびポリイミド等が挙げられる。
【0032】
これらの化合物は、単独で用いてもよいし適宜配合して用いてもよい。少なくとも2官能のエポキシ樹脂および3官能以上のエポキシ樹脂を配合することにより、樹脂の流動性と硬化後の耐熱性を兼ね備えるものとする。特に、グリシジルアミン型エポキシ樹脂とグリシジルエーテル型エポキシ樹脂の組み合わせは、耐熱性および耐水性とプロセス性の両立を可能にする。また、常温で液状のエポキシ樹脂を少なくとも1種と、常温で固形状のエポキシ樹脂を少なくとも1種を配合することは、プリプレグのタック性とドレープ性を適切なものとする。
【0033】
本発明では、エポキシ樹脂の中でも、特に、アミン類、フェノール類および炭素−炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂が好ましく用いられる。具体的には、アミン類を前駆体とするグリシジルアミン型エポキシ樹脂として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノールおよびトリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体が挙げられる。テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンは、耐熱性に優れているため、航空機構造材等に用いられる炭素繊維複合材料用エポキシ樹脂組成物の成分として好ましく用いられる。
【0034】
また、フェノールを前駆体とするグリシジルエーテル型エポキシ樹脂も好ましく用いられる。このようなエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびレゾルシノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0035】
液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂およびレゾルシノール型エポキシ樹脂は、低粘度であるために、他のエポキシ樹脂と組み合わせて使うことが好ましい。
【0036】
また、固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂は、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂に比較し架橋密度の低い構造を与えるため耐熱性は低くなるが、より靭性の高い構造が得られるため、グリシジルアミン型エポキシ樹脂や液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂と組み合わせて用いられる。
【0037】
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂は、低吸水率かつ高耐熱性の硬化樹脂を与える。また、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂およびジフェニルフルオレン型エポキシ樹脂も、低吸水率の硬化樹脂を与えるため好適に用いられる。ウレタン変性エポキシ樹脂およびイソシアネート変性エポキシ樹脂は、破壊靱性と伸度の高い硬化樹脂を与える。
【0038】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、耐熱性が高く吸水率が小さいため、耐熱耐水性の高い硬化樹脂を与える。これらのフェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いることによって、耐熱耐水性を高めつつプリプレグのタック性とドレープ性を調節することができる。
【0039】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“Epon”(登録商標)825(ジャパンエポキシレジン(株)製)、“エピクロン” (登録商標)850(大日本インキ化学工業(株)製)、“エポトート” (登録商標)YD―128(東都化成(株)製)、DER―331、およびDER−332(以上、ダウケミカル社製)などが挙げられる。
【0040】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては“jER”(登録商標)806、 “jER”(登録商標)807、“jER”(登録商標)1750(以上ジャパンエポキシレジン(株)製)、“エピクロン”830(大日本インキ化学工業(株)製)、および“エポトート”(登録商標)YD―170(東都化成(株)製)などが挙げられる。
【0041】
レゾルシノール型エポキシ樹脂の市販品としては、“デコナール”(登録商標)EX−201(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
【0042】
ジアミノジフェニルメタン型のエポキシ樹脂市販品としては、ELM434(住友化学(株)製)、“アラルダイト”(登録商標)MY720、“アラルダイト”(登録商標)MY721、“アラルダイト”(登録商標)MY9512、“アラルダイト”(登録商標)MY9663(以上ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、および“エポトート”(登録商標)YH―434(東都化成(株)製)などが挙げられる。
【0043】
メタキシレンジアミン型のエポキシ樹脂市販品としては、TETRAD−X(三菱ガス化学社製)などが挙げられる。
【0044】
1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン型のエポキシ樹脂市販品としては、TETRAD−C(三菱ガス化学社製)などが挙げられる。
【0045】
イソシアヌレート型のエポキシ樹脂市販品としては、TEPIC−P(日産化学社製)などが挙げられる。
【0046】
トリスヒドロキシフェニルメタン型のエポキシ樹脂市販品としては、Tactix742(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)などが挙げられる。
【0047】
テトラフェニロールエタン型のエポキシ樹脂市販品としては、“jER”(登録商標)1031S(ジャパンエポキシレジン(株)製)などが挙げられる。
【0048】
アミノフェノール型のエポキシ樹脂市販品としては、ELM120、ELM100(以上住友化学(株)製)、“jER”(登録商標)630(ジャパンエポキシレジン(株)製)、および“アラルダイト”(登録商標)MY0510(Vantico社製)などが挙げられる。
【0049】
グリシジルアニリン型のエポキシ樹脂市販品としては、GAN、GOT(以上日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0050】
ビフェニル型エポキシ樹脂の市販品としては、NC−3000(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0051】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、HP7200(大日本インキ化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0052】
ウレタン変性エポキシ樹脂の市販品としては、AER4152(旭化成エポキシ(株)製)などが挙げられる。
【0053】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、DEN431、DEN438(以上、ダウケミカル社製)および“jER”152(登録商標)(ジャパンエポキシレジン(株)製)などが挙げられる。
【0054】
オルソクレゾールノボラック型のエポキシ樹脂市販品としては、EOCN−1020(日本化薬社製)および“エピクロン”N−660(大日本インキ化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0055】
ヒダントイン型のエポキシ樹脂市販品としては、AY238(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)などが挙げられる。
【0056】
炭素繊維との接着性と機械物性のバランスから、全エポキシ樹脂組成中にグリシジルアミン型エポキシが30〜70重量%配合されることが好ましく、より好ましくは40〜60%である。
【0057】
本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物には、硬化剤を配合することができる。
【0058】
本発明において、硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤であり、エポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物である。硬化剤としては、具体的には、例えば、ジシアンジアミド、芳香族ポリアミン、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタンおよび三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などが挙げられる。
【0059】
芳香族ポリアミンを硬化剤として用いることにより、耐熱性の良好なエポキシ樹脂硬化物が得られる。特に、芳香族ポリアミンの中でも、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体は、耐熱性の良好なエポキシ樹脂硬化物を得るため最も適している硬化剤である。
【0060】
また、ジシアンジアミドと尿素化合物、例えば、3,4−ジクロロフェニル−1,1−ジメチルウレアとの組合せ、あるいはイミダゾール類を硬化剤として用いることにより、比較的低温で硬化しながら高い耐熱耐水性が得られる。酸無水物を用いてエポキシ樹脂を硬化することは、アミン化合物硬化に比べ吸水率の低い硬化物を与える。その他、これらの硬化剤を潜在化したもの、例えば、マイクロカプセル化したものを用いることにより、プリプレグの保存安定性、特にタック性やドレープ性が室温放置しても変化しにくい。
【0061】
硬化剤の添加量の最適値は、エポキシ樹脂と硬化剤の種類により異なる。例えば、芳香族アミン硬化剤では、化学量論的に当量となるように添加することが好ましいが、当量比0.7〜0.9附近を用いることにより当量で用いた場合より高弾性率樹脂が得られることがあり、これも好ましい態様である。これらの硬化剤は、単独で使用しても複数を併用してもよい。
【0062】
芳香族ポリアミン硬化剤の市販品としては、“スミキュア”(登録商標)S(住友化学(株)製)、MDA−220(三井化学(株)製)、“jERキュア”(登録商標)W(ジャパンエポキシレジン(株)製)、および3,3’−DAS(三井化学(株)製)などが挙げられる。
【0063】
また、これらエポキシ樹脂と硬化剤、あるいはそれらの一部を予備反応させた物を組成物中に配合することもできる。この方法は、粘度調節や保存安定性向上に有効な場合がある。
【0064】
本発明においては、上記のエポキシ樹脂に、熱可塑性樹脂を混合または溶解して用いることも好適な態様である。このような熱可塑性樹脂としては、一般に、主鎖に、炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合およびカルボニル結合からなる群から選ばれた結合を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、この熱可塑性樹脂は、部分的に架橋構造を有していても差し支えなく、結晶性を有していても非晶性であってもよい。特に、ポリアミド、ポリカーボナート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリルおよびポリベンズイミダゾールからなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂が、エポキシ樹脂に混合または溶解していることが好適である。
【0065】
これらの熱可塑性樹脂は、市販のポリマーを用いてもよく、また市販のポリマーより分子量の低い、いわゆるオリゴマーを用いても良い。オリゴマーとしては、エポキシ樹脂と反応し得る官能基を末端または分子鎖中に有するオリゴマーが好ましい。
【0066】
エポキシ樹脂と熱可塑性樹脂との混合物は、それらを単独で用いた場合より良好な結果を与える。エポキシ樹脂の脆さを熱可塑性樹脂の強靱さでカバーし、かつ熱可塑性樹脂の成形困難性をエポキシ樹脂でカバーし、バランスのとれたベース樹脂となる。エポキシ樹脂と熱可塑性樹脂と使用割合(重量部)は、バランスの点で、好ましくは配合したエポキシ樹脂の合計100重量部に対して熱可塑性樹脂の配合量が2〜50重量部の範囲であり、より好ましくは5〜35重量部の範囲である。
【0067】
また本発明においては、優れた耐衝撃性を実現させるため、熱可塑性樹脂粒子は必須の成分である。この熱可塑性樹脂粒子は、上記のエポキシ樹脂に含まれる熱可塑性樹脂とは、異なる成分である。
【0068】
本発明では、熱可塑性樹脂粒子を必須成分として用いているため、優れた耐衝撃性を実現することができる。本発明で用いられる熱可塑性樹脂粒子の素材としては、エポキシ樹脂に混合または溶解して用い得る熱可塑性樹脂として、先に例示した各種の熱可塑性樹脂と同様のものを用いることができる。中でも、ポリアミドが最も好ましく、ポリアミドの中でも、ナイロン12、ナイロン11やナイロン6/12共重合体が特に良好な熱硬化性樹脂との接着強度を与える。
【0069】
この熱可塑性樹脂粒子の形状としては、球状粒子でも非球状粒子でも、また多孔質粒子でもよいが、球状の方が、樹脂の流動特性を低下させないため粘弾性に優れ、また応力集中の起点がなく、高い耐衝撃性を与えるという点で好ましい態様である。
【0070】
熱可塑性樹脂粒子の量は、炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物総量に対して5〜30重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜20重量%である。熱可塑性樹脂粒子の量が30重量%を超えると、プリプレグとしたときにタック性やドレープ性が低下するため取り扱い性が悪くなる。同じく熱可塑性樹脂粒子の量が5重量%未満であると、十分な効果が得られ難い。
【0071】
本発明で用いられる熱可塑性粒子の平均粒径は150μm以下であれば良く、好ましくは1〜150μmであり、より好ましくは2〜50μmである。熱可塑性樹脂粒子の平均粒径が150μmを超える粒子の場合には、強化繊維の配列を乱したり、成形して得られる炭素繊維強化複合材料における繊維束同士の間隔や層間を必要以上に厚くするため、炭素繊維強化複合材料としたときの物性を低下させる場合がある。ただし、150μmを超える平均粒径をもつ熱可塑性樹脂粒子でも成形中にエポキシ樹脂に部分的に溶解し小さくなる素材の粒子や、あるいは成形中の加熱により変形することによりフィラメント間や炭素繊維複合材料の層間を成形前より狭くする素材もあり、その場合には適したものとして使用することができる。また、熱可塑性樹脂粒子の平均粒径が1μm未満の場合には、熱可塑性樹脂粒子が強化繊維のフィラメントの隙間に侵入し易くなり、プリプレグ表面に局在化する粒子量が減り、十分な耐衝撃性向上効果が得られなくなる可能性がある。
【0072】
本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を得るには、熱可塑性樹脂粒子と硬化剤以外の構成成分を150℃程度の温度で均一に加熱混練し、80℃程度の温度まで冷却した後に、上記の熱可塑性樹脂粒子と硬化剤を加えて混練することが好ましいが、各成分の配合方法は特にこの方法に限定されるものではない。
【0073】
本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、カップリング剤、熱硬化性樹脂粒子、エポキシ樹脂に溶解可能な熱可塑性樹脂、およびシリカゲル、カーボンブラック、クレー、カーボンナノチューブおよび金属粉体のような無機フィラー等を配合することができる。
【0074】
本発明で用いられる炭素繊維としては、ストランド引張試験における、そのストランド強度が4400MPa以上9500MPa以下であり、かつ弾性率が230GPa以上400GPa以下の炭素繊維が好ましく用いられる。
【0075】
ここで、ストランド引張試験とは、束状の炭素繊維に下記組成の樹脂を含浸させ、130℃の温度で35分間硬化させた後、JIS R7601(1986)に基づいて行う試験をいう。
【0076】
[*樹脂組成]
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−シクロヘキシル−カルボキシレート(例えば、ERL−4221、ユニオンカーバイド社製):100重量部
・3フッ化ホウ素モノエチルアミン(例えば、ステラケミファ株式会社製):3重量部
・アセトン(例えば、和光純薬工業株式会社製):4重量部
本発明で用いられる炭素繊維は、用途により異なるが、耐衝撃性の点から、高くとも400GPaの引張弾性率を有する炭素繊維であることが好ましい。また、強度の観点からは、高い剛性および機械強度を有する複合材料が得られることから、引張強度が4 .4〜6.5GPaの炭素繊維であることが好ましい。さらに引張伸度も重要な要素であり、1 .7〜2.3%の高強度高伸度炭素繊維であることが好ましい。従って、高い耐衝撃性と引張強度を両立する点から、引張弾性率が少なくとも230GPaであり、引張強度が少なくとも4 .4GPaであり 、引張伸度が少なくとも1 .7%であるという特性を兼ね備えた炭素繊維が最も適している。
【0077】
炭素繊維の市販品としては、“トレカ”(登録商標)T800S−24K、および“トレカ”(登録商標)T700G−24K(以上東レ(株)製)などが挙げられる。
【0078】
炭素繊維の形態や配列については、一方向に引き揃えた長繊維や織物等から適宜選択できるが、軽量で耐久性がより高い水準にある炭素繊維強化複合材料を得るためには、炭素繊維が、一方向に引き揃えられた長繊維や織物等の連続繊維(フィラメント)の形態であることが好ましい。
【0079】
本発明で用いられる炭素繊維は、好適には複数のフィラメントからなる炭素繊維束の形態で用いられる。
【0080】
本発明において用いられる炭素繊維束は、単繊維繊度が0.2〜2.0dtexであることが好ましく、より好ましい単繊維繊度は0.4〜1.8dtexである。単繊維繊度が0.2dtex未満では、撚糸時においてガイドローラーとの接触による炭素繊維束の損傷が起こり易くなることがあり、また樹脂組成物の含浸処理工程においても同様の損傷が起こることがある。また、単繊維繊度が2.0dtexを超えると、炭素繊維束に樹脂組成物が十分に含浸されないことがあり、結果として耐疲労性が低下することがある。
【0081】
本発明において用いられる炭素繊維束は、一つの繊維束中のフィラメント数が2500〜50000本の範囲であることが好ましい。フィラメント数が2500本を下回ると、繊維配列が蛇行しやすく強度低下の原因となり易い。また、フィラメント数が50000本を上回ると、プリプレグ作製時あるいは成形時に樹脂を含浸し難い。フィラメント数は、より好ましくは2800〜25000本の範囲である。
【0082】
本発明によるプリプレグは、前記の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を炭素繊維に含浸したものである。そのプリプレグの炭素繊維重量分率は、好ましくは40〜90重量%であり、より好ましくは50〜80重量%である。炭素繊維重量分率が低すぎると、得られる複合材料の重量が過大となり、比強度および比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点が損なわれることがある。また、炭素繊維重量分率が高すぎると、樹脂組成物の含浸不良が生じ、得られる炭素繊維強化複合材料がボイドの多いものとなり易く、その力学特性が大きく低下することがある。
【0083】
本発明のプリプレグは、粒子に富む層、すなわち、その断面を観察したときに、前記したすべての熱可塑性樹脂粒子が局在して存在している状態が明瞭に確認し得る層(以下、粒子層と略記することがある。)が、プリプレグの表面付近部分に形成されている構造であることが好ましい。
【0084】
このような構造をとることにより、プリプレグを積層してエポキシ樹脂を硬化させて炭素繊維強化複合材料とした場合は、プリプレグ層、すなわち複合材料層の間で樹脂層が形成され易く、それにより、複合材料層相互の接着性や密着性が高められ、得られる炭素繊維強化複合材料に高度の耐衝撃性が発現されるようになる。
【0085】
このような観点から、前記の粒子層は、プリプレグの厚さ100%に対して、プリプレグの表面から、表面を起点として厚さ方向に好ましくは20%までの深さ、より好ましくは10%までの深さの範囲内に存在していることが好ましい。
【0086】
また、粒子層は、片面のみに存在させても良いが、プリプレグに表裏ができるため、注意が必要となる。プリプレグの積層を間違えて、熱可塑性樹脂粒子のある層間と熱可塑性樹脂粒子のない層間が存在すると、衝撃に対して弱い複合材料となる。表裏の区別をなくし、積層を容易にするため、粒子層はプリプレグの表裏両面に存在する方がよい。
【0087】
さらに、粒子層内に存在する熱可塑性樹脂粒子の存在割合は、プリプレグ中、熱可塑性樹脂粒子の全量100重量%に対して好ましくは90〜100重量%であり、より好ましくは95〜100重量%である。
【0088】
この粒子の存在率は、例えば、下記の方法で評価することができる。すなわち、プリプレグを2枚の表面の平滑なポリ四フッ化エチレン樹脂板の間に挟持して密着させ、7日間かけて徐々に硬化温度まで温度を上昇させてゲル化、硬化させて板状のプリプレグ硬化物を作製する。このプリプレグ硬化物の両面に、プリプレグ硬化物の表面から、厚さの20%深さ位置にプリプレグの表面と平行な線を2本引く。次に、プリプレグの表面と上記線との間に存在する粒子の合計面積と、プリプレグの厚みに渡って存在する粒子の合計面積を求め、プリプレグの厚さ100%に対して、プリプレグの表面から20%の深さの範囲に存在する粒子の存在率を計算する。
【0089】
ここで、粒子の合計面積は、断面写真から粒子部分を刳り抜き、その重量から換算して求める。樹脂中に分散する粒子の写真撮影後の判別が困難な場合は、粒子を染色する手段も採用することができる。
【0090】
本発明のプリプレグは、特開平1−26651号公報、特開昭63−170427号公報または特開昭63−170428号公報に開示されているような方法を応用して製造することができる。具体的には、本発明のプリプレグは、炭素繊維とマトリックス樹脂であるエポキシ樹脂からなる一次プリプレグの表面に、熱可塑性樹脂粒子を粒子の形態のまま塗布する方法、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂中にこれらの熱可塑性樹脂粒子を均一に混合した混合物を調整し、この混合物を炭素繊維に含浸させる過程において強化繊維でこれらの熱可塑性樹脂粒子の侵入を遮断せしめて、プリプレグの表面部分に熱可塑性樹脂粒子を局在化させる方法、または予めエポキシ樹脂を炭素繊維に含浸させて一次プリプレグを作製しておき、一次プリプレグ表面これらの熱可塑性樹脂粒子を高濃度で含有する熱硬化性樹脂のフィルムを貼付する方法等で製造することができる。
【0091】
熱可塑性樹脂粒子が、プリプレグの厚み20%の深さの範囲に均一に存在することにより、高い耐衝撃性を兼ね備えた炭素繊維複合材料用のプリプレグが得られる。
【0092】
本発明の炭素繊維強化複合材料は、上述した本発明のプリプレグを所定の形態で積層し、加圧・加熱して樹脂を硬化させる方法を一例として、製造することができる。
【0093】
本発明の炭素繊維強化複合材料は、航空機構造部材、風車の羽根、自動車外板およびICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピュータ用途に好ましく用いられる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例によって、本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物と、それを用いたプリプレグおよび炭素繊維強化複合材料について、より具体的に説明する。実施例で用いた炭素繊維、樹脂原料、プリプレグと炭素繊維強化複合材料の作製方法、衝撃後圧縮強度の評価方法、および引張強度の評価法を次に示す。実施例のプリプレグの作製環境と評価は、特に断りのない限り、温度25℃±2℃、相対湿度50%の雰囲気で行ったものである。
【0095】
<炭素繊維>
・“トレカ”(登録商標)T800G−24K−31E(フィラメント数24,000本、引張強度5.9GPa、引張弾性率290GPa、引張伸度2.0%の炭素繊維、総繊度1.03g/m、東レ(株)製)
<エポキシ樹脂>
・“デナコール”(登録商標)Ex−731(N-グリシジルフタルイミド、ナガセケムテックス(株)製)
・OPP−G(o−フェニルフェニルグリシジルエーテル、三光(株)製)
・“デナコール”(登録商標)Ex−141(フェニルグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製)
・“デナコール”(登録商標)Ex−146(p−ターシャルブチルフェニルグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製)

・“Epon”(登録商標)825(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製)
・ELM434(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、住友化学(株)製)
・“jER”(登録商標)630(トリグリシジル−p−アミノフェノール、ジャパンエポキシレジン(株)
・TETRAD−C(テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、三菱ガス化学(株)製)
<硬化剤>
・“セイカキュア”(登録商標)−S(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、和歌山精化(株)製)
<熱可塑性樹脂>
・“スミカエクセル”(登録商標)PES5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学(株)製)
<熱可塑性樹脂粒子>
・下記の製造方法で得られたエポキシ変性ナイロン粒子A
透明ポリアミド(商品名“グリルアミド”(登録商標)−TR55、エムザベルケ社製)90重量部、エポキシ樹脂(商品名“jER”(登録商標)828、ジャパンエポキシレジン(株)製)7.5重量部および硬化剤(商品名“トーマイド”(登録商標)#296、富士化成工業(株)社製)2.5重量部を、クロロホルム300重量部とメタノール100重量部の混合溶媒中に添加して、均一溶液を得た。次に、得られた均一溶液を塗装用のスプレーガンを用いて霧状にして、良く撹拌して3000重量部のn−ヘキサンの液面に向かって吹き付けて溶質を析出させた。析出した固体を濾別し、n−ヘキサンで良く洗浄した後に、100℃の温度で24時間の真空乾燥を行い、エポキシ変性ナイロン粒子A(平均粒径:12μm)。
・“スミカエクセル”(登録商標)PES5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学(株)製)を凍結粉砕し、分級により粒度調整した、ポリエーテルスルホン粒子B(平均粒径:141μm)。
・ナイロン樹脂粒子C(ナイロン微粒子SP−500、東レ(株)製、平均粒子径:5.9μm)
・ポリイミド粒子D(ポリイミド粒子UBE−R、宇部興産(株)製、平均粒子径:12.3μm)
・“スミカエクセル”(登録商標)PES5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学(株)製)を凍結粉砕、分級により粒度調整した、ポリエーテルスルホン粒子E(平均粒径:206μm)
(1)炭素繊維強化複合材料の0°の定義
JIS K7017(1999)に記載されているとおり、一方向繊維強化複合材料の繊維方向を軸方向とし、軸方向を0°軸と定義したときの軸直交方向を90°と定義する。
【0096】
(2)プリプレグの厚み20%の深さの範囲に存在する粒子の存在率
プリプレグを、2枚の表面の平滑なポリ四フッ化エチレン樹脂板間に挟持して密着させ、7日間かけて徐々に150℃迄温度を上昇させてゲル化し、硬化させて板状の樹脂硬化物を作製する。硬化後、密着面と垂直な方向から切断し、その断面を研磨後、光学顕微鏡で200倍以上に拡大しプリプレグの上下面が視野内に納まるようにして写真撮影する。同様な操作により、断面写真の横方向の5ヵ所でポリ四フッ化エチレン樹脂板間の間隔を測定し、その平均値(n=5)をプリプレグの厚さとした。
【0097】
プリプレグの両面について、プリプレグの表面から、厚さの20%深さ位置にプリプレグの表面と平行な線を2本引く。次に、プリプレグの表面と上記線との間に存在する粒子の合計面積と、プリプレグの厚みに渡って存在する粒子の合計面積を求め、プリプレグの厚さ100%に対して、プリプレグの表面から20%の深さの範囲に存在する粒子の存在率を計算した。ここで、微粒子の合計面積は、断面写真から粒子部分を刳り抜き、その重量から換算して求めた。
【0098】
(3)熱可塑性樹脂粒子の平均粒径の測定
粒子の平均粒径については、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で熱可塑性樹脂粒子を1000倍以上に拡大し写真撮影し、無作為に熱可塑性樹脂粒子を選び、その熱可塑性樹脂粒子の外接する円の直径を粒径とし、その粒径の平均値(n=50)として求めた。
【0099】
(4)炭素繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度測定
一方向プリプレグを、[+45°/0°/−45°/90°]3s構成で、擬似等方的に24プライ積層し、オートクレーブ中で180℃の温度で2時間、0.59MPaの圧力下、昇温速度1.5℃/分で成形して25個の積層体を作製した。これらの各積層体から、縦150mm×横100mm(厚み4.5mm)のサンプルを切り出し、SACMA SRM 2R−94に従い、サンプルの中心部に6.7J/mmの落錘衝撃を与え、衝撃後圧縮強度を求めた。
【0100】
(5)炭素繊維強化複合材料の0°引張強度測定
一方向プリプレグを所定の大きさにカットし、一方向に6枚積層した後、真空バッグを行い、オートクレーブを用いて、温度180℃、圧力6kg/cm、4時間で硬化させ、一方向強化材(炭素繊維強化複合材料)を得た。この一方向強化材を幅12.7mm、長さ230mmでカットし、両端に1.2mm、長さ50mmのガラス繊維強化プラスチック製のタブを接着し試験片を得た。この試験片をインストロンを用いて、クロスヘッドスピード1.27mm/分、測定温度−60℃下で引張試験を行った。
【0101】
(実施例1)
混練装置で、3重量部の“デナコール”(登録商標)Ex−731、60重量部のELM434、および37重量部の“EPON”825を混練した後、これに硬化剤である4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを40重量部混練して、エポキシ樹脂組成物(ベース樹脂組成物)を作製した。
【0102】
表1に示す炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物(表中、数字は重量部を表す。)について、上記のようにして調整した熱可塑性樹脂粒子を除くベース樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて樹脂目付25g/mで離型紙上にコーティングし、樹脂フィルムを作製した。この樹脂フィルムを一方向に引き揃えた炭素繊維(目付190g/m)の両側に重ね合せてヒートロールを用い、温度100℃、1気圧の条件で加熱加圧しながらエポキシ樹脂組成物(ベース樹脂組成物)を炭素繊維に含浸させ、一次プリプレグを得た。次に、最終的な炭素繊維強化複合材料用プリプレグのエポキシ樹脂組成が表1の配合量になるように、熱可塑性樹脂粒子を加えて調整した炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて樹脂目付25g/mで離型紙上にコーティングし、樹脂フィルムを作製した。この樹脂フィルムを、一次プリプレグの両側に重ね合せてヒートロールを用い、温度100℃、1気圧の条件で加熱加圧しながら炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を一次プリプレグに含浸させ、目的のプリプレグを得た。得られたプリプレグを用い、上記の(3)炭素繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度測定と(4)炭素繊維強化複合材料の0°引張強度測定に記載のとおりに実施して炭素繊維強化複合材料を得、衝撃後圧縮強度と低温下での0°引張強度を測定した。結果を表1に示す。
【0103】
(実施例2〜16、20〜24、比較例1〜6)
エポキシ樹脂等の種類と配合量を、表1〜3、5および6に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1〜3、5および6に示す。
【0104】
(実施例17〜19)
表4に示す種類と配合量の各エポキシ樹脂と、熱可塑性樹脂PES5003Pを配合して溶解させ、その後、硬化剤である4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを混練して、エポキシ樹脂組成物(ベース樹脂組成物)を作製した。プリプレグを、実施例1と同様にして作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0105】
(比較例7)
エポキシ樹脂等の種類と配合量を表6に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを作製した。得られたプリプレグを用い、上記の(3)炭素繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度測定と(4)炭素繊維強化複合材料の0°引張強度測定に記載のとおりに実施して炭素繊維強化複合材料を得ようとしたところ、炭素繊維複合材料表面にひび割れが生じた。
【0106】
(比較例8)
エポキシ樹脂等の種類と配合量を表6に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてプリプレグの作製を試みた。しかしながら、樹脂フィルムを作製したところ、スジが多く発生したため、目的のプリプレグを得ることができなかった。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
【表4】

【0111】
【表5】

【0112】
【表6】

【0113】
実施例1〜24と比較例1〜8との対比により、本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を用いた炭素繊維強化複合材料は、高い衝撃後圧縮強度と低温下での引張強度を実現し、高度な耐衝撃性と低温下での力学特性を両立していることが分かる。また、実施例1〜9と、比較例1〜7との対比により、本発明において請求項1の範囲は、特異的に高い耐衝撃性と低温下での力学特性を達成することができ、高度な耐衝撃性と低温下での力学特性を両立できる範囲であることが分かる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂総量に対して3〜40重量%の1官能エポキシ樹脂と、同じく40〜80重量%の3官能以上のエポキシ樹脂を含み、かつ、平均粒径が1〜150μmの熱可塑性樹脂粒子を含むことを特徴とする炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
1官能エポキシ樹脂が、環状の化学構造を有する樹脂であることを特徴とする請求項1記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
1官能エポキシ樹脂が、化学構造中に芳香族環を有する樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
熱可塑性樹脂粒子が、エポキシ樹脂に溶解しない樹脂粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
熱可塑性樹脂粒子の配合量が、炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物総量に対して5〜30重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、エポキシ樹脂に溶解可能な熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を炭素繊維に含浸させてなるプリプレグ。
【請求項8】
請求項7に記載のプリプレグを硬化してなる炭素繊維強化複合材料。


【公開番号】特開2010−59225(P2010−59225A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223265(P2008−223265)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】