炭酸ガス浄化材料、炭酸ガス浄化繊維及び炭酸ガス浄化布、並びに炭酸ガス浄化装置
【課題】二酸化炭素を常温で除去できる炭酸ガス浄化材料及びそれを応用した装置の提供。
【解決手段】水素化金属、水素化チタン又は水素化リチウムである強還元性物質を含み、磁場若しくは電場を印加、又は、励起光を照射した状態で炭酸ガスと反応する炭酸ガス浄化材料。さらに、Fe系材料、Ni系材料及びCo系材料から選択される1以上の材料、又は、フェライトである強磁性体材料、ケイ酸カルシウム又はゼオライトである多孔質セラミックス材料を含有する上記炭酸ガス浄化材料。
【解決手段】水素化金属、水素化チタン又は水素化リチウムである強還元性物質を含み、磁場若しくは電場を印加、又は、励起光を照射した状態で炭酸ガスと反応する炭酸ガス浄化材料。さらに、Fe系材料、Ni系材料及びCo系材料から選択される1以上の材料、又は、フェライトである強磁性体材料、ケイ酸カルシウム又はゼオライトである多孔質セラミックス材料を含有する上記炭酸ガス浄化材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を好適に除去できる炭酸ガス浄化材料に関し、特に部屋中に滞留などしている二酸化炭素を好適に除去し居室環境を改善できる空気浄化装置などへの応用が期待できる炭酸ガス浄化材料及びその応用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅などにおける居室の密閉性が向上した結果、居室内の空気組成がぶれやすくなっている。例えば、居住者の呼吸によって、空気中の酸素が減少したり、二酸化炭素が増加することが問題になる。
【0003】
この問題を解決する目的で、居室における換気回数の強化を義務づけることが行われている。ここで、エアコンや空気清浄機など、居室中の空気環境を整える製品が従来から提供されており、これら製品によって、換気による効果に加えて、空気環境を改善することが求められている。
【0004】
酸素濃度の低下に対する直接的な解決方法としては酸素富化膜を応用した酸素を空気中よりも高濃度に含有する空気を製造して、居室内に供給する装置を搭載したエアコンが上市されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、二酸化炭素濃度を常温にて除去する装置は存在しない。そこで、二酸化炭素を常温にて浄化できる装置に応用する目的で、二酸化炭素と常温で反応し継続的に除去できる炭酸ガス浄化材料及びそれを応用した装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
(1)上記課題を解決する炭酸ガス浄化材料は、強還元性物質を含み、磁場や電場を印加した状態で炭酸ガスと反応することを特徴とする。
【0007】
本発明者らは二酸化炭素を強還元性物質によって化学的に還元・浄化する方法について鋭意検討を行った結果、反応場中に磁場を印加することで反応温度を低下できることを発見し、本発明を完成した。通常、水素化チタンなどの強還元性物質は高温でしか二酸化炭素除去効果を発揮しないが、磁場を印加することで室温で反応を進行させることに成功した。また、本炭酸ガス浄化材料によると、一酸化炭素についても二酸化炭素と同様に還元除去できる。
【0008】
以下、本炭酸ガス浄化材料と炭酸ガスとの間で進行していると推測される反応について説明を行う。主反応としては、2CO2+4TiH2 → 2C+4Ti+4H2Oが進行するものと考えられる。また、反応生成物中にメタンが含有することから、副反応として、2CO2+2TiH2 → C+2TiO2+CH4といった反応が進行することが推測される。
【0009】
ここで、空気中の二酸化炭素濃度は極めて低いので、化学的に還元・除去する方法に用いる強還元性物質の量も比較的少なくすることができる。前記強還元性物質としては水素化金属を採用することが望ましく、特に、常温で安定な物質である物質、例えば水素化チタンを採用することが望ましい。
【0010】
磁場や電場の印加に代えて(加えて)、強還元性物質を励起できる波長の励起光を照射することによっても強還元性物質と炭酸ガスとの反応を進行させることができる。
【0011】
前記強還元性物質は水素化金属であることが望ましい。水素化金属としては水素化チタン又は水素化リチウムが例示される。
【0012】
更に、強磁性体材料を含有することが望ましい。強磁性体材料を含有させることで外部から印加する磁場の効果を増幅することができるからである。また、電場の印加や励起光の照射を行う場合でも、強磁性体材料の存在により磁場が作用することが期待できる。
【0013】
強磁性体材料としてはは、Fe系材料、Ni系材料及びCo系材料から選択される1以上の材料を含有するものが例示される。特にFe系材料であるフェライトが安価で且つ高い効果を発揮できるので望ましい。
【0014】
そして、多孔質セラミクス材料を含有することで、比表面積が増大でき、炭酸ガス浄化作用の増大が期待できる。多孔質セラミクス材料としてはケイ酸カルシウム又はゼオライトが例示できる。また、形態が粉末状乃至は粒子状にすることで比表面積を増加させることができる。
【0015】
前記強磁性体材料を微粉末状とした上で、前記強還元性物質は該強磁性体材料微粉末の周囲を覆うように形成することで、更に効果的に炭酸ガス浄化効果を発揮することができる。その形成方法としては、前記強還元性物質(例えば水素化チタン)を強磁性体材料微粉末表面にスパッタリングにより製膜する方法が挙げられる。
【0016】
磁場を印加する手段としては、前記強磁性体材料を永久磁石とする方法が挙げられる。また、永久磁石を含ませる方法も挙げられる。そして、本発明の炭酸ガス浄化材料は炭酸ガスの他、一酸化炭素及び/又は窒素酸化物の還元浄化に利用することもできる。また、酸化チタンを含有させることで光触媒の機能を付与することが可能になる。光触媒は有機物を酸化する作用を発揮するが、その際に発生する炭酸ガスを分解・浄化することができる。
【0017】
(2−1)上記炭酸ガス浄化材料を用いて、以下に挙げるような炭酸ガス浄化装置を形成することができる。すなわち、(a)上述のいずれかの炭酸ガス浄化材料と、磁場印加手段とを有する炭酸ガス浄化装置、(b)上述のいずれかのの炭酸ガス浄化材料と、電場印加手段とを有する炭酸ガス浄化装置、(c)上述のいずれかのの炭酸ガス浄化材料と、加熱印加手段とを有する炭酸ガス浄化装置である。
【0018】
(a)〜(c)の装置は互いに組み合わせることもできる。例えば、磁場及び電場を同時に印加する装置、磁場若しくは電場を印加しながら加熱する装置、磁場及び電場を印加しながら加熱する装置である。
【0019】
前記電場印加手段としては、前記炭酸ガス浄化材料を介装する1組の電極と、該1組の電極の間に高電圧を印加する電圧印加手段とをもつものが例示できる。また、他の電場印加手段としては、1の電極と、前記炭酸ガス浄化材料と該電極との間で高電圧を印加する電圧印加手段とをもつものが例示できる。
【0020】
(2−2)更に、強磁性体材料を永久磁石とした上述の炭酸ガス浄化材料、又は、永久磁石を含有する上述の炭酸ガス浄化材料を表面に担持するフィルターを有する炭酸ガス浄化装置や、(2−1)にて記載した炭酸ガス浄化装置において、炭酸ガス浄化材料を表面に担持するフィルターを有する装置が挙げられる。
【0021】
その場合に前記フィルターに空気を供給する空気供給手段を有することが望ましい。
【0022】
(3)更に、強磁性体材料を永久磁石とした上述の炭酸ガス浄化材料、又は、永久磁石を含有する上述の炭酸ガス浄化材料を分散させたポリオレフィン基材とからなる繊維状部材が炭酸ガスを浄化させる部材として望ましい。この繊維状部材から製造した織布や不織布である炭酸ガス浄化布はカーテンや壁紙などの形態で応用が期待でき、生活環境における炭酸ガスを効果的に浄化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の炭酸ガス浄化材料について、以下実施形態に基づき詳細に説明を行う。本発明の炭酸ガス浄化材料は常温にて炭酸ガスと反応して炭酸ガスを浄化できる材料である。本炭酸ガス浄化材料は加熱により炭酸ガス浄化能の向上が期待できる。この炭酸ガス浄化材料はエアコンや空気清浄機などと組み合わせることで炭酸ガスを浄化する機能を付与することができる。例えば、住居、オフィス、病院などの建造物用のエアコン等に用いるほか、自動車、電車、飛行機などの乗物用のエアコン等にも用いることができる。また、自動車などの内燃機関や、発電所、ゴミ焼却場などからの排ガス流路に配設することで、排ガス中に含まれる炭酸ガスを浄化することも期待できる。また、そのまま、表面への担持、又は、他の材料に練り込んで用いることで雰囲気中の炭酸ガスの浄化に利用できる。塗料に含有させることで用いることもできる。
【0024】
本実施形態の炭酸ガス浄化材料は、強還元性物質を含み、磁場又は電場を印加した状態で炭酸ガスと反応することを特徴とする。更には磁場又は電場に代えて(加えて)加熱することでも炭酸ガス浄化効果が期待できる。本炭酸ガス浄化材料は比表面積が大きい粉末状乃至は粒子状であることが望ましく、特に微粉末上であることが望ましい。また、比表面積を向上するためにビーズ状、ハニカム状などの形態も採用できる。また、比表面積が大きいセラミクス材料を混合して用いることが望ましい。例えば、二酸化炭素との反応が期待できるケイ酸カルシウムや比表面積が大きいゼオライトを含有することが望ましい。これらセラミクス材料も微粉末状にして含有させることが望ましい。
【0025】
強還元性物質としては特に限定しないが、水素化金属などのような水素化物を採用することが望ましい。水素化物としては、水素化チタン、水素化アルミニウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化カリウム、水素化カルシウム、水素化ナトリウム、水素化バリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化マグネシウム、水素化リチウムなどが挙げられる。特に、水素化金属、更には水素化チタン及び水素化リチウムが好ましい水素化物として例示できる。強還元性物質を含有する量としては特に限定しないが、想定する寿命内において二酸化炭素除去効果を持続させるために必要な量を有することが望ましい。水素化金属を担持させる方法としては特に限定しないが、スパッタリングにて行ったり、粉末状にした後、液体中に分散させて塗布したりすることができる。例えば、後述するフェライトなどの強磁性体材料表面上にスパッタリングする方法が好ましい方法として挙げられる。
【0026】
更に強磁性体材料を含有させることができる。強磁性体材料としては、Fe系材料、Ni系材料及びCo系材料が挙げられる。例えば、金属Fe、金属Ni、金属Coなどやこれらの酸化物などである。望ましい材料としてはフェライトが挙げられる。
【0027】
フェライトは一般的なものが採用できる。具体的には二価遷移金属Mn(II)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、Cu(II)、Zn(II)などの鉄(III)酸塩であり、マグネタイト(Fe3O4;Fe(II)の鉄(III)酸塩)などが挙げられる。
【0028】
フェライトは、これらの二価遷移金属のうち採用した金属の酸化物と酸化鉄(III)とを押し固めてから焼成することなどにより固溶体として生成できる。フェライトを含有させる量は特に限定しないが、強還元性物質100質量部当たり、50質量部〜200質量部程度、更には50質量部〜100質量部程度とすることができ、多い方が望ましいと推測できる。フェライトは、後述するように、磁化して磁石とすることが望ましい。
【0029】
本炭酸ガス浄化材料が炭酸ガスと反応するには磁場や電場の印加が必要である。磁場の印加を行う方法としては、外部に独立した磁石(永久磁石、電磁石など、どのような磁石でも構わない)を設けて、その磁石により生成する磁場中に本炭酸ガス浄化材料を挿入する方法が例示できる。また、磁石を微粉末上にした上で、本炭酸ガス浄化材料中に含有させることもできる。また、本炭酸ガス浄化材料が有するフェライトを磁化して磁石とすることもできる。
【0030】
印加する磁場の強さとしては特に限定しないが、磁束密度が100mT〜2T程度、特に、500mT〜1T程度とすることができる。磁束密度は高い方が望ましい。磁束密度を高くするには強力な磁石を採用したり、対になる極をもつ磁石を近接して配置するなどの方法にて実現できる。
【0031】
電場の印加は高電圧を印加することで行う。高電圧の印加は、対向する1組の電極の間に炭酸ガス浄化材料を介装した上で、電極の間に高電圧を印加する方法や、炭酸ガス浄化材料を一方の電極として、もう1つの電極との間で高電圧を印加する方法が挙げられる。
【0032】
励起光は強還元性物質の種類によって適正な波長が決定できる。
【0033】
本炭酸ガス浄化材料は酸化チタンを含有させることができる。酸化チタンは光触媒能が発揮できるものであれば特に限定しない。酸化チタンは微粉末状にして含有させることが望ましい。
【実施例】
【0034】
本発明の炭酸ガス浄化材料をフィルター表面に担持させた上で、そのフィルターによる炭酸ガス浄化能を調べた。
【0035】
(試験1)
・製造:2種類のフィルターを用意した。双方ともコルゲート加工した紙から形成されており、約23.25セル/cm2(150セル/インチ2)であった。そして、一方の大きさを幅60mm×高さ40mm×奥行き40mmとし、他方を幅80mm×高さ20mm×奥行き80mmとした。
【0036】
そして、平均粒径44μm以下の微粉末とした水素化チタンとフェライトとを調製した上で、それぞれのフィルターについて、水素化チタン及びフェライトの双方を担持させたもの(実施例13及び14;フィルターの表面積1m2あたり、水素化チタンは30g、フェライトは70g)、フェライトのみ担持させたもの(比較例5及び6;フィルターの表面積1m2あたりフェライトを70g)を作成した。そして、フィルターの流路に垂直の方向に磁場(500mT)を永久磁石にて印加した。なお、乱流の発生による撹拌効果を期待して、フィルターの気体を吸引する側に多数の孔を設けた板状部材である遮蔽板を設けた。
・試験:二酸化炭素濃度が4000ppm、残部が空気である内部の雰囲気をもつ一辺が500mmである立方体の箱中にて、それぞれのフィルターに毎分0.5m3の空気が通過して内部循環するようにファンを作動させ、経時的に二酸化炭素濃度を測定した。結果を表1及び図1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1及び図1より明らかなように、実施例13及び14の炭酸ガス浄化材料を適用したフィルターは水素化チタンの添加により大幅な二酸化炭素除去効果を発揮した。水素化チタンを含有しない比較例5及び6のフィルターは空運転よりも僅かに高い二酸化炭素除去効果を発揮できるものの実施例には及ばなかった。
【0039】
以上の結果から、二酸化炭素除去効果には水素化チタン(などの強還元性物質)の存在が大きく寄与していることが明らかになった。また、フィルターのサイズとして、空気が流れる流路の長さが80mmと長い実施例14が流路の長さが40mmの実施例13よりも高い二酸化炭素除去効果を発揮していることが明らかになり、空気を長時間接触させることが望ましいことが分かった。
【0040】
(試験2)
・製造:大きさを幅80mm×高さ20mm×奥行き80mmとしたフィルターを用意した。フィルターはコルゲート加工した紙から形成されており、セル密度が、約12.4セル/cm2(80セル/インチ2)、約23.25セル/cm2(150セル/インチ2)及び約46.5セル/cm2(300セル/インチ2)の3種であった。
【0041】
そして、平均粒径44μm以下の微粉末とした水素化チタンとフェライトとを調製した上で、それぞれのフィルターについて、水素化チタン及びフェライトの双方を担持させたもの(実施例15〜17、比較例7〜9;フィルターの表面積1m2あたり、水素化チタンは30g、フェライトは70g)、水素化チタン及びフェライトを担持させていないもの(比較例10〜13)とを作成した。そして、実施例15〜17、比較例10及び11のフィルターについてはフィルターの流路に垂直の方向に磁場(500mT)を永久磁石にて印加した。なお、乱流の発生による撹拌効果を期待して、フィルターの気体を吸引する側に多数の孔を設けた板状部材である遮蔽板を設けた。
【0042】
二酸化炭素の初期濃度を4000ppmとして、試験1と同様の試験を行い、二酸化炭素除去能力を経時的に測定した。
・結果:結果を表2及び図2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
表2及び図2より明らかなように、強還元性物質(水素化チタン)、フェライト及び磁場がすべて揃った実施例15〜17のフィルターが高い二酸化炭素除去効果を発揮したのに対し、いずれか一つでも欠いた比較例のフィルターは空運転の場合とほとんど変わらない程度の二酸化炭素除去効果を発揮するに留まった。
【0045】
従って、二酸化炭素除去効果を発揮するには、強還元性物質が必要なのはもちろん、常温での反応性を向上させるために磁場の印加を行うことも有効であることが明らかになった。
【0046】
(試験3)
・製造:大きさを幅80mm×高さ20mm×奥行き80mmとしたフィルターを用意した。フィルターはコルゲート加工した紙から形成されており、セル密度は約23.25セル/cm2(150セル/インチ2)であった。
【0047】
そして、平均粒径44μm以下の微粉末とした水素化チタンとフェライトとを調製した上で、それぞれのフィルターについて、水素化チタン及びフェライトの双方を担持させた(実施例18〜26;フィルターの表面積1m2あたり、水素化チタン及びフェライトをそれぞれ10g(実施例18〜20)、20g(実施例21〜23)、そして30g(実施例24〜26)とした)。
【0048】
そして、それぞれのフィルターについて、磁場を500mT(実施例18、21及び24)、800mT(実施例19、22及び25)、そして1000mT(実施例20、23及び26)として印加した。更に、乱流の発生による撹拌効果を期待して、フィルターの気体を吸引する側に多数の孔を設けた板状部材である遮蔽板を設けた。
【0049】
二酸化炭素の初期濃度を4000ppmとして、試験1と同様の試験を行い、二酸化炭素除去能力を経時的に測定した。
・結果:結果を表3及び図3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
表3及び図3から明らかなように、磁場が大きくなるにつれて二酸化炭素除去効果が高くなった。また、炭酸ガス浄化材料の担持量も多い方が好ましいことが明らかになった。
・次いで、一酸化炭素除去効果についても検討した。一酸化炭素の初期濃度を4000ppmとして、試験1と同様の試験を行い、二酸化炭素除去能力を経時的に測定した。
・結果:結果を表4及び図4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
表4及び図4から明らかなように、一酸化炭素についても本フィルターにより除去できることが明らかになった。また、二酸化炭素の除去と同様に、磁場が大きくなるにつれて一酸化炭素除去効果が高くなった。また、炭酸ガス浄化材料の担持量も多い方が好ましいことが明らかになった。
【0054】
(試験4)
・製造:大きさを幅80mm×高さ20mm×奥行き80mmとしたフィルターを用意した。フィルターはコルゲート加工した紙から形成されており、セル密度は約23.25セル/cm2(150セル/インチ2)であった。
【0055】
そして、平均粒径44μm以下の微粉末とした水素化チタン、水素化リチウム、水素化ビスマス、水素化アルミニウム、そしてフェライトを調製した。そして、水素化チタン(実施例27)、水素化リチウム(実施例28)、水素化ビスマス(実施例29)、水素化アルミニウム(実施例30)のうちの1つとフェライトとをそれぞれフィルターの表面積1m2あたり30gずつ担持したフィルターを製造した。
【0056】
そして、それぞれのフィルターについて、磁場を500mT(実施例27−1、28−1、29−1及び30−1)と1000mT(実施例27−2、28−2、29−2及び30−2)として印加した。更に、乱流の発生による撹拌効果を期待して、フィルターの気体を吸引する側に多数の孔を設けた板状部材である遮蔽板を設けた。
【0057】
二酸化炭素の初期濃度を4000ppmとして、試験1と同様の試験を行い、二酸化炭素除去能力を経時的に測定した。
・結果:結果を表5及び図5に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
表5及び図5より明らかなように、いずれの水素化金属も二酸化炭素除去能力を発揮するが、特に水素化チタン及び水素化リチウムの能力が際だって大きく、水素化金属としては両者のうちのいずれか又は双方を採用することが望ましいことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例における二酸化炭素除去率の時間依存性を示した図である。
【図2】実施例における二酸化炭素除去率の時間依存性を示した図である。
【図3】実施例における二酸化炭素除去率の時間依存性を示した図である。
【図4】実施例における一酸化炭素除去率の時間依存性を示した図である。
【図5】実施例における二酸化炭素除去率の時間依存性を示した図である。
【図6】実施例を示した図である。
【図7】実施例を示した図である。
【図8】実施例を示した図である。
【図9】実施例を示した図である。
【図10】実施例を示した図である。
【図11】実施例を示した図である。
【図12】実施例を示した図である。
【図13】実施例を示した図である。
【図14】実施例を示した図である。
【図15】実施例を示した図である。
【図16】実施例を示した図である。
【図17】実施例を示した図である。
【図18】実施例を示した図である。
【図19】実施例を示した図である。
【図20】実施例を示した図である。
【図21】実施例を示した図である。
【図22】実施例を示した図である。
【図23】実施例を示した図である。
【図24】実施例を示した図である。
【図25】実施例を示した図である。
【図26】実施例を示した図である。
【図27】実施例を示した図である。
【図28】実施例を示した図である。
【図29】実施例を示した図である。
【図30】実施例を示した図である。
【図31】実施例を示した図である。
【図32】実施例を示した図である。
【図33】実施例を示した図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を好適に除去できる炭酸ガス浄化材料に関し、特に部屋中に滞留などしている二酸化炭素を好適に除去し居室環境を改善できる空気浄化装置などへの応用が期待できる炭酸ガス浄化材料及びその応用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅などにおける居室の密閉性が向上した結果、居室内の空気組成がぶれやすくなっている。例えば、居住者の呼吸によって、空気中の酸素が減少したり、二酸化炭素が増加することが問題になる。
【0003】
この問題を解決する目的で、居室における換気回数の強化を義務づけることが行われている。ここで、エアコンや空気清浄機など、居室中の空気環境を整える製品が従来から提供されており、これら製品によって、換気による効果に加えて、空気環境を改善することが求められている。
【0004】
酸素濃度の低下に対する直接的な解決方法としては酸素富化膜を応用した酸素を空気中よりも高濃度に含有する空気を製造して、居室内に供給する装置を搭載したエアコンが上市されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、二酸化炭素濃度を常温にて除去する装置は存在しない。そこで、二酸化炭素を常温にて浄化できる装置に応用する目的で、二酸化炭素と常温で反応し継続的に除去できる炭酸ガス浄化材料及びそれを応用した装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
(1)上記課題を解決する炭酸ガス浄化材料は、強還元性物質を含み、磁場や電場を印加した状態で炭酸ガスと反応することを特徴とする。
【0007】
本発明者らは二酸化炭素を強還元性物質によって化学的に還元・浄化する方法について鋭意検討を行った結果、反応場中に磁場を印加することで反応温度を低下できることを発見し、本発明を完成した。通常、水素化チタンなどの強還元性物質は高温でしか二酸化炭素除去効果を発揮しないが、磁場を印加することで室温で反応を進行させることに成功した。また、本炭酸ガス浄化材料によると、一酸化炭素についても二酸化炭素と同様に還元除去できる。
【0008】
以下、本炭酸ガス浄化材料と炭酸ガスとの間で進行していると推測される反応について説明を行う。主反応としては、2CO2+4TiH2 → 2C+4Ti+4H2Oが進行するものと考えられる。また、反応生成物中にメタンが含有することから、副反応として、2CO2+2TiH2 → C+2TiO2+CH4といった反応が進行することが推測される。
【0009】
ここで、空気中の二酸化炭素濃度は極めて低いので、化学的に還元・除去する方法に用いる強還元性物質の量も比較的少なくすることができる。前記強還元性物質としては水素化金属を採用することが望ましく、特に、常温で安定な物質である物質、例えば水素化チタンを採用することが望ましい。
【0010】
磁場や電場の印加に代えて(加えて)、強還元性物質を励起できる波長の励起光を照射することによっても強還元性物質と炭酸ガスとの反応を進行させることができる。
【0011】
前記強還元性物質は水素化金属であることが望ましい。水素化金属としては水素化チタン又は水素化リチウムが例示される。
【0012】
更に、強磁性体材料を含有することが望ましい。強磁性体材料を含有させることで外部から印加する磁場の効果を増幅することができるからである。また、電場の印加や励起光の照射を行う場合でも、強磁性体材料の存在により磁場が作用することが期待できる。
【0013】
強磁性体材料としてはは、Fe系材料、Ni系材料及びCo系材料から選択される1以上の材料を含有するものが例示される。特にFe系材料であるフェライトが安価で且つ高い効果を発揮できるので望ましい。
【0014】
そして、多孔質セラミクス材料を含有することで、比表面積が増大でき、炭酸ガス浄化作用の増大が期待できる。多孔質セラミクス材料としてはケイ酸カルシウム又はゼオライトが例示できる。また、形態が粉末状乃至は粒子状にすることで比表面積を増加させることができる。
【0015】
前記強磁性体材料を微粉末状とした上で、前記強還元性物質は該強磁性体材料微粉末の周囲を覆うように形成することで、更に効果的に炭酸ガス浄化効果を発揮することができる。その形成方法としては、前記強還元性物質(例えば水素化チタン)を強磁性体材料微粉末表面にスパッタリングにより製膜する方法が挙げられる。
【0016】
磁場を印加する手段としては、前記強磁性体材料を永久磁石とする方法が挙げられる。また、永久磁石を含ませる方法も挙げられる。そして、本発明の炭酸ガス浄化材料は炭酸ガスの他、一酸化炭素及び/又は窒素酸化物の還元浄化に利用することもできる。また、酸化チタンを含有させることで光触媒の機能を付与することが可能になる。光触媒は有機物を酸化する作用を発揮するが、その際に発生する炭酸ガスを分解・浄化することができる。
【0017】
(2−1)上記炭酸ガス浄化材料を用いて、以下に挙げるような炭酸ガス浄化装置を形成することができる。すなわち、(a)上述のいずれかの炭酸ガス浄化材料と、磁場印加手段とを有する炭酸ガス浄化装置、(b)上述のいずれかのの炭酸ガス浄化材料と、電場印加手段とを有する炭酸ガス浄化装置、(c)上述のいずれかのの炭酸ガス浄化材料と、加熱印加手段とを有する炭酸ガス浄化装置である。
【0018】
(a)〜(c)の装置は互いに組み合わせることもできる。例えば、磁場及び電場を同時に印加する装置、磁場若しくは電場を印加しながら加熱する装置、磁場及び電場を印加しながら加熱する装置である。
【0019】
前記電場印加手段としては、前記炭酸ガス浄化材料を介装する1組の電極と、該1組の電極の間に高電圧を印加する電圧印加手段とをもつものが例示できる。また、他の電場印加手段としては、1の電極と、前記炭酸ガス浄化材料と該電極との間で高電圧を印加する電圧印加手段とをもつものが例示できる。
【0020】
(2−2)更に、強磁性体材料を永久磁石とした上述の炭酸ガス浄化材料、又は、永久磁石を含有する上述の炭酸ガス浄化材料を表面に担持するフィルターを有する炭酸ガス浄化装置や、(2−1)にて記載した炭酸ガス浄化装置において、炭酸ガス浄化材料を表面に担持するフィルターを有する装置が挙げられる。
【0021】
その場合に前記フィルターに空気を供給する空気供給手段を有することが望ましい。
【0022】
(3)更に、強磁性体材料を永久磁石とした上述の炭酸ガス浄化材料、又は、永久磁石を含有する上述の炭酸ガス浄化材料を分散させたポリオレフィン基材とからなる繊維状部材が炭酸ガスを浄化させる部材として望ましい。この繊維状部材から製造した織布や不織布である炭酸ガス浄化布はカーテンや壁紙などの形態で応用が期待でき、生活環境における炭酸ガスを効果的に浄化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の炭酸ガス浄化材料について、以下実施形態に基づき詳細に説明を行う。本発明の炭酸ガス浄化材料は常温にて炭酸ガスと反応して炭酸ガスを浄化できる材料である。本炭酸ガス浄化材料は加熱により炭酸ガス浄化能の向上が期待できる。この炭酸ガス浄化材料はエアコンや空気清浄機などと組み合わせることで炭酸ガスを浄化する機能を付与することができる。例えば、住居、オフィス、病院などの建造物用のエアコン等に用いるほか、自動車、電車、飛行機などの乗物用のエアコン等にも用いることができる。また、自動車などの内燃機関や、発電所、ゴミ焼却場などからの排ガス流路に配設することで、排ガス中に含まれる炭酸ガスを浄化することも期待できる。また、そのまま、表面への担持、又は、他の材料に練り込んで用いることで雰囲気中の炭酸ガスの浄化に利用できる。塗料に含有させることで用いることもできる。
【0024】
本実施形態の炭酸ガス浄化材料は、強還元性物質を含み、磁場又は電場を印加した状態で炭酸ガスと反応することを特徴とする。更には磁場又は電場に代えて(加えて)加熱することでも炭酸ガス浄化効果が期待できる。本炭酸ガス浄化材料は比表面積が大きい粉末状乃至は粒子状であることが望ましく、特に微粉末上であることが望ましい。また、比表面積を向上するためにビーズ状、ハニカム状などの形態も採用できる。また、比表面積が大きいセラミクス材料を混合して用いることが望ましい。例えば、二酸化炭素との反応が期待できるケイ酸カルシウムや比表面積が大きいゼオライトを含有することが望ましい。これらセラミクス材料も微粉末状にして含有させることが望ましい。
【0025】
強還元性物質としては特に限定しないが、水素化金属などのような水素化物を採用することが望ましい。水素化物としては、水素化チタン、水素化アルミニウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化カリウム、水素化カルシウム、水素化ナトリウム、水素化バリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化マグネシウム、水素化リチウムなどが挙げられる。特に、水素化金属、更には水素化チタン及び水素化リチウムが好ましい水素化物として例示できる。強還元性物質を含有する量としては特に限定しないが、想定する寿命内において二酸化炭素除去効果を持続させるために必要な量を有することが望ましい。水素化金属を担持させる方法としては特に限定しないが、スパッタリングにて行ったり、粉末状にした後、液体中に分散させて塗布したりすることができる。例えば、後述するフェライトなどの強磁性体材料表面上にスパッタリングする方法が好ましい方法として挙げられる。
【0026】
更に強磁性体材料を含有させることができる。強磁性体材料としては、Fe系材料、Ni系材料及びCo系材料が挙げられる。例えば、金属Fe、金属Ni、金属Coなどやこれらの酸化物などである。望ましい材料としてはフェライトが挙げられる。
【0027】
フェライトは一般的なものが採用できる。具体的には二価遷移金属Mn(II)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、Cu(II)、Zn(II)などの鉄(III)酸塩であり、マグネタイト(Fe3O4;Fe(II)の鉄(III)酸塩)などが挙げられる。
【0028】
フェライトは、これらの二価遷移金属のうち採用した金属の酸化物と酸化鉄(III)とを押し固めてから焼成することなどにより固溶体として生成できる。フェライトを含有させる量は特に限定しないが、強還元性物質100質量部当たり、50質量部〜200質量部程度、更には50質量部〜100質量部程度とすることができ、多い方が望ましいと推測できる。フェライトは、後述するように、磁化して磁石とすることが望ましい。
【0029】
本炭酸ガス浄化材料が炭酸ガスと反応するには磁場や電場の印加が必要である。磁場の印加を行う方法としては、外部に独立した磁石(永久磁石、電磁石など、どのような磁石でも構わない)を設けて、その磁石により生成する磁場中に本炭酸ガス浄化材料を挿入する方法が例示できる。また、磁石を微粉末上にした上で、本炭酸ガス浄化材料中に含有させることもできる。また、本炭酸ガス浄化材料が有するフェライトを磁化して磁石とすることもできる。
【0030】
印加する磁場の強さとしては特に限定しないが、磁束密度が100mT〜2T程度、特に、500mT〜1T程度とすることができる。磁束密度は高い方が望ましい。磁束密度を高くするには強力な磁石を採用したり、対になる極をもつ磁石を近接して配置するなどの方法にて実現できる。
【0031】
電場の印加は高電圧を印加することで行う。高電圧の印加は、対向する1組の電極の間に炭酸ガス浄化材料を介装した上で、電極の間に高電圧を印加する方法や、炭酸ガス浄化材料を一方の電極として、もう1つの電極との間で高電圧を印加する方法が挙げられる。
【0032】
励起光は強還元性物質の種類によって適正な波長が決定できる。
【0033】
本炭酸ガス浄化材料は酸化チタンを含有させることができる。酸化チタンは光触媒能が発揮できるものであれば特に限定しない。酸化チタンは微粉末状にして含有させることが望ましい。
【実施例】
【0034】
本発明の炭酸ガス浄化材料をフィルター表面に担持させた上で、そのフィルターによる炭酸ガス浄化能を調べた。
【0035】
(試験1)
・製造:2種類のフィルターを用意した。双方ともコルゲート加工した紙から形成されており、約23.25セル/cm2(150セル/インチ2)であった。そして、一方の大きさを幅60mm×高さ40mm×奥行き40mmとし、他方を幅80mm×高さ20mm×奥行き80mmとした。
【0036】
そして、平均粒径44μm以下の微粉末とした水素化チタンとフェライトとを調製した上で、それぞれのフィルターについて、水素化チタン及びフェライトの双方を担持させたもの(実施例13及び14;フィルターの表面積1m2あたり、水素化チタンは30g、フェライトは70g)、フェライトのみ担持させたもの(比較例5及び6;フィルターの表面積1m2あたりフェライトを70g)を作成した。そして、フィルターの流路に垂直の方向に磁場(500mT)を永久磁石にて印加した。なお、乱流の発生による撹拌効果を期待して、フィルターの気体を吸引する側に多数の孔を設けた板状部材である遮蔽板を設けた。
・試験:二酸化炭素濃度が4000ppm、残部が空気である内部の雰囲気をもつ一辺が500mmである立方体の箱中にて、それぞれのフィルターに毎分0.5m3の空気が通過して内部循環するようにファンを作動させ、経時的に二酸化炭素濃度を測定した。結果を表1及び図1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1及び図1より明らかなように、実施例13及び14の炭酸ガス浄化材料を適用したフィルターは水素化チタンの添加により大幅な二酸化炭素除去効果を発揮した。水素化チタンを含有しない比較例5及び6のフィルターは空運転よりも僅かに高い二酸化炭素除去効果を発揮できるものの実施例には及ばなかった。
【0039】
以上の結果から、二酸化炭素除去効果には水素化チタン(などの強還元性物質)の存在が大きく寄与していることが明らかになった。また、フィルターのサイズとして、空気が流れる流路の長さが80mmと長い実施例14が流路の長さが40mmの実施例13よりも高い二酸化炭素除去効果を発揮していることが明らかになり、空気を長時間接触させることが望ましいことが分かった。
【0040】
(試験2)
・製造:大きさを幅80mm×高さ20mm×奥行き80mmとしたフィルターを用意した。フィルターはコルゲート加工した紙から形成されており、セル密度が、約12.4セル/cm2(80セル/インチ2)、約23.25セル/cm2(150セル/インチ2)及び約46.5セル/cm2(300セル/インチ2)の3種であった。
【0041】
そして、平均粒径44μm以下の微粉末とした水素化チタンとフェライトとを調製した上で、それぞれのフィルターについて、水素化チタン及びフェライトの双方を担持させたもの(実施例15〜17、比較例7〜9;フィルターの表面積1m2あたり、水素化チタンは30g、フェライトは70g)、水素化チタン及びフェライトを担持させていないもの(比較例10〜13)とを作成した。そして、実施例15〜17、比較例10及び11のフィルターについてはフィルターの流路に垂直の方向に磁場(500mT)を永久磁石にて印加した。なお、乱流の発生による撹拌効果を期待して、フィルターの気体を吸引する側に多数の孔を設けた板状部材である遮蔽板を設けた。
【0042】
二酸化炭素の初期濃度を4000ppmとして、試験1と同様の試験を行い、二酸化炭素除去能力を経時的に測定した。
・結果:結果を表2及び図2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
表2及び図2より明らかなように、強還元性物質(水素化チタン)、フェライト及び磁場がすべて揃った実施例15〜17のフィルターが高い二酸化炭素除去効果を発揮したのに対し、いずれか一つでも欠いた比較例のフィルターは空運転の場合とほとんど変わらない程度の二酸化炭素除去効果を発揮するに留まった。
【0045】
従って、二酸化炭素除去効果を発揮するには、強還元性物質が必要なのはもちろん、常温での反応性を向上させるために磁場の印加を行うことも有効であることが明らかになった。
【0046】
(試験3)
・製造:大きさを幅80mm×高さ20mm×奥行き80mmとしたフィルターを用意した。フィルターはコルゲート加工した紙から形成されており、セル密度は約23.25セル/cm2(150セル/インチ2)であった。
【0047】
そして、平均粒径44μm以下の微粉末とした水素化チタンとフェライトとを調製した上で、それぞれのフィルターについて、水素化チタン及びフェライトの双方を担持させた(実施例18〜26;フィルターの表面積1m2あたり、水素化チタン及びフェライトをそれぞれ10g(実施例18〜20)、20g(実施例21〜23)、そして30g(実施例24〜26)とした)。
【0048】
そして、それぞれのフィルターについて、磁場を500mT(実施例18、21及び24)、800mT(実施例19、22及び25)、そして1000mT(実施例20、23及び26)として印加した。更に、乱流の発生による撹拌効果を期待して、フィルターの気体を吸引する側に多数の孔を設けた板状部材である遮蔽板を設けた。
【0049】
二酸化炭素の初期濃度を4000ppmとして、試験1と同様の試験を行い、二酸化炭素除去能力を経時的に測定した。
・結果:結果を表3及び図3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
表3及び図3から明らかなように、磁場が大きくなるにつれて二酸化炭素除去効果が高くなった。また、炭酸ガス浄化材料の担持量も多い方が好ましいことが明らかになった。
・次いで、一酸化炭素除去効果についても検討した。一酸化炭素の初期濃度を4000ppmとして、試験1と同様の試験を行い、二酸化炭素除去能力を経時的に測定した。
・結果:結果を表4及び図4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
表4及び図4から明らかなように、一酸化炭素についても本フィルターにより除去できることが明らかになった。また、二酸化炭素の除去と同様に、磁場が大きくなるにつれて一酸化炭素除去効果が高くなった。また、炭酸ガス浄化材料の担持量も多い方が好ましいことが明らかになった。
【0054】
(試験4)
・製造:大きさを幅80mm×高さ20mm×奥行き80mmとしたフィルターを用意した。フィルターはコルゲート加工した紙から形成されており、セル密度は約23.25セル/cm2(150セル/インチ2)であった。
【0055】
そして、平均粒径44μm以下の微粉末とした水素化チタン、水素化リチウム、水素化ビスマス、水素化アルミニウム、そしてフェライトを調製した。そして、水素化チタン(実施例27)、水素化リチウム(実施例28)、水素化ビスマス(実施例29)、水素化アルミニウム(実施例30)のうちの1つとフェライトとをそれぞれフィルターの表面積1m2あたり30gずつ担持したフィルターを製造した。
【0056】
そして、それぞれのフィルターについて、磁場を500mT(実施例27−1、28−1、29−1及び30−1)と1000mT(実施例27−2、28−2、29−2及び30−2)として印加した。更に、乱流の発生による撹拌効果を期待して、フィルターの気体を吸引する側に多数の孔を設けた板状部材である遮蔽板を設けた。
【0057】
二酸化炭素の初期濃度を4000ppmとして、試験1と同様の試験を行い、二酸化炭素除去能力を経時的に測定した。
・結果:結果を表5及び図5に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
表5及び図5より明らかなように、いずれの水素化金属も二酸化炭素除去能力を発揮するが、特に水素化チタン及び水素化リチウムの能力が際だって大きく、水素化金属としては両者のうちのいずれか又は双方を採用することが望ましいことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例における二酸化炭素除去率の時間依存性を示した図である。
【図2】実施例における二酸化炭素除去率の時間依存性を示した図である。
【図3】実施例における二酸化炭素除去率の時間依存性を示した図である。
【図4】実施例における一酸化炭素除去率の時間依存性を示した図である。
【図5】実施例における二酸化炭素除去率の時間依存性を示した図である。
【図6】実施例を示した図である。
【図7】実施例を示した図である。
【図8】実施例を示した図である。
【図9】実施例を示した図である。
【図10】実施例を示した図である。
【図11】実施例を示した図である。
【図12】実施例を示した図である。
【図13】実施例を示した図である。
【図14】実施例を示した図である。
【図15】実施例を示した図である。
【図16】実施例を示した図である。
【図17】実施例を示した図である。
【図18】実施例を示した図である。
【図19】実施例を示した図である。
【図20】実施例を示した図である。
【図21】実施例を示した図である。
【図22】実施例を示した図である。
【図23】実施例を示した図である。
【図24】実施例を示した図である。
【図25】実施例を示した図である。
【図26】実施例を示した図である。
【図27】実施例を示した図である。
【図28】実施例を示した図である。
【図29】実施例を示した図である。
【図30】実施例を示した図である。
【図31】実施例を示した図である。
【図32】実施例を示した図である。
【図33】実施例を示した図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強還元性物質を含み、磁場若しくは電場を印加、又は、励起光を照射した状態で炭酸ガスと反応することを特徴とする炭酸ガス浄化材料。
【請求項2】
前記強還元性物質は水素化金属である請求項1に記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項3】
前記強還元性物質は水素化チタン又は水素化リチウムである請求項2に記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項4】
更に、強磁性体材料を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項5】
前記強磁性体材料は、Fe系材料、Ni系材料及びCo系材料から選択される1以上の材料を含有する請求項4に記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項6】
前記強磁性体材料はフェライトである請求項5に記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項7】
更に、多孔質セラミクス材料を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項8】
前記多孔質セラミクス材料はケイ酸カルシウム又はゼオライトである請求項7に記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項9】
一酸化炭素及び/又は窒素酸化物が還元浄化できる請求項1〜8のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項10】
形態が粉末状乃至は粒子状である請求項1〜9のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項11】
前記強磁性体材料は微粉末状であり、
前記強還元性物質は該強磁性体材料微粉末の周囲を覆っている請求項4〜10のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項12】
前記強還元性物質は水素化金属であり、前記強還元性物質は強磁性体材料微粉末表面にスパッタリングにより製膜されている請求項11に記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項13】
酸化チタンを含有する請求項1〜12のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項14】
前記強磁性体材料は永久磁石となっている請求項4〜13のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項15】
永久磁石を含む請求項1〜14のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料と、磁場印加手段とを有する炭酸ガス浄化装置。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料と、電場印加手段とを有する炭酸ガス浄化装置。
【請求項18】
前記電場印加手段は、前記炭酸ガス浄化材料を介装する1組の電極と、該1組の電極の間に高電圧を印加する電圧印加手段とをもつ請求項17に記載の炭酸ガス浄化装置。
【請求項19】
前記電場印加手段は、1の電極と、前記炭酸ガス浄化材料と該電極との間で高電圧を印加する電圧印加手段とをもつ請求項17に記載の炭酸ガス浄化装置。
【請求項20】
更に加熱手段を有する請求項16〜19のいずれかに記載の炭酸ガス浄化装置。
【請求項21】
請求項1〜15のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料と、加熱印加手段とを有する炭酸ガス浄化装置。
【請求項22】
請求項14又は15に記載の炭酸ガス浄化材料を表面に担持するフィルターを有する炭酸ガス浄化装置。
【請求項23】
前記炭酸ガス浄化材料を表面に担持するフィルターを有する請求項16〜21のいずれかに記載の炭酸ガス浄化装置。
【請求項24】
前記フィルターに空気を供給する空気供給手段を有する請求項22又は23に記載の炭酸ガス浄化装置。
【請求項25】
微粉末状の請求項14又は15に記載の炭酸ガス浄化材料と、該炭酸ガス浄化材料を分散させたポリオレフィン基材とからなる繊維状部材である炭酸ガス浄化繊維。
【請求項26】
請求項25に記載の炭酸ガス浄化繊維からなる炭酸ガス浄化布。
【請求項1】
強還元性物質を含み、磁場若しくは電場を印加、又は、励起光を照射した状態で炭酸ガスと反応することを特徴とする炭酸ガス浄化材料。
【請求項2】
前記強還元性物質は水素化金属である請求項1に記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項3】
前記強還元性物質は水素化チタン又は水素化リチウムである請求項2に記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項4】
更に、強磁性体材料を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項5】
前記強磁性体材料は、Fe系材料、Ni系材料及びCo系材料から選択される1以上の材料を含有する請求項4に記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項6】
前記強磁性体材料はフェライトである請求項5に記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項7】
更に、多孔質セラミクス材料を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項8】
前記多孔質セラミクス材料はケイ酸カルシウム又はゼオライトである請求項7に記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項9】
一酸化炭素及び/又は窒素酸化物が還元浄化できる請求項1〜8のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項10】
形態が粉末状乃至は粒子状である請求項1〜9のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項11】
前記強磁性体材料は微粉末状であり、
前記強還元性物質は該強磁性体材料微粉末の周囲を覆っている請求項4〜10のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項12】
前記強還元性物質は水素化金属であり、前記強還元性物質は強磁性体材料微粉末表面にスパッタリングにより製膜されている請求項11に記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項13】
酸化チタンを含有する請求項1〜12のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項14】
前記強磁性体材料は永久磁石となっている請求項4〜13のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項15】
永久磁石を含む請求項1〜14のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料と、磁場印加手段とを有する炭酸ガス浄化装置。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料と、電場印加手段とを有する炭酸ガス浄化装置。
【請求項18】
前記電場印加手段は、前記炭酸ガス浄化材料を介装する1組の電極と、該1組の電極の間に高電圧を印加する電圧印加手段とをもつ請求項17に記載の炭酸ガス浄化装置。
【請求項19】
前記電場印加手段は、1の電極と、前記炭酸ガス浄化材料と該電極との間で高電圧を印加する電圧印加手段とをもつ請求項17に記載の炭酸ガス浄化装置。
【請求項20】
更に加熱手段を有する請求項16〜19のいずれかに記載の炭酸ガス浄化装置。
【請求項21】
請求項1〜15のいずれかに記載の炭酸ガス浄化材料と、加熱印加手段とを有する炭酸ガス浄化装置。
【請求項22】
請求項14又は15に記載の炭酸ガス浄化材料を表面に担持するフィルターを有する炭酸ガス浄化装置。
【請求項23】
前記炭酸ガス浄化材料を表面に担持するフィルターを有する請求項16〜21のいずれかに記載の炭酸ガス浄化装置。
【請求項24】
前記フィルターに空気を供給する空気供給手段を有する請求項22又は23に記載の炭酸ガス浄化装置。
【請求項25】
微粉末状の請求項14又は15に記載の炭酸ガス浄化材料と、該炭酸ガス浄化材料を分散させたポリオレフィン基材とからなる繊維状部材である炭酸ガス浄化繊維。
【請求項26】
請求項25に記載の炭酸ガス浄化繊維からなる炭酸ガス浄化布。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2007−222867(P2007−222867A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12061(P2007−12061)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(596087812)株式会社エルブ (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(596087812)株式会社エルブ (15)
【Fターム(参考)】
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