説明

点灯回路

【課題】発光源の一部が断線、或いは破損(焼損)した場合であっても、残余の発光源を使用してDRL又は/およびCLL機能を維持し得る点灯回路、および、点灯中の発光源が断線した際、迅速、且つ、確実に再点灯させることが可能な点灯回路を提供する。
【解決手段】LED等の半導体発光素子を含む第一光源、第一フィラメントを含む第二光源、第二フィラメントを含む第三光を選択的に組み合わせて、第一モードと第二モードの何れか一方の点灯状態を設定する点灯回路であり、第二光源又は第三光源に流れる電流が所定値以下となった場合、第一光源に流れる電流経路を断状態に設定して第一光源を消灯させる自己消灯手段を備える。更に、自己消灯手段をリセットする自己消灯リセット回路を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DRL点灯車両用灯具として好適な点灯回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両運行上における安全性確保のために、昼間においても灯具の一部を点灯するDRL(Daytime Running Light or Lamps)運行が提唱されている。EUでは、EU領域内で運行する車両は、DRL用灯具を車両に装着すること、及び、運行時のDRL実施が義務付けられている。
一方、灯具の部品点数を削減するために、DRL用灯具をクリアランス・ランプ(CLL:Clearance Lamp)と兼用することが行われているが、DRLの最低照度とCLLの最低照度との間に、例えば10倍程度の照度差があるので、照度制御が必要となる。また、省電力化のために発光源としてLED(Light Emitting Diode)を用いるものも出現しているが、複数のLEDのうちの一つでも断線すると、直列接続された当該グループのLEDが全て消灯して、全体としてDRLの最低照度を確保できなくなるため、安全上、ユニット全体を消灯するように規定されている。
従来技術として、LEDを採用し、DRL用灯具をCLL用灯具と兼用したものとして、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−226649公報
【特許文献2】特開2006−114279公報
【特許文献3】特開2005−206074公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のようにDRLとCLLとを兼用する車両灯具において、全ての発光源をLEDで構成する場合は、複数のLEDを直列接続した回路を1つのブロックとして構成し、当該ブロックを複数並列接続して全体の灯具ユニットとして構成している。従って、灯具ユニット内の1つのブロックのLEDの一つでも断線(破損)すると、そのブロックのLED全体が消灯するため、全体としてDRLの最低照度を確保できなくなるため、安全上、ユニット全体を消灯するように構成されている。そのため、ユニットを交換するまでの間、灯具として機能させることができないという不具合があった。
特に、LEDは省電力効果が大きい一方で、LED一つ当たりの発光量が小さいので、必然的に多数のLEDを配列する必要がある。従って、一部のLEDの断線に起因して発光源ユニット全体の機能を停止せざるを得なくなる可能性が高い。
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであって、その目的は、発光源の一部が断線、或いは破損した場合であっても、残余の発光源を使用してDRL又は/及びCLL機能を維持し得る点灯回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る実施態様の点灯回路では、半導体発光素子を含む第一光源、第一フィラメントを含む第二光源、及び第二フィラメントを含む第三光源を点灯させ、少なくとも第一光源、及び第二光源を点灯させる第一モードと、第一光源、及び第三光源を点灯させる第二モードの、何れか一方のモードに第一光源乃至第三光源の点灯状態を設定する点灯回路であり、第二光源、又は第三光源に流れる電流が所定値以下となった場合、第一光源に流れる電流経路を断状態に設定して第一光源を消灯させる自己消灯手段を備える。
この態様による点灯回路は、LED等の半導体発光素子を含む第一光源と、二つのフィラメント又は二つの単一フィラメントを夫々第二、第三光源として点灯させるものであり、これら第一乃至第三光源を選択的に組み合わせて第一モード、又は第二モードとして点灯させると共に、点灯中の光源の断線等による電流の低下を検出したとき、自己消灯手段によって第一光源を自動的に消灯するものである。この態様により、光源の断線を自動的に検出して運転者に報知することができる。
本発明の点灯回路は、上記第一光源に流れる電流の経路が断状態に設定された後、点灯状態が異なるモードに設定された場合、少なくとも第一光源の経路の状態をリセットして接状態に設定する自己消灯リセット手段を含むように構成することもできる。
この実施態様によれば、発光状態切換手段が操作されたとき、迅速、且つ、確実に灯具を他方モードで再点灯することができる。即ち、消灯状態において、運転者が発光状態切換手段を操作することにより、非断線状態の光源を使用した他方のモードに切り替えることができる。従って、光量不足状態での点灯を防止し、且つ、非断線状態のフィラメントを使用した他方モードによる灯具としての機能を維持することができる。
【0006】
本発明の点灯回路において、第一モードはデイタイム・ランニング・ランプに対応し、第二モードはクリアランス・ランプに対応し、第一モードと第二モードに夫々対応して第一光源の発光量を切り替える発光量切替手段を備える。
この態様によれば、発光量切替手段により、第一モードと第二モード夫々においてデイタイムランニングモード(デイタイム・ランニング・ランプ(DRL)を点灯したときの光量に相当するモード)とクリアランスモード(クリアランス・ランプ(CLL)を点灯したときの光量に相当するモード)とに適合するような光量に第一光源の発光量を制御することにより、本発明をDRL/CLL切替機能をもった車両灯具として実現することができる。
本発明の点灯回路において、上記自己消灯手段が、第二光源又は第三光源に流れる電流が所定値以下になった場合、少なくとも第一光源に流れる電流経路を断状態に保持する保持回路を備えるように構成してもよい。
この態様によれば、多くの電気的ノイズが発生する環境であっても安定した光源点灯制御を行う点灯回路を実現することができる。
本発明の点灯回路において、上記自己消灯リセット手段は、第一モード又は第二モードに切替える指示信号を受け、その指示信号を微分する微分回路と、この微分回路出力信号によって自己消灯手段の保持回路の保持電荷を放電させる放電回路と、を含むように構成してもよい。
この態様によれば、比較的簡単な回路構成によって、迅速、且つ、確実に自己消灯回路による断状態を解除して、所要の光源を再点灯することができる。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明によれば、例えば、複数フィラメントバルブ、又は複数の単一フィラメントバルブと、発光ダイオード(LED)とを組み合わせてDRL/CLL光源として使用し、何れかのフィラメントが断線した場合に、他方のフィラメントを利用してDRL又はCLL光源を継続することが可能である。また、自己消灯リセット手段を備えたものにおいては、DRL/CLL光源の切替を迅速、且つ、的確に行うことができる。
また、フィラメントはLEDに比べ寿命が短いため、フィラメントが先に断線する確率が高く、断線した異常状態でDRLまたはCLLを点灯させて走行すると、LEDだけの点灯となり所定の照度に達しない状態となるため、DRL又はCLLによる発光量を「0」として、ドライバーに異常状態であることを知らせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る点灯回路およびその周辺の構成を示す概要ブロック図である。
【図2】図1の一部の具体的な構成例を示す回路図である。
【図3】本発明に係る点灯回路およびその周辺の構成の変形例を示す概要ブロック図である。
【図4】図3の一部の具体的な構成例を示す回路図である。
【図5】図1の一部の変形構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光源点灯回路、及びその周辺の構成を示す概要ブロック図である。この例では、DRL光源、及びCLL光源として、複数フィラメントバルブと、複数の発光ダイオード(LED)とを使用する。
以下の説明で、複数フィラメントバルブとは、バルブ(ガラスチューブ等)内に2つ以上のフィラメントを備えた発光源をいう。また、単一フィラメントバルブとは、バルブ内に1つのフィラメントを備えた発光源をいう。
図1において駆動回路15は、外部接続端子として、DRL点灯用電源を供給するDRL入力端子1、CLL点灯用電源を供給するCLL入力端子2、接地(アース)用のGND入力端子3、DRL用光源(DRLフィラメント)に電力を出力するDRL(+)端子4、CLL用光源(CLLフィラメント)に電力を出力するCLL(+)端子5、LEDに電力を供給するLED(+)端子6及びLED(−)端子7、DRL用光源とCLL用光源からの帰還電流を入力するDRL/CLL(−)端子8を備えている。
発光源としては、複数フィラメントバルブ20と、複数の発光ダイオードを配列したLEDユニット21とが上述した夫々の端子に接続されている。なお、複数フィラメントバルブ20にあっては、DRLに適した発光量のDRLフィラメント20−1と、それより発光量が小さいCLLフィラメント20−2が一つのバルブ内に封入されており、夫々のフィラメントの一端は共にDRL/CLL(−)端子8に接続され、他方端は、電力供給用のDRL(+)端子4とCLL(+)端子5に接続されている。
【0010】
駆動回路15は、LEDユニット21の光量をDRL用とCLL用に夫々切替えるDRL/CLL切替回路30と、LEDユニット21に流れる電流を制御する定電流クランプ回路40と、この定電流クランプ回路40に接続されてLEDユニット21に流れる電流の有無を検出するLED電流検出回路41と、複数フィラメントバルブ20の二つのフィラメント20−1、20−2に流れる電流を断接(オン・オフ)する第一の半導体スイッチFET42と、このFET42に流れる電流の有無を検出するバルブ電流検出回路43と、LED電流検出回路41及びバルブ電流検出回路43の二つの電流検出信号を供給する自己消灯回路(自己消灯手段)50と、を備えている。図1のD1〜D3は、DRL入力電力、CLL入力電力の変化を上記DRL/CLL切替回路30に伝達すると共に、夫々の供給電力の逆流を防止するためのダイオードである。
なお、駆動回路15には、車両搭載のバッテリ(蓄電池)14のプラス極(+)から、キースイッチ13、切替スイッチ10を介してDRL入力端子1とCLL入力端子2に駆動電力(点灯信号)が供給されている(この構成を発光状態切換手段9と称する)。また、キースイッチ13から分岐してイグニッションスイッチ12を介してセルモータ11が接続されている。尚、バッテリ14から発光源への電力の供給方法としては、直結型(特許文献2)や変圧型(特許文献3)が知られているので参照することができる。
【0011】
図1に示した光源点灯回路及びその周辺回路は、以下の様に動作する。
例えば、キースイッチ13をONするとDRL入力端子1に電力が供給され、複数フィラメントバルブ20のDRLフィラメント20−1(第二光源)が点灯し、他方のCLLフィラメント20−2(第三光源)は消灯状態となる。
LEDユニット21(第一光源)には、同様にDLR入力端子1から供給された電力が、LED(+)端子6を経て供給され、DRL点灯に適した光量で発光する。ここでは、DRLフィラメント20−1とLEDユニット21によるDRLの両者を光源としてDRLを行う状態を第一の発光状態、又は、DRLモード(第一モード)と云う。
【0012】
一方、夜間になり、図示を省略したスモールライトやヘッドライト(前照灯)スイッチを操作すると、切換スイッチ10によりDRL機能からCLL機能に切替えられ、駆動回路15のCLL入力端子2に電力が供給され、DRL入力端子1の電力供給は停止する。この状態では、DRLフィラメント20−1の代わりに発光量が小さいCLLフィラメント20−2が点灯し、同時にLEDユニット21の発光量も減少して、車幅ランプとして機能するCLL点灯状態になる。LEDユニット21の発光量の制御は、定電流クランプ回路40の定電流値を変化させることにより行うことができる。ここでは、CLLフィラメント20−2と、減光したLEDユニット21の発光による点灯状態を第二の発光状態、又は、CLLモード(第二モード)と云う。
第一、第二の発光状態は、複数フィラメントバルブ20のDRLフィラメント20−1、CLLフィラメント20−2の両者が正常であれば、運転者のスイッチ操作によって随時切替可能である。
【0013】
今、第一の発光状態(DRLモード)において、例えば、DRLフィラメント20−1が断線した場合を考える。
図1において、DRLフィラメント20−1が断線すると、そこに流れていた電流が停止するので、FET42と接地間に挿入されたバルブ電流検出回路43の出力から「電流なし」を示す信号45が自己消灯回路50に供給される。自己消灯回路50は、この信号45を受けると、信号46によりバルブ電流断接手段であるFET42のゲート電圧を制御してFET42をオフ状態(遮断状態)にすると共に、信号47により電流クランプ回路40に含まれるLED電流断接手段をオフ状態(遮断状態)にしてLEDユニット21によるDRL発光も停止する。
この状態において、DRL機能が停止したことに気付いた運転者が、不図示のライトスイッチ等を操作して前照灯(ヘッドライト)への切替操作、或いは、CLLへの切替スイッチ10をCLL側に切り替える操作を行うと、駆動回路15のCLL入力端子2へ電力が供給される。
CLL入力端子2に供給された電力(入力信号)がDRL/CLL切替回路30に供給されると、複数フィラメントバルブ20の他方のCLLフィラメント20−2が非断線状態であれば、CLL点灯モードに切替える操作によって所定時間後にCLLフィラメント20−2に電流が流れ、二つのFET42、FET44は共に接(オン)状態となるので、LEDユニット20とCLLフィラメント20−2が共に点灯する。
【0014】
この実施形態では以上説明したように、複数フィラメントバルブ20とLEDユニット21との組み合わせによってDRL用灯具とCLL用灯具を兼用させ、フィラメントの一方が断線した場合に他方の非断線フィラメントを使用した点灯を行うように構成したものである。従って、従来のように全てをLEDのみで構成する場合の問題であった、何れか一つでもLEDが断線した場合には発光ユニットが使用不能になるといった不具合を解消することができる。
更に、自己消灯回路50を備えたので、DRL光源の一部(DRLフィラメント20−1による発光)が停止した状態のまま、規定値に満たない照度でのDRL運用を防止することができる。なお、フィラメントが断線してDRL/CLLの両者が消灯したことを運転者に報知するために、運転席のパネルに、液晶表示器やLED表示器を設けても良い。
尚、LEDユニット21中のLEDが断線する可能性が考えられるが、その場合に備えて、LED発光ユニット中に複数の独立したLED発光回路を備え、LEDが断線した場合、それを含むLED回路のみを消灯させて、残りのLED回路とダブルフィラメントとにより、DRL/CLLとしての最低発光量を維持できるようにすることも考えられる。或いは、LEDユニット21全体が発光停止した場合であっても、複数フィラメントバルブにより最低発光量以上となるように構成することも可能である。その場合、LEDユニットやLED回路の交換を促すために、LEDが断線した旨を運転者に知らせる報知手段を備えることが望ましい。
【0015】
図2は、図1に示した本発明の光源点灯回路の一部を示す図で、自己消灯回路50の具体的な回路構成例、及びその周辺回路を示すものである。なお、図1とは完全に一致するものではないが、同一又は類似の機能ブロックについては同一の符号を付し、図1の説明を参照することとして重複する説明は省略する。
図2において、符号50は自己消灯回路であって、Tr1、Tr2、Tr3はトランジスタ、R1乃至R7、及びRは抵抗、C1、C2はコンデンサである。
このうち第一のトランジスタTr1はNPN型で、エミッタ(e)を接地し、コレクタ(c)は二つの抵抗R1、R2の直列抵抗回路を介してVcc電源に接続されている。更に、このトランジスタTr1のベース(b)と接地間には、抵抗R3と、抵抗R4及びコンデンサC1の直列回路が接続されている。
第二のトランジスタTr2はPNP型で、上記第一のトランジスタTr1にベース電流を供給するものであり、エミッタ(e)をVccに接続し、コレクタ(c)は抵抗R5を介して上記コンデンサC1と抵抗R4との結合点に接続すると共に、ベース(b)は上記二つの抵抗R1、R2の結合点に接続されている。
【0016】
上記コンデンサC1とVccとの間に、PNP型の第三のトランジスタTr3のエミッタ・コレクタが抵抗R6を介して直列に接続されている。第三のトランジスタTr3のエミッタ・ベース間のコンデンサC2は、パルス性ノイズによる誤動作防止用、ベース・エミッタ間の抵抗はバイアス抵抗であり、このトランジスタTr3のベースには、電流調整用抵抗R7を介して、電流検出回路41、43から出力される電流検出信号が供給される。
この電流検出信号は、上述したように、複数フィラメントバルブ20のフィラメント電流の有無、及び、LEDユニット21に流れる電流の有無を示すもので、この例では、電流が流れない場合に電流が所定値以下と見なし、Lo信号を出力する。
【0017】
また、図示したように、複数フィラメントバルブ20のフィラメントの通電ルート中には、FET42と電流検出回路43が挿入され、更に、LEDユニット21の通電ルート中にFET44と電流検出回路41が直列に接続されている。この例ではFET42、FET44はNチャネル型を使用しているので、夫々のFETのゲート(g)とソース(s)間の電圧(VGS)が所定値以上のときドレイン(d)とソース(s)間が導通してオン状態となる。つまり、FETのゲート(g)とソース(s)間の電圧(VGS)が所定値以下のときドレイン(d)とソース(s)間がオフ状態となって、LEDユニット21と複数フィラメントバルブ20の電流は遮断される。
【0018】
このように構成した駆動回路15の動作は、図1における説明と同様であるので、重複する説明は省略し、自己消灯回路50の動作を中心に説明する。
複数フィラメントバルブ20のDRLフィラメント20−1と、LED21とに通電し、DRLモードでの点灯状態(第一の発光状態)であるときは、FET42及びFET44は共に導通状態であり、そのソース(s)と接地間に挿入した電流検出回路41、43からは「電流あり」を示す信号(抵抗Rの両端に発生する高電位信号)が自己消灯回路50の第三のトランジスタTr3のベースに供給されている。
この状態では、PNP型トランジスタTr3はベース電流が流れないのでオフ状態であり、エミッタに印加されているVcc電圧はコンデンサC1に印加されない。更に、第一のトランジスタTr1が導通しない状態では第二のトランジスタTr2もオフ状態である。従って、第一のトランジスタTr1はベース電流が流れないのでオフ状態であり、二つのFET42、FET44は共に導通状態を保ち、DRLモードでの点灯が継続される。
【0019】
この状態において、ダブルフィラメント20のうち点灯中のDRLフィラメント20−1が断線すると、電流検出回路43から出力される電流検出信号が低電位(Lo)になる。その結果、第三のトランジスタTr3のベース電流が流れるので、エミッタ・コレクタ間がオン(導通)し、エミッタのVcc電圧がコンデンサC1にチャージされると第一のトランジスタTr1にベース電流が流れるので、第一のトランジスタTr1のコレクタ・エミッタ間が導通すると共に、第二のトランジスタTr2も導通し、そのエミッタ・コレクタを介してVcc電圧がコンデンサC1に供給される。
この結果、複数フィラメントバルブ20とLEDユニット21夫々に接続された二つのFET42、FET44は共に断(オフ)状態となるので、LEDユニット21も消灯した状態となる。
【0020】
この状態において、DRL機能が停止したことに気付いた運転者が、不図示のライトスイッチ等を操作して前照灯(ヘッドライト)への切替操作、或いは、CLLへの切替スイッチ10の操作を行うと、駆動回路15のCLL入力端子2へ電力が供給される。
複数フィラメントバルブ20の他方のCLLフィラメント20−2が非断線状態であれば、CLL点灯モードに切替えた操作によってCLLフィラメント20−2に電流が流れ、自己消灯回路50の第三のトランジスタTr3のベースに供給される「断線時Lo信号」の電位が高電位に変化する。その結果、第三のトランジスタTr3がオフし、コンデンサC1と抵抗R4及びR3の時定数で決定される時間後にコンデンサC1の電荷が放電されて、第一のトランジスタTr1のベース(及びコンデンサC1)に印加されていたVcc電圧の供給が停止するので、二つのFET42、FET44は共に接(オン)状態となり、LEDユニット21とCLLフィラメント20−2が共に点灯する。
【0021】
この実施形態では、比較的簡単な回路によって、自己消灯回路50を実現できるので、コスト低減を図ることができる。更に、この回路に示すように、PNPトランジスタ(第二のトランジスタTr2)とNPNトランジスタ(第一のトランジスタTr1)を組み合わせることによって、トランジスタのオン・オフ動作を安定したものとすることができる。特に、車両等では、エンジンや電動モータ等から相当量の電気的ノイズが発生する上、バッテリ電圧の変動も大きいので、スイッチング動作の安定化は不可欠である。この回路における第二のトランジスタ(Tr2)、又は、第一、第二のトランジスタ両者を組み合わせた回路を、「断状態保持回路」とみなすことができる。
なお、図2に示した回路の場合、自己消灯回路50のスイッチング素子として構成する第一のトランジスタTr1のベースに所要容量のコンデンサC1が接続されているので、トランジスタTr1をオフして再点灯するためには、コンデンサC1の電荷を放電させて、ベース電位を低下させる必要がある。そのための操作としては、光源点灯回路の電源を一旦断状態にした後、再び電源を投入すればよいが、コンデンサC1の放電ルートに電流調整用のバイアス抵抗R3、R4を含んでいるので、時定数に応じた遅延を伴うことが考えられる。コンデンサC1の電荷が完全に放電しない状態では、電源断後、再投入しても第一のトランジスタTr1がオフせず、再点灯し難い場合が考えられる。
そこで、その遅延を排除して、迅速、且つ、確実に灯具への再点灯を行う手段として、例えば、図3、図4に示すような自己消灯リセット回路を備えてもよい。
【0022】
図3は、本発明に係る光源点灯回路の変形例を示す概要ブロック図である。図3に示す回路が、上述した図1、図2と相違する点は、自己消灯リセット回路60を付加した点である。
この例に示す自己消灯リセット回路60は、駆動回路15のDRL入力端子1とCLL入力端子2の夫々から信号を供給し、自己消灯リセット回路60のリセット制御端子を自己消灯回路50の所要部と接続している。自己消灯リセット回路60は、DRL入力端子1、又は、CLL入力端子2の何れかに電力が(電圧)が印加された際、その変化を検出して、リセット信号Resetを発生し、自己消灯回路50に供給する。この信号によって自己消灯回路50の断状態保持機能を解除し、図1、図2に示したFET42、FET44をオンして、夫々に接続された発光源を再点灯させるように機能する。
このための自己消灯リセット回路60の回路構成としては、例えば、図4に示すように構成することができる。
【0023】
図4は、図2に示した回路に、具体的な自己消灯リセット回路60を付加したものである。自己消灯リセット回路60以外の構成は、図1、図2記載のものと同一であるので、重複する部分の説明は省略し、新たに付加した自己消灯リセット回路の構成と動作を中心に説明する。
図4において、60が新たに付加した自己消灯リセット回路であり、自己消灯回路50のコンデンサC1にチャージされた電荷を、第4のトランジスタTr4のコレクタ・エミッタのスイッチング動作により放電(デスチャージ)させるように構成したものである。
この例のように第4のトランジスタTr4としてNPN型トランジスタを用いる場合は、駆動回路15に供給されるDRL入力信号及びCLL入力信号夫々を、逆流防止用ダイオードD4、D5とコンデンサC3、C4を介してトランジスタTr4のベースに供給すると共に、ダイオードとコンデンサの接続点を所要値の抵抗R8、R9で接地して微分回路を形成する。
【0024】
このように構成した自己消灯リセット回路60は、DRL入力信号、又は、CLL入力信号が印加されると、その電圧の立ち上がり時に、コンデンサCと抵抗Rからなる微分回路によりパルス的な高電位信号が発生する。その結果、この高電位信号が第4のトランジスタTr4をオン(導通)させるので、自己消灯回路50のコンデンサC1にチャージされた電荷が瞬間的に放電され、速やかにトランジスタTr1がオフ状態になる。このようなリセット信号は、DRL入力端子、又は、CLL入力端子の何れかに電力を投入する毎に発生するので、自己消灯回路のコンデンサC1の電荷を放電し、確実に自己消灯回路の消灯機能を解除することができる。
従って、図3、図4に示す光源点灯回路全体の動作としても、図1、図2に関連して説明したように、複数フィラメントバルブ20のDRLフィラメント20−1とLEDユニット21によるDRLの両者を光源としてDRLを行う第一の発光状態と、複数フィラメントバルブ20のCLLフィラメント20−2と、減光したLEDユニット21による第二の発光状態とを、運転者のスイッチ操作によりDRL入力端子、又は、CLL入力端子の何れかに電力を投入することによって随時切替えて点灯させることが可能である。
また、第一の発光状態(DRLモード)において、DRLフィラメント20−1が断線した場合の動作については、既に説明したように、自己消灯回路50によって、LEDユニット21によるDRL発光も停止し、運転者の所要スイッチの操作により、駆動回路15のCLL入力端子2へ電力が供給されると、直ちに、自己消灯回路50のコンデンサC1の電荷が放電されて速やかに再点灯することができる。
【0025】
以上説明したようにこの実施例では、自己消灯リセット回路を備え、自己消灯回路50にリセット信号Resetを出力することによって、自己消灯機能保持状態が解除され、迅速、且つ、確実に非切断状態のCLLフィラメント20−2とLED21の両者によるCLLとしての再点灯処理が可能となる。
以上、本発明の光源点灯回路について幾つか実施態様例を説明したが、本発明はこれらに限定する必要は無く種々変形が可能である。
例えば、以上の説明では、一つのバルブ中に二つのフィラメントを封入した複数フィラメントバルブを使用する場合を示したが、この例に限らず、図5に示すように、一つのフィラメントを封入した単一フィラメントバルブを複数用いたものであっても構わない。
即ち、図5に示すものでは、DRLフィラメントとCLLフィラメントとして夫々、単一フィラメントバルブ70−1と、70−2を使用したものである。なお、バルブ電流断接回路、バルブ電流検出回路については、図1乃至図4に示したように、一組の回路を両者兼用としてもよいが、図5に示すように、夫々独立した回路として備えても構わない。この回路によっても、既に説明したものと同様に機能させることができる。
更に、図示を省略するが、フィラメントの数は二つに限らず、それ以上であっても構わないし、フィラメント方式のバルブ以外にも、キセノンランプやナトリウムランプ等のアーク放電ランプであっても構わない。
【0026】
また、各回路の構成に際しては、PNP型、NPN型トランジスタの組み合わせ方についても種々のものが考えられるし、電界効果トランジスタ(FET)に置き換えたもの、あるいは両者を混在させた回路であってもよい。
更に、第一又は第二の発光状態において点灯中の何れかの発光源が断線した場合、自動的に他方の発光状態に切替えるように構成することも可能である。その際、運転者に第一/第二何れの発光状態であるかを報知する表示手段を備えておくことが望ましい。
【符号の説明】
【0027】
1 DRL入力端子、2 CLL入力端子、3 アース(GND)入力端子、4 DRL(+)端子、5 CLL(+)端子、6 LED(+)端子、7 LED(−)端子、8 DRL/CLL(−)端子、9 発光状態切換手段、10 切換スイッチ、11 セルモータ、12 イグニッションスイッチ、13 キースイッチ、14 バッテリ、15 駆動回路、20 複数フィラメントバルブ、20−1 DRLフィラメント、20−2 CLLフィラメント、21 LEDユニット、30 DLR/ CLL切替回路、40 電流クランプ回路、41 LED電流検出回路、42 FET、43 バルブ電流検出回路、44 FET、45、46、47 信号、50 自己消灯回路、60 自己消灯リセット回路、70−1 DRLバルブ(DRLフィラメント)、70−2 CLLバルブ(CLLフィラメント)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子を含む第一光源、第一フィラメントを含む第二光源、及び第二フィラメントを含む第三光源を点灯させ、
少なくとも前記第一光源、及び前記第二光源を点灯させる第一モードと、前記第一光源、及び前記第三光源を点灯させる第二モードの、何れか一方のモードに前記第一光源乃至前記第三光源の点灯状態を設定する点灯回路であり、
前記第二光源、又は前記第三光源に流れる電流が所定値以下となった場合、前記第一光源に流れる電流経路を断状態に設定して該第一光源を消灯させる自己消灯手段を備えることを特徴とする点灯回路。
【請求項2】
前記第一光源に流れる電流の経路が断状態に設定された後、前記点灯状態が異なるモードに設定された場合、前記電流経路の状態をリセットして接状態に設定する自己消灯リセット手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の点灯回路。
【請求項3】
前記第一モードはデイタイム・ランニング・ランプに対応し、前記第二モードはクリアランス・ランプに対応し、前記第一モードと前記第二モードに夫々対応して前記第一光源の発光量を切り替える発光量切替手段を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の点灯回路。
【請求項4】
前記自己消灯手段は、前記第二光源、又は前記第三光源に流れる電流が所定値以下になった場合、前記第一光源に流れる電流経路を断状態に保持する保持回路を含むことを特徴とする請求項1乃至3何れか一項に記載の点灯回路。
【請求項5】
前記自己消灯リセット手段は、前記第一モード、又は前記第二モードに切替える指示信号を受け、該指示信号を微分する微分回路と、前記自己消灯手段の前記保持回路の保持電荷を放電する放電回路と、を含んでいることを特徴とする請求項2乃至4何れか一項に記載の点灯回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−14262(P2013−14262A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149407(P2011−149407)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】