説明

点灯装置

【課題】ハロゲンランプを高効率で点灯制御すると共に十分な調光範囲を得る。
【解決手段】ハロゲンランプの点灯装置において、ハロゲンランプが2次巻線に接続されるトランスと、トランスの1次巻線及びコンデンサによって構成される共振回路をスイッチング素子によって駆動する全波型電流共振回路とを具備する。全波型電流共振回路は、トランスの1次巻線とコンデンサとに基づく共振周波数で共振する。この共振によって、トランスの2次巻線に交流電圧を発生させる。この交流電圧がハロゲンランプに供給されて、ハロゲンランプは高効率で駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲンランプの点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明装置として、ハロゲンランプが採用されることがある。ハロゲンランプは、高い演色性を有し、寿命末期まで初期の光束・色温度を維持するという特性から、種々の照明装置、例えば、顕微鏡用の光源装置に利用されている。
【0003】
ハロゲンランプの点灯装置としては、特許文献1等に開示されているように、スイッチング電源を採用して定電圧制御を行うものが考えられる。スイッチング電源は、入力電圧を整流平滑化するための整流回路及び平滑コンデンサを有すると共に、スイッチングトランジスタ及びトランスによって構成されるフォワード/フライバックコンバータを有する。スイッチングトランジスタによって、入力された直流電圧を高周波の交流に変換してトランスに供給し、トランスの2次側において整流平滑回路によって直流電圧に変換する。スイッチング電源は、スイッチングトランジスタのオンデューティを制御することで、安定的な直流電圧を得るようになっている。
【特許文献1】特開平8−98393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スイッチング電源はターンオン、ターンオフ時のスイッチングロスが生じることから、効率が悪いという欠点がある。
【0005】
本発明は、全波型電流共振回路を用いることで高効率の点灯制御を可能にすることができる点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る点灯装置は、ハロゲンランプの点灯装置において、前記ハロゲンランプが2次巻線に接続されるトランスと、前記トランスの1次巻線及びコンデンサによって構成される共振回路をスイッチング素子によって駆動する全波型電流共振回路とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、全波型電流共振回路を用いることで高効率の点灯制御を可能にすることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る点灯装置を示す回路図である。
【0009】
電源端子1と基準電位点との間には平滑用のコンデンサC1が接続されている。コンデンサC1の両端電圧が、全波型電流共振回路2の電源電圧となる。また、コンデンサC1の両端には、抵抗R1,R2及びツェナーダイオードD1の直列回路が接続されている。抵抗R1,R2の接続点と基準電位点との間には平滑用のコンデンサC2が接続される。また、抵抗R1,R2の接続点はトランジスタTR1のエミッタコレクタ路及び抵抗R3を介して制御部3の電源端Vccに接続される。トランジスタTR1のベースはツェナーダイオードD1のカソードに接続される。制御部3の電源端Vccは平滑用のコンデンサC3を介して基準電位点に接続される。
【0010】
コンデンサC1の両端電圧は抵抗R1,R2によって分圧され、抵抗R1,R2の接続点には、コンデンサC1の端子電圧、ツェナーダイオードD1のツェナー電圧及び抵抗R1,R2の抵抗値に基づく電圧が発生する。この電圧に基づいてトランジスタTR1のコレクタに発生する電圧が、コンデンサC3によって平滑されて、制御部3の電源電圧となる。
【0011】
コンデンサC1の正極性端子には、ハイサイドFETトランジスタであるトランジスタQ1のドレインが接続される。トランジスタQ1のソースはローサイドFETトランジスタであるトランジスタQ2のドレインに接続され、トランジスタQ2のソースは基準電位点に接続されている。トランジスタQ1,Q2のゲートには制御部3から夫々駆動信号O1,O2が供給される。
【0012】
駆動信号O1,O2によって、トランジスタQ1,Q2は交互にオン,オフする。即ち、トランジスタQ1がオンの場合にはトランジスタQ2はオフであり、トランジスタQ2がオンの場合にはトランジスタQ1はオフである。
【0013】
トランジスタQ1のソースとトランジスタQ2のドレインとの接続点は、トランスT1の1次巻線L1及びコンデンサC4を介して基準電位点に接続される。トランスT1の2次巻線L2にはハロゲンランプ4が接続される。トランスT1の1次巻線L1に含まれるリーケージインダクタとコンデンサC4とによって共振回路が構成される。この共振回路の共振周波数は、リーケージインダクタのインダクタンスとコンデンサC4の容量とで決まる。共振回路の共振によって、トランスT2の2次巻線L2に交流電圧が発生する。この交流電圧がハロゲンランプ4に供給されるようになっている。
【0014】
定電圧制御を行うために、トランスT1には電圧検出用の補助巻線L3が設けられる。この補助巻線L3の正極性側は、抵抗R6、ダイオードD2、抵抗R4,R5の直列回路を介して基準電位点に接続される。ダイオードD2のカソードはコンデンサC5を介して基準電位点に接続される。
【0015】
補助巻線L3に発生した電圧は、抵抗R6,ダイオードD2及びコンデンサC5によって直流電圧として取り出される。この直流電圧は抵抗R4,R5によって分圧されて、フィードバック電圧として制御部3のフィードバック(F/B)端に供給される。制御部3はフィードバック電圧と基準電圧とを比較することで、フィードバック電圧が基準電圧に一致するように、駆動信号O1,O2の周波数を変更する。駆動信号O1,O2の周波数を低くすると、共振電流が増大して2次巻線L2に現れる電圧は高くなり、駆動信号O1,O2の周波数を高くすると、共振電流が減少して2次巻線L2に現れる電圧は低くなる。制御部3は、フィードバック電圧が基準電圧よりも高くなろうとすると駆動信号O1,O2の周波数を高くし、フィードバック電圧が基準電圧よりも低くなろうとすると駆動信号O1,O2の周波数を低くする。これにより、定電圧制御が可能である。
【0016】
次に、このように構成された実施の形態の作用について図2乃至図4を参照して説明する。
【0017】
制御部3には、コンデンサC3の端子電圧が電源電圧として供給される。制御部3はトランジスタQ1,Q2を交互にオン,オフさせるための駆動信号O1,O2を発生してトランジスタQ1,Q2のゲートに供給する。
【0018】
駆動信号O1,O2によってハイサイドのトランジスタQ1がオンの場合には、トランジスタQ2はオフである。この場合には、コンデンサC1の正極性端子からトランジスタQ1のドレインソース路、トランスT1の1次巻線L1、コンデンサC4を介して基準電位点に電流が流れてコンデンサC4が充電される。駆動信号O1,O2によってローサイドのトランジスタQ2がオンの場合には、トランジスタQ1はオフである。この場合には、コンデンサC4の正極性端子からトランスT1の1次巻線L1、トランジスタQ2のドレインソース路を介して基準電位点に電流が流れる。こうして、リーケージインダクタとコンデンサC4による共振回路が共振する。
【0019】
図2は横軸に時間をとり縦軸に電流値又は電圧値をとって、トランジスタQ1のドレインソース間電圧Vds及びドレイン電流Idを示す波形図である。
【0020】
トランジスタQ1は駆動信号O1に基づいてオン,オフし、図2に示すように、ドレインソース間電圧Vdsは矩形状に変化する。一方、ドレイン電流Idは、共振回路の共振電流と同様に正弦波状である。トランジスタQ1のドレイン電流Idは、トランジスタQ1のオン期間にのみ流れるので、正弦波状の共振電流の一部の期間の電流波形に一致する。なお、トランジスタQ2についても、トランジスタQ1のドレインソース間電圧Vds及びドレイン電流Idと同様の電圧、電流波形となる。
【0021】
共振回路の共振によって、トランスT1の1次巻線L1と2次巻線L2との巻数比に応じた電圧が2次巻線L2に現れる。この電圧がハロゲンランプ4に供給されて、ハロゲンランプ4が点灯する。
【0022】
図3は横軸に時間をとり縦軸に電圧値又は電流値をとって、ランプ電圧及びランプ電流を示す波形図である。図3に示すように、ランプ電圧及びランプ電流は略正弦波状である。図3の例では、実効値で約17.4Vのランプ電圧が得られている。また、ランプ電流の実効値は約6.9Aである。
【0023】
図4は横軸に出力電力をとり縦軸に効率をとって、本実施の形態における効率の変化を示すグラフである。図4は負荷抵抗が1.44Ω、入力が370Vの場合に、出力を10Wから100Wに変化させて効率を求めたものである。
【0024】
図4に示すように、本実施の形態では、極めて高い効率が得られることが分かる。特に、出力30W以上では、約96%の効率が得られている。
【0025】
このように本実施の形態においては、全波型電流共振回路を用いてハロゲンランプの点灯電圧を発生しており、極めて高い効率での点灯制御が可能である。
【0026】
図5は本発明の第2の実施の形態を示す回路図である。図5において図1と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
第1の実施の形態においては、補助巻線L3によって検出した電圧に基づくフィードバック制御によって、出力の定電圧制御を行っている。更に、制御部3のF/B端に帰還する電圧を制御することで、調光を可能にすることが考えられる。しかしながら、トランスT1の2次巻線L2に現れる電圧は、コンデンサC1の端子電圧及び巻線L1,L2の巻数比が支配的であり、ランプ電圧を十分に変化させることはできない。
【0028】
本実施の形態は、ランプ電圧を十分に変化させることを可能にして、ハロゲンランプ4の調光範囲を拡大するようにしたものである。
【0029】
本実施の形態はトランスT1の2次巻線L2の一端とハロゲンランプ4の一端との間にチョークコイルL4を接続し、2次巻線L2の他端とハロゲンランプ4の他端との間にチョークコイルL5を接続すると共に、抵抗R5に代えて可変抵抗VR1を採用した点が図1の実施の形態と異なる。
【0030】
次に、このように構成された実施の形態の動作について図6及び図7を参照して説明する。図6及び図7は横軸に時間をとり縦軸に電圧値又は電流値をとって、ランプ電圧及びランプ電流を示す波形図である。図6は出力100W時の波形であり、図7は出力10W時の波形である。
【0031】
いま、調光率を比較的高くするものとする。この場合には、可変抵抗VR1の抵抗値を小さくする。そうすると、抵抗R4と可変抵抗VR1との接続点に現れるフィードバック電圧が比較的小さな値となる。制御部3は、フィードバック電圧と基準電圧とを一致させるように駆動信号O1,O2の周波数を変化させる。即ち、この場合には、制御部3からの駆動信号O1,O2の周波数は比較的低い周波数となる。
【0032】
駆動信号O1,O2の周波数を変化させても、共振回路の共振周波数はリーケージインダクタとコンデンサC4によって定まっており変化しないが、トランスT1の1次巻線L1に流れる電流の向きの反転周期は、駆動信号O1,O2の周波数に応じて変化する。従って、トランスT1の2次巻線L2に発生する電圧の周波数も、駆動信号O1,O2の周波数に従って変化する。2次巻線L2とハロゲンランプ4との間のチョークコイルL4,L5は、2次巻線L2に発生する電圧の周波数が高くなるほどインピーダンスが増大し、2次巻線L2に発生する電圧の周波数が低くなるほどインピーダンスが減少する。
【0033】
従って、駆動信号O1,O2の周波数が比較的低い周波数の場合には、チョークコイルL4,L5のインピーダンスが比較的低く、ハロゲンランプ4に十分な電圧を印加することができる。これにより、ハロゲンランプ4は比較的高い調光率で点灯する。
【0034】
図6はこの場合のランプ電圧及びランプ電流を示している。図6の例では、ランプ電圧及びランプ電流の周波数は約37.9KHzである。この場合には、実効値で約17.4Vのランプ電圧が得られている。また、ランプ電流の実効値は約6.9Aである。
【0035】
逆に、調光率を比較的低くする場合には、可変抵抗VR1の抵抗値を大きくする。そうすると、フィードバック電圧が比較的大きな値となり、制御部3によって駆動信号O1,O2の周波数が比較的高い周波数となる。
【0036】
従って、トランスT1の2次巻線L2に発生する電圧の周波数も比較的高くなり、コイルL4,L5のインピーダンスは比較的大きくなる。これにより、ハロゲンランプ4に印加される電圧は比較的低くなり、ハロゲンランプ4は比較的低い調光率で点灯する。
【0037】
図7はこの場合のランプ電圧及びランプ電流を示している。図7の例では、ランプ電圧及びランプ電流の周波数は約73.0KHzである。この場合には、実効値で約7.7Vのランプ電圧が得られている。また、ランプ電流の実効値は約2.0Aである。
【0038】
このように本実施の形態においては、インダクタンス素子を2次側巻線に設けることで、周波数に応じたインピーダンスを発生させて、ハロゲンランプに印加される電圧を大きく変化させることができ、ハロゲンランプを十分な調光範囲で点灯制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る点灯装置を示す回路図。
【図2】横軸に時間をとり縦軸に電流値又は電圧値をとって、トランジスタQ1のドレインソース間電圧Vds及びドレイン電流Idを示す波形図。
【図3】横軸に時間をとり縦軸に電圧値又は電流値をとって、ランプ電圧及びランプ電流を示す波形図。
【図4】横軸に出力電力をとり縦軸に効率をとって、本実施の形態における効率の変化を示すグラフ。
【図5】本発明の第2の実施の形態を示す回路図。
【図6】横軸に時間をとり縦軸に電圧値又は電流値をとって、ランプ電圧及びランプ電流を示す波形図。
【図7】横軸に時間をとり縦軸に電圧値又は電流値をとって、ランプ電圧及びランプ電流を示す波形図。
【符号の説明】
【0040】
1…全波型電流共振回路、C4…コンデンサ、T1…トランス、L1,L2…巻線、L4,L5…チョークコイル、3…制御部、4…ハロゲンランプ、Q1,Q2…トランジスタ、VR1…可変抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲンランプの点灯装置において、
前記ハロゲンランプが2次巻線に接続されるトランスと、
前記トランスの1次巻線及びコンデンサによって構成される共振回路をスイッチング素子によって駆動する全波型電流共振回路と
を具備したことを特徴とする点灯装置。
【請求項2】
前記トランスの2次巻線と前記ハロゲンランプとの間に設けたチョークコイル
を具備したことを特徴とする請求項1に記載の点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−33956(P2010−33956A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196594(P2008−196594)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】