説明

無停電電源装置

【課題】故障発生時などにおける各部のデータを、専門家でなくても容易に取り出すことができる。
【解決手段】無停電電源装置20の制御装置17は、各部への制御指令を出力すると共に前記各部の状態を監視しており、各部の状態信号を入力して入力データ保持手段に保持させ、抽出データ出力手段は、予め設定されたデータ取得指令、又は故障発生信号の入力に伴い、入力データ保持手段に保持されたデータから、予め設定した項目のデータを、予め設定した時間幅で抽出し、これを外部記憶装置18に出力し、取り外し可能に装着されているメモリーカード19に記憶させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重要負荷に対して安定した電源を供給する無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットデータセンター、銀行、証券会社のオンラインシステムなどの重要負荷設備の電源は、定電圧・定周波数の状態が継続して維持される必要があるため、電源供給設備として無停電電源装置が一般的に用いられている。この無停電電源装置は、通常時に使用する給電経路とは別に、商用の交流電源によるバイパス給電経路を内蔵しており、万が一通常の給電経路で給電中に無停電電源装置本体の故障が発生した場合、切換機能を用いてバイパス給電経路へ無瞬断で切換え、負荷設備への給電を継続している。
【0003】
このような装置に障害が発生した場合、その原因を究明するために、装置内の複数部分の波形データ、制御データ(各種の設定値データを含む)を記録して解析を行う。このような無停電電源装置の波形記憶機能に関する提案は従来から行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−14141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無停電電源装置の制御装置には、無停電電源装置内各部の状態信号が保持されており、障害発生時には、この保持されたデータから装置内複数部分の波形データなどを外部へ読み出して解析を行う。この際、外部のパソコン(以下、PCと呼ぶ)を制御装置に接続する必要がある。このように外部PCを制御装置に接続する場合、無停電電源装置の制御内容に影響を受けることから、無停電電源装置の運転を停止していた。また、外部PCにはデータ読み取り用のソフトウエアを予めインストールしておく必要があり、無停電電源装置の製造メーカは、このソフトウエアを取り扱う専門技術者を、無停電電源装置が設置された客先に派遣してデータを読み出し、これを工場へ持ち帰らなければならず、故障などの障害発生時における対応に多大な時間と労力を要した。
【0006】
本発明の目的は、故障発生時などにおける各部のデータを、専門化を要することなく誰でも容易に取り出すことができる無停電電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による無停電電源装置は、商用電源から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータ、及びこのコンバータから出力される直流電力を交流電力に逆変換するインバータを有する通常給電経路と、前記商用電源からの交流電力をそのまま出力するバイパス給電経路と、これらの通常給電経路とバイパス給電経路とのいずれかを選択し、選択された給電経路を負荷側に接続する切換器と、前記コンバータ及びインバータを含む各部への制御指令を出力すると共に前記各部の状態を監視し、必要に応じて前記切換器に対する切換指令を出力する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記各部から入力される状態信号を保持する入力データ保持手段と、予め設定されたデータ取得指令、又は故障発生信号の入力に伴い、前記入力データ保持手段に保持されたデータから、予め設定した項目のデータを、予め設定した時間幅で抽出し、これを外部に出力する抽出データ出力手段と、この制御装置外に設けられ、メモリーカードが取り外し可能に装着されており、前記抽出データ出力手段から出力されたデータを、このメモリーカードに記憶させる記憶装置とを有することを特徴とする。
【0008】
前記記憶装置は、前記各給電経路の主回路および前記制御装置と電気的に遮蔽された位置に設置されているとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、専門技術者でなくても、運転に支障を与えることなく波形データなどの各部のデータを、取り外し可能なメモリーカードに記憶させたことにより、障害発生から復旧までの対応時間を短縮することができる。また、任意の時間に装置の波形データを取得して確認することも可能となり、装置の信頼性向上につながる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による無停電電源装置の一実施の形態を示す機能ブロック図である。
【図2】図で示した制御装置の機能を説明する機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1は、無停電電源装置を示す単線結線図および制御回路図である。無停電電源装置20は、交流の商用電源11を直流電源に変換するコンバータ12、この直流電源によって充電される蓄電池14、コンバータ12と蓄電池14から出力される直流電源を交流電源に変換するインバータ13によって負荷設備10に電力を供給する装置である。また、通常時に使用する上述の給電経路とは別に、商用電源11によるバイパス給電経路を内蔵しており、切換器15によって2つの給電経路を無瞬断で切換可能な機能を有する。
【0013】
なお、コンバータ12、インバータ13および切換器15は制御装置17によって制御されている。すなわち、制御装置17は、コンバータ12及びインバータ13を含む各部への制御指令を出力すると共に、これら各部の状態を監視し、必要に応じて切換器15に対する切換指令を出力する。
【0014】
以下、図2を用いて、制御装置17の機能を説明する。制御装置17は、その内部に、入力データ保持手段171、故障検出手段172、データ取得指令手段173、設定値記憶手段174、抽出データ出力手段175を備え、また、外部には記憶装置18を備えている。
【0015】
入力データ保持手段171は、コンバータ12及びインバータ13を含む無停電電源装置20内各部から入力される、波形データを含む各種状態信号を保持する。故障検出手段172は入力された各種の状態信号から、無停電電源装置20内に故障が発生したことを検出し、後述する抽出データ出力手段175へ故障検出信号を出力する。データ取得指令手段173は、保守員が任意のタイミングで操作したことにより生じるデータ取得指令を、同じく抽出データ出力手段175へ出力する。抽出データ出力手段175は、故障検出手段172からの故障検出信号、及びデータ取得指令手段173からのデータ取得指令が入力されると、入力データ保持手段171に保持されたデータや、設定値記憶手段174に保持された制御に必要な各種設定値から、予め設定した項目のデータ(各部の波形データや各部の状態信号など)を、予め設定した時間幅(例えば、故障発生時点の0.1秒前から0.1秒後の波形データなど)で抽出し、これを外部に出力する。
【0016】
記憶装置18は、制御装置17の外部に設けられており、記憶媒体として、メモリーカード19が取り外し可能に装着されている。そして、抽出データ出力手段175から出力されたデータを、このメモリーカード19に記憶させる。
【0017】
なお、この記憶装置18は、前記各給電経路の主回路および制御装置17に対して電気的に遮蔽された位置に設置するとよい。
【0018】
上記構成において、無停電電源装置20は、コンバータ12、蓄電池14、インバータ13によって構成された通常時給電経路と、バイパス給電経路とのいずれかから、負荷設備10に対して給電しており、必要に応じてこれらを無瞬断で切換えることができる。このような運転状態において、制御装置17には、コンバータ12及びインバータ13を含む無停電電源装置20内各部から、波形データを含む各種状態信号が入力されており、これらデータは入力データ保持手段171に保持される。
【0019】
このような運転状態において、故障検出手段172は入力される各種状態信号により故障発生の有無を監視しており、故障発生が検出されると、故障検出信号を出力する。また、データ取得指令手段173は予め設定したデータ取得指令を監視している。例えば、予め設定したイベントが発生した場合に、予め設定した項目のデータを取得する場合は、イベント発生有無を監視し、発生した場合は、設定項目に対する取得指令を出力する。この他、保守員が任意のタイミングで特定データの取得操作を行った場合は、この操作に基づいて対応するデータの取得指令を出力する。
【0020】
抽出データ出力手段175は、故障検出信号が入力されると、その故障部位に応じて予め設定された項目のデータを所定の時間幅で入力データ保持手段171から抽出し、或いは、必要に応じて設定値記憶手段174から制御に用いられる設定値を抽出する。そして、この抽出したデータを外部の記憶装置18に出力する。また、データ取得指令手段173から、上述したイベント、或いは任意の取得操作に基づくデータ取得指令が入力されると、対応する項目のデータを所定の時間幅で入力データ保持手段171から抽出し、或いは、必要に応じて設定値記憶手段174から制御に用いられる設定値を抽出して、外部の記憶装置18に出力する。
【0021】
記憶装置18は、抽出データ出力手段175から出力されたデータを、このメモリーカード19に記憶させる。メモリーカード19は、記憶装置18に対して取り外し可能に装着されているので、故障発生時の解析を行う場合、誰でもがこのメモリーカード19を記憶装置18から取り外し、解析部門に送ればよいため、専門家の派遣など、多大な時間と労力を要することなく容易に実施することができる。
【0022】
特に、この記憶装置18を、各給電経路の主回路や制御装置17に対して電気的に遮蔽された位置に設置しておくと、電気的な危険性は全く無く、メモリーカード19の取り出しになんら制約を受けない。
【0023】
このように、外部に設けた記憶装置18のメモリーカード19に、必要な項目のデータが必要なタイミングで記録されることから、波形データ等を外部へ読み出す際に、無停電電源装置20の運転を停止することなく、メモリーカード19の取り出し操作のみにより実施することができる。さらに、外部PCを接続し、複雑なソフトウエアを操作する必要がないため、専門技術者の派遣も必要なく、単に取り出したメモリーカード19を直接工場へ送ればよい。
【符号の説明】
【0024】
11…商用電源
12…コンバータ
13…インバータ
15…切換器
17…制御装置
171…入力データ保持手段
172…故障検出手段
173…データ取得指令手段
174…設定値記憶手段
175…抽出データ出力手段
18…記憶装置
19…メモリーカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータ、及びこのコンバータから出力される直流電力を交流電力に逆変換するインバータを有する通常給電経路と、
前記商用電顕からの交流電力をそのまま出力するバイパス給電経路と、
これらの通常給電経路とバイパス給電経路とのいずれかを選択し、選択された給電経路を負荷側に接続する切換器と、
前記コンバータ及びインバータを含む各部への制御指令を出力すると共に前記各部の状態を監視し、必要に応じて前記切換器に対する切換指令を出力する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記各部から入力される状態信号を保持する入力データ保持手段と、
予め設定されたデータ取得指令、又は故障発生信号の入力に伴い、前記入力データ保持手段に保持されたデータから、予め設定した項目のデータを、予め設定した時間幅で抽出し、これを外部に出力する抽出データ出力手段と、
この制御装置外に設けられ、メモリーカードが取り外し可能に装着されており、前記抽出データ出力手段から出力されたデータを、このメモリーカードに記憶させる記憶装置と、
を有することを特徴とする無停電電源装置。
【請求項2】
前記記憶装置は、前記各給電経路の主回路および前記制御装置と電気的に遮蔽された位置に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の無停電電源装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−220291(P2010−220291A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60985(P2009−60985)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】