説明

無反動スピーカシステム及びユニット

【課題】悪影響を及ぼす振動を減らし正確で力強い音を生成することができる上、軽量化・小型化や製造に関するコストダウンの実現に寄与し、さらには宙吊り状態での設置が可能であり無重力下でも空気さえ存在すれば音を生成することができる無反動スピーカシステム及びユニットを提供すること。
【解決手段】左右対称の筒状の共鳴壁1と、この共鳴壁1の左右両側に対称に設けられる一対または二対以上の振動部2とを備え、対となる前記振動部2が互いに同調して振動するように構成され、前記共鳴壁1が、前記振動に共鳴するように可撓性材料によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、単体で用いられたり、テレビジョン受像機やオーディオ機器等に組み込まれて使用される無反動スピーカシステム及びユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
本来、空気に波を発生させて音を形成するスピーカユニットであるが、現存のスピーカユニットにおいては音を形成するためのエネルギを効果的に音に変換できない。すなわち、約半分のエネルギは音にならずにユニット自体の振動に変換されて音の歪みや濁り振動となり、ユニットの目的である正確な音作りを妨げる。
【0003】
また、前記スピーカユニットを組み込んだエンクロージャ(スピーカボックス)自体もスピーカユニットの振動によって同じく振動し、この振動が床にまで伝わるが、一般に、低音になる程、エンクロージャを床にしっかりと固定しなければその音を忠実に再現するのが困難になる。そのため、低音かつ大音量の音を出すと、発生する前記振動によって部屋全体が揺れたり隣の部屋にまで振動が伝わったりするという懸念がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、上記種々の問題を解決するために、各メーカーでは、スピーカユニットから必要な音(振動)のみを取り出しそれ以外の振動をおさえることに心血が注がれている。そのため、現在流通しているスピーカユニットの多くは、音質を低下させる上記振動をスピーカユニットあるいはエンクロージャの重量やその素材の硬度により低減させることを狙いとして重量化、硬質化されたものである。
【0005】
しかし、かかるスピーカユニットでは、上記問題を根本的に解決できないばかりか、重量化(それに伴う大型化)や硬質化のためにいたずらに製造コストが高くなるだけである。
【0006】
ところで、通常のスピーカユニットでは、コーンが動いて空気を震わせ音を作るとともに、その反作用によりマグネットやフレーム等は逆方向に動き、前記音を妨げる振動を発生する。従って、理想的なスピーカユニットとは、音の直接の発生源となるコーンが応答性良く動くと共に、コーンに動力を付与するマグネットやこれを保持するフレーム、エンクロージャ等からの無駄な振動の発生が抑止されているものである。
【0007】
そこで、本発明者は、図12、図13に示すように、基準ライン∞を挟み二つの同じ動きをする同一形状のコーン3を有するスピーカユニットを逆向きに配置することに想到した。このように構成すれば、コーン3の両側の空気は波(音)になると共に、前記コーンを備えたスピーカユニットに対しては基準ライン∞を軸とした左右対称の振動が加えられることになるので、上記スピーカユニットからの無駄な振動の発生は抑えられると考えられる。従って、正確な音の生成を妨げる振動がスピーカユニット自体に殆ど生じず、大部分のエネルギがコーン3によって効率よく音に変換されるので、結果的に歪みが少なく正確で力強い音を生成することができる。尚、図12、図13において、6はマグネット、7はボイスコイルボビン、8はボイスコイルである。
【0008】
この発明は、上記の事柄に留意してなされたものであり、その目的は、悪影響を及ぼす振動を減らし正確で力強い音を生成することができる上、軽量化・小型化や製造に関するコストダウンの実現に寄与し、さらには宙吊り状態での設置が可能であり無重力下でも空気さえ存在すれば音を生成することができる無反動スピーカシステム及びユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の無反動スピーカシステムは、左右対称の筒状の共鳴壁と、この共鳴壁の左右両側に対称に設けられる一対または二対以上の振動部とを備え、対となる前記振動部が互いに同調して振動するように構成され、前記共鳴壁が、前記振動に共鳴するように可撓性材料によって形成されていることを特徴としている(請求項1)。
【0010】
より具体的には、この発明の無反動スピーカシステムは、左右対称の筒状の共鳴壁と、この共鳴壁の左右両側に対称に設けられる一対または二対以上の振動板および一対または二対以上の振動発生部とを備え、対となる前記振動板が、前記振動発生部から加えられる振動により互いに同調して振動するように構成され、前記共鳴壁が、前記振動に共鳴するように可撓性材料によって形成されている(請求項2)。
【0011】
上記無反動スピーカシステムにおいて、前記共鳴壁に補強体を設けてあってもよい(請求項3)。
【0012】
そして、上記無反動スピーカシステムにおいて、前記共鳴壁の内壁に沿わせて柔軟で多孔質の吸音部材を筒状に配置してあると共に、この吸音部材に振動抑制材を保持させてあるのが望ましい(請求項4)。
【0013】
また、上記目的を達成するために、この発明の無反動スピーカシステムは、筒状部の両端にそれぞれ共鳴壁を設けたケースと、前記筒状部に設けた複数の振動部とを備え、全ての振動部が互いに同調して振動するように構成されていると共に、各振動部からの振動が互いに相殺し合う相殺部位が前記ケースに形成されるように各振動部を配置してあり、また、前記共鳴壁が、前記振動部の振動に共鳴するように可撓性材料によって形成されていることを特徴としている(請求項5)。
【0014】
また、上記目的を達成するために、この発明の無反動スピーカユニットは、互いに同調して振動する一対の振動部を備え、各振動部が、電流を流すとマグネットにより駆動されるボイスコイルおよびボイスコイルボビンを有し、一方の振動部のボイスコイルボビンにコーンを設けると共に、他方の振動部のボイスコイルボビンにウエイト部材を設けてあり、また、二つのボイスコイルに流す電流の比を調整するための調整部を備えていることを特徴としている(請求項6)。
【0015】
また、上記目的を達成するために、この発明の無反動スピーカユニットは、駆動用コイルと、この駆動用コイル内に配置され駆動用コイルに電流を流すと変形する超磁歪素子と、この超磁歪素子の一端に設けられたコーンと、超磁歪素子の他端に設けられたウエイト部材と、前記超磁歪素子の中央部を保持する保持部とを備えたことを特徴としている(請求項7)。
【0016】
上記無反動スピーカユニットにおいて、前記駆動用コイルが直列に二つ並べられており、各駆動用コイルに流す電流の比を調整するための調整部が設けられていることが望ましい(請求項8)。
【0017】
また、上記目的を達成するために、この発明の無反動スピーカユニットは、絶縁部材を介して対称に固定された一対または二対以上の導電板に、一対または二対以上のセラミック板を対称に設けて形成した一対または二対以上の圧電素子を備え、前記圧電素子に電流を流すと各圧電素子が互いに同調して振動するように構成されていることを特徴としている(請求項9)。
【発明の効果】
【0018】
請求項1〜9に係る発明では、悪影響を及ぼす振動を減らし正確で力強い音を生成することができる上、軽量化・小型化や製造に関するコストダウンの実現に寄与し、さらには宙吊り状態での設置が可能であり無重力下でも空気さえ存在すれば音を生成することができる無反動スピーカシステム及びユニットが得られる。
【0019】
すなわち、請求項1、2に係る発明では、一対の振動部に対称的な振動を発生させることによって無駄な振動の発生を抑えて無反動を実現できると共に、必要な振動(音)のみが外部に伝達されるので、悪影響を及ぼす振動(ノイズ)を減らし正確で力強い音を生成することができ、単に振動部を二つにした場合よりも大きな音量が得られる。
【0020】
また、請求項1、2に係る発明では、無駄な振動を消滅させるためにスピーカシステムの重量化や硬質化を図る必要がないので、軽量化・小型化や製造に関するコストダウンを実現することができ、ひいては宙吊り状態での設置が可能であり無重力下でも空気さえ存在すれば音を生成することができるスピーカが得られる。
【0021】
さらに、請求項1、2に係る発明では、共鳴壁が振動部の振動に共鳴し、バイオリン、コントラバス等多くの楽器と同様にいわゆる(オーディオ界で言われる所の)箱鳴りを最大限に利用することができるので、ユニット自体が小型であっても高音質の音(入力信号に忠実な音)を十分な音量で発生させることができる。
【0022】
また、請求項1、2に係る発明では、無駄な振動が発生せず、そのような無駄な振動がエンクロージャや床等に伝わることもないので、さらなる音質の向上を図ることができる。
【0023】
請求項3に係る発明では、補強体を設けることにより、いわばチューニングのような作用が働いて無駄な振動の防止を大いに図ることができ、音質向上効果が一段と高まることになる。
【0024】
請求項4に係る発明では、振動抑制材を吸音部材によって保持したことにより、筒状体内における定在波の発生を確実に抑えることができる。
【0025】
請求項5に係る発明では、請求項1、2に係る発明と同様の効果が得られる。
【0026】
請求項6に係る発明では、請求項1〜4に係る発明と異なり、共鳴壁を有していないので、共鳴壁に由来する効果を得ることはできないが、それ以外の効果は同様に奏する。また、請求項1〜4に係る発明は、二方向以上に向けて音を出すことが必須となるが、請求項5に係る発明では、一方向のみに向けて音を出すことができ、汎用性の面で優れたものとなる。加えて、請求項6に係る発明では、スピーカユニットやこれが組み込まれるエンクロージャ等について、形状、素材共に選択の自由度が大幅に拡がり、既成の概念にとらわれない斬新なスピーカユニット等を製造することも可能となる。
【0027】
請求項7、8に係る発明では、請求項6に係る発明と同じ効果が得られる上、超磁歪素子を用いることによりその構成がよりシンプルとなり、一層の小型化を図ることができる。
【0028】
請求項9に係る発明では、請求項1〜4に係る発明と異なり、共鳴壁を有していないので、共鳴壁に由来する効果を得ることはできないが、それ以外の効果は同様に奏する。また、請求項9に係る発明では、構成がシンプルであり、小型化、特に薄型化を容易に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、この発明の第1の実施の形態に係る無反動スピーカシステムの構成を概略的に示す縦断面図である。
【0030】
まず、本実施形態の無反動スピーカシステムは、図1に示すように、左右対称の筒状(図示例では円筒状)の共鳴壁1と、この共鳴壁1の左右両側に対称に設けた一対の振動部2とを備え、対となる前記振動部2は互いに同調して振動するように構成してあり、前記共鳴壁1は、前記振動に共鳴するように可撓性材料によって形成してある。
【0031】
前記共鳴壁1を形成する可撓性材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂の他、木材(木製の板)、紙等に加工した天然樹脂、アルミニウム等の金属などであってもよい。
【0032】
前記振動部2は、共鳴壁1の左右両側に対称に設けた一対の振動板(コーン)3および一対の振動発生部4によって構成してある。ここで、前記振動発生部4は、前記共鳴壁1に固定したフレーム5と、このフレーム5に固定したほぼ円筒状のマグネット6と、前記フレーム5の内側をスライドし前記振動板3に固定したボイスコイルボビン7と、このボイスコイルボビン7に巻き付けたボイスコイル8とを備えている。そして、一対の振動発生部4に設けた二つのボイスコイル8は、互いに逆巻きとなるようにボイスコイルボビン7に巻き付けてある。
【0033】
また、前記共鳴壁1の例えば中央部に補強体9を設けてある。この補強体9は、共鳴壁1の内側に沿う円形状の板体からなり、例えばポリエチレン板やスチロール板等によって形成することができる。そして、補強体9は、一対の振動部2から等距離に位置し、この位置は一対の振動部2によって発生した振動が互いに相殺しあう位置であるため、一対の振動部2が振動状態であっても補強体9は殆ど振動しない。しかし、補強体9を設ける位置は、共鳴壁1の中央部に限らず、中央部から外れた位置であってもよい。
【0034】
尚、図1において、10はスライドするボイスコイルボビン7を支持するダンパー、11は前記マグネット6を支持する金属製の支持体12やマグネット6を覆うカバーである。
【0035】
上記のように構成した無反動スピーカシステムでは、二つのボイスコイル8に電流が同様に流れる。そして、二つのボイスコイル8を巻いた向きが互いに逆となっているので、対となる前記振動板3は、前記振動発生部4から加えられる振動により互いに同調して(シンメトリーに)振動することになる。そのため、一対の振動部2の振動によって発生する無駄な振動は補強体9近傍で相殺し合い、必要な振動(音)のみが外部に伝達されるので、前記無反動スピーカシステムでは悪影響を及ぼす振動(ノイズ)を減らし正確で力強い音を生成することができ、単に振動部2を二つにした場合よりも大きな音量が得られる。
【0036】
また、前記無反動スピーカシステムでは、無駄な振動を消滅させるためにスピーカシステムの重量化や硬質化を図る必要がないので、軽量化・小型化や製造に関するコストダウンを実現することができる。
【0037】
さらに、前記無反動スピーカシステムでは、共鳴壁1が振動部2の振動に共鳴し、バイオリン、コントラバス等多くの楽器と同様にいわゆる(オーディオ界で言われる所の)箱鳴りを最大限に利用することができるので、ユニット自体が小型であっても高音質の音(入力信号に忠実な音)を十分な音量で発生させることができる。
【0038】
また、前記無反動スピーカシステムでは、補強体9やその近傍をエンクロージャ等に支持させる構成を採用することにより、振動部2から発生した振動がエンクロージャや床等に伝わらず、さらなる音質の向上を図ることができる。このような観点から、補強体9やその近傍に適宜の吊り下げ部材を連結・係止して、無反動スピーカシステムを天井等から吊り下げた状態で使用することも好適であり、前記無反動スピーカシステムは軽量化できるものであるため、上記態様での使用は特別な施設に限らず一般家庭等においても十分に実現可能であり、逆に、例えば無重力下という特殊な状況であっても空気さえ存在すれば使用可能である。
【0039】
また、前記無反動スピーカシステムでは、補強体9を設けることにより、いわばチューニングのような作用が働いて無駄な振動の防止を大いに図ることができ、音質向上効果が一段と高まることになる。
【0040】
また、例えば駅のホームに有るアナウンススピーカ等の様に双方向で指向性のあるスピーカは、前記スピーカユニットを用いて簡単に製造することができ、かかるスピーカは音のとおりが良くその機能が極めて良好に発揮されることになる。
【0041】
ここで、図1には、振動部2を一対設けた例を示したが、図2に示すように、振動部2を二対設けてもよいし、図示していないが三対以上設けてもよい。いずれの場合も、相対する一対の振動部2の構成が対称となっていればよく、種類の異なる複数対の振動部2を設けることができる。尚、図2には、低音用スピーカ(ウーハー)2aと、高音用スピーカ(ツィーター)2bとを設けた例を示している。
【0042】
そして、対となる振動部2は、必ずしも同一信号を流したときに互いに同一となる振動エネルギを発生させるものでなくてもよく、例えば、一方の振動部2が振動エネルギの大きいウーハーであり、他方の振動部2が振動エネルギの小さいフルレンジであってもよい。このような場合、無駄な振動は若干生じるが、振動部2の片方のみを設ける場合に比べて無駄な振動の発生はより防止されることになる。
【0043】
また、図3に示すように、前記共鳴壁1の内壁に沿わせて柔軟で多孔質の吸音部材Kを筒状に配置してあると共に、この吸音部材Kに振動抑制材Sを保持させてあってもよい。この場合には、スピーカシステム自体が起こす振動の対策と、スピーカシステムが作り出した共鳴壁1内の空気の波による定在波の対策とを併せて行うことができる。
【0044】
ここで、前記吸音部材Kとしては、例えば、グラスウール、フエルト、スポンジ等を用いることができる。
【0045】
また、前記振動抑制材Sは、例えば、図4(A)に示すように、二枚のほぼ円板状の空気の振動を吸収するための部材としてのフエルト体Saの間に、ほぼ円板状の振動抑制材Sに質量を持たせ、かつ空気の振動を吸収するための部材としてのブチルゴム体Sbを同心状に設け通気性を持たせた部材である。そして、図3に示すように、振動抑制材Sの縁部は前記吸音部材Kによって保持されている。尚、この保持方法は、単に振動抑制材Sの縁部を吸音部材Kに係止させてあるだけであってもよいし、接着剤等を用いて適宜に接着してあってもよい。いずれの保持方法にしても、保持された振動抑制材Sが共鳴壁1内において前後及び上下左右にある程度自由に動く状態としてあることが望ましい。
【0046】
そして、前記振動抑制材Sは、上記構成のものに限られず、例えば、図4(B)に示すように、ほぼ円板状の空気の振動を吸収するための部材としてのスポンジ体Scと、二枚の前記ブチルゴム体Sbと、二枚のほぼ円板状で空気の振動を散乱・拡散するための面を有する部材としての折曲状の紙体Sdとで構成してもよく、図4(C)に示すように、ほぼ円板状の芯材としてのベニア板Seと、二枚の前記ブチルゴム体Sbと、円柱を斜めに2分割した形状を呈する二つの空気の振動を吸収するための部材としてのスポンジ体Sfとで構成してもよく、図4(D)に示すように、ほぼ円板状の振動抑制材Sに質量を持たせる支持体としてのFRP体Sgと、円柱の先端を斜めに切断した形状を呈する二つの空気の振動を吸収するための部材としての高反発スポンジ体Shと、ほぼ円板状の二つの空気の振動を吸収し、かつ空気の振動を散乱・拡散するための面を有する部材としての低反発スポンジ体Siとで構成してもよく、図4(E)に示すように、中空でほぼ球状の振動抑制材Sに質量を持たせ、かつ空気の振動を吸収・反射・拡散するための部材としてのブチルゴム体Sjの外側に空気の振動を吸収するための部材としてのスポンジ体Skを設けて構成してもよい。
【0047】
上記のように、振動抑制材Sには種々の構成を採用することができるのであり、その形状や材料は適宜に選択し組み合わせて用いることができ、特に、互いに異なる素材からなる複数の部材を組み合わせた複合部材により構成することが望ましく、その素材としても上記素材以外に、例えば振動抑制材Sに質量を持たせると共に空気の振動の吸収・反射・拡散・散乱をするための部材としての発泡アルミニウム等を用いることができる。尚、振動抑制材Sは、自身の振動、空気の波の反射、散乱、拡散、吸収のいずれかによって共鳴壁1内の空気が持つ振動エネルギを抑制(振動エネルギが大きくなることを抑制)する部材であって、例えば、軽量のスポンジ体のみで振動抑制材Sを構成することは望ましくない。
【0048】
さらに、前記振動抑制材Sは、図3に示すように、共鳴壁1のほぼ中央に配置してもよいし、中央を避けた他の位置に設けてもよい。また、図3には、振動抑制材Sを共鳴壁1に対してほぼ垂直にした例を示してあるが、例えば、振動抑制材Sを共鳴壁1に対して斜めに配置してもよい。
【0049】
また、前記振動抑制材Sは、図3及び図4(A)〜(E)に示す各例では、側面視がほぼ円形状となっているが、これに限らず、例えば側面視がほぼ矩形状であってもよい。
【0050】
尚、図1〜図3において、共鳴壁1は円筒状に限らず、例えば角筒状等であってもよい。
【0051】
また、図1において、補強体9は無くてもよく、逆に、図2〜図4において補強体9を設けてあってもよい。
【0052】
さらに、図1〜図3において、振動部2は図示したものに限らず、例えば既存・公知のものを用いることもできる。
【0053】
図5は、第1の実施の形態の変形例に係る無反動スピーカシステムの構成を概略的に示す横断面図である。ここで、図1および図2において示した部材等と同一の部材等については同じ符号を付し、その再度の詳細な説明は省略する。
【0054】
図5に示す無反動スピーカシステムは、ほぼ三角筒状の筒状部13の上下両端にそれぞれほぼ三角板状の共鳴壁1を設けたほぼ三角柱状のケース14と、前記筒状部13の三つの側壁13aにそれぞれ設けた複数(図示例では三つ)の振動部2とを備え、全ての振動部2が互いに同調して振動するように構成されていると共に、前記共鳴壁1は、前記振動部2の振動に共鳴するように可撓性材料によって形成されている。
【0055】
また、図5に示す無反動スピーカシステムでは、各振動部2からの振動が互いに相殺し合う相殺部位が前記ケース14に形成されるように適宜の数の振動部2を配置してある。図3に示す例では、筒状部13の横断面はほぼ正三角形状となっていると共に、この筒状部13を構成する三つの側壁13aに設けた振動部2は全て同じ高さに位置し、さらに、各振動部2は各側壁13aの左右方向における中央に設けてある。よって、各振動部2からの振動が互いに相殺し合う相殺部位は、筒状部13の水平方向における中央に形成されることになる。
【0056】
図5に示す無反動スピーカシステムによっても、図1、図2に示した無反動スピーカシステムと同じ効果が得られる。
【0057】
尚、図5には、筒状部13が三角筒状となっている例を示したが、これに限らず、例えば、四角筒状など他の多角筒状であってもよく、円筒状等となっていてもよい。筒状部13の形状等に応じて、設ける振動部2の数や配置も前記相殺部位がケース14に形成されるように適宜に設定することができる。
【0058】
図6は、この発明の第2の実施の形態に係る無反動スピーカユニットの構成を概略的に示す説明図である。ここで、図1〜図5に示した部材等と同一の部材等については同じ符号を付し、その再度の詳細な説明は省略する。
【0059】
図6に示す無反動スピーカユニットは、互いに同調して振動する一対の振動部15,16を備え、各振動部15,16が、電流を流すとマグネット6により駆動されるボイスコイル8およびボイスコイルボビン7を有し、一方の振動部15のボイスコイル8にコーン(振動板)3を設けると共に、他方の振動部16のボイスコイル8にウエイト部材17を設けてあり、また、二つのボイスコイル15,16に流す電流の比を調整するための調整部18を備えている。
【0060】
ここで、一方の振動部15のボイスコイル8と他方の振動部16のボイスコイルとは互いに逆向きとなるようにボイスコイルボビン7にそれぞれ巻き付けられている。
【0061】
また、前記ウエイト部材17の重量は、コーン3の重量やコーン3が振動状態で受ける空気抵抗等を考慮して適宜に設定することができる。この実施例では、ウエイト部材17の重量をコーン3の重量と同一としてある。
【0062】
そして、前記調整部18は、図6に示すように、一方の振動部15のボイスコイル8の両端部に配線19A,19Bを介して接続される出力ボリュームコントローラ20としての出力アンプと、前記配線19A,19Bに配線21A,21Bを介して接続されると共に、他方の振動部16のボイスコイル8の両端部に配線22A,22Bを介して接続されるバランス調整用装置(アテネータ(attenuator)、トランス、抵抗等)23とを備えている。
【0063】
上記調整部18により、一方の振動部15のボイスコイル8に流れる電流と他方の振動部16のボイスコイル8に流れる電流との比率を調整することができ、この調整と前記ウエイト部材17の重量の調節とによって、一対の振動部15,16の振動を互いに同調させることができる。また、二つの振動部15,16によって生成する音の音量自体は出力ボリュームコントローラ20を調整することによって自在に変更することができる。
【0064】
図6に示す無反動スピーカユニットは、図1〜図5に示した無反動スピーカシステムと異なり、共鳴壁1を有していないので、共鳴壁1に由来する効果を得ることはできないが、それ以外の効果は同様に奏する。また、図1〜図5に示す無反動スピーカシステムは、二方向以上に向けて音を出すことが必須となるが、図6に示す無反動スピーカユニットでは、一方向のみに向けて音を出すことができ、汎用性の面で優れたものとなる。加えて、スピーカユニットやこれが組み込まれるエンクロージャ等について、形状、素材共に選択の自由度が大幅に拡がり、既成の概念にとらわれない斬新なスピーカ(スピーカシステム)等を製造することも可能となる。尚、図6に示す無反動スピーカユニットに、図1〜図5に示した無反動スピーカシステムと同様に共鳴壁1を設ければ、共鳴壁1に由来する箱鳴り等の効果も得られることになる。
【0065】
図7は、この発明の第2の実施の形態の変形例に係る無反動スピーカユニットの構成を概略的に示す説明図である。ここで、図1〜図6に示した部材等と同一の部材等については同じ符号を付し、その再度の詳細な説明は省略する。
【0066】
図7に示す無反動スピーカユニットでは、マグネット6、ボイスコイルボビン7、ボイスコイル8を備えた二つのユニットU1,U2をスペーサUsを介して逆向きに配置し、エンクロージャEに固定してあり、一方のユニットU1には振動部3を設けてあり、他方のユニットU2にはウエイト部材17及び振動吸収部材(例えば、エアバッグやスポンジ部材)17aを設けてある。尚、他の点は図6に示すものと同様に構成してある。
【0067】
上記無反動スピーカユニットでは、例えば、ユニットU1にユニットU2等を設けることにより構成することができる上、ユニットU1自体は既存のものを用いることができるので、既存のユニットU1にユニットU2等を後付けするだけで本発明の無反動スピーカユニットを構成することができるというメリットがある。
【0068】
図8は、この発明の第2の実施の形態の他の変形例に係る無反動スピーカユニットの構成を概略的に示す説明図、図9(A)は前記無反動スピーカユニットの要部の構成を概略的に示す説明図である。ここで、図1〜図7に示した部材等と同一の部材等については同じ符号を付し、その再度の詳細な説明は省略する。
【0069】
図8に示す無反動スピーカユニットは、駆動用コイル24と、この駆動用コイル24内に配置され駆動用コイル24に電流を流すと変形する超磁歪素子25と、この超磁歪素子25の一端に設けられたコーン(振動板)3と、超磁歪素子25の他端に設けられたウエイト部材17と、前記超磁歪素子25の中央部を保持する保持部26とを備えている。
【0070】
前記超磁歪素子25は、磁界の変化(強弱)のみで伸縮する素子であり、例えばティーディーケイ株式会社製の超磁歪素子を用いることができる。
【0071】
前記保持部26は、図8および図9(A)に示すように、超磁歪素子25の周囲に配置され、超磁歪素子25の外周面に近接(当接)・離間自在である複数のボルト27によって構成されている。
【0072】
前記ウエイト部材17には、フレーム5に固定したガイド28にガイドされる棒状体29を固定してあり、これにより、前記超磁歪素子25の伸縮方向を規制することができる。
【0073】
図8および図9(A)に示す無反動スピーカユニットでは、図6に示す無反動スピーカユニットと同じ効果が得られる上、超磁歪素子25を用いることによりその構成がよりシンプルとなり、一層の小型化を図ることができる。
【0074】
尚、図8および図6(A)には、駆動用コイル24を一つのみ用いる例を示したが、図9(B)に示すように、前記保持部26により超磁歪素子25を保持する部分を挟む二つの駆動用コイル24を直列に並べて配置してもよい。この場合、各駆動用コイル24に流す電流の比を調整するために、図6に示した調整部18を二つの駆動用コイル24に接続することが望ましい。ここで、前記二つの駆動用コイル24を巻く向きは、互いに逆向きであってもよいし、同じ向きであってもよい。
【0075】
また、図9(B)に示すように、超磁歪素子25を二つに分けるセパレータ30を設けてもよく、このセパレータ30としては、絶縁体、金属、マグネット等を用いることができる。もちろん、このセパレータ30を図8および図9(A)に示す超磁歪素子25に設けてもよいことはいうまでもない。
【0076】
図10(A)は、この発明の第3の実施の形態に係る無反動スピーカユニットの構成を概略的に示す説明図である。ここで、図1〜図9に示した部材等と同一の部材等については同じ符号を付し、その再度の詳細な説明は省略する。
【0077】
図10(A)に示す無反動スピーカユニットは、スペーサとしての絶縁部材31を介して対称に固定された一対の導電板(例えば真鍮等の金属の板)32に、一対のセラミック板33を対称に設けて形成した一対の圧電素子34を備え、前記圧電素子34に電流を流すと各圧電素子34が互いに同調して振動するように構成してある。
【0078】
前記圧電素子34は、通電すると、図11(A)に示す状態から図11(B)に示す反った状態となるものであり、このことを利用して音を生成することができる。
【0079】
そして、一対の圧電素子34に同様に電流を流すと、各圧電素子34が互いに同調して振動し、各圧電素子34からの振動は絶縁部材31の中央部で互いに相殺し合うことになる。そのため、絶縁部材31の中央部を保持部としてエンクロージャ等に保持させることにより、余計な振動がエンクロージャ等に伝わらず、良好な音を生成することが可能となる。
【0080】
図10(A)に示す無反動スピーカユニットは、図1〜図5に示した無反動スピーカシステムと異なり、共鳴壁1を有していないので、共鳴壁1に由来する効果を得ることはできないが、それ以外の効果は同様に奏する。また、図10(A)に示す無反動スピーカユニットでは、構成がシンプルであり、小型化、特に薄型化を容易に達成することができる。尚、図10(A)に示す無反動スピーカユニットに、図1〜図5に示した無反動スピーカシステムと同様に共鳴壁1を設ければ、共鳴壁1に由来する箱鳴り等の効果も得られることになる。
【0081】
また、図10(A)に示す無反動スピーカユニットは、ノーマルタイプのスピーカユニットの様にコーン(振動板)3や平面のハニカムコーン(図示していない)等を取り付けて薄型のスピーカユニットとして用いることができる。
【0082】
尚、図10(A)には、圧電素子34を一対ずつ設ける例を示したが、二対以上ずつ設けてあってもよい。また、図10(A)には、二つの圧電素子34の中央どうしをスペーサとしての絶縁部材31で固定する例を示したが、図10(B)に示すように、二つの圧電素子34の外周部どうしをリング状のスペーサとしての絶縁部材31により固定してもよい。この場合、セラミック板33が内向きとなるように構成することが耐久性等の点から好ましい。
【0083】
また、第1〜第3の実施の形態に係る無反動スピーカシステム及びユニットは、アクチュエータとしても用いることができる。
【0084】
また、図3及び図4に示した吸音部材K及び振動抑制材Sは、他の図面に示したスピーカシステムあるいはスピーカユニットにも用いることができるのは勿論、一つの振動部のみを有する通常のスピーカシステムあるいはスピーカユニットに用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】この発明の第1の実施の形態に係る無反動スピーカシステムの構成を概略的に示す縦断面図である。
【図2】前記無反動スピーカシステムに振動部を二対設けた構成を概略的に示す縦断面図である。
【図3】第1の実施の形態の変形例に係る無反動スピーカシステムの構成を概略的に示す縦断面図である。
【図4】(A)は図3に示す振動抑制材の構成を概略的に示す縦断面図、(B)〜(E)は前記振動抑制材の変形例の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図5】第1の実施の形態の他の変形例に係る無反動スピーカシステムの構成を概略的に示す横断面図である。
【図6】この発明の第2の実施の形態に係る無反動スピーカユニットの構成を概略的に示す説明図である。
【図7】この発明の第2の実施の形態の変形例に係る無反動スピーカユニットの構成を概略的に示す説明図である。
【図8】この発明の第2の実施の形態の他の変形例に係る無反動スピーカユニットの構成を概略的に示す説明図である。
【図9】(A)は前記無反動スピーカユニットの要部の構成を概略的に示す説明図、(B)は前記無反動スピーカユニットのさらなる変形例の要部の構成を概略的に示す説明図である。
【図10】(A)はこの発明の第3の実施の形態に係る無反動スピーカユニットの構成を概略的に示す説明図、(B)は前記無反動スピーカユニットの変形例の構成を概略的に示す説明図である。
【図11】(A)および(B)は、上記実施の形態における非通電状態および通電状態の圧電素子の構成を概略的に示す説明図である。
【図12】この発明の基本的な構成を概略的に示す説明図である。
【図13】この発明の基本的な構成の要部を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0086】
1 共鳴壁
2 振動部
9 補強体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右対称の筒状の共鳴壁と、この共鳴壁の左右両側に対称に設けられる一対または二対以上の振動部とを備え、対となる前記振動部が互いに同調して振動するように構成され、前記共鳴壁が、前記振動に共鳴するように可撓性材料によって形成されていることを特徴とする無反動スピーカシステム。
【請求項2】
左右対称の筒状の共鳴壁と、この共鳴壁の左右両側に対称に設けられる一対または二対以上の振動板および一対または二対以上の振動発生部とを備え、対となる前記振動板が、前記振動発生部から加えられる振動により互いに同調して振動するように構成され、前記共鳴壁が、前記振動に共鳴するように可撓性材料によって形成されていることを特徴とする無反動スピーカシステム。
【請求項3】
前記共鳴壁に補強体を設けてある請求項1または2に記載の無反動スピーカシステム。
【請求項4】
前記共鳴壁の内壁に沿わせて柔軟で多孔質の吸音部材を筒状に配置してあると共に、この吸音部材に振動抑制材を保持させてある請求項1〜3のいずれかに記載の無反動スピーカシステム。
【請求項5】
筒状部の両端にそれぞれ共鳴壁を設けたケースと、前記筒状部に設けた複数の振動部とを備え、全ての振動部が互いに同調して振動するように構成されていると共に、各振動部からの振動が互いに相殺し合う相殺部位が前記ケースに形成されるように各振動部を配置してあり、また、前記共鳴壁が、前記振動部の振動に共鳴するように可撓性材料によって形成されていることを特徴とする無反動スピーカシステム。
【請求項6】
互いに同調して振動する一対の振動部を備え、各振動部が、電流を流すとマグネットにより駆動されるボイスコイルおよびボイスコイルボビンを有し、一方の振動部のボイスコイルボビンにコーンを設けると共に、他方の振動部のボイスコイルボビンにウエイト部材を設けてあり、また、二つのボイスコイルに流す電流の比を調整するための調整部を備えていることを特徴とする無反動スピーカユニット。
【請求項7】
駆動用コイルと、この駆動用コイル内に配置され駆動用コイルに電流を流すと変形する超磁歪素子と、この超磁歪素子の一端に設けられたコーンと、超磁歪素子の他端に設けられたウエイト部材と、前記超磁歪素子の中央部を保持する保持部とを備えたことを特徴とする無反動スピーカユニット。
【請求項8】
前記駆動用コイルが直列に二つ並べられており、各駆動用コイルに流す電流の比を調整するための調整部が設けられている請求項7に記載の無反動スピーカユニット。
【請求項9】
絶縁部材を介して対称に固定された一対または二対以上の導電板に、一対または二対以上のセラミック板を対称に設けて形成した一対または二対以上の圧電素子を備え、前記圧電素子に電流を流すと各圧電素子が互いに同調して振動するように構成されていることを特徴とする無反動スピーカユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−136186(P2008−136186A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272950(P2007−272950)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(599092882)
【Fターム(参考)】