説明

無機フィラーを含む樹脂粒子およびその分散体

【課題】無機フィラー(金属酸化物など)を均一に分散された形態でかつ高濃度で含有する樹脂粒子(複合樹脂粒子)を提供する。
【解決手段】無機フィラー(金属酸化物粒子など)と、高分子と、水溶性多糖類などの助剤とを溶融混合して、無機フィラーを含有する樹脂粒子を分散相とし、前記助剤を連続相とする分散体を調製する際に、前記無機フィラーとして、加水分解縮合性基および反応性を有しない疎水性基を有する疎水化処理剤で表面処理された無機フィラーを選択することにより、無機フィラーを樹脂粒子中に高濃度でかつ均一に分散させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物粒子などの無機フィラーを含む樹脂(特に熱可塑性樹脂)粒子、この樹脂粒子を分散相として含む分散体、および前記樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機粒子を含む(無機粒子が複合化された)樹脂粒子としては、例えば、顔料が分散したトナーやインク粒子、紫外線吸収能を有する無機粒子が複合化された化粧品用樹脂粒子などが利用されている。このような複合樹脂粒子では、樹脂粒子に対して無機粒子を含有させることにより、種々の特性を有効に発現できる。例えば、無機粒子としての着色剤などを樹脂粒子中に含有(特に内包)させることにより樹脂粒子からの脱落を防止することができ、また、アレルギーを引き起こす可能性がある紫外線吸収剤などの無機粒子を樹脂粒子に内包させることにより、化粧品として使用してもアレルギー症状の発症の危険性を大幅に低減できる。
【0003】
このような無機粒子を含有する樹脂粒子は、例えば、無機粒子の存在下で高分子のモノマーを重合させる方法により得られる。特許第2636355号公報(特許文献1)には、ナイロン高分子などの母材粒子を有し、上記母材粒子の表面には、酸化ジルコニウムおよび酸化アルミニウムから選ばれた少なくとも1種の粉末が担持されており、上記母材粒子の内部には、酸化チタンおよび酸化亜鉛から選ばれた少なくとも1種の粉末が分散されている複合粒子を得るに際して、前記母材粒子を、例えば、ナイロン高分子で構成する場合には、パラフィン等に環状ラクタムを加熱、溶解し、所望量の酸化チタンや酸化亜鉛の粉末を添加し、かき混ぜながら、三塩化リンなどの重合促進剤を添加してアルカリ重合を行わせることにより、粒子化できることが記載されている。なお、この文献には、酸化チタンや酸化亜鉛の粉末の量的割合は、母材粒子に対して5〜60重量%の範囲であることが記載されている。しかし、この文献の方法では、パラフィンのような分散媒中で重合させつつ、分散媒に対してはるかに大きな比重を有する酸化ジルコニウムなどを母材粒子中に分散させる。そのため、実施例においては、すべてのモノマーが重合し、かつすべて分散したとしても母材粒子に対して酸化チタンなどはせいぜい10重量%程度分散できるだけであり、現実的には、母材粒子に対して60重量%といった高濃度で酸化ジルコニウムなどを含む樹脂粒子を得ることはできない。すなわち、パラフィンを溶媒として重合する場合、パラフィンの比重が0.9程度であるため、これに対して密度が十分に大きい(例えば、比重4以上の)酸化ジルコニウムのような粉末を高濃度(例えば、40重量%以上)で含有させると、樹脂粒子の密度が大きく(例えば、1.5以上に)なり、沈降してしまうことからも明らかなように、パラフィン中で酸化ジルコニウムなどを高濃度で含む樹脂粒子を得ることができない。また、重合系に剪断力を十分に作用させることができないため、酸化ジルコニウムなどが樹脂粒子中で分散不良が生じやすい。そして、この方法では、酸化ジルコニウムなどを多量に使用しても、母材粒子に分散しない酸化ジルコニウムなどを多量に副生し、効率よく母剤粒子中に分散させることができない。
【0004】
また、無機粒子と高分子とを加熱下で混合すれば、樹脂粒子の外表面に無機粒子を付着又は担持させることができるが、このような方法では、樹脂粒子に無機粒子を内包させることができない。
【0005】
重合法などによらず無機粒子を樹脂粒子に複合化させる方法も知られている。例えば、特開2005−179646号公報(特許文献2)には、高分子などの溶融可能な有機固体成分(A)と、着色剤(B)とで構成された粒子状の分散相が、少なくともオリゴ糖(C1)を含む水溶性助剤成分(C)で構成されたマトリックスに分散している分散体から、助剤成分(C)を溶出し、有機固体成分(A)と着色剤(B)とで構成された粒子を製造する方法が開示されている。この文献には、前記分散相において、前記着色剤(B)の割合は、有機固体成分(A)100重量部に対して、0.001〜200重量部(例えば、0.001〜100重量部)程度の広い範囲から選択できると記載されている。しかし、この文献の方法では、着色剤の種類によっては、高分子に効率よく分配させることができなくなる虞がある。また、この文献の実施例においても、多くても30重量%程度の割合で着色剤を樹脂粒子に内包させることができるにすぎず、高濃度で着色剤を内包させることはできない。このような傾向は、着色剤の粒径が大きくなるとともにより一層顕著になり、使用する着色剤の量が大きくなるほど、マトリックスに分配される着色剤の量が多くなる。また、粒径が大きくなるほど、樹脂粒子中で着色剤を均一に分散させるのが困難となり、マトリックスとの界面部分で着色剤粒子が凝集しやすくなる。
【0006】
また、この文献には、水溶性助剤成分に比べて、有機固体成分に対する親和性が高い着色剤を用いると、分散体において着色剤を分散相側に分配させることができ、着色剤の利用効率を向上できると記載されているが、親和性が高い着色剤として水不溶性染料又は顔料が例示されており、また、高濃度で分散相に分配する方法については何等記載されていない。なお、着色剤などは、通常、平均一次粒子径が数十nm程度の粒子である。
【0007】
なお、特開2008−291252号公報(特許文献3)には、第1の熱可塑性樹脂で構成されたコアと、前記第1の熱可塑性樹脂とは異なる第2の熱可塑性樹脂で構成され、前記コアを被覆するシェルとを含むコアシェル構造を有する複合樹脂粒子であって、前記コアに無機粒子(酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物粒子)が偏在して複合樹脂粒子が開示されている。そして、この文献には、このような複合樹脂粒子は、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂と無機粒子と助剤(オリゴ糖など)とを溶融混練して複合樹脂粒子が前記助剤中に分散した分散体を調製し、この分散体から前記助剤を溶出することにより得られることが記載されている。この文献には、前記無機粒子は、シランカップリング剤、シリカ、ポリオルガノシロキサンのようなケイ素系表面処理剤で表面処理されていてもよいことが記載されている。なお、この文献では、前記複合樹脂粒子における無機粒子の含有割合について、コア(又は第1の熱可塑性樹脂)100重量部に対して最大でも60重量部程度であると記載されており、高濃度(例えば、樹脂粒子全体に対して50重量%以上の濃度)で無機粒子を含有させることを想定していない。また、無機粒子の粒径について、平均一次粒子径50nm以下であるのが好ましいと記載されており、比較的大きな平均一次粒子径(例えば、50nm以上)の無機粒子を高濃度でコアに含有させることについても何ら想定していない。なお、この文献で使用している酸化チタンなどは、平均一次粒子径が数十nm程度の粒子である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2636355号公報(特許請求の範囲、第2頁4欄第24〜40行、実施例)
【特許文献2】特開2005−179646号公報(特許請求の範囲、段落番号[0069]、[0072]、実施例)
【特許文献3】特開2008−291252号公報(特許請求の範囲、段落番号[0059]〜[0065]、[0067]、[0075])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、無機フィラーが凝集することなく均一にかつ高濃度で含有(内包の形態で含有)する樹脂粒子、この樹脂粒子を分散相として含む分散体、および前記樹脂粒子の製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、無機フィラー(金属酸化物など)のサイズが比較的大きくても(例えば、平均一次粒子径が50nm以上の粒子であっても)、高濃度で無機フィラーを含有する樹脂粒子、この樹脂粒子を分散相として含む分散体、および前記樹脂粒子の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、極めて高濃度(例えば、体積割合で40%以上及び/又は重量割合で70%以上)であるにもかかわらず、均一に分散した形態で無機フィラーを含む樹脂粒子、この樹脂粒子を分散相として含む分散体、および前記樹脂粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、無機フィラー(金属酸化物など)と高分子と水溶性助剤とを溶融混合し、無機フィラーを含む樹脂粒子を水溶性助剤のマトリックス中に分散させる前記方法において、表面処理剤の中でも、一般的なカップリング剤(シランカップリング剤など)により表面処理した無機フィラーを処理すると、凝集を生じやすく樹脂粒子に均一に分散させることが困難となること、さらにはこのような凝集の傾向は樹脂粒子に対する無機フィラーの濃度が高くなるほど顕著になること、また、ポリシロキサンのような表面処理剤では、均一に分散させることはおろか、前記溶融混合において無機フィラーの濃度を大きくしても、水溶性助剤のマトリックス中にも無機フィラーが分配され、無機フィラーを高濃度で樹脂粒子中に含有させることができないことを見出した。
【0013】
このような状況下、本発明者らは、さらなる検討を進めた結果、カップリング剤やポリシロキサンなどとは異なり、加水分解縮合性基と反応性を有しない疎水性基とを有する特定の化合物で表面処理された無機フィラーを使用すると、意外にも、無機フィラーの水溶性助剤のマトリックスに対する分配を防止しつつ、また、無機フィラーを凝集させることなく均一に分散した形態でかつ高濃度で樹脂粒子に含有させることができること、さらに、より一層内包の形態で含有させることが困難となる比較的大きなサイズの無機フィラー(例えば、平均一次粒子径50nm以上、特に80nm以上の光散乱又は光遮蔽に有効な粒子)であっても、確実に高濃度で均一に分散した形態で内包させることができること、特に、極めて高濃度(例えば、樹脂粒子に対して体積割合で40%以上及び/又は重量割合で70%以上)であっても、凝集することなく均一に樹脂粒子中に分散させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の樹脂粒子は、無機フィラーを含有する樹脂粒子であって、無機フィラーが、加水分解縮合性基および反応性を有しない疎水性基を有する疎水化処理剤で疎水化処理された粒子(例えば、平均一次粒子径800nm以下の粒子)であり、かつ下記の条件(1)及び/又は条件(2)を充足する。
(1)樹脂粒子全体に対する無機フィラーの体積割合が15%以上(例えば、15〜90%程度)
(2)樹脂粒子全体に対する無機フィラーの重量割合が50%以上(例えば、50〜95%程度)。
【0015】
前記樹脂粒子を構成する高分子は、通常、熱可塑性樹脂(例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、およびスチレン樹脂から選択された少なくとも1種)であってもよい。また、前記無機フィラーは、平均一次粒子径50nm以上(例えば、50〜800nm、特に80〜300nm程度)の金属酸化物粒子であってもよい。
【0016】
前記無機フィラーにおいて、疎水化処理剤は、例えば、下記式(A)で表される化合物(加水分解縮合性有機金属化合物)であってもよい。
【0017】
(X)M(R (A)
[式中、Mは金属原子、Xは水素原子、ハロゲン原子又は−OR(式中、Rは炭化水素基を示す)、Rは反応性基を有しない炭化水素基を示し、mおよびnはそれぞれ1以上の整数であり、m+nは金属原子Mの価数である。]
代表的には、前記疎水化処理剤は、下記式(A1)で表される化合物(加水分解縮合性有機ケイ素化合物)であってもよい。
【0018】
(RO)m1Si(Rn1 (A1)
(式中、m1およびn1はそれぞれ1〜3の整数であり、m1+n1は4であり、RおよびRは前記と同じ。)
前記式(A)および(A1)において、RおよびRは、アルキル基などであってもよく、特に、Rは低級アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、好ましくはC1−2アルキル基)であってもよく、また、Rは比較的炭素数が大きい(例えば、炭素数4以上、好ましくは炭素数6以上の)アルキル基であってもよい。このような疎水化処理剤には、例えば、アルキルモノ乃至トリアルコキシシラン(例えば、C4−24アルキルモノ乃至トリC1−4アルコキシシラン、好ましくはC6−20アルキルモノ乃至トリC1−4アルコキシシランなど)が含まれる。
【0019】
また、無機フィラー全体に対する疎水化処理剤の割合は、例えば、0.5〜10重量%程度であってもよい。
【0020】
本発明では、粒径が比較的大きくても極めて高濃度で樹脂粒子中に内包でき、さらには凝集させることなく均一に無機フィラーが分散した樹脂粒子を得ることができる。このような極めて高濃度で無機フィラーを含む樹脂粒子は、例えば、前記無機フィラーの平均一次粒子径が80〜500nm程度であり、樹脂粒子全体に対する無機フィラーの体積割合が40%以上であり、かつ樹脂粒子全体に対する無機フィラーの重量割合が70%以上である樹脂粒子であってもよい。
【0021】
本発明には、前記樹脂粒子が、水溶性助剤で構成された連続相に分散した分散体も含まれる。また、本発明には、この分散体から連続相を溶出し、前記樹脂粒子を製造する方法も含まれる。この方法は、前記分散体を調製(又は製造)する工程、例えば、以下の工程(1)又は工程(2)により分散体を調製(又は製造)する工程を含んでいてもよい。
【0022】
(1)無機フィラーと高分子と水溶性助剤とを溶融混合(同時に溶融混合)して分散体を調製する工程
(2)無機フィラーと高分子との溶融混合物(すなわち、無機フィラーおよび高分子を予め溶融混合し、得られた溶融混合物)と、水溶性助剤とを溶融混合して分散体を調製する工程
このような方法では、工程(1)又は(2)において、溶融混合に先立って、無機フィラーと高分子とを溶融させることなく混合する工程をさらに含んでいてもよい。
【0023】
なお、本明細書において、「高分子」「熱可塑性樹脂」などの用語は、「新版高分子辞典」(朝倉書店発行 高分子学会編:1988年11月25日初版)の定義を参照してもよい。ただし、粒子に対して「高分子」という用語を用いている場合には、上記の「新版高分子辞典」の「プラスチック」という用語と同義(天然および合成樹脂を主原料に、これに充填剤、可塑剤、安定剤、顔料などの添加剤を加えたもの)を意味してもよい。また、「樹脂粒子」のように粒子の構成物質として「樹脂」という用語を用いている場合は上記の「新版高分子辞典」で定義する「プラスチック」と同義である場合がある。また、特定高分子の名称の後に「樹脂」という用語を用いている場合は、JIS工業用大辞典 (財団法人 日本規格協会発行・編集:1996年10月20日発行 第3刷)の広義の意味、すなわち「プラスチック用の基盤材料であるいくつかの重合体を明示するためにも使用される。」と同一の意味であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、特定の疎水化処理剤で処理した無機フィラーを用い、この無機フィラーと水溶性助剤とを組み合わせることにより、無機フィラーのサイズが比較的大きくても、無機フィラーが凝集することなく均一にかつ高濃度で含有している樹脂粒子(特に球状の樹脂粒子)を得ることができる。特に、本発明では、極めて高濃度(例えば、重量割合で70%以上及び/又は体積割合で40%以上)であるにもかかわらず、均一に分散した形態で無機フィラーを含む樹脂粒子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施例5で得られた樹脂粒子の電子顕微鏡写真である。
【図2】図2は、実施例8で得られた樹脂粒子の電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、実施例9で得られた樹脂粒子の電子顕微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例2で得られた樹脂粒子の断面の電子顕微鏡写真である。
【図5】図5は、実施例3で得られた樹脂粒子の断面の電子顕微鏡写真である。
【図6】図6は、実施例8で得られた樹脂粒子の断面の電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、実施例9で得られた樹脂粒子の断面の電子顕微鏡写真である。
【図8】図8は、参考例1で得られた樹脂粒子の断面の電子顕微鏡写真である。
【図9】図9は、参考例2で得られた樹脂粒子の断面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の樹脂粒子は、無機フィラーを含む樹脂粒子であり、前記無機フィラーは特定の疎水化処理剤で疎水化処理されている。すなわち、樹脂粒子は、高分子と無機フィラーとで構成されている。
【0027】
[高分子]
樹脂粒子を構成する高分子(樹脂)は、無機フィラーを高濃度で含有させることができればよいが、通常、熱可塑性樹脂であってもよい。代表的な高分子としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ(チオ)エーテル樹脂[例えば、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルフィド樹脂、ポリ(チオ)エーテルケトン樹脂(ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドケトンなど)など]、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂(例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなど)、熱可塑性シリコーン樹脂などの縮合系熱可塑性樹脂;ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂などのビニル重合系熱可塑性樹脂;セルロース誘導体などの天然物由来高分子;熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0028】
これらの高分子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0029】
以下、代表的な高分子として、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂について詳述する。
【0030】
(ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミド、脂環族ポリアミド、芳香族ポリアミドなどが挙げられ、通常、脂肪族ポリアミドや脂環族ポリアミドが使用される。これらのポリアミド樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0031】
脂肪族ポリアミドとしては、C4−10アルキレンジアミンとC4−20アルカンジカルボン酸との縮合物(例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1212など)、ラクタム(ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのC4−20ラクタムなど)又はアミノカルボン酸(ω−アミノウンデカン酸などの炭素数C4−20アミノカルボン酸など)の単独又は共重合体(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12など)、これらのポリアミド成分が共重合したコポリアミド(例えば、ポリアミド6/11,ポリアミド6/12,ポリアミド66/11,ポリアミド66/12など)などが挙げられる。
【0032】
さらに、ポリアミド樹脂には、前記脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC4−10アルキレンジアミン)と前記脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4−20アルキレンジカルボン酸など)と脂肪族ジオール成分(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどのC2−12アルキレングリコールなど)との縮合物であるポリエステルアミドも含まれる。
【0033】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合、オキシカルボン酸成分(例えば、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ヒドロキシフェニル酢酸、グリコール酸、乳酸、オキシカプロン酸およびこれらの誘導体)又はラクトン成分(ε−カプロラクトンなどのC3−12ラクトンなど)の重縮合(又は開環重合)、またはこれらの成分の重縮合などにより得られるホモ又はコポリエステルなどが挙げられる。ポリエステル樹脂は、脂肪族ポリエステル、脂環族ポリエステル、芳香族ポリエステルや全芳香族ポリエステルであってもよい。ポリエステル樹脂は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0034】
代表的なポリエステル樹脂としては、例えば、ポリアルキレンアリレート樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリC2−6アルキレン−C6−10アリレート、ポリ(1,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレートなど)、アルキレンアリレート単位(例えば、C2−6アルキレン−アリレート単位)を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステル[例えば、ジオール成分の一部として(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール(ジエチレングリコールなど)を使用したコポリエステル、ジカルボン酸成分の一部としてC6−12脂環族ジカルボン酸(例えば、ヘキサヒドロテレフタル酸など)やイソフタル酸、フタル酸などの非対称性芳香族ジカルボン酸を使用したコポリエステルなど]などが含まれる。
【0035】
(ポリオレフィン樹脂)
ポリオレフィン樹脂には、例えば、α−C2−6オレフィンの単独又は共重合体[例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体などのエチレン−α−オレフィン共重合体)、ポリプロピレン(ポリプロピレンなど)、ポリ(メチルペンテン−1)など]、α−C2−6オレフィンと共重合性単量体との共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体又はその塩、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)、環状オレフィン樹脂などが挙げられる。ポリオレフィン樹脂は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0036】
環状オレフィン樹脂(シクロオレフィン樹脂)は、環状オレフィン(単環式オレフィン及び/又は多環式オレフィン)を少なくとも重合成分とする高分子であればよく、多環式オレフィンには、例えば、二乃至六環式オレフィン、特にノルボルネン系単量体(又はノルボルネン骨格を有する単量体、例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどのアルキルノルボルネンなどのノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類など)などが挙げられる。環状オレフィンは、置換基を有していてもよい。
【0037】
環状オレフィン樹脂は、環状オレフィンの単独又は共重合体であってもよく、環状オレフィンと共重合性単量体{例えば、鎖状オレフィン[例えば、α−オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどのC2−10α−オレフィン類、特にC2−6α−オレフィン類)など]、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸など)、不飽和ジカルボン酸又はその誘導体(無水マレイン酸など)]との共重合体(シクロオレフィンコポリマー)であってもよい。代表的な共重合性単量体には、鎖状オレフィン(エチレン、プロピレン、1−ブテンなど)が挙げられる。共重合性単量体は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。共重合体において、共重合性単量体(例えば、α−オレフィン類)の割合は特に制限されず、少割合(例えば、1〜25モル%、好ましくは2〜20モル%程度)であってもよい。
【0038】
なお、環状オレフィン樹脂は、付加重合により得られた高分子であってもよく、開環重合(開環メタセシス重合など)により得られた高分子であってもよい。
【0039】
なお、環状オレフィン樹脂は、慣用の重合方法(例えば、チーグラー型触媒を用いた付加重合、メタセシス重合触媒を用いた開環メタセシス重合など)により調製してもよく、市販品を使用してもよい。例えば、環状オレフィン樹脂は、ティコナ社から商品名「TOPAS」、日本ゼオン(株)から商品名「ZEONEX」「ゼオノア」、JSR(株)から商品名「ARTON」、三井化学(株)から商品名「アペル」などとして入手することもできる。
【0040】
((メタ)アクリル樹脂)
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリルなど)の単独又は共重合体、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS高分子など)などが挙げられる。(メタ)アクリル樹脂は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0041】
(スチレン樹脂)
スチレン樹脂としては、スチレン系単量体(スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなど)の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−α−メチルスチレン共重合体など)、スチレン系単量体と共重合性単量体との共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、スチレン−無水マレイン酸共重合体など)、ゴム含有スチレン樹脂[例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などのブロック共重合体;ゴム成分の存在下、少なくともスチレン系単量体をグラフト重合したグラフト重合体、例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS、又はゴムグラフトポリスチレン系高分子)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、このABS樹脂のブタジエンゴムBに代えて、エチレンプロピレンゴムE、アクリルゴムA、塩素化ポリエチレンC、酢酸ビニル重合体などのゴム成分を用いたグラフト共重合体(AES樹脂,AAS樹脂,ACS樹脂などのAXS樹脂)、アクリロニトリルに代えて(メタ)アクリル系単量体(メタクリル酸メチルなど)を用いたグラフト共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体(MBS樹脂)など)など]などが挙げられる。スチレン樹脂は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0042】
本発明では、後述する特定の無機フィラー、さらには分散体を用いることにより、疎水性の程度によらず、広い範囲の高分子において、均一に分散した形態で、しかも高濃度に無機フィラーを含有させることができる。
【0043】
(無機フィラー)
無機フィラー(無機粒子又は充填剤)としては、例えば、金属酸化物(微粉末シリカ(無水物)、ホワイトカーボン(含水物)などのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化チタン、酸化鉄、酸化ストロンチウム、酸化セリウム、酸化亜鉛など)、金属水酸化物(水酸化アルミニウムなど)、金属塩(硫酸塩、炭酸カルシウムなどの炭酸塩;リン酸カルシウム、リン酸チタンなどのリン酸塩;マイカ、珪酸カルシウム、ベントナイト、ゼオライト、麦飯石、タルク、モンモリロナイトなどのケイ酸塩;タングステン酸カルシウムなどのタングステン酸塩;チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸アルミニウムなどのチタン酸塩など)、金属窒化物(窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタンなど)、金属炭化物(炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンなど)、金属ホウ化物(ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウムなど)、金属(金、プラチナ、パラジウムなど)、炭素(カーボンブラック、黒鉛、フラーレン、カーボンナノチューブなど)などが例示できる。無機フィラーは、繊維状(例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ウィスカーなど)などであってもよいが、粉粒状であるのが好ましい。無機フィラーは、強磁性体、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属(粉末);マグネタイト、フェライトなどの強磁性合金(粉末);磁性酸化鉄などの強磁性金属酸化物(粉末)などであってもよい。これらの無機フィラーは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0044】
なお、無機フィラー(無機充填剤)は、後述の分散体の調製の際に、通常、高分子の混練温度において溶融しない場合が多い。
【0045】
無機フィラーには、着色剤、例えば、顔料[無機着色剤(無機顔料)]も含まれる。着色剤は、無彩色であってもよく有彩色(黄色、橙色、赤色、紫色、青色、緑色など)であってもよい。
【0046】
無機フィラーは、紫外線吸収性(又は遮断性)などの種々の機能を有していてもよい。代表的な無機フィラーには、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物(又は金属酸化物粒子)が含まれる。なお、無機フィラーは、シリカ、アルミナなどにより表面処理されていてもよく、されていなくてもよい。このような表面処理(剤)は、後述する疎水化処理(剤)には該当しない。
【0047】
無機フィラー(無機粒子又は充填剤)の平均粒子径(一次粒子径)は、樹脂粒子のサイズに応じて選択できるが、通常、800nm以下の範囲から選択でき、例えば、1〜700nm、好ましくは3〜600nm、さらに好ましくは5〜500nm程度であってもよい。特に、無機フィラーの平均一次粒子径は、50nm以上(例えば、50〜800nm)、好ましくは60nm以上(例えば、60〜700nm)、さらに好ましくは70nm以上(例えば、70〜600nm)、特に80〜500nm(例えば、80〜300nm)、通常50〜800nm程度であってもよく、100nm以上(例えば、100〜800nm、好ましくは120〜600nm、さらに好ましくは150〜400nm程度)であってもよい。通常、粒子径が大きくなるほど樹脂中に無機フィラーを樹脂粒子中に含有(内包)させることが困難になるが、本発明では、このような比較的大きな粒径の無機フィラーであっても、高濃度でかつ均一に樹脂粒子に分散させることができる。なお、前記特許文献2や特許文献3で使用している酸化チタンなどは、平均一次粒子径が数十nm程度の粒子である。
【0048】
なお、無機フィラーの比表面積は、例えば、0.5〜100m/g、好ましくは1〜60m/g、さらに好ましくは3〜50m/g(例えば、5〜30m/g)程度であってもよい。
【0049】
また、無機フィラーの密度は、例えば、2g/cm以上(例えば、2〜50g/cm)の範囲から選択でき、例えば、2.5g/cm以上(例えば、2.7〜40g/cm)、好ましくは3g/cm以上(例えば、3.2〜30g/cm)、さらに好ましくは3.5g/cm以上(例えば、3.7〜20g/cm)であってもよく、通常4g/cm以上(例えば、4〜10g/cm程度)であってもよい。
【0050】
本発明では、無機フィラーとして、特定の疎水化処理剤で疎水化処理された無機フィラーを用いる。このような疎水化処理された無機フィラーを用いると、後述の分散体を調製する際に、樹脂粒子中に確実にかつ均一に無機フィラーを分散させることができる。特に、高濃度であっても、無機フィラーを均一に樹脂粒子中に含有させることができる。なお、疎水化処理は、疎水化処理剤で無機フィラーを処理(又は被覆処理)することにより行うことができる。
【0051】
疎水化処理剤は、前記のように、加水分解縮合性基と、反応性を有しない疎水性基とを有している。なお、一般的なカップリング剤(シランカップリング剤など)は、通常、金属原子に、加水分解縮合性基に加えて、反応性を有する基(例えば、アミノアルキル基、メルカプトアルキル基)が直接結合した構造を有しており、ポリシロキサンなどの加水分解縮合物は、加水分解縮合性基を有していないか又は加水分解縮合性基の濃度が極めて低濃度であり、本発明における疎水化処理剤とは異なる。
【0052】
疎水化処理剤において、加水分解縮合性基としては、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子など)、基−OR(式中、Rは炭化水素基)、基−O[(RO)−R](式中、aは1以上の整数を示し、RおよびRは同一又は異なって炭化水素基を示す)などが挙げられる。基−OR又は基−O[(RO)−R]において、炭化水素基R,Rとしては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのC1−8アルキル基、好ましくはC1−6アルキル基、さらに好ましくはC1−4アルキル基、特にC1−2アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などのC5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基などのC6−10アリール基)などが挙げられる。これらのうち、好ましい炭化水素基R,Rには、アルキル基(例えば、C1−4アルキル基など)などが含まれる。また、基−O[(RO)−R]において、炭化水素基(二価の炭化水素基)Rとしては、例えば、アルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基などのC2−6アルキレン基、好ましくはC2−4アルキレン基など)などが挙げられる。前記aは、例えば、1〜10、好ましくは1〜4程度であってもよく、複数の基Rは同一又は異なる基であってもよい。
【0053】
なお、このような加水分解縮合性基は、金属原子(ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウムなど)に直接結合している場合が多い。また、このような加水分解縮合性基は、後述のような反応性基を有していてもよく、通常、有していなくてもよい。疎水化処理剤は、これらの加水分解縮合性基を単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。
【0054】
また、疎水化処理剤において、反応性(反応性基)を有しない疎水性基(非反応性疎水性基)としては、炭化水素基(前記例示の基など)などが挙げられる。また、前記疎水性基は、反応性を有していない。具体的には、疎水性基は、反応性基[例えば、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基(又はエポキシ基)、重合性基(ビニル基、(メタ)アクリロイル基など)など](詳細には置換基としての反応性基)を有していない場合が多い。代表的な前記疎水性基には、例えば、アルキル基(前記例示の基など)、アリール基(前記例示の基など)などが挙げられる。好ましい疎水性基には、炭素数4以上のアルキル基[例えば、C4−24アルキル基、好ましくは炭素数6以上のアルキル基(例えば、C6−20アルキル基、特にC6−16アルキル基)、さらに好ましくは炭素数8以上のアルキル基(例えば、C8−20アルキル基、特にC8−16アルキル基)など]などが挙げられる。なお、このような疎水性基は、金属原子に直接結合している場合が多い。疎水化処理剤は、前記疎水性基を単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。
【0055】
このような疎水化処理剤には、下記式(A)で表される化合物が含まれる。
【0056】
(X)M(R (A)
[式中、Mは金属原子、Xは水素原子、ハロゲン原子又は−OR(式中、Rは低級アルキル基などの炭化水素基を示す)、Rは反応性基を有しない炭化水素基を示し、mおよびnはそれぞれ1以上の整数であり、m+nは金属原子Mの価数である。]
上記式(A)において、金属原子Mとしては、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウムなどが挙げられ、ケイ素が好ましい。また、Rには前記例示の炭化水素基(R又はR)と同様の基(例えば、アルキル基、アリール基など)などが含まれ、Rには前記例示の炭化水素基(反応性基を有しない炭化水素基)と同様の基(例えば、アルキル基、アリール基など、好ましくは炭素数4以上のアルキル基、さらに好ましくは炭素数6以上のアルキル基)などが含まれる。RおよびRは同一又は異なる基であってもよい。また、Rが複数個であるとき、Rは同一又は異なる基であってもよく、Rもまた複数個(nが2以上)であるとき同一又は異なる基であってもよい。m又はnは金属原子の価数に応じて選択でき、それぞれ、1〜4、好ましくは1〜3程度であり、m+nの値は、通常、2〜8、好ましくは3〜6程度である。
【0057】
疎水化処理剤は、代表的には下記式(A1)で表される化合物(加水分解縮合性有機ケイ素化合物)が含まれる。
【0058】
(RO)m1Si(Rn1 (A1)
(式中、m1およびn1はそれぞれ1〜3の整数であり、m1+n1は4であり、RおよびRは前記と同じ。)
具体的な疎水化処理剤としては、例えば、アルキルアルコキシシラン{例えば、アルキルモノアルコキシシラン(例えば、オクチルジメチルメトキシシランなどのトリC1−24アルキルモノアルコキシシラン)、アルキルジアルコキシシラン[例えば、ジアルキルジアルコキシシラン(例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシランなどのジC1−24アルキルジC1−4アルコキシシラン、好ましくはジC1−18アルキルジC1−4アルコキシシラン、さらに好ましくはジC1−12アルキルジC1−2アルコキシシランなど)、シクロアルキルアルキルジアルコキシシラン(シクロヘキシルメチルジメトキシシランなどのC5−10シクロアルキル−C1−24アルキルジC1−4アルコキシシラン)など]、アルキルトリアルコキシシラン(例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどのC1−24アルキルトリC1−4アルコキシシラン、C1−18アルキルトリC1−4アルコキシシラン、C1−12アルキルトリC1−2アルコキシシランなど)などのモノ乃至トリアルキルアルコキシシラン}、アリールアルコキシシラン[例えば、ジアリールジアルコキシシラン(例えば、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのジC6−10アリールジC1−4アルコキシシランなど)、アリールトリアルコキシシラン(例えば、フェニルトリメトキシシランなどのC6−10アリールトリC1−4アルコキシシランなど)などのモノ乃至トリアリールアルコキシシラン]などのケイ素原子に炭化水素基が直接結合したアルコキシシラン(モノ乃至トリアルコキシシラン);これらのアルコキシシランに対応するハロシラン[例えば、アルキルモノ乃至トリハロシラン(例えば、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、n−オクチルジメチルクロロシランなど)など]などのケイ素原子に炭化水素基が直接結合したハロシラン(モノ乃至トリハロシラン);アルキルアルコキシチタン[例えば、ジアルキルジC1−4アルコキシチタネート(ジエチルジエトキシチタネートなど)、アルキルトリC1−4アルコキシチタネート(エチルトリメトキシチタネートなど)など]、アリールアルコキシチタン[アリールトリC1−4アルコキシチタネート(フェニルトリメトキシチタネートなど)など]などの前記アルコキシシラン又は前記ハロシランに対応するチタン化合物などが挙げられる。
【0059】
好ましい疎水化処理剤には、アルキルアルコキシシラン(例えば、C1−24アルキルモノ乃至アルコキシシラン、好ましくはC1−18アルキルモノ乃至C1−4アルコキシシラン、さらに好ましくはC1−12アルキルモノ乃至C1−4アルコキシシランなど)などのアルコキシシラン(前記式(A1)で表される化合物)が含まれる。アルキルアルコキシシランの中でも、比較的炭素数の大きいアルキル基(例えば、炭素数4以上のアルキル基、好ましくは炭素数6以上のアルキル基)がケイ素原子に直接結合したアルコキシシラン[例えば、C4−24アルキルモノ乃至トリC1−4アルコキシシラン、好ましくはC4−20アルキルモノ乃至トリC1−4アルコキシシラン、さらに好ましくはC6−20アルキルモノ乃至トリC1−4アルコキシシラン(例えば、C6−16アルキルモノ乃至トリC1−4アルコキシシラン)、特にC6−12アルキルモノ乃至トリC1−4アルコキシシラン(例えば、C8−12アルキルモノ乃至トリC1−2アルコキシシラン)など]が好ましい。
【0060】
疎水化処理剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0061】
無機フィラー全体に対する疎水化処理剤の割合は、無機フィラー(金属酸化物粒子など)および疎水化処理剤の種類や、無機フィラーの被表面積などに応じて選択できるが、例えば、0.1〜15重量%(例えば、0.3〜12重量%)、好ましくは0.5〜10重量%(例えば、0.7〜8重量%)、さらに好ましくは1〜7重量%(例えば、1.5〜5重量%)程度であってもよい。
【0062】
なお、無機フィラーは、本発明の効果を害しない範囲であれば、前記疎水化処理剤に加えて、他の表面処理剤、例えば、ポリシロキサン(ポリオルガノシロキサン)、シランカップリング剤で表面処理されていてもよい。
【0063】
[樹脂粒子]
本発明の樹脂粒子(複合樹脂粒子)は高濃度で無機フィラーを含有(内包)しており、前記樹脂粒子全体に対する無機フィラーの体積割合は、15%以上(例えば、15〜95%程度)の範囲から選択でき、好ましくは15〜90%(例えば、16〜85%)、さらに好ましくは17〜80%(例えば、18〜75%)、通常15〜90%程度であってもよい。特に、本発明の樹脂粒子では、前記樹脂粒子全体に対する無機フィラーの体積割合を、20%以上(例えば、25〜95%程度)、好ましくは30%以上(例えば、35〜85%程度)、さらに好ましくは40%以上(例えば、45〜75%程度)とすることもでき、このような極めて高濃度であっても無機フィラーを樹脂粒子中に均一に分散できる。
【0064】
また、前記樹脂粒子全体に対する無機フィラーの重量割合は、例えば、50%以上(例えば、50〜98%程度)の範囲から選択でき、好ましくは53〜96%(例えば、55〜95%)、さらに好ましくは56〜90%(例えば、57〜88%)、通常50〜95%程度であってもよい。特に、本発明の樹脂粒子では、前記樹脂粒子全体に対する無機フィラーの重量割合を、60%以上(例えば、65〜98%程度)、好ましくは65%以上(例えば、68〜95%程度)、さらに好ましくは70%以上(例えば、75〜90%程度)とすることもでき、このような極めて高濃度であっても無機フィラーを樹脂粒子中に均一に分散できる。
【0065】
なお、本発明の樹脂粒子は、上記体積割合及び重量割合のうち、少なくともいずれか一方を充足してもよく、通常上記体積割合および重量割合を充足する場合が多い。
【0066】
樹脂粒子の形状は、特に球状(又は真球状)が好ましい。本発明では、後述の分散体を用いることにより、球状の樹脂粒子を効率よく得ることができる。
【0067】
なお、樹脂粒子において、無機フィラーは、通常、樹脂粒子に内包される形態で含まれていればよく、無機フィラーのごく一部が樹脂粒子表面を被覆(又は露出又は表面に付着)する形態で樹脂粒子に含まれていてもよい。本発明の樹脂粒子は、前記のような樹脂粒子に無機フィラーが内包されているため、粒子表面が比較的平滑であってもよい。樹脂粒子表面の平滑性(又は凹凸性)は、例えば、樹脂粒子が真球であると仮定して平均粒子径から計算される粒子1g当たりの表面積SAcと、窒素吸着法で測定される樹脂粒子1g当たりの比表面積SAtとに基づいて評価できる。すなわち、表面積SAcに対する比表面積SAtの比(SAt/SAc)が大きくなると、表面に存在する無機フィラーによってもたらされる粒子表面の凹凸形状により比表面積が大きくなる。本発明の樹脂粒子は、このようなSAt/SAcの値が、1〜4、好ましくは1〜3.5、さらに好ましくは1〜3.3(例えば、1〜3)、特に1〜2.5程度であってもよい。
【0068】
本発明の樹脂粒子の体積平均粒子径(Dw)は、用途に応じて適宜選択できるが、例えば、0.3〜100μm(例えば、0.4〜80μm)程度の範囲から選択でき、好ましくは0.5〜60μm(例えば、1〜50μm)、さらに好ましくは1.5〜30μm程度であってもよい。樹脂粒子の体積平均粒子径(Dw)は、通常、1〜80μm(例えば、3〜50μm)程度であり、用途によっては20〜70μm、好ましくは30〜60μm(例えば、30〜50μm)程度が適当な場合がある。
【0069】
本発明の樹脂粒子において、数平均粒子径Dn[μm]に対する体積平均粒子径Dw[μm]の比Dw/Dnは、1〜6、好ましくは1.05〜5、さらに好ましくは1.1〜4程度であってもよい。
【0070】
本発明の樹脂粒子は、特に限定されないが、通常、分散相としての前記樹脂粒子(無機フィラーを含有する樹脂粒子)が、助剤で構成された連続相に分散した分散体から、前記助剤を除去(溶出)して得られる。そのため、本発明には、このような分散体(および分散体から前記助剤を溶出して前記樹脂粒子を製造する方法)も含まれる。以下に、分散体(樹脂粒子を分散相とする分散体)について詳述する。
【0071】
[分散体および樹脂粒子の製造方法]
前記分散体は、助剤(詳細には高分子に対して非相溶の助剤)と、この助剤中に分散した前記樹脂粒子とで構成されている。すなわち、前記分散体は、分散相(又は分散相粒子)としての前記樹脂粒子と、連続相(又はマトリックス)としての前記助剤とで構成されている。
【0072】
(助剤)
前記助剤としては、通常、水溶性助剤を使用できる。助剤として水溶性助剤を選択すると、分散相と連続相との非相溶性の要件を容易に満たすことができる。なお、本発明では、前記のように、高濃度の無機フィラーを樹脂粒子中に均一に分散できるが、このような効果は、前記疎水化処理剤により、マトリックスとしての水溶性助剤に対する無機フィラーの非相溶性を容易に向上できる点にもあるようである。このような助剤としては、溶融成形可能な水溶性高分子、多糖類などが挙げられる。水溶性高分子は、水溶性で溶融成形が可能な高分子であれば特に限定されず、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール又はポリエチレンオキサイドなどが挙げられる。好ましい水溶性高分子は、ポリビニルアルコール[特に、オキシアルキレン基を含有するエチレン性不飽和モノマーと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物などのオキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール]が好適に用いられる。
【0073】
助剤は、特に、多糖類、例えば、カラメル、変性澱粉、エーテル化セルロース、エーテルエステル化セルロース、エステル化セルロースで構成してもよい。これらの中でも、助剤は、特に水溶性多糖類、特に、オリゴ糖および少なくとも1つの環状構造を有する水溶性多糖類(環状構造を有する多糖類、環状多糖類などということがある)から選択された少なくとも一種の水溶性多糖類で構成されているのが好ましく、両者を組み合わせて使用してもよい。水溶性多糖類を使用することにより、溶融粘度を容易に調整でき、無機粒子を樹脂粒子に効率よく内包させることができる。また、樹脂粒子の粒子径などを効率よくコントロールできる。そして、このような水溶性多糖類を用いると、分散体を溶出又は洗浄して樹脂粒子を得る場合に、溶媒に溶解した助剤の溶液粘度が高くなることがなく、簡便に樹脂粒子を得ることができる。
【0074】
(オリゴ糖)
オリゴ糖は、ホモオリゴ糖とヘテロオリゴ糖とに大別され、これらのオリゴ糖は無水物でもよい。また、オリゴ糖において、単糖類と糖アルコールとが結合していてもよい。また、オリゴ糖は複数の糖成分で構成されたオリゴ糖組成物であってもよい。このようなオリゴ糖組成物であっても単にオリゴ糖という場合がある。オリゴ糖(又はオリゴ糖組成物)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。オリゴ糖には、二糖類〜十糖類などが含まれる。
【0075】
二糖類としては、トレハロース、マルトースなどのホモオリゴ糖;ラクトース、スクロース、パラチノースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。三糖類としては、マルトトリオースなどのホモオリゴ糖;マンニノトリオース、ソラトリオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。四糖類としては、マルトテトラオースなどのホモオリゴ糖;パノースなどの還元末端に糖又は糖アルコール(グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、アラビノースなどの単糖類や、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールなど)が結合したテトラオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。五糖類としては、マルトペンタオースなどのホモオリゴ糖;パノースの還元末端に二糖類(スクロース、ラクトース、セロビオース、トレハロースなど)が結合したペンタオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。六糖類としては、マルトヘキサオース、イソマルトヘキサオースなどのホモオリゴ糖などが挙げられる。
【0076】
オリゴ糖は、多糖類の分解により生成するオリゴ糖組成物であってもよい。オリゴ糖組成物としては、例えば、デンプン糖(デンプン糖化物)、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、フルクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖などが挙げられ、これらの成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。例えば、デンプン糖は、複数個のグルコースが結合したオリゴ糖の混合物であってもよい。
【0077】
また、このようなオリゴ糖組成物(オリゴ糖混合物)は、前記と同様に、糖アルコールと結合していてもよい。すなわち、オリゴ糖組成物(又はオリゴ糖組成物を構成するオリゴ糖)は、オリゴ糖単位と、このオリゴ糖単位に結合した糖アルコール単位とを有していてもよい。このような糖アルコール単位は、通常、オリゴ糖単位の末端に位置する場合が多い。すなわち、オリゴ糖組成物を構成するオリゴ糖は、末端が還元された糖アルコール単位を有していてもよい。なお、このような糖アルコール単位を有するオリゴ糖組成物は、例えば、オリゴ糖組成物(デンプン糖など)を還元することにより得られる。
【0078】
オリゴ糖組成物は、比較的大きい多量体のオリゴ糖を多く含んでいてもよく、例えば、オリゴ糖組成物において、二十糖類以上のオリゴ糖の含有割合は、20重量%以上(例えば、25〜100重量%)、好ましくは30重量%以上(例えば、35〜90重量%)、さらに好ましくは40重量%以上(例えば、45〜80重量%)、特に50〜70重量%程度であってもよく、通常40〜75重量%程度であってもよい。
【0079】
オリゴ糖は、非還元型であってもよいが、還元型(マルトース型)のオリゴ糖は、耐熱性に優れるため好ましい。還元型のオリゴ糖としては、遊離のアルデヒド基又はケトン基を有し、還元性を示す糖であれば、特に限定されない。
【0080】
溶融混合により、効果的に高分子と助剤とを分散させるためには、オリゴ糖の粘度は高いのが望ましい。具体的には、B型粘度計を用いて温度25℃で測定したとき、オリゴ糖の50重量%水溶液の粘度は、0.1Pa・s以上(例えば、0.2〜2Pa・s程度)、好ましくは0.3Pa・s以上(例えば、0.4〜1.5Pa・s、特に0.45〜1Pa・s程度)、さらに好ましくは0.5Pa・s以上(例えば、0.5〜0.9Pa・s程度)であってもよい。
【0081】
なお、オリゴ糖の種類(例えば、還元デンプン糖化物などのデンプン糖など)によっては、融点又は軟化点を示さず、分解(熱分解)する場合がある。このような場合、分解温度をオリゴ糖の「融点又は軟化点」としてもよい。
【0082】
オリゴ糖の融点又は軟化点と、高分子の熱変形温度との温度差は、例えば、1℃以上(例えば、1〜80℃程度)、好ましくは10℃以上(例えば、10〜70℃程度)、さらに好ましくは15℃以上(例えば、15〜60℃程度)である。オリゴ糖の融点又は軟化点は、高分子の種類などに応じて、70〜300℃の範囲で選択でき、例えば、90〜290℃、好ましくは100〜280℃(例えば、110〜270℃)、さらに好ましくは120〜260℃(例えば、130〜260℃)程度であってもよい。
【0083】
(環状構造を有する水溶性多糖類)
溶融粘度を高めるには、助剤(又は水溶性媒体)を少なくとも1つの環状構造を有する水溶性多糖類で構成してもよい。環状構造を有する水溶性多糖類において、環状構造(環状骨格、環状ユニット、環状部位)は、多糖類を構成する複数のグリコース単位[通常、グルコース単位(特にD−グルコース)]がグルコシド結合(又はグルコシル化)して形成された環であればよい。
【0084】
環状構造を形成するグリコース単位の平均重合度は、1つの環状構造あたり10以上であってもよい。また、前記環状構造を有する水溶性多糖類において、環状構造は、1,6−グルコシド結合を含む環状構造(又は環、環状ユニット)であってもよく、例えば、α−1,4−グルコシド結合とα−1,6−グルコシド結合とを有する環状構造であってもよい。
【0085】
代表的には、環状構造を有する水溶性多糖類は、α−1,4−グルコシド結合およびα−1,6−グルコシド結合を有し、1つの環状構造あたりグリコース単位の平均重合度が10以上である環状構造と、この環状構造に結合した非環状構造とを有し、かつ平均重合度(総平均重合度)50以上である多糖類で構成されていてもよい。
【0086】
環状構造を有する水溶性多糖類は、オリゴ糖などに比べて溶融粘度が高く、しかも、その環状構造によるためか、水溶性を示す。このような特定の多糖類を使用することにより、オリゴ糖などに比べて溶融混練において高い剪断粘度を保持できるため、可塑又は溶融粘度が高く、しかも、水溶性であるため、水などにより容易に除去可能である。
【0087】
前記多糖類において、環状構造は、複数のグルコシド結合で構成されていればよく、α−グルコシド結合又はβ−グルコシド結合で構成されていてもよく、通常、α−グルコシド結合で構成されていてもよい。
【0088】
環状構造(1つの環状構造あたり)の平均重合度(数平均重合度、環状構造を形成する平均グルコシド結合数、環状構造を形成するグリコース単位の平均重合度)は、例えば、10以上(例えば、10〜500程度)、好ましくは12以上(例えば、12〜300程度)、さらに好ましくは14以上(例えば、14〜100程度)であってもよい。
【0089】
また、環状構造を構成するグルコシド結合において環状構造は、通常、少なくとも1,4−グルコシド結合(特に、α−1,4−グルコシド結合)で形成された環であればよく、1,4−グルコシド結合(特に、α−1,4−グルコシド結合)と1,6−グルコシド結合(特に、α−1,6−グルコシド結合)とで形成された環であってもよい。
【0090】
このような1,6−グルコシド結合を含む環において、環状構造(1つの環状構造あたり)における1,6−グルコシド結合の平均数は、1以上(例えば、1〜700程度)であればよく、例えば、1〜300(例えば、1〜200)、好ましくは1〜100(例えば、1〜50)、さらに好ましくは1〜20(例えば、1〜10)であってもよい。
【0091】
また、環状構造を有する水溶性多糖類は、少なくとも1つの環状構造(環状ユニット)を有していればよく、複数の環状構造を有していてもよい。
【0092】
なお、環状構造を有する水溶性多糖類の平均重合度(数平均重合度、総平均重合度、多糖類全体の平均重合度)は、例えば、14以上(例えば、14〜15000)、好ましくは17以上(例えば、17〜10000)、さらに好ましくは20以上(例えば、20〜8000程度)であってもよい。
【0093】
なお、環状構造を有する水溶性多糖類は、誘導体化(又は変性)されていてもよい。例えば、環状構造を有する水溶性多糖類は、ヒドロキシル基(アルコール性ヒドロキシル基)が誘導体化[例えば、エーテル化(例えば、メチルエーテル化などのアルキルエーテル化;ヒドロキシエチルエーテル化、ヒドロキシプロピルエーテル化などのヒドロキシアルキルエーテル化;グリセリル化など)、エステル化、グラフト化、架橋化など]された誘導体であってもよい。
【0094】
環状構造を有する水溶性多糖類は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0095】
代表的な環状構造を有する水溶性多糖類には、環状構造(又は環状ユニット)とこの環状構造に結合した非環状構造(非環状骨格、非環状ユニット非環状部位)とを有し、かつ平均重合度50以上である多糖類、14以上のα−1,4−グルコシド結合で形成された環状構造を分子内に一つ有する多糖類などが挙げられる。
【0096】
なお、環状構造を有する水溶性多糖類の詳細については、特開2007−119674号公報を参照できる。
【0097】
助剤において、水溶性多糖類は、オリゴ糖単独、又は環状構造を有する水溶性多糖類単独で構成してもよく、オリゴ糖および環状構造を有する水溶性多糖類で構成してもよい。オリゴ糖と環状構造を有する多糖類とを組み合わせる場合、オリゴ糖と環状構造を有する多糖類との割合は、前者/後者(重量比)=1/99〜99/1、好ましくは5/95〜95/5、さらに好ましくは10/90〜90/10(例えば、15/85〜85/15)程度であってもよい。
【0098】
(水溶性可塑化成分)
助剤は、さらに、前記水溶性多糖類[オリゴ糖(例えば、六糖類以上の糖数のオリゴ糖)及び/又は環状構造を有する水溶性多糖類]を可塑化するための水溶性可塑化成分を含んでいてもよい。水溶性多糖類と水溶性可塑化成分とを組み合わせると、熱分解する水溶性多糖類(オリゴ糖など)であっても有効に可塑化又は軟化できる。可塑化成分の融点又は軟化点は、高分子の熱変形温度(前記ビカット軟化点)以下であってもよい。
【0099】
水溶性可塑化成分は、糖類や糖アルコールなどで構成してもよく、このような糖類は、還元糖で構成してもよい。水溶性可塑化成分は、特に糖アルコールであってもよい。糖アルコールは、テトリトール(例えば、エリスリトールなど)、ペンチトール(例えば、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトールなど)、ヘキシトール(例えば、ソルビトール、ズルシトール、マンニトールなど)、ヘプチトール、オクチトール、ノニトール、デキトール、ドデキトールなどで構成してもよい。これらの糖アルコールのうち、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール及びマンニトールが好ましい。
【0100】
糖アルコールは、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトールから選択された少なくとも1つの糖アルコールを含む場合が多い。
【0101】
助剤において、水溶性多糖類と可塑化成分との割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜20/80、好ましくは97/3〜30/70、さらに好ましくは95/5〜40/60程度であってもよく、通常95/5〜50/50(例えば、93/7〜60/40)程度であってもよい。なお、助剤のオリゴ糖と可塑化成分の詳細については、特開2004−51942号公報に記載されている。また、糖アルコールの詳細については、特開2005−162841号公報に記載されている。
【0102】
分散体において、前記樹脂粒子と前記助剤との割合は、例えば、前者/後者(体積比)=5/95〜50/50、好ましくは10/90〜40/60、より好ましくは15/85〜35/65程度である。
【0103】
(分散体の製造方法)
本発明の分散体は、通常、前記無機フィラーと、前記高分子と、前記助剤と(必要に応じてさらに他の成分と)を溶融混練(又は溶融混合)することにより製造できる。すなわち、前記樹脂粒子の製造方法は、通常、前記無機フィラーと、前記高分子と、前記助剤と(必要に応じてさらに他の成分と)を溶融混練(又は溶融混合)して分散体を製造する工程を含む。なお、前記のように無機フィラーとして、疎水化処理された無機フィラーを使用するなどにより、分散相に確実にかつ効率よく無機フィラーを分配できる。しかも、無機フィラーの濃度を非常に高くしても、高濃度で無機フィラーを含む樹脂粒子を得ることができる。
【0104】
溶融混練において、無機フィラーは、前記高分子と個々に(又は個別に又は独立して)溶融混合してもよく、前記高分子に予め含有させてもよい。すなわち、前記分散体を製造する工程は、(1)無機フィラーと高分子と水溶性助剤とを個々に(同時に又は一緒に又は一斉に)溶融混合して分散体を製造する工程、又は(2)無機フィラーと高分子とを予め溶融混合し、得られた溶融混合物と水溶性助剤とを溶融混合する工程のいずれかであってもよい。なお、工程(2)において、無機フィラーは、その一部を高分子と溶融混合してもよく、その全部を高分子と予め溶融混合してもよい。
【0105】
分散体の調製において、上記工程(2)のように、無機フィラーを予め含む高分子(高分子組成物)を利用すると、樹脂粒子中に無機フィラーを効率よく含有させることができる場合がある。特に、本発明のような高濃度で(しかも、粒径が比較的大きい)無機フィラーを含む樹脂粒子を得るためには、このような方法は有力である。しかし、無機フィラーと高分子とを予め溶融混合すると、分散体の製造プロセスが煩雑になる。本発明では、前記のような疎水化処理された無機フィラーを用いることにより、前記工程(1)によっても、すなわち、無機フィラーと高分子との溶融混合物を予め調製することなく、無機フィラーと高分子と水溶性助剤とを同時に溶融混合して分散体を調製しても、無機フィラーを高濃度で含む樹脂粒子を効率よく得ることができる。
【0106】
分散体の製造において、使用する各成分の割合(無機フィラーの割合など)は前記と同様である。本発明では、助剤で構成された連続相に無機フィラーが分配されるのを非常に高いレベルで抑制又は防止しつつ、無機フィラーを樹脂粒子に含有(内包)させることができるため、原料として使用した各成分(例えば、無機フィラー)の割合を精度よく樹脂粒子に反映させることができる。なお、工程(1)および(2)のいずれの場合であっても、溶融混合に先立って、非溶融状態での混合処理を行ってもよい。すなわち、前記製造方法は、工程(1)又は(2)において、溶融混合に先立って、無機フィラーと高分子とを溶融させることなく(又は非溶融状態で)混合(ドライ混合)する工程をさらに含んでいてもよい。例えば、工程(1)において、無機フィラーと高分子とを、高分子を溶融させることなく混合し(分散させ)た後、得られた混合物と水溶性助剤とを溶融混合してもよい。また、工程(2)においては、無機フィラーと高分子とを溶融させることなく混合し(分散させ)た後、混合物を溶融させて溶融混合物を調製し、この溶融混合物と、水溶性助剤とを溶融混合してもよい。このような非溶融状態での混合処理(分散処理)と前記工程(1)又は(2)とを組み合わせることにより、高分子が無機フィラーの解砕メディアとして作用するためか、無機フィラーの樹脂粒子中での均一分散性をより一層向上できる。なお、ドライブレンドする場合、高分子の形状は、無機フィラーの凝集を防止するという観点からは、粒状又はペレットなどであるのが好ましい。
【0107】
溶融混合(工程(2)において無機フィラーと高分子とを予め溶融混合する場合を含む)は、慣用の混練機(例えば、単軸もしくは二軸スクリュー押出機、ニーダー、カレンダーロール、バンバリーミキサー、ブラベンダーなど)を用いて行うことができる。溶融混練は、これらの混練機(又は混合機又は分散機)を、単独で又は2種以上組み合わせて行ってもよい。
【0108】
なお、無機フィラーと高分子とを予め溶融混合する場合、得られる溶融混合物(助剤との溶融混合に供する溶融混合物)の形状は、特に限定されず、粉粒状、ペレット状などであってもよい。なお、溶融混合温度(混練温度、成形加工温度)は、使用される原材料に応じて適宜設定することが可能であり、例えば、90〜300℃、好ましくは110〜270℃(例えば、130〜260℃)、さらに好ましくは140〜250℃(例えば、150〜240℃)程度である。助剤(例えば、オリゴ糖および可塑化成分)の熱分解を避けるため、溶融混合温度を250℃以下(例えば、160〜240℃程度)にしてもよい。また、溶融混合時間は、例えば、10秒〜1時間の範囲から選択してもよく、通常30秒〜45分、好ましくは1〜30分(例えば、3〜20分)程度である。さらに、溶融混合において、混合回転数(混練回転数)は、例えば、5〜300rpm、好ましくは10〜250rpm、さらに好ましくは20〜200rpm程度であってもよい。工程(2)において、無機フィラーと高分子とを予め溶融混合する場合も上記と同様の条件で溶融混合できる。
【0109】
溶融混合物(分散体)は、塊状などであってもよく、マトリックス成分(すなわち、助剤)を除去するという観点から、成形(予備成形)に供されて、予備成形体を形成してもよい。予備成形体(又は分散体)の形状は、特に制限されず、0次元的形状(粒状、ペレット状など)、1次元的形状(ストランド状、棒状など)、2次元的形状(板状、シート状、フィルム状など)、3次元的形状(管状、ブロック状など)などであってもよい。
【0110】
上記のようにして本発明の分散体が調製される。そして、このような分散体には、分散相として前記樹脂粒子が含まれており、この樹脂粒子は、前記のように、無機フィラーを内包している。
【0111】
さらに、上記のようにして得られた分散体から、前記助剤を溶出することにより前記樹脂粒子が得られる。すなわち、前記助剤を溶解する溶媒で分散体を溶出処理することにより樹脂粒子が得られる。
【0112】
前記溶媒としては、前記助剤を溶解し、かつ前記樹脂粒子に対して不溶性(溶解しない)溶媒であればよく、好適な溶媒は、水である。
【0113】
水溶性助剤(水溶性糖組成物)を用いると、水で容易に助剤を溶解して複合樹脂粒子と助剤とを分離することができるとともに、助剤が溶解した抽出液の粘度が高くなるのを防止できる。
【0114】
助剤の溶出は、慣用の方法、例えば、前記分散体(又は予備成形体)を、前記溶媒中に浸漬、分散して、助剤を溶出または洗浄(溶媒に移行)することに行うことができる。なお、助剤の分散及び溶出を促進するため、撹拌してもよい。複合樹脂粒子は、慣用の分離(回収)方法、例えば、濾過、遠心分離などを用いて分離し、必要により洗浄し、乾燥することにより回収できる。なお、複合樹脂粒子の分離又は回収方法については、特開2005−162797号公報、特開2006−328219号公報などを参照できる。
【0115】
樹脂粒子は、溶出処理後、通常、樹脂粒子を含む分散液から回収できる。前記溶出処理では、樹脂粒子だけを残して前記助剤を前記溶媒の溶液として排出してもよく、溶媒により分散体を溶出処理又は洗浄処理し、助剤が溶解し、かつ前記複合樹脂粒子が分散した分散液又は抽出液を生成させて回収するのが有用である。
【実施例】
【0116】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0117】
実施例及び参考例では、以下の熱可塑性樹脂、無機フィラー及び助剤を用いた。
【0118】
(熱可塑性樹脂A)
(A1)ポリアミド(ポリアミド12、ダイセル・エボニック(株)製、「Z9004」)
(A2)ポリエステル(ポリブチレンテレフタレート−ポリカプロラクトンブロック共重合体、東洋紡績(株)製、「ペルプレンS1002」)
(A3)シクロオレフィンコポリマー(ティコナ社製、環状ポリオレフィン系高分子 TOPAS(登録商標) 5013S−04)
(A4)ポリメタクリル酸メチル(旭化成ケミカルズ(株)製、デルペット720V)
(無機フィラーB)
(B1)酸化チタン粒子1(市販の酸化チタン粒子、石原産業(株)製「タイペークCR−60」(比表面積10m/g)を3−アミノプロピルトリエトキシシランで表面処理した酸化チタン、平均一次粒子径210nm)
酸化チタン粒子1は、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製、あわとり練太郎)を用い、「タイペークCR−60」100重量部に対して、3−アミノプロピルトリエトキシシラン2.83重量部の割合で、両成分を3分間混合することにより調製した。
【0119】
(B2)酸化チタン粒子2(市販の酸化チタン粒子、石原産業(株)製「タイペークCR−60」(比表面積10m/g)をn−オクチルトリエトキシシランで表面処理した酸化チタン、平均一次粒子径210nm)
酸化チタン粒子2は、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製、あわとり練太郎)を用い、「タイペークCR−60」100重量部に対して、n−オクチルトリエトキシシラン3.53重量部の割合で、両成分を3分間混合することにより調製した。
【0120】
(B3)ジルコニア粒子1(市販のジルコニア粒子、東ソー(株)製 TZ−3YS(比表面積7m/g)をn−オクチルトリエトキシシランで表面処理したジルコニア、平均一次粒子径90nm)
ジルコニア粒子1は、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製、あわとり練太郎)を用い、「TZ−3YS」100重量部に対して、n−オクチルトリエトキシシラン3.18重量部の割合で、両成分を3分間混合することにより調製した。
【0121】
なお、無機フィラー(B1)〜(B3)の調製にあたり、無機フィラー(酸化チタン又はジルコニア)に対する処理剤(3−アミノプロピルトリエトキシシラン又はn−オクチルトリエトキシシラン)の量(無機フィラー100重量部に対する割合)Zは、以下の式により、表面処理に十分な量を算出した量とした。
【0122】
Z(g/100g)=a×b/780
[式中、aは無機フィラーの比表面積(m/g)、bは処理剤の分子量を示す]
なお、上記式において、処理に十分な量と判断した根拠となる式は下記式である。通常、下記式を充足する範囲において処理剤を使用すると、十分に表面処理が行われているとされている(すなわち、上記式のZは、下記式の範囲における中間の値を示しており、十分な表面処理がなされていると判断できる)。
【0123】
a×b/7800<Z<a×b/78
(B4)酸化チタン粒子3
酸化チタン粒子3(石原産業(株)製、「タイペークCR−63」、アルミナ、シリカ、シロキサン表面処理品、平均一次粒子径210nm)
(B5)酸化チタン粒子4
酸化チタン粒子4(石原産業(株)製「タイペークCR−60」、平均一次粒子径210nm、比表面積10m/g)
(助剤C)
(C1)オリゴ糖(オリゴ糖アルコール)[デンプン糖、三菱商事フードテック(株)製、還元デンプン糖化物「PO−10」]
(C2)糖アルコール(ソルビトール、三菱商事フードテック(株)製、「ソルビトールLTSP20M」)。
【0124】
(実施例1〜13、参考例1〜4)
表1に示すペレット状の熱可塑性樹脂(A)と無機フィラー(B)とを、表1に示す割合で、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製、あわとり練太郎)を用いて3分間予備混合した後、ブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)により、回転速度100rpm、混練時間10分、表1に示す温度(後述の分散体製造における混練温度と同じ)で溶融混練し、無機フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物(塊状物)を調製し、小さく切った。
【0125】
そして、小さく切った熱可塑性樹脂組成物と、表1に示す割合で(C1)および(C2)を含む助剤(C)とを、表1に示す割合で、ブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)により、表1に示す温度、時間および回転数で溶融混練し、分散体を得た。
【0126】
得られた分散体を25℃の水中に浸漬し、樹脂粒子(複合樹脂粒子)の懸濁液を得た。メンブレン膜(孔径0.45μm,セルロースアセテート製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別し複合樹脂粒子を回収した。回収した複合樹脂粒子を、粒子に対し重量比で20倍の蒸留水中に分散し、10分間マグネティックスターラーを用いて攪拌処理し、懸濁液を得た。その後、再びメンブレン膜(孔径0.45μm、セルロースアセテート製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別し複合樹脂粒子を回収した。
【0127】
[特性の測定及び評価]
実施例および比較例で得られた複合樹脂粒子(又は分散体)の各種特性を測定および評価した。結果を表1に示す。なお、測定および評価は以下のようにして行った。
【0128】
(粒子径)
得られた複合樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、FE−SEM、JSM−6700F)により観察し、表面形状及び全体形状の写真を得た。そして、得られた走査型電子顕微鏡写真を用い、写真上に少なくとも200個の粒子が含まれるように任意のサイズの長方形を描き、その長方形内に存在する全粒子の真球換算時の粒子径を採寸した。得られた少なくとも200個の粒子径より、体積平均粒子径(Dn)、数平均粒子径(Dw)を得た。
【0129】
(形状)
複合樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、FE−SEM、JSM−6700F)により観察し、表面形状及び全体形状の写真を得た。得られた走査型電子顕微鏡写真から、得られた複合樹脂粒子の形状を以下の基準で分類した。
1:球状である
2:非球状のものもあるが、おおむね球状である
3:非球状である
4:粒子化していない。なお、この場合は、分散体を水に浸漬した時に懸濁液にならなかった。
【0130】
なお、参考のため、電子顕微鏡写真のうち、実施例5で得られた複合樹脂粒子の電子顕微鏡写真を図1に、実施例8で得られた複合樹脂粒子の電子顕微鏡写真を図2に、実施例9で得られた複合樹脂粒子の電子顕微鏡写真を図3にそれぞれ示す。
【0131】
(位置)
分散体(高分子、無機フィラー(粒子)および助剤の溶融混練物)を切り出した破断面を、走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、FE−SEM、JSM−6700F)により観察し、分散体破断面の形状の写真を得た。得られた走査型電子顕微鏡写真からは、無機フィラーが白く光っているため、分散体内部における無機フィラーの分散状態が容易に観察できる。そこで、得られた走査型電子顕微鏡写真から無機フィラーの位置を確認し、分散体における無機フィラーの位置を以下の基準で分類した。
◎:全て高分子に分配している
○:ほとんど高分子に分配しているが、助剤側に少し分配している
△:助剤側にも分配している
×:ほとんどが助剤側に分配している。
【0132】
(含有状態)
複合樹脂粒子を、エポキシ樹脂系接着剤(コニシ(株)製、「ボンドクイック5」)と混合して、前記樹脂粒子がエポキシ高分子系接着剤に分散した塊状物を作成した。得られた塊状物をマイクロトームにより切り出した断面を、走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、FE−SEM、JSM−6700F)により観察し、塊状物の断面形状の写真を得た。得られた走査型電子顕微鏡写真からは、無機フィラーが白く光っているため、樹脂粒子内部における無機フィラーの分散状態が容易に観察できる。そこで、得られた走査型電子顕微鏡写真から複合樹脂粒子内の無機フィラーの分散状態を確認し、樹脂粒子における無機フィラー(粒子)の構造(含有状態)を以下の基準で分類した。
◎:樹脂粒子内に内包されており、その量が多い
○:一部樹脂粒子を被覆した状態になっているものが含まれるが、樹脂粒子内に内包されている
△:樹脂粒子を被覆している
×:樹脂粒子内にほとんどなし。なお、この場合、粒子作成の過程で、助剤側へ分配されてしまったものと考えられる。
【0133】
なお、参考のため、電子顕微鏡写真のうち、実施例2で得られた複合樹脂粒子の断面の電子顕微鏡写真を図4に、実施例3で得られた複合樹脂粒子の断面の電子顕微鏡写真を図5に、実施例8で得られた複合樹脂粒子の断面の電子顕微鏡写真を図6に、実施例9で得られた複合樹脂粒子の断面の電子顕微鏡写真を図7に、参考例1で得られた複合樹脂粒子の断面の電子顕微鏡写真を図8、参考例2で得られた複合樹脂粒子の断面の電子顕微鏡写真を図9にそれぞれ示す。
【0134】
(凝集状態)
前記「位置」の評価において使用した分散体の破断面の写真(SEM写真)から、目視により複合樹脂粒子中の無機フィラーの凝集状態を以下の基準で判定した。
【0135】
○:凝集が見られない
×:凝集が見られる。
【0136】
(含有割合)
樹脂粒子1gを白金容器に取り、900℃で5時間加熱し、灰分として残存した金属の量を定量した。そして、この定量した金属量と、用いた無機フィラー(粒子)に含まれる金属原子の重量比率とを用い、下記式により樹脂粒子中に含まれる無機フィラー(粒子)の量(重量%)を算出した。
【0137】
(残存金属量×無機フィラーの分子量/無機フィラー1モル中の金属原子の質量)×100
【0138】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の樹脂粒子は、種々の用途、例えば、トナーやインクなどの画像形成材料、塗料やコート剤(例えば、粉体塗料)、充填剤(例えば、塗料などの充填剤、絶縁性フィラー)、ブロッキング防止剤又は滑剤(例えば、成形体のブロッキング防止剤)、スペーサー(液晶パネル用スペーサなど)、担体、導電性粒子などの二次加工粒子の母粒子、化粧品用材料、圧縮成形やレーザー造型などの粉体を用いた成形加工用の原料、フラットパネルディスプレイ用などの光散乱添加剤(光拡散剤)などとして好適に利用できる。特に、本発明の樹脂粒子では、無機フィラーの粒径および濃度を大きくできるため、高隠蔽性を要するポリマー顔料、各種の電磁波吸収材料、電子ペーパー用表示部材などとして好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機フィラーを含有する樹脂粒子であって、無機フィラーが、加水分解縮合性基および反応性を有しない疎水性基を有する疎水化処理剤で疎水化処理された平均一次粒子径10〜800nmの粒子であり、かつ下記の条件(1)及び/又は条件(2)を充足する樹脂粒子。
(1)樹脂粒子全体に対する無機フィラーの体積割合が15%以上
(2)樹脂粒子全体に対する無機フィラーの重量割合が50%以上
【請求項2】
樹脂粒子を構成する高分子が熱可塑性樹脂であり、無機フィラーが平均一次粒子径50〜800nmの金属酸化物粒子である請求項1記載の樹脂粒子。
【請求項3】
無機フィラーが平均一次粒子径80〜300nmの金属酸化物粒子である請求項1又は2記載の樹脂粒子。
【請求項4】
疎水化処理剤が、下記式(A)で表される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂粒子。
(X)M(R (A)
[式中、Mは金属原子、Xは水素原子、ハロゲン原子又は−OR(式中、Rは炭化水素基を示す)、Rは反応性基を有しない炭化水素基を示し、mおよびnはそれぞれ1以上の整数であり、m+nは金属原子Mの価数である。]
【請求項5】
疎水化処理剤が、下記式(A1)で表される化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂粒子。
(RO)m1Si(Rn1 (A1)
(式中、m1およびn1はそれぞれ1〜3の整数であり、m1+n1は4であり、RおよびRは前記と同じ。)
【請求項6】
が炭素数4以上のアルキル基である請求項4又は5記載の樹脂粒子。
【請求項7】
疎水化処理剤が、C4−24アルキルモノ乃至トリC1−4アルコキシシランである請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂粒子。
【請求項8】
無機フィラー全体に対する疎水化処理剤の割合が0.5〜10重量%である請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂粒子。
【請求項9】
無機フィラーの平均一次粒子径が80〜500nmであり、樹脂粒子全体に対する無機フィラーの体積割合が40%以上であり、かつ樹脂粒子全体に対する無機フィラーの重量割合が70%以上である請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂粒子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂粒子が、水溶性助剤で構成された連続相に分散した分散体。
【請求項11】
請求項10記載の分散体から連続相を溶出し、樹脂粒子を製造する方法であって、以下の工程(1)又は工程(2)により分散体を調製する工程を含む樹脂粒子の製造方法。
(1)無機フィラーと高分子と水溶性助剤とを溶融混合して分散体を調製する工程
(2)無機フィラーと高分子との溶融混合物と、水溶性助剤とを溶融混合して分散体を調製する工程

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−189516(P2010−189516A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34424(P2009−34424)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】