説明

無機化合物を含む芳香族ポリカーボネートシートまたはフィルム

【課題】 二次加工性に優れると共に、電気的特性、光反射特性、難燃性等の無機化合物に由来する機能が付加された芳香族ポリカーボネートシートまたはフィルムを提供する。
【解決手段】 芳香族ポリカーボネートまたは芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)100重量部、無機化合物(B)1〜30重量部を含む樹脂組成物からなるシートまたはフィルムであって、該シートまたはフィルム中における気泡含有率が0.5%未満であることを特徴とするシートまたはフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次加工特性に優れた無機化合物を含有する芳香族ポリカーボネートシートまたはフィルムに関する。
【0002】
更には、二次加工性と共に、優れた電気的特性、優れた光反射特性、さらには臭素化合物難燃剤または塩素化合物難燃剤に依存しない高度難燃性、といった無機化合物に由来する機能が付加された芳香族ポリカーボネートシートまたはフィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
芳香族ポリカーボネートからなるシートやフィルムは、車両用部材、建材、照明用部材、光拡散板、電気・電子機器用透明部材、あるいは電気・電子製品における絶縁部材等として、幅広い用途に使用されている。
【0004】
芳香族ポリカーボネートに無機化合物を配合することにより、寸法安定性、光学的特性、電気的特性を改良したり向上させることが可能であり、無機化合物を配合した芳香族ポリカーボネートからなるシートやフィルムでは、無機化合物に由来する様様な機能を付加できることが期待される。
【0005】
しかしながら、芳香族ポリカーボネートに無機化合物を配合した場合、特に無機化合物に由来する種種の機能を発現させうるに必要な配合量で無機化合物が配合された場合では、ベース樹脂の分解が促進され、材料劣化が著しいという問題があるために、無機化合物を配合した芳香族ポリカーボネートからなるシートやフィルムの検討が十分になされておらず、実用化に至っていないのが現状である。
【0006】
芳香族ポリカーボネートに無機化合物を配合した場合に生じるベース樹脂の劣化の問題に対して、特許文献1や特許文献2に樹脂の劣化を抑える方法が開示されているが、シートまたはフィルムを加工する場合においては、揮発分が発生しやすく、シートまたはフィルム中に気泡が残存しやすいという問題があり、このためにシートまたはフィルムの強度や外観が低下するという問題があった。
【0007】
また、本発明では芳香族ポリカーボネートに無機化合物を配合した組成物からなるシートまたはフィルムにより、難燃性の向上をさらなる目的の一つとするが、無機化合物を含む芳香族ポリカーボネートのシートまたはフィルムにおける残存気泡が難燃性に与える影響について検討された報告は無い。
【0008】
一般にシートやフィルムはその厚みが小さくなると高い難燃性能を維持することが困難となる。近年の環境調和型の材料が望まれる風潮から、臭素化合物難燃剤または塩素化合物難燃剤を使用することなしに、米国UL94規格に対して高度な難燃性を発現するシートやフィルムが望まれているが、未だ工業的使用に対する要求を満足できるものは得られていない。
【0009】
一方で、シートやフィルムは、その使用にあたり、優れた二次加工性が要求されることが多い。
【0010】
例えば、難燃性の絶縁部材として使用されるシートもしくはフィルムは、電気・電子製品の内部において空間使用効率を高めるために、打ち抜き、曲げ、絞り、等の二次加工がなされて使用されることが多いため、二次加工性に優れたシートまたはフィルムが強く求められている。
【特許文献1】特開平2−283760号公報
【特許文献2】特開平3−21664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、二次加工特性に優れた無機化合物を含有する芳香族ポリカーボネートシートまたはフィルムを提供することを課題とする。
【0012】
更には、二次加工性と共に、優れた電気的特性、優れた光反射特性、さらには臭素化合物難燃剤または塩素化合物難燃剤に依存しない高度難燃性、といった無機化合物に由来する機能が付加された芳香族ポリカーボネートシートまたはフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、芳香族ポリカーボネート樹脂に無機化合物を配合した組成物からなるシートまたはフィルムに関し、該シートまたはフィルム中における気泡含有率を0.5%未満とすることにより、二次加工性に優れた無機化合物を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムが得られることを見出し、更に電気特性や光学的特性、更には難燃性等の無機化合物に由来する機能を発揮できる芳香族ポリカーボーネート樹脂シートまたはフィルムが得られることも併せて見出し、本発明に至った。
【0014】
すなわち本発明は、下記[1]〜[8]である。
[1]芳香族ポリカーボネートまたは芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)100重量部、無機化合物(B)1〜30重量部を含む樹脂組成物からなるシートまたはフィルムであって、該シートまたはフィルム中における気泡含有率が0.5%未満であることを特徴とするシートまたはフィルム。
[2]該無機化合物(B)が珪酸塩化合物であることを特徴とする前記[1]に記載のシートまたはフィルム。
[3]該無機化合物(B)が酸化チタンであることを特徴とする前記[1]に記載のシートまたはフィルム。
[4]該樹脂組成物が、更に、有機酸および/または有機酸誘導体(C)0.01〜1重量部を含むことを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載のシートまたはフィルム。
[5]該樹脂組成物が、更に、有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩(D)0.01〜1重量部、フルオロポリマー(E)0.01〜1重量部を含むことを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載のシートまたはフィルム。
[6]該シートまたはフィルムが絶縁部材であることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載のシートまたはフィルム。
[7]該シートまたはフィルムが光反射部材であることを特徴とする前記[3]に記載のシートまたはフィルム。
[8]該シートまたはフィルムが、打ち抜き、曲げ、絞りから選ばれる少なくとも1つの二次加工がなされていることを特徴とする前記[1]〜[7]のいずれかに記載のシートまたはフィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明の無機化合物を含有する芳香族ポリカーボネートシートまたはフィルムは、二次加工性に優れ、更には、優れた電気的特性、優れた光反射特性、さらには臭素化合物難燃剤または塩素化合物難燃剤に依存しない高度難燃性、といった無機化合物に由来する機能が付加された芳香族ポリカーボネートシートまたはフィルムであり、産業上の利用価値が極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明について、以下具体的に説明する。
【0017】
本発明のシートまたはフィルムは、芳香族ポリカーボネートまたは芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)100重量部、無機化合物(B)1〜30重量部を含む樹脂組成物からなるシートまたはフィルムであって、該シートまたはフィルム中における気泡含有率が0.5%未満であることを特徴とする。
【0018】
本発明のシートまたはフィルムの気泡含有率は、0.5%未満であり、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.1%以下であり、実質的に気泡含有率が0%である場合(気泡を含まない場合)が最も好ましい。
【0019】
本発明では「気泡含有率」は以下の方法で算出する。
即ち、気泡を完全に除いたベース樹脂組成物の比重をd1、対象となるシートまたはフィルムの比重をd2(d1及びd2の単位:g/cm)としたときに、
気泡含有率[%]= {1−(d2/d1)}×100
で求める。
【0020】
ここでd1の測定は、射出成形機により、シリンダー設定温度260℃、金型温度80℃の条件で12.7mm×127mm×1.5mm(厚み)の短冊状試験片を成形し、該試験片を用いてデジタル比重計により測定する。一方、d2は対象となるシートまたはフィルムに対して12.7mm×127mmの大きさに切り出した試験片をd1と同様にデジタル比重計により測定する。
【0021】
気泡含有率が0.5%を超えると、シートまたはフィルムの強度が低下し、打ち抜き、曲げ、絞り等の二次加工を行う場合において亀裂や破断が発生しやすくなり、二次加工性が低下する。
【0022】
また、本発明のシートまたはフィルムの厚みは、0.001mm〜3mmであり、使用目的によって異なるが、好ましくは0.01mm〜2.5mmであり、より好ましくは0.03mm〜2mmであり、さらに好ましくは0.05mm〜1.5mmであり、特に好ましくは0.1mm〜1mmである。
【0023】
尚、フィルム、シートの表現は、本発明では便宜上、厚さ0.3mm未満をフィルム、厚さが0.3mmを超えるものをシートと呼ぶこととする。
【0024】
本発明のシートまたはフィルムにかかわる成分(A)は、芳香族ポリカーボネートまたは芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂である。
【0025】
ここで、芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂とは、成分(A)の総量を100重量部とした場合に、成分(A)の50重量部を超える成分が芳香族ポリカーボネートであり、残りの樹脂成分が芳香族ポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂であるものを示す。
【0026】
前記成分(A)として好ましく用いられる芳香族ポリカーボネートは、芳香族ジヒドロキシ化合物より誘導される芳香族ポリカーボネートであり、芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルフィド等のジヒドロキシアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルホキシド等のジヒドロキシアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルホン等のジヒドロキシアリールスルホン類、等を挙げることができる。
【0027】
これらの中で、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称、ビスフェノールA)が特に好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
前記成分(A)として好ましく用いられる芳香族ポリカーボネートは、公知の方法で製造したものを使用することができる。具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応せしめる公知の方法、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(例えばホスゲン)を水酸化ナトリウム水溶液及び塩化メチレン溶媒の存在下に反応させる界面重合法(例えばホスゲン法)、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル(例えばジフェニルカーボネート)などを反応させるエステル交換法(溶融法)、ホスゲン法または溶融法で得られた結晶化カーボネートプレポリマーを固相重合する方法(特開平1−158033(米国特許第4,948,871号に対応)、特開平1−271426、特開平3−68627(米国特許第5,204,377号に対応))などの方法により製造されたものを用いることができる。
【0029】
前記芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)は、通常、5,000〜500,000であり、好ましくは10,000〜100,000であり、より好ましくは13,000〜50,000、特に好ましくは15,000〜30,000、とりわけ好ましくは17,000〜25,000である。
【0030】
本発明において、芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行うことができ、測定条件は以下の通りである。すなわち、テトラヒドロフランを溶媒として、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から下式による換算分子量較正曲線を用いて求められる。
【0031】
pc=0.3591Mps1.0388
(Mpcは芳香族ポリカーボネートの分子量、Mpsはポリスチレンの分子量)
また、前記成分(A)として使用される芳香族ポリカーボネートは、分子量が異なる2種以上の芳香族ポリカーボネートを組み合わせて使用することもできる。
【0032】
前記芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂において、好ましく使用することができる芳香族ポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリルースチレン樹脂(AS樹脂)、ブチルアクリレートーアクリロニトリルースチレン樹脂(BAAS樹脂)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン樹脂(ABS樹脂)、メチルメタクリレートーブタジエンースチレン樹脂(MBS樹脂)、ブチルアクリレートーアクリロニトリルースチレン樹脂(AAS樹脂)、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアリレート、等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0033】
本発明にかかわる成分(B)は無機化合物である。
【0034】
本発明にかかわる成分(B)として、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩化合物、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩化合物、ワラストナイト、ゾノトライト、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト等の珪酸塩化合物、カーボンブラック、グラファイト等の炭素類を例示することができる。
【0035】
本発明にかかわる成分(B)は、単独の使用のみならず2種以上を混合して使用することもできる。
【0036】
本発明において好ましく使用することができる成分(B)として、シリカ、酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸塩化合物、カーボンブラックを挙げることができ、より好ましいものは、酸化チタン、珪酸塩化合物、カーボンブラックであり、特に好ましいものは、酸化チタン、珪酸塩化合物である。
【0037】
前記珪酸塩化合物とは、金属酸化物成分とSiO成分とからなる珪酸塩化合物であり、天然物および人工合成物のいずれも使用することができる。
【0038】
成分(B)として好ましく使用される珪酸塩化合物は、その組成が実質的に下記式(1)で示されるものである。
【0039】
xMO・ySiO・zHO (1)
(ここでxおよびyは自然数を表し、zは0以上の整数を表し、MOは金属酸化物成分を表し、複数の金属酸化物成分であってもよい。)
上記金属酸化物MOにおける金属Mは、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、カルシウム、亜鉛、マンガン、鉄、コバルト、マグネシウム、ジルコニウム、アルミニウム、チタンなどを挙げることが出来る。
【0040】
金属酸化物MOにおいて好ましいものは、CaO、またはMgOのいずれかを実質的に含むものである。更に好ましいものは金属酸化物MOが、CaOおよびMgOから選択される少なくとも1種の成分から実質的になる場合であり、特に好ましいものはMgOから実質的になる場合である。
【0041】
成分(B)として好ましく使用される珪酸塩化合物の具体例としては、タルク、マイカ、ワラストナイト、ゾノトライト、カオリンクレー、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ローソナイト、スメクタイト、等を挙ることができる。
【0042】
また、前記「珪酸塩化合物」は、任意の形状(板状、針状、粒状、繊維状等)のものが使用できるが、板状、針状のものが好ましく、中でも特に、板状の形態であるものが最も好ましい。
【0043】
ここで板状の形態とは、平均粒子径を(a)、厚みを(c)とした場合に、a/c比が5〜500、好ましくは10〜300、更に好ましくは20〜200である形状のものである。
【0044】
また、針状の形態とは、長軸方向の平均粒子径を(a)、単軸方向の平均粒子径を(c)とした場合に、a/c比が5〜500、好ましくは10〜300、更に好ましくは20〜200である形状のものである。
【0045】
前記「珪酸塩化合物」の中でも、成分(B)として、とりわけ好ましいものは、タルク、およびマイカである。
【0046】
前記タルクは、層状構造を持つ含水ケイ酸マグネシウムであり、化学式4SiO・3MgO・HOで表され、通常、SiO約63 重量%、MgO 約32%、HO 約5重量%、その他Fe、CaO、Alなどを含有しており、比重は約2.7である。
【0047】
該タルクとして、焼成タルクや、塩酸や硫酸等の酸で洗浄して不純物を除いたタルク、等も好ましく使用することができる。さらに、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤等で表面疎水性処理を行ったタルクも使用することができる。
【0048】
一方、前記マイカとは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄、等を含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物である。マイカには白雲母(マスコバイト、化学式:K(AlSi3O10)(OH)2Al4(OH)2(AlSi3O10)K)、金雲母(フロゴパイト、化学式:K(AlSi3O10)(OH)2Mg6(OH)2(AlSi3O10)K)、黒雲母(バイオタイト、化学式:K(AlSi3O10)(OH)2(Mg,Fe)6(OH)2(AlSi3O10)K)、人造雲母(フッ素金雲母、化学式:K(AlSi3O10)(OH)2F2Mg6F2(AlSi3O10)K)等があり、いずれのマイカも使用できるが、好ましくは白雲母である。
【0049】
また、かかるマイカはシランカップリング剤やチタネートカップリング剤等で表面疎水性処理されていてもよい。
【0050】
さらに本発明にかかわる成分(B)として、板状の形態であるもの、例えば、タルクおよびマイカを使用する場合は、優れた難燃性改良効果を付与できると共に、寸法安定性、絶縁性や耐トラッキング性等の電気的特性も向上させることができるので好ましい。
【0051】
本発明にかかわる成分(B)の平均粒子径は、0.1〜500μmが好ましく、0.5〜100μmがより好ましく、1〜50μmが更に好ましく、2〜30μmが特に好ましく、3〜20μmが最も好ましい。
【0052】
尚、本発明でいう平均粒子径は、レーザー回折法により(例えば、島津製作所製SALD−2000を使用して)平均粒子径を求める。
【0053】
本発明にかかわる成分(B)の使用量は、成分(A)100重量部に対して1〜30重量部であり、2〜20重量部が好ましく、3〜15重量部がより好ましい。
【0054】
本発明にかかわる成分(C)とは有機酸および/または有機酸誘導体である。
【0055】
本発明では、成分(B)に対してわずかな量の成分(C)を使用することにより、樹脂組成物の溶融安定性を飛躍的に高めることができ、シートまたはフィルムを安定に生産できることができ、好ましい。
【0056】
該成分(C)とは、具体的には、有機酸及び/または有機酸エステル、有機酸無水物から選ばれる有機酸誘導体を挙げることができ、これらは低分子化合物のみならず、オリゴマー状あるいはポリマー状のものを使用することができ、また二種以上を併用することもできる。
【0057】
前記「有機酸」とは、−SOH基、−COOH基、−POH基からなる群から選ばれる基を分子構造中に少なくとも1つ含む有機化合物、すなわち、有機スルホン酸、有機カルボン酸、有機リン酸であり、これらの中でも有機スルホン酸、有機カルボン酸が好ましく、特に、有機スルホン酸が好ましい。
【0058】
本発明では、成分(C)として有機スルホン酸、有機スルホン酸エステルを使用する場合が樹脂組成物の溶融安定性が特に優れており、揮発成分の発生も低レベルに抑えることができるために、広い温度範囲で成形加工が行えると共に、ロールへの揮発分による汚染も少なく生産性も優れ、さらにシートまたはフィルムの外観にも優れる。
【0059】
前記成分(C)のうち、好ましく使用することができる有機スルホン酸として、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸、ジイソブチルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、等の芳香族スルホン酸、炭素数8〜18の脂肪族スルホン酸、スルホン化ポリスチレン、アクリル酸メチル・スルホン化スチレン共重合体等のポリマーまたはオリゴマー状の有機スルホン酸、等を挙げることができる。
【0060】
また、前記成分(C)として好ましく使用することができる有機スルホン酸エステルとして、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸プロピル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸プロピル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンスルホン酸フェニル、ナフタレンスルホン酸メチル、ナフタレンスルホン酸エチル、ナフタレンスルホン酸プロピル、ナフタレンスルホン酸ブチル、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−プロピル、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−ブチル、等を挙げることができる。
【0061】
本発明で該成分(C)を使用する場合、その使用量は、成分(A)100重量部に対して通常0.01〜1重量部であり、好ましくは0.05〜0.8重量部、さらに好ましくは0.08〜0.6重量部、特に好ましくは0.1〜0.5重量部である。
【0062】
本発明では成分(C)の使用量(重量部数)は、前記成分(B)と成分(C)の混合物をJIS−K5101に基づいてpH値を測定したときに、該混合物のpH値が4〜8の範囲となる重量部数であることが好ましく、4.2〜7.8の範囲となる重量部数である場合がより好ましく、4.5〜7.6の範囲となる重量部数である場合がさらに好ましく、5.0〜7.4の範囲となる重量部数である場合が特に好ましく、5.5〜7.2の範囲となる重量部数である場合が最も好ましい。
【0063】
ここで、JIS−K5105のpH値の測定では、操作方法として煮沸法と常温法があるが、本発明では煮沸法を用いる。
【0064】
本発明にかかわる成分(D)は、有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩である。
【0065】
本発明では、成分(D)の使用により、シートまたはフィルムの難燃性を高めることが可能となる。
【0066】
かかる成分(D)として好ましく使用できる有機酸金属塩は、有機スルホン酸の金属塩、及び/又は、硫酸エステルの金属塩であり、これらは単独の使用だけでなく2種以上を混合して使用することも可能である。
【0067】
該有機酸金属塩に含まれるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられ、特に好ましいアルカリ金属はリチウム、ナトリウム、カリウムであり、最も好ましくはナトリウム、カリウムである。
【0068】
前記成分(D)として、好ましい例として、パーフルオロエタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩、ジフェニルサルファイド‐4,4’‐ジスルホン酸ジナトリウム塩、ジフェニルサルファイド‐4,4’‐ジスルホン酸ジカリウム塩、5‐スルホイソフタル酸カリウム塩、5‐スルホイソフタル酸ナトリウム塩、ポリエチレンテレフタル酸ポリスルホン酸ポリナトリウム塩、1‐メトキシナフタレン‐4‐スルホン酸カルシウム塩、4‐ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ジナトリウム塩、ポリ(2,6‐ジメチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム塩、ポリ(1,3‐フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム塩、ポリ(1,4‐フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム塩、ポリ(2,6‐ジフェニルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリカリウム塩、ポリ(2‐フルオロ‐6‐ブチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸リチウム塩、ベンゼンスルホネートのスルホン酸カリウム塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ベンゼンスルホン酸カリウム塩、ベンゼンスルホン酸ストロンチウム塩、ベンゼンスルホン酸マグネシウム塩、p‐ベンゼンジスルホン酸ジカリウム塩、ナフタレン‐2,6‐ジスルホン酸ジカリウム塩、ビフェニル‐3,3’‐ジスルホン酸カルシウム塩、トルエンスルホン酸ナトリウム塩、トルエンスルホン酸カリウム塩、キシレンスルホン酸カリウム塩、ジフェニルスルホン‐3‐スルホン酸ナトリウム塩、ジフェニルスルホン‐3‐スルホン酸カリウム塩、ジフェニルスルホン‐3,3’‐ジスルホン酸ジカリウム塩、ジフェニルスルホン‐3,4’‐ジスルホン酸ジカリウム塩、α,α,α‐トリフルオロアセトフェノン‐4‐スルホン酸ナトリウム塩、ベンゾフェノン‐3,3’‐ジスルホン酸ジカリウム塩、チオフェン‐2,5‐ジスルホン酸ジナトリウム塩、チオフェン‐2,5‐ジスルホン酸ジカリウム塩、チオフェン‐2,5‐ジスルホン酸カルシウム塩、ベンゾチオフェンスルホン酸ナトリウム塩、ジフェニルスルホキサイド‐4‐スルホン酸カリウム塩、ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩のホルマリン縮合物、アントラセンスルホン酸ナトリウム塩のホルマリン縮合物、等を挙げることができる。
【0069】
これらの中で特に好ましくは、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩であり、その例として、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩を挙げることができる。
【0070】
本発明において成分(D)を使用する場合、その使用量は通常成分(A)100重量部に対して0.01〜1重量部であり、0.05〜0.8重量部が好ましく、0.08〜0.7重量部がより好ましく、0.1〜0.5重量部が更に好ましく、0.15〜0.4重量部が特に好ましい。
【0071】
本発明にかかわる成分(E)は、フルオロポリマーであり、燃焼物の滴下を防止する目的で使用される場合があり、フィブリル形成能力を有するフルオロポリマーが好ましく使用され、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・プロピレン共重合体等のテトラフルオロエチレンポリマー、を好ましく使用することができ、特に好ましくはポリテトラフルオロエチレンである。
【0072】
該成分(E)は、ファインパウダー状のフルオロポリマー、フルオロポリマーの水性ディスパージョン、ASやPMMA等の第2の樹脂との粉体状混合物等、様々な形態のフルオロポリマーを使用することができる。
【0073】
本発明で好ましく使用できるフルオロポリマーの水性ディスパージョンとして、三井デュポンフロロケミカル(株)製「テフロン30J(登録商標)」、ダイキン工業(株)製「ポリフロンD‐1(登録商標)」、「ポリフロンD‐2(登録商標)」、「ポリフロンD‐2C(登録商標)」、「ポリフロンD‐2CE(登録商標)」を例示することができる。
【0074】
また、成分(E)として、ASやPMMA等の第2の樹脂との粉体状混合物としたフルオロポリマーも好適に使用することができるが、これら第2の樹脂との粉体状混合物としたフルオロポリマーに関する技術は、特開平9‐95583号公報(米国特許第5,804,654号明細書に対応)、特開平11‐49912号公報(米国特許第6,040,370号明細書に対応)、特開2000‐143966号公報、特開2000‐297189号公報等に開示されている。本発明において好ましく使用できる、これら第2の樹脂との粉体状混合物としたフルオロポリマーとして、GEスペシャリティケミカルズ社製「Blendex 449(登録商標)」、三菱レーヨン(株)製「メタブレンA−3000、同A‐3800、同A−3700(登録商標)」を例示することができる。
【0075】
本発明において成分(E)を使用する場合その使用量は、成分(A)100重量部に対して0.01〜1重量部であり、好ましくは0.05〜0.8重量部、より好ましくは0.08〜0.6重量部、さらに好ましくは0.1〜0.4重量部である。
【0076】
本発明のシートまたはフィルムでは、必要に応じて、染顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、滑剤、加工助剤、分散剤、離型剤、増粘剤、酸化防止剤、帯電防止剤などを添加することもできる。
【0077】
本発明にかかわる樹脂組成物は、好ましくは押出機等の溶融混練装置を用いて溶融混練することにより得ることが出来る。このときの各構成成分の配合、及び溶融混練は一般に使用されている装置、例えば、タンブラー、リボンブレンダー等の予備混合装置、単軸押出機や二軸押出機、コニーダー等の溶融混練装置を使用することが出来る。
【0078】
また、上記樹脂組成物をシート、フィルムに成形するにはTダイ法、インフレーション法、カレンダー法、キャスティング法、プレス法、等が使用可能である。
【0079】
本発明の気泡含有率が0.5%未満のシートまたはフィルムを得るための手段としては、
(イ) 原料樹脂組成物ペレットの予備乾燥を十分に行い、ペレット中の水分量を好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下、更に好ましくは100ppm以下とする。
(ロ) シートまたはフィルム用押出機のシリンダー設定温度を低くして、樹脂組成物の揮発分の発生をできる限り少なくする。該シリンダー設定温度は、好ましくは300℃以下、より好ましくは290℃以下、更に好ましくは、280℃以下、特に好ましくは270℃以下とする。
(ハ) シートまたはフィルム用押出機中での溶融樹脂の滞留時間をできるだけ短かくし、さらに溶融樹脂が滞留するデッドスペースを極力排除する等の設備的な配慮を講じる。
(ニ) シートまたはフィルム用押出機に開口部を設けて、開放脱揮、必要に応じて減圧脱揮を行う。
等の措置が有効であり、これらの条件を調整し、また組み合わせることにより本発明のシートまたはフィルムを得ることができる。
【0080】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。
【0081】
実施例あるいは比較例においては、以下の成分を使用し、樹脂組成物を製造した。
1.成分(A):芳香族ポリカーボネート
(A‐1)
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートから、溶融エステル交換法により製造された、ビスフェノールA系ポリカーボネート。
【0082】
(台湾国旭美化成(股)有限公司製「ワンダーライトPC−110(登録商標)」)
(A−2)
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートから、溶融エステル交換法により製造された、ビスフェノールA系ポリカーボネート。
【0083】
(台湾国旭美化成(股)有限公司製「ワンダーライトPC−175(登録商標)」)
2.成分(B):無機化合物
(B−1)
タルク(日本タルク株式会社製「マイクロエースP−3(登録商標)」)
(B−2)
酸化チタン(石原産業株式会社製「タイペークPC−3(登録商標)」)
3.成分(C):有機酸または有機酸誘導体
(C−1)
p−トルエンスルホン酸(和光純薬工業株式会社製)
4.成分(D):有機酸金属塩
(D‐1)
パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩 (大日本インキ工業(株)製「メガファックF114(登録商標)」)
5.成分(E):フルオロポリマー
(E‐1)
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とポリメチルメタクリレート(PMMA)の
50/50(重量比)粉体状混合物(三菱レーヨン株式会社製「メタブレンA‐3800
(登録商標)」)
〔実施例1〜6、及び、比較例1〜3〕
各成分を表1に示す量(単位は重量部)で二軸押出機を用いて溶融混練して樹脂組成物を得た。
【0084】
各成分は予めタンブラーを用いて5分間予備混合を行って原料混合物とした。
【0085】
実施例1〜4、6および比較例3において、成分(B)と成分(C)の混合物をJIS−K5101に基づいてpH値を測定した結果、pH値は6.0となった。
【0086】
しかる後に、2軸押出機(ZSK‐25、L/D=37、Werner&Pfleiderer社製)を使用し、シリンダー設定温度250℃、スクリュー回転数150rpmの条件で溶融混練を行った。
【0087】
溶融混練された樹脂組成物はストランド状に押出され、ペレタイズされる。
【0088】
得られたペレットは120℃に設定した熱風循環型乾燥機で5時間乾燥を行った。乾燥直後の水分量をカールフィッシャー法で測定したところ、20〜70ppmの範囲であった。
【0089】
乾燥したペレットより、直ちにTダイスを装着した50mm単軸シート押出機(プラ技研製PG50−32V)により、シリンダー設定温度を260℃とし、表1記載の厚みのシートまたはフィルムを作成した。
【0090】
ただし、実施例1、3、4及び5では前記押出機の後段部分に開口部を設け、減圧ポンプに接続して1×10[Pa]にて減圧脱揮を行いながらシートまたはフィルムを作成した。
【0091】
実施例2および6では押出機の後段部分の開口部を閉じてシートまたはフィルムを作成した。
【0092】
比較例1、2は成分組成を変更する以外は実施例1と同様にシートを作成した。
【0093】
比較例3では押出機の後段部分の開口部を閉じ、ペレットの乾燥条件と押出機の設定温度を変えることにより、表中に記載の厚みと気泡含有量のシートを得た。
【0094】
得られたシートまたはフィルムは以下の方法で評価した。
(1) 気泡含有量
気泡を完全に除いたベース樹脂組成物の比重d1の測定は、120℃で5時間以上乾燥した樹脂組成物のペレットを使用し、射出成形機(ファナック(株)製 オートショット100D)により、シリンダー設定温度260℃、金型温度80℃の条件で12.7mm×127mm×1.5mm(厚み)の短冊状試験片を成形し、該成形片を用いて島津製作所(株)製デジタル比重計SGM−220G−601により測定した。
ここで、d1測定用試験片はシルバーストリーク(銀状痕跡)やフラッシュ等の外観不良を含まないものを使用した。このような単純形状の射出成形体でかつ成形体表面外観が良好な場合は、成形体中に気泡は殆ど含まれない。実施例1〜4および6、並びに比較例1〜3については、同試験片は半透明状であり、試験片中に気泡が含まれないことを光学顕微鏡または拡大鏡により確認した。
一方、対象となるシートまたはフィルムの比重d2の測定は、12.7mm×127mmの大きさに切り出した試験片に対してd1の測定と同様にデジタル比重計を用いて実施した。
d1およびd2の測定は少なくとも5つ以上の試験片に対して実施し、その平均値を使用した。
【0095】
気泡含有率は下式により求めた。
【0096】
気泡含有率[%]= {1−(d2/d1)}×100
(2)折曲強度評価(耐折性)
シートまたはフィルムより、幅20mm、長さ80mmの短冊状試料を切り出した。但し、ここで切り出し試料の長さ方向とシート押し出し方向を一致させた。
【0097】
該切り出し試料に対して、折り曲げ線が試料の短軸方向(短手方向)でかつ中心部分を通るようにして、試料を180°折り返した(折り返し回数1回とする)。続いて、折り曲げ方向と逆の方向に折り返した(折り返し回数2回とする)。以下、この操作を繰り返し、試料が破断するまでの折り曲げ回数をカウントした。(単位:回)
破断にいたるまでの折り曲げ回数が多いほど、耐折性に優れ、二次加工性に優れることを表す。
(3)難燃性
UL94規格20mm垂直燃焼試験方法に準じて、燃焼試験用の短冊状成形体(長さ:127mm、幅:12.7mm)を、シート押し出し方向と短冊状成形体の長さ方向が一致するように切り出し、温度23℃、湿度50%の環境下に2日間保持した後、UL94規格に準じて20mm垂直燃焼試験を行い、難燃性を判定した。
【0098】
難燃性の序列は、V−0>V−1>V−2であり、V−0が最も高度な難燃性を表す。
(4)絶縁破壊電圧測定
得られたシートを用いて、ASTM−D149に準拠して、23℃、オイル中、短時間法で絶縁破壊電圧を測定した。(単位:kV)
(5)反射率測定
島津製作所(株)製分光光度計UV−3150を使用して波長550nmにおける光線反射率を測定した。
【0099】
結果を表1に示す。
【0100】
実施例1〜6は、二次加工性に優れると共に、難燃性、絶縁破壊特性、光反射特性等の無機化合物に由来する優れた特性を有するフィルムまたはシートであることが示される。
【0101】
比較例1は成分(A)からなるシートである。
【0102】
比較例2は成分(B)を欠く例である。
【0103】
比較例3は気泡含有率が本発明の範囲外の例であるが、実施例1と比較することにより耐折性(即ち二次加工性)と難燃性が劣ることが分かる。
【0104】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の無機化合物を含有する芳香族ポリカーボネートシートまたはフィルムは、二次加工性に優れ、更には、電気的特性、光反射特性、臭素化合物難燃剤または塩素化合物難燃剤に依存しない高度難燃性、といった無機化合物に由来する機能が付加された芳香族ポリカーボネートシートまたはフィルムであり、電気電子部品材料、光学部材(反射板など)、自動車部品材料、建築用材料等として、特に、電気電子機器に使用される電気絶縁用のフィルムまたはシートとして極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリカーボネートまたは芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)100重量部、無機化合物(B)1〜30重量部を含む樹脂組成物からなるシートまたはフィルムであって、該シートまたはフィルム中における気泡含有率が0.5%未満であることを特徴とするシートまたはフィルム。
【請求項2】
該無機化合物(B)が珪酸塩化合物であることを特徴とする請求項1に記載のシートまたはフィルム。
【請求項3】
該無機化合物(B)が酸化チタンであることを特徴とする請求項1に記載のシートまたはフィルム。
【請求項4】
該樹脂組成物が、更に、有機酸および/または有機酸誘導体(C)0.01〜1重量部を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシートまたはフィルム。
【請求項5】
該樹脂組成物が、更に、有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩(D)0.01〜1重量部、フルオロポリマー(E)0.01〜1重量部を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシートまたはフィルム。
【請求項6】
該シートまたはフィルムが絶縁部材であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のシートまたはフィルム。
【請求項7】
該シートまたはフィルムが光反射部材であることを特徴とする請求項3に記載のシートまたはフィルム。
【請求項8】
該シートまたはフィルムが、打ち抜き、曲げ、絞りから選ばれる少なくとも1つの二次加工がなされていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のシートまたはフィルム。

【公開番号】特開2007−191499(P2007−191499A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8132(P2006−8132)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】