説明

無機粒子含有発泡体

【課題】発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が無機粒子を含む無機粒子偏在層の表面である新規の無機粒子含有発泡体を提供することである。
【解決手段】本発明の無機粒子含有発泡体は、連続樹脂相中に複数の気泡を有する発泡体であって、該発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が無機粒子を含む無機粒子偏在層の表面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子含有発泡体に関する。より詳細には、本発明は、連続樹脂相中に複数の気泡を有する発泡体であって、該発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が、無機粒子を含む無機粒子偏在層の表面である無機粒子含有発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
W/O型エマルションは、特に、W/O型のHIPE(高不連続相エマルション)として知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
外部油相に重合性モノマーを含むW/O型HIPEを形成して重合することにより、エマルションの油相および水相の幾何学的配置を検討することが行われている。例えば、90%の水相成分を含み、且つ、油相成分中にスチレンモノマーを用いる、W/O型HIPEを調製した後に重合することにより、エマルションの油相および水相の幾何学的配置を検討することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1では、油相と水相とを親油性の乳化剤を用いて撹拌することによってW/O型HIPEを調製した後に重合を行い、該W/O型HIPEの前駆体の相関係によって決定される気泡形状を有する硬質の多孔質体が形成されることが報告されている。
【0004】
W/O型エマルションを用いた多孔質体の形成においては、乳化性および静置保存安定性が良好なW/O型エマルションが好適である。このようなW/O型エマルションを得るためには、一般に、乳化剤または乳化剤代替材料の配合は必須である。親油性乳化剤としては、ソルビタンモノオレエート、表面疎水化処理を施した無機微粒子や層状粘土鉱物などが用いられている。例えば、ポリアルキルシラセスキオキサンの微細な固体球状粒子を含有する、界面活性剤を含まないW/O型エマルションの調製方法が報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
上記のように、乳化性および静置保存安定性が良好なW/O型エマルションを調製するためには、乳化剤または乳化剤代替材料の配合は必須である。この場合、乳化剤または乳化剤代替材料の配合量は、油相成分の30重量部までの範囲で用いることが一般的である。しかし、乳化剤または乳化剤代替材料を配合することによって、乳化性および静置保存安定性が良好なW/O型エマルションが調製できたとしても、低分子量成分として存在する乳化剤または乳化剤代替材料が汚染物質として作用してしまい、最終的に重合によって得られる多孔質ポリマー材料の物性に著しく影響するという問題がある。
【0006】
上記のような問題を回避するために、多孔質ポリマー材料を構成する連続相に導入可能な反応性乳化剤の検討がなされている。例えば、多孔質ポリマー材料を構成する連続相に導入可能な反応性乳化剤として、官能化酸化金属ナノ粒子が報告されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、工業的または試験的なプラントの規模において、連続工程によって、以上に述べたようなW/O型エマルション、特に、重合性のW/O型HIPEを製造して、多孔質ポリマー材料を商業的に生産する必要がある場合には、調製するW/O型エマルションの安定性が十分ではないという問題や、乳化剤や乳化剤代替材料や反応性乳化剤の影響によって多孔質ポリマー材料の物性が目的の物性とは大きく異なったものになるという問題がある。このように、W/O型エマルションを用いた多孔質体の製法において使用される無機粒子は、表面処理を施された無機粒子であり、乳化剤や乳化剤代替材料として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3565817号明細書
【特許文献2】特許第2656226号公報
【特許文献3】特表2004−504461号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「中および高不連続相比の水/ポリマーエマルション」(LissantおよびMahan、Journal of Colloid and Interfacecience,Vol.42,No.1,1973年1月、201〜208頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、連続樹脂相中に複数の気泡を有する発泡体であって、該発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が無機粒子を含む無機粒子偏在層の表面である無機粒子含有発泡体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の無機粒子含有発泡体は、連続樹脂相中に複数の気泡を有する発泡体であって、該発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が無機粒子を含む無機粒子偏在層の表面である。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記無機粒子偏在層は上記連続樹脂相を構成する成分を含む。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記無機粒子の平均粒子径は5nm〜500nmである。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記発泡体の球状気泡の平均孔径が50μm以下である。
【0015】
本発明の別の局面においては、上記無機粒子含有発泡体を製造する方法が提供される。該無機粒子発泡体の製造方法は、下記の工程(I)から(IV)を含む:
(I)連続油相成分および無機粒子を含む水相成分を用いてW/O型エマルションを調製する工程、
(II)得られたW/O型エマルションを賦形する工程、
(III)賦形されたW/O型エマルションを重合し、含水重合体を得る工程、
(IV)含水重合体を脱水し、得られる発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が無機粒子偏在層である発泡体を形成する工程。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、連続樹脂相中に複数の気泡を有する発泡体であって、該発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が無機粒子を含む無機粒子偏在層の表面である新規の無機粒子含有発泡体が得られ得る。この新規の無機粒子含有発泡体は、様々な用途に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】実施例1で作製した無機粒子含有発泡体の断面を250倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図1B】実施例1で作製した無機粒子含有発泡体の断面を2000倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図1C】実施例1で作製した無機粒子含有発泡体の断面を10000倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図2A】実施例2で作製した無機粒子含有発泡体の断面を250倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図2B】実施例2で作製した無機粒子含有発泡体の断面を2000倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図2C】実施例2で作製した無機粒子含有発泡体の断面を10000倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図3A】実施例3で作製した無機粒子含有発泡体の断面を250倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図3B】実施例3で作製した無機粒子含有発泡体の断面を2000倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図3C】実施例3で作製した無機粒子含有発泡体の断面を10000倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図4A】実施例4で作製した無機粒子含有発泡体の断面を250倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図4B】実施例4で作製した無機粒子含有発泡体の断面を2000倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図4C】実施例4で作製した無機粒子含有発泡体の断面を10000倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図5A】比較例1で作製した発泡体の断面を800倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図5B】比較例1で作製した発泡体の断面を10000倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪≪A.無機粒子含有発泡体≫≫
本発明の無機粒子含有発泡体は、連続樹脂相中に複数の気泡を有する発泡体である。該発泡体の気泡は、独立気泡構造であっても良く、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造であっても良い。なお、本明細書において「球状気泡」とは、厳密な真球状の気泡でなくても良く、例えば、部分的にひずみのある略球状の気泡や、大きなひずみを有する空間からなる気泡であっても良い。
【0019】
本発明の無機粒子含有発泡体が有する球状気泡の平均孔径は、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは18μm以下である。本発明の無機粒子含有発泡体が有する球状気泡の平均孔径の下限値は特に限定されず、例えば、好ましくは0.01μmであり、より好ましくは0.1μmであり、さらに好ましくは1μmである。
【0020】
本発明の無機粒子含有発泡体が連続気泡構造を有する発泡体である場合、発泡体が有する貫通孔の平均孔径は、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは4μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。本発明の無機粒子含有発泡体が連続気泡構造を有する発泡体である場合、本発明の無機粒子含有発泡体が有する貫通孔の平均孔径の下限値は特に限定されず、例えば、好ましくは0.001μmであり、より好ましくは0.01μmである。
【0021】
本発明の無機粒子含有発泡体は、連続樹脂相中に複数の気泡を有する発泡体であって、該発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が、無機粒子を含む無機粒子偏在層の表面である。発泡体では、一般に、発泡体の連続相(固体部分)の各気泡(気体部分)と接する表面により、連続相部分と気泡部分とが隔てられている。本発明の無機粒子含有発泡体は、この連続相部分と気泡部分とを隔てる部分(すなわち、発泡体中の内壁表面)の少なくとも一部が無機粒子偏在層の表面であり、該無機粒子偏在層を介して、連続樹脂相と気泡とが隔てられている。好ましくは、本発明の無機粒子含有発泡体は、連続樹脂相の各気泡と接する表面のほぼ全体が無機粒子を含む無機粒子偏在層の表面である。すなわち、本発明の無機粒子含有発泡体に含まれる各気泡と接する表面のほぼ全体が無機粒子偏在層の表面であることが好ましい。
【0022】
本発明の一つの好ましい実施形態においては、上記無機粒子偏在層は無機粒子および連続樹脂相を構成する成分を含む層である。好ましくは、無機粒子偏在層中の無機粒子の含有割合は、連続樹脂相中の無機粒子の含有割合よりも大きい。この実施形態では、無機粒子偏在層が連続樹脂相を構成する成分を含むため、発泡体の連続樹脂相と無機粒子偏在層とが実質的に連続し、該発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が、無機粒子偏在層の表面となる。なお、本発明の無機粒子偏在層は、連続樹脂相よりも無機粒子の含有割合が大きいため、連続樹脂相とは明らかに異なる層として認識することができる。例えば、250倍以上の倍率で撮影した無機粒子含有発泡体の断面SEM写真により、無機粒子偏在層が連続樹脂相とは明らかに異なる層として存在することを確認し得る。
【0023】
本発明の別の好ましい実施形態においては、上記無機粒子偏在層は、無機粒子のみを含む層である。この無機粒子のみを含む無機粒子偏在層は、例えば、発泡体中の内壁表面に無機粒子が付着することにより形成され得る。この無機粒子偏在層は、例えば、250倍以上の倍率で撮影した無機粒子含有発泡体の断面SEM写真により、存在を確認し得る。
【0024】
本発明の無機粒子含有発泡体は、連続樹脂相に複数の気泡を有する。上記気泡としては、(1)発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が、無機粒子のみを含む無機粒子偏在層の表面のみである気泡、(2)発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が、無機粒子および連続樹脂相を構成する成分を含む無機粒子偏在層の表面のみである気泡、(3)発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が、無機粒子のみを含む無機粒子偏在層の表面、および、無機粒子および連続樹脂相を構成する成分を含む無機粒子偏在層の表面である気泡が挙げられる。本発明の無機粒子含有発泡体は、上記(1)〜(3)の気泡の少なくとも1種を含み得る。なお、本発明の無機粒子含有発泡体は、上記(1)〜(3)の気泡のいずれかを含んでいれば良く、さらに無機粒子偏在層を有さない気泡を含んでいてもよい。
【0025】
上記無機粒子偏在層の厚みは、用いる無機粒子の平均粒子径および/またはその配合量により任意の適切な値に設定され得る。無機粒子偏在層の厚みは、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.5μm以上である。無機粒子偏在層の厚みが0.1μm未満である場合、無機粒子偏在層が形成されることで発泡体に付与される特性が十分に発揮されない場合がある。無機粒子偏在層の厚みの上限値は、好ましくは10μmであり、より好ましくは5μmである。無機粒子偏在層の厚みが10μmを超える場合、得られる発泡体が脆くなり、加工性やハンドリング性が低下するおそれがある。本明細書において、無機粒子偏在層の厚みは、得られた発泡体を任意の方向に切断して撮影した断面SEM写真から測定される。
【0026】
上記無機粒子としては、任意の適切な無機粒子を用いることができる。該無機粒子としては、例えば、導電性無機粒子、充填剤、難燃性付与粒子、無機顔料、誘電性粒子、熱伝導性粒子、多孔性粒子などが挙げられる。具体的には、このような無機粒子としては、アンチモンドープ型酸化スズ(ATO)、インジウム酸化スズ(ITO)、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸やその塩類、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、亜鉛華、ベントナイン、カーボンブラック、シリカ(コロイダルシリカ)、アルミナ、アルミニウムシリケート、アセチレンブラック、アルミニウム粉、窒化ホウ素、ゼオライトなどが挙げられる。上記無機粒子は、好ましくは表面処理が施されていない無機粒子である。無機粒子は、1種のみを用いても良く、2種以上を用いても良い。
【0027】
上記無機粒子の平均粒子径は特に制限はなく、任意の適切な平均粒子径を有する無機粒子を用いることができる。無機粒子の平均粒子径は、好ましくは5nm〜500nmであり、より好ましくは10nm〜300nmであり、さらに好ましくは20nm〜200nmである。平均粒子径が上記の範囲の無機粒子を用いることにより、より均一な無機粒子偏在層を有する無機粒子含有発泡体が得られ得る。
【0028】
≪≪B.無機粒子含有発泡体の製造方法≫≫
本発明の無機粒子含有発泡体の製造方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。本発明の無機粒子含有発泡体は、好ましくは連続油相成分と無機粒子を含有する水相成分を用いて得られるW/O型エマルションを用いて製造することができる。
【0029】
本発明の無機粒子含有発泡体の製造方法としては、例えば、連続的に連続油相成分と無機粒子を含有する水相成分を乳化機に供給して本発明の無機粒子含有発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションを調製し、続いて、得られたW/O型エマルションを重合して含水重合体を製造し、続いて、得られた含水重合体を脱水する、「連続法」が挙げられる。本発明の無機粒子含有発泡体の製造方法としては、また、例えば、連続油相成分に対して適当な量の無機粒子を含有する水相成分を乳化機に仕込み、攪拌しながら連続的に無機粒子を含有する水相成分を供給することで本発明の無機粒子含有発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションを調製し、得られたW/O型エマルションを重合して含水重合体を製造し、続いて、得られた含水重合体を脱水する、「バッチ法」が挙げられる。
【0030】
W/O型エマルションを連続的に重合する連続重合法は生産効率が高く、重合時間の短縮効果と重合装置の短縮化とを最も有効に利用できるので好ましい方法である。
【0031】
本発明の無機粒子含有発泡体は、より具体的には、好ましくは、
連続油相成分および無機粒子を含む水相成分を用いてW/O型エマルションを調製する工程(I)、
得られたW/O型エマルションを賦形する工程(II)、
賦形されたW/O型エマルションを重合し、含水重合体を得る工程(III)、
含水重合体を脱水し、得られる発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が無機粒子偏在層である発泡体を形成する工程(IV)
を含む製造方法によって製造することができる。ここで、得られたW/O型エマルションを賦形する工程(II)と賦形されたW/O型エマルションを重合する工程(III)とは少なくとも一部を同時に行っても良い。
【0032】
≪B−1.連続油相成分および無機粒子を含む水相成分を用いてW/O型エマルションを調製する工程(I)≫
本発明の発泡体の製造に用いられ得るW/O型エマルションは、連続油相成分と、該連続油相成分と不混和性であり、かつ、無機粒子を含有する水相成分とを含むW/O型エマルションである。より具体的には、連続油相成分中に無機粒子を含有する水相成分が分散したものである。本発明の発泡体の製造方法では、無機粒子を含有する水相成分を用いるため、発泡体の製造に用いられ得るW/O型エマルションの水相に無機粒子の大部分が含まれる。なお、水相成分に含まれる無機粒子の一部は、エマルション状態にする段階で連続油相成分にも移動し得る。
【0033】
本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションにおける、無機粒子を含有する水相成分と連続油相成分との比率は、W/O型エマルションを形成し得る範囲で任意の適切な比率を採り得る。本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションにおける、無機粒子を含有する水相成分と連続油相成分との比率は、該W/O型エマルションの重合によって得られる多孔質ポリマー材料の構造的、機械的、および性能的特性を決定する上で重要な因子となり得る。具体的には、上記W/O型エマルションにおける、無機粒子を含有する水相成分と連続油相成分との比率は、該W/O型エマルションの重合によって得られる多孔質ポリマー材料の密度、気泡サイズ、気泡構造、および多孔構造を形成する壁体の寸法などを決定する上で重要な因子となり得る。
【0034】
本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルション中の無機粒子を含有する水相成分の比率は、無機粒子の含有量などに応じて、任意の適切な比率にすることができる。無機粒子を含有する水相成分の比率は、下限値として、好ましくは30重量%であり、より好ましくは40重量%であり、上限値として、好ましくは80重量%であり、より好ましくは75重量%であり、さらに好ましくは70重量%であり、特に好ましくは65重量%である。本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルション中の無機粒子を含有する水相成分の比率が上記範囲内にあれば、本発明の効果を十分に発現し得る。
【0035】
本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれ得る。このような添加剤としては、例えば、粘着付与樹脂;有機顔料;染料;などが挙げられる。このような添加剤は、1種のみ含まれていても良いし、2種以上が含まれていても良い。
【0036】
本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションを製造する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションを製造する方法としては、例えば、連続油相成分と無機粒子を含有する水相成分を連続的に乳化機に供給することでW/O型エマルションを形成する「連続法」や、連続油相成分に対して適当な量の無機粒子を含有する水相成分を乳化機に仕込み、攪拌しながら連続的に無機粒子を含有する水相成分を供給することでW/O型エマルションを形成する「バッチ法」などが挙げられる。
【0037】
本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションを製造する際、エマルション状態を得るための剪断手段としては、例えば、ローターステーターミキサー、ホモジナイザー、ミクロ流動化装置などを用いた高剪断条件の適用が挙げられる。また、エマルション状態を得るための別の剪断手段としては、例えば、動翼ミキサーまたはピンミキサーを使用した振盪、電磁撹拌棒などを用いた低剪断条件の適用による連続および分散相の穏やかな混合が挙げられる。
【0038】
「連続法」によってW/O型エマルションを調製するための装置としては、例えば、静的ミキサー、ローターステーターミキサー、ピンミキサーなどが挙げられる。撹拌速度を上げることで、または、混合方法でW/O型エマルション中に水相成分をより微細に分散するようデザインされた装置を使用することで、より激しい撹拌を達成しても良い。
【0039】
「バッチ法」によってW/O型エマルションを調製するための装置としては、例えば、手動での混合や振盪、被動動翼ミキサー、3枚プロペラ混合羽根などが挙げられる。
【0040】
無機粒子を含有する水相成分を調製する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。無機粒子を含有する水相成分を調製する方法としては、例えば、連続油相成分と非混和性の水性流体と無機粒子とを任意の手段を用いて混合する方法が挙げられる。また、市販されている無機粒子の水性流体への分散体またはスラリー(例えば、石原産業株式会社製、商品名:SN−100D、日産化学工業株式会社製、商品名:スノーテックス50、堺化学工業株式会社製、商品名:高純度ペロブスカイトBT−02など)に上記水性流体を添加し、所望の無機粒子含有量としたものを水相成分として用いても良く、市販の無機粒子の水性流体への分散体またはスラリーを水相成分としてそのまま用いてもよい。
【0041】
連続油相成分を調製する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。連続油相成分を調製する方法としては、代表的には、例えば、エチレン性不飽和モノマーとアクリル系重合体と任意の該エチレン性不飽和モノマーと共重合可能な極性モノマーとを含む混合シロップを調製し、続いて、該混合シロップに、重合開始剤、架橋剤、その他の任意の適切な成分を配合し、連続油相成分を調製することが好ましい。
【0042】
上記アクリル系重合体を調製する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。代表的には、モノマー成分を重合開始剤の存在下、任意の重合方法(例えば、部分重合法、および、溶液重合法)で重合させることにより、得られる。
【0043】
<B−1−1.水相成分>
上記水相成分は、実質的に連続油相成分と不混和性である水性流体、および、無機粒子を含有する。
【0044】
(B−1−1−1.連続油相成分と不混和性である水性流体)
該水性流体としては、実質的に連続油相成分と不混和性のあらゆる水性流体を採用し得る。取り扱いやすさや低コストの観点から、好ましくは、イオン交換水などの水である。
【0045】
(B−1−1−2.無機粒子)
上記無機粒子としては、任意の適切な無機粒子を用いることができる。該無機粒子としては、例えば、導電性無機粒子、充填剤、難燃性付与粒子、無機顔料、誘電性粒子、熱伝導性粒子、多孔性粒子などが挙げられる。具体的には、このような無機粒子としては、アンチモンドープ型酸化スズ(ATO)、インジウム酸化スズ(ITO)、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸やその塩類、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、亜鉛華、ベントナイン、カーボンブラック、シリカ(コロイダルシリカ)、アルミナ、アルミニウムシリケート、アセチレンブラック、アルミニウム粉、窒化ホウ素、ゼオライトなどが挙げられる。無機粒子は、1種のみを用いても良く、2種以上を用いても良い。上記無機粒子としては、水分散性無機粒子が好適に用いられ得る。
【0046】
上記無機粒子の平均粒子径は特に制限はなく、任意の適切な平均粒子径を有する無機粒子を用いることができる。無機粒子の平均粒子径は、好ましくは5nm〜500nmであり、より好ましくは10nm〜300nmであり、さらに好ましくは20nm〜200nmである。平均粒子径が上記の範囲の無機粒子を用いることにより、より安定した無機粒子を含有する水相成分および/またはW/O型エマルションを調製することができる。さらに、平均粒子径が上記の範囲の無機粒子を用いることにより、厚みの均一な無機粒子偏在層を有する発泡体の形成が容易となる。
【0047】
上記水相成分における無機粒子の含有量(固形分)は、好ましくは5重量%〜70重量%であり、より好ましくは10重量%〜60重量%であり、さらに好ましくは15重量%〜50重量%である。無機粒子の含有量が5重量%未満では、得られた無機粒子含有発泡体に無機粒子偏在層が形成されないおそれがある。無機粒子の含有量が70重量%を超えると、W/O型エマルションの安定性が低下するおそれがある。
【0048】
(B−1−1−3.水相成分中のその他の成分)
水相成分は、無機粒子の分散性を向上させるために、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な分散剤が含まれ得る。このような分散剤としては、ポリカルボン酸アンモニウム塩(例えば、サンノプコ社製、商品名:SNディスパーサント)などが挙げられる。
【0049】
水相成分における分散剤の含有量は、用いる無機粒子の平均粒子径および/または水相成分における無機粒子の含有量により、任意の適切な含有量とされ得る。水相成分における分散剤の含有量は、好ましくは0.3重量%〜2重量%であり、より好ましくは0.3重量%〜1重量%である。水相成分における分散剤の含有量が0.3重量%未満では、水相成分への無機粒子の分散性が低下し、無機粒子の凝集および/または沈降するおそれがある。また、W/O型エマルションの乳化安定性が低下するおそれがある。水相成分における分散剤の含有量が2重量%を超えると、W/O型エマルションの調製工程において転相しやすくなり、目的とするW/O型エマルションを調製できないおそれがある。
【0050】
水相成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれ得る。このような添加剤としては、例えば、重合開始剤、水溶性の塩などが挙げられる。水溶性の塩は、本発明で用いるW/O型エマルションをより安定化させるために有効な添加剤となり得る。このような水溶性の塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどが挙げられる。このような添加剤は、1種のみ含まれていても良いし、2種以上が含まれていても良い。水相成分に含まれ得る添加剤は、1種のみでも良いし、2種以上でも良い。
【0051】
<B−1−2.連続油相成分>
連続油相成分は、好ましくはエチレン性不飽和モノマーとアクリル系重合体とを含む。連続油相成分中のエチレン性不飽和モノマーおよびアクリル系重合体の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採り得る。
【0052】
(B−1−2−1.エチレン性不飽和モノマー)
エチレン性不飽和モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーであれば、任意の適切なモノマーを採用し得る。エチレン性不飽和モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0053】
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルを含む。エチレン性不飽和モノマー中の(メタ)アクリル酸エステルの含有割合は、下限値として、好ましくは70重量%であり、より好ましくは75重量%であり、さらに好ましくは80重量%であり、上限値として、好ましくは98重量%であり、より好ましくは96重量%であり、さらに好ましくは95重量%である。(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0054】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、好ましくは、炭素数が1〜20のアルキル基(シクロアルキル基、アルキル(シクロアルキル)基、(シクロアルキル)アルキル基も含む概念)を有するアルキル(メタ)アクリレートである。上記アルキル基の炭素数は、好ましくは4〜18である。なお、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルの意味であり、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートの意味である。
【0055】
炭素数が1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。炭素数が1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0056】
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な極性モノマーをさらに含む。エチレン性不飽和モノマー中の極性モノマーの含有割合は、下限値として、好ましくは2重量%であり、より好ましくは4重量%であり、さらに好ましくは5重量%であり、上限値として、好ましくは30重量%であり、より好ましくは25重量%であり、さらに好ましくは20重量%である。極性モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0057】
極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;などが挙げられる。
【0058】
(B−1−2−2.アクリル系重合体)
上記アクリル系重合体は、好ましくはエチレン性不飽和モノマーを重合することにより得られる重合体である。アクリル系重合体は、連続油相成分に含まれるエチレン性不飽和モノマーと相溶性を有していることが好ましい。上記アクリル系重合体の重合に用いるエチレン性不飽和モノマーとしては、上記炭素数が1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートおよび極性モノマーを好適に用いることができる。具体的には、上記B−1−2−1項で例示した炭素数が1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートおよび極性モノマーを用いることができる。炭素数が1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートおよび極性モノマーは、それぞれ1種のみであっても良く、2種以上であっても良い。アクリル系重合体のモノマー成分として用いられる、炭素数が1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートおよび極性モノマーは、連続油相成分に含まれるエチレン性不飽和モノマーと同一であっても良く、異なっていても良い。
【0059】
上記アクリル系重合体の重量平均分子量は、好ましくは1万〜50万であり、より好ましくは3万〜30万であり、さらに好ましくは5万〜20万である。アクリル系重合体の重量平均分子量が上記の範囲内であれば、無機粒子を含有する水相成分がより安定して分散したW/O型エマルションが得られ得る。
【0060】
アクリル系重合体は、エチレン性不飽和モノマーと重合開始剤とを仕込み、任意の適切な重合方法によりモノマー成分を重合することにより得られる。例えば、上記アクリル系重合体は、溶液重合法により得ることができる。
【0061】
溶液重合によりアクリル系重合体を得る場合、任意の適切な溶液重合法を用いることができ、例えば、任意の溶媒中にエチレン性不飽和モノマーと連鎖移動剤と重合開試剤とを仕込み、モノマー成分を重合させ、次いでモノマー成分、連鎖移動剤および重合開始剤は溶解するが、得られたアクリル系重合体は溶解しない貧溶媒で洗浄することにより、所望のアクリル系重合体が得られ得る。
【0062】
アクリル系重合体の溶液重合に用いる溶媒としては、任意の適切な溶媒を用いることができ、例えば、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤;シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤などが使用できる。溶液重合に用いる溶媒は、1種のみを用いても良く、2種以上を用いても良い。
【0063】
アクリル系重合体の溶液重合に用いる重合開始剤としては、溶媒に可溶な重合開始剤であればよく、任意の適切な重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、過酸化物などが挙げられる。重合開始剤は1種のみを用いても良く、2種以上を用いても良い。アクリル系重合体の溶液重合時の重合開始剤の含有割合は、目的とするアクリル系重合体に応じて適宜設定することができ、例えば、モノマー成分の合計量の0.03重量%〜1重量%に設定し得る。
【0064】
アクリル系重合体の溶液重合に用いる連鎖移動剤としては、任意の適切な連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどが挙げられる。連鎖移動剤は、1種のみを用いても良く、2種以上を用いても良い。アクリル系重合体の溶液重合時に用いる連鎖移動剤の含有割合は、目的とするアクリル系重合体に応じて適宜設定することができ、モノマー成分の合計量の0.2重量%以下に設定し得る。
【0065】
溶液重合後の洗浄に用いる貧溶媒としては、重合開始剤および連鎖移動剤は溶解するが、得られたアクリル系重合体を溶解しない溶媒であればよく、任意の適切な溶媒を用いることができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒などが挙げられる。なかでも、メタノールを好適に用いることができる。
【0066】
アクリル系重合体の含有割合は、連続油相成分に含まれるエチレン性不飽和モノマーおよびアクリル系重合体の合計量に対して、下限値として好ましくは5重量%であり、より好ましくは7重量%であり、さらに好ましくは10重量%であり、上限値として好ましくは50重量%であり、より好ましくは40重量%であり、さらに好ましくは30重量%である。アクリル系重合体の含有割合を5重量%以上にすることにより、微細な水滴を含むW/O型エマルションとすることができ、得られたW/O型エマルションの静置安定性が向上する。
【0067】
(B−1−2−3.重合開始剤)
連続油相成分には、好ましくは、重合開始剤が含まれる。
【0068】
重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤、レドックス重合開始剤などが挙げられる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。
【0069】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、過酸化物、ペルオキシ炭酸、ペルオキシカルボン酸、過硫酸カリウム、t−ブチルペルオキシイソブチレート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
【0070】
光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;ダロキュア−2959)、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;ダロキュア−1173)、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−651)、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−184)などのアセトフェノン系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系光重合開始剤;その他のハロゲン化ケトン;アシルフォスフィンオキサイド(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−819);ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(例として、BASF社製、商品名:ルシリンTPO)などを挙げることができる。
【0071】
重合開始剤は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0072】
重合開始剤の含有割合は、連続油相成分全体に対し、下限値として、好ましくは0.05重量%であり、より好ましくは0.1重量%であり、上限値として、好ましくは5.0重量%であり、より好ましくは1.0重量%である。重合開始剤の含有割合が連続油相成分全体に対して0.05重量%未満の場合には、未反応のモノマー成分が多くなり、得られる多孔質材料中の残存モノマー量が増加するおそれがある。重合開始剤の含有割合が連続油相成分全体に対して5.0重量%を超える場合には、得られる無機粒子含有発泡体の機械的物性が低下するおそれがある。
【0073】
なお、光重合開始剤によるラジカル発生量は、照射する光の種類や強度や照射時間、モノマーおよび溶剤混合物中の溶存酸素量などによっても変化する。そして、溶存酸素が多い場合には、光重合開始剤によるラジカル発生量が抑制され、重合が十分に進行せず、未反応物が多くなることがある。したがって、光照射の前に、反応系中に窒素等の不活性ガスを吹き込み、酸素を不活性ガスで置換しておく、または、減圧処理によって脱気しておくことが好ましい。
【0074】
(B−1−2−4.架橋剤)
連続油相成分には、好ましくは、架橋剤が含まれる。
【0075】
架橋剤は、典型的には、ポリマー鎖同士を連結して、より三次元的な分子構造を構築するために用いられる。架橋剤の種類と含有量の選択は、得られる無機粒子含有発泡体に所望される構造的特性、機械的特性、および流体処理特性に左右される。架橋剤の具体的な種類および含有量の選択は、多孔質材料の構造的特性、機械的特性、および流体処理特性の望ましい組み合わせを実現する上で重要となる。
【0076】
架橋剤としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、およびそれらの混合物が挙げられる。多官能(メタ)アクリレートとしては、ジアクリレート類、トリアクリレート類、テトラアクリレート類、ジメタクリレート類、トリメタクリレート類、テトラメタクリレート類などが挙げられる。多官能(メタ)アクリルアミドとしては、ジアクリルアミド類、トリアクリルアミド類、テトラアクリルアミド類、ジメタクリルアミド類、トリメタクリルアミド類、テトラメタクリルアミド類などが挙げられる。
【0077】
多官能(メタ)アクリレートは、例えば、ジオール類、トリオール類、テトラオール類、ビスフェノールA類などから誘導できる。具体的には、例えば、1,10−デカンジオール、1,8−オクタンジオール、1,6ヘキサン−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4ブタン−2−エンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性物などから誘導できる。
【0078】
多官能(メタ)アクリルアミドは、例えば、対応するジアミン類、トリアミン類、テトラアミン類などから誘導できる。
【0079】
架橋剤は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0080】
架橋剤の含有割合は、エチレン性不飽和モノマーとアクリル系重合体との合計量に対し、下限値として、好ましくは5重量%であり、より好ましくは10重量%であり、上限値として、30重量%である。架橋剤の含有割合がエチレン性不飽和モノマーとアクリル系重合体の合計量に対して5重量%未満の場合には、耐熱性の低下に伴い高含水架橋重合体を脱水する工程において収縮により気泡構造が殆ど崩れてしまうおそれがある。架橋剤の含有割合がエチレン性不飽和モノマーとアクリル系重合体の合計量に対して30重量%を超える場合には、得られる多孔質材料の機械的特性が低下するおそれがある。
【0081】
(B−1−2−5.連続油相成分中のその他の成分)
【0082】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0083】
酸化防止剤の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0084】
酸化防止剤は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0085】
有機溶媒としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な有機溶媒を採用し得る。
【0086】
有機溶媒の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0087】
有機溶媒は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0088】
≪B−2.得られたW/O型エマルションを賦形する工程(II)≫
工程(II)において、W/O型エマルションを賦形する方法としては、任意の適切な賦形方法を採用し得る。例えば、シート状の発泡体を成形する場合には、走行するベルト上にW/O型エマルションを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状に賦形する方法が挙げられる。また、熱可塑性樹脂フィルムの一面に塗工して賦形する方法が挙げられる。
【0089】
工程(II)において、W/O型エマルションを賦形する方法として、熱可塑性樹脂フィルムの一面に塗工して賦形する方法を採用する場合、塗工する方法としては、例えば、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーターなどを用いる方法が挙げられる。
【0090】
賦形後のW/O型エマルションにおいても、無機粒子の大部分は水相成分中に分散した状態で存在していると考えられる。
【0091】
≪B−3.賦形されたW/O型エマルションを重合し、含水重合体を得る工程(III)≫
工程(III)において、賦形されたW/O型エマルションを重合する方法としては、任意の適切な重合方法を採用し得る。例えば、加熱装置によってベルトコンベアーのベルト表面が加温される構造の、走行するベルト上にW/O型エマルションを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状に賦形しつつ加熱によって重合する方法や、活性エネルギー線の照射によってベルトコンベアーのベルト表面が加温される構造の、走行するベルト上にW/O型エマルションを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状に賦形しつつ活性エネルギー線の照射によって重合する方法が挙げられる。
【0092】
加熱によって重合する場合、重合温度(加熱温度)は、下限値として、好ましくは23℃であり、より好ましくは60℃であり、さらに好ましくは70℃であり、特に好ましくは80℃であり、上限値としては、好ましくは150℃であり、より好ましくは130℃であり、さらに好ましくは100℃である。重合温度が23℃未満の場合は、重合に長時間を要し、工業的な生産性が低下するおそれがある。重合温度が150℃を超える場合は、得られる発泡体の孔径が不均一となるおそれや、発泡体の強度が低下するおそれがある。なお、重合温度は、一定である必要はなく、例えば、重合中に2段階や多段階で変動させてもよい。
【0093】
活性エネルギー線の照射によって重合する場合、活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線などが挙げられる。活性エネルギー線としては、好ましくは、紫外線、可視光線であり、より好ましくは、波長が200nm〜800nmの可視〜紫外の光である。W/O型エマルションは光を散乱させる傾向が強いため、波長が200nm〜800nmの可視〜紫外の光を用いればW/O型エマルションに光を貫通させることができる。また、200nm〜800nmの波長で活性化できる光重合開始剤は入手しやすく、光源が入手しやすい。
【0094】
活性エネルギー線の波長は、下限値として、好ましくは200nmであり、より好ましくは300nmであり、上限値として、好ましくは800nmであり、より好ましくは450nmである。
【0095】
活性エネルギー線の照射に用いられる代表的な装置としては、例えば、紫外線照射を行うことができる紫外線ランプとして、波長300〜400nm領域にスペクトル分布を持つ装置が挙げられ、その例としては、ケミカルランプ、ブラックライト(東芝ライテック(株)製の商品名)、メタルハライドランプなどが挙げられる。
【0096】
活性エネルギー線の照射を行う際の照度は、照射装置から被照射物までの距離や電圧の調節によって、任意の適切な照度に設定され得る。例えば、特開2003-13015号公報に開示された方法によって、各工程における紫外線照射をそれぞれ複数段階に分割して行い、それにより重合反応の効率を精密に調節することができる。
【0097】
紫外線照射は、重合禁止作用のある酸素が及ぼす悪影響を防ぐために、例えば、熱可塑性樹脂フィルム等の基材の一面にW/O型エマルションを塗工して賦形した後に不活性ガス雰囲気下で行うことや、熱可塑性樹脂フィルム等の基材の一面にW/O型エマルションを塗工して賦形した後にシリコーン等の剥離剤をコートしたポリエチレンテレフタレート等の紫外線は通過するが酸素を遮断するフィルムを被覆させて行うことが好ましい。
【0098】
熱可塑性樹脂フィルムとしては、一面にW/O型エマルションを塗工して賦形できるものであれば、任意の適切な熱可塑性樹脂フィルムを採用し得る。熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムやシートが挙げられる。
【0099】
不活性ガス雰囲気とは、光照射ゾーン中の酸素を不活性ガスにより置換した雰囲気をいう。したがって、不活性ガス雰囲気においては、できるだけ酸素が存在しないことが必要であり、酸素濃度で5000ppm以下であることが好ましい。
【0100】
≪B−4.得られた含水重合体を脱水し、得られる発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が無機粒子偏在層の表面である発泡体を形成する工程(IV)≫
工程(IV)では、工程(III)で得られた含水重合体を脱水し、得られる発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が無機粒子偏在層である発泡体を形成する。工程(III)で得られた含水重合体中には無機粒子を含有する水相成分が分散状態で存在する。この水相成分を脱水により除去して乾燥することにより、本発明の無機粒子含有発泡体が得られる。この脱水工程において、水相成分の連続油相成分と非混和性である水性流体が、例えば、蒸発することにより取り除かれる。この際、水相成分に含まれる無機粒子は水性流体と共に、水相成分と連続油相成分の界面まで移動するが、連続油相成分に含まれる樹脂成分との相互作用により、連続油相成分との界面部分に留まる。そのため、本発明の無機粒子含有発泡体は、発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が、無機粒子偏在層の表面である無機粒子含有発泡体となる。本発明の無機粒子含有発泡体では、水相成分に含まれる無機粒子が発泡体中の内壁表面の少なくとも一部にほぼ均一の厚みに偏在し、厚みが数μm程度の無機粒子偏在層が形成されることが好ましい。
【0101】
工程(IV)における脱水方法としては、任意の適切な乾燥方法を採用し得る。このような乾燥方法としては、例えば、真空乾燥、凍結乾燥、圧搾乾燥、電子レンジ乾燥、熱オーブン内での乾燥、赤外線による乾燥、またはこれらの技術の組み合わせ、などが挙げられる。
【0102】
本発明の発泡体は、クッション材、絶縁材、断熱材、防音材、防塵材、濾過材、反射材などをはじめとする無数の用途に適する。
【実施例】
【0103】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。また、「部」は「重量部」を意味する。
【0104】
(分子量測定)
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により重量平均分子量を求めた。
装置:東ソー(株)製「HLC−8020」
カラム:東ソー(株)製「TSKgel GMHHR−H(20)」
溶媒:テトラヒドロフラン
標準物質:ポリスチレン
【0105】
(平均孔径および各層の厚みの測定)
作製した無機粒子含有発泡体シートをミクロトームカッターで厚み方向に切断したものを測定用試料とした。測定用試料の切断面を低真空走査型電子顕微鏡(日立製、S−3400N)で250倍〜10000倍にて撮影した。得られた画像を用いて任意範囲の球状気泡について大きいものから20個の孔の長軸長さ(球状気泡の孔径)を測定し、その測定値の平均値を平均径とした。また、該画像を用いて気泡内壁が無機粒子偏在層であるか否かを観察した。
【0106】
〔製造例〕重合性反応シロップの調製
エチレン性不飽和モノマーとしてアクリル酸2−エチルヘキシル(東亜合成(株)製、以下「2EHA」と略す)を84重量部、極性モノマーとしてアクリル酸(東亜合成社製、以下、「AA」と略す)を16重量部からなる混合モノマー溶液100重量部に対し、連鎖移動剤としてチオグリコール酸(堺化学工業(株)製、商品名「メルカプト酢酸」)0.2重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(キシダ化学(株)製、商品名:AIBN)0.2重量部、溶媒として酢酸エチル67重量部からなる溶液を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下、60℃で4時間、さらに70℃で3時間の湯浴加熱によって、ポリマー濃度約60%のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をメタノールで数回洗浄して、重量平均分子量が13万のポリマーを得た。得られたポリマーを2EHAが66重量部、イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社、商品名;IBXA)が24重量部、極性モノマーとしてAAが10重量部からなる混合モノマー溶液に溶解させることによってポリマー濃度16%に調整し、重合反応性シロップとした。
【0107】
〔実施例1〕
調製した重合反応性シロップ100重量部に、トリメチロールトリプロパンアクリレート(大阪有機化学工業株式会社、商品名:TMPTA)10重量部、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:ルシリンTPO)0.5重量部を均一混合して連続油相成分(以下、「油相」と称する)とした。
上記油相100重量部に対して水相成分(以下、「水相」と称する)として、ATO水分散液(石原産業株式会社製、商品名:SN−100D(2次粒子径85−120nm)、固形分30重量%)142.8重量部を常温下、上記油相成分を仕込んだ攪拌混合機内に攪拌しながら連続的に滴下供給し、安定なW/O型エマルションを形成させた。なお、水相と油相の重量比は、58.8/41.2であった。
形成から室温下で1時間、静置保存したW/O型エマルションを光照射後の厚みが300μmとなるように剥離処理された基材上に塗布し連続的に成形した。更にその上に厚み38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を照射し、厚み300μmの含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、前記含水架橋重合体を130℃にて20分間に亘って加熱することによって厚さ約300μmのATO粒子含有発泡体を得た。
得られたATO粒子含有発泡体の断面SEM写真を図1(図1Aは250倍、図1Bは2000倍、図1Cは10000倍)に示す。
【0108】
〔実施例2〕
実施例1において、水相として、イオン交換水を追加して固形分30重量%としたコロイダルシリカ(コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名:スノーテックス50(粒子径20−30nm)、固形分50重量%)85.7重量部、イオン交換水57.1重量部)142.8重量部を用いた以外は実施例1と同様の操作により、安定なW/O型エマルションを形成させた。水相と油相の重量比は、58.8/41.2であった。
次に、実施例1と同様の操作により厚さ約300μmのシリカ粒子含有発泡体を得た。
得られたシリカ粒子含有発泡体の断面SEM写真を図2(図2Aは250倍、図2Bは2000倍、図2Cは10000倍)に示す。
【0109】
〔実施例3〕
実施例1において、水相としてイオン交換水を追加して固形分30重量%としたチタン酸バリウム水分散液(チタン酸バリウム微粒子(堺化学工業株式会社製、商品名:高純度ペロブスカイトBT−02(粒子径200nm))42.9重量部、分散剤(サンノプコ社製、商品名;SNディスパーサント5468)0.5重量部、イオン交換水99.5重量部)142.8重量部を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、安定なW/O型エマルションを形成させた。水相と油相の重量比は58.8/41.2であった。
次に、実施例1と同様の操作により厚み約300μmのチタン酸バリウム粒子含有発泡体を得た。
得られたチタン酸バリウム粒子含有発泡体の断面SEM写真を図3(図3Aは250倍、図3Bは2000倍、図3Cは10000倍)に示す。
【0110】
〔実施例4〕
実施例3において、水相としてイオン交換水を追加して固形分43重量%としたチタン酸バリウム水分散液(チタン酸バリウム微粒子を75.7重量部(堺化学工業株式会社製、商品名:高純度ペロブスカイトBT−02(粒子径200nm))、分散剤を0.9重量部(サンノプコ社製、商品名;SNディスパーサント5468)、イオン交換水を99.4重量部)176.1重量部を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、安定なW/O型エマルションを形成させた。水相と油相の重量比は63.8/36.2であった。
次に、実施例1と同様の操作により厚み約300μmのチタン酸バリウム粒子含有発泡体を得た。
得られたチタン酸バリウム粒子含有発泡体の断面SEM写真を図4(図4Aは250倍、図4Bは2000倍、図4Cは10000倍)に示す。
【0111】
(比較例1)
実施例1において、水相成分として、イオン交換水100重量部を用いたこと、及び、油相100重量部に対して、該水相100重量部を常温下、前記油相成分を仕込んだ攪拌混合機内に連続的に滴下供給し、安定なW/O型エマルションを形成させた以外は実施例1と同様の操作により、安定なW/O型エマルションを形成させた。なお、水相と油相の重量比は、50/50であった。
得られたW/O型エマルションを用いた以外は実施例1と同様の操作により、厚さ約300μmの発泡体を得た。得られた発泡体は、気泡内壁に無機粒子偏在層を有さないものであった。
得られた発泡体の断面SEM写真を図5(図5Aは800倍、図5Bは10000倍)に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
図1〜4から明らかなように、本発明の発泡体は、発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が、無機粒子偏在層の表面であった。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の無機粒子含有発泡体は、クッション材、絶縁、断熱材、防音材、防塵材、濾過材、反射材などをはじめとする無数の用途に適する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続樹脂相中に複数の気泡を有する発泡体であって、
該発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が、無機粒子を含む無機粒子偏在層の表面である、無機粒子含有発泡体。
【請求項2】
前記無機粒子偏在層が前記連続樹脂相を構成する成分を含む、請求項1に記載の無機粒子含有発泡体。
【請求項3】
前記無機粒子の平均粒子径が5nm〜500nmである、請求項1または2に記載の無機粒子含有発泡体。
【請求項4】
前記発泡体の球状気泡の平均孔径が50μm以下である、請求項1から3のいずれかに記載の無機粒子含有発泡体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の無機粒子含有発泡体を製造する方法であって、下記の工程(I)から(IV)を含む、無機粒子含有発泡体の製造方法:
(I)連続油相成分および無機粒子を含む水相成分を用いてW/O型エマルションを調製する工程、
(II)得られたW/O型エマルションを賦形する工程、
(III)賦形されたW/O型エマルションを重合し、含水重合体を得る工程、
(IV)含水重合体を脱水し、得られる発泡体中の内壁表面の少なくとも一部が無機粒子偏在層である発泡体を形成する工程。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2013−14716(P2013−14716A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149679(P2011−149679)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】