無機繊維を含む複合光学体の製造方法
光学フィルムなどの光学体は、ポリマーマトリックスに埋め込まれた無機繊維で形成される。いくつかの実施例では、無機繊維とポリマーマトリックスの屈折率が一致する。繊維とポリマーマトリックスとの間には結合剤は不要である。無機繊維は、ガラス繊維、セラミック繊維、またはガラス‐セラミック繊維であり得る。光学体の表面上には、光学体を通過する光に屈折力を与えるようにするための、構造を提供できる。光学体は、その後固化されるマトリックス内に埋め込まれた無機繊維の連続層を伴い、連続処理として形成され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はポリマー光学フィルムに関するものであり、さらに具体的には、硬直性および剛性を増強させるために無機繊維を含む、ポリマー光学フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学フィルム、その光学特性がそれらの機能のために重要であるポリマーフィルムは、例えば光源からディスプレイパネルへの光の伝播を制御するために、しばしばディスプレイに使われる。光を制御する機能とは、画像の明るさを向上すること、および画像全体に光が均一に行き渡るようにすることを含む。
【0003】
このようなフィルムは薄いため、従って、構造的な強度に問題がある。ディスプレイ装置の寸法が大きくなるにつれ、フィルムの面積も大きくなる。厚みを増やさない限り、フィルムは形状を保つために必要な十分な堅さを維持できない大きさになる。しかし、フィルムを厚くすると、ディスプレイ装置の厚みが増し、さらにまた重量の増加および光吸収の増加につながる。フィルムが厚くなるとまた、熱絶縁性も増えるため、ディスプレイからの熱放散能力を低下させる。さらに、輝度が向上したディスプレイへの需要は引き続き存在しており、これはディスプレイ装置がさらに熱を発生させることにつながる。これは、例えばフィルムのそりなど、高い加熱に伴う変形を増やす原因となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、大きなディスプレイ寸法に対処する解決策は、より厚い基材に光学フィルムをラミネートすることである。この解決策では、機器の価格が上がり、さらに機器を厚く、重くする。しかし、そこにかかる費用はディスプレイの光学性能を著しく改善する結果とはなっていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の一実施形態では、光学フィルムの製造方法に着目している。前記方法は、ガラス繊維の連続層として多数の無機繊維を広げること、およびポリマー樹脂の中に無機繊維の連続的な層を埋め込むことを含む。前記方法はまた、ポリマーと無機繊維の複合層を生成するためにポリマー樹脂を固化させること、無機繊維の屈折率とポリマー樹脂の屈折率を実質的に一致させることを含む。
【0006】
本発明の上記の要約は、個別の実施例を提示したり、本発明の全ての実施例を記述することを意図したものではない。後続の図および詳細説明で、これらの具体例についてより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は光学装置に適用でき、特に1枚以上の光学フィルムを使用する光学ディスプレイ装置に利用できる。例えば液晶ディスプレイ(LCD)など、光学ディスプレイが大型化され、輝度が増加すると、ディスプレイ内部の光学フィルムへの需要も増大する。より大型のディスプレイでは、うねり、曲がり、へこみなどを防ぐため、より強度の高いフィルムを必要とする。しかし、ディスプレイの長さや巾に伴ってフィルムの厚みを増やすと、フィルムはより厚く、より重くなる。したがって、厚みを増加させることなく大型のディスプレイに適用できるように、より強化された光学フィルムが求められる。光学フィルムの強度を向上させる1つの方策は、フィルムの内部に繊維を含ませることである。いくつかの実施例では、繊維とフィルムの周囲の材料の屈折率は一致し、フィルムを通過する光の散乱がほとんど、またはまったく無い。
【0008】
光学エレメント100の実施例が図1Aに概略的に示してあり、任意に配置された座標系に関するエレメント100を示している。エレメント100はz方向に厚みを持っている。エレメント100の部分的な断面図が図1Bに概略的に示してある。該エレメントは、ポリマーマトリックス104を含み、連続相と考えることができる。エレメント100は、例えばシートやフィルム、円筒、管など、大量の光学体として形成される。エレメント100はエレメント100が少なくとも一方向で実質的に自己を支持できる、十分な断面寸法を持つこともある。例えば、エレメント100がz方向に薄い寸法で、y方向に著しく広いシートだとすると、エレメント100はz方向では容易に屈曲することができるが、y方向ではそうではないため、y方向で概ね自己支持型である。
【0009】
ガラス、ガラス‐セラミックまたはセラミックの繊維のような無機繊維102が、マトリックス104の中に投入されている。個別の繊維102は、フィルム100の全長にわたって伸張しているが、これは必要条件ではない。図示した実施例では、繊維102は全長にわたってx方向に平行して長さ方向に並べられているが、これも必要ではない。マトリックス104の中では、繊維102を単一の繊維として編成したり、下に記述するように、その他の配置処理を行うことができる。
【0010】
ポリマーマトリックス104を形成する素材のx−、y−、およびz方向の屈折率をn1x、n1y、およびn1zとする。ポリマー素材は等方性であり、x−、y−、およびz−屈折率は全て概ね一致している。マトリックス素材が複屈折性の場合にはx−、y−、およびz‐屈折率の少なくとも1つは他の屈折率と異なる。場合によっては、1つの屈折率だけが他と異なることがあり、この場合、素材は一軸性と呼ばれ、三軸全方向共に屈折率が異なる場合は、素材は二軸性と呼ばれる。無機繊維102の素材は、典型的に等方性である。したがって、繊維の素材の屈折率はn2である。無機繊維102も複屈折性である。
【0011】
いくつかの実施例ではポリマーマトリックス104が等方性、つまり、n1x≒n1y≒n1z≒n1であることが望ましい。等方性と見なされるには、屈折率n1x、n1y、およびn1zの間の差が0.05以下、好ましくは0.02以下、さらに好ましくは0.01以下である。さらにいくつかの実施例では、マトリックス104と繊維102の屈折率がほぼ一致していることが望ましい。したがって、マトリックス104と繊維102との屈折率の差、n1とn2の差は小さいべきであり、少なくとも0.02以下、好ましくは0.01以下、さらに好ましくは0.002以下である。
【0012】
別の実施例では、ポリマーマトリックスが複屈折性である場合、少なくともマトリックスの屈折率の1つが繊維102の屈折率と異なることが望まれることがある。例えば、マトリックスが一軸複屈折性、つまりn1x≒n1z≠n1yであるならば、n1xおよびn1zの値はn2と密接に一致する。しかし、n1yがn2と異なっており、結果として、光はy方向で強く偏光し、フィルム100によって散乱されるが、x方向で偏光した光は実質的に散乱すること無くフィルムを通過する。y偏光した光の散乱量はいくつかの要因によって異り、n2−n1yの屈折率の差の程度、繊維102の寸法および繊維102の密度などが含まれる。さらに、光は、前方散乱(散乱伝播)したり、後方散乱(散乱反射)したり、両方が組み合わされたりすることもある。マトリックス104と繊維102との複屈折接触面で起こる屈折率の不一致は少なくとも0.05であり、さらにこれより大きく、例えば0.1、または0.15、さらには0.2のこともある。
【0013】
前述した典型的な実施例では、y方向に比較的大きな屈折率の差を伴うx方向の屈折率の一致性に着目したが、別の実施例では、x方向に比較的大きな屈折率の差を伴うy方向の屈折率の一致性が含まれている。
【0014】
マトリックス
ポリマーマトリックスとしての使用に適した材料としては、望まれる光波長の範囲に対して透明である熱可塑性および熱硬化性のポリマーが挙げられる。いくつかの実施例では、ポリマーが水に非溶性であること、ポリマーが疎水性であること、または水の吸収が低い傾向があることが特に有用であり得る。さらに、適したポリマー材料としては、非晶質または半晶質のものがあり、これにはホモポリマー、コポリマーまたはそれらの混合物が含まれる。ポリマー材料の例としては、以下を含むが、これらには限定されない。
ポリ(カーボネート)(PC)、シンジオタクチックおよびアイソタクチックポリ(スチレン)(PS)、C1〜C8アルキルスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびPMMAコポリマーを含むアルキル、芳香族および脂肪族環を含む(メタ)アクリレート、エトキシル化およびプロポキシル化された(メタ)アクリレート、多機能(メタ)アクリレート、アクリレート化されたエポキシ、エポキシ、およびその他のエチレン化不飽和材料、環状オレフィンおよび環状オレフィンコポリマー(SAN)、エポキシ、ポリ(ビニルシクロヘキサン)、PMMA/ポリ(フッ化ビニル)混合物、ポリ(フェニレン酸化物)アロイ、スチレンブロックコポリマー、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリウレタン、飽和ポリエステル、低複屈折ポリエチレンを含むポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)(PP)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)などのポリ(アルカンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)などのポリ(アルカンナフタレート)、ポリアミド、アイオノマー、ビニルアセテート/ポリエチレンコポリマー、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、フッ素重合体、ポリ(スチレン)−ポリ(エチレン)コポリマー、ポリオレフィンPETおよびPENを含むPETおよびPENコポリマー、ポリ(カーボネート)/脂肪族PET混合物。(メタ)アクリレートと言う用語は、応答するメタクリルレートまたはアクリレート化合物として定義する。シンジオタクチックPS以外は、これらのポリマーは光学的に等方性の形態で用いる。
【0015】
いくつかの製品用途では、フィルム製品および構成要素のフュージティブ種(低分子量、未反応、または未変換分子、溶解水分子、もしくは反応副産物)のレベルが低いことが大切である。フュージティブ種は、製品またはフィルムの最終の使用環境から吸収されることができ、例えば、水分子は、初期の製品生産段階から製品やフィルムの中に存し、例えば水、または化学反応(例えば凝縮重合反応)の結果として作り出される。凝縮重合反応から小さな分子の発生の1例は、ジアミンと二価酸との反応でポリアミドを形成する過程での水の放出である。フュージティブ種はまた、モノマー、可塑剤などの低分子量の有機物質を含むことができる。
【0016】
フュージティブ種は、一般的に機能的製品やフィルムの残りを含む大部分の素材より低分子量である。例えば、製品がこの条件を使用すると、製品またはフィルムの片側に、区別が付くほどの大きな熱応力がかかることもある。このような場合、フュージティブ種はフィルムの中を移動したり、またはフィルムもしくは製品の一方の表面から揮発したりする可能性があり、濃度勾配、全体的な機械的変形、表面の変化、および時としては、望ましくないガス放出につながる。ガス放出は、製品、フィルム、またはマトリックスに空隙や気泡を生み出したり、また他のフィルムとの接着に問題を引き起こしたりする可能性がある。フュージティブ種は、また潜在的に、製品への適用時に溶解、腐食または望ましくない影響を他の部品に与えることがある。
【0017】
これらのポリマーのいくつかは、延伸すると複屈折性となる。特にPET、PEN、およびこれらのコポリマー、および液晶ポリマーは、延伸すると、比較的大きな複屈折性の値を示す。ポリマーには、押し出しおよび伸張などの異なる方法で延伸することができる。伸張は、高程度の延伸を作り出すことができ、温度および伸張率など、制御が容易な外部パラメータによって制御できるので、ポリマーを延伸するために特に有用な方法である。
【0018】
マトリックス104は各種添加物と共に提供され、光学体100に望ましい特性を提供してもよい。例えば、添加物として、次のようなものを1種以上挙げることができる。
耐候剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、酸化防止剤、散乱剤、潤滑剤、静電気防止剤、顔料または染料、核形成剤、難燃剤および発泡剤。
【0019】
いくつかの典型的な実施例では、時間経過にともなう黄ばみや曇りに対する抵抗性のあるポリマーマトリックスとして材料を用いてよい。例えば、芳香族ウレタンのような材料は、長期的にUV光に暴露すると不安定になり、さらに時間とともに色が変わる。長期間にわたって同じ色を保つことが重要場合は、このような材料を避けることが望ましいであろう。
【0020】
他の添加剤が、ポリマーの屈折率を変えたり、材料の強度を向上させたりするために、マトリックス104に提供されてもよい。このような添加剤としては、例えばポリマービーズまたは粒子およびポリマーナノ粒子のような有機添加剤が挙げられる。いくつかの実施例では、マトリックスは2つの異なるモノマーの特定の比率を用いて形成され、それぞれのモノマー、aおよびbは、重合化するときに、例えばnaとnbという異なる最終屈率を伴う。ここで、下付き文字aおよびbは、それぞれモノマーaおよびbを示す。ここでnaはnbより小さく、混合物中のモノマーbの重量分率をrとすると、マトリックスの屈折率の値nmは、nm=na+r(nb−na)となる。別の実施例では3種またはそれ以上の異なるモノマーの一次結合を用いて、望ましい屈折率の値を提供してもよい。下記に示す例では、3、4、さらには5種のモノマーの混合物を使用して屈折率を調整できることを示す。
【0021】
別の実施例では、無機添加剤をマトリックスに加えて、マトリックスの屈折率を調整したり、材料の強度および/または剛性を増加したりしてもよい。例えば、無機材料には、ガラス、セラミック、ガラス‐セラミック、または金属酸化物が挙げられる。下記に論じる無機繊維という面で適したいかなるタイプのガラス、セラミックまたはガラス‐セラミックを用いてもよい。適した金属酸化物のタイプとしては、例えばチタニア、アルミナ、酸化スズ、酸化アンチモン、ジルコニア、シリカ、これらの混合物またはこれらの酸化混合物が挙げられる。これらの無機材料は、好ましくはナノ粒子として提供され、例えば、形状として、粉砕、粉末、ビーズ状、薄片または粒子状などで、マトリックス内に分散させる。粒子のサイズは、好ましくは200nm以下であり、フィルムを透過する光の散乱を減少させるには、100nm以下または50nm以下であってよい。
【0022】
これらの無機添加剤の表面には、ポリマーと繊維の接着のため、接合剤を用いてもよい。例えば、無機添加剤とポリマーを結合するため、シラン接合剤を無機添加剤とともに用いてもよい。無機ナノ粒子は、重合可能な表面の改質が欠如しているが、ナノ粒子はマトリックスの有機質成分で重合可能であるため、無機ナノ粒子の表面の改質を行うことができる。例えば、反応基を結合剤の別の一端に添付してもよい。反応基は化学的に反応することができ、例えば反応側のポリマーマトリックスと二重結合を介した化学重合によるものである。
【0023】
繊維強化
繊維102に適したいずれのタイプの無機材料を使用してもよい。繊維102は、フィルムを通る光に対し実質的に透明であるガラスから形成されてよい。適したガラスの例としては、繊維ガラス複合材料にしばしば用いられるE、C、A、S、R、およびDガラスなどのガラスが挙げられる。例えば、石英ガラスやBK7ガラスなどの繊維を含む、より高品質のガラスもまた、使用してよい。適した高品質ガラスが、スコット北アメリカ社(Schott North America Inc.)ニューヨーク州エルムスフォード(Elmsford, New York)など、いくつかの供給元から入手可能である。高品質ガラスは、純度が高く、より均一な屈折率を持ち、さらに含有物が少ないため、散乱が減少し、透過性が向上することから、これらの高品質ガラスを含む繊維を用いることが望ましい。また、繊維の機械特性も、より均一になる。高品質ガラス繊維は、水分吸収性が低く、そのためフィルムは長期使用においても、より安定になる。さらに、ガラスのアルカリ成分が水分の吸収を増加するため、低アルカリガラスの使用が望ましい。
【0024】
繊維102に使用してもよい別のタイプの無機材料は、ガラス−セラミック材料である。ガラス‐セラミック材料は、一般的に95容量%から98容量%の非常に小さな結晶からなり、大きさは1ミクロン以下である。一部のガラス‐セラミック材料は、結晶の大きさが50nmまで小さく、結晶の大きさが可視光の波長と比較して非常に小さく、散乱がほとんど発生しないため、可視光の波長では事実上透明である。これらのガラス−セラミックはまた、ガラス質領域および結晶質領域との間の屈折率の有効な差は事実上ほとんど無いか、または全く無いため、可視的に透明である。透過性に加えて、ガラス‐セラミック材料は、ガラスを超える破壊強度持ち、熱膨張係数の値がゼロまたはむしろ負であることが知られている。対象となるガラス‐セラミックには、以下の成分のものが含まれるが、これらに限定されない。Li2O−Al2O3−SiO2、CaO−Al2O3−SiO2、Li2O−MgO−ZnO−Al2O3−SiO2、Al2O3−SiO2、およびZnO−Al2O3−ZrO2−SiO2、Li2O−Al2O3−SiO2、およびMgO−Al2O3−SiO2。
【0025】
一部のセラミックはまた、適切に一致する屈折率を持つマトリックスポリマーに埋め込まれた場合に、透明に見えるのに十分に小さな結晶寸法を持つ。3M社(ミネソタ州セントポール(St. Paul, MN))から入手できるネクステル(商標)(Nextel(商標)セラミック繊維はこのタイプの材料の例であり、糸、編み糸、および織布として入手可能である。適したセラミックまたはガラス−セラミック材料については、「ガラスの化学」第2版(A.ポール チャップマンとホール、1990年発行)(「Chemistry of Glasses, 2nd Edition(A.Paul,Chapman and Hall)」および「セラミック」第2版の序文(W.D.キンゲリー、ジョン ウイリーとソンス、1976年発行)(Ceramics, 2nd Edition(W.D. Kingery,John Wiley and Sons))に更に詳しく記載されている。
【0026】
繊維の屈折率とマトリックスの屈折率が十分に一致していない場合、繊維102の大きさは、フィルム100を通る光の散乱に重大な影響を及ぼす可能性がある。散乱効果、標準化およびスケール済み光学的厚さ(NSOT)のプロットを繊維の平均半径の関数として図2に示す。NSOTは次の式で表される。
【0027】
NSOT=Τ(1−g)/(tf)
ここで、Tは光学的厚みでtkに等しく、kは単位体積当たりの消散断面積(消散の平均自由経路の逆数)、tはフィルム100散乱体の厚み、fは繊維の体積分率、およびgは非対称パラメータである。gの値は純前方散乱の場合は+1、純後方散乱の場合は−1、さらに前方散乱と後方散乱が等しい場合はゼロである。計算には入射光の真空波長を550nmと想定したプロットを用いた。
【0028】
ここに示すように、散乱効果のピークは、繊維の半径が約150nmであり、約50nmから1000nmの半径の範囲の外側では最高値の約半分の値となっている。従って、一部の実施例では、繊維102の半径がこの範囲の外側にあることが望ましい。半径が150nmよりも著しく小さい単一の繊維102を用いることは、このように小さな径の単一繊維を作ることや取り扱いが困難なため、あまり実用的ではない。従って、可視光用には、少なくとも2μmまたは好ましくは3μm以上の半径の繊維102を用いる方が容易である。
【0029】
いくつかの典型的な実施例では、少なくとも幾分かの光が繊維によって散乱されるため、マトリックスと繊維との間の屈折率が完全に一致していない方が望ましい場合がある。このような実施例では、マトリックスと繊維のいずれか一方または両方が複屈折性であるか、またはマトリックスと繊維の両方が等方性であってもよい。繊維の大きさに応じて、散乱は、散乱または単純な屈折により発生する。繊維による散乱は非等方性である。光は繊維の軸に対して横方向に散乱するが、繊維の方向には散乱しない。従って、散乱の性質は、マトリックス中の繊維の方向に依存する。例えば、繊維がxおよびy軸と平行に置かれている場合、光はxおよびy軸と平行な方向に散乱する。
【0030】
さらに、マトリックスには、光を等方性に散乱する散乱粒子を加えることができる。散乱粒子は、マトリックスとは異なる屈折率(多くの場合はより高い屈折率)を持つ粒子で、直径は最大約10μmである。散乱粒子は、例えば、上に記述したように、マトリックスの屈折率の調整にナノ粒子として用いられるような金属酸化物であってもよい。その他の適したタイプの散乱粒子には、ポリスチレンまたはポリシロキサン粒子、もしくはこれらの組み合わせなどのポリマー粒子が含まれる。散乱粒子は、光を散乱させるために単独で、または光を散乱させるために屈折率が一致しない繊維と組み合わせて使用してもよい。
【0031】
マトリクス内の繊維の典型的な形態としては、編み糸、ポリマーマトリックス内で一方向に配列した繊維または編み糸の束、繊維の織物、不織布、短繊維、短繊維マット(不規則又は規則的な形態)、またはこれらの形態の組み合わせが含まれる。短繊維マットまたは不織布は、繊維を無作為に配置するのではなく、伸張、加圧、または位置合わせなどにより、不織布または短繊維マット内で繊維に何らかの位置決めを提供してもよい。さらに、マトリックスは複数の繊維層を含んでよく、例えば、マトリックスは異なる束、織物などのさらなる繊維の層を含んでもよい。
【0032】
有機繊維もまた、無機繊維102と共にマトリックス104の中に埋め込んでもよい。マトリックスに埋め込むことができる適した有機繊維には、例えば上に挙げたポリマー材料の1種以上を含む繊維などのポリマー繊維が挙げられる。ポリマー繊維は、マトリックス104と同じ材料で形成することも、また異なるポリマー材料から形成することもできる。その他の適した有機繊維は、例えば綿、絹または麻などの天然材料から作成できる。
【0033】
ポリマーのような一部の有機材料は、光学的に等方性または光学的に複屈折性であってよい。複屈折性ポリマー繊維は、偏光依拠特性をフィルムに持たせるために使うことができ、例えば、米国特許申請番号11/068,157および11/068158に記述されている(両方とも2005年2月28日付申請)。
【0034】
いくつかの実施例では、有機繊維は例えばポリマー繊維織物など、ポリマー繊維のみを含む、編み糸、束、織物などの一部を形成する場合がある。別の実施例では、有機繊維は有機および無機繊維を含む編み糸、束、織物などの一部を形成する。例えば、編み糸または織物には、無機およびポリマー繊維を含んでもよい。繊維織物300の実施例を図3に概略的に示す。織物は縦糸繊維302と横糸繊維304で形成されている。縦糸繊維302は無機または有機繊維であり、横糸繊維304も同様に、無機または有機繊維でよい。さらに縦糸繊維302と横糸繊維304は、それぞれ無機および有機繊維の両方を含んでもよい。織物300は、個別の繊維、束、または編み糸による織物、またはこれらを組み合わせた織物でよい。
【0035】
編み糸は縒り合わせた多数の繊維を含む。繊維は編み糸の全長にわたっていてもよく、また編み糸は短繊維を含んでいてもよく、それぞれの繊維の長さは編み糸の全体の長さよりも短い。例えば図4Aに示すように、繊維402を縒り合わせて形成した従来の縒り糸400を含む、適したいかなるタイプの編み糸を使用してよい。繊維402は無機、有機、またはこれらの両方でもよい。
【0036】
図4Bに概略的に示すもう1つの編み糸410の実施例では、多数のポリマー繊維414が中心繊維412に巻きつけられているのが特徴である。中心繊維412は無機繊維または有機繊維でよい。ポリマー繊維414に付随した特定の光学特性を提供しつつ、無機中心繊維412の強度もまた提供するように、無機およびポリマー繊維の両方を含んでいる編み糸410のような編み糸を使用してもよい。例えば、ポリマー繊維は等方性または複屈折性でよい。ポリマー繊維は適切な処理条件で繊維の伸張によるポリマー材料の位置合わせを含む、適した方法で複屈折性を持たせてよい。複屈折性ポリマー繊維は、フィルムに偏光依存特性をもたらす。例えば、フィルムは1つの偏光状態では実質的に散乱透過または散乱反射を示し、直交偏光状態では、実質的に正透過を持つ。
【0037】
フィルムに使用されるポリマー繊維は、典型的には直径約250μm以下であり、さらに直径約5μmまたはそれ以下でもよい。小さなポリマー繊維を個別に取り扱うことは困難である。ただし、ポリマーと無機繊維の両方を含む混合編み糸のポリマー繊維を使用することにより、取り扱いによる損傷が軽減される傾向があるため、ポリマー繊維の取り扱いが容易になる。
【0038】
フィルム
無機繊維で強化された光学フィルムは、少なくとも無機繊維と同じ厚みを持つ。典型的には、光学フィルムは約5mmまでの厚みを持つが、一部の実施例では、厚みがこの値より大きいこともある。別の実施例では、厚みは250μm以下であり、25μm以下の場合もある。多くの用途では、フィルムは実質的に透明であり、入射光の10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下がフィルムに吸収される。透明は透過とは同じではないことに注目しなければならない。これは、透明とは吸収にのみ関係し、反射せずにどれだけの光が透過したかには関係しないからである。
【0039】
一部の実施例では、マトリックスは光学的に等方性である。別の実施例では、マトリックスは光学的に複屈折性でもよい。複屈折性マトリックスを生成する一般的な方法の1つとしては、制御された温度条件の下でマトリックスを例えば2〜10倍またはそれ以上に伸張することが挙げられる。伸張は、繊維に沿っていても、繊維と交差していてもよい。無機繊維を含んだマトリックスは、例えば、繊維が細く切断されている場合でも伸張できる。マトリックスが束の形式の繊維を含んでいる場合は、別の方法として、束と交差する方向にマトリックスを伸張してもよい。
【0040】
前述した方法は、生成される物品の機械特性を強化するため、既存のガラス、セラミックまたはガラス‐セラミック繊維または粒子をポリマー系のマトリックスへ取り込むことを含む。もう1つの方法は、ガラスとポリマーを同時に処理することで、寸法が安定し、剛性を持ち、熱処理可能な複合材料を作り出すことである。ガラスは比較的低い融点を持つため、比較的高い融点を持つポリマーとの同時処理に適している。このような材料を作りだす諸方法については「ポリマー材料の百科事典(Polymeric Materials Encyclopedia)(CRC Press,Inc.1996年)2766項」の「ガラス−ポリマー溶融ブレンド(Glass‐Polymer Melt Blends)(クイン C. J.(Quinn C.J.)、フレイヤー P.(Frayer P.)、およびビール G.(Beall G.))」に記述されている。燐酸(P2O5)ガラスは、400℃をはるかに下回る温度で粘性流を持つことができ、ポリマーの混合形成に十分な低粘性を持つ。共押し出し法の長所は、ポリマー溶融による優れたガラス湿潤、および従来の結合剤を用いることなくガラスとポリマー間に優れた界面接着力をもたらすことである。小さいビーズ、極細径繊維、リボンおよび板を含む、複合材料中のさまざまなガラス構造が示されてきている。
【0041】
同時処理可能なガラスの利用により、ポリマーマトリックスと屈折率を適合させたり、また、強化用ガラス繊維を複合材料に組み込んだ後で、マトリックスポリマーに複屈折性を持たせたりすることができる。同時処理可能なガラスの強化は、複合材料の成形完了後に追加的な熱的および機械的処理(場合によっては複屈折性の誘発を含む)を行なうことができる可能性を提供する。
【0042】
フィルム中の繊維の位置は、例えば図1Bに示すように、無作為でも、または、規則的でもよい。また、フィルム中の位置により、近接する繊維同士の間隔は異なっていてもよい。例えば、図5Aに示す断面のように、フィルム500は、マトリックス504の中に長方形のグリッドパターンとして規則正しく並んだ繊維502を持つ。y方向およびz方向の繊維の間隔を、それぞれhyおよびhzとする。hyおよびhzの値は、同じでも異なっていてもよい。さらに、hyおよびhzの値は、フィルムの巾または厚み全体で均一である必要は無い。
【0043】
マトリックス504内の繊維502の位置は、フィルムの剛性を増すように選択してよい。例えば、図5Bに概略的に示す典型的な実施例では、繊維502はフィルム510のそれぞれの表面に近い位置に2列に置かれている。材料のどの断面でも、最大屈曲応力は、外側の表面で発生する。従って、マトリックス材料よりも一般的に抗張力および/またはヤング率が大きい繊維を表面の近くに置くと、フィルムまたは物品の剛性を著しく増大する。この形態は、2列の繊維502がフィルム510の中心近くに配置されているフィルムの形態での剛性の増大に寄与するであろう。
【0044】
繊維502フィルムがフィルム内で規則正しく置かれている場合には、別のタイプのグリッドパターンを使用してもよい。例えば、フィルム520を概略的に示す図5Cのように、繊維502は六方晶形に配置されてもよい。さらに、y方向の面上の間隔は、フィルムを通じて一定ではなく、ある場所の繊維502の密度は他よりも高いことがある。図5Cに示すような形態では、繊維502による照明の光の散乱が、空間的にフィルム520全体に均一でないことが望ましい場合に有用である。これは、例えばディスプレイに不均一な散乱を提供することで、個別の光源を隠す場合などに使用できる。
【0045】
フィルムは、例えば図1Aおよび図1Bに示すように、x−y面に平行な平面など、平面を持つ。フィルムはまた、入射光に対して望ましい光学効果を提供するように構成された1つ以上の表面を含んでもよい。例えば図6に概略的に示す1つの実施例では、フィルム600は、マトリックス604に埋め込まれた繊維602で形成されており、出力曲面606を持つ。出力曲面606は、表面606を通して送られる光に焦点化または非焦点化光出力を提供する。図示された実施例では、光線608は、屈折曲面606で焦点を結んだ光線の例を表す。他の実施例では、要素600の入力表面610が曲面、または他の表面構造でもよい。さらに、出力表面612に表面構造があり、送られた光はそこを通ってフィルムの外へ出る。このような表面構造の例としては、フレスネルレンズ構造やレンズアレイのような構造が含まれる。これらの構造は、フィルム600を通る光に屈折力を与えるものと見なされる。
【0046】
入力または出力表面は、表面のいずれかまたは両方が構造化されている場合、曲面領域に加え、またはその代わりに直線領域を含むこともある。例えば、図7Aに示す別の概略的な典型的な実施例では、マトリックス704に埋め込まれた繊維702で形成されるフィルム700は、光輝増強表面のようなものとしてプリズム状構造出力表面706が寄与されていることがある。光輝増強表面は、一般的に例えば、バックライト液晶ディスプレイなどに使用されており、ディスプレイパネルを照らす光の円錐角を減らし、それによって、見ている人に対して軸輝度を向上する。図は、フィルム700に入射する2つの光線708および709の例を示す。光線708は、フィルム700に斜めに入射し、構造表面706によりz軸方向に転換される。光線709は、フィルム700に直角またはほぼ直角に入射し、光輝増強表面706により逆反射する。光輝増強表面706は、プリズム構造707が繊維702と平行するように配置してよく、これは図に示すように、x軸にも平行である。別の実施例では、プリズム構造707は繊維702の方向とは少し違った角度で置かれている。例えば、プリズム構造707リブをy−軸と平行、繊維702と直角、またはx−軸とy−軸との間のある角度で置くことができる。プリズム構造707は、マトリックス704と同じ、または異なる材料で形成してよい。
【0047】
構造化表面は、適した任意の方法でマトリックス上に形成してよい。例えば、マトリックスの表面が、ポリマーマトリックスの表面上に望ましい形状を提供するマイクロ複写ツールなどのツールの表面と接触している間に、マトリックスを硬化(cured)したり、硬化(harden)させたりしてよい。
【0048】
繊維702は、フィルムの他の領域にまたがって置いてもよい。図7Aに概略的に示す典型的な実施例では、繊維702は、構造表面706で形成されたプリズム構造707には配置されておらず、フィルム700の本体701にのみに配置されている。別の実施例では。繊維702は別の形で配置されていることもある。例えば、図7Bに示すフィルム720においては、繊維702は、フィルム720の本体701、および構造表面706で形成される構造物707の両方に配置されている。さらに別の実施例では、図7Cに示すように、繊維702は、フイルム730の構造707にのみ配置され、フィルム730の本体701には配置されていない。
【0049】
上述のものに加え、別のタイプの構造表面を使用してもよい。例えば、構造表面は散乱表面でもよい。
【0050】
もうひとつの発明の典型的な実施例を図7Dに概略して示す。ここでは、フィルム740がマトリックス704に埋め込まれた繊維702を保持している。この特定の実施例では繊維702aの一部がマトリックス704の中に完全に埋め込まれておらず、マトリックス704の表面746を貫通している。この配置では、繊維702aと空気、または他の媒体、フィルム740の外部との間に光学的な接面あり、繊維702aを通る光は光学的に散乱する結果となることがある。
【0051】
無機繊維は、高い抗張力とヤング率を持つため、多くのポリマー材料に比べて比較的剛く、さらに無機繊維で強化されたポリマーフィルムは繊維で強化されていないポリマーフィルムと比較し、通常は剛い。結果として、繊維強化フィルムは、大型ディスプレイにいっそう適するようになる。さらに、無機繊維の存在は機械安定性の向上につながり、熱膨張係数を下げるため、ディスプレイ使用中の温度上昇に伴う光学フィルムのゆがみ発生の可能性を引き下げる。
【0052】
高い抗張力での用途の一例としては、液晶(LCD)パネルでガラスシートの代わりに繊維強化フィルムが使われたものがある。従来のLCDパネルは、薄い液晶の(数十ミクロン程度までの)層で分離された2枚のガラスカバーシートが用いられている。カバーシートの内表面にはパターン化した導電層があり、ディスプレイの多数のピクセルの電極となる。ガラス上の金属線が、パターン導電層へ電気接続を提供する。ディスプレイ寸法が大型化すると共に、ガラスカバーシートの重量が次第に増し、費用も増大するため、繊維強化カバーシートで置換できる可能性がある。しかし、このようなカバーシートは、例えば150℃〜180℃を超える高い処理温度に耐えなければならない。パターン導電層、導電層に接続している金属線、およびポリマーカバーシートは異なる熱膨張係数(CTE)を持つため、カバーシートが大きな温度の振れにさらされると、導電層の剥離や、パターン導電層に接続する金属線の破断につながることにもなる。ガラス繊維のCTEはポリマー材料のCTEよりも小さいため、ガラス繊維強化は、ポリマーシートの膨張を抑える方法として提案されている。ポリマーシートでのガラス繊維の使用は、通常、繊維の抗張度および繊維とポリマーマトリックスとの機械的および化学的結合が優れていることで、それらの2つの間のすべりがほとんど無いことに依存する。これに従い、例えば、シラン結合剤を使って繊維とポリマーマトリックスを結合させるなど、繊維の表面に化学的結合剤を用いるのが一般的である。また、望ましい抗張度と低いCTEを提供するために、繊維密度(繊維と垂直にフィルムを横切る方向に測定した距離単位当たりの繊維の数)は比較的高い。
【0053】
対照的に、ここに記述する繊維強化光学フィルムの一部の実施例では、繊維密度は比較的低くすることができ、特定の用途に必要な剛性を得るには十分だが、前の節で前述したLCDアプリケーションのような高い抗張度を必要としない。結果として、必要な繊維数が少なくなり、これはポリマー材と繊維材の屈折率にわずかの差がある場合のフィルムに起因する曇り(散乱的に透過する透過光の割合)を減少させる。さらに、いくつかの実施例では、強度ではなく剛性が主たる関心事である場合は、繊維とマトリックスとの強い接着への要求が減少するため、繊維とマトリックスとを結合する結合剤を省略してもよい。しかし、結合剤を省略した場合でも、無機繊維を含むフィルムのCTEはポリマーマトリックス単独のCTEよりも小さい。加えて、結合剤の省略は結合剤に起因する屈折率の一致の問題を軽減する。
【0054】
フィルム中の繊維の位置決めおよび断面の配置は、非等方性な機械および光学特性につながることがある。例えば、無機繊維を、例えばx方向など、1方向のみに沿って配置した場合、フィルムはxz面に平行な区域に沿った屈曲、つまりx軸に平行でない方向への屈曲に対する抵抗性が高くなる。しかし、yz面に平行な区域でのフィルムの屈曲への抵抗が少なくなるため、フィルムは1方向での剛性が、他の方向よりもより少なくなることがある。無機繊維をx軸、y軸の両方に平行に配置すると、フィルムはより等方的に剛性が向上するが、ある方向での剛性は、その方向に置かれた繊維の数に依存する。x方向に平行に置かれた繊維の数がy方向に置かれた繊維の数と等しくない場合は、x方向の剛性とy方向の剛性は異なることがある。x方向とy方向の剛性が等しい場合、この場合の剛性は「擬似等方」と定義してもよい。さらにx軸とy軸に平行でない方向の剛性は、これらの軸の1つと平行な剛性と同じではないことがある。もちろん、無機繊維は、フイルムの中のいずれの方向にでも配置でき、x軸とy軸のいずれかまたは両方に沿って位置合わせする必要はない。例えば、いくつかの繊維ではx軸とy軸の両方と非平行の方向に位置合わせしてもよい。
【0055】
さらに、剛性に加えて、抗張度、熱膨張係数および引裂強度を含む、フィルムの他の機械特性も非等方性としてよい。また、光を散乱する繊維が、無機質、ポリマー系またはその両方が1方向にのみ位置合わせされている場合、散乱のような光学特性も非等方性となることがある。もちろん、これらのフィルム特性は、これらの特性に寄与する繊維が交差していれば擬似等方性となり、または繊維が異なる方向に多様に位置合わせされていれば、より等方性となる。
【0056】
マトリックス、繊維およびフィルムに加えられる添加剤を含むフィルム成分は、選択された仕様によってフィルムの光学特性に影響することがある。例えば、さまざまなフィルムの成分を、全て入射光に対して透明であるように選択してもよい。さらに、光を吸収するため、染料または顔料のような添加剤が提供されてもよく、ポリマーが光を吸収するような分子成分を含んでもよい。いくつかの典型的な実施例では、例えば染料、顔料または分子成分を含む基盤フィルム層を引っ張ることにより、結果として直角偏光状態上の1つの偏光状態で好みの吸収を得られるようにして、染料、顔料および分子成分の位置合わせをしてよい。光学フィルムは、基盤フィルム層の上に1つ以上の繊維の層を適用して作成できる。特定の波長範囲の光を吸収するように、存在する場合は、染料、顔料または分子成分が選択される。別の実施例では、添加剤をマトリックスそのものに投入できる。
【0057】
染料のようないくつかの添加剤で、入射光の周波数を、例えば蛍光に変えることができる。1つの例では、マトリックスにUV光を吸収し、可視光を放出するような染料をに含浸させてもよい。
【0058】
フィルムは、色選択的散乱機能を持つことができる。例えば、この機能は、繊維の屈折率とマトリックスの屈折率とが一致した時に波長λ0を選択することによって起こる。繊維とマトリックス材料の分光が異なる場合、屈折率の差は、波長がλ0から離れるに従い増大する。散乱がほとんど無いか、または散乱を中和したい場合は、一般的に、フィルムを通る光の波長の範囲の真ん中近くにλ0を設定する。つまり、約400nm〜700nm範囲の可視光がフィルムを通過する場合、λ0は500nm〜600nmの範囲のどこかに設定するとよい。しかし、もし他の波長よりも一つの波長でのフィルム散乱光が望ましい場合は、λ0を適宜移動させてもよい。例えば、赤や緑の光よりも青色の光の散乱がより多く望まれている場合は、λ0をより長い波長、例えば600nm〜700nmに設定することで、青色の光の屈折率の差が400nm〜500nmの範囲で増大し、散乱が増える。
【0059】
光学フィルム中の異なる諸材料の屈折率は、温度とともに変化する。繊維強化フィルムの光学特性は、少なくとも部分的にマトリックスと繊維材料の間の屈折率の差の程度に依存するため、各材料間の屈折率の差が温度変化する間、望まれる範囲に維持されない場合は、フィルムの光学特性を温度と共に変化させることが可能である。マトリックス材料と無機繊維が室温(20℃)で屈折率が一致した例を考えてみる。しかし、dn/dTの値、つまり屈折率nが温度Tとともに変化する割合が2つの材料で異なる場合、高い使用温度、例えば50℃、では屈折率が異なることになる。従って、いくつかの典型的な実施例では、特定の使用温度範囲でポリマーと無機材料についてのdn/dTの値の差が少なくなるように、マトリックスとガラス繊維の材料が選ばれる。
【0060】
他のいくつかの実施例では、2つの材料のdn/dTの値の差を増やし、フィルムの温度感受性をより高くすることが望ましい。例えば、いくつかの一般的な建築の用途では、フィルムは温度感受性の透過を持つことが望ましい。図に示すように、ビルや温室の窓に温度依存性を持たせ、一定の温度以上に温度が上昇したら窓を透過する光の量を減らすことが望ましい。
【0061】
ポリマーマトリックスおよび無機繊維の材料における光散乱は、異なる波長でのそれぞれの材料の屈折率の違いに帰結し、短い波長では、屈折率はより高くなる。従って、屈折率の正確な一致は、1つの波長でのマトリックスと無機繊維材料の間で作成できるが、2つの材料の光散乱(dn/dλ、ここでλは真空波長)が等しくない場合、2つの屈折率の差は、波長が一致した波長から離れれば離れるほど増大する。従って、いくつかの実施例では、屈折率が一致する波長λmを、目的の波長範囲の中心近くになるように波長を設定することが望ましい。このように、400nm〜700nmの波長をカバーするディスプレイで使用される光学フィルムでは、λmの値は500nm〜600nmの範囲であってよい。加えて、ポリマーと無機繊維の材料のいくつかの組み合では、dn/dλの値は他の組み合わせよりも接近している。
【0062】
製造工程
繊維強化光学フィルムの製造には異なる複数の方法が使用できる。一部の方法は一括処理で行い、別の方法では連続処理で行う。前述した1つの典型的な実施例では、無機物質がポリマーマトリックスよりも低い融点を持ち、2つの材料物を一括押し出しする。この方法では、マトリックス中の無機繊維、液滴またはリボンの位置は、ポリマー/無機溶融物で発生する相分離によって決められる。
【0063】
他の典型的な実施例として、連続処理に適した装置800を模式的に図8Aに示す。例えば短繊維、織物、不織布などの無機繊維層802をロール804から引き出し、別のロール808から引き出した裏打ち層806の上に置く。樹脂810を貯槽812から引き出した無機繊維層802の上に適用し、コーター814が、樹脂の層816を形成する。いくつかの実施例では、樹脂810が無機繊維層802を適用する前に、裏打ち層806にも適用される。樹脂810は、繊維層802に含浸する。樹脂810は、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーでもよい。コーター814は、いずれの適したタイプのコーターであってもよく、例えば、ナイフエッジコーター、コンマコーター(図示)、バーコーター、ダイコーター、スプレーコーター、カーテンコーター、高圧射出機または同等のものでよい。その他の事項を考慮のうえ、適用条件での樹脂の粘度により、適切な方法または諸方法を決める。塗布方法と樹脂の粘度によってもまた、マトリックス樹脂が強化材に含浸される段階で、強化材から気泡を除去する速度と程度に影響する。
【0064】
完成したフィルムが低散乱である場合、この段階で繊維の間の空間を完全に樹脂で埋めるようにすることが重要である。空隙または気泡が樹脂に残されると、散乱の中心として作用するからである。気泡の発生を減らすには、個別にまたは組み合わせで異なる方法が適用できる。例えば、フィルムを機械的に振動させ、樹脂810を繊維層802全体によく行き渡らせるように仕向ける。機械的振動には、例えば、超音波源を使うことができる。加えて、フィルムを真空に曝して気泡を樹脂810から引き出すことができる。これは、塗布中に同時に行うか、またはその後で、例えば任意に、脱気装置818で行なうことができる。
【0065】
フィルム中の樹脂810は、固化装置820で固化される。固化には、硬化、冷却、架橋およびポリマーマトリックスを固体状態に至らせるようなその他の処理方法が含まれる。いくつかの実施例では樹脂810を硬化するために樹脂810に対して、違った形のエネルギーを適用し、それらには、熱および圧力、UV照射、電子線および同等のものが含まれるが、これらに限定されない。別の実施例では樹脂810は冷却または架橋で固化される。一部の実施例では固化されたフィルム822は取り出しロール824に回収および貯蔵できるほどに十分にしなやかである。また、別の実施例では、固化されたフィルム822がロールに巻くには硬すぎるため、例えばフィルム822を貯蔵するためのシートに切断するなど、他の方法で貯蔵される。
【0066】
裏打ち層806は、フィルムに対してキャリアまたはプレマスク型基板の役割を果たし、またはいくつかの望ましい光学特性を提供する。例えば、裏打ち層806は光学的に等方性または複屈折性であったり、または吸収性染料もしくは顔料を装填できたり、または、本来的に吸収因子を含んでいたりすることもある。裏打ち層は、物理的な支持および固化に先立ち、ガスおよび/または水分の浸入を制限する。他の実施例では、裏打ち層806は剥ぎ取り可能な保護層として、貯蔵および運搬中のフィルムの保護を行なう。
【0067】
他の層をフィルムに付け加えることもできる。例えば、上部保護層826をフィルムに加えることができる。さらに追加の繊維層および樹脂層をフィルム加えて多層繊維強化フィルムを作ることができる。追加の繊維層および樹脂層は、第一の樹脂層816が固化する前または第一の樹脂層816が固化した後に付加できる。ある実施例では、第一樹脂層816はもう1つの樹脂層および繊維層の適用前に部分的に固化している。
【0068】
いくつかの実施例では、フィルムに適用されている1つ以上のシートが、織物と平行でない方向に適用されている場合がある。そのようなフィルムの1つの例として、繊維を織物と交差するように置いた繊維トウが挙げられる。この場合には、交差繊維シート832がシートフィーダ834を使用してフィルム822に被せて適用され、装置830の概略図を図8Bに示す。切断工具836は、フィルム822をシート838として切り出すのに使われる。シート838は、貯蔵のために積み重ねられる前に、固化ステージ820で固化される。
【0069】
いくつかの実施例では裏打ち層806に適用する前に、繊維層802は樹脂810で含浸される。事前に含浸した繊維は「プレプレッグ」と呼ばれる。プレプレッグの調製に使用される装置900の典型的な実施例の概略図を図9に示す。繊維層802はロール804から引き出され、樹脂810を含む貯槽906に入れられる。多数のローラー908に繊維層802を通し、層802の繊維の間の空間に樹脂810をよく含浸させる。次に、生成したプレプレッグ910は槽から引き出され、さらに上述の通り、裏打ち層806に適用される。真空および/または超音波エネルギーを用いて樹脂810から更に気泡を除去する。
【0070】
繊維強化フィルムは固化前、または固化中に成形または造形される。例えば、構造表面を持たすためのフィルムの成形の典型的な実施例を図6および図7A〜図7Dに示す。フィルムの成形に使用する装置1000の1つの実施例を図10に模式的に示す。フィルム1002は、ガイドロール1006により成形ロール1004に導かれ、任意の加圧ロール1008により、成形ロール1004に押し付けられる。成形ロール1004は、形状表面1005を持ち、それがフィルム1002に刻印される。成形ロール1004と圧力ロール1008の間隔は、フィルム1002への形状表面1005の食い込みの深さを制御するため設定された距離で調整される。
【0071】
いくつかの実施例では、フィルム1002は、成形ロール1004に接触中に固化、または少なくとも部分的に固化している。例えば、硬化可能なポリマーの場合には、マトリックスはUV光またはエネルギー源1010からの熱で硬化する。他の実施例では、成形ロール1004を高温で運転する。フィルム1002は、加熱ロール1004と密接に接触しているため、伝導的に加熱され、その熱により硬化する。別の典型的な実施例では、例えば熱可塑性ポリマーなどのように、冷却によりマトリックスが固化する。そのような例では、ロール1004は比較的低い温度に保たれ、これにより、フィルムまたは樹脂1002がロール1004に接触している間に冷却される。
【0072】
成形フィルム1012は、もう1つの他のロールの上で貯蔵されるか、または貯蔵用にシートに切断される。任意に、成形フィルム1012は更に光学的に処理され、例えば1つ以上の層を付け加えることもできる。
【0073】
熱可塑性プラスチックを基本とした複合材料は射出成形される。この処理の1つの特別な実施例は、1‐3mm長の繊維を含んだペレットを均一に供給材の樹脂に散らし、射出成形機に供給することである。溶融したポリマー/繊維の混合物を分割型の孔に射出し、固化または硬化させ、完成複合材料が型から取り出される。複合材料を作成するための3つの一般的な熱可塑性樹脂マトリックスポリマーは、ポリプロピレン、ナイロン、およびポリカーボネートである。複合材料を作成するための熱可塑性プラスチック/繊維混合物の射出成形については、D.ハル(D.Hull)著、「複合体物質概要(An introduction to Composite Materials)」(ケンブリッジ・ユニバーシティ・プレス(Cambridge University Press)1990年)に記述されている。
【0074】
プルトルージョンは、特に熱硬化性マトリックス樹脂を基材とした複合材料を作成するためのもう1つの方法である。プルトルージョン法では、繊維強化材を液状マトリックス樹脂に含浸させ、さらに加熱した型を通して引っ張る。型により、余分の樹脂を減らし、最終の複合材料の断面形状を決め、樹脂マトリックスの硬化を誘導する。また、別の種類の方法も実施されており、例えば加熱された型に先立って樹脂槽で含浸を行なう代わりに、プルトルージョンの型において樹脂を強化材に直接射出することである。プルトルージョン法については、R.G.ウェザーヘッド(R.G. Weatherhead)著「FRP技術繊維強化樹脂システム(FRP Technology Fiber Reinforced Resin Systems)」(応用科学出版社(Applied Science Publishers)1908年)に記述されている。
【0075】
本発明の選抜実施例を以下に記述する。これらの例は、限定的なものではなく、発明の様々な局面を例示するものに過ぎない。表Iは例1〜15で使われた、異なる無機繊維のサンプルの関連情報の要約を示す。
【0076】
【表1】
【0077】
材料A‐Eはガラス繊維織物であり、材料Fはセラミック繊維織物である。編み糸の詳細および重量は製造者文献から取得した。BGFインダストリー(BGF Industries,Inc.)はノースカロライナ州グリーンズボロ(Greensboro,NC)にあり、へクセルリインフォースメンツ(Hexcel Reinforcements Corp.)はサウスカロライナ州アンダーソン(Anderson,SC)にあり、又3M社(3M Company)はミネソタ州セントポール(St.Paul,MN)にある。各繊維材料は、繊維を覆うサイズ剤を伴って納入業者から受け入れた。サイズ剤とは、繊維上の層で、しばしば澱粉、潤滑剤またはポリビニルアルコールなどの水溶性のポリマーから形成され、繊維の処理または製織を円滑化するために使用される。下記に記述の実施例では、サイズ剤は、繊維がポリマー基質に埋め込まれる前に繊維上に残された。この延長として、これらの繊維は、繊維とポリマー材料の間を結合する結合剤が無い状態で複合材料サンプルに含まれることとなった。
【0078】
表Iに記載されている繊維サンプルの屈折率(RI)は透過型単偏光(TSP)を用いて対物20x/0.50、および透過型ゼルニケ位相コントラスト(PCZ)は対物20x/0.50で測定した。繊維サンプルは、屈折率測定用に、剃刀の刃を用いて繊維を切断した部分を用意した。繊維はガラス板上の各種RI油にマウントし、ガラスカバースリップで覆った。サンプルを、ツァイスアクシオプラン(カールツアイス(Carl Zeiss)、ドイツ)で分析した。RIオイルの検定は、ニューヨーク州ロチェスター、ミルトンロイ社(Milton Roy,Inc.)製ABBE−3L屈折計を用い、測定値を適宜調整した。位相差顕微鏡を伴ったベッケ線法がサンプルのRIの測定に使われた。nDの値に対する見かけ上のRIは、ナトリウムD−ライン、589nm波長における屈折率では、それぞれのサンプルにおける精度は±0.002であった。
【0079】
実施例に使われた各種樹脂の情報の要約を表IIに示す。
【0080】
【表2】
【0081】
表IIのすべての成分はDarocur1173(光開始剤)を例外として光重合樹脂であって、硬化することによって架橋する。CN963A80はトリプロピレングリコールジアクリレートと混合されたウレタンアクリレートオリゴマーである。CN120はエポキシアクリレートオリゴマーである。エベクリル(Ebecryl)600はビスフェノール‐Aエポキシジアクリレートオリゴマーである。SR601とSR349はエトキシ化ビスフェノール‐Aジアクリレートである。SR351はトリメチロールプロパントリアクリレートであり、さらにSR306はトリプロピレングリコールジアクリレートである。RDX51027はオリゴマー臭素化エポキシアクリレートである。
【0082】
サイテック・サーフェィス・スペシャリティ(Cytec Surface Specialities)はベルギーのブリュッセル(Brussels,Belgium)にあり、サートーマー社(Sartomer Company,Inc.)はペンシルバニア州エクストン(Exton,PA)にあり、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals Corp.)はニューヨーク州テリータウン(Tarrytown,NY)にある。サートーマー物質の屈折率は製造業者の資料から入手した。他の物質の屈折率はABBEマークIIデジタル屈折計(ABBE Mark II Digital Refractometer)(波長589.3nm)を20℃で使用して測定した。RDX51027は20℃では固体なので、屈折率は他の既知の成分の屈折率を使って測定された樹脂成分から逆算して見積もった。
【実施例】
【0083】
(実施例1)
樹脂構成成分1は、74.20重量%の成分H、24.82重量%の成分Mと0.986重量%の成分Nを用いて形成した。樹脂構成成分1(硬化前)の屈折率は20℃および波長589.3nmにおいて、ABBEマークIIデジタル屈折計で1.4824と測定された。硬化後(繊維なし)の樹脂構成成分1の屈折率は波長632.8nmにおいて、メトリコン2010型プリズムカップラーで1.5019と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0461であった。
【0084】
実施例1の複合材料は、材料Aの切れ端(約75mmX75mm寸法)を、厚さ4.7mm(3/16インチ)フロートガラスシートの上の厚さ100μm(4mil)のポリエステルシートの上に置いて作成した。構成成分1の樹脂は、電子レンジで約70℃まで加熱した。温かい樹脂の約1.8gを繊維ガラスシートの真ん中に置き、第2のシートである厚さ100μmのポリエステルをその上に置き、さらに第2の厚さ4.7mmのフロートガラスを第2のポリエステルシートの上に置いた。ガラス、ポリエステル、樹脂、および繊維の組み合わせを樹脂サンドイッチと呼ぶ。
【0085】
複合材料を硬化する前に気泡の量を減らすため、樹脂サンドイッチを89℃の真空オーブンに入れ、699mmHgで8分間、樹脂および繊維ガラスの脱気を行った。
【0086】
樹脂サンドイッチを真空オーブンから取り出してから、2つの200μm(0.008インチ)、隙間ゲージを樹脂サンドイッチの両端のポリエステルフィルムの2枚のシートの間に置き、2つのバインダークリップをこれらの両端に使って樹脂サンドイッチを一緒に押さえ、樹脂サンドイッチの厚みを固定した。次に、ランプ出力を100%とした二色性反射板付きのフュージョンF600Dランプの下を毎分約9.1m(30フィート)で動く移動ベルトに載せ、樹脂サンドイッチを硬化させた。最終的に測定するエネルギー密度を、EIT(スターリング、バージニア州(Sterling,VA))のPowerMapで測定し、表IIIに示す。同じ条件で個別に三回測定し、平均のエネルギー密度を示す。
【0087】
【表3】
【0088】
硬化した複合材料はガラスおよびポリエステルフィルムから分離された。測定された複合材料1の光学特性を表IVに示す。
【0089】
(実施例2)
樹脂構成成分2は、30.01重量%の成分H、54.92重量%の成分G、14.06重量%の成分L、1.01重量%の成分Nを用いて形成した。波長589.3nm、20℃でABBEマークIIデジタル屈折計で、構成成分2(硬化前)の屈折率は1.5336と測定された。硬化後(繊維無し)の構成成分2の波長632.8nmでの屈折率は、メトリコンモデル2010プリズムカップラーで1.5451と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0029であった。
【0090】
実施例2の複合材料は、実施例1(材料A)と同様の繊維ガラスと樹脂構成成分2を使用して作成された。この複合材料の作成は、実施例1に記述するものと同じ過程および条件に従った。結果として測定された複合材料2の光学特性を表IVに示す。
【0091】
(実施例3)
樹脂構成成分3は、29.79重量%の成分H、48.85重量%の成分G、5.07重量%の成分K、15.25重量%の成分L、1.04重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分3の屈折率(硬化前)は、20℃、波長589.3nmで1.5315と測定された。硬化後(繊維無し)の屈折率は波長632.8nmで1.5451と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0029であった。
【0092】
実施例3の複合材料は、実施例1(材料A)と同様の繊維ガラスと構成成分3とを使用して作成した。この複合材料の作成は、真空オーブン内での時間が8分ではなく19分であった以外は、実施例1に記述するものと同じ過程および条件に従った。結果として測定された複合材料3の光学特性を表IVに示す。
【0093】
(実施例4)
樹脂構成成分4は、74.17重量%の成分H、24.83重量%の成分L、1.00重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分4(硬化前)の屈折率は20℃、波長589.3nmで1.4998と測定された。硬化後(繊維無し)の屈折率は波長632.8nmで1.5140と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.054であった。
【0094】
実施例4の複合材料は、2インチ(5.1センチ)巾のネクステル(Nextel)312セラミックテープ(材料F)の切れ端(約50mm×63mm寸法)を用意し、4.7mm厚のフロートガラスで裏打ちした100μm厚のポリエステルシートの上に置いて作成した。構成成分4の樹脂を電子レンジ約70℃で加熱した。温かい樹脂の約2.9gをセラミック繊維シートの真ん中に置き、第2のシートである厚さ100μmポリエステルをその上に置き、さらに第2の厚さ4.7mmのフロートガラスを第2のポリエステルシートの上に置いた。ガラス、ポリエステル、樹脂、およびネクステルテープの組み合わせを樹脂サンドイッチと呼ぶ。
【0095】
複合材料を硬化する前に気泡の量を減らすため、樹脂サンドイッチを60℃の真空オーブンに入れ、699mmHg(93.2kPa)で10分間、樹脂と繊維の脱気を行った。間隙ゲージ、樹脂サンドイッチを留めるためのバインダークリップは用いなかった。次に、樹脂サンドイッチを実施例1の記述と同様に硬化させた。硬化後の複合材料をガラスとポリエステルフィルムから分離した。測定された複合材料4の光学特性を表IVに示す。
【0096】
(実施例5)
樹脂構成成分5は、74.25重量%の成分K、24.74重量%の成分I、1.02重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分5(硬化前)の屈折率は20℃、波長589.3nmで1.5420と測定された。硬化後(繊維無し)の屈折率は波長632.8nmで1.5597と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0083であった。
【0097】
実施例5の複合材料は2インチ巾のネクステル312セラミックテープ(材料F)と樹脂構成成分5を使って作成された。この複合材料の作成は使用した樹脂の量が3.0gであり、真空オーブンの中の時間が8分であった以外は、実施例4に記述のものと同じ工程および条件に従った。結果として測定された複合材料5の光学および機械特性を表IVおよびVに示す。
【0098】
(実施例6)
樹脂構成成分6は、49.46重量%の成分J、49.58重量%の成分L、0.99重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分6(硬化前)の屈折率は20℃、波長589.3nmで1.5682と測定された。硬化後の屈折率(繊維無し)は波長632.8nmで1.5821と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0141であった。
【0099】
実施例6の複合材料は2インチ巾のネクステル312セラミックテープ(材料F)および樹脂構成成分6を使って作成された。複合材料の作成は、使われた樹脂の量が3.0g、真空オーブンの温度が89℃,真空オーブンの中の時間が8分であった以外は、実施例4に記述のものと同様の工程および条件に従った。結果として測定された複合材料6の光学特性を表IVに示す。
【0100】
(実施例7)
樹脂構成成分7は、39.58重量%の成分J、59.41重量%の成分L、0.99重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分7(硬化前)の屈折率は20℃、波長589.3nmで1.5574と測定された。硬化後の屈折率(繊維無し)は波長632.8nmで1.5766と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.086であった。
【0101】
実施例7の複合材料は2インチ巾のネクステル312セラミックテープ(材料ID F)および樹脂構成成分7を使って作成された。この複合材料の作成は、使われた樹脂の量が2.96g、真空オーブンの温度が70℃であった以外は、実施例4に記述のものと同様の工程および条件に従った。結果として測定された複合材料7の光学特性を表IVに示す。
【0102】
(実施例8)
実施例8に使われた樹脂の構成成分は実施例1に列挙されたものと同じであった。複合材料は材料Bおよび樹脂構成成分1を使って作成された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0471であった。この複合材料の作成は、使用された樹脂の量が1.7gであったことおよび樹脂サンドイッチが分離される前に冷却されたこと以外は、実施例1に記述のものと同じ工程と条件に従った。結果として測定された複合材料実施例8の光学特性を表IVに示す。
【0103】
(実施例9)
実施例9に使われた樹脂構成成分は実施例3で列挙されたものと同じであった。複合材料は材料Bの繊維および樹脂構成成分3を使って作成された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0039であった。この複合材料の作成は、使われた樹脂の量が1.9gであった以外は、実施例1に記述のものと同様の工程および条件に従った。結果として測定された複合材料9の光学特性を表IVに示す。
【0104】
(実施例10)
樹脂構成成分10は、31.07重量%の成分H、50.66重量%の成分G、2.63重量%の成分K、14.64重量%の成分Lと1.00重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分10(硬化前)の屈折率は20℃、波長589.3nmで1.5299と測定された。硬化後の屈折率(繊維無し)は波長632.8nmで1.5444と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0046であった。
【0105】
実施例10の複合材料は実施例8と同様の繊維(材料B)および樹脂構成成分10を使って作成された。この複合材料の作成は、実施例1に記述のものと同様の工程および条件に従った。結果として測定された複合材料10の光学および機械特性を表IVおよびVに示す。
【0106】
(実施例11)
樹脂構成成分11は、18.05重量%の成分H、35.93重量%の成分G、22.06重量%の成分K、22.96重量%の成分Lと1.00重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分11(硬化前)の屈折率は20℃、波長589.3nmで1.5371と測定された。硬化後の屈折率(繊維無し)は波長632.8nmで1.5519と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0001であった。
【0107】
実施例11の複合材料は材料Dおよび樹脂構成成分11を使って作成された。この複合材料の作成は、実施例1に記述のものと同様の工程および条件に従った。結果として測定された複合材料11の光学および機械特性を表IVおよびVに示す。
【0108】
(実施例12)
実施例12で使われた樹脂構成成分は実施例11で列挙されたものと同じであった。複合材料は材料Eおよび樹脂構成成分11を使って作成された。複合材料の作成は、使われた樹脂の量が1.9gであった以外は、実施例1の記述と同様の工程および条件に従った。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0021であった。結果として測定された複合材料12の光学特性を表IVに示す。
【0109】
(実施例13)
実施例13で使われた樹脂構成成分は実施例11で列挙されたものと同じであった。複合材料は材料Cおよび樹脂構成成分11を使って作成された。複合材料の作成は、実施例1の記述と同様の工程および条件に従った。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0001であった。結果として測定された複合材料13の光学および機械特性を表IVおよびVに示す。
【0110】
(実施例14)
樹脂構成成分14は、17.03重量%の成分H、41.98重量%の成分G、39.99重量%の成分Kと1.00重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分10(硬化前)の屈折率は20℃、波長589.3nmで1.5359と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0004であった。硬化後の屈折率(繊維無し)は波長632.8nmで1.5516と測定された。
【0111】
実施例14の複合材料は材料Cおよび樹脂構成成分14を使って作成された。この複合材料の作成は、樹脂サンドイッチを分離する前に冷却したこと以外は、実施例1に記述のものと同様の工程および条件に従った。結果として測定された複合材料14の光学特性を表IVに示す。
【0112】
(実施例15)
樹脂構成成分15は、21.48重量%の成分H、44.67重量%の成分G、22.26重量%の成分K、10.57重量%の成分Lと1.00重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分10(硬化前)の屈折率は20℃、波長589.3nmで1.5356と測定された。硬化後の屈折率(繊維無し)は波長632.8nmで1.5505と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0015であった。
【0113】
実施例15の複合材料は材料Cおよび樹脂構成成分15を用いて作成された。この複合材料の作成は、実施例1に記述のものと同様の工程および条件に従った。結果として測定された複合材料15の光学特性を表IVに示す。
【0114】
実施例16−21は繊維強化を含まない硬化したポリマーに関する。
【0115】
(実施例16)
実施例14に記載された複合材料14において硬化に先立って過剰の樹脂が繊維強化の端を越えて延びている部分がある。硬化後、この部分は自由に独立したフィルムとして固化された。複合材料14の繊維強化から自由なこの部分が実施例16として分析された。実施例16のための全ての関連するサンプル作成情報は実施例14に記述されている。実施例16の樹脂の測定された光学特性を表IVに示す。
【0116】
(実施例17)
実施例17の樹脂構成成分は、30.08重量%の成分H、54.83重量%の成分G、14.08重量%の成分Kと1.00重量%の成分Nを用いて形成した。硬化前の樹脂の屈折率は20℃および波長589.3nmで1.5323と測定された。硬化後(繊維無し)の屈折率は波長632.8nmで1.5462と測定された。
【0117】
実施例17の複合材料は実施例8と同じファイバーグラス(材料B)および比較実施例2に列挙された構成成分の樹脂を使って作成された。この複合材料の作成は、実施例1に記述のものと同様の工程および条件に従った。サンプルが硬化された後、ファイバーグラス強化の外側に過剰の樹脂の部分があった。実施例17のデータはファイバーグラス強化を超えて延びていた固化した樹脂の分析によって作成された。実施例17の樹脂の測定された光学特性を表IVに示す。
【0118】
(実施例18)
実施例18のデータは実施例2の複合材料の一部を分析して作成され、実施例2ではサンプルを作成した時に余分の樹脂があった。実施例2で樹脂が硬化される前に、過剰の樹脂がファイバーグラス強化の端を越えて延びた繊維強化のない、樹脂だけの部分があった。硬化後、その部分は自由に独立したフイルムとして固化していた。樹脂が固化した、繊維強化を含まない、この部分が実施例18のデータを作成するために分析された。このように実施例18のサンプル作成の情報の全ては実施例2に記述されている。実施例18の樹脂について測定された光学特性を表IVに示す。
【0119】
(実施例19)
実施例19の硬化された樹脂サンプルは樹脂(実施例10に列挙したものと同じ構成成分)を電子レンジで約60℃に加熱し、約1〜2gを6mm(1/4インチ)の金属板の上に置かれた100μm厚のポリエステルシートの真ん中に注いで作成された。二つのスペーサー、それぞれ約0.43mm厚、が約50〜75mm(2インチ〜3インチ)離して樹脂の各側に置かれた。そうすることで平らにされた後も樹脂はスペーサーに触れない。第二の100μm厚のポリエステルシートが樹脂とスペーサーの上に置かれた。金属板は二枚のポリエステルフィルムシート間の樹脂とスペーサーとともに手動式ラミネーターに掛けられ、樹脂は平らにプレスされた。金属板、ポリエステル、および樹脂の組み合わせは修飾樹脂サンドイッチと呼ばれる。修飾樹脂サンドイッチは次に実施例1に記述の方法と同じ方法で硬化された。実施例19の樹脂の測定された光学および機械特性を表IVおよびVに示す。
【0120】
(実施例20)
実施例20の硬化した樹脂サンプルは、樹脂が実施例11に列挙したものと同じ構成成分を持っていたこと以外は、実施例19の硬化した樹脂サンプルと同じ方法で作成された。結果として測定された実施例20の樹脂の光学および機械特性を表IVおよびVに示す。
【0121】
(実施例21)
実施例21のための硬化された樹脂サンプルは、実施例5の樹脂構成成分を電子レンジで約50℃まで加熱し、その約1〜2gを4.7mm(3/16インチ)厚のフロートガラスシートの上の100μm厚ポリエステルシートの真ん中に注いで、作成した。二個のスペーサー、それぞれ約0.43mm厚のものを樹脂のそれぞれの側に置き、約50mm〜75mm(2インチ−3インチ)離して、平らにされても樹脂がスペーサーに触れないようにした。第二の100μm厚のポリエステルシートを上に置き、この第二のポリエステルシートの上に4.7mm(3/16インチ)厚のフロートガラスを置いた。二枚のガラスがゆっくり押し付けられると二つのスペーサーが樹脂の望む厚さを作り出した。ガラス、ポリエステル、および樹脂の組み合わせは樹脂サンドイッチと呼ばれる。次に樹脂サンドイッチは実施例1の記述と同じ方法で硬化された。結果として測定された実施例21の樹脂の光学および機械特性を表IVおよびVに示す。
【0122】
異なる実施例の複合材料が光の透過、反射、曇りおよび色について試験された。曇り(H)と透明度(C)の測定はカタログ番号4723、BYKガードナー社製ヘーズガードプラス(BYK Gardner Haze-Gard Plus)で行なった。これはメリーランド州シルバースプリング(Silver Spring, Maryland)のBYKガードナー社より市販されている。透過と曇りのレベルは「透明プラスチックのための曇りと光の透過の標準試験法」と題するASTM−D1003に従って集められた。機器は測定中、空気を対照とした。光透過(T)の測定は透過の割合として与えられる。曇りはそれを通して見る対象物のコントラストを低下させる原因となる品目による光の散乱である。曇り、H、は散乱した、入射光線の方向からある一定の角度以上でその方向がずれるような散乱した透過光の割合で示される。このテスト方法では、特定の角度は2.5度である。透明度、C、はその方向のずれが2.5度以下であるような散乱した透過光の割合で示す。
【0123】
1976 CIE L*a**b**カラースペースでの色はBYKガードナーカラースフェア(カタログ番号6465)で測定された。テスト方法は対象色評価のための分光分析データの取り方、ASTM E1164に記述のものと同様である。機器は空気からのサンプルの色のシフトを計算して検定した。
【0124】
光透過(%T)と反射(%R)の測定はパーキン−エルマー社のラムダ900分光光度計(モデルBV900ND0)に400〜700nmの範囲用PELA‐1000集積球付属品のついたものを使った。この球は150mm(6インチ)の直径で、「色と外観測定のASTM基準」第三版、ASTM、1991年に記載されているASTM法 E903、E1003、E308などに従っている。機器は測定の間、空気を対照とした。分光光度計の走査速度は120ms/ptのUV‐可視集積で〜1250nm/分であった。データ間隔と分解能は5nmであった。透過および反射データは550nmでの測定の割合で示される。
【0125】
各サンプルの厚さは四つの異なる点で測定された。(t)記号の欄のデータは測定された厚さをミクロンで示したものである。
【0126】
【表4】
【0127】
良好な屈折率の一致が多くの実施例で得られた。屈折率差が実施例2、3、および9〜15で0.005以下、さらに実施例11および13でおよそ0.0002以下であった。実施例2、3、9、および10は曇り値が3%以下で、高い透過であった。裸眼にはこれらのフィルムは極めて透明である。
【0128】
実施例4−7はセラミック繊維を使っていて、材料と繊維の間の最小の屈折率差は少なくとも0.008であり、繊維は繊維を詰めて織った生地の形態であった。織物の緻密さは硬化の前にポリマー/繊維の接触面から気泡を取り除くことを難しくした。結果としてこれらのサンプルの曇り値は比較的に高かった。より低い曇り値は固化前に繊維と樹脂から気泡をよりよく取り除き、さらにより良い材料の指数の一致を達成することで得られるであろう。
【0129】
幾つかのサンプルについて機械特性を測定した。測定には熱膨張係数(CTE)と貯蔵係数を含んだ。これらの測定結果を表Vに示した。CTEはパーキンエルマー(Perkin Elmer)熱機械分析系、TMA−7フィルム引っ張り機構付きを使って測定された。温度掃引実験が温度範囲が20℃から150℃までの膨張した状態で10℃/分の速度で行なわれた。表Vに示したCTEは温度の範囲は70℃〜120℃のものであり、全ての場合でこの温度範囲でCTEは実質的に直線であることが分かった。CTEは摂氏温度当たりの百万分の一(ppm/℃)で表に示されており、サンプルの2回目の熱サイクルで測定された。CTEは繊維を含んだこれらのサンプルについてはx/yの形で示されている。繊維はサンプルの中で織物の形で繊維が(任意に決められた)x−およびy方向に位置している。CTEはx−およびy方向の膨張として示されている。x−およびy方向の繊維の密度は実施例10では同等ではなく、そのことでx−およびy方向のCTEの値が際立った差を示す結果となった。実施例10、11および13では、繊維は織物の形で、x−およびy方向でほぼ同様の繊維密度であった。実施例19〜21では繊維は存在せず、これらのサンプルについては一つのCTEのみが示されている。
【0130】
一つのフィルムサンプルについて貯蔵(弾性)係数がTAインストルメント(TA Instruments)社製Q800シリーズのフィルム引っ張り機構付き動的機械分析機(DMA)を使用して測定された。温度掃引実験が温度範囲−40℃から200℃まで2℃/分の速度で動的歪において行なわれた。貯蔵係数とタンデルタ(損失正接)が温度の関数として報告された。貯蔵係数を三つの異なる温度、つまり24℃、66℃および100℃について表Vに示す。タンデルタ曲線のピークがフィルムでのガラス遷移温度、Tg、を確定するために使われた。実施例10および21ではTgの値はそれぞれのサンプルの2回目の熱サイクルで測定された。
【0131】
【表5】
【0132】
繊維強化実施例のCTEは強化していない実施例のCTEに比べると、繊維がガラスであるかガラス−セラミックであるかに関係なく大幅に低かった。加えて、繊維強化実施例の貯蔵係数は強化していない実施例に比べて大幅に高く、特に高い温度66℃でそうであって、この温度は幾つかの異なるタイプのディスプレイ用途で予期される使用温度の範囲である。繊維強化複合材料フィルムサンプルのより高い貯蔵係数は高い使用温度でのフィルムのそりや弛みの量を減らし、フィルムの剛性を増し、より一層安定して長期に使用できる結果をもたらすと信じられる。
【0133】
幾つかの実施例ではTgの値が135℃よりも低く、さらには100℃よりも低いことが望ましい。Tgの値がこの範囲のポリマー材料の利用は利用できる材料の選択範囲を広げ、高いTgの値を持つ材料を使うより、安く、加工しやすい材料が手に入ることになる。実施例5と10のTgの値がそれぞれ92℃と82℃であることに留意するべきである。
【0134】
本発明は上に記述した特定の実施例に限られるものと考えるべきではなく、むしろ添付の請求範囲にはっきりと定義するように発明のすべての様態を含むものと理解すべきである。本発明の様々な変更、同等の処理法、さらに本発明が適用可能な数多くの構造は本発明の明細書を見れば当業者には自ずと明らかであろう。請求範囲はそのような変更および器具も含むものである。
【0135】
本発明は、発明の様々な実施例に関する添付の図面と、以下の詳しい説明を用いることで、より完全に理解できるであろう。
【0136】
本発明は、様々な変更および代替形式による影響を受けやすいため、図面上の例にいくつかの特定事項を示し、詳細を記述する。しかし、この意図は、記述された特定の実施例に発明を限定しようとするものではないことが理解されなければならない。逆に、この意図は、添付した請求により定義される発明の精神および範囲に帰結する全ての変更、同等のもの、および代替物を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1A】光学フィルムの模式図。
【図1B】本発明の原理に従った、光学フィルムの断面の模式図。
【図2】繊維半径の関数としての散乱効率を示すグラフ。
【図3】繊維織物の実施例の模式図。
【図4A】本発明の原理に従った繊維編み糸の典型的な実施例の模式図。
【図4B】本発明の原理に従った繊維編み糸の典型的な実施例の模式図。
【図5A】本発明の原理に従った、繊維強化フィルムの断面の模式図。
【図5B】本発明の原理に従った、繊維強化フィルムの断面の模式図。
【図5C】本発明の原理に従った、繊維強化フィルムの断面の模式図。
【図6】本発明の原理に従った屈折力を持つ繊維強化フィルムの断面の模式図。
【図7A】本発明の原理に従った表面構造を持つ繊維強化フィルムの断面の模式図。
【図7B】本発明の原理に従った表面構造を持つ繊維強化フィルムの断面の模式図。
【図7C】本発明の原理に従った表面構造を持つ繊維強化フィルムの断面の模式図。
【図7D】本発明の原理に従った表面構造を持つ繊維強化フィルムの断面の模式図。
【図8A】本発明の原理に従った繊維強化光学フィルムの成形に使用できる装置の模式図。
【図8B】本発明の原理に従った繊維強化光学フィルムの成形に使用できる装置の模式図。
【図9】本発明の原理に従った繊維強化光学フィルムを作成するために繊維層に樹脂を含浸させるための装置の模式図。
【図10】本発明の原理に従った繊維強化光学フィルムを成型する装置の模式図。
【技術分野】
【0001】
この発明はポリマー光学フィルムに関するものであり、さらに具体的には、硬直性および剛性を増強させるために無機繊維を含む、ポリマー光学フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学フィルム、その光学特性がそれらの機能のために重要であるポリマーフィルムは、例えば光源からディスプレイパネルへの光の伝播を制御するために、しばしばディスプレイに使われる。光を制御する機能とは、画像の明るさを向上すること、および画像全体に光が均一に行き渡るようにすることを含む。
【0003】
このようなフィルムは薄いため、従って、構造的な強度に問題がある。ディスプレイ装置の寸法が大きくなるにつれ、フィルムの面積も大きくなる。厚みを増やさない限り、フィルムは形状を保つために必要な十分な堅さを維持できない大きさになる。しかし、フィルムを厚くすると、ディスプレイ装置の厚みが増し、さらにまた重量の増加および光吸収の増加につながる。フィルムが厚くなるとまた、熱絶縁性も増えるため、ディスプレイからの熱放散能力を低下させる。さらに、輝度が向上したディスプレイへの需要は引き続き存在しており、これはディスプレイ装置がさらに熱を発生させることにつながる。これは、例えばフィルムのそりなど、高い加熱に伴う変形を増やす原因となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、大きなディスプレイ寸法に対処する解決策は、より厚い基材に光学フィルムをラミネートすることである。この解決策では、機器の価格が上がり、さらに機器を厚く、重くする。しかし、そこにかかる費用はディスプレイの光学性能を著しく改善する結果とはなっていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の一実施形態では、光学フィルムの製造方法に着目している。前記方法は、ガラス繊維の連続層として多数の無機繊維を広げること、およびポリマー樹脂の中に無機繊維の連続的な層を埋め込むことを含む。前記方法はまた、ポリマーと無機繊維の複合層を生成するためにポリマー樹脂を固化させること、無機繊維の屈折率とポリマー樹脂の屈折率を実質的に一致させることを含む。
【0006】
本発明の上記の要約は、個別の実施例を提示したり、本発明の全ての実施例を記述することを意図したものではない。後続の図および詳細説明で、これらの具体例についてより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は光学装置に適用でき、特に1枚以上の光学フィルムを使用する光学ディスプレイ装置に利用できる。例えば液晶ディスプレイ(LCD)など、光学ディスプレイが大型化され、輝度が増加すると、ディスプレイ内部の光学フィルムへの需要も増大する。より大型のディスプレイでは、うねり、曲がり、へこみなどを防ぐため、より強度の高いフィルムを必要とする。しかし、ディスプレイの長さや巾に伴ってフィルムの厚みを増やすと、フィルムはより厚く、より重くなる。したがって、厚みを増加させることなく大型のディスプレイに適用できるように、より強化された光学フィルムが求められる。光学フィルムの強度を向上させる1つの方策は、フィルムの内部に繊維を含ませることである。いくつかの実施例では、繊維とフィルムの周囲の材料の屈折率は一致し、フィルムを通過する光の散乱がほとんど、またはまったく無い。
【0008】
光学エレメント100の実施例が図1Aに概略的に示してあり、任意に配置された座標系に関するエレメント100を示している。エレメント100はz方向に厚みを持っている。エレメント100の部分的な断面図が図1Bに概略的に示してある。該エレメントは、ポリマーマトリックス104を含み、連続相と考えることができる。エレメント100は、例えばシートやフィルム、円筒、管など、大量の光学体として形成される。エレメント100はエレメント100が少なくとも一方向で実質的に自己を支持できる、十分な断面寸法を持つこともある。例えば、エレメント100がz方向に薄い寸法で、y方向に著しく広いシートだとすると、エレメント100はz方向では容易に屈曲することができるが、y方向ではそうではないため、y方向で概ね自己支持型である。
【0009】
ガラス、ガラス‐セラミックまたはセラミックの繊維のような無機繊維102が、マトリックス104の中に投入されている。個別の繊維102は、フィルム100の全長にわたって伸張しているが、これは必要条件ではない。図示した実施例では、繊維102は全長にわたってx方向に平行して長さ方向に並べられているが、これも必要ではない。マトリックス104の中では、繊維102を単一の繊維として編成したり、下に記述するように、その他の配置処理を行うことができる。
【0010】
ポリマーマトリックス104を形成する素材のx−、y−、およびz方向の屈折率をn1x、n1y、およびn1zとする。ポリマー素材は等方性であり、x−、y−、およびz−屈折率は全て概ね一致している。マトリックス素材が複屈折性の場合にはx−、y−、およびz‐屈折率の少なくとも1つは他の屈折率と異なる。場合によっては、1つの屈折率だけが他と異なることがあり、この場合、素材は一軸性と呼ばれ、三軸全方向共に屈折率が異なる場合は、素材は二軸性と呼ばれる。無機繊維102の素材は、典型的に等方性である。したがって、繊維の素材の屈折率はn2である。無機繊維102も複屈折性である。
【0011】
いくつかの実施例ではポリマーマトリックス104が等方性、つまり、n1x≒n1y≒n1z≒n1であることが望ましい。等方性と見なされるには、屈折率n1x、n1y、およびn1zの間の差が0.05以下、好ましくは0.02以下、さらに好ましくは0.01以下である。さらにいくつかの実施例では、マトリックス104と繊維102の屈折率がほぼ一致していることが望ましい。したがって、マトリックス104と繊維102との屈折率の差、n1とn2の差は小さいべきであり、少なくとも0.02以下、好ましくは0.01以下、さらに好ましくは0.002以下である。
【0012】
別の実施例では、ポリマーマトリックスが複屈折性である場合、少なくともマトリックスの屈折率の1つが繊維102の屈折率と異なることが望まれることがある。例えば、マトリックスが一軸複屈折性、つまりn1x≒n1z≠n1yであるならば、n1xおよびn1zの値はn2と密接に一致する。しかし、n1yがn2と異なっており、結果として、光はy方向で強く偏光し、フィルム100によって散乱されるが、x方向で偏光した光は実質的に散乱すること無くフィルムを通過する。y偏光した光の散乱量はいくつかの要因によって異り、n2−n1yの屈折率の差の程度、繊維102の寸法および繊維102の密度などが含まれる。さらに、光は、前方散乱(散乱伝播)したり、後方散乱(散乱反射)したり、両方が組み合わされたりすることもある。マトリックス104と繊維102との複屈折接触面で起こる屈折率の不一致は少なくとも0.05であり、さらにこれより大きく、例えば0.1、または0.15、さらには0.2のこともある。
【0013】
前述した典型的な実施例では、y方向に比較的大きな屈折率の差を伴うx方向の屈折率の一致性に着目したが、別の実施例では、x方向に比較的大きな屈折率の差を伴うy方向の屈折率の一致性が含まれている。
【0014】
マトリックス
ポリマーマトリックスとしての使用に適した材料としては、望まれる光波長の範囲に対して透明である熱可塑性および熱硬化性のポリマーが挙げられる。いくつかの実施例では、ポリマーが水に非溶性であること、ポリマーが疎水性であること、または水の吸収が低い傾向があることが特に有用であり得る。さらに、適したポリマー材料としては、非晶質または半晶質のものがあり、これにはホモポリマー、コポリマーまたはそれらの混合物が含まれる。ポリマー材料の例としては、以下を含むが、これらには限定されない。
ポリ(カーボネート)(PC)、シンジオタクチックおよびアイソタクチックポリ(スチレン)(PS)、C1〜C8アルキルスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびPMMAコポリマーを含むアルキル、芳香族および脂肪族環を含む(メタ)アクリレート、エトキシル化およびプロポキシル化された(メタ)アクリレート、多機能(メタ)アクリレート、アクリレート化されたエポキシ、エポキシ、およびその他のエチレン化不飽和材料、環状オレフィンおよび環状オレフィンコポリマー(SAN)、エポキシ、ポリ(ビニルシクロヘキサン)、PMMA/ポリ(フッ化ビニル)混合物、ポリ(フェニレン酸化物)アロイ、スチレンブロックコポリマー、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリウレタン、飽和ポリエステル、低複屈折ポリエチレンを含むポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)(PP)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)などのポリ(アルカンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)などのポリ(アルカンナフタレート)、ポリアミド、アイオノマー、ビニルアセテート/ポリエチレンコポリマー、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、フッ素重合体、ポリ(スチレン)−ポリ(エチレン)コポリマー、ポリオレフィンPETおよびPENを含むPETおよびPENコポリマー、ポリ(カーボネート)/脂肪族PET混合物。(メタ)アクリレートと言う用語は、応答するメタクリルレートまたはアクリレート化合物として定義する。シンジオタクチックPS以外は、これらのポリマーは光学的に等方性の形態で用いる。
【0015】
いくつかの製品用途では、フィルム製品および構成要素のフュージティブ種(低分子量、未反応、または未変換分子、溶解水分子、もしくは反応副産物)のレベルが低いことが大切である。フュージティブ種は、製品またはフィルムの最終の使用環境から吸収されることができ、例えば、水分子は、初期の製品生産段階から製品やフィルムの中に存し、例えば水、または化学反応(例えば凝縮重合反応)の結果として作り出される。凝縮重合反応から小さな分子の発生の1例は、ジアミンと二価酸との反応でポリアミドを形成する過程での水の放出である。フュージティブ種はまた、モノマー、可塑剤などの低分子量の有機物質を含むことができる。
【0016】
フュージティブ種は、一般的に機能的製品やフィルムの残りを含む大部分の素材より低分子量である。例えば、製品がこの条件を使用すると、製品またはフィルムの片側に、区別が付くほどの大きな熱応力がかかることもある。このような場合、フュージティブ種はフィルムの中を移動したり、またはフィルムもしくは製品の一方の表面から揮発したりする可能性があり、濃度勾配、全体的な機械的変形、表面の変化、および時としては、望ましくないガス放出につながる。ガス放出は、製品、フィルム、またはマトリックスに空隙や気泡を生み出したり、また他のフィルムとの接着に問題を引き起こしたりする可能性がある。フュージティブ種は、また潜在的に、製品への適用時に溶解、腐食または望ましくない影響を他の部品に与えることがある。
【0017】
これらのポリマーのいくつかは、延伸すると複屈折性となる。特にPET、PEN、およびこれらのコポリマー、および液晶ポリマーは、延伸すると、比較的大きな複屈折性の値を示す。ポリマーには、押し出しおよび伸張などの異なる方法で延伸することができる。伸張は、高程度の延伸を作り出すことができ、温度および伸張率など、制御が容易な外部パラメータによって制御できるので、ポリマーを延伸するために特に有用な方法である。
【0018】
マトリックス104は各種添加物と共に提供され、光学体100に望ましい特性を提供してもよい。例えば、添加物として、次のようなものを1種以上挙げることができる。
耐候剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、酸化防止剤、散乱剤、潤滑剤、静電気防止剤、顔料または染料、核形成剤、難燃剤および発泡剤。
【0019】
いくつかの典型的な実施例では、時間経過にともなう黄ばみや曇りに対する抵抗性のあるポリマーマトリックスとして材料を用いてよい。例えば、芳香族ウレタンのような材料は、長期的にUV光に暴露すると不安定になり、さらに時間とともに色が変わる。長期間にわたって同じ色を保つことが重要場合は、このような材料を避けることが望ましいであろう。
【0020】
他の添加剤が、ポリマーの屈折率を変えたり、材料の強度を向上させたりするために、マトリックス104に提供されてもよい。このような添加剤としては、例えばポリマービーズまたは粒子およびポリマーナノ粒子のような有機添加剤が挙げられる。いくつかの実施例では、マトリックスは2つの異なるモノマーの特定の比率を用いて形成され、それぞれのモノマー、aおよびbは、重合化するときに、例えばnaとnbという異なる最終屈率を伴う。ここで、下付き文字aおよびbは、それぞれモノマーaおよびbを示す。ここでnaはnbより小さく、混合物中のモノマーbの重量分率をrとすると、マトリックスの屈折率の値nmは、nm=na+r(nb−na)となる。別の実施例では3種またはそれ以上の異なるモノマーの一次結合を用いて、望ましい屈折率の値を提供してもよい。下記に示す例では、3、4、さらには5種のモノマーの混合物を使用して屈折率を調整できることを示す。
【0021】
別の実施例では、無機添加剤をマトリックスに加えて、マトリックスの屈折率を調整したり、材料の強度および/または剛性を増加したりしてもよい。例えば、無機材料には、ガラス、セラミック、ガラス‐セラミック、または金属酸化物が挙げられる。下記に論じる無機繊維という面で適したいかなるタイプのガラス、セラミックまたはガラス‐セラミックを用いてもよい。適した金属酸化物のタイプとしては、例えばチタニア、アルミナ、酸化スズ、酸化アンチモン、ジルコニア、シリカ、これらの混合物またはこれらの酸化混合物が挙げられる。これらの無機材料は、好ましくはナノ粒子として提供され、例えば、形状として、粉砕、粉末、ビーズ状、薄片または粒子状などで、マトリックス内に分散させる。粒子のサイズは、好ましくは200nm以下であり、フィルムを透過する光の散乱を減少させるには、100nm以下または50nm以下であってよい。
【0022】
これらの無機添加剤の表面には、ポリマーと繊維の接着のため、接合剤を用いてもよい。例えば、無機添加剤とポリマーを結合するため、シラン接合剤を無機添加剤とともに用いてもよい。無機ナノ粒子は、重合可能な表面の改質が欠如しているが、ナノ粒子はマトリックスの有機質成分で重合可能であるため、無機ナノ粒子の表面の改質を行うことができる。例えば、反応基を結合剤の別の一端に添付してもよい。反応基は化学的に反応することができ、例えば反応側のポリマーマトリックスと二重結合を介した化学重合によるものである。
【0023】
繊維強化
繊維102に適したいずれのタイプの無機材料を使用してもよい。繊維102は、フィルムを通る光に対し実質的に透明であるガラスから形成されてよい。適したガラスの例としては、繊維ガラス複合材料にしばしば用いられるE、C、A、S、R、およびDガラスなどのガラスが挙げられる。例えば、石英ガラスやBK7ガラスなどの繊維を含む、より高品質のガラスもまた、使用してよい。適した高品質ガラスが、スコット北アメリカ社(Schott North America Inc.)ニューヨーク州エルムスフォード(Elmsford, New York)など、いくつかの供給元から入手可能である。高品質ガラスは、純度が高く、より均一な屈折率を持ち、さらに含有物が少ないため、散乱が減少し、透過性が向上することから、これらの高品質ガラスを含む繊維を用いることが望ましい。また、繊維の機械特性も、より均一になる。高品質ガラス繊維は、水分吸収性が低く、そのためフィルムは長期使用においても、より安定になる。さらに、ガラスのアルカリ成分が水分の吸収を増加するため、低アルカリガラスの使用が望ましい。
【0024】
繊維102に使用してもよい別のタイプの無機材料は、ガラス−セラミック材料である。ガラス‐セラミック材料は、一般的に95容量%から98容量%の非常に小さな結晶からなり、大きさは1ミクロン以下である。一部のガラス‐セラミック材料は、結晶の大きさが50nmまで小さく、結晶の大きさが可視光の波長と比較して非常に小さく、散乱がほとんど発生しないため、可視光の波長では事実上透明である。これらのガラス−セラミックはまた、ガラス質領域および結晶質領域との間の屈折率の有効な差は事実上ほとんど無いか、または全く無いため、可視的に透明である。透過性に加えて、ガラス‐セラミック材料は、ガラスを超える破壊強度持ち、熱膨張係数の値がゼロまたはむしろ負であることが知られている。対象となるガラス‐セラミックには、以下の成分のものが含まれるが、これらに限定されない。Li2O−Al2O3−SiO2、CaO−Al2O3−SiO2、Li2O−MgO−ZnO−Al2O3−SiO2、Al2O3−SiO2、およびZnO−Al2O3−ZrO2−SiO2、Li2O−Al2O3−SiO2、およびMgO−Al2O3−SiO2。
【0025】
一部のセラミックはまた、適切に一致する屈折率を持つマトリックスポリマーに埋め込まれた場合に、透明に見えるのに十分に小さな結晶寸法を持つ。3M社(ミネソタ州セントポール(St. Paul, MN))から入手できるネクステル(商標)(Nextel(商標)セラミック繊維はこのタイプの材料の例であり、糸、編み糸、および織布として入手可能である。適したセラミックまたはガラス−セラミック材料については、「ガラスの化学」第2版(A.ポール チャップマンとホール、1990年発行)(「Chemistry of Glasses, 2nd Edition(A.Paul,Chapman and Hall)」および「セラミック」第2版の序文(W.D.キンゲリー、ジョン ウイリーとソンス、1976年発行)(Ceramics, 2nd Edition(W.D. Kingery,John Wiley and Sons))に更に詳しく記載されている。
【0026】
繊維の屈折率とマトリックスの屈折率が十分に一致していない場合、繊維102の大きさは、フィルム100を通る光の散乱に重大な影響を及ぼす可能性がある。散乱効果、標準化およびスケール済み光学的厚さ(NSOT)のプロットを繊維の平均半径の関数として図2に示す。NSOTは次の式で表される。
【0027】
NSOT=Τ(1−g)/(tf)
ここで、Tは光学的厚みでtkに等しく、kは単位体積当たりの消散断面積(消散の平均自由経路の逆数)、tはフィルム100散乱体の厚み、fは繊維の体積分率、およびgは非対称パラメータである。gの値は純前方散乱の場合は+1、純後方散乱の場合は−1、さらに前方散乱と後方散乱が等しい場合はゼロである。計算には入射光の真空波長を550nmと想定したプロットを用いた。
【0028】
ここに示すように、散乱効果のピークは、繊維の半径が約150nmであり、約50nmから1000nmの半径の範囲の外側では最高値の約半分の値となっている。従って、一部の実施例では、繊維102の半径がこの範囲の外側にあることが望ましい。半径が150nmよりも著しく小さい単一の繊維102を用いることは、このように小さな径の単一繊維を作ることや取り扱いが困難なため、あまり実用的ではない。従って、可視光用には、少なくとも2μmまたは好ましくは3μm以上の半径の繊維102を用いる方が容易である。
【0029】
いくつかの典型的な実施例では、少なくとも幾分かの光が繊維によって散乱されるため、マトリックスと繊維との間の屈折率が完全に一致していない方が望ましい場合がある。このような実施例では、マトリックスと繊維のいずれか一方または両方が複屈折性であるか、またはマトリックスと繊維の両方が等方性であってもよい。繊維の大きさに応じて、散乱は、散乱または単純な屈折により発生する。繊維による散乱は非等方性である。光は繊維の軸に対して横方向に散乱するが、繊維の方向には散乱しない。従って、散乱の性質は、マトリックス中の繊維の方向に依存する。例えば、繊維がxおよびy軸と平行に置かれている場合、光はxおよびy軸と平行な方向に散乱する。
【0030】
さらに、マトリックスには、光を等方性に散乱する散乱粒子を加えることができる。散乱粒子は、マトリックスとは異なる屈折率(多くの場合はより高い屈折率)を持つ粒子で、直径は最大約10μmである。散乱粒子は、例えば、上に記述したように、マトリックスの屈折率の調整にナノ粒子として用いられるような金属酸化物であってもよい。その他の適したタイプの散乱粒子には、ポリスチレンまたはポリシロキサン粒子、もしくはこれらの組み合わせなどのポリマー粒子が含まれる。散乱粒子は、光を散乱させるために単独で、または光を散乱させるために屈折率が一致しない繊維と組み合わせて使用してもよい。
【0031】
マトリクス内の繊維の典型的な形態としては、編み糸、ポリマーマトリックス内で一方向に配列した繊維または編み糸の束、繊維の織物、不織布、短繊維、短繊維マット(不規則又は規則的な形態)、またはこれらの形態の組み合わせが含まれる。短繊維マットまたは不織布は、繊維を無作為に配置するのではなく、伸張、加圧、または位置合わせなどにより、不織布または短繊維マット内で繊維に何らかの位置決めを提供してもよい。さらに、マトリックスは複数の繊維層を含んでよく、例えば、マトリックスは異なる束、織物などのさらなる繊維の層を含んでもよい。
【0032】
有機繊維もまた、無機繊維102と共にマトリックス104の中に埋め込んでもよい。マトリックスに埋め込むことができる適した有機繊維には、例えば上に挙げたポリマー材料の1種以上を含む繊維などのポリマー繊維が挙げられる。ポリマー繊維は、マトリックス104と同じ材料で形成することも、また異なるポリマー材料から形成することもできる。その他の適した有機繊維は、例えば綿、絹または麻などの天然材料から作成できる。
【0033】
ポリマーのような一部の有機材料は、光学的に等方性または光学的に複屈折性であってよい。複屈折性ポリマー繊維は、偏光依拠特性をフィルムに持たせるために使うことができ、例えば、米国特許申請番号11/068,157および11/068158に記述されている(両方とも2005年2月28日付申請)。
【0034】
いくつかの実施例では、有機繊維は例えばポリマー繊維織物など、ポリマー繊維のみを含む、編み糸、束、織物などの一部を形成する場合がある。別の実施例では、有機繊維は有機および無機繊維を含む編み糸、束、織物などの一部を形成する。例えば、編み糸または織物には、無機およびポリマー繊維を含んでもよい。繊維織物300の実施例を図3に概略的に示す。織物は縦糸繊維302と横糸繊維304で形成されている。縦糸繊維302は無機または有機繊維であり、横糸繊維304も同様に、無機または有機繊維でよい。さらに縦糸繊維302と横糸繊維304は、それぞれ無機および有機繊維の両方を含んでもよい。織物300は、個別の繊維、束、または編み糸による織物、またはこれらを組み合わせた織物でよい。
【0035】
編み糸は縒り合わせた多数の繊維を含む。繊維は編み糸の全長にわたっていてもよく、また編み糸は短繊維を含んでいてもよく、それぞれの繊維の長さは編み糸の全体の長さよりも短い。例えば図4Aに示すように、繊維402を縒り合わせて形成した従来の縒り糸400を含む、適したいかなるタイプの編み糸を使用してよい。繊維402は無機、有機、またはこれらの両方でもよい。
【0036】
図4Bに概略的に示すもう1つの編み糸410の実施例では、多数のポリマー繊維414が中心繊維412に巻きつけられているのが特徴である。中心繊維412は無機繊維または有機繊維でよい。ポリマー繊維414に付随した特定の光学特性を提供しつつ、無機中心繊維412の強度もまた提供するように、無機およびポリマー繊維の両方を含んでいる編み糸410のような編み糸を使用してもよい。例えば、ポリマー繊維は等方性または複屈折性でよい。ポリマー繊維は適切な処理条件で繊維の伸張によるポリマー材料の位置合わせを含む、適した方法で複屈折性を持たせてよい。複屈折性ポリマー繊維は、フィルムに偏光依存特性をもたらす。例えば、フィルムは1つの偏光状態では実質的に散乱透過または散乱反射を示し、直交偏光状態では、実質的に正透過を持つ。
【0037】
フィルムに使用されるポリマー繊維は、典型的には直径約250μm以下であり、さらに直径約5μmまたはそれ以下でもよい。小さなポリマー繊維を個別に取り扱うことは困難である。ただし、ポリマーと無機繊維の両方を含む混合編み糸のポリマー繊維を使用することにより、取り扱いによる損傷が軽減される傾向があるため、ポリマー繊維の取り扱いが容易になる。
【0038】
フィルム
無機繊維で強化された光学フィルムは、少なくとも無機繊維と同じ厚みを持つ。典型的には、光学フィルムは約5mmまでの厚みを持つが、一部の実施例では、厚みがこの値より大きいこともある。別の実施例では、厚みは250μm以下であり、25μm以下の場合もある。多くの用途では、フィルムは実質的に透明であり、入射光の10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下がフィルムに吸収される。透明は透過とは同じではないことに注目しなければならない。これは、透明とは吸収にのみ関係し、反射せずにどれだけの光が透過したかには関係しないからである。
【0039】
一部の実施例では、マトリックスは光学的に等方性である。別の実施例では、マトリックスは光学的に複屈折性でもよい。複屈折性マトリックスを生成する一般的な方法の1つとしては、制御された温度条件の下でマトリックスを例えば2〜10倍またはそれ以上に伸張することが挙げられる。伸張は、繊維に沿っていても、繊維と交差していてもよい。無機繊維を含んだマトリックスは、例えば、繊維が細く切断されている場合でも伸張できる。マトリックスが束の形式の繊維を含んでいる場合は、別の方法として、束と交差する方向にマトリックスを伸張してもよい。
【0040】
前述した方法は、生成される物品の機械特性を強化するため、既存のガラス、セラミックまたはガラス‐セラミック繊維または粒子をポリマー系のマトリックスへ取り込むことを含む。もう1つの方法は、ガラスとポリマーを同時に処理することで、寸法が安定し、剛性を持ち、熱処理可能な複合材料を作り出すことである。ガラスは比較的低い融点を持つため、比較的高い融点を持つポリマーとの同時処理に適している。このような材料を作りだす諸方法については「ポリマー材料の百科事典(Polymeric Materials Encyclopedia)(CRC Press,Inc.1996年)2766項」の「ガラス−ポリマー溶融ブレンド(Glass‐Polymer Melt Blends)(クイン C. J.(Quinn C.J.)、フレイヤー P.(Frayer P.)、およびビール G.(Beall G.))」に記述されている。燐酸(P2O5)ガラスは、400℃をはるかに下回る温度で粘性流を持つことができ、ポリマーの混合形成に十分な低粘性を持つ。共押し出し法の長所は、ポリマー溶融による優れたガラス湿潤、および従来の結合剤を用いることなくガラスとポリマー間に優れた界面接着力をもたらすことである。小さいビーズ、極細径繊維、リボンおよび板を含む、複合材料中のさまざまなガラス構造が示されてきている。
【0041】
同時処理可能なガラスの利用により、ポリマーマトリックスと屈折率を適合させたり、また、強化用ガラス繊維を複合材料に組み込んだ後で、マトリックスポリマーに複屈折性を持たせたりすることができる。同時処理可能なガラスの強化は、複合材料の成形完了後に追加的な熱的および機械的処理(場合によっては複屈折性の誘発を含む)を行なうことができる可能性を提供する。
【0042】
フィルム中の繊維の位置は、例えば図1Bに示すように、無作為でも、または、規則的でもよい。また、フィルム中の位置により、近接する繊維同士の間隔は異なっていてもよい。例えば、図5Aに示す断面のように、フィルム500は、マトリックス504の中に長方形のグリッドパターンとして規則正しく並んだ繊維502を持つ。y方向およびz方向の繊維の間隔を、それぞれhyおよびhzとする。hyおよびhzの値は、同じでも異なっていてもよい。さらに、hyおよびhzの値は、フィルムの巾または厚み全体で均一である必要は無い。
【0043】
マトリックス504内の繊維502の位置は、フィルムの剛性を増すように選択してよい。例えば、図5Bに概略的に示す典型的な実施例では、繊維502はフィルム510のそれぞれの表面に近い位置に2列に置かれている。材料のどの断面でも、最大屈曲応力は、外側の表面で発生する。従って、マトリックス材料よりも一般的に抗張力および/またはヤング率が大きい繊維を表面の近くに置くと、フィルムまたは物品の剛性を著しく増大する。この形態は、2列の繊維502がフィルム510の中心近くに配置されているフィルムの形態での剛性の増大に寄与するであろう。
【0044】
繊維502フィルムがフィルム内で規則正しく置かれている場合には、別のタイプのグリッドパターンを使用してもよい。例えば、フィルム520を概略的に示す図5Cのように、繊維502は六方晶形に配置されてもよい。さらに、y方向の面上の間隔は、フィルムを通じて一定ではなく、ある場所の繊維502の密度は他よりも高いことがある。図5Cに示すような形態では、繊維502による照明の光の散乱が、空間的にフィルム520全体に均一でないことが望ましい場合に有用である。これは、例えばディスプレイに不均一な散乱を提供することで、個別の光源を隠す場合などに使用できる。
【0045】
フィルムは、例えば図1Aおよび図1Bに示すように、x−y面に平行な平面など、平面を持つ。フィルムはまた、入射光に対して望ましい光学効果を提供するように構成された1つ以上の表面を含んでもよい。例えば図6に概略的に示す1つの実施例では、フィルム600は、マトリックス604に埋め込まれた繊維602で形成されており、出力曲面606を持つ。出力曲面606は、表面606を通して送られる光に焦点化または非焦点化光出力を提供する。図示された実施例では、光線608は、屈折曲面606で焦点を結んだ光線の例を表す。他の実施例では、要素600の入力表面610が曲面、または他の表面構造でもよい。さらに、出力表面612に表面構造があり、送られた光はそこを通ってフィルムの外へ出る。このような表面構造の例としては、フレスネルレンズ構造やレンズアレイのような構造が含まれる。これらの構造は、フィルム600を通る光に屈折力を与えるものと見なされる。
【0046】
入力または出力表面は、表面のいずれかまたは両方が構造化されている場合、曲面領域に加え、またはその代わりに直線領域を含むこともある。例えば、図7Aに示す別の概略的な典型的な実施例では、マトリックス704に埋め込まれた繊維702で形成されるフィルム700は、光輝増強表面のようなものとしてプリズム状構造出力表面706が寄与されていることがある。光輝増強表面は、一般的に例えば、バックライト液晶ディスプレイなどに使用されており、ディスプレイパネルを照らす光の円錐角を減らし、それによって、見ている人に対して軸輝度を向上する。図は、フィルム700に入射する2つの光線708および709の例を示す。光線708は、フィルム700に斜めに入射し、構造表面706によりz軸方向に転換される。光線709は、フィルム700に直角またはほぼ直角に入射し、光輝増強表面706により逆反射する。光輝増強表面706は、プリズム構造707が繊維702と平行するように配置してよく、これは図に示すように、x軸にも平行である。別の実施例では、プリズム構造707は繊維702の方向とは少し違った角度で置かれている。例えば、プリズム構造707リブをy−軸と平行、繊維702と直角、またはx−軸とy−軸との間のある角度で置くことができる。プリズム構造707は、マトリックス704と同じ、または異なる材料で形成してよい。
【0047】
構造化表面は、適した任意の方法でマトリックス上に形成してよい。例えば、マトリックスの表面が、ポリマーマトリックスの表面上に望ましい形状を提供するマイクロ複写ツールなどのツールの表面と接触している間に、マトリックスを硬化(cured)したり、硬化(harden)させたりしてよい。
【0048】
繊維702は、フィルムの他の領域にまたがって置いてもよい。図7Aに概略的に示す典型的な実施例では、繊維702は、構造表面706で形成されたプリズム構造707には配置されておらず、フィルム700の本体701にのみに配置されている。別の実施例では。繊維702は別の形で配置されていることもある。例えば、図7Bに示すフィルム720においては、繊維702は、フィルム720の本体701、および構造表面706で形成される構造物707の両方に配置されている。さらに別の実施例では、図7Cに示すように、繊維702は、フイルム730の構造707にのみ配置され、フィルム730の本体701には配置されていない。
【0049】
上述のものに加え、別のタイプの構造表面を使用してもよい。例えば、構造表面は散乱表面でもよい。
【0050】
もうひとつの発明の典型的な実施例を図7Dに概略して示す。ここでは、フィルム740がマトリックス704に埋め込まれた繊維702を保持している。この特定の実施例では繊維702aの一部がマトリックス704の中に完全に埋め込まれておらず、マトリックス704の表面746を貫通している。この配置では、繊維702aと空気、または他の媒体、フィルム740の外部との間に光学的な接面あり、繊維702aを通る光は光学的に散乱する結果となることがある。
【0051】
無機繊維は、高い抗張力とヤング率を持つため、多くのポリマー材料に比べて比較的剛く、さらに無機繊維で強化されたポリマーフィルムは繊維で強化されていないポリマーフィルムと比較し、通常は剛い。結果として、繊維強化フィルムは、大型ディスプレイにいっそう適するようになる。さらに、無機繊維の存在は機械安定性の向上につながり、熱膨張係数を下げるため、ディスプレイ使用中の温度上昇に伴う光学フィルムのゆがみ発生の可能性を引き下げる。
【0052】
高い抗張力での用途の一例としては、液晶(LCD)パネルでガラスシートの代わりに繊維強化フィルムが使われたものがある。従来のLCDパネルは、薄い液晶の(数十ミクロン程度までの)層で分離された2枚のガラスカバーシートが用いられている。カバーシートの内表面にはパターン化した導電層があり、ディスプレイの多数のピクセルの電極となる。ガラス上の金属線が、パターン導電層へ電気接続を提供する。ディスプレイ寸法が大型化すると共に、ガラスカバーシートの重量が次第に増し、費用も増大するため、繊維強化カバーシートで置換できる可能性がある。しかし、このようなカバーシートは、例えば150℃〜180℃を超える高い処理温度に耐えなければならない。パターン導電層、導電層に接続している金属線、およびポリマーカバーシートは異なる熱膨張係数(CTE)を持つため、カバーシートが大きな温度の振れにさらされると、導電層の剥離や、パターン導電層に接続する金属線の破断につながることにもなる。ガラス繊維のCTEはポリマー材料のCTEよりも小さいため、ガラス繊維強化は、ポリマーシートの膨張を抑える方法として提案されている。ポリマーシートでのガラス繊維の使用は、通常、繊維の抗張度および繊維とポリマーマトリックスとの機械的および化学的結合が優れていることで、それらの2つの間のすべりがほとんど無いことに依存する。これに従い、例えば、シラン結合剤を使って繊維とポリマーマトリックスを結合させるなど、繊維の表面に化学的結合剤を用いるのが一般的である。また、望ましい抗張度と低いCTEを提供するために、繊維密度(繊維と垂直にフィルムを横切る方向に測定した距離単位当たりの繊維の数)は比較的高い。
【0053】
対照的に、ここに記述する繊維強化光学フィルムの一部の実施例では、繊維密度は比較的低くすることができ、特定の用途に必要な剛性を得るには十分だが、前の節で前述したLCDアプリケーションのような高い抗張度を必要としない。結果として、必要な繊維数が少なくなり、これはポリマー材と繊維材の屈折率にわずかの差がある場合のフィルムに起因する曇り(散乱的に透過する透過光の割合)を減少させる。さらに、いくつかの実施例では、強度ではなく剛性が主たる関心事である場合は、繊維とマトリックスとの強い接着への要求が減少するため、繊維とマトリックスとを結合する結合剤を省略してもよい。しかし、結合剤を省略した場合でも、無機繊維を含むフィルムのCTEはポリマーマトリックス単独のCTEよりも小さい。加えて、結合剤の省略は結合剤に起因する屈折率の一致の問題を軽減する。
【0054】
フィルム中の繊維の位置決めおよび断面の配置は、非等方性な機械および光学特性につながることがある。例えば、無機繊維を、例えばx方向など、1方向のみに沿って配置した場合、フィルムはxz面に平行な区域に沿った屈曲、つまりx軸に平行でない方向への屈曲に対する抵抗性が高くなる。しかし、yz面に平行な区域でのフィルムの屈曲への抵抗が少なくなるため、フィルムは1方向での剛性が、他の方向よりもより少なくなることがある。無機繊維をx軸、y軸の両方に平行に配置すると、フィルムはより等方的に剛性が向上するが、ある方向での剛性は、その方向に置かれた繊維の数に依存する。x方向に平行に置かれた繊維の数がy方向に置かれた繊維の数と等しくない場合は、x方向の剛性とy方向の剛性は異なることがある。x方向とy方向の剛性が等しい場合、この場合の剛性は「擬似等方」と定義してもよい。さらにx軸とy軸に平行でない方向の剛性は、これらの軸の1つと平行な剛性と同じではないことがある。もちろん、無機繊維は、フイルムの中のいずれの方向にでも配置でき、x軸とy軸のいずれかまたは両方に沿って位置合わせする必要はない。例えば、いくつかの繊維ではx軸とy軸の両方と非平行の方向に位置合わせしてもよい。
【0055】
さらに、剛性に加えて、抗張度、熱膨張係数および引裂強度を含む、フィルムの他の機械特性も非等方性としてよい。また、光を散乱する繊維が、無機質、ポリマー系またはその両方が1方向にのみ位置合わせされている場合、散乱のような光学特性も非等方性となることがある。もちろん、これらのフィルム特性は、これらの特性に寄与する繊維が交差していれば擬似等方性となり、または繊維が異なる方向に多様に位置合わせされていれば、より等方性となる。
【0056】
マトリックス、繊維およびフィルムに加えられる添加剤を含むフィルム成分は、選択された仕様によってフィルムの光学特性に影響することがある。例えば、さまざまなフィルムの成分を、全て入射光に対して透明であるように選択してもよい。さらに、光を吸収するため、染料または顔料のような添加剤が提供されてもよく、ポリマーが光を吸収するような分子成分を含んでもよい。いくつかの典型的な実施例では、例えば染料、顔料または分子成分を含む基盤フィルム層を引っ張ることにより、結果として直角偏光状態上の1つの偏光状態で好みの吸収を得られるようにして、染料、顔料および分子成分の位置合わせをしてよい。光学フィルムは、基盤フィルム層の上に1つ以上の繊維の層を適用して作成できる。特定の波長範囲の光を吸収するように、存在する場合は、染料、顔料または分子成分が選択される。別の実施例では、添加剤をマトリックスそのものに投入できる。
【0057】
染料のようないくつかの添加剤で、入射光の周波数を、例えば蛍光に変えることができる。1つの例では、マトリックスにUV光を吸収し、可視光を放出するような染料をに含浸させてもよい。
【0058】
フィルムは、色選択的散乱機能を持つことができる。例えば、この機能は、繊維の屈折率とマトリックスの屈折率とが一致した時に波長λ0を選択することによって起こる。繊維とマトリックス材料の分光が異なる場合、屈折率の差は、波長がλ0から離れるに従い増大する。散乱がほとんど無いか、または散乱を中和したい場合は、一般的に、フィルムを通る光の波長の範囲の真ん中近くにλ0を設定する。つまり、約400nm〜700nm範囲の可視光がフィルムを通過する場合、λ0は500nm〜600nmの範囲のどこかに設定するとよい。しかし、もし他の波長よりも一つの波長でのフィルム散乱光が望ましい場合は、λ0を適宜移動させてもよい。例えば、赤や緑の光よりも青色の光の散乱がより多く望まれている場合は、λ0をより長い波長、例えば600nm〜700nmに設定することで、青色の光の屈折率の差が400nm〜500nmの範囲で増大し、散乱が増える。
【0059】
光学フィルム中の異なる諸材料の屈折率は、温度とともに変化する。繊維強化フィルムの光学特性は、少なくとも部分的にマトリックスと繊維材料の間の屈折率の差の程度に依存するため、各材料間の屈折率の差が温度変化する間、望まれる範囲に維持されない場合は、フィルムの光学特性を温度と共に変化させることが可能である。マトリックス材料と無機繊維が室温(20℃)で屈折率が一致した例を考えてみる。しかし、dn/dTの値、つまり屈折率nが温度Tとともに変化する割合が2つの材料で異なる場合、高い使用温度、例えば50℃、では屈折率が異なることになる。従って、いくつかの典型的な実施例では、特定の使用温度範囲でポリマーと無機材料についてのdn/dTの値の差が少なくなるように、マトリックスとガラス繊維の材料が選ばれる。
【0060】
他のいくつかの実施例では、2つの材料のdn/dTの値の差を増やし、フィルムの温度感受性をより高くすることが望ましい。例えば、いくつかの一般的な建築の用途では、フィルムは温度感受性の透過を持つことが望ましい。図に示すように、ビルや温室の窓に温度依存性を持たせ、一定の温度以上に温度が上昇したら窓を透過する光の量を減らすことが望ましい。
【0061】
ポリマーマトリックスおよび無機繊維の材料における光散乱は、異なる波長でのそれぞれの材料の屈折率の違いに帰結し、短い波長では、屈折率はより高くなる。従って、屈折率の正確な一致は、1つの波長でのマトリックスと無機繊維材料の間で作成できるが、2つの材料の光散乱(dn/dλ、ここでλは真空波長)が等しくない場合、2つの屈折率の差は、波長が一致した波長から離れれば離れるほど増大する。従って、いくつかの実施例では、屈折率が一致する波長λmを、目的の波長範囲の中心近くになるように波長を設定することが望ましい。このように、400nm〜700nmの波長をカバーするディスプレイで使用される光学フィルムでは、λmの値は500nm〜600nmの範囲であってよい。加えて、ポリマーと無機繊維の材料のいくつかの組み合では、dn/dλの値は他の組み合わせよりも接近している。
【0062】
製造工程
繊維強化光学フィルムの製造には異なる複数の方法が使用できる。一部の方法は一括処理で行い、別の方法では連続処理で行う。前述した1つの典型的な実施例では、無機物質がポリマーマトリックスよりも低い融点を持ち、2つの材料物を一括押し出しする。この方法では、マトリックス中の無機繊維、液滴またはリボンの位置は、ポリマー/無機溶融物で発生する相分離によって決められる。
【0063】
他の典型的な実施例として、連続処理に適した装置800を模式的に図8Aに示す。例えば短繊維、織物、不織布などの無機繊維層802をロール804から引き出し、別のロール808から引き出した裏打ち層806の上に置く。樹脂810を貯槽812から引き出した無機繊維層802の上に適用し、コーター814が、樹脂の層816を形成する。いくつかの実施例では、樹脂810が無機繊維層802を適用する前に、裏打ち層806にも適用される。樹脂810は、繊維層802に含浸する。樹脂810は、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーでもよい。コーター814は、いずれの適したタイプのコーターであってもよく、例えば、ナイフエッジコーター、コンマコーター(図示)、バーコーター、ダイコーター、スプレーコーター、カーテンコーター、高圧射出機または同等のものでよい。その他の事項を考慮のうえ、適用条件での樹脂の粘度により、適切な方法または諸方法を決める。塗布方法と樹脂の粘度によってもまた、マトリックス樹脂が強化材に含浸される段階で、強化材から気泡を除去する速度と程度に影響する。
【0064】
完成したフィルムが低散乱である場合、この段階で繊維の間の空間を完全に樹脂で埋めるようにすることが重要である。空隙または気泡が樹脂に残されると、散乱の中心として作用するからである。気泡の発生を減らすには、個別にまたは組み合わせで異なる方法が適用できる。例えば、フィルムを機械的に振動させ、樹脂810を繊維層802全体によく行き渡らせるように仕向ける。機械的振動には、例えば、超音波源を使うことができる。加えて、フィルムを真空に曝して気泡を樹脂810から引き出すことができる。これは、塗布中に同時に行うか、またはその後で、例えば任意に、脱気装置818で行なうことができる。
【0065】
フィルム中の樹脂810は、固化装置820で固化される。固化には、硬化、冷却、架橋およびポリマーマトリックスを固体状態に至らせるようなその他の処理方法が含まれる。いくつかの実施例では樹脂810を硬化するために樹脂810に対して、違った形のエネルギーを適用し、それらには、熱および圧力、UV照射、電子線および同等のものが含まれるが、これらに限定されない。別の実施例では樹脂810は冷却または架橋で固化される。一部の実施例では固化されたフィルム822は取り出しロール824に回収および貯蔵できるほどに十分にしなやかである。また、別の実施例では、固化されたフィルム822がロールに巻くには硬すぎるため、例えばフィルム822を貯蔵するためのシートに切断するなど、他の方法で貯蔵される。
【0066】
裏打ち層806は、フィルムに対してキャリアまたはプレマスク型基板の役割を果たし、またはいくつかの望ましい光学特性を提供する。例えば、裏打ち層806は光学的に等方性または複屈折性であったり、または吸収性染料もしくは顔料を装填できたり、または、本来的に吸収因子を含んでいたりすることもある。裏打ち層は、物理的な支持および固化に先立ち、ガスおよび/または水分の浸入を制限する。他の実施例では、裏打ち層806は剥ぎ取り可能な保護層として、貯蔵および運搬中のフィルムの保護を行なう。
【0067】
他の層をフィルムに付け加えることもできる。例えば、上部保護層826をフィルムに加えることができる。さらに追加の繊維層および樹脂層をフィルム加えて多層繊維強化フィルムを作ることができる。追加の繊維層および樹脂層は、第一の樹脂層816が固化する前または第一の樹脂層816が固化した後に付加できる。ある実施例では、第一樹脂層816はもう1つの樹脂層および繊維層の適用前に部分的に固化している。
【0068】
いくつかの実施例では、フィルムに適用されている1つ以上のシートが、織物と平行でない方向に適用されている場合がある。そのようなフィルムの1つの例として、繊維を織物と交差するように置いた繊維トウが挙げられる。この場合には、交差繊維シート832がシートフィーダ834を使用してフィルム822に被せて適用され、装置830の概略図を図8Bに示す。切断工具836は、フィルム822をシート838として切り出すのに使われる。シート838は、貯蔵のために積み重ねられる前に、固化ステージ820で固化される。
【0069】
いくつかの実施例では裏打ち層806に適用する前に、繊維層802は樹脂810で含浸される。事前に含浸した繊維は「プレプレッグ」と呼ばれる。プレプレッグの調製に使用される装置900の典型的な実施例の概略図を図9に示す。繊維層802はロール804から引き出され、樹脂810を含む貯槽906に入れられる。多数のローラー908に繊維層802を通し、層802の繊維の間の空間に樹脂810をよく含浸させる。次に、生成したプレプレッグ910は槽から引き出され、さらに上述の通り、裏打ち層806に適用される。真空および/または超音波エネルギーを用いて樹脂810から更に気泡を除去する。
【0070】
繊維強化フィルムは固化前、または固化中に成形または造形される。例えば、構造表面を持たすためのフィルムの成形の典型的な実施例を図6および図7A〜図7Dに示す。フィルムの成形に使用する装置1000の1つの実施例を図10に模式的に示す。フィルム1002は、ガイドロール1006により成形ロール1004に導かれ、任意の加圧ロール1008により、成形ロール1004に押し付けられる。成形ロール1004は、形状表面1005を持ち、それがフィルム1002に刻印される。成形ロール1004と圧力ロール1008の間隔は、フィルム1002への形状表面1005の食い込みの深さを制御するため設定された距離で調整される。
【0071】
いくつかの実施例では、フィルム1002は、成形ロール1004に接触中に固化、または少なくとも部分的に固化している。例えば、硬化可能なポリマーの場合には、マトリックスはUV光またはエネルギー源1010からの熱で硬化する。他の実施例では、成形ロール1004を高温で運転する。フィルム1002は、加熱ロール1004と密接に接触しているため、伝導的に加熱され、その熱により硬化する。別の典型的な実施例では、例えば熱可塑性ポリマーなどのように、冷却によりマトリックスが固化する。そのような例では、ロール1004は比較的低い温度に保たれ、これにより、フィルムまたは樹脂1002がロール1004に接触している間に冷却される。
【0072】
成形フィルム1012は、もう1つの他のロールの上で貯蔵されるか、または貯蔵用にシートに切断される。任意に、成形フィルム1012は更に光学的に処理され、例えば1つ以上の層を付け加えることもできる。
【0073】
熱可塑性プラスチックを基本とした複合材料は射出成形される。この処理の1つの特別な実施例は、1‐3mm長の繊維を含んだペレットを均一に供給材の樹脂に散らし、射出成形機に供給することである。溶融したポリマー/繊維の混合物を分割型の孔に射出し、固化または硬化させ、完成複合材料が型から取り出される。複合材料を作成するための3つの一般的な熱可塑性樹脂マトリックスポリマーは、ポリプロピレン、ナイロン、およびポリカーボネートである。複合材料を作成するための熱可塑性プラスチック/繊維混合物の射出成形については、D.ハル(D.Hull)著、「複合体物質概要(An introduction to Composite Materials)」(ケンブリッジ・ユニバーシティ・プレス(Cambridge University Press)1990年)に記述されている。
【0074】
プルトルージョンは、特に熱硬化性マトリックス樹脂を基材とした複合材料を作成するためのもう1つの方法である。プルトルージョン法では、繊維強化材を液状マトリックス樹脂に含浸させ、さらに加熱した型を通して引っ張る。型により、余分の樹脂を減らし、最終の複合材料の断面形状を決め、樹脂マトリックスの硬化を誘導する。また、別の種類の方法も実施されており、例えば加熱された型に先立って樹脂槽で含浸を行なう代わりに、プルトルージョンの型において樹脂を強化材に直接射出することである。プルトルージョン法については、R.G.ウェザーヘッド(R.G. Weatherhead)著「FRP技術繊維強化樹脂システム(FRP Technology Fiber Reinforced Resin Systems)」(応用科学出版社(Applied Science Publishers)1908年)に記述されている。
【0075】
本発明の選抜実施例を以下に記述する。これらの例は、限定的なものではなく、発明の様々な局面を例示するものに過ぎない。表Iは例1〜15で使われた、異なる無機繊維のサンプルの関連情報の要約を示す。
【0076】
【表1】
【0077】
材料A‐Eはガラス繊維織物であり、材料Fはセラミック繊維織物である。編み糸の詳細および重量は製造者文献から取得した。BGFインダストリー(BGF Industries,Inc.)はノースカロライナ州グリーンズボロ(Greensboro,NC)にあり、へクセルリインフォースメンツ(Hexcel Reinforcements Corp.)はサウスカロライナ州アンダーソン(Anderson,SC)にあり、又3M社(3M Company)はミネソタ州セントポール(St.Paul,MN)にある。各繊維材料は、繊維を覆うサイズ剤を伴って納入業者から受け入れた。サイズ剤とは、繊維上の層で、しばしば澱粉、潤滑剤またはポリビニルアルコールなどの水溶性のポリマーから形成され、繊維の処理または製織を円滑化するために使用される。下記に記述の実施例では、サイズ剤は、繊維がポリマー基質に埋め込まれる前に繊維上に残された。この延長として、これらの繊維は、繊維とポリマー材料の間を結合する結合剤が無い状態で複合材料サンプルに含まれることとなった。
【0078】
表Iに記載されている繊維サンプルの屈折率(RI)は透過型単偏光(TSP)を用いて対物20x/0.50、および透過型ゼルニケ位相コントラスト(PCZ)は対物20x/0.50で測定した。繊維サンプルは、屈折率測定用に、剃刀の刃を用いて繊維を切断した部分を用意した。繊維はガラス板上の各種RI油にマウントし、ガラスカバースリップで覆った。サンプルを、ツァイスアクシオプラン(カールツアイス(Carl Zeiss)、ドイツ)で分析した。RIオイルの検定は、ニューヨーク州ロチェスター、ミルトンロイ社(Milton Roy,Inc.)製ABBE−3L屈折計を用い、測定値を適宜調整した。位相差顕微鏡を伴ったベッケ線法がサンプルのRIの測定に使われた。nDの値に対する見かけ上のRIは、ナトリウムD−ライン、589nm波長における屈折率では、それぞれのサンプルにおける精度は±0.002であった。
【0079】
実施例に使われた各種樹脂の情報の要約を表IIに示す。
【0080】
【表2】
【0081】
表IIのすべての成分はDarocur1173(光開始剤)を例外として光重合樹脂であって、硬化することによって架橋する。CN963A80はトリプロピレングリコールジアクリレートと混合されたウレタンアクリレートオリゴマーである。CN120はエポキシアクリレートオリゴマーである。エベクリル(Ebecryl)600はビスフェノール‐Aエポキシジアクリレートオリゴマーである。SR601とSR349はエトキシ化ビスフェノール‐Aジアクリレートである。SR351はトリメチロールプロパントリアクリレートであり、さらにSR306はトリプロピレングリコールジアクリレートである。RDX51027はオリゴマー臭素化エポキシアクリレートである。
【0082】
サイテック・サーフェィス・スペシャリティ(Cytec Surface Specialities)はベルギーのブリュッセル(Brussels,Belgium)にあり、サートーマー社(Sartomer Company,Inc.)はペンシルバニア州エクストン(Exton,PA)にあり、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals Corp.)はニューヨーク州テリータウン(Tarrytown,NY)にある。サートーマー物質の屈折率は製造業者の資料から入手した。他の物質の屈折率はABBEマークIIデジタル屈折計(ABBE Mark II Digital Refractometer)(波長589.3nm)を20℃で使用して測定した。RDX51027は20℃では固体なので、屈折率は他の既知の成分の屈折率を使って測定された樹脂成分から逆算して見積もった。
【実施例】
【0083】
(実施例1)
樹脂構成成分1は、74.20重量%の成分H、24.82重量%の成分Mと0.986重量%の成分Nを用いて形成した。樹脂構成成分1(硬化前)の屈折率は20℃および波長589.3nmにおいて、ABBEマークIIデジタル屈折計で1.4824と測定された。硬化後(繊維なし)の樹脂構成成分1の屈折率は波長632.8nmにおいて、メトリコン2010型プリズムカップラーで1.5019と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0461であった。
【0084】
実施例1の複合材料は、材料Aの切れ端(約75mmX75mm寸法)を、厚さ4.7mm(3/16インチ)フロートガラスシートの上の厚さ100μm(4mil)のポリエステルシートの上に置いて作成した。構成成分1の樹脂は、電子レンジで約70℃まで加熱した。温かい樹脂の約1.8gを繊維ガラスシートの真ん中に置き、第2のシートである厚さ100μmのポリエステルをその上に置き、さらに第2の厚さ4.7mmのフロートガラスを第2のポリエステルシートの上に置いた。ガラス、ポリエステル、樹脂、および繊維の組み合わせを樹脂サンドイッチと呼ぶ。
【0085】
複合材料を硬化する前に気泡の量を減らすため、樹脂サンドイッチを89℃の真空オーブンに入れ、699mmHgで8分間、樹脂および繊維ガラスの脱気を行った。
【0086】
樹脂サンドイッチを真空オーブンから取り出してから、2つの200μm(0.008インチ)、隙間ゲージを樹脂サンドイッチの両端のポリエステルフィルムの2枚のシートの間に置き、2つのバインダークリップをこれらの両端に使って樹脂サンドイッチを一緒に押さえ、樹脂サンドイッチの厚みを固定した。次に、ランプ出力を100%とした二色性反射板付きのフュージョンF600Dランプの下を毎分約9.1m(30フィート)で動く移動ベルトに載せ、樹脂サンドイッチを硬化させた。最終的に測定するエネルギー密度を、EIT(スターリング、バージニア州(Sterling,VA))のPowerMapで測定し、表IIIに示す。同じ条件で個別に三回測定し、平均のエネルギー密度を示す。
【0087】
【表3】
【0088】
硬化した複合材料はガラスおよびポリエステルフィルムから分離された。測定された複合材料1の光学特性を表IVに示す。
【0089】
(実施例2)
樹脂構成成分2は、30.01重量%の成分H、54.92重量%の成分G、14.06重量%の成分L、1.01重量%の成分Nを用いて形成した。波長589.3nm、20℃でABBEマークIIデジタル屈折計で、構成成分2(硬化前)の屈折率は1.5336と測定された。硬化後(繊維無し)の構成成分2の波長632.8nmでの屈折率は、メトリコンモデル2010プリズムカップラーで1.5451と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0029であった。
【0090】
実施例2の複合材料は、実施例1(材料A)と同様の繊維ガラスと樹脂構成成分2を使用して作成された。この複合材料の作成は、実施例1に記述するものと同じ過程および条件に従った。結果として測定された複合材料2の光学特性を表IVに示す。
【0091】
(実施例3)
樹脂構成成分3は、29.79重量%の成分H、48.85重量%の成分G、5.07重量%の成分K、15.25重量%の成分L、1.04重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分3の屈折率(硬化前)は、20℃、波長589.3nmで1.5315と測定された。硬化後(繊維無し)の屈折率は波長632.8nmで1.5451と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0029であった。
【0092】
実施例3の複合材料は、実施例1(材料A)と同様の繊維ガラスと構成成分3とを使用して作成した。この複合材料の作成は、真空オーブン内での時間が8分ではなく19分であった以外は、実施例1に記述するものと同じ過程および条件に従った。結果として測定された複合材料3の光学特性を表IVに示す。
【0093】
(実施例4)
樹脂構成成分4は、74.17重量%の成分H、24.83重量%の成分L、1.00重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分4(硬化前)の屈折率は20℃、波長589.3nmで1.4998と測定された。硬化後(繊維無し)の屈折率は波長632.8nmで1.5140と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.054であった。
【0094】
実施例4の複合材料は、2インチ(5.1センチ)巾のネクステル(Nextel)312セラミックテープ(材料F)の切れ端(約50mm×63mm寸法)を用意し、4.7mm厚のフロートガラスで裏打ちした100μm厚のポリエステルシートの上に置いて作成した。構成成分4の樹脂を電子レンジ約70℃で加熱した。温かい樹脂の約2.9gをセラミック繊維シートの真ん中に置き、第2のシートである厚さ100μmポリエステルをその上に置き、さらに第2の厚さ4.7mmのフロートガラスを第2のポリエステルシートの上に置いた。ガラス、ポリエステル、樹脂、およびネクステルテープの組み合わせを樹脂サンドイッチと呼ぶ。
【0095】
複合材料を硬化する前に気泡の量を減らすため、樹脂サンドイッチを60℃の真空オーブンに入れ、699mmHg(93.2kPa)で10分間、樹脂と繊維の脱気を行った。間隙ゲージ、樹脂サンドイッチを留めるためのバインダークリップは用いなかった。次に、樹脂サンドイッチを実施例1の記述と同様に硬化させた。硬化後の複合材料をガラスとポリエステルフィルムから分離した。測定された複合材料4の光学特性を表IVに示す。
【0096】
(実施例5)
樹脂構成成分5は、74.25重量%の成分K、24.74重量%の成分I、1.02重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分5(硬化前)の屈折率は20℃、波長589.3nmで1.5420と測定された。硬化後(繊維無し)の屈折率は波長632.8nmで1.5597と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0083であった。
【0097】
実施例5の複合材料は2インチ巾のネクステル312セラミックテープ(材料F)と樹脂構成成分5を使って作成された。この複合材料の作成は使用した樹脂の量が3.0gであり、真空オーブンの中の時間が8分であった以外は、実施例4に記述のものと同じ工程および条件に従った。結果として測定された複合材料5の光学および機械特性を表IVおよびVに示す。
【0098】
(実施例6)
樹脂構成成分6は、49.46重量%の成分J、49.58重量%の成分L、0.99重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分6(硬化前)の屈折率は20℃、波長589.3nmで1.5682と測定された。硬化後の屈折率(繊維無し)は波長632.8nmで1.5821と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0141であった。
【0099】
実施例6の複合材料は2インチ巾のネクステル312セラミックテープ(材料F)および樹脂構成成分6を使って作成された。複合材料の作成は、使われた樹脂の量が3.0g、真空オーブンの温度が89℃,真空オーブンの中の時間が8分であった以外は、実施例4に記述のものと同様の工程および条件に従った。結果として測定された複合材料6の光学特性を表IVに示す。
【0100】
(実施例7)
樹脂構成成分7は、39.58重量%の成分J、59.41重量%の成分L、0.99重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分7(硬化前)の屈折率は20℃、波長589.3nmで1.5574と測定された。硬化後の屈折率(繊維無し)は波長632.8nmで1.5766と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.086であった。
【0101】
実施例7の複合材料は2インチ巾のネクステル312セラミックテープ(材料ID F)および樹脂構成成分7を使って作成された。この複合材料の作成は、使われた樹脂の量が2.96g、真空オーブンの温度が70℃であった以外は、実施例4に記述のものと同様の工程および条件に従った。結果として測定された複合材料7の光学特性を表IVに示す。
【0102】
(実施例8)
実施例8に使われた樹脂の構成成分は実施例1に列挙されたものと同じであった。複合材料は材料Bおよび樹脂構成成分1を使って作成された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0471であった。この複合材料の作成は、使用された樹脂の量が1.7gであったことおよび樹脂サンドイッチが分離される前に冷却されたこと以外は、実施例1に記述のものと同じ工程と条件に従った。結果として測定された複合材料実施例8の光学特性を表IVに示す。
【0103】
(実施例9)
実施例9に使われた樹脂構成成分は実施例3で列挙されたものと同じであった。複合材料は材料Bの繊維および樹脂構成成分3を使って作成された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0039であった。この複合材料の作成は、使われた樹脂の量が1.9gであった以外は、実施例1に記述のものと同様の工程および条件に従った。結果として測定された複合材料9の光学特性を表IVに示す。
【0104】
(実施例10)
樹脂構成成分10は、31.07重量%の成分H、50.66重量%の成分G、2.63重量%の成分K、14.64重量%の成分Lと1.00重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分10(硬化前)の屈折率は20℃、波長589.3nmで1.5299と測定された。硬化後の屈折率(繊維無し)は波長632.8nmで1.5444と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0046であった。
【0105】
実施例10の複合材料は実施例8と同様の繊維(材料B)および樹脂構成成分10を使って作成された。この複合材料の作成は、実施例1に記述のものと同様の工程および条件に従った。結果として測定された複合材料10の光学および機械特性を表IVおよびVに示す。
【0106】
(実施例11)
樹脂構成成分11は、18.05重量%の成分H、35.93重量%の成分G、22.06重量%の成分K、22.96重量%の成分Lと1.00重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分11(硬化前)の屈折率は20℃、波長589.3nmで1.5371と測定された。硬化後の屈折率(繊維無し)は波長632.8nmで1.5519と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0001であった。
【0107】
実施例11の複合材料は材料Dおよび樹脂構成成分11を使って作成された。この複合材料の作成は、実施例1に記述のものと同様の工程および条件に従った。結果として測定された複合材料11の光学および機械特性を表IVおよびVに示す。
【0108】
(実施例12)
実施例12で使われた樹脂構成成分は実施例11で列挙されたものと同じであった。複合材料は材料Eおよび樹脂構成成分11を使って作成された。複合材料の作成は、使われた樹脂の量が1.9gであった以外は、実施例1の記述と同様の工程および条件に従った。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0021であった。結果として測定された複合材料12の光学特性を表IVに示す。
【0109】
(実施例13)
実施例13で使われた樹脂構成成分は実施例11で列挙されたものと同じであった。複合材料は材料Cおよび樹脂構成成分11を使って作成された。複合材料の作成は、実施例1の記述と同様の工程および条件に従った。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0001であった。結果として測定された複合材料13の光学および機械特性を表IVおよびVに示す。
【0110】
(実施例14)
樹脂構成成分14は、17.03重量%の成分H、41.98重量%の成分G、39.99重量%の成分Kと1.00重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分10(硬化前)の屈折率は20℃、波長589.3nmで1.5359と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0004であった。硬化後の屈折率(繊維無し)は波長632.8nmで1.5516と測定された。
【0111】
実施例14の複合材料は材料Cおよび樹脂構成成分14を使って作成された。この複合材料の作成は、樹脂サンドイッチを分離する前に冷却したこと以外は、実施例1に記述のものと同様の工程および条件に従った。結果として測定された複合材料14の光学特性を表IVに示す。
【0112】
(実施例15)
樹脂構成成分15は、21.48重量%の成分H、44.67重量%の成分G、22.26重量%の成分K、10.57重量%の成分Lと1.00重量%の成分Nを用いて形成した。構成成分10(硬化前)の屈折率は20℃、波長589.3nmで1.5356と測定された。硬化後の屈折率(繊維無し)は波長632.8nmで1.5505と測定された。硬化後のポリマーと埋め込まれた繊維との屈折率の差の程度、Δn、は0.0015であった。
【0113】
実施例15の複合材料は材料Cおよび樹脂構成成分15を用いて作成された。この複合材料の作成は、実施例1に記述のものと同様の工程および条件に従った。結果として測定された複合材料15の光学特性を表IVに示す。
【0114】
実施例16−21は繊維強化を含まない硬化したポリマーに関する。
【0115】
(実施例16)
実施例14に記載された複合材料14において硬化に先立って過剰の樹脂が繊維強化の端を越えて延びている部分がある。硬化後、この部分は自由に独立したフィルムとして固化された。複合材料14の繊維強化から自由なこの部分が実施例16として分析された。実施例16のための全ての関連するサンプル作成情報は実施例14に記述されている。実施例16の樹脂の測定された光学特性を表IVに示す。
【0116】
(実施例17)
実施例17の樹脂構成成分は、30.08重量%の成分H、54.83重量%の成分G、14.08重量%の成分Kと1.00重量%の成分Nを用いて形成した。硬化前の樹脂の屈折率は20℃および波長589.3nmで1.5323と測定された。硬化後(繊維無し)の屈折率は波長632.8nmで1.5462と測定された。
【0117】
実施例17の複合材料は実施例8と同じファイバーグラス(材料B)および比較実施例2に列挙された構成成分の樹脂を使って作成された。この複合材料の作成は、実施例1に記述のものと同様の工程および条件に従った。サンプルが硬化された後、ファイバーグラス強化の外側に過剰の樹脂の部分があった。実施例17のデータはファイバーグラス強化を超えて延びていた固化した樹脂の分析によって作成された。実施例17の樹脂の測定された光学特性を表IVに示す。
【0118】
(実施例18)
実施例18のデータは実施例2の複合材料の一部を分析して作成され、実施例2ではサンプルを作成した時に余分の樹脂があった。実施例2で樹脂が硬化される前に、過剰の樹脂がファイバーグラス強化の端を越えて延びた繊維強化のない、樹脂だけの部分があった。硬化後、その部分は自由に独立したフイルムとして固化していた。樹脂が固化した、繊維強化を含まない、この部分が実施例18のデータを作成するために分析された。このように実施例18のサンプル作成の情報の全ては実施例2に記述されている。実施例18の樹脂について測定された光学特性を表IVに示す。
【0119】
(実施例19)
実施例19の硬化された樹脂サンプルは樹脂(実施例10に列挙したものと同じ構成成分)を電子レンジで約60℃に加熱し、約1〜2gを6mm(1/4インチ)の金属板の上に置かれた100μm厚のポリエステルシートの真ん中に注いで作成された。二つのスペーサー、それぞれ約0.43mm厚、が約50〜75mm(2インチ〜3インチ)離して樹脂の各側に置かれた。そうすることで平らにされた後も樹脂はスペーサーに触れない。第二の100μm厚のポリエステルシートが樹脂とスペーサーの上に置かれた。金属板は二枚のポリエステルフィルムシート間の樹脂とスペーサーとともに手動式ラミネーターに掛けられ、樹脂は平らにプレスされた。金属板、ポリエステル、および樹脂の組み合わせは修飾樹脂サンドイッチと呼ばれる。修飾樹脂サンドイッチは次に実施例1に記述の方法と同じ方法で硬化された。実施例19の樹脂の測定された光学および機械特性を表IVおよびVに示す。
【0120】
(実施例20)
実施例20の硬化した樹脂サンプルは、樹脂が実施例11に列挙したものと同じ構成成分を持っていたこと以外は、実施例19の硬化した樹脂サンプルと同じ方法で作成された。結果として測定された実施例20の樹脂の光学および機械特性を表IVおよびVに示す。
【0121】
(実施例21)
実施例21のための硬化された樹脂サンプルは、実施例5の樹脂構成成分を電子レンジで約50℃まで加熱し、その約1〜2gを4.7mm(3/16インチ)厚のフロートガラスシートの上の100μm厚ポリエステルシートの真ん中に注いで、作成した。二個のスペーサー、それぞれ約0.43mm厚のものを樹脂のそれぞれの側に置き、約50mm〜75mm(2インチ−3インチ)離して、平らにされても樹脂がスペーサーに触れないようにした。第二の100μm厚のポリエステルシートを上に置き、この第二のポリエステルシートの上に4.7mm(3/16インチ)厚のフロートガラスを置いた。二枚のガラスがゆっくり押し付けられると二つのスペーサーが樹脂の望む厚さを作り出した。ガラス、ポリエステル、および樹脂の組み合わせは樹脂サンドイッチと呼ばれる。次に樹脂サンドイッチは実施例1の記述と同じ方法で硬化された。結果として測定された実施例21の樹脂の光学および機械特性を表IVおよびVに示す。
【0122】
異なる実施例の複合材料が光の透過、反射、曇りおよび色について試験された。曇り(H)と透明度(C)の測定はカタログ番号4723、BYKガードナー社製ヘーズガードプラス(BYK Gardner Haze-Gard Plus)で行なった。これはメリーランド州シルバースプリング(Silver Spring, Maryland)のBYKガードナー社より市販されている。透過と曇りのレベルは「透明プラスチックのための曇りと光の透過の標準試験法」と題するASTM−D1003に従って集められた。機器は測定中、空気を対照とした。光透過(T)の測定は透過の割合として与えられる。曇りはそれを通して見る対象物のコントラストを低下させる原因となる品目による光の散乱である。曇り、H、は散乱した、入射光線の方向からある一定の角度以上でその方向がずれるような散乱した透過光の割合で示される。このテスト方法では、特定の角度は2.5度である。透明度、C、はその方向のずれが2.5度以下であるような散乱した透過光の割合で示す。
【0123】
1976 CIE L*a**b**カラースペースでの色はBYKガードナーカラースフェア(カタログ番号6465)で測定された。テスト方法は対象色評価のための分光分析データの取り方、ASTM E1164に記述のものと同様である。機器は空気からのサンプルの色のシフトを計算して検定した。
【0124】
光透過(%T)と反射(%R)の測定はパーキン−エルマー社のラムダ900分光光度計(モデルBV900ND0)に400〜700nmの範囲用PELA‐1000集積球付属品のついたものを使った。この球は150mm(6インチ)の直径で、「色と外観測定のASTM基準」第三版、ASTM、1991年に記載されているASTM法 E903、E1003、E308などに従っている。機器は測定の間、空気を対照とした。分光光度計の走査速度は120ms/ptのUV‐可視集積で〜1250nm/分であった。データ間隔と分解能は5nmであった。透過および反射データは550nmでの測定の割合で示される。
【0125】
各サンプルの厚さは四つの異なる点で測定された。(t)記号の欄のデータは測定された厚さをミクロンで示したものである。
【0126】
【表4】
【0127】
良好な屈折率の一致が多くの実施例で得られた。屈折率差が実施例2、3、および9〜15で0.005以下、さらに実施例11および13でおよそ0.0002以下であった。実施例2、3、9、および10は曇り値が3%以下で、高い透過であった。裸眼にはこれらのフィルムは極めて透明である。
【0128】
実施例4−7はセラミック繊維を使っていて、材料と繊維の間の最小の屈折率差は少なくとも0.008であり、繊維は繊維を詰めて織った生地の形態であった。織物の緻密さは硬化の前にポリマー/繊維の接触面から気泡を取り除くことを難しくした。結果としてこれらのサンプルの曇り値は比較的に高かった。より低い曇り値は固化前に繊維と樹脂から気泡をよりよく取り除き、さらにより良い材料の指数の一致を達成することで得られるであろう。
【0129】
幾つかのサンプルについて機械特性を測定した。測定には熱膨張係数(CTE)と貯蔵係数を含んだ。これらの測定結果を表Vに示した。CTEはパーキンエルマー(Perkin Elmer)熱機械分析系、TMA−7フィルム引っ張り機構付きを使って測定された。温度掃引実験が温度範囲が20℃から150℃までの膨張した状態で10℃/分の速度で行なわれた。表Vに示したCTEは温度の範囲は70℃〜120℃のものであり、全ての場合でこの温度範囲でCTEは実質的に直線であることが分かった。CTEは摂氏温度当たりの百万分の一(ppm/℃)で表に示されており、サンプルの2回目の熱サイクルで測定された。CTEは繊維を含んだこれらのサンプルについてはx/yの形で示されている。繊維はサンプルの中で織物の形で繊維が(任意に決められた)x−およびy方向に位置している。CTEはx−およびy方向の膨張として示されている。x−およびy方向の繊維の密度は実施例10では同等ではなく、そのことでx−およびy方向のCTEの値が際立った差を示す結果となった。実施例10、11および13では、繊維は織物の形で、x−およびy方向でほぼ同様の繊維密度であった。実施例19〜21では繊維は存在せず、これらのサンプルについては一つのCTEのみが示されている。
【0130】
一つのフィルムサンプルについて貯蔵(弾性)係数がTAインストルメント(TA Instruments)社製Q800シリーズのフィルム引っ張り機構付き動的機械分析機(DMA)を使用して測定された。温度掃引実験が温度範囲−40℃から200℃まで2℃/分の速度で動的歪において行なわれた。貯蔵係数とタンデルタ(損失正接)が温度の関数として報告された。貯蔵係数を三つの異なる温度、つまり24℃、66℃および100℃について表Vに示す。タンデルタ曲線のピークがフィルムでのガラス遷移温度、Tg、を確定するために使われた。実施例10および21ではTgの値はそれぞれのサンプルの2回目の熱サイクルで測定された。
【0131】
【表5】
【0132】
繊維強化実施例のCTEは強化していない実施例のCTEに比べると、繊維がガラスであるかガラス−セラミックであるかに関係なく大幅に低かった。加えて、繊維強化実施例の貯蔵係数は強化していない実施例に比べて大幅に高く、特に高い温度66℃でそうであって、この温度は幾つかの異なるタイプのディスプレイ用途で予期される使用温度の範囲である。繊維強化複合材料フィルムサンプルのより高い貯蔵係数は高い使用温度でのフィルムのそりや弛みの量を減らし、フィルムの剛性を増し、より一層安定して長期に使用できる結果をもたらすと信じられる。
【0133】
幾つかの実施例ではTgの値が135℃よりも低く、さらには100℃よりも低いことが望ましい。Tgの値がこの範囲のポリマー材料の利用は利用できる材料の選択範囲を広げ、高いTgの値を持つ材料を使うより、安く、加工しやすい材料が手に入ることになる。実施例5と10のTgの値がそれぞれ92℃と82℃であることに留意するべきである。
【0134】
本発明は上に記述した特定の実施例に限られるものと考えるべきではなく、むしろ添付の請求範囲にはっきりと定義するように発明のすべての様態を含むものと理解すべきである。本発明の様々な変更、同等の処理法、さらに本発明が適用可能な数多くの構造は本発明の明細書を見れば当業者には自ずと明らかであろう。請求範囲はそのような変更および器具も含むものである。
【0135】
本発明は、発明の様々な実施例に関する添付の図面と、以下の詳しい説明を用いることで、より完全に理解できるであろう。
【0136】
本発明は、様々な変更および代替形式による影響を受けやすいため、図面上の例にいくつかの特定事項を示し、詳細を記述する。しかし、この意図は、記述された特定の実施例に発明を限定しようとするものではないことが理解されなければならない。逆に、この意図は、添付した請求により定義される発明の精神および範囲に帰結する全ての変更、同等のもの、および代替物を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1A】光学フィルムの模式図。
【図1B】本発明の原理に従った、光学フィルムの断面の模式図。
【図2】繊維半径の関数としての散乱効率を示すグラフ。
【図3】繊維織物の実施例の模式図。
【図4A】本発明の原理に従った繊維編み糸の典型的な実施例の模式図。
【図4B】本発明の原理に従った繊維編み糸の典型的な実施例の模式図。
【図5A】本発明の原理に従った、繊維強化フィルムの断面の模式図。
【図5B】本発明の原理に従った、繊維強化フィルムの断面の模式図。
【図5C】本発明の原理に従った、繊維強化フィルムの断面の模式図。
【図6】本発明の原理に従った屈折力を持つ繊維強化フィルムの断面の模式図。
【図7A】本発明の原理に従った表面構造を持つ繊維強化フィルムの断面の模式図。
【図7B】本発明の原理に従った表面構造を持つ繊維強化フィルムの断面の模式図。
【図7C】本発明の原理に従った表面構造を持つ繊維強化フィルムの断面の模式図。
【図7D】本発明の原理に従った表面構造を持つ繊維強化フィルムの断面の模式図。
【図8A】本発明の原理に従った繊維強化光学フィルムの成形に使用できる装置の模式図。
【図8B】本発明の原理に従った繊維強化光学フィルムの成形に使用できる装置の模式図。
【図9】本発明の原理に従った繊維強化光学フィルムを作成するために繊維層に樹脂を含浸させるための装置の模式図。
【図10】本発明の原理に従った繊維強化光学フィルムを成型する装置の模式図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的な繊維の層として複数の無機繊維を用意し、
ポリマー樹脂中に無機繊維の連続的な層を埋め込み、
そして
該ポリマー樹脂を固化させてポリマーと無機繊維の複合層を生成し、該ポリマー樹脂の屈折率と無機繊維の屈折率とを実質的に一致させる
ことを含む、光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
該複数の無機繊維を用意することが、該無機繊維を含む、束または織物の1種を用意することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該束または織物の1種が、有機繊維をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該束または織物の1種が、ポリマー繊維または自然の有機繊維の少なくとも1種をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該有機繊維が、有機質複屈折物質を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
該無機繊維を埋め込むことが該樹脂を含む貯槽内に該無機繊維を通過させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該無機繊維を埋め込むことが、裏打ち層の上に樹脂を広げること、そして裏打ち層の上に広げた樹脂の中に、該無機繊維を通過させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該無機繊維を埋め込むことが、裏打ち層の上に該無機繊維を配置すること、そして該裏打ち層の無機繊維の上に該樹脂を広げることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該構造形成工具と該樹脂の表面とを接触させることにより、該ポリマー樹脂の表面上に構造を形成する方法をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該ポリマー樹脂の表面上の該構造が、該光学フィルムを通過する光に屈折力を提供する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該ポリマー樹脂の表面上の該構造が複数のプリズム・リブを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
該無機繊維が少なくともガラス繊維を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
該無機繊維が、セラミック繊維またはガラス‐セラミック繊維の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
該ポリマー樹脂の屈折率を該無機繊維の屈折率に一致させるために、該ポリマー樹脂に添加物をさらに追加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
該ポリマー樹脂を固化させることが、該ポリマー樹脂を冷却させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
該ポリマー樹脂を固化させることが、該ポリマー樹脂を硬化させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
該ポリマー樹脂が、UV硬化アクリレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項1】
連続的な繊維の層として複数の無機繊維を用意し、
ポリマー樹脂中に無機繊維の連続的な層を埋め込み、
そして
該ポリマー樹脂を固化させてポリマーと無機繊維の複合層を生成し、該ポリマー樹脂の屈折率と無機繊維の屈折率とを実質的に一致させる
ことを含む、光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
該複数の無機繊維を用意することが、該無機繊維を含む、束または織物の1種を用意することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該束または織物の1種が、有機繊維をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該束または織物の1種が、ポリマー繊維または自然の有機繊維の少なくとも1種をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該有機繊維が、有機質複屈折物質を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
該無機繊維を埋め込むことが該樹脂を含む貯槽内に該無機繊維を通過させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該無機繊維を埋め込むことが、裏打ち層の上に樹脂を広げること、そして裏打ち層の上に広げた樹脂の中に、該無機繊維を通過させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該無機繊維を埋め込むことが、裏打ち層の上に該無機繊維を配置すること、そして該裏打ち層の無機繊維の上に該樹脂を広げることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該構造形成工具と該樹脂の表面とを接触させることにより、該ポリマー樹脂の表面上に構造を形成する方法をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該ポリマー樹脂の表面上の該構造が、該光学フィルムを通過する光に屈折力を提供する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該ポリマー樹脂の表面上の該構造が複数のプリズム・リブを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
該無機繊維が少なくともガラス繊維を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
該無機繊維が、セラミック繊維またはガラス‐セラミック繊維の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
該ポリマー樹脂の屈折率を該無機繊維の屈折率に一致させるために、該ポリマー樹脂に添加物をさらに追加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
該ポリマー樹脂を固化させることが、該ポリマー樹脂を冷却させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
該ポリマー樹脂を固化させることが、該ポリマー樹脂を硬化させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
該ポリマー樹脂が、UV硬化アクリレートを含む、請求項1に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2008−545151(P2008−545151A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511168(P2008−511168)
【出願日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/016797
【国際公開番号】WO2006/121706
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/016797
【国際公開番号】WO2006/121706
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】
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