説明

無機質板状体及びその製造方法

【課題】本発明は、軽量で強度および剛性に優れた無機質板状体およびその製造方法を提供せんとするものである。
【解決手段】水硬性無機質材料と、無機質軽量体と、木質補強材と、ケイ酸カルシウム水和物とからなる無機質板状体において、該水硬性無機質材料100質量部に対し該ケイ酸カルシウム水和物が3乃至54質量部であることを特徴とする。
このように、水硬性無機質材料と無機質軽量体と木質補強材とを主成分とした無機質板状体に、さらにケイ酸カルシウム水和物が混合することで、軽量で、強度および剛性に優れた無機質板状体を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性無機質材料と無機質軽量体と木質補強材とを主成分とし、さらにケイ酸カルシウム水和物が添加されていることを特徴とする無機質板状体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からセメントなどの水硬性無機質材料とパルプなどの木質補強材とを主成分とする無機質板がある。
この無機質板は比重が高く耐凍結融解性等はよいが、曲げ強度を高めるために、パルプを大量に添加すると不燃性が損なわれ、また、耐凍結融解性能も劣化する。
また、比重が高い無機質板は板が堅いために、釘打ち性等の施工性に問題がある。
そのため、いろいろな軽量体の添加が検討されている。
たとえば、特許第3374515号公報には、セメント成形材料にバーミキュライトが添加されており、特公平8−32603号公報にはフライアッシュや球形珪酸カルシウムが添加されている。
【特許文献1】特許第3374515号公報
【特許文献2】特公平8−32603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、さらに軽量で、強度および剛性に優れた無機質板状体およびその製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するための本請求項1に記載の無機質板状体は、水硬性無機質材料と、無機質軽量体と、木質補強材と、ケイ酸カルシウム水和物とからなる無機質板状体において、該水硬性無機質材料100質量部に対し該ケイ酸カルシウム水和物が3乃至54質量部であることを特徴とする。
【0005】
また、本請求項2に記載の無機質板状体は、請求項1に記載の無機質板状体において、前記ケイ酸カルシウム水和物はゾノトライトであることを特徴とする。
【0006】
また、本請求項3に記載の無機質板状体は、請求項1に記載の無機質板状体において、前記水硬性無機質材料はセメント及び/又はスラグであり、前記無機質軽量体はパーライトであり、前記木質補強材は木質パルプであることを特徴とする。
【0007】
また、本請求項4に記載の無機質板状体の製造方法は、水硬性無機質材料を55.6乃至86.0質量部と、無機質軽量体を2.45乃至7.5質量部と、木質補強材を5乃至15質量部と、ケイ酸カルシウム水和物を3乃至30質量部とを混合した原料スラリーを調整する工程と、前記工程で得られた原料スラリーを抄造してマット状体にする工程と、前記工程で得られた前記マット状体をプレス成形する工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
また、本請求項5に記載の無機質板状体の製造方法は、請求項4における無機質板状体の製造方法において、前記水硬性無機質材料はセメント及び/又はスラグであり、前記無機質軽量体はパーライトであり、前記木質補強材は木質パルプであり、前記ケイ酸カルシウム水和物はゾノトライトであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軽量で、強度および剛性に優れた無機質板状体およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明の無機質板状体は、水硬性無機質材料と無機質軽量体と木質補強材とを主成分とし、さらにケイ酸カルシウム水和物が混合されている。
【0011】
水硬性無機質材料としては、セメント、スラグ、石膏等があるが、セメントおよびスラグの少なくとも一方を使用することが好ましい。
【0012】
無機質軽量体としては、パーライトや、フライアッシュバルーン、シラスバルーン等があるが、パーライトが好ましい。
【0013】
木質補強材としては、木質パルプや木繊維、木質繊維束、故紙、マイクロフィブリルセルロース等が挙げられる。
好ましい木質補強材としては、DDR(ダブルディスクリファイナー)処理した、径5〜25μm、平均長1.5〜3.0mmの木質パルプがある。
【0014】
ここでのケイ酸カルシウム水和物とは、ケイ酸質原料と石灰質原料とを含むスラリーを高温高圧下で反応せしめて、ケイ酸カルシウム反応により生成した水和物であり、ケイ酸質原料とは、ケイ砂、珪石粉、珪藻土、シリカフューム、長石類、粘土鉱物、フライアッシュ等のSiOを主成分とするもの、石灰質原料とは、生石灰、消石灰等のCaOを主成分とするものである。
これら前記ケイ酸質原料と石灰質原料とを水に分散させてスラリーとし、該スラリーを加圧下に撹拌しながら加熱すると、ケイ酸カルシウム反応によって該スラリー中にトバモライトやゾノトライトなどのケイ酸カルシウム水和物が生成する。
構造上、トバモライト(5CaO・6SiO・5HO)よりもゾノトライト(6CaO・6SiO・HO)のほうが耐火性は高いので、ゾノトライトを使用することが好ましい。
ケイ酸カルシウム水和物として好ましいゾノトライトを生成するには、ケイ酸質原料に含まれるSiOと石灰質原料に含まれるCaOとのモル比をSiO:CaO=7:3〜3:7の範囲とし、スラリー固形分濃度は通常5〜40質量%程度とし、反応は、圧力1.0〜2.2MPa、温度170〜220℃のオートクレーブ中で撹拌しつつ行い、反応時間は1〜12時間であることが好ましい。
このあとにシリカ成分を含むスラグを添加することで、ゾノトライトスラリー中の石灰質原料から溶出したカルシウムイオンが、シリカ成分とさらに反応し、
強度向上に寄与する。
また、ケイ酸カルシウム水和物は予め生成したものや、ケイカル板の微粉砕物を用いてもよい。
【0015】
その他、防水剤として、ワックス、シリコーンオイル、アクリルエマルジョン、コハク酸等を添加してもよい。
防水剤を添加することで、吸水率を格段に低く抑えることができる。
防水剤の混合量は固形分に対して10質量%以下が好ましい。
また、その他、必要なればマイカ、バーミキュライト等の骨材や、ロックウール、ガラス繊維等の無機繊維補強材やポリプロピレン繊維やビニロン繊維等の有機繊維補強材を添加してもよい。
【0016】
次ぎに、本発明の無機質板状体の製造方法について説明する。
まず、水硬性無機質材料、無機質軽量体、木質補強材、ケイ酸カルシウム水和物を混合し、さらに水の中に混合して原料スラリーとし、ハチェック方式、フローオン方式等の湿式方式により抄造する。
スラリー濃度は1〜20質量%程度がよい。
フローオン方式の場合、エンドレスフェルトの上に原料スラリーを流下せしめ、脱水しながら抄造成形された抄造シートをメイキングロールに巻き取り、所定の厚みになったときに切断することで抄造マット状体とする。
その後、抄造マット状体を1〜7MPaの圧力でプレス成形し、さらに、温度
50〜90℃、12〜72時間養生硬化して、無機質板状体を得た。
【0017】
原料の混合比率は、水硬性無機質材料が55.6乃至86.0質量部、無機質軽量体が2.45乃至7.5質量部、木質補強材が5乃至15質量部と、ケイ酸カルシウム水和物が3乃至30質量部で混合されることが好ましい。
水硬性無機質材料の質量が55.6質量部未満だと、期待する強度の値が得られず、86.0質量部より多いと比重が高くなり施工性に問題が出る可能性がある。
また、無機質軽量体の質量が2.45質量部未満だと、軽量化に寄与せず、7.5質量部より多いと原料が嵩高になってしまい原料スラリー状態が悪くなり、無機質板状体の比重が高くならず諸物性が低下する。
木質補強材が5質量部未満だと強度や保形性に寄与せず、15質量部より多いと耐火、防火性能が劣化する可能性がある。
ケイ酸カルシウム水和物が3質量部未満だと、比重が低くならず、軽量化に寄与せず、30質量部より多いと比重が低くなり過ぎてしまい、プレス圧を高くしないと保形できない。
【0018】
このように、水硬性無機質材料と無機質軽量体と木質補強材とを主成分とした無機質板状体に、さらにケイ酸カルシウム水和物が混合することで、軽量で、強度および剛性に優れた無機質板状体を得ることができる。
【実施例1】
【0019】
以下に本発明の実施例を挙げる。
表1に示す原料配合比率、製造条件にて、実施例1〜3、比較例1、2を製造した。
【0020】
【表1】

【0021】
表1によれば、ゾノトライトが10質量部で、セメント/スラグが75質量部である実施例1は、比重が1.00で、しかも曲げ強度に優れた無機質板状体が得られた。
ゾノトライトが20質量部で、セメント/スラグが65質量部である実施例2は、比重が1.00で、しかも曲げ強度に優れた無機質板状体が得られた。
ゾノトライトが29質量部で、セメント/スラグが56質量部である実施例3は、比重が1.00で、しかも曲げ強度に優れた無機質板状体が得られた。
ゾノトライトを添加していない比較例1は、プレス圧力が上がらず、曲げ強度が低かった。
また、ゾノトライトを40質量部添加した比較例2は、曲げ強度は高くなったが、比重が低くなってしまった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性無機質材料と、無機質軽量体と、木質補強材と、ケイ酸カルシウム水和物とからなる無機質板状体において、該水硬性無機質材料100質量部に対し該ケイ酸カルシウム水和物が3乃至54質量部であることを特徴とする無機質板状体。
【請求項2】
前記ケイ酸カルシウム水和物はゾノトライトであることを特徴とする請求項1に記載の無機質板状体。
【請求項3】
前記水硬性無機質材料はセメント及び/又はスラグであり、前記無機質軽量体はパーライトであり、前記木質補強材は木質パルプであることを特徴とする請求項1に記載の無機質板状体。
【請求項4】
水硬性無機質材料を55.6乃至86.0質量部と、無機質軽量体を2.45乃至7.5質量部と、木質補強材を5乃至15質量部と、ケイ酸カルシウム水和物を3乃至30質量部とを混合した原料スラリーを調整する工程と、前記工程で得られた原料スラリーを抄造してマット状体にする工程と、前記工程で得られた前記マット状体をプレス成形する工程とを含むことを特徴とする無機質板状体の製造方法。
【請求項5】
前記水硬性無機質材料はセメント及び/又はスラグであり、前記無機質軽量体はパーライトであり、前記木質補強材は木質パルプであり、前記ケイ酸カルシウム水和物はゾノトライトであることを特徴とする請求項4に記載の無機質板状体の製造方法。

【公開番号】特開2007−238397(P2007−238397A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64984(P2006−64984)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【Fターム(参考)】