説明

無段変速機のシール構造

【課題】ベルト式無断変速機において、可動シーブと可動シーブの背面に油圧室を形成するシリンダとの隙間が変化し、シール部材が周期的に変形するものとしても、シール部材の摩耗を抑制してシール性能を確保する。
【解決手段】可動シーブとシリンダとの隙間を、断面が矩形状のシールリング50を外周側に、断面が円形状のOリング52を内周側にそれぞれ装着することによりシールする。シールリング50は、4箇所の角のうちOリング52が当接している側の2箇所を面取りする。これにより、ベルトによるプーリとシリンダとの変形に伴ってOリング52が周期的に押し潰されるものとしても、面取りによりリング溝38aの側壁とシールリング50の側面との間に形成されるV字溝にOリング52を流動させることができ、Oリング52の引き摺り摩耗の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動シーブと固定シーブとが対向して配置され入力軸と出力軸にそれぞれ連結された2つのプーリと、両プーリ間に掛け渡されたベルトと、前記可動シーブの背面に油圧室を形成するシリンダとを備え、前記シリンダ内に油圧を給排することにより前記可動シーブを移動させて前記プーリの溝幅を変更可能な無段変速機における、前記可動シーブと前記シリンダとの隙間をシールする無段変速機のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の無段変速機のシール構造としては、ベルト式の無段変速機において、プライマリプーリの可動シーブとハウジング部との間の隙間に密閉構造のシール部材を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この無段変速機では、ハウジング部をシリンダとして可動シーブの背面に配置し、可動シーブとハウジング部との間の隙間をシールすることにより、可動シーブを油圧により背面側から押し付けるための油圧室を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−275718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ベルト式の無段変速機は、プーリが半円状にベルトを挟んでいるため、ベルトが噛み込んでいる角度範囲ではベルトによりプーリを開こうとする力とベルトがプーリに接している半径との積による曲げ力が生じる。この曲げ力は、プーリが1回転する毎に1回作用し、可動シーブやハウジング部(シリンダ)を変形させて可動シーブとハウジング部との隙間に設けられたシール部材を周期的に押し潰すため、シール部材が摩耗する場合が生じる。これに対して、シーブやハウジング部の変形を抑えるために、その剛性を高めることも考えられるが、変速機が大型化したり、重量が増加してしまう。
【0005】
本発明の無段変速機のシール構造は、過剰な剛性のシーブやシリンダを用いることなく、シール部材の摩耗を抑制してシール性能の向上を図ることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の無段変速機のシール構造は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の無段変速機のシール構造は、
可動シーブと固定シーブとが対向して配置され入力軸と出力軸にそれぞれ連結された2つのプーリと、両プーリ間に掛け渡されたベルトと、前記可動シーブの背面に油圧室を形成するシリンダとを備え、前記シリンダ内に油圧を給排することにより前記可動シーブを移動させて前記プーリの溝幅を変更可能な無段変速機における、前記可動シーブと前記シリンダとの隙間をシールする無段変速機のシール構造であって、
前記可動シーブと前記シリンダの一方に形成された環状の溝に配置される環状の外周側シール部材と、
前記環状の溝に前記外周側シール部材よりも内周側に層状に配置され、前記外周側シール部材よりも高弾性の環状の内周側シール部材と、
を備え、
前記外周側シール部材は、前記内周側シール部材と当接している側が面取りされてなる
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の無段変速機のシール構造では、可動シーブと可動シーブの背面に油圧室を形成するシリンダとの一方に形成された環状の溝に、断面が矩形状で且つ環状の外周側シール部材と、外周側シール部材よりも高弾性の環状の内周側シール部材とをそれぞれ層状に配置したものにおいて、外周側シール部材の内周側シール部材と当接している側を面取りする。これにより、ベルトの噛み込みによるシーブやシリンダの変形によって、シーブとシリンダとの隙間が変化し内周側シール部材が周期的に変形するものとしても、面取りにより環状の溝の側壁と外周側シール部材との間に形成される空間(逃げ場)に内周側シール部材を流動させることができるから、内周側シール部材の引き摺り摩耗を抑制することができる。この結果、過剰な剛性のシーブやシリンダを用いることなく、シール性能を確保することができる。ここで、「外周側シール部材」は、平面取りにより面取りされてなるものとすることもできる。
【0009】
こうした本発明の無段変速機のシール構造において、前記外周側シール部材は、断面が矩形状のシールリングであり、前記内周側シール部材は、断面が円形状のOリングであるものとすることもできる。
【0010】
また、本発明の無段変速機のシール構造において、前記可動シーブは、外周部から軸方向に延伸された円筒部が形成され、前記シリンダは、外周部が前記可動シーブの円筒部の内周面手前まで径方向に延伸され、前記シール部材は、前記シリンダの外周縁に全周に亘って形成された溝に装着されてなるものとすることもできる。このタイプの無段変速機では、可動シーブとシリンダとの隙間の変形が比較的大きく、シール部材の変形の振幅が比較的大きなものとなるため、本発明の効果がより顕著なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】動力伝達装置20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】プライマリプーリ34に対するベルト40の噛み込み角度を示す説明図である。
【図3】実施例のCVT30におけるプライマリプーリ34とプライマリシリンダ38の変形の様子を説明する説明図である。
【図4】実施例のシールリング50を用いた場合のOリング52の変形の様子を説明する説明図である。
【図5】比較例のシールリング150を用いた場合のOリング52の変形の様子を説明する説明図である。
【図6】比較例のCVTにおけるプライマリプーリ134とプライマリシリンダ138の変形の様子を説明する説明図である。
【図7】プーリ34の回転角とOリング52の潰し代との関係を示す説明図である
【図8】実施例のCVT30における変速比とエンジントルクとOリング52の潰し代の振幅との関係を説明する説明図である。
【図9】比較例のCVTにおける変速機とエンジントルクとOリング52の潰し代の振幅との関係を説明する説明図である。
【図10】変形例のシールリング50Bの断面図である。
【図11】変形例のシールリング50Cの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、動力伝達装置20の構成の概略を示す構成図である。動力伝達装置20は、図1に示すように、クランクシャフトが車軸64a,64bに対して略平行に配置された横置きのエンジン(図示せず)からの動力を車軸64a,64bに伝達するトランスアクスル装置として構成されており、エンジンのクランクシャフトに接続された入力側のポンプインペラ22aと出力側のタービンランナ22bとからなるロックアップクラッチ付きのトルクコンバータ22と、トルクコンバータ22のタービンランナ22bに接続され入力された動力を正転と逆転との切り換えを伴って出力する前後進切換ユニット24と、前後進切換ユニット24に接続されたプライマリシャフト32とこのプライマリシャフト32に平行に配置されたセカンダリシャフト42とを有しプライマリシャフト32に入力された動力を無段階に変速してセカンダリシャフト42に出力する無段変速機(以下「CVT」という)30と、を備える。
【0014】
CVT30は、プライマリシャフト32に取り付けられたプライマリプーリ34と、プライマリシャフ32と平行に配置されたセカンダリシャフト42に取り付けられたセカンダリプーリ44と、プライマリプーリ34の溝とセカンダリプーリ44の溝とに掛け渡されたベルト40と、プライマリプーリ34の溝幅を変更するための油圧式のアクチュエータとしてのプライマリシリンダ38と、セカンダリプーリ44の溝幅を変更するための油圧式のアクチュエータとしてのセカンダリシリンダ48とを備え、プライマリプーリ34とセカンダリプーリ44の溝幅を変更することによりプライマリシャフト32に入力された動力を無段階に変速してセカンダリシャフト42に出力する。プライマリシリンダ38内の油圧の給排とセカンダリシリンダ48内の油圧の給排は、図示しないが、オイルポンプや、オイルポンプからの油圧を調圧するレギュレータバルブ,レギュレータバルブにより調圧した油圧を用いてプライマリシリンダ38やセカンダリシリンダ48に対して油圧の給排を行なうための油路の継断を司るコントロールバルブ,コントロールバルブを駆動するソレノイドバルブなどからなる油圧回路により行なわれる。セカンダリシャフト42は、ギヤ機構60と、デファレンシャルギヤ62とを介して左右の車軸64a,64bに連結されているから、エンジンからの動力はトルクコンバータ22,前後進切換ユニット24,CVT40,ギヤ機構60,デファレンシャルギヤ62を順に介して車軸64a,64bに伝達されることになる。
【0015】
プライマリプーリ34は、プライマリシャフト32と一体に形成された固定シーブ35と、プライマリシャフト32にボールスプラインを介して軸方向に摺動自在に支持される可動シーブ36とにより構成されている。また、セカンダリプーリ44は、セカンダリシャフト42と一体に形成された固定シーブ45と、セカンダリシャフト42にボールスプラインを介して軸方向に摺動自在に支持される可動シーブ46と、により構成されている。なお、セカンダリプーリ44の可動シーブ46は、リターンスプリング47によりセカンダリプーリ44の溝幅を狭める方向に付勢されている。
【0016】
プライマリプーリ34の可動シーブ36は、ピストンが一体化されると共に外周部からシリンダ38側の軸方向に延伸するよう円筒部36aが形成されている。一方、プライマリシリンダ38は、外周部が可動シーブ36の円筒部36aの内周面付近まで径方向に延伸され、その外周縁と可動シーブ36(ピストン)の円筒部36aの内周面との間の隙間がシールされている。これにより、油圧室39を形成する。また、セカンダリプーリ44の可動シーブ46も、ピストンが一体化されると共に外周部からセカンダリシリンダ48側の軸方向に延伸するよう円筒部が形成されている。一方、セカンダリシリンダ48は、外周部が可動シーブ46の円筒部の内周面付近まで径方向に延伸され、その外周縁と可動シーブ46(ピストン)の円筒部の内周面との間の隙間がシールされている。これにより、油圧室49を形成する。
【0017】
プライマリシリンダ38の外周縁には、全周に亘ってリング溝38aが形成されており、このリング溝38aには、外周側にシールリング50が、内周側にOリング52がそれぞれ層をなすように装着されている。シールリング50は、樹脂(例えば、フッ素樹脂など)系の材料により断面が矩形状に形成され、Oリング52は、シールリング50よりも弾性率が高いゴム(例えば、フッ素ゴムなど)系の材料により断面が円形状に形成されている。シールリング50は、4箇所の角のうちOリング52が当接している側の2箇所が面取りされている。本実施例では、略45度の面取り角度をもって平面取りにより面取りするものとした。シールリング50を面取りする理由については後述する。
【0018】
図2は、プライマリプーリ34に対するベルト40の噛み込みの様子を示す説明図である。図2に示すように、プライマリプーリ34は半円状にベルト40を挟んでいるため、ベルト40の噛み込みが生じている噛み込み角度θの範囲ではプライマリプーリ34にはベルト40により片側に開こうとする力とベルト40がプライマリプーリ34に接する半径の積による曲げ力が作用する。この曲げ力は、プライマリプーリ34が1回転する毎に1回作用するため、プライマリプーリ34とプライマリシリンダ38とを1回転毎に1回の周期をもって変形させる。図3に、実施例のCVT30におけるプライマリプーリ34とプライマリシリンダ38の変形の様子を示す。なお、図3の破線は変形前の状態を示し、実線は変形後の状態を示す。図示するように、プライマリプーリ34(可動シーブ36)は、ベルト40が噛み込んでいる区間では円筒部36aが軸中心に近づく方向に変形し、ベルト40が噛み込んでいない区間では円筒部36aが軸中心から離れる方向に変形する。一方、プライマリシリンダ38は、全周に亘ってプライマリプーリ34とは反対側の軸方向に変形する。こうしたプライマリプーリ34とプライマリシリンダ38の変形により、プライマリシリンダ38のリング溝38aの底面と可動シーブ36の内周面(摺動面)との間隔が1回転毎に1回の周期をもって変化するため、シールリング50よりも弾性率の高いOリング52が径方向に押し潰される。油圧室39内に油圧が生じていることを考えると、Oリング52は、油圧室39の油圧によってシールリング50と共にプライマリシリンダ38のリング溝38aの側壁に軸方向に押し付けられた状態で径方向に押し潰されるものとなる。
【0019】
図4は、実施例のシールリング50を用いた場合のOリング52の変形の様子を示し、図5は、比較例のシールリング150を用いた場合のOリング52の変形の様子を示す。ここで、図4では断面が矩形状の4箇所の角のうちOリング52に当接している側の2箇所を面取りした実施例のシールリング50を用いるものとし、図5では面取りされていないシールリング150を用いるものとした。実施例では、図4に示すように、シールリング50はOリング52と当接している側の2箇所の角を面取りしているから、リング溝38aの側壁とシールリング50の側面との間にV字溝を形成し(図4中のA部分参照)、Oリング52が押し潰されたときにV字溝内に流動する。一方、比較例では、シールリング150は面取りされていないから、Oリング52が押し潰されても、Oリング52が流動する逃げ場がなく(図5中のB部分参照)、Oリング52の1回転毎に1回の周期的な押し潰しにより、引き摺り摩耗が生じる。断面が矩形状のシールリング50を4箇所の角のうちOリング52に当接している側の2箇所を面取りするのは、プライマリプーリ34とプライマリシリンダ38の変形に伴ってOリング52が周期的に押し潰されたときにOリング52が流動する逃げ場を設けることにより、Oリング52に引き摺り摩耗が発生するのを抑制するためである。
【0020】
図6は、比較例のCVTにおけるプライマリプーリ134とプライマリシリンダ138の変形の様子を説明する説明図である。なお、図6の破線は変形前の状態を示し、実線は変形後の状態を示す。この比較例では、図示するように、プライマリシリンダ138は、その外周部138aが円筒状に形成されている。一方、可動シーブ136は、その外周部がプライマリシリンダの外周部138aの内周面付近まで径方向に延伸され、外周縁に全周に亘って形成されたリング溝136aにシールリング50とOリング52とがそれぞれ外周側と内周側とに層状に装着されて、油圧室139を形成している。こうして構成された比較例のCVTでは、プライマリプーリ134(可動シーブ136)は、プライマリシリンダ138にベルト40が噛み込んでいる区間ではプライマリシリンダ138側の軸方向に変形し、ベルト40が噛み込んでいない区間では外周部が軸中心から離れる方向に変形する。一方、プライマリシリンダ138は、外周部138aが全周に亘って軸中心から離れる方向に変形する。図7に、プーリ34の回転角とOリング52の潰し代との関係を示し、図8に、実施例のCVT30における変速比とエンジントルクとOリング52の潰し代の振幅との関係を示し、図9に、比較例の無段変速機における変速機とエンジントルクとOリング52の潰し代の振幅との関係を示す。なお、図7の実線は実施例におけるOリング52の潰し代を示し、一点鎖線は比較例におけるOリング52の潰し代を示す。プライマリプーリ34とプライマリシリンダ38との変形に基づくOリング52の潰し代の振幅は、図7〜図9に示すように、実施例の方が比較例よりも大きくなる傾向にある。即ち、実施例では、比較例に比して、Oリング52の引き摺り摩耗が発生し易くなるから、本発明を適用する意義がより大きなものとなる。
【0021】
以上説明した実施例の無段変速機のシール構造によれば、可動シーブ36と可動シーブ36の背面に油圧室39を形成するプライマリシリンダ38との間の隙間に、断面が矩形状のシールリング50を外周側に、断面が円形状のOリング52を内周側にそれぞれ層状に装着することによりシールするものにおいて、シールリング50を4箇所の角のうちOリング52が当接している側の2箇所を面取りするから、ベルト40によるプライマリプーリ34(可動シーブ36)とプライマリシリンダ38の変形により、Oリング52が周期的に押し潰されるものとしても、面取りによりリング溝38aの側壁とシールリング50の側面との間に形成されるV字溝にOリング52を流動させることができ、Oリング52の引き摺り摩耗の発生を抑制することができる。この結果、過剰な剛性の可動シーブ36やプライマリシリンダ38を用いることなく、シール性能を確保することができる。
【0022】
実施例の無段変速機のシール構造では、可動シーブ36の外周部から軸方向に延伸した円筒部36aを形成し、プライマリシリンダ38の外周部を円筒部36aの内周面付近まで径方向に延伸させ、プライマリシリンダ38の外周縁に全周に亘ってリング溝38aを形成し、このリング溝38aにシールリング50とOリング52とをそれぞれ外周側と内周側に層状に装着することにより、油圧室39を形成するものとしたが、図6に示すように、プライマリシリンダ138の外周部138aを円筒状に形成し、可動シーブ136の外周部をプライマリシリンダ138の外周部138aの内周面付近まで径方向に延伸させ、可動シーブ136の外周縁に全周に亘ってリング溝136aを形成し、このリング溝136aにシールリング50とOリング52とをそれぞれ外周側と内周側に層状に装着することにより、油圧室139を形成するものとしてもよい。この場合、前述したように、プーリ132の回転に伴うOリング52の潰し代の振幅は、実施例に比して、小さくなるから、本発明を適用する意義は若干小さなものとなる。
【0023】
実施例の無段変速機のシール構造では、断面が矩形状のシールリング50の面取りを略45度の面取り角度をもって平面取りにより行なうものとしたが、プライマリプーリ34(可動シーブ36)とプライマリシリンダ38との隙間の変化によってOリング52が押し潰されたときに、プライマリシリンダ38のリング溝38aの側壁とシールリング50の側面との間にOリング52が流動するための隙間(逃げ場)が形成されていればよいから、平面取り角度は45度のものに限られず、30度や40度,50度,60度などの他の面取り角度としてもよく、また、面取り形状も平面取りに限られず、図10の変形例のシールリング50Bに示すように丸面取り(R面取り)としたり、図11の変形例のシールリング50Cに示すようにL型のL面取りとしたりするなど如何なる面取り形状とするものとしてもよい。
【0024】
実施例の無段変速機のシール構造では、断面が矩形状に形成されたシールリング50の4箇所の角のうちOリング52が当接する側の2箇所を面取りするものとしたが、これに限られず、Oリング52が当接している側の2箇所のうち油圧室39とは反対側(油圧室39の油圧によりシールリング50とOリング52とがプライマリシリンダ38のリング溝38aの側壁に押し付けられる側)の1箇所だけを面取りするものとしても構わない。
【0025】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、シールリング50が「外周側シール部材」に相当し、Oリング52が「内周側シール部材」に相当する。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0026】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、無段変速機の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
20 動力伝達装置、22 トルクコンバータ、22a ポンプインペラ、22b タービンランナ、24 前後進切換ユニット、30 無段変速機(CVT)、32 プライマリシャフト、34,134 プライマリプーリ、35 固定シーブ、36,136 可動シーブ、38,138 プライマリシリンダ、38a,136a リング溝、39,139 油圧室、40 ベルト、42 セカンダリシャフト、44 セカンダリプーリ、45 固定シーブ、46 可動シーブ、47 リターンスプリング、48 セカンダリシリンダ、49 油圧室、50,50B,50C,150 シールリング、52 Oリング、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、64a,64b 車軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動シーブと固定シーブとが対向して配置され入力軸と出力軸にそれぞれ連結された2つのプーリと、両プーリ間に掛け渡されたベルトと、前記可動シーブの背面に油圧室を形成するシリンダとを備え、前記シリンダ内に油圧を給排することにより前記可動シーブを移動させて前記プーリの溝幅を変更可能な無段変速機における、前記可動シーブと前記シリンダとの隙間をシールする無段変速機のシール構造であって、
前記可動シーブと前記シリンダの一方に形成された環状の溝に配置される環状の外周側シール部材と、
前記環状の溝に前記外周側シール部材よりも内周側に層状に配置され、前記外周側シール部材よりも高弾性の環状の内周側シール部材と、
を備え、
前記外周側シール部材は、前記内周側シール部材と当接している側が面取りされてなる
ことを特徴とする無段変速機のシール構造。
【請求項2】
請求項1記載のシール構造であって、
前記外周側シール部材は、平面取りにより面取りされてなる
ことを特徴とする無段変速機のシール構造。
【請求項3】
請求項1または2記載のシール構造であって、
前記外周側シール部材は、断面が矩形状のシールリングであり、
前記内周側シール部材は、断面が円形状のOリングである
無段変速機のシール構造。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載のシール構造であって、
前記可動シーブは、外周部から軸方向に延伸された円筒部が形成され、
前記シリンダは、外周部が前記可動シーブの円筒部の内周面手前まで径方向に延伸され、
前記シール部材は、前記シリンダの外周縁に全周に亘って形成された溝に装着されてなる
無段変速機のシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−36962(P2012−36962A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177178(P2010−177178)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】