説明

無段変速機

本発明は、入力軸(12)に連結された入力ディスク(2)、バリエータ出力回転を出力する出力ディスク(3)、これら一軸状に配置された両ディスクに挟持され無段変速比により一方のディスクから他方のディスクに動力伝動を行うと共に、軸回りに回転可能かつ前記入力及び出力ディスクに対して相対的に傾斜して変速比を変更できるようにキャリヤに取付けられた少なくとも1つのパワーローラ(4)、前記入力及び出力ディスク(2,3)の動きにより前記ローラ(4)に生じるトラクション力に対する反力を、作用する差圧によって前記キャリヤ(30)に付与する流体アクチュエータ(22)を有するバリエータ(5)と、前記入力軸(12)の回転及び前記バリエータ出力回転が入力され、これらの入力回転の基づく出力回転を出力する、好ましくはプラネタリギヤ装置からなる動力循環装置(6)とを備えた無段変速機を提供する。この無段変速機は、更に、ロークラッチ及びハイクラッチを有し、(a)前記ロークラッチを係合して前記動力循環装置の出力回転を出力軸に出力するローモードと、(b)前記ハイクラッチを係合して前記バリエータ出力回転を前記出力軸に出力するハイモードとを切換えるロー・ハイ切換え機構(10)を備え、前記ローモード及びハイモードの切換え中に、前記流体アクチュエータの反力の方向を反転させる。本願発明によると、上記無段変速機は、更に、モード切換えを行うべき切換え点に達した際に、解放されていたクラッチ(H/L)の係合を開始する係合制御手段(37)と、前記開放されていたクラッチの係合制御中に、前記反力の方向の反転を開始する反力切換え制御手段(38)と、備えている。これにより、素早く、円滑なモードの切換えを行うことができる。特に、ハイクラッチの入力側部材と前記ロークラッチの入力側部材との間にワンウェイクラッチを介在させ、前記ハイクラッチの入力側部材の回転が前記ロークラッチの入力側部材の回転より低回転となることを規制すると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車輌に適用されて好適な無段変速機に係り、特に、モード切換え時の応答性を改善したマルチモード無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開公報 WO03/100295(トロトラック・(ディベロップメント)・リミテッド他)は、バリエータを用い、一軸状に各部材を配置した無段変速機を開示している。該無段変速機は、バリエータとプラネタリギヤ装置とを組合せて、出力回転が(a)該バリエータの出力回転と、(b)変速機の入力軸からの回転とに応じて決まるように構成されており、ギヤニュートラルを含む自動車の出力回転として適当な正逆変速回転を得ることができるようになっている。また、トルク循環装置を備えている。
【0003】
上記WO03/100295記載のバリエータは、それぞれ半円型の曲面(円弧面)を有する2個の入力ディスクと、これら入力ディスクの間に位置し且つ両側面にそれぞれ半円型の曲面を有する1個の出力ディスクと、入力ディスク及び出力ディスクの対向する曲面に接触するパワーローラと、を有している。前側(エンジン側)の入力ディスクは入力軸(主軸)に固定され、出力ディスクは上記入力軸の近傍に配置され出力回転が出力されるスリーブ軸に連結されている。更に一方側の入力ディスクのボス部が上記スリーブに被嵌されており、入力軸及び入力ディスクボス部がプラネタリギヤ装置の同じ要素(キャリヤ)に連結されると共に、上記スリーブ軸がプラネタリギヤ装置の他の要素(サンギヤ)に連結されている。
【0004】
国際公開公報WO07/003657(トロトラック・(ディベロップメント)・リミテッド)は、ワンウェイクラッチを用いてバリエータが意図した変速比の範囲の超えることを防止する「エンドストップ」機能を備えた無段変速機を開示している。上記ワンウェイクラッチは、ローモードの際に無段変速機の出力回転となる第1軸の速度が、ハイモードの際に無段変速機の出力回転となる第2軸の速度を超えること防止することによって「エンドストップ」機能を達成している。
【0005】
特開2006―292079号公報は、フルトロイダル式無段変速装置(バリエータ)と、プラネタリギヤ機構と、反転ギヤ機構と、ロー・ハイ切換え機構とを備えた無段変速装置について記載している。上記プラネタリギヤ機構は、入力軸及びフルトロイダル式無段変速装置の入力ディスクに連動するキャリヤと、フルトロイダル式無段変速装置の出力ディスクに連動する第1のサンギヤと、ローモード時出力要素であるリアキャリヤと、ハイモード時出力要素である第2のサンギヤとを有している。ローモードにあっては、上記リアキャリヤの回転を上記反転ギヤ機構を介して出力軸に伝達し、ハイモードにあっては、上記第2のサンギヤの回転をハイクラッチを介して上記出力軸に伝達する。ローモードでは、出力回転速度が入力ディスクの回転速度及び出力ディスクの回転速度によって決まるプラネタリギヤ機構を介して動力が循環する。上記無段変速機は、(a)プラネタリギヤ装置を介して動力循環した回転を出力軸に伝達自在にするロークラッチを係合するローモードと、(b)無段変速装置の出力回転を出力軸に伝達自在にするハイクラッチを係合するハイモードと、を切換えるロー・ハイ切換え機構を有している。また、上記変速装置は、液体サーボに付与された差圧に基づき回転傾斜支持部にパワーローラのトラクションに対する反力を出力することによって、パワーローラの動きを制御する流体アクチュエータを備えている。この流体アクチュエータによって出力される反力の方向は、ローモードとハイモードとの切換えの際に切換えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開公報 WO03/100295 A1
【特許文献2】国際公開公報 WO07/003657 A1
【特許文献3】特開2006−292079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
構造上の理由により、通常、クラッチ等の切換えタイミングは以下のようになる。なお、図5(a)は、このような無段変速機の変速比の変化を示すグラフ、(b)はロー(Low)モード用のロークラッチの係合(接続)と解放の状態変化を示すグラフ、(c)はハイ(High)モード用のハイクラッチの係合と解放の状態変化を示すグラフ、(d)はパワーローラ位置制御用の流体アクチュエータが出力する反力の方向(サーボ圧の差圧の向き)の切換え状況を示すグラフである。
【0008】
上記無段変速機を搭載した車輌において、例えば、ハイクラッチの係合によるハイモードでの走行中にキックダウンが行われるとモード切換えが実行されることになるが、その場合、解放されていたロークラッチの係合を開始(時点t11)し、該ロークラッチの係合が終了した時点(時点t12)から、流体アクチュエータの反力の方向(差圧の向き)の切換え(例えば1[MPa]から−1[MPa]に向けて)を行う。この時、反力の大きさも典型的には同様に変化する。反力方向の切換えが終了すると(時点t13)、それまで係合していたハイクラッチの解放を開始する。両クラッチが係合した状態では変速比が「同期」変速比(本実施形態では−0.3)に固定され、その後、係合していたクラッチの解放が終了すると(時点t14)変速比が次第に増大し、増速することになる。
【0009】
時点t11〜t14のモード切換え中は変速比が固定になるため、キックダウン時のようにモードを跨いだ素早い変速が要求されるにも拘わらず、変速のもたつきが発生し易く、従って、モード切換えを素早く進行させて、ドライバ要求に対する迅速な応答性を実現することが切望される。
【0010】
そこで本発明は、キックダウン時等、素早いモード切換えを要求される場合の応答性を向上し得るようにした無段変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点によると、入力軸に連結された入力ディスク、バリエータ出力回転を出力する出力ディスク、これら一軸状に配置された両ディスクに挟持され無段変速比により一方のディスクから他方のディスクに動力伝達を行うと共に、軸回りに回転可能かつ前記入力及び出力ディスクに対して相対的に傾斜して変速比を変更できるようにキャリヤに取付けられた少なくとも1つのパワーローラ、前記入力及び出力ディスクの動きにより前記パワーローラに生じるトラクション力に対する反力を作用する差圧によって前記キャリヤに付与する流体アクチュエータ、を有するバリエータと、前記入力軸の回転及び前記バリエータ出力回転が入力され、これらの入力回転に基づく出力回転を出力する動力循環装置と、ロークラッチ及びハイクラッチを有し、(a)前記ロークラッチを係合して前記動力循環装置の出力回転を出力軸に出力するローモードと、(b)前記ハイクラッチを係合して前記バリエータ出力回転を前記出力軸に出力するハイモードとを切換えるロー・ハイ切換え機構と、を備え、前記ローモード及びハイモードの切換え中に、前記流体アクチュエータの反力の方向を反転させる無段変速機において、モード切換えを行うべき切換え点に達した際に、前記ハイクラッチ及び前記ロークラッチのうちの解放されていたクラッチの係合を開始する係合制御手段と、
前記開放されていたクラッチの係合制御中に、前記反力の方向の反転を開始する反力切換え制御手段と、を更に備えた、ことを特徴とする無段変速機がある。
【0012】
本発明の好適な実施形態によると、前記反力切換え制御手段は、前記係合制御手段による係合制御が完了する前に、前記反力方向の反転を完了してなる、無段変速機がある。
【0013】
本発明の更なる好適な実施形態によると、前記反力の反転及び開放されていたクラッチの係合の双方が完了した際に、前記モード切換え前に係合されていたクラッチの解放を開始する解放制御手段を備えてなる、無段変速機がある。
【0014】
本発明の更なる好適な実施形態によると、前記ハイクラッチの入力側部材と前記ロークラッチの入力側部材との間に介在され、前記ハイクラッチの入力側部材の回転が前記ロークラッチの入力側部材の回転より低回転となることを規制するワンウェイクラッチを備えてなる、無段変速機がある。
【0015】
本発明の更なる好適な実施形態によると、前記バリエータ出力回転を反転して前記ハイクラッチの入力側部材に伝達する反転機構を備えた、無段変速機がある。
【0016】
本発明の更なる観点によると、入力軸(12)に連結された入力ディスク(2,2)、無段変速回転を出力する出力ディスク(3)、これら両ディスク(2,2,3)に挟持されたパワーローラ(4,4)、該パワーローラの回転中心(4a)を回転自在に支持し且つ該パワーローラを前記両ディスク(2,2,3)に対して傾斜自在に支持する回転傾斜支持部(30)、及び、該回転傾斜支持部を介して前記パワーローラ(4,4)を前記両ディスク(2,2,3)の面方向に対して移動制御して該パワーローラの傾斜角度を自律的に変化させるフルトロイダル式の無段変速装置(5)と、
供給される液圧に基づき前記回転傾斜支持部(30)を押圧駆動することにより、前記パワーローラ(4,4)の前記両ディスク(2,2,3)間での移動を制御する流体アクチュエータ(22)と、
前記入力軸(12)の回転及び前記無段変速回転を合成して動力循環する動力循環機構(6)と、
前記動力循環機構(6)を介した回転を出力軸(16)に伝達自在にするロークラッチ(L)を係合するローモード、及び前記無段変速装置(5)の無段変速回転を前記出力軸(16)に伝達自在にするハイクラッチ(H)を係合するハイモードをモード切換えし得るロー・ハイ切換え機構(10)と、を備え、
前記パワーローラ(4,4)に生じるトラクション力に対する反力を前記回転傾斜支持部(30)を介して前記流体アクチュエータ(22)の液圧により出力し、且つ前記ローモードと前記ハイモードとを切換える際に前記流体アクチュエータ(22)が出力する反力の方向が切換わる無段変速機(1)において、
前記モード切換えを行うべき切換え点に達した際に、前記ハイクラッチ(H)及び前記ロークラッチ(L)のうちの解放されていたクラッチを係合させる係合制御を開始する係合制御手段(37)と、
前記係合制御手段(37)による前記係合制御中に、前記流体アクチュエータ(22)に供給する液圧を制御して、前記反力の方向を切換える反力切換え制御を開始する反力切換え制御手段(38)と、を備えた、
ことを特徴とする無段変速機(1)がある。
【0017】
また、前記反力切換え制御手段(38)が、前記係合制御手段(37)による係合制御が完了する前に、前記反力切換え制御を完了してなる、と好適である。
【0018】
更に、前記反力切換え制御及び前記係合制御の双方が完了した際に、前記モード切換え前に係合されていたクラッチを解放する解放制御を開始する解放制御手段(43)を備えてなる、と好適である。
【0019】
また、前記無段変速装置(5)の無段変速回転を反転して前記ハイクラッチ(H)の入力側部材(19)に伝達する反転機構(7)と、
前記ハイクラッチ(H)の入力側部材(19)と前記ロークラッチ(L)の入力側部材(17)との間に介在され、前記ハイクラッチ(H)の入力側部材(19)の回転が前記ロークラッチ(L)の入力側部材(17)の回転より低回転となることを規制するワンウェイクラッチ(20)と、を備えてなる、と好適である。
【0020】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【0021】
係合制御手段が、モード切換えを行うべき切換え点に達した際に、ハイクラッチ及びロークラッチのうちの解放されていたクラッチ(解放側クラッチ)を係合させる係合制御を開始し、反力切換え制御手段が、係合制御手段による係合制御中に、流体アクチュエータに供給する液圧を制御して反力の方向を切換える反力切換え制御を開始する。このため、解放されていたクラッチの係合を終了した時点から流体アクチュエータの反力方向の切換えを行うような技術にあっては、反力方向の切換えが終了した後それまで係合していたクラッチ(係合側クラッチ)を解放させるように制御しなければならず長い時間を要していたのに対し、本発明では、解放側クラッチの係合制御中に流体アクチュエータによる反力の方向を切換えることで、該反力方向の切換えに続く係合側クラッチの解放処理を素早く開始することができ、従って、キックダウン時等、素早いモード切換えを要求される場合の応答性が向上する。
【0022】
反力切換え制御手段が、係合制御手段による係合制御が完了する前に反力切換え制御を完了するので、その後、モード切換え前に係合されていたクラッチを解放するとしても、その時点では反力切換え制御が確実に完了しているため、ショックを生じることのない円滑な変速を実現することができる。
【0023】
解放制御手段が、流体アクチュエータによる反力方向を切換え且つ解放側のクラッチを係合させてから、係合側のクラッチを解放する解放制御を開始するので、ショックを生じることのない円滑で安定した変速を実現することができる。
【0024】
無段変速装置の無段変速回転を反転してハイクラッチの入力側部材に伝達する反転機構と、ハイクラッチの入力側部材とロークラッチの入力側部材との間に介在され、ハイクラッチの入力側部材の回転がロークラッチの入力側部材の回転より低回転となることを規制するワンウェイクラッチとを備えるので、無段変速装置の変速比がモード切換えの最適値に達した時点で、解放側のクラッチの係合開始とともに流体アクチュエータによる反力方向(差圧の向き)の切換え開始を行うことができ、これにより、モード切換えを、ショックを発生させることなく円滑且つ迅速に行うことができる。
【0025】
本発明の詳細な説明を、例示のみを目的として、以下の図面と共に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は本発明に係るフルトロイダル式の無断変速装置を備えた無断変速機(CVT)のスケルトン図であり、(b)はその速度線図。
【図2】図1の変速装置の駆動部を概念的に示す図。
【図3】(a)は無段変速機の変速比の変化を示すグラフ、(b)はローモード用のロークラッチの係合と解放の状態変化を示すグラフ、(c)はハイモード用のハイクラッチの係合と解放の状態変化を示すグラフ、(d)は流体アクチュエータが出力する反力の方向(差圧の方向)の切換え状況を示すグラフ。
【図4】モード変更時の制御を示すフローチャート。
【図5】(a)は本発明の基礎となる無段変速機のモード変更時の変速比の変化を示すグラフ、(b)はローモード用のロークラッチの係合(接続)と解放の状態変化を示すグラフ、(c)はハイモード用のハイクラッチの係合と解放の状態変化を示すグラフ、(d)は流体アクチュエータが出力する反力の方向(差圧の方向)の切換え状況を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
無段変速機1は、図1(a)に示すように、フルトロイダル式の無段変速装置(以下、バリエータとも呼ぶ)5と、動力循環機構6及び反転ギヤ機構7からなるプラネタリギヤ装置Uと、ロー・ハイ切換え機構10とを備え、パワーローラ4,4に生じるトラクション力に対する反力をキャリッジ30を介して流体アクチュエータ22の液圧により出力し、且つローモードとハイモードとを切換える際に流体アクチュエータ22が出力する反力の方向が切換わるように構成されている。
【0028】
無段変速装置5は、入力軸12に連結された2個の入力ディスク2,2と、2個の入力ディスク2,2の間に配置されて無段変速回転を出力する1個の出力ディスク3と、これら両ディスク2,2,3の間に挟持されるパワーローラ4,4とを有している。
【0029】
なお、以下、入力ディスク2,2を一括して入力ディスク2とも呼ぶ。入力ディスク2,2及び出力ディスク3は、それぞれ対向するように円形の一部を形成する円弧状の凹溝2a,3aを有しており、2列のパワーローラ4,4を挟んでダブルキャビティを構成している。パワーローラ4,4は、無段変速比(出力ディスクの回転速度に対する入力ディスクの回転速度の比)で入力ディスクから出力ディスクに動力伝達を行う。なお、バリエータを介していずれの方向にも動力伝達可能であるため、出力ディスクから入力ディスクに動力伝達を行うこともできる。パワーローラは、軸に直角方向にシフトさせられることにより傾斜して傾斜角度を変更することができ、これにより、入力ディスク2,2と出力ディスク3との接触半径が変化し、変速比が変更される。出力ディスク3はその最外周部にてドラム状の出力伝達軸13と連結しており、該出力伝達軸13は後側の入力ディスク2を囲むようにしてバリエータの後方に延びている。
【0030】
動力循環機構6は、入力軸12の回転と出力ディスク3から出力される無段変速回転とを合成して動力循環するもので、デュアルプラネタリギヤからなり、互に噛合する第1のピニオンP1aと第2のピニオンP1bとを支持するキャリヤC1と、第1のピニオンP1aに噛合するリングギヤR1と、第2のピニオンP1bに噛合するサンギヤS1と、から構成される。
【0031】
上記キャリヤC1は、トルクコンバータ9を介してエンジン8の出力軸8a(図2参照)に連結される入力軸12に連結して、エンジン8からの出力が伝達され、上記サンギヤS1は上記ドラム状の出力伝達軸13に連結して、バリエータ5の無段変速回転(出力)が伝達され、そしてリングギヤR1はロー・ハイ切換え機構10のロークラッチLに動力を出力している。
【0032】
反転ギヤ機構(反転機構)7は、バリエータ5の無段変速回転を反転してハイクラッチHのハイ伝達軸19に伝達するもので、ステップピニオンからなり、固定部材15に回転自在に支持された軸24に固定された2個の大小のピニオンP2,P3からなる。大ピニオンP2は、出力伝達軸13に固定されたリングギヤR2に噛合して、バリエータ5の出力回転が伝達され、小ピニオンP3は、サンギヤS3に噛合して、ロー・ハイ切換え機構10のハイクラッチHに出力している。即ち、該反転ギヤ機構7は、キャリヤC2が固定されたプラネタリギヤからなる。
【0033】
ロー・ハイ切換え機構10は、(a)ロークラッチLを係合して動力循環機構6を介した回転を出力軸16に伝達するローモードと、(b)ハイクラッチHを係合してバリエータ5の無段変速回転を出力軸16に伝達するハイモードと、をモード切換えし得るように構成される。
【0034】
即ち、ロー・ハイ切換え機構10は、動力循環機構6からの出力回転がロー伝達軸(ロークラッチLの入力側部材)17を介して伝達されるロークラッチLと、反転ギヤ機構7からの出力回転がスリーブ状のハイ伝達軸(ハイクラッチHの入力側部材)19を介して伝達されるハイクラッチHと、を備えている。なお、バリエータ5、プラネタリギヤ装置U及びロー・ハイ切換え機構10並びに入力軸12及び出力軸16は、一軸状に配置されている。
【0035】
上記ハイクラッチHのハイ伝達軸19とロークラッチLのロー伝達軸17との間にはワンウェイクラッチ20が介在されており、該ワンウェイクラッチ20は、ハイ伝達軸19の回転がロー伝達軸17の回転より低回転となることを規制し、バリエータ5の変速比を規制する。このワンウェイクラッチは、ハイ伝動軸19がロー伝動軸17よりも早く回転している間は空転するが、ロックしてロー伝動軸17がハイ伝動軸19よりも高速で回転することを防止する。なお、このワンウェイクラッチの代わりに例えば、スプラグクラッチを設けても良い。
【0036】
図2に示すように、バリエータ5は、回転軸4a周りに回転自在にパワーローラ4を支持し且つ該パワーローラ4を両ディスク2(2,2)及び3に対して傾斜自在に支持するキャリッジ(回転傾斜支持部)30と、不図示の液圧制御装置から供給される液圧に基づきキャリッジ30に駆動力を付与する流体アクチュエータ22とを有している。該流体アクチュエータ22は、ピストン22aで互いに仕切られた液室22c,22dを対向して有すると共に、パワーローラ4の回転軸4aにキャリッジ30を介して連結されたピストンロッド22bを有している。パワーローラ4,4の傾斜角度は、キャリッジ30を介してパワーローラ4,4を上記両ディスク2,2,3の面方向に対して移動制御して自律的に変化させる。図2中の符号18は、無段変速機1から出力軸16及びディファレンシャル装置(図示せず)を介して伝達される駆動力で回転される駆動車輪を示している。
【0037】
上記液室22cは、ハイクラッチHの係合により入力ディスク2側から出力ディスク3側にトルク伝達が行われる関係上、パワーローラ4に働くトラクション力F1(図2参照)に対する反力(パワーローラ4を図2の下側に引っ張る方向の力)をキャリッジ30を介して出力し得るように、調圧弁(図示せず)が液路33を介して接続されている。上記液室22dは、ロークラッチLの係合により動力循環機構6を介して出力ディスク3側から入力ディスク2側にトルク伝達が行われる関係上、パワーローラ4に働くトラクション力F2(図2参照)に対する反力(パワーローラ4を図2の上側に押す方向の力)をキャリッジ30を介して出力し得るように、調圧弁(図示せず)が液路34を介して接続されている。
【0038】
図1(a)に示すように、無段変速機1を制御する制御部11は、判定手段28、係合制御手段37、反力切換え制御手段38,30、及び解放制御手段43を有している。
【0039】
上記判定手段28は、バリエータ5の変速比を監視し、該変速比がモード切換えの最適値(即ち、モード切換えを行うべき切換え点)に達したか否かを判定すると共に、現在、ロークラッチLが接続されているか否かを判定する。上記係合制御手段37は、判定手段28によって、モード切換えを行うべき切換え点に達したと判定された際に、ハイクラッチH及びロークラッチLのうちの解放されていたクラッチを係合させる係合制御を開始する。この係合制御は、係合制御手段37による液圧制御装置(図示せず)の制御により、ハイクラッチH及びロークラッチLのうちの係合すべきクラッチに対応して設けられている流体アクチュエータ(図示せず)に液圧を供給することによって行われる。
【0040】
上記反力切換え制御手段38は、係合制御手段37による係合制御中に、不図示の液圧制御装置の制御で、流体アクチュエータ22に供給する液圧を制御して、流体アクチュエータ22が出力する反力の方向(差圧の向き)を切換える切換え制御を開始すると共に、係合制御手段37による係合制御が完了する前に該切換え制御を完了させる。上記解放制御手段43は、反力切換え制御手段38による反力切換え制御、及び係合制御手段37による係合制御の双方が完了した際に、ハイクラッチH及びロークラッチLのうちでモード切換え前に係合されていた側のクラッチに対応する流体アクチュエータ(図示せず)から液圧を抜いて該クラッチを解放する解放制御を開始する。
【0041】
また、図1(a)に示すように、入力軸12とドラム状の出力伝達軸13に一体のサンギヤ軸13’との間には、逆転防止用ワンウェイクラッチ21が介在している。入力ディスク2(2,2)と一体の入力軸12と、出力ディスク3と一体のサンギヤ軸13’とは、バリエータ5が如何なる変速比であっても、常に相互に反対方向に回転している。エンジン8の回転方向は一定(例えば右回転とする)なので、入力軸12が右回転でサンギヤ軸13’が左回転の場合、上記ワンウェイクラッチ21は空転するよう設定されている。
【0042】
無段変速機1を搭載した車輌の発進時又は後進時においては、不図示のシフトレバーや液圧制御装置による液圧制御に基づきロー・ハイ切換え機構10が制御されて、係合制御手段37によりロークラッチLが係合されると共に解放制御手段43によりハイクラッチHが解放されることで、無段変速機1はローモード状態にされる。すると、図1(a),(b)に示すように、エンジン8の出力軸8aに連結されている入力軸12の回転が、バリエータ5の入力ディスク2,2、及び動力循環機構6のキャリヤC1に伝達される。このうち入力ディスク2,2に入力された入力軸12の回転はバリエータ5で変速され、出力ディスク3よりバリエータ出力回転Voutが出力されて、出力伝達軸13を介してサンギヤS1及びリングギヤR2に入力される。
【0043】
サンギヤS1にバリエータ出力回転Voutが入力されると、動力循環機構6においては、キャリヤC1に入力される入力軸12の回転とサンギヤS1の上記バリエータ出力回転Voutとがトルク循環される形で合成されて、リングギヤR1より出力される。このリングギヤR1の出力回転は、バリエータ5の変速比の幅に応じて、減速の逆転回転からニュートラル位置(GNポイント)を介して減速の正転回転までの幅に変速された出力回転OutLとなる。そして、このリングギヤR1の出力回転OutLは、ローモード状態の出力回転として、ロー伝達軸17及びロークラッチLを介して出力軸16に出力される。
【0044】
ローモード時においては、動力循環機構6によって動力が循環されるようになり、バリエータ出力回転Vout(バリエータ5の変速比)が、図1(b)中の一点鎖線で示すギヤニュートラル状態GNである際に、リングギヤR1の回転がニュートラル状態となるため、ローモード時の出力回転OutLがニュートラル状態となる。これにより、ロークラッチを開放せずとも短い停止をした後に車輌を発進させることができるようになると共に、トルクコンバータのような発進装置を省くこともできるようになる。
【0045】
リバース(R)レンジ及びドライブ(D)レンジの選択は、不図示のシフトレバーを使用して行われ、リバースレンジ(ローモードの場合のみ可能)においてバリエータ5の変速比を大きくしていくと(図1(b)中のバリエータ出力回転Voutを下方側にシフトしていくと)、出力軸16の出力回転OutLは、増速していく。
【0046】
ドライブ(D)レンジにおいて、バリエータ5の変速比を小さくしていくと(図1(b)中のバリエータ出力回転Voutを上方側にシフトしていくと)、出力軸16の出力回転OutLは、増速していく。
【0047】
つづいて、上述のローモード状態で出力軸16の出力回転OutLが増速されていき(バリエータ5の変速比が小さくされていき)、図1(b)に示すシンクチェンジSCの変速比に達してモードの切換わり判断がなされると、不図示の液圧制御装置による液圧制御に基づきロー・ハイ切換え機構10が制御されて、係合制御手段37によりハイクラッチHが係合されると共に解放制御手段43によりロークラッチLが解放されることで、トロイダル式無段変速機1はハイモード状態にされる。
【0048】
すると、図1(a)及び(b)に示すように、このハイモード状態においては、バリエータ出力回転Voutが、反転ギヤ機構7のリングギヤR2に入力され、該リングギヤR2に入力された回転は、大小のピニオンP2及びP3を介して、即ちギヤ比R2/P2及びS3/P3に基づき、バリエータ出力回転Voutが僅かな増速回転に変速されると共に、反転されてサンギヤS3から出力される。そして、このサンギヤS3の出力回転OutHは、ハイモード状態の出力回転として、ハイ伝達軸19及びハイクラッチHを介して出力軸16に出力される。このように、ハイモード時においては、動力循環機構6は動力伝達経路から外れ、動力循環を行うことなく、バリエータ出力回転Voutに基づき回転を出力する。
【0049】
上記シンクチェンジSC時におけるローモード状態とハイモード状態との切換は、バリエータ5の変速比(バリエータ出力回転Vout)が最も小さくなる際に行われる。このような状況は、バリエータ5が同期変速比を超えようとする際に生じ、この同期変速比は、モード切換えの際に変速機の出力速度が変わらないバリエータの変速比となっている。即ち、同期変速比では、ハイ伝動軸19とロー伝動軸17とが同じ速度で回転する。他の変速比では、ハイ伝動軸19はロー伝動軸17よりも高速で回転し、坂道の走行や急制動のような外的な要因によりロー伝達軸17の回転速度がハイ伝動軸19の回転速度を超えようとする状況を生じさせ易くなる。
【0050】
例えば上記ローモード時にあって、入力軸12の回転に対する出力軸16の回転の比(エンジン回転数に対する駆動車輪18,20の速度比)が大きくなり、図1(b)に示すローモードの出力回転OutLの上端より正方向に大きくなろうとすると、動力循環機構6及び反転ギヤ機構7を介して連動するロー伝達軸17及びハイ伝達軸19は、互いに回転が近づく形となり、同回転となった時点でワンウェイクラッチ20が係合する。
【0051】
このようにローモード時にあってワンウェイクラッチ20が係合すると、ハイ伝達軸19の回転がロー伝達軸17の回転よりも低回転になることが防止され、それによって、バリエータ5における変速比が上記シンクチェンジSCの変速比を超えることが防止される。このため、パワーローラ4,4が過傾斜となることが防止され、これによってパワーローラの両ディスク2,3からの飛び出し等が防止される。
【0052】
また同様に、上記ハイモード時にあっても、入力軸12の回転に対する出力軸16の回転の比(エンジン回転数に対する駆動車輪の速度比)が小さくなり、図1(b)に示すハイモードの出力回転OutHの下端より正方向にあって小さくなろうとすると、動力循環機構6及び反転ギヤ機構7を介して連動するロー伝達軸17及びハイ伝達軸19は、互いに回転が近づく形となり、同回転となった時点でワンウェイクラッチ20が係合する。これによって、同様にパワーローラ4,4の両ディスク2,3からの飛び出し等が防止される。
【0053】
以上のように、ワンウェイクラッチ20の存在により、モード切換え時にロー伝達軸17がハイ伝達軸19より高回転となってパワーローラ4が脱落するような事態を確実に防止できるため、バリエータ5の変速比がモード切換えの最適値に達した際に、両クラッチH,Lのうちの解放されていた側のクラッチの係合開始とともに流体アクチュエータ22による反力の方向(差圧の向き)の切換え開始を行うことができる。これにより、モード切換えを、ショックを発生させることなく円滑且つ迅速に行うことができる。
【0054】
また、バリエータ5がいかなる変速比にあろうとも、バリエータの入力ディスク2,2が正転方向(例えば右回転)に回転し、パワーローラ4がそれに応じて従動回転している場合、出力ディスク3に連結しているサンギヤ軸13’が入力ディスク2に連結している入力軸12よりも速く正転方向(例えば右回転)に回転することはなく、両軸12,13’の間に介在しているワンウェイクラッチ21は空転している。例えば、エンジン8の逆転(エンジン8が停止する際に僅かに逆転)又は登り坂での停車中に駆動車輪18側からバリエータ5に逆トルクが入力する等で、パワーローラ4が逆方向に従動回転しようとする場合、サンギヤ軸13’が入力軸12に対して正転方向(右方向)に速く回転することになり、ワンウェイクラッチ21がロックして上記入力ディスク2の逆回転は阻止される。これにより、パワーローラ4が逆方向に従動回転してパワーローラの挟持力が緩んでしまい、ローラが脱落するような事態は未然に防止される。
【0055】
以上の本実施の形態では、クラッチ等の切換えタイミングは以下のようになる。なお、図3(a)は無段変速機1の変速比の変化を示すグラフ、(b)はロー(Low)モード用のロークラッチの係合(接続)と解放の状態変化を示すグラフ、(c)はハイ(High)モード用のハイクラッチの係合と解放の状態変化を示すグラフ、(d)は流体アクチュエータ22が出力する反力の方向(差圧の向き)の切換え状況を示すグラフである。また図4は、本実施の形態による作用を説明するためのフローチャートである。
【0056】
すなわち、本無段変速機1を搭載した車輌において、ステップS1で、バリエータ5の変速比がモード切換えを行うべき切換え点に達したと判定手段28が判定すると(S1;YES)、ステップS2にて、現在ロークラッチLが接続されているか否かを判定する。その結果、ロークラッチLが接続されていると判定されると(S2;YES)、係合制御手段37が、対応する流体アクチュエータ(図示せず)に液圧を供給し、ステップS3にて、解放されていたハイクラッチHの接続(係合)を開始し、ステップS5にて、流体アクチュエータ22の反力方向(差圧向き)の切換えを開始する。そして、係合制御手段37が、ステップS6にてハイクラッチHの接続が完了したか否かを判定し、接続が完了したと判定した後(S6;YES)、反力切換え制御手段38が、ステップS7にて、ステップS5で開始した反力方向の切換えは終了したか否かを判定する。その結果、反力方向の切換えが終了したと判定されれば(S7;YES)、解放制御手段43が、対応する流体アクチュエータ(図示せず)から液圧を抜いてロークラッチLの解放を開始し(S8)、解放した時点で処理を終了する。
【0057】
一方、例えば、ハイクラッチHでの走行中にキックダウンが行われた場合、ステップS1にて、切換え点に達したと判定手段28が判定し(S1;YES)、ステップS2にて、現在ロークラッチLは接続されずハイクラッチHが接続されていると判定されると(S2;No)、係合制御手段37が、対応する流体アクチュエータ(図示せず)に液圧を供給し、ステップS4にて、解放されていたロークラッチLの接続を開始し(図3の時点t)、ステップS9にて、流体アクチュエータ22の反力方向の切換えを開始する(例えば1[MPa]から−1[MPa]に向けて)(時点t)。
【0058】
そして係合制御手段37が、ステップS10にて、ロークラッチLの接続が完了したか否かを判定し、接続が完了したと判定すると(S10;YES)(時点t)、反力切換え制御手段38が、ステップS11にて、ステップS9で開始した反力方向の切換えは終了したか否かを判定する。その結果、反力方向の切換えが終了したと判定されれば(S11;YES)、解放制御手段43が、ステップS12にて、対応する流体アクチュエータ(図示せず)から液圧を抜いてハイクラッチHの解放を開始する処理を行う(時点t)。その後、変速比が一定(−0.3)に固定されていた時点〜tの状態から、ハイクラッチHの解放が終了すると(時点t)、変速比が次第に増大し、増速することになる。
【0059】
本実施の形態では、前述したように、係合制御手段37が、モード切換えを行うべき切換え点に達したと判定した際、ハイクラッチH及びロークラッチLのうちの解放されていたクラッチを係合させる係合制御を開始し、反力切換え制御手段38が、係合制御手段37による係合制御中に、流体アクチュエータ22に供給する液圧を制御して反力の方向を切換える反力切換え制御を開始するように構成される。このため、解放されていたクラッチの係合を終了した時点から流体アクチュエータ22の反力方向を切換えるようにすると、反力方向の切換えが終了した後それまで係合していた係合側クラッチを解放させるように制御しなければならず長い時間が必要になるのに対し、本実施の形態では、係合制御手段37による解放側クラッチの係合制御中に、反力切換え制御手段38が流体アクチュエータ22による反力の方向を切換えることにより、該反力方向の切換えに続く係合側クラッチの解放処理を素早く開始することができる。これにより、キックダウン時等、素早いモード切換えを要求される場合の応答性が向上する。
【0060】
また、本実施の形態では、反力切換え制御手段38が、係合制御手段37による係合制御が完了する前に反力切換え制御を完了するので、その後、モード切換え前に係合されていたクラッチを解放する場合、その時点では反力切換え制御が確実に完了しているため、ショックを生じることのない円滑な変速が実現する。更に、解放制御手段43が、流体アクチュエータ22による反力方向を切換え且つ解放側のクラッチを係合させてから、係合側のクラッチを解放する解放制御を開始するので、ショックを生じることのない円滑で安定した変速が実現する。
【図1(a)】

【図1(b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸に連結された入力ディスク、バリエータ出力回転を出力する出力ディスク、これら一軸状に配置された両ディスクに挟持され無段変速比により一方のディスクから他方のディスクに動力伝達を行うと共に、軸回りに回転可能かつ前記入力及び出力ディスクに対して相対的に傾斜して変速比を変更できるようにキャリヤに取付けられた少なくとも1つのパワーローラ、前記入力及び出力ディスクの動きにより前記パワーローラに生じるトラクション力に対する反力を作用する差圧によって前記キャリヤに付与する流体アクチュエータ、を有するバリエータと、
前記入力軸の回転及び前記バリエータ出力回転が入力され、これらの入力回転に基づく出力回転を出力する動力循環装置と、
ロークラッチ及びハイクラッチを有し、(a)前記ロークラッチを係合して前記動力循環装置の出力回転を出力軸に出力するローモードと、(b)前記ハイクラッチを係合して前記バリエータ出力回転を前記出力軸に出力するハイモードとを切換えるロー・ハイ切換え機構と、を備え、前記ローモード及びハイモードの切換え中に、前記流体アクチュエータの反力の方向を反転させる無段変速機において、
モード切換えを行うべき切換え点に達した際に、前記ハイクラッチ及び前記ロークラッチのうちの解放されていたクラッチの係合を開始する係合制御手段と、
前記開放されていたクラッチの係合制御中に、前記反力の方向の反転を開始する反力切換え制御手段と、を更に備えた、
ことを特徴とする無段変速機。
【請求項2】
前記反力切換え制御手段は、前記係合制御手段による係合制御が完了する前に、前記反力方向の反転を完了してなる、
請求項1記載の無段変速機。
【請求項3】
前記反力の反転及び開放されていたクラッチの係合の双方が完了した際に、前記モード切換え前に係合されていたクラッチの解放を開始する解放制御手段を備えてなる、
請求項1又は2記載の無段変速機。
【請求項4】
前記ハイクラッチの入力側部材と前記ロークラッチの入力側部材との間に介在され、前記ハイクラッチの入力側部材の回転が前記ロークラッチの入力側部材の回転より低回転となることを規制するワンウェイクラッチを備えてなる、
請求項1ないし3のいずれか1項記載の無段変速機。
【請求項5】
前記バリエータ出力回転を反転して前記ハイクラッチの入力側部材に伝達する反転機構を備えた、
請求項1乃至4のいずれか1項記載の無段変速機。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−513567(P2012−513567A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541607(P2011−541607)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051758
【国際公開番号】WO2010/073036
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(301037257)トロトラック・(ディベロップメント)・リミテッド (13)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】