説明

無段変速機

多重レジーム無段変速機(CVT)は、変速機入力軸(18)と、変速機出力軸(30)と、変速比可変ユニット(V)とを備え、変速比可変ユニット(V)は、回転する入力部(10)および回転する出力部(12)を有し、入力部および出力部の回転軸は同軸である。第1および第2の遊星歯車装置(E1、E2)を備える分路は、変速比可変ユニット(V)を横断して連結させられる。一方の遊星歯車装置(E1)は、変速機入力軸(18)によって駆動される入力部(C1)、および変速比可変ユニット(V)の片側によって駆動される入力部(S1)を有し、もう一方の遊星歯車装置(E2)は、第1の遊星歯車装置からの入力部(C2)、および変速比可変ユニット(V)の片側からの入力部(S1)を有する。第1および第2の遊星歯車装置(E1、E2)は、同軸の周りで回転し、変速比可変ユニット(V)の入力部(10)および出力部(12)の回転軸からずれ、それに対して平行である。クラッチは、第2の遊星歯車装置(E2)の出力部(A2)を変速機出力軸(30)に選択的に連結させるように動作することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速機に関し、詳細には、限定的ではないが、建設業において一般に「ホイールローダ」として知られる大型車両内で使用される無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダは、建設において使用されることが多い車両であり、主に、大量の物体を積載し移動させるために用いられる。ホイールローダは通常、適合可能なバケツ、雪かき器、またはその前端部に適合可能に連結される他の付属装置を有する、トラクターを含む。
【0003】
ホイールローダでは、その構造に物理的制約が課される結果として、エンジンが通常、被駆動車輪のかなり上方に取り付けられる。その結果、変速機は、エンジン出力軸から車輪を駆動する軸まで、通常およそ50cmの垂直降下部を設ける必要がある。ホイールローダ用の従来の変速機では、歯車装置構成を、垂直降下部内に都合よく配置することができる。
【0004】
ホイールローダは一般に、使用中に前後に「往復」することが必要とされ、それには、クラッチを比較的低速かつ高トルクで係合させたり切り離したりすることが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、「往復」を都合よく行うことを可能にするが、そのような構成において通常エンジンの出力部と被駆動車輪との間に存在する垂直降下部を収容する、無段変速機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、多重レジーム無段変速機(CVT)が提供され、この多重レジーム無段変速機は、
変速機入力軸と、
変速機出力軸と、
回転軸が同軸上にある回転する入力部および回転する出力部を有する変速比可変ユニットと、
変速比可変ユニットを横断して連結される第1および第2の遊星歯車装置を備える分路であって、一方の遊星歯車装置が、変速機入力軸によって駆動される入力部と、変速比可変ユニットの片側によって駆動される入力部とを備え、もう一方の遊星歯車装置が、第1の遊星歯車装置からの入力部と、変速比可変ユニットの片側からの入力部とを備え、第1および第2の遊星歯車装置が、共通の軸の周りで回転し、変速比可変ユニットの入力部および出力部の回転軸からずれ、それらに対して平行である分路と、
第2の遊星歯車装置の出力部を、変速機出力軸に選択的に連結させるためのクラッチとを備える。
【0007】
バリエータなど、変速比可変ユニットを使用することにより、クラッチを変更せずに変速機の「往復」を低速で行うことが可能になる。さらに、第1および第2の遊星歯車装置の形の二重の分路を設けることにより、低速でバリエータを通って再循環させられる動力が抑えられるが、このことは高トルクが加えられるときに望ましい。
【0008】
さらに、本発明は、知られている変速機において存在する垂直降下部を収容する構造を可能にする。
【0009】
好ましくは、変速機は、バリエータの出力部を変速機出力軸に選択的に連結させるための、1つまたは複数のクラッチをさらに備える。
【0010】
好ましくは、クラッチを選択的に係合させることにより、複数の重複する変速比範囲が生み出される。
【0011】
好ましい一実施形態では、変速比可変ユニットは、回転可能な入力ディスクと、入力ディスクと同軸上に取り付けられた回転可能な出力ディスクと、入力ディスクと出力ディスクとの間で傾斜可変に伝達回転する複数のローラとを備える。
【0012】
入力ディスクおよび出力ディスクは、好ましくは、中空の軸上に取り付けられ、変速機入力軸は、中空の軸内を通る。
【0013】
一実施形態では、それぞれのクラッチの出力部は、共通の回転可能な部材を駆動するように適合され、変速機は、共通の部材と変速機出力軸との間に配置される前進クラッチおよび後進クラッチをさらに備える。
【0014】
この構成により、第2の遊星歯車装置および/または変速比可変ユニットからの出力を、必要に応じて、前進または後進クラッチを適当に加えることによって前進方向または後進方向に加えることが可能になる。特にこれは、後進で達成することができる変速比を大幅に上昇させることができる。
【0015】
好ましくは、第1および第2の遊星歯車装置は、変速比可変ユニットの下方に配置される。この構成は、ホイールローダ用の変速機においてエンジン出力軸と被駆動車輪との間に一般に存在する、垂直降下部を用いる。
【0016】
添付の図面を参照しながら、本発明の具体的な実施形態をほんの一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による無限可変変速機の第1の実施形態を示す図である。
【図2】図1の変速機を示す概略図である。
【図3】本発明による無限可変変速機の第2の実施形態を示す図である。
【図4】図3の変速機を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず図1および図2を参照すると、無段変速機システムは、知られているトロイダルレース転動牽引式のバリエータVを備え、バリエータVは、バリエータのそれぞれの端部に1つずつ配置される、トロイド状凹部をもつ2つの入力ディスク10と、入力ディスク10の別々の一方とそれぞれ対面し互いに回転する、1対の同様の出力ディスク12とを有する。
【0019】
ローラ14(通常3つのローラ)の組が、ローラ14を傾斜させることにより変えることができる変速比で、駆動力を入力ディスクから出力ディスク12へと伝達するために、入力ディスク10および出力ディスク12の対向する面の間に取り付けられる。入力ディスク10は、中空の軸16および入力軸18のいずれかの端部上に取り付けられ、入力軸18は、中空の軸16の同軸上を通るエンジンまたは他の原動機(図示せず)によって駆動される。
【0020】
入力ディスク10は、第1の遊星歯車装置E1および第2の遊星歯車装置E2の形の、バリエータを横断する二重の分路である出力部によって回転させられる。第1の遊星歯車装置E1は、太陽歯車S1、キャリヤC1上に回転可能に取り付けられた複数の遊星歯車P1、および環部A1を備え、環部A1は、バリエータVの入力ディスク10に連結されそれとともに回転可能な、入力歯車20に係合する。キャリヤC1は、入力軸18に連結された出力部歯車22と係合し、それによって回転させられ、太陽歯車S1は、中間歯車26に係合させられた遊び歯車24を介してバリエータVの出力ディスク12に連結され、それとともに回転する。結果的に、バリエータの第1の遊星歯車装置E1の環部A1の回転(および結果的に入力ディスク10の速度)は、バリエータVの入力軸18および出力部の速度によって変わる。図1に示すように、入力軸18、および第1の遊星歯車装置E1のキャリヤC1は、所望される場合、動力取出し源PTO1、PTO2として用いることもできる。
【0021】
第1の遊星歯車装置E1の環部A1はまた、第2の遊星歯車装置E2のキャリヤC2に連結され、第2の遊星歯車装置E2の太陽歯車S2は、第1の遊星歯車装置の太陽歯車S1に連結され、第1の遊星歯車装置の太陽歯車S1およびバリエータVの出力部とともに回転する。複数の遊星歯車P2は、キャリヤC2上に回転可能に取り付けられ、太陽歯車S2、および第2の遊星歯車装置E2の出力部を形成する環部A2とかみ合う。
【0022】
遊星歯車装置E1およびE2は、バリエータVの下方、すなわち下に配置される。
【0023】
説明されるように、複数のクラッチを設けることにより、駆動力を、第1の遊星歯車装置E1および第2の遊星歯車装置E2から、ならびにバリエータの出力ディスク12から、入力軸18と平行に構成される変速機の最終出力軸30へと伝達することができる。任意で、変速機の最終出力軸30の回転はまた、たとえば所望される場合四輪駆動を提供するために、さらなるクラッチ34によりさらなる同軸の出力軸32へと選択的に分与することもできる。
【0024】
環部A2によって形成される第2の遊星歯車装置E2の出力部は、低速レジームかみ合いクラッチLの片側に連結される。低速レジームクラッチLの反対側は、中間歯車36に固定され、この中間歯車36は、第1の遊び歯車40によってさらなる中間歯車42に係合させられ、このさらなる中間歯車42は、中間出力軸44とともに回転し、この中間出力軸44は、さらなる遊び歯車46によって伝達歯車48と係合し、この伝達歯車48は、変速機出力軸30に連結させられる。第2の遊星歯車装置E2の出力は、低速レジームクラッチLに係合することにより、変速機出力軸30に伝達することができる。
【0025】
環部A1によって形成される第1の遊星歯車装置E1の出力は、中間歯車50によって、中間レジームかみ合いクラッチIの片側に伝達され、中間クラッチIのもう一方の側は中間出力軸44に連結される。結果的に、中間クラッチIを係合させることにより、第1の遊星歯車装置E1の出力(環部A1の回転)を変速機出力軸30に伝達することができる。
【0026】
(遊び歯車24を介して)バリエータVの出力ディスク12と係合することによって回転することができる中間歯車26はまた、高速レジームかみ合いクラッチHおよび中間後進かみ合いクラッチIRの一方の共通の側と係合し、それらを回転させるように構成される。高速レジームクラッチHの反対側は、中間出力軸44に直接連結され、高速レジームクラッチの係合はそれにより、バリエータ出力部の回転を変速機出力軸30へと直接伝達する。
【0027】
中間後進クラッチIRの反対側は、変速機出力軸30に連結させられたさらなる伝達歯車56と係合する中間歯車54に連結させられ、それを回転させる。
【0028】
動作に際しては、低速レジームクラッチL、中間レジームクラッチI、中間後進クラッチIR、および高速レジームクラッチHのうちの1つのみが、通常一度に係合させられる。
【0029】
低速レジーム動作では、低速レジームクラッチLのみが係合させられ、それにより、第2の遊星歯車装置E2の出力(環部A2)に対応する変速機出力軸30への出力が、中間軸44を介してもたらされる。バリエータVのローラが動くにつれて、バリエータの変速比は、後進からニュートラルを経て低速前進比へと変化することができる。
【0030】
低速レジームクラッチLが係合させられるとき、バリエータの最高速前進比は、中間クラッチIが係合させられるときのバリエータの最低速比に相当する。その結果、変速比を上昇させるために、低速レジームクラッチLが切り離され、中間クラッチIが係合させられる。これにより、第1の遊星歯車装置の出力部(環部A1)が、中間軸44を介して出力軸30に連結させられ、次いでバリエータローラが、反対方向へと動き、変速比を中間前進比から次の最高速比の範囲の下端にする。
【0031】
中間レジームクラッチIが係合させられるとき、中間範囲の最高速比は、次の最高速レジームの最低速比に相当する。効果的な変速比を高めるために、高速レジームクラッチHが係合させられ、中間レジームクラッチIが切り離される。これにより、バリエータVの出力部が、中間軸44を介して出力軸30に連結させられ、次いでバリエータのローラが、反対方向へと動き、変速比を高速レジームの下端からより高い変速比にする。
【0032】
一方、変速機が、低速レジームクラッチLが係合させられた状態の低速レジームである場合、低速レジーム最高後進比に相当するバリエータの位置は、次の最低速後進レジームの数値が最小後進比に相当する。負の変速比を高めるために、中間後進クラッチIRが係合させられ、低速レジームクラッチLが切り離され、それによりバリエータVの出力部が、中間歯車54および伝達歯車56を介して出力軸30に連結され、それにより変速機が、低速レジームで可能になるよりも高い後進比で動作することが可能になる。
【0033】
変速機は、所望される場合は、クラッチを係合したり切り離したりするためのより少ない要件で、前進動作と後進動作との間を非常に迅速に「往復」させることができる。中間後進比の追加により、比較的高い後進比を達成することも可能になる。一方、高速レジーム変速比を組み込むことにより、車両が比較的高速で前進方向に移動することが可能になる。
【0034】
さらに、バリエータを横断する二重の分路を使用することにより、動力がバリエータを通じて再循環され、動力がそれを通過することが制限される。それにより特に、低速または車速ゼロで動くときに大きいトルクを送達することを必要とされることが多い、掘削機などの車両において、サイズが縮小されたバリエータを使用することが可能になる。
【0035】
さらに、分路が、バリエータからずれているがそれと平行である構成により、変速機システムを、既存の従来の歯車構成のエンベロープ内にある1つのエンベロープ内に構築することが可能になる。
【0036】
本発明の第2の実施形態を、図3および図4に示す。構造は、多くの点で第1の実施形態と無段変速機システムと同様であり、知られているトロイダルレース転動牽引式のバリエータVを備え、バリエータVは、バリエータのそれぞれの端部に1つずつ配置される、トロイド状凹部をもつ2つの入力ディスク110と、入力ディスク110の別々の一方とそれぞれ対面し互いに回転する、1対の同様の出力ディスク112とを有する。
【0037】
ローラ114(通常3つのローラ)の組が、ローラ114を傾斜させることにより変えることができる変速比で駆動力を入力ディスクから出力ディスク112へと伝達するために、入力ディスク110および出力ディスク112の対向する面の間に取り付けられる。入力ディスク110は、中空の軸116および入力軸118のいずれかの端部上に取り付けられ、入力軸118は、中空の軸116の同軸上を通るエンジンまたは他の原動機(図示せず)によって駆動される。
【0038】
入力ディスク110は、第1の遊星歯車装置E1および第2の遊星歯車装置E2の形の、バリエータを横断する二重の分路の出力部によって回転させられる。第1の遊星歯車装置E1は、太陽歯車S1、キャリヤC1上に回転可能に取り付けられた複数の遊星歯車P1、および環部A1を備え、環部A1は、バリエータVの入力ディスク110に連結されそれとともに回転可能な、入力歯車120に係合する。キャリヤC1は、入力軸118に連結された出力歯車122と係合し、それによって回転させられ、太陽歯車S1は、中間歯車126と係合させられる遊び歯車124を介して、バリエータVの出力ディスク112に連結され、それとともに回転する。結果的に、バリエータの第1の遊星歯車装置E1の環部A1の回転(および結果的に入力ディスク110の速度)は、バリエータVの入力軸118および出力部の速度によって変わる。図1に示すように、第1の遊星歯車装置E1の入力軸118およびキャリヤC1はまた、所望される場合、動力取出し源PTO1、PTO2として用いることもできる。
【0039】
第1の遊星歯車装置E1の環部A1はまた、第2の遊星歯車装置E2のキャリヤC2に連結され、キャリヤC2はまた、中間歯車126を介してバリエータVの出力部に連結され、それとともに回転する。複数の遊星歯車P2は、キャリヤC2上に回転可能に取り付けられ、太陽歯車S2および環部A2とかみ合う。太陽歯車S2は、第2の遊星歯車装置E2の出力部を形成する。
【0040】
遊星歯車装置E1およびE2は、バリエータVの下方、すなわち下に配置される。
【0041】
説明されるように、複数のクラッチを設けることにより、駆動力を、第1の遊星歯車装置E1および第2の遊星歯車装置E2から、ならびにバリエータの出力ディスク112から、入力軸118と平行に構成される変速機の最終出力軸130へと伝達することができる。任意で、変速機の最終変速機出力軸130の回転はまた、たとえば所望される場合四輪駆動を提供するために、さらなるクラッチ134によってさらなる同軸の出力軸132へと選択的に分与することもできる。
【0042】
太陽歯車S2によって形成される第2の遊星歯車装置E2の出力部は、低速レジームかみ合いクラッチLの片側に連結させられる。低速レジームクラッチLの反対側は、中間歯車136に固定され、この中間歯車136は、第1の遊び歯車140によってさらなる中間歯車142に係合させられ、このさらなる中間歯車142は、中間出力軸144とともに回転し、この中間出力軸144は、さらなる遊び歯車146によって伝達歯車148と係合し、この伝達歯車148は、前進クラッチFの片側に連結させられる。低速レジームクラッチLを係合させることにより、第2の遊星歯車装置E2の出力は、それにより中間出力軸144に伝達され、そこから出力軸130へと伝達される。
【0043】
環部A1によって形成される第1の遊星歯車装置E1の出力は、中間歯車150によって、中間レジームかみ合いクラッチIの片側に伝達され、中間クラッチIのもう一方の側は中間出力軸144に連結される。結果的に、中間クラッチIを係合させることにより、第1の遊星歯車装置E1の出力(環部A1の回転)を、変速機出力軸130に伝達することができる。
【0044】
(遊び歯車24を介して)バリエータVの出力ディスク112と係合することによって回転することができる中間歯車126はまた、高速レジームかみ合いクラッチHの片側と係合し、それを回転させるように構成される。高速レジームクラッチHの反対側は、中間出力軸144に直接連結され、高速レジームクラッチの係合はそれにより、バリエータ出力部の回転を変速機の中間出力軸144へと直接伝達する。
【0045】
中間出力軸144の出力は、前進方向プレートクラッチF(伝達歯車142により、中間出力軸144と、遊び歯車146と、前進方向クラッチの片側に連結させられた伝達歯車148とに連結させられる)、または、後進方向プレートクラッチR(その片側が中間出力軸144とともに回転し、その反対側が、変速機出力軸130に連結させられた伝達歯車168と係合する第1の伝達歯車166を介して連結させられる)のいずれかによって、変速機出力軸130へと伝達される。前進方向クラッチFおよび後方方向クラッチRのうちの一方のみが一度に係合させられ、それにより中間出力軸144の出力部が、(クラッチFを係合させることにより)前進方向、またはクラッチRを係合させることにより)後進方向ブラケットで、変速機出力軸130に連結させられる。このようにして、変速機は、前進方向および後進方向の両方において同じ変速比幅をもたらすように構成することができる。
【0046】
動作に際しては、低速レジームクラッチL、中間レジームクラッチI、中間後進クラッチIR、および高速レジームクラッチHのうちの1つのみが、通常1度に係合させられる。
【0047】
低速レジーム動作では、低速レジームクラッチLのみが係合させられ、それにより、第2の遊星歯車装置E2の出力(環部A2)に相当する変速機出力軸130への出力を、中間軸144を介して提供する。バリエータVのローラが動くとき、バリエータの変速比は、後進からニュートラルを経て低速前進比へと変化することができる。この回転は、中間出力軸144に伝達され、そこから変速機出力軸130へと伝達され、出力軸130の回転方向は、前進クラッチFまたは後進クラッチRのいずれが係合させられるかによって変わる。
【0048】
低速レジームクラッチLが係合させられるとき、バリエータの最高速前進比は、中間クラッチIが係合させられるときのバリエータの最低速比に相当する。その結果、変速比を高めるために、低速レジームクラッチLが切り離され、中間クラッチIが係合させられる。この回転は、中間出力軸144に伝達され、そこから変速機出力軸130へと伝達され、出力軸130の回転方向は、前進クラッチFまたは後進クラッチRのいずれが係合させられるかによって変わる。これにより、第1の遊星歯車装置(環部A1)の出力部が、中間軸144を介して出力軸130に連結させられ、次いでバリエータローラが、反対方向へと動き、変速比を中間前進比から次の最高速比範囲の下端にする。
【0049】
中間レジームクラッチIが係合させられるとき、中間範囲の最高速比は、次の最高速レジームの最低速比に相当する。効果的な変速比を高めるために、高速レジームクラッチHが係合させられ、中間レジームクラッチIが切り離される。この回転は、中間出力軸144に伝達され、そこから変速機出力軸130へと伝達され、出力軸130の回転方向は、前進クラッチFまたは後進クラッチRのいずれが係合させられるかによって変わる。これにより、バリエータVの出力部が、中間軸144を介して出力軸130に連結させられ、次いでバリエータのローラが、反対方向へと動き、変速比を高速レジームの下端からより高い変速比にする。
【0050】
変速機は、所望される場合、前進クラッチFおよび後進クラッチRを係合させ/切り離すことにより、前進動作と後進動作との間で迅速に「往復」させることができる。
【0051】
第1の実施形態のように、バリエータを横断する二重の分路を使用することにより、動力がバリエータを通じて再循環させられ、動力がそれを通過することが制限される。それにより特に、低速または車速ゼロで動くときに大きいトルクを送達することを必要とされることが多い、掘削機などの車両において、サイズが縮小されたバリエータを使用することが可能になる。
【0052】
さらに、分路が、バリエータからずれているがそれと平行である構成により、変速機システムを、既存の従来の歯車構成のエンベロープ内にある1つのエンベロープ内に構築することが可能になる。
【0053】
本発明は、上記実施形態の詳細に限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重レジームの無段変速機(CVT)において、
変速機入力軸と、
変速機出力軸と、
回転軸が同軸上にある回転する入力部および回転する出力部を有する変速比可変ユニットと、
前記変速比可変ユニットを横断して連結される第1および第2の遊星歯車装置を備えた分路であって、一方の遊星歯車装置は、前記変速機入力軸によって駆動される入力部と、前記変速比可変ユニットの片側によって駆動される入力部とを備え、もう一方の遊星歯車装置は、前記第1の遊星歯車装置からの入力部と、前記変速比可変ユニットの片側からの入力部とを備え、前記第1および第2の遊星歯車装置は、共通の軸の周りで回転し、前記変速比可変ユニットの前記入力部および出力部の前記回転軸からずれているとともに、それらに対して平行である、分路と、
前記第2の遊星歯車装置の前記出力部を、前記変速機出力軸に選択的に連結させるためのクラッチとを備えた、無段変速機(CVT)。
【請求項2】
請求項1に記載のCVTにおいて、
バリエータの前記出力部を前記変速機出力軸に選択的に連結させるための、1つまたは複数のクラッチをさらに備えた、CVT。
【請求項3】
請求項1または2に記載のCVTにおいて、
前記クラッチの選択的な係合により、複数の重複した変速比範囲を生み出す、CVT。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のCVTにおいて、
前記変速比可変ユニットは、回転可能な入力ディスクと、前記入力ディスクと同軸上に取り付けられた回転可能な出力ディスクと、前記入力ディスクと前記出力ディスクとの間で回転を伝達する、傾斜が可変な複数のローラとを備えた、CVT。
【請求項5】
請求項4に記載のCVTにおいて、
前記入力ディスクおよび前記出力ディスクは中空の軸上に取り付けられ、前記変速機入力軸は前記中空の軸内を通る、CVT。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のCVTにおいて、
前記クラッチのそれぞれの前記出力部は、共通の回転可能な部材を駆動するように適合され、前記変速機がさらに、前記共通の部材と前記変速機出力軸との間に配置された前進クラッチおよび後進クラッチをさらに備えた、CVT。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のCVTにおいて、
前記第1および第2の遊星歯車装置は、前記変速比可変ユニットの下方に配置された、CVT。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−527584(P2012−527584A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511353(P2012−511353)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050809
【国際公開番号】WO2010/133873
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(504290859)トロトラク・(ディヴェロプメント)・リミテッド (33)
【Fターム(参考)】